説明

ブルートゥース(登録商標)が使用可能な補聴器

【課題】近距離無線網により移動局(350)と通信する補聴器(310)内の妨害抑制処理および制御を改善するための方法および装置を提供する。
【解決手段】補聴器(310)は入力オーディオ信号の音響エコーを抑制するための音響エコー・キャンセラ(330)を含む。移動局(350)もエコー・キャンセラ(366)を含み、また移動局が近距離無線網を介して補聴器と通信するときはエコー・キャンセラをバイパスするための1つ以上の開閉回路(356,368)を含んでよい。一般に、補聴器と移動局との間に近距離無線網が確立されると、補聴器と移動局とは1つ以上の近距離無線網プロフィールを取り決めて、エコー・キャンセラの特性を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に移動局と通信するローカル無線装置に関するものであって、より特定すると、近距離アドホック(ad hoc)無線網を介して移動局と通信する補聴器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やパーソナル・データ・アシスタント(PAD)などの移動局の人気は年毎に高まっている。この傾向を保つために、メーカは移動局を多くの人々に魅力あるものにする方法を絶えず探索している。注目される1つの領域は無線ヘッドセットなどのローカル無線装置を近端移動局と共に用いることである。
【0003】
現在の無線ヘッドセットはマイクロホン信号を近距離無線網に適合する信号に変換し、この処理された信号を、近距離無線網を介して近端移動局に送信する。同様に、無線ヘッドセットは近端移動局から受信した信号を無線ヘッドセット内のスピーカに適合する信号に変換する。現在の無線ヘッドセットはこれ以上の処理を含まない。そのため、近端移動局が音響エコーおよび/または環境雑音の抑制などの全ての妨害処理を行う。音響エコーや環境雑音の源は無線ヘッドセット内にあるので、近端移動局が行う雑音抑制は不十分であり、望ましくない雑音を遠端ユーザに送信してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
注目される別の領域は聴覚障害者が移動局を使用することに関係する。現在の補聴器は低電力受信機を備える。これは一般に背景雑音や、移動局から放射される電磁妨害(EMI)(特に移動局が補聴器の近くにあるときに顕著である)を拾う。かかる問題は高利得の補聴器の場合に特に不都合である。なぜなら、補聴器の利得が高いほど、補聴器は妨害を受けるからである。補聴器と移動局との間の妨害の問題は周知であり、ポール・デント(Paul Dent)他の米国特許第6,122,500号に詳細に述べられている。この特許の内容をここに引用する。そのため、望ましくない妨害を生じることなく1つ以上の移動局と対話することのできる補聴器を提供することが望ましい。
【0005】
この問題の1つの解決方法は、補聴器と移動局との間に近距離通信リンクを提供するブルートゥース(登録商標)網などの近距離無線網を用いることである。ブルートゥース(登録商標)は、2つ以上の無線装置が近距離アドホック網を介して無線で通信することを可能にする汎用無線インターフェースである。ブルートゥース(登録商標)は、ポーリングに基づく通信基盤を用いて無線装置の間にディジタル・データを伝送する。ジャプ・ハルトセン(Jaap Haartsen)はエリクソン・レビュー、No.3、1998に「ブルートゥース(登録商標)−−アドホック無線接続のための汎用無線インターフェース(Bluetooth(登録商標)−−The Universal Radio Interface for ad hoc,wireless connectivity)」と題してブルートゥース(登録商標)技術に関して詳細に述べている。この論文をここに引用する。ブルートゥース(登録商標)は補聴器と移動局との間の通信を可能にすると共にこの2つの無線装置の間に物理的距離を与えるので、補聴器と移動局との間の望ましくない妨害が少なくなり、および/または防がれる。
【0006】
これに応じて、本発明の1つの実施の形態は、無線ヘッドセット内で更なる処理を加えて、近距離無線網内で通信する無線装置の間の雑音抑制を改善する。無線ヘッドセットの1つの実施の形態は、望ましくない妨害を受けることなく聴覚障害者が無線装置を用いることができるようにする補聴器を備えてよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、近距離無線網により移動局と通信する無線ヘッドセットなどのローカル無線装置内での妨害抑制処理を改善するための方法および装置に関係する。ローカル無線装置および移動局は、近距離無線網を介して情報信号を伝えるための近距離無線トランシーバをそれぞれ含む。また、ローカル無線装置および移動局は共に、入力オーディオ信号を受信するマイクロホン装置と、出力オーディオ信号をローカル・ユーザに放出するスピーカとを含む。ローカル無線装置は、入力オーディオ信号からの妨害信号(音響エコーおよび/または環境雑音など)を抑制するための妨害抑制回路(ISC)(音響エコー・キャンセラおよび/または雑音抑制器など)を含む。また例示的なローカル無線装置は、出力オーディオ信号を処理する1つ以上のオーディオ・プロセッサを含む。オーディオ・プロセッサは、等化器、リミッタ、および/または自動レベル制御手段を含んでよい。
【0008】
移動局もオーディオ・プロセッサおよびISCを含む。また移動局は、移動局が近距離無線網を介してローカル無線装置と通信するときに移動局のオーディオ・プロセッサおよび/またはISC内の要素の1つ以上をバイパスするための1つ以上の開閉回路を含んでよい。一般に、ローカル無線装置と移動局との間に近距離無線網が確立されると、ローカル無線装置と移動局とは1つ以上の近距離無線網プロフィールを取り決めてよい。かかるプロフィールは、移動局のオーディオ・プロセッサおよび/またはISCのどの要素(もしあれば)をバイパスするかを決めてよい。またかかるプロフィールは、入力および出力信号と移動局の遠隔網とをインターフェースするのに用いられる音響処理パラメータを定義してよい。移動局は、取り決められたプロフィールに基づいて1つ以上の開閉回路および/または音響処理パラメータを制御してよい。
本発明の1つの実施の形態では、ローカル無線装置は補聴器を含む。補聴器は近距離無線トランシーバ電子回路に接続されたマイクロホンおよびスピーカを含んでよい。または、ローカル無線装置は、通信モードのときに補聴器のスピーカおよびマイクロホンをローカル無線装置内の近距離無線トランシーバ電子回路に接続するための開閉回路を含んでよい。また、移動局内およびローカル無線装置内の開閉回路は音響処理定数のプロフィールを直列に切り換えてよい。補聴器モードのとき、開閉回路は近距離無線トランシーバ電子回路からスピーカおよびマイクロホンへの接続を切り離してよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の無線ヘッドセットのブロック図を示す。
【図2】本発明に係る近距離無線システムの或る実施の形態を示す。
【図3】種々の近距離無線端末とインターフェースする本発明に係る近距離無線ヘッドセットを示す。
【図4】妨害消去DSPの一例を示す。
【図5】本発明に係る近距離無線システムの別の実施の形態を示す。
【図6】本発明に係る近距離無線システムの別の実施の形態を示す。
【図7】本発明に係る近距離無線システムの別の実施の形態を示す。
【図8】本発明に係る近距離無線システムの別の実施の形態を示す。
【図9】本発明に係る近距離無線システムで呼を受信する方法を示す。
【図10】本発明に係るブルートゥース(登録商標)システムで呼を行う或る方法を示す。
【図11】本発明に係るブルートゥース(登録商標)システムで呼を行う別の方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0010】
図1は従来のローカル無線装置100を示す。これは、RF信号を処理し、送信し、受信するための、オーディオ処理回路110および無線インターフェース120(ブルートゥース(登録商標)インターフェースなど)を含む。オーディオ処理回路110は基本的なオーディオ出力をスピーカ130に与え、オーディオ入力をマイクロホン140から受信する。図1に示すように、マイクロホン140は、近端ユーザからの音声信号や、スピーカ130からのエコー信号や、環境からの雑音などの、種々の外部オーディオ信号を検出する。
【0011】
ローカル無線装置100は近距離無線網を介して近くの移動局200と情報を通信する。遠隔の遠端ユーザに音声信号だけを送信するのが望ましいので、一般に移動局200は、上に述べた音響エコーおよび/または環境雑音を抑制するための妨害抑制プロセッサ(図示しない)を含む。共に譲渡された米国特許第6,148,078号、第6,160,886号、第6,570,985号は例示的なエコーおよび雑音抑制技術を提供しており、これらをここに引用する。妨害消去技術は周知であるから、ここではこれ以上説明しない。
【0012】
図2は本発明に係る近距離アドホック無線システム300の一例を示す。近距離無線システム300はブルートゥース(登録商標)装置310などのローカル無線装置と移動局350とを含む。ブルートゥース(登録商標)装置310はブルートゥース(登録商標)ヘッドセットを備えてよい。近距離アドホック無線網を示すのに本出願は「ブルートゥース(登録商標)網」という用語を用いるが、当業者が認識するように、本発明はブルートゥース(登録商標)網に限定されるものではなく、任意の近距離無線網に適用することができる。またここで用いる移動局350は1つ以上の無線装置(図3に示すような携帯電話、パーソナル・データ・アシスタント(PDA)、無線トランシーバを持つ従来のラップトップまたはパームトップなど)、または無線通信が可能な任意の他の装置を含んでよい。また当業者が認識するように、2つ以上の遠隔のブルートゥース(登録商標)装置310が単一の移動局350と通信してよい。
【0013】
移動局350は情報信号を送信および受信するためのセルラ・トランシーバ360を含む。トランシーバ360は、GSM(登録商標)、TIA/EIA−136、cdmaOne、IS−95、cdma2000、UMTS、広帯域CDMAなどを含む任意の周知の標準に従って動作してよい。マイクロホン362は入力信号経路を介してトランシーバ360に結合し、スピーカ352は出力信号経路を介してトランシーバ360に結合する。入力信号経路は、マイクロホン362、アナログ・ディジタル変換器(ADC)364、妨害消去ディジタル信号処理プロセッサ(DSP)366、開閉器368を含む。出力信号経路は、オーディオ・プロセッサ358、開閉器356、ディジタル・アナログ変換器(DAC)354、スピーカ352を含む。
【0014】
移動局350は更に、ブルートゥース(登録商標)モジュール370などの近距離無線網モジュール、コントローラ372、メモリ374を含む。コントローラ372は、望ましい動作モードに基づいて開閉器356および368を作動させ、またブルートゥース(登録商標)モジュール370を制御する。最初の準備中に定義された取り決められたブルートゥース(登録商標)プロフィールは望ましい動作モードを決定する。移動局350の動作に必要なコンピュータ・プログラム命令およびデータはメモリ374に記憶される。メモリ374は移動局350内のメモリの全階層構造を表し、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)とリード・オンリー・メモリ(ROM)とを共に含んでよい。ブルートゥース(登録商標)モジュール370、コントローラ372、メモリ374は別個の素子として図示されているが、当業者が認識するように、かかる素子の1つ以上をASICなどの1つ以上のプログラム可能な素子内に組み込んでよい。
【0015】
移動局350は通常モードかまたはローカル無線モードで動作する。移動局350が通常モードで動作するとき、開閉器368は妨害消去DSP366の出力をトランシーバ360の入力に接続し、開閉器356はオーディオ・プロセッサ358の出力をDAC354の入力に接続する。ADC364はマイクロホン362で受信したアナログ・オーディオ信号をディジタル・オーディオ信号に変換する。次に妨害消去DSP366はディジタル化されたオーディオ信号を処理して、この技術で周知の妨害消去技術に従って音響エコーおよび/または環境雑音などの妨害を抑制する。妨害が抑制された信号はトランシーバ360を介して遠隔の遠端ユーザに送信される。等化器(EQ)、リミッタ(LIM)および/または自動レベル・コントローラ(ALC)を含むオーディオ・プロセッサ358は、トランシーバ360を介して遠隔の遠端ユーザから受信したオーディオ情報をこの技術で周知の方法で処理する。DAC354は処理されたディジタル信号を出力アナログ・オーディオ信号に変換し、スピーカ352はアナログ信号をローカル近端ユーザに放出する。
【0016】
移動局350がローカル無線モードで動作するとき、開閉器368はブルートゥース(登録商標)モジュール370をトランシーバ360に接続し、開閉器356はオーディオ・プロセッサ358の出力をブルートゥース(登録商標)モジュール370の入力に接続する。ローカル無線モードでは、移動局350はブルートゥース(登録商標)モジュール370を介して移動局350からの情報をブルートゥース(登録商標)装置310に送信する。また移動局350は、ブルートゥース(登録商標)装置310からの情報(取り決められた音響処理定数など)を従来のブルートゥース(登録商標)プロトコルおよび取り決められたプロフィールによりブルートゥース(登録商標)モジュール370で受信する。これについては後で更に説明する。
【0017】
ブルートゥース(登録商標)装置310は、スピーカ312、ディジタル・アナログ変換器(DAC)314、マイクロホン装置320、妨害消去DSP330、近距離無線網モジュール(ブルートゥース(登録商標)モジュール340など)を含む。ブルートゥース(登録商標)装置310はブルートゥース(登録商標)モジュール340を制御するためのコントローラ342およびメモリ344も含む。コントローラ342は望ましい動作モードに基づいてブルートゥース(登録商標)モジュール340を制御する。最初の準備中に定義された取り決められたブルートゥース(登録商標)プロフィールは、望ましい動作モードを決定し、および/またはローカル無線妨害消去DSP330内の妨害抑制パラメータを設定し、および/または移動局の無線妨害消去DSP366またはオーディオ・プロセッサ358の妨害抑制パラメータを定義してよい。また、コントローラ342は開閉器318,322(図8)を作動させてよい。移動局350内のメモリ374と同様に、メモリ344はブルートゥース(登録商標)装置310の動作に必要なコンピュータ・プログラム命令およびデータを記憶する。メモリ344は移動局350内のメモリの全階層構造を表し、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)とリード・オンリー・メモリ(ROM)とを共に含んでよい。遠隔ブルートゥース(登録商標)モジュール340、コントローラ342、メモリ344は別個の素子として図示されているが、当業者が認識するように、かかる素子の1つ以上をASICなどの1つ以上のプログラム可能な素子内に組み込んでよい。また当業者が認識するように、ブルートゥース(登録商標)装置310は、無線ヘッドセットまたは任意の他の近距離無線装置(近距離無線網を介してユーザと移動局350との間でオーディオ信号を送信し/受信することのできるもの)を含んでよい。
【0018】
当業者がよく理解しているように、遠隔ブルートゥース(登録商標)モジュール340は近くの移動局350からディジタル信号を受信し、DAC314でディジタル信号をアナログ・オーディオ信号に変換する。スピーカ312はアナログ・オーディオ信号を近端ユーザに出力する。マイクロホン装置320は少なくとも1つのマイクロホン322とこれに対応するADC324とを含む。マイクロホン322が受信したアナログ・オーディオ信号はADC324でディジタル信号に変換される。次にディジタル信号は妨害消去DSP330で処理される。図4に示すように、妨害消去DSP330は、音響エコー・キャンセラ332および/または雑音抑制器334などの、任意の数の妨害消去プロセッサを含んでよい。妨害消去DSP330はマイクロホン装置320からの入力オーディオ信号とブルートゥース(登録商標)モジュール340からの出力オーディオ信号とを受信して、従来の周知の抑制技術に従って音響エコーおよび/または環境雑音を抑制する。エコーおよび/または雑音が抑制された信号は、遠隔の遠端ユーザに送信するためにブルートゥース(登録商標)モジュール340を介して移動局350に送信される。
【0019】
本発明では、ブルートゥース(登録商標)装置310は移動局350と1つ以上の近距離無線網プロフィールを取り決めてよい。かかる取決めは、移動局の妨害消去DSP366と移動局のオーディオ・プロセッサ358の1つ以上の特性、および/またはブルートゥース(登録商標)装置の妨害消去DSP330の1つ以上の特性を決定してよい。ブルートゥース(登録商標)装置310または移動局350のどちらかがかかる取決めを開始してよい。或る例示的な実施の形態では、ブルートゥース(登録商標)装置310が取決めを開始する。その結果、通常のブルートゥース(登録商標)装置310と移動局との適合性が最大になる。取決め中に用いられるプロトコルは、ブルートゥース(登録商標)仕様に定義されている注意(AT)コマンドに基づいてよい。このシナリオでは、設計者は既存のコマンドを変えるか、または新しいコマンドを作成してよい。または、ブルートゥース(登録商標)装置310および移動局350は所有権を主張できるプロトコルを用いてよい。いずれにしても、本発明の取り決められたプロフィールは一般に全ての標準のブルートゥース(登録商標)取決め(negotiations)の後に行ってよい。
【0020】
取決め中に、ブルートゥース(登録商標)装置310は、移動局350が移動局350内の妨害消去DSP366をバイパスする機能を有するかどうか判定する。また、ブルートゥース(登録商標)装置310はプロフィール取決めから妨害抑制パラメータも確立してよい。移動局350が妨害消去DSP366をバイパスすることができる場合は、移動局350はバイパスを準備して妨害消去DSP366を非活動化して、移動局350内の電力を節約しまた処理の繰り返しを避ける。移動局が妨害消去DSP366のパラメータを変えることができる場合は、移動局350は妨害消去DSP366のパラメータを変更する。図示してはいないが、これも当業者が認識するように、取決めは、移動局350が妨害消去DSP366内の限られた数の要素(雑音抑制器またはエコー・キャンセラなど)だけをバイパスしてよいことを決定してよい。
【0021】
妨害消去の性能を高めるために、或る妨害消去技術は複数のマイクロホン322を用いる。図5に示すように、ブルートゥース(登録商標)装置310内のマイクロホン装置320は複数のマイクロホン3221,...,322Nを含んでよい。各マイクロホン3221,...,322Nからのアナログ・オーディオ信号は各対応する複数のADC3241,...,324Nでディジタル信号に変換される。各ディジタル・オーディオ信号はマイクロホン配列DSP326で結合され、妨害消去DSP330のための結合オーディオ信号が従来の周知の技術により作成される。次に妨害消去DSP330は結合オーディオ信号を処理して、結合オーディオ信号の音響エコーおよび/または環境雑音などの妨害を抑制する。図5に示していないが、当業者が認識するように、移動局350はマイクロホン362およびADC364の代わりに、複数のマイクロホン362、ADC364、マイクロホン配列DSPを含むマイクロホン装置を用いてよい。
【0022】
図6および図7は本発明に係る別の近距離無線システム300を示す。図6および図7の移動局350の動作は図2の移動局350の動作に対応する。しかし上に説明した構成要素に加えて、ローカル・ブルートゥース(登録商標)装置310は、移動局350内に存在するオーディオ・プロセッサ358と同様のオーディオ・プロセッサ316も含む。図6で、移動局350内のオーディオ・プロセッサ358は上に述べたようにトランシーバ360で受信したオーディオ信号を処理する。オーディオ・プロセッサ316は、ブルートゥース(登録商標)装置310内のブルートゥース(登録商標)モジュール340で受信した信号を更に処理して、スピーカ312から出力される信号品質を高める。
【0023】
図6に示す構成は電池寿命より信号品質に重きを置いた場合の好ましい構成である。しかし、図7は電池寿命の方に重点を置くユーザのための別の実施の形態を示す。図7で、ブルートゥース(登録商標)装置310は図6に示すブルートゥース(登録商標)装置310と同じ動作をする。しかし移動局350内では、開閉器356はオーディオ・プロセッサ358の出力からトランシーバ360の出力に移されている。この実施の形態では、移動局350が通常モードのときは、開閉器356はトランシーバ360をオーディオ・プロセッサ358に接続する。ローカル無線モードのときは、開閉器356はオーディオ・プロセッサ358をバイパスして、ブルートゥース(登録商標)モジュール370をトランシーバ360に接続する。その結果、移動局350内でオーディオ処理が行われるのは移動局が通常モードで動作中だけである。ローカル無線モードのときは、移動局350はオーディオ・プロセッサ358を非活動化しかつバイパスすることにより電力を節約する。図示していないが、当業者が認識するように、移動局350および/またはブルートゥース(登録商標)装置310内に追加の開閉器を設けて、オーディオ・プロセッサ316,358のEQ、LIM、ALCなどの特定の要素を選択的に活動化しまたはバイパスしてよい。
【0024】
図示していないが、更に認識されるように、開閉器356は複数の開閉器を含む開閉回路を含んでよい。適切に配置すると、ユーザは開閉器356により、信号品質の優先度が高いときは選択的にオーディオ・プロセッサ358を作動させ、電池の節約の優先度が高いときはオーディオ・プロセッサ358をバイパスすることができる。
【0025】
図8は、ブルートゥース(登録商標)装置310が補聴器を含む場合の近距離無線システム300の別の実施の形態を示す。移動局350は上に図7で説明した通りに動作するが、認識されるように、前に説明した移動局の全ての実施の形態は図8に示す実施の形態にも適用される。上に説明した実施の形態と同様にブルートゥース(登録商標)補聴器310は、上に説明したようにオーディオ信号を受信し/送信し、処理し、出力するためのブルートゥース(登録商標)電子回路を含む。更に、ブルートゥース(登録商標)補聴器310はスピーカ312とマイクロホン322との間に接続する補聴器プロセッサ346を含む。補聴器プロセッサはマイクロホン322で受信したオーディオ信号をこの技術で周知の方法に従って処理して増幅し、処理されたオーディオ信号をユーザにスピーカ312を介して出力する。図8にはブルートゥース(登録商標)補聴器310内で補聴器マイクロホンとしてもローカル無線装置マイクロホンとしても動作する単一のマイクロホン322だけを示しているが、当業者が認識するように、ブルートゥース(登録商標)補聴器310は補聴器マイクロホン322とは別個の1つ以上のローカル無線装置マイクロホン322を含んでよい。
【0026】
1つの実施の形態では、ブルートゥース(登録商標)補聴器310はマイクロホン322およびスピーカ312をブルートゥース(登録商標)電子回路に選択的に接続するための開閉回路318を含んでよい。補聴器モードのときは、開閉回路318はブルートゥース(登録商標)モジュール340をスピーカ312およびマイクロホン322から切り離す。このモードでは、マイクロホン322で受信したオーディオ信号は補聴器プロセッサ346で処理され、スピーカ312を介してユーザに出力される。ブルートゥース(登録商標)モードのときは、開閉回路318はスピーカ312およびマイクロホン322をブルートゥース(登録商標)モジュール340に接続する。このモードでは、マイクロホン322で受信したオーディオ信号は処理されて移動局350に送信され、移動局350から送信されたオーディオ信号は上に説明したように受信され、処理され、ユーザに出力される。
【0027】
認識されるように、図5−8に示す各実施の形態は図2に示す実施の形態に1つの新しい要素を追加している。これも当業者が認識するように、本発明はかかる各要素の1つ以上を近距離無線システム300のブルートゥース(登録商標)装置310および/または移動局350内に組み込んでよい。
【0028】
図9−11は、上に説明した近距離無線システム300を用いて呼を送信および受信する方法についての更なる詳細を示す。図9は本発明の近距離無線システム300を用いて呼を受信する方法を示す。呼を受信する(402)と、これに応じて移動局350はブルートゥース(登録商標)装置310を呼び出す(404)。ブルートゥース(登録商標)装置310が範囲内にいない場合は(406)、処理は終了する(426)。しかしブルートゥース(登録商標)装置310が範囲内にいる場合は(406)、移動局350はブルートゥース(登録商標)装置310とサービス・レベルのブルートゥース(登録商標)接続を確立する(408)。次に、ブルートゥース(登録商標)装置310は1つ以上の近距離無線網プロフィールを取り決めて(410)、取り決められたプロフィールに基づいてブルートゥース(登録商標)オーディオ接続を確立する(412)。
【0029】
ブルートゥース(登録商標)オーディオ接続が確立されると(412)、移動局350はユーザが呼に応答するのを待つ(414)。ユーザが呼に応答するには、移動局350上のボタンを押すか、ブルートゥース(登録商標)装置310上のボタンを押すか、ブルートゥース(登録商標)装置310を介してオーディオ・コマンドを移動局350に送るか、またはこの技術で周知の任意の別の手段を用いてよい。ユーザが呼に応答しない場合は(414)、処理は終了する(426)。ユーザが呼に応答した場合は(414)、近端ユーザと遠端ユーザとの間に網接続が確立され(416)、近端ユーザおよび/または遠端ユーザが呼を停止する(420)まで無線通信は続く。一方または両方のユーザが呼を停止すると(420)、網接続およびブルートゥース(登録商標)リンクは終了し(422,424)、処理は終了する(426)。
【0030】
図10−11は近距離無線システム300を用いて呼を行う2つの方法を示す。図10では、呼は移動局350で開始される(502)。呼を開始するには、移動局350のキーパッド上の1つ以上のボタンを押すか、またはこの技術で周知の任意の他の技術を用いてよい。呼が開始されると(502)、移動局350はブルートゥース(登録商標)装置310を呼び出して(504)、サービス・レベルのブルートゥース(登録商標)接続を確立する(506)。近距離無線網プロフィールを取り決めた(508)後、上に説明したように移動局350とブルートゥース(登録商標)装置310との間にブルートゥース(登録商標)オーディオ接続が確立される(510)。遠端ユーザが呼に応答しない場合は(512)、ブルートゥース(登録商標)リンクは終了し(522)、処理は終わる(524)。しかし遠端ユーザが呼に応答した場合は(512)、近端ユーザと遠端ユーザとの間に無線網接続が確立され(514)。一方または両方のユーザが呼を停止する(518)まで、近端ユーザと遠端ユーザとの間に無線通信が行われる(516)。一方または両方のユーザが呼を停止すると(518)、網接続およびブルートゥース(登録商標)リンクは終了し(520,522)、処理は終了する(524)。
【0031】
図11では、オーディオまたは電気コマンドをブルートゥース(登録商標)装置310のマイクロホンに与えることにより、ユーザはブルートゥース(登録商標)装置310で呼を開始してよい(602)。これに応じて、ブルートゥース(登録商標)装置310は移動局350を呼び出し(604)、移動局350とサービス・レベルおよびオーディオのブルートゥース(登録商標)接続を確立する(606)。近距離無線網プロフィールを取り決めた(608)後、移動局350は呼を開始する(610)。遠端ユーザが呼に応答しない場合は(612)、ブルートゥース(登録商標)リンクは終了し(622)、処理は終わる(624)。しかし遠端ユーザが呼に応答した場合は(612)、近端ユーザと遠端ユーザとの間に無線網接続が確立される(614)。一方または両方のユーザが呼を停止する(618)まで、近端ユーザと遠端ユーザとの間に無線通信が行われる(616)。一方または両方のユーザが呼を停止すると(618)、無線網接続およびブルートゥース(登録商標)リンクは終了し(620,622)、処理は終了する(624)。
【0032】
上記は、ローカル移動局と通信するローカル無線装置を用いて単一のローカル・ユーザが遠隔の遠端ユーザに呼を行いまたは受信する場合に関して本発明を説明したものである。しかし本発明はこれに限定されるものではない。例えば、当業者が認識するように、本発明は、ローカル無線装置から発信を開始するのに押して話す(push−to−talk)機構が必要な、ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル(VOIP)を用いるシステムに組み込んでよい。このシナリオでは、最初に呼を開始するときにオーディオ処理パラメータを含むプロフィールを取り決めて、呼の間中これを保持する。別の例として、GPRSまたは多重VOIPなどの多重ユーザ・システムに本発明を組み込んでもよい。認識されるように、このシナリオでは各ローカル無線装置および/または移動局は音響処理パラメータの異なる集合を含んでよい。
【0033】
もちろん、本発明の本質的な特徴から逸れずに、ここに特定して述べた以外の方法で本発明を行ってよい。これらの種々の実施の形態は全ての点において例示であって制限するものではないと考えるべきであり、クレームの意味および同等の範囲内に収まる全ての変更はその中に含まれるものである。
【符号の説明】
【0034】
100 ローカル無線装置
110 オーディオ処理装置
120 無線インターフェース
130 スピーカ
140 マイクロホン
200 移動局
300 アドホック無線システム
310 ブルートゥース(登録商標)装置
350 移動局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局と通信する機能を有する無線補聴器であって、
前記移動局に信号を送信しまた前記移動局から信号を受信するための近距離無線トランシーバと、
前記近距離無線トランシーバの入力に結合してユーザからのオーディオ信号を前記近距離無線トランシーバに伝えるためのマイクロホンと、
前記近距離無線トランシーバの出力に結合して前記近距離無線トランシーバで受信した出力オーディオ信号を前記ユーザに放出するためのスピーカと、
前記マイクロホンおよび前記近距離無線トランシーバに接続して前記入力オーディオ信号からの妨害信号を抑制するための妨害抑制回路と、
近距離無線トランシーバに接続するコントローラであって、前記移動局と相互に情報を交換することにより前記無線補聴器内の妨害抑制回路のための1つ以上の動作パラメータを決定する、コントローラと、
を備え、
前記コントローラは前記移動局と更に相互に情報を交換することにより、前記移動局内のオーディオ処理回路と妨害抑制回路の少なくとも一方のための1つ以上の動作パラメータを決定する、無線補聴器。
【請求項2】
移動局が移動局内の妨害抑制回路をバイパスする機能を有するかどうかを前記コントローラが判定し、前記相互に情報を交換したことにより前記移動局が前記妨害抑制回路内の限られた数の要素をバイパスすることを決定する、請求項1記載の無線補聴器。
【請求項3】
移動局に適合するローカル無線装置であって、
近距離無線網を介して前記移動局と情報信号を通信するための近距離無線トランシーバと、
前記近距離無線トランシーバの出力に接続して前記近距離無線トランシーバで受信した出力オーディオ信号を前記ユーザに放出するためのスピーカと、
前記近距離無線トランシーバの入力に接続して入力オーディオ信号を前記近距離無線トランシーバに伝えるためのマイクロホン装置と、
前記マイクロホン装置と前記近距離無線トランシーバとの間に接続して前記入力オーディオ信号からの音響エコー信号を抑制するための音響エコー抑制回路と、
近距離無線トランシーバに接続するコントローラであって、前記移動局と相互に情報を交換することにより前記ローカル無線装置内の音響エコー抑制回路のための1つ以上の動作パラメータを決定する、コントローラと、
を備え
前記コントローラは前記移動局と相互に情報を交換することにより、前記移動局内のオーディオ処理回路と妨害抑制回路の少なくとも一方のための1つ以上の動作パラメータを更に決定する、ローカル無線装置。
【請求項4】
移動局が移動局内の妨害抑制回路をバイパスする機能を有するかどうかを前記コントローラが判定し、前記相互に情報を交換したことにより前記移動局が前記妨害抑制回路内の限られた数の要素をバイパスすることを決定する、請求項3記載のローカル無線装置。
【請求項5】
移動局に適合するローカル無線装置であって、
近距離無線網を介して前記移動局と情報信号を通信するための近距離無線トランシーバと、
前記近距離無線トランシーバの出力に接続して出力オーディオ信号をユーザに放出するためのスピーカと、
前記近距離無線トランシーバの入力に接続してユーザからの入力オーディオ信号を前記近距離無線トランシーバに伝えるための少なくとも1つのマイクロホンと、
前記少なくとも1つのマイクロホンと前記近距離無線トランシーバとの間に接続して前記入力オーディオ信号からの妨害信号を抑制するための妨害抑制回路であって、前記近距離無線トランシーバに結合するコントローラは前記移動局と相互に情報を交換することにより前記妨害抑制回路の特性を決定する、妨害抑制回路と、
を備え、
前記コントローラは前記移動局と更に相互に情報を交換することにより、前記移動局内のオーディオ処理回路および妨害抑制回路の少なくとも一方のための動作パラメータを決定する、ローカル無線装置。
【請求項6】
移動局が移動局内の前記オーディオ処理回路および前記妨害抑制回路をバイパスする機能を有するかどうかを前記コントローラが判定し、前記相互に情報を交換したことにより前記移動局が前記オーディオ処理回路および前記妨害抑制回路内の限られた数の要素をバイパスすることを決定する、請求項5記載のローカル無線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−42532(P2013−42532A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227080(P2012−227080)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【分割の表示】特願2006−530627(P2006−530627)の分割
【原出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【出願人】(502087507)ソニーモバイルコミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】