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ブラスめっき鋼線の製造方法、ブラスめっき鋼線、スチールコードおよび空気入りタイヤ
説明

ブラスめっき鋼線の製造方法、ブラスめっき鋼線、スチールコードおよび空気入りタイヤ

【課題】ブラスめっき鋼線材の断線を防止し、かつ、最終伸線時におけるエネルギー消費量を低減することができるブラスめっき鋼線の製造方法、ブラスめっき鋼線、スチールコードおよび空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】鋼線材にブラスめっきを施すめっき工程と、得られたブラスめっき鋼線材に最終伸線を施す最終伸線工程と、を含むブラスめっき鋼線の製造方法である。最終伸線工程前にブラスめっき鋼線材の表面の酸化亜鉛量を低減する酸化亜鉛低減工程と、得られた酸化亜鉛低減後のブラスめっき鋼線材の表面に潤滑被膜を設ける被膜処理工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラスめっき鋼線の製造方法(以下、単に「製造方法」とも称する)、ブラスめっき鋼線、スチールコードおよび空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、ブラスめっき鋼線材の断線を防止し、かつ、最終伸線時におけるエネルギー消費量を低減することができるブラスめっき鋼線の製造方法、ブラスめっき鋼線、スチールコードおよび空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用補強材のスチールコードを代表とするブラスめっき鋼線の製造過程は、主に乾式伸線による前段伸線を行い、その後にパテンティング熱処理によりパーライト鉄鋼組織の作り込みを行い、続いて鋼線材の表面にブラスめっきを施し最終伸線工程である湿式伸線に供する。ブラスめっきの手段として、銅めっき層の上に亜鉛めっきを行い、その後熱拡散によりブラスめっき層を生成する熱拡散めっき法が一般的に採用されている。
【0003】
しかしながら、ブラスめっき鋼線を上述した方法で伸線を行った場合には、ブラスめっき後伸線するまでの間において、ブラスめっき表面に酸化亜鉛(ZnO)が生成しやすい。この酸化亜鉛は、一般に針状で非常に硬質であり、湿式伸線時の特に入線側上流部のダイスでのブラスめっき鋼線を伸線する時に潤滑性を低下させるという問題を有している。
【0004】
また、伸線加工される前の鋼線材の表面にはある程度の凹凸(表面粗さ)があり、この鋼線材表面にブラスめっきを施すと、めっき粒子は線材表面の影響を受けた析出分布をとるため、めっき後も表面凹凸は依然として存在し、この表面凹凸のあるブラスめっき鋼線材を、従来のように伸線加工を一貫して湿式伸線法によって行った場合には、鋼線材のめっき表面を被覆する潤滑被膜が(乾式伸線法で行った場合の潤滑被膜に比べて)薄く、伸線前の凹凸のあるめっき表面全体を完全に潤滑剤で被覆することが難しいことから、めっき表面の尖った凸部分を潤滑剤で被覆することができず、ダイスと直接接触することになり、潤滑性が悪いことが原因で、かかる部分のめっきが脱落したり、ダイスと直接接触することでめっきがダイスに焼付いたりするおそれがある。
【0005】
このような問題を解決する手段として、特許文献1には、まず鋼線材のめっき表面を平滑化するための予備伸線を行い、次いで、複数のダイスを用いて連続的に湿式伸線を行う伸線方法が提案されている。この湿式伸線では、第1番目の伸線加工を第2番目以降の伸線加工よりも高濃度の液体潤滑剤を用いて行うブラスめっき鋼線材を連続的に伸線が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−1030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、空気入りタイヤは地球環境負荷低減のために軽量化することについての技術開発が進められている。そのため、カーカスやベルトについては、スチールコードを層撚りのものから単撚りのものへ、さらには撚り無しのものに置き換えることによって、カーカスやベルト層を薄くすることが行われている。もっとも、単撚りのスチールコードや無撚りのスチールコードをカーカスやベルトに用いた場合であっても、空気入りタイヤの強度が低下することは避けなければならない。したがって、単撚りのスチールコードや無撚りのスチールコードには、所定の強度が求められる。
【0008】
この強度を確保するためには、ブラスめっき鋼線の径を太くすることや、高炭素含有のブラスめっき鋼線を使用することが必要になる。しかしながら、このようなブラスめっき鋼線を得るために、太径や高炭素含有のブラスめっき鋼線材を最終湿式伸線に供すると、伸線末期に断線が生じるという問題が新たに発生した。また、ブラスめっき鋼線の製造プロセスにおける省エネルギー化も重要な課題である。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ブラスめっき鋼線材の断線を防止し、かつ、最終伸線時におけるエネルギー消費量を低減することができるブラスめっき鋼線の製造方法、ブラスめっき鋼線、スチールコードおよび空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解消するため、最終湿式伸線工程におけるブラスめっき鋼線材の断線の原因について鋭意検討した結果、ブラスめっき鋼線材の破断形態はシェブロンクラックの起点部に未加工組織が少量残留したセントラルバーストによる断線(CB断線)であることを見出した。図3は、CB断線の先端部の形状を示す説明図であり、図4はCB断線の先端部の拡大斜視図であり、図5はCB断線の先端のシェブロンクラックの起点部の拡大図である。このシェブロンクラック先端周辺には熱処理履歴が見られないため、最終伸線工程以前に生じた内部クラックではなく、また未加工組織の残留量も少量であることから、シェブロンクラックの発生工程は最終湿式伸線の初期であると考えられる。また、偏析や介在物等の材料欠陥が認められないことからも、伸線時の異常によりシェブロンクラックが生じたものと考えられる。
【0011】
伸線時の異常の原因として次のことが考えられる。太径や高炭素含有のブラスめっき鋼線材は高強度であるため大きな引き抜き力が必要であり、さらに熱拡散めっきによりブラスめっき表面に生じた酸化亜鉛は潤滑性がないため、特に最終湿式伸線工程における頭3パス程度は、無潤滑の状態でブラスめっき鋼線材を伸線していることになり、より大きな引き抜き力が必要となる。また、太径や高炭素含有のブラスめっき鋼線材は高強度であるため、スリップ式湿式伸線の径の小さいコーンに巻き付けることが困難で、頭ダイス付近で変動が大きいスリップ・グリップ現象が起こる。そのため、ブラスめっき鋼線材に急激な張力変動が生じ、引き抜き抵抗がさらに増大してしまう。さらに、この張力変動によりブラスめっき鋼線材の中心部に過大な張力が加わり、これがシェブロンクラックの原因であると考えられる。
【0012】
本発明者は、上記知見に基づいてさらに鋭意検討した結果、伸線時の潤滑状態を改善して伸線加工時のダイスによる引き抜き抵抗を小さくすることにより、具体的には、(i)ブラスめっき鋼線の最終伸線工程前にブラスめっき鋼線の表面上の酸化亜鉛を低減すること、(ii)伸線の初期から高潤滑性能を付与することにより、ブラスめっき鋼線材の断線を防止し、かつ、最終伸線時におけるエネルギー消費量を低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のブラスめっき鋼線の製造方法は、鋼線材にブラスめっきを施すめっき工程と、得られたブラスめっき鋼線材に湿式伸線を施す最終伸線工程と、を含むブラスめっき鋼線の製造方法において、
前記最終伸線工程前に前記ブラスめっき鋼線材の表面の酸化亜鉛量を低減する酸化亜鉛低減工程と、得られた酸化亜鉛低減後のブラスめっき鋼線材の表面に被膜を設ける被膜処理工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の製造方法においては、前記酸化亜鉛低減工程における酸化亜鉛の低減をリン酸を用いて行うことが好ましい。また、本発明の製造方法においては、前記ブラスめっき鋼線の表面の酸化亜鉛量は10以上50mg/m未満であることが好ましい。さらに、本発明の製造方法においては、前記潤滑被膜はケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムを主成分とする潤滑被膜からなることが好ましい。本発明の製造方法は、前記最終伸線工程後のブラスめっき鋼線の線径が0.4mm以上であるブラスめっき鋼線の製造に好適である。また、本発明の製造方法は、前記最終伸線工程後のブラスめっき鋼線の破断強力が3200MPa以上のブラスめっき鋼線の製造に好適である。
【0015】
また、本発明のブラスめっき鋼線は、上記本発明の製造方法により得られたことを特徴とするものである。
【0016】
さらに、本発明のスチールコードは、上記本発明のブラスめっき鋼線をブラスめっき鋼線が撚り合わされずに束ねられてなるもの、または、1+n構造、1×n構造、2+n構造または2×n構造で撚り合わされてなることを特徴とするものである。
【0017】
さらにまた、本発明のタイヤは、左右一対のビード部間にわたりトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、該カーカスのタイヤ半径方向外側に、少なくとも1層のベルト層およびトレッド層が順次積層配置されてなる空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層のうち少なくとも1層が、本発明のゴム物品補強用スチールコードで補強されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブラスめっき鋼線材の断線を防止し、かつ、最終伸線時におけるエネルギー消費量を低減することができるブラスめっき鋼線の製造方法、ブラスめっき鋼線、スチールコードおよび空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の製造方法の一好適な実施の形態のフローチャートである。
【図2】本発明の空気入りタイヤのトレッド部の一好適例の幅方向断面図である。
【図3】CB断線の先端部の形状を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】CB断線の先端部の電子顕微鏡写真である。
【図5】CB断線の先端のシェブロンクラックの起点部の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のブラスめっき鋼線の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明のブラスめっき鋼線の製造方法は、鋼線材にブラスめっきを施すめっき工程と、得られたブラスめっき鋼線に最終伸線を施す最終伸線工程と、を含む。図1は、本発明の製造方法の一好適な実施の形態のフローチャートである。図示例においては、まず、巻き出された鋼線材はパテンティング処理が施され、次いで酸洗および水洗を経て、銅めっき処理がなされている。その後、水洗、亜鉛めっき処理、水洗工程を経て、鋼線材の表面に銅および亜鉛が順次めっきされる。そしてその後、熱拡散処理により銅めっきおよび亜鉛めっきが合金化されブラスめっきとなる。
【0021】
本発明の製造方法においては、最終伸線工程前にブラスめっき鋼線材の表面の酸化亜鉛量を低減、好適には10以上50mg/m未満にする酸化亜鉛低減工程と、得られた酸化亜鉛低減後のブラスめっき鋼線材の表面に被膜を設ける被膜処理工程と、を設けることが重要である。ブラスめっき鋼線材の表面に潤滑被膜を形成することにより、最終伸線工程の初期における高潤滑性能を発現させることができ、頭ダイスから数パスにおけるブラスめっき鋼線材をダイスから引き抜く際の抵抗を低減させることができる。また、ブラスめっき鋼線材表面上の酸化亜鉛を低減することにより、最終伸線工程の後半において、ブラスめっき鋼線材をダイスから引き抜く際の抵抗を低減させることができる。
【0022】
このように、本発明の製造方法では伸線初期から高潤滑性能を付与して、ダイスからの引き抜き抵抗を小さくすることにより、ブラスめっき鋼線材の伸線加工がスムーズになり、ブラスめっき鋼線材の中心で生じるシェブロンクラックを抑制し、断線を防止することができる。また、ブラスめっき鋼線材の引き抜き抵抗を低下させることにより、消費電力の低減も図れている。なお、最終伸線工程前にブラスめっき鋼線材の表面の酸化亜鉛量を低減、好適には10以上50mg/m未満としている理由は、酸化亜鉛量が50mg/m以上であると、引く抜き抵抗を十分に低下させることができないためであり、一方、10mg/m未満としても、表面の亜鉛が再び酸化して10mg/m以上となってしまうためである。
【0023】
また、引抜き抵抗を低下させることにより、工具負担が減り、摩耗低減およびダイス等の工具の寿命が改善されるという効果も得られる。すなわち、ダイス内面の摩耗状態が改善され、被膜処理、酸化亜鉛低減処理が施されたブラスめっき鋼線を使用したダイスのめっき凝着、縦キズ、リング摩耗が抑制される。さらに、酸化亜鉛低減処理がなされていないブラスめっき鋼線は、伸線加工の際の線速が増加するに従い引抜き力が増大する傾向が見られるが、伸線加工の前に酸化亜鉛低減処理が施されたブラスめっき鋼線においては、引抜き力には速度依存性が見られない。そのため、ブラスめっき鋼線材とダイスとの摩擦によるブラスめっき鋼線の性能、品質等の低下を抑制することができる。
【0024】
本発明においては、最終伸線前の酸化亜鉛低減工程における酸化亜鉛低減手段については特に制限はないが、酸洗処理により行われることが好ましい。また、酸洗処理に用いられる酸についても特に制限はないが、リン酸を用いることが好ましい。塩酸は塩化水素が製造工程の雰囲気に混入し鋼線を腐食して接着力や機械的性質の低下を招くことがあり、また、塩化水素の逸散防止管理が必要となる。硫酸を使用する場合、微量の残留した硫酸により水素脆化を招き疲労性が低下するので酸洗後の酸除去を充分に行える水洗設備を必要とする。このような見地から、好ましい無機酸はリン酸であり、リン酸は雰囲気中に逸散することもなく、水素脆化も招くこともなく、水洗後の鋼線に例え残存していてもリン酸塩となり接着に対し影響を及ぼさないという利点がある。
【0025】
本発明において、酸化亜鉛低減手段としてリン酸を用いた酸洗を採用する場合には、リン酸の濃度および洗浄時間については特に制限はないが、リン酸の濃度および酸洗処理時間が、下記関係式、
リン酸濃度(g/L)×処理時間(s)>5.0(g/L・s)
を満足することが好ましい。上記関係式を満足することにより、ブラスめっき鋼線上の酸化亜鉛の量を十分に低下させることができる。
【0026】
本発明においては、最終伸線前の被膜処理工程において形成する潤滑被膜は、ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムを主成分とするものであることが好ましいが、炭素数12〜26の飽和脂肪酸と亜鉛、カルシウム、バリウム、リチウム、アルミニウムおよびマグネシウムからなる金属群から選ばれる少なくとも1種との塩と、融点が70℃以上である天然ワックスおよび合成ワックスのうちのいずれか一方または双方と、を含むことがより好ましい。特にはさらに、硫酸塩、ホウ酸塩、モリブデン酸塩およびタングステン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0027】
上記硫酸塩等としては、例えば、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、ホウ酸カリウム(四ホウ酸カリウム等)、ホウ酸ナトリウム(四ホウ酸ナトリウム)、ホウ酸アンモニウム(四ホウ酸アンモニウム等)、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウムなどが挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、上記飽和脂肪酸の金属塩としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウムを好適に使用することができる。さらに、ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、モンタンワックス、カルナウバワックス等を挙げることができる。本発明に係る潤滑被膜における、ケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムの含有比率は、固形分重量比率で50%以上であることが必要であり、好適には80〜98%である。また、本発明に係る潤滑被膜における、かかるケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウム、並びに、所望に応じ用いる上記硫酸塩等の総量と、飽和脂肪酸の金属塩と、ワックスとの比率としては、固形分重量比率で、好適には1:0.6〜10:0.06〜6であり、より好適には1:1.0〜5:0.07〜2である。
【0028】
本発明において、鋼線表面への潤滑被膜の形成は、例えば、潤滑被膜成分を、適宜界面活性剤等の分散剤を用いて水に溶解、分散して水溶液を調製し、これを浸漬やスプレー、流し掛け等により鋼線表面に塗布、乾燥することにより行うことができる。この場合の乾燥は、例えば、60〜150℃で10〜60分にて行うか、または、常温で放置することにより行ってもよい。また、潤滑被膜は、鋼線表面を少なくとも覆うように形成することが必要であるが、好適には、鋼線表面に対する潤滑被膜の付着量を、0.1g/m以上2g/m以下とする。この付着量が少なすぎると、伸線時における鋼線と工具との間の潤滑を十分に得ることができないおそれがあり、一方、多すぎると、1パス目で脱落するおそれがあり、また、余分な潤滑被膜成分が多くなるため好ましくない。
【0029】
本発明の製造方法は、ブラスめっき鋼線の製造プロセスに広く適用することができ、鋼線の線径や材質等についても、特に制限されるものではなく、公知のものであればいずれも使用可能であるが、ダイスから引き抜く際に大きな引き抜き力が必要となる太径や高炭素含有のブラスめっき鋼線の製造に好適である。具体的には、線径が0.4mm以上のブラスめっき鋼線の製造や、炭素含有量0.90質量%以上、クロム含有量が0.10〜0.40質量%のブラスめっき鋼線の製造に好適である。
【0030】
また、本発明の製造方法は、高強度のブラスめっき鋼線の製造に好適に用いることができるため、最終伸線後のブラスめっき鋼線の破断強力は、好ましくは3200MPa以上、より好ましくは3600MPa以上である。なお、伸線工程については、鋼線材の伸線工程において通常使用される伸線機を用いて、常法に従い伸線加工を行うものであれば、伸線条件等については特に制限はない。
【0031】
本発明のブラスめっき鋼線は、上記本発明の製造方法により製造されたブラスめっき鋼線である。また、本発明のスチールコードは本発明のブラスめっき鋼線を撚り合わせずに平行に引き揃えて束としたスチールコードや、1+n構造、1×n構造、2+n構造または2×n構造で撚り合わせたスチールコードである。
【0032】
続いて本発明の空気入りタイヤについて、図面を用いて説明する。
図1は本発明の空気入りタイヤのトレッド部の一好適例の幅方向断面図である。図示するタイヤ10は、左右一対のビード部(図示せず)間にわたりトロイド状に延在するカーカス1を骨格とし、カーカス1のタイヤ半径方向外側に、少なくとも1層のベルト層2(図示例においては4層)およびトレッド層3が順次積層配置されてなる。
【0033】
本発明の空気入りタイヤは、ベルト層の少なくとも1層に本発明のスチールコードが用いられている。上述したとおり、本発明のスチールコードは本発明のブラスめっき鋼線を撚らずに平行に引き揃えて束としたものや、1+n構造、1×n構造、2+n構造または2×n構造で撚り合わせたものであり、コード径が小さい。したがって、本発明のスチールコードをベルト層の補強材として適用すれば、ベルト層の厚みを小さくすることができるため、タイヤの軽量化を図ることができる。
【0034】
本発明の空気入りタイヤ10は、ベルト層の補強材として本発明のスチールコードを用いること以外に特に制限はなく、カーカス1のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置されるトレッド層3の表面には適宜トレッドパターンが形成してもよく、タイヤの最内層にはインナーライナー(図示せず)を配置してもよい。さらに、本発明の空気入りタイヤ10においては、タイヤ内に充填する気体として、通常のあるいは酸素分圧を変えた空気、または窒素等の不活性ガスを用いることが可能である。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の製造方法について、実施例を用いてより詳細に説明する。
<実施例1〜9、比較例1、2および従来例>
線径5.5mm、炭素含有量1.00質量%、クロム含有量0.20質量%の鋼線材を乾式伸線に供して、線径2.60mmまで伸線した。次いで、得られた鋼線材について熱処理を行い、さらに銅めっきおよび亜鉛めっきを順次施し、熱拡散処理によりブラスめっき高炭素鋼線材を得た。得られたブラスめっき鋼線材に対して、下記表1に示す条件でリン酸による酸洗処理を施し、その後、同表に示す被膜物質を塗布して被膜処理を施した。その後、最終湿式伸線を施し、下記表1に示す線径のブラスめっき鋼線を0.52mmまで伸線した。酸洗処理後のブラスめっき鋼線材の表面上に残存する酸化亜鉛の量、潤滑被膜の付着量および得られたブラスめっき鋼線の破断強度を同表に併記する。
【0036】
<従来例>
リン酸による酸洗処理および被膜処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様の手法でブラスめっき鋼線材の表面上に残存する酸化亜鉛の量および潤滑被膜の付着量を求めた。結果を表1に併記する。
【0037】
<酸化亜鉛残存量および潤滑被膜付着量>
潤滑被膜および酸化亜鉛量は、酸性溶液を使用して表面に付着している成分を溶解させ、プラズマ発光分光分析装置を用いてブラスめっき鋼線材表面のリン成分および酸化亜鉛量を求めた。
【0038】
<伸線電力の評価>
酸洗処理および被膜処理後のブラスめっき鋼線材を湿式伸線に供し、湿式伸線に要した電力を、従来例を基準として指数にて評価した。得られた結果を同表に併記する。この値が小さいほど、消費電力が小さいことを示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1より本発明の製造方法によれば、ブラスめっき鋼線の製造において断線が生じず、また、伸線加工に要する電力の消費量を抑えることができていることがわかる。
【符号の説明】
【0041】
1 カーカス
2 ベルト層
3 トレッド層
10 空気入りタイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼線材にブラスめっきを施すめっき工程と、得られたブラスめっき鋼線材に湿式伸線を施す最終伸線工程と、を含むブラスめっき鋼線の製造方法において、
前記最終伸線工程前に前記ブラスめっき鋼線材の表面の酸化亜鉛量を低減する酸化亜鉛低減工程と、得られた酸化亜鉛低減後のブラスめっき鋼線材の表面に潤滑被膜を設ける被膜処理工程と、を含むことを特徴とするブラスめっき鋼線の製造方法。
【請求項2】
前記酸化亜鉛低減工程における酸化亜鉛の低減をリン酸を用いて行う請求項1記載のブラスめっき鋼線の製造方法。
【請求項3】
前記ブラスめっき鋼線の表面の酸化亜鉛量が10以上50mg/m未満である請求項1または2項記載のブラスめっき鋼線の製造方法。
【請求項4】
前記潤滑被膜がケイ酸ナトリウムおよび/またはケイ酸カリウムを主成分とする潤滑被膜からなる請求項1〜3のうちいずれか一項記載のブラスめっき鋼線の製造方法。
【請求項5】
前記最終伸線工程後のブラスめっき鋼線の線径が0.4mm以上である請求項1〜4のうちいずれか一項記載のブラスめっき鋼線の製造方法。
【請求項6】
前記最終伸線工程後のブラスめっき鋼線の破断強力が3200MPa以上である請求項1〜4のうちいずれか一項記載のブラスめっき鋼線の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6に記載のブラスめっき鋼線の製造方法により製造されたことを特徴とするブラスめっき鋼線。
【請求項8】
請求項7記載のブラスめっき鋼線が撚り合わされずに束ねられてなることを特徴とするゴム物品補強用スチールコード。
【請求項9】
請求項7記載のブラスめっき鋼線が1+n構造、1×n構造、2+n構造または2×n構造で撚り合わされてなることを特徴とするゴム物品補強用スチールコード。
【請求項10】
左右一対のビード部間にわたりトロイド状に延在するカーカスを骨格とし、該カーカスのタイヤ半径方向外側に、少なくとも1層のベルト層およびトレッド層が順次積層配置されてなる空気入りタイヤにおいて、
前記ベルト層のうち少なくとも1層が、請求項8または9記載のゴム物品補強用スチールコードで補強されていることを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94822(P2013−94822A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240489(P2011−240489)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】