ブランク媒体、画像表示体及び情報媒体
【課題】改竄が困難であり且つ画質が高い像を表示可能とする技術を提供する。
【解決手段】本発明に係るブランク媒体は、互いに交差するX及びY方向に配列した複数の画素PEを備え、複数の画素PEの各々は、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第1溝G1を各々が備え且つ複数の第1溝G1の長さ方向が互いに異なっている複数の第1サブ画素SPE1と、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能であり且つ複数の第1溝G1と長さ方向が互いに異なった複数の第2溝G2を備え、複数の第1サブ画素SPE1の各々と比較して面積がより大きい第2サブ画素SPE2とを含んでいる。
【解決手段】本発明に係るブランク媒体は、互いに交差するX及びY方向に配列した複数の画素PEを備え、複数の画素PEの各々は、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第1溝G1を各々が備え且つ複数の第1溝G1の長さ方向が互いに異なっている複数の第1サブ画素SPE1と、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能であり且つ複数の第1溝G1と長さ方向が互いに異なった複数の第2溝G2を備え、複数の第1サブ画素SPE1の各々と比較して面積がより大きい第2サブ画素SPE2とを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【0008】
ところで、個人認証媒体に記録された顔画像が立体的な像である場合、顔画像が平面像である場合と比較して、その改竄がより困難となる。しかしながら、顔画像を立体像として表示する場合、視差を有する複数枚の2次元画像(以下、視差画像ともいう)が必要である。そして、複数枚の視差画像を用いて立体像を表示する場合、精細度及び/又は明るさの低下により、画質が悪くなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改竄が困難であり且つ画質が高い像を表示可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1側面は、互いに交差する第1及び第2方向に配列した複数の画素を備え、前記複数の画素の各々は、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第1溝を各々が備え且つ前記複数の第1溝の長さ方向が互いに異なっている複数の第1サブ画素と、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能であり且つ前記複数の第1溝と長さ方向が互いに異なった複数の第2溝を備え、前記複数の第1サブ画素の各々と比較して面積がより大きい第2サブ画素とを含んでいるブランク媒体である。
【0012】
本発明の第2側面は、前記複数の第1サブ画素は立体画像の表示に用いられ且つ前記第2サブ画素は平面画像の表示に用いられる第1側面に係るブランク媒体である。
【0013】
本発明の第3側面は、前記複数の第2溝の長さ方向は、前記複数の第1溝の長さ方向の平均と平行である第1又は第2側面に係るブランク媒体である。
【0014】
本発明の第4側面は、前記複数の第2溝は曲線状である第1乃至第3側面の何れか1つに係るブランク媒体である。
【0015】
本発明の第5側面は、前記複数の第2溝の空間周波数が互いに異なった複数の前記画素を含んでいる第1乃至第4側面の何れか1つに係るブランク媒体である。
【0016】
本発明の第6側面は、第1乃至第5側面の何れか1つに記載のブランク媒体から得られる画像表示体であって、前記ブランク媒体が含んでいる前記第1サブ画素の一部において前記複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ前記第2サブ画素の全部において前記複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られ、前記第1サブ画素によって第1画像を表示する第1表示領域と、前記第1サブ画素の全部において前記複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ前記第2サブ画素の一部において前記複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られ、前記第2サブ画素によって第2画像を表示する第2表示領域とを含んだ画像表示体である。
【0017】
本発明の第7側面は、前記回折効率及び/又は散乱効率をゼロとするか又は低減することは、前記ブランク媒体の前記複数の第1及び第2溝が設けられた位置にエネルギービームを照射することにより行われた第6側面に係る画像表示体である。
【0018】
本発明の第8側面は、前記第2画像は個人情報を含んだ画像である第6又は第7側面に係る画像表示体である。
【0019】
本発明の第9側面は、第6乃至第8側面の何れか1つに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備した情報媒体である。
【0020】
本発明の第10側面は、前記画像表示体は生体情報を含んだ画像を表示している第9側面に係る情報媒体である。
【0021】
本発明の第11側面は、前記生体情報を含んだ画像は顔画像である第10側面に係る情報媒体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、改竄が困難であり且つ画質が高い像を表示することが可能となる。
【0023】
本発明の第1側面に係るブランク媒体は、互いに交差する第1及び第2方向に配列した複数の画素を備えている。これら複数の画素の各々は、複数の第1サブ画素と、第2サブ画素とを含んでいる。
【0024】
このブランク媒体では、複数の第1サブ画素の各々は、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第1溝を各々が備えており、これら複数の第1溝の長さ方向は、複数の第1サブ画素間で互いに異なっている。また、このブランク媒体では、第2サブ画素は、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第2溝を備えている。
【0025】
このブランク媒体は、例えば、画像表示体の製造に用いる。具体的には、このブランク媒体は、例えば、以下のようにして用いる。
【0026】
即ち、第1に、第1サブ画素の一部において複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ第2サブ画素の全部において複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減した領域を形成する。こうすると、この領域に、複数の第1サブ画素の各々に基づいた複数の像を表示させることができる。
【0027】
第2に、第1サブ画素の全部において複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ第2サブ画素の一部において複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減した領域を形成する。こうすると、この領域に、第2サブ画素に基づいた像を表示させることができる。
【0028】
従って、このブランク媒体には、第1サブ画素に基づいて表示される複数の像と第2サブ画素に基づいて表示される像との組み合わせによる画像を、オンデマンドで記録することができる。また、このような画像を改竄又は偽造することは、極めて困難である。
【0029】
加えて、このブランク媒体では、第2サブ画素は、複数の第1サブ画素の各々と比較して面積がより大きい。よって、第2サブ画素に基づいて表示される像は、第1サブ画素に基づいて表示される複数の像の各々と比較してより明るい。従って、第2サブ画素に基づいて表示される像の画質は、比較的高い。それゆえ、例えば、第2サブ画素に基づいて顔画像などの主要な画像を表示させると共に、第1サブ画素に基づいて背景画像などの副次的な画像を表示させることにより、画像全体としての画質を向上させることができる。
【0030】
本発明の第2側面に係るブランク媒体では、第1サブ画素は、立体画像の表示に用いられる。即ち、第1サブ画素に基づいて表示される複数の像は、観察者の左右の眼の各々によって視認される視差画像である。他方、このブランク媒体では、第2サブ画素は、平面画像の表示に用いられる。
【0031】
従って、このブランク媒体から得られる画像表示体が表示する像のうち、第2サブ画素に基づいて表示される平面画像は、第1サブ画素に基づいて表示される立体画像の影響により、あたかも立体画像であるかのように知覚される。即ち、このブランク媒体を用いると、これら平面画像及び立体画像の組み合わせにより、擬似的な立体表示を行うことが可能となる。
【0032】
また、第2サブ画素に基づいて表示される平面画像は、第1サブ画素に基づいて表示される立体画像と比較してより明るい。従って、このブランク媒体を用いると、上記の原理により、明るい立体表示を行うことができる。即ち、このブランク媒体は、画質が高い立体表示を可能とする。
【0033】
本発明の第3側面に係るブランク媒体では、複数の第2溝の長さ方向を、複数の第1溝の長さ方向の平均と平行としている。こうすると、第1サブ画素に基づいて表示される像が視認可能となる観察条件において、第2サブ画素に基づいて表示される像の明るさを最大にすることができる。従って、こうすると、ブランク媒体から得られる画像表示体に、高品位な画像を表示させることができる。
【0034】
本発明の第4側面に係るブランク媒体では、複数の第2溝を曲線状としている。こうすると、第2サブ画素から射出される回折光及び/又は散乱光の射出範囲が広くなる。従って、こうすると、ブランク媒体から得られる画像表示体に、より幅広い視域で観察可能な画像を記録することができる。
【0035】
本発明の第5側面に係るブランク媒体は、複数の第2溝の空間周波数が互いに異なった複数の画素を含んでいる。こうすると、特定の照明条件において、複数の画素の各々に含まれる第2のサブ画素から射出される回折光及び/又は散乱光の波長を互いに異ならせることができる。従って、このブランク媒体には、例えば、多色画像を記録することができる。
【0036】
本発明の第6側面に係る画像表示体は、第1乃至第5側面の何れか1つに記載のブランク媒体から得られる。この画像表示体は、第1サブ画素によって第1画像を表示する第1表示領域と、第2サブ画素によって第2画像を表示する第2表示領域とを含んでいる。即ち、この画像表示体は、これら第1及び第2画像の組み合わせに基づいた画像を表示する。
【0037】
第1表示領域は、ブランク媒体が含んでいる第1サブ画素の一部において、複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減すると共に、第2サブ画素の全部において、複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られる。第2表示領域は、第1サブ画素の全部において、複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減すると共に、第2サブ画素の一部において、複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られる。従って、この画像表示体には、オンデマンドで、所望の画像を表示させることができる。
【0038】
上述した通り、この画像表示体の製造に用いるブランク媒体では、第2サブ画素は、複数の第1サブ画素の各々と比較して面積がより大きい。よって、第2表示領域が表示する第2画像は、第1表示領域が表示する第1画像と比較してより明るい。従って、第2画像の画質は、比較的高い。それゆえ、例えば、第2画像として顔画像などの主要な画像を表示させると共に、第1画像として背景画像などの副次的な画像を表示させることにより、画像全体としての画質を向上させることができる。
【0039】
本発明の第7側面に係る画像表示体は、ブランク媒体の複数の第1及び第2溝が設けられた位置にエネルギービームを照射することによって、これら溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られる。この場合、ブランク媒体への画像の記録を優れた精度で行うことが可能となる。従って、この画像表示体は、画質が特に優れている。
【0040】
本発明の第8側面に係る画像表示体では、第2画像は、個人情報を含んだ画像である。従って、この画像表示体は、個人認証媒体の構成要素として使用することができる。また、この第2画像は、第1画像と比較してより明るい。従って、この画像表示体を用いると、個人情報を含んだ画像を高画質で表示することができる。
【0041】
本発明の第9側面に係る情報媒体は、第6乃至第8側面の何れか1つに係る画像表示体を具備している。それゆえ、この情報媒体は、改竄が困難である。また、この情報媒体は、画質が高い画像を表示することができる。
【0042】
本発明の第10側面に係る情報媒体は、上記の画像表示体を含んでおり、この画像表示体は、生体情報を含んだ画像を表示している。生体情報は、個体に特有なものであるので、個人認証に有用である。従って、この情報媒体は、個人認証媒体として有用である。
【0043】
本発明の第11側面に係る情報媒体は、上記の画像表示体を含んでおり、この画像表示体は、顔画像を表示している。顔画像は、個体に特有であり且つ観察者による改竄の有無の判断が容易である。従って、この情報媒体は、個人認証媒体として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す情報媒体の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図3】図2に示すブランク媒体の画像記録領域の一部を拡大して示す平面図。
【図4】図3に示す画像記録領域を構成している画素を拡大して示す平面図。
【図5】図4に示す画素のV−V線に沿った断面図。
【図6】図2に示すブランク媒体を用いて得られる画像表示体の一例を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示す画像表示体の第1表示領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図。
【図8】図6に示す画像表示体の第1表示領域を構成している画素の他の1つを拡大して示す平面図。
【図9】図6に示す画像表示体の第2表示領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図。
【図10】図6に示す画像表示体の第2表示領域を構成している画素の他の1つを拡大して示す平面図。
【図11】図4に示す画素の一変形例を示す平面図。
【図12】図4に示す画素の他の変形例を示す平面図。
【図13】第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の一例を示す平面図。
【図14】第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の他の例を示す平面図。
【図15】第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の他の例を示す平面図。
【図16】図15に示す構造をフーリエ変換して得られる像を示す平面図。
【図17】本発明の他の態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
図1は、本発明の一態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図である。
図1に示す情報媒体100は、個人認証媒体であり、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0047】
この情報媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0048】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0049】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0050】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0051】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0052】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
【0053】
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0054】
画像I1bは、後述するブランク媒体に記録された画像である。
【0055】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0056】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0057】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0058】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像11a及び11bの少なくとも一方とを組み合わせると、情報媒体100の改竄をより困難にすることができる。
【0059】
情報媒体100のうち画像I1bに対応した部分は、以下に説明するブランク媒体を用いて製造する。
図2は、図1に示す情報媒体の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す平面図である。図2に示すブランク媒体200は、画像記録領域R1と、それ以外の領域R2とを含んでいる。領域R2は、省略してもよい。
【0060】
図3は、図2に示すブランク媒体の画像記録領域の一部を拡大して示す平面図である。図3に示すように、ブランク媒体200の画像記録領域R1は、複数の画素PEを含んでいる。これら画素PEは、互いに交差するX及びY方向に配列している。即ち、これら画素PEは、X及びY方向に沿って互いに隣り合っている。図3には、一例として、これら画素PEが、X及びY方向に沿って互いに隣接している場合を描いている。
【0061】
なお、X及びY方向は、ブランク媒体200の主面に対して平行な方向である。X方向とY方向とが為す角度は任意である。ここでは、一例として、X及びY方向は直交していることとする。
【0062】
画素PEは、典型的には、形状及び寸法が互いに等しい。画素PEは小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にそれら画素PEを互いから区別することはできない。例えば、画素PEの各々のX方向についての寸法は、約50μmである。
【0063】
図4は、図3に示す画像記録領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図である。図5は、図4に示す画素のV−V線に沿った断面図である。
【0064】
図5に示すように、ブランク媒体200を構成している画素PEは、凹凸構造形成層223と反射層224と保護層227とを含んでいる。
【0065】
凹凸構造形成層223は、一方の主面に、回折構造としての複数の溝が設けられた透明層である。透明層の材料としては、熱可塑性樹脂などの樹脂を使用することができる。
【0066】
この凹凸構造形成層223は、特定の照明条件のもとで互いに異なる方向に回折光を射出する第1及び第2部分を含んでいる。図4及び図5には、一例として、これら第1及び第2部分の各々が規則的に配列した直線状の複数の溝からなり且つそれら溝の長さ方向が互いに異なっている場合を描いている。このような構成に起因した光学効果については、後で詳しく説明する。
【0067】
凹凸構造形成層223の材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタアクリレートなどの熱硬化性樹脂、これらの混合物、又はラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料を使用することができる。凹凸構造形成層223は、光硬化性を有している樹脂を使用して形成してもよい。
【0068】
反射層224は、凹凸構造形成層223上に形成されている。反射層224は、凹凸構造形成層223の複数の溝が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224は省略することができるが、反射層224を設けると、複数の溝が表示する画像の視認性が向上する。
【0069】
反射層224としては、透明反射層又は不透明な金属反射層を使用することができる。反射層224は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。反射層224が樹脂を含んでいる場合、反射層224は、塗布又は印刷を利用して形成してもよい。
【0070】
反射層224として透明反射層を使用すると、反射層224の背面側に絵柄及び文字等のパターンを配置した場合であっても、これを後述する画像表示体の前面側から視認することができる。他方、反射層224として不透明な金属反射層を使用すると、輝度が高く視認性に優れた画像の表示が可能となる。
【0071】
透明反射層としては、例えば、凹凸構造形成層223とは屈折率が異なる透明材料からなる層を使用することができる。透明材料からなる透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。この透明材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0072】
或いは、透明反射層として、厚さが20nm未満の金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。
【0073】
不透明な金属反射層としては、より厚いこと以外は透明反射層について上述したのと同様の金属層を使用することができる。不透明な金属反射層は、連続膜であってもよい。或いは、不透明な金属反射層は、パターニングされていてもよい。例えば、不透明な金属反射層の少なくとも一部をパターニングして、後述する画像表示体に、網点、万線、他の図形、又はそれらの組み合わせを表示させてもよい。このようなパターンは、例えば、情報媒体100の真偽判定に利用することができる。
【0074】
透明反射層又は不透明な反射層として、透明樹脂とこの中で分散した粒子とを含んだ層を使用してもよい。この粒子としては、例えば、単体金属及び合金などの金属材料からなる粒子、又は、透明金属酸化物及び透明樹脂などの透明誘電体からなる粒子を使用することができる。透明樹脂中には、粒子を分散させる代わりに、薄片を分散させてもよい。
【0075】
保護層227は、凹凸構造形成層223を間に挟んで反射層224と向き合っている。保護層227は、光透過性を有しており、典型的には透明である。保護層227は、例えば樹脂からなる。この樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂を使用することができる。保護層227は、省略することができる。
【0076】
図4に示すように、画素PEは、2つの第1サブ画素SPE1と、1つの第2サブ画素SPE2とを含んでいる。
2つの第1サブ画素SPE1は、X方向に隣り合っている。図4には、一例として、これら2つの第1サブ画素SPE1が、X方向に互いに隣接している場合を描いている。X方向に隣接した画素PE間の境界は、凹凸構造形成層223について上述した第1及び第2部分の境界に対応している。
【0077】
第1サブ画素SPE1の各々には、規則的に配列した直線状の複数の第1溝G1が設けられている。これら複数の第1溝G1の空間周波数は、照明光を照射した際に、第1サブ画素SPE1が所望の波長を有した回折光を射出するように設定されている。なお、複数の第1溝G1の空間周波数及び深さ又は高さは、典型的には、2つの第1サブ画素SPE1間で互いに等しくする。
【0078】
2つの第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1の長さ方向が互いに異なっている。それゆえ、拡散光照明などの特定の照明条件下において、これら第1サブ画素SPE1が最大強度の回折光を射出する方向は、互いに異なっている。従って、例えば、各画素PE内で左側に位置した第1サブ画素SPE1から高い強度の回折光を観察者の右眼に向けて射出させると共に、各画素PE内で右側に位置した第2サブ画素SPE2から高い強度の回折光を観察者の左眼に向けて射出させることができる。即ち、これら第1サブ画素SPE1は、例えば、立体画像の表示に用いることができる。
【0079】
第2サブ画素SPE2は、第1サブ画素SPE1の各々とY方向に隣り合っている。図4には、一例として、第2サブ画素SPE2が、第1サブ画素SPE1の各々とY方向に隣接している場合を描いている。
【0080】
第2サブ画素SPE2には、規則的に配列した直線状の複数の第2溝G2が設けられている。複数の第2溝G2は、上記の複数の第1溝G1と長さ方向が互いに異なっている。これら複数の第2溝G2の空間周波数は、照明光を照射した際に、第2サブ画素SPE2が所望の波長を有した回折光を射出するように設定されている。第2サブ画素SPE2は、典型的には、平面画像の表示に用いられる。
【0081】
第2サブ画素SPE2は、2つの第1サブ画素SPE1の各々と比較して、面積がより大きい。従って、後述するように、第2サブ画素SPE2に基づいて表示される像は、第1サブ画素SPE1に基づいて表示される像と比較してより明るい。
【0082】
図2乃至図5を参照しながらブランク媒体200を使用すると、例えば、以下に説明する画像表示体を製造することができる。
図6は、図2に示すブランク媒体を用いて得られる画像表示体の一例を概略的に示す平面図である。この画像表示体300は、図1に示す情報媒体100における画像I1bの表示に用いられる。
【0083】
図6に示す画像表示体300は、背景絵柄領域としての第1表示領域RIと、主要絵柄領域としての第2表示領域RIIとを含んでいる。図6に示す画像表示体300では、第2表示領域RIIは、顔画像を表示している。また、第1表示領域RIは、第2表示領域RIIが表示している顔画像の背景画像を表示している。
【0084】
このような画像表示体300は、例えば、以下のようにして製造する。
まず、単一の撮像装置を用いて人物の顔を撮影して、顔画像を得る。或いは、印画から顔画像を読み取る。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。
【0085】
次に、ブランク媒体200の一部に対し、レーザビームを照射することにより、表示領域RI及びRIIを形成する。レーザビームの照射によるこれら表示領域RI及びRIIの形成は、具体的には、以下のようにして行う。
【0086】
第1に、ブランク媒体200のうち第1表示領域RIを形成すべき第1部分に含まれる画素PEに対し、レーザビームを照射する。
【0087】
より詳細には、まず、ブランク媒体200の第1部分に含まれる複数の第2サブ画素SPE2の全部に対し、レーザビームを照射する。これにより、これら第2サブ画素SPE2の全部について、複数の第2溝G2を変形又は破壊する。即ち、これら第2サブ画素SPE2の全部について、第2サブ画素SPE2が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する。
【0088】
加えて、ブランク媒体200の第1部分に含まれる複数の第1サブ画素SPE1の一部に対し、レーザビームを照射する。これにより、これら第1サブ画素SPE1の一部について、複数の第1溝G1を変形又は破壊する。即ち、これら第1サブ画素SPE1の一部について、第1サブ画素SPE1が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する。
【0089】
このようにして、第1部分に、第1表示領域RIに表示させるべき第1画像を記録する。この第1画像は、例えば、顔画像の背景を構成する背景画像である。第1画像については、後で詳しく説明する。
【0090】
第2に、ブランク媒体200のうち第2表示領域RIIを形成すべき第2部分に含まれる画素PEに対し、レーザビームを照射する。
より詳細には、まず、ブランク媒体200の第2部分に含まれる複数の第1サブ画素SPE1の全部に対し、レーザビームを照射する。これにより、これら第1サブ画素SPE1の全部について、複数の第1溝G1を変形又は破壊する。即ち、これら第1サブ画素SPE1の全部について、第1サブ画素SPE1が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する。
【0091】
加えて、ブランク媒体200の第2部分に含まれる複数の第2サブ画素SPE2の一部に対し、レーザビームを照射する。これにより、これら第2サブ画素SPE2の一部について、複数の第2溝G2を変形又は破壊する。即ち、これら第2サブ画素SPE2の一部について、第2サブ画素SPE2が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する。
【0092】
このようにして、第2部分に、第2表示領域RIIに表示させるべき第2画像を記録する。この第2画像は、例えば、顔画像である。第2画像については、後で詳しく説明する。
以上のようにして、表示領域RI及びRIIを備えた画像表示体300を得る。この画像表示体300は、例えば、表紙2を構成している基材に、接着層を介して貼り付ける。或いは、ブランク媒体200を表紙2を構成している基材に接着層を介して貼り付けておき、これに画像を記録することにより、画像表示体300を形成してもよい。
【0093】
画像表示体300の第1表示領域RIは、上述した通り、第1画像を表示する。
図7は、図6に示す画像表示体の第1表示領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図である。図8は、図6に示す画像表示体の第1表示領域を構成している画素の他の1つを拡大して示す平面図である。
【0094】
図7及び図8に示す画素PEでは、第2サブ画素SPE2に設けられた複数の第2溝G2の全体が変形又は破壊されている。他方、図7に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1は、変形又は破壊されていない。図8に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1の一部のみが変形又は破壊されている。
【0095】
従って、第1表示領域RIは、第1サブ画素SPE1に基づいた画像を表示する。即ち、第1表示領域RIでは、これら第1サブ画素SPE1が上記の第1画像を表示する。
【0096】
上述した通り、2つの第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1の長さ方向が互いに異なっている。それゆえ、拡散光照明などの特定の照明条件下において、これら第1サブ画素SPE1が最大強度の回折光を射出する方向は、互いに異なっている。
【0097】
従って、例えば、各画素PE内で左側に位置した第1サブ画素SPE1から高い強度の回折光を観察者の右眼に向けて射出させると共に、各画素PE内で右側に位置した第2サブ画素SPE2から高い強度の回折光を観察者の左眼に向けて射出させることができる。この場合、第1表示領域RIに含まれる第1サブ画素SPE1のうち複数の溝G1を変形又は破壊する部分を適宜定めることにより、これら第1サブ画素SPE1の一部からなるサブ画素群と他の一部からなるサブ画素群とに、視差画像を表示させることができる。即ち、この場合、これら第1サブ画素SPE1は、第1画像として立体画像を表示することができる。
【0098】
画像表示体300の第2表示領域RIIは、上述した通り、第2画像を表示する。
図9は、図6に示す画像表示体の第2表示領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図である。図10は、図6に示す画像表示体の第2表示領域を構成している画素の他の1つを拡大して示す平面図である。
【0099】
図9及び図10に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1の全体が変形又は破壊されている。他方、図9に示す画素PEでは、第2サブ画素SPE2に設けられた複数の第2溝G2は、変形又は破壊されていない。図10に示す画素PEでは、第2サブ画素SPE2に設けられた複数の第2溝G2の一部のみが変形又は破壊されている。
【0100】
従って、第2表示領域RIIは、第2サブ画素SPE2に基づいた画像を表示する。即ち、第2表示領域RIIでは、これら第2サブ画素SPE2が上記の第2画像を表示する。この第2画像は、典型的には、平面画像である。
【0101】
画像表示体300は、第1画像と第2画像との組み合わせに基づいた画像を表示する。
【0102】
上述した通り、第2サブ画素SPE2は、複数の第1サブ画素SPE1の各々と比較して面積がより大きい。よって、第2画像は、第1画像と比較してより明るい。即ち、第2画像の画質は、比較的高い。それゆえ、例えば、第2画像として顔画像などの主要な画像を表示させると共に、第1画像として背景画像などの副次的な画像を表示させることにより、画像全体としての画質を向上させることができる。
【0103】
また、第1画像が立体画像であり且つ第2画像が平面画像である場合、第2画像は、あたかも立体画像であるかのように観察される。従って、例えば、第2画像として顔画像などの主要な画像を表示させると共に、第1画像として背景画像などの副次的な画像を表示させると、観察者に、顔画像などの主要な画像を擬似的な立体画像として観察させることができる。
【0104】
このような擬似的な立体画像は、複写等によっては再現できない。また、このような擬似的な立体画像を表示可能とする画像表示体300の製造には、高度な技術が必要とされる。即ち、この画像表示体300は、改竄することが困難である。
【0105】
また、この画像表示体300では、平面画像に基づいて、擬似的な立体画像を表示可能としている。この平面画像は、複数枚の視差画像を用いて形成する必要がない。また、平面画像の表示に必要な画素の数は、一般的に、立体画像の表示に必要な画素の数と比較してより少ない。それゆえ、この画像表示体300が表示する擬似的な立体画像は、通常の立体画像と比較してより明るい。即ち、この画像表示体300は、明るい立体画像の表示を可能とする。
【0106】
なお、ブランク媒体200において、複数の第2溝G2の長さ方向は、典型的には、複数の第1溝G1の長さ方向の平均と平行にする。こうすると、第1サブ画素SPE1に基づいて表示される複数の像の明るさを一致させると共に、第2サブ画素SPE2に基づいて表示される像の明るさを最大にすることができる。即ち、こうすると、第1及び第2画像の画質を向上させることができる。従って、こうすると、画像表示体300に、高品位な画像を表示させることができる。
【0107】
また、ブランク媒体200が備えた各画素PEにおいて、第1サブ画素SPE1の各々の面積と第2サブ画素SPE2の面積との比を変化させると、第1画像と第2画像との明るさの比を変化させることができる。即ち、こうすると、第1及び第2画像のコントラストを変化させることができる。
【0108】
上述した通り、ブランク媒体200が備えた複数の画素PEは、互いに交差するX及びY方向に配列している。これら画素PEが図4及び図5を参照しながら説明した構成を有している場合、ブランク媒体200の画像記録領域R1は、複数の第1サブ画素SPE1がX方向に沿って配列した第1の列と、複数の第2サブ画素SPE2がX方向に沿って配列した第2の列とを備えている。そして、これら第1及び第2の列は、Y方向に交互に配列したストライプパターンを形成している。
【0109】
このように、画像記録領域R1が交互に配列した第1及び第2の列を備えている場合、第1の列のY方向に沿った幅と第2の列のY方向に沿った幅との双方は、典型的には、観察者の目の分解能と比較してより小さくする。例えば、視力が1.0である人間が50cm離れた位置から観察する場合には、これら幅の双方は、典型的には148μm以下とする。このような構成を採用すると、第1及び第2の列を、互いから肉眼で区別することが不可能となる。それゆえ、こうすると、画像表示体300に、高品位な画像を表示させることが可能となる。
【0110】
図4及び図5に示す画素PEには、種々の変形が可能である。
図11は、図4に示す画素の一変形例を示す平面図である。図11に示す画素PEは、画素PEに含まれる第1サブ画素SPE1の数及びその構造が異なっていることを除いては、図4に示す画素と同様の構成を有している。
【0111】
図11に示す画素PEは、3つ以上の第1サブ画素SPE1を含んでいる。具体的には、図11に示す画素PEは、6つの第1サブ画素SPE1を含んでいる。これら第1サブ画素SPE1は、X方向に沿って互いに隣り合っている。図11には、一例として、これら第1のサブ画素SPE1が、X方向に沿って互いに隣接している場合を描いている。
【0112】
図11に示す画素PEでは、これら第1サブ画素SPE1の各々に設けられた複数の第1溝G1の長さ方向は、互いに異なっている。図11には、一例として、これら第1サブ画素SPE1が、複数の第1溝G1の長さ方向とX方向とが為す角度がX方向に沿って単調に減少するようにして配列している場合を描いている。
【0113】
画素PEが複数の第1溝G1の長さ方向が互いに異なった3つ以上の第1サブ画素SPE1を含んでいる場合、画素PEが2つの第1サブ画素SPE1からなる場合と比較して、第1画像が視認可能となる観察範囲がより広くなる。
【0114】
図12は、図4に示す画素の他の変形例を示す平面図である。図12に示す画素PEは、サブ画素SPE1及びSPE2の配置が異なっていることを除いては、図4に示す画素と同様の構成を有している。
【0115】
図12に示す画素PEでは、2つの第1サブ画素SPE1の各々は、画素PEの対角位置に配置されている。そして、第2サブ画素SPE2は2つに分割されて、画素PEのうち第1サブ画素SPE1が設けられていない部分を占めている。なお、2つに分割された第2サブ画素SPE2の面積の和は、2つの第1サブ画素SPE1の各々の面積と比較してより大きい。
【0116】
上述した通り、画素PEは小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にそれら画素PEを互いから区別することはできない。それゆえ、画素PEに含まれるサブ画素SPE1及びSPE2の各々も小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にこれらを互いから区別することはできない。従って、図12に示す画素PEは、典型的には、図4に示す画素PEと同様の視覚効果を呈する。即ち、各画素PE内におけるサブ画素SPE1及びSPE2の配置は、任意である。
【0117】
なお、第2サブ画素SPE2は、複数の第2溝G2の長さ方向が互いに等しく且つ複数の第2溝G2の空間周波数、深さ又は高さ、及び断面形状の少なくとも1つが互いに異なった複数の領域を含んでいてもよい。この場合、第2サブ画素SPE2の面積は、これら複数の領域の面積の総和に等しい。
【0118】
上では、サブ画素SPE1及びSPE2の各々が規則的に配列した直線状の複数の溝を備えている場合について説明したが、サブ画素SPE1及びSPE2の構成は、これには限られない。
【0119】
図13は、第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の一例を示す平面図である。図13には、曲線状の溝を概略的に描いている。直線状の溝の代わりに曲線状の溝を用いると、これら溝に起因した視覚効果を、より広い視域で観察することが可能となる。
【0120】
例えば、第2サブ画素SPE2に曲線状の複数の第2溝G2を設けると、第2画像が視認可能となる観察角度をより広くすることが可能となる。即ち、こうすると、第1画像と第2画像とが同時に視認可能となる観察範囲をより広くすることが可能となる。
【0121】
なお、各サブ画素における曲線状の溝の「長さ方向」は、以下のようにして定める。即ち、まず、各サブ画素のうち曲線状の溝が設けられた部分の重心を考える。そして、この重心に最も近い位置における溝の接線の方向を、上記の「長さ方向」とする。
【0122】
また、図13に示す構造を第1サブ画素SPE1に適用する場合、例えば、図13に示す構造をY方向に平行な1つ以上の直線によって分割してなる2つ以上の構造の各々を、各第1サブ画素SPE1の構成として採用する。
【0123】
図14は、第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の他の例を示す平面図である。図14には、不規則的に配列した溝を概略的に描いている。これら溝は、溝間の間隔が不規則であるが、X方向に沿った構造を有している。それゆえ、これら溝は、照明光を照射すると、X方向に垂直な方向に、指向性を有した散乱光を射出することができる。
【0124】
図15は、第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の他の例を示す平面図である。図16は、図15に示す構造をフーリエ変換して得られる像を示す平面図である。図15及び図16から分かるように、図15に示す複数の溝は、照明光を照射すると、X方向に垂直な方向に、指向性を有した散乱光を射出することができる。
【0125】
このように、回折光を射出可能な溝の代わりに指向性を有した散乱光を射出可能な溝を用いると、より広い視域において、色変化がないか又は色変化が少ない像を表示させることが可能となる。また、こうすると、照明光の照射方向等の制約が少なくなり、画像の観察がより容易となる。
【0126】
なお、不規則的に配列した溝の「長さ方向」とは、均一な拡散照明光のもとで、それら溝が設けられているサブ画素から射出される散乱光のうち最も強度が大きいものの射出方向に垂直な平面とXY平面との交線の方向であるとする。
【0127】
ブランク媒体200では、複数の画素PEの各々は、典型的には、互いに同一の構成を有している。しかしながら、複数の画素PEの各々は、互いに異なった構成を有していてもよい。例えば、1つの第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1の長さ方向と、他の1つの第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1の長さ方向とが為す角度を、複数の画素PE間で互いに異ならせてもよい。
【0128】
或いは、複数の画素PEの各々で、複数の第2溝G2の空間周波数を互いに異ならせてもよい。例えば、ブランク媒体200は、各々が赤、緑及び青色光に対応した空間周波数で配列した複数の第2溝G2を備えた複数の画素PEを含んでいてもよい。複数の画素PEの各々で複数の第2溝G2の空間周波数を互いに異ならせると、第2サブ画素G2に基づいて、多色画像を表示させることが可能となる。即ち、第2画像として、多色画像を表示することが可能となる。
【0129】
なお、上では、複数の溝が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する工程を、レーザビームを用いて複数の溝を変形又は破壊することにより行う方法について説明したが、この工程は、他の方法によって行ってもよい。例えば、レーザビームの照射により、反射層224又はその前面側の層で炭化を生じさせることにより、上記の回折光の強度をゼロとするか又は低減してもよい。即ち、複数の溝を変形又は破壊することなしに、上記の回折光の強度をゼロとするか又は低減してもよい。
【0130】
また、この工程は、レーザビーム以外のエネルギービームを用いて行ってもよい。例えば、この工程は、電子ビームなどの荷電粒子ビームを照射することによって行ってもよい。電子ビーム描画装置によると、レーザと比較して、より小さなビーム径を達成できる。従って、例えばサブ画素の寸法が小さい場合、電子ビーム照射を利用すると、レーザビームを利用した場合と比較して、より高い画質を達成できる。
【0131】
複数の溝が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する工程は、他の方法によって行ってもよい。例えば、この工程は、サーマルヘッドなどの加熱及び/又は加圧手段を用いて溝を変形又は破壊することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、溝上に、凹凸構造形成層223の材料を溶解可能な液を供給することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、溝上に、凹凸構造形成層223の材料と屈折率が同一であるか屈折率の差が小さい材料を供給することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、溝上に、黒色インキなどの光吸収剤を供給することにより行ってもよい。
【0132】
なお、ブランク媒体200が備えた複数の溝が指向性を有した散乱光を射出可能な構造を有している場合、画像表示体300は、複数の溝が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する代わりに、複数の溝が射出する散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより製造する。複数の溝が射出する散乱光の強度をゼロとするか又は低減する工程は、先に複数の溝が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する工程について説明したのと同様にして行うことができる。
【0133】
以上、パスポートとしての情報媒体100を例示したが、情報媒体100について上述した技術は、他の情報媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証及びIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0134】
図17は、本発明の他の態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図である。図16に示す情報媒体400は、IDカードであり、上で説明した画像表示体300に基づいた画像I1bを含んでいる。よって、この情報媒体400は、改竄が困難である。
【0135】
画像表示体300を貼り付ける基材の材質は、天然の紙及び合成紙などの紙でなくてもよい。例えば、画像表示体300を貼り付ける基材の材質は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(熱可塑性PET)、ポリ塩化ビニル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル樹脂及びポリスチレン樹脂などの合成樹脂、ガラス、陶器及び磁器などのセラミックス、又は、単体金属及び合金などの金属材料であってもよい。
【0136】
上では、情報媒体としてパスポート及びIDカードなどの個人認証媒体を例示したが、情報媒体100及び400について上述した技術は、個人認証媒体以外の情報媒体に適用することも可能である。即ち、上述した技術は、個人認証以外の目的で利用してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、12…印刷パターン、100…情報媒体、200…ブランク媒体、223…凹凸構造形成層、224…反射層、227…保護層、300…画像表示体、400…情報媒体、G1…溝、G2…溝、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3…画像、PE…画素、R1…領域、R2…領域、RI…第1表示領域、RII…第2表示領域、SPE1…第1サブ画素、SPE2…第2サブ画素。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば個人認証に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
パスポート及びID(identification)カードなどの個人認証媒体の多くは、目視による個人認証を可能とするために、顔画像を使用している。
【0003】
例えば、パスポートでは、従来、顔画像を焼き付けた印画紙を冊子体に貼り付けていた。しかしながら、そのようなパスポートには、写真印画の貼り替えによる改竄のおそれがある。
【0004】
このような理由で、近年では、顔画像の情報をデジタル化し、これを冊子体上に再現する傾向にある。この画像再現方法としては、例えば、転写リボンを用いた感熱転写記録法が検討されている。
【0005】
しかしながら、昨今、昇華性染料又は着色した熱可塑性樹脂を使用する感熱転写記録方式のプリンタは広く普及している。この状況を考慮すると、パスポートから顔画像を取り除き、そこに別の顔画像を記録することは、必ずしも困難ではない。
【0006】
特許文献1には、上述した方法で顔画像を記録し、その上に蛍光インキを用いて顔画像を記録することが記載されている。また、特許文献2には、無色又は淡色の蛍光染料と有色の顔料とを含有したインキを用いて顔画像を記録することが記載されている。更に、特許文献3には、通常の顔画像と、パール顔料を用いて形成した顔画像とを並べて配置することが記載されている。
【0007】
これら技術をパスポートに適用すると、その改竄がより困難になる。しかしながら、蛍光材料を用いて記録した顔画像は、紫外線ランプなどの特殊な光源を使用しない限り観察することはできない。また、パール顔料を用いて形成した顔画像は、肉眼で視認することはできるものの、パール顔料は粒径が大きいため、これを用いて高精細な画像を形成することは困難である。
【0008】
ところで、個人認証媒体に記録された顔画像が立体的な像である場合、顔画像が平面像である場合と比較して、その改竄がより困難となる。しかしながら、顔画像を立体像として表示する場合、視差を有する複数枚の2次元画像(以下、視差画像ともいう)が必要である。そして、複数枚の視差画像を用いて立体像を表示する場合、精細度及び/又は明るさの低下により、画質が悪くなることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−141863号公報
【特許文献2】特開2002−226740号公報
【特許文献3】特開2003−170685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、改竄が困難であり且つ画質が高い像を表示可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1側面は、互いに交差する第1及び第2方向に配列した複数の画素を備え、前記複数の画素の各々は、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第1溝を各々が備え且つ前記複数の第1溝の長さ方向が互いに異なっている複数の第1サブ画素と、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能であり且つ前記複数の第1溝と長さ方向が互いに異なった複数の第2溝を備え、前記複数の第1サブ画素の各々と比較して面積がより大きい第2サブ画素とを含んでいるブランク媒体である。
【0012】
本発明の第2側面は、前記複数の第1サブ画素は立体画像の表示に用いられ且つ前記第2サブ画素は平面画像の表示に用いられる第1側面に係るブランク媒体である。
【0013】
本発明の第3側面は、前記複数の第2溝の長さ方向は、前記複数の第1溝の長さ方向の平均と平行である第1又は第2側面に係るブランク媒体である。
【0014】
本発明の第4側面は、前記複数の第2溝は曲線状である第1乃至第3側面の何れか1つに係るブランク媒体である。
【0015】
本発明の第5側面は、前記複数の第2溝の空間周波数が互いに異なった複数の前記画素を含んでいる第1乃至第4側面の何れか1つに係るブランク媒体である。
【0016】
本発明の第6側面は、第1乃至第5側面の何れか1つに記載のブランク媒体から得られる画像表示体であって、前記ブランク媒体が含んでいる前記第1サブ画素の一部において前記複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ前記第2サブ画素の全部において前記複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られ、前記第1サブ画素によって第1画像を表示する第1表示領域と、前記第1サブ画素の全部において前記複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ前記第2サブ画素の一部において前記複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られ、前記第2サブ画素によって第2画像を表示する第2表示領域とを含んだ画像表示体である。
【0017】
本発明の第7側面は、前記回折効率及び/又は散乱効率をゼロとするか又は低減することは、前記ブランク媒体の前記複数の第1及び第2溝が設けられた位置にエネルギービームを照射することにより行われた第6側面に係る画像表示体である。
【0018】
本発明の第8側面は、前記第2画像は個人情報を含んだ画像である第6又は第7側面に係る画像表示体である。
【0019】
本発明の第9側面は、第6乃至第8側面の何れか1つに係る画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備した情報媒体である。
【0020】
本発明の第10側面は、前記画像表示体は生体情報を含んだ画像を表示している第9側面に係る情報媒体である。
【0021】
本発明の第11側面は、前記生体情報を含んだ画像は顔画像である第10側面に係る情報媒体である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、改竄が困難であり且つ画質が高い像を表示することが可能となる。
【0023】
本発明の第1側面に係るブランク媒体は、互いに交差する第1及び第2方向に配列した複数の画素を備えている。これら複数の画素の各々は、複数の第1サブ画素と、第2サブ画素とを含んでいる。
【0024】
このブランク媒体では、複数の第1サブ画素の各々は、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第1溝を各々が備えており、これら複数の第1溝の長さ方向は、複数の第1サブ画素間で互いに異なっている。また、このブランク媒体では、第2サブ画素は、照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第2溝を備えている。
【0025】
このブランク媒体は、例えば、画像表示体の製造に用いる。具体的には、このブランク媒体は、例えば、以下のようにして用いる。
【0026】
即ち、第1に、第1サブ画素の一部において複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ第2サブ画素の全部において複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減した領域を形成する。こうすると、この領域に、複数の第1サブ画素の各々に基づいた複数の像を表示させることができる。
【0027】
第2に、第1サブ画素の全部において複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ第2サブ画素の一部において複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減した領域を形成する。こうすると、この領域に、第2サブ画素に基づいた像を表示させることができる。
【0028】
従って、このブランク媒体には、第1サブ画素に基づいて表示される複数の像と第2サブ画素に基づいて表示される像との組み合わせによる画像を、オンデマンドで記録することができる。また、このような画像を改竄又は偽造することは、極めて困難である。
【0029】
加えて、このブランク媒体では、第2サブ画素は、複数の第1サブ画素の各々と比較して面積がより大きい。よって、第2サブ画素に基づいて表示される像は、第1サブ画素に基づいて表示される複数の像の各々と比較してより明るい。従って、第2サブ画素に基づいて表示される像の画質は、比較的高い。それゆえ、例えば、第2サブ画素に基づいて顔画像などの主要な画像を表示させると共に、第1サブ画素に基づいて背景画像などの副次的な画像を表示させることにより、画像全体としての画質を向上させることができる。
【0030】
本発明の第2側面に係るブランク媒体では、第1サブ画素は、立体画像の表示に用いられる。即ち、第1サブ画素に基づいて表示される複数の像は、観察者の左右の眼の各々によって視認される視差画像である。他方、このブランク媒体では、第2サブ画素は、平面画像の表示に用いられる。
【0031】
従って、このブランク媒体から得られる画像表示体が表示する像のうち、第2サブ画素に基づいて表示される平面画像は、第1サブ画素に基づいて表示される立体画像の影響により、あたかも立体画像であるかのように知覚される。即ち、このブランク媒体を用いると、これら平面画像及び立体画像の組み合わせにより、擬似的な立体表示を行うことが可能となる。
【0032】
また、第2サブ画素に基づいて表示される平面画像は、第1サブ画素に基づいて表示される立体画像と比較してより明るい。従って、このブランク媒体を用いると、上記の原理により、明るい立体表示を行うことができる。即ち、このブランク媒体は、画質が高い立体表示を可能とする。
【0033】
本発明の第3側面に係るブランク媒体では、複数の第2溝の長さ方向を、複数の第1溝の長さ方向の平均と平行としている。こうすると、第1サブ画素に基づいて表示される像が視認可能となる観察条件において、第2サブ画素に基づいて表示される像の明るさを最大にすることができる。従って、こうすると、ブランク媒体から得られる画像表示体に、高品位な画像を表示させることができる。
【0034】
本発明の第4側面に係るブランク媒体では、複数の第2溝を曲線状としている。こうすると、第2サブ画素から射出される回折光及び/又は散乱光の射出範囲が広くなる。従って、こうすると、ブランク媒体から得られる画像表示体に、より幅広い視域で観察可能な画像を記録することができる。
【0035】
本発明の第5側面に係るブランク媒体は、複数の第2溝の空間周波数が互いに異なった複数の画素を含んでいる。こうすると、特定の照明条件において、複数の画素の各々に含まれる第2のサブ画素から射出される回折光及び/又は散乱光の波長を互いに異ならせることができる。従って、このブランク媒体には、例えば、多色画像を記録することができる。
【0036】
本発明の第6側面に係る画像表示体は、第1乃至第5側面の何れか1つに記載のブランク媒体から得られる。この画像表示体は、第1サブ画素によって第1画像を表示する第1表示領域と、第2サブ画素によって第2画像を表示する第2表示領域とを含んでいる。即ち、この画像表示体は、これら第1及び第2画像の組み合わせに基づいた画像を表示する。
【0037】
第1表示領域は、ブランク媒体が含んでいる第1サブ画素の一部において、複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減すると共に、第2サブ画素の全部において、複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られる。第2表示領域は、第1サブ画素の全部において、複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減すると共に、第2サブ画素の一部において、複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られる。従って、この画像表示体には、オンデマンドで、所望の画像を表示させることができる。
【0038】
上述した通り、この画像表示体の製造に用いるブランク媒体では、第2サブ画素は、複数の第1サブ画素の各々と比較して面積がより大きい。よって、第2表示領域が表示する第2画像は、第1表示領域が表示する第1画像と比較してより明るい。従って、第2画像の画質は、比較的高い。それゆえ、例えば、第2画像として顔画像などの主要な画像を表示させると共に、第1画像として背景画像などの副次的な画像を表示させることにより、画像全体としての画質を向上させることができる。
【0039】
本発明の第7側面に係る画像表示体は、ブランク媒体の複数の第1及び第2溝が設けられた位置にエネルギービームを照射することによって、これら溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られる。この場合、ブランク媒体への画像の記録を優れた精度で行うことが可能となる。従って、この画像表示体は、画質が特に優れている。
【0040】
本発明の第8側面に係る画像表示体では、第2画像は、個人情報を含んだ画像である。従って、この画像表示体は、個人認証媒体の構成要素として使用することができる。また、この第2画像は、第1画像と比較してより明るい。従って、この画像表示体を用いると、個人情報を含んだ画像を高画質で表示することができる。
【0041】
本発明の第9側面に係る情報媒体は、第6乃至第8側面の何れか1つに係る画像表示体を具備している。それゆえ、この情報媒体は、改竄が困難である。また、この情報媒体は、画質が高い画像を表示することができる。
【0042】
本発明の第10側面に係る情報媒体は、上記の画像表示体を含んでおり、この画像表示体は、生体情報を含んだ画像を表示している。生体情報は、個体に特有なものであるので、個人認証に有用である。従って、この情報媒体は、個人認証媒体として有用である。
【0043】
本発明の第11側面に係る情報媒体は、上記の画像表示体を含んでおり、この画像表示体は、顔画像を表示している。顔画像は、個体に特有であり且つ観察者による改竄の有無の判断が容易である。従って、この情報媒体は、個人認証媒体として特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す情報媒体の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す平面図。
【図3】図2に示すブランク媒体の画像記録領域の一部を拡大して示す平面図。
【図4】図3に示す画像記録領域を構成している画素を拡大して示す平面図。
【図5】図4に示す画素のV−V線に沿った断面図。
【図6】図2に示すブランク媒体を用いて得られる画像表示体の一例を概略的に示す平面図。
【図7】図6に示す画像表示体の第1表示領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図。
【図8】図6に示す画像表示体の第1表示領域を構成している画素の他の1つを拡大して示す平面図。
【図9】図6に示す画像表示体の第2表示領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図。
【図10】図6に示す画像表示体の第2表示領域を構成している画素の他の1つを拡大して示す平面図。
【図11】図4に示す画素の一変形例を示す平面図。
【図12】図4に示す画素の他の変形例を示す平面図。
【図13】第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の一例を示す平面図。
【図14】第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の他の例を示す平面図。
【図15】第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の他の例を示す平面図。
【図16】図15に示す構造をフーリエ変換して得られる像を示す平面図。
【図17】本発明の他の態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0046】
図1は、本発明の一態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図である。
図1に示す情報媒体100は、個人認証媒体であり、パスポートなどの冊子体である。図1には、開いた状態の冊子体を描いている。
【0047】
この情報媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には、文字列及び地紋などの印刷パターン12が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11を又は複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11は、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
【0048】
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0049】
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば、生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
【0050】
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は、光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は、顔、指紋、静脈及び虹彩の少なくとも1つの画像又はパターンである。
【0051】
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は、氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属及び身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
【0052】
図1において、表紙2は、画像I1a、I1b、I2及びI3を表示している。
画像I1a、I2及びI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2及びI3は、白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2及びI3の1つ以上を省略してもよい。
【0053】
画像I1a、I2及びI3は、例えば、染料及び顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2及びI3の形成には、サーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、又はそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。或いは、画像I1a、I2及びI3は、感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。或いは、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2及びI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
【0054】
画像I1bは、後述するブランク媒体に記録された画像である。
【0055】
画像I1a及びI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aが含んでいる顔画像と、画像I1bが含んでいる顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1a及びI1bの各々は、顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
【0056】
画像11bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像11bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
【0057】
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば、文字、記号、符号及び標章の1つ以上を構成している。
【0058】
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像11a及び11bの少なくとも一方とを組み合わせると、情報媒体100の改竄をより困難にすることができる。
【0059】
情報媒体100のうち画像I1bに対応した部分は、以下に説明するブランク媒体を用いて製造する。
図2は、図1に示す情報媒体の製造に使用可能なブランク媒体の一例を概略的に示す平面図である。図2に示すブランク媒体200は、画像記録領域R1と、それ以外の領域R2とを含んでいる。領域R2は、省略してもよい。
【0060】
図3は、図2に示すブランク媒体の画像記録領域の一部を拡大して示す平面図である。図3に示すように、ブランク媒体200の画像記録領域R1は、複数の画素PEを含んでいる。これら画素PEは、互いに交差するX及びY方向に配列している。即ち、これら画素PEは、X及びY方向に沿って互いに隣り合っている。図3には、一例として、これら画素PEが、X及びY方向に沿って互いに隣接している場合を描いている。
【0061】
なお、X及びY方向は、ブランク媒体200の主面に対して平行な方向である。X方向とY方向とが為す角度は任意である。ここでは、一例として、X及びY方向は直交していることとする。
【0062】
画素PEは、典型的には、形状及び寸法が互いに等しい。画素PEは小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にそれら画素PEを互いから区別することはできない。例えば、画素PEの各々のX方向についての寸法は、約50μmである。
【0063】
図4は、図3に示す画像記録領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図である。図5は、図4に示す画素のV−V線に沿った断面図である。
【0064】
図5に示すように、ブランク媒体200を構成している画素PEは、凹凸構造形成層223と反射層224と保護層227とを含んでいる。
【0065】
凹凸構造形成層223は、一方の主面に、回折構造としての複数の溝が設けられた透明層である。透明層の材料としては、熱可塑性樹脂などの樹脂を使用することができる。
【0066】
この凹凸構造形成層223は、特定の照明条件のもとで互いに異なる方向に回折光を射出する第1及び第2部分を含んでいる。図4及び図5には、一例として、これら第1及び第2部分の各々が規則的に配列した直線状の複数の溝からなり且つそれら溝の長さ方向が互いに異なっている場合を描いている。このような構成に起因した光学効果については、後で詳しく説明する。
【0067】
凹凸構造形成層223の材料としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂及びポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリオールアクリレート、ポリオールメタクリレート、メラミンアクリレート、メラミンメタクリレート、トリアジンアクリレート及びトリアジンメタアクリレートなどの熱硬化性樹脂、これらの混合物、又はラジカル重合性不飽和基を有する熱成形性材料を使用することができる。凹凸構造形成層223は、光硬化性を有している樹脂を使用して形成してもよい。
【0068】
反射層224は、凹凸構造形成層223上に形成されている。反射層224は、凹凸構造形成層223の複数の溝が設けられた面の少なくとも一部を被覆している。反射層224は省略することができるが、反射層224を設けると、複数の溝が表示する画像の視認性が向上する。
【0069】
反射層224としては、透明反射層又は不透明な金属反射層を使用することができる。反射層224は、例えば、真空蒸着やスパッタリングなどの真空成膜法によって形成することができる。反射層224が樹脂を含んでいる場合、反射層224は、塗布又は印刷を利用して形成してもよい。
【0070】
反射層224として透明反射層を使用すると、反射層224の背面側に絵柄及び文字等のパターンを配置した場合であっても、これを後述する画像表示体の前面側から視認することができる。他方、反射層224として不透明な金属反射層を使用すると、輝度が高く視認性に優れた画像の表示が可能となる。
【0071】
透明反射層としては、例えば、凹凸構造形成層223とは屈折率が異なる透明材料からなる層を使用することができる。透明材料からなる透明反射層は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。後者の場合、透明反射層は、繰り返し反射干渉を生じるように設計されていてもよい。この透明材料としては、例えば、硫化亜鉛及び二酸化チタンなどの透明誘電体を使用することができる。
【0072】
或いは、透明反射層として、厚さが20nm未満の金属層を使用してもよい。金属層の材料としては、例えば、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金及び銅などの単体金属又はそれらの合金を使用することができる。
【0073】
不透明な金属反射層としては、より厚いこと以外は透明反射層について上述したのと同様の金属層を使用することができる。不透明な金属反射層は、連続膜であってもよい。或いは、不透明な金属反射層は、パターニングされていてもよい。例えば、不透明な金属反射層の少なくとも一部をパターニングして、後述する画像表示体に、網点、万線、他の図形、又はそれらの組み合わせを表示させてもよい。このようなパターンは、例えば、情報媒体100の真偽判定に利用することができる。
【0074】
透明反射層又は不透明な反射層として、透明樹脂とこの中で分散した粒子とを含んだ層を使用してもよい。この粒子としては、例えば、単体金属及び合金などの金属材料からなる粒子、又は、透明金属酸化物及び透明樹脂などの透明誘電体からなる粒子を使用することができる。透明樹脂中には、粒子を分散させる代わりに、薄片を分散させてもよい。
【0075】
保護層227は、凹凸構造形成層223を間に挟んで反射層224と向き合っている。保護層227は、光透過性を有しており、典型的には透明である。保護層227は、例えば樹脂からなる。この樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂を使用することができる。保護層227は、省略することができる。
【0076】
図4に示すように、画素PEは、2つの第1サブ画素SPE1と、1つの第2サブ画素SPE2とを含んでいる。
2つの第1サブ画素SPE1は、X方向に隣り合っている。図4には、一例として、これら2つの第1サブ画素SPE1が、X方向に互いに隣接している場合を描いている。X方向に隣接した画素PE間の境界は、凹凸構造形成層223について上述した第1及び第2部分の境界に対応している。
【0077】
第1サブ画素SPE1の各々には、規則的に配列した直線状の複数の第1溝G1が設けられている。これら複数の第1溝G1の空間周波数は、照明光を照射した際に、第1サブ画素SPE1が所望の波長を有した回折光を射出するように設定されている。なお、複数の第1溝G1の空間周波数及び深さ又は高さは、典型的には、2つの第1サブ画素SPE1間で互いに等しくする。
【0078】
2つの第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1の長さ方向が互いに異なっている。それゆえ、拡散光照明などの特定の照明条件下において、これら第1サブ画素SPE1が最大強度の回折光を射出する方向は、互いに異なっている。従って、例えば、各画素PE内で左側に位置した第1サブ画素SPE1から高い強度の回折光を観察者の右眼に向けて射出させると共に、各画素PE内で右側に位置した第2サブ画素SPE2から高い強度の回折光を観察者の左眼に向けて射出させることができる。即ち、これら第1サブ画素SPE1は、例えば、立体画像の表示に用いることができる。
【0079】
第2サブ画素SPE2は、第1サブ画素SPE1の各々とY方向に隣り合っている。図4には、一例として、第2サブ画素SPE2が、第1サブ画素SPE1の各々とY方向に隣接している場合を描いている。
【0080】
第2サブ画素SPE2には、規則的に配列した直線状の複数の第2溝G2が設けられている。複数の第2溝G2は、上記の複数の第1溝G1と長さ方向が互いに異なっている。これら複数の第2溝G2の空間周波数は、照明光を照射した際に、第2サブ画素SPE2が所望の波長を有した回折光を射出するように設定されている。第2サブ画素SPE2は、典型的には、平面画像の表示に用いられる。
【0081】
第2サブ画素SPE2は、2つの第1サブ画素SPE1の各々と比較して、面積がより大きい。従って、後述するように、第2サブ画素SPE2に基づいて表示される像は、第1サブ画素SPE1に基づいて表示される像と比較してより明るい。
【0082】
図2乃至図5を参照しながらブランク媒体200を使用すると、例えば、以下に説明する画像表示体を製造することができる。
図6は、図2に示すブランク媒体を用いて得られる画像表示体の一例を概略的に示す平面図である。この画像表示体300は、図1に示す情報媒体100における画像I1bの表示に用いられる。
【0083】
図6に示す画像表示体300は、背景絵柄領域としての第1表示領域RIと、主要絵柄領域としての第2表示領域RIIとを含んでいる。図6に示す画像表示体300では、第2表示領域RIIは、顔画像を表示している。また、第1表示領域RIは、第2表示領域RIIが表示している顔画像の背景画像を表示している。
【0084】
このような画像表示体300は、例えば、以下のようにして製造する。
まず、単一の撮像装置を用いて人物の顔を撮影して、顔画像を得る。或いは、印画から顔画像を読み取る。この顔画像は、必要に応じて画像処理する。
【0085】
次に、ブランク媒体200の一部に対し、レーザビームを照射することにより、表示領域RI及びRIIを形成する。レーザビームの照射によるこれら表示領域RI及びRIIの形成は、具体的には、以下のようにして行う。
【0086】
第1に、ブランク媒体200のうち第1表示領域RIを形成すべき第1部分に含まれる画素PEに対し、レーザビームを照射する。
【0087】
より詳細には、まず、ブランク媒体200の第1部分に含まれる複数の第2サブ画素SPE2の全部に対し、レーザビームを照射する。これにより、これら第2サブ画素SPE2の全部について、複数の第2溝G2を変形又は破壊する。即ち、これら第2サブ画素SPE2の全部について、第2サブ画素SPE2が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する。
【0088】
加えて、ブランク媒体200の第1部分に含まれる複数の第1サブ画素SPE1の一部に対し、レーザビームを照射する。これにより、これら第1サブ画素SPE1の一部について、複数の第1溝G1を変形又は破壊する。即ち、これら第1サブ画素SPE1の一部について、第1サブ画素SPE1が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する。
【0089】
このようにして、第1部分に、第1表示領域RIに表示させるべき第1画像を記録する。この第1画像は、例えば、顔画像の背景を構成する背景画像である。第1画像については、後で詳しく説明する。
【0090】
第2に、ブランク媒体200のうち第2表示領域RIIを形成すべき第2部分に含まれる画素PEに対し、レーザビームを照射する。
より詳細には、まず、ブランク媒体200の第2部分に含まれる複数の第1サブ画素SPE1の全部に対し、レーザビームを照射する。これにより、これら第1サブ画素SPE1の全部について、複数の第1溝G1を変形又は破壊する。即ち、これら第1サブ画素SPE1の全部について、第1サブ画素SPE1が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する。
【0091】
加えて、ブランク媒体200の第2部分に含まれる複数の第2サブ画素SPE2の一部に対し、レーザビームを照射する。これにより、これら第2サブ画素SPE2の一部について、複数の第2溝G2を変形又は破壊する。即ち、これら第2サブ画素SPE2の一部について、第2サブ画素SPE2が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する。
【0092】
このようにして、第2部分に、第2表示領域RIIに表示させるべき第2画像を記録する。この第2画像は、例えば、顔画像である。第2画像については、後で詳しく説明する。
以上のようにして、表示領域RI及びRIIを備えた画像表示体300を得る。この画像表示体300は、例えば、表紙2を構成している基材に、接着層を介して貼り付ける。或いは、ブランク媒体200を表紙2を構成している基材に接着層を介して貼り付けておき、これに画像を記録することにより、画像表示体300を形成してもよい。
【0093】
画像表示体300の第1表示領域RIは、上述した通り、第1画像を表示する。
図7は、図6に示す画像表示体の第1表示領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図である。図8は、図6に示す画像表示体の第1表示領域を構成している画素の他の1つを拡大して示す平面図である。
【0094】
図7及び図8に示す画素PEでは、第2サブ画素SPE2に設けられた複数の第2溝G2の全体が変形又は破壊されている。他方、図7に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1は、変形又は破壊されていない。図8に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1の一部のみが変形又は破壊されている。
【0095】
従って、第1表示領域RIは、第1サブ画素SPE1に基づいた画像を表示する。即ち、第1表示領域RIでは、これら第1サブ画素SPE1が上記の第1画像を表示する。
【0096】
上述した通り、2つの第1サブ画素SPE1は、複数の第1溝G1の長さ方向が互いに異なっている。それゆえ、拡散光照明などの特定の照明条件下において、これら第1サブ画素SPE1が最大強度の回折光を射出する方向は、互いに異なっている。
【0097】
従って、例えば、各画素PE内で左側に位置した第1サブ画素SPE1から高い強度の回折光を観察者の右眼に向けて射出させると共に、各画素PE内で右側に位置した第2サブ画素SPE2から高い強度の回折光を観察者の左眼に向けて射出させることができる。この場合、第1表示領域RIに含まれる第1サブ画素SPE1のうち複数の溝G1を変形又は破壊する部分を適宜定めることにより、これら第1サブ画素SPE1の一部からなるサブ画素群と他の一部からなるサブ画素群とに、視差画像を表示させることができる。即ち、この場合、これら第1サブ画素SPE1は、第1画像として立体画像を表示することができる。
【0098】
画像表示体300の第2表示領域RIIは、上述した通り、第2画像を表示する。
図9は、図6に示す画像表示体の第2表示領域を構成している画素の1つを拡大して示す平面図である。図10は、図6に示す画像表示体の第2表示領域を構成している画素の他の1つを拡大して示す平面図である。
【0099】
図9及び図10に示す画素PEでは、第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1の全体が変形又は破壊されている。他方、図9に示す画素PEでは、第2サブ画素SPE2に設けられた複数の第2溝G2は、変形又は破壊されていない。図10に示す画素PEでは、第2サブ画素SPE2に設けられた複数の第2溝G2の一部のみが変形又は破壊されている。
【0100】
従って、第2表示領域RIIは、第2サブ画素SPE2に基づいた画像を表示する。即ち、第2表示領域RIIでは、これら第2サブ画素SPE2が上記の第2画像を表示する。この第2画像は、典型的には、平面画像である。
【0101】
画像表示体300は、第1画像と第2画像との組み合わせに基づいた画像を表示する。
【0102】
上述した通り、第2サブ画素SPE2は、複数の第1サブ画素SPE1の各々と比較して面積がより大きい。よって、第2画像は、第1画像と比較してより明るい。即ち、第2画像の画質は、比較的高い。それゆえ、例えば、第2画像として顔画像などの主要な画像を表示させると共に、第1画像として背景画像などの副次的な画像を表示させることにより、画像全体としての画質を向上させることができる。
【0103】
また、第1画像が立体画像であり且つ第2画像が平面画像である場合、第2画像は、あたかも立体画像であるかのように観察される。従って、例えば、第2画像として顔画像などの主要な画像を表示させると共に、第1画像として背景画像などの副次的な画像を表示させると、観察者に、顔画像などの主要な画像を擬似的な立体画像として観察させることができる。
【0104】
このような擬似的な立体画像は、複写等によっては再現できない。また、このような擬似的な立体画像を表示可能とする画像表示体300の製造には、高度な技術が必要とされる。即ち、この画像表示体300は、改竄することが困難である。
【0105】
また、この画像表示体300では、平面画像に基づいて、擬似的な立体画像を表示可能としている。この平面画像は、複数枚の視差画像を用いて形成する必要がない。また、平面画像の表示に必要な画素の数は、一般的に、立体画像の表示に必要な画素の数と比較してより少ない。それゆえ、この画像表示体300が表示する擬似的な立体画像は、通常の立体画像と比較してより明るい。即ち、この画像表示体300は、明るい立体画像の表示を可能とする。
【0106】
なお、ブランク媒体200において、複数の第2溝G2の長さ方向は、典型的には、複数の第1溝G1の長さ方向の平均と平行にする。こうすると、第1サブ画素SPE1に基づいて表示される複数の像の明るさを一致させると共に、第2サブ画素SPE2に基づいて表示される像の明るさを最大にすることができる。即ち、こうすると、第1及び第2画像の画質を向上させることができる。従って、こうすると、画像表示体300に、高品位な画像を表示させることができる。
【0107】
また、ブランク媒体200が備えた各画素PEにおいて、第1サブ画素SPE1の各々の面積と第2サブ画素SPE2の面積との比を変化させると、第1画像と第2画像との明るさの比を変化させることができる。即ち、こうすると、第1及び第2画像のコントラストを変化させることができる。
【0108】
上述した通り、ブランク媒体200が備えた複数の画素PEは、互いに交差するX及びY方向に配列している。これら画素PEが図4及び図5を参照しながら説明した構成を有している場合、ブランク媒体200の画像記録領域R1は、複数の第1サブ画素SPE1がX方向に沿って配列した第1の列と、複数の第2サブ画素SPE2がX方向に沿って配列した第2の列とを備えている。そして、これら第1及び第2の列は、Y方向に交互に配列したストライプパターンを形成している。
【0109】
このように、画像記録領域R1が交互に配列した第1及び第2の列を備えている場合、第1の列のY方向に沿った幅と第2の列のY方向に沿った幅との双方は、典型的には、観察者の目の分解能と比較してより小さくする。例えば、視力が1.0である人間が50cm離れた位置から観察する場合には、これら幅の双方は、典型的には148μm以下とする。このような構成を採用すると、第1及び第2の列を、互いから肉眼で区別することが不可能となる。それゆえ、こうすると、画像表示体300に、高品位な画像を表示させることが可能となる。
【0110】
図4及び図5に示す画素PEには、種々の変形が可能である。
図11は、図4に示す画素の一変形例を示す平面図である。図11に示す画素PEは、画素PEに含まれる第1サブ画素SPE1の数及びその構造が異なっていることを除いては、図4に示す画素と同様の構成を有している。
【0111】
図11に示す画素PEは、3つ以上の第1サブ画素SPE1を含んでいる。具体的には、図11に示す画素PEは、6つの第1サブ画素SPE1を含んでいる。これら第1サブ画素SPE1は、X方向に沿って互いに隣り合っている。図11には、一例として、これら第1のサブ画素SPE1が、X方向に沿って互いに隣接している場合を描いている。
【0112】
図11に示す画素PEでは、これら第1サブ画素SPE1の各々に設けられた複数の第1溝G1の長さ方向は、互いに異なっている。図11には、一例として、これら第1サブ画素SPE1が、複数の第1溝G1の長さ方向とX方向とが為す角度がX方向に沿って単調に減少するようにして配列している場合を描いている。
【0113】
画素PEが複数の第1溝G1の長さ方向が互いに異なった3つ以上の第1サブ画素SPE1を含んでいる場合、画素PEが2つの第1サブ画素SPE1からなる場合と比較して、第1画像が視認可能となる観察範囲がより広くなる。
【0114】
図12は、図4に示す画素の他の変形例を示す平面図である。図12に示す画素PEは、サブ画素SPE1及びSPE2の配置が異なっていることを除いては、図4に示す画素と同様の構成を有している。
【0115】
図12に示す画素PEでは、2つの第1サブ画素SPE1の各々は、画素PEの対角位置に配置されている。そして、第2サブ画素SPE2は2つに分割されて、画素PEのうち第1サブ画素SPE1が設けられていない部分を占めている。なお、2つに分割された第2サブ画素SPE2の面積の和は、2つの第1サブ画素SPE1の各々の面積と比較してより大きい。
【0116】
上述した通り、画素PEは小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にそれら画素PEを互いから区別することはできない。それゆえ、画素PEに含まれるサブ画素SPE1及びSPE2の各々も小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にこれらを互いから区別することはできない。従って、図12に示す画素PEは、典型的には、図4に示す画素PEと同様の視覚効果を呈する。即ち、各画素PE内におけるサブ画素SPE1及びSPE2の配置は、任意である。
【0117】
なお、第2サブ画素SPE2は、複数の第2溝G2の長さ方向が互いに等しく且つ複数の第2溝G2の空間周波数、深さ又は高さ、及び断面形状の少なくとも1つが互いに異なった複数の領域を含んでいてもよい。この場合、第2サブ画素SPE2の面積は、これら複数の領域の面積の総和に等しい。
【0118】
上では、サブ画素SPE1及びSPE2の各々が規則的に配列した直線状の複数の溝を備えている場合について説明したが、サブ画素SPE1及びSPE2の構成は、これには限られない。
【0119】
図13は、第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の一例を示す平面図である。図13には、曲線状の溝を概略的に描いている。直線状の溝の代わりに曲線状の溝を用いると、これら溝に起因した視覚効果を、より広い視域で観察することが可能となる。
【0120】
例えば、第2サブ画素SPE2に曲線状の複数の第2溝G2を設けると、第2画像が視認可能となる観察角度をより広くすることが可能となる。即ち、こうすると、第1画像と第2画像とが同時に視認可能となる観察範囲をより広くすることが可能となる。
【0121】
なお、各サブ画素における曲線状の溝の「長さ方向」は、以下のようにして定める。即ち、まず、各サブ画素のうち曲線状の溝が設けられた部分の重心を考える。そして、この重心に最も近い位置における溝の接線の方向を、上記の「長さ方向」とする。
【0122】
また、図13に示す構造を第1サブ画素SPE1に適用する場合、例えば、図13に示す構造をY方向に平行な1つ以上の直線によって分割してなる2つ以上の構造の各々を、各第1サブ画素SPE1の構成として採用する。
【0123】
図14は、第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の他の例を示す平面図である。図14には、不規則的に配列した溝を概略的に描いている。これら溝は、溝間の間隔が不規則であるが、X方向に沿った構造を有している。それゆえ、これら溝は、照明光を照射すると、X方向に垂直な方向に、指向性を有した散乱光を射出することができる。
【0124】
図15は、第1及び/又は第2サブ画素に採用可能な構造の他の例を示す平面図である。図16は、図15に示す構造をフーリエ変換して得られる像を示す平面図である。図15及び図16から分かるように、図15に示す複数の溝は、照明光を照射すると、X方向に垂直な方向に、指向性を有した散乱光を射出することができる。
【0125】
このように、回折光を射出可能な溝の代わりに指向性を有した散乱光を射出可能な溝を用いると、より広い視域において、色変化がないか又は色変化が少ない像を表示させることが可能となる。また、こうすると、照明光の照射方向等の制約が少なくなり、画像の観察がより容易となる。
【0126】
なお、不規則的に配列した溝の「長さ方向」とは、均一な拡散照明光のもとで、それら溝が設けられているサブ画素から射出される散乱光のうち最も強度が大きいものの射出方向に垂直な平面とXY平面との交線の方向であるとする。
【0127】
ブランク媒体200では、複数の画素PEの各々は、典型的には、互いに同一の構成を有している。しかしながら、複数の画素PEの各々は、互いに異なった構成を有していてもよい。例えば、1つの第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1の長さ方向と、他の1つの第1サブ画素SPE1に設けられた複数の第1溝G1の長さ方向とが為す角度を、複数の画素PE間で互いに異ならせてもよい。
【0128】
或いは、複数の画素PEの各々で、複数の第2溝G2の空間周波数を互いに異ならせてもよい。例えば、ブランク媒体200は、各々が赤、緑及び青色光に対応した空間周波数で配列した複数の第2溝G2を備えた複数の画素PEを含んでいてもよい。複数の画素PEの各々で複数の第2溝G2の空間周波数を互いに異ならせると、第2サブ画素G2に基づいて、多色画像を表示させることが可能となる。即ち、第2画像として、多色画像を表示することが可能となる。
【0129】
なお、上では、複数の溝が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する工程を、レーザビームを用いて複数の溝を変形又は破壊することにより行う方法について説明したが、この工程は、他の方法によって行ってもよい。例えば、レーザビームの照射により、反射層224又はその前面側の層で炭化を生じさせることにより、上記の回折光の強度をゼロとするか又は低減してもよい。即ち、複数の溝を変形又は破壊することなしに、上記の回折光の強度をゼロとするか又は低減してもよい。
【0130】
また、この工程は、レーザビーム以外のエネルギービームを用いて行ってもよい。例えば、この工程は、電子ビームなどの荷電粒子ビームを照射することによって行ってもよい。電子ビーム描画装置によると、レーザと比較して、より小さなビーム径を達成できる。従って、例えばサブ画素の寸法が小さい場合、電子ビーム照射を利用すると、レーザビームを利用した場合と比較して、より高い画質を達成できる。
【0131】
複数の溝が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する工程は、他の方法によって行ってもよい。例えば、この工程は、サーマルヘッドなどの加熱及び/又は加圧手段を用いて溝を変形又は破壊することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、溝上に、凹凸構造形成層223の材料を溶解可能な液を供給することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、溝上に、凹凸構造形成層223の材料と屈折率が同一であるか屈折率の差が小さい材料を供給することにより行ってもよい。或いは、この工程は、インクジェット法などを用いて、溝上に、黒色インキなどの光吸収剤を供給することにより行ってもよい。
【0132】
なお、ブランク媒体200が備えた複数の溝が指向性を有した散乱光を射出可能な構造を有している場合、画像表示体300は、複数の溝が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する代わりに、複数の溝が射出する散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより製造する。複数の溝が射出する散乱光の強度をゼロとするか又は低減する工程は、先に複数の溝が射出する回折光の強度をゼロとするか又は低減する工程について説明したのと同様にして行うことができる。
【0133】
以上、パスポートとしての情報媒体100を例示したが、情報媒体100について上述した技術は、他の情報媒体に適用することも可能である。例えば、この技術は、査証及びIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
【0134】
図17は、本発明の他の態様に係る情報媒体を概略的に示す平面図である。図16に示す情報媒体400は、IDカードであり、上で説明した画像表示体300に基づいた画像I1bを含んでいる。よって、この情報媒体400は、改竄が困難である。
【0135】
画像表示体300を貼り付ける基材の材質は、天然の紙及び合成紙などの紙でなくてもよい。例えば、画像表示体300を貼り付ける基材の材質は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(熱可塑性PET)、ポリ塩化ビニル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル樹脂及びポリスチレン樹脂などの合成樹脂、ガラス、陶器及び磁器などのセラミックス、又は、単体金属及び合金などの金属材料であってもよい。
【0136】
上では、情報媒体としてパスポート及びIDカードなどの個人認証媒体を例示したが、情報媒体100及び400について上述した技術は、個人認証媒体以外の情報媒体に適用することも可能である。即ち、上述した技術は、個人認証以外の目的で利用してもよい。
【符号の説明】
【0137】
1…折り丁、2…表紙、11…紙片、12…印刷パターン、100…情報媒体、200…ブランク媒体、223…凹凸構造形成層、224…反射層、227…保護層、300…画像表示体、400…情報媒体、G1…溝、G2…溝、I1a…画像、I1b…画像、I2…画像、I3…画像、PE…画素、R1…領域、R2…領域、RI…第1表示領域、RII…第2表示領域、SPE1…第1サブ画素、SPE2…第2サブ画素。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差する第1及び第2方向に配列した複数の画素を備え、
前記複数の画素の各々は、
照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第1溝を各々が備え且つ前記複数の第1溝の長さ方向が互いに異なっている複数の第1サブ画素と、
照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能であり且つ前記複数の第1溝と長さ方向が互いに異なった複数の第2溝を備え、前記複数の第1サブ画素の各々と比較して面積がより大きい第2サブ画素と
を含んでいるブランク媒体。
【請求項2】
前記複数の第1サブ画素は立体画像の表示に用いられ且つ前記第2サブ画素は平面画像の表示に用いられる請求項1に記載のブランク媒体。
【請求項3】
前記複数の第2溝の長さ方向は、前記複数の第1溝の長さ方向の平均と平行である請求項1又は2に記載のブランク媒体。
【請求項4】
前記複数の第2溝は曲線状である請求項1乃至3の何れか1項に記載のブランク媒体。
【請求項5】
前記複数の第2溝の空間周波数が互いに異なった複数の前記画素を含んでいる請求項1乃至4の何れか1項に記載のブランク媒体。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のブランク媒体から得られる画像表示体であって、
前記ブランク媒体が含んでいる前記第1サブ画素の一部において前記複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ前記第2サブ画素の全部において前記複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られ、前記第1サブ画素によって第1画像を表示する第1表示領域と、
前記第1サブ画素の全部において前記複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ前記第2サブ画素の一部において前記複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られ、前記第2サブ画素によって第2画像を表示する第2表示領域と
を含んだ画像表示体。
【請求項7】
前記回折効率及び/又は散乱効率をゼロとするか又は低減することは、前記ブランク媒体の前記複数の第1及び第2溝が設けられた位置にエネルギービームを照射することにより行われた請求項6に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記第2画像は個人情報を含んだ画像である請求項6又は7に記載の画像表示体。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか1項に記載の画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備した情報媒体。
【請求項10】
前記画像表示体は生体情報を含んだ画像を表示している請求項9に記載の情報媒体。
【請求項11】
前記生体情報を含んだ画像は顔画像である請求項10に記載の情報媒体。
【請求項1】
互いに交差する第1及び第2方向に配列した複数の画素を備え、
前記複数の画素の各々は、
照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能な複数の第1溝を各々が備え且つ前記複数の第1溝の長さ方向が互いに異なっている複数の第1サブ画素と、
照明光の照射により回折光及び/又は指向性を有した散乱光を射出可能であり且つ前記複数の第1溝と長さ方向が互いに異なった複数の第2溝を備え、前記複数の第1サブ画素の各々と比較して面積がより大きい第2サブ画素と
を含んでいるブランク媒体。
【請求項2】
前記複数の第1サブ画素は立体画像の表示に用いられ且つ前記第2サブ画素は平面画像の表示に用いられる請求項1に記載のブランク媒体。
【請求項3】
前記複数の第2溝の長さ方向は、前記複数の第1溝の長さ方向の平均と平行である請求項1又は2に記載のブランク媒体。
【請求項4】
前記複数の第2溝は曲線状である請求項1乃至3の何れか1項に記載のブランク媒体。
【請求項5】
前記複数の第2溝の空間周波数が互いに異なった複数の前記画素を含んでいる請求項1乃至4の何れか1項に記載のブランク媒体。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のブランク媒体から得られる画像表示体であって、
前記ブランク媒体が含んでいる前記第1サブ画素の一部において前記複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ前記第2サブ画素の全部において前記複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られ、前記第1サブ画素によって第1画像を表示する第1表示領域と、
前記第1サブ画素の全部において前記複数の第1溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減し且つ前記第2サブ画素の一部において前記複数の第2溝が射出する回折光及び/又は散乱光の強度をゼロとするか又は低減することにより得られ、前記第2サブ画素によって第2画像を表示する第2表示領域と
を含んだ画像表示体。
【請求項7】
前記回折効率及び/又は散乱効率をゼロとするか又は低減することは、前記ブランク媒体の前記複数の第1及び第2溝が設けられた位置にエネルギービームを照射することにより行われた請求項6に記載の画像表示体。
【請求項8】
前記第2画像は個人情報を含んだ画像である請求項6又は7に記載の画像表示体。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れか1項に記載の画像表示体と、前記画像表示体を支持した基材とを具備した情報媒体。
【請求項10】
前記画像表示体は生体情報を含んだ画像を表示している請求項9に記載の情報媒体。
【請求項11】
前記生体情報を含んだ画像は顔画像である請求項10に記載の情報媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−133677(P2011−133677A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293354(P2009−293354)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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