説明

ブラックマトリクス基板、カラーフィルタ、液晶表示装置および、これらの製造方法。

【課題】少なくとも額縁領域において、ブラックマトリクスと、カラーフィルタの基板との密着強度が高いブラックマトリクス基板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記黒色感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する露光工程と、前記黒色感光性樹脂組成物を現像して、所定のパターンを有するブラックマトリクスを形成する現像工程と、少なくとも額縁領域に対応する領域の前記ブラックマトリクスを、基板の裏面から露光する裏面露光工程と、を備えることを特徴とするブラックマトリクス基板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に用いられるブラックマトリクス基板の製造方法や、カラーフィルタの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(液晶テレビ、コンピュータ用液晶ディスプレイ、携帯機器用液晶ディスプレイなど)に用いられる液晶パネルは、カラーフィルタ基板と、TFT等が形成された液晶駆動側基板とをはり合わせ、これらの基板の間に液晶層を挟み、シール剤で液晶層を封止して構成される。従来は、シール剤は、ブラックマトリクスの外側に形成され、カラーフィルタ基板−シール剤−液晶駆動側基板との積層構造となり、シール剤が、カラーフィルタ基板と液晶駆動側基板との剥離を防いでいた。
【0003】
しかしながら、近年、液晶表示装置のベゼル(額縁領域)の幅を狭くすることが求められている。特に、携帯電話やスマートフォンなどの携帯機器用の液晶ディスプレイにおいては、デザイン面からも、狭ベゼル化が求められている。図6は、従来の液晶表示装置141を示す図である。カラーフィルタ101と液晶駆動側基板143とを接続するシール剤145を、額縁領域102aのブラックマトリクス109上に形成することで、ベゼルを狭くすることが行われている。
【0004】
しかしながら、液晶駆動側基板143とカラーフィルタ101の基板103との間に加わる荷重が、シール剤145を介して、額縁領域のブラックマトリクス109と、カラーフィルタ101の基板103との間に加えられるため、ブラックマトリクス109と基板103との間(図6中のBの領域)の剥離により、破損することが多かった。
【0005】
つまり、シール剤145は、ポリイミド、シリコーン樹脂、ゴム、エポキシ系熱硬化型樹脂などの樹脂であり、オーバーコート層115やブラックマトリクス109は感光性樹脂を硬化させて得られるため、シール剤145、オーバーコート層115、ブラックマトリクス109の各積層構造は、高い密着強度となり、剥がれにくい。一方で、カラーフィルタ101の基板103と、樹脂製のブラックマトリクス109とは、材質の違いから、密着強度が低くなりがちであった。
【0006】
これに対して、ブラックマトリクスの材料に変更を加えたり(例えば、特許文献1を参照)、樹脂製ブラックマトリクスの形状を変更したり(例えば、特許文献2を参照)して、カラーフィルタの基板との密着性を向上させる試みがなされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−204363号公報
【特許文献2】特許第3149788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これまでのブラックマトリクスの密着性向上には限界があり、さらなる密着強度向上が難しいという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、少なくとも額縁領域において、ブラックマトリクスと、カラーフィルタの基板との密着強度が高いブラックマトリクス基板の製造方法などを提供することである。
【0010】
本発明者らは、前述した目的を達成するため、鋭意検討を行った結果、ブラックマトリクスに対して裏面からも露光することで、ブラックマトリクスと基板との密着強度が向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す特徴を有する。
(1)基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記黒色感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する露光工程と、前記黒色感光性樹脂組成物を現像して、所定のパターンを有するブラックマトリクスを形成する現像工程と、少なくとも額縁領域に対応する領域の前記ブラックマトリクスを、基板の裏面から露光する裏面露光工程と、を備えることを特徴とするブラックマトリクス基板の製造方法。
(2)前記裏面露光工程が、前記基板の搬送中に行われることを特徴とする(1)に記載のブラックマトリクス基板の製造方法。
(3)基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記黒色感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する露光工程と、前記黒色感光性樹脂組成物を現像して、所定のパターンを有するブラックマトリクスを形成する現像工程と、少なくとも額縁領域に対応する領域の前記ブラックマトリクスを、基板の裏面から露光する裏面露光工程と、前記基板上に、前記ブラックマトリクスにより区画された開口部に異なる色の複数の着色層を形成する着色層形成工程と、を少なくとも備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(4)基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、前記黒色感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する露光工程と、前記黒色感光性樹脂組成物を現像して、所定のパターンを有するブラックマトリクスを形成する現像工程と、前記基板上に、前記ブラックマトリクスにより区画された開口部に異なる色の複数の着色層を形成する着色層形成工程と、少なくとも額縁領域に対応する領域の前記ブラックマトリクスを、基板の裏面から露光する裏面露光工程と、を少なくとも備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
(5)(3)または(4)に記載のカラーフィルタの製造方法を用いてカラーフィルタを製造する工程と、当該製造されたカラーフィルタと液晶駆動側基板を対向させて組み立てる工程と、を具備することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
(6)基板と、前記基板上に形成された、黒色樹脂を含むブラックマトリクスと、を備え、前記基板と前記ブラックマトリクスの額縁領域での密着強度が150kgf/cm以上であることを特徴とするブラックマトリクス基板。
(7)基板と、前記基板上に形成された、開口部を有し、黒色樹脂を含むブラックマトリクスと、前記ブラックマトリクスの前記開口部を覆うように形成された着色層と、を少なくとも備え、前記基板と前記ブラックマトリクスの額縁領域での密着強度が150kgf/cm以上であることを特徴とするカラーフィルタ。
(8)(7)に記載のカラーフィルタと前記カラーフィルタと対向する液晶駆動側基板と、前記カラーフィルタと前記液晶駆動側基板の間に封入された液晶層と、前記液晶層を封止するシール剤と、を具備することを特徴とする液晶表示装置。
(9)前記シール剤が、前記カラーフィルタの額縁領域での前記ブラックマトリクス上に形成されていることを特徴とする(8)に記載の液晶表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、少なくとも額縁領域において、ブラックマトリクスと、カラーフィルタの基板との密着強度が高いブラックマトリクス基板の製造方法などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)〜(f)本発明に係るブラックマトリクス基板の製造工程を説明する概略断面図。
【図2】(a)〜(c)本発明に係るカラーフィルタの製造工程を説明する概略断面図。
【図3】(a)、(b)ブラックマトリクスの額縁領域のみを裏面露光する工程を説明する概略平面図。
【図4】(a)、(b)薄膜密着強度測定装置を用いて薄膜の密着強度を測定する工程を説明する概略断面図。
【図5】本発明に係る液晶表示装置の概略断面図。
【図6】従来例に係る液晶表示装置の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ブラックマトリクス基板の製造方法)
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明に係るブラックマトリクス基板の製造方法を説明する図である。
図1(a)は、塗布工程の準備として、基材を用意する工程を示す。
図1(b)は、塗布工程を示す。塗布工程とは、基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布する工程である。
図1(c)は、露光工程を示す。露光工程とは、黒色感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する工程である。
図1(d)は、現像工程を示す。現像工程とは、黒色感光性樹脂組成物を現像して、所定のパターンを有するブラックマトリクスを形成する工程である。
図1(e)は、裏面露光工程を示す。裏面露光工程とは、少なくとも額縁領域に対応する領域の前記ブラックマトリクスを、基板の裏面側から露光する工程である。
図1(f)は、本発明に係るブラックマトリクス基板を示す。
【0014】
まず、図1(a)に示すとおり、基板3を用意する。その後、図1(b)に示すとおり、基板3の上に、ネガ型の黒色感光性樹脂組成物5を塗布する。必要に応じて、プリベーク工程を行い、黒色感光性樹脂組成物5を乾燥させる。
【0015】
(基板)
基板3は特に限定されるものではなく、カラーフィルタに一般的に用いられる透明な基板を使用することができる。例えば、ホウ珪酸ガラス、アルミノホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、合成石英ガラス、ソーダライムガラス、ホワイトサファイアなどの可撓性のない透明なリジット材、あるいは、透明樹脂フィルム、光学用樹脂フィルムなどの可撓性を有する透明なフレキシブル材を用いることができる。前記フレキシブル材としては、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、シンジオタクティック・ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリエーテルニトリル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、ポリノルボルネン系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等からなるものを挙げることができるが、一般的なプラスチックからなるものも使用可能である。特に、無アルカリガラスは、熱膨脹率の小さい素材であり、寸法安定性および高温加熱処理における特性に優れており、好ましい。
【0016】
(黒色感光性樹脂組成物)
黒色感光性樹脂組成物5は、遮光性粒子を含むネガ型感光性樹脂である。ネガ型感光性樹脂は特に限定されることはなく、一般的に使用されるネガ型感光性樹脂を用いることができる。例えば、架橋型樹脂をベースとした化学増幅型感光性樹脂、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型感光性樹脂等が挙げられる。また、アクリル系ネガ型感光性樹脂として、紫外線照射によりラジカル成分を発生する光重合開始剤と、分子内にアクリル基を有し、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する成分と、その後の現像により未露光部が溶解可能となる官能基(例えば、アルカリ溶液による現像の場合は酸性基をもつ成分)とを含有するものを用いることができる。上記のアクリル基を有する成分のうち、比較的低分子量の多官能アクリル分子としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、テトラメチルペンタトリアクリレート(TMPTA)等が挙げられる。また、高分子量の多官能アクリル分子としては、スチレン‐アクリル酸‐ベンジルメタクリレート共重合体の一部のカルボン酸基部分にエポキシ基を介してアクリル基を導入したポリマーや、メタクリル酸メチル‐スチレン‐アクリル酸共重合体等が挙げられる。
【0017】
黒色感光性樹脂組成物5に添加する遮光性粒子としては、酸化チタンや四酸化鉄などの金属酸化物粉末、金属硫化物粉末、金属粉末、カーボンブラックの他に、赤、青や緑などの顔料の混合物を用いることができる。
【0018】
また、感光性樹脂の塗布方法としては、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法、ダイコート法等がある。
【0019】
その後、図1(c)に示すとおり、黒色感光性樹脂組成物5を塗布した側(以後、基板3の表面とも呼ぶ)から、所定のパターンを有するフォトマスク21を介して露光光27を照射し、所定のパターンで黒色感光性樹脂を露光する。ここで、黒色感光性樹脂組成物5がネガ型の感光性樹脂であるため、露光により硬化した、感光した黒色感光性樹脂組成物7が得られる。
【0020】
フォトマスク21は、フォトマスク用基板23の上に、除去すべきネガ型感光性樹脂層5のパターンに対応したパターンの遮光膜25を有する。
【0021】
その後、図1(d)に示すように、基板3を現像し、未露光の黒色感光性樹脂組成物5を溶解させ、感光した黒色感光性樹脂組成物7をブラックマトリクス9とする。
【0022】
その後、図1(e)に示すように、ブラックマトリクス9の少なくとも額縁領域2aについて、露光光29を、ブラックマトリクス9が形成された面とは反対側(以後、基板3の裏面とも呼ぶ)から照射する。
一般的に、黒色感光性樹脂組成物の場合、塗布した側からの露光では、主に表面で露光光が吸収されることから表面が硬化しやすく、露光光による内部硬化は進みにくいと考えられる。そのため、ガラス面付近の硬化は熱によるものが大きく寄与していると考えられる。そこで、裏面からも露光することにより、ガラス界面付近も露光光による硬化が行われるため、ガラス界面との密着性向上につながっているものと考えられる。
【0023】
この裏面露光は、基板3の搬送中に、基板3を静止せずに行われることが好ましい。この裏面露光は、フォトマスクを介してパターニングするための露光とは異なり、ブラックマトリクス9を基板3の裏面から露光できればよく、精密な位置合わせが不要であるため、基板3を静止する必要はない。裏面露光を基板3の搬送中に行うことができれば、搬送機構中に基板3を制動する機構などを設けることが不要であるほか、製造時間の短縮にもつながり、製造コストの低減に役立つ。
【0024】
また、シール剤を介した荷重は、主に額縁領域2aのブラックマトリクス9に印加されるため、最低限、額縁領域2aを、基板3の裏面より露光し、密着強度を高めれば足りる。しかし、表示領域2bのブラックマトリクス9と基板3との密着強度が高まっても、特に問題はないため、ブラックマトリクス9の全面を、基板3の裏面から露光しても良い。
【0025】
基板3の裏面の全面を露光する場合、例えば、高圧水銀灯、メタルハライドランプなど、紫外線を照射可能なランプで露光することが考えられる。
【0026】
基板3の額縁領域2aのみを露光する場合、例えば、以下のように露光することが考えられる。図3(a)に示すように、小型の紫外線発生源30(例えば、小型の紫外線ランプ、紫外線LEDなど)を、ブラックマトリクス基板11の搬送方向Aと垂直な方向に並べ、ブラックマトリクス基板11の額縁領域2aに対応する位置に小型の紫外線発生源30を設け、紫外線発生源30の上を、額縁領域2aに紫外線が照射されるように、ブラックマトリクス基板11を搬送する。さらに、図3(b)に示すように、ブラックマトリクス基板11を90度回転させ、額縁領域2aに対応する位置に設けられた紫外線発生源30の上を搬送させると、ブラックマトリクス基板11の額縁領域2aを格子状に紫外線で露光できる。なお、図3においては、表示領域2b内のブラックマトリクス9については、図示を省略している。
【0027】
その後、必要に応じて、露光後の基板3とブラックマトリクス9とを、150〜250℃で焼成する。さらに、強制条件として、121℃・100%RHの条件下にて、ある一定時間の高温高湿条件での処理を追加する場合もある。
【0028】
その結果、図1(f)に示すように、基板3とブラックマトリクス9とが、少なくとも額縁領域2aにおいて強力に密着したブラックマトリクス基板11を得ることができる。
【0029】
(カラーフィルタの製造方法)
次に、ブラックマトリクス基板11を用いて、カラーフィルタ1を製造する工程について説明する。
図2(a)は、着色層形成工程の準備として、ブラックマトリクス基板11を用意する工程を示す。
図2(b)は、着色層形成工程を示す。着色層形成工程とは、基板上に、ブラックマトリクス9により区画された開口部に異なる色の複数の着色層を形成する工程である。
図2(c)は、必要に応じて行われるオーバーコート層形成工程を示す。オーバーコート層形成工程とは、透明な感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する工程である。
【0030】
まず、図2(a)に示すように、ブラックマトリクス基板11を用意し、図2(b)に示すように、ブラックマトリクス9の各開口部を覆うように、赤色着色層13R、青色着色層13B、緑色着色層13Gなど、各色の着色層を形成する。
【0031】
各色の着色層の形成は、特に限定されず、一般的な着色層の形成方法を使用できるが、例えば、各色の着色剤を含む感光性樹脂を塗布した後、所定の適切なパターンを有するフォトマスクを用いて露光し、現像してパターニングすることにより形成されることができる。赤色着色層13R、青色着色層13B、緑色着色層13Gについては、各色に応じた適切な着色剤等を分散し含有させた感光性樹脂を用いる。感光性樹脂としては、前述のネガ型感光性樹脂に加え、ポジ型感光性樹脂を用いることができる。ポジ型感光性樹脂は、特に限定されるものではなく、一般的に使用されるものを用いることができる。具体的には、ノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型感光性樹脂等が、ポジ型感光性樹脂の例として挙げられる。
【0032】
他の着色層の形成方法の例として、インクジェット方式を用いてもよい。インクジェット方式とは、ブラックマトリクス9の開口部に、着色層形成用塗工液を吐出して塗布する方法であり、通常、着色層形成用塗工液を吐出することができるノズルを複数備えるインクジェットヘッドが用いられる。
【0033】
さらに、必要に応じて、図2(c)に示すように、透明な感光性樹脂を、カラーフィルタの全面に塗布し、露光することで、オーバーコート層15を形成して、カラーフィルタ1を得る。上記の感光性樹脂としては、ネガ型感光性樹脂およびポジ型感光性樹脂のいずれも用いることができる。
オーバーコート層15は、可視光域で透明な感光性樹脂で形成され、0.1μm〜2.0μm程度の厚みを有し、ブラックマトリクス9や着色層13R、13G、13Bの表面を覆うように配置される。オーバーコート層15は、顔料等の各着色層の含有物が、各着色層から液晶層中に溶出しないように設けられる。オーバーコート層15は、透明保護層とも呼ばれる。
【0034】
さらに、オーバーコート層15の上に、メインフォトスペーサ(図示せず)などを形成しても良い。メインフォトスペーサは、感光性樹脂で形成され、1〜5μm程度の厚みを有し、R、G、Bの画素の位置(ブラックマトリクス9の開口部)以外の部分に配置される、柱状の構造物である。メインフォトスペーサは、カラーフィルタ1と液晶駆動側基板とが接しないように両者の間に適切な間隔を設ける役割を果たす。この空隙には液晶層が形成される。
【0035】
また、サブフォトスペーサを形成しても良い。サブフォトスペーサは、カラーフィルタ1と液晶駆動側基板とが接しないように両者の間に適切な間隔を設ける役割を果たすものであり、例えば液晶表示装置がカラーフィルタ1の中央部より押圧されたときでも、サブフォトスペーサがあることによりカラーフィルタ1と液晶駆動側基板とが接しない。サブフォトスペーサはメインフォトスペーサよりも薄く形成される。
【0036】
なお、本発明では、黒色感光性樹脂組成物5の現像後、着色層の形成前に、ブラックマトリクス9の裏面露光工程を行っているが、裏面露光工程を行うタイミングはこれに限定されるわけではなく、着色層を形成した後や、オーバーコート層15を形成した後に行っても良い。また、裏面露光工程は、1回だけでなく、複数回行っても良い。ただし、着色層や、オーバーコート層15を形成した後に裏面露光工程を行う場合、着色層やオーバーコート層15は、ネガ型感光性樹脂を含む必要がある。ポジ型感光性樹脂からなる場合、裏面露光工程により、着色層13やオーバーコート層が軟化してしまい、好ましくない。
【0037】
(液晶表示装置の製造方法)
図5を参照しながら、液晶表示装置41の製造方法を説明する。まず、カラーフィルタ1の額縁領域のブラックマトリクス9の上に、シール剤45を形成し、カラーフィルタ1と、別途製造したTFTなどが設けられた液晶駆動側基板43とを、対向させて接着させる。その後、カラーフィルタ1と液晶駆動側基板43との間の空隙に液晶を封止し、液晶層47を形成し、液晶表示装置41とする。この液晶表示装置41は、実際には液晶パネルとよばれ、さらに、光源、電源回路、接続コネクタ、ケースなどが取り付けられ、液晶テレビなどとなる。
【0038】
(ブラックマトリクス基板の構成)
図1(f)は、本発明に係るブラックマトリクス基板11の概略断面図である。ブラックマトリクス基板11は、基板3の上に、ブラックマトリクス9を有する。ブラックマトリクス基板11における、額縁領域2aのブラックマトリクス9と基板3との間の密着強度は、150kgf/cm以上である。
【0039】
ここで、表示領域2bとは、着色層が形成される開口部が配置され、液晶表示装置が製造された際に、液晶表示領域として用いられる領域をいうものである。また、額縁領域2aとは、表示領域2bを囲む領域であり、液晶表示装置が製造された際に、液晶表示領域の外側のベゼル部分として用いられる領域をいうものである。
【0040】
ブラックマトリクス9は、遮光性粒子を含む感光性樹脂で形成され、0.5μm〜2μm程度の厚さを有し、基板3上に、複数の開口部を有するように配置される。各開口部は、液晶表示装置の各画素の位置に対応する。
【0041】
基板とブラックマトリクスの密着強度は、図4に示すような、薄膜密着強度測定装置31を用いて計測される。薄膜密着強度測定装置31は、いわゆるセバスチャン法と呼ばれる密着強度の測定法を採用している。薄膜密着強度測定装置31を用いた薄膜密着強度の測定方法を説明する。まず、図4(a)に示すとおり、測定対象である、薄膜35が形成された基板33を用意する。スタッドピン39の先端にシール剤37を接着する。その後、スタッドピン39を、加重を測定できる装置で引っ張り、図4(b)に示すように、薄膜35が基板33から離れた際に、スタッドピン39に印加されていた加重を記録する。スタッドピン39に印加されていた加重を、スタッドピン39の先端の面積で割ることで、単位面積当たりの剥離時の荷重が求められ、この値が薄膜35と基板33の密着強度となる。なお、ブラックマトリクス基板11の密着強度を測定する場合、基板3が基板33に該当し、ブラックマトリクス9が薄膜35に該当する。
【0042】
(カラーフィルタの構成)
図2(c)は、本発明にかかるカラーフィルタ1の概略断面図である。カラーフィルタ1は、ブラックマトリクス9の表示領域の開口部に、赤色着色層13R、青色着色層13B、緑色着色層13Gなどの着色層が設けられており、さらに、必要に応じてオーバーコート層15を有する。また、必要に応じて、メインフォトスペーサやサブフォトスペーサを有する。ブラックマトリクス基板11では、額縁領域のブラックマトリクス9と基板3との間の密着強度が、150kgf/cm以上である。
【0043】
(液晶表示装置の構成)
図5は、本発明にかかる液晶表示装置41の概略断面図である。液晶表示装置41は、カラーフィルタ1と液晶駆動側基板43との間に、液晶が充填されてなる液晶層47を有し、液晶層47は、シール剤45にて封止されている。カラーフィルタ1は、裏面露光工程を経て製造されたブラックマトリクス基板11から構成されている。ブラックマトリクス基板11では、額縁領域のブラックマトリクス9と基板3との間の密着強度が、150kgf/cm以上である。
【0044】
(本発明の効果)
本発明に係るブラックマトリクス基板11は、裏面露光工程を経て製造されるため、少なくとも額縁領域におけるブラックマトリクス9と基板3との密着強度が高い。そのため、ブラックマトリクス基板11を用いたカラーフィルタ1を用いた液晶表示装置41は、額縁領域のブラックマトリクス9の上にシール剤45が設けられても、ブラックマトリクス9が基板3より剥離しにくく、破損しにくい。
【0045】
また、本発明に係るブラックマトリクス基板の製造方法は、裏面露光工程を含むため、少なくとも額縁領域でのブラックマトリクス9と基板3との密着強度の高いブラックマトリクス基板11を得ることができる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
(感光性樹脂組成物の調製)
重合槽中に、メタクリル酸メチル(MMA)を63重量部、アクリル酸(AA)を12重量部、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル(HEMA)を6重量部、ジエチレングリコールメチルエーテル(DMDG)を88重量部仕込み、攪拌して溶解させた後、2,2´−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を7重量部添加し、均一に溶解させた。その後、窒素気流下において、85℃で2時間攪拌し、さらに100℃で1時間反応させた。さらに、このようにして得られた溶液に、メタクリル酸グリシジル(GMA)を7重量部、トリエチルアミンを0.4重量部、ハイドロキノンを0.2重量部添加し、100℃で5時間攪拌し、これにより、共重合樹脂溶液(固形分50%)を得た。
次に、このようにして得られた共重合樹脂溶液(固形分50%)を、下記の材料とともに室温で攪拌して混合し、感光性樹脂組成物を得た。
【0047】
<感光性樹脂組成物の組成>
・共重合樹脂溶液(固形分50%):16重量部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(サートマー社 SR399):24重量部
・オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ社 エピコート180S70):4重量部
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン:4重量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:52重量部
【0048】
(ブラックマトリクスの形成)
次いで、下記の材料を混合し、サンドミルにて十分に分散させることにより、黒色顔料分散液を調製した。
【0049】
<黒色顔料分散液の組成>
・黒色顔料(カーボンブラック):23重量部
・高分子分散剤(ビックケミー・ジャパン(株) Disperbyk111):2重量部
・溶剤(ジエチレングリコールジメチルエーテル):75重量部
【0050】
次に、上記黒色顔料分散液を、下記の材料とともに十分に混合し、ブラックマトリクス用黒色感光性樹脂組成物を得た。
【0051】
<ブラックマトリクス用黒色感光性樹脂組成物の組成>
・黒色顔料分散液:61重量部
・上記の感光性樹脂組成物:20重量部
・ジエチレングリコールジメチルエーテル:30重量部
【0052】
そして、厚み1.1mmのガラス基板(旭硝子(株) AN材)上に上記のブラックマトリクス用黒色感光性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布し、100℃で3分間乾燥させ、厚み1.3μmの遮光膜を形成した。
その後、上記遮光膜を超高圧水銀ランプで、遮光膜を形成した側より表1に記載の表面露光量で露光した後、実施例1〜4においては、さらに遮光膜を超高圧水銀ランプで、遮光膜を形成した側とは反対側より表1に記載の裏面露光量で露光した。
その後、230℃で180分間の加熱処理を施すことにより、遮光膜を作製した。
【0053】
(薄膜密着強度測定)
各実施例・比較例の遮光膜について、薄膜密着強度測定装置(QUAD GROUP社製 ロミュラス(Romulus))を用いて、図4に示すようなセバスチャン法により、遮光膜とガラス基板との密着強度を測定した。また、密着強度を、比較例1を基準として評価した。
【0054】
(組み立て後剥離試験)
また、各実施例・比較例の遮光膜を用いて、カラーフィルタを作製し、さらに、カラーフィルタの額縁領域にシール剤を塗布し、液晶駆動側基板と貼り合わせ、液晶を封入して、液晶パネルを作製した。
この液晶パネルの液晶駆動側基板とカラーフィルタとの間に、剥がれるように、ある一定以上の力をかけた。この剥離試験において、剥離が見られなかったものを○とし、剥離が見られたものを×とした。
【0055】
各実施例・比較例の評価結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1は、規格化した密着強度の値が、127であり、比較例1に比べると、裏面に100mJの露光をすることで、密着強度が27%向上し、液晶パネルを形成しても剥がれがなかった。
実施例2〜4は、裏面の露光量を増やしており、密着強度も次第に上昇している。ただし、実施例3と4で、規格化した密着強度の値が、140であり、特に上昇していないため、裏面露光量が500mJを超えると、これ以上露光しても密着強度が向上しなかった。
また、実施例1〜4は、何れも、遮光膜の密着強度が150kgf/cm以上であった。
【0058】
一方、比較例1〜4においては、表側からの露光量を増やしても、特に薄膜と基板との間で密着強度が向上しなかった。
実施例と比較例より、裏面から露光を行うことにより、密着強度の高いブラックマトリクスを得ることができた。
【0059】
黒色感光性樹脂組成物は、露光光を吸収しやすいため、塗布した側(表側)からの露光を行っても、主に表面で露光光が吸収され、表面が硬化しやすいが、内部では露光光による硬化は進みにくく、ガラス界面付近の硬化は熱によるものが大きく寄与していると考えられる。そのため、比較例1〜4では、表側からの露光量を増やしても、薄膜と基板との間の密着強度が向上しなかったと考えられる。一方、実施例1〜4では、裏面からも黒色感光性樹脂組成物を露光することにより、ガラス界面付近も露光光による硬化が行われるため、ガラス界面との密着性向上につながったものと考えられる。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0061】
1………カラーフィルタ
2a………額縁領域
2b………表示領域
3………基板
5………黒色感光性樹脂組成物
7………感光した黒色感光性樹脂組成物
9………ブラックマトリクス
11………ブラックマトリクス基板
13R………赤色着色層
13B………青色着色層
13G………緑色着色層
15………オーバーコート層
21………フォトマスク
23………フォトマスク用基板
25………遮光膜
27、29………露光光
30………紫外線発生源
31………薄膜密着強度測定装置
33………基板
35………薄膜
37………シール剤
39………スタッドピン
41………液晶表示装置
43………液晶駆動側基板
45………シール剤
47………液晶層
101………カラーフィルタ
102a………額縁領域
102b………表示領域
103………基板
109………ブラックマトリクス
113R………赤色着色層
113B………青色着色層
113G………緑色着色層
115………オーバーコート層
141………液晶表示装置
143………液晶駆動側基板
145………シール剤
147………液晶層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記黒色感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する露光工程と、
前記黒色感光性樹脂組成物を現像して、所定のパターンを有するブラックマトリクスを形成する現像工程と、
少なくとも額縁領域に対応する領域の前記ブラックマトリクスを、基板の裏面から露光する裏面露光工程と、
を備えることを特徴とするブラックマトリクス基板の製造方法。
【請求項2】
前記裏面露光工程が、前記基板の搬送中に行われることを特徴とする請求項1に記載のブラックマトリクス基板の製造方法。
【請求項3】
基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記黒色感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する露光工程と、
前記黒色感光性樹脂組成物を現像して、所定のパターンを有するブラックマトリクスを形成する現像工程と、
少なくとも額縁領域に対応する領域の前記ブラックマトリクスを、基板の裏面から露光する裏面露光工程と、
前記基板上に、前記ブラックマトリクスにより区画された開口部に異なる色の複数の着色層を形成する着色層形成工程と、
を少なくとも備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
基板上に黒色感光性樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記黒色感光性樹脂組成物を、所定のパターンを有するフォトマスクを介して、塗布した側から露光する露光工程と、
前記黒色感光性樹脂組成物を現像して、所定のパターンを有するブラックマトリクスを形成する現像工程と、
前記基板上に、前記ブラックマトリクスにより区画された開口部に異なる色の複数の着色層を形成する着色層形成工程と、
少なくとも額縁領域に対応する領域の前記ブラックマトリクスを、基板の裏面から露光する裏面露光工程と、
を少なくとも備えることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項3または4に記載のカラーフィルタの製造方法を用いてカラーフィルタを製造する工程と、当該製造されたカラーフィルタと液晶駆動側基板を対向させて組み立てる工程と、を具備することを特徴とする液晶表示装置の製造方法。
【請求項6】
基板と、
前記基板上に形成された、黒色樹脂を含むブラックマトリクスと、
を備え、
前記基板と前記ブラックマトリクスの額縁領域での密着強度が150kgf/cm以上であることを特徴とするブラックマトリクス基板。
【請求項7】
基板と、
前記基板上に形成された、開口部を有し、黒色樹脂を含むブラックマトリクスと、
前記ブラックマトリクスの前記開口部を覆うように形成された着色層と、
を少なくとも備え、
前記基板と前記ブラックマトリクスの額縁領域での密着強度が150kgf/cm以上であることを特徴とするカラーフィルタ。
【請求項8】
請求項7に記載のカラーフィルタと
前記カラーフィルタと対向する液晶駆動側基板と、
前記カラーフィルタと前記液晶駆動側基板の間に封入された液晶層と、
前記液晶層を封止するシール剤と、
を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項9】
前記シール剤が、前記カラーフィルタの額縁領域での前記ブラックマトリクス上に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−44842(P2013−44842A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181208(P2011−181208)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】