説明

ブリスターパック

【課題】店頭に吊り下げられて陳列されている状態であっても、製品に表示された使用推奨期限等の情報を使用者に特に注意を払わせることなく視認させることができるブリスターパックを提供する。
【解決手段】外表面に第1の情報領域と、第2の情報領域の複数の情報領域を有する円筒形の電池を複数本包装し、吊り下げて陳列するためのブリスターパック100であって、電池の遊動や回転を拘束する支持体群を有し、第1の情報領域と第2の情報領域が、外装の前面に同時に対向するように配置されることで、複数の情報領域を同時に同方向へ表示する凹型収納部111を備えることを特徴とする。これにより、任意の情報が表記された面を前方に向けた状態で固定することができ、使用者に特に注意を払わせなくても情報を視認させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小物製品等の店頭陳列の為の包装材に係り、特に、円筒形の電池の情報領域を所定の方向に向けた状態で電池の方向姿勢を保持することができるために、複数の情報領域を使用者に的確に視認させることができるブリスターパックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、文房具類、小型電気器具類、或いは電池類等の小物製品は、取り扱いや保管がしやすく、尚且つ製品を什器に陳列した際に製品の外観や、製品の表面に施された表示が視認できるように包装され、流通されている。即ち、収納部分或いは製品ケースの少なくとも一部を透明性の材質で形成し、製品の収納部分としながら、製品の保護を図る一方で、フック等に吊り下げて陳列する場合に、消費者に製品を見やすくするという手法がとられている。
【0003】
ところで、包装された製品を陳列する場合、陳列用什器に設けられたフックに吊り下げて陳列する場合と、什器の棚等の平面に置いて陳列する方法とがある。尚、製品包装の形態としては、吊り下げて陳列する場合にはブリスターパック、クラムシェルパック、或いは上部に吊り下げ用の穴を設けた化粧箱等が用いられる。また、棚等に置いて陳列する場合には、シュリンクパック、或いは化粧箱が使用されている。つまり、店頭での陳列形態に応じて、製品包装が使い分けられている。
【0004】
特に、円筒形の電池類においては視認性の良さや、或いはデッドスペースとなってしまう什器の側面等にフックを設けるだけでも陳列スペースとして活用することができるといった特徴のために、ブリスターパックによる包装の付加価値が高まっている。
また、駅の売店やコンビニエンスストアといった、店舗面積が限られた業態の店舗等に陳列する場合にも、棚等の平面スペースを必要としない吊り下げ式の陳列が望まれているということが、ブリスターパックの付加価値をさらに高めている。
【0005】
しかしながら、省スペースの陳列を実現するために従来のブリスターパックを用いると、製品の複数の面のうちいずれかの面はブリスターパックの支持体板に隠され、外装からは視認することができなくなってしまう。また、概してこのとき、包装の前面には、ブランド名、製品名等の製品の固有識別に関する情報が記載された情報領域(以後製品正面と呼ぶ)を向け、製品訴求力を高めることを目的としていた。
【特許文献1】特開平9−221170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のブリスターパックでは、製品訴求力を高めるために製品正面を揃えた展示を実現するために、所定の向きへ揃えた状態の電池を予めシュリンクパックした上で包装するという方式を採っていた。そのため、製品正面を前方に向かせることを達成するために必要な経済的、時間的コストを別途割いておく必要があった。
【0007】
ところで、一次電池という製品の性質上、電池の表面には該電池の使用推奨期限が記載された表示がなされている。この表示に記載された使用推奨期限は、電池の品質を保証するものであり、製造日を基準とした所定の期間が設けられている。
概して、円筒形の電池等では製品正面以外の面に使用推奨期限が表示されている。そのため、製品正面を前方に向けることによって製品訴求性を高めていた従来のブリスターパックでは、使用推奨期限は製品の前方以外に向いた状態になってしまっていた。
【0008】
したがって、支持体板が透明性の材質でないブリスターパックを用いて電池が包装された製品は、使用者が前方から製品を見た場合には使用推奨期限を視認することができなかった。このため、使用者は製品を購入した後に包装を開封した上で電池の外表面に記載された使用推奨期限が表示された情報領域を確認するほかなかった。
また、使用推奨期限が表示された情報領域が露出するように支持体板を穿孔して、支持体板の裏面側からでも視認できるようにした形態の製品がある。また、支持体板の同部分のみ、或いは全体を透明の材質にし、裏面側からでも視認できるようにした形態のものもある。しかし、これは使用者がある一定の注意を払って、使用推奨期限が表示された情報領域を確認するという意識を持っていなければ購入時には行なわない動作であるため、万人に使用推奨期限を知らしめるには十分ではなかった。
【0009】
また、ブリスターパックにおける支持体板は、製品の包装姿勢を維持するだけではなく、店舗等で取り扱うために必要不可欠なバーコード等の種々の情報、使用上の注意及び警告等の表示、或いは製品のディスプレイに用いられる希少なスペースである。そのため、できる限り広く余地が確保されることが望ましく、これをあえて削減する加工を施すことは避けるべきである。
【0010】
外観から使用推奨期限を視認できないブリスターパックの製品では、使用推奨期限を電池の外表面だけでなく支持体板の裏面にも表示し、外観からでも期限を確認できるようにした形態のものもある。しかしこれは、製品の完成に必要な工程を増やしてしまい、金銭的、時間的なコストを別途割く必要がある。また、電池表面と、支持体板の裏面の2箇所に同じ内容の表示を行なわなければならないとすると、いずれかに記載ミスがあり、表示した内容に食い違いが生じる虞がある。すると、使用者を徒に混乱させてしまう要因となり得る。
【0011】
上述したように、従来のブリスターパックには、使用者に伝達すべき複数の情報を普く正確に視認させることに問題点があった。しかしながら、情報を表示するスペースが限られているブリスターパックにおいては、情報伝達と製品訴求力の向上を両立させることが希求されている。
本発明は、かかる問題点を克服し、使用者に特に注意を払わせることなく使用推奨期限を視認させることができるブリスターパックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のブリスターパックは、
外表面に第1の情報領域と、第2の情報領域の複数の情報領域を有する円筒形の電池を複数本包装し、吊り下げて陳列するためのブリスターパックであって、
電池の遊動や回転を拘束する支持体群を有し、第1の情報領域と第2の情報領域が、外装の前面に同時に対向するように配置されることで、複数の情報領域を同時に同方向へ表示する収納部を備えることを特徴とする。
【0013】
上述の第1の情報領域は、少なくとも電池の固有識別に関する情報が記載されていることが好適である。
【0014】
上述の第2の情報領域は、少なくとも電池の品質を保証する使用推奨期限が記載されていることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ブリスターパックに包装された電池の使用推奨期限を、使用者に特に注意を払わせることなく視認させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図に基づいて詳細に説明する。
図1はブリスターパック100の要部構成を示す平面図である。
ブリスターパック100は、円筒形の電池を複数本並列に収納できる寸法及び形状の凹型収納部111を有する透明性の収納体110と、収納体110の開口部を封塞する支持体板120とが貼り合わされた構造を備える。収納体110は、支持体板120の外周縁と貼り合わせるためのスペースとして、いわゆるフランジ部116を備えている。また、収納体110には、支持体板120の前面に記載されたブランド名、製品名、或いはキャッチコピー等を視認することができる製品訴求表示部112が備えられ、製品訴求を行なえる構成となっている。
【0017】
本実施形態における収納体110は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂を素材とし、真空成型加工されて形成されている。また、収納体110の成型方法はこれに限るものではなく、圧空成型加工や熱プレス加工等によるものでも構わない。
【0018】
本実施形態における収納体110に備えられる凹型収納部111は、収納した電池の誘導や回転を拘束する構造が形成されている。このため、複数の情報領域を所望の方向に向けた状態で電池の方向姿勢を保持することができる。
【0019】
図2は、本実施形態におけるブリスターパック100を、図1の視点Aから示す側面図である。また同様に、図3は本実施形態におけるブリスターパック100を図1の視点Bから示す側面図である。
図1及び図2に示すように、凹型収納部111の一端には収納される電池の正極端子の突起部が対接する凹部113が設けられている。この凹部113は、支持体板120に近い部分から、凹型収納部111の底部111a寄りにかけて先窄まりの形状に形成される。凹部113の最も窄まった部分の大きさは、電池の正極端子の大きさと略同一であるため、電池が凹型収納部111に収納されると電池の正極端子は、凹部113に嵌合された状態となる。また、本実施形態の凹型収納部111は、例えば円筒形の電池を4本収納する形状であるため、凹部113は等間隔に4箇所設けられている。
【0020】
そして、4箇所の凹部113の各々の間に、電池の正極端子側の外縁端部と対接する突起状の支持体群の一例である突起状支持部114aが、例えば3箇所設けられている。突起状支持部114aは、これに隣接して配置された二つの凹部113からそれぞれ略等距離に配置される。そして、突起状支持部114aは、凹型収納部111に収納された電池が接触する側面の正極端子側の外縁端部に係合する。
また、図1及び図3に示すように、凹型収納部111のもう一端にも同様に、電池の負極端子側の外縁端部に対接する突起状支持部114bが3箇所設けられている。突起状支持部114bは、突起状支持部114aと同様に、凹型収納部111に収納された電池が接触する側面の負極端子側の外縁端部に係合する。このとき、凹部113の最深部から、凹型収納部111のもう一端までの寸法は、収納される電池の長さと略同一に形成されているため、突起状支持部114a及び114bは電池の前後を圧迫した状態で係合する。
【0021】
上述した凹部113と突起状支持部114a及び114bが対接した状態で電池を収納し、引き続いて同様の手順をもって順次2本目、3本目、4本目の電池を収納する。すると、電池4本分の直径の寸法と略同一に形成された凹型収納部111の上端に設けられた突起状の支持体群の一例である凸面状支持部115aが1本目(最上部)の電池の上部側面と係合する。また同様に、凹型収納部111の下端に設けられた凸面状支持部115bが4本目(最下部)の電池の下部側面と係合する。これによって1本目から4本目までの電池の側面同士が密着しながら、上述した凹部113、突起状支持部114a及び114bによって電池の前後上下の全てが係合された状態が形成される。
この結果、凹型収納部111は、電池の外表面に記載された第1の情報領域118或いは第2の情報領域119を任意の方向に向けた状態で支持、固定することができる。
【0022】
つまり、同種の情報領域を揃えて遊動や回転させない凹型収納部111に電池を収納、配置すると、電池外表面に印刷された表示が統一され、良好な美観や見栄え、製品訴求力、或いは情報伝達能力を得ることができる。
これは、本実施形態のブリスターパック100には、電池の長さ寸法と略同一の長さと、電池の直径の4本分と略同一の幅とに形成された可撓性のある材質の収納体110に、複数の支持体群が配置されているために実現される。
【0023】
従来のブリスターパックにおいては、収納した電池の方向姿勢を保持するために、予めシュリンクパックしておく、或いは支持体板を別途加工して電池が誘導しないよう固定できる形状に形成する等の方策が採られていた。
しかし、これは使用する資材の量や種類を増加させ、生産工程の煩雑化を招いてしまっていた。つまり、必要とされるコストが嵩んでしまっていた。
ここで、本実施形態のブリスターパック100では、電池の予備包装や支持体板の補助加工を省略できるため、省資源化や生産工程の簡素化に寄与することもできる。
【0024】
図4は本実施形態のブリスターパック100に電池を収容する実施形態の一例を示す概念図である。
図4に示すように、凹型収納部111に4本の電池を収納する際、そのうちの少なくとも1本、例えば本実施形態では4本目(最下部)の電池を、該電池の使用推奨期限等の第2の情報領域119が記載された面を前方に向けた状態で収納する。
これによって、通常は支持体板120によって隠されていた使用推奨期限を製品の前方から視認できる展示状態にすることができる。ここで、他の3本の電池はブランド名、製品名といった第1の情報領域118を前方に向けた状態であるため、良好な美観や製品訴求性を失わせることはない。
この結果、従来と同様に使用者に対する製品訴求力を維持することと、特に注意を払わせることなく使用推奨期限を視認させることとを両立することができる。
【0025】
また、従来行なわれていた形態である、製品の包装を開封せずに電池の裏面に配置された使用推奨期間を視認するための穴を支持体板120に穿孔する、或いは同部分のみ、又は支持体板120自体を透明性の素材で構成する等、特段の方策を講ずる必要がない。また、電池の外表面と、支持体板120の裏面等に使用推奨期限を重複して表示する必要もない。
よって、生産工程が簡素化できる上、記載ミス等によって整合性のない複数の情報表示を施すトラブルを防止できる。したがって、誤った情報を伝達して使用者を徒に混乱させることがない。
電池を包装する際に少なくとも1本だけ、使用推奨期限を前方に向けて配置するということだけで、上述した様々な利点を享受することができる。
【0026】
そして、上述の状態で凹型収納部111に電池を収納し、収納体110のフランジ部116と支持体板120を接着させる。収納体110の下端の左右のどちらか、例えば本実施形態では右下端部は僅かに突出して形成されているため、支持体板120と接着されない。これは、使用者がブリスターパック100を開封し電池を取り出す際に手指で摘まむ耳部117として形成する。
【0027】
支持体板120の接着は、熱に反応して接着力を発揮する接着剤を、予め支持体板120のフランジ部116に塗布しておき、概ね120℃から130℃で10秒程度加温することによって行なわれる。
そして、収納体110と支持体板120とが一体となった状態で双方を貫通させた吊り下げ穴130を穿孔する。これにより、什器等のフックに吊り下げた状態で陳列することができ、デッドスペースも活用できる省スペース陳列を実現する製品包装を提供することが可能となる。
【0028】
尚、本実施形態では使用推奨期限を前方に対向させることで、使用者のCSを向上させるとしたが、複数本並列に配置する製品の表面の集合を一つの大きな表示スペースと捉えたデザインを施すこともできる。例えば、複数の電池の表面に連繋した文字や記号等の表示、或いは連繋した大きなイラスト等を記載し、美観性の高い表示や印象の強い表示を施すことができる。
【0029】
また、本実施形態では、電池を4本収納する収納体110を有するブリスターパック100を説明したが、収納する本数はこれに限るものではなく、必要に応じた本数を収納できる収納体を適宜採用しても良い。
【0030】
また、実施形態では、収納体110はPET樹脂によって形成するとしたが、適宜形状を変形でき、且つ透明性を保持することができる素材であればこれに限定するものではない。また、支持体板120においてもPET樹脂に限らず、その他の合成樹脂フィルムや、コートボール紙等、種々の印刷を行なうことができる素材を適宜採用しても良い。
【0031】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうるすべての、及び各部材の形状は、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の本実施形態におけるブリスターパックの要部構成を示す平面図である。
【図2】本発明の本実施形態におけるブリスターパックを図1に示す視点Aから示す側面図である。
【図3】本発明の本実施形態におけるブリスターパックを図1に示す視点Bから示す側面図である。
【図4】本発明の本実施形態におけるブリスターパックに電池を収容する実施例の一例を示す概念図である。
【符号の説明】
【0033】
100…ブリスターパック
110…収納体
111…凹型収納部
112…製品訴求表示部
113…凹部
114a、114b…突起状支持部
115a、115b…凸面状支持部
116…フランジ部
117…耳部
118…第1の情報領域
119…第2の情報領域
120…支持体板
130…吊り下げ穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に第1の情報領域と、第2の情報領域の複数の情報領域を有する円筒形の電池を複数本包装し、吊り下げて陳列するためのブリスターパックであって、
前記電池の遊動や回転を拘束する支持体群を有し、前記第1の情報領域と前記第2の情報領域が、外装の前面に同時に対向するように配置されることで、複数の情報領域を同時に同方向へ表示する収納部を備えることを特徴とするブリスターパック。
【請求項2】
前記第1の情報領域は、少なくとも前記電池の固有識別に関する情報が記載されていることを特徴とする請求項1記載のブリスターパック。
【請求項3】
前記第2の情報領域は、少なくとも前記電池の品質を保証する使用推奨期限が記載されていることを特徴とする請求項1或いは2に記載のブリスターパック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−40426(P2009−40426A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203862(P2007−203862)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【公序良俗違反の表示】
特許法第64条第2項第4号の規定により図面の一部または全部を不掲載とする。
【出願人】(000003539)東芝電池株式会社 (109)
【Fターム(参考)】