説明

ブレーキペダル確認警報装置

【課題】セレクトレバーをN位置にしてエンジンを始動させた場合に、ブレーキペダルの位置確認を運転者に促す。
【解決手段】ブレーキペダル確認警報装置は、車両の停車の有無を検出する車速センサ21と、セレクトレバー22の位置を検出するレンジセンサ23と、エンジン11の回転速度を検出する回転センサ24と、ブレーキペダル26の踏み込みの有無を検出するブレーキセンサ27と、車両の運転席に設けられた警報装置28と、警報装置28を制御するコントローラ29とを備える。コントローラ29は、車速センサ21が車両の停車状態を検出し、レンジセンサ23がN位置にあるセレクトレバー22の位置を検出し、回転センサ24がアイドル回転以上のエンジン11の回転速度を検出し、ブレーキセンサ27がエンジン11の始動後におけるブレーキペダル26の踏み込みの回数ゼロを検出したときに警報装置28を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートマチックトランスミッション車(以下オートマチック車という)において、セレクトレバーがN(ニュートラル)位置であってかつ停車状態からのエンジン始動時に、一度ブレーキペダルを踏むことを促すブレーキペダル確認警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車速やエンジン回転数に応じ、変速機の変速比を自動的に切り替えるオートマチック車が知られており、このオートマチック車にあっては、アクセルペダルを踏み込むだけの操作で走行可能であることから、誤操作による急発進で生ずる事故を防止するため、スタータインターロック機構、シフトロック機構、キー・インタロック機構、R(リバース)位置警報装置等が装備されている(例えば、特許文献1参照。)。ここで、スタータインターロック機構とは、セレクトレバーがP(パーキング)位置又はN(ニュートラル)位置でなければ、エンジンを始動できないようにした機構であり、シフトロック機構とは、ブレーキペダルを踏んでいないとセレクトレバーをP(パーキング)位置から他のR(リバース)位置や、D(ドライブ)位置等のレンジにシフトできないようにした機構である。また、キー・インタロック機構とはセレクトレバーがP位置でないと、イグニッション・キーがキーのロック位置に回らず、キーを抜くことができない機構であり、R位置警報装置はセレクトレバーがR(リバース)位置になると、ブザーで運転者に知らせる装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−115612号公報(段落番号[0002]及び[0003])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、オートマチック車に上記スタータインターロック機構、シフトロック機構、キー・インタロック機構、R位置警報装置を装備しても、例えば、車両が走行途中にエンジンの回転がストップしてしまった場合や、車両停車中に燃料の消費を防止するために、エンジンの回転を意図的に停止させる場合もある。このような場合のエンジンの再始動にあっては、D位置にあるセレクトレバーをN位置に一旦戻した後にエンジンを再び始動させることが行われる。そして、セレクトレバーをN位置にしてエンジンを始動させた場合には、ブレーキペダルを踏み込むことなく、セレクトレバーを車両が走行可能なD位置に再び移動させて車両を走行させることが可能になる。このように、車両が停止した状態で、運転者がブレーキペダルの位置を確認することなく、再び車両を走行させることは好ましくなく、運転者は車両を停止させ得るブレーキペダルの位置を認識した後に車両を走行させることが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、セレクトレバーをN位置にしてエンジンを始動させた場合に、一度ブレーキペダルを踏んで、そのブレーキペダルの位置確認を運転者に促すブレーキペダル確認警報装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両の停車の有無を検出する車速センサと、セレクトレバーの位置を検出するレンジセンサと、エンジンの回転速度を検出する回転センサと、ブレーキペダルの踏み込みの有無を検出するブレーキセンサと、車両の運転席に設けられた警報装置と、車速センサと、レンジセンサと、回転センサと、ブレーキセンサの検出出力に基づいて警報装置を制御するコントローラとを備えたブレーキペダル確認警報装置である。
【0007】
そして、コントローラは、車速センサが車両の停車状態を検出し、レンジセンサがニュートラルにあるセレクトレバーの位置を検出し、回転センサがアイドル回転以上のエンジンの回転速度を検出し、ブレーキセンサがエンジンの始動後におけるブレーキペダルの踏み込みの回数ゼロを検出したときに警報装置を作動させるように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のブレーキペダル確認警報装置では、車速センサが車両の停車状態を検出し、レンジセンサがニュートラルにあるセレクトレバーの位置を検出し、回転センサがアイドル回転以上のエンジンの回転速度を検出し、ブレーキセンサがエンジン始動後におけるブレーキペダルの踏み込みの回数ゼロを検出したときに警報装置を作動させるので、セレクトレバーをN位置にしてエンジンを始動させた場合であって、ブレーキペダルの踏み込みがない場合に警報装置が作動する。この警報にあっては、ブレーキペダルを踏み込むことにより、その警報を停止させることができるけれども、運転者は、車両を走行させる以前に一呼吸おいてブレーキペダルを踏み込むこの動作により、ブレーキペダルの位置を認識することができる。このため、本発明のブレーキペダル確認警報装置は、セレクトレバーをN位置にしてエンジンを始動させた場合に、ブレーキペダルの位置を確認してからの発進を運転者に促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明実施形態のブレーキペダル確認警報装置の構成図である。
【図2】そのブレーキペダル確認警報装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に示すように、オートマチック車は、エンジン11の動力がトランスミッション12及びプロペラシャフト13を介して図示しない駆動軸に伝達される構造を成す。トランスミッション12には、トランスミッションコントローラ29により制御される操作装置14が設けられ、このトランスミッションコントローラ29にはセレクトレバー22の位置を検出するレンジセンサ23の検出出力が接続される。
【0012】
セレクトレバー22は、車両を停車させるP(パーキング)位置と、車両を後退させるR(リバース)位置と、エンジン11の動力をプロペラシャフト13に伝達させないN(ニュートラル)位置と、車両を走行させるD(ドライブ)位置等に移動可能に構成される。そして、トランスミッションコントローラ29は、そのセレクトレバー22の位置に基づいて操作装置14を制御するように構成される。
【0013】
一方、運転者が操作するアクセルペダル16の操作量は、アクセルセンサ17により検出されて、エンジンコントローラ18に取込まれる。このエンジンコントローラ18とトランスミッションコントローラ29は、この明細書で説明しない他の制御装置と共に通信網19により相互に接続され、エンジンコントローラ18からは内燃機関11における燃料噴射装置11aにその制御出力が接続される。
【0014】
このような車両に備えられた本発明におけるブレーキペダル確認警報装置20は、車両の停車の有無を検出する車速センサ21と、セレクトレバー22の位置を検出する上述したレンジセンサ23と、エンジン11の回転速度を検出する回転センサ24と、ブレーキペダル26の踏み込みの有無を検出するブレーキセンサ27と、それらの各センサ21,23,24,27の検出出力に基づいて警報装置28を制御するコントローラ29を備える。
【0015】
この実施の形態における車速センサ21は、プロペラシャフト13の回転状況から車両の停車の有無を検出するものが用いられ、トランスミッションコントローラ29には、ブレーキペダル26の踏み込みの有無を検出するブレーキセンサ27の検出出力が接続される。そして、このトランスミッションコントローラ29が警報装置28を制御するコントローラ29を兼ねるものである。また、警報装置28は、車両における運転席前方のパネル31に嵌め込まれた各種メータ32,33に隣接して埋設されたブザー28であり、トランスミッションコントローラ29の制御出力がそのブザー28に接続される。
【0016】
そして、このコントローラ29は、車速センサ21が車両の停車状態を検出し、レンジセンサ23がニュートラルにあるセレクトレバー22の位置を検出し、回転センサ24がアイドル回転以上のエンジン11の回転速度を検出し、ブレーキセンサ27がエンジン11始動後におけるブレーキペダル26の踏み込みの回数ゼロを検出したときに警報装置28を作動させる、即ち、警報装置28であるブザーを吹鳴させるように構成される。ここで、エンジン11のアイドル回転とは、始動したエンジン11においてアクセルペダル16を踏み込まない状態における回転数であって、一般的に300〜1000rpmの範囲の任意の値に設定される。
【0017】
次に、このように構成されたブレーキペダル確認警報装置20の動作を説明する。
【0018】
本発明のブレーキペダル確認警報装置20では、車速センサ21が車両の停車状態を検出し、レンジセンサ23がN位置にあるセレクトレバー22の位置を検出し、回転センサ24がアイドル回転以上のエンジン11の回転速度を検出し、ブレーキセンサ27がエンジン11始動後におけるブレーキペダル26の踏み込みの回数ゼロを検出したときに、コントローラ29は、警報装置28を作動させる。この警報装置28であるブザーが作動、即ち、ブザー28が吹鳴されるまでの流れを図2に示す。
【0019】
先ず運転者は、車両を運転するために、セレクトレバー22がP位置に有る状態で図示しないキースイッチをオン状態にして、そのエンジン11を始動する。このとき、スタータインターロック機構により、セレクトレバー22がP位置又はN位置以外の位置ではエンジン11を始動することはできないけれども、セレクトレバー22がP位置であるので、スタータインターロック機構による制限を受けることなくエンジン11を始動することができる。このとき、セレクトレバー22がP位置であるので、本発明における警報装置28であるブザーが吹鳴されることはない(図2,S03,S04)。
【0020】
次に運転者は、ブレーキペダル26を踏みつつセレクトレバー22をP位置から他のR位置や、D位置にシフトした後、アクセルペダル16を踏み込んで車両の走行を開始する。このとき、シフトロック機構により、ブレーキペダル26を踏んでいないとセレクトレバー22をP位置から他のR位置や、D位置等の位置へ移動できないので、運転者は、車両を走行させる前に一旦ブレーキペダル26を踏み込むことになり、そのブレーキペダル26の位置を確認した後に車両の走行は開始されることになる。そして、車両が走行すると、車速センサ21は車両の停車状態を検出せずに車両の走行状態を検出するので、本発明における警報装置28であるブザーが吹鳴されることはない(図2,S01,S02)。
【0021】
一方、車両が走行を開始した後には、例えば、エンジンの回転が意に反してストップしてしまう場合や、交差点の信号等によって車両を一時的に停車させたときに、燃料の消費を防止するために、エンジン11の回転を意図的に停止させる場合もある。このような場合にあって、車両を再び走行させるには、D位置にあるセレクトレバー22をN位置に一旦戻した後にエンジン11を再び始動させる。すると、セレクトレバー22がN位置でエンジン11を始動させるので、スタータインターロック機構により、エンジン11を始動できないような事態は回避され、エンジン11を始動することができる。そして、その後、セレクトレバー22をD位置に再び移動させることにより、車両を再び走行させることが可能になる。
【0022】
ここで、従来から設けられているスタータインターロック機構、シフトロック機構、キー・インタロック機構、R位置警報装置では、セレクトレバー22をN位置にしてエンジン11を始動させた場合に、ブレーキペダル26を踏み込むことなく、セレクトレバー22を車両が走行可能なD位置に再び移動させることが可能になる。
【0023】
けれども、本発明におけるブレーキペダル確認警報装置20では、このように、車速センサ21が車両の停車状態を検出し(図2,S01,S02)、レンジセンサ23がN位置にあるセレクトレバー22の位置を検出した状態で(図2,S03,S04)、エンジン11を始動すると、回転センサ24がアイドル回転以上のエンジン11の回転速度を検出することになる(図2,S05,S06)。そして、エンジン11が再始動された以後に運転者がブレーキペダル26を踏み込んでいないとすると、ブレーキセンサ27がエンジン11の始動後におけるブレーキペダル26の踏み込みの回数ゼロを検出することになる(図2,S07,S08)ので、これによりコントローラ29は、警報装置28、即ち、ブザー28を吹鳴させる(図2,S09)。
【0024】
ブザー28が吹鳴された後には、エンジン11を停止して、回転センサ24がアイドル回転以上のエンジン11の回転速度を検出しなくなる場合と(図2,S05,S06)、運転者がブレーキペダル26を踏み込んで、ブレーキセンサ27がエンジン11の始動後におけるブレーキペダル26の踏み込みの回数ゼロを検出しなくなる場合に(図2,S07,S08)、警報装置28、即ち、ブザー28の吹鳴を停止させる(図2,S10)。
【0025】
よって、この警報であるブザー28の吹鳴により、運転者はブレーキペダル26を踏み込んでいないことを認識する。そして、運転者は車両を実際に走行させる以前に一呼吸おいて、ブレーキペダル26を踏み込むことにより、その警報を停止させることになる。この動作により運転者はブレーキペダル26の位置を認識し、その後車両を発進させることになる。このため、本発明のブレーキペダル確認警報装置20は、セレクトレバー22をN位置にしてエンジン11を始動させた場合に、ブレーキペダル26を踏み込んでその位置を確認してからの発進を運転者に促すことができる。
【0026】
また、警報であるブザー28は、車速センサ21が車両の停車状態を検出しない場合には吹鳴されない。このため、走行中のエンジン停止によるNレンジからのエンジン始動にあっては、走行中に行う限り警報であるブザー28は吹鳴されない。よって、走行中のエンジン再始動時に警報装置28が作動してしまうような事態は回避される。
【0027】
なお、上述した実施の形態では、警報装置28として、車両における運転席前方のパネル31に嵌め込まれた各種メータ32,33に隣接して埋設されたブザー28を用いて説明したけれども、この警報装置28は、運転者の視覚を刺激する警報ランプであっても良く、運転者の触覚を刺激するバイブレーター等であっても良い。
【0028】
また、上述した実施の形態では、操作装置14を制御するトランスミッションコントローラ29が警報装置28を制御するコントローラ29を兼ねるものとして説明したけれども、内燃機関11における燃料噴射装置11aにその制御出力が接続されたエンジンコントローラ18が警報装置28を制御するコントローラを兼ねるようにしても良く、警報装置28を制御するコントローラを独自に設けて、トランスミッションコントローラ29やエンジンコントローラ18と通信網19により接続するようにしても良い。既存のコントローラ18,29や既存の警報装置28を用いるようであれば、新たなハードウエアを投資することなく、ソフトウエアの変更のみで、本発明のブレーキペダル確認警報装置を備えることが可能になる。
【0029】
また、上述した実施の形態では、セレクトレバー22の位置を検出するレンジセンサ23を用いて説明したけれども、セレクトレバー22の位置を検出しうる限り、このレンジセンサは、トランスミッション12を操作する操作装置14に設けて、その操作装置14の状況からセレクトレバー22の位置を検出するようにしても良い。
【0030】
更に、上述した実施の形態では、プロペラシャフト13の回転状況から車両の停車の有無を検出する車速センサ21を用いて説明したけれども、図示しないが、車速センサとして、車輪の回転の有無の検出に使うABSセンサを用い、そのABSセンサの信号を車両の停車の有無の判断に使用しても良い。
【符号の説明】
【0031】
11 エンジン
20 ブレーキペダル確認警報装置
21 車速センサ
22 セレクトレバー
23 レンジセンサ
24 回転センサ
26 ブレーキペダル
27 ブレーキセンサ
28 ブザー(警報装置)
29 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の停車の有無を検出する車速センサ(21)と、セレクトレバー(22)の位置を検出するレンジセンサ(23)と、エンジン(11)の回転速度を検出する回転センサ(24)と、ブレーキペダル(26)の踏み込みの有無を検出するブレーキセンサ(27)と、前記車両の運転席に設けられた警報装置(28)と、前記車速センサ(21)と、前記レンジセンサ(23)と、前記回転センサ(24)と、前記ブレーキセンサ(27)の検出出力に基づいて前記警報装置(28)を制御するコントローラ(29)とを備えたブレーキペダル確認警報装置であって、
前記コントローラ(29)は、
前記車速センサ(21)が前記車両の停車状態を検出し、
前記レンジセンサ(23)がN位置にある前記セレクトレバー(22)の位置を検出し、
前記回転センサ(24)がアイドル回転以上の前記エンジン(11)の回転速度を検出し、
前記ブレーキセンサ(27)が前記エンジン(11)の始動後における前記ブレーキペダル(26)の踏み込みの回数ゼロを検出したときに前記警報装置(28)を作動させるように構成された
ことを特徴とするブレーキペダル確認警報装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−107498(P2013−107498A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253981(P2011−253981)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】