説明

ブリッスル集束体

【課題】ブリッスル集束体をギロチンカッター式切断機で連続的に切断する際に、フィラメント線材がテーピング部から横に押し出されることがなく、フィラメント屑の発生を大幅に削減可能なブリッスル集束体を提供する。
【解決手段】複数本の熱可塑性モノフィラメントを集束し、その外周にテーピングを施してなるブリッスル束1の片端面に、前記熱可塑性モノフィラメント同士が相互に融着した融着部3を形成してなり、前記融着部3の面積が、ブリッスル集束体断面積の100〜130%の範囲にあり、かつこの融着部3の長手方向の長さが1〜5mmの範囲にあることを特徴とするブリッスル集束体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギロチンカッター式切断機による切断性を改良したブリッスル集束体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の歯ブラシや樹脂製工業用ブラシなどを製造する際に、ブラシ基材に毛材を植毛するためには、複数本の熱可塑性フィラメントに紙テープまたは樹脂テープでテーピングを施したブリッスル集束体を植毛機に供給して、基材のブラシ植毛部へ毛材を植毛するのが一般的である。そして、特に近年では植毛機の高性能化が進んでおり、従来に比べて植毛ミスが少なく、ブリッスル集束体を余すことなく植毛することができるようになってきている。
【0003】
従来から、目的の毛丈に合わせた長さのブリッスル集束体を使用することで、均等な毛丈に揃ったブラシ毛材を得る方法が採られており、ブリッスル集束体を目的とする長さの毛丈に切り揃える方法としては、ブリッスル集束体を公知のギロチンカッター式切断機に供して、順次一定間隔に切断する方法が一般的にとられている。
【0004】
しかしながら、ギロチンカッター式切断機は押し切り方式の切断形式であることから、ブリッスル集束体のテーピング結束部とフィラメント線材との摩擦抵抗が小さくなる端部においては、図2(a)および(b)に示した如く、ブリッスル集束体4のテーピング結束部からフィラメント線材6が押し出されてしまいうため、フィラメント線材の長さが揃わなくなった最端部は屑として捨てられており、この点でかなりの経済的不利を招いていた。
【0005】
このような不利を解消するためには、ブリッスル集束体を、高水圧カッターやノコギリ方式でカットする方法も考えられるが、高水圧カッターでは、フィラメント線材の内部に水や研磨粒子が浸入して製品の性能が阻害されてしまい、また、ノコギリ方式では、特にブリッスル線材が細い場合において、刃が線材に引っかかり切断面が痛められてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、ブリッスル集束体の長さを、従来の更に2倍から3倍にすることにより、フィラメントの屑量を減らす対策が採られているが、この方法によっても屑を大幅に削減できるわけではなく、また、製造メーカーにとっても製造する際の設備的要因により、ブリッスル集束体を取り扱いにくいといった問題があった。
【0007】
一方、切断した糸束の切断面で溶けた糸が尾を引くことを防止するために、糸束の切断面を整える方法(例えば、特許文献1参照)が提案されているが、この方法は、糸束の切断面を整える方法ではあるものの、熱溶着による糸束切断方法であることから、糸束内部のフィラメント線材が互いに融着してしまうため、この方法にブリッスル集束体の切断を適用したとしても、切断後のフィラメント線材をブラシ毛材として植毛するには不向きであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−42993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ブリッスル集束体をギロチンカッター式切断機で連続的に切断する際の切断性の改良、つまり、フィラメント線材がテーピング部から横に押し出されることがなく、切断の際に発生するフィラメント屑を大幅に削減可能なブリッスル集束体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明によれば、複数本の熱可塑性モノフィラメントを集束し、その外周にテーピングを施してなるブリッスル束の片端面に、前記熱可塑性モノフィラメント同士が相互に融着した融着部を形成してなり、前記融着部の面積が、ブリッスル集束体断面積の100〜130%の範囲にあり、かつこの融着部の長手方向の長さが1〜5mmの範囲にあることを特徴とするブリッスル集束体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、片端面に融着部を持つブリッスル集束体であるため、従来のブリッスル集束体に比べ、ギロチンカッター式切断機でカットする際にテーピング結束部からフィラメント線材が押し出されることがなく、所望の長さを均等に揃えたブリッスル集束体を、融着部に極めて近い部分まで有効に形成することができ、フィラメント屑の発生を大幅に削減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)および(b)は本発明のブリッスル集束体を示す模式図である。
【図2】(a)および(b)は従来のブリッスル集束体を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のブリッスル集束体について、図面にしたがって具体的に説明する。
【0014】
図1(a)および(b)は本発明のブリッスル集束体の一例を示した模式図であり、符号1はブリッスル集束体、符号2はこのブリッスル集束体を一定間隔に切断していった際の最端部を示し、符号3は融着部を示す。
【0015】
本発明のブリッスル集束体1をギロチンカッター式切断機により一定間隔で切断してゆくと、最後に残った最端部2は図1(b)のようになり、最端面には熱可塑性モノフィラメント同士が相互に融着した融着部3が形成されているため、切断の際にテーピング結束部から束内のフィラメント線材が横に押し出されることがなく、融着部3に極めて近い部分まで切断することが可能で、最後のカットブリッスル2も融着部3を取り除くだけで製品とすることができる。したがって、フィラメント屑の発生を大幅に削減することができ、経済的有利な効果が得られるのである。
【0016】
なお、前記融着部3の面積は、ブリッスル集束体1の断面積の100〜130%であることが好ましく、更には105〜110%の範囲にあることが好ましい。また、前記融着部3の長手方向の長さは、1mm〜5mmの範囲にあることが好ましく、更には2〜4mmの範囲にあることが好ましい。
【0017】
前記融着部3の面積が上記範囲未満の場合は、フィラメント線材同士が強固に融着されず、フィラメント線材がテーピング結束部から横に押し出されてしまう。同様に上記範囲以上の場合は、ブリッスル集束体をギロチンカッター式切断機に設置する際に、ブリッスル集束体が浮いてしまうため、ブリッスル集束体を連続的に切断する際において、特に最端面をカットする際に垂直に切断することが出来ないため好ましくない。
【0018】
また、前記融着部3の長手方向の長さが上記範囲未満の場合は、ギロチンカッター式切断機で切断する際に融着面が割れ、フィラメント線材がテーピング結束部から横に押し出されてしまうため好ましくなく、上記範囲以上である場合には、屑量が多くなり、ブラシ加工メーカーにおいてのコスト負担が大きくなるために好ましくない。
【0019】
ここで、本発明のブリッスル集束体に使用する熱可塑性フィラメント線材については特に限定はしないが、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロンMDX6、ナイロン11、ナイロン12、ポリ(カプラミド/ヘキサメチレンアジパミド)共重合体およびポリ(カプラミド/ラウラミド)共重合体などのポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリフェニレンサルファイド、ポリテトラフルオロエチレン、パーフルオロチレン・プロピレン共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・パーフルオロジオキソール共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフルオライド共重合体テトラフルオロエチレン・エチレンクロライド共重合体、フルオロビニルエーテル共重合体などのフッ素系樹脂、ポリオレフィン樹脂など、溶融紡糸できる樹脂であればいずれでも使用でき、1種類ないしは2種類以上の樹脂を適宜選択して使用することができ、さらには、上記樹脂に研磨粒子を混入させることもできる。
【0020】
次に、本発明のブリッスル集束体の製造方法について説明するが、以下に説明する製造方法は、本発明のブリッスル集束体を得るための一例に過ぎず、全てこの方法に限定されるものではない。
【0021】
まず、熱可塑性樹脂製モノフィラメント線材の複数本を引き揃え、これにテーピングを施して固定し、所定の長さ、例えば80〜250cm程度の長さに切断する。次に、前記ブリッスル集束体の片端面を、500℃程度の温度に加熱した金属鉄板に押し当てて溶融することにより融着部2を形成する。その後、融着部2を冷却固化することにより、片端面で熱可塑性モノフィラメント同士が相互に融着した本発明のブリッスル集束体を得ることができる。
【0022】
以上、説明したとおり、本発明のブリッスル集束体は、ギロチンカッター式切断機で切断する際の屑の発生が少なく、従来のブリッスル集束体に比べてブラシメーカーのコスト負担が少なく、また環境に負荷がかからないため、その実用性は極めて高い。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0024】
実施例におけるブリッスル集束体のギロチンカッター式切断機による切断性能評価方法は次の通りである。
【0025】
まず、評価に使用したブリッスル集束体は、実施例と比較例との相対評価をするために、総重量は全て一定となるよう、それぞれ100kg分用意して評価した。ブリッスル集束体をギロチンカッター式切断機に乗せ、順次10cm間隔にカットしていった。その際、10cmにカットしたブリッスル集束体の両切断面が長手方向に対して垂直で、フィラメント線材がテーピング結束部から横に押し出されておらず、綺麗にカットできたものを良品とし、同様に、両切断面が束の長手方向に対して垂直になっていなかったり、フィラメント線材がテーピング結束部から横に押し出されたりしており、綺麗にカットできていないものを不良品として数える。不良品と、カットした残りの部位を屑化し、でき上がった良品の総重量を100(用意したブリッスル集束体重量100kg)で割り返すことにより、製品収率を算出した。
製品収率(%)=(良品の総重量÷100)×100
数値が大きいほど、切断性が良好でありブリッスル集束体の製品収率が良いことを示す。
【0026】
〔実施例1〕
直径0.6mmのナイロン6モノフィラメント線材を複数本束ね、厚さ0.3mm、幅35mmの紙テープでテーピングを施して固定し、束周長15cm、長手方向の長さ101cmのブリッスル集束体を作製した。次に、前記ブリッスル集束体の片端面を500℃の鉄板に押し当てて融着させ、その後、冷却することにより、前記ブリッスル集束体の断面積に対して110%、長手方向に2mmの融着部を片端に持ち、もう一方の片端には融着部を持たない、長手方向の部分の長さ100cmのブリッスル集束体を、総重量で100kg作製した。次に、このブリッスル集束体を、ギロチンカッター式切断機により10cm間隔に順次切断してゆき、その際に発生した屑量から、製品収率を算出した。評価結果を表1に示す。
【0027】
〔実施例2〕
ブリッスル集束体の融着部面積を、ブリッスル集束体の断面積に対して130%、同じく長さを長手方向に5mmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にてブリッスル集束体を作製した。評価結果を表1に示す
【0028】
〔比較例1〕
ブリッスル集束体の融着部面積をブリッスル集束体の断面積に対して150%、同じく長さを長手方向に0.5mmに変更したこと以外は、実施例1と同様の方法にて評価を実施した。評価結果を表1に示す。
【0029】
〔比較例2〕
ブリッスル集束体の片端に融着部を形成することなく、長手方向の長さ100cmのブリッスル集束体を総重量で100kg作製し、製品収率を算出した。評価結果を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1の結果から、実施例1および2に示した本発明のブリッスル集束体は、屑量の発生が少なく、製品収率が良好である。
【0032】
一方、本発明の条件を満たさない比較例1および2のブリッスル集束体は、切断性に劣り、製品収率が悪かった。
【0033】
すなわち、比較例1では、融着部面積が大きくしかもその長手方向の長さが短いことから、ブリッスル集束体の最端部において、束切断の際に融着面が割れて、フィラメント線材がテーピング結束部から横に押し出されてしまったため、この最端部が不良品となったばかりか、製品収率が極めて悪かった。また、比較例2は、融着部が形成されていないため、同様にフィラメント線材がテーピング結束部から押し出されて不良品となり、製品収率が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
以上、説明したとおり、本発明のブリッスル集束体は、ギロチンカッター式切断機で連続的に切断する際に、特に最端部において、フィラメント線材がテーピング部から横に押し出されることがなく、カットの際に発生する屑を大幅に削減できるため、コストダウンを図ることが可能で、その実用性は極めて高い。
【符号の説明】
【0035】
1…本発明のブリッスル集束体
2…ブリッスル集束体の最端部
3…融着部
4…従来のブリッスル集束体
5…従来のブリッスル集束体の最端部
6…従来のブリッスル集束体から押し出されたフィラメント線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の熱可塑性モノフィラメントを集束し、その外周にテーピングを施してなるブリッスル束の片端面に、前記熱可塑性モノフィラメント同士が相互に融着した融着部を形成してなり、前記融着部の面積が、ブリッスル集束体断面積の100〜130%の範囲にあり、かつこの融着部の長手方向の長さが1〜5mmの範囲にあることを特徴とするブリッスル集束体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−75512(P2012−75512A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221300(P2010−221300)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】