ブラッグファイバーを用いた光ファイバーセンサ
光学センサは、少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器を備えている。前記第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信している。この光学センサは、第2のポートおよび第3のポートと光通信しているブラッグファイバーを備えている。前記第2の光信号および第3の光信号は、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、米国特許出願第10/616,693号(出願日:2003年7月10日)の一部継続出願である。前記特許出願については、これを参照することにより、その全てがここに組み込まれている。また、前記特許出願は、35U.S.C.119(e)の下で、米国仮特許出願第60/405,049号(出願日:2002年8月20日)に対して、優先権を主張している。この仮特許出願についても、これを参照することにより、その全てがここに組み込まれている。本出願も、35U.S.C.119(e)の下で、米国仮特許出願第60/817,514号(出願日:2006年6月29日)、および、米国仮特許出願第60/837,891号(出願日:2006年8月14日)に対して、優先権を主張する。これらの各仮特許出願についても、これらを参照することにより、その全てがここに組み込まれている。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、光ファイバーセンサに関し、より詳細には、例えば回転、動き、圧力あるいは他の刺激を検知するための、光ファイバー干渉計に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
光ファイバーサニャック干渉計は、光ファイバーセンサの実施例であり、典型的には、ループ状の光ファイバーを有している。この光ファイバーには、そのループの周囲における逆方向の伝播のために、光波が結合される。これらの逆伝播波は、ループを伝わった後、コヒーレントに干渉するように結合され、これにより、光出力信号を形成する。逆伝播波が結合されたとき、光出力信号の強度は、逆伝播波の相対位相の関数に応じて変化する。
【0004】
サニャック干渉計は、特に回転検知について有用であることが確認されている(例えばジャイロスコープ)。ループの対称中心軸についてループが回転することは、よく知られたサニャック効果にしたがって、逆伝播波間の相対位相差を形成し、位相差の量は、ループの回転速度に比例する。結合された逆伝播波の干渉によって生成される光出力信号のパワーは、主に、ループの回転速度の関数として変化する。回転検知は、この光出力信号の検出によって遂行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サニャック干渉計における回転検知の精度は、レーリー後方散乱によって生じるスプリアス波によって影響される。レーリー散乱は、現在の最新式の光ファイバーにおいて生じる。これは、この光ファイバー材料を形成している微小な素材粒子が、少量の光の散乱を引き起こすためである。レーリー散乱の結果、光は、全ての方向に散乱される。ファイバーの取り込み角内における前方向に散乱された光は、前方散乱光である。ファイバーの取り込み角内における後方向に散乱された光は、後方散乱光である。光ファイバージャイロスコープ(FOG)では、検知コイルに沿った時計回りおよび反時計回りの波(ここでは、1次的な時計回りの波、および、1次的な反時計回りの波、と称する)が、レーリー散乱によって散乱される。この1次的な時計回りの波および1次的な反時計回りの波は、ともに、前方および後方のそれぞれに散乱される。この散乱光は、検出器に戻り、1次的な時計回りの波および2次的な反時計回りの波にノイズを加える。この散乱光は、2つのタ
イプ、すなわち、コヒーレントおよびインコヒーレントに分けられる。コヒーレントに散乱する光は、コイルの中央部分を中心とする長さLCのファイバー部分に沿って生じる散乱に由来する。ここで、LCは、光源のコヒーレンス長である。この散乱光は、その由来である1次的な波に対するコヒーレント性を有しており、この1次的な波に対してコヒーレントに干渉する。その結果、かなりの量の位相ノイズが生成される。前方コヒーレント散乱は、それが散乱された元である1次的な波と同調するので、位相ノイズを加えない。その代わり、この前方コヒーレント散乱は、ショットノイズを加える。その散乱のパワーは、1次的な波のパワーよりも小さいので、このショットノイズは無視できる。コイルにおける他の全ての部分は、1次的な波に対してインコヒーレントな散乱光を生成する。前方伝播インコヒーレント散乱光は、その出所である1次的な波のそれぞれに対してショットノイズだけを加え、このショットノイズもまた、無視できる。支配的な散乱ノイズは、コヒーレント後方散乱である。このコヒーレント後方散乱ノイズは、大きくなる可能性がある。コヒーレント後方散乱ノイズは、歴史的には、非常に短いコヒーレンス長LCを有する広帯域源を用いることによって小さくされてきた。広帯域光源を用いる場合、後方散乱部分は、ファイバーの非常に小さい部分(具体的には、ファイバーコイルの中央部分を中心とする、典型的には数十ミクロンの長さLC)から生じる。このために、数メートル以上のコヒーレンス長を有する伝統的な狭帯域レーザを用いる場合に生じるものに比べると、それは劇的に減少する。例えば、Herve Lefevreによる、「The Fiber−Optic Gyroscope(光ファイバージャイロスコープ),Section4.2,Artech House,Boston,London,1993.」、および、そこに引用されている参考文献を参照されたい。
【0006】
回転検知の精度は、干渉計内における逆伝搬波間に位相差を生じさせるACカー効果によっても影響される。このACカー効果は、変化する電場に物質が配されたとき、その物質の屈折率が変化するという、よく知られた非線形光学現象である。光ファイバー内では、光ファイバーを伝搬する光波の電場は、カー効果に従ってファイバーの屈折率を変化させる可能性がある。ファイバー内を伝わるそれぞれの波の伝搬定数が屈折率の関数であるため、カー効果は、伝搬定数に関する強度依存型の摂動として現れる。コイル内を時計回り方向に循環するパワーが、コイル内を反時計回り方向に循環するパワーと完全に同じでない場合には(これは、例えば、2つの逆伝播波を生成する結合器の結合比が50%でないときに生じる)、光学的カー効果は、一般的に、異なる速度で波を伝搬させることになる。その結果、波の間で非回転誘起位相差が生じ、これにより、スプリアス信号が生成される。例えば、前記Herve Lefevreによる、「The Fiber−Optic Gyroscope」の101〜106頁、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。スプリアス信号は、回転誘起信号と区別できない。溶融シリカ光ファイバーは、十分に強いカー非線形を示す。このため、光ファイバージャイロスコープ・コイル内を伝わる光パワーにおける通常のレベルに関しては、光ファイバー回転センサ内でのカー誘起位相差は、低い回転速度でのサニャック効果に起因する位相差よりも、はるかに大きくなる可能性がある。
【0007】
シリカベースのファイバー内のシリカも、磁場によって影響を受ける可能性がある。特に、シリカは、磁気光学的な特性を示す。光ファイバー内における磁気光学的ファラデー効果の結果として、大きさBを有する長手方向の磁場が、Bに比例する量だけ、円偏波の位相を修正する。この円偏波の位相変化は、ファイバー材料のヴェルデ定数V、および、磁場の印加されているファイバーの長さLにも比例する。位相シフトの符号は、光が左円偏光であるか、あるいは右円偏光であるかに依存する。この符号は、また、光の伝搬および磁場における相対的な方向にも依存する。その結果として、直線偏光の場合、この効果により、偏光の向きが、角度θ=VBLだけ、変化する。この効果は、非可逆的である。例えば、同一の円偏波が逆伝搬するリング干渉計あるいはサニャック干渉計内では、磁気光学的ファラデー効果は、逆伝播波の間で、2θに等しい位相差を誘起する。しかし、フ
ァイバーコイルに磁場が印加されると、時計回りの波および反時計回りの波は、一般的に、わずかに異なる位相シフトを経験する。その結果は、波が干渉する光ファイバーループの出力における、時計回りに伝搬する波と反時計回りに伝搬する波との間の、磁場によって誘起された相対的な位相シフトである。この差分位相シフトは、ヴェルデ定数に比例する。この位相差は、ループ内のファイバーの複屈折および磁場の大きさにも依存する。さらに、位相シフトは、光ファイバーループに対する磁場の向き(つまり方向)と、時計回りに伝搬する信号および反時計回りに伝搬する信号の偏光とに依存する。磁場がDCである場合、この差分位相シフトの結果として、サニャック干渉計の位相バイアスにおけるDCオフセットが生じる。磁場が時間とともに変化する場合、この位相バイアスはドリフトするが、これは、一般に望ましくないため、好まれない。
【0008】
地球の磁場は、ナビゲーションに用いられるサニャック干渉計に対し、格別の困難さを引き起こす。例えば、光ファイバージャイロスコープを有する航空機が回転すると、光ファイバーループの相対的な空間的定位は、地球の磁場に対して変化する。その結果として、ファイバージャイロスコープの出力における位相バイアスがドリフトする。この磁場によって誘起されるドリフトは、光ファイバーループが十分に長い場合(例えば、約1000メートルである場合)、相当に大きくなる可能性がある。慣性航法光ファイバージャイロスコープにおける磁場の影響に対抗するために、光ファイバーループを、外部の磁場からシールドするようにしてもよい。複数のμ−金属層を含むシールドを用いることも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
特定の実施形態では、光学センサが提供される。この光学センサは、少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器を備えている。前記第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信している。この光学センサは、第2のポートおよび第3のポートと光通信しているブラッグファイバーをさらに備えている。前記第2の光信号および第3の光信号は、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還する。
【0010】
特定の実施形態では、検知の方法が提供される。この方法は、光信号の出力を含んでいる。この方法は、光信号における第1の部分を、ブラッグファイバーを介して第1の方向に伝播することをさらに含んでいる。この方法は、光信号における第2の部分を、このブラッグファイバーを介して第2の方向に伝播することをさらに含んでおり、この第2の方向は、第1の方向と逆方向である。この方法は、光信号における第1の部分および第2の部分がブラッグファイバーを介して伝播した後、光信号における第1の部分および第2の部分に対して光学的に干渉し、これにより、光干渉信号を生成することをさらに含んでいる。この方法は、ブラッグファイバーにおける少なくとも一部に摂動を適用することをさらに含んでいる。この方法は、この摂動によって前記光干渉信号に生じる変動を測定することをさらに含んでいる。
【0011】
特定の実施形態では、光学システムが提供される。この光学システムは、第1の光信号を出射する出力部を有する光源を備えている。この光学システムは、少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器をさらに備えている。前記光源から出射された第1の光信号を受信するために、第1のポートは、前記光源と光通信している。この第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信している。この光学システムは、
クラッディングによって囲まれている中空コアを有するブラッグファイバーをさらに備えている。このブラッグファイバーは、第2のポートおよび第3のポートと光通信しており、これにより、第2の光信号および第3の光信号が、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還する。このブラッグファイバーの前記クラッディングは、実質的に、逆伝播している第2の光信号および第3の光信号を中空コア内に閉じ込めている。この光学システムは、前記方向性結合器と光通信している光学検波器をさらに備えている。この光学検波器は、前記ブラッグファイバーを横断した後の、逆伝播している第2の光信号および第3の光信号を受信する。
【0012】
特定の実施形態では、摂動センサが提供される。この摂動センサは、クラッディングによって囲まれている中空コアを有するブラッグファイバーを備えている。このブラッグファイバーを介して、第1の光信号および第2の光信号が逆伝播している。このブラッグファイバーのクラッディングは、実質的に、逆伝播している第1の光信号および第2の光信号を中空コア内に閉じ込めている。これら第1の光信号と第2の光信号との間の干渉は、ブラッグファイバーにおける少なくとも一部の摂動に敏感である。
【0013】
さまざまな実施形態が、添付の図面に関連して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光源、ファイバーループ、および光学検波器を示す、例示的な光ファイバーセンサの概略図である。
【図2A】例示的な光ファイバーセンサにおいて用いることの可能な、例示的な中空コア光バンドギャップファイバーにおける周辺クラッディングの一部およびコアの、部分的な斜視図である。
【図2B】中空コアの周りにパターン配置されたクラッディング内におけるさらなる特徴を示す、図2Aに示した例示的な中空コア光バンドギャップファイバーの断面図である。
【図3】光源が狭帯域光源を含んでいる、例示的なサニャック干渉計の概略図である。
【図4】狭帯域光源の振幅を変調するための変調器を備えた狭帯域光源によって駆動される、例示的なサニャック干渉計の概略図である。
【図5】光源が広帯域光源を含んでいる、例示的なサニャック干渉計の概略図である。
【図6】広帯域光源の振幅を変調するための変調器を備えた広帯域光源によって駆動される、例示的なサニャック干渉計の概略図である。
【図7】ここに記載した特定の実施形態にしたがう全光ファイバー空芯PBFジャイロスコープ705の実験装置を示す概略図である。
【図8A】空芯ファイバーの断面における走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8B】空芯ファイバーにおける測定された伝送スペクトルおよび光源からの光源スペクトルを示す図である。
【図9A】回転していない場合における、これらの信号における典型的なオシロスコープトレースを示す図である。
【図9B】回転している場合における、これらの信号における典型的なオシロスコープトレースを示す図である。
【図10】ジャイロスコープが停止した状態で1時間にわたって記録されたfの出力信号のトレースを示す図である。
【図11】中空コア、ハニカムの内部クラッディング、外部クラッディングおよびジャケットを有する円筒形ファイバーの断面を概略的に示す図である。
【図12】結晶ファイバーPBFに関して計算された、ファイバーの中心からの距離の関数としての半径方向の変形を示す図である。差し込み図は、内部クラッディングハニカムにおける半径方向の変形の拡大図である。
【図13】1.5ミクロンでの、空芯ファイバー(実曲線)およびSMF28ファイバー(基準レベル)に関する、S、SnおよびSLにおける規格化されたコア半径Rに対する計算された依存性を示す図である。
【図14A】ここに記載した特定の実施形態に対応する2つのファイバーの断面におけるSEM写真の1つを示す図である。
【図14B】ここに記載した特定の実施形態に対応する2つのファイバーの断面におけるSEM写真の1つを示す図である。
【図15A】それぞれのファイバーにおける温度定数を測定するために使用された、実験用のマイケルソン干渉計を概略的に示す図である。
【図15B】干渉計における非PBF部分の残存熱に起因するフリンジカウントにおけるエラーを測定するために使用された、実験用のマイケルソン干渉計を概略的に示す図である。
【図16A】Blaze・Photonics製のファイバーに関して測定された出力パワーPout(t)を概略的に示す図である。
【図16B】Blaze・Photonics製のファイバーに関して測定された温度T(t)を概略的に示す図である。
【図17】Blaze・Photonics製のPBFと同じ結晶周期および同じコア半径を有するPBFにおける、ジャケットの厚さに対するSLの値を、さまざまな空気充填率に関して示す図である。
【図18】Blaze・Photonics製のPBFと同じファイバー構造ではあるが、ジャケットの材料および厚さの点で異なっているファイバーに関する、SLの計算値を示す図である。
【図19】シリカの外部クラッディングの厚さに対する、SLの計算された依存性を示す図である。
【図20】ここに記載した特定の実施形態に対応する光ファイバージャケットをテストするための、実施例の構成を概略的に示す図である。
【図21】空芯ファイバージャイロスコープの入力信号パワーに対するランダムウォークの測定された依存性を示す図である。
【図22A】空芯ファイバージャイロスコープに適合する温度変化(破線)、および、結果として生じた測定された出力信号における変化(実線)を示す図である。
【図22B】図22Aにおける適合する温度変化の時間微分係数(破線)を、図22Aにおける結果として生じた測定された出力信号における変化の時間微分係数(実線)とともに示す図である。
【図23】FOGコイルにおける最初の数層の4極重巻を概略的に示す図である。
【図24A】従来の固体コアファイバージャイロスコープに適合する温度変化(破線)、および、結果として生じた測定された出力信号(実線)を示す図である。
【図24B】図24Aにおける適合する温度変化の時間微分係数(破線)を、図24Aにおける結果として生じた測定された出力信号の時間微分係数(実線)とともに示す図である。
【図25】従来の固体コアファイバージャイロスコープおよび空芯ファイバージャイロスコープの双方において測定された、適合する温度勾配に対する最大の回転速度エラーの依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
ファイバー干渉計に存在するレーリー後方散乱、カー効果および磁気光学的ファラデー効果によって引き起こされる、ノイズおよび/または位相ドリフト、および、他の精度を制限する効果を減じるか、あるいは除去する必要がある。ここに開示した特定の実施形態にしたがうと、中空コア光バンドギャップファイバーが、能力を向上する、あるいは、他
の設計選択を提供するために、光ファイバーセンサ(例えばサニャック干渉計)に組み込まれている。ここに示された特定の実施形態はサニャック干渉計を利用しているが、他のタイプの干渉計(例えば、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、および、フォックス・スミス干渉計)を利用する光ファイバーセンサについても、中空コア光バンドギャップファイバーを利用することによって、性能向上を得ることが可能である。干渉分光法を利用する光ファイバーセンサについては、光ファイバーの少なくとも一部に対するさまざまな摂動を検出するために使用することが可能である。このような摂動センサについては、ファイバーの少なくとも一部における、磁場、電場、圧力、移動、回転、ねじれ、曲げ、あるいは、他の機械的な変形を感知するように構成することも可能である。
【0016】
図1は、光ファイバーシステム12を含む、例示的なサニャック干渉計5を示している。光ファイバーシステム12は、特定の実施形態では、中空コア光バンドギャップファイバーである光バンドギャップファイバー13を組み込んでいる。光バンドギャップファイバーではなく、従来の光ファイバーを含む同様の光ファイバーシステムのバージョンが、米国特許第4,773,759号明細書(1988年9月27日発行、Bergh他)において、より詳細に説明されている(この文献については、参照することにより、その全体がここに組み込まれている)。
【0017】
光ファイバーシステム12は、光を案内して処理するための光ファイバーシステム12に沿ったさまざまな場所に配されている、さまざまな構成要素を含んでいる。このような構成要素、および、これらをサニャック干渉計5において使用することは、周知である。同様の設計または異なる設計を有するシステム12の代替的な実施形態については、当業者によって実現することが可能であり、ここに説明されている特定の実施形態において使用することが可能である。
【0018】
図1におけるサニャック回転センサ5用として構成されているように、光ファイバーシステム12は、光源16と、中空コア光バンドギャップファイバー13(図2Aおよび図2Bに関連して以下に説明される)とともに形成される光ファイバーループ14と、光検出器30とを含んでいる。光源16から出力される光の波長については、シリカベースの光ファイバーの損失がその最小限に近くなるスペクトル領域内で、約1.50〜1.58ミクロンとすることが可能である。しかしながら、他の波長とすることも可能であり、前記光源から放射される波長は、ここに示される波長に限定されているわけではない。例えば、光ファイバーがシリカ以外の材料を含んでいる場合、前記波長は、光ファイバーによって生じる損失を最小にするか、またはこれを減少するような波長範囲内で選ばれることが有利である。さまざまな実施形態における光源に関する追加的な詳細は、以下でより詳しく説明される。
【0019】
特定の実施形態では、光ファイバーシステム12内のファイバーループ14は、有利なことに、光バンドギャップファイバー13からなる複数の巻線を含んでいる。これは、特定の実施形態では、スプールあるいは他の適切な支持部(図示せず)の周りに巻かれている。1つの具体的な実施例では、ループ14は、光バンドギャップファイバー13の1000以上の巻線を含むことが可能であり、および、約1000メートルの光ファイバー13の長さを含むことができる。光学検波器30については、この技術分野で周知のさまざまな光検出器のうちの1つとすることが可能であるが、まだ発明されていない検出器を同様に用いるようにしてもよい。
【0020】
図1に示されるような干渉計内には、有利なことに、光学偏光コントローラ24を含めることが可能である。偏光コントローラ24の光学的な包含は、システム12の設計に依
存する。偏光コントローラの例については、例えば、H.C.Lefevreの「Single−Mode Fibre Fractional Wave Devices and Polarisation Controllers(単一モードファイバー部分波デバイスおよび偏光コントローラ),Electronics Letters,Vol.16,No.20,1980年9月25日,778〜780頁)」、および、米国特許第4,389,090号明細書(1983年6月21日発行、Lefevre)に説明されている。これらの文献については、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。前記偏光コントローラ24は、印加される光の偏光状態の調整を可能とする。有利なことに、他のタイプの偏光コントローラを用いることも可能である。
【0021】
図1に示した偏光コントローラ24は、方向性結合器26のポートAに対して光学的に結合されている。この方向性結合器26は、ポートAによって受信した光を、この結合器26のポートBおよびポートDに対して結合させる。結合器26上のポートCは、光学検波器30に対して光学的に結合されている。サニャック干渉計から戻ってくる光は、ポートBによって受信され、ポートAおよびポートCに結合される。このように、ポートBによって受け取られた戻り光は、ポートCに光学的に結合された光学検波器30によって検出される。図示するように、ポートDは、「NC」(「接続されず」を意味する)と描かれたポイントにおいて、非反射的に終端する。結合器26として用いることの可能な結合器の例については、米国特許第4,536,058号明細書(1985年8月20日発行、ショウ他)、および、ヨーロッパ特許公報第0038023号明細書(1981年10月21日発行)において詳細に説明されている。これら双方については、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。しかしながら、他の種類の光結合器(例えば、溶融結合器、集積光結合器、またはバルク光学機器を含む結合器など)を、同様に用いることも可能である。
【0022】
方向性結合器26のポートBは、偏光子32に対して光学的に結合されている。この偏光子32を通過した後、システム12の光路は、第2の方向性結合器34のポートAに続く。この結合器34については、第1の方向性結合器26に関して上記のものと同じタイプであってもよいが、それに限定されているわけではなく、光集積装置またはバルクの光学デバイスを含んでもよい。特定の実施形態では、結合器34のポートAに入る光は、それがポートBおよびポートDに結合されるときに、実質的に等しく分割される。光の第1の部分W1は、図1に示されるように、結合器34のポートBから出て、ループ14の周りを時計回りの方向に伝搬する。光の第2の部分W2は、図1に示されるように、結合器34のポートDから出て、ループ14の周りを反時計回りの方向に伝搬する。図示するように、結合器34のポートCは、「NC」と描かれたポイントにおいて、非反射的に終端する。特定の実施形態では、第2の結合器34は、印加された光を2つ逆伝播波W1とW2とに分割するためのビームスプリッタとして機能する。さらに、第2の結合器34は、また、ループ14を伝わった後の逆伝播波を再び組み合わせる。上記のように、図1に示された光ファイバー方向性結合器26、34に代えて、他の種類のビームスプリッティングデバイスを用いることも可能である。
【0023】
バイアスを与えるために非対称的に配置された位相変調器を用いている光ファイバージャイロスコープ内のコヒーレント後方散乱ノイズについては、結合器34の結合比をきっかり50%に選択することによって、実質的に減少あるいは除去することが可能である。例えば、J.M.Mackintosh他による「Analysis and observation of coupling ratio dependence of Rayleigh backscattering noise in a fiber
optic gyroscope(光ファイバージャイロスコープ内のレーリー後方散乱ノイズにおける結合比依存の分析および観察),Journal of Lightwave Technology,Vol.7,No.9,1989年9月、1323〜1
328頁」を参照されたい。50%の結合効率を与えるこの技術については、有利なことに、ループ14内で光バンドギャップファイバー13を用いる図1のサニャック干渉計5内で使用することが可能である。光バンドギャップファイバー、および中空(例えばガス入り)コアを有するブラッグファイバーでは、後方散乱は、3つの主な発生源からもたらされる。第1の発生源は、中空コアを満たすガスからのバルク散乱(および、クラデッィング穴を満たすガスからのもの)であり、これについては無視できる。第2の発生源は、導波管の固体部分からのバルク散乱である。この固体部分とは、具体的には、ブラッグファイバーにおけるコアを取り巻く交互屈折率(alternating index)の同心円状の輪、および、光バンドギャップファイバーにおける前記穴を取り巻く固体薄膜である。第3の発生源は、導波管の固体部分(特に、コアの外縁を規定する固体)の表面において生じる表面散乱である。この散乱は、この表面の不規則性、あるいは、これらの表面における大きさおよび形状に関する同等にランダムな変動に起因する。ファイバーを適切に設計すれば、表面散乱については、これらの変動の振幅を減じることによって最小化することが可能である。このような状況の下では、表面散乱は、バルク散乱の中心となり、そして、表面散乱は、従来の固体コアの屈折率導波型単一モードファイバーの表面散乱よりも著しく小さくなる。したがって、図1のサニャック干渉計5における後方散乱ノイズについては、光バンドギャップファイバー13の本質的に低いレーリー後方散乱によって与えられるレベルよりも低く減少することが可能である。サニャック干渉計5については、有利なことに、全体的なノイズを非常に低くする必要のある高回転感度用途のための光ファイバージャイロスコープとして、用いることが可能である。
【0024】
50%の結合効率を有する結合器34を使用する前記技術は、結合器34の結合比がちょうど50%にとどまる限りは、うまく働く。しかしながら、ファイバー環境は変化するため(例えば、結合器の温度は揺動するため)、または、結合器34は経年変化するため、結合比は、通常、少量づつ変化する。これらの条件の下では、前の段落において説明したコヒーレント後方散乱をゼロにするための条件を継続的に満たすことはできない可能性がある。この結合技術とともに、ループ14内で従来のファイバーに代えて光バンドギャップファイバー13を用いることは、結合比の許容差をちょうど50%に緩和する。光バンドギャップファイバー13は、また、結合比がその好ましい値である50%から一定程度に逸脱することによって生じる、後方散乱ノイズレベルも減じる。
【0025】
偏光コントローラ36については、有利なことに、第2の方向性結合器34とループ14との間に配置することが可能である。この偏光コントローラ36については、コントローラ24と同様のタイプのものとしてもよいし、または、それとは異なる設計を有するものとしてもよい。この偏光コントローラ36は、ループ14を逆伝播する波の偏光を調整するために使用される。これにより、これらの波の重畳によって形成される光出力信号が、最小の光パワー損失をもって偏光子32によって効率的に伝えられるような、偏光を有する。したがって、偏光コントローラ24、36の両方を用いることによって、ファイバー12を伝搬する光の偏光を、最大の光パワーに応じて調整することが可能となる。このように偏光コントローラ36を調整することは、偏光の相互関係を保証する。偏光子32と偏光コントローラ24、36との組み合わせを用いることは、前記米国特許第4,773,759号明細書に開示されている。また、前記Herve Lefevreの「The Fiber−Optic Gyroscope」の第3章についても参照されたい。
【0026】
第1の位相変調器38は、AC発生器40によって駆動され、線41によってAC発生器40に接続されている。特定の実施形態では、この位相変調器38は、ファイバーループ14と結合器34との間の光路内の、光ファイバー13に取り付けられる。図1に示されるように、この位相変調器38は、ループ14内に、非対称的に配置される。したがって、時計回りに伝搬する波W1の変調は、反時計回りに伝搬する波W2の変調と必ずしも同相ではない。なぜならば、時計回りの波W1と反時計回りの波W2との対応部分は、異
なる時間に位相変調器を通るからである。実際に、波の変調は、位相不一致でなければならず、このため、位相変調器38が、2つの波の間に差分位相シフトを導入するための手段を与えなければならない。この差分位相シフトは、測定量(例えば、低い回転速度)に対して干渉計が0ではない1次感度を示すように、干渉計の位相にバイアスをかける。より具体的には、特定の実施形態における波W1の変調は、波W2の変調から約180°だけ位相がずれており、このため、1次感度が最大あるいはほぼ最大になる。この変調に関する詳細については、前記米国特許第4,773,759号明細書に示されている。
【0027】
さまざまな実施形態では、ループ位相変調器38によって与えられる位相の振幅および周波数については、コヒーレント後方散乱ノイズが実質的にキャンセルされるように、選択することが可能である。例えば、J.M.Mackintosh他による、前記「Analysis and observation of coupling ratio
dependence of Rayleigh backscattering noise in a fiber optic gyroscope」を参照されたい。この選択技術は、有利なことに、光バンドギャップファイバーループを使用している光ファイバージャイロスコープにおいて使用することが可能である。したがって、この後方散乱ノイズについては、光バンドギャップファイバーの本質的に低いレーリー後方散乱によって許容されるレベルより低く減じることが可能であり、これは、全体ノイズを非常に低くする必要のある用途において有用となる可能性がある。対照的に、ループ位相変調器38によって与えられる位相の振幅および周波数を選択するためのこの技術は、与えられた位相の振幅および周波数がそれらのそれぞれの最適値とちょうど等しい限り、うまく機能する。この技術とともに、従来のファイバーの代わりに光バンドギャップファイバーループを用いることは、ループ位相変調器38によって与えられる位相の振幅および周波数の安定度における許容度を緩和する。この選択技術は、また、ループ位相変調器38によって与えられる変調の振幅、周波数、あるいは、振幅および周波数の双方が、それらのそれぞれの好ましい値から変わる場合に生じることのある後方散乱ノイズレベルについても、減じる。
【0028】
特定の実施形態では、第2の位相変調器39が、ループ14の中央に取り付けられる。この第2の位相変調器39は、信号発生器(図示せず)によって駆動される。この第2の位相変調器39については、有利なことに、後方散乱光の効果を減じるために使用することが可能である。これについては、例えば、前記米国特許第4,773,759号明細書に記載されている。第2の位相変調器39については、前記第1の位相変調器38と同様のものとすることが可能である。しかしながら、特定の実施形態では、この第2の位相変調器は、第1の位相変調器38とは異なる周波数で動作する。また、特定の実施形態では、第2の位相変調器39は、第1の位相変調器38と同期していない。
【0029】
さまざまな実施形態では、ループ14内の光バンドギャップファイバー13と、位相変調器38、39とは、有利なことには、偏光保存ファイバーを含んでいる。このような場合、偏光子32は、必要とされるセンサの精度に応じて、除外されてもよく、または除外されなくてもよい。一実施形態では、前記光源16は、直線偏光を出力するレーザダイオードを含み、この光の偏光は、偏光維持ファイバーの固有モードと一致させられている。このような場合、レーザダイオード10から出力される光の偏光については、光ファイバーシステム12内で維持することが可能である。
【0030】
AC発生器40からの出力信号は、図1において、線44上でロックインアンプ46に向けて供給されているように図示されている。このロックインアンプ46もまた、線48を介して接続されており、これにより、光学検波器30の電気出力を受け取る。アンプ46に向かう線44上の信号は、基準信号を与える。これにより、ロックインアンプ46が、位相変調器38の変調周波数において線48上の検出器出力信号を同期的に検出するこ
とが可能となる。これにより、特定の実施形態におけるロックインアンプ46は、この周波数における他のすべての高調波をブロックする位相変調器38の基本周波数において、効率的に帯域通過フィルタを提供する。検出される出力信号におけるこの基本的な構成要素のパワーは、動作範囲では、ループ14の回転速度に比例する。ロックインアンプ46は、この基本的な構成要素内のパワーに比例した信号を出力し、これにより、回転速度における直接的な表示を与えている。これについては、ロックインアンプ出力信号を線49上のディスプレイパネル47に供給することによって、ディスプレイパネル47において目に見えるように表示することが可能である。なお、他の実施形態では、ロックインアンプについては、異なるモードで動作してもよく、または、全く除外されていてもよい。また、信号については、代替的な方法によって検出するようにしてもよい。例えば、B.Y.Kimによる「Signal Processing Techniques,Optical Fiber Rotation Sensing(信号処理技術、光ファイバー回転検知),William Burns,Editor,Academic Press,Inc.,1994年、第3章、81〜114頁)」を参照されたい。
【0031】
光ファイバー
周知のように、従来の光ファイバーは、より低い屈折率のクラッディングによって囲まれた、高い屈折率の中央コアを含んでいる。コアとクラッディングとの間の屈折率の不整合のために、光ファイバーコアに沿った角度範囲内で伝搬する光は、コアとクラッディングとの境界において完全に内側に反射されるため、ファイバーコアによって案内される。必ずというわけではないが、通常、ファイバーは、光における多くの部分がコア内にとどまるように設計されている。以下に説明するように、光ループ14内の光バンドギャップファイバー13は、導波管としても作用する。しかしながら、この導波管は、異なる形態で形成され、そのモード特性は、従来のファイバーを用いているファイバー干渉計(例えば、サニャック干渉計)の性能を制限するさまざまな効果を、光ファイバーシステム12の一部(特に、光ループ14内)において光バンドギャップファイバー13を用いることによって減じることが可能となる。
【0032】
中空コア光バンドギャップファイバー13の例が、図2Aおよび図2Bに示されている。中空コア光バンドギャップファイバー(フォトニック結晶ファイバー)は、周知である。例えば、「Article Comprising a Microstructure Optical Fiber,and Method of Making such Fiber(微細構造光ファイバーを含む製品、および、このようなファイバーを製造するための方法)」と題された米国特許第5,802,236号明細書(1998年9月1日発行、DiGiovanni他)、「Photonic Crystal Fibers(フォトニック結晶ファイバー)」と題された米国特許第6,243,522号明細書(2001年6月5日発行、Allen他)、「Method of Fabricating Photonic Glass Structures by Extruding,Sintering and Drawing(押出、焼結および延伸によってフォトニックガラス構造を製造するための方法)」と題された米国特許第6,260,388号明細書(2001年7月17日発行、Borrelli他)、「Ring Photonic Crystal Fibers(リングフォトニック結晶ファイバー)」と題された米国特許第6,334,017号明細書(2001年12月25日発行、West他)、および、「Single Mode Optical Fiber(単一モード光ファイバー)」と題された米国特許第6,334,019号明細書(2001年12月25日発行、Birks他)を参照されたい。これらは、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。
【0033】
図2Aおよび図2Bに示すように、中空コア光バンドギャップファイバー13は、中央コア112を含んでいる。クラッディング114は、このコア112を囲んでいる。従来
のファイバーにおける中央コアとは異なり、特定の実施形態におけるファイバー13の中央コア112は、中空である。中空コア112内の開放領域については、真空化するようにしてもよいし、あるいは、空気または他のガスによって充填するようにしてもよい。クラッディング114は、中空コア112内での伝搬に光を拘束する光バンドギャップ構造を形成するために反復的なパターンに配置された、複数の特徴116を含んでいる。例えば、図2Aおよび図2Bにおけるファイバー13の例では、特徴116は、中空コア112の周りにおいて、複数の同心三角形をなすように配置されている。このパターン例における2つの最も内側の孔層が、図2Aの部分的な斜視図に示されている。同心の4つの孔層かなる完全なパターンは、図2Bの断面図に例示されている。例示される孔のパターンは三角形であるが、有利なことに、他の配置またはパターンを用いることも可能である。さらに、コア112の直径、および、特徴116のサイズ、形状、および間隔は変わってもよい。
【0034】
図2Aにおいて想像線によって示されるように、特徴116は、有利なことに、マトリックス材料118内に形成される複数の中空のチューブ116を含むことも可能である。この中空のチューブ116は、相互に平行で、且つ、光バンドギャップファイバー13の長さに沿って延びており、これにより、チューブ116は、図2Bに示される三角形のグリッドパターンを維持している。それぞれのチューブ116を取り囲むマトリックス材料118は、例えば、シリカ、シリカベースの材料、あるいはこの技術分野で周知の他のさまざまな材料、および、まだ開発されていないか、光バンドギャップ技術にまだ適用されていない光誘導材料を含む。
【0035】
この特徴(例えば孔)116は、光バンドギャップを形成するように、特別に配置されている。特に、特徴116を分離している距離、グリッドの対称性、および特徴116のサイズは、クラッディングが無限である場合(つまり、コア112のない場合)に、ある周波数範囲内の光がクラッディング114内を伝搬しないような光バンドギャップを形成するように、選択される。ここで「欠陥」とも呼ばれるコア112の導入は、この本来のクラッディング構造における対称性を破り、ファイバー13内に新しいモードセットを導入する。ファイバー13内におけるこれらのモードは、コアによって導かれるエネルギーを有しており、コアモードとも呼ばれる。特定の実施形態における特徴(例えば、孔)116のアレイは、中空コア112内における光エネルギーの強い集中を生成するように、特別に設計されている。特定の実施形態では、光は、非常に低い損失をもって、ファイバー13における中空コア112内のほぼ全体を伝搬する。典型的な低損失空芯光バンドギャップファイバーについては、N.Venkataraman他による「Low Loss(13 dB/km)Air Core Photonic Band−Gap Fiber(低損失(13dB/km)空芯光バンドギャップファイバー),Proceedings of the European Conference on Optical Communication,ECOC2002,Post−deadline Paper No.PD1.1,2002年9月」に記載されている。
【0036】
さまざまな実施形態では、ファイバーが「単一モード」であるように(つまり、コア112が基本的なコアモードのみをサポートするように)、さらにファイバーパラメータが選択される。この単一モードは、実際には、基本モードにおける2つの固有偏光を含んでいる。したがって、ファイバー13は、両方の固有偏光に対応する2つのモードをサポートしている。特定の実施形態では、ファイバーが、基本コアモードの2つの固有偏光のうちの1つのみをサポートし且つ伝搬させるコアを有する単一偏光ファイバーとなるように、ファイバーパラメータがさらに選択される。特定の実施形態では、ファイバーは、マルチモードファイバーである。
【0037】
公知の、およびまだ発明されていない他の種類の光バンドギャップファイバーまたは光
バンドギャップデバイスについては、サニャック回転センサ、および、他の目的のために用いられる干渉計に採用することも可能である。例えば、有利に用いることの可能な他の種類の光バンドギャップファイバーの1つに、ブラッグファイバーがある。
【0038】
ここに開示した特定の実施形態にしたがうと、性能の向上あるいは他の設計ブラッグファイバーは、能力を向上する、あるいは、他の設計選択を提供するために、光ファイバーセンサ(例えばサニャック干渉計)に組み込まれている。ここに示された特定の実施形態はサニャック干渉計を利用しているが、他のタイプの干渉計(例えば、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、および、フォックス・スミス干渉計)を利用する光ファイバーセンサについても、ブラッグファイバーを利用することによって、性能向上を得ることが可能である。干渉分光法を利用する光ファイバーセンサについては、光ファイバーの少なくとも一部に対するさまざまな摂動を検出するために使用することが可能である。このような摂動センサについては、ファイバーの少なくとも一部における、磁場、電場、圧力、移動、回転、ねじれ、曲げ、あるいは、他の機械的な変形を感知するように構成することも可能である。
【0039】
ブラッグファイバーは、コアを取り囲むクラッディングを含んでいる。コアとクラッディングとの境界は、高い屈折率と低い屈折率とが交互になった複数の材料薄層を含んでいる。さまざまな好ましい実施例では、クラッディング界面(つまり、コアとクラッディングとの境界)は、コアを取り囲む複数の同心環状材料層を含んでいる。前記薄層は、ブラッグ反射板として作用し、低屈折率のコア内に光を含む。例えば、特定の実施形態におけるコアは、中空である(例えば、ガスあるいはガスの組み合わせ(空気など)を含んでいる)。ブラッグファイバーは、例えば、P.Yeh他による「Theory of Bragg Fiber(ブラッグファイバーの理論),Journal of Optical Society of America,Vol.68,1978年、1197〜1201頁)」、米国特許第7,190,875号明細書、米国特許第6,625,364号明細書、米国特許第6,463,200号明細書に記載されている。これらのそれぞれは、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。ブラッグファイバーに関して、従来のファイバーとの界面における後方散乱および後方反射の量は、他のタイプの光バンドギャップファイバーに関するものとは異なる可能性がある。斜め接続に関し、ブラッグファイバーと従来のファイバーとの界面からの後方反射の量は、他のタイプの光バンドギャップファイバーについてのものとは異なった形態で、角度、波長および空間的定位に依存することが可能である。さらに、以下により詳細に示すように、特定の実施形態では、ブラッグファイバーは、有利なことに、温度揺動に対する位相感度を減少する。
【0040】
光ファイバージャイロスコープ(FOG)は、一般的に、少数の有害な効果によって制限される。この有害な効果とは、ループファイバーの望ましくない特性から生じる有害な効果であり、具体的には、レーリー後方散乱、カー効果、ファラデー効果および熱(シュウプ)効果である。これらの効果は、ジャイロスコープの出力における短期間のノイズ、および/または、長期間のドリフトを招来する。これらは、長期間にわたって低い回転速度を正確に測定するための能力を制限する。これらの有害効果における小さな未修正部分は、慣性航法FOGに対する、残存している主な障害の1つを構成する。
【0041】
サニャック干渉計において、従来の光ファイバーの代わりに中空コア光バンドギャップファイバーを用いることにより、レーリー後方散乱、カー効果、および磁場の存在によって生じるノイズおよびエラーを実質的に減じることが可能となる。中空コア光バンドギャップファイバーでは、光学モードパワーは、主として、中空コア(例えば、空気、他のガス、または真空を含み得る)に拘束される。レーリー後方散乱、カー非線形、およびヴェルデ定数は、空気、他のガス、および真空中にあるときには、シリカ、シリカベースの材
料、および他の固体の光学材料内にある場合よりも、実質的により少なくなる。これらの効果が減少することは、光バンドギャップファイバーの中空コアに含まれる光学モードパワーが部分的に増大することと合致する。
【0042】
カー効果および磁気光学効果は、サニャック干渉計のバイアスポイントにおいて長期のドリフトを誘起する傾向がある。これにより、結果として、スケールファクタのドリフトが、位相シフトを、光ファイバージャイロスコープに適用される回転速度に関連づけることとなる。対照的に、レーリー後方散乱は、測定される位相に対し、主として短期のノイズを導入する傾向があり、これによって、検出可能な回転速度の最小値を上げる。これらの効果のそれぞれは、検出された光信号から所望の情報を抽出することを妨げる。特定の実施形態では、中空コア光バンドギャップファイバー13を干渉計5に組み込むことは、有利なことに、これらの効果を弱める。
【0043】
パラメータηnlは、ここでは、光バンドギャップファイバーの固体部分における、基本モード強度の2乗の一部として定義される。同様に、パラメータηは、ここでは、光バンドギャップファイバーの固体部分における、基本モードのパワーの一部として定義される。カー非線形によって生じるノイズが引き起こす位相ドリフトは、パラメータηnlに比例する。磁気光学効果によって生じる位相ドリフト、および、レーリー後方散乱によって導入されるノイズのぞれぞれは、ηが小さすぎない限りは、以下では、パラメータηに比例する。ηnlの効果の分析について、カー効果に関して説明する。レーリー後方散乱および磁気光学ファラデー効果に関する同様の分析については、パラメータηを用いることによって実施することが可能である。
【0044】
カー効果
モードエネルギーには、光バンドギャップファイバーのコアを含む孔内に存在するものもあり、また、モードエネルギーには、ファイバーの固体部分(典型的には、シリカベースのガラス)内に存在するもある。このため、光バンドギャップファイバー(PBF)におけるカー効果は、2つの寄与を含んでいる。1つの寄与は、ファイバーの固体部分からであり、また、1つの寄与は孔からである。光バンドギャップファイバーにおける残余のカー定数(n2,PBF)については、以下の式にしたがって、これらの2つの寄与の合計として表わすことが可能である。
【0045】
【数1】
【0046】
この式では、n2,solidは、ファイバーにおける固体部分(例えばシリカを含むことが可能である)のカー定数である。また、n2,holesは、例えば、真空化され、ガスで充填され、または空気で充填されている、孔のカー定数である。孔が真空化されている場合、カー非線形は、0である。これは、真空のカー定数が0であるためである。カー定数が0に等しい場合、式(1)内の項n2,holes(1−ηnl)に対応する第2の寄与は、存在しない。この場合、カー非線形は、残りの項n2,solidηnlによって示されるような、パラメータηnlに比例する。しかしながら、孔が空気で充填されており、これが、小さくはあるが有限のカー定数を有する場合、両方の項(n2,solidηnl+n2,holes(1−ηnl))が存在する。前記式(1)は、このより一般的な事例を説明する。
【0047】
特定の実施形態では、パラメータηnlは、Aeff/Aeff,silicaと等しい。ここで、AeffおよびAeff,silicaは、それぞれ、モード有効範囲、および、シリカにおけるモード有効範囲である。これらの量については、以下のように計算
することが可能である。
【0048】
【数2】
【0049】
ここで、ngはモードグループ速度であり、εrは比誘電率であり、Eはモードの電場である。なお、パラメータηnlは、光バンドギャップファイバーの固体部分における基本モード強度の2乗の一部であり、光バンドギャップファイバーの固体部分における基本モードのパワーではない。これは、通常ηで定義され、光バンドギャップにおける他の特性に相当する。
【0050】
標準的なシリカファイバーに関しては、クラッディング内に含まれる光学モードのパーセンテージは、一般的に、10%〜20%の範囲内にある。中空コア光バンドギャップファイバー13内では、クラッディング114内の光学モードのパーセンテージは、約1%または実質的にそれよりも少ないと推定される。したがって、光バンドギャップファイバー13内では、ファイバーの固体部分による有効非線形については、約20分の1に減少することが可能となる。この推定によると、中空コア光バンドギャップファイバー13を用いることによって、カー効果については、少なくとも1桁分は減少することが可能であり、好適な設計では、さらに減少することができる。実際、ファイバーの固体部分のカー定数n2,solidが、孔の寄与n2,holes(1−ηnl)と比較して無視できるほどであるほど十分に小さいパラメータηnlを用いて、光バンドギャップファイバーを設計できることが、測定によって示されている。たとえ、n2,solidがn2,holesよりもずっと大きい場合であっても、n2,holes(1−ηnl)がn2,solidηnlよりも大きくなるほどηnlが十分に小さくなるように、ファイバーを設計することが可能である。例えば、D.G.Ouzounov他による「Dispersion and nonlinear propagation in air−core photonic−bandgap fibers(空芯光バンドギャップファイバーにおける分散および非線形伝搬),Proceedings of the Conf. on Lasers and Electro−optics,Paper CThV5,2003年6月)」を参照されたい。
【0051】
後方散乱および磁気光学的効果
式(1)と同様の関係が、レーリー後方散乱および磁気光学ファラデー効果に当てはまる。したがって、式(1)は、レーリー後方散乱、磁気光学ファラデー効果、およびカー効果を含む、以下のようなより一般的な形で書くことが可能である。
【0052】
【数3】
【0053】
式(2)では、Fは、それぞれの係数、カー効果n2、ヴェルデ定数V、またはレーリー散乱係数αSのうちのいずれかに対応する。項FPBF、Fsolid、およびFholesは、それぞれ、光バンドギャップファイバー、固体材料、および孔に関する適切な定数を示す。例えば、カー定数n2がFの代わりに用いられる場合、式(2)は、式(1)になる。ヴェルデ定数VがFの代わりに用いられる場合、式(2)は、光バンドギャップファイバーの有効なヴェルデ定数を示す。
【0054】
式(2)の第1の項、Fsolidηは、ファイバーの固体部分の寄与から生じ、第2の項Fholes(1−η)は、孔の寄与から生じる。従来のファイバーでは、第1の項だけが存在する。光バンドギャップファイバー内では、固体部分に関する項Fsolidηと、中空部分のための項Fholes(1−η)との両方が、一般に寄与する。これらの項の寄与は、パラメータηによって定量化される、固体におけるモードのパワーの相対的なパーセンテージに依存する。上記のように、ηが適切なファイバー設計によって十分に小さく作られている場合、例えば、第1の項Fsolidηについては、無視できるほどの値にまで小さくすることが可能であり、第2の項Fholes(1−η)が支配的になる。これは有益である。なぜならば、FholesがFsolidよりもずっと小さいからであり、このことは、第2の項が小さく、したがって、Fが小さいことを意味するためである。この第2の項Fholes(1−η)については、孔内の空気を、減じられたカー定数n2、減じられたヴェルデ定数V、減じられたレーリー散乱係数αS、またはこれらの係数の全ての(あるいはいくつかの)減じられた値を有するガスに取替えることによって、さらに減少することが可能となる。この第2の項Fholes(1−η)については、ファイバー内の孔が真空化されている場合、0にまで減少することが可能である。
【0055】
以上のように、レーリー後方散乱、カーによって誘起された位相エラー、および磁場によって誘起された光信号上の位相シフトに対する固体の寄与については、パラメータηおよびηnlを小さくすることによって減少することが可能である。したがって、レーリー後方散乱、カー非線形、および磁場効果における固体の寄与を比例的に小さくするために、光バンドギャップファイバーは、これらのパラメータを減少するように設計される。例えば、中空コア光バンドギャップファイバーの特定の設計では、値ηを、約0.003以下とすることが可能である。けれども、この範囲は、限定として解釈されるべきではない。さらに、このバルク散乱の寄与に加えて、表面散乱は、より大きい寄与を与える可能性がある
以上のように、光ファイバー内のレーリー後方散乱は、後方散乱を生成する1次的な波における本来の伝搬方向とは逆の方向にファイバーを伝搬する反射波を作り出す。このような後方散乱光は、逆伝播波W1、W2を含む光に対してコヒーレントであるため、後方散乱光は、1次的な波に干渉し、これにより、検出器30によって測定される信号に強度ノイズを加える。
【0056】
特定の実施形態では、後方散乱は、ループ14内で中空コア光バンドギャップファイバー13を用いることによって、小さくなる。上記のように、中空コア光バンドギャップファイバー13によってサポートされる光学モードのモードエネルギーは、実質的に中空コア112に拘束される。従来の固体コア光ファイバーと比較すると、中空コア112内の真空、空気、またはガスを伝搬する光に関する散乱は、より少ないものとなる。
【0057】
孔(中空コアを含む)内のモードエネルギーの相対量を増大することによって、ファイ
バーにおける固体部分内のモードエネルギー量を減少することによって、特定の実施形態における後方散乱が減少する。したがって、光ファイバーシステム12のループ14内で光バンドギャップファイバー13を用いることによって、後方散乱を実質的に減少することが可能となる。
【0058】
中空コアファイバーは、干渉計の性能に対する磁場の効果も減少する。上記のように、ヴェルデ定数は、シリカベースのガラス等の固体光学材料内にあるよりも、空気、ガス、および真空中での方が小さい。中空コア光バンドギャップファイバー内における光の大部分は中空コア内を伝搬するため、磁気光学的に誘起される位相エラーが小さくなる。したがって、より少ない磁場シールドしか必要にならない。
【0059】
光源
多数の振動モードまたは周波数を含むレーザ光、例えば、超蛍光ファイバー源(SFS)からの光についても、ここで説明される回転感知装置内で使用することが可能であり、これにより、同様の条件下での単一周波数源からの光の場合よりも、より低い回転速度エラーを得られる。いくつかの実施形態では、マルチモードレーザも採用することが可能である。特に、カーによって誘起された回転速度エラーは、レーザ内の振動モード数と反比例する。なぜならば、多数の周波数成分が、カー効果内の自己位相変調項および相互位相変調項を少なくとも部分的に平均化し、これにより、カーによって誘起された正味の位相エラーを減少するからである。この現象の数学的分析およびカーによって誘起される位相エラーの減少例については、前記米国特許第4,773,759号明細書に開示されている。
【0060】
超蛍光源については、図1の光ファイバーシステム12とともに用いることが可能であるが、特定の実施形態におけるシステム12は、実質的な固定単一周波数を有する光を出力する光源16を組み込んでいる。光ファイバージャイロスコープのスケールファクタは、光源の平均波長に依存する。このため、この波長の不規則な変動は、波長ファクタの不規則な変動につながり、これは、測定される回転速度に望ましくないエラーをもたらすことになる。実質的に安定している出力波長を有する光源が、電気通信用途のために開発されており、これらの光源は、光ファイバー回転感知システムでの使用にとって有用である。しかしながら、これらの光源は、通例、狭帯域源である。したがって、もしも従来の光ファイバーとともにこれらの狭帯域の安定した周波数の光源を用いるなら、カー効果の補償のために上記のような広帯域マルチモードレーザ源を用いることと矛盾することになる。
【0061】
しかしながら、図3は、特定の実施形態に応じた干渉計305を示している。この干渉計305は、干渉計バイアス内のドリフトに対するカーの寄与を減じながら、実質的に安定した波長を得ることが可能である。この干渉計305は、中空コア光バンドギャップファイバー13に組み合わされる、安定した周波数の狭帯域光源316を備えた光ファイバーシステム312を含んでいる。中空コア光バンドギャップファイバー13を光ファイバーシステム312に導入することにより、有利なことに、実質的に安定した周波数出力を有する従来から利用可能であった狭帯域光源316を用いることが可能となる。図3のサニャック干渉計305は、図1のサニャック干渉計5と同様であり、図1と同様の要素については、図3においても同じ番号で特定されている。図1の光ファイバーシステム12に関して上で説明したように、図3の光ファイバーシステム312も、中空コア光バンドギャップファイバー13のある長さを含む、光ループ14を備えている。この狭帯域光源316は、有利なことに、レーザまたは他のコヒーレント光源等の発光デバイス310を含んでいる。発光レーザ310の例としては、レーザダイオード、ファイバーレーザ、または固体レーザを挙げられる。特定の実施形態では、狭帯域レーザダイオードを有するFOGの操作は、有利なことに、波長安定度、および、これによるスケールファクタの安定
度がはるかに高いこと、および場合によっては低コストであるという観点において、最新の広帯域源よりもはるかに優れている。他のレーザあるいは他の種類の狭帯域光源についても、有利なことに、他の実施形態において用いることが可能である。いくつかの実施形態では、狭帯域光源316は、例えば、約1GHz以下、約100MHz以下、あるいは約10MHz以下のFWHMスペクトル帯域幅を有する光を出力する。前記範囲から外れる帯域幅を有する光源についても、他の実施形態に含めることが可能である。
【0062】
上記のように、特定の実施形態における光源316は、安定した波長で動作する。いくつかの実施形態では、出力波長は、例えば約±10−6(つまり、±100万分の1(ppm))を超えて逸脱することはない。特定の実施形態では、波長の不安定性は、約±10−7(つまり、±0.1ppm)以下である。このような波長の安定性を提供する、電気通信用途に広く製造されたレーザ等の狭帯域光源が、現在、利用可能である。したがって、安定した波長の光源を用いる結果として、サニャック干渉計におけるスケールファクタの安定性が高められる。
【0063】
狭帯域光源は、結果的に、広帯域光源を用いる場合よりも、より長いコヒーレンス長をも与える。したがって、狭帯域光源は、コヒーレント後方散乱によって生成されるノイズの寄与を増大する。例えば、時計回りに伝搬する光信号W1が、ループ14内の欠陥に遭遇すると、この欠陥が、光信号W1からの光を、反時計回りの方向に後方散乱する可能性がある。この後方散乱光は、反時計回りに伝搬する1次的な光信号W2の光と組み合わさり、それと干渉する。この干渉は、これらの2つの光信号が伝わる光路差が光のおよそ1コヒーレンス長内にある場合に、後方散乱されたW1光と反時計回りの1次的な光W2との間で生じる。ループ14の中心からより遠く離れた散乱点の場合には、この光路差は最も大きくなる。したがって、コヒーレンス長がより大きくなると、ループ14の中心からより遠く離れた散乱点が光信号内のコヒーレントノイズに寄与することとなり、これによって、ノイズレベルが増大する。
【0064】
特定の実施形態では、結合器34のポートBからポートDまでの光路長よりもコヒーレンス長が短くなっており、これによってコヒーレント後方散乱ノイズの大きさが減少する。しかしながら、狭帯域源316等の狭帯域光源は、広帯域光源よりもずっと長いコヒーレンス長を有している。したがって、図3の実施形態における光バンドギャップファイバー13の代わりに従来の光ファイバーが用いられた場合、狭帯域源は、より多くのコヒーレント後方散乱を引き起こす。しかしながら、安定した周波数の狭帯域光源316の使用を、図3に示されるような中空コア光バンドギャップファイバー13と組み合わせることによって、コヒーレント後方散乱を減少することが可能となる。なぜならば、中空コア光バンドギャップファイバー13が、上記のように散乱を小さくするからである。特定の実施形態では、光ループ14をいずれかの方向に循環する光パワーが、コイル内で用いられる特定のファイバーについて計算された誘導ブルリアン散乱の閾値パワーよりも小さくなるように、狭帯域源316の帯域幅が選択される。
【0065】
図3にしたがって、中空コア光バンドギャップファイバー13とともに狭帯域安定波長光源316を用いることによって、コヒーレント後方散乱およびカー非線形の寄与を減少しつつ、変動する光源の平均波長から結果として生じるスケールファクタの不安定性を減少することが可能となる。
【0066】
カー効果が、依然として大き過ぎるために、図3の光ファイバーシステム312の性能を劣化させる有害な位相ドリフトを招来する場合には、カー効果を減少するために、他の方法を使用することも可能である。このような方法の1つは、図4に示したサニャック干渉計405内で実施される。サニャック干渉計405は、光ファイバーシステム412および狭帯域源416を含んでいる。図4の狭帯域源416は、振幅変調器411とともに
、発光デバイス410を含んでいる。この発光デバイス410については、有利なことに、図3の発光デバイス310と同様のもの、あるいは同一のものを使用できる。発光デバイス310からの光信号は、振幅変調器411によって変調される。特定の実施形態では、振幅変調器411は、方形波変調を生成する。また、特定の実施形態では、結果として狭帯域源416から出力された光は、約50%の変調デューティサイクルを有する。特定の実施形態では、この変調は、十分に安定したデューティサイクルで維持される。このように、例えば、前記米国特許第4,773,759号明細書およびR.A.Bergh他による「Compensation of the Optical KerrEffect in Fiber−Optic Gyroscopes(光ファイバージャイロスコープ内の光学カー効果の補償),Optics Letters,Vol.7,1992年、282〜284頁」では、このような方形波変調が、光ファイバージャイロスコープ内のカー効果を効率的にキャンセルしている。また、上記のように、例えば、Herve Lefevreによる前記「The Fiber−Optic Gyroscope」では、パワーの標準偏差と等しい平均パワーを有する変調信号を生成する他の変調を使用することによっても、カー効果をキャンセルすることが可能となる。例えば、光源416から出力される光の強度については、発光デバイス410に供給される電流を変調することによって変調することも可能である。
【0067】
特定の実施形態では、図4の狭帯域光源416の使用とともに他の技術を用いることによって、例えば、ノイズおよびバイアスドリフトを減少することが可能となる。例えば、周波数変調または位相変調によって周波数成分を狭帯域光源416に加えることも可能であり、これにより、帯域幅を効率的にある程度まで増大することができる。例えば、狭帯域光源416が約100MHzの線幅を有する場合、10GHz周波数変調が、レーザの線幅を100倍ほど増大して約10GHzにする。この実施例では、10GHz変調が説明されている。しかしながら、この周波数変調については、10GHzに限定する必要はなく、異なる実施形態において、より高くあるいはより低くしてもよい。レーリー後方散乱に起因する位相ノイズは、レーザ線幅の平方根に反比例する。したがって、線幅における約100倍の増大は、結果として、レーリー後方散乱によって誘起される短期ノイズにおける10倍の減少をもたらす。パラメータηをさらに減少するために光バンドギャップファイバー13の設計を改良することは、レーリー後方散乱によるノイズを許容レベルにまで減少するためにも使用することが可能である。
【0068】
図5は、広帯域源516を組み込んでいる、サニャック干渉計505の実施形態を示している。この広帯域源516は、カー非線形、レーリー後方散乱、および磁場効果を緩和するために、光ファイバーシステム512内の中空コア光バンドギャップファイバー13とともに、有利に使用することが可能である。したがって、狭帯域光源を用いるシステムよりも、バイアスドリフトおよび短期ノイズを減少することが可能となる。
【0069】
広帯域光源516は、有利なことに、例えば、広帯域ファイバーレーザまたは蛍光源等の広帯域発光デバイス508を含んでいる。蛍光源は、半導体ベースのソースおよび超蛍光ファイバー源(SFS)であり、これらは、典型的には、利得媒体として希土類ドープファイバーを用いている。広帯域ファイバーレーザの例については、K.Liu他による「Broadband Diode−Pumped fiber laser(広帯域ダイオード励起ファイバーレーザ),Electron.Letters.Vol.24,No.14,1988年7月,838〜840頁)」に見いだすことが可能である。広帯域発光デバイス508として、エルビウムがドープされた超蛍光ファイバー源を好適に使用することが可能である。超蛍光ファイバー源のさまざまな構成は、例えば、「Rare
Earth Doped fiber lasers and Amplifiers(希土類ドープファイバーレーザおよび増幅器),Second Edition,M.J.F.Digonnet,Editor,Marcel Dekker,Inc.,N
ew York,2001年、第6章)」およびここに引用されている参考文献に記載されている。この同じ参考文献およびこの技術分野で周知の他の参考文献は、非常に安定した平均波長を備えたErドープ超蛍光ファイバー源を製造するために開発された、さまざまな技術を開示している。このような技術は、有利なことに、サニャック干渉計505のスケールファクタを安定させるために、さまざまな実施形態において用いられている。また、他の広帯域光源516についても、使用することが可能である。
【0070】
特定の実施形態では、広帯域光源516は、例えば、少なくとも約1ナノメートルのFWHMスペクトル帯域幅を有する光を出力する。他の実施形態では、広帯域光源516は、例えば、少なくとも約10ナノメートルのFWHMスペクトル帯域幅を有する光を出力する。特定の実施形態では、スペクトル帯域幅を、30ナノメートルより大きくしてもよい。前記範囲を外れる帯域幅を有する光源を、他の実施形態に含めることも可能である。
【0071】
特定の実施形態では、広帯域源の製造における設計制約を緩和するために、広帯域光源の帯域幅を減少するようにしてもよい。サニャック干渉計505内で中空コア光バンドギャップファイバー13を用いることにより、スペクトル成分の数を減らした結果として生じる増大するエラーを、少なくとも部分的に補償することができる。これらのスペクトル成分は、他の場合であれば、後方散乱ノイズおよび他の不利益な効果の平均化を助けるために必要とされる。カーの補償および減少したコヒーレント後方散乱の結果として、サニャック干渉計505は、より少ないノイズを有する。特定の好ましい実施形態では、光ファイバーシステム512は、波長の安定性が高められた状態で動作する。システム512は、また、磁場の効果に対してより大きな耐性を有しており、このために、使用する磁気シールドをより少なくすることが可能である。
【0072】
図5の光ファイバーシステム512は、有利なことに、位相エラーおよび位相ドリフトを抑制し、それは、高いレベルのノイズ減少を提供する。この高められた精度は、現在のナビゲーションおよび非ナビゲーション用途における要件を上回ることが可能である。
【0073】
図6は、ここに開示した特定の実施形態にしたがうサニャック干渉計605の例を示している。このサニャック干渉計605は、広帯域光源616とともに、光ファイバーシステム612を含んでいる。この広帯域源616は、有利なことに、変調器611とともに広帯域発光デバイス608を含んでいる。特定の実施形態では、変調器611は、約50%のデューティサイクルで広帯域光のパワーを変調する。広帯域源616からの変調広帯域光は、上記のように、カー効果の減少または解消に寄与する。
【0074】
中空コア光バンドギャップファイバーを用いることに関する、他の利点も存在する。例えば、放射線硬化に対する感度が減じられることも、利点でありえる。シリカファイバーは、宇宙からの自然のバックグラウンド放射線または核爆発からの電磁パルス等の高エネルギー放射に晒された場合に、黒ずむことがある。この場合に、信号が減衰してしまう。中空コア光バンドギャップファイバーでは、より小さいモードエネルギー部分がシリカを伝搬するため、高エネルギー放射に晒された結果として生じる減衰を小さくできる。
【0075】
ここでは、図1、図3、図4、図5、および図6に示したサニャック干渉計5、305、405、505、および605を用いることにより、図2Aおよび図2Bに示した、干渉計の性能を改善するための中空コアバンドギャップ光ファイバー13における実施および利点を説明してきた。開示された実施例については、単なる例示にすぎないと理解するべきである。例えば、干渉計5、305、405、505、および605は、光ファイバージャイロスコープまたは他の回転検知デバイスを備えていなくてもよい。ここで開示された構造および技術は、ファイバーサニャック干渉計を用いる他のタイプのセンサ、あるいは他のシステムにも、適用することが可能である。
【0076】
慣性航法用のジャイロスコープが上で説明されてきたが、中空コア光バンドギャップファイバーについては、サニャックループを用いる他のセンサ、他のシステムおよびサブシステムにおいて用いることが可能である。例えば、中空コア光バンドギャップファイバーについては、有利なことに、財産保護のためにファイバーの動きおよび侵入を検知する、ファイバーサニャック・ペリメータセンサ内で使用することも可能である。さらに、ファイバーに印加される圧力の変動に敏感な音響センサアレイ内でも用いることができる。ペリメータセンサは、例えば、M.Szustakowski他による「Recent development of fiber optic sensors for perimeter security(ペリメータセキュリティ用の光ファイバーセンサにおける最近の開発),Proceedings of the 35th Annual
2001 International Camahan Conference on Security Technology,2001年10月16〜19日、London,UK,142〜148頁)」、および、ここに引用されている参考文献に記載されている。サニャックファイバーセンサアレイは、G.S.Kino他による「A Polarization−based Folded Sagnac Fiber−optic Array for Acoustic Waves(音波用偏光ベースの折畳みサニャック光ファイバーアレイ),SPIE Proceedings on Fiber Optic Sensor Technology and Applications 2001,Vol.4578、(SPIE,Washington,2002),336〜345頁)」、および、ここに引用されている参考文献に記載されている。しかしながら、ここで説明されるさまざまな応用例は、光ファイバージャイロスコープに関する。これらは、ナビゲーションに有用なものとなることが可能であり、ミサイル誘導用などの低精度から、航空機ナビゲーションなどの高精度に至るまでの精度範囲を提供することができる。しかしながら、周知の用途およびまだ発明されていない用途の両方を含む他の用途も、ここに説明されたさまざまな実施形態の利点から、利益を得ることができる。具体的な応用例および用途は、ここで説明されたものに限定されるわけではない。
【0077】
また、この技術分野において周知の他の設計および構成、およびこれから発明される他の設計および構成についても、ここで説明された革新的な構造および方法とともに用いることが可能である。干渉計5、305、405、505、および605は、有利なことに、例えば、図1、図3、図4、図5、および図6に関して上で説明されたものと同じ、または異なる構成要素を含むことが可能である。このような構成要素のうちのいくつかの実施例は、偏光子、偏光コントローラ、スプリッタ、結合器、位相変調器、およびロックインアンプを含んでいる。他のデバイスおよび構造を含むことも可能である。
【0078】
さらに、光ファイバーシステム12、312、412、512、および612の異なる部分は、チャネルまたは平面導波管を含む、集積光構造等の他のタイプの導波管構造を含むことが可能である。これらの集積光構造は、例えば、光ファイバーの分岐を介して光学的に接続される、集積光デバイスを備えることも可能である。光ファイバーシステム12、312、412、512、および612の一部は、自由空間を通る無誘導の経路も含むことができる。例えば、光ファイバーシステム12、312、412、512、および612は、導波管および集積光構造内でのように光が案内されるわけではない自由空間内に経路を有するバルクの光デバイスのような、他のタイプの光学デバイスを含むことも可能である。しかしながら、特定の実施形態における光ファイバーシステムの大部分は、光源と検出器との間を光が伝わるための、実質的に連続した光路を提供する光ファイバーを含んでいる。例えば、光バンドギャップファイバーについては、有利なことに、ループ14内のファイバー13に加えて、光ファイバーシステム12、312、412、512、および612の一部において使用することも可能である。特定の実施形態では、光源からループまで、ループを通る間、および検出器に戻るまでの光ファイバーシステム全体が、光
バンドギャップファイバーを含むことも可能である。ここで説明されたデバイスの一部あるいは全てを、まだ発明されていない手順に従って、中空コア光バンドギャップファイバー内に形成するようにしてもよい。また、光バンドギャップファイバー以外の光バンドギャップ導波管および光バンドギャップ導波管デバイスを、特定の装置のために使用するようにしてもよい。
【0079】
コヒーレント後方散乱、カー効果、および磁気光学ファラデー効果から生じる短期ノイズおよびバイアスドリフトのレベルを減少するための複数の技術が、上で説明されてきた。これらの技術については、ここに説明したさまざまな実施形態にしたがって、単独で用いてもよく、または互いに組み合わせて用いてもよい、ということが理解されるべきである。干渉計の動作時に、および性能向上のために、ここで説明されていない他の技術を用いてもよい。これらの技術の多くは、この技術分野で周知であるが、まだ開発されていない技術についても、同様に利用可能であると考えられる。また、ある特定の結果を予測するために、何らかの特定の科学的理論に頼る必要はない。さらに、ここで説明された方法および構造については、他のやり方でサニャック干渉計を改良することもできるし、また、全く異なる理由のために使用することも可能である、ということが理解されるべきである。
【0080】
温度(シュウプ)効果
従来の光ファイバーを伝わる信号の光位相は、温度に対する比較的に強い関数である。温度が変化すると、ファイバーの長さ、半径および屈折率の全てが変化し、これにより、信号位相の変化が生じる。この効果は、従来のファイバーを使用しているファイバーセンサのような位相敏感ファイバーシステムにおいて、一般的に、相当に大きく、有害である。例えば、1−メートルの長いアームを有するマッハ・ツェンダ干渉計に基づくファイバーセンサでは、1つのアームにおける摂氏0.01度ほどの小さな温度変化は、2本のアーム間における約1ラジアンほどの大きな有害な位相変化を引き起こすために十分である。これは、干渉センサにおいて通常に検知可能な最小の位相(1マイクロラジアン)よりも100万倍ほど大きい。この大きな位相ドリフトを処理することは、しばしば、重要な課題となる。
【0081】
熱的効果が問題になる特に重要な光ファイバーセンサは、光ファイバージャイロスコープ(FOG)である。FOGは、本質的に相互的なサニャック干渉計であるが、サニャックコイルファイバーの温度分布における小さな非対称的変化は、シュウプ効果として知られている、2つの逆伝播信号間における有害な位相変化をもたらす。例えば、D.M.Shupeによる「Thermally induced nonreciprocity
in the fiber−optic interferometer(光ファイバー干渉計における熱誘導非相互依存性),Appl.Opt.,Vol.19,No.5,654〜655頁、1980年」、D.M.Shupeによる「Fibre resonator gyroscope: sensitivity and thermal
nonreciprocity(ファイバー共振器ジャイロスコープ、感度および熱的非相互依存性),Appl.Opt.,Vol.20,No.2,286〜289頁、1981年」を参照されたい。サニャックは共通路干渉計であるため、2つの信号はほぼ同じ熱誘導変化を受け、この有害な位相変化は、マッハ・ツェンダあるいはマイケルソン干渉計に比べてはるかに小さい。しかしながら、非常に高い位相安定性を有利に有する高精度の用途に関して十分なほどには小さくない。このファイバーセンサおよびシステム、および他のファイバーセンサおよびシステムでは、巧みなエンジニアリング解が、熱的効果と首尾よく闘ってきた。しかしながら、これらの解は、一般的に、最終製品の複雑さおよびコストを増大し、且つ、これらは、その信頼性および製品寿命にマイナスの影響を与える可能性をもつ。
【0082】
特定の実施形態では、中空コア光ファイバージャイロスコープは、従来のジャイロスコープと同様の短期ノイズ(約0.015deg/√Vhrのランダムウォーク)、および、カー効果(50分の1より小)、温度過渡(約6.5分の1)、およびファラデー効果(約10分の1より小)に対する、劇的に減少した感度を有する。
【0083】
中空コア光バンドギャップファイバー(PBF)の基本モードは、このモードが全体的にシリカを通過する従来のファイバーとは異なり、1つ以上のガス(例えば空気)を含むコア内を主に伝わる。ガスあるいはガスの混合物(例えば空気)は、従来のシリカ芯ファイバーにおけるシリカよりも、カー非線形および屈折率に関する非常に低い温度依存性を有し、中空コアPBFでは、これらの一般的な有害効果は、従来の固体コアファイバーよりも著しく小さくなる。例えば、D.G.Ouzounov,C.J.Hensley,A.L.Gaeta,N.Venkataraman,M.T.GallagherおよびK.W.Kochによる「Nonlinear properties of hollow−core photonic band−gap fibers(中空コア光バンドギャップファイバーの非線形特性) in Conference on Lasers and Electro−Optics,Optical Society of
America,Washington,D.C,Vol.1,217〜219頁(2005)」を参照されたい。屈折率の熱係数dn/dTは、シリカに関するものよりも、ガスに関するものの方がはるかに小さい。このため、中空コアファイバーでは、モード有効屈折率の熱感度は、大幅に小さくなる。PBFの長さは、当然、依然として温度によって変化する。このことは、シリカにおけるモードエネルギーのパーセンテージに比例して位相感度が単純に減少するわけではない、ということを意味する。しかしながら、それは、なお大幅に減少するはずであり、多数の用途にとって(特に、それが減少したシュウプ効果を意味するFOGでの用途にとって)、有益な改善である。
【0084】
この特性は、カー効果および熱的(シュウプ)効果が弊害をもたらすことの周知な、ファイバージャイロスコープ(FOG)などのファイバーセンサにおいて、極めて有効になりえる。検知コイルにおいて使用されている従来のファイバーを、中空コアファイバーと置き換えることによって、これら2つの効果によってFOGに引き起こされる位相ドリフトが大幅に小さくなるはずである。ここに記載した数値シミュレーションは、カー効果に関しては約100〜500分の1の減少を、また、熱的効果に関しては約23分の1までの減少を予想している。まさに同様の理由で、ジャイロの外部磁場に対する依存性(ファラデー効果)は、ここに記載したように、約100〜500分の1(予想値)に大幅に減少するはずである。これら2つの望まれない効果の大きさを緩和することは、実際には、結果として、市販のFOGにおける歩留り、複雑さおよびコストに関する大幅な減少をもたらすはずである。
【0085】
さらに、設計および製造の改良によって、PBFにおけるレーリー後方散乱を、従来の固体コアファイバーにおける散乱よりも減少することが可能である場合には、現在の広帯域源(典型的には、Erドープの超蛍光ファイバー源(SFS))に代えて狭帯域の通信等級の半導体光源を有する中空コアファイバージャイロスコープを駆動することも可能となる。SFSの平均波長を100万分の1よりよく安定化することが困難であるために、この変化は、光源の平均波長の安定性を1〜2桁ほど改善し、光源のコストを減少することができる、という追加的な利点を与えることだろう。
【0086】
これらの利点は、増大したファイバーの伝播損失(例えば、約20dB/km)という代償を払って得られる。しかしながら、この損失は実際には操作可能である。その損失は、200−メートル長のコイルについてたったの約4dBになり、ジャイロスコープの他の構成要素における損失(例えば、約15dB)と比べて、過剰とはいえない値である。さらに、将来的には、最先端のPBFにおける損失についても、減少する可能性がある。
【0087】
実施例1
この実施例は、ここに開示した特定の実施形態にしたがう空芯光バンドギャップファイバージャイロスコープの動作を説明する。検知コイル内における光学モードは、主として、シリカよりも、非常に低いカー、ファラデーおよび熱的定数を有する空芯光バンドギャップファイバー内の空気を伝わることから、空芯光バンドギャップファイバーにおけるパワー、磁場および温度の揺動に対する依存性は、非常に低くなる。235メートル長のファイバーコイルにおいて、約2.7度/時間の検出可能な最小回転速度、および、約2度/時間の長期安定性が観察された。これらは、ファイバーのレーリー後方散乱係数に合致し、且つ、従来のファイバーにおいて測定された値と同程度の値である。さらに、ファイバーの設計にもよるが、カー効果、ファラデー効果、およびレーリー後方散乱は、100〜500分の1に減少することが可能であり、シュウプ効果は、3〜11分の1に減少することができる。
【0088】
我々は、これらの予想を、第1空芯ファイバージャイロスコープのデモンストレーションをもって確認する。現在の空芯ファイバーにおける、従来のファイバーよりも著しく高い損失および散乱にも関わらず、この実施例の検知能力は、同様の検知コイル長を有する従来のFOGのそれに匹敵する。この結果は、現在の空芯ファイバーが、ジャイロスコープの能力を、さまざまな方法で(例えば、残留熱的ドリフトを減少することによって、および、特定の構成要素における許容性およびその安定性を緩和することによって)、容易に改善することが可能であることを明示している。
【0089】
このファイバージャイロスコープの実施例に空芯ファイバーを使用することは、前記4つの有害な影響の減少を実現する。基本的なコアモードに見られる実効的なカー定数を示す式(1)を参照すると、空気のカー定数(n2,air≒2.9×10−19cm2/W)は、シリカのカー定数(n2,silica≒3.2×10−16cm2/W)よりも、3桁ほど小さい。ηnl<<1であるために、空芯ファイバーにおける実効的なカー非線形は、従来のファイバーにある場合よりも、非常に小さくなるはずである。実際に、特定の空芯ファイバーn2,PBFにおける3次分散は、n2,silicaよりも250分の1ほど小さくなる。
【0090】
ファラデー効果に関しては、基本モードVPBFにおける実効的なヴェルデ定数は、式(1)を用いることによって表わすことが可能である(ただし、定数n2を、シリカのヴェルデ定数(Vsilica)および空気のヴェルデ定数(Vair)によって置き換える)。VairはVsilicaよりもはるかに小さい(1600分の1)ので、VPBFは、従来のファイバーよりも2桁あるいは3桁は小さくなるはずである。
【0091】
これらの考慮事項の示すところによれば、PBFジャイロにおいては、カー効果およびファラデー効果によって引き起こされるバイアスドリフトが、η(PBFのシリカ部分における部分モードパワー)に比例する標準的なジャイロスコープよりも小さくなっている。単一モードの空芯シリカPBFに関して計算されたηの値は、コア半径、空気の充填率および信号波長に依存して、およそ約0.015から約0.002までの範囲におよんでいる。したがって、PBFジャイロスコープでは、カーおよびファラデーによって引き起こされる位相ドリフトの双方を、70分の1〜500分の1ほどに減少することが可能となる。これらは、FOG工学における要求のいくつか(例えば、ループ結合器の温度制御およびμ−金属シールドの量など)を大幅に緩和するであろう、実質的な改善点である。
【0092】
類似の論法をレーリー散乱に適用する。最新のシリカファイバーでは、レーリー散乱およびマルチフォノン結合によって、損失の最小値が制限される。反対に、現在の空芯ファイバーでは、損失は、ランダムな大きさの変動に起因する表面および放射モードに対する
結合によって、制限されると考えられている。これらの変動の原因は、技術的なもの(例えば、毛細管あるいは周期的なコア直径の変動における不均衡)、あるいは、表面張力によって引っ張られている間における、PBFのシリカ薄膜上の表面張力波の構造に起因するもの、のいずれかである。前者のタイプの変動は、製造技術の改善によって減少することが可能である。しかしながら、後者については、より根本的な性質をもち、いくつかのアプローチが可能であるものの、減少することがより難しいかもしれない。これらの変動を十分に低いレベルにまで減少することによって、空芯PBFのレーリー散乱係数が、シリカ(αPBF=ηαsilica)によって課せられる下限値に達する。ここで、αsilicaは、シリカの散乱係数であり、導波管の空気部分における散乱は無視している。このように、空芯ファイバーに関する最低限の実効的散乱係数は、ηに比例する従来のファイバーに関する値よりも小さくなる(すなわち、これも70分の1〜500分の1になる)はずである。以下に示すように、この減少は、光ファイバージャイロスコープに対して、大きなプラスの効果を与える。
【0093】
ジャイロスコープでは、後方散乱された波と1次的な波との間におけるコヒーレントな干渉に起因する位相エラーは、式(3)によって与えられる。
【0094】
【数4】
【0095】
ここで、Ωは、ファイバー内における基本モードの立体角であり、Lcは、光のコヒーレンス長である。標準的な偏光保持(PM)ファイバーを使用している従来のジャイロスコープでは、外部の開口数は、典型的には約0.11であるので、内部の立体角はΩ=π(NA/n)2≒0.018である。ここで、nはコアの屈折率である。前記モードはもっぱらシリカを伝わるので、η=1であり、且つ、約1.5ミクロンのαsilicaは、約−105dB/ミリメートル、あるいは、約3.2×10−8メートル−1である。これらの値を、コヒーレンス長Lc≒230ミクロンを有する広帯域Erドープ超蛍光ファイバー源(SFS)とともに式(3)に使用すると、δφ≒0.15マイクロラジアンを得る。これにより、ファイバー干渉計における典型的なノイズよりも、後方散乱ノイズが小さくなることがわかる。
【0096】
結晶ファイバーにおける約1.5ミクロンのAIR−10−1550空芯ファイバーの後方散乱係数は、SMF28ファイバーの値よりも3.5倍ほど高い。ジャイロスコープが、その代わりに、前記結晶ファイバー空芯PBF(現在の最新技術を代表するもの)を利用する場合、その実効的な散乱係数αPBF=ηαsilicaは、3.5倍ほど大きい。このファイバーは、約0.12のNA、および、一単位に近いモードグループ屈折率(n≒1)を有しており、その立体角はΩ≒0.045である。したがって、式(3)によって与えられる後方散乱ノイズは、δφ≒0.43マイクロラジアンとなり、これは、なお非常に小さい。したがって、現在の重心ファイバーにおける後方散乱が、従来のファイバーにおけるよりも大きくても、ErドープSFSのコヒーレンス長は、後方散乱ノイズを無視できるレベルにまで小さくできるほどに十分に短くすることが可能となり、どのタイプのファイバーを用いた場合でも回転感度がほぼ等しくなる。
【0097】
超低後方散乱の空芯PBFに関しては、後方散乱ノイズは、式(3)に示したように、√ηに比例して減少することになる。例えば、η=0.002およびΩ=0.045のPBFに関しては、式(3)は、δφ≒0.01マイクロラジアンを予想する。これは、このようなファイバーを用いる場合には、非常に長いコヒーレンス長の光によってジャイロ
スコープを駆動することができるとともに、ジャイロスコープが適度に低いノイズをなお有する程度に、後方散乱される信号が弱い、ということを意味する。上記の例では、Lc=2.2メートル(95MHzの線幅)と同程度に大きいコヒーレンス長は、たったの1マイクロラジアンのノイズを生成することになる。これは、多くの用途にとって十分に低い値である。したがって、広帯域源を用いることよりも、むしろ標準的な半導体レーザを使用することが可能となり、これにより、広帯域源を大幅にしのぐ利点を得ることができる。この利点は、はるかに大きい波長安定性、および、これによるスケールファクタ安定性、および、低コスト、慣性航法FOGに関する全ての有益なステップを含むが、これらに限られるものではない。
【0098】
シュウプ効果に関しては、空芯ファイバーは、熱感度における実質的な減少を実現する。検知コイルの温度がコイルの中間地点に関して非対称的に変化する場合、2つの逆伝播信号は、結果として生じる時間に応じた熱位相の変化をサンプリングし、これは、ジャイロスコープの出力における望ましくない差分位相シフトをもたらす。この効果は、コイルファイバーを特別の方法(例えば4極重巻)でラッピングすることによって、実際のジャイロにおいては小さくなる。しかしながら、この方法は完全ではなく、温度勾配の時間変化に起因する残留ドリフトを、高感度FOGにおいて観察することが可能である。検知コイルが空芯ファイバーから形成される場合には、モードが主に空気(シリカの屈折率と比べてより弱く温度に依存する屈折率を有する)を伝わるために、シュウプ効果は実質的に減少する。例えば、上記実施例に使用されている空芯ファイバーでは、シュウプ効果は、従来のファイバーよりも3.6分の1ほど小さくなっている。したがって、このファイバーを用いて形成されているFOGは、従来のFOGと同程度の大きさの約28%の熱ドリフトを示すことになる。シュウプ定数におけるさらに大きい減少(11分の1までの減少)についてさえも、ファイバージャケットの厚さおよび材料に関する単純な改善によって得ることが可能である。このシュウプ効果における減少は、有利なことに、より長期の安定性および単純なパッケージ設計に転化する。
【0099】
図7は、ここに記載した特定の実施形態にしたがう全光ファイバー空芯PBFジャイロスコープ705の実験装置を概略的に示す。これは、さまざまな態様(特に、従来のファイバージャイロスコープにおけるものと同程度の大きさのノイズ)を検証するために使用されている。光源716は、市販のErドープファイバー増幅器708を備えていた。この増幅器708は、1544ナノメートルを中心とし、7.2ナノメートルの計算された帯域幅をもつ、増幅された自然放出を生成する。ファイバー増幅器708からのこの光は、光アイソレータ710およびパワーアッテネータ712を介して、3−dBファイバー結合器730(相互出力ポートを実現するためのもの)内に結合されているとともに、ファイバーピグテイルLiNbO3集積光回路(IOC)740に結合されていた。この回路740は、3−dBスプリッタ744および電気光学変調器746の続いている偏光子742から構成されていた。IOC740の出力ファイバーピグテイル748は、235−メートルの長さのコイルからなるHC−1550−02空芯ファイバー750に対して直接結合されていた。この空芯ファイバー750は、Blaze Photonics(現在のCrystal Fibre A/S:デンマーク、ビルケロッド(Birkerod))によって製造された。このファイバー750は、8.2センチメートルの心棒に対して4極重巻きにされており、回転ステージ752上に配されていた。直接結合の結合部では、空芯ファイバー750の端部が法線入射状に分割されている一方、IOC740のピグテイル748の端部が、好ましくないフレネル反射を除去するための角度で分割されていた。偏光コントローラ760が、帰還信号の可視性を最大化するために、ループ内におけるピグテイル748の1つの上に配されていた。3−dBファイバー結合器730の相互ポートからの出力信号は、光検出器770によって検出された。アッテネータ712は、全ての測定値(−20dBm)において検出される出力パワーが等しくなるように調整された。検出された電気信号における基本的周波数(f)および第2の調和振動数(
2f)は、ロックインアンプ46から抽出され、コンピュータに記録された。示された全ての結果は、1秒のロックイン積分時間で得られた。
【0100】
図8Aは、空芯ファイバー75の断面における走査型電子顕微鏡写真を示している。図8Bは、空芯ファイバー750における測定された伝送スペクトルおよび光源716からの光源スペクトルを示している。この伝送スペクトルは、空芯PBF750とIOC740におけるファイバーピグテイル748との結合損失を含んでいる。ファイバー750は、その伝送範囲(約1490〜1660ナノメートル)においては、ほぼ単一モード化されている。測定された伝送値における最も高い値は、PBFバンドギャップの中間値(約1545ナノメートル)に近いが、約−10dBである。製造業者からの約19dB/キロメートルの最小のファイバー損失に基づいて、235−メートルの長さの空芯ファイバー750は、10−dBの伝送損失における4.5dBを占めている。残余部分については、2つの直接結合部のそれぞれにおける約2.7−dBの損失に割り当てることが可能である。このファイバーに関して計算された、シリカ部分(パラメータη)に重なる基本モードは、数%である。測定された複屈折率は、ほぼ6×10−5であった。5−メートルの標準的なファイバーピグテイルにおける基本モードに関するグループ屈折率の値(1.44)および235−メートルのPBFファイバーにおける同様の値(1.04。同一のコア半径を有する理想的な空芯ファイバーに関して計算される)から、サニャックループにおける適切な周波数がf0≒596kHzと計算された。この計算値は概算であるために、それは、変調周波数が700kHzまで増加してジャイロスコープが停止したときに、2f信号の発生を観察することによっても測定された。2f信号の振幅は、サニャック干渉計の周波数特性(すなわち、レイズドサイン(raised sine))を示した。この依存性に対するフィットは、計算値にしたがって、測定された適切な周波数592kHzを与えた。空芯ジャイロスコープは、f=600kHzにおいて、変調度π/4をもって変調された(この値は、最大感度に関する最適な値に近い)。
【0101】
ジャイロスコープについては、回転速度を較正された回転テーブルにそれを配置し、回転速度の関数としてのf信号および2f信号の振幅を測定することによってテストした。図9Aおよび図9Bは、それぞれ、回転している場合および回転していない場合での、これらの信号における典型的なオシロスコープトレースを示している。回転していない場合(図9A)では、出力は、偶数のf高調波(主に2f)のみを含んでいる。コイルが回転している場合(図9B)には、fの成分が出現する。fでの出力信号は、テストされた最大の回転速度12°/秒まで、回転速度に比例するように測定された。比例定数(10〜20mV/°秒とほぼ同程度。実験条件に依存する)が、回転速度を単位として、ジャイロスコープのノイズレベルを較正するために使用された。ジャイロスコープが停止した状態で1時間にわたって記録されたfの出力信号のトレースは、図10にプロットされている。この場合も、この曲線における縦軸は、ジャイロスコープスケールファクタに関する知識からではなく、回転テーブルの較正を使用することによって較正された。この曲線におけるノイズの最大振幅を3σとすると(σはノイズの標準偏差である)、これらの結果は、3σ≒8°/時間であることを示している。したがって、検出可能な最小の回転速度(1つの標準偏差)は、Ωmin≒2.7°/時間、すなわち、地球の自転速度の約1/6である。図10において観察される長期ドリフトは、約2°/時間である。このジャイロに関するスケールファクタは、コイルの直径およびファイバー長から計算されるものだが、F=0.26秒である。したがって、測定された検出可能な最小の回転速度から推論される、この干渉計における短期位相ノイズは、ΩminF≒3.3マイクロラジアンである。これは、光学干渉計にとって十分に低い値である。
【0102】
この能力を従来のファイバージャイロスコープの能力と比べるために、空芯PBFコイルが、200メートルの標準的なPMファイバーと置き換えられた。この第2のコイルもまた、2.8センチメートルの心棒に4極重巻されていた。このコイルファイバーの端部
は、IOCピグテイル748に接合された。このサニャックループの適切な周波数については、約500kHz(計算値は513kHz)まで測定され、計算されたスケールファクタはF=0.076sであった。光検出器770および検出用の電子機器を含むセンサの残部については、前記空芯ジャイロスコープのものと同じであった。この標準的なジャイロスコープにおける検出可能な最小の回転速度が、7°/時間(1−σ短期ノイズ)まで測定され、その長期ドリフトは3°/時間であった。この検出可能な最小の信号およびスケールファクタから、2.6マイクロラジアンの位相ノイズを推定することが可能である。この値は、「空芯ファイバージャイロスコープにおける位相ノイズが、同様の構成、検出および電子機器を用いた同程度の長さの標準的なファイバージャイロスコープの位相ノイズと類似している」、という重要な結果を示している。
【0103】
PMファイバージャイロスコープに見られる短期ノイズに対する3つの主な寄与は、ショットノイズ、光源の広帯域スペクトルに起因する過剰ノイズ、および検出器における熱的ノイズである。ショットノイズは、通常は無視できる。検出パワーが低い場合には、ノイズの主要源は熱的な検出器ノイズである。検出パワーがより高い場合には、主要ノイズは過剰ノイズである。前記実験用の空芯ファイバージャイロスコープの条件下においては、検出されたパワーは、約10マイクロワットであり、観察されたノイズ(2.6マイクロラジアン)は、そのほぼ全部が過剰ノイズに由来する。
【0104】
空芯FOGに関しては、検出器および検出パワーが同じであるために、ショットノイズの寄与もまた、0.4マイクロラジアンとなる。後方散乱ノイズは、以前に計算されたものだが、約0.4マイクロラジアンである(空芯ファイバーにおけるレーリー後方散乱係数が1.12×10−7m−1、すなわち、SMF28ファイバーの値よりも3.5倍ほど強いと仮定した場合)。両方のテストジャイロスコープが同じ電子機器および同じ検出パワーレベルを使用していたために、電子ノイズの寄与も、PMファイバージャイロスコープにおける寄与と同じ(すなわち、約2マクロラジアン)でなければならない。
【0105】
さらに、空芯FOGでは、2つの直接結合された接合部における後方反射もまた、ノイズ源となりえた。2つの直接接合部は、不要なマイケルソン干渉計を形成する。このマイケルソン干渉計は、マイケルソンのアーム間における経路のミスマッチよりも、はるかに短いコヒーレンス長の光によって探知される。したがって、この過少計は、単に強度ノイズを付加する。このノイズの大きさについては、空芯ファイバーの端部におけるパワー反射の知識を使用して推定することが可能である。これは、固体コアファイバーに関する値よりもはるかに弱いものの、0ではない値である。このような推定は、パワー反射空芯ファイバーの端部におけるパワー反射が、約2×10−6であることを示している。この値によってスケーリングすると、これら2つのインコヒーレントな反射に起因する位相ノイズが、1マイクロラジアンとほぼ同程度に推定される。なお、この寄与については、空芯ファイバーの端部を曲げることによっても、同様に推定することが可能である。
【0106】
上記のように計算されたノイズレベルは、測定値と合致する。すなわち、4つの寄与の全ての和(0.4+0.4+2.3+1=4.1)が、3.3マイクロラジアンという測定値と類似している。この合致は、さまざまなノイズの寄与における推定値、空芯ファイバーにおけるレーリー散乱係数の前提値、および、両方のジャイロスコープにおいてノイズの大部分が共通の電子起源から生じるという結論に対して、信頼性を与える。
【0107】
これらの測定値は、また、空芯ファイバーのレーリー散乱に上限値が設定されることを可能とする。観察された位相ノイズ(3.3マイクロラジアン)が、完全にファイバー散乱に起因すると仮定した場合、ファイバーのレーリー散乱係数が、6.6×10−6m−1程度の高さとなるということ(すなわち、SMF28ファイバーに関する値よりも200倍ほど高くなるということ)を示すために、式(3)を用いることが可能となる。さま
ざまなノイズ源における前記割り当ては、この値が不当に高いこと、および、1.12×10−7m−1という値がこれらの観察値によりいっそう合致しているということを、強く示唆する。
【0108】
実施例2
この実施例は、空芯ファイバーにおける基本モード位相の温度への依存性を定量的にモデル化し、これらの予想値を実際の空芯ファイバーにおける測定値と比べることによって、これらの予想値が正しいことを確認する。この実施例において挙げられている測定基準は、位相温度定数(phase 温度定数)と呼ばれる、位相Sにおける相対的な変化であり、以下の式(4)によって与えられる。
【0109】
【数5】
【0110】
ここで、φは、ファイバーを介して基本モードによって蓄積された位相であり、低はファイバーの温度である。干渉技術を用いて、異なる製造業者からの2つの空芯PBFがテストされ、これらの温度定数が、摂氏温度毎に百万分の1.5〜3.2(1.5〜3.2ppm)であること、すなわち、従来のSMF28ファイバーの測定値(S=7.9ppm/℃)よりも2.5〜5.2分の1ほど低いことがわかった。これらの値のそれぞれは、対応する予想数の20%内に減少している。これは、理論的なモデルおよび測定の較正に対する信頼性を与える。この研究は、この減少の理由がモードの有効屈折率における温度依存性の劇的な減少に起因する、ということを示している。温度定数の残存値は、ファイバーの拡張長さから生じる。これは、空芯ファイバーにおいてほんのわずかに減少している。モデル化は、ファイバージャケットを改善することによって、この寄与をさらに約2分の1に減少することが可能である、ということを示している。このさらなる改善がないとしても、現在の空芯ファイバーにおける位相温度定数は、従来のファイバーにおける値よりも5分の1ほど小さくなっている。これは、FOGおよび他の位相高感度システムにおける重大な改善を生み出す。
【0111】
空気誘導光バンドギャップファイバーおよび従来の屈折率誘導ファイバーにおける位相温度定数Sは、以下のような理論的モデルにおいて数値化される。基本モードによって蓄積される全体の位相φは、それが長さLのファイバーを介して伝播する場合には、式(5)によって表わされる。
【0112】
【数6】
【0113】
ここで、Lはファイバー長であり、neffはモードの有効屈折率、λは真空における信号の波長である。式(5)を式(4)に挿入することにより、式(6)に示すように、ファイバーにおける単位温度変化および単位長さあたりの、位相感度に関する式を得られる。
【0114】
【数7】
【0115】
ここで、dφ/dTは、温度に関する位相遅延の微分係数である。Sは、2つの項の和である。すなわち、温度変化度ごとのファイバー長の相対的な変化(以下ではSLと称する)と、温度変化度ごとのモードの有効屈折率における相対的な変化(以下ではSnと称する)との和である。
【0116】
ファイバーの一端からの距離lに配されているファイバー長の要素dlにおける時間tでの均衡からの温度変化をΔT(t,l)とすると、ファイバーの長さLにおける全体の位相変化は、以下の式(7)によって表わされる。
【0117】
【数8】
【0118】
ここで、ν=c/neffであり、cは、真空中における光の速さである。全体の位相変化はSに比例するので、式(7)によれば、Sは、例えばマッハ・ツェンダ干渉計における温度に対する位相感度を特徴づける、関連パラメータであることが示される。
【0119】
同様の式は、他の干渉計にも当てはまる。例えば、サニャック干渉計に関しては、対応する位相変化は式(8)によって与えられる。
【0120】
【数9】
【0121】
予想されるように、ΔφはSに比例し、Sは関連する測定基準である。サニャック干渉計の熱感度については、式(8)によって表されるが、適切なファイバーの巻線によって積分値を最小化することによって、および/または、Sを最小化するようなファイバー構造を設計することによって、減少することが可能である。
【0122】
ファイバージャケットの熱膨張係数は、通常、シリカの熱膨張係数よりも2桁ほど大きい。このため、ジャケットの膨張は、ファイバーを引き伸ばし、ジャケットの膨張によって生じるファイバー長の変化が、SLに対する支配的な寄与となる。屈折率の項Snは、3つの効果の和である。その第1は、ファイバーにおける横熱膨張である。これは、コア半径およびフォトニック結晶の大きさを修正し、これにより、モードの有効屈折率を修正する。第2の効果は、熱膨張の結果としてファイバーに生じる歪みである。これらの歪みは、弾性的光効果を介して、有効屈折率を変化させる。第3の効果は、ファイバーの温度変化によって生じる物質の屈折率の変化(熱光効果)である。
【0123】
SnおよびSLを決定するために、ファイバーの温度がT0からT0+dTまで均一に変化すると仮定するとともに、ファイバー長および基本モードの有効屈折率を双方の温度において計算することによって、ファイバーの熱機械特性がモデル化される。これにより、式(6)を用いて、Sn、SLおよびSを計算することが可能となる。図11は、ここ
に示した特定の実施形態にしたがうファイバー800を概略的に示している。このファイバー800については、円筒対称性を有すると仮定するとともに、その全ての特性がその長さに沿って変化しないと仮定する。したがって、Sは、円筒座標システムにおいて計算される。図11に示すように、ファイバー800は、多数の環状層を有する構造としてモデル化される。この構造とは、すなわち、半径α0のコア810(例えば、従来のファイバーにドープされたシリカ、PBFの中空、および、図11に示す空気を充填されたもの)、ほとんどの場合にコア810を覆っている内部クラッディング820(例えば、従来のファイバーにおけるシリカ、PBFにおけるシリカと空気とのハニカム)、一般的に内部クラッディング820を覆っている半径αMの外部クラッディング830(多くの場合に純粋なシリカからなる)、および、一般的に外部クラッディング830を覆っているジャケット840(アクリレートであることが多い)からなる。各層については、隣接する層に対して接触し且つ力学的平衡状態にあると仮定する。すなわち、半径方向の応力および半径方向の歪みが、ファイバー層の境界を超えて続いている、と仮定する。特定の実施形態では、コア810は、約9ミクロンと約12ミクロンとの間の範囲にある外径を有している。特定の実施形態では、内部クラッディング820は、約65ミクロンと約72ミクロンとの間の範囲にある外径を有している。特定の実施形態では、外部クラッディング830は、約110ミクロンと約200ミクロンとの間の範囲にある外径を有している。特定の実施形態では、ジャケット840は、約200ミクロンと約300ミクロンとの間の範囲にある外径を有している。
【0124】
各層は、特定の弾性係数E、ポワソン比ν、および熱膨張係数αによって特徴づけられる。フォトニック結晶クラッディング820は、それが均質物質ではなく、ハニカムのように機械的に振る舞う点で例外的である。これは、(1)「横方向では、固体よりもはるかに容易にハニカムを締めつけることが可能であり、これは、その横方向のポワソン比が高いことを意味する」、(2)「縦方向では、それは全体領域(1−η)Ahを有するシリカの薄膜のように振る舞う。ここで、Ahは、ハニカムの全断面積である」、ということを示唆する。したがって、ハニカムの弾性係数およびポワソン比は、空気の充填率ηの関数となる。シリカにおける空気孔のなす六角形のパターンに関しては、これらは式(9)によって与えられる。
【0125】
【数10】
【0126】
ここで、ETおよびELは、それぞれ、シリカ−空気ハニカムにおける横方向および縦方向のヤング率である。E0は、シリカのヤング率である。νTおよびνLは、それぞれ、ハニカム材料におけるおける横方向および縦方向のポワソン比である。そして、ν0は、シリカのポワソン比である。ここに示されているシミュレーションにおけるこれらのパラメータに使用されている値は、式(9)から計算され、表1に並べられている。内部クラッディングが固体シリカによって近似されている単純なモデルと比較すると、ハニカムの効果によってSLが10〜30%ほど増加することがわかる。その理由は、ハニカムが固体シリカより高い熱膨張ジャケットによって及ぼされるより弱い引っ張り抵抗を与えるので、ファイバー長の膨張が増加する(SLがより大きくなる)、ということにある。したがって、ハニカムによるこの効果は、小さいけれど無視できない。表1は、また、他のファイバー層に関するシミュレーションにおいて使用されているパラメータの値についても
記載している。
【0127】
【表1】
【0128】
ポイントr=[r,θ,Z]における局部変形ベクトルu(r)は、以下の式(10)によって与えられる。
【0129】
【数11】
【0130】
変形テンソルの対角成分εだけが0でない。
【0131】
【数12】
【0132】
温度変化ΔTの効果とともに、応力テンソルσを変形テンソルεに関連づけるために、フックの法則が利用される。
【0133】
【数13】
【0134】
ここで、sは4次のコンプライアンステンソルである。また、αは熱膨張テンソルであり、これもまた、対角項だけを有し、テンソル積を示している。
【0135】
この変形場uzは、rによって変化しない。また、長いファイバーでは、それは、以下の式のようにzによって線型に変化する。
【0136】
【数14】
【0137】
ここで、Cは、定数である。zの始点は、ファイバーの中央から選択される。uz(z)が層間の各界面において連続的であるために、Cは、全ての層において同じ値を有している。ファイバー内で温度が均一であると仮定しているために、式(12)および式(13
)は、εzzおよびσzzが、rに依存せず、zだけの関数であることを意味している。
【0138】
【数15】
【0139】
この解は、
【0140】
【数16】
【0141】
ここで、AおよびBは、各層に特有の定数である。係数A、BおよびCは、以下のような境界状態を課すことによって、および、フックの法則を利用することによって、解かれる。(i)全ての内部層の境界に渡るur(r)の持続性、(ii)全ての内部層の境界に渡るσrr(r)の持続性、(iii)r=α0においてσrr(r)=0。ここで、α0は、ファイバーコアの半径である。(iv)r=αMにおいてσrr(r)=0。ここで、αMは、ファイバーの外半径である。(v)ファイバーの端面における力学的平衡。これは、以下の式を強要する。
【0142】
【数17】
【0143】
A、BおよびCを決定し、これによってur(r)およびuz(z)を決定するために、マトリックス法を使用することが可能である。そして、式(11)は、εzz=SLΔTを含む歪みを与える。
【0144】
このモデルによって与えられる予想の種類を示すために、図12は、表2に示されている物理的パラメータを有する結晶ファイバーPBFに関して計算された、ファイバーの中心からの距離の関数としての半径方向の変形を示している。ハニカム構造(内半径が約5ミクロン、外半径が約33.5ミクロン)、および、シリカの外部クラッディング(内半径が約33.5ミクロン、外半径が約92.5ミクロン)では、半径方向の変形は、アクリレートジャケット(内半径が約92.5ミクロン、外半径が約135ミクロン)の変形と比べると、わずかにしか残っていない。このことは、材質の剛性および熱膨張係数における差に合致している。低熱膨張で堅いシリカは、高熱膨張で柔らかいアクリレートと比べると、非常にわずかな変形を経るだけである。半径方向の歪みが半径方向の変形を誘導するために、内部クラッディングハニカムは、圧縮歪みを受けた状態となる。そして、それは、その非常にわずかな横方向のヤング率に起因する変形のいくつかを吸収することによって、構造にかかる歪みを緩和する(ハニカム構造における半径方向の変形が4分の1に減少する)。
【0145】
【表2】
【0146】
いったん歪み分布がわかったら、Snの計算は容易である。第1のステップでは、半径方向の歪み分布から、ファイバーの断面にわたる各層の大きさの変化が計算される。第2のステップでは、全体的な歪み分布から、弾性的光効果に起因する各層における屈折率の変化が計算される。第3のステップでは、温度変化(熱光効果)によって引き起こされる材料の屈折率における変化が計算される。この変化は、歪みに依存せず、最も容易に推定される。これら3つの寄与(屈折率プロファイル、コア半径および材料の屈折率)は、次に、T=T0+ΔTにおけるファイバーの屈折率プロファイルを得るために、組み合わされる。この新しいプロファイルは、次に、構造におけるさまざまな光学的特性(例えば、この温度における基本モードの有効屈折率など)を計算するために、適切なコードに取り込まれる。これについては、例えば、V.Dangui,M.J.F.DigonnetおよびG.S.Kinoによる「A fast and accurate numerical tool to model the mode properties of photonic−bandgap fibers(光バンドギャップファイバーのモード特性をモデル化するための速く正確な数値ツール),Optical Fiber
Conference Technical Digest(2005)」を参照されたい。前記コードは、摂動を受けないファイバーにおけるモード有効屈折率(すなわち、温度T0でのもの)を計算するために使用される。有効屈折率におけるこれら2つの値は、Snを計算するために、式(6)に使用される。この計算は、全てのパラメータが温度に対して線型に変化することを仮定している。これは、温度の逸脱が小さい場合には妥当である。
【0147】
図13は、クラッディング空気孔半径ρ=0.495Λ、92.5ミクロンの外クラッディング半径、42.5ミクロンのアクリレートジャケット(結晶ファイバーPBFのパラメータ)を用いて前記モデルによって予想される、SL、SnおよびSにおけるコア半径Rの依存性を示している。この信号波長は、λ=0.5Λであり、Λ=3ミクロンの内部クラッディングにおける隣接する空洞領域の中心間距離を有するファイバーバンドギャップの中心に近い。λ=1.5ミクロンの場合にSMF28ファイバーに関して計算されるS、SLおよびSnの値(表2のパラメータを参照されたい)についても、比較のために示している。SLは、コア半径にほとんど依存せず、支配的な項になっている。この状況は、SnがSLよりも大幅に大きくなっている従来のSMF28ファイバーとは逆である。なお、空芯ファイバーとSMF28ファイバーとで、SLが相当に同じであることにも注意されたい。物理的な理由は、SLが、ファイバーの線膨張を定量化していることにある。これは、双方のファイバーにおいて類似である。SLは、実際には、空芯ファイバーに関しては多少低くなる。これは、この特定のファイバーに関しては、外部クラッディングにおいて、ジャケットのアクリレートに対するシリカの相対的な領域が増加するためである。したがって、PBFの全体的な熱膨張は、SMF28ファイバーよりも低くなる。空芯ファイバーに関しては、屈折率の項Snは、一般的に、コア半径が増加するにつれて、1.1Λ〜1.25Λおよび1.45Λ〜1.65Λにおける際立った局所的なピークを除けば、ゆっくりと減少する。これらのピークでは、SnおよびSは、2倍の大きさに増加している。これらの領域は、表面モードが生じているとき(図13においてグレー
で強調表示されている)の領域と正確に一致している。その理由は、表面モードをサポートするコア半径に関しては、著しく大きい基本モードエネルギー部分がファイバーの誘電性部分に含まれており、位相が温度に対してより敏感になっている、ということにある。この結果は、表面モードが回避されるべきであるということに対する、さらにもう1つの理由を指摘する。これらの表面モード領域の外部では、全体的な位相熱定数S=SL+Snは、コア半径に応じてあまり変化しない。単一モードの範囲(R<〜1.1Λ)における最も低いSの値は、R≒1.05Λに関して生じ、また、約1.68ppm/℃に等しい。これは、SMF28ファイバーに関する値と比べて4.9分の1となる小さい値である。
【0148】
空芯ファイバーでは、Sに対する寄与の大部分は、長さの項SLに由来するために、より複雑な屈折率の項Snを無視することが可能であり、SL(すなわちS)を推定するための単純なモデルを作り出す価値がある。半径の項を無視し、z方向におけるファイバーに働く全体的な力が0であるという状況を利用することによって、さまざまなパラメータの効果に関するいくつかの物理的洞察力を得ると同時に、SLの値について、非常に正確に近似することが可能である。図11における表記法を使用すると、この全体的な力を、以下のように表わすことができる。
【0149】
【数18】
【0150】
ここで、下付き文字h、clおよびjは、ハニカム、外部クラッディングおよびジャケットを示している。空気コアに対応する項は0であるために、式(17)には入っていない。ファイバー長と比べるとファイバー半径が小さいために小さくなっている横方向の項を無視した状態で、式(12)を式(17)に代入すると、SLに関する以下のような近似数式が得られる。
【0151】
【数19】
【0152】
表1からわかるように、ジャケット膨張の項AjEjαJと外部クラッディング膨張の項AclEclαclとは同程度の大きさであり、ハニカムの項AhEhαhに比べてはるかに大きくなっている(この項については無視できる)。分母においては、主な項は、外部クラッディングに起因する復元力AclEclである。これは、ジャケットあるいはハニカムからの力よりもはるかに大きい力である。したがって、式(16)については、以下のように良好に近似することが可能である。
【0153】
【数20】
【0154】
この単純な数式は、ジャケット領域Ajに対して外部クラッディングの領域Aclをできるだけ大きくすること、および、低熱膨張のジャケット材料を使用することによって、SLをより低くすることが可能である、ということを示している。この近似モデルは、かなり正確であるということがわかる。ここに記載した特定の実施形態では、外部クラッディ
ングの領域Acl、ジャケットの領域Aj、外部クラッディングのヤング率Ecl、ジャケットのヤング率Ej、および、外部クラッディングにおける熱膨張の係数αclおよびジャケットにおける熱膨張の係数αJは、
【0155】
【数21】
【0156】
が2.5以下になるように選択される。なお、他の特定の実施形態では、この量は1より小さくなる。
【0157】
パラメータSは、2つのPBFファイバーに関して測定された。これら2つのPBFファイバーとは、すなわち、「AIR−10−1550ファイバー(Crystal Fibre A/S製)」および「HC−1550−02ファイバー(Blaze Photonics(現在のCrystal Fibre A/S)製)」である。ファイバー断面のSEM写真が、それぞれ、図14Aおよび図14Bに示されている。測定は、図15Aに概略的に示されている従来のマイケルソンファイバー干渉計を用いて実行された。信号源は、数MHzの線幅を有する1546nmDBFレーザであった。空芯ファイバーは、干渉計の「検知」腕を形成するために、3dB結合器(SMF28ファイバー)のポートの1つに対して、重ね継ぎされている(Blaze・Photonics製のファイバー)か、あるいは、直接結合されているか(Crystal Fiber製のファイバー)のいずれかであった。PBFの遠い方の端部は、ファイバーの束ねられた(fiber−pigtailed)ファラデー回転ミラー(FRM)に対して同様に結合されていた。これにより、信号を反射してファイバーに戻し、これによって、ファイバーの複屈折率における変動に起因する帰還信号における極性変動を除去する。PBFの大部分は、加熱板に配されたアルミニウムのブロックに取り付けられており、このファイバー/ブロック組立体は、発泡スチレンの断熱シールド(図15Aに概略的に示されている)によって覆われていた。これにより、ファイバーの温度をできるだけ均一に維持し、且つ、室内における空気の流れに起因する温度変動を減少する。ブロック表面の直上の温度は、熱電対(例えば、1mV/℃の出力)によって測定された。
【0158】
干渉計における第2の(基準)アームは、第2のFRMに重ね継ぎされた、より短い長さのSMF28ファイバーから構成されていた。検知アームの非PBF部分とともに、この腕の全体が、第2の断熱シールド(図15Aに概略的に示されている)に配されていた。これは、主に、基準ファイバーと検知アームの非PBF部分との双方の隣接するヒーターによる加熱量を減少するためである。この配置において、ヒーターがオンとなったとき、PBFが、非常に温められた干渉計の唯一の部分であった。
【0159】
Sを測定するために、PBFの温度が、約70℃まで上げられた。そして、ヒーターがオフとなり、PBFの温度がゆっくりと下がるにつれて、干渉計の出力パワーとファイバーの温度との双方が長い時間をかけて測定され、コンピュータに記録された。測定期間(通常、数十分)中、PBFアームの位相は減少し、何度も(例えば50〜200回)2πを通過した。このため、図16における典型的な実験曲線に示されているように、干渉計出力のパワーは、多くのフリンジを示した。位相温度定数Sは、以下の式を用いて与えられた時間間隔において生じたフリンジの測定数から計算された。
【0160】
【数22】
【0161】
ここで、Lは、テスト用のファイバーの長さであり、Δ低は測定期間中に生じた温度変化である。また、Nfringeは、図16Aおよび図16Bに示されているフリンジの数である。
【0162】
この近似は妥当である。なぜなら、温度の下降がゆっくりであったため、PBFの温度が全ての時間において均一となったが、干渉計の残りの部分におけるランダムな位相変化がPBFにおける位相変化と比べて無視できるほどに速かったからである。この最後の点を検証するために、図15Bに示すように、PBFを取り外し、短い長さのSMF28ファイバーを有する検知アームにおけるファイバーの端部を再接続することによって、干渉計における本質的な温度安定性が測定された。最初の安定性テストでは、干渉計出力は、干渉計の全体の温度が室温と平衡になっている状態で記録された。約30分以上の期間で、筐体内の温度に±1℃ほどの変化が見られ、また、出力パワーは約1フリンジだけ変化した。このテストは、数十フリンジの位相シフトを測定することに関しては十二分なほどに干渉計が安定していることを示した。
【0163】
第2のテストでは、PBFの筐体が約70℃まで温められた後、ヒーターがオフされ、ヒーターがゆっくりと冷されていった状態で干渉計出力が記録された。今回は、より多くの数のフリンジが観察された。これは、ヒーターからのわずかな熱が、干渉計シールドを介して届いていており、2つのアームにおける温度変化の差が招来されたことを示していた。筐体の温度が18℃まで下降している状態では、出力パワーは、約12のフリンジによって異なっていた。したがって、図15Aの構成を用いてSを測定する場合には、干渉計における非PBF部分の残存熱が、約12のフリンジからなるエラーを導くことになる。PBF温度における変化に起因するフリンジカウントよりも小さい前記エラーに対して、このフリンジカウントは、このエラーよりはるかに大きく(例えば、100以上に)なっているはずであった。この状況は、十分に長いPBFを用いることによって実現された。PBF(例えば図13)について予想されたS≒2ppm/℃という値に関しては、式(18)が、18℃のΔTに関して100フリンジの位相シフトを得るために必要な長さが、L≒1メートルであることを予想している。したがって、ここに示した測定において使用されていたPBFの長さは、この程度であった(表2に示されているように、約2メートルであった)。
【0164】
比較点として、図15Aに示した実験構成におけるPBFを、210−cmの長さのSMF28ファイバーに置き換えて、従来の固体コアファイバーにおける温度定数を測定した。測定された値は、S=7.9ppm/℃であり、表1および表2におけるパラメータ値を用いたモデルによって予想された8.2ppm/℃という値と、見事に合致していた。この値は、SL=2.3ppm/℃とSn=5.9ppm/℃との和である。すなわち、屈折率の寄与は、長さ膨張の寄与よりも2.6倍大きい。これらの値は、表3にまとめられている。測定値と計算値とがほぼ一致したことは、モデルおよび干渉計の較正の双方に対する信頼を与える。
【0165】
【表3】
【0166】
次に、2つの空芯PBFに関してSの値が測定された。図16Aおよび図16Bに、典型的な実験結果を示す。各ファイバーに関して、上記のような測定および式(18)から推定されたSの値については、S、SnおよびSLの計算値とともに、表3に記載されている。2つのPBFについて測定されたSの値は、かなり類似しており、1.5〜2.2ppm/℃の範囲にある。予想どおり、空芯ファイバーの誘導機構は、位相遅延における温度に対する感度に対して、かなり大きな減少をもたらす。この減少は、結晶ファイバーPBFに対して、平均して5.26倍(測定値)あるいは5.79倍(予想値)の大きさである。Blaze・Photonics製のファイバーに対応する数値は、3.6(測定値)および3.14(予想値)である。この場合においても、理論値と測定値とが良好に合致している。Crystal・Fibre製のファイバーは、Blaze・Photonics製のファイバーよりも低い熱膨張寄与を示している。これは、式(17)に示されているように、それが、ジャケット領域よりも大きいシリカクラッディングの領域を有しているからである。Sにおけるこれらの減少は、ほぼ、約100分の1に減少するSn、および、15〜45%の減少となるSLに起因する。理論によって予想されるところでは、PBFのSは、圧倒的に、SLによって決定される(これは、ファイバーの長さの変化だけに依存する)。結論としては、現在の空芯ファイバーは、本質的に、従来のファイバーよりも熱感度が小さいといえる。そして、この小ささは、それがファイバーセンサおよび他の位相敏感ファイバーシステムにおける大幅な安定度の改善につながる程度に十分なほど(例えば、3.6〜5.3分の1)である。
【0167】
より小さい値のSであっても、PBFの設計を改善することによって得ることが可能である。PBFでは、SLはSに対する主な寄与であるために、Sをより小さくするために、SLの値を小さくすることが可能である。この項は、ファイバー長の温度変化から生じ、これは、熱膨張係数と、(i)ハニカムクラッディング(例えばシリカおよび空気)の剛性、(ii)外部クラッディング(例えばシリカ)の剛性、および、ジャケット(例えばポリマー)の剛性との双方によって引き起こされる。ポリマーがシリカよりも非常に高い熱膨張係数を有しているために、温度が減少するにつれて、ジャケットは、ファイバーよりも膨張し、ファイバーを引っ張り、ファイバーがジャケットを有していない場合よりも、その長さを増大する。このため、ジャケットは、一般的に、SLに対する支配的な寄与である。したがって、ジャケットをより薄くすると、SLはより小さくなり、ジャケットのないファイバーでは最も小さな値が得られることになる。また、他の全てについて同じであるがより柔らかいジャケット(ヤング率のより低いもの)を用いる場合、ジャケットがファイバーを効果的に引っ張れなくなるので、SLはより低くなる。さらに、外部クラッディングの厚さを増加することは、ファイバー構造の全体的な剛性を増加するので、ハニカムの膨張を減少し、SLを小さくする。
【0168】
これらの予想は、図17に示すように、さまざまなアクリレートジャケットの厚さおよび空気充填率に関する、Blaze・Photonics製のファイバーに対するシミュレーションによって確認される。ジャケットの厚さを薄くするにつれて、SLは減少する。ジャケットの厚さを限界値0にした場合(裸のファイバーとした場合)、SLは、シリ
カクラッディングの熱膨張によって設定される、その最低限度に到達する。空気の充填率をより高くすると、より大きいSLが観察される。その理由は、ハニカムがシリカをあまり含んでおらず、ファイバーの全体的な剛性がより低く、そして、ジャケットの膨張がガラス構造によってあまり制限されないので、大きいSL値をもたらす、ということにある。
【0169】
ジャケット材料の剛性の効果については、図18にみることが可能である。ここでは、少数の標準的なジャケット材料(金属、ポリマー、および、ポリイミドに覆われたアモルファスカーボン)に関して、SLの計算値がグラフ化(同じPBFに関する、90%の空気充填率でのグラフ化)されている。実際のファイバージャケットをシミュレーションするために、ジャケットの厚さは、ポリイミドについては5ミクロンあるいは50ミクロン(規定されている)、金属については20ミクロン、および、アモルファスカーボンについては20ナノメートル(2.5あるいは5ミクロンのいずれかのポリイミドによって覆われている)とされた。実際に製造されたPBFにおける基準となるジャケットは、50ミクロンのアクリレートであった。全ての金属ジャケットは、基準となるアクリレートジャケット(2.57ppm/℃)よりも大きいSLを生成した。これは、金属の熱膨張はアクリレートよりも低い(1桁ほど低い)ものの、それらのヤング率が、アクリレート(2〜3桁大きい)およびシリカ(3倍まで大きい)に比べてはるかに大きいからである。したがって、シリカの構造は、金属のコーティングを膨張することによって、アクリレートジャケットによるよりも効果的に引っ張られ、SLはより大きくなる。しかしながら、複数のジャケット材料は、アクリレートよりもよく機能する。薄い(20ナノメートルの)アモルファスカーボンを2.5ミクロンのポリマージャケットでコーティングしたものが、最も低い値(SL=0.67ppm/℃)を与える(74%の減少)。その次に、5ミクロンのポリイミドジャケットが続く(SL=0.77ppm/℃、70%の減少)。これは、シリカファイバーに関する理論的な限界(シリカの熱膨張係数によって設定され、SL=0.55ppm/℃に等しい)に近い。ポリイミドジャケットは、SLの最も低い値を与える。これは、それがアクリレートジャケットよりも、はるかに薄いからである。等しい厚さであれば、アクリレートは、実際にはポリイミドよりもうまく機能する。しかしながら、ポリイミドは、アクリレートよりも水蒸気バリアとしてはよいために、ポリイミドジャケットにおけるたったの数ミクロンの厚さは、ファイバーを水分から効果的に守るために十分であり、アクリレートではこうはいかない。結論としては、アクリレートは、不幸なことに、熱的な機能に関して、ジャケット材料における最高の選択にはならないといえる。むしろ、前記カーボン・ポリイミドジャケットによってPBFをコーティングすることによって、たったの0.67ppm/℃のSL(すなわち、0.72ppm/℃という低さのS)を実現することが可能である。これは、従来のファイバーに関する値の約11分の1である。
【0170】
シリカの外部クラッディングの効果についても、同じPBFに対する、クラッディングの厚さを増加することについてのシミュレーションによって研究されている。ここでは、固定された50−ミクロンのアクリレートジャケットおよび90%の空気充填率を仮定した。その結果を、図19に、実線の曲線としてプロットした。外部クラッディングの厚さを増加するにつれて、SLは減少する。これは、シリカクラッディングが厚いほど、アクリレートジャケットの長さの増加によく抵抗するからである。この効果は、かなり実質的である。例えば、外部クラッディングの厚さを、Blaze・Photonics製のファイバーにおける50−ミクロンの値から100ミクロンと2倍にすることによって、SLは55%減少する。外部クラッディングのない(厚さが0)の場合の逆の限界では、SLは、20ppm/℃以上にジャンプアップする。この場合、高熱膨張のジャケットは、シリカハニカム構造だけを引っ張っている。これは、空気孔に起因するより低いヤング率を有し、引っ張りに対する耐性をあまり与えない。したがって、厚い外部クラッディングを用いることは、空芯ファイバーの熱感度を減少するための有利な方法である。マイナス
面としては、この場合、ファイバーがより堅くなるために、ファイバーをきつく巻き付けられないということを挙げられる。このことは、用途によっては欠点になる。
【0171】
図19における破線の曲線は、ここに記載した近似モデルを使用することによって生成される。この曲線は、厳密な結果に対して非常によく合致している。この場合も、SLが温度定数Sの90%以上を占めているために、この非常に単純なモデルは、どのようなファイバー構造に関しても、その温度定数を予想するための信頼できるツールである。
【0172】
したがって、現在の空芯ファイバーにおいて既にデモンストレーションして得られた低い値を下回るほどに温度定数を減少することが可能である。これは、(i)できるだけ薄いジャケット、(ii)柔らかいジャケット材料、(iii)大きな外部クラッディング、および/または(iv)(可能な限り)小さい空気充填率、を使用することによって実現できる。(i)および(ii)を満たすジャケット材料は、ポリイミド、および、薄いポリイミド層によって覆われたアモルファスカーボンを含む(これらに限られるわけではない)。5−ミクロンのポリイミドジャケットを使用する場合、Blaze・Photonics製のファイバーは、S≒0.82ppm/℃の温度定数を有する。これは、現在のファイバーにおける値の約3.2分の1である。
【0173】
特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の8以下である。特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の6以下である。特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の4以下である。特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の1.4以下である。特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の1以下である。
【0174】
ブラッグファイバーに関する、温度に対する理論的な熱位相感度についても計算した。この計算は、2ミクロンのコア半径を有し、40の空気−シリカブラッグリフレクター(0.48ミクロン(シリカ)および0.72ミクロン(空気)の厚さを有する)によって囲まれており、62.5ミクロンの厚さのアクリレートジャケットを有するブラッグファイバーに関する。このファイバーは、1.5ミクロンの半径を有するその空芯内に閉じ込められた基本モードを示した。表3に示したように、これらの結果は、SL=1.15ppm/℃、Sn=0.30ppm/℃、およびS=1.45ppm/℃をもたらした。ブラッグファイバーにおける基本モードは、主に空気を伝わる。このために、このSの値は、従来のファイバーに関する値よりも非常に低い。Sは、PBFに関する値と同様であり、主な寄与は、この場合も、ファイバーが長くなったことにある。
【0175】
実施例3
図20は、ここに示した特定の実施形態に対応する光ファイバージャイロスコープ905をテストするための、実施例の構成を概略的に示している。検知コイル910は、Blaze・Photonics製の空芯ファイバーを備えている。このファイバーは、235メートルの長さを有し、コイル910における熱感度および音響感度を減少するために、8センチメートルの直径のスプール上に4極重巻を用いて16層に巻き付けられている。コイル910における各ファイバー層は、その下の層に対して、薄いエポキシコーティングによって結合されており、最も外側の層も、エポキシによってコーティングされていた。このファイバーは、約1.54ミクロンの単一波長において本質的に単一モード化されていた(わずかに高位のモードは非常に損失が多かった)。コイル910における計算されたスケールファクタは、0.255sであった。広帯域Erドープ超蛍光ファイバー源(SFS)920からの光は、アイソレータ922によって孤立され、偏光コントローラ(PC1)924を介して伝送され、光学回路(IOC)930に一体化されているファイバーの束ねられたLiNbO3に結合する前に、3−dBファイバー結合器によって分離された。前記光学回路(IOC)930は、偏光子932、3−dB入出力Y字路結
合器934、電気光学位相変調器(EO−PM)936、および偏光コントローラPC2938を備えていた。後者は、FOG感度を最大化する3.6ラジアンの頂点間振幅をもつ適切なループ周波数(600kHz)において変調された。
【0176】
Y−結合器934は、入力光を、ファイバーコイル910の周囲を逆方向に伝播する2つの波に分離する。IOC930における出力ピグテイルの2つの端部は、後方反射および損失を減少するために斜めにカットされているが、90°に裂かれたPBF検知コイル910の端部に対して直接に結合されている。測定された損失は、各直接接合部に関して約2〜3dBであり、ファイバーコイル910に関して約4.7dBであり、IOC930に関して約14dB(往復)であった。PC1924は、干渉計に入力されるパワーを最大化するように調整された。そして、PC2は、検出器における最大の戻りパワー(IOC930に対する20mWの入力について、約10μW)に合わせて調整された。検出器940は、低ノイズ増幅InGaAsフォトダイオード(カリフォルニア州サン・ノゼにある、New Focus of Beckham,Inc.から入手可能である)であった。コイル910を、その主軸の周囲で回転することは、サニャック効果を介して、逆伝播波間に位相シフトを引き起こす。そして、位相シフトは、回転速度Ωに比例する。コイル910から戻ってくる変調光信号は、ファイバー結合器出力において検出され、ロックインアンプ950(積分時間100−ms、フィルタスロープ24−dB/オクターブ)において分析された。この測定信号は、小さい回転速度に関しては、位相シフトに対する線型依存を有している。ジャイロスコープの感度は、EO−PM936を用いて適切なループ周波数において正弦関数の位相変調を2つの波に適用することによって、最大化された。
【0177】
この空芯ファイバージャイロスコープ905の短期ノイズは、100マイクロ秒から10秒までの範囲の積分時間に関する検出バンド幅の平方根としての、期間信号における1シグマノイズレベルを記録することによって測定された。この依存性は、ジャイロスコープのランダムウォークを与える傾斜をもったホワイトノイズ源に期待されるような、線型であることがわかった。この測定は、検出器に入射する異なる信号パワーに関して、繰り返された。図21は、IOC入力において測定された、信号パワーに関するランダムウォークの測定された依存性を示している。この結果は、空芯ファイバージャイロスコープの感度が、従来のファイバージャイロスコープに典型的に存在するノイズにおける3つの主な原因のうちの2つによって制限されていた、ということを明確に示している。これらは、すなわち、低い検出パワー(例えば、3μWより低いパワー)に関する検出器の熱的ノイズ、および、高い検出パワー(例えば、4μWより高いパワー)に関する広帯域光源からの過剰ノイズ、である。第3のノイズ源は、ショットノイズである。パワーの低い場合、最小の検出可能な回転速度は、検出パワーに反比例していた。一方、より高いパワーでは、ノイズはパワーに依存しなかった。図21において「熱的ノイズ」と描かれている破線の曲線は、検出器の熱的ノイズにおける理論的な寄与であり、パワー(2.5pW/√Hz)に対応する検出器のノイズから計算される。水平の破線の曲線は、SFSにおける測定されたバンド幅(2.8THz)から計算された、予想される過剰ノイズを示している。最も低い破線の曲線は、理論的なショットノイズを示している。このノイズは、入力パワーの平方根に反比例している。この寄与は、空芯ジャイロスコープ905では無視できる。これら3つのノイズ源の和は、全体的な予想ノイズであり、図21に実線で示されている。それは、測定データポイントとよく合致している。この比較は、従来のFOGにおいて典型的であるように、この空芯ファイバージャイロスコープの性能が過剰ノイズによって制限される、ということのデモンストレーションとなる。重要なことに、それは、図20に概略的に示されているような、異なるファイバー間の直接結合の接合部からの残存する後方反射が、ジャイロスコープの短期ノイズに影響を与えない、ということについても示している。これは、おそらく、低コヒーレンス光源を使用しているため、および、2つのピグテイルの長さが、1つの光源のコヒーレンス長よりも大きく異なっているため
である。これは、1次的な波と反射波との間のコヒーレントな相互作用をより減少する。
【0178】
過剰ノイズ制限レジームでは、空芯ファイバージャイロスコープのランダムウォークは、0.015°/√hrである。80マイクロ秒の積分時間に関しては、1Hzの典型的な検出バンド幅に対応して、測定される最小の検出可能な位相シフトは、1.1μラジアンであり、0.9°/hrの最小の検出可能な回転速度に対応する。これらの値は、最新の市販されている慣性航法級の光ファイバージャイロスコープの性能とよく似ている。この結果は、典型的な従来のFOGにおけるものと同じ検出パワー(例えば、約10μW)を用いながら得られた。しかしながら、空芯ファイバーにおける伝播損失がより高いために、このパワーは、従来のFOGよりも大きい入力パワー(すなわち、図21によって示されているように、数mW)を用いることによって得られる。しかし、この入力パワーについては、低ノイズ検出器を用いることによって容易に減少することが可能である。これは、図21における2つの破線の曲線における交点をより低いパワーに移動し、ファイバーの損失を減少する。
【0179】
特定の実施形態における空芯ファイバージャイロスコープの利点は、主に、その改善された長期安定性にある。それは、最初に、その温度ドリフトから始まる。サニャックループの中点以外の全てに適用される熱過渡は、回転によって引き起こされる位相シフトと区別することの不可能な、差分位相シフトを引き起こす。コイルファイバーの一端からの距離zに配されたファイバー長の要素dzにおける温度の時間微分係数をT(z)とすると、ファイバーの全長Lにおける全体的な位相シフトエラーは、以下の式によって表される。
【0180】
【数23】
【0181】
ここで、λ0は波長であり、cは光の速度である(双方とも真空中でのもの)。nはファイバーモードの有効屈折率であり、Sは、シュウプ定数である。シュウプ定数は、温度に対する有効屈折率の変動とファイバーの伸長との双方を考慮に入れており、ファイバー長に依存しない。式(21)における位相シフトエラーは、回転のような信号ΩEを誘起し、これは、以下の式によってΔφEに関連する。
【0182】
【数24】
【0183】
ここで、Dは、コイルの直径である。
式(21)を式(22)に代入し、無次元変数z’=z/Lを用いることで、過渡温度の変化T(z)によって引き起こされる回転速度エラーに関する、以下の式を得る。
【0184】
【数25】
【0185】
式(23)は、FOGの熱感度がシュウプ定数Sだけでなくn2(モード屈折率の2乗)にも比例する、ということを示している。空芯ファイバーが、標準的なファイバーの有する値(n≒1.44)に比べて非常に小さい有効屈折率(n≒0.99)を有し、また、より小さいシュウプ定数を有しているために、空芯ファイバーを使用することによって、ジャイロスコープにおける熱感度の劇的な減少が見込まれる。表3に示されているように、SMF28ファイバーに関するシュウプ定数は、S=7.9ppm/℃と測定され、また、Blaze・Photonics製の空芯ファイバーに関するシュウプ定数は、S=2.2ppm/℃と測定された。このn2への依存性という追加的な利点を組み合わせると、これらの値は、Blaze・Photonics製のPBFジャイロスコープが、固体コアファイバージャイロスコープの約7.6分の1の熱感度となるはずである、ということを示唆している。これは、重要な安定性の改善となる。
【0186】
これらの予想を実験的に検証するために、周知の温度サイクル下にコイルを置いた状態で、空芯FOGの出力信号および固体コアFOGの出力信号を記録した。図20によって概略的に示すように、それぞれの場合において、検知コイルは、その一方の側をヒートガンからの暖気に晒すことによって、非対称に温められた。これらの測定に先立って、各ジャイロスコープは、回転テーブルにそれを配置し、周知の回転速度を適用し、ロックイン出力電圧における回転速度に対する依存性を測定することによって、慎重に調整された。したがって、熱測定の間に測定された量は、回転エラー信号ΩEであった。ΔφEは、この信号ΩEから、式(22)を用いて推定された。
【0187】
図22Aは、空芯ファイバージャイロスコープ・コイルの一方の側に適合する、測定された時間的プロファイル、および、これによって引き起こされた、測定された回転エラーの例を示している。式(23)によって示されているように、回転エラーが温度の時間微分係数に依存しているために、図22Bは、適合する温度変化における微分係数を示している。この微分係数は、図22Aにおける測定された時間的プロファイルから数値的に計算され、そして、ロックインアンプにおける4−段階の24−dB/オクターブのローパスフィルタをシミュレーションするために、数値的にフィルタされた。測定された回転エラーと比較すると(図22Bにおいて再現されている)、2つの曲線間に、式(23)にしたがう、適度な一致のあることがわかる。
【0188】
4極重巻では、図23に示されているように、第1の(最も外側の)層が、結合器に最も近い2つのサニャックループの端部の一方の近くに配された、検知ファイバーの一部となっている(例えば、位置z=0および位置z=L1との間)。その真下にある第2の層は、コイルの反対の端部に配されている検知ファイバーの一部となっている(Ln−1<z<Ln=L)。第3の層は、第2の層に隣接して配された検知ファイバーの一部となっている(Ln−2<z<Ln−1、以下略)。加熱が開始されたすぐ後では、コイルにおける第1の層がまず熱くなり、その結果、逆伝播波間の位相差が変化する(例えば、増加する)。継続して熱が印加されるにつれて、それは、コイル内を放射状に伝播する。そして、第2の層が、次に第3の層が、温まり始める。4極重巻あるいは2極重巻では、第1の層および第2の層は、サニャックループ内において、対称的に配置されている。したがって、第2の層が熱くなるにつれて、それによって引き起こされる熱位相シフトが、第1の層において引き起こされている熱位相シフトをキャンセルし始める。同様のキャンセルプロセスが、より深い層に関しても生じる。しかしながら、全体的な位相シフトは増加し続ける。これは、第1の層が、内部の層よりも早く熱くなるからである。最終的には、外側の層の温度は、何度かの最大温度に到達する。そして、より内部の層が徐々に熱くなるにつれて、全体的な熱位相は減少する。十分に長い時間にわたって熱が印加された場合、ファイバーに沿った温度は、定常状態分布に到達し、熱位相シフトは消失する。
【0189】
この挙動は、熱的に誘起された信号の観察された挙動に合致する。これは、図22Bに
よって示されているように、まず増加し、その後、ゆっくり時間をかけて減少する。測定された信号は、加熱の開始された後の約1秒間、温度微分係数に対して密接にしたがう。より長い時間については、測定された回転エラー曲線が温度微分係数曲線を下回るという点において、2つの曲線は一致しない。これは、そのときまでに、熱がコイルの奥深くまで達しており、4極重巻が熱位相シフトをキャンセルしはじめているからである。加熱の停止された直後(図22Bにおけるt=5.5秒のあたり)では、回転エラーはマイナスになる。その理由は、このときに、最も外側の層が冷え始めることにある。したがって、温度勾配は逆転し、回転エラーの符号も同様となる。
【0190】
空芯ファイバーを固体コアファイバーコイルに置き換えたとき、図24Aおよび図24Bに示されているように、ジャイロスコープの挙動は同様であった。回転エラーは、熱パルスの開始直後に増加し、その後に減少し、そして、最終的には、加熱の停止後にマイナスになった。しかしながら、固体コアファイバージャイロスコープは、明らかに、非対称の加熱に関して、空芯FOGの場合に比べてはるかに敏感であった。比較可能な適合するピーク微分係数T(SMF28に関して75.5℃/s VS PBFに関して41.1℃/s)に関しては、図22Bと図24Bとの比較によって示されるように、固体コアファイバージャイロスコープに関するエラー信号は、10倍ほど大きかった。
【0191】
測定により、全ての時間の、ただしコイルの表面(z=0)だけの温度微分係数T(z)を得た。したがって、式(23)を適用することはできず、測定された回転エラー信号から、2つのファイバーコイルのシュウプ定数Sに関する値を抽出することはできなかった。しかしながら、2つのジャイロスコープにおける熱的な性能については、2つの観察を実行することによって、なお比較することが可能である。第1に、2つのコイルが同一の直径および厚さを有しているために、熱流の速度は、2つのコイルにおいて同程度であると予想される。第2に、4極重のコイルにおける熱流の力に関する上記の議論に基づくと、全体的な熱位相シフトは、第1の層が熱くなり始めた後、すぐにその最大値に到達すると予想される。したがって、熱的に誘起される回転エラーの最大値については、以下の式によって近似することが可能である。
【0192】
【数26】
【0193】
さらに、最も外側の層における温度変化率は、コイルの表面において測定された温度変化率に近く、且つ、z’に弱く依存する、と予想される。したがって、式(24)では、T(z)を積分の外に出すことが可能である。これは、ΩE,maxが測定された表面温度の微分係数に対してほぼ線型に比例するはずである、ということを示している。
【0194】
この近似を検証するために、各ジャイロスコープについて、適合する温度勾配に対する最大の回転速度エラーの依存性が測定された。例えば、図22Bに示した測定では、最大の回転速度エラーは0.02度/秒に等しく、また、最大誤差の生じた時間(t≒1.8秒)では、適合する温度勾配は約41.1℃/秒であった。図25は、従来の固体コアファイバージャイロスコープおよび空芯ファイバージャイロスコープの双方において測定された、適合する温度勾配に対する最大の回転速度エラーの依存性を示している。最大の回転速度エラーは、おおよそ、適合する温度勾配に対して線型に増加する。これは、近似の妥当性を裏付ける。これらの依存性における傾きは、SMF28ファイバージャイロスコープに関して2.4×10−3度/秒/(℃/秒)、空芯ファイバージャイロスコープに関して2.9×10−4度/秒/(℃/秒)である。2つの検知ファイバーにおけるわず
かに異なる長さLを修正した後、同一のコイル長に関しては、空芯ファイバージャイロスコープにおける温度勾配に対する感度は、従来のFOGの6.5分の1である。
【0195】
同一のファイバーの短片に対して実施された別個の熱測定は、SMF28とBlaze製のPBFとにおけるシュウプ定数の比が、表3に示されているように、3.6であることを示した。これらの値を、2つのファイバーに関するモード有効屈折率0.99および1.44のそれぞれとともに式(23)に使用し、同一のコイルであることを仮定すると、空芯ファイバーにおける熱摂動に対する感度は、固体コアファイバーの7.6分の1であることが予想される。この値は、我々の実験的な値である6.5と良好に合致する。小さな差(約13%)については、コイルの熱伝播特性におけるわずかの差に起因する可能性がある。これは、空芯ファイバーがよりよい熱絶縁物を構成するためだと予想される。6.5という測定値は、また、これら2つのファイバーに関する理論的な予想比である6.6と、非常によく合致している。いずれの場合においても、測定値および理論値は、その熱感度を減少するためにFOGに空芯ファイバーを使用することの重要な利点を、明白に実証している。さらなる設計の改善(例えば、ジャケットの最適化)は、シュウプ定数における約3分の1の減少を別個にもたらすことが可能である。これにより、全体的な改善は、従来のコイルに比べて約23分の1となる。
【0196】
空芯ファイバージャイロスコープによって与えられる、第2の重要な長期安定性の改善点は、非可逆的なカー効果における劇的な減少である。この改善点を示すために、2つの逆伝播信号間のパワーを故意にアンバランスにした状態で、空芯FOGにおいてカーによって誘起されたドリフトの大きさを、ジャイロスコープの出力における変化を観察することによって測定した。この非常に弱い効果を観察できるようにするために、IOCが、10%のファイバー結合器に置き換えられた。これは、逆伝播パワー間における強いアンバランスを与える。この変更は、IOCに存在する他の部品(偏光フィルタおよび位相変調器)における、標準的なファイバー偏光子および圧電性ファイバー位相変調器との置き換えを伴った。ほぼ完全にカー効果をキャンセルするSFSは、狭帯域半導体レーザと置き換えられた。狭帯域光源を用いると、ファイバーからのコヒーレント後方散乱に起因するノイズが非常に大きくなった(SFSを用いる場合よりも約19dB高かった)。実際に、光学部品によって許容される最大の入力パワー(例えば、50mW)を用いる場合でさえも、後方散乱ノイズは、カーによって誘起される信号を超えていた。すなわち、空芯ファイバージャイロスコープにおけるカー効果は、測定するには弱すぎた。しかしながら、カー位相シフトがノイズ(主に後方散乱によるノイズ)とほぼ等しかったことを認めることによって、この測定は、ファイバーモデルにおけるカー定数の上限値の見積りを与える。サニャックループ内における(固体コアの)ファイバーピグテイルからの周知のカーの寄与を修正した後では、カー定数は、SMF28ファイバーコイルを使用した同様のジャイロスコープと比べて、少なくとも50分の1に減少することがわかった。この結果は、空芯ファイバーにおけるカー効果が実質的に50分の1に(あるいはそれ以下に)減少していることを裏付ける。
【0197】
空芯ファイバージャイロスコープにおける磁場の影響は直接には測定されなかったが、短い長さの空芯ファイバーにおけるヴェルデ(ファラデー)定数が測定された。これらの測定は、同じ長さであれば、空芯ファイバーにおける磁場によって引き起こされるファラデー回転が、SMF28ファイバーの約160分の1であることを示している。この結果から空芯ファイバーのヴェルデ定数における正確な値に対する推論は、ファイバーの複屈折率に関する正確な知識を利用する。この定数は、SMF28ファイバーにおける値よりも、少なくとも10dBは小さくなると推定される。そして、それは、SMF28ファイバーにおける値よりも26dBほど低くなることも可能である。実際には、空芯FOGは、μ−金属シールドを有していたとしても、現在の市販されているFOGよりも、非常に少ない量しか必要としない。このことは、従来のFOGと比べて、空芯FOGのサイズ、
重量およびコストを減少する。
【0198】
ここに記載した特定の実施形態では、FOGにおける温度依存性は、有利なことに、空芯ファイバーを用いることによって減少する。他の実施形態では、有利なことに、他のタイプの干渉ファイバーセンサにおける温度依存性についても、減少することが可能である。このようなファイバーセンサは、例えば、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、および、フォックス・スミス干渉計などの、光学干渉計に基づくセンサを含む(ただし、これらに限られるわけではない)。ファイバーセンサが相対的に短い長さの空芯ファイバーを利用している特定の実施形態では、これらの改善されたファイバーセンサの製造において、上記のようなファイバーにおける追加的なコストがそれほど問題にならない。
【0199】
ここに記載した特定の実施形態では、FOGにおける温度依存性は、有利なことに、ブラッグファイバーを用いることによって減少する。他の実施形態では、有利なことに、他のタイプの干渉ファイバーセンサにおける温度依存性についても、減少することが可能である。このようなファイバーセンサは、例えば、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、および、フォックス・スミス干渉計などの、光学干渉計に基づくセンサを含む(ただし、これらに限られるわけではない)。ファイバーセンサが相対的に短い長さのブラッグファイバーを利用している特定の実施形態では、これらの改善されたファイバーセンサの製造において、上記のようなファイバーにおける追加的なコストがそれほど問題にならない。
【0200】
特定の実施形態は、クラッディング内に孔からなる三角形のパターンを備えた光バンドギャップファイバーを有するように、ここに記載されてきた。しかしながら、他の実施形態は、三角形とは異なるクラッディング孔の配置を有する光バンドギャップファイバーを利用することも可能である(ただし、ファイバーがなおバンドギャップをサポートし、中空コア欠損の導入が、この欠損内に局在された1つ以上のコア誘導モードをサポートする、という条件を満たすならば)。例えば、そのような条件は、いわゆるカゴメ格子を備えたクラッディングを有するファイバーによって満たされる。これについては、F.Counyらによる、「Large−pitch kagome−structured hollow−core photonic crystal fiber(ピッチの大きいカゴメ格子型の中空光結晶ファイバー),Optics Letters,Vol.31,No.34,3574〜3576頁(2006年12月)」に記載されている。他の特定の実施形態では、バンドギャップを示さないが、相当に長い距離(例えば、数ミリメートル以上)にわたって主にコア内に閉じ込められた光をなお伝送するような、中空コアファイバーが利用される。
【0201】
当業者は、前記方法および設計が、追加的な応用例を有し、関連の応用例は、上で具体的に示されたものに限定されているわけではないことを理解するであろう。さらに、この発明については、ここで説明されたような本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形で実現することも可能である。前記実施形態は、すべての態様において単なる例示にすぎず、いずれの点においても限定的でないと考えられるべきである。
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、米国特許出願第10/616,693号(出願日:2003年7月10日)の一部継続出願である。前記特許出願については、これを参照することにより、その全てがここに組み込まれている。また、前記特許出願は、35U.S.C.119(e)の下で、米国仮特許出願第60/405,049号(出願日:2002年8月20日)に対して、優先権を主張している。この仮特許出願についても、これを参照することにより、その全てがここに組み込まれている。本出願も、35U.S.C.119(e)の下で、米国仮特許出願第60/817,514号(出願日:2006年6月29日)、および、米国仮特許出願第60/837,891号(出願日:2006年8月14日)に対して、優先権を主張する。これらの各仮特許出願についても、これらを参照することにより、その全てがここに組み込まれている。
【0002】
発明の背景
発明の分野
本発明は、光ファイバーセンサに関し、より詳細には、例えば回転、動き、圧力あるいは他の刺激を検知するための、光ファイバー干渉計に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
光ファイバーサニャック干渉計は、光ファイバーセンサの実施例であり、典型的には、ループ状の光ファイバーを有している。この光ファイバーには、そのループの周囲における逆方向の伝播のために、光波が結合される。これらの逆伝播波は、ループを伝わった後、コヒーレントに干渉するように結合され、これにより、光出力信号を形成する。逆伝播波が結合されたとき、光出力信号の強度は、逆伝播波の相対位相の関数に応じて変化する。
【0004】
サニャック干渉計は、特に回転検知について有用であることが確認されている(例えばジャイロスコープ)。ループの対称中心軸についてループが回転することは、よく知られたサニャック効果にしたがって、逆伝播波間の相対位相差を形成し、位相差の量は、ループの回転速度に比例する。結合された逆伝播波の干渉によって生成される光出力信号のパワーは、主に、ループの回転速度の関数として変化する。回転検知は、この光出力信号の検出によって遂行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サニャック干渉計における回転検知の精度は、レーリー後方散乱によって生じるスプリアス波によって影響される。レーリー散乱は、現在の最新式の光ファイバーにおいて生じる。これは、この光ファイバー材料を形成している微小な素材粒子が、少量の光の散乱を引き起こすためである。レーリー散乱の結果、光は、全ての方向に散乱される。ファイバーの取り込み角内における前方向に散乱された光は、前方散乱光である。ファイバーの取り込み角内における後方向に散乱された光は、後方散乱光である。光ファイバージャイロスコープ(FOG)では、検知コイルに沿った時計回りおよび反時計回りの波(ここでは、1次的な時計回りの波、および、1次的な反時計回りの波、と称する)が、レーリー散乱によって散乱される。この1次的な時計回りの波および1次的な反時計回りの波は、ともに、前方および後方のそれぞれに散乱される。この散乱光は、検出器に戻り、1次的な時計回りの波および2次的な反時計回りの波にノイズを加える。この散乱光は、2つのタ
イプ、すなわち、コヒーレントおよびインコヒーレントに分けられる。コヒーレントに散乱する光は、コイルの中央部分を中心とする長さLCのファイバー部分に沿って生じる散乱に由来する。ここで、LCは、光源のコヒーレンス長である。この散乱光は、その由来である1次的な波に対するコヒーレント性を有しており、この1次的な波に対してコヒーレントに干渉する。その結果、かなりの量の位相ノイズが生成される。前方コヒーレント散乱は、それが散乱された元である1次的な波と同調するので、位相ノイズを加えない。その代わり、この前方コヒーレント散乱は、ショットノイズを加える。その散乱のパワーは、1次的な波のパワーよりも小さいので、このショットノイズは無視できる。コイルにおける他の全ての部分は、1次的な波に対してインコヒーレントな散乱光を生成する。前方伝播インコヒーレント散乱光は、その出所である1次的な波のそれぞれに対してショットノイズだけを加え、このショットノイズもまた、無視できる。支配的な散乱ノイズは、コヒーレント後方散乱である。このコヒーレント後方散乱ノイズは、大きくなる可能性がある。コヒーレント後方散乱ノイズは、歴史的には、非常に短いコヒーレンス長LCを有する広帯域源を用いることによって小さくされてきた。広帯域光源を用いる場合、後方散乱部分は、ファイバーの非常に小さい部分(具体的には、ファイバーコイルの中央部分を中心とする、典型的には数十ミクロンの長さLC)から生じる。このために、数メートル以上のコヒーレンス長を有する伝統的な狭帯域レーザを用いる場合に生じるものに比べると、それは劇的に減少する。例えば、Herve Lefevreによる、「The Fiber−Optic Gyroscope(光ファイバージャイロスコープ),Section4.2,Artech House,Boston,London,1993.」、および、そこに引用されている参考文献を参照されたい。
【0006】
回転検知の精度は、干渉計内における逆伝搬波間に位相差を生じさせるACカー効果によっても影響される。このACカー効果は、変化する電場に物質が配されたとき、その物質の屈折率が変化するという、よく知られた非線形光学現象である。光ファイバー内では、光ファイバーを伝搬する光波の電場は、カー効果に従ってファイバーの屈折率を変化させる可能性がある。ファイバー内を伝わるそれぞれの波の伝搬定数が屈折率の関数であるため、カー効果は、伝搬定数に関する強度依存型の摂動として現れる。コイル内を時計回り方向に循環するパワーが、コイル内を反時計回り方向に循環するパワーと完全に同じでない場合には(これは、例えば、2つの逆伝播波を生成する結合器の結合比が50%でないときに生じる)、光学的カー効果は、一般的に、異なる速度で波を伝搬させることになる。その結果、波の間で非回転誘起位相差が生じ、これにより、スプリアス信号が生成される。例えば、前記Herve Lefevreによる、「The Fiber−Optic Gyroscope」の101〜106頁、およびそこに引用されている参考文献を参照されたい。スプリアス信号は、回転誘起信号と区別できない。溶融シリカ光ファイバーは、十分に強いカー非線形を示す。このため、光ファイバージャイロスコープ・コイル内を伝わる光パワーにおける通常のレベルに関しては、光ファイバー回転センサ内でのカー誘起位相差は、低い回転速度でのサニャック効果に起因する位相差よりも、はるかに大きくなる可能性がある。
【0007】
シリカベースのファイバー内のシリカも、磁場によって影響を受ける可能性がある。特に、シリカは、磁気光学的な特性を示す。光ファイバー内における磁気光学的ファラデー効果の結果として、大きさBを有する長手方向の磁場が、Bに比例する量だけ、円偏波の位相を修正する。この円偏波の位相変化は、ファイバー材料のヴェルデ定数V、および、磁場の印加されているファイバーの長さLにも比例する。位相シフトの符号は、光が左円偏光であるか、あるいは右円偏光であるかに依存する。この符号は、また、光の伝搬および磁場における相対的な方向にも依存する。その結果として、直線偏光の場合、この効果により、偏光の向きが、角度θ=VBLだけ、変化する。この効果は、非可逆的である。例えば、同一の円偏波が逆伝搬するリング干渉計あるいはサニャック干渉計内では、磁気光学的ファラデー効果は、逆伝播波の間で、2θに等しい位相差を誘起する。しかし、フ
ァイバーコイルに磁場が印加されると、時計回りの波および反時計回りの波は、一般的に、わずかに異なる位相シフトを経験する。その結果は、波が干渉する光ファイバーループの出力における、時計回りに伝搬する波と反時計回りに伝搬する波との間の、磁場によって誘起された相対的な位相シフトである。この差分位相シフトは、ヴェルデ定数に比例する。この位相差は、ループ内のファイバーの複屈折および磁場の大きさにも依存する。さらに、位相シフトは、光ファイバーループに対する磁場の向き(つまり方向)と、時計回りに伝搬する信号および反時計回りに伝搬する信号の偏光とに依存する。磁場がDCである場合、この差分位相シフトの結果として、サニャック干渉計の位相バイアスにおけるDCオフセットが生じる。磁場が時間とともに変化する場合、この位相バイアスはドリフトするが、これは、一般に望ましくないため、好まれない。
【0008】
地球の磁場は、ナビゲーションに用いられるサニャック干渉計に対し、格別の困難さを引き起こす。例えば、光ファイバージャイロスコープを有する航空機が回転すると、光ファイバーループの相対的な空間的定位は、地球の磁場に対して変化する。その結果として、ファイバージャイロスコープの出力における位相バイアスがドリフトする。この磁場によって誘起されるドリフトは、光ファイバーループが十分に長い場合(例えば、約1000メートルである場合)、相当に大きくなる可能性がある。慣性航法光ファイバージャイロスコープにおける磁場の影響に対抗するために、光ファイバーループを、外部の磁場からシールドするようにしてもよい。複数のμ−金属層を含むシールドを用いることも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
特定の実施形態では、光学センサが提供される。この光学センサは、少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器を備えている。前記第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信している。この光学センサは、第2のポートおよび第3のポートと光通信しているブラッグファイバーをさらに備えている。前記第2の光信号および第3の光信号は、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還する。
【0010】
特定の実施形態では、検知の方法が提供される。この方法は、光信号の出力を含んでいる。この方法は、光信号における第1の部分を、ブラッグファイバーを介して第1の方向に伝播することをさらに含んでいる。この方法は、光信号における第2の部分を、このブラッグファイバーを介して第2の方向に伝播することをさらに含んでおり、この第2の方向は、第1の方向と逆方向である。この方法は、光信号における第1の部分および第2の部分がブラッグファイバーを介して伝播した後、光信号における第1の部分および第2の部分に対して光学的に干渉し、これにより、光干渉信号を生成することをさらに含んでいる。この方法は、ブラッグファイバーにおける少なくとも一部に摂動を適用することをさらに含んでいる。この方法は、この摂動によって前記光干渉信号に生じる変動を測定することをさらに含んでいる。
【0011】
特定の実施形態では、光学システムが提供される。この光学システムは、第1の光信号を出射する出力部を有する光源を備えている。この光学システムは、少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器をさらに備えている。前記光源から出射された第1の光信号を受信するために、第1のポートは、前記光源と光通信している。この第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信している。この光学システムは、
クラッディングによって囲まれている中空コアを有するブラッグファイバーをさらに備えている。このブラッグファイバーは、第2のポートおよび第3のポートと光通信しており、これにより、第2の光信号および第3の光信号が、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還する。このブラッグファイバーの前記クラッディングは、実質的に、逆伝播している第2の光信号および第3の光信号を中空コア内に閉じ込めている。この光学システムは、前記方向性結合器と光通信している光学検波器をさらに備えている。この光学検波器は、前記ブラッグファイバーを横断した後の、逆伝播している第2の光信号および第3の光信号を受信する。
【0012】
特定の実施形態では、摂動センサが提供される。この摂動センサは、クラッディングによって囲まれている中空コアを有するブラッグファイバーを備えている。このブラッグファイバーを介して、第1の光信号および第2の光信号が逆伝播している。このブラッグファイバーのクラッディングは、実質的に、逆伝播している第1の光信号および第2の光信号を中空コア内に閉じ込めている。これら第1の光信号と第2の光信号との間の干渉は、ブラッグファイバーにおける少なくとも一部の摂動に敏感である。
【0013】
さまざまな実施形態が、添付の図面に関連して、以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光源、ファイバーループ、および光学検波器を示す、例示的な光ファイバーセンサの概略図である。
【図2A】例示的な光ファイバーセンサにおいて用いることの可能な、例示的な中空コア光バンドギャップファイバーにおける周辺クラッディングの一部およびコアの、部分的な斜視図である。
【図2B】中空コアの周りにパターン配置されたクラッディング内におけるさらなる特徴を示す、図2Aに示した例示的な中空コア光バンドギャップファイバーの断面図である。
【図3】光源が狭帯域光源を含んでいる、例示的なサニャック干渉計の概略図である。
【図4】狭帯域光源の振幅を変調するための変調器を備えた狭帯域光源によって駆動される、例示的なサニャック干渉計の概略図である。
【図5】光源が広帯域光源を含んでいる、例示的なサニャック干渉計の概略図である。
【図6】広帯域光源の振幅を変調するための変調器を備えた広帯域光源によって駆動される、例示的なサニャック干渉計の概略図である。
【図7】ここに記載した特定の実施形態にしたがう全光ファイバー空芯PBFジャイロスコープ705の実験装置を示す概略図である。
【図8A】空芯ファイバーの断面における走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【図8B】空芯ファイバーにおける測定された伝送スペクトルおよび光源からの光源スペクトルを示す図である。
【図9A】回転していない場合における、これらの信号における典型的なオシロスコープトレースを示す図である。
【図9B】回転している場合における、これらの信号における典型的なオシロスコープトレースを示す図である。
【図10】ジャイロスコープが停止した状態で1時間にわたって記録されたfの出力信号のトレースを示す図である。
【図11】中空コア、ハニカムの内部クラッディング、外部クラッディングおよびジャケットを有する円筒形ファイバーの断面を概略的に示す図である。
【図12】結晶ファイバーPBFに関して計算された、ファイバーの中心からの距離の関数としての半径方向の変形を示す図である。差し込み図は、内部クラッディングハニカムにおける半径方向の変形の拡大図である。
【図13】1.5ミクロンでの、空芯ファイバー(実曲線)およびSMF28ファイバー(基準レベル)に関する、S、SnおよびSLにおける規格化されたコア半径Rに対する計算された依存性を示す図である。
【図14A】ここに記載した特定の実施形態に対応する2つのファイバーの断面におけるSEM写真の1つを示す図である。
【図14B】ここに記載した特定の実施形態に対応する2つのファイバーの断面におけるSEM写真の1つを示す図である。
【図15A】それぞれのファイバーにおける温度定数を測定するために使用された、実験用のマイケルソン干渉計を概略的に示す図である。
【図15B】干渉計における非PBF部分の残存熱に起因するフリンジカウントにおけるエラーを測定するために使用された、実験用のマイケルソン干渉計を概略的に示す図である。
【図16A】Blaze・Photonics製のファイバーに関して測定された出力パワーPout(t)を概略的に示す図である。
【図16B】Blaze・Photonics製のファイバーに関して測定された温度T(t)を概略的に示す図である。
【図17】Blaze・Photonics製のPBFと同じ結晶周期および同じコア半径を有するPBFにおける、ジャケットの厚さに対するSLの値を、さまざまな空気充填率に関して示す図である。
【図18】Blaze・Photonics製のPBFと同じファイバー構造ではあるが、ジャケットの材料および厚さの点で異なっているファイバーに関する、SLの計算値を示す図である。
【図19】シリカの外部クラッディングの厚さに対する、SLの計算された依存性を示す図である。
【図20】ここに記載した特定の実施形態に対応する光ファイバージャケットをテストするための、実施例の構成を概略的に示す図である。
【図21】空芯ファイバージャイロスコープの入力信号パワーに対するランダムウォークの測定された依存性を示す図である。
【図22A】空芯ファイバージャイロスコープに適合する温度変化(破線)、および、結果として生じた測定された出力信号における変化(実線)を示す図である。
【図22B】図22Aにおける適合する温度変化の時間微分係数(破線)を、図22Aにおける結果として生じた測定された出力信号における変化の時間微分係数(実線)とともに示す図である。
【図23】FOGコイルにおける最初の数層の4極重巻を概略的に示す図である。
【図24A】従来の固体コアファイバージャイロスコープに適合する温度変化(破線)、および、結果として生じた測定された出力信号(実線)を示す図である。
【図24B】図24Aにおける適合する温度変化の時間微分係数(破線)を、図24Aにおける結果として生じた測定された出力信号の時間微分係数(実線)とともに示す図である。
【図25】従来の固体コアファイバージャイロスコープおよび空芯ファイバージャイロスコープの双方において測定された、適合する温度勾配に対する最大の回転速度エラーの依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
ファイバー干渉計に存在するレーリー後方散乱、カー効果および磁気光学的ファラデー効果によって引き起こされる、ノイズおよび/または位相ドリフト、および、他の精度を制限する効果を減じるか、あるいは除去する必要がある。ここに開示した特定の実施形態にしたがうと、中空コア光バンドギャップファイバーが、能力を向上する、あるいは、他
の設計選択を提供するために、光ファイバーセンサ(例えばサニャック干渉計)に組み込まれている。ここに示された特定の実施形態はサニャック干渉計を利用しているが、他のタイプの干渉計(例えば、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、および、フォックス・スミス干渉計)を利用する光ファイバーセンサについても、中空コア光バンドギャップファイバーを利用することによって、性能向上を得ることが可能である。干渉分光法を利用する光ファイバーセンサについては、光ファイバーの少なくとも一部に対するさまざまな摂動を検出するために使用することが可能である。このような摂動センサについては、ファイバーの少なくとも一部における、磁場、電場、圧力、移動、回転、ねじれ、曲げ、あるいは、他の機械的な変形を感知するように構成することも可能である。
【0016】
図1は、光ファイバーシステム12を含む、例示的なサニャック干渉計5を示している。光ファイバーシステム12は、特定の実施形態では、中空コア光バンドギャップファイバーである光バンドギャップファイバー13を組み込んでいる。光バンドギャップファイバーではなく、従来の光ファイバーを含む同様の光ファイバーシステムのバージョンが、米国特許第4,773,759号明細書(1988年9月27日発行、Bergh他)において、より詳細に説明されている(この文献については、参照することにより、その全体がここに組み込まれている)。
【0017】
光ファイバーシステム12は、光を案内して処理するための光ファイバーシステム12に沿ったさまざまな場所に配されている、さまざまな構成要素を含んでいる。このような構成要素、および、これらをサニャック干渉計5において使用することは、周知である。同様の設計または異なる設計を有するシステム12の代替的な実施形態については、当業者によって実現することが可能であり、ここに説明されている特定の実施形態において使用することが可能である。
【0018】
図1におけるサニャック回転センサ5用として構成されているように、光ファイバーシステム12は、光源16と、中空コア光バンドギャップファイバー13(図2Aおよび図2Bに関連して以下に説明される)とともに形成される光ファイバーループ14と、光検出器30とを含んでいる。光源16から出力される光の波長については、シリカベースの光ファイバーの損失がその最小限に近くなるスペクトル領域内で、約1.50〜1.58ミクロンとすることが可能である。しかしながら、他の波長とすることも可能であり、前記光源から放射される波長は、ここに示される波長に限定されているわけではない。例えば、光ファイバーがシリカ以外の材料を含んでいる場合、前記波長は、光ファイバーによって生じる損失を最小にするか、またはこれを減少するような波長範囲内で選ばれることが有利である。さまざまな実施形態における光源に関する追加的な詳細は、以下でより詳しく説明される。
【0019】
特定の実施形態では、光ファイバーシステム12内のファイバーループ14は、有利なことに、光バンドギャップファイバー13からなる複数の巻線を含んでいる。これは、特定の実施形態では、スプールあるいは他の適切な支持部(図示せず)の周りに巻かれている。1つの具体的な実施例では、ループ14は、光バンドギャップファイバー13の1000以上の巻線を含むことが可能であり、および、約1000メートルの光ファイバー13の長さを含むことができる。光学検波器30については、この技術分野で周知のさまざまな光検出器のうちの1つとすることが可能であるが、まだ発明されていない検出器を同様に用いるようにしてもよい。
【0020】
図1に示されるような干渉計内には、有利なことに、光学偏光コントローラ24を含めることが可能である。偏光コントローラ24の光学的な包含は、システム12の設計に依
存する。偏光コントローラの例については、例えば、H.C.Lefevreの「Single−Mode Fibre Fractional Wave Devices and Polarisation Controllers(単一モードファイバー部分波デバイスおよび偏光コントローラ),Electronics Letters,Vol.16,No.20,1980年9月25日,778〜780頁)」、および、米国特許第4,389,090号明細書(1983年6月21日発行、Lefevre)に説明されている。これらの文献については、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。前記偏光コントローラ24は、印加される光の偏光状態の調整を可能とする。有利なことに、他のタイプの偏光コントローラを用いることも可能である。
【0021】
図1に示した偏光コントローラ24は、方向性結合器26のポートAに対して光学的に結合されている。この方向性結合器26は、ポートAによって受信した光を、この結合器26のポートBおよびポートDに対して結合させる。結合器26上のポートCは、光学検波器30に対して光学的に結合されている。サニャック干渉計から戻ってくる光は、ポートBによって受信され、ポートAおよびポートCに結合される。このように、ポートBによって受け取られた戻り光は、ポートCに光学的に結合された光学検波器30によって検出される。図示するように、ポートDは、「NC」(「接続されず」を意味する)と描かれたポイントにおいて、非反射的に終端する。結合器26として用いることの可能な結合器の例については、米国特許第4,536,058号明細書(1985年8月20日発行、ショウ他)、および、ヨーロッパ特許公報第0038023号明細書(1981年10月21日発行)において詳細に説明されている。これら双方については、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。しかしながら、他の種類の光結合器(例えば、溶融結合器、集積光結合器、またはバルク光学機器を含む結合器など)を、同様に用いることも可能である。
【0022】
方向性結合器26のポートBは、偏光子32に対して光学的に結合されている。この偏光子32を通過した後、システム12の光路は、第2の方向性結合器34のポートAに続く。この結合器34については、第1の方向性結合器26に関して上記のものと同じタイプであってもよいが、それに限定されているわけではなく、光集積装置またはバルクの光学デバイスを含んでもよい。特定の実施形態では、結合器34のポートAに入る光は、それがポートBおよびポートDに結合されるときに、実質的に等しく分割される。光の第1の部分W1は、図1に示されるように、結合器34のポートBから出て、ループ14の周りを時計回りの方向に伝搬する。光の第2の部分W2は、図1に示されるように、結合器34のポートDから出て、ループ14の周りを反時計回りの方向に伝搬する。図示するように、結合器34のポートCは、「NC」と描かれたポイントにおいて、非反射的に終端する。特定の実施形態では、第2の結合器34は、印加された光を2つ逆伝播波W1とW2とに分割するためのビームスプリッタとして機能する。さらに、第2の結合器34は、また、ループ14を伝わった後の逆伝播波を再び組み合わせる。上記のように、図1に示された光ファイバー方向性結合器26、34に代えて、他の種類のビームスプリッティングデバイスを用いることも可能である。
【0023】
バイアスを与えるために非対称的に配置された位相変調器を用いている光ファイバージャイロスコープ内のコヒーレント後方散乱ノイズについては、結合器34の結合比をきっかり50%に選択することによって、実質的に減少あるいは除去することが可能である。例えば、J.M.Mackintosh他による「Analysis and observation of coupling ratio dependence of Rayleigh backscattering noise in a fiber
optic gyroscope(光ファイバージャイロスコープ内のレーリー後方散乱ノイズにおける結合比依存の分析および観察),Journal of Lightwave Technology,Vol.7,No.9,1989年9月、1323〜1
328頁」を参照されたい。50%の結合効率を与えるこの技術については、有利なことに、ループ14内で光バンドギャップファイバー13を用いる図1のサニャック干渉計5内で使用することが可能である。光バンドギャップファイバー、および中空(例えばガス入り)コアを有するブラッグファイバーでは、後方散乱は、3つの主な発生源からもたらされる。第1の発生源は、中空コアを満たすガスからのバルク散乱(および、クラデッィング穴を満たすガスからのもの)であり、これについては無視できる。第2の発生源は、導波管の固体部分からのバルク散乱である。この固体部分とは、具体的には、ブラッグファイバーにおけるコアを取り巻く交互屈折率(alternating index)の同心円状の輪、および、光バンドギャップファイバーにおける前記穴を取り巻く固体薄膜である。第3の発生源は、導波管の固体部分(特に、コアの外縁を規定する固体)の表面において生じる表面散乱である。この散乱は、この表面の不規則性、あるいは、これらの表面における大きさおよび形状に関する同等にランダムな変動に起因する。ファイバーを適切に設計すれば、表面散乱については、これらの変動の振幅を減じることによって最小化することが可能である。このような状況の下では、表面散乱は、バルク散乱の中心となり、そして、表面散乱は、従来の固体コアの屈折率導波型単一モードファイバーの表面散乱よりも著しく小さくなる。したがって、図1のサニャック干渉計5における後方散乱ノイズについては、光バンドギャップファイバー13の本質的に低いレーリー後方散乱によって与えられるレベルよりも低く減少することが可能である。サニャック干渉計5については、有利なことに、全体的なノイズを非常に低くする必要のある高回転感度用途のための光ファイバージャイロスコープとして、用いることが可能である。
【0024】
50%の結合効率を有する結合器34を使用する前記技術は、結合器34の結合比がちょうど50%にとどまる限りは、うまく働く。しかしながら、ファイバー環境は変化するため(例えば、結合器の温度は揺動するため)、または、結合器34は経年変化するため、結合比は、通常、少量づつ変化する。これらの条件の下では、前の段落において説明したコヒーレント後方散乱をゼロにするための条件を継続的に満たすことはできない可能性がある。この結合技術とともに、ループ14内で従来のファイバーに代えて光バンドギャップファイバー13を用いることは、結合比の許容差をちょうど50%に緩和する。光バンドギャップファイバー13は、また、結合比がその好ましい値である50%から一定程度に逸脱することによって生じる、後方散乱ノイズレベルも減じる。
【0025】
偏光コントローラ36については、有利なことに、第2の方向性結合器34とループ14との間に配置することが可能である。この偏光コントローラ36については、コントローラ24と同様のタイプのものとしてもよいし、または、それとは異なる設計を有するものとしてもよい。この偏光コントローラ36は、ループ14を逆伝播する波の偏光を調整するために使用される。これにより、これらの波の重畳によって形成される光出力信号が、最小の光パワー損失をもって偏光子32によって効率的に伝えられるような、偏光を有する。したがって、偏光コントローラ24、36の両方を用いることによって、ファイバー12を伝搬する光の偏光を、最大の光パワーに応じて調整することが可能となる。このように偏光コントローラ36を調整することは、偏光の相互関係を保証する。偏光子32と偏光コントローラ24、36との組み合わせを用いることは、前記米国特許第4,773,759号明細書に開示されている。また、前記Herve Lefevreの「The Fiber−Optic Gyroscope」の第3章についても参照されたい。
【0026】
第1の位相変調器38は、AC発生器40によって駆動され、線41によってAC発生器40に接続されている。特定の実施形態では、この位相変調器38は、ファイバーループ14と結合器34との間の光路内の、光ファイバー13に取り付けられる。図1に示されるように、この位相変調器38は、ループ14内に、非対称的に配置される。したがって、時計回りに伝搬する波W1の変調は、反時計回りに伝搬する波W2の変調と必ずしも同相ではない。なぜならば、時計回りの波W1と反時計回りの波W2との対応部分は、異
なる時間に位相変調器を通るからである。実際に、波の変調は、位相不一致でなければならず、このため、位相変調器38が、2つの波の間に差分位相シフトを導入するための手段を与えなければならない。この差分位相シフトは、測定量(例えば、低い回転速度)に対して干渉計が0ではない1次感度を示すように、干渉計の位相にバイアスをかける。より具体的には、特定の実施形態における波W1の変調は、波W2の変調から約180°だけ位相がずれており、このため、1次感度が最大あるいはほぼ最大になる。この変調に関する詳細については、前記米国特許第4,773,759号明細書に示されている。
【0027】
さまざまな実施形態では、ループ位相変調器38によって与えられる位相の振幅および周波数については、コヒーレント後方散乱ノイズが実質的にキャンセルされるように、選択することが可能である。例えば、J.M.Mackintosh他による、前記「Analysis and observation of coupling ratio
dependence of Rayleigh backscattering noise in a fiber optic gyroscope」を参照されたい。この選択技術は、有利なことに、光バンドギャップファイバーループを使用している光ファイバージャイロスコープにおいて使用することが可能である。したがって、この後方散乱ノイズについては、光バンドギャップファイバーの本質的に低いレーリー後方散乱によって許容されるレベルより低く減じることが可能であり、これは、全体ノイズを非常に低くする必要のある用途において有用となる可能性がある。対照的に、ループ位相変調器38によって与えられる位相の振幅および周波数を選択するためのこの技術は、与えられた位相の振幅および周波数がそれらのそれぞれの最適値とちょうど等しい限り、うまく機能する。この技術とともに、従来のファイバーの代わりに光バンドギャップファイバーループを用いることは、ループ位相変調器38によって与えられる位相の振幅および周波数の安定度における許容度を緩和する。この選択技術は、また、ループ位相変調器38によって与えられる変調の振幅、周波数、あるいは、振幅および周波数の双方が、それらのそれぞれの好ましい値から変わる場合に生じることのある後方散乱ノイズレベルについても、減じる。
【0028】
特定の実施形態では、第2の位相変調器39が、ループ14の中央に取り付けられる。この第2の位相変調器39は、信号発生器(図示せず)によって駆動される。この第2の位相変調器39については、有利なことに、後方散乱光の効果を減じるために使用することが可能である。これについては、例えば、前記米国特許第4,773,759号明細書に記載されている。第2の位相変調器39については、前記第1の位相変調器38と同様のものとすることが可能である。しかしながら、特定の実施形態では、この第2の位相変調器は、第1の位相変調器38とは異なる周波数で動作する。また、特定の実施形態では、第2の位相変調器39は、第1の位相変調器38と同期していない。
【0029】
さまざまな実施形態では、ループ14内の光バンドギャップファイバー13と、位相変調器38、39とは、有利なことには、偏光保存ファイバーを含んでいる。このような場合、偏光子32は、必要とされるセンサの精度に応じて、除外されてもよく、または除外されなくてもよい。一実施形態では、前記光源16は、直線偏光を出力するレーザダイオードを含み、この光の偏光は、偏光維持ファイバーの固有モードと一致させられている。このような場合、レーザダイオード10から出力される光の偏光については、光ファイバーシステム12内で維持することが可能である。
【0030】
AC発生器40からの出力信号は、図1において、線44上でロックインアンプ46に向けて供給されているように図示されている。このロックインアンプ46もまた、線48を介して接続されており、これにより、光学検波器30の電気出力を受け取る。アンプ46に向かう線44上の信号は、基準信号を与える。これにより、ロックインアンプ46が、位相変調器38の変調周波数において線48上の検出器出力信号を同期的に検出するこ
とが可能となる。これにより、特定の実施形態におけるロックインアンプ46は、この周波数における他のすべての高調波をブロックする位相変調器38の基本周波数において、効率的に帯域通過フィルタを提供する。検出される出力信号におけるこの基本的な構成要素のパワーは、動作範囲では、ループ14の回転速度に比例する。ロックインアンプ46は、この基本的な構成要素内のパワーに比例した信号を出力し、これにより、回転速度における直接的な表示を与えている。これについては、ロックインアンプ出力信号を線49上のディスプレイパネル47に供給することによって、ディスプレイパネル47において目に見えるように表示することが可能である。なお、他の実施形態では、ロックインアンプについては、異なるモードで動作してもよく、または、全く除外されていてもよい。また、信号については、代替的な方法によって検出するようにしてもよい。例えば、B.Y.Kimによる「Signal Processing Techniques,Optical Fiber Rotation Sensing(信号処理技術、光ファイバー回転検知),William Burns,Editor,Academic Press,Inc.,1994年、第3章、81〜114頁)」を参照されたい。
【0031】
光ファイバー
周知のように、従来の光ファイバーは、より低い屈折率のクラッディングによって囲まれた、高い屈折率の中央コアを含んでいる。コアとクラッディングとの間の屈折率の不整合のために、光ファイバーコアに沿った角度範囲内で伝搬する光は、コアとクラッディングとの境界において完全に内側に反射されるため、ファイバーコアによって案内される。必ずというわけではないが、通常、ファイバーは、光における多くの部分がコア内にとどまるように設計されている。以下に説明するように、光ループ14内の光バンドギャップファイバー13は、導波管としても作用する。しかしながら、この導波管は、異なる形態で形成され、そのモード特性は、従来のファイバーを用いているファイバー干渉計(例えば、サニャック干渉計)の性能を制限するさまざまな効果を、光ファイバーシステム12の一部(特に、光ループ14内)において光バンドギャップファイバー13を用いることによって減じることが可能となる。
【0032】
中空コア光バンドギャップファイバー13の例が、図2Aおよび図2Bに示されている。中空コア光バンドギャップファイバー(フォトニック結晶ファイバー)は、周知である。例えば、「Article Comprising a Microstructure Optical Fiber,and Method of Making such Fiber(微細構造光ファイバーを含む製品、および、このようなファイバーを製造するための方法)」と題された米国特許第5,802,236号明細書(1998年9月1日発行、DiGiovanni他)、「Photonic Crystal Fibers(フォトニック結晶ファイバー)」と題された米国特許第6,243,522号明細書(2001年6月5日発行、Allen他)、「Method of Fabricating Photonic Glass Structures by Extruding,Sintering and Drawing(押出、焼結および延伸によってフォトニックガラス構造を製造するための方法)」と題された米国特許第6,260,388号明細書(2001年7月17日発行、Borrelli他)、「Ring Photonic Crystal Fibers(リングフォトニック結晶ファイバー)」と題された米国特許第6,334,017号明細書(2001年12月25日発行、West他)、および、「Single Mode Optical Fiber(単一モード光ファイバー)」と題された米国特許第6,334,019号明細書(2001年12月25日発行、Birks他)を参照されたい。これらは、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。
【0033】
図2Aおよび図2Bに示すように、中空コア光バンドギャップファイバー13は、中央コア112を含んでいる。クラッディング114は、このコア112を囲んでいる。従来
のファイバーにおける中央コアとは異なり、特定の実施形態におけるファイバー13の中央コア112は、中空である。中空コア112内の開放領域については、真空化するようにしてもよいし、あるいは、空気または他のガスによって充填するようにしてもよい。クラッディング114は、中空コア112内での伝搬に光を拘束する光バンドギャップ構造を形成するために反復的なパターンに配置された、複数の特徴116を含んでいる。例えば、図2Aおよび図2Bにおけるファイバー13の例では、特徴116は、中空コア112の周りにおいて、複数の同心三角形をなすように配置されている。このパターン例における2つの最も内側の孔層が、図2Aの部分的な斜視図に示されている。同心の4つの孔層かなる完全なパターンは、図2Bの断面図に例示されている。例示される孔のパターンは三角形であるが、有利なことに、他の配置またはパターンを用いることも可能である。さらに、コア112の直径、および、特徴116のサイズ、形状、および間隔は変わってもよい。
【0034】
図2Aにおいて想像線によって示されるように、特徴116は、有利なことに、マトリックス材料118内に形成される複数の中空のチューブ116を含むことも可能である。この中空のチューブ116は、相互に平行で、且つ、光バンドギャップファイバー13の長さに沿って延びており、これにより、チューブ116は、図2Bに示される三角形のグリッドパターンを維持している。それぞれのチューブ116を取り囲むマトリックス材料118は、例えば、シリカ、シリカベースの材料、あるいはこの技術分野で周知の他のさまざまな材料、および、まだ開発されていないか、光バンドギャップ技術にまだ適用されていない光誘導材料を含む。
【0035】
この特徴(例えば孔)116は、光バンドギャップを形成するように、特別に配置されている。特に、特徴116を分離している距離、グリッドの対称性、および特徴116のサイズは、クラッディングが無限である場合(つまり、コア112のない場合)に、ある周波数範囲内の光がクラッディング114内を伝搬しないような光バンドギャップを形成するように、選択される。ここで「欠陥」とも呼ばれるコア112の導入は、この本来のクラッディング構造における対称性を破り、ファイバー13内に新しいモードセットを導入する。ファイバー13内におけるこれらのモードは、コアによって導かれるエネルギーを有しており、コアモードとも呼ばれる。特定の実施形態における特徴(例えば、孔)116のアレイは、中空コア112内における光エネルギーの強い集中を生成するように、特別に設計されている。特定の実施形態では、光は、非常に低い損失をもって、ファイバー13における中空コア112内のほぼ全体を伝搬する。典型的な低損失空芯光バンドギャップファイバーについては、N.Venkataraman他による「Low Loss(13 dB/km)Air Core Photonic Band−Gap Fiber(低損失(13dB/km)空芯光バンドギャップファイバー),Proceedings of the European Conference on Optical Communication,ECOC2002,Post−deadline Paper No.PD1.1,2002年9月」に記載されている。
【0036】
さまざまな実施形態では、ファイバーが「単一モード」であるように(つまり、コア112が基本的なコアモードのみをサポートするように)、さらにファイバーパラメータが選択される。この単一モードは、実際には、基本モードにおける2つの固有偏光を含んでいる。したがって、ファイバー13は、両方の固有偏光に対応する2つのモードをサポートしている。特定の実施形態では、ファイバーが、基本コアモードの2つの固有偏光のうちの1つのみをサポートし且つ伝搬させるコアを有する単一偏光ファイバーとなるように、ファイバーパラメータがさらに選択される。特定の実施形態では、ファイバーは、マルチモードファイバーである。
【0037】
公知の、およびまだ発明されていない他の種類の光バンドギャップファイバーまたは光
バンドギャップデバイスについては、サニャック回転センサ、および、他の目的のために用いられる干渉計に採用することも可能である。例えば、有利に用いることの可能な他の種類の光バンドギャップファイバーの1つに、ブラッグファイバーがある。
【0038】
ここに開示した特定の実施形態にしたがうと、性能の向上あるいは他の設計ブラッグファイバーは、能力を向上する、あるいは、他の設計選択を提供するために、光ファイバーセンサ(例えばサニャック干渉計)に組み込まれている。ここに示された特定の実施形態はサニャック干渉計を利用しているが、他のタイプの干渉計(例えば、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、および、フォックス・スミス干渉計)を利用する光ファイバーセンサについても、ブラッグファイバーを利用することによって、性能向上を得ることが可能である。干渉分光法を利用する光ファイバーセンサについては、光ファイバーの少なくとも一部に対するさまざまな摂動を検出するために使用することが可能である。このような摂動センサについては、ファイバーの少なくとも一部における、磁場、電場、圧力、移動、回転、ねじれ、曲げ、あるいは、他の機械的な変形を感知するように構成することも可能である。
【0039】
ブラッグファイバーは、コアを取り囲むクラッディングを含んでいる。コアとクラッディングとの境界は、高い屈折率と低い屈折率とが交互になった複数の材料薄層を含んでいる。さまざまな好ましい実施例では、クラッディング界面(つまり、コアとクラッディングとの境界)は、コアを取り囲む複数の同心環状材料層を含んでいる。前記薄層は、ブラッグ反射板として作用し、低屈折率のコア内に光を含む。例えば、特定の実施形態におけるコアは、中空である(例えば、ガスあるいはガスの組み合わせ(空気など)を含んでいる)。ブラッグファイバーは、例えば、P.Yeh他による「Theory of Bragg Fiber(ブラッグファイバーの理論),Journal of Optical Society of America,Vol.68,1978年、1197〜1201頁)」、米国特許第7,190,875号明細書、米国特許第6,625,364号明細書、米国特許第6,463,200号明細書に記載されている。これらのそれぞれは、参照することにより、その全体がここに組み込まれている。ブラッグファイバーに関して、従来のファイバーとの界面における後方散乱および後方反射の量は、他のタイプの光バンドギャップファイバーに関するものとは異なる可能性がある。斜め接続に関し、ブラッグファイバーと従来のファイバーとの界面からの後方反射の量は、他のタイプの光バンドギャップファイバーについてのものとは異なった形態で、角度、波長および空間的定位に依存することが可能である。さらに、以下により詳細に示すように、特定の実施形態では、ブラッグファイバーは、有利なことに、温度揺動に対する位相感度を減少する。
【0040】
光ファイバージャイロスコープ(FOG)は、一般的に、少数の有害な効果によって制限される。この有害な効果とは、ループファイバーの望ましくない特性から生じる有害な効果であり、具体的には、レーリー後方散乱、カー効果、ファラデー効果および熱(シュウプ)効果である。これらの効果は、ジャイロスコープの出力における短期間のノイズ、および/または、長期間のドリフトを招来する。これらは、長期間にわたって低い回転速度を正確に測定するための能力を制限する。これらの有害効果における小さな未修正部分は、慣性航法FOGに対する、残存している主な障害の1つを構成する。
【0041】
サニャック干渉計において、従来の光ファイバーの代わりに中空コア光バンドギャップファイバーを用いることにより、レーリー後方散乱、カー効果、および磁場の存在によって生じるノイズおよびエラーを実質的に減じることが可能となる。中空コア光バンドギャップファイバーでは、光学モードパワーは、主として、中空コア(例えば、空気、他のガス、または真空を含み得る)に拘束される。レーリー後方散乱、カー非線形、およびヴェルデ定数は、空気、他のガス、および真空中にあるときには、シリカ、シリカベースの材
料、および他の固体の光学材料内にある場合よりも、実質的により少なくなる。これらの効果が減少することは、光バンドギャップファイバーの中空コアに含まれる光学モードパワーが部分的に増大することと合致する。
【0042】
カー効果および磁気光学効果は、サニャック干渉計のバイアスポイントにおいて長期のドリフトを誘起する傾向がある。これにより、結果として、スケールファクタのドリフトが、位相シフトを、光ファイバージャイロスコープに適用される回転速度に関連づけることとなる。対照的に、レーリー後方散乱は、測定される位相に対し、主として短期のノイズを導入する傾向があり、これによって、検出可能な回転速度の最小値を上げる。これらの効果のそれぞれは、検出された光信号から所望の情報を抽出することを妨げる。特定の実施形態では、中空コア光バンドギャップファイバー13を干渉計5に組み込むことは、有利なことに、これらの効果を弱める。
【0043】
パラメータηnlは、ここでは、光バンドギャップファイバーの固体部分における、基本モード強度の2乗の一部として定義される。同様に、パラメータηは、ここでは、光バンドギャップファイバーの固体部分における、基本モードのパワーの一部として定義される。カー非線形によって生じるノイズが引き起こす位相ドリフトは、パラメータηnlに比例する。磁気光学効果によって生じる位相ドリフト、および、レーリー後方散乱によって導入されるノイズのぞれぞれは、ηが小さすぎない限りは、以下では、パラメータηに比例する。ηnlの効果の分析について、カー効果に関して説明する。レーリー後方散乱および磁気光学ファラデー効果に関する同様の分析については、パラメータηを用いることによって実施することが可能である。
【0044】
カー効果
モードエネルギーには、光バンドギャップファイバーのコアを含む孔内に存在するものもあり、また、モードエネルギーには、ファイバーの固体部分(典型的には、シリカベースのガラス)内に存在するもある。このため、光バンドギャップファイバー(PBF)におけるカー効果は、2つの寄与を含んでいる。1つの寄与は、ファイバーの固体部分からであり、また、1つの寄与は孔からである。光バンドギャップファイバーにおける残余のカー定数(n2,PBF)については、以下の式にしたがって、これらの2つの寄与の合計として表わすことが可能である。
【0045】
【数1】
【0046】
この式では、n2,solidは、ファイバーにおける固体部分(例えばシリカを含むことが可能である)のカー定数である。また、n2,holesは、例えば、真空化され、ガスで充填され、または空気で充填されている、孔のカー定数である。孔が真空化されている場合、カー非線形は、0である。これは、真空のカー定数が0であるためである。カー定数が0に等しい場合、式(1)内の項n2,holes(1−ηnl)に対応する第2の寄与は、存在しない。この場合、カー非線形は、残りの項n2,solidηnlによって示されるような、パラメータηnlに比例する。しかしながら、孔が空気で充填されており、これが、小さくはあるが有限のカー定数を有する場合、両方の項(n2,solidηnl+n2,holes(1−ηnl))が存在する。前記式(1)は、このより一般的な事例を説明する。
【0047】
特定の実施形態では、パラメータηnlは、Aeff/Aeff,silicaと等しい。ここで、AeffおよびAeff,silicaは、それぞれ、モード有効範囲、および、シリカにおけるモード有効範囲である。これらの量については、以下のように計算
することが可能である。
【0048】
【数2】
【0049】
ここで、ngはモードグループ速度であり、εrは比誘電率であり、Eはモードの電場である。なお、パラメータηnlは、光バンドギャップファイバーの固体部分における基本モード強度の2乗の一部であり、光バンドギャップファイバーの固体部分における基本モードのパワーではない。これは、通常ηで定義され、光バンドギャップにおける他の特性に相当する。
【0050】
標準的なシリカファイバーに関しては、クラッディング内に含まれる光学モードのパーセンテージは、一般的に、10%〜20%の範囲内にある。中空コア光バンドギャップファイバー13内では、クラッディング114内の光学モードのパーセンテージは、約1%または実質的にそれよりも少ないと推定される。したがって、光バンドギャップファイバー13内では、ファイバーの固体部分による有効非線形については、約20分の1に減少することが可能となる。この推定によると、中空コア光バンドギャップファイバー13を用いることによって、カー効果については、少なくとも1桁分は減少することが可能であり、好適な設計では、さらに減少することができる。実際、ファイバーの固体部分のカー定数n2,solidが、孔の寄与n2,holes(1−ηnl)と比較して無視できるほどであるほど十分に小さいパラメータηnlを用いて、光バンドギャップファイバーを設計できることが、測定によって示されている。たとえ、n2,solidがn2,holesよりもずっと大きい場合であっても、n2,holes(1−ηnl)がn2,solidηnlよりも大きくなるほどηnlが十分に小さくなるように、ファイバーを設計することが可能である。例えば、D.G.Ouzounov他による「Dispersion and nonlinear propagation in air−core photonic−bandgap fibers(空芯光バンドギャップファイバーにおける分散および非線形伝搬),Proceedings of the Conf. on Lasers and Electro−optics,Paper CThV5,2003年6月)」を参照されたい。
【0051】
後方散乱および磁気光学的効果
式(1)と同様の関係が、レーリー後方散乱および磁気光学ファラデー効果に当てはまる。したがって、式(1)は、レーリー後方散乱、磁気光学ファラデー効果、およびカー効果を含む、以下のようなより一般的な形で書くことが可能である。
【0052】
【数3】
【0053】
式(2)では、Fは、それぞれの係数、カー効果n2、ヴェルデ定数V、またはレーリー散乱係数αSのうちのいずれかに対応する。項FPBF、Fsolid、およびFholesは、それぞれ、光バンドギャップファイバー、固体材料、および孔に関する適切な定数を示す。例えば、カー定数n2がFの代わりに用いられる場合、式(2)は、式(1)になる。ヴェルデ定数VがFの代わりに用いられる場合、式(2)は、光バンドギャップファイバーの有効なヴェルデ定数を示す。
【0054】
式(2)の第1の項、Fsolidηは、ファイバーの固体部分の寄与から生じ、第2の項Fholes(1−η)は、孔の寄与から生じる。従来のファイバーでは、第1の項だけが存在する。光バンドギャップファイバー内では、固体部分に関する項Fsolidηと、中空部分のための項Fholes(1−η)との両方が、一般に寄与する。これらの項の寄与は、パラメータηによって定量化される、固体におけるモードのパワーの相対的なパーセンテージに依存する。上記のように、ηが適切なファイバー設計によって十分に小さく作られている場合、例えば、第1の項Fsolidηについては、無視できるほどの値にまで小さくすることが可能であり、第2の項Fholes(1−η)が支配的になる。これは有益である。なぜならば、FholesがFsolidよりもずっと小さいからであり、このことは、第2の項が小さく、したがって、Fが小さいことを意味するためである。この第2の項Fholes(1−η)については、孔内の空気を、減じられたカー定数n2、減じられたヴェルデ定数V、減じられたレーリー散乱係数αS、またはこれらの係数の全ての(あるいはいくつかの)減じられた値を有するガスに取替えることによって、さらに減少することが可能となる。この第2の項Fholes(1−η)については、ファイバー内の孔が真空化されている場合、0にまで減少することが可能である。
【0055】
以上のように、レーリー後方散乱、カーによって誘起された位相エラー、および磁場によって誘起された光信号上の位相シフトに対する固体の寄与については、パラメータηおよびηnlを小さくすることによって減少することが可能である。したがって、レーリー後方散乱、カー非線形、および磁場効果における固体の寄与を比例的に小さくするために、光バンドギャップファイバーは、これらのパラメータを減少するように設計される。例えば、中空コア光バンドギャップファイバーの特定の設計では、値ηを、約0.003以下とすることが可能である。けれども、この範囲は、限定として解釈されるべきではない。さらに、このバルク散乱の寄与に加えて、表面散乱は、より大きい寄与を与える可能性がある
以上のように、光ファイバー内のレーリー後方散乱は、後方散乱を生成する1次的な波における本来の伝搬方向とは逆の方向にファイバーを伝搬する反射波を作り出す。このような後方散乱光は、逆伝播波W1、W2を含む光に対してコヒーレントであるため、後方散乱光は、1次的な波に干渉し、これにより、検出器30によって測定される信号に強度ノイズを加える。
【0056】
特定の実施形態では、後方散乱は、ループ14内で中空コア光バンドギャップファイバー13を用いることによって、小さくなる。上記のように、中空コア光バンドギャップファイバー13によってサポートされる光学モードのモードエネルギーは、実質的に中空コア112に拘束される。従来の固体コア光ファイバーと比較すると、中空コア112内の真空、空気、またはガスを伝搬する光に関する散乱は、より少ないものとなる。
【0057】
孔(中空コアを含む)内のモードエネルギーの相対量を増大することによって、ファイ
バーにおける固体部分内のモードエネルギー量を減少することによって、特定の実施形態における後方散乱が減少する。したがって、光ファイバーシステム12のループ14内で光バンドギャップファイバー13を用いることによって、後方散乱を実質的に減少することが可能となる。
【0058】
中空コアファイバーは、干渉計の性能に対する磁場の効果も減少する。上記のように、ヴェルデ定数は、シリカベースのガラス等の固体光学材料内にあるよりも、空気、ガス、および真空中での方が小さい。中空コア光バンドギャップファイバー内における光の大部分は中空コア内を伝搬するため、磁気光学的に誘起される位相エラーが小さくなる。したがって、より少ない磁場シールドしか必要にならない。
【0059】
光源
多数の振動モードまたは周波数を含むレーザ光、例えば、超蛍光ファイバー源(SFS)からの光についても、ここで説明される回転感知装置内で使用することが可能であり、これにより、同様の条件下での単一周波数源からの光の場合よりも、より低い回転速度エラーを得られる。いくつかの実施形態では、マルチモードレーザも採用することが可能である。特に、カーによって誘起された回転速度エラーは、レーザ内の振動モード数と反比例する。なぜならば、多数の周波数成分が、カー効果内の自己位相変調項および相互位相変調項を少なくとも部分的に平均化し、これにより、カーによって誘起された正味の位相エラーを減少するからである。この現象の数学的分析およびカーによって誘起される位相エラーの減少例については、前記米国特許第4,773,759号明細書に開示されている。
【0060】
超蛍光源については、図1の光ファイバーシステム12とともに用いることが可能であるが、特定の実施形態におけるシステム12は、実質的な固定単一周波数を有する光を出力する光源16を組み込んでいる。光ファイバージャイロスコープのスケールファクタは、光源の平均波長に依存する。このため、この波長の不規則な変動は、波長ファクタの不規則な変動につながり、これは、測定される回転速度に望ましくないエラーをもたらすことになる。実質的に安定している出力波長を有する光源が、電気通信用途のために開発されており、これらの光源は、光ファイバー回転感知システムでの使用にとって有用である。しかしながら、これらの光源は、通例、狭帯域源である。したがって、もしも従来の光ファイバーとともにこれらの狭帯域の安定した周波数の光源を用いるなら、カー効果の補償のために上記のような広帯域マルチモードレーザ源を用いることと矛盾することになる。
【0061】
しかしながら、図3は、特定の実施形態に応じた干渉計305を示している。この干渉計305は、干渉計バイアス内のドリフトに対するカーの寄与を減じながら、実質的に安定した波長を得ることが可能である。この干渉計305は、中空コア光バンドギャップファイバー13に組み合わされる、安定した周波数の狭帯域光源316を備えた光ファイバーシステム312を含んでいる。中空コア光バンドギャップファイバー13を光ファイバーシステム312に導入することにより、有利なことに、実質的に安定した周波数出力を有する従来から利用可能であった狭帯域光源316を用いることが可能となる。図3のサニャック干渉計305は、図1のサニャック干渉計5と同様であり、図1と同様の要素については、図3においても同じ番号で特定されている。図1の光ファイバーシステム12に関して上で説明したように、図3の光ファイバーシステム312も、中空コア光バンドギャップファイバー13のある長さを含む、光ループ14を備えている。この狭帯域光源316は、有利なことに、レーザまたは他のコヒーレント光源等の発光デバイス310を含んでいる。発光レーザ310の例としては、レーザダイオード、ファイバーレーザ、または固体レーザを挙げられる。特定の実施形態では、狭帯域レーザダイオードを有するFOGの操作は、有利なことに、波長安定度、および、これによるスケールファクタの安定
度がはるかに高いこと、および場合によっては低コストであるという観点において、最新の広帯域源よりもはるかに優れている。他のレーザあるいは他の種類の狭帯域光源についても、有利なことに、他の実施形態において用いることが可能である。いくつかの実施形態では、狭帯域光源316は、例えば、約1GHz以下、約100MHz以下、あるいは約10MHz以下のFWHMスペクトル帯域幅を有する光を出力する。前記範囲から外れる帯域幅を有する光源についても、他の実施形態に含めることが可能である。
【0062】
上記のように、特定の実施形態における光源316は、安定した波長で動作する。いくつかの実施形態では、出力波長は、例えば約±10−6(つまり、±100万分の1(ppm))を超えて逸脱することはない。特定の実施形態では、波長の不安定性は、約±10−7(つまり、±0.1ppm)以下である。このような波長の安定性を提供する、電気通信用途に広く製造されたレーザ等の狭帯域光源が、現在、利用可能である。したがって、安定した波長の光源を用いる結果として、サニャック干渉計におけるスケールファクタの安定性が高められる。
【0063】
狭帯域光源は、結果的に、広帯域光源を用いる場合よりも、より長いコヒーレンス長をも与える。したがって、狭帯域光源は、コヒーレント後方散乱によって生成されるノイズの寄与を増大する。例えば、時計回りに伝搬する光信号W1が、ループ14内の欠陥に遭遇すると、この欠陥が、光信号W1からの光を、反時計回りの方向に後方散乱する可能性がある。この後方散乱光は、反時計回りに伝搬する1次的な光信号W2の光と組み合わさり、それと干渉する。この干渉は、これらの2つの光信号が伝わる光路差が光のおよそ1コヒーレンス長内にある場合に、後方散乱されたW1光と反時計回りの1次的な光W2との間で生じる。ループ14の中心からより遠く離れた散乱点の場合には、この光路差は最も大きくなる。したがって、コヒーレンス長がより大きくなると、ループ14の中心からより遠く離れた散乱点が光信号内のコヒーレントノイズに寄与することとなり、これによって、ノイズレベルが増大する。
【0064】
特定の実施形態では、結合器34のポートBからポートDまでの光路長よりもコヒーレンス長が短くなっており、これによってコヒーレント後方散乱ノイズの大きさが減少する。しかしながら、狭帯域源316等の狭帯域光源は、広帯域光源よりもずっと長いコヒーレンス長を有している。したがって、図3の実施形態における光バンドギャップファイバー13の代わりに従来の光ファイバーが用いられた場合、狭帯域源は、より多くのコヒーレント後方散乱を引き起こす。しかしながら、安定した周波数の狭帯域光源316の使用を、図3に示されるような中空コア光バンドギャップファイバー13と組み合わせることによって、コヒーレント後方散乱を減少することが可能となる。なぜならば、中空コア光バンドギャップファイバー13が、上記のように散乱を小さくするからである。特定の実施形態では、光ループ14をいずれかの方向に循環する光パワーが、コイル内で用いられる特定のファイバーについて計算された誘導ブルリアン散乱の閾値パワーよりも小さくなるように、狭帯域源316の帯域幅が選択される。
【0065】
図3にしたがって、中空コア光バンドギャップファイバー13とともに狭帯域安定波長光源316を用いることによって、コヒーレント後方散乱およびカー非線形の寄与を減少しつつ、変動する光源の平均波長から結果として生じるスケールファクタの不安定性を減少することが可能となる。
【0066】
カー効果が、依然として大き過ぎるために、図3の光ファイバーシステム312の性能を劣化させる有害な位相ドリフトを招来する場合には、カー効果を減少するために、他の方法を使用することも可能である。このような方法の1つは、図4に示したサニャック干渉計405内で実施される。サニャック干渉計405は、光ファイバーシステム412および狭帯域源416を含んでいる。図4の狭帯域源416は、振幅変調器411とともに
、発光デバイス410を含んでいる。この発光デバイス410については、有利なことに、図3の発光デバイス310と同様のもの、あるいは同一のものを使用できる。発光デバイス310からの光信号は、振幅変調器411によって変調される。特定の実施形態では、振幅変調器411は、方形波変調を生成する。また、特定の実施形態では、結果として狭帯域源416から出力された光は、約50%の変調デューティサイクルを有する。特定の実施形態では、この変調は、十分に安定したデューティサイクルで維持される。このように、例えば、前記米国特許第4,773,759号明細書およびR.A.Bergh他による「Compensation of the Optical KerrEffect in Fiber−Optic Gyroscopes(光ファイバージャイロスコープ内の光学カー効果の補償),Optics Letters,Vol.7,1992年、282〜284頁」では、このような方形波変調が、光ファイバージャイロスコープ内のカー効果を効率的にキャンセルしている。また、上記のように、例えば、Herve Lefevreによる前記「The Fiber−Optic Gyroscope」では、パワーの標準偏差と等しい平均パワーを有する変調信号を生成する他の変調を使用することによっても、カー効果をキャンセルすることが可能となる。例えば、光源416から出力される光の強度については、発光デバイス410に供給される電流を変調することによって変調することも可能である。
【0067】
特定の実施形態では、図4の狭帯域光源416の使用とともに他の技術を用いることによって、例えば、ノイズおよびバイアスドリフトを減少することが可能となる。例えば、周波数変調または位相変調によって周波数成分を狭帯域光源416に加えることも可能であり、これにより、帯域幅を効率的にある程度まで増大することができる。例えば、狭帯域光源416が約100MHzの線幅を有する場合、10GHz周波数変調が、レーザの線幅を100倍ほど増大して約10GHzにする。この実施例では、10GHz変調が説明されている。しかしながら、この周波数変調については、10GHzに限定する必要はなく、異なる実施形態において、より高くあるいはより低くしてもよい。レーリー後方散乱に起因する位相ノイズは、レーザ線幅の平方根に反比例する。したがって、線幅における約100倍の増大は、結果として、レーリー後方散乱によって誘起される短期ノイズにおける10倍の減少をもたらす。パラメータηをさらに減少するために光バンドギャップファイバー13の設計を改良することは、レーリー後方散乱によるノイズを許容レベルにまで減少するためにも使用することが可能である。
【0068】
図5は、広帯域源516を組み込んでいる、サニャック干渉計505の実施形態を示している。この広帯域源516は、カー非線形、レーリー後方散乱、および磁場効果を緩和するために、光ファイバーシステム512内の中空コア光バンドギャップファイバー13とともに、有利に使用することが可能である。したがって、狭帯域光源を用いるシステムよりも、バイアスドリフトおよび短期ノイズを減少することが可能となる。
【0069】
広帯域光源516は、有利なことに、例えば、広帯域ファイバーレーザまたは蛍光源等の広帯域発光デバイス508を含んでいる。蛍光源は、半導体ベースのソースおよび超蛍光ファイバー源(SFS)であり、これらは、典型的には、利得媒体として希土類ドープファイバーを用いている。広帯域ファイバーレーザの例については、K.Liu他による「Broadband Diode−Pumped fiber laser(広帯域ダイオード励起ファイバーレーザ),Electron.Letters.Vol.24,No.14,1988年7月,838〜840頁)」に見いだすことが可能である。広帯域発光デバイス508として、エルビウムがドープされた超蛍光ファイバー源を好適に使用することが可能である。超蛍光ファイバー源のさまざまな構成は、例えば、「Rare
Earth Doped fiber lasers and Amplifiers(希土類ドープファイバーレーザおよび増幅器),Second Edition,M.J.F.Digonnet,Editor,Marcel Dekker,Inc.,N
ew York,2001年、第6章)」およびここに引用されている参考文献に記載されている。この同じ参考文献およびこの技術分野で周知の他の参考文献は、非常に安定した平均波長を備えたErドープ超蛍光ファイバー源を製造するために開発された、さまざまな技術を開示している。このような技術は、有利なことに、サニャック干渉計505のスケールファクタを安定させるために、さまざまな実施形態において用いられている。また、他の広帯域光源516についても、使用することが可能である。
【0070】
特定の実施形態では、広帯域光源516は、例えば、少なくとも約1ナノメートルのFWHMスペクトル帯域幅を有する光を出力する。他の実施形態では、広帯域光源516は、例えば、少なくとも約10ナノメートルのFWHMスペクトル帯域幅を有する光を出力する。特定の実施形態では、スペクトル帯域幅を、30ナノメートルより大きくしてもよい。前記範囲を外れる帯域幅を有する光源を、他の実施形態に含めることも可能である。
【0071】
特定の実施形態では、広帯域源の製造における設計制約を緩和するために、広帯域光源の帯域幅を減少するようにしてもよい。サニャック干渉計505内で中空コア光バンドギャップファイバー13を用いることにより、スペクトル成分の数を減らした結果として生じる増大するエラーを、少なくとも部分的に補償することができる。これらのスペクトル成分は、他の場合であれば、後方散乱ノイズおよび他の不利益な効果の平均化を助けるために必要とされる。カーの補償および減少したコヒーレント後方散乱の結果として、サニャック干渉計505は、より少ないノイズを有する。特定の好ましい実施形態では、光ファイバーシステム512は、波長の安定性が高められた状態で動作する。システム512は、また、磁場の効果に対してより大きな耐性を有しており、このために、使用する磁気シールドをより少なくすることが可能である。
【0072】
図5の光ファイバーシステム512は、有利なことに、位相エラーおよび位相ドリフトを抑制し、それは、高いレベルのノイズ減少を提供する。この高められた精度は、現在のナビゲーションおよび非ナビゲーション用途における要件を上回ることが可能である。
【0073】
図6は、ここに開示した特定の実施形態にしたがうサニャック干渉計605の例を示している。このサニャック干渉計605は、広帯域光源616とともに、光ファイバーシステム612を含んでいる。この広帯域源616は、有利なことに、変調器611とともに広帯域発光デバイス608を含んでいる。特定の実施形態では、変調器611は、約50%のデューティサイクルで広帯域光のパワーを変調する。広帯域源616からの変調広帯域光は、上記のように、カー効果の減少または解消に寄与する。
【0074】
中空コア光バンドギャップファイバーを用いることに関する、他の利点も存在する。例えば、放射線硬化に対する感度が減じられることも、利点でありえる。シリカファイバーは、宇宙からの自然のバックグラウンド放射線または核爆発からの電磁パルス等の高エネルギー放射に晒された場合に、黒ずむことがある。この場合に、信号が減衰してしまう。中空コア光バンドギャップファイバーでは、より小さいモードエネルギー部分がシリカを伝搬するため、高エネルギー放射に晒された結果として生じる減衰を小さくできる。
【0075】
ここでは、図1、図3、図4、図5、および図6に示したサニャック干渉計5、305、405、505、および605を用いることにより、図2Aおよび図2Bに示した、干渉計の性能を改善するための中空コアバンドギャップ光ファイバー13における実施および利点を説明してきた。開示された実施例については、単なる例示にすぎないと理解するべきである。例えば、干渉計5、305、405、505、および605は、光ファイバージャイロスコープまたは他の回転検知デバイスを備えていなくてもよい。ここで開示された構造および技術は、ファイバーサニャック干渉計を用いる他のタイプのセンサ、あるいは他のシステムにも、適用することが可能である。
【0076】
慣性航法用のジャイロスコープが上で説明されてきたが、中空コア光バンドギャップファイバーについては、サニャックループを用いる他のセンサ、他のシステムおよびサブシステムにおいて用いることが可能である。例えば、中空コア光バンドギャップファイバーについては、有利なことに、財産保護のためにファイバーの動きおよび侵入を検知する、ファイバーサニャック・ペリメータセンサ内で使用することも可能である。さらに、ファイバーに印加される圧力の変動に敏感な音響センサアレイ内でも用いることができる。ペリメータセンサは、例えば、M.Szustakowski他による「Recent development of fiber optic sensors for perimeter security(ペリメータセキュリティ用の光ファイバーセンサにおける最近の開発),Proceedings of the 35th Annual
2001 International Camahan Conference on Security Technology,2001年10月16〜19日、London,UK,142〜148頁)」、および、ここに引用されている参考文献に記載されている。サニャックファイバーセンサアレイは、G.S.Kino他による「A Polarization−based Folded Sagnac Fiber−optic Array for Acoustic Waves(音波用偏光ベースの折畳みサニャック光ファイバーアレイ),SPIE Proceedings on Fiber Optic Sensor Technology and Applications 2001,Vol.4578、(SPIE,Washington,2002),336〜345頁)」、および、ここに引用されている参考文献に記載されている。しかしながら、ここで説明されるさまざまな応用例は、光ファイバージャイロスコープに関する。これらは、ナビゲーションに有用なものとなることが可能であり、ミサイル誘導用などの低精度から、航空機ナビゲーションなどの高精度に至るまでの精度範囲を提供することができる。しかしながら、周知の用途およびまだ発明されていない用途の両方を含む他の用途も、ここに説明されたさまざまな実施形態の利点から、利益を得ることができる。具体的な応用例および用途は、ここで説明されたものに限定されるわけではない。
【0077】
また、この技術分野において周知の他の設計および構成、およびこれから発明される他の設計および構成についても、ここで説明された革新的な構造および方法とともに用いることが可能である。干渉計5、305、405、505、および605は、有利なことに、例えば、図1、図3、図4、図5、および図6に関して上で説明されたものと同じ、または異なる構成要素を含むことが可能である。このような構成要素のうちのいくつかの実施例は、偏光子、偏光コントローラ、スプリッタ、結合器、位相変調器、およびロックインアンプを含んでいる。他のデバイスおよび構造を含むことも可能である。
【0078】
さらに、光ファイバーシステム12、312、412、512、および612の異なる部分は、チャネルまたは平面導波管を含む、集積光構造等の他のタイプの導波管構造を含むことが可能である。これらの集積光構造は、例えば、光ファイバーの分岐を介して光学的に接続される、集積光デバイスを備えることも可能である。光ファイバーシステム12、312、412、512、および612の一部は、自由空間を通る無誘導の経路も含むことができる。例えば、光ファイバーシステム12、312、412、512、および612は、導波管および集積光構造内でのように光が案内されるわけではない自由空間内に経路を有するバルクの光デバイスのような、他のタイプの光学デバイスを含むことも可能である。しかしながら、特定の実施形態における光ファイバーシステムの大部分は、光源と検出器との間を光が伝わるための、実質的に連続した光路を提供する光ファイバーを含んでいる。例えば、光バンドギャップファイバーについては、有利なことに、ループ14内のファイバー13に加えて、光ファイバーシステム12、312、412、512、および612の一部において使用することも可能である。特定の実施形態では、光源からループまで、ループを通る間、および検出器に戻るまでの光ファイバーシステム全体が、光
バンドギャップファイバーを含むことも可能である。ここで説明されたデバイスの一部あるいは全てを、まだ発明されていない手順に従って、中空コア光バンドギャップファイバー内に形成するようにしてもよい。また、光バンドギャップファイバー以外の光バンドギャップ導波管および光バンドギャップ導波管デバイスを、特定の装置のために使用するようにしてもよい。
【0079】
コヒーレント後方散乱、カー効果、および磁気光学ファラデー効果から生じる短期ノイズおよびバイアスドリフトのレベルを減少するための複数の技術が、上で説明されてきた。これらの技術については、ここに説明したさまざまな実施形態にしたがって、単独で用いてもよく、または互いに組み合わせて用いてもよい、ということが理解されるべきである。干渉計の動作時に、および性能向上のために、ここで説明されていない他の技術を用いてもよい。これらの技術の多くは、この技術分野で周知であるが、まだ開発されていない技術についても、同様に利用可能であると考えられる。また、ある特定の結果を予測するために、何らかの特定の科学的理論に頼る必要はない。さらに、ここで説明された方法および構造については、他のやり方でサニャック干渉計を改良することもできるし、また、全く異なる理由のために使用することも可能である、ということが理解されるべきである。
【0080】
温度(シュウプ)効果
従来の光ファイバーを伝わる信号の光位相は、温度に対する比較的に強い関数である。温度が変化すると、ファイバーの長さ、半径および屈折率の全てが変化し、これにより、信号位相の変化が生じる。この効果は、従来のファイバーを使用しているファイバーセンサのような位相敏感ファイバーシステムにおいて、一般的に、相当に大きく、有害である。例えば、1−メートルの長いアームを有するマッハ・ツェンダ干渉計に基づくファイバーセンサでは、1つのアームにおける摂氏0.01度ほどの小さな温度変化は、2本のアーム間における約1ラジアンほどの大きな有害な位相変化を引き起こすために十分である。これは、干渉センサにおいて通常に検知可能な最小の位相(1マイクロラジアン)よりも100万倍ほど大きい。この大きな位相ドリフトを処理することは、しばしば、重要な課題となる。
【0081】
熱的効果が問題になる特に重要な光ファイバーセンサは、光ファイバージャイロスコープ(FOG)である。FOGは、本質的に相互的なサニャック干渉計であるが、サニャックコイルファイバーの温度分布における小さな非対称的変化は、シュウプ効果として知られている、2つの逆伝播信号間における有害な位相変化をもたらす。例えば、D.M.Shupeによる「Thermally induced nonreciprocity
in the fiber−optic interferometer(光ファイバー干渉計における熱誘導非相互依存性),Appl.Opt.,Vol.19,No.5,654〜655頁、1980年」、D.M.Shupeによる「Fibre resonator gyroscope: sensitivity and thermal
nonreciprocity(ファイバー共振器ジャイロスコープ、感度および熱的非相互依存性),Appl.Opt.,Vol.20,No.2,286〜289頁、1981年」を参照されたい。サニャックは共通路干渉計であるため、2つの信号はほぼ同じ熱誘導変化を受け、この有害な位相変化は、マッハ・ツェンダあるいはマイケルソン干渉計に比べてはるかに小さい。しかしながら、非常に高い位相安定性を有利に有する高精度の用途に関して十分なほどには小さくない。このファイバーセンサおよびシステム、および他のファイバーセンサおよびシステムでは、巧みなエンジニアリング解が、熱的効果と首尾よく闘ってきた。しかしながら、これらの解は、一般的に、最終製品の複雑さおよびコストを増大し、且つ、これらは、その信頼性および製品寿命にマイナスの影響を与える可能性をもつ。
【0082】
特定の実施形態では、中空コア光ファイバージャイロスコープは、従来のジャイロスコープと同様の短期ノイズ(約0.015deg/√Vhrのランダムウォーク)、および、カー効果(50分の1より小)、温度過渡(約6.5分の1)、およびファラデー効果(約10分の1より小)に対する、劇的に減少した感度を有する。
【0083】
中空コア光バンドギャップファイバー(PBF)の基本モードは、このモードが全体的にシリカを通過する従来のファイバーとは異なり、1つ以上のガス(例えば空気)を含むコア内を主に伝わる。ガスあるいはガスの混合物(例えば空気)は、従来のシリカ芯ファイバーにおけるシリカよりも、カー非線形および屈折率に関する非常に低い温度依存性を有し、中空コアPBFでは、これらの一般的な有害効果は、従来の固体コアファイバーよりも著しく小さくなる。例えば、D.G.Ouzounov,C.J.Hensley,A.L.Gaeta,N.Venkataraman,M.T.GallagherおよびK.W.Kochによる「Nonlinear properties of hollow−core photonic band−gap fibers(中空コア光バンドギャップファイバーの非線形特性) in Conference on Lasers and Electro−Optics,Optical Society of
America,Washington,D.C,Vol.1,217〜219頁(2005)」を参照されたい。屈折率の熱係数dn/dTは、シリカに関するものよりも、ガスに関するものの方がはるかに小さい。このため、中空コアファイバーでは、モード有効屈折率の熱感度は、大幅に小さくなる。PBFの長さは、当然、依然として温度によって変化する。このことは、シリカにおけるモードエネルギーのパーセンテージに比例して位相感度が単純に減少するわけではない、ということを意味する。しかしながら、それは、なお大幅に減少するはずであり、多数の用途にとって(特に、それが減少したシュウプ効果を意味するFOGでの用途にとって)、有益な改善である。
【0084】
この特性は、カー効果および熱的(シュウプ)効果が弊害をもたらすことの周知な、ファイバージャイロスコープ(FOG)などのファイバーセンサにおいて、極めて有効になりえる。検知コイルにおいて使用されている従来のファイバーを、中空コアファイバーと置き換えることによって、これら2つの効果によってFOGに引き起こされる位相ドリフトが大幅に小さくなるはずである。ここに記載した数値シミュレーションは、カー効果に関しては約100〜500分の1の減少を、また、熱的効果に関しては約23分の1までの減少を予想している。まさに同様の理由で、ジャイロの外部磁場に対する依存性(ファラデー効果)は、ここに記載したように、約100〜500分の1(予想値)に大幅に減少するはずである。これら2つの望まれない効果の大きさを緩和することは、実際には、結果として、市販のFOGにおける歩留り、複雑さおよびコストに関する大幅な減少をもたらすはずである。
【0085】
さらに、設計および製造の改良によって、PBFにおけるレーリー後方散乱を、従来の固体コアファイバーにおける散乱よりも減少することが可能である場合には、現在の広帯域源(典型的には、Erドープの超蛍光ファイバー源(SFS))に代えて狭帯域の通信等級の半導体光源を有する中空コアファイバージャイロスコープを駆動することも可能となる。SFSの平均波長を100万分の1よりよく安定化することが困難であるために、この変化は、光源の平均波長の安定性を1〜2桁ほど改善し、光源のコストを減少することができる、という追加的な利点を与えることだろう。
【0086】
これらの利点は、増大したファイバーの伝播損失(例えば、約20dB/km)という代償を払って得られる。しかしながら、この損失は実際には操作可能である。その損失は、200−メートル長のコイルについてたったの約4dBになり、ジャイロスコープの他の構成要素における損失(例えば、約15dB)と比べて、過剰とはいえない値である。さらに、将来的には、最先端のPBFにおける損失についても、減少する可能性がある。
【0087】
実施例1
この実施例は、ここに開示した特定の実施形態にしたがう空芯光バンドギャップファイバージャイロスコープの動作を説明する。検知コイル内における光学モードは、主として、シリカよりも、非常に低いカー、ファラデーおよび熱的定数を有する空芯光バンドギャップファイバー内の空気を伝わることから、空芯光バンドギャップファイバーにおけるパワー、磁場および温度の揺動に対する依存性は、非常に低くなる。235メートル長のファイバーコイルにおいて、約2.7度/時間の検出可能な最小回転速度、および、約2度/時間の長期安定性が観察された。これらは、ファイバーのレーリー後方散乱係数に合致し、且つ、従来のファイバーにおいて測定された値と同程度の値である。さらに、ファイバーの設計にもよるが、カー効果、ファラデー効果、およびレーリー後方散乱は、100〜500分の1に減少することが可能であり、シュウプ効果は、3〜11分の1に減少することができる。
【0088】
我々は、これらの予想を、第1空芯ファイバージャイロスコープのデモンストレーションをもって確認する。現在の空芯ファイバーにおける、従来のファイバーよりも著しく高い損失および散乱にも関わらず、この実施例の検知能力は、同様の検知コイル長を有する従来のFOGのそれに匹敵する。この結果は、現在の空芯ファイバーが、ジャイロスコープの能力を、さまざまな方法で(例えば、残留熱的ドリフトを減少することによって、および、特定の構成要素における許容性およびその安定性を緩和することによって)、容易に改善することが可能であることを明示している。
【0089】
このファイバージャイロスコープの実施例に空芯ファイバーを使用することは、前記4つの有害な影響の減少を実現する。基本的なコアモードに見られる実効的なカー定数を示す式(1)を参照すると、空気のカー定数(n2,air≒2.9×10−19cm2/W)は、シリカのカー定数(n2,silica≒3.2×10−16cm2/W)よりも、3桁ほど小さい。ηnl<<1であるために、空芯ファイバーにおける実効的なカー非線形は、従来のファイバーにある場合よりも、非常に小さくなるはずである。実際に、特定の空芯ファイバーn2,PBFにおける3次分散は、n2,silicaよりも250分の1ほど小さくなる。
【0090】
ファラデー効果に関しては、基本モードVPBFにおける実効的なヴェルデ定数は、式(1)を用いることによって表わすことが可能である(ただし、定数n2を、シリカのヴェルデ定数(Vsilica)および空気のヴェルデ定数(Vair)によって置き換える)。VairはVsilicaよりもはるかに小さい(1600分の1)ので、VPBFは、従来のファイバーよりも2桁あるいは3桁は小さくなるはずである。
【0091】
これらの考慮事項の示すところによれば、PBFジャイロにおいては、カー効果およびファラデー効果によって引き起こされるバイアスドリフトが、η(PBFのシリカ部分における部分モードパワー)に比例する標準的なジャイロスコープよりも小さくなっている。単一モードの空芯シリカPBFに関して計算されたηの値は、コア半径、空気の充填率および信号波長に依存して、およそ約0.015から約0.002までの範囲におよんでいる。したがって、PBFジャイロスコープでは、カーおよびファラデーによって引き起こされる位相ドリフトの双方を、70分の1〜500分の1ほどに減少することが可能となる。これらは、FOG工学における要求のいくつか(例えば、ループ結合器の温度制御およびμ−金属シールドの量など)を大幅に緩和するであろう、実質的な改善点である。
【0092】
類似の論法をレーリー散乱に適用する。最新のシリカファイバーでは、レーリー散乱およびマルチフォノン結合によって、損失の最小値が制限される。反対に、現在の空芯ファイバーでは、損失は、ランダムな大きさの変動に起因する表面および放射モードに対する
結合によって、制限されると考えられている。これらの変動の原因は、技術的なもの(例えば、毛細管あるいは周期的なコア直径の変動における不均衡)、あるいは、表面張力によって引っ張られている間における、PBFのシリカ薄膜上の表面張力波の構造に起因するもの、のいずれかである。前者のタイプの変動は、製造技術の改善によって減少することが可能である。しかしながら、後者については、より根本的な性質をもち、いくつかのアプローチが可能であるものの、減少することがより難しいかもしれない。これらの変動を十分に低いレベルにまで減少することによって、空芯PBFのレーリー散乱係数が、シリカ(αPBF=ηαsilica)によって課せられる下限値に達する。ここで、αsilicaは、シリカの散乱係数であり、導波管の空気部分における散乱は無視している。このように、空芯ファイバーに関する最低限の実効的散乱係数は、ηに比例する従来のファイバーに関する値よりも小さくなる(すなわち、これも70分の1〜500分の1になる)はずである。以下に示すように、この減少は、光ファイバージャイロスコープに対して、大きなプラスの効果を与える。
【0093】
ジャイロスコープでは、後方散乱された波と1次的な波との間におけるコヒーレントな干渉に起因する位相エラーは、式(3)によって与えられる。
【0094】
【数4】
【0095】
ここで、Ωは、ファイバー内における基本モードの立体角であり、Lcは、光のコヒーレンス長である。標準的な偏光保持(PM)ファイバーを使用している従来のジャイロスコープでは、外部の開口数は、典型的には約0.11であるので、内部の立体角はΩ=π(NA/n)2≒0.018である。ここで、nはコアの屈折率である。前記モードはもっぱらシリカを伝わるので、η=1であり、且つ、約1.5ミクロンのαsilicaは、約−105dB/ミリメートル、あるいは、約3.2×10−8メートル−1である。これらの値を、コヒーレンス長Lc≒230ミクロンを有する広帯域Erドープ超蛍光ファイバー源(SFS)とともに式(3)に使用すると、δφ≒0.15マイクロラジアンを得る。これにより、ファイバー干渉計における典型的なノイズよりも、後方散乱ノイズが小さくなることがわかる。
【0096】
結晶ファイバーにおける約1.5ミクロンのAIR−10−1550空芯ファイバーの後方散乱係数は、SMF28ファイバーの値よりも3.5倍ほど高い。ジャイロスコープが、その代わりに、前記結晶ファイバー空芯PBF(現在の最新技術を代表するもの)を利用する場合、その実効的な散乱係数αPBF=ηαsilicaは、3.5倍ほど大きい。このファイバーは、約0.12のNA、および、一単位に近いモードグループ屈折率(n≒1)を有しており、その立体角はΩ≒0.045である。したがって、式(3)によって与えられる後方散乱ノイズは、δφ≒0.43マイクロラジアンとなり、これは、なお非常に小さい。したがって、現在の重心ファイバーにおける後方散乱が、従来のファイバーにおけるよりも大きくても、ErドープSFSのコヒーレンス長は、後方散乱ノイズを無視できるレベルにまで小さくできるほどに十分に短くすることが可能となり、どのタイプのファイバーを用いた場合でも回転感度がほぼ等しくなる。
【0097】
超低後方散乱の空芯PBFに関しては、後方散乱ノイズは、式(3)に示したように、√ηに比例して減少することになる。例えば、η=0.002およびΩ=0.045のPBFに関しては、式(3)は、δφ≒0.01マイクロラジアンを予想する。これは、このようなファイバーを用いる場合には、非常に長いコヒーレンス長の光によってジャイロ
スコープを駆動することができるとともに、ジャイロスコープが適度に低いノイズをなお有する程度に、後方散乱される信号が弱い、ということを意味する。上記の例では、Lc=2.2メートル(95MHzの線幅)と同程度に大きいコヒーレンス長は、たったの1マイクロラジアンのノイズを生成することになる。これは、多くの用途にとって十分に低い値である。したがって、広帯域源を用いることよりも、むしろ標準的な半導体レーザを使用することが可能となり、これにより、広帯域源を大幅にしのぐ利点を得ることができる。この利点は、はるかに大きい波長安定性、および、これによるスケールファクタ安定性、および、低コスト、慣性航法FOGに関する全ての有益なステップを含むが、これらに限られるものではない。
【0098】
シュウプ効果に関しては、空芯ファイバーは、熱感度における実質的な減少を実現する。検知コイルの温度がコイルの中間地点に関して非対称的に変化する場合、2つの逆伝播信号は、結果として生じる時間に応じた熱位相の変化をサンプリングし、これは、ジャイロスコープの出力における望ましくない差分位相シフトをもたらす。この効果は、コイルファイバーを特別の方法(例えば4極重巻)でラッピングすることによって、実際のジャイロにおいては小さくなる。しかしながら、この方法は完全ではなく、温度勾配の時間変化に起因する残留ドリフトを、高感度FOGにおいて観察することが可能である。検知コイルが空芯ファイバーから形成される場合には、モードが主に空気(シリカの屈折率と比べてより弱く温度に依存する屈折率を有する)を伝わるために、シュウプ効果は実質的に減少する。例えば、上記実施例に使用されている空芯ファイバーでは、シュウプ効果は、従来のファイバーよりも3.6分の1ほど小さくなっている。したがって、このファイバーを用いて形成されているFOGは、従来のFOGと同程度の大きさの約28%の熱ドリフトを示すことになる。シュウプ定数におけるさらに大きい減少(11分の1までの減少)についてさえも、ファイバージャケットの厚さおよび材料に関する単純な改善によって得ることが可能である。このシュウプ効果における減少は、有利なことに、より長期の安定性および単純なパッケージ設計に転化する。
【0099】
図7は、ここに記載した特定の実施形態にしたがう全光ファイバー空芯PBFジャイロスコープ705の実験装置を概略的に示す。これは、さまざまな態様(特に、従来のファイバージャイロスコープにおけるものと同程度の大きさのノイズ)を検証するために使用されている。光源716は、市販のErドープファイバー増幅器708を備えていた。この増幅器708は、1544ナノメートルを中心とし、7.2ナノメートルの計算された帯域幅をもつ、増幅された自然放出を生成する。ファイバー増幅器708からのこの光は、光アイソレータ710およびパワーアッテネータ712を介して、3−dBファイバー結合器730(相互出力ポートを実現するためのもの)内に結合されているとともに、ファイバーピグテイルLiNbO3集積光回路(IOC)740に結合されていた。この回路740は、3−dBスプリッタ744および電気光学変調器746の続いている偏光子742から構成されていた。IOC740の出力ファイバーピグテイル748は、235−メートルの長さのコイルからなるHC−1550−02空芯ファイバー750に対して直接結合されていた。この空芯ファイバー750は、Blaze Photonics(現在のCrystal Fibre A/S:デンマーク、ビルケロッド(Birkerod))によって製造された。このファイバー750は、8.2センチメートルの心棒に対して4極重巻きにされており、回転ステージ752上に配されていた。直接結合の結合部では、空芯ファイバー750の端部が法線入射状に分割されている一方、IOC740のピグテイル748の端部が、好ましくないフレネル反射を除去するための角度で分割されていた。偏光コントローラ760が、帰還信号の可視性を最大化するために、ループ内におけるピグテイル748の1つの上に配されていた。3−dBファイバー結合器730の相互ポートからの出力信号は、光検出器770によって検出された。アッテネータ712は、全ての測定値(−20dBm)において検出される出力パワーが等しくなるように調整された。検出された電気信号における基本的周波数(f)および第2の調和振動数(
2f)は、ロックインアンプ46から抽出され、コンピュータに記録された。示された全ての結果は、1秒のロックイン積分時間で得られた。
【0100】
図8Aは、空芯ファイバー75の断面における走査型電子顕微鏡写真を示している。図8Bは、空芯ファイバー750における測定された伝送スペクトルおよび光源716からの光源スペクトルを示している。この伝送スペクトルは、空芯PBF750とIOC740におけるファイバーピグテイル748との結合損失を含んでいる。ファイバー750は、その伝送範囲(約1490〜1660ナノメートル)においては、ほぼ単一モード化されている。測定された伝送値における最も高い値は、PBFバンドギャップの中間値(約1545ナノメートル)に近いが、約−10dBである。製造業者からの約19dB/キロメートルの最小のファイバー損失に基づいて、235−メートルの長さの空芯ファイバー750は、10−dBの伝送損失における4.5dBを占めている。残余部分については、2つの直接結合部のそれぞれにおける約2.7−dBの損失に割り当てることが可能である。このファイバーに関して計算された、シリカ部分(パラメータη)に重なる基本モードは、数%である。測定された複屈折率は、ほぼ6×10−5であった。5−メートルの標準的なファイバーピグテイルにおける基本モードに関するグループ屈折率の値(1.44)および235−メートルのPBFファイバーにおける同様の値(1.04。同一のコア半径を有する理想的な空芯ファイバーに関して計算される)から、サニャックループにおける適切な周波数がf0≒596kHzと計算された。この計算値は概算であるために、それは、変調周波数が700kHzまで増加してジャイロスコープが停止したときに、2f信号の発生を観察することによっても測定された。2f信号の振幅は、サニャック干渉計の周波数特性(すなわち、レイズドサイン(raised sine))を示した。この依存性に対するフィットは、計算値にしたがって、測定された適切な周波数592kHzを与えた。空芯ジャイロスコープは、f=600kHzにおいて、変調度π/4をもって変調された(この値は、最大感度に関する最適な値に近い)。
【0101】
ジャイロスコープについては、回転速度を較正された回転テーブルにそれを配置し、回転速度の関数としてのf信号および2f信号の振幅を測定することによってテストした。図9Aおよび図9Bは、それぞれ、回転している場合および回転していない場合での、これらの信号における典型的なオシロスコープトレースを示している。回転していない場合(図9A)では、出力は、偶数のf高調波(主に2f)のみを含んでいる。コイルが回転している場合(図9B)には、fの成分が出現する。fでの出力信号は、テストされた最大の回転速度12°/秒まで、回転速度に比例するように測定された。比例定数(10〜20mV/°秒とほぼ同程度。実験条件に依存する)が、回転速度を単位として、ジャイロスコープのノイズレベルを較正するために使用された。ジャイロスコープが停止した状態で1時間にわたって記録されたfの出力信号のトレースは、図10にプロットされている。この場合も、この曲線における縦軸は、ジャイロスコープスケールファクタに関する知識からではなく、回転テーブルの較正を使用することによって較正された。この曲線におけるノイズの最大振幅を3σとすると(σはノイズの標準偏差である)、これらの結果は、3σ≒8°/時間であることを示している。したがって、検出可能な最小の回転速度(1つの標準偏差)は、Ωmin≒2.7°/時間、すなわち、地球の自転速度の約1/6である。図10において観察される長期ドリフトは、約2°/時間である。このジャイロに関するスケールファクタは、コイルの直径およびファイバー長から計算されるものだが、F=0.26秒である。したがって、測定された検出可能な最小の回転速度から推論される、この干渉計における短期位相ノイズは、ΩminF≒3.3マイクロラジアンである。これは、光学干渉計にとって十分に低い値である。
【0102】
この能力を従来のファイバージャイロスコープの能力と比べるために、空芯PBFコイルが、200メートルの標準的なPMファイバーと置き換えられた。この第2のコイルもまた、2.8センチメートルの心棒に4極重巻されていた。このコイルファイバーの端部
は、IOCピグテイル748に接合された。このサニャックループの適切な周波数については、約500kHz(計算値は513kHz)まで測定され、計算されたスケールファクタはF=0.076sであった。光検出器770および検出用の電子機器を含むセンサの残部については、前記空芯ジャイロスコープのものと同じであった。この標準的なジャイロスコープにおける検出可能な最小の回転速度が、7°/時間(1−σ短期ノイズ)まで測定され、その長期ドリフトは3°/時間であった。この検出可能な最小の信号およびスケールファクタから、2.6マイクロラジアンの位相ノイズを推定することが可能である。この値は、「空芯ファイバージャイロスコープにおける位相ノイズが、同様の構成、検出および電子機器を用いた同程度の長さの標準的なファイバージャイロスコープの位相ノイズと類似している」、という重要な結果を示している。
【0103】
PMファイバージャイロスコープに見られる短期ノイズに対する3つの主な寄与は、ショットノイズ、光源の広帯域スペクトルに起因する過剰ノイズ、および検出器における熱的ノイズである。ショットノイズは、通常は無視できる。検出パワーが低い場合には、ノイズの主要源は熱的な検出器ノイズである。検出パワーがより高い場合には、主要ノイズは過剰ノイズである。前記実験用の空芯ファイバージャイロスコープの条件下においては、検出されたパワーは、約10マイクロワットであり、観察されたノイズ(2.6マイクロラジアン)は、そのほぼ全部が過剰ノイズに由来する。
【0104】
空芯FOGに関しては、検出器および検出パワーが同じであるために、ショットノイズの寄与もまた、0.4マイクロラジアンとなる。後方散乱ノイズは、以前に計算されたものだが、約0.4マイクロラジアンである(空芯ファイバーにおけるレーリー後方散乱係数が1.12×10−7m−1、すなわち、SMF28ファイバーの値よりも3.5倍ほど強いと仮定した場合)。両方のテストジャイロスコープが同じ電子機器および同じ検出パワーレベルを使用していたために、電子ノイズの寄与も、PMファイバージャイロスコープにおける寄与と同じ(すなわち、約2マクロラジアン)でなければならない。
【0105】
さらに、空芯FOGでは、2つの直接結合された接合部における後方反射もまた、ノイズ源となりえた。2つの直接接合部は、不要なマイケルソン干渉計を形成する。このマイケルソン干渉計は、マイケルソンのアーム間における経路のミスマッチよりも、はるかに短いコヒーレンス長の光によって探知される。したがって、この過少計は、単に強度ノイズを付加する。このノイズの大きさについては、空芯ファイバーの端部におけるパワー反射の知識を使用して推定することが可能である。これは、固体コアファイバーに関する値よりもはるかに弱いものの、0ではない値である。このような推定は、パワー反射空芯ファイバーの端部におけるパワー反射が、約2×10−6であることを示している。この値によってスケーリングすると、これら2つのインコヒーレントな反射に起因する位相ノイズが、1マイクロラジアンとほぼ同程度に推定される。なお、この寄与については、空芯ファイバーの端部を曲げることによっても、同様に推定することが可能である。
【0106】
上記のように計算されたノイズレベルは、測定値と合致する。すなわち、4つの寄与の全ての和(0.4+0.4+2.3+1=4.1)が、3.3マイクロラジアンという測定値と類似している。この合致は、さまざまなノイズの寄与における推定値、空芯ファイバーにおけるレーリー散乱係数の前提値、および、両方のジャイロスコープにおいてノイズの大部分が共通の電子起源から生じるという結論に対して、信頼性を与える。
【0107】
これらの測定値は、また、空芯ファイバーのレーリー散乱に上限値が設定されることを可能とする。観察された位相ノイズ(3.3マイクロラジアン)が、完全にファイバー散乱に起因すると仮定した場合、ファイバーのレーリー散乱係数が、6.6×10−6m−1程度の高さとなるということ(すなわち、SMF28ファイバーに関する値よりも200倍ほど高くなるということ)を示すために、式(3)を用いることが可能となる。さま
ざまなノイズ源における前記割り当ては、この値が不当に高いこと、および、1.12×10−7m−1という値がこれらの観察値によりいっそう合致しているということを、強く示唆する。
【0108】
実施例2
この実施例は、空芯ファイバーにおける基本モード位相の温度への依存性を定量的にモデル化し、これらの予想値を実際の空芯ファイバーにおける測定値と比べることによって、これらの予想値が正しいことを確認する。この実施例において挙げられている測定基準は、位相温度定数(phase 温度定数)と呼ばれる、位相Sにおける相対的な変化であり、以下の式(4)によって与えられる。
【0109】
【数5】
【0110】
ここで、φは、ファイバーを介して基本モードによって蓄積された位相であり、低はファイバーの温度である。干渉技術を用いて、異なる製造業者からの2つの空芯PBFがテストされ、これらの温度定数が、摂氏温度毎に百万分の1.5〜3.2(1.5〜3.2ppm)であること、すなわち、従来のSMF28ファイバーの測定値(S=7.9ppm/℃)よりも2.5〜5.2分の1ほど低いことがわかった。これらの値のそれぞれは、対応する予想数の20%内に減少している。これは、理論的なモデルおよび測定の較正に対する信頼性を与える。この研究は、この減少の理由がモードの有効屈折率における温度依存性の劇的な減少に起因する、ということを示している。温度定数の残存値は、ファイバーの拡張長さから生じる。これは、空芯ファイバーにおいてほんのわずかに減少している。モデル化は、ファイバージャケットを改善することによって、この寄与をさらに約2分の1に減少することが可能である、ということを示している。このさらなる改善がないとしても、現在の空芯ファイバーにおける位相温度定数は、従来のファイバーにおける値よりも5分の1ほど小さくなっている。これは、FOGおよび他の位相高感度システムにおける重大な改善を生み出す。
【0111】
空気誘導光バンドギャップファイバーおよび従来の屈折率誘導ファイバーにおける位相温度定数Sは、以下のような理論的モデルにおいて数値化される。基本モードによって蓄積される全体の位相φは、それが長さLのファイバーを介して伝播する場合には、式(5)によって表わされる。
【0112】
【数6】
【0113】
ここで、Lはファイバー長であり、neffはモードの有効屈折率、λは真空における信号の波長である。式(5)を式(4)に挿入することにより、式(6)に示すように、ファイバーにおける単位温度変化および単位長さあたりの、位相感度に関する式を得られる。
【0114】
【数7】
【0115】
ここで、dφ/dTは、温度に関する位相遅延の微分係数である。Sは、2つの項の和である。すなわち、温度変化度ごとのファイバー長の相対的な変化(以下ではSLと称する)と、温度変化度ごとのモードの有効屈折率における相対的な変化(以下ではSnと称する)との和である。
【0116】
ファイバーの一端からの距離lに配されているファイバー長の要素dlにおける時間tでの均衡からの温度変化をΔT(t,l)とすると、ファイバーの長さLにおける全体の位相変化は、以下の式(7)によって表わされる。
【0117】
【数8】
【0118】
ここで、ν=c/neffであり、cは、真空中における光の速さである。全体の位相変化はSに比例するので、式(7)によれば、Sは、例えばマッハ・ツェンダ干渉計における温度に対する位相感度を特徴づける、関連パラメータであることが示される。
【0119】
同様の式は、他の干渉計にも当てはまる。例えば、サニャック干渉計に関しては、対応する位相変化は式(8)によって与えられる。
【0120】
【数9】
【0121】
予想されるように、ΔφはSに比例し、Sは関連する測定基準である。サニャック干渉計の熱感度については、式(8)によって表されるが、適切なファイバーの巻線によって積分値を最小化することによって、および/または、Sを最小化するようなファイバー構造を設計することによって、減少することが可能である。
【0122】
ファイバージャケットの熱膨張係数は、通常、シリカの熱膨張係数よりも2桁ほど大きい。このため、ジャケットの膨張は、ファイバーを引き伸ばし、ジャケットの膨張によって生じるファイバー長の変化が、SLに対する支配的な寄与となる。屈折率の項Snは、3つの効果の和である。その第1は、ファイバーにおける横熱膨張である。これは、コア半径およびフォトニック結晶の大きさを修正し、これにより、モードの有効屈折率を修正する。第2の効果は、熱膨張の結果としてファイバーに生じる歪みである。これらの歪みは、弾性的光効果を介して、有効屈折率を変化させる。第3の効果は、ファイバーの温度変化によって生じる物質の屈折率の変化(熱光効果)である。
【0123】
SnおよびSLを決定するために、ファイバーの温度がT0からT0+dTまで均一に変化すると仮定するとともに、ファイバー長および基本モードの有効屈折率を双方の温度において計算することによって、ファイバーの熱機械特性がモデル化される。これにより、式(6)を用いて、Sn、SLおよびSを計算することが可能となる。図11は、ここ
に示した特定の実施形態にしたがうファイバー800を概略的に示している。このファイバー800については、円筒対称性を有すると仮定するとともに、その全ての特性がその長さに沿って変化しないと仮定する。したがって、Sは、円筒座標システムにおいて計算される。図11に示すように、ファイバー800は、多数の環状層を有する構造としてモデル化される。この構造とは、すなわち、半径α0のコア810(例えば、従来のファイバーにドープされたシリカ、PBFの中空、および、図11に示す空気を充填されたもの)、ほとんどの場合にコア810を覆っている内部クラッディング820(例えば、従来のファイバーにおけるシリカ、PBFにおけるシリカと空気とのハニカム)、一般的に内部クラッディング820を覆っている半径αMの外部クラッディング830(多くの場合に純粋なシリカからなる)、および、一般的に外部クラッディング830を覆っているジャケット840(アクリレートであることが多い)からなる。各層については、隣接する層に対して接触し且つ力学的平衡状態にあると仮定する。すなわち、半径方向の応力および半径方向の歪みが、ファイバー層の境界を超えて続いている、と仮定する。特定の実施形態では、コア810は、約9ミクロンと約12ミクロンとの間の範囲にある外径を有している。特定の実施形態では、内部クラッディング820は、約65ミクロンと約72ミクロンとの間の範囲にある外径を有している。特定の実施形態では、外部クラッディング830は、約110ミクロンと約200ミクロンとの間の範囲にある外径を有している。特定の実施形態では、ジャケット840は、約200ミクロンと約300ミクロンとの間の範囲にある外径を有している。
【0124】
各層は、特定の弾性係数E、ポワソン比ν、および熱膨張係数αによって特徴づけられる。フォトニック結晶クラッディング820は、それが均質物質ではなく、ハニカムのように機械的に振る舞う点で例外的である。これは、(1)「横方向では、固体よりもはるかに容易にハニカムを締めつけることが可能であり、これは、その横方向のポワソン比が高いことを意味する」、(2)「縦方向では、それは全体領域(1−η)Ahを有するシリカの薄膜のように振る舞う。ここで、Ahは、ハニカムの全断面積である」、ということを示唆する。したがって、ハニカムの弾性係数およびポワソン比は、空気の充填率ηの関数となる。シリカにおける空気孔のなす六角形のパターンに関しては、これらは式(9)によって与えられる。
【0125】
【数10】
【0126】
ここで、ETおよびELは、それぞれ、シリカ−空気ハニカムにおける横方向および縦方向のヤング率である。E0は、シリカのヤング率である。νTおよびνLは、それぞれ、ハニカム材料におけるおける横方向および縦方向のポワソン比である。そして、ν0は、シリカのポワソン比である。ここに示されているシミュレーションにおけるこれらのパラメータに使用されている値は、式(9)から計算され、表1に並べられている。内部クラッディングが固体シリカによって近似されている単純なモデルと比較すると、ハニカムの効果によってSLが10〜30%ほど増加することがわかる。その理由は、ハニカムが固体シリカより高い熱膨張ジャケットによって及ぼされるより弱い引っ張り抵抗を与えるので、ファイバー長の膨張が増加する(SLがより大きくなる)、ということにある。したがって、ハニカムによるこの効果は、小さいけれど無視できない。表1は、また、他のファイバー層に関するシミュレーションにおいて使用されているパラメータの値についても
記載している。
【0127】
【表1】
【0128】
ポイントr=[r,θ,Z]における局部変形ベクトルu(r)は、以下の式(10)によって与えられる。
【0129】
【数11】
【0130】
変形テンソルの対角成分εだけが0でない。
【0131】
【数12】
【0132】
温度変化ΔTの効果とともに、応力テンソルσを変形テンソルεに関連づけるために、フックの法則が利用される。
【0133】
【数13】
【0134】
ここで、sは4次のコンプライアンステンソルである。また、αは熱膨張テンソルであり、これもまた、対角項だけを有し、テンソル積を示している。
【0135】
この変形場uzは、rによって変化しない。また、長いファイバーでは、それは、以下の式のようにzによって線型に変化する。
【0136】
【数14】
【0137】
ここで、Cは、定数である。zの始点は、ファイバーの中央から選択される。uz(z)が層間の各界面において連続的であるために、Cは、全ての層において同じ値を有している。ファイバー内で温度が均一であると仮定しているために、式(12)および式(13
)は、εzzおよびσzzが、rに依存せず、zだけの関数であることを意味している。
【0138】
【数15】
【0139】
この解は、
【0140】
【数16】
【0141】
ここで、AおよびBは、各層に特有の定数である。係数A、BおよびCは、以下のような境界状態を課すことによって、および、フックの法則を利用することによって、解かれる。(i)全ての内部層の境界に渡るur(r)の持続性、(ii)全ての内部層の境界に渡るσrr(r)の持続性、(iii)r=α0においてσrr(r)=0。ここで、α0は、ファイバーコアの半径である。(iv)r=αMにおいてσrr(r)=0。ここで、αMは、ファイバーの外半径である。(v)ファイバーの端面における力学的平衡。これは、以下の式を強要する。
【0142】
【数17】
【0143】
A、BおよびCを決定し、これによってur(r)およびuz(z)を決定するために、マトリックス法を使用することが可能である。そして、式(11)は、εzz=SLΔTを含む歪みを与える。
【0144】
このモデルによって与えられる予想の種類を示すために、図12は、表2に示されている物理的パラメータを有する結晶ファイバーPBFに関して計算された、ファイバーの中心からの距離の関数としての半径方向の変形を示している。ハニカム構造(内半径が約5ミクロン、外半径が約33.5ミクロン)、および、シリカの外部クラッディング(内半径が約33.5ミクロン、外半径が約92.5ミクロン)では、半径方向の変形は、アクリレートジャケット(内半径が約92.5ミクロン、外半径が約135ミクロン)の変形と比べると、わずかにしか残っていない。このことは、材質の剛性および熱膨張係数における差に合致している。低熱膨張で堅いシリカは、高熱膨張で柔らかいアクリレートと比べると、非常にわずかな変形を経るだけである。半径方向の歪みが半径方向の変形を誘導するために、内部クラッディングハニカムは、圧縮歪みを受けた状態となる。そして、それは、その非常にわずかな横方向のヤング率に起因する変形のいくつかを吸収することによって、構造にかかる歪みを緩和する(ハニカム構造における半径方向の変形が4分の1に減少する)。
【0145】
【表2】
【0146】
いったん歪み分布がわかったら、Snの計算は容易である。第1のステップでは、半径方向の歪み分布から、ファイバーの断面にわたる各層の大きさの変化が計算される。第2のステップでは、全体的な歪み分布から、弾性的光効果に起因する各層における屈折率の変化が計算される。第3のステップでは、温度変化(熱光効果)によって引き起こされる材料の屈折率における変化が計算される。この変化は、歪みに依存せず、最も容易に推定される。これら3つの寄与(屈折率プロファイル、コア半径および材料の屈折率)は、次に、T=T0+ΔTにおけるファイバーの屈折率プロファイルを得るために、組み合わされる。この新しいプロファイルは、次に、構造におけるさまざまな光学的特性(例えば、この温度における基本モードの有効屈折率など)を計算するために、適切なコードに取り込まれる。これについては、例えば、V.Dangui,M.J.F.DigonnetおよびG.S.Kinoによる「A fast and accurate numerical tool to model the mode properties of photonic−bandgap fibers(光バンドギャップファイバーのモード特性をモデル化するための速く正確な数値ツール),Optical Fiber
Conference Technical Digest(2005)」を参照されたい。前記コードは、摂動を受けないファイバーにおけるモード有効屈折率(すなわち、温度T0でのもの)を計算するために使用される。有効屈折率におけるこれら2つの値は、Snを計算するために、式(6)に使用される。この計算は、全てのパラメータが温度に対して線型に変化することを仮定している。これは、温度の逸脱が小さい場合には妥当である。
【0147】
図13は、クラッディング空気孔半径ρ=0.495Λ、92.5ミクロンの外クラッディング半径、42.5ミクロンのアクリレートジャケット(結晶ファイバーPBFのパラメータ)を用いて前記モデルによって予想される、SL、SnおよびSにおけるコア半径Rの依存性を示している。この信号波長は、λ=0.5Λであり、Λ=3ミクロンの内部クラッディングにおける隣接する空洞領域の中心間距離を有するファイバーバンドギャップの中心に近い。λ=1.5ミクロンの場合にSMF28ファイバーに関して計算されるS、SLおよびSnの値(表2のパラメータを参照されたい)についても、比較のために示している。SLは、コア半径にほとんど依存せず、支配的な項になっている。この状況は、SnがSLよりも大幅に大きくなっている従来のSMF28ファイバーとは逆である。なお、空芯ファイバーとSMF28ファイバーとで、SLが相当に同じであることにも注意されたい。物理的な理由は、SLが、ファイバーの線膨張を定量化していることにある。これは、双方のファイバーにおいて類似である。SLは、実際には、空芯ファイバーに関しては多少低くなる。これは、この特定のファイバーに関しては、外部クラッディングにおいて、ジャケットのアクリレートに対するシリカの相対的な領域が増加するためである。したがって、PBFの全体的な熱膨張は、SMF28ファイバーよりも低くなる。空芯ファイバーに関しては、屈折率の項Snは、一般的に、コア半径が増加するにつれて、1.1Λ〜1.25Λおよび1.45Λ〜1.65Λにおける際立った局所的なピークを除けば、ゆっくりと減少する。これらのピークでは、SnおよびSは、2倍の大きさに増加している。これらの領域は、表面モードが生じているとき(図13においてグレー
で強調表示されている)の領域と正確に一致している。その理由は、表面モードをサポートするコア半径に関しては、著しく大きい基本モードエネルギー部分がファイバーの誘電性部分に含まれており、位相が温度に対してより敏感になっている、ということにある。この結果は、表面モードが回避されるべきであるということに対する、さらにもう1つの理由を指摘する。これらの表面モード領域の外部では、全体的な位相熱定数S=SL+Snは、コア半径に応じてあまり変化しない。単一モードの範囲(R<〜1.1Λ)における最も低いSの値は、R≒1.05Λに関して生じ、また、約1.68ppm/℃に等しい。これは、SMF28ファイバーに関する値と比べて4.9分の1となる小さい値である。
【0148】
空芯ファイバーでは、Sに対する寄与の大部分は、長さの項SLに由来するために、より複雑な屈折率の項Snを無視することが可能であり、SL(すなわちS)を推定するための単純なモデルを作り出す価値がある。半径の項を無視し、z方向におけるファイバーに働く全体的な力が0であるという状況を利用することによって、さまざまなパラメータの効果に関するいくつかの物理的洞察力を得ると同時に、SLの値について、非常に正確に近似することが可能である。図11における表記法を使用すると、この全体的な力を、以下のように表わすことができる。
【0149】
【数18】
【0150】
ここで、下付き文字h、clおよびjは、ハニカム、外部クラッディングおよびジャケットを示している。空気コアに対応する項は0であるために、式(17)には入っていない。ファイバー長と比べるとファイバー半径が小さいために小さくなっている横方向の項を無視した状態で、式(12)を式(17)に代入すると、SLに関する以下のような近似数式が得られる。
【0151】
【数19】
【0152】
表1からわかるように、ジャケット膨張の項AjEjαJと外部クラッディング膨張の項AclEclαclとは同程度の大きさであり、ハニカムの項AhEhαhに比べてはるかに大きくなっている(この項については無視できる)。分母においては、主な項は、外部クラッディングに起因する復元力AclEclである。これは、ジャケットあるいはハニカムからの力よりもはるかに大きい力である。したがって、式(16)については、以下のように良好に近似することが可能である。
【0153】
【数20】
【0154】
この単純な数式は、ジャケット領域Ajに対して外部クラッディングの領域Aclをできるだけ大きくすること、および、低熱膨張のジャケット材料を使用することによって、SLをより低くすることが可能である、ということを示している。この近似モデルは、かなり正確であるということがわかる。ここに記載した特定の実施形態では、外部クラッディ
ングの領域Acl、ジャケットの領域Aj、外部クラッディングのヤング率Ecl、ジャケットのヤング率Ej、および、外部クラッディングにおける熱膨張の係数αclおよびジャケットにおける熱膨張の係数αJは、
【0155】
【数21】
【0156】
が2.5以下になるように選択される。なお、他の特定の実施形態では、この量は1より小さくなる。
【0157】
パラメータSは、2つのPBFファイバーに関して測定された。これら2つのPBFファイバーとは、すなわち、「AIR−10−1550ファイバー(Crystal Fibre A/S製)」および「HC−1550−02ファイバー(Blaze Photonics(現在のCrystal Fibre A/S)製)」である。ファイバー断面のSEM写真が、それぞれ、図14Aおよび図14Bに示されている。測定は、図15Aに概略的に示されている従来のマイケルソンファイバー干渉計を用いて実行された。信号源は、数MHzの線幅を有する1546nmDBFレーザであった。空芯ファイバーは、干渉計の「検知」腕を形成するために、3dB結合器(SMF28ファイバー)のポートの1つに対して、重ね継ぎされている(Blaze・Photonics製のファイバー)か、あるいは、直接結合されているか(Crystal Fiber製のファイバー)のいずれかであった。PBFの遠い方の端部は、ファイバーの束ねられた(fiber−pigtailed)ファラデー回転ミラー(FRM)に対して同様に結合されていた。これにより、信号を反射してファイバーに戻し、これによって、ファイバーの複屈折率における変動に起因する帰還信号における極性変動を除去する。PBFの大部分は、加熱板に配されたアルミニウムのブロックに取り付けられており、このファイバー/ブロック組立体は、発泡スチレンの断熱シールド(図15Aに概略的に示されている)によって覆われていた。これにより、ファイバーの温度をできるだけ均一に維持し、且つ、室内における空気の流れに起因する温度変動を減少する。ブロック表面の直上の温度は、熱電対(例えば、1mV/℃の出力)によって測定された。
【0158】
干渉計における第2の(基準)アームは、第2のFRMに重ね継ぎされた、より短い長さのSMF28ファイバーから構成されていた。検知アームの非PBF部分とともに、この腕の全体が、第2の断熱シールド(図15Aに概略的に示されている)に配されていた。これは、主に、基準ファイバーと検知アームの非PBF部分との双方の隣接するヒーターによる加熱量を減少するためである。この配置において、ヒーターがオンとなったとき、PBFが、非常に温められた干渉計の唯一の部分であった。
【0159】
Sを測定するために、PBFの温度が、約70℃まで上げられた。そして、ヒーターがオフとなり、PBFの温度がゆっくりと下がるにつれて、干渉計の出力パワーとファイバーの温度との双方が長い時間をかけて測定され、コンピュータに記録された。測定期間(通常、数十分)中、PBFアームの位相は減少し、何度も(例えば50〜200回)2πを通過した。このため、図16における典型的な実験曲線に示されているように、干渉計出力のパワーは、多くのフリンジを示した。位相温度定数Sは、以下の式を用いて与えられた時間間隔において生じたフリンジの測定数から計算された。
【0160】
【数22】
【0161】
ここで、Lは、テスト用のファイバーの長さであり、Δ低は測定期間中に生じた温度変化である。また、Nfringeは、図16Aおよび図16Bに示されているフリンジの数である。
【0162】
この近似は妥当である。なぜなら、温度の下降がゆっくりであったため、PBFの温度が全ての時間において均一となったが、干渉計の残りの部分におけるランダムな位相変化がPBFにおける位相変化と比べて無視できるほどに速かったからである。この最後の点を検証するために、図15Bに示すように、PBFを取り外し、短い長さのSMF28ファイバーを有する検知アームにおけるファイバーの端部を再接続することによって、干渉計における本質的な温度安定性が測定された。最初の安定性テストでは、干渉計出力は、干渉計の全体の温度が室温と平衡になっている状態で記録された。約30分以上の期間で、筐体内の温度に±1℃ほどの変化が見られ、また、出力パワーは約1フリンジだけ変化した。このテストは、数十フリンジの位相シフトを測定することに関しては十二分なほどに干渉計が安定していることを示した。
【0163】
第2のテストでは、PBFの筐体が約70℃まで温められた後、ヒーターがオフされ、ヒーターがゆっくりと冷されていった状態で干渉計出力が記録された。今回は、より多くの数のフリンジが観察された。これは、ヒーターからのわずかな熱が、干渉計シールドを介して届いていており、2つのアームにおける温度変化の差が招来されたことを示していた。筐体の温度が18℃まで下降している状態では、出力パワーは、約12のフリンジによって異なっていた。したがって、図15Aの構成を用いてSを測定する場合には、干渉計における非PBF部分の残存熱が、約12のフリンジからなるエラーを導くことになる。PBF温度における変化に起因するフリンジカウントよりも小さい前記エラーに対して、このフリンジカウントは、このエラーよりはるかに大きく(例えば、100以上に)なっているはずであった。この状況は、十分に長いPBFを用いることによって実現された。PBF(例えば図13)について予想されたS≒2ppm/℃という値に関しては、式(18)が、18℃のΔTに関して100フリンジの位相シフトを得るために必要な長さが、L≒1メートルであることを予想している。したがって、ここに示した測定において使用されていたPBFの長さは、この程度であった(表2に示されているように、約2メートルであった)。
【0164】
比較点として、図15Aに示した実験構成におけるPBFを、210−cmの長さのSMF28ファイバーに置き換えて、従来の固体コアファイバーにおける温度定数を測定した。測定された値は、S=7.9ppm/℃であり、表1および表2におけるパラメータ値を用いたモデルによって予想された8.2ppm/℃という値と、見事に合致していた。この値は、SL=2.3ppm/℃とSn=5.9ppm/℃との和である。すなわち、屈折率の寄与は、長さ膨張の寄与よりも2.6倍大きい。これらの値は、表3にまとめられている。測定値と計算値とがほぼ一致したことは、モデルおよび干渉計の較正の双方に対する信頼を与える。
【0165】
【表3】
【0166】
次に、2つの空芯PBFに関してSの値が測定された。図16Aおよび図16Bに、典型的な実験結果を示す。各ファイバーに関して、上記のような測定および式(18)から推定されたSの値については、S、SnおよびSLの計算値とともに、表3に記載されている。2つのPBFについて測定されたSの値は、かなり類似しており、1.5〜2.2ppm/℃の範囲にある。予想どおり、空芯ファイバーの誘導機構は、位相遅延における温度に対する感度に対して、かなり大きな減少をもたらす。この減少は、結晶ファイバーPBFに対して、平均して5.26倍(測定値)あるいは5.79倍(予想値)の大きさである。Blaze・Photonics製のファイバーに対応する数値は、3.6(測定値)および3.14(予想値)である。この場合においても、理論値と測定値とが良好に合致している。Crystal・Fibre製のファイバーは、Blaze・Photonics製のファイバーよりも低い熱膨張寄与を示している。これは、式(17)に示されているように、それが、ジャケット領域よりも大きいシリカクラッディングの領域を有しているからである。Sにおけるこれらの減少は、ほぼ、約100分の1に減少するSn、および、15〜45%の減少となるSLに起因する。理論によって予想されるところでは、PBFのSは、圧倒的に、SLによって決定される(これは、ファイバーの長さの変化だけに依存する)。結論としては、現在の空芯ファイバーは、本質的に、従来のファイバーよりも熱感度が小さいといえる。そして、この小ささは、それがファイバーセンサおよび他の位相敏感ファイバーシステムにおける大幅な安定度の改善につながる程度に十分なほど(例えば、3.6〜5.3分の1)である。
【0167】
より小さい値のSであっても、PBFの設計を改善することによって得ることが可能である。PBFでは、SLはSに対する主な寄与であるために、Sをより小さくするために、SLの値を小さくすることが可能である。この項は、ファイバー長の温度変化から生じ、これは、熱膨張係数と、(i)ハニカムクラッディング(例えばシリカおよび空気)の剛性、(ii)外部クラッディング(例えばシリカ)の剛性、および、ジャケット(例えばポリマー)の剛性との双方によって引き起こされる。ポリマーがシリカよりも非常に高い熱膨張係数を有しているために、温度が減少するにつれて、ジャケットは、ファイバーよりも膨張し、ファイバーを引っ張り、ファイバーがジャケットを有していない場合よりも、その長さを増大する。このため、ジャケットは、一般的に、SLに対する支配的な寄与である。したがって、ジャケットをより薄くすると、SLはより小さくなり、ジャケットのないファイバーでは最も小さな値が得られることになる。また、他の全てについて同じであるがより柔らかいジャケット(ヤング率のより低いもの)を用いる場合、ジャケットがファイバーを効果的に引っ張れなくなるので、SLはより低くなる。さらに、外部クラッディングの厚さを増加することは、ファイバー構造の全体的な剛性を増加するので、ハニカムの膨張を減少し、SLを小さくする。
【0168】
これらの予想は、図17に示すように、さまざまなアクリレートジャケットの厚さおよび空気充填率に関する、Blaze・Photonics製のファイバーに対するシミュレーションによって確認される。ジャケットの厚さを薄くするにつれて、SLは減少する。ジャケットの厚さを限界値0にした場合(裸のファイバーとした場合)、SLは、シリ
カクラッディングの熱膨張によって設定される、その最低限度に到達する。空気の充填率をより高くすると、より大きいSLが観察される。その理由は、ハニカムがシリカをあまり含んでおらず、ファイバーの全体的な剛性がより低く、そして、ジャケットの膨張がガラス構造によってあまり制限されないので、大きいSL値をもたらす、ということにある。
【0169】
ジャケット材料の剛性の効果については、図18にみることが可能である。ここでは、少数の標準的なジャケット材料(金属、ポリマー、および、ポリイミドに覆われたアモルファスカーボン)に関して、SLの計算値がグラフ化(同じPBFに関する、90%の空気充填率でのグラフ化)されている。実際のファイバージャケットをシミュレーションするために、ジャケットの厚さは、ポリイミドについては5ミクロンあるいは50ミクロン(規定されている)、金属については20ミクロン、および、アモルファスカーボンについては20ナノメートル(2.5あるいは5ミクロンのいずれかのポリイミドによって覆われている)とされた。実際に製造されたPBFにおける基準となるジャケットは、50ミクロンのアクリレートであった。全ての金属ジャケットは、基準となるアクリレートジャケット(2.57ppm/℃)よりも大きいSLを生成した。これは、金属の熱膨張はアクリレートよりも低い(1桁ほど低い)ものの、それらのヤング率が、アクリレート(2〜3桁大きい)およびシリカ(3倍まで大きい)に比べてはるかに大きいからである。したがって、シリカの構造は、金属のコーティングを膨張することによって、アクリレートジャケットによるよりも効果的に引っ張られ、SLはより大きくなる。しかしながら、複数のジャケット材料は、アクリレートよりもよく機能する。薄い(20ナノメートルの)アモルファスカーボンを2.5ミクロンのポリマージャケットでコーティングしたものが、最も低い値(SL=0.67ppm/℃)を与える(74%の減少)。その次に、5ミクロンのポリイミドジャケットが続く(SL=0.77ppm/℃、70%の減少)。これは、シリカファイバーに関する理論的な限界(シリカの熱膨張係数によって設定され、SL=0.55ppm/℃に等しい)に近い。ポリイミドジャケットは、SLの最も低い値を与える。これは、それがアクリレートジャケットよりも、はるかに薄いからである。等しい厚さであれば、アクリレートは、実際にはポリイミドよりもうまく機能する。しかしながら、ポリイミドは、アクリレートよりも水蒸気バリアとしてはよいために、ポリイミドジャケットにおけるたったの数ミクロンの厚さは、ファイバーを水分から効果的に守るために十分であり、アクリレートではこうはいかない。結論としては、アクリレートは、不幸なことに、熱的な機能に関して、ジャケット材料における最高の選択にはならないといえる。むしろ、前記カーボン・ポリイミドジャケットによってPBFをコーティングすることによって、たったの0.67ppm/℃のSL(すなわち、0.72ppm/℃という低さのS)を実現することが可能である。これは、従来のファイバーに関する値の約11分の1である。
【0170】
シリカの外部クラッディングの効果についても、同じPBFに対する、クラッディングの厚さを増加することについてのシミュレーションによって研究されている。ここでは、固定された50−ミクロンのアクリレートジャケットおよび90%の空気充填率を仮定した。その結果を、図19に、実線の曲線としてプロットした。外部クラッディングの厚さを増加するにつれて、SLは減少する。これは、シリカクラッディングが厚いほど、アクリレートジャケットの長さの増加によく抵抗するからである。この効果は、かなり実質的である。例えば、外部クラッディングの厚さを、Blaze・Photonics製のファイバーにおける50−ミクロンの値から100ミクロンと2倍にすることによって、SLは55%減少する。外部クラッディングのない(厚さが0)の場合の逆の限界では、SLは、20ppm/℃以上にジャンプアップする。この場合、高熱膨張のジャケットは、シリカハニカム構造だけを引っ張っている。これは、空気孔に起因するより低いヤング率を有し、引っ張りに対する耐性をあまり与えない。したがって、厚い外部クラッディングを用いることは、空芯ファイバーの熱感度を減少するための有利な方法である。マイナス
面としては、この場合、ファイバーがより堅くなるために、ファイバーをきつく巻き付けられないということを挙げられる。このことは、用途によっては欠点になる。
【0171】
図19における破線の曲線は、ここに記載した近似モデルを使用することによって生成される。この曲線は、厳密な結果に対して非常によく合致している。この場合も、SLが温度定数Sの90%以上を占めているために、この非常に単純なモデルは、どのようなファイバー構造に関しても、その温度定数を予想するための信頼できるツールである。
【0172】
したがって、現在の空芯ファイバーにおいて既にデモンストレーションして得られた低い値を下回るほどに温度定数を減少することが可能である。これは、(i)できるだけ薄いジャケット、(ii)柔らかいジャケット材料、(iii)大きな外部クラッディング、および/または(iv)(可能な限り)小さい空気充填率、を使用することによって実現できる。(i)および(ii)を満たすジャケット材料は、ポリイミド、および、薄いポリイミド層によって覆われたアモルファスカーボンを含む(これらに限られるわけではない)。5−ミクロンのポリイミドジャケットを使用する場合、Blaze・Photonics製のファイバーは、S≒0.82ppm/℃の温度定数を有する。これは、現在のファイバーにおける値の約3.2分の1である。
【0173】
特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の8以下である。特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の6以下である。特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の4以下である。特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の1.4以下である。特定の実施形態では、位相温度定数Sは、摂氏温度毎に百万分の1以下である。
【0174】
ブラッグファイバーに関する、温度に対する理論的な熱位相感度についても計算した。この計算は、2ミクロンのコア半径を有し、40の空気−シリカブラッグリフレクター(0.48ミクロン(シリカ)および0.72ミクロン(空気)の厚さを有する)によって囲まれており、62.5ミクロンの厚さのアクリレートジャケットを有するブラッグファイバーに関する。このファイバーは、1.5ミクロンの半径を有するその空芯内に閉じ込められた基本モードを示した。表3に示したように、これらの結果は、SL=1.15ppm/℃、Sn=0.30ppm/℃、およびS=1.45ppm/℃をもたらした。ブラッグファイバーにおける基本モードは、主に空気を伝わる。このために、このSの値は、従来のファイバーに関する値よりも非常に低い。Sは、PBFに関する値と同様であり、主な寄与は、この場合も、ファイバーが長くなったことにある。
【0175】
実施例3
図20は、ここに示した特定の実施形態に対応する光ファイバージャイロスコープ905をテストするための、実施例の構成を概略的に示している。検知コイル910は、Blaze・Photonics製の空芯ファイバーを備えている。このファイバーは、235メートルの長さを有し、コイル910における熱感度および音響感度を減少するために、8センチメートルの直径のスプール上に4極重巻を用いて16層に巻き付けられている。コイル910における各ファイバー層は、その下の層に対して、薄いエポキシコーティングによって結合されており、最も外側の層も、エポキシによってコーティングされていた。このファイバーは、約1.54ミクロンの単一波長において本質的に単一モード化されていた(わずかに高位のモードは非常に損失が多かった)。コイル910における計算されたスケールファクタは、0.255sであった。広帯域Erドープ超蛍光ファイバー源(SFS)920からの光は、アイソレータ922によって孤立され、偏光コントローラ(PC1)924を介して伝送され、光学回路(IOC)930に一体化されているファイバーの束ねられたLiNbO3に結合する前に、3−dBファイバー結合器によって分離された。前記光学回路(IOC)930は、偏光子932、3−dB入出力Y字路結
合器934、電気光学位相変調器(EO−PM)936、および偏光コントローラPC2938を備えていた。後者は、FOG感度を最大化する3.6ラジアンの頂点間振幅をもつ適切なループ周波数(600kHz)において変調された。
【0176】
Y−結合器934は、入力光を、ファイバーコイル910の周囲を逆方向に伝播する2つの波に分離する。IOC930における出力ピグテイルの2つの端部は、後方反射および損失を減少するために斜めにカットされているが、90°に裂かれたPBF検知コイル910の端部に対して直接に結合されている。測定された損失は、各直接接合部に関して約2〜3dBであり、ファイバーコイル910に関して約4.7dBであり、IOC930に関して約14dB(往復)であった。PC1924は、干渉計に入力されるパワーを最大化するように調整された。そして、PC2は、検出器における最大の戻りパワー(IOC930に対する20mWの入力について、約10μW)に合わせて調整された。検出器940は、低ノイズ増幅InGaAsフォトダイオード(カリフォルニア州サン・ノゼにある、New Focus of Beckham,Inc.から入手可能である)であった。コイル910を、その主軸の周囲で回転することは、サニャック効果を介して、逆伝播波間に位相シフトを引き起こす。そして、位相シフトは、回転速度Ωに比例する。コイル910から戻ってくる変調光信号は、ファイバー結合器出力において検出され、ロックインアンプ950(積分時間100−ms、フィルタスロープ24−dB/オクターブ)において分析された。この測定信号は、小さい回転速度に関しては、位相シフトに対する線型依存を有している。ジャイロスコープの感度は、EO−PM936を用いて適切なループ周波数において正弦関数の位相変調を2つの波に適用することによって、最大化された。
【0177】
この空芯ファイバージャイロスコープ905の短期ノイズは、100マイクロ秒から10秒までの範囲の積分時間に関する検出バンド幅の平方根としての、期間信号における1シグマノイズレベルを記録することによって測定された。この依存性は、ジャイロスコープのランダムウォークを与える傾斜をもったホワイトノイズ源に期待されるような、線型であることがわかった。この測定は、検出器に入射する異なる信号パワーに関して、繰り返された。図21は、IOC入力において測定された、信号パワーに関するランダムウォークの測定された依存性を示している。この結果は、空芯ファイバージャイロスコープの感度が、従来のファイバージャイロスコープに典型的に存在するノイズにおける3つの主な原因のうちの2つによって制限されていた、ということを明確に示している。これらは、すなわち、低い検出パワー(例えば、3μWより低いパワー)に関する検出器の熱的ノイズ、および、高い検出パワー(例えば、4μWより高いパワー)に関する広帯域光源からの過剰ノイズ、である。第3のノイズ源は、ショットノイズである。パワーの低い場合、最小の検出可能な回転速度は、検出パワーに反比例していた。一方、より高いパワーでは、ノイズはパワーに依存しなかった。図21において「熱的ノイズ」と描かれている破線の曲線は、検出器の熱的ノイズにおける理論的な寄与であり、パワー(2.5pW/√Hz)に対応する検出器のノイズから計算される。水平の破線の曲線は、SFSにおける測定されたバンド幅(2.8THz)から計算された、予想される過剰ノイズを示している。最も低い破線の曲線は、理論的なショットノイズを示している。このノイズは、入力パワーの平方根に反比例している。この寄与は、空芯ジャイロスコープ905では無視できる。これら3つのノイズ源の和は、全体的な予想ノイズであり、図21に実線で示されている。それは、測定データポイントとよく合致している。この比較は、従来のFOGにおいて典型的であるように、この空芯ファイバージャイロスコープの性能が過剰ノイズによって制限される、ということのデモンストレーションとなる。重要なことに、それは、図20に概略的に示されているような、異なるファイバー間の直接結合の接合部からの残存する後方反射が、ジャイロスコープの短期ノイズに影響を与えない、ということについても示している。これは、おそらく、低コヒーレンス光源を使用しているため、および、2つのピグテイルの長さが、1つの光源のコヒーレンス長よりも大きく異なっているため
である。これは、1次的な波と反射波との間のコヒーレントな相互作用をより減少する。
【0178】
過剰ノイズ制限レジームでは、空芯ファイバージャイロスコープのランダムウォークは、0.015°/√hrである。80マイクロ秒の積分時間に関しては、1Hzの典型的な検出バンド幅に対応して、測定される最小の検出可能な位相シフトは、1.1μラジアンであり、0.9°/hrの最小の検出可能な回転速度に対応する。これらの値は、最新の市販されている慣性航法級の光ファイバージャイロスコープの性能とよく似ている。この結果は、典型的な従来のFOGにおけるものと同じ検出パワー(例えば、約10μW)を用いながら得られた。しかしながら、空芯ファイバーにおける伝播損失がより高いために、このパワーは、従来のFOGよりも大きい入力パワー(すなわち、図21によって示されているように、数mW)を用いることによって得られる。しかし、この入力パワーについては、低ノイズ検出器を用いることによって容易に減少することが可能である。これは、図21における2つの破線の曲線における交点をより低いパワーに移動し、ファイバーの損失を減少する。
【0179】
特定の実施形態における空芯ファイバージャイロスコープの利点は、主に、その改善された長期安定性にある。それは、最初に、その温度ドリフトから始まる。サニャックループの中点以外の全てに適用される熱過渡は、回転によって引き起こされる位相シフトと区別することの不可能な、差分位相シフトを引き起こす。コイルファイバーの一端からの距離zに配されたファイバー長の要素dzにおける温度の時間微分係数をT(z)とすると、ファイバーの全長Lにおける全体的な位相シフトエラーは、以下の式によって表される。
【0180】
【数23】
【0181】
ここで、λ0は波長であり、cは光の速度である(双方とも真空中でのもの)。nはファイバーモードの有効屈折率であり、Sは、シュウプ定数である。シュウプ定数は、温度に対する有効屈折率の変動とファイバーの伸長との双方を考慮に入れており、ファイバー長に依存しない。式(21)における位相シフトエラーは、回転のような信号ΩEを誘起し、これは、以下の式によってΔφEに関連する。
【0182】
【数24】
【0183】
ここで、Dは、コイルの直径である。
式(21)を式(22)に代入し、無次元変数z’=z/Lを用いることで、過渡温度の変化T(z)によって引き起こされる回転速度エラーに関する、以下の式を得る。
【0184】
【数25】
【0185】
式(23)は、FOGの熱感度がシュウプ定数Sだけでなくn2(モード屈折率の2乗)にも比例する、ということを示している。空芯ファイバーが、標準的なファイバーの有する値(n≒1.44)に比べて非常に小さい有効屈折率(n≒0.99)を有し、また、より小さいシュウプ定数を有しているために、空芯ファイバーを使用することによって、ジャイロスコープにおける熱感度の劇的な減少が見込まれる。表3に示されているように、SMF28ファイバーに関するシュウプ定数は、S=7.9ppm/℃と測定され、また、Blaze・Photonics製の空芯ファイバーに関するシュウプ定数は、S=2.2ppm/℃と測定された。このn2への依存性という追加的な利点を組み合わせると、これらの値は、Blaze・Photonics製のPBFジャイロスコープが、固体コアファイバージャイロスコープの約7.6分の1の熱感度となるはずである、ということを示唆している。これは、重要な安定性の改善となる。
【0186】
これらの予想を実験的に検証するために、周知の温度サイクル下にコイルを置いた状態で、空芯FOGの出力信号および固体コアFOGの出力信号を記録した。図20によって概略的に示すように、それぞれの場合において、検知コイルは、その一方の側をヒートガンからの暖気に晒すことによって、非対称に温められた。これらの測定に先立って、各ジャイロスコープは、回転テーブルにそれを配置し、周知の回転速度を適用し、ロックイン出力電圧における回転速度に対する依存性を測定することによって、慎重に調整された。したがって、熱測定の間に測定された量は、回転エラー信号ΩEであった。ΔφEは、この信号ΩEから、式(22)を用いて推定された。
【0187】
図22Aは、空芯ファイバージャイロスコープ・コイルの一方の側に適合する、測定された時間的プロファイル、および、これによって引き起こされた、測定された回転エラーの例を示している。式(23)によって示されているように、回転エラーが温度の時間微分係数に依存しているために、図22Bは、適合する温度変化における微分係数を示している。この微分係数は、図22Aにおける測定された時間的プロファイルから数値的に計算され、そして、ロックインアンプにおける4−段階の24−dB/オクターブのローパスフィルタをシミュレーションするために、数値的にフィルタされた。測定された回転エラーと比較すると(図22Bにおいて再現されている)、2つの曲線間に、式(23)にしたがう、適度な一致のあることがわかる。
【0188】
4極重巻では、図23に示されているように、第1の(最も外側の)層が、結合器に最も近い2つのサニャックループの端部の一方の近くに配された、検知ファイバーの一部となっている(例えば、位置z=0および位置z=L1との間)。その真下にある第2の層は、コイルの反対の端部に配されている検知ファイバーの一部となっている(Ln−1<z<Ln=L)。第3の層は、第2の層に隣接して配された検知ファイバーの一部となっている(Ln−2<z<Ln−1、以下略)。加熱が開始されたすぐ後では、コイルにおける第1の層がまず熱くなり、その結果、逆伝播波間の位相差が変化する(例えば、増加する)。継続して熱が印加されるにつれて、それは、コイル内を放射状に伝播する。そして、第2の層が、次に第3の層が、温まり始める。4極重巻あるいは2極重巻では、第1の層および第2の層は、サニャックループ内において、対称的に配置されている。したがって、第2の層が熱くなるにつれて、それによって引き起こされる熱位相シフトが、第1の層において引き起こされている熱位相シフトをキャンセルし始める。同様のキャンセルプロセスが、より深い層に関しても生じる。しかしながら、全体的な位相シフトは増加し続ける。これは、第1の層が、内部の層よりも早く熱くなるからである。最終的には、外側の層の温度は、何度かの最大温度に到達する。そして、より内部の層が徐々に熱くなるにつれて、全体的な熱位相は減少する。十分に長い時間にわたって熱が印加された場合、ファイバーに沿った温度は、定常状態分布に到達し、熱位相シフトは消失する。
【0189】
この挙動は、熱的に誘起された信号の観察された挙動に合致する。これは、図22Bに
よって示されているように、まず増加し、その後、ゆっくり時間をかけて減少する。測定された信号は、加熱の開始された後の約1秒間、温度微分係数に対して密接にしたがう。より長い時間については、測定された回転エラー曲線が温度微分係数曲線を下回るという点において、2つの曲線は一致しない。これは、そのときまでに、熱がコイルの奥深くまで達しており、4極重巻が熱位相シフトをキャンセルしはじめているからである。加熱の停止された直後(図22Bにおけるt=5.5秒のあたり)では、回転エラーはマイナスになる。その理由は、このときに、最も外側の層が冷え始めることにある。したがって、温度勾配は逆転し、回転エラーの符号も同様となる。
【0190】
空芯ファイバーを固体コアファイバーコイルに置き換えたとき、図24Aおよび図24Bに示されているように、ジャイロスコープの挙動は同様であった。回転エラーは、熱パルスの開始直後に増加し、その後に減少し、そして、最終的には、加熱の停止後にマイナスになった。しかしながら、固体コアファイバージャイロスコープは、明らかに、非対称の加熱に関して、空芯FOGの場合に比べてはるかに敏感であった。比較可能な適合するピーク微分係数T(SMF28に関して75.5℃/s VS PBFに関して41.1℃/s)に関しては、図22Bと図24Bとの比較によって示されるように、固体コアファイバージャイロスコープに関するエラー信号は、10倍ほど大きかった。
【0191】
測定により、全ての時間の、ただしコイルの表面(z=0)だけの温度微分係数T(z)を得た。したがって、式(23)を適用することはできず、測定された回転エラー信号から、2つのファイバーコイルのシュウプ定数Sに関する値を抽出することはできなかった。しかしながら、2つのジャイロスコープにおける熱的な性能については、2つの観察を実行することによって、なお比較することが可能である。第1に、2つのコイルが同一の直径および厚さを有しているために、熱流の速度は、2つのコイルにおいて同程度であると予想される。第2に、4極重のコイルにおける熱流の力に関する上記の議論に基づくと、全体的な熱位相シフトは、第1の層が熱くなり始めた後、すぐにその最大値に到達すると予想される。したがって、熱的に誘起される回転エラーの最大値については、以下の式によって近似することが可能である。
【0192】
【数26】
【0193】
さらに、最も外側の層における温度変化率は、コイルの表面において測定された温度変化率に近く、且つ、z’に弱く依存する、と予想される。したがって、式(24)では、T(z)を積分の外に出すことが可能である。これは、ΩE,maxが測定された表面温度の微分係数に対してほぼ線型に比例するはずである、ということを示している。
【0194】
この近似を検証するために、各ジャイロスコープについて、適合する温度勾配に対する最大の回転速度エラーの依存性が測定された。例えば、図22Bに示した測定では、最大の回転速度エラーは0.02度/秒に等しく、また、最大誤差の生じた時間(t≒1.8秒)では、適合する温度勾配は約41.1℃/秒であった。図25は、従来の固体コアファイバージャイロスコープおよび空芯ファイバージャイロスコープの双方において測定された、適合する温度勾配に対する最大の回転速度エラーの依存性を示している。最大の回転速度エラーは、おおよそ、適合する温度勾配に対して線型に増加する。これは、近似の妥当性を裏付ける。これらの依存性における傾きは、SMF28ファイバージャイロスコープに関して2.4×10−3度/秒/(℃/秒)、空芯ファイバージャイロスコープに関して2.9×10−4度/秒/(℃/秒)である。2つの検知ファイバーにおけるわず
かに異なる長さLを修正した後、同一のコイル長に関しては、空芯ファイバージャイロスコープにおける温度勾配に対する感度は、従来のFOGの6.5分の1である。
【0195】
同一のファイバーの短片に対して実施された別個の熱測定は、SMF28とBlaze製のPBFとにおけるシュウプ定数の比が、表3に示されているように、3.6であることを示した。これらの値を、2つのファイバーに関するモード有効屈折率0.99および1.44のそれぞれとともに式(23)に使用し、同一のコイルであることを仮定すると、空芯ファイバーにおける熱摂動に対する感度は、固体コアファイバーの7.6分の1であることが予想される。この値は、我々の実験的な値である6.5と良好に合致する。小さな差(約13%)については、コイルの熱伝播特性におけるわずかの差に起因する可能性がある。これは、空芯ファイバーがよりよい熱絶縁物を構成するためだと予想される。6.5という測定値は、また、これら2つのファイバーに関する理論的な予想比である6.6と、非常によく合致している。いずれの場合においても、測定値および理論値は、その熱感度を減少するためにFOGに空芯ファイバーを使用することの重要な利点を、明白に実証している。さらなる設計の改善(例えば、ジャケットの最適化)は、シュウプ定数における約3分の1の減少を別個にもたらすことが可能である。これにより、全体的な改善は、従来のコイルに比べて約23分の1となる。
【0196】
空芯ファイバージャイロスコープによって与えられる、第2の重要な長期安定性の改善点は、非可逆的なカー効果における劇的な減少である。この改善点を示すために、2つの逆伝播信号間のパワーを故意にアンバランスにした状態で、空芯FOGにおいてカーによって誘起されたドリフトの大きさを、ジャイロスコープの出力における変化を観察することによって測定した。この非常に弱い効果を観察できるようにするために、IOCが、10%のファイバー結合器に置き換えられた。これは、逆伝播パワー間における強いアンバランスを与える。この変更は、IOCに存在する他の部品(偏光フィルタおよび位相変調器)における、標準的なファイバー偏光子および圧電性ファイバー位相変調器との置き換えを伴った。ほぼ完全にカー効果をキャンセルするSFSは、狭帯域半導体レーザと置き換えられた。狭帯域光源を用いると、ファイバーからのコヒーレント後方散乱に起因するノイズが非常に大きくなった(SFSを用いる場合よりも約19dB高かった)。実際に、光学部品によって許容される最大の入力パワー(例えば、50mW)を用いる場合でさえも、後方散乱ノイズは、カーによって誘起される信号を超えていた。すなわち、空芯ファイバージャイロスコープにおけるカー効果は、測定するには弱すぎた。しかしながら、カー位相シフトがノイズ(主に後方散乱によるノイズ)とほぼ等しかったことを認めることによって、この測定は、ファイバーモデルにおけるカー定数の上限値の見積りを与える。サニャックループ内における(固体コアの)ファイバーピグテイルからの周知のカーの寄与を修正した後では、カー定数は、SMF28ファイバーコイルを使用した同様のジャイロスコープと比べて、少なくとも50分の1に減少することがわかった。この結果は、空芯ファイバーにおけるカー効果が実質的に50分の1に(あるいはそれ以下に)減少していることを裏付ける。
【0197】
空芯ファイバージャイロスコープにおける磁場の影響は直接には測定されなかったが、短い長さの空芯ファイバーにおけるヴェルデ(ファラデー)定数が測定された。これらの測定は、同じ長さであれば、空芯ファイバーにおける磁場によって引き起こされるファラデー回転が、SMF28ファイバーの約160分の1であることを示している。この結果から空芯ファイバーのヴェルデ定数における正確な値に対する推論は、ファイバーの複屈折率に関する正確な知識を利用する。この定数は、SMF28ファイバーにおける値よりも、少なくとも10dBは小さくなると推定される。そして、それは、SMF28ファイバーにおける値よりも26dBほど低くなることも可能である。実際には、空芯FOGは、μ−金属シールドを有していたとしても、現在の市販されているFOGよりも、非常に少ない量しか必要としない。このことは、従来のFOGと比べて、空芯FOGのサイズ、
重量およびコストを減少する。
【0198】
ここに記載した特定の実施形態では、FOGにおける温度依存性は、有利なことに、空芯ファイバーを用いることによって減少する。他の実施形態では、有利なことに、他のタイプの干渉ファイバーセンサにおける温度依存性についても、減少することが可能である。このようなファイバーセンサは、例えば、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、および、フォックス・スミス干渉計などの、光学干渉計に基づくセンサを含む(ただし、これらに限られるわけではない)。ファイバーセンサが相対的に短い長さの空芯ファイバーを利用している特定の実施形態では、これらの改善されたファイバーセンサの製造において、上記のようなファイバーにおける追加的なコストがそれほど問題にならない。
【0199】
ここに記載した特定の実施形態では、FOGにおける温度依存性は、有利なことに、ブラッグファイバーを用いることによって減少する。他の実施形態では、有利なことに、他のタイプの干渉ファイバーセンサにおける温度依存性についても、減少することが可能である。このようなファイバーセンサは、例えば、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、および、フォックス・スミス干渉計などの、光学干渉計に基づくセンサを含む(ただし、これらに限られるわけではない)。ファイバーセンサが相対的に短い長さのブラッグファイバーを利用している特定の実施形態では、これらの改善されたファイバーセンサの製造において、上記のようなファイバーにおける追加的なコストがそれほど問題にならない。
【0200】
特定の実施形態は、クラッディング内に孔からなる三角形のパターンを備えた光バンドギャップファイバーを有するように、ここに記載されてきた。しかしながら、他の実施形態は、三角形とは異なるクラッディング孔の配置を有する光バンドギャップファイバーを利用することも可能である(ただし、ファイバーがなおバンドギャップをサポートし、中空コア欠損の導入が、この欠損内に局在された1つ以上のコア誘導モードをサポートする、という条件を満たすならば)。例えば、そのような条件は、いわゆるカゴメ格子を備えたクラッディングを有するファイバーによって満たされる。これについては、F.Counyらによる、「Large−pitch kagome−structured hollow−core photonic crystal fiber(ピッチの大きいカゴメ格子型の中空光結晶ファイバー),Optics Letters,Vol.31,No.34,3574〜3576頁(2006年12月)」に記載されている。他の特定の実施形態では、バンドギャップを示さないが、相当に長い距離(例えば、数ミリメートル以上)にわたって主にコア内に閉じ込められた光をなお伝送するような、中空コアファイバーが利用される。
【0201】
当業者は、前記方法および設計が、追加的な応用例を有し、関連の応用例は、上で具体的に示されたものに限定されているわけではないことを理解するであろう。さらに、この発明については、ここで説明されたような本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形で実現することも可能である。前記実施形態は、すべての態様において単なる例示にすぎず、いずれの点においても限定的でないと考えられるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器を備えており、前記第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信しており、
第2のポートおよび第3のポートと光通信しているブラッグファイバーを備えており、前記第2の光信号および第3の光信号が、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還する、光学センサ。
【請求項2】
前記第1の光信号を出射する出力部を有する光源をさらに備えており、この出力部が、前記第1のポートと光通信している、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項3】
前記光源が超蛍光源を備えている、請求項2に記載の光学センサ。
【請求項4】
前記超蛍光源が、エルビウムがドープされた超蛍光ファイバー源を備えている、請求項3に記載の光学センサ。
【請求項5】
前記光源が、約1ナノメートル以上の半値全幅をもつスペクトル分布を有している、請求項2に記載の光学センサ。
【請求項6】
前記光源が、約1ナノメートル未満の半値全幅をもつスペクトル分布を有している、請求項2に記載の光学センサ。
【請求項7】
前記第2の光信号および第3の光信号がブラッグファイバーを横断した後、これら第2の光信号および第3の光信号を受信するために、前記方向性結合器と光通信している光学検出器をさらに備えている、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項8】
前記ブラッグファイバーが中空コアを備えている、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項9】
前記コアが空気を含んでいる、請求項8に記載の光学センサ。
【請求項10】
前記ブラッグファイバーがコイルである、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項11】
前記ブラッグファイバーコイルの中間点に関して非対称的なブラッグファイバーコイルの温度変動に起因する、差分位相シフトを減少するために、ブラッグファイバーコイルがスプールに巻き付けられている、請求項10に記載の光学センサ。
【請求項12】
光信号を出力し、
光信号における第1の部分を、ブラッグファイバーを介して第1の方向に伝播し、
光信号における第2の部分を、このブラッグファイバーを介して第2の方向に伝播し、この第2の方向が、第1の方向と逆方向であり、
光信号における第1の部分および第2の部分がブラッグファイバーを介して伝播した後、光信号における第1の部分および第2の部分に対して光学的に干渉し、これにより、光干渉信号を生成し、
ブラッグファイバーにおける少なくとも一部に摂動を適用し、そして、
この摂動によって前記光干渉信号に生じる変動を測定する、検知方法。
【請求項13】
前記ブラッグファイバーがコアを含んでおり、光信号における第1の部分が実質的にコアに閉じ込められており、光信号における第2の部分が実質的にコアに閉じ込められてい
る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コアが中空である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コアが空気を含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記摂動が、ブラッグファイバーの一部に対する回転を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記摂動が、ブラッグファイバーの一部に印加される圧力の変化を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記摂動が、ブラッグファイバーの一部に対する移動を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
第1の光信号を出射する出力部を有する光源と、
少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器であって、前記光源から出射された第1の光信号を受信するために、第1のポートが前記光源と光通信しており、第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信している、方向性結合器と、
クラッディングによって囲まれている中空コアを有するブラッグファイバーであって、第2の光信号および第3の光信号が、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還するように、ブラッグファイバーが第2のポートおよび第3のポートと光通信しており、ブラッグファイバーの前記クラッディングが、実質的に、逆伝播している第2の光信号および第3の光信号を中空コア内に閉じ込めている、ブラッグファイバーと、
前記方向性結合器と光通信している光学検波器であって、前記ブラッグファイバーを横断した後の、逆伝播している第2の光信号および第3の光信号を受信する光学検波器と、を備えている光学システム。
【請求項20】
クラッディングによって囲まれている中空コアを有するブラッグファイバーを備えており、このブラッグファイバーを介して第1の光信号および第2の光信号が逆伝播しており、このブラッグファイバーのクラッディングが、実質的に、逆伝播している第1の光信号および第2の光信号を中空コア内に閉じ込めており、これら第1の光信号と第2の光信号との間の干渉が、ブラッグファイバーにおける少なくとも一部の摂動に敏感である、摂動センサ。
【請求項21】
前記摂動センサがサニャック干渉計を備えている、請求項20に記載の摂動センサ。
【請求項22】
前記摂動センサが、サニャック干渉計、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、およびフォックス・スミス干渉計からなるグループから選択された干渉計を備えている、請求項20に記載の摂動センサ。
【請求項23】
前記摂動が、ブラッグファイバーの少なくとも一部に対する、磁場、電場、圧力、移動、回転、ねじれ、および曲げ、からなるグループから選択される、請求項20に記載の摂動センサ。
【請求項1】
少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器を備えており、前記第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信しており、
第2のポートおよび第3のポートと光通信しているブラッグファイバーを備えており、前記第2の光信号および第3の光信号が、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還する、光学センサ。
【請求項2】
前記第1の光信号を出射する出力部を有する光源をさらに備えており、この出力部が、前記第1のポートと光通信している、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項3】
前記光源が超蛍光源を備えている、請求項2に記載の光学センサ。
【請求項4】
前記超蛍光源が、エルビウムがドープされた超蛍光ファイバー源を備えている、請求項3に記載の光学センサ。
【請求項5】
前記光源が、約1ナノメートル以上の半値全幅をもつスペクトル分布を有している、請求項2に記載の光学センサ。
【請求項6】
前記光源が、約1ナノメートル未満の半値全幅をもつスペクトル分布を有している、請求項2に記載の光学センサ。
【請求項7】
前記第2の光信号および第3の光信号がブラッグファイバーを横断した後、これら第2の光信号および第3の光信号を受信するために、前記方向性結合器と光通信している光学検出器をさらに備えている、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項8】
前記ブラッグファイバーが中空コアを備えている、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項9】
前記コアが空気を含んでいる、請求項8に記載の光学センサ。
【請求項10】
前記ブラッグファイバーがコイルである、請求項1に記載の光学センサ。
【請求項11】
前記ブラッグファイバーコイルの中間点に関して非対称的なブラッグファイバーコイルの温度変動に起因する、差分位相シフトを減少するために、ブラッグファイバーコイルがスプールに巻き付けられている、請求項10に記載の光学センサ。
【請求項12】
光信号を出力し、
光信号における第1の部分を、ブラッグファイバーを介して第1の方向に伝播し、
光信号における第2の部分を、このブラッグファイバーを介して第2の方向に伝播し、この第2の方向が、第1の方向と逆方向であり、
光信号における第1の部分および第2の部分がブラッグファイバーを介して伝播した後、光信号における第1の部分および第2の部分に対して光学的に干渉し、これにより、光干渉信号を生成し、
ブラッグファイバーにおける少なくとも一部に摂動を適用し、そして、
この摂動によって前記光干渉信号に生じる変動を測定する、検知方法。
【請求項13】
前記ブラッグファイバーがコアを含んでおり、光信号における第1の部分が実質的にコアに閉じ込められており、光信号における第2の部分が実質的にコアに閉じ込められてい
る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コアが中空である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コアが空気を含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記摂動が、ブラッグファイバーの一部に対する回転を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記摂動が、ブラッグファイバーの一部に印加される圧力の変化を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記摂動が、ブラッグファイバーの一部に対する移動を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
第1の光信号を出射する出力部を有する光源と、
少なくとも第1のポート、第2のポートおよび第3のポートを含んでいる方向性結合器であって、前記光源から出射された第1の光信号を受信するために、第1のポートが前記光源と光通信しており、第1のポートによって受信される第1の光信号が、第2のポートに伝播する第2の光信号と第3のポートに伝播する第3の光信号とに分離されるように、第1のポートが、第2のポートおよび第3のポートと光通信している、方向性結合器と、
クラッディングによって囲まれている中空コアを有するブラッグファイバーであって、第2の光信号および第3の光信号が、それぞれ、ブラッグファイバーを介して逆伝播し、第3のポートおよび第2のポートに帰還するように、ブラッグファイバーが第2のポートおよび第3のポートと光通信しており、ブラッグファイバーの前記クラッディングが、実質的に、逆伝播している第2の光信号および第3の光信号を中空コア内に閉じ込めている、ブラッグファイバーと、
前記方向性結合器と光通信している光学検波器であって、前記ブラッグファイバーを横断した後の、逆伝播している第2の光信号および第3の光信号を受信する光学検波器と、を備えている光学システム。
【請求項20】
クラッディングによって囲まれている中空コアを有するブラッグファイバーを備えており、このブラッグファイバーを介して第1の光信号および第2の光信号が逆伝播しており、このブラッグファイバーのクラッディングが、実質的に、逆伝播している第1の光信号および第2の光信号を中空コア内に閉じ込めており、これら第1の光信号と第2の光信号との間の干渉が、ブラッグファイバーにおける少なくとも一部の摂動に敏感である、摂動センサ。
【請求項21】
前記摂動センサがサニャック干渉計を備えている、請求項20に記載の摂動センサ。
【請求項22】
前記摂動センサが、サニャック干渉計、マッハ・ツェンダ干渉計、マイケルソン干渉計、ファブリ・ペロー干渉計、リング干渉計、ファイバーブラッグ・グレーティング、長期ファイバーブラッグ・グレーティング、およびフォックス・スミス干渉計からなるグループから選択された干渉計を備えている、請求項20に記載の摂動センサ。
【請求項23】
前記摂動が、ブラッグファイバーの少なくとも一部に対する、磁場、電場、圧力、移動、回転、ねじれ、および曲げ、からなるグループから選択される、請求項20に記載の摂動センサ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図24A】
【図24B】
【図25】
【公表番号】特表2009−543065(P2009−543065A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518563(P2009−518563)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/072419
【国際公開番号】WO2008/003071
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(599108976)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (61)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/072419
【国際公開番号】WO2008/003071
【国際公開日】平成20年1月3日(2008.1.3)
【出願人】(599108976)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (61)
【Fターム(参考)】
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