説明

ブラシ用毛材

【課題】汚れの除去性能、洗浄性能、塗料の塗布性能等に優れたブラシ用毛材を提供すること。
【解決手段】外周面の長手方向に凹部2又は/及び凸部3を螺旋状に形成した合成樹脂モノフィラメントからなるもので、ブラシ用毛材1を洗浄用のブラシ等(図示せず)に用いた場合、凹部2又は凸部3が、被洗浄面などに接触することにより摩擦力がアップするので、汚れを効率よく掻き出すことが出来ると共に、洗浄液などの液体が、洗浄時に螺旋状の凹部2や凸部3で保持されるので、洗浄性能が向上する。また、ブラシ用毛材1を塗装用ブラシ(図示せず)に用いた場合、螺旋状の凹部2や凸部3が塗料を保持するので、塗料の垂れ流しが防止できると共に、満遍なく、均一に塗料を塗布することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂モノフィラメントからなり、洗浄、清掃、液体の塗布等に用いられるブラシに使用されるブラシ用毛材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のブラシ用毛材の断面形状は一般に丸型であった。しかしこのような断面形状が丸型のものは、表面積が小さいため、液体や粉体の保持性能が悪く、また、被掃除面上の塵埃の掻き出し性能も悪かった。
【0003】
上記従来の問題を解決するものとして、図5に示すように、断面16の形状が八葉形で、且つ繊維軸方向に波形状を有するとともに、少なくとも一端に尖鋭状のテーパー部17を形成したブラシ用毛材15がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、図6に示すように、断面形状が略Y字状のブラシ用毛材20も考案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−136523号公報
【特許文献2】特開2003−325409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された従来のブラシ用毛材15は、断面が丸型のものに比べ、洗浄液などの液体の保持性能は優れているものの、繊維軸方向に波形状を有しているため、ブラシ用毛材15の毛腰が弱く、被洗浄面の汚れの除去性能に劣るという課題があった。
【0007】
また、特許文献2に記載された従来のブラシ用毛材20は、断面が略Y字状になっているので汚れの掻き出し性能には優れているものの、長手方向の形状はまっすぐで同一形状のため、外周に付着した洗浄液が即時に脱落し、洗浄液など液体の保持性能が悪く、洗浄性能が劣るという課題があった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、汚れの掻き出し性能及び洗浄液などの液体の保持性能に優れたブラシ用毛材を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明のブラシ用毛材は、外周面の長手方向に凹部又は/及び凸部を螺旋状に形成した合成樹脂モノフィラメントからなるもので、当該ブラシ用毛材を洗浄用のブラシ等に用いた場合、凹部や凸部が、被洗浄面に接触することにより摩擦力がアップするので、汚れを効率よく掻き出すことが出来ると共に、洗浄液などの液体が、洗浄時に螺旋状の凹部や凸部で保持されるので、洗浄性能が向上する。また、ブラシ用毛材を塗装用ブラシに用いた場合、螺旋状の凹部又は凸部が塗料を保持するので、塗料の垂れ流しが防止できると共に、満遍なく、均一に塗料を塗布することが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブラシ用毛材は、汚れの掻き出し性能及び洗浄液などの液体の保持性能に優れたものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
第1の発明は、外周面の長手方向に凹部又は/及び凸部を螺旋状に形成した合成樹脂モノフィラメントからなるもので、当該ブラシ用毛材を洗浄用のブラシ等に用いた場合、凹部や凸部が、被洗浄面に接触することにより摩擦力がアップするので、汚れを効率よく掻き出すことが出来ると共に、洗浄液などの液体が、洗浄時に螺旋状の凹部や凸部で保持されるので、洗浄性能が向上する。また、ブラシ用毛材を塗装用ブラシに用いた場合、螺旋状の凹部又は凸部が塗料を保持するので、塗料の垂れ流しが防止できると共に、満遍なく、均一に塗料を塗布することが出来る。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明の螺旋状の凹部又は凸部を連続的又は断続的に配したもので、凹部又は凸部を連続的に配した場合は、液体を保持できる面が増加するので、液体の保持性能が向上し、洗浄性能、塗装性能が向上する。又、凹部又は凸部を断続的に配した場合は、凹部又は凸部によるエッジ部が増えるので、汚れをより効率よく掻き出すことが出来る。
【0013】
第3の発明は、特に、第1又は第2の発明の凹部又は凸部を、右捻りと、左捻りと真直ぐ方向の3方向の内、少なくとも二方向以上の組み合わせで配したもので、凹部又は凸部のエッジ部がさまざまな個所に存在するようになるので、そのエッジ部が、さまざまな角度から被洗浄面の汚れに接するようになり、洗浄性能が飛躍的に向上する。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明の合成樹脂モノフィラメントの太さを均一あるいは不均一としたもので、合成樹脂モノフィラメントの太さが均一の場合、ブラシの腰が強くなるので、汚れの掻き出し性能が向上する。又、合成樹脂モノフィラメントの太さが不均一の場合は、合成樹脂モノフィラメントの表面積、すなわち汚れとの接触面積が広がるので、汚れの除去性能が向上すると共に、洗浄液などの液体の保持性能が向上するので、洗浄性能も向上する。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施例1)
図1(a)は、本発明の第1の実施例におけるブラシ用毛材の斜視図を示すもので、ブラシ用毛材1は、全長に渡って太さが略均一で、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系樹脂繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612等のポリアミド系樹脂繊維、アクリル繊維、フッ素繊維、ウレタン繊維、シリコン繊維などの合成樹脂モノフィラメントからなり、その表面の長手方向に、同図に示すように凹部2が螺旋状に且つ連続的に形成されている。
【0017】
図1(b)は、凹部2の代わりに、凸部3を、ブラシ用毛材1の外周面に、同じく螺旋状に連続して設けた例を示すものである。
【0018】
なお、本実施例のブラシ用毛材1の製法としては、合成樹脂を加熱、溶融紡糸して、所定温度で、サンドペーパーなどの研磨紙(図示せず)を、繊維の外周面に当てて、凹部2又は凸部3を形成しながら、且つ捻りながら、その繊維を巻き取るようにすればよい。
【0019】
又、押出しと捻りを組み合わせた成型でも可能であり、さらにダイス形状を凹凸形状にしておけば、同時に凹部2、凸部3を形成することも出来る。
【0020】
又、ブラシ用毛材1を形成する合成樹脂モノフィラメントの外径は、0.05mm以上であれば、自由に製造が可能である。
【0021】
さらに、螺旋状の凹部2、凸部3のそれぞれの捻り角は、合成樹脂モノフィラメントの長手方向に対して20度以下であれば効率的に製造できる。
【0022】
又、凹部2の深さは、深いほど、洗浄液などの液体の保持性能が向上するが、深すぎると腰が著しく弱くなったり、合成樹脂モノフィラメントの製造時に、それが切断するなどの問題があるので、合成樹脂モノフィラメントの断面の長径に対して50%以下に抑えるのが望ましい。
【0023】
又、凸部3の高さは、高いほど洗浄液などの液体の保持性能が向上するが、高すぎると、多数のブラシ用毛材1でブラシを形成したときに、隣り合う凸部3間で液体が保持され、ブラシ用毛材1からの液体の流出性が著しく悪くなるので、凸部3の高さを、合成樹脂モノフィラメントの断面の長径に対して50%以下にするのが望ましい。
【0024】
本実施例におけるブラシ用毛材1は、以上のように構成されているので、それを洗浄用のブラシ等に用いた場合、凹部2又は凸部3が、被洗浄面(図示せず)などに接触することにより摩擦力がアップするので、汚れを効率よく掻き出すことが出来ると共に、洗浄液などの液体が、洗浄時に螺旋状の凹部2又は凸部3で保持されるので、洗浄性能が大幅に向上する。また、本実施例におけるブラシ用毛材1を塗装用ブラシに用いた場合、螺旋状の凹部2又は凸部3が塗料を保持するので、塗料の垂れ流しが防止できると共に、満遍なく、均一に塗料を塗布することが出来る。
【0025】
又、本実施例では、図1(a)、(b)に示すように、凹部2、凸部3を連続的に配しているので、液体を保持できる面が増加し、それによって、液体の保持性能が向上し、洗浄性能、塗装性能を向上させることが出来る。
【0026】
又、本実施例では、ブラシ用毛材1を形成する合成樹脂モノフィラメントの太さが略均一に形成されているので、毛腰が強くなり、汚れの掻き出し性能が向上する。
【0027】
なお、上記実施例では、凹部2、凸部3を、それぞれ1条設けた例を示しているが、使用される洗浄液や塗料の粘性に応じて複数条設けてもかまわない。
【0028】
又、図2(a)、(b)に示すように、螺旋状の凹部2、凸部3を、ブラシ用毛材1の外周面に断続的に設けるようにしても良い。この場合は、凹部2又は凸部3のエッジ部が増えるので、汚れをより効率よく掻き出すことが出来る。
【0029】
又、ブラシ用毛材1の凹部2、凸部3を右捻りのみ、或いは左捻りのみにして形成することも可能である。
【0030】
以上のように、本実施例によれば、凹部2又は凸部3のエッジ部がさまざまな個所に存在するようになるので、そのエッジ部が、さまざまな角度から被洗浄面の汚れに接するようになり、洗浄性能が飛躍的に向上するものである。
【0031】
(実施例2)
図3は、本発明の第2の実施例におけるブラシ用毛材の斜視図を示すもので、凹部又は凸部を、右捻りと、左捻りと真直ぐ方向の少なくとも二方向以上の組み合わせで配したもので、他の構成、材料は、上記第1の実施例と同一なので、その説明を省略する。
【0032】
図3(a)は、ブラシ用毛材1の外周面に、左捻りの凹部2と右捻りの凹部2を連続して設けた例を示し、図3(b)は、ブラシ用毛材1の外周面に、左捻りの凸部3と右捻りの凸部3を連続して設けた例を示し、図3(c)は、左捻りの凹部2と直線状の凹部2aと右捻りの凹部2を連続的に設けた例を示し、図3(d)は、左捻りの凸部3と直線状の凸部3aと右捻りの凸部3を連続的に設けた例を示している。
【0033】
以上のように、本実施例によれば、凹部2又は凸部3のエッジ部がさまざまな個所に存在するようになるので、そのエッジ部が、さまざまな角度から被洗浄面の汚れに接するようになり、洗浄性能が飛躍的に向上するものである。
【0034】
(実施例3)
図4は、本発明の第3の実施例におけるブラシ用毛材の斜視図である。なお、上記実施例と同一部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0035】
本実施例は、図4に示すように、ブラシ用毛材1を形成する合成樹脂モノフィラメントの太さを不均一にしたもので、これにより、ブラシ用毛材1の表面積、すなわちブラシ用毛材1の表面と汚れとの接触面積が広がり、汚れの除去性能及び洗浄液などの液体の保持性能が向上するので、洗浄性能が向上する。
【0036】
なお、上記第1〜3の実施の形態では、ブラシ用毛材1を形成する合成樹脂モノフィラメントの1本の外周面に凹部2又は凸部3のいずれかを設けた例を示したが、特に、それに限定されるものではなく、1本の合成樹脂モノフィラメントの外周面に、凹部2と凸部3の両方を設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上のように、本発明にかかるブラシ用毛材は、汚れの除去性能、洗浄性能、塗料の塗付性能等に優れたもので、洗浄ブラシ、洗車ブラシ、ブラシロール、織物、不織布、編物等の布帛、ハケ、筆など各種用途に広く適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】(a)本発明の第1の実施例におけるブラシ用毛材の斜視図、(b)他の例を示すブラシ用毛材の斜視図
【図2】(a)他の例を示すブラシ用毛材の斜視図、(b)他の例を示すブラシ用毛材の斜視図
【図3】(a)本発明の第2の実施例におけるブラシ用毛材の斜視図、(b)他の例を示すブラシ用毛材の斜視図、(c)他の例を示すブラシ用毛材の斜視図、(d)他の例を示すブラシ用毛材の斜視図
【図4】本発明の第3の実施例におけるブラシ用毛材の斜視図
【図5】従来のブラシ用毛材の斜視図
【図6】(a)従来の他のブラシ用毛材の斜視図、(b)同ブラシ用毛材による掃除作用を示す図
【符号の説明】
【0039】
1 ブラシ用毛材
2、2a 凹部
3、3a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面の長手方向に凹部又は/及び凸部を螺旋状に形成した合成樹脂モノフィラメントからなるブラシ用毛材。
【請求項2】
螺旋状の凹部又は凸部を連続的又は断続的に配した請求項1に記載のブラシ用毛材。
【請求項3】
凹部又は凸部を、右捻りと、左捻りと真直ぐ方向の3方向の内、少なくとも二方向以上の組み合わせで配した請求項1または2に記載のブラシ用毛材。
【請求項4】
合成樹脂モノフィラメントの太さを均一あるいは不均一とした請求項1〜3のいずれか1項に記載のブラシ用毛材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−23205(P2008−23205A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201400(P2006−201400)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(391044797)株式会社コーワ (283)
【Fターム(参考)】