説明

ブレーキチャンバー

【課題】リリースボルトに対してナットが取り付け易く且つ分解し易いとともに、ナット取り付け後においても充分な抜け止め強度を確保することのできるナット取付構造を備えたブレーキチャンバーを得る。
【解決手段】ブレーキチャンバー1は、スプリングブレーキ部3とサービスブレーキ部13とを備え、スプリングブレーキ部3はブレーキを作動させるピストン5と、ピストン5を付勢するスプリング6と、ブレーキを解除する為のリリースボルト7とを備える。リリースボルト7の端部に設けられるナット8はストッパリング9により抜け止めが行われ、このストッパリング9はナット8に形成された凹部8cの内側に収容される。そして凹部8cの内周面8dは、ナット8の外側に向けて拡開する様な傾斜形状を成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のブレーキ装置を作動させるプッシュロッドを前記ブレーキ装置に対して進出させるピストンをリリースボルトによってリリースさせる構造を備えたブレーキチャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば大型自動車用ブレーキシステムにおいては、エアコンプレッサから供給される圧縮空気を制動のエネルギー源とするエアブレーキが用いられている。このエアブレーキは、ブレーキシューを押し広げるプッシュロッドと、このプッシュロッドを駆動する為のブレーキチャンバーとを備えている。
【0003】
またこのブレーキチャンバーは、車両走行時における制動用として圧縮空気により車輪を制動するサービスブレーキチャンバーに、パーキングブレーキ用として作動するスプリングブレーキチャンバーが併設されることもある。
【0004】
スプリングブレーキチャンバーは、非制動時には圧縮空気の圧力によってスプリングが押し縮められ、内部のピストンがプッシュロッドを押さない状態となっているが、制動時には圧縮空気が抜かれることでスプリングの押圧力がピストンに作用し、これによりピストンがプッシュロッドを押してブレーキが制動状態となる。
【0005】
ここで、スプリングブレーキチャンバーに圧縮空気を供給する供給路において仮にエア漏れが生じると、スプリングブレーキチャンバーにおいてはピストンがスプリングに押された状態、即ちブレーキ制動状態のままとなり、これを解除できなくなる。そこでスプリングブレーキチャンバーには、手動でスプリングブレーキを解除させる為のリリースボルトが設けられている(例えば、特許文献1参照)。即ち、リリースボルトを回すことでピストンがブレーキリリース位置まで変位し、これによりスプリングブレーキを解除することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3710477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで上述のリリースボルトの端部には、リリースボルトを回す際の手掛かりとなるナットが設けられる。従来このナットは、リリースボルトの端部に例えば圧入固定されることで取り付けられていた為、取り付け作業に手間を要していた。また、圧入固定する為、ブレーキチャンバーの修理時等に、容易に分解することができないという問題がある。
【0008】
その一方で、例えばリリースボルトの端部を周方向に沿って凹凸形状とし、ナットをこの凹凸形状と嵌合する様な凹凸形状とすることで回り止めを構成するとともに、抜け止めリングによりナットの抜け止めを行う様に構成することも考えられるが、この場合抜け止め強度に問題が生じる場合がある。
【0009】
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、リリースボルトに対してナットが取り付け易く且つ分解も行い易いとともに、ナット取り付け後においても充分な抜け止め強度を確保することのできるナット取付構造を備えたブレーキチャンバーを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るブレーキチャンバーは、ハウジング内をスプリングの収容空間と圧縮空気の圧力空間とに画設するフランジ部および前記フランジ部から延設される中空のシリンダ部を備えて構成され、前記スプリングの付勢力によって車両のブレーキ装置を作動させるプッシュロッドを前記ブレーキ装置に対して進出させるピストンと、前記ハウジングに形成されたボルト孔に螺合するとともに一端側が前記シリンダ部の内部に入り込み且つ他端側が前記ハウジングの外に突出し、回転させることにより前記一端側が前記スプリングの付勢力に抗して前記ピストンを前記ブレーキ装置の制動をリリースさせる位置まで変位させるリリースボルトと、前記リリースボルトの前記他端側の端部を挿通させる挿通穴を有し、前記リリースボルトの前記他端側端部に対して固定されるナットと、前記挿通穴の内径より大きい外径を有し、前記挿通穴に前記リリースボルトの前記他端側端部が挿通された状態で前記他端側端部に取り付けられることにより前記ナットの前記リリースボルトからの抜け止めを行うストッパリングと、を備え、前記ストッパリングは、前記ナットに形成された凹部の内側に収容されるとともに、前記ストッパリングと対向する前記凹部の内周面が、前記ナットの外側に向けて拡開する様な傾斜形状を成していることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、リリースボルトの端部に固定されるナットは、ナットに形成された凹部の内側に収容されるストッパリングによって抜け止めが行われることから、リリースボルトに対してナットを容易に取り付けることができ、且つストッパリングを外すことで容易に分解することもできる。
【0012】
そして、ナットの凹部は、ストッパリングと対向する内周面がナットの外側に向けて拡開する様な傾斜形状を成しているので、ナットが抜ける方向に移動しようとすると、前記内周面がストッパリングを外側から押すように機能する。つまり、ストッパリングは外れる方向(拡開する方向)とは反対側の方向(径が縮まる方向)に押されるので、ナットが抜けようとすればする程ストッパリングによるストッパー機能が向上し、これによりナット取り付け後において充分な抜け止め強度を確保することができる。
【0013】
本発明の第2の態様に係るブレーキチャンバーは、第1の態様において、前記リリースボルトの前記他端側端部の外周が周方向に沿って凹凸形状を有し、前記ナットの前記挿通穴が、前記凹凸形状と所定の隙間を有した状態で嵌合する凹凸形状を成していることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記リリースボルトの前記他端側端部の外周が周方向に沿って凹凸形状を有し、前記ナットの前記挿通穴が、前記凹凸形状と所定の隙間を有した状態で嵌合する凹凸形状を成しているので、ナットの確実な回り止めを確保しつつ、分解容易性を維持することができる。
【0015】
本発明の第3の態様に係るブレーキチャンバーは、第1のまたは第2の態様において、前記リリースボルトの前記他端側において前記ナットの取り付け部位よりもチャンバー内側にはボルト側シール面が形成され、前記ハウジングにおいて前記ボルト孔の終端位置よりチャンバー外側には、前記ボルト側シール面と対向するハウジング側シール面が形成され、前記ボルト側シール面と前記ハウジング側シール面との間にシールリングが設けられることにより、前記ナットよりもチャンバー内側においてシール機能が発揮される構成を備えることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記ボルト側シール面、前記ハウジング側シール面、これらの間に設けられるシールリング、のこれらによる「軸シール機能」により、前記ナットよりもチャンバー内側においてシール機能が発揮される構成を備えるので、リリースボルトとナットとの間から侵入する水分、およびナットとハウジングとの間から侵入する水分、の双方に対して一つのシール手段で対応することができ、構造の簡素化と低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るブレーキチャンバーの側断面図。
【図2】リリースボルトの斜視図。
【図3】ナットの斜視図。
【図4】ナットの取り付け部位の断面図。
【図5】他の形態に係るナット取付構造を示す断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。尚、以下に説明する実施形態はあくまで本発明の一実施形態であり、本発明を限定するものでないことを前提にして、以下の実施形態を説明する。
【0019】
図1は、本発明に係るブレーキチャンバー1の側断面図であり、図2はリリースボルト7の斜視図、図3はナット8の斜視図、図4はナット8の取付部位の断面図である。また、図5は他の形態に係るナット取付構造を示す断面斜視図である。
【0020】
図1において、ブレーキチャンバー1の右側には図示を省略するブレーキ装置が設けられており、このブレーキ装置に対して符号2で示すプッシュロッドが進出することで、ブレーキ装置が備えるブレーキシューが押し広げられ、制動力が生じる様になっている。
【0021】
このブレーキチャンバー1は、サービスブレーキ用としてのサービスブレーキ部13と、パーキングブレーキ用としてのスプリングブレーキ部3と、を備えて構成され、サービスブレーキ部13及びスプリングブレーキ部3のいずれかによって、プッシュロッド2がブレーキ装置に向けて押される様になっている。
【0022】
スプリングブレーキ部3は、ハウジング4A、4Bが接続されることでスプリング6やピストン5の収容空間が形成されている。スプリングブレーキ部3が備えるピストン5は、ピストンフランジ部5aとピストンシリンダ部5bとを有し、ピストンフランジ部5aとハウジング4Aとの間に設けられたスプリング6によって、ピストンシリンダ部5bがサービスブレーキ部13のプッシュプレート20を押す方向に付勢されている。
【0023】
ハウジング4A、4Bの内部空間は、ピストンフランジ部5aによって、スプリング6が設けられるスプリング収容空間10Aと、その反対側の圧縮空気の圧力空間10Bとに画設されており、両者の間で空気の流通が生じないように気密性が保たれている。そして圧力空間10Bには図示しない圧縮空気供給手段から圧縮空気が供給され、その圧力によって非制動時にはピストンフランジ部5aが図示する様にスプリング6を押し縮めている。そしてパーキングブレーキ操作が行われると、圧力空間10Bの圧縮空気が抜かれ、スプリング6の付勢力が作用してピストン5がプッシュプレート20を介してプッシュロッド2を押し、ブレーキ制動状態となる。
【0024】
次に、ハウジング4Aの中央部に設けられたボルト孔4cにはリリースボルト7が螺合しており、その一方側端部がピストン5のピストンシリンダ部5b内に入り込んだ状態となっている。
【0025】
中空のピストンシリンダ部5b内に入り込んだリリースボルト7の先端にはボルトフランジ部7aが形成されており、リリースボルト7の他方側端部(ハウジング4Aの外側に突出している)に取り付けられたナット8を回転させることで、スプリング6の付勢力に抗してピストン5を図の左方、即ちブレーキ解除(リリース)方向に手動で移動させることができる様になっている。即ち、圧縮空気の供給回路に失陥が生じた場合であっても、手動でスプリングブレーキを解除できる様になっている。尚、図1において仮想線で示す符号7’、8’は、それぞれブレーキ解除位置にあるリリースボルトとナットを示している。
【0026】
一方、サービスブレーキ部13は、スプリングブレーキ部3を構成するハウジング4Bと、ベース15と、によってプッシュプレート20及びダイヤフラム19の収容空間が画設されている。
【0027】
ベース15は、その一例としてハウジングとしてのカップ16、ベースシリンダ17、ベースフランジ18、のこれらによる分割構造となっており、ベースシリンダ17の一端にベースフランジ18が溶接され、ベースシリンダ17の他端にカップ16が溶接され、一体化されている。
【0028】
ベースシリンダ17とカップ16との接続部位は、より具体的にはベースシリンダ17の先端部位が若干量カップ16の内側に入り込む様になっており、その状態で両者が接続固定されている。
【0029】
以上の様にベース15がカップ16、ベースシリンダ17、ベースフランジ18、のこれらによる分割構造となっているので、ベース15の全体を一体的に形成する構成に比して、仕様変更に容易に対応することができる。例えば、ベース15の全体的な長さは、ベースシリンダ17の長さを変更するのみで対応でき、カップ16、ベースフランジ18はそのまま利用できる。また、開口部16a(後述)の形成位置も、カップ16を仕様変更するのみで、ベースシリンダ17、ベースフランジ18、のこれらはそのまま利用できる。更に、開口部16a(後述)と、ベースフランジ18の締結穴(不図示)との相対位置も、容易に変更することができる。
【0030】
ハウジング4Bとカップ16との間には、ダイヤフラム19が挟持されており、そしてダイヤフラム19とハウジング4Bとの間に、図示を省略する圧縮空気供給口から圧縮空気が供給される様になっている。そしてダイヤフラム19とハウジング4Bとの間に圧縮空気が供給されると、ダイヤフラム19の変形を伴い、プッシュロッド2がプッシュプレート20を介して押され、ブレーキが作動する様になっている。
【0031】
ハウジング4Bとカップ16とで画設されたサービスブレーキ部13の内部空間14は、ダイヤフラム19の変形に追従して拡大縮小できる様に、カップ16には外部と連通する開口部16aが設けられている。
【0032】
このため内部空間14に、開口部16aを介して外部から泥、埃などの異物が侵入し、それがベースシリンダ17内に入り込んでブッシュ23の円滑な摺動を阻害する虞がある。そこでベースシリンダ17とロッド部22との間には、弾性変形可能な材料(例えば、ゴム)によってドーム形状を成す様に形成された、ブーツ部材としてのダストブーツ29が取付固定されている。
【0033】
尚、符号12は、スプリングブレーキ部3におけるスプリング6の収容空間10Aと、サービスブレーキ部13における内部空間14と、を連通する連絡管を示している。即ち、スプリングブレーキ部3におけるスプリング6の収容空間10Aは、水分等によるスプリング6の劣化を防止する為に基本的に密閉空間となっているが、スプリング6の収容空間10Aはピストン5のピストン動作によって拡縮させる必要がある為、連絡管12によってスプリング6の収容空間10Aに対する空気流通が円滑に行われる様になっている。
【0034】
次に、プッシュプレート20は、プレートフランジ部21とロッド部材としてのロッド部22とで構成され、ベースシリンダ17の内周とロッド部22の外周との間には、円環形状を成すブッシュ23が設けられている。ブッシュ23は、ロッド部22に対して取付固定されており、ベースシリンダ17の内周と摺接しながら、ロッド部22とともにベースシリンダ17内をピストン動作する。
【0035】
このブッシュ23は、ロッド部22のピストン動作を安定的に行う為のものであり、本実施形態では樹脂材料で形成され、ベースシリンダ17の内周との間に適切なクリアランスを形成することで、またその移動方向に適切な長さが確保されることで、ロッド部22のベースシリンダ17に対する傾斜(こじり)を防止する。
【0036】
以上がブレーキチャンバー1の全体構成であり、以下、リリースボルト7に対するナット8の取付構造について更に詳説する。
リリースボルト7は、図2に示す様にねじ部7bを有しており、このねじ部7bが上述した様にハウジング4Aのボルト孔4cに螺合する様になっている。またリリースボルト7の一端側端部には上述した様にボルトフランジ部7aが形成されており、そして他端側端部にはねじ部7bの側から順にボルト側シール面としての円筒面7c、凹溝7d、凹部7e、のこれらが形成されている。
【0037】
円筒面7cは凹凸の無い滑らかな円筒面であり、凹溝7dはリリースボルト7の長手方向(軸線方向)に向かって延びる溝であってリリースボルト7の周方向に沿って一定間隔で複数形成され、これにより本実施形態では所謂ヘクサロビュラ形状を構成している。また、凹部7eはリリースボルト7の周方向に沿って延びる溝である。
【0038】
ナット8は、図3に示す様にボルト挿通孔8aの内周に、リリースボルト7に取り付けられた際の軸線方向に延びる突起8bが、周方向に沿って一定間隔で複数形成されており、この突起8bが、ナット8がリリースボルト7に取り付けられた際にリリースボルト7の凹溝7dに入り込む様になっている。
【0039】
尚、本実施形態ではナット8はリリースボルト7に対して圧入固定されず、突起8bと凹溝7dとの間に僅かなクリアランスが確保される様になっている(所謂、隙間嵌め)。このため、突起8bと凹溝7dとによってナット8の回り止めが確実に行われながらも、分解時にはナット8を容易に取り外すことができる様になっている。
【0040】
そして、ナット8においてボルト挿通孔8aの両側には凹部8cが形成されており、この凹部8cの内周面8dが、外側に向けて拡開する様な傾斜形状を成している。
【0041】
以上の様に形成されたリリースボルト7に対してナット8を取り付ける際には、先ずリリースボルト7の端部にナット8を挿入する。この状態において、リリースボルト7に形成された凹部7eが、ボルト挿通孔8aの外側(凹部8c)に位置しているので、この状態においてストッパリング9をリリースボルト7の凹部7eに嵌め込む。尚、ストッパリング9はC形の形状を成しており、拡開させることによって凹部7eに嵌め込むことができる様になっている。
【0042】
図4はこの様にしてナット8をリリースボルト7に取り付けた状態を示しており、図示する様にストッパリング9の外径がボルト挿通孔8aの内径より大きいので、ストッパリング9によってナット8の抜け止めが行われた状態となる。
【0043】
以上の様に、ナット8は凹部8cに収容されるストッパリング9によって抜け止めが行われるので、リリースボルト7に対してナット8を容易に取り付けることができる。また、分解時にはストッパリング9を外すことで、ナット8を容易に取り外すことができる。加えて、ストッパリング9はナット8に形成された凹部8cに収容されることから、ナット8からのリリースボルト7の突出量を小さくでき、装置の小型化を図ることができる。
【0044】
そして、図4におけるストッパリング9の拡大図に示すように、ナット8の凹部8cは、ストッパリング9と対向する内周面8dがナット8の外側(図4の上側)に向けて拡開する様な傾斜形状を成しているので、ナット8が抜ける方向に移動しようとすると(矢印F1)、内周面8cがストッパリング9を外側から押すように機能する(矢印F2)。
【0045】
つまり、ストッパリング9は外れる方向(拡開する方向)とは反対側の方向(径が縮まる方向)に押されるので、ナット8が抜けようとすればする程ストッパリング9によるストッパー機能が向上し、これによりナット8取り付け後において充分な抜け止め強度を確保することができ、ナット8が容易に外れることがない。
【0046】
また、図4に示す様にナット8がリリースボルト7に取り付けられ、そしてリリースボルト7が通常位置(図1及び図4の位置:リリースボルト7がピストン5を拘束しない位置)にあるとき、リリースボルト7の円筒面(ボルト側シール面)7cと、ハウジング4Aに形成されたハウジング側シール面4dとの間にシールリング11が設けられた状態となり、シール機能が発揮される様になっている。
【0047】
即ち、ナット8よりもチャンバー内側において軸シール機能が発揮されるので、リリースボルト7とナット8との間から侵入する水分、およびナット8とハウジング4Aとの間から侵入する水分、の双方に対して一つのシール手段で対応することができ、構造の簡素化と低コスト化を図ることができる様になっている。
【0048】
続いて、図5を参照しながら他の形態について説明する。尚、図5において上述した実施形態と同一の構成には同一符号を付してあり、以下ではその説明は省略するものとする。
図5に示す形態が上述した実施形態と主として異なるのは、ナット80の抜け止めとして樹脂ピン30を用いる点にある。
【0049】
即ち、リリースボルト70の端部には径方向に貫通する貫通孔7fが形成されており、ナット80にも径方向に貫通する貫通孔8dが形成されている。そしてこれら貫通孔7f、8dに樹脂ピン30が挿通されることにより、ナット80の抜け止めが実現される様になっている。
【0050】
樹脂ピン30は樹脂材料により形成されており、中空形状を成し、両端部にピンフランジ部30aが形成され、且つ複数のスリット30bが形成されている。これにより、樹脂ピン30を挿入する際に当該樹脂ピン30の両端部が容易に縮径し、樹脂ピン30を容易に挿入できる様になっているとともに、ピンフランジ部30aがナット80の貫通孔8dの縁部に係止することで樹脂ピン30が容易に脱落しない様になっている。また、樹脂ピン30のピンフランジ部30aが、ナット80の凹部8eに収容された状態となることで、組立状態において樹脂ピン30の両端部がナット80の外側に突出することが防止されている。尚、本実施形態では樹脂ピン30は樹脂材料により形成されているが、強度向上を目的として金属材料や、或いはその他の材料で形成しても良い。
【0051】
以上説明したリリースボルトに対するナットの取付構造は一例であり、その他にも種々の形態をとることができ、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、それらも本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
1 ブレーキチャンバー
2 プッシュロッド
3 スプリングブレーキ部
4A、4B ハウジング
5 ピストン
6 スプリング
7 リリースボルト
8 ナット
9 ストッパリング
10A スプリング収容空間
10B 圧力空間
11 シールリング
12 連絡管
13 サービスブレーキ部
14 内部空間
15 ベース
16 カップ
17 ベースシリンダ
18 ベースフランジ
19 ダイヤフラム
20 プッシュプレート
21 プレートフランジ部
22 ロッド部
23 ブッシュ
29 ダストブーツ
30 樹脂ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内をスプリングの収容空間と圧縮空気の圧力空間とに画設するフランジ部および前記フランジ部から延設される中空のシリンダ部を備えて構成され、前記スプリングの付勢力によって車両のブレーキ装置を作動させるプッシュロッドを前記ブレーキ装置に対して進出させるピストンと、
前記ハウジングに形成されたボルト孔に螺合するとともに一端側が前記シリンダ部の内部に入り込み且つ他端側が前記ハウジングの外に突出し、回転させることにより前記一端側が前記スプリングの付勢力に抗して前記ピストンを前記ブレーキ装置の制動をリリースさせる位置まで変位させるリリースボルトと、
前記リリースボルトの前記他端側の端部を挿通させる挿通穴を有し、前記リリースボルトの前記他端側端部に対して固定されるナットと、
前記挿通穴の内径より大きい外径を有し、前記挿通穴に前記リリースボルトの前記他端側端部が挿通された状態で前記他端側端部に取り付けられることにより前記ナットの前記リリースボルトからの抜け止めを行うストッパリングと、を備え、
前記ストッパリングは、前記ナットに形成された凹部の内側に収容されるとともに、前記ストッパリングと対向する前記凹部の内周面が、前記ナットの外側に向けて拡開する様な傾斜形状を成している、
ことを特徴とするブレーキチャンバー。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキチャンバーにおいて、前記リリースボルトの前記他端側端部の外周が周方向に沿って凹凸形状を有し、
前記ナットの前記挿通穴が、前記凹凸形状と所定の隙間を有した状態で嵌合する凹凸形状を成している、
ことを特徴とするブレーキチャンバー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキチャンバーにおいて、前記リリースボルトの前記他端側において前記ナットの取り付け部位よりもチャンバー内側にはボルト側シール面が形成され、
前記ハウジングにおいて前記ボルト孔の終端位置よりチャンバー外側には、前記ボルト側シール面と対向するハウジング側シール面が形成され、
前記ボルト側シール面と前記ハウジング側シール面との間にシールリングが設けられることにより、前記ナットよりもチャンバー内側においてシール機能が発揮される構成を備える、
ことを特徴とするブレーキチャンバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−241800(P2012−241800A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112525(P2011−112525)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510063502)ナブテスコオートモーティブ株式会社 (34)
【Fターム(参考)】