説明

ブラシロール及び洗浄装置

【課題】被洗浄面への異物の再付着が防止され、効率よく確実に異物が被洗浄面から除去されるブラシロール、及びそのブラシロールを搭載した洗浄装置を提供する。
【解決手段】ブラシロール1はブラシ部2及び回転軸3を有し、ブラシ部2は長尺状のブラシ毛材8を有すると共に、回転軸3の外周に螺旋状に巻き付けられ、回転軸3は略円筒状の内筒体16が中空状の外筒体11に挿入された二層構造をなし、内筒体16を構成する軸体部17の外周の特定箇所に形成された内孔部24は、外筒体11が回転することにより、外筒体11を構成する本体部12の外周に開設された外孔部23と順次、重なり合うと共に、圧縮流体が噴射するよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、ガラス板 あるいはフィルム状樹脂組成物等からなる被洗浄面の洗浄、清掃、研磨、表面処理等を行うブラシロール、及びそのブラシロールを搭載した洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のブラシロール、及びそのブラシロールを搭載した洗浄装置として、入口側に洗浄ノズルを有し、ロール本体の外周面に所定幅のブラシを、ロール本体の全長の中央に設定した対称軸に対して対称に所定ピッチで且つ、前記対称軸からロール本体の端へ向かって対象物を送ることができる螺旋方向に巻き付けたことを特徴とする鋼板洗浄機のブラシロール(特許文献1)がある。
【0003】
また、シート材を1枚づつ搬送する経路中に設ける洗浄装置であって、前記シート材の両面に接触し回転する一対のブラシロールと、前記ブラシロールの共通の接線より下流に配置された、前記シート材表面に上流方向へ向けて洗浄オイルを噴射するノズルとを、シート材の流れ方向に独立させて配置するとともに、前記ブラシロールの下流かつ前記ノズルの上流に、前記シート材の搬送方向へと延びるガイド部と、前記シート材の流れ方向に交差する方向へと延びる遮蔽部とを有する遮蔽板を設けたことを特徴とするシート材の洗浄装置(特許文献2)が考案されている。
【特許文献1】特開2004−137573号公報
【特許文献2】特許第3607993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の鋼板洗浄機のブラシロールは、ブラシを、ロール本体の全長の中央に設定した対称軸にたいして対称に所定ピッチで且つ、対称軸からロール本体の端へ向かって異物等の対象物を送ることができるよう螺旋方向に巻き付けられているので、対称軸からロール本体の両端に向けて発生する分力により、鋼板からなるブランク材の表面に付着している対象物を、ブランク材の両端部から洗い流し、除去することができる。
【0005】
しかしながら、ブランク材の端部から洗い流されず、ブラシの線材に捕捉された異物等の対象物は、線材の先端に引っ掛かるか、線材の間に溜まり、ブランク材の先端部が線材に接触する際の衝撃力により、線材から脱落し、ブランク材に再付着する。その為、ブランク材を均一に洗浄するのが難しいという課題を有していた。
【0006】
ブランク材に異物等の対象物が付着したまま金型でプレスされると、成形されたパネル部品に凹凸、すなわちプレス痕が発生し、パネル部品の品質の低下につながる。
【0007】
特許文献2のシート材の洗浄装置は、シート材の表面に、シート材の上流方向へ向けて洗浄オイルを噴射するもので、シート材の表面に付着した異物は、ブラシロールの掻き取り力と、洗浄オイルの噴射時の圧力の双方の作用により、シート材の表面から除去される。
【0008】
しかしながら、シート材の両端部から除去されず、ブラシロールのブラシ毛材に捕捉された異物は、ブラシ毛材の先端に引っ掛かるか、ブラシ毛材の間に溜まり、シート材の先端部がブラシ毛材に接触する際の衝撃力により、ブラシ毛材から脱落し、シート材に再付着する。そして、シート材に異物が付着したまま金型でプレスされると、成形されたパネル部品に凹凸、すなわちプレス痕が発生し、パネル部品の品質の低下につながるという課題を有していた。
【0009】
なお、洗浄オイルをシート材の表面ではなく、ブラシロールに向けて噴射し、噴射時の圧力によりブラシ毛材に捕捉された異物を除去することも考えられるが、その場合、ブラシ毛材に捕捉された異物は、ブラシロールの外部に吹き飛ばされるのではなく、ブラシ毛材の間の内部に押し込まれる。従って、異物はブラシ毛材の間に溜まり、シート材の先端部がブラシ毛材に接触する際の衝撃力により、ブラシ毛材から脱落し、やはりシート材に再付着することになり、シート材への異物の再付着を防止することはできない。
【0010】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、被洗浄面への異物の再付着が防止され、効率よく確実に異物が被洗浄面から除去されるブラシロール、及びそのブラシロールを搭載し、被洗浄面の品質の向上を図る洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、請求項1のブラシロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状樹脂組成物等からなる被洗浄面の洗浄、清掃、研磨、表面処理等を行うブラシロールにおいて、前記ブラシロールは、ブラシ部及び回転軸を有し、前記ブラシ部は長尺状のブラシ毛材を有すると共に、前記回転軸の外周に螺旋状に巻き付けられ、前記回転軸は略円筒状の内筒体が中空状の外筒体に挿入された二層構造をなし、前記外筒体は開口部が形成された本体部と、前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは貫通部が形成され、前記貫通部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部の外周には前記開口部に連通する外孔部が開設されてあると共に、前記ブラシ部が形成され、前記内筒体は穴部が形成された軸体部と、前記軸体部の両端に連接される軸受け部A及び軸受け部Bを有し、前記軸受け部A及び/又は前記軸受け部Bは中空部が形成され、前記中空部は前記穴部と連通されてあり、前記軸体部の外周の特定箇所には前記穴部に連通する内孔部が開設されてあり、前記内孔部は前記外筒体が回転することにより、前記外孔部と順次、重なり合うと共に、圧縮流体が噴射するよう形成されてあるもので、コンプレッサー等により圧縮流体を軸受け部A及び/又は軸受け部Bに形成された中空部に向けて噴射すると、圧縮流体は中空部を通り、穴部に流れ込む。そして、外筒体が回転することにより、内孔部と外孔部が重なり合うと、圧縮流体は穴部から内孔部、外孔部を介してブラシ部に流れる。従って、圧縮流体がブラシ部に流れ込む際に発生する圧力により、ブラシ毛材に捕捉された異物は、ブラシロールの外部に吹き飛ばされる。その為、被洗浄面への異物の再付着が防止されるので、ブラシロールは効率よく確実に被洗浄面を均一に洗浄、清掃、研磨、表面処理する。
【0012】
なお、上記の如くの圧縮流体をブラシロールに噴射する作業は、ブラシロールの洗浄作業時、非洗浄作業時のいずれでもよいが、ピース状の被洗浄面においては、被洗浄面の先端部がブラシ毛材に繰り返し当接し、ブラシ毛材に捕捉された異物は被洗浄面の先端部による繰り返しの衝撃で脱落することから、ブラシロールの洗浄作業時が望ましい。連続した帯板状の被洗浄面においては、ピース状の被洗浄面と異なり、被洗浄面の先端部がブラシ毛材に繰り返し当接することがないので、ブラシロールの非洗浄作業時でも構わない。ブラシロールの非洗浄作業時においても、ブラシロールは回転させておく必要がある。ブラシロールを回転させておかないと、内孔部と外孔部が順次、重なり合うことがないので、ブラシ毛材に捕捉された異物を、ブラシ部の周方向に亘って、万遍なくブラシロールの外部に吹き飛ばすことができないからである。
【0013】
回転軸の形態は、本発明の如く、外筒体と内筒体による二層構造以外にも、外筒体のみにより回転軸を構成することも考えられるが、外筒体を構成する本体部の外周には、圧縮流体をブラシ部の全周に送出する為に、全周に亘り外孔部が形成されている。しかし、前記の如くの構成では、開口部に流入した圧縮流体の圧力は低下し、圧縮流体は圧力損失を被り、ブラシ毛材に捕捉された異物は、圧縮流体の圧力により、ブラシロールの外部に吹き飛ばすことは極めて難しい。
【0014】
本発明のブラシロールの如く、外筒体と内筒体の二層構造で、内筒体の軸体部の特定箇所にのみ内孔部が開設されてあれば、外筒体の本体部の全周に亘って外孔部が開設されてあっても、内筒体は静止され、外筒体が回転することにより、内孔部と外孔部が重なり合った箇所のみから圧縮流体がブラシ部に流れ込むので、内筒体の穴部に流入した圧縮流体の圧力は低下することなく、圧力損失が抑えられる。その為、ブラシロールは、ブラシ毛材に捕捉された異物を、ブラシロールの外部に吹き飛ばすことが可能な圧縮流体の圧力を確保することができる。
【0015】
また、外筒体は回転することから、本体部の外周に形成された外孔部は、順次、内孔部と重なり合うので、ブラシ部の全周に亘りブラシ毛材に付着している異物を、圧縮流体の圧力により、順次、ブラシロールの外部に吹き飛ばし、ブラシ毛材から除去することができる。
【0016】
請求項2のブラシロールは、特に、請求項1のブラシロールにおいて、本体部の外周に流体拡散溝部が形成され、前記流体拡散溝部に外孔部が形成されてあるもので、圧縮流体は、中空部、穴部、内孔部、外孔部の順に流入し、外孔部から流体拡散溝部を介してブラシ部に流れ込む。その為、圧縮流体は、流体拡散溝部が形成されていない場合に比べて、より均一にブラシ部に流れ込むことができるので、ブラシ毛材に捕捉された異物を、迅速、且つ確実にブラシロールの外部に吹き飛ばし、ブラシ毛材から除去することができる。
【0017】
請求項3のブラシロールは、特に、請求項1から2のブラシロールにおいて、内孔部を囲むシール部材が軸体部の外周に取り付けられ、前記シール部材は少なくとも圧縮流体の噴射時に、本体部の内周に摺接するもので、シール部材は、軸体部の外周と、本体部の内周の間に生じる空間部を、少なくとも圧縮流体の噴射時には埋めるよう形成されている。従って、圧縮流体は内孔部から外孔部に流出する際、前記空間部に流れ込むことが防止されるので、圧力損失を一層抑えることができ、より強い圧力で的確にブラシ毛材に捕捉された異物を、ブラシロールの外部に吹き飛ばすことができる。その為、ブラシ毛材に捕捉された異物の除去性能が大幅に向上する。
【0018】
請求項4のブラシロールは、特に、請求項1から3のブラシロールにおいて、内孔部は軸体部の外周に、内筒体の軸心方向にたいして傾斜して形成されてあるもので、圧縮流体は、外筒体の回転により連続的に外孔部からブラシ部に噴出することができる。その為、ブラシ毛材に捕捉された異物を、より迅速にブラシロールの外部に吹き飛ばすことができるので、異物の除去性能が飛躍的に向上する。
【0019】
請求項5のブラシロールは、特に、請求項1から4のブラシロールにおいて、ブラシ部は断面略U字状の帯状体と、前記帯状体で芯線と共に挟持されるブラシ毛材とで構成されたチャンネルブラシからなるブラシ体にて形成されてあると共に、回転軸の外周に固定手段にて固定されてあるもので、ブラシ体の製造、ブラシ体の回転軸への取り付けが容易となる。その為、ブラシ部の回転軸の外周にたいする形成が容易となるので、ブラシロールを安価に提供することができる。
【0020】
請求項6の洗浄装置は、請求項1から5のいずれか1項に記載されたブラシロールと、前記ブラシロールを回転駆動する駆動手段と、前記ブラシロール及び/又は被洗浄面に洗浄液等の液体を吹き付ける複数のノズルと、軸受け部Aあるいは軸受け部Bの少なくとも一方に配管を介して連通されるコンプレッサーを有するもので、被洗浄面に異物を再付着させることがないブラシロールが搭載されてあることから、優れた洗浄性能を発揮すると共に、被洗浄面の品質の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
請求項1のブラシロールは、圧縮流体がブラシ毛材に捕捉された異物を、ブラシロールの外部に吹き飛ばすので、被洗浄面への異物の再付着が防止され、被洗浄面を均一に洗浄、清掃、研磨、表面処理することができる。
【0022】
請求項2のブラシロールは、圧縮流体が流体拡散溝部を介してブラシ部に流れ込むので、より均一に圧縮流体がブラシ部に流入することから、ブラシ毛材に捕捉された異物を、迅速、且つ確実にブラシロールの外部に吹き飛ばし、ブラシ毛材から除去することができる。
【0023】
請求項3のブラシロールは、軸体部の外周と本体部の内周に生じる空間部をシール部材が埋めることから、圧縮流体の圧力損失が抑えられ、より強い圧力で的確にブラシ毛材に捕捉された異物を、ブラシロールの外部に吹き飛ばすことができるので、異物の除去性能が大幅に向上する。
【0024】
請求項4のブラシロールは、圧縮流体を連続的に外孔部から噴出することができ、ブラシ毛材に捕捉された異物を、より迅速にブラシロールの外部に吹き飛ばすことができるので、異物の除去性能が飛躍的に向上する。
【0025】
請求項5のブラシロールは、ブラシ部の回転軸の外周にたいする形成が容易となるので、ブラシロールを安価に提供することができる。
【0026】
請求項6の洗浄装置は、被洗浄面に異物を再付着させることがないブラシロールが搭載されているので、優れた洗浄性能を発揮すると共に、被洗浄面の品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の第1の実施例におけるブラシロールの正面図、図1(b)は、ブラシロールの左側面図、図2は、本発明の第1の実施例におけるブラシロールの断面図、図3は、図1(a)のA−A断面図、図4(a)は、本体部を前面側から見た斜視図、図4(b)は、継ぎ手部Aあるいは継ぎ手部Bを前面側から見た斜視図、図5は、内筒体の正面図、図6(a)は、チャンネルブラシの製造状態を前面側から見た斜視図、図6(b)は、ブラシ体を前面側から見た斜視図である。
【0029】
図1(a)、及び図1(b)において、ブラシロール1は、鉄、アルミニウム等の金属材料からなる回転軸3の外周に、3本のブラシ体4a、4b、4cからなるブラシ部2が装着されて形成されている。ブラシ部2は、3本のブラシ体4a、4b、4cが、回転軸3の外周に並列して螺旋状に巻き回されている。回転軸3は、軸体部17の両端に連接される軸受け部A18と軸受け部B19からなる内筒体16が、本体部12の両端にボルト15により連接される継ぎ手部A13と継ぎ手部B14を有する中空状の外筒体11に挿入された二層構造をなす。
【0030】
図1(b)、図2、及び図6(b)において、ブラシ体4a、4b、4cは、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる長尺状の断面略U字状の帯状体6と、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる概丸形断面を有する長尺状の芯線7との間に、長尺状のブラシ毛材8が挟持されたチャンネルブラシ5にて形成されている。長尺状のチャンネルブラシ5からなるブラシ体4a、4b、4cは、回転軸3を構成する外筒体11の本体部12の外周に装着される際、図1(b)の如く、本体部12の一方の端部、すなわち継ぎ手部A13の近傍の外周等分3箇所に、3本のブラシ体4a、4b、4cの始点S、S、Sが溶接による固定部10を介して固定され、螺旋状に巻き回されると共に、本体部12の他方の端部、すなわち継ぎ手部B14の近傍の外周等分3箇所に、3本のブラシ体4a、4b、4cの終点(図示せず)が溶接による固定部(図示せず)を介して固定されて、ブラシ部2が形成される。
【0031】
また、図2に示すように、隣り合うブラシ体4a、4b、4cの間には、一定間隔の隙間Gが設けられ、3本のブラシ体4a、4b、4cは、回転軸3の外周に巻き回されている。
【0032】
なお、本実施例では、回転軸3の外周に、3本のブラシ体4a、4b、4cを設けてブラシ部2を構成したが、ブラシ体4a、4b、4cの数は4本、あるいはそれ以上でもよいし、1本、あるいは2本でもよい。また、ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3の外周にたいする固定手段は、溶接以外にも、係止具を用いて、ネジ止め、リベット止め等により固定部10を形成してもよい。また、ブラシロール1は、ブラシ体4a、4b、4cが、回転軸3の外周の任意の位置に設定された対称軸を中心に、回転軸3の左右の端部に向け並列、且つ対称に螺旋状に巻き回されてブラシ部2が形成された形態であっても構わない。
【0033】
次に、回転軸3の構成について詳説する。
【0034】
図2、図4(a)、及び図4(b)において、外筒体11は、開口部26を有する本体部12の外周等分6箇所に、外筒体11の軸心方向に略平行となるよう流体拡散溝部29が形成されると共に、流体拡散溝部29に円形の外孔部23が8箇所開設されている。外孔部23は、開口部26に連通している。本体部12の両端には、貫通部27を有する継ぎ手部A13、及び継ぎ手部B14が、ボルト15により連接される。開口部26と貫通部27は連通している。ボルト15は、本体部12の両側の端面に開設された6箇所のボルト孔部A30と、継ぎ手部A13、及び継ぎ手部B14に開設された6箇所のボルト孔部B31に挿入される。また、継ぎ手部A13と継ぎ手部B14の内周には、ベアリング20が嵌合挿入される。前記の如くの構成により、中空状の外筒体11が形成される。
【0035】
図2、及び図5において、内筒体16は、穴部22を有する軸体部17の外周に、8箇所の内孔部24が開設されると共に、内孔部24は内筒体16の軸心方向に略平行となるよう配列されている。内孔部24は、穴部22に連通している。また、内孔部24を囲むように、シール部材25がネジ32により軸体部17の外周に取り付けられている。シール部材25は、銅、真鍮等の軟質の金属、樹脂、エラストマー、ゴム等の材質からなる。軸体部17の一方の端部には、中空部9を有すると共に、ネジ部21が形成された軸受け部A18が連接され、軸体部17の他方の端部には、中実状の軸受け部B19が連接される。穴部22と中空部9は連通している。軸受け部A18、及び軸受け部B19は、軸体部17の両端に圧入されると共に、溶接による溶接固定部36を介して連接され、内筒体16が形成される。なお、ネジ部21には、図9に示すように、コンプレッサー77から配管78を介して接続される際のエアー継ぎ手79が挿入固定される。
【0036】
上記の如く構成された内筒体16を、中空状の外筒体11に挿入し、二層構造の回転軸3が形成される。内筒体16を外筒体11に挿入する際、軸受け部A18と軸受け部B19の外周が、継ぎ手部A13と継ぎ手部B14の内周に嵌合挿入されたベアリング20に接するように配置する。前記の如く形成された回転軸3は、駆動手段を継ぎ手部A13及び/又は継ぎ手部B14の外周に配置することにより、回転軸3が回転する際、外筒体11のみが回転し、ベアリング20で軸受け部A18と軸受け部B19が受けられている内筒体16は回転せず、静止させておくことができる。従って、図3に示すように、ブラシロール1が矢印の方向に回転する場合、本体部12は回転するが、軸体部17は静止している。その為、内孔部24、及びシール部材25の位置は不変で、本体部12の回転に伴い、流体拡散溝部29に開設された外孔部23は、移動する。本体部12の周方向に隣り合う外孔部23は、本体部12の回転に伴い、順次、内孔部24と重なり合い、外孔部23と内孔部24は連通すると共に、必然的に穴部22とも連通することになる。また、シール部材25は、本体部12の回転に伴い、本体部12の内周に摺接し、本体部12の内周と軸体部17の外周に生じる空間部28を埋めるよう配置されている。
【0037】
次に、ブラシロール1の製作方法について説明する。
【0038】
最初に、図4(a)の如く、開口部26を有すると共に、外周に流体拡散溝部29が形成され、流体拡散溝部29に円形の外孔部23が開設された略円筒状の本体部12を用意する。本体部12の両端面には、ボルト孔部A30を開設する。外孔部23の直径、流体拡散溝部29の幅、深さについては、本体部12の外径や全長により異なり、特に限定されるものではないが、例えば、外孔部23の直径は1〜8mm程度、流体拡散溝部29の幅は2〜30mm程度、深さは0.1〜5mm程度に設定されるのが望ましく、流体拡散溝部29の幅は、外孔部23の直径よりも大きく設定される必要がある。外孔部23の直径が1mm未満の場合、径が小さすぎて効率よく圧縮流体をブラシ部2に流出することができず、8mmを超える場合、径が大きすぎて一孔あたりの圧縮流体の噴出する力が弱くなる。また、流体拡散溝部29の幅が2mm未満の場合、幅が狭すぎて効率よく圧縮流体が流れることができず、30mmを超える場合、広すぎて製作の際に流体拡散溝部29を形成するのが難しくなる。流体拡散溝部29の深さが0.1mm未満の場合、浅すぎて効率よく圧縮流体が流体拡散溝部29に沿って流れることができず、5mmを超える場合、深すぎて流体拡散溝部29を形成するのに手間取る。また、外孔部23の形状は、円形以外にも、三角形、四角形、長孔等であっても構わない。
【0039】
次に、図5の如く、外周に円形の内孔部24が開設されると共に、内孔部24を囲むようにシール部材25がネジ32で固定された軸体部17の両端に、軸受け部A18、及び軸受け部B19が圧入され、溶接による溶接固定部36を介して連接された内筒体16を製作する。内孔部24の直径は、特に限定されるものではないが、外孔部23と同様、1〜8mm程度に設定される。また、内孔部24の形状についても、円形以外に、三角形、四角形、長孔等であっても構わない。さらに、外孔部23と内孔部24は、外筒体11の回転に伴い、順次、重なり合うのであれば、同一の大きさ、形状であってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
上記の如く、本体部12と内筒体16が用意されたなら、本体部12の開口部26に、内筒体16を挿入する。その際、開口部26に、軸体部17が位置するよう配置する。次に、図4(b)の如く、貫通部27、及びボルト孔部B31が形成されると共に、内周にベアリング20が嵌合挿入された継ぎ手部A13と継ぎ手部B14を用意する。次に、継ぎ手部A13の有する貫通部27を、軸受け部A18に挿入すると共に、ベアリング20で軸受け部A18を受け、連通したボルト孔部B31とボルト孔部A30に、ボルト15を挿入し、本体部12と継ぎ手部A13を連接する。同様に、継ぎ手部B14の有する貫通部27を、軸受け部B19に挿入すると共に、ベアリング20で軸受け部B19を受け、連通したボルト孔部B31とボルト孔部A30に、ボルト15を挿入し、本体部12と継ぎ手部B14を連接し、外筒体11が構成されると共に、回転軸3が形成される。
【0041】
次に、図6(a)の如く、概丸形断面を有する長尺状のブラシ毛材8を複数本、用意する。ブラシ毛材8は、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ビニリデン、ポリウレタン等の合成繊維、アセテート、プロミックス等の半合成繊維、レーヨン、キュプラ、リヨセル等の再生繊維、綿、羊毛、絹等の天然繊維、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線、真鍮線、燐青銅線等の金属繊維のいずれかからなり、混毛されてあってもよい。また、合成繊維に酸化アルミ、炭化ケイ素、ダイアモンド等の無機物を付着させた砥粒含有繊維も採用される。ブラシ毛材8の断面形状は、特に限定されるものではなく、概丸形以外にも、例えば三角形、四角形等の多角形、星形、卍形、十字形、M形、N形等の異形断面形状であっても構わない。また、中実状、中空状のいずれであってもよい。さらに、モノフィラメント、マルチフィラメントのいずれであっても何ら支障はない。ブラシ毛材8の材質、線径、形状、及び毛丈等については、ブラシロール1の使用される環境、コスト等を勘案して、適宜、決定されるものである。
【0042】
上記の如くのブラシ毛材8が複数本、用意されたならば、ブラシ毛材8の長手方向の略中央部が、帯状体6の上部に重なるよう基台33に設置する。次いで、縦ロール34を使用して、芯線7にてブラシ毛材8を挟み付けると共に、芯線7を断面略U字状の帯状体6の内部に押し込む。次に、帯状体6の両側に設置された横ロール35、35を使用して、帯状体6を両側から、加締める。その結果、図6(b)の如く、長尺状のブラシ毛材8の略中央部が芯線7、及び帯状体6に挟み付けられて折り合わされた長尺状のチャンネルブラシ5からなるブラシ体4a、4b、4cが形成される。
【0043】
そして、図1(b)の如く、本体部12の一方の端部、すなわち継ぎ手部A13の近傍において、1本のブラシ体4aの一方の端部、すなわち始点Sが溶接による固定部10を介して固定され、回転軸3を構成する本体部12の外周に一定のピッチをもって、螺旋状に巻き回されて装着される。そして、ブラシ体4aの他方の端部、すなわち終点(図示せず)が、本体部12の他方の端部、すなわち継ぎ手部B14の近傍に、溶接による固定部(図示せず)を介して固定される。同様に、他の2本のブラシ体4b、4cが本体部12の外周に、ブラシ体4aの間に、一定間隔の隙間Gを有して螺旋状に装着されると共に、他の2本のブラシ体4b、4cもブラシ体4aと略同一のピッチをもって本体部12の外周に巻き回され、本体部12の外周に始点S、Sと、終点(図示せず)が溶接による固定部10を介して固定されることにより、ブラシ部2が回転軸3の外周に形成されたブラシロール1が、図1(a)、及び図2の如く、製造される。
【0044】
なお、隣り合うブラシ体4a、4b、4cの間に形成される隙間Gの幅は、1〜5mm程度に設定される。1mm未満の場合、幅が狭すぎて、効率よく圧縮流体をブラシ部2に流出させることができず、5mmを超える場合、幅が広すぎて、ブラシ毛材8が被洗浄面に当接しないブラシマークが発生し、被洗浄面を均一に洗浄することが極めて難しくなる。
【0045】
上記の如く構成されたブラシロール1の動作、作用は下記の通りである。
【0046】
コンプレッサー等により圧縮流体を軸受け部A18に形成された中空部9に向けて噴射すると、図2の破線矢印の如く、圧縮流体は中空部9を通り、穴部22に流れ込む。そして、図3の如く、矢印の方向に外筒体11が回転することにより、内孔部24と外孔部23が重なり合うと、圧縮流体は穴部22から内孔部24、外孔部23を介してブラシ部2に流れる。従って、図2の如く、圧縮流体が隙間Gからブラシ部2に流れ込む際に発生する圧力により、ブラシ毛材8に捕捉された異物は、ブラシロール1の外部に吹き飛ばされる。その為、被洗浄面への異物の再付着が防止されるので、ブラシロール1は効率よく確実に被洗浄面を均一に洗浄、清掃、研磨、表面処理することができる。
【0047】
ブラシロール1は、外筒体11と内筒体16の二層構造で、内筒体16は静止され、外筒体11が回転することにより、図3の如く、内孔部24と外孔部23が重なり合った箇所のみから圧縮流体がブラシ部2に流れ込むので、内筒体16の穴部22に流入した圧縮流体の圧力は低下することなく、圧力損失が抑えられる。その為、ブラシロール1は、ブラシ毛材8に捕捉された異物を、ブラシロール1の外部に吹き飛ばすことが可能な圧縮流体の圧力を確保することができる。
【0048】
ブラシロール1は、外筒体11が回転し、内筒体16は静止していることから、本体部12の外周に形成された外孔部23は、順次、内孔部24と重なり合うので、ブラシ部2の全周に亘りブラシ毛材8に付着している異物を、圧縮流体の圧力により、順次、ブラシロール1の外部に吹き飛ばし、ブラシ毛材8から除去することができる。
【0049】
ブラシロール1は、流体拡散溝部29に外孔部23が形成されているので、圧縮流体は、中空部9、穴部22、内孔部24、外孔部23の順に流入し、外孔部23から流体拡散溝部29、隣り合うブラシ体4a、4b、4cの間に形成された隙間Gを介してブラシ部2に流れ込む。その為、圧縮流体は、流体拡散溝部29が形成されていない場合に比べて、より均一にブラシ部2に流れ込むことができるので、ブラシ毛材8に捕捉された異物を、迅速、且つ確実にブラシロール1の外部に吹き飛ばし、ブラシ毛材8から除去することができる。
【0050】
ブラシロール1は、シール部材25が軸体部17の外周と、本体部12の内周の間に生じる空間部28を、埋めるよう形成されている。従って、圧縮流体は内孔部24から外孔部23に流出する際、空間部28に流れ込むことが防止されるので、圧力損失を一層抑えることができ、より強い圧力で的確にブラシ毛材8に捕捉された異物を、ブラシロール1の外部に吹き飛ばすことができる。その為、ブラシ毛材8に捕捉された異物の除去性能が大幅に向上する。
【0051】
ブラシロール1は、ブラシ部2が断面略U字状の帯状体6と、帯状体6で芯線7と共に挟持されるブラシ毛材8とで構成されたチャンネルブラシ5からなるブラシ体4a、4b、4cにて形成されていると共に、回転軸3の外周に溶接による固定部10を介して固定されているので、ブラシ体4a、4b、4cの製造、ブラシ体4a、4b、4cの回転軸3への取り付けが容易となる。その為、ブラシ部2の回転軸3の外周にたいする形成が容易となるので、ブラシロール1を安価に提供することができる。
【0052】
(実施例2)
図7は、本発明の第2の実施例におけるブラシロールの断面図、図8は、内筒体の正面図である。なお、上記第1の実施例におけるブラシロールと同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0053】
図7において、ブラシロール41は、鉄、アルミニウム等の金属材料からなる回転軸43の外周に、3本のブラシ体44a、44b、44cからなるブラシ部42が装着されて形成されている。ブラシ部42は、3本のブラシ体44a、44b、44cが、回転軸43の外周に並列して螺旋状に巻き回されている。回転軸43は、軸体部47の両端に連接される軸受け部A58と軸受け部B59からなる内筒体56が、本体部52の両端にボルト55により連接される継ぎ手部A53と継ぎ手部B54を有する中空状の外筒体51に挿入された二層構造をなす。
【0054】
ブラシ体44a、44b、44cは、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる長尺状の断面略U字状の帯状体46と、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属材料からなる概丸形断面を有する長尺状の芯線47との間に、長尺状のブラシ毛材48が挟持されたチャンネルブラシ45にて形成されている。
【0055】
外筒体51は、開口部56を有する本体部52の外周等分6箇所に、外筒体51の軸心方向に略平行となるよう流体拡散溝部69が形成されると共に、流体拡散溝部69に円形の外孔部63が8箇所開設されている。外孔部63は、開口部56に連通している。本体部52の両端には、貫通部67を有する継ぎ手部A53、及び継ぎ手部B54が、ボルト55により連接される。開口部56と貫通部67は連通している。また、継ぎ手部A53と継ぎ手部B54の内周には、ベアリング60が嵌合挿入され、それぞれ内筒体56を構成する軸受け部A58と軸受け部B59を受けるよう配置されている。
【0056】
図7、及び図8において、内筒体56は、穴部62を有する軸体部57の外周に、内孔部64が開設されると共に、内孔部64は内筒体56の軸心方向に傾斜するよう螺旋状に配列されている。内孔部64は、穴部62に連通している。また、内孔部64を囲むように、シール部材65がネジ72により軸体部57の外周に取り付けられている。軸体部57の両端部には、中空部49を有すると共に、ネジ部61が形成された軸受け部A58、及び軸受け部B59が連接され、穴部62と中空部49は連通している。軸受け部A58、及び軸受け部B59は、軸体部57の両端に圧入されると共に、溶接による溶接固定部76を介して連接されている。また、シール部材65は、本体部52の回転に伴い、本体部52の内周に摺接し、本体部52の内周と軸体部57の外周に生じる空間部68を埋めるよう配置されている。
【0057】
上記の如く構成されたブラシロール41の動作、作用は下記の通りである。
【0058】
ブラシロール41は、内孔部64が軸体部57の外周に、内筒体56の軸心方向にたいして傾斜し、螺旋状に形成されているので、圧縮流体は、外筒体51の回転により連続的に外孔部63からブラシ部42に噴出することができる。その為、ブラシ毛材48に捕捉された異物を、より迅速にブラシロール41の外部に吹き飛ばすことができるので、異物の除去性能が飛躍的に向上する。
【0059】
ブラシロール1は、内筒体56を構成する軸受け部A58と軸受け部B59の双方が有する中空部49から圧縮流体を、穴部62に向けて噴射することができるので、一層高い圧縮流体の圧力を確保することができる。
【0060】
(実施例3)
図9は、本発明のブラシロールが搭載された洗浄装置の斜視図である。なお、構成の説明を容易にする為に、各部品の軸受けや、支持部品の図示、説明は省略することとする。
【0061】
図9において、特に図示しないが、箱型の洗浄装置80は、自動車の鋼板87のプレス加工ライン等に設置され、プレス機等の加工機器(図示せず)に供給される鋼板87等のピース状のブランク材を洗浄するもので、平板状の鋼板87をブラシロール81a、81bに送り込む図示しない上下一対の送りロールと、前記送りロールから送り出された鋼板87の両面を洗浄する上下一対にて設置されたブラシロール81a、81bと、ブラシロール81a、81bを回転駆動する駆動手段84、84と、ブラシロール81a、81b及び/又は鋼板87に洗浄液等の液体を吹き付ける複数のノズル85を有する洗浄管86、86から構成されている。また、ブラシロール81a、81bを構成する回転軸83の一方の端部には、エアー継ぎ手79が接続され、コンプレッサー77、及び配管78を介して、ブラシロール81a、81bに圧縮流体が噴射されるようになっている。
【0062】
ブラシロール81a、81bは、回転軸83の外周にブラシ部82が形成されてあり、上記第1の実施例におけるブラシロール1と同一である。上部に位置するブラシロール81aは鋼板87の表面を洗浄し、下部に位置するブラシロール81bは鋼板87の裏面を洗浄する。なお、上記第2の実施例に示したブラシロール41のように、軸体部A58、及び軸体部B59の両方から圧縮流体が噴射できる形態においては、回転軸83の両端部にエアー継ぎ手79を配し、配管78を連接すればよい。
【0063】
ブラシロール81a、81bは、駆動手段84により、実線矢印の方向に一定の回転速度で回転している。駆動手段84は、継ぎ手部B14の外周に配され、外筒体11が回転し、内筒体16は静止している。送りロール(図示せず)によりブラシロール81a、81bに送り込まれた鋼板87は、上部のブラシロール81aと下部のブラシロール81bの間を通過し、白抜き矢印の方向に送り出されると共に、ブラシロール81a、81bの有するブラシ部82が鋼板87の両面に当接し、鋼板87の素地88に付着、堆積している異物89を除去する。その際、ブラシロール81a、81bの上流側に設置された洗浄管86からノズル85に洗浄液が送り込まれ、ノズル85からブラシロール81a、81b及び/又は鋼板87にたいして洗浄液が噴霧され、洗浄液により異物89が鋼板87から浮き上がりやすくする。
【0064】
また、ブラシロール81a、81bには、コンプレッサー77から配管78を介して圧縮流体が噴射され、ブラシ部82に鋼板87から付着した異物89がブラシロール81a、81bの外部に吹き飛ばされている。なお、ブラシ部82に付着した異物89は、ブラシロール81a、81bの上流側に吹き飛ばされるよう設定されている。
【0065】
上記の如く構成された洗浄装置80の動作、作用は下記の通りである。
【0066】
図示しない送りロールにより鋼板87がブラシロール81a、81bに送り込まれると、洗浄管86を通して各洗浄ノズル85に洗浄液が供給されながら、ブラシロール81a、81b及び/又は鋼板87にたいして洗浄液が噴霧され、鋼板87は回転している上部のブラシロール81aと、下部のブラシロール81bとの間を通過すると共に、上部のブラシロール81aで鋼板87の表面が、下部のブラシロール81bで鋼板87の裏面がそれぞれ洗浄される。
【0067】
鋼板87の表面では、上部のブラシロール81aで擦り取られた塵埃や鉄粉、樹脂等の異物89が、洗浄液と共に、回転軸83の端部に向かって移動し、洗浄装置80の内部に落下していく。また、鋼板87の裏面では、下部のブラシロール81bで擦り取られた異物89の一部は、洗浄液と共に、直ちに洗浄装置80の内部に落下していく。洗浄液の粘着性や表面張力により、ブラシ部82に捕捉された異物89は、ブラシロール81a、81bから噴射される圧縮流体により、ブラシロール81a、81bの上流側に吹き飛ばされ、洗浄装置80の内部に落下していく。
【0068】
洗浄装置80の内部に落下し、回収された異物89は、汚れた洗浄液と共に排出配管(図示せず)を通って、図示しない濾過装置や、廃液処理装置に送られていき、フィルター等により捕捉される。洗浄液は濾過されて、再び洗浄管86へ送り込まれる。
【0069】
以上のように、本実施例によれば、鋼板87の両面に異物89が再付着しない洗浄性能に優れた洗浄装置80を提供することができる。
【0070】
また、鋼板87は、洗浄後、金型等によりプレスされ、自動車の車体を構成するパネル部品に成形されるが、図9の如く、ブラシロール81a、81bの下流側において、洗浄後の鋼板87は素地88が露出し、異物89が除去され、残っていないので、金型等によりプレスされても、プレス痕が発生することがない。その為、洗浄装置80は、鋼板87から成形されるパネル部品の品質の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明にかかるブラシロール及び洗浄装置は、異物の被洗浄面への再付着がない優れた洗浄性能を有するもので、各種洗浄装置、清掃装置、研磨装置、表面処理装置などに幅広く好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】(a)本発明の第1の実施例におけるブラシロールの正面図、(b)ブラシロールの左側面図
【図2】本発明の第1の実施例におけるブラシロールの断面図
【図3】図1(a)のA−A断面図
【図4】(a)本体部を前面側から見た斜視図、(b)継ぎ手部Aあるいは継ぎ手部Bを前面側から見た斜視図
【図5】内筒体の正面図
【図6】(a)チャンネルブラシの製造状態を前面側から見た斜視図、(b)ブラシ体を前面側から見た斜視図
【図7】本発明の第2の実施例におけるブラシロールの断面図
【図8】内筒体の正面図
【図9】本発明のブラシロールが搭載された洗浄装置の斜視図
【符号の説明】
【0073】
1、41、81a、81b ブラシロール
2、42、82 ブラシ部
3、43、83 回転軸
4a、4b、4c、44a、44b、44c ブラシ体
5、45 チャンネルブラシ
6、46 帯状体
7、47 芯線
8、48 ブラシ毛材
9、49 中空部
10 固定部
11、51 外筒体
12、52 本体部
13、53 継ぎ手部A
14、54 継ぎ手部B
15、55 ボルト
16、56 内筒体
17、57 軸体部
18、58 軸受け部A
19、59 軸受け部B
20、60 ベアリング
21、61 ネジ部
22、62 穴部
23、63 外孔部
24、64 内孔部
25、65 シール部材
26、66 開口部
27、67 貫通部
28、68 空間部
29、69 流体拡散溝部
30 ボルト孔部A
31 ボルト孔部B
32、72 ネジ
33 基台
34 縦ロール
35 横ロール
36、76 溶接固定部
77 コンプレッサー
78 配管
79 エアー継ぎ手
80 洗浄装置
84 駆動手段
85 ノズル
86 洗浄管
87 鋼板
88 素地
89 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状樹脂組成物等からなる被洗浄面の洗浄、清掃、研磨、表面処理等を行うブラシロールにおいて、前記ブラシロールは、ブラシ部及び回転軸を有し、前記ブラシ部は長尺状のブラシ毛材を有すると共に、前記回転軸の外周に螺旋状に巻き付けられ、前記回転軸は略円筒状の内筒体が中空状の外筒体に挿入された二層構造をなし、前記外筒体は開口部が形成された本体部と、前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有し、前記継ぎ手部A及び前記継ぎ手部Bは貫通部が形成され、前記貫通部は前記開口部と連通されてあり、前記本体部の外周には前記開口部に連通する外孔部が開設されてあると共に、前記ブラシ部が形成され、前記内筒体は穴部が形成された軸体部と、前記軸体部の両端に連接される軸受け部A及び軸受け部Bを有し、前記軸受け部A及び/又は前記軸受け部Bは中空部が形成され、前記中空部は前記穴部と連通されてあり、前記軸体部の外周の特定箇所には前記穴部に連通する内孔部が開設されてあり、前記内孔部は前記外筒体が回転することにより、前記外孔部と順次、重なり合うと共に、圧縮流体が噴射するよう形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるブラシロールにおいて、本体部の外周に流体拡散溝部が形成され、前記流体拡散溝部に外孔部が形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項3】
請求項1から2記載の構成よりなるブラシロールにおいて、内孔部を囲むシール部材が軸体部の外周に取り付けられ、前記シール部材は少なくとも圧縮流体の噴射時に、本体部の内周に摺接することを特徴とするブラシロール。
【請求項4】
請求項1から3記載の構成よりなるブラシロールにおいて、内孔部は軸体部の外周に、内筒体の軸心方向にたいして傾斜して形成されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項5】
請求項1から4記載の構成よりなるブラシロールにおいて、ブラシ部は断面略U字状の帯状体と、前記帯状体で芯線と共に挟持されるブラシ毛材とで構成されたチャンネルブラシからなるブラシ体にて形成されてあると共に、回転軸の外周に固定手段にて固定されてあることを特徴とするブラシロール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載されたブラシロールと、前記ブラシロールを回転駆動する駆動手段と、前記ブラシロール及び/又は被洗浄面に洗浄液等の液体を吹き付ける複数のノズルと、軸受け部Aあるいは軸受け部Bの少なくとも一方に配管を介して連通されるコンプレッサーを有する洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−99579(P2010−99579A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272580(P2008−272580)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】