説明

ブラシロール及び洗浄装置

【課題】洗浄性能、異物等の対象物の除去性能に優れたブラシロールを提供する。
【解決手段】略棒状又は円筒状の回転軸41と、該回転軸41の外周に螺旋状に巻き付けられたチャンネルブラシ42a、42bとからなり、該チャンネルブラシ42a、42bは、ブラシ毛材が、断面コ字状の長尺な帯状体と、芯線との間に挟み付けられてあると共に、所定のブラシ幅を有して形成されてあり、前記チャンネルブラシ42a、42bを、前記回転軸41の長手方向の一部に設定した対称軸43近傍で、該チャンネルブラシ42a、42b先端部近傍の前記ブラシ幅を、前記チャンネルブラシ42a、42bの先端部近傍以外の前記ブラシ幅にたいして広げたことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板 あるいはフィルム状樹脂組成物等を洗浄、清掃、研磨、表面処理などを行うブラシロール及び洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のブラシロールとして、ロール本体の外周面に、中央の対称軸に対して対称にブラシを螺旋状に巻き付けて形成し、それを鋼板などのブランク材上で回転させて、ブランク材に付着した塵埃などを除去するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、上記特許文献1に記載された従来のブラシロールの平面図、図8は、同ブラシロールでブランク材を洗浄する様子を示す斜視図である。
【0004】
図7において、従来のブラシロール4は、ロール本体1と、ロール本体1の外周に螺旋状に巻き付け固定されたブラシ2から構成されている。ブラシ2は、ロール本体1の中央に設定された対称軸13に対して対称に、且つ、対称軸13からロール本体1のそれぞれの端部に向かって1本づつ螺旋状に設けられている。Sは、ブラシ2をロール本体1に巻き付ける際の開始端である。
【0005】
次に、図8を用いて、上記ブラシロール4によるブランク材の洗浄について説明する。45は、加工前の鋼板など洗浄を必要とするブランク材で、このブランク材45の表面にブラシ2の先端が摺接するようにブラシロール4の位置を設定する。
【0006】
そして、ブランク材45を白抜き矢印方向に図示しない移動手段で送りながら、駆動手段で、ブラシロール4を実線矢印で示すように反時計方向に、かつ、ブラシ2の先端の周速度がブランク材45の移動速度より大きくなるような回転数で回転させ、同時に洗浄ノズル47より洗浄液をブラシロール4の回転入口側に吹き付けるようにする。
【0007】
このようにすることにより、ブランク材45の表面に付着した塵埃や金屑などの対象物(斜線部分)が洗浄液と共に、ブラシロール4の長手方向の略中央部から端部に向かって移動し、除去される。
【0008】
【特許文献1】特開2004−137573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のブラシロール4の構成では、図7及び図8の如く、ブラシ2をロール本体1に巻き付ける際の開始端Sの近傍では、隙間が発生し易いことと、他の部分よりもブランク材45に接触するブラシ2の毛量が少なくなることから、ブランク材45の表面に汚れが残り易かった。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、ブラシロールの回転軸の長手方向の一部に設定した対称軸近傍で、表面に汚れを残すことがなく、洗浄性能、異物等の対象物の除去性能に優れたブラシロール及び洗浄装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、請求項1のブラシロールの発明は、略棒状又は円筒状の回転軸と、該回転軸の外周に螺旋状に巻き付けられたチャンネルブラシとからなり、該チャンネルブラシは、ブラシ毛材が、断面コ字状の長尺な帯状体と、芯線との間に挟み付けられてあると共に、所定のブラシ幅を有して形成されてあり、前記チャンネルブラシを、前記回転軸の長手方向の一部に設定した対称軸近傍で、該チャンネルブラシ先端部近傍の前記ブラシ幅を、前記チャンネルブラシの先端部近傍以外の前記ブラシ幅にたいして広げたことに特徴を有する。したがって、ブラシロールの対称軸近傍のブラシ毛材の毛量は従来のブラシロールと比較して増大することとなることから、被清掃体の対称軸近傍との接触面に汚れを残すことがなく、洗浄性能、異物等の対象物の除去性能に優れたブラシロールである。
【0012】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、チャンネルブラシの先端部近傍は、固定具により挟み付けられてあると共に該固定具が回転軸に固定されてあり、該固定具は、長手方向に交互に複数の爪部が形成されてあり、前記爪部を倒して挟み付けることにより、ブラシ幅を、前記チャンネルブラシの先端部近傍以外の前記ブラシ幅にたいして広げたことに特徴を有する。したがって、ブラシロールの製造工程において、回転軸に固定具を取り付け、該固定具によって、チャンネルブラシの先端部近傍を挟み付け、固定具の爪部を倒して挟み付けるだけでブラシ幅を広げることができ、洗浄性能、異物等の対象物の除去性能を向上させつつ、ブラシロールの製造コストを安価に抑えることができる。
【0013】
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載のブラシロールを備えたことを特徴とする洗浄装置であるので、被清掃体の対称軸近傍との接触面に汚れやブラシマークを残すことがなく、洗浄性能、異物等の対象物の除去性能に優れたブラシロールであり、ブラシロールの製造コストを安価に抑えることができるので、洗浄装置の製造コストも安価に抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜3に記載のブラシロール及び洗浄装置は、ブラシロールの回転軸の長手方向の一部に設定した対称軸近傍で、表面に汚れを残すことがなく、洗浄性能、異物等の対象物の除去性能に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。図1は、本発明に係るブラシロールの平面図、図2は、本発明に使用するチャンネルブラシの斜視図、図3は、本発明に使用する固定具の斜視図。図4は、同固定具をチャンネルブラシに取り付けた状態の斜視図である。
【0016】
図1において、本実施例におけるブラシロール40は、略棒状又は円筒状の回転軸41と、この回転軸41の長手方向の略中央に設定した対称軸43を中心に、回転軸41の外周面に、左右それぞれの端部に向かって、巻き付け時の傾斜角が対称になるように、螺旋状に巻き付けられたチャンネルブラシ42a、42bから構成されている。そして、チャンネルブラシ42a、42bのブラシ幅は、対称軸43の近傍以外は一定の幅となっている。一方、対称軸43の近傍であって、チャンネルブラシ42a、42bの先端部近傍のブラシ幅は、前記した対称軸43の近傍以外のブラシ幅よりも幅広となっている。
【0017】
図2は、回転軸41に螺旋状に巻き付ける前のチャンネルブラシ42a、42bの状態を示す斜視図である。チャンネルブラシ42a、42bは、ブラシ毛材7が、断面コ字状の長尺な帯状体5と、芯線6との間に挟み付けられてあるものである。ブラシ毛材7は、豚や牛などの動物毛或いは、ポリプロピレンなどの樹脂繊維から形成されている。
【0018】
図3は、本発明に使用する固定具50を示す斜視図である。固定具50は、長方形状の平面部51と、平面部51の左右の側部から折り曲げられることによって、平面部51にたいして垂直方向に立設された複数の爪部52とから構成されている。また、平面部51には上述した回転軸41に溶接止めされて固定されるための穴53が3箇所に開けられている。また、爪部52は先端が尖った山型形状であって、平面部51の長手方向の左右において交互に千鳥状となるように立設されている。尚、平面部51の横幅は、上述したチャンネルブラシ42a、42bの帯状体5の横幅に対応している。
【0019】
図4は、固定具50をチャンネルブラシ42a、42bに取り付けた状態を示す斜視図である。この図に示すように、固定具50は、チャンネルブラシ42a、42bの先端部近傍に取り付けられるものであり、平面部51が帯状体5の底部に当接される。さらに爪部52の山型形状の先端が、ブラシ毛材7の根元部を押すように折り曲げられてあり、帯状体5の側部の一部に当接している。前述したように、固定具50は、爪部52が、平面部51の長手方向の左右において交互に千鳥状となるように立設されているので、この爪部52の先端をブラシ毛材7の根元部を押すように折り曲げることによって、ブラシ毛材7は上方から見た場合に蛇行した状態となり、固定具50が設置されていない他の部分の幅と比較して略2倍の幅とすることが可能となるのである。
【0020】
チャンネルブラシ42a、42bの回転軸41への取り付けは、回転軸41の外周部へ、チャンネルブラシ42a、42bの各々の帯状体5を複数の溶接部(図示せず)で溶接して固定する。また、回転軸41に予め設けた複数のネジ穴(図示せず)に、チャンネルブラシ42a、42bの各々を回転軸41に押さえつけるように止め部材(図示せず)を、ネジ(図示せず)でネジ止めして行なうこともできる。
【0021】
以上のように構成された本実施例におけるブラシロール40を、移動する鋼板などのブランク材(図示せず)の表面(被洗浄面)に接触させて、図1中の矢印方向に図示しない駆動手段で回転させながら、同時にブラシロール40あるいは、チャンネルブラシ42a、42bで擦られる部分に洗浄液を吹き付けると、ブランク材上の塵埃などの対象物(図示せず)が、チャンネルブラシ42a、42bで掻き取られると共に、チャンネルブラシ42a、42bが対称軸43を中心に対称の傾斜角で左右のそれぞれの端部に向かって螺旋状に巻き付けられているので、連続的に、ブラシロール40の中心(対称軸43)の真下部から左右の端部に向かって送られ、ブランク材の側部から外方に送り出される。
【0022】
以上のように、本実施形態によれば、対称軸43の近傍であって、チャンネルブラシ42a、42bの先端部近傍のブラシ幅は、対称軸43の近傍以外のブラシ幅よりも幅広となっているので、ブラシロール40の対称軸43近傍のブラシ毛材7の毛量は従来のブラシロールと比較して増大することとなることから、被清掃体の対称軸43近傍との接触面に汚れを残すことがなく、洗浄性能、異物等の対象物の除去性能に優れている。
【0023】
尚、本実施例では、回転軸41の左右それぞれに、チャンネルブラシ42a、42bの2本を設けたが、勿論3本あるいはそれ以上でもよい。
【0024】
また、本実施例では、対称軸43を回転軸41の長手方向の略中央に設定しているので、左右各々のチャンネルブラシ42a、42bで中央から端部に向けて掻き寄せられる対象物の移動距離が等しくなり、洗浄効果にむらが生じることが無い。
【0025】
また、チャンネルブラシ42a、42bのそれぞれを、断面コ字状の帯状体5と芯線6とに挟持されるブラシ毛材7とで構成したので、チャンネルブラシ42a、42bの製造及び、回転軸41への取り付けが容易になり、安価なブラシロール40を提供することができる。
【0026】
図5は、本発明における洗浄装置の斜視図、図6は、同洗浄装置の部分断面図(図5のA−A断面)である。なお、上記実施例におけるブラシロールと同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。また、構成の説明を容易にするために、各部品の軸受け部や、支持部品の図示、説明は省略することとする。
【0027】
本実施形態における洗浄装置20は、プレス加工ラインなどに設置され、プレス機等の加工機器(図示せず)に供給される鋼板などのブランク材を洗浄するものである。洗浄部23は、ブランク材21を上下から挟持するように配置された1対の上ブラシロール27、下ブラシロール28と、上・下ブラシロール27、28のそれぞれを所定の回転数で回転駆動するための第2駆動手段29と、上・下ブラシロール27、28のそれぞれに洗浄液を吹き付けるための複数の洗浄ノズル30と、各洗浄ノズル30に洗浄液を供給する配管31と、上・下ブラシロール27、28でブランク材21から除去された塵埃等の対象物(斜線部分)及び洗浄後の洗浄液を受ける液受け(図示せず)から構成されている。液受けの下端には、対象物と共に汚れた洗浄液を排出するための排出配管が設けられている。尚、本実施形態では、上・下ブラシロール27、28として、上述したブラシロール40を用いている。以上のように構成された本実施例における洗浄装置20の動作、作用は以下の通りである。
【0028】
図示しない駆動手段の運転を開始し、各洗浄ノズル30に配管31を通して洗浄液を供給しながら、ブランク材21の端部が、自動的に連続的に洗浄部23に送られると、上ブラシロール27でブランク材21の表面が、下ブラシロール28でブランク材21の裏面がそれぞれ清掃される。
【0029】
ブランク材21の表面では、上ブラシロール27で擦りとられた塵埃や金属粉などの対象物が、洗浄液と共に上ブラシロール27の長手方向における中央部からそれぞれの端部へ向かって送り出され、液受けに落下していく。また、ブランク材21の裏面では、下ブラシロール28で擦るとられた対象物の一部は、洗浄液と共に、直ちに液受けに落下すると共に、洗浄液の粘着性や表面張力により、ブランク材21の裏面に残った対象物は、下ブラシロール28の螺旋状のチャンネルブラシ42a、42bにより、下ブラシロール28の略中央部からそれぞれの端部へ向かって送り出され、その間に液受けに落下していく。そして、液受けで回収された対象物は、汚れた洗浄液と共に排出配管を通って、図示しない濾過装置や、廃液処理装置に送られていく。
【0030】
以上のように、本実施形態によれば、洗浄性能に優れ、しかもブランク材21の表面に上ブラシロール27、下ブラシロール28のチャンネルブラシ42a、42bの対称軸近傍で、表面に汚れを残すことがない洗浄装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上のように、本発明にかかるブラシロール及び洗浄装置は、洗浄性能、異物等の対象物の除去性能に優れたもので、各種洗浄装置、清掃装置、研磨装置、表面処理装置などに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るブラシロールの平面図。
【図2】本発明に使用するチャンネルブラシの斜視図。
【図3】本発明に使用する固定具の斜視図。
【図4】固定具をチャンネルブラシに取り付けた状態を示す斜視図。
【図5】本発明に係る洗浄装置の斜視図。
【図6】同洗浄装置の部分断面図(図5のA−A断面)。
【図7】従来のブラシロールの平面図。
【図8】同ブラシロールでブランク材を洗浄する様子を示す斜視図。
【符号の説明】
【0033】
1、41 回転軸
2、42a、42b チャンネルブラシ
4、40 ブラシロール
5 帯状体
6 芯線
7 ブラシ毛材
13、43 対称軸
20 洗浄装置
21、45 ブランク材
27 上ブラシロール
28 下ブラシロール
29 第2駆動手段
30、47 洗浄ノズル
31 配管
50 固定具
51 平面部
52 爪部
53 穴
S 開始端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略棒状又は円筒状の回転軸と、該回転軸の外周に螺旋状に巻き付けられたチャンネルブラシとからなり、該チャンネルブラシは、ブラシ毛材が、断面コ字状の長尺な帯状体と、芯線との間に挟み付けられてあると共に、所定のブラシ幅を有して形成されてあり、前記チャンネルブラシを、前記回転軸の長手方向の一部に設定した対称軸近傍で、該チャンネルブラシ先端部近傍の前記ブラシ幅を、前記チャンネルブラシの先端部近傍以外の前記ブラシ幅にたいして広げたことを特徴とするブラシロール。
【請求項2】
チャンネルブラシの先端部近傍は、固定具により挟み付けられてあると共に該固定具が回転軸に固定されてあり、該固定具は、長手方向に交互に複数の爪部が形成されてあり、前記爪部を倒して挟み付けることにより、ブラシ幅を、前記チャンネルブラシの先端部近傍以外の前記ブラシ幅にたいして広げたことを特徴とする請求項1に記載のブラシロール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブラシロールを備えたことを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−5504(P2010−5504A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165278(P2008−165278)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】