説明

ブルドーザ

【課題】ブルドーザにおいて、吊り上げ時における排ガス処理アッセンブリの安定性向上とエンジン室内における排ガス処理アッセンブリのコンパクト性維持とを両立する。
【解決手段】ブルドーザ1において、第1係合孔Haは、第1側壁部12に近接する第1端部331Yの後方に配置され、第2係合孔Hbは、第2側壁部13に近接し第1端部331Yよりも後方に位置する第2端部331Zの前方に配置されている。第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbは、排ガス処理アッセンブリ33を上方から見た場合に、排ガス処理アッセンブリ33の重心Rを中心として対称的に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理アッセンブリを備えるブルドーザに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブルドーザなどの作業機械において、自然環境保護の観点から、排ガスを清浄化するための排ガス処理装置がエンジン室内に搭載されるようになっている。排ガス処理装置は、例えば、窒素酸化物(NOx)を低減する装置、一酸化炭素(CO)を低減する装置、或いは、粒子状物質を低減する装置などである。このような排ガス処理装置は、一般的に円筒状の外形を有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−156835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、排ガス処理装置の内部に堆積したアッシュを清掃する際には、排ガス処理装置をエンジン室から搬出する必要がある。しかしながら、排ガス処理装置は円筒状であるので、エンジン室から搬出された排ガス処理装置は、地面を転がって傷つきやすい。そこで、排ガス処理装置と台座とが一体化された排ガス処理アッセンブリを用いることが考えられる。
【0005】
このような排ガス処理アッセンブリは数十キログラム以上の重量物であり、エンジン室からの搬出及びエンジン室への搬入には吊り上げ機を用いる必要があるので、吊り上げ機を取り付けるための取付け部を排ガス処理アッセンブリに形成する必要がある。
【0006】
しかしながら、ブルドーザのエンジン室は一対の履帯の間に配置されるので、エンジン室の幅には限界がある。そのため、エンジン室内に排ガス処理アッセンブリをコンパクトに配置するには、排ガス処理アッセンブリを車幅方向に対して斜めに配置する必要がある。
【0007】
そのため、排ガス処理アッセンブリに取付け部を形成するにあたっては、吊り上げ時における排ガス処理アッセンブリの安定性を確保することはもちろんのこと、エンジン室内における排ガス処理アッセンブリのコンパクト性を維持する必要もある。
【0008】
本発明は、上述の状況に鑑みてなされたものであり、ブルドーザにおいて、吊り上げ時における排ガス処理アッセンブリの安定性向上とエンジン室内における排ガス処理アッセンブリのコンパクト性維持とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係るブルドーザは、運転室と、前後方向に沿ってそれぞれ配置され車幅方向において互いに離間する第1側壁部及び第2側壁部を有し、運転室の前方に配置されるエンジン室と、第1側壁部に近接する第1端部と、第2側壁部に近接し第1端部の斜め後方に位置する第2端部とを含み、車幅方向と交差する交差方向に沿って配置される円筒状の排ガス処理装置と、排ガス処理装置を支持する台座と、吊り上げ機を取り付けるための第1取付け部及び第2取付け部と、を有する排ガス処理アッセンブリと、を備える。第1取付け部は、車幅方向における第1側壁部と第2側壁部との中間を通る中間線の第1側壁部側、かつ、排ガス処理装置の第1端部の後方に配置され、第2取付け部は、中間線の第2側壁部側、かつ、排ガス処理装置の第2端部の前方に配置されている。第1取付け部と第2取付け部は、排ガス処理アッセンブリを上方から見た場合に、排ガス処理アッセンブリの重心を中心として対称的に配置される。
【0010】
本発明の第1の態様に係るブルドーザによれば、第1取付け部及び第2取付け部は、排ガス処理アッセンブリの重心を中心として対称的に配置されている。そのため、排ガス処理アッセンブリを吊り上げた際、排ガス処理アッセンブリが、第1取付け部及び第2取付け部を通る軸線を中心として揺動することを抑制できる。従って、吊り上げ時における排ガス処理アッセンブリの安定性を向上することができる。
【0011】
また、第1取付け部及び第2取付け部それぞれは、第1端部の後方と第2端部の前方の空間を利用して配置できる。そのため、第1取付け部及び第2取付け部を対称的に配置するための空間を積極的に設ける必要がないので、排ガス処理アッセンブリのコンパクト性を維持することができる。
【0012】
本発明の第2の態様に係るブルドーザは、第1の態様に係り、エンジン室内において車幅方向に沿って配置されるラジエータを備える。第2取付け部は、排ガス処理装置の第2端部とラジエータとの間に配置される。
【0013】
本発明の第2の態様に係るブルドーザによれば、排ガス処理装置とラジエータとの間に必然的に形成される空間を有効に利用することができるので、排ガス処理アッセンブリのコンパクト性を向上できる。
【0014】
本発明の第3の態様に係るブルドーザは、第1又は2の態様に係り、排ガス処理アッセンブリは、排ガス処理装置から発生する熱を遮るための第1遮熱板及び第2遮熱板を有する。第1取付け部及び第2取付け部それぞれは、第1遮熱板及び第2遮熱板それぞれに形成される。
【0015】
本発明の第3の態様に係るブルドーザによれば、排ガス処理装置から発生する熱が周辺部材に伝達されることを効率的に抑制することができる。
【0016】
本発明の第4の態様に係るブルドーザは、第1乃至第3のいずれかの態様に係り、台座は、複数の固定具によってそれぞれ固定される複数の被固定部を有する。複数の被固定部は、排ガス処理アッセンブリの上方及び側方のうち少なくとも一方から視認可能である。
【0017】
本発明の第4の態様に係るブルドーザによれば、排ガス処理アッセンブリから排ガス処理装置を取り外すことなく、台座を取り外せるとともにマウントに取りつけられる。従って、排ガス処理アッセンブリの着脱時の作業性を向上することができる。
【0018】
本発明の第5の態様に係るブルドーザは、第1乃至第4のいずれかの態様に係り、第1取付け部は、車幅方向において、第1側壁部と排ガス処理装置との間に配置され、第2取付け部は、車幅方向において、第2側壁部と排ガス処理装置との間に配置される。
【0019】
本発明の第5の態様に係るブルドーザによれば、斜めに配置された排ガス処理装置と第1側壁部及び第2側壁部それぞれとの間に形成される空間を有効に利用して、第1取付け部及び第2取付け部を設置できる。そのため、排ガス処理アッセンブリのコンパクト性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、排ガス処理を備えるブルドーザにおいて、排ガス処理アッセンブリの吊り上げ時における安定性とエンジン室内におけるコンパクト性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態に係るブルドーザ1の全体構成を示す左側面図である。
【図2】実施形態に係るブルドーザ1の一部を示す上面図である。
【図3】実施形態に係るエンジン室8を左上方から見た斜視図である。
【図4】実施形態に係るエンジン室8の内部構成を示す上面透視図である。
【図5】実施形態に係るエンジン室8の内部構成を示す斜視図である。
【図6】実施形態に係る排ガス処理アッセンブリ33の斜視図である。
【図7】実施形態に係るエンジン室8の内部構成を示す上面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(ブルドーザ1の全体構成)
図1は、実施形態に係るブルドーザ1の全体構成を示す左側面図である。図2は、実施形態に係るブルドーザ1の一部を示す上面図である。なお、以下の説明において、左右とは、運転室7内から前方を見た状態での左右の方向を意味するものとする。
【0023】
ブルドーザ1は、作業機2と、走行装置3と、車両本体4とを備える。作業機2は、ブレード5と油圧シリンダ6とを有する。ブレード5は、車両本体4の前方に配置される。油圧シリンダ6は、図示しない油圧ポンプで発生した油圧によって駆動され、ブレード5を上下に移動させる。走行装置3は、一対の履帯3aを有する走行装置であり、車両本体4に取り付けられる。車両本体4は、運転室7と、エンジン室8とを有する。
【0024】
運転室7には、図示しないシートや操作装置が内装されている。エンジン室8は、運転室7の前方に配置されている。エンジン室8は、一対の履帯3aの間に挟まれているので、エンジン室8の幅は一対の履帯3aの間隔内に制限されている。エンジン室8は、上面部11と、第1側壁部12と、第2側壁部13とを有する。
【0025】
上面部11は、概ね平坦(水平)な形状を有しており、エンジン室8の上方を覆っている。上面部11の後部は、後側ほど車幅方向における幅が小さくなるように先細りの形状を有する。上面部11の後端は、運転室7の前面に対向している。上面部11は、着脱可能な上方カバー14を有する。
【0026】
第1側壁部12は、前後方向に沿って設けられており、エンジン室8の左方を覆っている。第1側壁部12は、着脱可能な第1側方カバー15を有する。第2側壁部13は、前後方向に沿って設けられており、エンジン室8の右方を覆っている。第2側壁部13は、着脱可能な第2側方カバー16を有する。第1側壁部12と第2側壁部13とは、ブルドーザ1の前後方向に沿った中間線CLを基準として互いに左右対称な形状を有しており、車幅方向において離間している。中間線CLは、第1側壁部12と第2側壁部13との車幅方向における中間を通る基準線である。
【0027】
ここで、図3は、実施形態に係るエンジン室8を左上方から見た斜視図である。
第1側方カバー15は、第1側壁部12において後上部に位置する。第1側方カバー15は、運転室7の前方に位置している。第1側方カバー15は、後側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、前後方向に対して傾斜している。また、第1側方カバー15は、上側ほど車幅方向における車体の中心に近づくように、上下方向に対して傾斜している。第1側壁部12の他の部分は、概ね上下方向に沿って設けられている。
【0028】
第2側方カバー16は、ブルドーザ1の前後方向に沿った中間線CLを基準として第1側方カバー15と左右対称な形状を有している。
【0029】
また、エンジン室8の上面部11からは、排気管8aと吸気管8bとが上方に突出している。排気管8aは、排ガス処理装置331(図4参照)に接続されている。吸気管8bは、エアクリーナ34(図4参照)に接続されている。図2に示すように、排気管8aと吸気管8bとは、ブルドーザ1の前後方向に沿った中間線CLを基準として第1側壁部12側に偏心されている。
【0030】
(エンジン室8の内部構成)
図4は、実施形態に係るエンジン室8の内部構成を示す上面透視図である。図5は、実施形態に係るエンジン室8の内部構成を示す斜視図である。なお、図5では、上方カバー14、第1側方カバー15及び第2側方カバー16及びエアクリーナ34は省略されている。
【0031】
エンジン室8内には、エンジン31と、ラジエータ32と、排ガス処理アッセンブリ33と、エアクリーナ34とが収容されている。
【0032】
エンジン31は、例えばディーゼルエンジンであり、上述した油圧ポンプや走行装置3を駆動する駆動源となる。エンジン31は、排ガス処理アッセンブリ33及びエアクリーナ34の下方に配置されている。
【0033】
ラジエータ32は、エンジン室8内においてエンジン31及び排ガス処理アッセンブリ33の前方に配置されている。ラジエータ32は、エンジン31との間で循環する冷却液を冷却する装置である。ラジエータ32は、前後方向に空気が通過可能に構成されている。ラジエータ32は、車幅方向に概ね沿って配置されている。
【0034】
排ガス処理アッセンブリ33は、エンジン室8内においてエンジン31の上方、かつ、エアクリーナ34の前方において、車幅方向と交差する交差方向に沿って配置される。すなわち、後述する円筒状の排ガス処理装置331(図4参照)の軸線AXは、交差方向に平行である。排ガス処理アッセンブリ33は、第1側壁部12と第2側壁部13との間に配置されている。排ガス処理アッセンブリ33の左端Pは、第1側壁部12の第1内面12S近傍に配置され、排ガス処理アッセンブリ33の右端Qは、第2側壁部13の第2内面13S近傍に配置される。このように、本実施形態では、排ガス処理アッセンブリ33をエンジン室8の車幅方向の寸法いっぱいに斜め配置することによって、排ガス処理アッセンブリ33のエンジン室8内におけるコンパクト化が図られている。
【0035】
なお、本実施形態において、ラジエータ32と排ガス処理アッセンブリ33との間隔は、第2側壁部13に近づくほど大きくなる。
【0036】
また、排ガス処理アッセンブリ33は、図4及び図5に示すように、第1乃至第6ボルトB1〜B6(「複数の固定具」の一例)によって、マウント35に着脱可能に固定されている。マウント35はエンジン31上に配置されており、マウント35の上面は矩形の水平面とされている。第1乃至第6ボルトB1〜B6それぞれは、排ガス処理アッセンブリ33の上方及び側方のうち少なくとも一方から視認可能である。具体的に、第1ボルトB1、第2ボルトB2、第3ボルトB3、及び第5ボルトB5は、上方カバー14を取り外した状態において、上方(鉛直方向と交差する方向を含む)から視認可能である。また、第1ボルトB1及び第4ボルトB4は、第1側方カバー15を取り外した状態において、左方(車幅方向と交差する方向を含む)から視認可能である。同様に、第3ボルトB3及び第6ボルトB6は、第2側方カバー16を取り外した状態において、右方(車幅方向と交差する方向を含む)から視認可能である。
【0037】
エアクリーナ34は、エンジン室8内においてエンジン31の上方、かつ、排ガス処理アッセンブリ33の後方に配置される。エアクリーナ34は、排ガス処理装置331と同様に、交差方向に沿って配置される。
【0038】
(排ガス処理アッセンブリ33の構成)
図6は、実施形態に係る排ガス処理アッセンブリ33の斜視図である。
【0039】
排ガス処理アッセンブリ33は、排ガス処理装置331と、台座332と、第1Uボルト333a及び第2Uボルト333bと、第1遮熱板334a及び第2遮熱板334bと、第1サーマルガード335a及び第2サーマルガード335bと、を有する。
【0040】
排ガス処理装置331は、ディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel particulate filter)方式の処理装置であり、エンジン31からの排ガスを処理する。排ガス処理装置331は、排ガス中に含まれる粒子状物質をフィルターによって捕集し、捕集した粒子状物質をフィルターに付設されたヒータによって焼却する。排ガス処理装置331は、概ね円筒状に形成されており、円筒状の側面331Sを有する。
【0041】
台座332は、排ガス処理装置331を支持する。台座332は、6個の被固定部332Xを有する。6個の被固定部332Xは、第1乃至第6ボルトB1〜B6によって、マウント35に着脱可能に固定される。
【0042】
第1Uボルト333aは、排ガス処理装置331を台座332に固定する。第1Uボルト333aは、排ガス処理装置331の第1端部331Yに掛け回されており、第1Uボルト333aの両端は、台座332に固定される。
【0043】
第2Uボルト333bは、排ガス処理装置331を台座332に固定する。第2Uボルト333bは、排ガス処理装置331の第2端部331Zに掛け回されており、第2Uボルト333bの両端は、台座332に固定される。なお、第2端部331Zは、第1端部331Yの斜め後方に位置する。
【0044】
第1遮熱板334aは、排ガス処理装置331の第1端部331Yの後方に近接して配置される板状部材である。第1遮熱板334aは、排ガス処理装置331から発生する熱が周辺部材に伝達されることを抑制する。第1遮熱板334aの上端には、第1係合孔Ha(「第1取付け部」の一例)が形成されている。第1係合孔Haは、排ガス処理アッセンブリ33のエンジン室8からの搬出及びエンジン室への搬入に用いられる吊り上げ機(不図示)を取り付けるための孔である。第1遮熱板334aの下端は、台座332に固定される。
【0045】
第2遮熱板334bは、排ガス処理装置331の第2端部331Zの外周を囲むように配置されるU字状部材である。第2遮熱板334bは、排ガス処理装置331から発生する熱が周辺部材に伝達されることを抑制する。第2遮熱板334bには、第2係合孔Hb(「第2取付け部」の一例)が形成されている。第2係合孔Hbは、吊り上げ機を取り付けるため孔である。第2遮熱板334bの両下端は、台座332に固定される。
【0046】
第1サーマルガード335aは、排ガス処理装置331の第1端部331Yの側方を覆う。すなわち、第1サーマルガード335aは、排ガス処理装置331の第1端部331Yと第1側壁部12の第1内面12Sとの間に配置される。第1サーマルガード335aは、排ガス処理装置331から発生する熱が周辺部材(特に、第1側方カバー15)に直接伝わることを抑制する。
【0047】
第2サーマルガード335bは、排ガス処理装置331の第2端部331Zの側方を覆う。第2サーマルガード335bは、排ガス処理装置331の第2端部331Zと第2側壁部13の第2内面13Sとの間に配置される。第2サーマルガード335bは、排ガス処理装置331から発生する熱が周辺部材(特に、第2側方カバー16)に直接伝わることを抑制する。
【0048】
(第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbの位置関係)
図7は、実施形態に係るエンジン室8の内部構成を示す上面拡大図である。ただし、図7では、ラジエータ32と排ガス処理アッセンブリ33のみが図示されている。
【0049】
第1係合孔Haは、中間線CLの第1側壁部12側、かつ、第1端部331Yの後方に配置される。第2係合孔Hbは、中間線CLの第2側壁部13側、かつ、第2端部331Zの前方に配置されている。なお、第2端部331Zは、第1端部331Yの斜め後方に位置する。
【0050】
また、第1係合孔Haは、車幅方向において、第1側壁部12と排ガス処理装置331との間に配置され、第2係合孔Hbは、車幅方向において、第2側壁部13と排ガス処理装置331との間に配置される。
【0051】
また、第1係合孔Haと第2係合孔Hbは、上面視において、排ガス処理アッセンブリ33の重心Rを中心として互いに対称的に配置される。第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbそれぞれは、上面視において、排ガス処理装置331の外周に近接して配置されている。
【0052】
また、第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbは、排ガス処理装置331が有する円筒状の側面331Sの外方に配置される。具体的に、第1係合孔Haは、側面331Sの後方に配置され、第2係合孔Hbは、側面331Sの前方に配置されている。
【0053】
ここで、図7に示すように、エンジン室8は、第1内部空間T1と、第2内部空間T2と、を有する。
【0054】
第1内部空間T1は、排ガス処理装置331の側面331Sと第1側壁部12の第1内面12Sとの間に形成される。第1内部空間T1の前後方向におけるサイズは、第1側壁部12に近づくほど大きい。第1係合孔Haは、第1内部空間T1のうち第1側壁部12側(ブルドーザ1の前後方向に沿った中間線CLの左側)に配置されている。すなわち、第1係合孔Haと第1側壁部12との車幅方向における間隔は、第1係合孔Haと第2側壁部13との車幅方向における間隔よりも小さい。
【0055】
第2内部空間T2は、排ガス処理装置331の側面331Sと第2側壁部13の第2内面13Sとの間に形成される。本実施形態において、第2内部空間T2は、排ガス処理装置331の第2端部331Zとラジエータ32との間に挟まれた空間である。第2内部空間T2の前後方向におけるサイズは、第2側壁部13に近づくほど大きい。第2係合孔Hbは、第2内部空間T2のうち第2側壁部13側(ブルドーザ1の前後方向に沿った中間線CLの右側)に配置されている。すなわち、第2係合孔Hbと第2側壁部13との車幅方向における間隔は、第2係合孔Hbと第1側壁部12との車幅方向における間隔よりも小さい。
【0056】
(作用及び効果)
(1)実施形態に係るブルドーザ1において、排ガス処理アッセンブリ33は、円筒状の排ガス処理装置331と、台座332と、第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbと、を有する。排ガス処理装置331は、交差方向に沿って配置される。第1係合孔Haは、第1側壁部12に近接する第1端部331Yの後方に配置され、第2係合孔Hbは、第2側壁部13に近接し第1端部331Yよりも後方に位置する第2端部331Zの前方に配置されている。第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbは、排ガス処理アッセンブリ33を上方から見た場合に、排ガス処理アッセンブリ33の重心Rを中心として対称的に配置されている。
【0057】
このように、第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbは、重心Rを中心として対称的に配置されている。そのため、排ガス処理アッセンブリ33を吊り上げた際、排ガス処理アッセンブリ33が、第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbを通る軸線を中心として揺動することを抑制できる。従って、吊り上げ時における排ガス処理アッセンブリ33の安定性を向上することができる。
【0058】
また、第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbは、斜めに配置された排ガス処理装置331と第1側壁部12及び第2側壁部13それぞれとの間に形成される空間に配置されている。そのため、第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbを対称的に配置するための空間を積極的に設ける必要がないので、排ガス処理アッセンブリ33のコンパクト性を維持することができる。
【0059】
(2)第2内部空間T2は、交差方向に沿って配置される排ガス処理装置331と、車幅方向に沿って配置されるラジエータ32と、の間に形成される。
【0060】
そのため、排ガス処理装置331とラジエータ32との間に必然的に形成される空間を有効に利用することができるので、排ガス処理アッセンブリ33のコンパクト性を向上できる。
【0061】
(3)第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbそれぞれは、第1遮熱板334a及び第2遮熱板334bそれぞれに形成される。
【0062】
そのため、排ガス処理装置331から発生する熱が周辺部材に伝達されることを効率的に抑制することができる。
【0063】
(4)複数の被固定部332Xは、排ガス処理アッセンブリ33の上方及び側方のうち少なくとも一方から視認可能である。
【0064】
そのため、排ガス処理アッセンブリ33から排ガス処理装置331を取り外すことなく、台座332をマウント35から取り外せるとともにマウント35に取りつけられる。従って、排ガス処理アッセンブリ33の着脱時の作業性を向上することができる。
【0065】
(5)第1係合孔Haは、車幅方向において、第1側壁部12と排ガス処理装置331との間に配置され、第2係合孔Hbは、車幅方向において、第2側壁部13と排ガス処理装置331との間に配置される。
【0066】
そのため、斜めに配置された排ガス処理装置331と第1側壁部12及び第2側壁部13それぞれとの間に形成される第1内部空間T1及び第2内部空間を有効に利用して、第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbを設置できる。そのため、排ガス処理アッセンブリのコンパクト性を向上させることができる。
【0067】
(その他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
(A)上記実施形態では、排ガス処理装置331は、ディーゼル微粒子捕集フィルターであることとしたが、これに限られるものではない。排ガス処理装置331は、例えば、選択還元触媒(Selective Catalytic Reduction)方式の装置、OC(酸化触媒)方式の装置、或いは、LNT(NOx吸蔵触媒)方式の装置であってもよい。
【0069】
(B)上記実施形態では、「第1及び第2取付け部」の一例として第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbについて説明したが、これに限られるものではない。「第1及び第2取付け部」は、吊り機を取り付け可能であればよく、例えば、遮熱板334に形成される凹部や、遮熱板とは別のフック状部材などであってもよい。
【0070】
(C)上記実施形態では、「第1及び第2取付け部」の一例である第1係合孔Ha及び第2係合孔Hbは、第1及び第2遮熱板334a,334bに形成されることとしたが、これに限られるものではない。「第1及び第2取付け部」は、棒状や直方体状などを有する部材に形成されていてもよい。
【0071】
(D)上記実施形態では、ラジエータ32は、車幅方向に沿って配置されることとしたが、これに限られるものではない。ラジエータ32は、車幅方向に対して斜めに配置されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、吊り上げ時における排ガス処理アッセンブリの安定性向上とエンジン室内における排ガス処理アッセンブリのコンパクト性維持とを両立できるので、ブルドーザ分野において有用である。
【符号の説明】
【0073】
1 ブルドーザ
2 作業機
3 走行装置
3a 一対の履帯
4 車両本体
5 ブレード
6 油圧シリンダ
7 運転室
8 エンジン室
11 上面部
12 第1側壁部
12S 第1内面
13 第2側壁部
13S 第2内面
14 上方カバー
15 第1側方カバー
16 第2側方カバー
31 エンジン
32 ラジエータ
33 排ガス処理アッセンブリ
331 排ガス処理装置
331S 側面
331Y 第1端部
331Z 第2端部
332 台座
332X 被固定部
333a 第1Uボルト
333b 第2Uボルト
334a 第1遮熱板
Ha 第1係合孔(「第1取付け部」の一例)
334b 第2遮熱板
Hb 第2係合孔(「第2取付け部」の一例)
335a 第1サーマルガード
335b 第2サーマルガード
34 エアクリーナ
AX 軸線
B ボルト
T1 第1内部空間
T2 第2内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室と、
前後方向に沿ってそれぞれ配置され車幅方向において互いに離間する第1側壁部及び第2側壁部を有し、前記運転室の前方に配置されるエンジン室と、
前記第1側壁部に近接する第1端部と、前記第2側壁部に近接し前記第1端部の斜め後方に位置する第2端部とを含み、前記車幅方向と交差する交差方向に沿って配置される排ガス処理装置と、前記排ガス処理装置を支持する台座と、吊り上げ機を取り付けるための第1取付け部及び第2取付け部と、を有する排ガス処理アッセンブリと、
を備え、
前記第1取付け部は、前記車幅方向における前記第1側壁部と前記第2側壁部との中間を通る中間線の前記第1側壁部側、かつ、前記排ガス処理装置の前記第1端部の後方に配置され、
前記第2取付け部は、前記中間線の前記第2側壁部側、かつ、前記排ガス処理装置の前記第2端部の前方に配置されており、
前記第1取付け部と前記第2取付け部は、前記排ガス処理アッセンブリを上方から見た場合に、前記排ガス処理アッセンブリの重心を中心として対称的に配置される、
ブルドーザ。
【請求項2】
エンジン室内において車幅方向に沿って配置されるラジエータを備え、
前記第2取付け部は、前記排ガス処理装置の前記第2端部と前記ラジエータとの間に配置される、
請求項1に記載のブルドーザ。
【請求項3】
前記排ガス処理アッセンブリは、前記排ガス処理装置から発生する熱を遮るための第1遮熱板及び第2遮熱板を有し、
前記第1取付け部及び前記第2取付け部それぞれは、前記第1遮熱板及び前記第2遮熱板それぞれに形成される、
請求項1又は2に記載のブルドーザ。
【請求項4】
前記台座は、複数の固定具によってそれぞれ固定される複数の被固定部を有し、
前記複数の被固定部は、前記排ガス処理アッセンブリの上方及び側方のうち少なくとも一方から視認可能である、
請求項1乃至3のいずれかに記載のブルドーザ。
【請求項5】
前記第1取付け部は、前記車幅方向において、前記第1側壁部と前記排ガス処理装置との間に配置され、
前記第2取付け部は、前記車幅方向において、前記第2側壁部と前記排ガス処理装置との間に配置される、
請求項1乃至4のいずれかに記載のブルドーザ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154030(P2012−154030A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11438(P2011−11438)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】