説明

ブレンディングリクレーマ

【課題】ブレンディングリクレーマについて、メンテナンスに要する時間と労力を低減して高い操業効率を確保できるようにする。
【解決手段】機体2と、機体2から軌条50に対し直角方向に延設され吊支構造4で水平に吊支されるブリッジ10と、ブリッジ10下方で横行駆動手段によりブリッジ10往復移動可能に垂設されたキャリッジ12と、キャリッジ12に登載され駆動手段で回転するバケットホイル15,16と、バケットホイル15,16で掬った鉱石を機体2側に運搬する中継コンベア11とを備えたブレンディングリクレーマ1Aにおいて、バケットホイル15,16の駆動手段が回転の中心軸線上で減速機151,161を介しモータ150,160を連結してなるものであり、中継コンベヤ11がバケットホイル15,16の外周側を通る位置に配設され掬った鉱石を中継コンベヤ11まで運ぶホイルフィーダ152,162を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯鉱場のヤードに積み上げた鉱石を均一に混合して払い出すためのブレンディングリクレーマに関する。
【背景技術】
【0002】
貯鉱場のヤード(置き場)にスタッカ等の搬入手段で積み上げられた鉱石を均一に混合しながら払い出す装置として、例えば特公昭63−15211号公報や特開2004−26461号公報に記載され、図3に示すような構成のブレンディングリクレーマ1Bが周知である。
【0003】
このブレンディングリクレーマ1Bは、軌条50,50上を走行する機体3と、機体3から軌条50に対し直角方向に延設されて先端側を俯仰・旋回動作可能に設けられたブリッジ14と、このブリッジ14の下方に垂設されその長手方向に横行動作するキャリッジ13と、このキャリッジ13の両端側に登載されてモータ180,190により回転するバケットホイル18,19と、バケットホイル18,19で掬い取った鉱石を機体3まで運搬するための中継コンベア17とを備えており、広いヤードにおいて効率的な鉱石の混合・払い出しを可能としている。
【0004】
このブレンディングリクレーマ1Bにおいては、バケットホイル18,19の回転中心を中継コンベア17が貫通している構造であるため、複数の車輪でバケットホイル18,19内周側を支持する方式を採用しているとともに、モータ180,190の回転駆動力をチェーン181,191で伝達してバケットホイル18,19を回転駆動させる方式を採用している。
【0005】
そのため、比較的短期間毎にチェーン181,191の調整及び車輪による芯調整を要することに加え、バケットホイル18,19の回転中心を中継コンベア17が貫通している関係で、各調整作業に手間と時間を要するとともに中継コンベア17自体やキャリッジ13のメンテナンス作業も容易ではないため、操業効率低下の一因となっていた。
【0006】
また、そのブリッジ14は三角形の横断面形状に形成され、これを上から支える吊支構造5は、反対側にウエイト50を有しながら両端側を吊支する方式であり、且つ、作業時の輪圧確保及び起伏時の駆動力低減のために内部に横行バランス台車を備えるとともに、キャリッジ13の横行駆動手段にウインチ・ワイヤロープ方式を採用している。そのため、ブリッジ14中央部の撓み量が大きく効率的な払い出し作業を行いにくいことに加え、横行バランス台車があることでヤード替えに余分な時間を要し、しかもワイヤロープのグリスでブリッジ上面を汚しやすいためその清掃にも手間を要していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−15211号公報
【特許文献2】特開2004−26461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、ブレンディングリクレーマについて、メンテナンスに要する時間と労力を低減して高い操業効率を確保できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明は、所定の軌条上を往復走行可能な機体と、この機体から軌条に対し直角方向に延設され所定の吊支構造で水平に吊支されるブリッジと、このブリッジ下方で所定の横行駆動手段によりブリッジの長手方向に往復移動可能に垂設されたキャリッジと、このキャリッジに登載され所定の駆動手段で回転するバケットホイルと、そのブリッジの長手方向に沿って併設されバケットホイルで掬った鉱石を機体側に運搬する中継コンベアとを備えており、貯鉱場のヤードに積み上げた鉱石を均一に混合して払い出すためのブレンディングリクレーマにおいて、そのバケットホイルの駆動手段は、その回転の中心軸線上で減速機を介しモータを連結してなるものであり、その中継コンベヤがバケットホイルの外周側を通る位置に配設され、バケットホイルで掬った鉱石を中継コンベヤまで運ぶ運搬手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
即ち、従来のブレンディングリクレーマではバケットホイルの回転中心を中継コンベヤが貫通していた構成であるため、その駆動手段がモータの動力をチェーンで伝達する方式とされるとともにバケットホイル内周側に配置した複数の車輪でバケットホイルを軸支するものとなっており、各種メンテナンスに過剰な手間と時間を要していたのに対し、本発明では中継コンベアをバケットホイルの外周側を通るように配置して、バケットホイルの中心軸線上に減速機を介して直結したモータで回転駆動させる構成として、メンテナンスに要する手間と時間を大きく軽減可能としたものである。
【0011】
また、その減速機はモータ出力軸側でモータと同軸的且つ一体的に設けられた遊星歯車機構によるものとすれば、モータ駆動軸と中心軸を一致させて接続されて減速機とモータの一体性が増すことに加え、バケットホイルをダイレクトで回転駆動させるものとなるため、駆動機構部分がほぼメンテナンスフリーになって一層作業効率を確保しやすいものとなる。
【0012】
さらに、上述したブレンディングリクレーマにおいて、そのブリッジの吊支構造は多点吊り式の吊り橋構造とされており、横行バランス台車を備えていないことを特徴としたものとすれば、多点吊り式の採用によりブリッジの軽量化を実現しつつブリッジ中央部の撓み量を軽減できることで、その分キャリッジの重量の自由度が増して横行バランス台車を廃することができるため、ヤード替えに要する時間が短縮されてさらなる作業効率の向上が期待できるものとなる。
【0013】
さらにまた、上述したブレンディングリクレーマにおいて、そのキャリッジの横行駆動手段は、ブリッジ側でその長手方向に梯子状に設けられたピンラックとキャリッジ側に設けられてピンラックに噛み合うモータ駆動の歯車とからなるピンラック駆動方式とされている、ことを特徴としたものとすれば、ウインチ・ワイヤロープ方式による横行駆動手段を備えた従来例のようにブリッジ上面をワイヤロープのグリスで汚す心配のないものとなり、且つ、横行駆動手段自体のメンテナンスも容易なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
中継コンベアをバケットホイルの外周側に配置してバケットホイルの中心軸線上に配置したモータで回転駆動させる構成とした本発明によると、メンテナンスに要する時間と労力を低減して高い操業効率を確保できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における実施の形態のブレンディングリクレーマの正面図である。
【図2】(A)は図1のブレンディングリクレーマのブリッジを中心とした構成を説明するための部分平面図、(B)は(A)におけるバケットホイルを中心とした構成を説明するための拡大した部分平面図、(C)は(A)のバケットホイル付近で軌条に沿う垂直面で切断した場合の拡大した部分縦断面図である。
【図3】従来例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0017】
図1は本実施の形態のブレンディングリクレーマ1Aの正面図を示している。このブレンディングリクレーマ1Aは、上述した従来のブレンディングリクレーマ1Bと同様に、貯鉱場のヤードに積み上げた鉱石を均一に混合して払い出すためのものであり、軌条50,50上を往復走行可能な機体2と、この機体2から軌条50,50に対し直角に延設され、反対側にウエイト40を支持した吊支構造4により水平(ヤード面に対し平行)に吊支されるブリッジ10を備えている。
【0018】
また、このブリッジ10は、所定の駆動手段により機体2上部の基端側を中心にして先端側を俯仰動作及び旋回動作可能に設けられている。このブリッジ10の下方には、キャリッジ12が横行駆動手段によりブリッジ10の長手方向に往復移動可能な状態で垂設されており、このキャリッジ10の両端側にはモータ駆動式のバケットホイル15,16が登載されている。さらに、このブリッジ10の長手方向に沿って中継コンベア11が併設され、バケットホイル15,16で掬った鉱石を機体2側に運搬するようになっている。尚、以上の構成は従来例にも共通した周知のものである。
【0019】
図2(A)は、ブレンディングリクレーマ1Aのブリッジ10部分を中心として上から見た部分平面図であり、図2(B)はそのバケットホイル15の詳細な構成を説明するための拡大した部分平面図であるが、本発明においては、バケットホイル15,16の駆動手段が、その回転の中心軸線上に減速機151,161を介してモータ150,160を連結してなるものであり、中継コンベヤ11がバケットホイル15,16の外周側を通って配設されている点を特徴としている。
【0020】
即ち、図3に示した従来例において、中継コンベア17がバケットホイル18,19の回転中心を貫通している関係で、モータ180,190の回転駆動力をチェーン181,191を介して伝達する方式を採用しているとともに、バケットホイル18,19の内周側を複数の車輪で支持している構成であるため、車輪の芯調整やチェーン調整が比較的短期間毎に必要となって、メンテナンスに多大な手間と時間を要していた。また、バケットホイル18,19及びキャリッジ13を中継コンベア17が貫通していることで、中継コンベア17及びキャリッジ13自体のメンテナンスにも手間と時間を要する結果となっていた。
【0021】
そこで、本発明においては、中継コンベア11をバケットホイル15,16の外周側を通るようにバケットホイル15,16の遠心方向にずらして配置し、これらで掬った鉱石を遠心方向に距離を隔てた中継コンベア11に運ぶ運搬手段として、図2(B),(C)に示すようにコンベア式のホイルフィーダ152,162を追加した。また、バケットホイル15,16の駆動手段として、遊星歯車機構による減速機151,161をモータ150,160の出力軸側に各々同軸的且つ一体的に設けてバケットホイル15,16の回転中心の軸線に回転駆動軸が一致するように配設したものである。
【0022】
これにより、中継コンベア11及びキャリッジ12のメンテナンスが容易になることに加え、バケットホイル15,16の中心に遊星歯車機構による減速機151,161を介してモータ150,160が直結されたことで減速機151,161とモータ150,160の連結部分の一体性が高いものとなり、且つ、たるみが生じやすいチェーンや摩耗し
やすく軸芯のずれやすい車輪が不要となって、メンテナンスの頻度が顕著に減少するとともにそのメンテナンス作業自体も容易なものとなる。
【0023】
また、本実施の形態では、図1に示したようにブリッジ10の吊支構造4が、機体2上部から延設したアーム4a先端のウエイト40からフレーム4bが横向きに延び、このフレーム4b先端から分岐したフレーム4cとフレーム4dによる両端側2点の吊支に加えて、その間に配設されてブリッジ10の中間部分を吊支するフレーム4e,4fによる多点吊り式の吊り橋構造となっている点を特徴としている。
【0024】
これにより、ブリッジ10の中央部が多点で吊支されて従来例におけるブリッジ14よりも撓みにくいものとなり、撓みが少ないことでバケットホイル15,16による払い出しが効率的に行いやすいものとなる。したがって、ブリッジ10の計量化を実現することができ、その分、キャリッジ12への重量配分の自由度が増すことから、本実施の形態では従来例で用いていた横行バランス台車が不要となりこれを廃している。そのため、ヤード替えの際にも余計に手間と時間を要しない。
【0025】
さらに、ブリッジ10のバランス台車を廃したことにも関連して、本実施の形態におけるキャリッジ12の横行駆動手段には、図2(C)の縦断面図に示すように、ブリッジ10の長手方向に梯子状に設けられたピンラック111と、キャリッジ12側に設けられてピンラック111に噛み合うモータ120で回転駆動される歯車121(ピニオン)とからなるピンラック駆動方式を採用している。
【0026】
これにより、ウインチ・ワイヤロープ方式の横行駆動手段を備えた従来例のように、ブリッジ14上面をワイヤロープのグリスで汚す心配のないものとなり、且つ、定期的なグリスの塗布が要することに加え緩みや破断の生じやすいウインチ・ワイヤロープ方式と比べて横行駆動手段のメンテナンス自体も極めて容易なものである。
【0027】
以上、述べたように、ブレンディングリクレーマについて、本発明により、メンテナンスに要する時間と労力を大きく低減できるようになった。また、これにより高い操業効率を確保できるようになった。
【符号の説明】
【0028】
1A ブレンディングリクレーマ、2 機体、4 吊支構造、10 ブリッジ、11 中継コンベア、12 キャリッジ、15,16 バケットホイル、50 軌条、111 ピンラック、120,150,160 モータ、121 歯車、151,161 減速機、152,162 ホイルフィーダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軌条上を往復走行可能な機体と、前記機体から前記軌条に対し直角方向に延設され所定の吊支構造で水平に吊支されるブリッジと、前記ブリッジ下方で所定の横行駆動手段により前記ブリッジの長手方向に往復移動可能に垂設されたキャリッジと、前記キャリッジに登載され所定の駆動手段で回転するバケットホイルと、前記ブリッジの長手方向に沿って併設され前記バケットホイルで掬った鉱石を前記機体側に運搬する中継コンベアとを備えており、貯鉱場のヤードに積み上げた鉱石を均一に混合して払い出すためのブレンディングリクレーマにおいて、前記バケットホイルの駆動手段が、前記バケットホイルの回転の中心軸線上で減速機を介しモータを連結しているととともに、前記中継コンベヤが前記バケットホイルの外周側を通る位置に配設され、前記バケットホイルで掬った鉱石を前記中継コンベヤまで運ぶ運搬手段を備えている、ことを特徴とするブレンディングリクレーマ。
【請求項2】
前記減速機が、モータ出力軸側で前記モータと同軸的且つ一体的に設けられた遊星歯車機構によるものである、ことを特徴とする請求項1に記載したブレンディングリクレーマ。
【請求項3】
前記吊支構造が多点吊り式の吊り橋構造とされており、横行バランス台車を備えていないことを特徴とする請求項1または2に記載したブレンディングリクレーマ。
【請求項4】
前記横行駆動手段が、前記ブリッジ側でその長手方向に梯子状に設けられたピンラックと前記キャリッジ側に設けられて前記ピンラックに噛み合うモータ駆動の歯車とからなるピンラック駆動方式とされている、ことを特徴とする請求項1,2または3に記載したブレンディングリクレーマ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−171790(P2012−171790A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38936(P2011−38936)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(000005924)株式会社三井三池製作所 (43)