説明

ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニット

【課題】回転体と同回転体に押し付ける押圧体とを備えたブレーキにおける引き摺りトルクを精度良く計測することができるブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットを提供する。
【解決手段】トルク計測ユニット100は、ディスクブレーキ90のキャリパ92を支持する第1揺動軸111を備えている。第1揺動軸111は、筒状に形成された第2揺動軸106に対して揺動自在に支持されている。第2揺動軸106は、軸線回りに揺動自在な状態で支持ベース103上に支持されている。第2揺動軸106の両端部には、フロントロック機構112およびリアロック機構118が設けられており、第1揺動軸111が着脱自在に固定されるようになっている。第1揺動軸111と第2揺動軸106との間には、第1揺動軸用ロードセル120とロードセル押圧部122とからなる第1揺動軸用トルク検出器が設けられており、引き摺りトルクが計測されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体とこの回転体に押し付ける押圧体とを備えたブレーキにおける押圧体に生じるトルクを計測するブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転体(例えば、回転ディスク)とこの回転体に押し付ける押圧体(例えば、キャリパ)とを備えたブレーキの性能試験を行う試験装置としてブレーキダイナモメータがある。一般に、ブレーキダイナモメータには、ブレーキにおける押圧体に生じる制動トルクや引き摺りトルクを計測するためにトルク計測ユニットが設けられている。このようなブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットには、押圧体が回転体を挟んだ制動時に押圧体に生じる制動トルク(例えば、3000Nm)と、押圧体が回転体を開放した非制動時に生じる引き摺りトルク(例えば、1Nm以下)とを一つの計測ユニットで計測できるものがある。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、ディスクブレーキにおけるキャリパ(前記押圧体に相当)を支持する内側揺動軸の外側に外側揺動軸を配置するとともに、これらの内側揺動軸と外側揺動軸とを着脱自在に連結する構成のブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットが開示されている。そして、このブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいては、内側揺動軸と外側揺動軸とを非連結状態として内側揺動軸のみを揺動させることによって引き摺りトルクを計測する一方、内側揺動軸と外側揺動軸とを連結状態として内側揺動軸と外側揺動軸とを共に揺動させることによって制動トルクを計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−247864号公報
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいては、制動トルクに比べて極めて微小な引き摺りトルクを計測するトルクメータが外側揺動軸を貫通した内側揺動軸の他端部に連結されているため、キャリパに生じた引き摺りトルクのトルクメータに伝達されるまでの間の損失が大きく計測精度が低いという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、回転体と同回転体に押し付ける押圧体とを備えたブレーキにおける引き摺りトルクを精度良く計測することができるブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットを提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に係る本発明の特徴は、軸体で構成され、ブレーキにおける回転体に押し付ける押圧体を支持するとともに押圧体が受ける回転体の周方向に沿った回転力によって前記軸体の軸線回りに揺動する第1揺動軸と、前記軸体とは異なる第2の軸体で構成され、押圧体が受ける回転力によって第2の軸体の軸線回りに揺動する第2揺動軸と、第2揺動軸に対して第1揺動軸を一体揺動可能な状態で着脱自在に固定するロック手段と、ブレーキにおける押圧体と第2揺動軸との間における第1揺動軸に設けられ、第1揺動軸の回転力を検出する第1揺動軸用トルク検出器と、第2揺動軸の回転力を検出する第2揺動軸用トルク検出器とを備えたことにある。
【0008】
このように構成した請求項1に係る本発明の特徴によれば、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、第1揺動軸が支持するブレーキの押圧体と第1揺動軸に着脱自在に連結される第2揺動軸との間における第1揺動軸に対して第1揺動軸用検出器が設けられている。このため、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、ブレーキの押圧体に生じる引き摺りトルクを押圧体と第2揺動軸との間に設けた第1揺動軸用検出器によって計測することができる。すなわち、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、第1揺動軸におけるより押圧体により近い位置で引き摺りトルクを計測するため、第1揺動軸のネジリ固有振動数(1次のネジリ振動数)の影響を抑えて精度良く引き摺りトルクを計測することができる。
【0009】
また、請求項2に係る本発明の他の特徴は、前記ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいて、第1揺動軸用トルク検出器は、第1揺動軸と第2揺動軸との間に設けられていることにある。
【0010】
このように構成した請求項2に係る本発明の他の特徴によれば、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、第1揺動軸用トルク検出器が第1揺動軸と第2揺動軸との間に設けられている。これにより、揺動軸と同揺動軸を支持する基台部との間に引き摺りトルクを計測するためのトルク検出器を設けた従来のブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットに比べて、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットを簡単かつコンパクトに構成することができる。
【0011】
また、請求項3に係る本発明の他の特徴は、前記ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいて、第2揺動軸は、第1揺動軸の外周の一部を覆う筒体で構成されていることにある。
【0012】
このように構成した請求項3に係る本発明の他の特徴によれば、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、第1揺動軸の少なくとも一部が筒状に形成された第2揺動軸の内側に配置されている。これにより、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットを簡単かつコンパクトに構成することができる。
【0013】
また、請求項4に係る本発明の他の特徴は、前記ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいて、第1揺動軸用トルク検出器は、第1揺動軸の両側面に互いに対向配置されたロードセルであることにある。
【0014】
このように構成した請求項4に係る本発明の他の特徴によれば、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、第1揺動軸用トルク検出器が第1揺動軸の側面における両側に対向配置されたロードセルで構成されている。このため、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、第1揺動軸の側面両側に設けた各ロードセルに圧縮荷重を作用させることにより引き摺りトルクを計測することができる。すなわち、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、第1揺動軸用トルク検出器を簡単な構成とすることができため、ロードセルに対する隙間調整などのメンテナンス負担を軽減できるとともに、トルク計測時のメカロスを抑えて精度良く引き摺りトルクを計測することができる。
【0015】
また、請求項5に係る本発明の他の特徴は、前記ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいて、第1揺動軸は、押圧体と第1揺動軸用トルク検出器との間の部分より同第1揺動軸用トルク検出器に対して第2揺動軸側の部分が剛性の低い素材で構成されていることにある。
【0016】
このように構成した請求項5に係る本発明の他の特徴によれば、ブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおける第1揺動軸は、押圧体と第1揺動軸用トルク検出器との間の部分より同第1揺動軸用トルク検出器に対して第2揺動軸側の部分が剛性の低い素材で構成されている。すなわち、第1揺動軸は、押圧体と第1揺動軸用トルク検出器との間のトルク伝達部分をトルク伝達に必要な剛性を有する素材で構成するとともに、第1揺動軸トルク検出器以降の部分をトルク伝達部分より剛性の低い素材で構成している。これにより、第1揺動軸における第1揺動軸トルク検出器以降の部分を捻りトルクに対する剛性が低い素材で構成でき第1揺動軸を軽量化することができるため、結果として引き摺りトルクを精度良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットとしてのトルク計測ユニットの全体構成を概略的に示す側面図である。
【図2】図1に示すトルク計測ユニットの中心線(図示せず)での断面の概略を模式的に示す側面一部断面図である。
【図3】図1に示すA−A線から見たトルク計測ユニットの断面を模式的に示す断面図である。
【図4】図1に示すB−B線から見たトルク計測ユニットの断面を模式的に示す断面図である。
【図5】図1に示すC−C線から見たトルク計測ユニットの断面を模式的に示す断面図である。
【図6】図1に示すD−D線から見たトルク計測ユニットの断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットの一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニット100(以下、単に「トルク計測ユニット100」という)の全体構成を概略的に示す側面図である。また、図2は、トルク計測ユニット100の中心線(図示せず)での断面の概略を模式的に示す側面一部断面図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。また、各図においては、本発明に直接関わらない部分は適宜省略して表わしている。
【0019】
このトルク計測ユニット100は、ディスクブレーキ90におけるキャリパ92に生じる制動トルクおよび引き摺りトルクを計測する計測装置であり、ディスクブレーキ90の性能を試験する試験装置としてのブレーキダイナモメータの一部を構成する。ディスクブレーキ90は、自動四輪車や自動二輪車に用いられる制動装置であり、主として、円板状に形成されて車輪とともに回転する回転体としての回転ディスク91と、同回転ディスク91を両側から挟んで押圧することにより回転を止める押圧体としてのキャリパ92とで構成されている。また、制動トルクとは、キャリパ92が回転ディスク91を挟んで回転ディスクの回転を止める際にキャリパ92に生じる回転ディスク91の周方向に沿った回転モーメントである。本実施形態においては、5000Nm程度の制動トルクの計測を想定している。また、引き摺りトルクとは、キャリパ92が回転ディスク91を挟まない非制動状態において回転ディスク91と接触することによりキャリパ92に生じる回転ディスク91の周方向に沿った回転モーメントである。本実施形態においては、0.05〜100Nmの範囲の引き摺りトルクを想定している。なお、トルク計測ユニット100が計測する制動トルクおよび引き摺りトルクの大きさは、ディスクブレーキ90の仕様に応じて適宜決定されるものである。したがって、トルク計測ユニット100は、5000Nm以下または以上の制動トルクおよび0.05〜100Nmの範囲以下または以上の引き摺りトルクを計測するように構成されていても良いことは当然である。
【0020】
(トルク計測ユニット100の構成)
トルク計測ユニット100は、コモンベース101を備えている。コモンベース101は、トルク計測ユニット100を床面上にて図示左右方向に変位可能な状態で支持するための土台部分であり、鋼材を図示左右方向を長辺とする方形枠状に組み付けて構成されている。このコモンベース101の上面には、直線軸受け(直動ガイドやLMガイドともいう)102を介して支持ベース103が支持されている。直動軸受け102は、コモンベース101の長手方向に沿って延びるレール102aに支持ベース103を支持するブロック102bが摺動可能に組み付けられた所謂直動システムである。支持ベース103は、トルク計測ユニット100の実質的な構成部品が組み付けられる板状の基礎部材であり、鋼板を図示左右方向に延びる方形状に形成して構成されている。
【0021】
支持ベース103の上面には、フロント支柱104およびリア支柱105が図示上下方向に延びた状態でそれぞれ設けられている。フロント支柱104およびリア支柱105は、第2揺動軸106および同第2揺動軸106に組み付けられまたは支持される各種部材を支持ベース103上で支持するための柱状部材であり、厚板の鋼板材を支持ベース103上にて起立させた状態でそれぞれ固定されている。これらのフロント支柱104およびリア支柱105のうち、フロント支柱104は、リア支柱105より板厚が厚く形成されており、リア支柱105に比べて高い剛性で構成されている。また、これらのフロント支柱104およびリア支柱105には、互いに同軸上に貫通孔がそれぞれ形成されており、同各貫通孔内にアンギュラベアリング104a,105aを介して第2揺動軸106が軸線回りに揺動自在な状態で支持されている。
【0022】
第2揺動軸106は、ディスクブレーキ90のキャリパ92に生じる制動トルクによって揺動する部材であり、制動トルクによる捻りトルクに耐えられる剛性を有した鋼材を筒状に形成した軸体で構成されている。この第2揺動軸106の内径は、後述する第1揺動軸111の外側を覆うことができる内径に形成されている。また、第2揺動軸106におけるフロント支柱104とリア支柱105との間の外周部分には、フロントアーム体107が設けられている。フロントアーム体107は、第2揺動軸106の外周部を覆う筒状に形成されるとともに、同筒状部からトルク計測ユニット100の両側方(図1における図示奥行方向)にそれぞれ延びるアーム部107aを備えて構成されている。このフロントアーム体107における2つの突出したアーム部107aにおける一方(図示下方)の先端部には、第2揺動軸用ロードセル108が連結されている。
【0023】
第2揺動軸用ロードセル108は、ディスクブレーキ90のキャリパ92に生じる制動トルクを計測するための動荷重計測用のセンサである。本実施形態においては、第2揺動軸用ロードセル108は、フロントアーム体107から受ける圧縮荷重および引張荷重をそれぞれ計測することができるセンサによって構成されている。この第2揺動軸用ロードセル108は、一方(図示上側)の端部がフロントアーム体107を介して第2揺動軸106に連結されるとともに、他方(図示下側)の端部がフロント検出器着脱機構109を介して支持ベース103上に着脱自在に連結されている。
【0024】
フロント検出器着脱機構109は、第2揺動軸用ロードセル108を支持ベース103に対して着脱自在に固定するためのものであり、支持ベース103の上面に固定的に設けられている。このフロント検出器着脱機構109は、後述する制御装置130によって制御されるエアコンプレッサユニット131の作動を介して第2揺動軸用ロードセル108を支持ベース103に固定状態または非固定状態にする。
【0025】
第2揺動軸106の内側には、3つの静圧軸受け110a,110b,110cが設けられているとともに、これらの静圧軸受け110a,110b,110cを介して第1揺動軸111が軸線回りに揺動自在な状態で支持されている。静圧軸受け110a,110b,110cは、制御装置130によって作動が制御されるエアコンプレッサユニット131による空気圧の供給を受けて第1揺動軸111を第2揺動軸106の内周面に対して浮揚させた非接触状態で支持する。
【0026】
第1揺動軸111は、ディスクブレーキ90のキャリパ92に生じる引き摺りトルクおよび制動トルクによって揺動する部材であり、鋼材を筒状に形成した軸体で構成されている。この第1揺動軸111は、主として内筒軸112、フロントロックフランジ113、連結フランジ114、トルク伝達軸115、リアロックフランジ123およびボス124によって構成されている。
【0027】
これらのうち、内筒軸112は、第2揺動軸106内に収容されて前記静圧軸受け110a,110b,110cによって回転自在に保持された鋼製の筒状部材である。この内筒軸112における一方(図示右側)の端部には、フロントロックフランジ113が組み付けられている。フロントロックフランジ113は、鋼材を略円筒状に形成して構成された部材であり、第1揺動軸111を構成するとともに後述するフロントロック機構116を構成する。このフロントロックフランジ113には、前記フロントロック機構116を構成する6つのフロント油圧シリンダ118に対応して図示水平方向に延びる穴状の4つの嵌合部113aと、ピン部材が垂直方向に配置された2つの押圧受け部113bとがそれぞれ設けられている。そして、このフロントロックフランジ113における一方(図示右側)の端部には、連結フランジ114を介してトルク伝達軸115が組み付けられている。
【0028】
連結フランジ114は、トルク伝達軸115をフロントロックフランジ113に連結するための部材であり、鋼材を略円盤状に形成して構成されている。トルク伝達軸115は、制動トルクおよび引き摺りトルクの計測対象となるディスクブレーキ90のキャリパ92を着脱自在に保持するとともに同キャリパ92に生じた制動トルクおよび引き摺りトルクを伝達するための軸状部材であり、鋼材を有底筒状に形成して構成されている。すなわち、キャリパ92は、トルク伝達軸115を介して第1揺動軸111に支持されている。なお、第1揺動軸111に対してキャリパ92が保持される図示右側をトルク計測ユニット100における前部側とし、同前部側に対して第1揺動軸111を介した反対側(図示左側)をトルク計測ユニット100における後部側とする。
【0029】
フロントロック機構116は、詳しくは図3および図4に示すように、第1揺動軸111を第2揺動軸106の一方(図示右側)の端部に着脱自在に固定するための機械装置であり、フロントロックフランジ113の他に、主として、フロント支持フレーム117およびフロント油圧シリンダ118によって構成されている。フロント支持フレーム117は、第2揺動軸106における一方(図示右側)の端部側においてフロント油圧シリンダ118をフロントロックフランジ113に対向させた状態で支持するための鋼製の枠状部材であり、第2揺動軸106における一方(図示右側)の端部に固定的に組み付けられている。
【0030】
フロント油圧シリンダ118は、制御装置130によって制御される油圧ポンプユニット132の作動によりロックピン118aが進退するアクチュエータである。このフロント油圧シリンダ118は、フロント支持フレーム117に対して、図示水平方向に互いに対向してロックピン118aが進退する2つのフロント油圧シリンダ118が図示上下側にそれぞれ一組ずつ配置されるとともに、垂直方向に互いに対向してロックピン118aが進退する2つのフロント油圧シリンダ118がフロント支持フレーム117の中央部に一組配置されている。そして、これらのフロント油圧シリンダ118のうち、図示水平方向に配置された4つのフロント油圧シリンダ118における各ロックピン118aが前記フロントロックフランジ113の各嵌合部113aに嵌合するとともに、垂直方向に配置された2つのフロント油圧シリンダ118における各ロックピン118aがフロントロックフランジ113の押圧受け部113bを押圧する。
【0031】
すなわち、フロントロック機構116は、第2揺動軸106にフロント支持フレーム117を介して固定されたフロント油圧シリンダ118のロックピン118aを、第1揺動軸111を構成するフロントロックフランジ113の嵌合部113aおよび押圧受け部113bにそれぞれ嵌合および押圧することにより第1揺動軸111を第2揺動軸106に固定する。
【0032】
また、フロント支持フレーム117における両側面部には、第1揺動軸用ロードセル120およびストッパ121が互いに並んでそれぞれ設けられている。第1揺動軸用ロードセル120は、ディスクブレーキ90のキャリパ92に生じる引き摺りトルクを計測するための動荷重計測用のセンサである。本実施形態においては、第1揺動軸用ロードセル120は、フロントロックフランジ113に設けられたロードセル押圧部122から受ける圧縮荷重を計測することができるセンサによって構成されている。一方、ストッパ121は、ロードセル押圧部122の図示下方向への所定量以上の変位を規制することによりロードセル押圧部122による第1揺動軸用ロードセル120への過渡の押圧を防止するための鋼製のブロック体である。
【0033】
これらの第1揺動軸用ロードセル120およびストッパ121における図示上方には、図5に示すように、フロントロックフランジ113に固着された状態でロードセル押圧部122が設けられている。ロードセル押圧部122は、主として、第1揺動軸111の回転により第1揺動軸用ロードセル120を押圧するための部品であり、フロントロックフランジ113の両側面部に固着された支持ブロック122aと、この支持ブロック122aの両端部側(図1における左右端部側)をそれぞれ図示上下方向に貫通する押圧棒122b,122cとで構成されている。
【0034】
これらのうち、支持ブロック122aは、押圧棒122b,122cを支持するための鋼製の部品であり、フロントロックフランジ113とフロント支持フレーム117との間において図示水平方向に延びる直方体状に形成されている。また、押圧棒122b,122cは、第1揺動軸用ロードセル120およびストッパ121をそれぞれ押圧する棒状の部品であり、支持ブロック122aの下面から突出量が調整可能な状態で支持ブロック122aにそれぞれ取り付けられている。本実施形態においては、押圧棒122b,122cは、ボルトとナットでそれぞれ構成されている。
【0035】
一方、内筒軸112における他方(図示左側)の端部には、リアロックフランジ123を介してボス124が組み付けられている。リアロックフランジ123は、鋼材を略円筒状に形成して構成された部材であり、第1揺動軸111を構成するとともに後述するリアロック機構125を構成する。このリアロックフランジ123には、リアロック機構125を構成する3つの油圧シリンダ127に対応して3つの嵌入孔123aがそれぞれ円周方向に沿って略等間隔に形成されている。
【0036】
ボス124は、第2揺動軸106における図示左側端部から突出して延びる軸体であり、鋼材を円筒状に形成して構成されている。このボス124は、一方(図示右側)の端部がリアロックフランジ123に固定されるとともに、他方の(図示左側)の端部がアキシャル固定台128によって支持されている。
【0037】
リアロック機構125は、図6に示すように、第1揺動軸111を第2揺動軸106の他方(図示左側)の端部に着脱自在に固定するための機械装置であり、リアロックフランジ123の他に、主として、リア支持フレーム126およびリア油圧シリンダ127によって構成されている。リア支持フレーム126は、第2揺動軸106における後端部においてリア油圧シリンダ127をリアロックフランジ123に対向させた状態で支持するための鋼製の略リング状部材であり、第2揺動軸106の後端部に固定的に組み付けられている。リア油圧シリンダ127は、制御装置130によって制御される油圧ポンプユニット132の作動によりロックピン127aが進退するアクチュエータである。このリア油圧シリンダ127は、リアロックフランジ123の外周上において同リアロックフランジ123の軸芯に向ってロックピン127aが進退する向きで略均等に3つ配置されている。
【0038】
すなわち、リアロック機構125は、第2揺動軸106にリア支持フレーム126を介して固定されたリア油圧シリンダ127のロックピン127aを、第1揺動軸111を構成するリアロックフランジ123の嵌入孔123aに嵌入することにより第1揺動軸111を第2揺動軸106に固定する。
【0039】
アキシャル固定台128は、第1揺動軸111のアキシャル方向(軸線方向)の変位(ずれ)を防止するための軸受け装置である。このアキシャル固定台128は、略円筒状のハウジング128a内において、ボス124の後端部を支持するアキシャルプレート128bを2つの静圧軸受け128c,128dで挟んで支持することにより第1揺動軸111のアキシャル方向の変位を防止する。この場合、静圧軸受け128c,128dは、制御装置130によって作動が制御されるエアコンプレッサユニット131による空気圧の供給を受けてアキシャルプレート128bを支持する。このアキシャル固定台128は、軸受け支柱129を介して支持ベース103上に固定されている。
【0040】
制御装置130は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、作業者からの指示に従って、図示しない制御プログラムを実行することにより第2揺動軸用ロードセル108、第1揺動軸用ロードセル120、エアコンプレッサユニット131、油圧ポンプユニット132、ディスク保持機構140およびディスクブレーキ90のキャリパ92の作動をそれぞれ制御することにより、ディスクブレーキ90における制動トルクおよび引き摺りトルクを計測する。この制御装置130には、作業者からの支持を入力するための図示しない入力装置および制御装置130の作動状態および制動トルクや引き摺りトルクの計測結果をそれぞれ表示するための図示しない表示装置を備えている。
【0041】
エアコンプレッサユニット131は、制御装置130に作動が制御されてフロント検出器着脱機構109および静圧軸受け110a,110b,110c,128c,128dに対して空気圧を供給する機械装置であり、主として図示しない圧縮機およびリレー弁などによって構成されている。また、油圧ポンプユニット132は、制御装置130に作動が制御されてフロントフロント油圧シリンダ118およびリア油圧シリンダ127に対して油圧を供給する機械装置であり、主として図示しないポンプおよびリレー弁などによって構成されている。
【0042】
また、トルク計測ユニット100は、ディスクブレーキ90における回転ディスク91を着脱自在に保持するとともに、保持した回転ディスク91を回転さえるディスク保持機構140(図1および図2において一部のみ図示)を備えている。このディスク保持機構140は、制御装置130に作動が制御されて回転ディスク91を回転駆動する駆動モータ(図示せず)やディスクブレーキ90が装着される車両の慣性を再現するフライホイール(図示せず)などを備えて構成されている。
【0043】
また、このトルク計測ユニット100は、ディスクブレーキ90のキャリパ92に回転ディスク91を挟ませるための油圧をキャリパ92に供給する図示しないブレーキ油圧ポンプユニットを備えている。このブレーキ油圧ポンプユニットは、制御装置130によって作動が制御される。すなわち、ディスクブレーキ90のキャリパ92は、制御装置130による作動制御によって回転ディスク91を挟んだり開放したりする。
【0044】
(トルク計測ユニット100の作動)
次に、このように構成したトルク計測ユニット100の作動について説明する。まず、このトルク計測ユニット100を用いてディスクブレーキ90の制動トルクおよび引き摺りトルクを計測する作業者は、被計測対象となるディスクブレーキ90を用意するとともに、制御装置130を操作してトルク計測ユニット100の電源をONにする。この操作に応答して制御装置130は、図示しない制御プログラムを実行することにより各部、具体的には、第2揺動軸用ロードセル108、第1揺動軸用ロードセル120、エアコンプレッサユニット131、油圧ポンプユニット132、ディスク保持機構140およびブレーキ油圧ポンプユニット(図示せず)を起動させた後、作業者からの計測開始の指示を待つ待機状態となる。この場合、制御装置130は、エアコンプレッサユニット131を作動させることにより静圧軸受け110a,110b,110c,128c,128d内の空気圧を高めて第1揺動軸111を浮揚させた状態でそれぞれ支持させる。
【0045】
次に、作業者は、ディスクブレーキ90をトルク計測ユニット100にセットする。具体的には、作業者は、ディスクブレーキ90における回転ディスク91をディスク保持機構140に保持させるとともに、キャリパ92をキャリパホルダ117に保持させる。次に、作業者は、ディスクブレーキ90の引き摺りトルクの計測作業を行う。具体的には、作業者は、制御装置130に対してディスクブレーキ90の引き摺りトルクの計測処理の実行を指示する。
【0046】
この指示に応答して制御装置130は、ディスクブレーキ90の引き摺りトルクの計測処理の実行を開始する。具体的には、制御装置130は、油圧ポンプユニット132の作動を制御してフロント油圧シリンダ118およびリア油圧シリンダ127におけるロックピン118a,127aを後進させることによりフロントロックフランジ113およびリアロックフランジ123にロックピン118a,127aが嵌合および押圧しない離隔状態とする。これにより、第1揺動軸111は、第2揺動軸106に対して非固定状態となって単独で回転変位(揺動)する状態となる。換言すれば、第2揺動軸106は、第1揺動軸111の揺動変位によっては揺動しない状態となる。
【0047】
また、この場合、制御装置130は、第1揺動軸111を非固定状態とする非固定処理に連動してエアコンプレッサユニットの作動制御によりフロント検出器脱着機構109の作動を制御して第2揺動軸用ロードセル108を支持ベース103から分離した非固定状態とする。これにより、第2揺動軸用ロードセル108によるトルクの検出が不能な状態となる。
【0048】
次に、制御装置130は、ディスク保持機構140の作動を制御して回転ディスク91を回転させる。これにより、ディスクブレーキ90におけるキャリパ92には、回転ディスク91との接触による引き摺りトルクが発生する。キャリパ92に発生した引き摺りトルクは、第1揺動軸111を構成するトルク伝達軸115、連結フランジ114およびフロントロックフランジ113を介して第1揺動軸用ロードセル120によって検出される。すなわち、第1揺動軸111を構成するフロントロックフランジ113がキャリパ92に発生した引き摺りトルクによって回転変位することにより、同フロントロックフランジ113に設けられた2つのロードセル押圧部122のうちの一方がフロント支持フレーム117に設けられた前記一方に対応する側の第1揺動軸用ロードセル120を押圧する。
【0049】
この場合、第1揺動軸用ロードセル120は、フロント支持フレーム117を介して引き摺りトルクに対して十分な質量を有した第2揺動軸106に支持されているとともに、第1揺動軸111が第2揺動軸106に対して非固定状態となっており同第2揺動軸106が回転変位(揺動)しない。このため、第1揺動軸用ロードセル120は、ロードセル押圧部122の押圧によって変位することなく引き摺りトルクを検出して同検出した引き摺りトルクの大きさに応じた電気信号を制御装置130に出力する。これにより、制御装置130は、第1揺動軸用ロードセル120から入力した検出信号に応じた引き摺りトルクの値を計算してキャリパ92に生じた引き摺りトルクの値を取得する。すなわち、フロントロックフランジ113に設けられたロードセル押圧部122とフロント支持フレーム117に設けられた第1揺動軸用ロードセル120とが、本発明に係る第1揺動軸用トルク検出器に相当する。
【0050】
なお、この引き摺りトルクの計測処理においては、第2揺動軸106の揺動を検出する第2揺動軸用ロードセル108は、支持ベース103に対して非固定状態にあるため第2揺動軸106の揺動を検出することはない。また、第1揺動軸111は、図示左側の後端部がボス124を介してアキシャル固定台128に固定されてアキシャル方向の変位が規制されている。これにより、第1揺動軸111は、キャリパ92が回転ディスク91との接触により受けるアキシャル方向の力によって同アキシャル方向に変位する(ずれる)ことがない。これにより、第1揺動軸用ロードセル120は、キャリパ92に生じた引き摺りトルクをより精度良く検出することができる。
【0051】
次に、作業者は、ディスクブレーキ90の制動トルクの計測作業を行う。具体的には、作業者は、制御装置130に対してディスクブレーキ90の制動トルクの計測処理の実行を指示する。この指示に応答して制御装置130は、ディスクブレーキ90の制動トルクの計測処理の実行を開始する。具体的には、制御装置130は、油圧ポンプユニット132の作動を制御してフロント油圧シリンダ118およびリア油圧シリンダ127におけるロックピン118a,127aを前進させることによりフロントロックフランジ113およびリアロックフランジ123にロックピン118a,127aが嵌合および押圧する接合状態とする。これにより、第1揺動軸111は、第2揺動軸106に対して固定状態となる。すなわち、第2揺動軸106は、第1揺動軸111の揺動変位によっては揺動する状態となる。
【0052】
また、この場合、制御装置130は、第1揺動軸111を固定状態とする固定処理に連動してエアコンプレッサユニットの作動制御によりフロント検出器脱着機構109の作動を制御して第2揺動軸用ロードセル108を支持ベース103に接続する固定状態とする。これにより、第2揺動軸用ロードセル108によるトルクの検出が可能な状態となる。
【0053】
次に、制御装置130は、回転状態にある回転ディスク91をブレーキ油圧ポンプユニット(図示せず)の作動制御を介してキャリパ92によって挟むことによりディスクブレーキ90を制動状態とする。これにより、ディスクブレーキ90のキャリパ92に生じた制動トルクは、第1揺動軸111を構成するトルク伝達軸115、連結フランジ114、フロントロックフランジ113、内筒軸112、リアロックフランジ123およびボス124にそれぞれ伝達される。
【0054】
この場合、第1揺動軸111は、フロントロック機構116およびリアロック機構125によって第2揺動軸106に固定されて第2揺動軸106と一体化している。このため、一体化された第2揺動軸106および第1揺動軸111に伝達された制動トルクは、フロントアーム体107を介して第2揺動軸用ロードセル108に伝達される。すなわち、ディスクブレーキ90のキャリパ92に生じた制動トルクは、第2揺動軸用ロードセル108によって検出される。したがって、制御装置130は、第2揺動軸用ロードセル108が検出した制動トルクの大きさに応じた電気信号を入力して、同入力した検出信号に応じた制動トルクの値を計算してキャリパ92に生じた制動トルクの値を取得する。すなわち、フロントアーム体107と支持ベース103との間に設けられた第2揺動軸用ロードセル108が、本発明に係る第2揺動軸用トルク検出器に相当する。
【0055】
なお、この制動トルクの計測処理においては、フロントロックフランジ113とフロント支持フレーム117とが一体的に回転変位(揺動)するため、第1揺動軸用ロードセル120によって制動トルクが検出されることはない。また、第1揺動軸111は、図示左側の後端部がボス124を介してアキシャル固定台128に固定されてアキシャル方向の変位が規制されている。これにより、第1揺動軸111と一体化した第2揺動軸106は、キャリパ92が回転ディスク91との接触により受けるアキシャル方向の力によって同アキシャル方向に変位する(ずれる)ことがない。これにより、第2揺動軸用ロードセル108は、キャリパ92に生じた引き摺りトルクをより精度良く検出することができる。
【0056】
そして、キャリパ92に生じる引き摺りトルクおよび制動トルクの計測を終えた作業者は、回転ディス91およびキャリパ92をディスク保持機構140およびキャリパホルダ117から取り外した後、制御装置130に対して計測処理の終了を指示する。この指示に応答して制御装置130は、第2揺動軸用ロードセル108、第1揺動軸用ロードセル120、エアコンプレッサユニット131、油圧ポンプユニット132、ディスク保持機構140およびブレーキ油圧ポンプユニット(図示せず)の作動をそれぞれ停止させた後、電源をOFFする。これにより、ディスクブレーキ90に対する引き摺りトルクおよび制動トルクの計測作業が終了する。
【0057】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、トルク計測ユニット100は、第1揺動軸111が支持するディスクブレーキ90のキャリパ92と第1揺動軸111に着脱自在に連結される第2揺動軸106との間における第1揺動軸111に対して第1揺動軸用ロードセル120とロードセル押圧部122とからなる第1揺動軸用検出器が設けられている。このため、トルク計測ユニット100は、ディスクブレーキ90のキャリパ92に生じる引き摺りトルクをキャリパ92と第2揺動軸106との間に設けた第1揺動軸用検出器によって計測することができる。すなわち、トルク計測ユニット100は、第1揺動軸111におけるよりキャリパ92により近い位置で引き摺りトルクを計測するため、第1揺動軸111のネジリ固有振動数(1次のネジリ振動数)の影響を抑えて精度良く引き摺りトルクを計測することができる。
【0058】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0059】
例えば、上記実施形態においては、第1揺動軸111は、主として内筒軸112、フロントロックフランジ113、連結フランジ114、トルク伝達軸115、リアロックフランジ123およびボス124によって構成されるとともに第2揺動軸106によって揺動自在に支持されている。しかし、第1揺動軸111は、ディスクブレーキ90のキャリパ92を支持しつつ同キャリパ92に生じる引き摺りトルクおよび制動トルクによる回転力に起因する回転力によって軸線回りに揺動するように構成されていれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
例えば、第1揺動軸111をトルク伝達軸115、連結フランジ114およびフロントロックフランジ113で構成することもできる。この場合、第1揺動軸111は、上記実施形態におけるフロント支柱104またはリア支柱105と同様な支柱によって支持ベース103上に揺動可能に直接支持されるように構成することができる。これによれば、第1揺動軸111を小型化および軽量化することができるとともに引き摺りトルクの計測制度を向上させることができる。また、第1揺動軸111と第2揺動軸106とが直列的な位置関係となるためリアロック機構125も不要となり、トルク計測ユニット100の構成を簡単にすることができる。この場合、第1揺動軸111および第2揺動軸106は、中空の筒状に構成しても良いし、中実の棒状に構成することもできる。
【0061】
また、例えば、上記実施形態におけるトルク計測ユニット100に対して、リアロック機構125を廃するとともに、第1揺動軸111における内筒軸112の素材を第2揺動軸106から露出した部分(具体的には、トルク伝達軸115、連結フランジ114およびフロントロックフランジ113)の素材より剛性の低い素材(例えば、軟鋼材、アルミニウム材またはCFRP(炭素繊維強化プラスチック)材など)で構成することもできる。換言すれば、第1揺動軸111は、キャリパ92とロードセル押圧部122(第1揺動軸用ロードセル120)との間の部分より同ロードセル押圧部122(第1揺動軸用ロードセル120)に対して第2揺動軸106側の部分を剛性の低い素材で構成することができる。すなわち、第1揺動軸111は、キャリパ92とロードセル押圧部122(第1揺動軸用トルク検出器)との間のトルク伝達部分をトルク伝達に必要な剛性を有する素材で構成するとともに、ロードセル押圧部122以降の部分をトルク伝達部分より剛性の低い素材で構成することができる。これにより、第1揺動軸111におけるロードセル押圧部122(第1揺動軸用ロードセル120)以降の部分を捻りトルクに対する剛性が低い素材で構成でき第1揺動軸111を軽量化することができるため、結果として引き摺りトルクを精度良く計測することができる。
【0062】
また、上記実施形態においては、第1揺動軸111は、フロントロック機構116およびリアロック機構125によって第2揺動軸106における両端部にそれぞれ固定される。すなわち、フロントロック機構116およびリアロック機構125が本発明に係るロック手段に相当する。しかし、第1揺動軸111は、第2揺動軸106の両端部のうち少なくとも一方の端部に固定されるように構成されていればよい。すなわち、ロック手段は、フロントロック機構116またはリアロック機構125のみで構成することもできる。また、フロントロック機構116およびリアロック機構125は、第1揺動軸111を第2揺動軸106に対して着脱自在に固定できる構成であれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、カップリングやボルトとナット締めなどを用いて第1揺動軸111を第2揺動軸106に着脱自在に固定することができる。
【0063】
また、上記実施形態においては、第1揺動軸111は、第2揺動軸106に対して空気圧を用いた静圧軸受け110a,110b,110cで支持されている。しかし、第1揺動軸111は、第2揺動軸106に対して他の形態の軸受け、例えば、油圧型の静圧軸受けなどの流体軸受け、鋼球やニードル(円柱や円錐体などのころ)を用いた玉軸受けやころ軸受けなどの転がり軸受け、更には磁気軸受けなどを用いることもできる。
【0064】
また、上記実施形態においては、キャリパ92に生じた引き摺りトルクは、第1揺動軸111と第2揺動軸106との間に設けたロードセル押圧部122および第1揺動軸用ロードセルからなる第1揺動軸用トルク検出器によって検出される。しかし、第1揺動軸用トルク検出器は、キャリパ92と第2揺動軸106との間における第1揺動軸111に設けられていれば、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1揺動軸111におけるトルク伝達軸115に上記実施形態におけるフロントアーム体107と同様のフロントアーム体を設けるとともに、このフロントアーム体と支持ベース103との間に第1揺動軸用ロードセル120を第1揺動軸用トルク検出器として設けることもできる。
【0065】
また、上記実施形態においては、フロントロックフランジ113にロードセル押圧部122を設けるとともに、フロント支持フレーム117に第1揺動軸用ロードセル120を設けた。しかし、フロントロックフランジ113に第1揺動軸用ロードセル120を設けるとともに、フロント支持フレーム117にロードセル押圧部122を設けて第1揺動軸用トルク検出器を構成することもできる。
【0066】
また、上記実施形態においては、第1揺動軸111における側面部の両側にそれぞれ第1揺動軸用トルク検出器を設けて第1揺動軸用ロードセル120に作用する圧縮荷重を介して引き摺りトルクを計測するように構成した。しかし、第1揺動軸111の外周上に第1揺動軸用トルク検出器を1つだけ設けて引き摺りトルクを計測することもできる。この場合、第1揺動軸用トルク検出器は、第1揺動軸用ロードセル120に作用する圧縮荷重および引っ張り荷重を介して引き摺りトルクを計測することになる。
【0067】
また、上記実施形態においては、キャリパ92に生じた制動トルクは、第2揺動軸用ロードセル108によって検出した。すなわち、第2揺動軸用ロードセル108が本発明に係る第2揺動軸用トルク検出器に相当する。しかし、第2揺動軸用トルク検出器は、キャリパ92に生じた制動トルクに起因する第2揺動軸106の回転力を検出することができるセンサであれば他の形態のセンサ、例えば、トルクメータなどであってもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、制御装置130は、フロント検出器着脱機構109の作動を制御して、第1揺動軸111の第2揺動軸106への固定処理および非固定処理に連動して第2揺動軸用ロードセル108の支持ベース103への固定処理および非固定処理を実行するように構成されている。しかし、第1揺動軸111を第2揺動軸106に非固定状態とした場合には第2揺動軸106は揺動しない状態となるため、必ずしも第2揺動軸ロードセル108を支持ベース103に対して非固定状態とする必要はない。すなわち、トルク計測ユニット100は、フロント検出器着脱機構109を省略するとともに、制御装置130における第2揺動軸ロードセル108の固定処理および非固定処理を省略して構成することもできる。
【0069】
また、上記実施形態においては、トルク計測ユニット100は、ディスクブレーキ90のキャリパ92に生じた制動トルクおよび引き摺りトルクを計測した。しかし、本発明に係るブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、回転体と同回転体に押し付ける押圧体とを備えたブレーキにおける押圧体に生じる制動トルクおよび引き摺りトルクを計測できるものであり、必ずしもディスクブレーキ90に限定されるものではない。すなわち、本発明に係るブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットは、ディスクブレーキ90以外のブレーキにおける制動トルクおよび引き摺りトルクを計測することができる。例えば、上記実施形態におけるトルク計測ユニット100によってドラムブレーキ(図示せず)における制動トルクおよび引き摺りトルクを計測することもできる。この場合、トルク計測ユニット100は、トルク伝達軸115がキャリパ92に代えて押圧体としてのブレーキシューを保持するとともに、ディスク保持機構140が回転ディスク91に代えて回転体としての円筒形ドラムを保持するように構成する。
【符号の説明】
【0070】
90…ディスクブレーキ、91…回転ディスク、92…キャリパ、
100…トルク計測ユニット、101…コモンベース、102…直線軸受け、103…支持ベース、104…フロント支柱、104a…アンギュラベアリング、105…リア支柱、105a…アンギュラベアリング、106…第2揺動軸、107…フロントアーム体、107a…アーム部、108…第2揺動用ロードセル、109…フロント検出器着脱機構、110a,110b,110c…静圧軸受け、111…第1揺動軸、112…内筒軸、113…フロントロックフランジ、113a…嵌合部、113b…押圧受け部、114…連結フランジ、115…トルク伝達軸、116…フロントロック機構、117…フロント支持フレーム、118…フロント油圧シリンダ、118a…ロックピン、120…第1揺動軸用ロードセル、121…ストッパ、122…ロードセル押圧部、122a…支持ブロック、122b,122c…押圧棒、123…リアロックフランジ、123a…嵌入孔、124…ボス、125…リアロック機構、126…リア支持フレーム、127…リア油圧シリンダ、127a…ロックピン、128…アキシャル固定台、128a…ハウジング、128b…アキシャルプレート、128c,128d…静圧軸受け、129…軸受け支柱、
130…制御装置、131…エアコンプレッサ、132…油圧ポンプユニット、
140…ディスク保持機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体で構成され、ブレーキにおける回転体に押し付ける押圧体を支持するとともに前記押圧体が受ける前記回転体の周方向に沿った回転力によって前記軸体の軸線回りに揺動する第1揺動軸と、
前記軸体とは異なる第2の軸体で構成され、前記押圧体が受ける前記回転力によって前記第2の軸体の軸線回りに揺動する第2揺動軸と、
前記第2揺動軸に対して前記第1揺動軸を一体揺動可能な状態で着脱自在に固定するロック手段と、
前記ブレーキにおける前記押圧体と前記第2揺動軸との間における前記第1揺動軸に設けられ、前記第1揺動軸の前記回転力を検出する第1揺動軸用トルク検出器と、
前記第2揺動軸の前記回転力を検出する第2揺動軸用トルク検出器とを備えたことを特徴とするブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載したブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいて、
前記第1揺動軸用トルク検出器は、前記第1揺動軸と前記第2揺動軸との間に設けられていることを特徴とするブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載したブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいて、
前記第2揺動軸は、前記第1揺動軸の外周の一部を覆う筒体で構成されていることを特徴とするブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニット。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載したブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいて、
前記第1揺動軸用トルク検出器は、前記第1揺動軸の両側面に互いに対向配置されたロードセルであることを特徴とするブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニット。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1つに記載したブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニットにおいて、
前記第1揺動軸は、前記押圧体と前記第1揺動軸用トルク検出器との間の部分より同第1揺動軸用トルク検出器に対して前記第2揺動軸側の部分が剛性の低い素材で構成されていることを特徴とするブレーキダイナモメータ用トルク計測ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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