説明

ブラシ

【課題】騒音を低減することができる直流モータを提供することである。
【解決手段】上記した目的を達成するため、筒状のケース2と、ケース2内に回転自在に挿入されるシャフト12と、シャフト12の外周に設けた電機子13と、シャフト12に固定される整流子4と、整流子4に摺接する複数のブラシ5とを備えた直流モータ1であって、シャフト12の外周をシールしてケース2内を密封するシール部材15を備え、ケース2内を真空とするか、または、ケース2内に液体を充填した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流モータに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の直流モータにあっては、シャフトに設けたコアのスロットに巻回される巻線へ導通させるために、巻線に接続される整流子片を多数外周に装着した整流子と、この整流子へ摺接して電源と整流子片とを接続する複数のブラシとを備えている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記整流子は、たとえば、銅製の円環を型内にインサートしておき、フェノール樹脂を円環の内周にモールドするインサートモールド成形したあとに、円環を軸方向に切断して各整流子片を形成して得られ、整流子片間には切削加工による空隙(スリット)が形成される。
【0004】
他方、ブラシは、立方体状とされて、箱型のブラシホルダ内に収容されており、回転する整流子への摺接によって正面が磨り減っても整流子片への接触を保つことができるよう、ブラシホルダ内であってブラシの背面側に圧縮状態で挿入されるバネによって常に整流子へ向けて附勢されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−60074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように構成された直流モータにあっては、整流子片間に空隙があるためにブラシが整流子片の端部に引掛かって、これらが接触する度に打音を生じ、また、ブラシが整流子片の端部に引掛かることによってブラシに横方向への力が作用してブラシを収容するブラシホルダに衝突して衝突音を生じて、これらの音が騒音となって外部へ漏れるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、騒音を低減することができる直流モータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明の課題解決手段は、筒状のケースと、ケース内に回転自在に挿入されるシャフトと、シャフトの外周に設けた電機子と、シャフトに固定される整流子と、整流子に摺接する複数のブラシとを備えた直流モータであって、シャフトの外周をシールしてケース内を密封するシール部材を備え、ケース内を真空とするか、または、ケース内に液体を充填したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の直流モータによれば、ケース内が真空とされるか液体が充填されるため、ブラシと整流子との接触によって生じる騒音が外部へ伝達されにくくなり、直流モータの発生する騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態における直流モータの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図に基づき説明する。一実施の形態における直流モータ1は、図1および図2に示すように、有底筒状のケース2と、ケース2の内周に固定される永久磁石3と、ケース2の開口部に取付けられて当該開口部を閉塞する環状のキャップ6と、ケース2の頂部に固定されるボールベアリング7とキャップ6の内周に固定されるボールベアリング8とで両端側が支持されてケース2内に回転自在に挿通されるシャフト12と、シャフト12の外周に設けた電機子13と、シャフト12の下端側に設けられた整流子4と、整流子4の外周に摺接する複数のブラシ5と、シャフト12の外周をシールしてケース2内をシールするシール部材15とを備え、ケース2内は真空とされている。
【0012】
以下、各部について説明すると、永久磁石3は、四つがヨークとして機能するケース2に固定されており、詳しくは、シャフト12の軸方向から見て円弧状とされて、内周側の磁極がケース2の周方向でN極とS極とが交互に表れる様にケース2に固定されている。
【0013】
つづいて、シャフト12は、上記したようにケースボールベアリング7,8によってケース2内に回転自在に収容されており、図1中下端となる先端をキャップ6の内周から外部へ突出させている。
【0014】
このシャフト12には、22個のスロットを備えて永久磁石3に対向するロータコア13aと上記スロットに巻回される巻線13bとを備えた電機子13と、電機子13における巻線13bに接続される整流子片4aを備えた整流子4とが装着されている。すなわち、本実施の形態の直流モータ1は、4磁極、22スロットのモータとして構成されている。
【0015】
キャップ6は、環状であって、外周から立ち上がる筒状のソケット6aを備えており、ソケット6aをケース2内に嵌合することでケース2に一体化される。なお、ソケット6aの外周には環状のシールリング14が装着されており、ケース2との間が密にシールされている。
【0016】
このキャップ6のケース2内側には、ブラケット10が取付けられており、このブラケット10には、ブラシ5を保持する箱型のブラシホルダ17が四つ固定されている。なお、ブラシ5は、整流子4の外周に周方向に等間隔を持って四つ設けられており、それぞれ、上記のブラシホルダ17内に挿入されており、同じくブラシホルダ17内に挿入されるバネ19によって、ブラシホルダ17から突出するように附勢されて、整流子4の外周へ密着するようになっている。すなわち、ブラシ5は、回転する整流子4との接触によって磨耗しても巻線13bへ電流供給可能なように黒鉛を含んで形成されおり、磨耗を前提として整流子4への接触を維持するために、背部に配置される上記バネ19で附勢されるようになっている。
【0017】
さらに、キャップ6の内周にはシャフト12の図1中下端を軸支するボールベアリング8が嵌合され、同じくキャップ6の内周であって、ボールベアリング8より図1中下方にはシャフト12の外周をシールするシール部材15が設けられている。シール部材15は、ボールベアリング8よりケース2内側に設けられてもかまわない。
【0018】
このシール部材15は、シャフト12の回転を許容しつつ、気体の通過を阻止するようになっており、ケース2内を気密にシールしてケース2内の真空を維持するようになっている。なお、シール部材15には、たとえば、磁気シールや回転軸を真空状態に密封するのに適したシールを使用することができる。
【0019】
このように本実施の形態における直流モータ1によれば、ケース2内が真空とされているため、ブラシ5と整流子4との接触によって生じる騒音が外部へ伝達されにくくなるので、直流モータ1の発生する騒音を低減することができる。
【0020】
また、ブラシ5を保持するブラケット10とキャップ6との間にゴムやウレタン等の防振材を介装するようにしておけば、ブラシ5の振動がブラケット10を介してキャップ6やケース2へ伝達しにくくなるので、より一層直流モータ1の騒音を低減することが可能となる。なお、この実施の形態にあっては、ブラシ5を保持するブラケット10がキャップ6を介してケース2に固定されているが、ケース2に直接ブラケット10が固定される構造の場合には、ケース2とブラケット10との間に防振材を介装するようにすればよい。
【0021】
さらに、上記したところでは、ケース2内を真空としていたが、ケース2内に電気絶縁性を持つ液体を充填するようにして、ブラシ5の振動を減衰させるようにし、直流モータ1が発生する騒音を低減させるようにすることも可能である。この場合には、シール部材15は、ケース2内を液密にシールすることができればよく、周知のシール部材を採用することができる。
【0022】
また、ケース2内に充填される液体としては、具体的にはたとえば、フッ素系の不活性液体を使用することができる。
【0023】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
1 直流モータ
2 ケース
3 永久磁石
4 整流子
5 ブラシ
6 キャップ
6a ソケット
7,8 ボールベアリング
10 ブラケット
12 シャフト
13 電機子
13a ロータコア
13b 巻線
14 シールリング
15 シール部材
17 ブラシホルダ
19 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のケースと、ケース内に回転自在に挿入されるシャフトと、シャフトの外周に設けた電機子と、シャフトに固定される整流子と、整流子に摺接する複数のブラシとを備えた直流モータであって、シャフトの外周をシールしてケース内を密封するシール部材を備え、ケース内を真空とするか、または、ケース内に液体を充填したことを特徴とする直流モータ。
【請求項2】
ケース内に収容されてブラシを保持するブラケットを備え、ブラケットとケースとの間に防振材を介装したことを特徴とする請求項1に記載の直流モータ。

【図1】
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【公開番号】特開2010−207003(P2010−207003A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51535(P2009−51535)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】