ブレーキトルク測定装置
【課題】 簡便にトルクセンサーを配設できて、低コストでコンパクトかつ組付け作業性にも優れ、センサー部温度の低減も可能で、検出入出力の安定化とヒステリシス低減も可能なブレーキトルク測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ブレーキロータBの回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサー6をパッド部材1の少なくとも正転時の出口側となる端部1Aに穿設した孔4内に配設したことにより、簡便にトルクセンサー6を配設できて、低コストでコンパクトかつ組付け作業性にも優れ、冷風を取り入れてセンサー部温度の低減も可能で、トルクセンサー6の保持が安定し、ブレーキの解除時の抵抗を受けにくく検出入出力の安定化とヒステリシス低減も可能となり、パッド毎のブレーキトルクの測定が可能となる上に、パッド部材の交換のみにて別車両にても容易にブレーキ力の検出が可能となる。
【解決手段】 ブレーキロータBの回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサー6をパッド部材1の少なくとも正転時の出口側となる端部1Aに穿設した孔4内に配設したことにより、簡便にトルクセンサー6を配設できて、低コストでコンパクトかつ組付け作業性にも優れ、冷風を取り入れてセンサー部温度の低減も可能で、トルクセンサー6の保持が安定し、ブレーキの解除時の抵抗を受けにくく検出入出力の安定化とヒステリシス低減も可能となり、パッド毎のブレーキトルクの測定が可能となる上に、パッド部材の交換のみにて別車両にても容易にブレーキ力の検出が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキロータ回転方向の両端部がキャリパのトルク受け部に支持されたパッド部材とブレーキロータ回転面と直交作動するアクチュエータと該アクチュエータによ
りパッド部材をブレーキロータに押し付けて制動を行うブレーキ装置に係り、特に、パッド部材におけるブレーキロータ回転方向の制動トルクを検出するブレーキトルク測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において使用されるディスクブレーキ装置にあって、近年では、きめ細かで正確なブレーキ制御のために実走行時のブレーキトルクを検出することが広く行われている。このような実走行時のブレーキトルクの検出は、例えば安全に短い距離で停止可能なABS制御等を行う際の制御データの取得に欠かせないものとなっている。そのため、パッド部材を受け入れるキャリパブラケットの受入部にロードセルを設けたり、あるいは歪みゲージを貼付してブレーキトルクを検出する測定装置が開発された。しかしながら、これらの測定装置では測定装置自体が大型で、ブレーキ装置の軸方向距離が大きくなりがちであった。そこで、装置の小型化とキャリパブラケットに不要な歪みが発生するのを防止できるブレーキ力検出装置が提案された(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−248902号公報(公報要約書参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたブレーキ力検出装置を図15を用いて説明すると、パッドバックプレート118の円周方向端部には、円周方向端部とキャリパブラケット108のブレーキ荷重受け部108a、108bの接触する部分が、ブレーキディスク(ロ−タ)102の回転中心を中心とするピストンの押圧中心124aを通る円弧170の該押圧中心を通る接線172よりもブレーキディスク102の半径方向外側になるように突起166、164が設けられたものである。このような構成によって、前進方向にブレーキトルクが発生した場合に、前記接線172よりもブレーキディスク102の半径方向内側を支点としてパッドバックプレート118の円周方向反対側が半径方向外側に向くモーメントの発生が防止される。
【0005】
その結果、そのモーメントによってキャリパブラケット108の回入側ブレーキ荷重受部108bを押すことで発生するキャリパブラケット108の歪み発生がなく、キャリパブラケット108の回出側ブレーキ荷重受け部108aの撓みで発生する歪みを検出できるため、リニアな歪み特性を得ることができて、ブレーキ力の検出精度を向上させることが可能となった。
【0006】
しかしながら、前記従来のブレーキ力検出装置では、キャリパブラケット108の回入側ブレーキ荷重受け部108bに歪みゲージ148を貼設しているため、走行中に制動力が発生している間は、アクチュエータであるピストン124とパッドとの間や接触している部分間で抵抗が発生しており、アクチュエータへの加圧/減圧時にヒステリシスが発生する問題点があった。また、歪みゲージ148をキャリパブラケット108の回入側ブレーキ荷重受け部108bに配設するため、別の車両評価やブレーキアッセンブリ交換等の場合には、キャリパブラケットへの歪みゲージの貼り直し等の大がかりな準備、時間、費用が発生してしまい、効率的ではなかった。
【0007】
そこで本発明では、前記従来のブレーキ力検出装置における諸課題を解決して、簡便にトルクセンサーを配設できて、低コストでコンパクトかつ組付け作業性にも優れ、センサー部温度の低減も可能で、検出入出力の安定化とヒステリシス低減も可能となり、別車両にても容易にブレーキ力の検出が可能なブレーキトルク測定装置を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、ブレーキロータ回転方向の両端部がキャリパのトルク受け部に支持されたパッド部材とブレーキロータ回転面と直交作動するアクチュエータと該アクチュエータによりパッド部材をブレーキロータに押し付けて制動を行うブレーキ装置において、前記パッド部材におけるブレーキロータ回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサーを前記パッド部材の少なくとも正転時の出口側となる端部に穿設した長孔内に配設したことを特徴とする。また本発明は、前記孔は、平坦面を含む長孔であることを特徴とする。また本発明は、前記長孔が、パッド部材におけるパッドとアクチュエータとの間に介設されるセンサープレートに穿設されたことを特徴とする。また本発明は、前記トルクセンサーは、前記長孔におけるキャリパのトルク受け部側の平坦面上に貼設されたことを特徴とする。また本発明は、前記キャリパのトルク受け部に対するパッド部材の端部を円弧状または球面状に形成したことを特徴とする。また本発明は、前記パッド部材とアクチュエータとの間にニードルベアリングまたはボールベアリングを介設してアクチュエータに押圧される作動プレートを配設するとともに、該作動プレートはブレーキロータ回転方向に復元可能にばね付勢されて構成されたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブレーキロータ回転方向の両端部がキャリパのトルク受け部に支持されたパッド部材とブレーキロータ回転面と直交作動するアクチュエータと該アクチュエータによりパッド部材をブレーキロータに押し付けて制動を行うブレーキ装置において、前記パッド部材におけるブレーキロータ回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサーを前記パッド部材の少なくとも正転時の出口側となる端部に穿設した孔内に配設したことにより、簡便にトルクセンサーを配設できて、低コストでコンパクトかつ組付け作業性にも優れ、冷風を取り入れてセンサー部温度の低減も可能で、トルクセンサーの保持が安定し、ブレーキの解除時の抵抗を受けにくく検出入出力の安定化とヒステリシス低減も可能となり、パッド毎のブレーキトルクの測定が可能となる上に、パッド部材の交換のみにて別車両にても容易にブレーキ力の検出が可能となる。
【0010】
また、前記孔は、平坦面を含む長孔である場合は、さらなるトルクセンサーの保持の安定化と、検出入出力の安定化とヒステリシス低減が可能となる。さらに、前記長孔が、パッド部材におけるパッドとアクチュエータとの間に介設されるセンサープレートに穿設された場合は、パッドと別部材にて構成したセンサープレートにセンサー配設構造を施すことができ、より簡素な構造の汎用性の高いパッドと組み合わせて、さらに低コストなトルク測定装置が得られる。さらにまた、前記トルクセンサーは、前記長孔におけるキャリパのトルク受け部側の平坦面上に貼設された場合は、トルクセンサーの貼設が簡単・確実で接着位置が安定するとともに、リニアな変位量の測定を実現して検出精度が向上する。
【0011】
また、前記キャリパのトルク受け部に対するパッド部材の端部を円弧状または球面状に形成した場合は、センサープレート等のパッド部材のキャリパのトルク受け部に対する接触を点接触として接触抵抗を低減できて、アクチュエータによるパッド部材への加圧/減圧でのヒステリシスを低減することが可能となる。さらに、前記パッド部材とアクチュエータとの間にニードルベアリングまたはボールベアリングを介設してアクチュエータに押圧される作動プレートを配設するとともに、該作動プレートはブレーキロータ回転方向に復元可能にばね付勢されて構成された場合は、アクチュエータと作動プレートとの間の接触面での抵抗が低減され、アクチュエータによるパッド部材への加圧/減圧でのヒステリシスをさらに低減することが可能となり、より高い精度でのブレーキトルクの検出が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のブレーキトルク測定装置の第1実施例を示すアクチュエータの脱着前後の要部斜視図である。
【図2】同、パッド部材およびその要部拡大斜視図である。
【図3】本発明のブレーキトルク測定装置の第2実施例を示すパッド部材およびその分解斜視図である。
【図4】本発明のブレーキトルク測定装置の検出部の原理構造の説明図である。
【図5】本発明のブレーキトルク測定装置と従来のものとの荷重−歪み量の関係比較図である。
【図6】本発明のブレーキトルク測定装置の全体斜視図である。
【図7】本発明のブレーキトルク測定装置の第3実施例を示すパッド部材の分解斜視図である。
【図8】同、パッド部材の組立斜視図である。
【図9】同、パッド部材において作動プレートを取り外した状態の分解斜視図である。
【図10】同、作動プレートの裏側を示したものを含む分解斜視図である。
【図11】同、トルクセンサーが配設された長孔近傍の拡大斜視図である。
【図12】同、パッド部材におけるセンサープレートの異なった装着例を示す各斜視図である。
【図13】本発明のブレーキトルク測定装置の第4実施例を示す作動プレートを取り外した状態の分解斜視図である。
【図14】本発明のブレーキトルク測定装置の第1、2実施例と第3、4実施例とのトルク−電圧によるヒステリシスの説明図である。
【図15】従来のブレーキ力検出装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のブレーキトルク測定装置を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明のブレーキトルク測定装置は、図1に示すように、フローティング型ディスクブレーキにおけるブレーキロータB回転方向の両端部1A、1Bがサポート10の各トルク受け部10A、10Bに支持されたパッド部材1とブレーキロータB回転面と直交作動するアクチュエータ11と該アクチュエータ11によりパッド部材1をブレーキロータBに押し付けて制動を行うブレーキ装置において、前記パッド部材1におけるブレーキロータB回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサー6を前記パッド部材1の少なくとも正転時の出口側となる端部1Aに穿設した長孔4内に配設したことを特徴とするものである。
【実施例1】
【0014】
図1および図2は本発明のブレーキトルク測定装置の第1実施例を示すアクチュエータ
の脱着前後の要部斜視図およびそのパッド部材ならびにその要部拡大斜視図である。図1(A)において、パッド部材1はブレーキロータB回転方向の両端部1A、1Bがサポート10の各トルク受け部10A、10Bに支持されて装着されている。前記パッド部材1におけるブレーキロータB回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサー6を前記パッド部材1の少なくとも正転時(矢印)の出口側となる端部1Aに穿設した長孔4内に配設される。符号7はトルクセンサー6にて検出された歪み量を電気的信号に変換されて取り出すセンサーケーブルを示す。トルクセンサー6は少なくとも正転時の出口側となる端部1A側に配設されるが、逆転時の出口側(正転時の入口側に相当)となる端部1B側にも配設されてよい。
【0015】
前記ブレーキロータB回転面と直交作動するアクチュエータ11(図1(B))が前記サポート10の両端に渡設されたピン27、キャリパ腕部26等により取り付けられる。アクチュエータ11は、油圧ピストンを好適とするが、電磁的に進退するピストンや空圧ピストン等も採用され得る。図1(A)のパッド部材1は、図2にて後述するが、パッド2とセンサープレート3とが一体にて成形される。したがって、パッド2と一体化されトルクセンサー6が配設されたセンサープレート3の板面上をアクチュエータであるピストン11が直交上に進退してブレーキ動作を行う。
【0016】
図2(A)に示すように、トルクセンサー6が配設されたセンサープレート3はパッド2と一体成形される。本実施例ではパッド2と一体化されるセンサープレート3の長孔4内にトルクセンサー6が配設されるが、場合によっては、パッド2の対応位置に長孔を穿設して、該長孔内にトルクセンサー6を配設することを排除するものではない。図2(B)はパッド部材(センサープレート3を一体とした)1の正転時に出口側となるの要部拡大斜視図である.センサープレート3として説明すると、センサープレート3の正転時出口側端部1A近傍に(ブレーキロータBの)径方向に長孔4が穿設され、該長孔4のキャリパのトルク受け部側の平坦面4A上にトルクセンサー(歪みゲージ)6が貼設される。接着等により貼設してもよいし、溶接等により固着してもよい。トルクセンサー6としては、好適には熱の変化を受けにくい温度補正付きゲージが採用される。このようにして構成されたセンサープレート3が図2(A)に示すように、パッド2と一体に成形される。
【0017】
前記長孔4のサポートトルク受け部側は平坦面4Aに形成されるが、その反対側は面状を問わない。平面でも円弧状等の曲面でもよい。前記長孔4のサポートトルク受け部側を平坦面4Aに形成する理由は後述する。長孔4内に貼設して配設されたトルクセンサー6からは、センサープレート3内に穿設された通孔内を通じてケーブル取出孔5から取り出されるセンサーケーブル7から歪みが電気信号として取り出される。そして取り出された電気信号は図8に示すようにアンプ23で増幅され、解析システム24にて解析されて、図示省略のブレーキ制御手段に各種入力信号として使用される。図2(B)にて理解されるように、センサープレート3のサポートトルク受け部10A、10B側端部は円弧状または球面状8に形成されるのを好適とする。
【実施例2】
【0018】
図3は本発明のブレーキトルク測定装置の第2実施例を示すもので、図3(A)はパッド部材、図3(B)はセンサープレート、図3(C)はパッド部材の分解各斜視図である。この第2実施例では、図3(B)に示したようなトルクセンサーが長孔4内に配設されたセンサープレート3を、図3(C)に示したように、パッド2の側面に刻設した例えば3つの取付整合穴9を用いて位置決めされて別体として接合される。センサープレート3のパッド2側には図示省略の3つの取付整合突起が突設されており、前記パッド2における3つの取付整合穴9に整合される。
【0019】
図4は本発明のブレーキトルク測定装置の検出部の原理構造の説明図である。図4(A
)に示すように、センサープレート3のサポートトルク受け部10A側端部は円弧状または球面状8に形成されるのを好適とする。そして、センサープレート3の端部近傍の長孔4におけるキャリパのトルク受け部側は平坦面4Aに形成される。ブレーキトルク(接線力)を精度よく検出するには、前記アクチュエータ11による加圧/減圧時の歪み量のヒステリシスを解消することが基本となる。センサープレート3の端部とサポートトルク受け部10Aとの間の接触は点Pによる点接触となる。図4(B)に歪み検出の原理を両持ち梁として分析すると、センサープレート3における長孔4周囲の各部分をA、B、Bとする。
【0020】
トルクセンサー6は長孔4におけるサポートトルク受け部側の平坦面4A上に貼設されている。図4(B)に示した両持ち梁の両端支持部B、Bおよび梁への加圧部Aがそれぞれ、図4(A)のセンサープレート3における長孔4周囲のB、BおよびAに相当する。加圧制動時には接線力によるブレーキ力がトルクセンサー3の端部とサポートトルク受け部10Aとの間の荷重入力部Pを介して入力される。図4(B)の両持ち梁において、荷重入力部Aの点Pに荷重が掛かると、両端支持部B、Bにて支持された梁の底部が矢印方向に伸びて歪みによる最大の変位が検出される。つまり荷重入力部の反対側の平坦面にトルクセンサー6を配設することで、リニアに変位量を検出するとともに、両端支持部となるB、Bを一体構造として摩擦抵抗をなくし、荷重入力部を円弧または球面として接触抵抗を低減している。
【0021】
このように、支持部と荷重入力部での機械的抵抗の低減により、加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスの低減が可能となる。図5は本発明のブレーキトルク測定装置と従来のものとの荷重−歪み量の関係比較図である。従来のものでは、加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスに大きな差が生じているのに対して、本願発明のものでは、加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスに殆ど差がないことが理解される。
【0022】
図6は本発明の対向型ディスクブレーキにおけるブレーキトルク測定装置の全体斜視図である。図面は図示省略のブレーキロータBの外周側から見た斜視図で、ブレーキロータBの両側に対向して一対が配設されたパッド部材1、1がキャリパ10内に収納された状態が理解される。図示の例では、後述する第3実施例等のセンサープレート3がパッド2内の収納凹部内に収容されるタイプのものが装着されている。
【実施例3】
【0023】
図7は本発明のブレーキトルク測定装置の第3実施例を示すパッド部材の分解斜視図である。本実施例のものは、センサープレート3がパッド1における対応整合する収納凹部12内に装着され、かつ、センサープレート3に対してバネ付勢されるとともにニードルベアリングユニットを介して滑動自在な作動プレート15を装着して配設したものである。本実施例においてもセンサープレート3のパッド1への装着は、例えば3つの取付整合穴9と図示省略のセンサープレート3の背面側に突出形成された取付整合突起との位置決めによりなされる。
【0024】
センサープレート3におけるリテーナ収納凹部13内に、多数のニードル16がニードル用孔20に収容されたリテーナ14が装着され、その表を作動プレート15にて覆う。このようにして、センサープレート3にニードルベアリングユニットと作動プレート15が装着された状態を示したものが図8である。センサープレート3における長孔4内に配設されたトルクセンサーにて検出されたブレーキトルクに応じた検出値は、センサーケーブル7から歪みが電気信号として取り出される。そして取り出された電気信号はアンプ23で増幅され、解析システム24にて解析されて、図示省略のブレーキ制御手段に各種入力信号として使用される。
【0025】
図9から図12により第3実施例のものを詳細に説明する。図9に示したものは、センサープレート3のリテーナ収納凹部13に多数のニードル16がニードル用孔20に収容されたリテーナ14が装着された状態である。リテーナ14の略中央の孔からは、センサープレート3のリテーナ収納凹部13に設置されたスプリング受け17に一端部が支持されたスプリング18が覗いている。このような状態のリテーナ14の表側から作動プレート15が装着される。図10に示すように、作動プレート15の上下には各2つの装着突起22が突設され、これらの装着突起22は、図9に示すようなリテーナ収納凹部13の周囲の壁面に形成された上下各2つの鍵孔状の装着溝21・・を用いて装着される。
【0026】
作動プレート15における装着突起22をリテーナ収納凹部13の鍵孔状の装着溝21に装着した後に、ブレーキロータBの正転回転方向にずらすことにより抜け止めされるように構成されている。図10(C)に示したように、作動プレート15の裏面には、前記センサープレート3側に配設されたスプリング18の他端部を支持するスプリング受け19が突設されており、スプリング18のばね付勢により作動プレート15をブレーキロータBの正転回転方向側に付勢して、センサープレート3からの作動プレート15の脱落をも防止する。作動プレート15はスプリング18のばね力の範囲内にてセンサープレート3に対してブレーキロータBの回転方向に滑動自在に構成される。
【0027】
図11はトルクセンサーが配設されたセンサープレートの端部近傍における長孔近傍の拡大斜視図である。長孔4のキャリパのトルク受け部側の平坦面4A上にトルクセンサー6が貼設される。図11(A)は接着等によりトルクセンサーとしての歪みゲージ6が貼設された例であり、図11(B)は歪みゲージ6が溶接等により固着されて貼設された例である。図11(C)は、前記図9(A)にて説明したリテーナ収納凹部13の周囲の壁面に形成された鍵孔状の装着溝21が明瞭に示される。
【0028】
図12はパッド部材におけるセンサープレートの異なった装着例を示す各斜視図である。図12(A)に示したものは、センサープレート3がニードルベアリングユニットおよび作動プレート15とともにパッド1における対応整合する収納凹部12内に装着された例の組立後の斜視図であり、図12(B)に示したものは、センサープレート3がニードルベアリングユニットおよび作動プレート15とともにパッド1の側面に接合・装着された例の組立後の斜視図である。
【実施例4】
【0029】
図13は本発明のブレーキトルク測定装置の第4実施例を示す作動プレートを取り外した状態の分解斜視図である。本実施例のものは、基本的に前記図7の第3実施例のものと同様の構造を採用しているが、前記第3実施例のものがニードル16を採用しているのに対して本第3実施例のものでは、ニードル16に代えてボール25を採用している点である。本実施例では、作動プレート15のブレーキロータBの回転方向の滑動を許容するのはもとより、作動プレート15のブレーキロータBの径方向の滑動も許容できる。これらにより、アクチュエータ11と作動プレート15との間の加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスをさらに低減させることが可能となる。
【0030】
図14は本発明のブレーキトルク測定装置の第1、2実施例と第3、4実施例とのトルク−電圧によるヒステリシスの説明図で、前述したように、トルク−電圧特性において、かなり加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスが低減された前記第1、2実施例のものに対して、ベアリング構造を採用した第3、4実施例のものがさらに加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスが低減されていることがよく理解される。
【0031】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、パッド部材の両端部とキャリパのトルク受け部との支持形態(キャリパのトルク受け部に対するパッ
ド部材の端部を円弧状または球面状に形成するのを好適とするが、図4の両持ち梁形態が実現できるなら、パッド部材側を平坦面としてキャリパのトルク受け部側を円弧状または球面状に形成することもできる)、アクチュエータの形式(油圧ピストンを好適とするが、電磁的に進退するピストンや空圧ピストン等も採用され得る)、トルクセンサーの形状、形式(好適には温度の影響を受けにくい温度補正付きゲージが採用される)およびその長孔への貼設形態(接着あるいは溶接)、長孔の形状(少なくともキャリパのトルク受け部側は平坦面とされるが、反対側は必ずしも平坦面でなくてもよい。また穿設方向はブレーキロータの径方向とされる)およびその穿設部位(少なくともセンサープレートの正転時出口側となるキャリパのトルク受け部側の端部近傍に穿設されるが、入口側にも長孔を穿設してトルクセンサーを配設してもよい。また、パッド部材におけるパッドの対応部位に穿設してもよい)、パッドおよびセンサープレートの形状およびそれらの間の接合(一体成形)あるいは装着形態(取付整合孔と整合突起とを介したビス等による固定。センサープレートの形状およびこれを収納するパッドにおけるセンサープレート収納凹部の形状についても適宜の形状が採用され得る)、パッド部材とアクチュエータとの間に介設される作動プレートを介したベアリングユニット形態(ニードルベアリングあるいはボールベアリングもしくは作動プレートをセンサープレートに対して低摩擦材または低摩擦層を介してスライド自在に構成することもできる)、センサープレートに対する作動プレートの復元付勢形態(実施例のセンサープレートの略中央部に配設された圧縮コイルスプリングによる他、作動プレートにおけるブレーキロータの回転方向両側に板ばね等を設置してもよい)等については適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のブレーキトルク測定装置は、車両において使用されるディスクブレーキ装置、特にキャリパ型ディスクブレーキ装置に適用されるが、鉄道車両用のキャリパ型ディスクブレーキ、産業機械用のキャリパ型ディスクブレーキ等にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 パッド部材
1A 正転時出口側端部
1B 逆転時出口側端部
3 センサープレート
4 孔(長孔)
6 トルクセンサー
7 センサーケーブル
10 (キャリパ内の)サポート(図1)、キャリパ(サポート、図6)
10A サポートトルク受け部(正転時出口側)
10B サポートトルク受け部(逆転時出口側)
11 アクチュエータ
26 キャリパ腕部
27 ピン(ボルト締め)
B ブレーキロータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキロータ回転方向の両端部がキャリパのトルク受け部に支持されたパッド部材とブレーキロータ回転面と直交作動するアクチュエータと該アクチュエータによ
りパッド部材をブレーキロータに押し付けて制動を行うブレーキ装置に係り、特に、パッド部材におけるブレーキロータ回転方向の制動トルクを検出するブレーキトルク測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両において使用されるディスクブレーキ装置にあって、近年では、きめ細かで正確なブレーキ制御のために実走行時のブレーキトルクを検出することが広く行われている。このような実走行時のブレーキトルクの検出は、例えば安全に短い距離で停止可能なABS制御等を行う際の制御データの取得に欠かせないものとなっている。そのため、パッド部材を受け入れるキャリパブラケットの受入部にロードセルを設けたり、あるいは歪みゲージを貼付してブレーキトルクを検出する測定装置が開発された。しかしながら、これらの測定装置では測定装置自体が大型で、ブレーキ装置の軸方向距離が大きくなりがちであった。そこで、装置の小型化とキャリパブラケットに不要な歪みが発生するのを防止できるブレーキ力検出装置が提案された(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−248902号公報(公報要約書参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたブレーキ力検出装置を図15を用いて説明すると、パッドバックプレート118の円周方向端部には、円周方向端部とキャリパブラケット108のブレーキ荷重受け部108a、108bの接触する部分が、ブレーキディスク(ロ−タ)102の回転中心を中心とするピストンの押圧中心124aを通る円弧170の該押圧中心を通る接線172よりもブレーキディスク102の半径方向外側になるように突起166、164が設けられたものである。このような構成によって、前進方向にブレーキトルクが発生した場合に、前記接線172よりもブレーキディスク102の半径方向内側を支点としてパッドバックプレート118の円周方向反対側が半径方向外側に向くモーメントの発生が防止される。
【0005】
その結果、そのモーメントによってキャリパブラケット108の回入側ブレーキ荷重受部108bを押すことで発生するキャリパブラケット108の歪み発生がなく、キャリパブラケット108の回出側ブレーキ荷重受け部108aの撓みで発生する歪みを検出できるため、リニアな歪み特性を得ることができて、ブレーキ力の検出精度を向上させることが可能となった。
【0006】
しかしながら、前記従来のブレーキ力検出装置では、キャリパブラケット108の回入側ブレーキ荷重受け部108bに歪みゲージ148を貼設しているため、走行中に制動力が発生している間は、アクチュエータであるピストン124とパッドとの間や接触している部分間で抵抗が発生しており、アクチュエータへの加圧/減圧時にヒステリシスが発生する問題点があった。また、歪みゲージ148をキャリパブラケット108の回入側ブレーキ荷重受け部108bに配設するため、別の車両評価やブレーキアッセンブリ交換等の場合には、キャリパブラケットへの歪みゲージの貼り直し等の大がかりな準備、時間、費用が発生してしまい、効率的ではなかった。
【0007】
そこで本発明では、前記従来のブレーキ力検出装置における諸課題を解決して、簡便にトルクセンサーを配設できて、低コストでコンパクトかつ組付け作業性にも優れ、センサー部温度の低減も可能で、検出入出力の安定化とヒステリシス低減も可能となり、別車両にても容易にブレーキ力の検出が可能なブレーキトルク測定装置を提供することを目的と
する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため本発明は、ブレーキロータ回転方向の両端部がキャリパのトルク受け部に支持されたパッド部材とブレーキロータ回転面と直交作動するアクチュエータと該アクチュエータによりパッド部材をブレーキロータに押し付けて制動を行うブレーキ装置において、前記パッド部材におけるブレーキロータ回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサーを前記パッド部材の少なくとも正転時の出口側となる端部に穿設した長孔内に配設したことを特徴とする。また本発明は、前記孔は、平坦面を含む長孔であることを特徴とする。また本発明は、前記長孔が、パッド部材におけるパッドとアクチュエータとの間に介設されるセンサープレートに穿設されたことを特徴とする。また本発明は、前記トルクセンサーは、前記長孔におけるキャリパのトルク受け部側の平坦面上に貼設されたことを特徴とする。また本発明は、前記キャリパのトルク受け部に対するパッド部材の端部を円弧状または球面状に形成したことを特徴とする。また本発明は、前記パッド部材とアクチュエータとの間にニードルベアリングまたはボールベアリングを介設してアクチュエータに押圧される作動プレートを配設するとともに、該作動プレートはブレーキロータ回転方向に復元可能にばね付勢されて構成されたことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ブレーキロータ回転方向の両端部がキャリパのトルク受け部に支持されたパッド部材とブレーキロータ回転面と直交作動するアクチュエータと該アクチュエータによりパッド部材をブレーキロータに押し付けて制動を行うブレーキ装置において、前記パッド部材におけるブレーキロータ回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサーを前記パッド部材の少なくとも正転時の出口側となる端部に穿設した孔内に配設したことにより、簡便にトルクセンサーを配設できて、低コストでコンパクトかつ組付け作業性にも優れ、冷風を取り入れてセンサー部温度の低減も可能で、トルクセンサーの保持が安定し、ブレーキの解除時の抵抗を受けにくく検出入出力の安定化とヒステリシス低減も可能となり、パッド毎のブレーキトルクの測定が可能となる上に、パッド部材の交換のみにて別車両にても容易にブレーキ力の検出が可能となる。
【0010】
また、前記孔は、平坦面を含む長孔である場合は、さらなるトルクセンサーの保持の安定化と、検出入出力の安定化とヒステリシス低減が可能となる。さらに、前記長孔が、パッド部材におけるパッドとアクチュエータとの間に介設されるセンサープレートに穿設された場合は、パッドと別部材にて構成したセンサープレートにセンサー配設構造を施すことができ、より簡素な構造の汎用性の高いパッドと組み合わせて、さらに低コストなトルク測定装置が得られる。さらにまた、前記トルクセンサーは、前記長孔におけるキャリパのトルク受け部側の平坦面上に貼設された場合は、トルクセンサーの貼設が簡単・確実で接着位置が安定するとともに、リニアな変位量の測定を実現して検出精度が向上する。
【0011】
また、前記キャリパのトルク受け部に対するパッド部材の端部を円弧状または球面状に形成した場合は、センサープレート等のパッド部材のキャリパのトルク受け部に対する接触を点接触として接触抵抗を低減できて、アクチュエータによるパッド部材への加圧/減圧でのヒステリシスを低減することが可能となる。さらに、前記パッド部材とアクチュエータとの間にニードルベアリングまたはボールベアリングを介設してアクチュエータに押圧される作動プレートを配設するとともに、該作動プレートはブレーキロータ回転方向に復元可能にばね付勢されて構成された場合は、アクチュエータと作動プレートとの間の接触面での抵抗が低減され、アクチュエータによるパッド部材への加圧/減圧でのヒステリシスをさらに低減することが可能となり、より高い精度でのブレーキトルクの検出が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のブレーキトルク測定装置の第1実施例を示すアクチュエータの脱着前後の要部斜視図である。
【図2】同、パッド部材およびその要部拡大斜視図である。
【図3】本発明のブレーキトルク測定装置の第2実施例を示すパッド部材およびその分解斜視図である。
【図4】本発明のブレーキトルク測定装置の検出部の原理構造の説明図である。
【図5】本発明のブレーキトルク測定装置と従来のものとの荷重−歪み量の関係比較図である。
【図6】本発明のブレーキトルク測定装置の全体斜視図である。
【図7】本発明のブレーキトルク測定装置の第3実施例を示すパッド部材の分解斜視図である。
【図8】同、パッド部材の組立斜視図である。
【図9】同、パッド部材において作動プレートを取り外した状態の分解斜視図である。
【図10】同、作動プレートの裏側を示したものを含む分解斜視図である。
【図11】同、トルクセンサーが配設された長孔近傍の拡大斜視図である。
【図12】同、パッド部材におけるセンサープレートの異なった装着例を示す各斜視図である。
【図13】本発明のブレーキトルク測定装置の第4実施例を示す作動プレートを取り外した状態の分解斜視図である。
【図14】本発明のブレーキトルク測定装置の第1、2実施例と第3、4実施例とのトルク−電圧によるヒステリシスの説明図である。
【図15】従来のブレーキ力検出装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のブレーキトルク測定装置を実施するための好適な形態を図面に基づいて説明する。本発明のブレーキトルク測定装置は、図1に示すように、フローティング型ディスクブレーキにおけるブレーキロータB回転方向の両端部1A、1Bがサポート10の各トルク受け部10A、10Bに支持されたパッド部材1とブレーキロータB回転面と直交作動するアクチュエータ11と該アクチュエータ11によりパッド部材1をブレーキロータBに押し付けて制動を行うブレーキ装置において、前記パッド部材1におけるブレーキロータB回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサー6を前記パッド部材1の少なくとも正転時の出口側となる端部1Aに穿設した長孔4内に配設したことを特徴とするものである。
【実施例1】
【0014】
図1および図2は本発明のブレーキトルク測定装置の第1実施例を示すアクチュエータ
の脱着前後の要部斜視図およびそのパッド部材ならびにその要部拡大斜視図である。図1(A)において、パッド部材1はブレーキロータB回転方向の両端部1A、1Bがサポート10の各トルク受け部10A、10Bに支持されて装着されている。前記パッド部材1におけるブレーキロータB回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサー6を前記パッド部材1の少なくとも正転時(矢印)の出口側となる端部1Aに穿設した長孔4内に配設される。符号7はトルクセンサー6にて検出された歪み量を電気的信号に変換されて取り出すセンサーケーブルを示す。トルクセンサー6は少なくとも正転時の出口側となる端部1A側に配設されるが、逆転時の出口側(正転時の入口側に相当)となる端部1B側にも配設されてよい。
【0015】
前記ブレーキロータB回転面と直交作動するアクチュエータ11(図1(B))が前記サポート10の両端に渡設されたピン27、キャリパ腕部26等により取り付けられる。アクチュエータ11は、油圧ピストンを好適とするが、電磁的に進退するピストンや空圧ピストン等も採用され得る。図1(A)のパッド部材1は、図2にて後述するが、パッド2とセンサープレート3とが一体にて成形される。したがって、パッド2と一体化されトルクセンサー6が配設されたセンサープレート3の板面上をアクチュエータであるピストン11が直交上に進退してブレーキ動作を行う。
【0016】
図2(A)に示すように、トルクセンサー6が配設されたセンサープレート3はパッド2と一体成形される。本実施例ではパッド2と一体化されるセンサープレート3の長孔4内にトルクセンサー6が配設されるが、場合によっては、パッド2の対応位置に長孔を穿設して、該長孔内にトルクセンサー6を配設することを排除するものではない。図2(B)はパッド部材(センサープレート3を一体とした)1の正転時に出口側となるの要部拡大斜視図である.センサープレート3として説明すると、センサープレート3の正転時出口側端部1A近傍に(ブレーキロータBの)径方向に長孔4が穿設され、該長孔4のキャリパのトルク受け部側の平坦面4A上にトルクセンサー(歪みゲージ)6が貼設される。接着等により貼設してもよいし、溶接等により固着してもよい。トルクセンサー6としては、好適には熱の変化を受けにくい温度補正付きゲージが採用される。このようにして構成されたセンサープレート3が図2(A)に示すように、パッド2と一体に成形される。
【0017】
前記長孔4のサポートトルク受け部側は平坦面4Aに形成されるが、その反対側は面状を問わない。平面でも円弧状等の曲面でもよい。前記長孔4のサポートトルク受け部側を平坦面4Aに形成する理由は後述する。長孔4内に貼設して配設されたトルクセンサー6からは、センサープレート3内に穿設された通孔内を通じてケーブル取出孔5から取り出されるセンサーケーブル7から歪みが電気信号として取り出される。そして取り出された電気信号は図8に示すようにアンプ23で増幅され、解析システム24にて解析されて、図示省略のブレーキ制御手段に各種入力信号として使用される。図2(B)にて理解されるように、センサープレート3のサポートトルク受け部10A、10B側端部は円弧状または球面状8に形成されるのを好適とする。
【実施例2】
【0018】
図3は本発明のブレーキトルク測定装置の第2実施例を示すもので、図3(A)はパッド部材、図3(B)はセンサープレート、図3(C)はパッド部材の分解各斜視図である。この第2実施例では、図3(B)に示したようなトルクセンサーが長孔4内に配設されたセンサープレート3を、図3(C)に示したように、パッド2の側面に刻設した例えば3つの取付整合穴9を用いて位置決めされて別体として接合される。センサープレート3のパッド2側には図示省略の3つの取付整合突起が突設されており、前記パッド2における3つの取付整合穴9に整合される。
【0019】
図4は本発明のブレーキトルク測定装置の検出部の原理構造の説明図である。図4(A
)に示すように、センサープレート3のサポートトルク受け部10A側端部は円弧状または球面状8に形成されるのを好適とする。そして、センサープレート3の端部近傍の長孔4におけるキャリパのトルク受け部側は平坦面4Aに形成される。ブレーキトルク(接線力)を精度よく検出するには、前記アクチュエータ11による加圧/減圧時の歪み量のヒステリシスを解消することが基本となる。センサープレート3の端部とサポートトルク受け部10Aとの間の接触は点Pによる点接触となる。図4(B)に歪み検出の原理を両持ち梁として分析すると、センサープレート3における長孔4周囲の各部分をA、B、Bとする。
【0020】
トルクセンサー6は長孔4におけるサポートトルク受け部側の平坦面4A上に貼設されている。図4(B)に示した両持ち梁の両端支持部B、Bおよび梁への加圧部Aがそれぞれ、図4(A)のセンサープレート3における長孔4周囲のB、BおよびAに相当する。加圧制動時には接線力によるブレーキ力がトルクセンサー3の端部とサポートトルク受け部10Aとの間の荷重入力部Pを介して入力される。図4(B)の両持ち梁において、荷重入力部Aの点Pに荷重が掛かると、両端支持部B、Bにて支持された梁の底部が矢印方向に伸びて歪みによる最大の変位が検出される。つまり荷重入力部の反対側の平坦面にトルクセンサー6を配設することで、リニアに変位量を検出するとともに、両端支持部となるB、Bを一体構造として摩擦抵抗をなくし、荷重入力部を円弧または球面として接触抵抗を低減している。
【0021】
このように、支持部と荷重入力部での機械的抵抗の低減により、加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスの低減が可能となる。図5は本発明のブレーキトルク測定装置と従来のものとの荷重−歪み量の関係比較図である。従来のものでは、加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスに大きな差が生じているのに対して、本願発明のものでは、加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスに殆ど差がないことが理解される。
【0022】
図6は本発明の対向型ディスクブレーキにおけるブレーキトルク測定装置の全体斜視図である。図面は図示省略のブレーキロータBの外周側から見た斜視図で、ブレーキロータBの両側に対向して一対が配設されたパッド部材1、1がキャリパ10内に収納された状態が理解される。図示の例では、後述する第3実施例等のセンサープレート3がパッド2内の収納凹部内に収容されるタイプのものが装着されている。
【実施例3】
【0023】
図7は本発明のブレーキトルク測定装置の第3実施例を示すパッド部材の分解斜視図である。本実施例のものは、センサープレート3がパッド1における対応整合する収納凹部12内に装着され、かつ、センサープレート3に対してバネ付勢されるとともにニードルベアリングユニットを介して滑動自在な作動プレート15を装着して配設したものである。本実施例においてもセンサープレート3のパッド1への装着は、例えば3つの取付整合穴9と図示省略のセンサープレート3の背面側に突出形成された取付整合突起との位置決めによりなされる。
【0024】
センサープレート3におけるリテーナ収納凹部13内に、多数のニードル16がニードル用孔20に収容されたリテーナ14が装着され、その表を作動プレート15にて覆う。このようにして、センサープレート3にニードルベアリングユニットと作動プレート15が装着された状態を示したものが図8である。センサープレート3における長孔4内に配設されたトルクセンサーにて検出されたブレーキトルクに応じた検出値は、センサーケーブル7から歪みが電気信号として取り出される。そして取り出された電気信号はアンプ23で増幅され、解析システム24にて解析されて、図示省略のブレーキ制御手段に各種入力信号として使用される。
【0025】
図9から図12により第3実施例のものを詳細に説明する。図9に示したものは、センサープレート3のリテーナ収納凹部13に多数のニードル16がニードル用孔20に収容されたリテーナ14が装着された状態である。リテーナ14の略中央の孔からは、センサープレート3のリテーナ収納凹部13に設置されたスプリング受け17に一端部が支持されたスプリング18が覗いている。このような状態のリテーナ14の表側から作動プレート15が装着される。図10に示すように、作動プレート15の上下には各2つの装着突起22が突設され、これらの装着突起22は、図9に示すようなリテーナ収納凹部13の周囲の壁面に形成された上下各2つの鍵孔状の装着溝21・・を用いて装着される。
【0026】
作動プレート15における装着突起22をリテーナ収納凹部13の鍵孔状の装着溝21に装着した後に、ブレーキロータBの正転回転方向にずらすことにより抜け止めされるように構成されている。図10(C)に示したように、作動プレート15の裏面には、前記センサープレート3側に配設されたスプリング18の他端部を支持するスプリング受け19が突設されており、スプリング18のばね付勢により作動プレート15をブレーキロータBの正転回転方向側に付勢して、センサープレート3からの作動プレート15の脱落をも防止する。作動プレート15はスプリング18のばね力の範囲内にてセンサープレート3に対してブレーキロータBの回転方向に滑動自在に構成される。
【0027】
図11はトルクセンサーが配設されたセンサープレートの端部近傍における長孔近傍の拡大斜視図である。長孔4のキャリパのトルク受け部側の平坦面4A上にトルクセンサー6が貼設される。図11(A)は接着等によりトルクセンサーとしての歪みゲージ6が貼設された例であり、図11(B)は歪みゲージ6が溶接等により固着されて貼設された例である。図11(C)は、前記図9(A)にて説明したリテーナ収納凹部13の周囲の壁面に形成された鍵孔状の装着溝21が明瞭に示される。
【0028】
図12はパッド部材におけるセンサープレートの異なった装着例を示す各斜視図である。図12(A)に示したものは、センサープレート3がニードルベアリングユニットおよび作動プレート15とともにパッド1における対応整合する収納凹部12内に装着された例の組立後の斜視図であり、図12(B)に示したものは、センサープレート3がニードルベアリングユニットおよび作動プレート15とともにパッド1の側面に接合・装着された例の組立後の斜視図である。
【実施例4】
【0029】
図13は本発明のブレーキトルク測定装置の第4実施例を示す作動プレートを取り外した状態の分解斜視図である。本実施例のものは、基本的に前記図7の第3実施例のものと同様の構造を採用しているが、前記第3実施例のものがニードル16を採用しているのに対して本第3実施例のものでは、ニードル16に代えてボール25を採用している点である。本実施例では、作動プレート15のブレーキロータBの回転方向の滑動を許容するのはもとより、作動プレート15のブレーキロータBの径方向の滑動も許容できる。これらにより、アクチュエータ11と作動プレート15との間の加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスをさらに低減させることが可能となる。
【0030】
図14は本発明のブレーキトルク測定装置の第1、2実施例と第3、4実施例とのトルク−電圧によるヒステリシスの説明図で、前述したように、トルク−電圧特性において、かなり加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスが低減された前記第1、2実施例のものに対して、ベアリング構造を採用した第3、4実施例のものがさらに加圧/減圧時の入出力特性のヒステリシスが低減されていることがよく理解される。
【0031】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、パッド部材の両端部とキャリパのトルク受け部との支持形態(キャリパのトルク受け部に対するパッ
ド部材の端部を円弧状または球面状に形成するのを好適とするが、図4の両持ち梁形態が実現できるなら、パッド部材側を平坦面としてキャリパのトルク受け部側を円弧状または球面状に形成することもできる)、アクチュエータの形式(油圧ピストンを好適とするが、電磁的に進退するピストンや空圧ピストン等も採用され得る)、トルクセンサーの形状、形式(好適には温度の影響を受けにくい温度補正付きゲージが採用される)およびその長孔への貼設形態(接着あるいは溶接)、長孔の形状(少なくともキャリパのトルク受け部側は平坦面とされるが、反対側は必ずしも平坦面でなくてもよい。また穿設方向はブレーキロータの径方向とされる)およびその穿設部位(少なくともセンサープレートの正転時出口側となるキャリパのトルク受け部側の端部近傍に穿設されるが、入口側にも長孔を穿設してトルクセンサーを配設してもよい。また、パッド部材におけるパッドの対応部位に穿設してもよい)、パッドおよびセンサープレートの形状およびそれらの間の接合(一体成形)あるいは装着形態(取付整合孔と整合突起とを介したビス等による固定。センサープレートの形状およびこれを収納するパッドにおけるセンサープレート収納凹部の形状についても適宜の形状が採用され得る)、パッド部材とアクチュエータとの間に介設される作動プレートを介したベアリングユニット形態(ニードルベアリングあるいはボールベアリングもしくは作動プレートをセンサープレートに対して低摩擦材または低摩擦層を介してスライド自在に構成することもできる)、センサープレートに対する作動プレートの復元付勢形態(実施例のセンサープレートの略中央部に配設された圧縮コイルスプリングによる他、作動プレートにおけるブレーキロータの回転方向両側に板ばね等を設置してもよい)等については適宜選定できる。また、実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のブレーキトルク測定装置は、車両において使用されるディスクブレーキ装置、特にキャリパ型ディスクブレーキ装置に適用されるが、鉄道車両用のキャリパ型ディスクブレーキ、産業機械用のキャリパ型ディスクブレーキ等にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 パッド部材
1A 正転時出口側端部
1B 逆転時出口側端部
3 センサープレート
4 孔(長孔)
6 トルクセンサー
7 センサーケーブル
10 (キャリパ内の)サポート(図1)、キャリパ(サポート、図6)
10A サポートトルク受け部(正転時出口側)
10B サポートトルク受け部(逆転時出口側)
11 アクチュエータ
26 キャリパ腕部
27 ピン(ボルト締め)
B ブレーキロータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキロータ回転方向の両端部がキャリパのトルク受け部に支持されたパッド部材とブレーキロータ回転面と直交作動するアクチュエータと該アクチュエータによりパッド部材をブレーキロータに押し付けて制動を行うブレーキ装置において、前記パッド部材におけるブレーキロータ回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサーを前記パッド部材の少なくとも正転時の出口側となる端部に穿設した孔内に配設したことを特徴とするブレーキトルク測定装置。
【請求項2】
前記孔は、平坦面を含む長孔であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項3】
前記長孔が、パッド部材におけるパッドとアクチュエータとの間に介設されるセンサープレートに穿設されたことを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項4】
前記トルクセンサーは、前記長孔におけるキャリパのトルク受け部側の平坦面上に貼設されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項5】
前記キャリパのトルク受け部に対するパッド部材の端部を円弧状または球面状に形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項6】
前記パッド部材とアクチュエータとの間にニードルベアリングまたはボールベアリングを介設してアクチュエータに押圧される作動プレートを配設するとともに、該作動プレートはブレーキロータ回転方向に復元可能にばね付勢されて構成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項1】
ブレーキロータ回転方向の両端部がキャリパのトルク受け部に支持されたパッド部材とブレーキロータ回転面と直交作動するアクチュエータと該アクチュエータによりパッド部材をブレーキロータに押し付けて制動を行うブレーキ装置において、前記パッド部材におけるブレーキロータ回転方向の制動トルクを検出するトルクセンサーを前記パッド部材の少なくとも正転時の出口側となる端部に穿設した孔内に配設したことを特徴とするブレーキトルク測定装置。
【請求項2】
前記孔は、平坦面を含む長孔であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項3】
前記長孔が、パッド部材におけるパッドとアクチュエータとの間に介設されるセンサープレートに穿設されたことを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項4】
前記トルクセンサーは、前記長孔におけるキャリパのトルク受け部側の平坦面上に貼設されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項5】
前記キャリパのトルク受け部に対するパッド部材の端部を円弧状または球面状に形成したことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のブレーキトルク測定装置。
【請求項6】
前記パッド部材とアクチュエータとの間にニードルベアリングまたはボールベアリングを介設してアクチュエータに押圧される作動プレートを配設するとともに、該作動プレートはブレーキロータ回転方向に復元可能にばね付勢されて構成されたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のブレーキトルク測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−190865(P2011−190865A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57385(P2010−57385)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】
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