説明

ブリッジセンサの断線検出装置

【課題】正確な断線検出を実現するブリッジセンサの断線検出装置を提供する。
【解決手段】歪みゲージをブリッジ回路に組み込んで成るセンサ部2と、このセンサ部2の電源端子に接続して電流の検出を行う電流検出部3と、この電流検出部3による検出値と基準電流値とを比較して、その比較結果に応じて前記センサ部の断線の有無を判定する比較判定部4とを備えるブリッジセンサの断線検出装置1による。この構成により、センサ部2の特性を変化させることなく、正確な判定結果を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪みゲージをブリッジ回路に組み込んで成る圧力センサ、加速度センサ、トルクセンサまたは変位センサを有し、機械的な微小変化量である歪みを電気信号として検出するトランスデューサ回路におけるブリッジセンサの断線検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歪みゲージをブリッジ回路に組み込んで成るセンサにおいて、その断線を検出可能な装置としては、特許文献1に示すものがある。この断線検出機能付きブリッジセンサは、4個の歪みゲージをブリッジ回路に組み込んで成るセンサ部の入力端には、2個の基準電圧が接続されており、スイッチング部を操作することにより、当該基準電圧を交互に接続可能に構成されている。そして、出力電圧値の変化率を比較することにより、断線等の動作不良を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−232127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記断線検出機能付きブリッジセンサにおいては、基準電圧の切り替えには処理時間を要する。そのため、この切り替えの間にセンサのインピーダンスが変化してしまうから、正確な断線検出を行うことができない問題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のブリッジセンサの断線検出装置は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、歪みゲージをブリッジ回路に組み込んで成るセンサ部と、このセンサ部の電源端子に接続して電流の検出を行う電流検出部と、この電流検出部による検出値と基準電流値とを比較して、その比較結果に応じて前記センサ部の断線の有無を判定する比較判定部とを備えている。
【0006】
また、前記電流検出部が、前記センサ部の電源端子に反転入力端子を接続するオペアンプ4と、当該電源端子にエミッタ端子を接続するトランジスタと、正電源電圧とトランジスタのコレクタ端子との間に接続される第1抵抗と、当該トランジスタとオペアンプとの間に接続される第2抵抗とから構成され、前記比較判定部がオペアンプから成り、このオペアンプの非反転端子には、第1抵抗の一端と前記トランジスタのコレクタ端子とが接続されて当該第1抵抗の一端の検出電圧が印加される一方、反転端子には、設定部が接続され、当該設定部に予め設定された基準電圧が印加されるよう構成され、前記検出電圧と基準電圧とを比較判定して前記センサ部の断線の有無を判定するよう構成されている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載のブリッジセンサの断線検出装置によれば、センサ部に電流検出部を接続して、その電流検出値を基準電流値と比較判定するよう構成されている。これにより、センサ部の特性を変化させることなく、正確な判定結果を得ることができる。
【0008】
請求項2に記載のブリッジセンサの断線検出装置によれば、常時、異常検出することができる。そればかりか、少ない部品点数で電流検出部および比較判定部を構成することができ、コスト面においても優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のブリッジセンサの断線検出装置の構成図である。
【図2】本発明のブリッジセンサの断線検出装置の他の実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1はブリッジセンサの断線検出装置であり、歪みゲージの抵抗体R1,R2,R3,R4をブリッジ回路に組み込んで成るセンサ部2を有している。また、このセンサ部2の電源端子T1には定電圧源5により供給される高精度な電圧が電流検出部3を介して印加される。
【0011】
前記電流検出部3は、前記センサ部の電源端子に反転入力端子を接続するオペアンプ4と、同じく当該電源端子にエミッタ端子を接続するトランジスタ11と、正電源電圧VCCとトランジスタ11のコレクタ端子との間に接続される第1抵抗R6と、当該トランジスタ11とオペアンプ4との間に接続される第2抵抗R7とから構成される。
【0012】
前記定電圧源5は、高精度の電圧リファレンス回路であり、温度補償型のツェナーダイオード6と、電流制限抵抗R5とから構成されている。そして、このツェナーダイオード6のカソードが前記オペアンプ4の非反転入力端子に接続される。このような構成により、センサ部2には正電源電圧VCCが変動しても一定の電圧Vbiasが印加される。
【0013】
また、本発明のブリッジセンサの断線検出装置1においては、前記電流検出部3による検出値と設定部10に設定された基準電流値との比較を行う比較判定部4を有している。この比較判定部4はオペアンプ4で構成され、このオペアンプ4の非反転端子には、前記トランジスタ11のコレクタ端子が接続される一方、反転端子には詳細を後述する設定部10が接続されている。この構成により、非反転端子に印加される電圧Vsensが反転端子に印加される電圧Vrefよりも大きければ、断線異常信号を制御部9へ送る。
【0014】
さらに、前記センサ部2の両出力端子T3,T4における出力電圧信号は、計装アンプ7で増幅され、A/D変換部8でディジタル変換されて制御部9へ送られる。これを制御部9が電気信号として受信して解析することにより、トルク、圧力あるいは加速度等の各種データを検出することができる。
【0015】
以下、本発明のブリッジセンサの断線検出装置1による断線検出動作を説明する。前記センサ部2の電源端子T1に電圧Vbiasが印加されている場合、センサ部2へ流れ込む電流Ibiasは、センサ部2の合成抵抗をRsとすると、Ibias =Vbias/Rs(式1)として与えられる。ここで、センサ部2の少なくともいずれか一本が断線した場合、センサ部2の合成抵抗Rsが変わり、その結果、供給される電流値は、正常時の電流値に比べて必ず小さくなる。
【0016】
そこで、基準電流値は、正常なセンサ部2に電圧Vbiasを印加したとき、流れ込む電流値と、断線した場合に流れる最大の電流値との間に設定されている。そして、比較判定部4が検出電流値と当該基準電流値との比較を行い、その結果、検出電流値が基準電流値より小さいと判定すると、断線異常信号を制御部9へ送り、表示部(図示せず)に異常を表示するよう構成されている。
【0017】
また、断線は複数箇所で発生する可能性もある。特に、ブリッジ回路同士を並列接続して計8本の歪みゲージを組み込んで成るセンサ部においては、歪みゲージの引出線の数も多く、複数の断線が発生する可能性も高くなる。
【0018】
そこで、センサ部2においては断線数に応じて異常時に検出される電流値が異なるという特性を利用して断線本数の判定を可能な構成とする。具体的には、前記比較判定部4と前記設定部10との組合わせを断線本数に応じて複数個設ける。また、それぞれの設定部には、予めあらゆる箇所を断線させてそのあらゆる断線数別に測定した電流値が設定されている。そして、断線数に対応する比較判定部4から断線信号が発せられれるから、制御部9はその信号を受信して断線数を表示するよう構成されている。このため、作業者には修理しなければならない断線数が明らかになり、断線修理を迅速かつ正確に行うことができる。
【0019】
以下、電流検出部3に流れる電流を電圧に置き換えて断線を検出する構成を説明する。
【0020】
前記第1抵抗R6を流れる電流Isensは、センサ部2に流れる電流Ibiasと同じであるから、Isens=Ibias(式2)が成り立つ。これにより、第1抵抗R6の両端の電位差VR6は、VR6=Vbias/Rs×R6(式3)となる。したがって、第1抵抗R6の一端の電圧Vsensは、Vsens=VCC−Vbias/Rs×R6(式4)として表される。この検出電圧Vsensが、比較判定部4のオペアンプの非反転端子に印加される。断線時には、合成抵抗Rsが大きくなるから(式4)に基づき検出電圧Vsensは正常時よりも大きくなることがわかる。そして、正常時の電圧を基準電圧Vrefとして設定し、比較判定部4がVsensとVrefを比較判定し、検出電圧Vsensが基準電圧Vrefよりも大きければ、異常信号を制御部9へ送り、表示部に異常を表示するよう構成されている。
【0021】
以上の構成から成る電流検出部3および比較判定部4によれば、センサ部2に供給される電流を前記第1抵抗R6を利用して電流を電圧に変換するよう構成されている。これにより、常時、異常検出して即座に判定結果を得られるとともに、その判定精度も向上する。そればかりか、少ない部品点数で電流検出部3および比較判定部4を構成することができ、コスト面においても優れた装置を提供することができる。
【0022】
以下、本発明の他の実施形態を図2に基づいて説明する。1’はブリッジセンサの断線検出装置であり、上記ブリッジセンサの断線検出装置1において図1に示す比較判定部4を不要とした構成である。
【0023】
その構成としては、前記比較判定部4と設定部10に代えて、A/D変換器9aを設ける。このA/D変換器9aはマイクロプロセッサに内蔵されており、すなわちマイクロプロプロセッサ等で構成される制御部9に内蔵されている。このA/D変換器9aの入力端子には電流検出部3のトランジスタ11のコレクタ端子が接続されている。この構成により、相対値での比較判定処理が可能となり、別途基準電圧を設けて構成する必要がなくなる。
【0024】
また、前記トランジスタ11のコレクタ端子側に接続された前記第1抵抗R6の抵抗値は、その一端の検出電圧Vsensが前記A/D変換器9aの定格電圧を超えないように設定されている。そして、電源投入時のA/D変換器のディジタル出力値を正常時の基準電圧Vrefとして読み込み記憶し、基準電圧Vrefとして設定し、この基準電圧Vrefと検出電圧Vsensとを常時比較判定することにより、断線検出を行うよう構成されている。この構成によれば、別個に比較判定部を設ける必要が無くなる。しかも、電源投入毎に基準電圧Vrefを設定し直すので、センサ部2が経年劣化により温度特性が変化して正常時(断線無し)における基準電圧Vrefが変化した場合でも、正確な断線検出を行うことができる。なお、この構成は、複数の断線検出においても適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 ブリッジセンサの断線検出装置
2 センサ部
3 電流検出部
4 比較判定部
5 定電圧源
6 ツェナーダイオード
7 計装アンプ
8 A/D変換部
9 制御部
10 設定部
11 トランジスタ
12 オペアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪みゲージをブリッジ回路に組み込んで成るセンサ部と、
このセンサ部の電源端子に接続して電流の検出を行う電流検出部と、
この電流検出部による検出値と基準電流値とを比較して、その比較結果に応じて前記センサ部の断線の有無を判定する比較判定部と
を備えていることを特徴とするブリッジセンサの断線検出装置。
【請求項2】
前記電流検出部が、前記センサ部の電源端子に反転入力端子を接続するオペアンプ4と、当該電源端子にエミッタ端子を接続するトランジスタと、正電源電圧とトランジスタのコレクタ端子との間に接続される第1抵抗と、当該トランジスタとオペアンプとの間に接続される第2抵抗とから構成され、
前記比較判定部がオペアンプから成り、このオペアンプの非反転端子には、第1抵抗の一端と前記トランジスタのコレクタ端子とが接続されて当該第1抵抗の一端の検出電圧が印加される一方、反転端子には、設定部が接続され、当該設定部に予め設定された基準電圧が印加されるよう構成され、
前記検出電圧と基準電圧とを比較判定して前記センサ部の断線の有無を判定するよう構成されていることを特徴とする請求項1に記載のブリッジセンサの断線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−47636(P2012−47636A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191063(P2010−191063)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】