説明

ブリスター包装体

【課題】1錠単位に分割しても、簡単な構造で誤飲を有効に防止できるブリスター包装体(PTP包装体など)を提供する。
【解決手段】包装体1は、複数のポケット部3,5が縦方向に形成された第1及び第2のポケット部4,6を備えた基材シート2と、前記ポケット部3,5に収容物7を収容した状態で、前記基材シート2のポケット部3,5を封止するための破断可能な蓋材8と、各ポケット部3,5の区画を分割するための分割線9とを備えている。隣接するポケット列4,6において、複数のポケット部3,5は、千鳥状に互い違いに配列されており、前記ポケット部3,5間を斜め方向に延びる分割線9を、隣接するポケット列4,6の間で交差することなく、隣接するポケット列4,6の両側部域で交差させ、三角形状の区画10に分割可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートのポケット部に収容物(固形薬剤など)を収容したブリスター包装体(プレススルーパック(PTP)包装体など)、特に薬剤を収容した薬剤PTP包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の包装体として、薬剤を封入可能なPTP包装体が広く利用されている。このPTP包装体は、通常、複数のポケット部を有するベース材と、前記ポケット部に収容された錠剤などの固形製剤と、前記ポケット部に固形製剤を収容した状態で、破断性を有し、かつベース材の収容部の開口部を覆って前記ポケット部を封止又はシールする蓋材とを備えており、複数のポケット部の間には、各ポケット部を1単位毎に区画する分割線が形成されている。また、かつてPTP包装体は、通常、ベース材には縦方向に左右対称の形態でポケット部が形成され、ベース材のうち隣接するポケット部の間には縦又は横方向に分割線が形成され、この分割線に沿って手で折り曲げ、平面形状が正四角形状の1単位のポケット区画(個包装)に分割可能であった。しかし、このような形態のPTP包装体では、分離したポケット区画単位(個装体)を、開封して固形製剤を取り出すことなく、固形製剤が包装されたまま丸ごと服用してしまう誤飲事件が発生した。
【0003】
このような誤飲を防止するため、PTP包装体では、主に並列した2単位のポケット区画(2錠1単位の区画)に分割可能であり、かつ2単位のポケット区画(2錠1単位の区画)を鋏で切断して1単位のポケット区画(個装体)とする形態が採用されている。しかし、医薬品を取り扱う調剤現場では、奇数個(奇数単位)のポケット区画が必要となる場合があり、このような場合、PTP包装体を奇数個(奇数単位)のポケット区画に鋏で切断している。また、患者やその家族は、薬剤の飲み忘れを防止するため、PTP包装体を1つのポケット区画単位(個装体)に分離し、小分けすることも多い。そのため、2単位のポケット区画(2錠単位の区画)に分割可能な包装体としても、誤飲を有効に防止できない。
【0004】
特開2000−7023号公報(特許文献1)には、縦方向に所定間隔をおいて収容ポケットが配列された収容ポケット列が平行に隣接して複数形成され、前記収容ポケット列の中間に溝状の凹条が形成されたPTPシートと、前記各収容ポケットを封止し、かつ前記PTPシートの上面にラミネートされた箔状の蓋シートとを備え、前記蓋シートに、前記凹条の両側方に縦方向に延びる縦破断線を形成し、前記各列の収容ポケットの中間では前記凹条を避けて横方向に延びる横破断線を形成したPTP包装体が開示されている。この包装体では、縦破断線及び横破断線を蓋シートにのみ形成するため、各収容ポケットごとに破断されることがなく、内容物が包装されたまま誤飲するのを抑制できる。しかし、構造が複雑であるだけでなく、患者やその家族がPTP包装体を1つの収容ポケット区画単位(個装体)に分離してしまうと、誤飲を有効に防止できなくなる。また、少数錠単位での分割に鋏が必要となることから、上記形態のPTP包装体の利便性は低い。
【0005】
特開2000−25855号公報(特許文献2)には、複数の収納ポケットを有するボトム材と、このボトム材と接合してPTP包装体様の構造を形成するリッド材とからなり、このリッド材に、少なくとも前記ボトム材の収納ポケットとの対面部分を通過する引き裂き用糸状体又は帯状体を設け、この糸状体又は帯状体を引っ張ることにより前記リッド材を破断させて収納ポケットを開封する包装体が開示されている。しかし、この包装体では、リッド材を破断させる形態で糸状体又は帯状体を形成する必要があり、構造が複雑化するとともに、糸状体又は帯状体の引っ張り動作により、複数の収納ポケットを開封してしまい、単一の収納ポケットの開封には適さない。
【0006】
特開2000−168831号公報(特許文献3)には、上端に開口部を有する所定数の成形凹部と、前記開口部の周縁部を形成するフランジ部とからなる底材と、各成形凹部内に充填された内容物と、前記フランジ部にヒートシールされ、各成形凹部を封止する蓋材とを備えた連続形式のPTP包装体が記載され、この連続形式の包装体は、フランジ部が、個装体、又は1回に使用する服用単位の包装体に分離可能な形態で、角部が丸みを有する形状に打ち抜かれ、互いに隣接する包装体が、打ち抜かれたフランジ部の一部で接着剤により、切り離し可能に接合されていることが記載されている。しかし、このPTP包装体は、打ち抜き及び接着を必要とするだけでなく、構造が複雑であるとともに、個装体などの誤飲を有効に防止できない。
【0007】
特許第4538530号公報(特許文献4)及び特許第4538531号公報(特許文献5)には、基材シートの表面側へ膨出する複数のポケット部に固形薬剤を一個ずつ収容し、基材シートの背面側に蓋フィルムを貼着し、ポケット部を外側から押し潰すことにより破封可能な包装体であって、全体を曲成して止着手段で基材シート両側縁部を止着することにより、前記ポケット部が外側へ膨出した筒状形態として保持できる薬剤プレススルーパック包装体が開示されている。しかし、これらのPTP包装体は、筒状の形態に湾曲させて止着手段で止着する必要があり、ポケット部からの固形薬剤の取り出し操作とともに、包装体の構造が複雑化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−7023号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献2】特開2000−25855号公報(特許請求の範囲、図2)
【特許文献3】特開2000−168831号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献4】特許第4538530号公報(特許請求の範囲、図1)
【特許文献5】特許第4538531号公報(特許請求の範囲、図1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、簡単な構造で誤飲を有効に防止できるブリスター包装体(PTP包装体など)を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、1単位のポケット区画(1錠単位の区画)に分割しても、誤飲を有効に防止できるブリスター包装体を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、鋏を用いることなく、簡単な操作で奇数個の1単位のポケット区画(奇数単位の区画)に分割可能であるとともに、誤飲を有効に防止できるブリスター包装体を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、仮に誤飲したとしても、口腔内、消化管などの粘膜を損傷させることのないブリスター包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、縦方向に等間隔に位置するポケット部で形成されたポケット列が横方向に隣接する形態の包装体において、横方向の長さが2錠1単位の区画の長さを有し、かつ単一のポケット部の区画(分割区画)が三角形状(特に長細い三角形状)に分割可能な形態とすると、鋏などで切断することなく1錠単位の区画に容易に分離しつつ、誤飲を有効に防止できること、三角形状の形態の分割区画の角部を非鋭角部とすると、万一に誤飲しても口腔内や消化管内の損傷を抑制できることを見いだし、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の包装体は、縦方向に所定の間隔で形成された複数のポケット部と、この複数のポケット部で形成されたポケット列が横方向に隣接して形成された複数のポケット列とを備えた基材シートと;少なくとも前記ポケット部で破断可能であり、かつ前記ポケット部に収容物を収容した状態で、前記基材シートのポケット部の開口面をシールしてポケット部を封止するための蓋材と;前記基材シートに形成され、かつ各ポケット部の区画を分割するための分割線とを備えている。このような包装体において、前記隣接するポケット列において、複数のポケット部は、(1)千鳥状に互い違いに又は(2)横方向に平行に(又は格子ドット状に)配列されており、前記分割線は、隣接するポケット列の間で交差することなく、単一のポケット部を含む三角形状の区画に分割可能な形態で形成されている。すなわち、前記分割線は、前記隣接するポケット列のポケット部間を斜め方向に延びる第1の分割線と、前記隣接するポケット列を横断して延びる第2の分割線とを備えている。
【0015】
このような包装体では、分割線が隣接するポケット列の間で交差することなく、隣接するポケット列のポケット部の間又はポケット列の両側部域で交差しているため、分割線に沿って分割されたポケット部の区画(単一のポケット単位)の平面形状は、従来の正方形状(2錠1単位の区画を鋏で切断した形態)ではなく、横方向に長く服用しにくい大きさ(上記従来の正方形状の区画のほぼ2倍の長さ)を確保できるとともに、特徴的な形状である三角形状となるため、単一のポケット単位(例えば、個装体)のまま誤飲・服用するのを防止できる。しかも、分割線を利用して単一のポケット単位(例えば、個装体)に分割又は分離できる。特に、鋏を用いることなく、任意の数の個装体に分割又は分離できる。
【0016】
前記隣接するポケット列において、(1)複数のポケット部が千鳥状に互い違いに配列されている場合、前記分割線は、隣接するポケット列の間で交差することなく、三角形状の区画に分割可能な形態で形成できる。例えば、分割線は、前記隣接するポケット列のポケット部間を斜め方向に延びる第1の分割線及び第2の分割線を備えていてもよい。この第1及び第2の分割線は、交差部から互いに逆方向に傾斜して延びる形態で形成してもよく、隣接するポケット列のポケット部の間からポケット列の両側部域に至る領域で交差してもよい。
【0017】
さらに、前記隣接するポケット列において、(2)複数のポケット部が横方向に平行に配列されている場合、前記分割線は、隣接するポケット列の間で交差することなく、前記隣接するポケット列のポケット部間を斜め方向に延びる第1の分割線と、隣接するポケット列のポケット部間に横方向に延びる第2の分割線とを備えていてもよい。この場合にも、分割線は、三角形状の区画に分割可能な形態で形成されており、隣接するポケット列の間から両側部域に至る領域で交差してもよい。
【0018】
なお、分割線は、前記隣接するポケット列のポケット部の間からポケット列の両側辺に至る領域で交差していてもよい。分割線を、長細い三角形状の区画に分割可能な形態で形成すると、誤飲をさらに有効に防止できる。また、長細い三角形状の区画(横方向に長細い三角形状の区画)を形成するため、隣接するポケット列の間隔よりも、前記ポケット列でのポケット部の間隔を小さく形成してもよい。また、隣接するポケット列の縦方向において、一方のポケット列の一対のポケット部の位置に対して、他方のポケット列のポケット部は、前記一対のポケット部の中間に位置していてもよい。さらに、隣接するポケット列において、底辺をポケット列としたとき、複数のポケット部は、二等辺三角形の頂点に位置する配列形態を有していてもよい。なお、ポケット列は横方向に隣接して複数のポケット列を形成すればよく、複数のポケット列は、第1のポケット列と、この第1のポケット列と平行に隣接する(横方向に平行に隣接する)第2のポケット列とだけで形成してもよい。すなわち、複数のポケット列は隣接する一対のポケット列で形成してもよい。さらには、仮に誤飲したとしても口腔内や食道などを傷つけるのを防止するため、ポケット部の区画の角部は面取り、例えば、鈍角又は湾曲したアール状の形態で面取りされていてもよい。
【0019】
さらに、一対のポケット列の両側辺のうち、縦方向に隣接するポケット部間に切り込み部を形成してもよい。また、この切り込み部には分割線が至っていてもよい。換言すれば、分割線(第1及び第2の分割線)はこの切り込み部で交差していてもよい。
【0020】
本発明の包装体は、ポケット部に種々の収容物、例えば、錠剤やカプセル剤などの固形製剤を収容してもよい。さらに、包装体は、プレススルーパック(PTP)包装体であってもよい。
【0021】
なお、本明細書中、「ポケット部の区画」とは、単一のポケット部の収容物を個装する単位(又は領域)、例えば、ポケット部に1錠の錠剤を収容物とするとき、1錠単位の包装体を形成する区画(又は領域)を意味する。そのため、「ポケット部の区画」を、単に、単位ポケット区画、1錠単位又は個装体などという場合がある。また、「縦方向」とは、ポケット列に沿う方向を意味し、「横方向」とはポケット列に対して直交する方向を意味する。さらに、ブリスター包装体を単に包装体という場合がある。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、横方向の長さが大きく服用しにくいサイズ(長さ)を有し、かつ特徴的な形状である三角形状に分割可能であるため、簡単な構造で誤飲を有効に防止できる。また、分割線に沿って、折り曲げるという簡単な操作で、1単位のポケット区画(1錠単位の区画)に容易分割可能である。さらに、鋏で切断することなく、奇数個の1単位のポケット区画(1錠単位の区画)にも分割可能である。さらには、1単位のポケット区画(1錠単位の区画)を角部が非鋭角な形態とすることにより、仮に誤飲したとしても、口腔内、消化管などの粘膜の損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の包装体の一例を示す概略平面図である。
【図2】図2は図1の包装体を示す概略断面図である。
【図3】図3は本発明の他の包装体を示す概略平面図である。
【図4】図4は本発明のさらに他の包装体を示す概略平面図である。
【図5】図5は本発明の別の包装体を示す概略平面図である。
【図6】図6は本発明のさらに別の包装体を示す概略平面図である。
【図7】図7は本発明の包装体の他の例を示す概略平面図である。
【図8】図8は本発明の包装体のさらに他の例を示す概略平面図である。
【図9】図9は本発明の包装体71の別の例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、必要により添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。図1は本発明の包装体の一例を示す概略平面図であり、図2は図1の包装体を示す概略断面図である。
【0025】
この例では、PTP包装体1が示されており、基材シート2には、縦横方向に規則的に所定間隔をおいて凹状の複数のポケット部3,5が形成(成形)されており、縦方向に所定の等間隔で形成された複数の第1のポケット部3が第1のポケット列4を形成し、この第1のポケット列4に対して横方向に隣接して、縦方向に所定の等間隔で形成された複数の第2のポケット部5が第2のポケット列6を形成している。すなわち、基材シートは2列のポケット列4,6を備えている。
【0026】
そして、隣接する第1及び第2のポケット列4,6において、複数のポケット部3,5は千鳥状に互い違いに配列・配置されている。すなわち、第1及び第2のポケット列4,6の縦方向において、第1のポケット列4の一対のポケット部3,3の中心位置P1,P2に対して、第2のポケット列6のポケット部5は、前記一対のポケット部3,3の中心位置P1,P2の中央部(位置P1,P2の距離の1/2に相当する中間位置)P3に位置している。換言すると、隣接するポケット列4,6において、底辺をポケット列としたとき、複数のポケット部(3,3,5)(3,5,5)が二等辺三角形の各頂点に位置した配列形態で、一対のポケット列4,6及び複数のポケット部3,5が形成されている。
【0027】
そして、前記複数のポケット部3,5には、錠剤7が収容された状態で、基材シート2のポケット部3,5の開口側の面には、破断又は開封可能なアルミニウム箔(蓋材)8がラミネートされ、ポケット部3,5が封止されている。このような形態では、従来のPTP包装体と同様に、ポケット部3,5の錠剤7を押圧することによりアルミニウム箔8を破断させてポケット部3,5を開封させ、包装体1から錠剤7を取り出すことができる。
【0028】
この例では、千鳥状配列の上記ポケット部3,5に加えて、各ポケット部3,5の区画を所定の形態(単一のポケット部を含む三角形状の区画に分割可能な形態)で分割するため、前記基材シート2及び蓋材8には所定の態様で分割線(ミシン目)9を形成している。すなわち、包装体1には、隣接するポケット列4,6のポケット部3,5間を斜め方向に交差状に直線的に横切る分割線9を形成し、包装体1を、包装体1の横方向の長さ(包装体1の幅に相当する長さ)を有する長細い三角形状の単位ポケット区画(1錠単位区画、個装体)10に分割可能としている。なお、分割線9は、2列のポケット列4,6を備えた長細状の包装体1の一方の側縁部の複数の第1の基点部(第2のポケット列6のポケット部5に対応する縦方向の位置)と他方の側縁部の複数の第2の基点部(第1のポケット列4のポケット部3に対応する縦方向の位置)とが縦方向に等間隔で位置ずれした形態で位置し、第1の基点部から第2の基点部に向かって斜め下方向に延びる第1の分割線9aと、前記第2基点部から第1基点部に向かって斜め下方向に延びる第2の分割線9bとで、長細状の包装体1をジグザグ状に横断する形態を有している。すなわち、分割線9は、2列のポケット列4,6の間ではなく、2列のポケット列4,6を備えた長細状の包装体1の両側縁部で交差している。この例では、第1のポケット列4と第2のポケット列6との間隔(中心間距離、以下同じ)Xに対して、各ポケット列4,6でのポケット部3,5の間隔(中心間距離、以下同じ)Yを、Y/X=1.6〜2.5(例えば、1.8〜2.2)程度とし、各ポケット列4,6を基準とした分割線9の角度(各ポケット列4,6に沿った縦方向の直線に対する角度)θ1を50〜70°程度としている。また、三角形状の単位ポケット区画(1錠単位区画)10を、角度θ2が40〜80°(例えば、30〜70°)程度の鋭角部を頂部とする二等辺三角形状に形成している。
【0029】
そのため、横断する分割線9を利用して、包装体1を、二等辺三角形状の単位ポケット区画10に分割(1錠単位に分画)すると、従来の正方形状の単位ポケット区画に比べて、全体が横方向には長く(上記正方形状の単位ポケット区画のほぼ2倍も長く)、大きなサイズの単位ポケット区画(1錠単位の個装体)10を形成できる。しかも、従来の正四角形状の単位ポケット区画に比べて、形状も特異的又は特徴的である。そのため、包装体1を1錠単位の個装体に分割しても誤飲を有効に防止できる。さらに、分割線9が直線状に形成されているため、鋏などを用いることなく、1錠単位で分割又は分離でき、任意の数、例えば、奇数個(奇数単位)の単位ポケット区画10であっても効率よく分割又は分離できる。そのため、奇数個(奇数単位)の単位ポケット区画10を分割する場合であっても、鋏を使用して切断するという煩雑な作業を必要とせず、調剤スピード・効率を向上できる。
【0030】
図3は本発明の他の包装体11を示す概略平面図である。なお、前記図1及び図2と同様の要素には同一の符号を付して説明する(以下、同じ)。
【0031】
この例では、第1のポケット列4と第2のポケット列6との間隔Xに対して、各ポケット列4,6でのポケット部3,5の間隔Yを、Y/X=0.3〜0.8(例えば、0.4〜0.5)程度とし、各ポケット列4,6を基準とした分割線9の角度(狭角側の角度、すなわち第1の分割線9aから側辺に至る半時計方向の角度)θ1を75〜85°程度としている。また、三角形状の単位ポケット区画(1錠単位区画)20を、角度θ2が10〜30°(例えば、15〜25°)程度の鋭角部を頂部とする二等辺三角形状に形成している。このような形状の単位ポケット区画20は、図1及び図2の包装体11での単位ポケット区画10よりも横方向の長さがさらに大きくなるため、誤って服用するのをさらに有効に防止できる。
【0032】
図4は本発明の包装体21の他の例を示す概略平面図である。
【0033】
この例では、第1のポケット列4と第2のポケット列6との間隔Xに対して、各ポケット列4,6でのポケット部3,5の間隔Yを、Y/X=0.65〜0.95(例えば、0.7〜0.9)程度とし、各ポケット列4,6を基準とした分割線9の角度(狭角側の角度、すなわち第1の分割線9aからポケット列4に至る半時計方向の角度)θ1を70〜80°程度としている。また、三角形状の単位ポケット区画(1錠単位区画)30を、角度θ2が20〜40°(例えば、25〜35°)程度の鋭角部を頂部とする二等辺三角形状に形成している。このような形状の単位ポケット区画30は、図1及び図2の包装体11での単位ポケット区画10よりも横方向の長さがさらに大きくなるため、誤って服用するのをさらに有効に防止できる。
【0034】
この例では、さらに、仮に誤飲・服用したとしても、口腔内や食道の損傷を防止するため、各単位ポケット区画30の角部が鈍角に形成されている。すなわち、包装体21の外周部のコーナー部(4つのコーナー部)は頂部が斜め方向に切除されているとともに、包装体21の外周部(両側辺)のうち、縦方向に隣接する各ポケット部3,3(5,5)間の中央部(中間部)に対応する部位(三角形状の単位ポケット区画30の鋭角な頂部に対応する部位)には、それぞれ、底部が平坦なV字状切り込み部81aが形成されている。そのため、1錠単位に分割しても、角部が鋭角でないため、口腔内や食道の損傷を抑制できる。
【0035】
図5は本発明の別の包装体31を示す概略平面図である。この例では、図4の例において、縦長状の包装体が示されており、第1のポケット列4と第2のポケット列6との間隔Xに対して、各ポケット列4,6でのポケット部3,5の間隔Yを、Y/X=0.9〜1.5(例えば、1.2〜1.4)程度としている。また、各ポケット列4,6を基準とした分割線9の角度θ1を50〜70°程度とし、頂部角度θ2を40〜80°(例えば、50〜70°)程度とする正三角形状の単位ポケット区画(1錠単位区画)40を形成している。なお、切り込み部81bは底部が平坦でV字状の形態を有しており、図4に示すV字状切り込み部81aよりも全体として縦方向に拡がった形態に形成されている。このような形状の単位ポケット区画40は、縦横方向の長さが大きいため、誤って服用するのを有効に防止でき、誤飲したとしても口腔内や食道の損傷を抑制できる。
【0036】
図6は本発明の包装体41のさらに他の例を示す概略平面図である。この例では、図4の例において、横長状の包装体が示されており、第1のポケット列4と第2のポケット列6との間隔Xに対して、各ポケット列4,6でのポケット部3,5の間隔Yを、Y/X=0.25〜0.55(例えば、0.3〜0.5)程度としている。また、各ポケット列4,6を基準とした分割線9の角度θ1を75〜85°程度とし、頂部角度θ2を10〜30°(例えば、15〜25°)程度とする二等辺三角形状の細長い単位ポケット区画(1錠単位区画)50を形成している。また、底部が平坦でV字状の切り込み部81cは、図4に示すV字状切り込み部81aよりも縦方向に狭まった形態に形成されている。このような形状の単位ポケット区画50は、横方向の長さが大きいため、誤って服用するのを有効に防止でき、誤飲したとしても口腔内や食道の損傷を抑制できる。
【0037】
図7は本発明の包装体51の他の例を示す概略平面図である。この例では、図4の例において、各単位ポケット区画30の角部を湾曲したアール状に形成している。すなわち、包装体51の外周部のコーナー部を湾曲状に切除するとともに、包装体51の外周部(両側辺)のうち、縦方向に隣接する各ポケット部3,3(5,5)間の中央部(中間部)に対応する部位(三角形状の単位ポケット区画30の鋭角な頂部に対応する部位)には、それぞれ切り込み部(V字状切り込み部)72が形成され、この切り込み部72は、底部が切り込み部72の開口部方向に向かって緩やかに湾曲し、かつ切り込み部72の開口部は包装体21の側辺に向かってなだらかに湾曲している。そのため、包装体51を1錠単位に分割しても、角部が湾曲してなだらかなアール状の1錠単位(単位ポケット区画30)に分割できるため、口腔内や食道の損傷をさらに有効に抑制できる。
【0038】
図8は本発明の包装体61のさらに他の例を示す概略平面図である。
【0039】
この例では、図4に示す例において、底部が平坦なV字状切り込み部81aに代えて、包装体61の外周部(両側辺)のうち、縦方向に隣接する各ポケット部3,3(5,5)間の中央部(中間部)に対応する部位(三角形状の単位ポケット区画30の鋭角な頂部に対応する部位)に、一対の湾曲した切り込み部83が形成され、この一対の切り込み部83,83間に湾曲した山形状の突起部91を形成している。前記各切り込み部83の湾曲した底部には、各分割線9a,9bの終端部が至っている。
【0040】
このような形態の包装体61では、図4に示す形態の包装体の切り込み部81に比べて、切り込み部83の面積が小さく、コスト的に有利であると共に、山形状の突起部91により横方向の長さを確保でき、単位ポケット区画30の誤飲を有効に防止できると共に、誤飲したとしても口腔内や食道の損傷を抑制できる。また、分割線9a,9bの位置が多少縦横方向にずれたとしても、各分割線9a,9bを切り込み部83に至らせているため、安定して誤飲防止に有効な包装体を得ることができる。
【0041】
なお、複数のポケット部は、前記のように(1)千鳥状に互い違いに配列してもよく、(2)横方向に平行に(又は格子ドット状に)配列してもよい。また、分割線は、隣接するポケット列の間で交差することなく、単一のポケット部を含む三角形状の区画(単位区画)に分割可能な形態に形成すればよく、第1の分割線を斜め方向に形成し、第2の分割線を斜め方向(第1の分割線とは傾斜方向が異なる斜め方向)又は横方向(ポケット列に対して直交する方向)に形成してもよい。特に、複数のポケット部を、(1)千鳥状に互い違いに配列する場合、第2の分割線を、斜め方向に形成して、単一のポケット部を含む三角形状の区画(二等辺三角形状などの単位区画)に分割可能な形態に形成してもよく、複数のポケット部を、(2)横方向に平行に配列する場合、第2の分割線は、横方向(ポケット列に対して直交する方向)に形成して単一のポケット部を含む三角形状の区画(直角二等辺又は不等辺三角形状などの単位区画)に分割可能な形態に形成してもよい。このような態様においても、隣接するポケット列の間隔よりも、前記ポケット列でのポケット部の間隔を小さく形成して、長細い三角形状の区画(横方向に長細い三角形状の区画)を形成すると、誤飲を有効に防止できる。
【0042】
図9は本発明の包装体71の別の例を示す概略平面図である。
【0043】
複数のポケット部13,15は、千鳥状の形態ではなく、隣接するポケット列14,16において、横方向に平行に(格子ドット状に)配列して形成されている。また、長細の三角形状の形態で単位区画80に分割するため、隣接するポケット列14,16の間隔よりも、前記ポケット列14,16でのポケット部13,15の間隔は小さく形成されている。すなわち、隣接するポケット列14,16において、四角形(この例では、横長の長方形)の頂点にポケット部13,15が位置する配列形態を有している。そして、この例では、第1の分割線19aは、前記と同様に、隣接するポケット列14,16の間で交差することなく、前記隣接するポケット列14,16のポケット部13,15間を斜め方向に延びて形成されててる。一方、第2の分割線19bは横方向(ポケット列に対して直交する方向)に形成している。すなわち、第2の分割線19bは、隣接するポケット列14,16に直交してポケット部13,15間(この例では、縦方向に隣接するポケット部13,15の中間部)に横方向に延びている。
【0044】
さらに、隣接する一対のポケット列14,16の両側辺のうち、縦方向に隣接するポケット部13,15間には、それぞれ、底部幅が狭い台形状の切り込み部84が形成され、この切り込み部84に前記分割線19(19a,19b)の終端部が至っている。すなわち、ポケット部13,15間に侵入した形態で切り込み部84の底部が形成され、この切り込み部84の底部の両側部に分割線19が延び、各分割線19a,19bの仮想延長線は、前記切り込み部84の内部空間(縦方向に隣接するポケット部13,15の間)で交差している。
【0045】
なお、この例では、ポケット列14,16の間隔Xと、各ポケット列14,16で縦方向に隣接するポケット部13,15の間隔Yとの割合は、Y/X=0.3〜1.1(例えば、0.5〜0.8)程度としている。また、各ポケット列14,16を基準とした第2の分割線19bの角度θ3を10〜40°程度としている。
【0046】
さらに、切り込み部84の底部は、ポケット列14,16に対して若干斜め方向に傾斜して形成され、切り込み部84の両側辺も互いに非対称の形態で傾斜して形成れている。そのため、単一のポケット部3,5を含む区画(1錠単位区画)80は、横方向に細長く、各角部が若干歪に面取された直角三角形状の形態を有している。
【0047】
このような包装体71は、前記と同様に長細い三角形状であるため、有効に誤飲を防止できるとともに、万一飲み込んだとしても角部が鈍角に形成されているため、口腔内や消化管を傷つけるのを抑制できる。しかも、ポケット部13,15が縦横方向に規則的に格子状の形態で形成され、かつ第2の分割線19bが横方向に形成されているため、包装体71の生産性を高めることができる。
【0048】
なお、前記の例において、横方向に延びる第2の分割線19bは、ポケット列14,16に対して必ずしも直交している必要はなく、ポケット列14,16に対して若干傾斜していてもよい。また、前記分割線19は、縦方向に隣接するポケット部13,15の間で交差する必要はなく、ポケット列14,16の両側部域で交差していてもよい。すなわち、分割線19は、縦方向に隣接するポケット部13,15の間からポケット列14,16の両側部域に至る領域で交差していてもよい。切り込み部84は必ずしも必要はなく、切り込み部74の形状は前記形態に限らず、種々の形状に形成できる。
【0049】
なお、包装体において、基材シートとしては、ポケット部を形成可能な種々の材料、例えば、プラスチックシートなどが使用できる。前記各ポケット列でのポケット部の間隔は等間隔であり、複数のポケット列におけるポケット部の間隔は同じであるのが好ましい。複数のポケット列は、少なくとも第1及び第2のポケット列で構成でき、分割線が斜め方向に横断する第1及び第2のポケット列(2列のポケット列)を含む単位を1つの単位体としたとき、複数の単位包装体を横方向に隣接させて配列してもよい。好ましい態様では、包装体の複数のポケット列は、横方向に互いに平行に隣接する第1のポケット列及び第2のポケット列(すなわち、2列のポケット列)で形成できる。
【0050】
少なくとも1つの分割線が斜め方向に横断する隣接ポケット列において、複数のポケット部は、縦横方向に(1)千鳥状に互い違いに又は(2)横方向に並列に配列されており、通常、規則的に配列されている。すなわち、(1)千鳥状の配列形態では、隣接するポケット列の縦方向において、一方のポケット列の一対のポケット部の位置に対して、他方のポケット列のポケット部が、前記一対のポケット部の中間(特に中央部)に位置している。換言すると、それぞれ縦方向に等間隔にポケット部が形成された複数ポケット列において、互いに隣接する一方のポケット列に対して、他方のポケット列が、前記一方のポケット列のポケット部の間隔の約1/2だけ縦方向に位置ずれした配列形態を有している。そのため、隣接するポケット列において、底辺をポケット列としたとき、複数のポケット部が三角形(特に、二等辺三角形)の頂点に位置した配列形態で、複数のポケット列及び複数のポケットが形成されている。一方、(2)複数のポケット部が横方向に並列に配列した形態では、格子ドット状の形態でポケット部が位置しており、四角形(正四角形又は長方形)の各頂部にポケット部が位置している。
【0051】
なお、隣接するポケット列の間隔X(X軸方向の間隔)と、前記ポケット列でのポケット部の間隔Y(Y軸方向の間隔)との関係は特に制限されず、包装体の縦方向及び横方向の長さに応じて定めることができ、上記間隔の割合Y/Xは、0.3〜2.5、特に0.3〜1.5(例えば、0.5〜1)程度の範囲から選択できる。隣接するポケット列の間隔Xよりも、前記ポケット列でのポケット部の間隔Yを小さくすると(Y/Xを小さくすると)、横方向に長い三角形状の単位ポケット区画(ポケット単位)を形成でき、1錠単位の個装体の誤飲を防止する上で有用である。このような点から、上記間隔の割合Y/Xは、0.6〜1.2、好ましくは0.65〜1.15,さらに好ましくは0.7〜1.1(例えば、0.75〜1.05)程度である。
【0052】
第2の分割線が横方向に延びる形態では、間隔の割合Y/Xは、例えば、0.4〜1.0、好ましくは0.45〜0.95、さらに好ましくは0.5〜0.9(例えば、0.55〜0.85)程度である。
【0053】
また、各ポケット列を基準とした分割線の角度(ポケット列に対して狭角側の角度)θ1は、10〜85°程度の範囲から選択でき、通常、30〜85°、好ましくは45〜85°、さらに好ましくは60〜85°(例えば70〜85°)程度である。また、三角形状(二等辺三角形状)の単位ポケット区画(1錠単位区画)の頂部に位置する鋭角部の角度θ2は5〜80°程度の範囲から選択でき、通常、10〜40°、好ましくは15〜35°程度である。
【0054】
第2の分割線が横方向に延びる形態では、第1の分割線と第2の分割線との角度θ3は、5〜50°程度の範囲から選択でき、通常、10〜45°好ましくは20〜40°、さらに好ましくは20〜30°程度である。
【0055】
なお、上記間隔の割合Y/X、分割線の角度及び鋭角部の角度は、包装体のサイズ(特に横方向又は幅方向の長さ)などに応じて選択できる。
【0056】
蓋材は、ポケット部に収容物を収容した状態で、ポケット部の開口面を封止可能であり、かつ少なくとも前記ポケット部で破断又は開封可能であればよく、アルミニウム箔などの破断可能な金属箔、紙、破断性フィルムなどで形成できる。
【0057】
包装体を、単一のポケット部を含む三角形状の区画、特に、横方向に長さが大きな三角形状の区画(単位ポケット区画)に分割するため、分割線は、前記隣接するポケット列のポケット部間を斜め方向に延びる第1の分割線と、前記隣接するポケット列を横断して延びる第2の分割線とを備えている。すなわち、少なくとも1つの分割線は、少なくとも2列のポケット列を斜め方向に横断しており、2つの分割線は2列のポケット列を横方向に横断して交差し、単一のポケット部を含む三角形状の区画に分割可能である。2つの分割線が互いに傾斜方向を異にして延びる場合、分割線は、前記隣接するポケット列のポケット部間(縦方向に隣接するポケット部間の中間位置)を斜め方向に横切って(又は横断して)交差している。一方、第2の分割線がポケット部間(特に、縦方向に隣接するポケット部間の中間位置)を横方向に横断して延びる場合、第1の分割線が前記隣接するポケット列のポケット部間(縦方向に隣接するポケット部間の中間位置)を斜め方向に横切って延び、第2の分割線と交差している。分割線は、三角形状の区画(単位ポケット区画)に分割可能な形態で形成すればよく、三角形状の区画は、正三角形状や直角二等辺三角形状であってもよいが、長細い三角形状(二等辺三角形状、直角不等辺三角形状など)であるのが誤飲防止に有利である。斜め方向に延びる分割線は、隣接するポケット列において、一方のポケット列のポケット部を基準にして、他方のポケット列の複数のポケット部のうち最も近接するポケット部ではないポケット部(非隣接ポケット部)を結ぶ線に対して平行に形成してもよいが、通常、一方のポケット列のポケット部と、このポケット部に隣接する他方のポケット列のポケット部を結ぶ線、すなわち互い違いに隣接するポケット部を結ぶ線に対して平行に形成する場合が多い。
【0058】
分割線は、通常、前記隣接するポケット列のポケット部の間からポケット列の両側部域(又は両側辺)に至る領域で交差しており、切り込み部がポケット部の間に深く侵入して形成されている場合、分割線の交差位置は、前記隣接するポケット列のポケット部よりも内側であってもよい。より具体的には、分割線は、隣接するポケット列の両側部域(ポケット列の左右外側の領域)で交差していてもよく、第1及び第2のポケット列(2列のポケット列)を含む1つの単位包装体の両側縁部で交差していてもよい。なお、分割線の交差部位は、前記単位包装体の両側辺であってもよく、両側縁の内側又は外側であってもよい。より詳細には、包装体の斜め方向に形成された分割線の開始端部及び終端部は、第1及び第2のポケット列(2列のポケット列)を含む1つの単位包装体として、2列のポケット列の間ではなく、2列のポケット列を備えた単位包装体の両側縁部に至っていてもよい。すなわち、分割線(又はその延長線)は、前記単位包装体の両側縁部で交差した形態で形成され、包装体の縦方向において上方向から下方向に向かって斜め方向にジクザグ状の形態で延びていてもよい。
【0059】
分割線は湾曲していてもよいが、直線状に形成するのが有利である。さらに、分割線は、基材シートだけに形成してもよく、基材シート及び蓋材の双方に形成してもよい。分割線は、ミシン目状であってもよいが、溝状の形態である場合が多い。
【0060】
本発明の包装体は、万一誤飲したとしても、被害を最小限に抑えるため、単位ポケット区画の角部が非鋭角に面取りされているのが好ましい。非鋭角な角部(面取りされた角部)は、頂部が切除された形態の多角形状(又は鈍角)の角部、頂部が湾曲してアール状に(又は丸く)形成された角部であってもよい。このような包装体は、患者に対する傷害性を大きく低減できる。
【0061】
ポケット部の収容物の種類は特に制限されず、固体(粉剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤など)、半固体(ゼリー状など)、液体(液剤など)であってもよい。医薬製剤においては、錠剤、カプセル剤などの固形製剤を収容する場合が多い。
【0062】
本発明の包装体は、ブリスター包装(PTP包装、ピールオープンタイプの包装形態など)に適しているが、特にブリスター包装、中でもPTP包装に適している。
【0063】
本発明では、斜め方向に横断する分割線により、1錠単位に分割又は分離しても、従来の正四角形状の1錠単位の区画に比べて、横方向に長くてサイズが大きく(誤飲防止に十分な大きさを確保でき)、しかも特異な三角形状の形態を有するため、誤って1錠単位の包装形態を服用するのを有効に防止できる。また、分割線(特に直線状の分割線)により、鋏を使用することなく包装体(PTP包装など)を1錠単位で、任意の数に簡単に分割又は切断可能である。特に、従来のPTP包装では、奇数個単位で分割又は切断するためには、鋏が必要であり、作業が煩雑であったのに対して、本発明では、任意の数の1錠単位に簡便かつ効率よく分割又は分離できる。そのため、調剤効率を大きく向上できる。なお、本発明の包装体は、従来の包装体(PTP包装体など)と同様の機能も備えている。すなわち、従来の方法で包装体を製剤でき、生産性が低下することはない。また、包装体を重ねても嵩高くなることもなく、基材シートに製品情報の記入も可能である。なお、1錠単位での横方向の長さを大きくすると、従来の包装体(PTP包装体など)よりもサイズが若干大きくなる場合があるものの、調剤棚などでの収納性を損なうこともない。さらに、調剤棚に収納可能なサイズにまで包装体の横方向の長さ(幅)を大きくすることにより、誤飲対策をより強固にすることもできる。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0065】
PTP包装体(PTP包装シート)を用い、2錠1単位の長方形状の区画(縦方向の長さ15.0mm、横方向の長さ(幅)30.5mm、ポケット部の直径6.7mm、2つのポケット部の中心間距離16.0mm)基準(スコア3)とし、以下の形態の1錠単位(1錠1単位の個装体)について、誤飲の可能性が高いPTP包装体をスコア「1」、誤飲の可能性の低いPTP包装体をスコア「5」とし、PTP包装体の誤飲における知識を十分に有するボランティア13名により「1」〜「5」の5段階の評価を行った。
【0066】
試料A:中心部にポケット部が形成された正方形状の区画(縦方向の長さ15.0mm、横方向の長さ(幅)15.0mm、ポケット部の直径6.7mm)
試料B:図4に示す形態、すなわち、細長い三角形状であり、角部の頂部が直線的に切除され面取りされた区画(縦方向の長さ18.1mm、横方向の長さ(幅)37.4mm、ポケット部の直径6.7mm)
試料C:中心部にポケット部が形成された正方形状の区画(縦方向の長さ15.0mm、横方向の長さ(幅)15.0mm、ポケット部の直径8.6mm)
試料D:図4に示す形態、すなわち、細長い三角形状であり、角部の頂部が直線的に切除され面取りされた区画(縦方向の長さ18.5mm、横方向の長さ(幅)39.4mm、ポケット部の直径8.6mm)
そして、各試料のスコアの平均値を算出した。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】

【0068】
表1から明らかなように、本発明の試料B及びDは、1錠単位に分割しても、誤飲の可能性が低く、誤飲の可能性は、基準とした2錠1単位のPTP包装体よりも低かった。そのため、患者の安全性を担保しつつ、利便性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のブリスター包装体(PTP包装体など)は、1単位のポケット区画(1錠単位の区画)に分割しても、誤飲を有効に防止できる。そのため、誤飲防止が必要な医薬製剤などの包装に適している。
【符号の説明】
【0070】
1,11,21,31,41,51,61,71…包装体
2…基材シート
3…第1のポケット部
4,14…第1のポケット列
5…第2のポケット部
6,16…第2のポケット列
7…錠剤
8…蓋材
9(9a,9b),19(19a,19b)…分割線
10,20,30,40,50,60,70,80…単位ポケット区画
81,82,83,84…切り込み部
91…突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向に所定の間隔で形成された複数のポケット部と、この複数のポケット部で形成されたポケット列が横方向に隣接して形成された複数のポケット列とを備えた基材シートと;少なくとも前記ポケット部で破断可能であり、かつ前記ポケット部に収容物を収容した状態で、前記基材シートのポケット部の開口面をシールしてポケット部を封止するための蓋材と;前記基材シートに形成され、かつ各ポケット部の区画を分割するための分割線とを備えた包装体であって、
前記隣接するポケット列において、複数のポケット部が、千鳥状に互い違いに又は横方向に平行に配列され、前記分割線が、隣接するポケット列の間で交差することなく、単一のポケット部を含む三角形状の区画に分割可能な形態で形成されており、前記隣接するポケット列のポケット部間を斜め方向に延びる第1の分割線と、前記隣接するポケット列を横断して延びる第2の分割線とを備えている包装体。
【請求項2】
隣接するポケット列において、複数のポケット部が、千鳥状に互い違いに配列され、前記分割線が、隣接するポケット列の間で交差することなく、前記隣接するポケット列のポケット部間を斜め方向に延びる第1及び第2の分割線を備えている請求項1記載の包装体。
【請求項3】
隣接するポケット列において、複数のポケット部が横方向に平行に配列され、前記分割線が、隣接するポケット列の間で交差することなく、前記隣接するポケット列のポケット部間を斜め方向に延びる第1の分割線と、隣接するポケット列のポケット部間に横方向に延びる第2の分割線とを備えている請求項1記載の包装体。
【請求項4】
分割線が、隣接するポケット列のポケット部の間からポケット列の両側辺に至る領域で交差している請求項1〜3のいずれかに記載の包装体。
【請求項5】
分割線が、長細い三角形状の区画に分割可能な形態で形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の包装体。
【請求項6】
隣接するポケット列の間隔よりも、前記ポケット列でのポケット部の間隔が小さく形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の包装体。
【請求項7】
隣接するポケット列の縦方向において、一方のポケット列の一対のポケット部の位置に対して、他方のポケット列のポケット部が、前記一対のポケット部の中間に位置している請求項1、2、4〜6のいずれかに記載の包装体。
【請求項8】
隣接するポケット列において、底辺をポケット列としたとき、複数のポケット部が二等辺三角形の頂点に位置する配列形態を有する請求項1、2、4〜7のいずれかに記載の包装体。
【請求項9】
ポケット部の区画の角部が面取りされている請求項1〜8のいずれかに記載の包装体。
【請求項10】
ポケット部の区画の角部が鈍角又は湾曲したアール状に形成されている請求項1〜9のいずれかに記載の包装体。
【請求項11】
複数のポケット列が、第1のポケット列と、この第1のポケット列と平行に隣接する第2のポケット列とで形成されている請求項1〜10のいずれかに記載の包装体。
【請求項12】
複数のポケット列が隣接する一対のポケット列で形成され、この一対のポケット列の両側辺のうち、縦方向に隣接するポケット部間に切り込み部が形成され、この切り込み部に分割線が至っている請求項1〜11のいずれかに記載の包装体。
【請求項13】
ポケット部に固形製剤が収容されている請求項1〜12のいずれかに記載の包装体。
【請求項14】
プレススルーパック包装体である請求項1〜13のいずれかに記載の包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239648(P2012−239648A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112737(P2011−112737)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000161965)京都薬品工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】