説明

ブレーキランプ制御装置

【課題】僅かな減速度の場合にまでブレーキランプを作動させることの回避と、迅速なブレーキランプの作動との両立を図ったブレーキランプ制御装置を提供する。
【解決手段】変速装置による変速比を取得する変速比取得手段S14と、車速を取得する車速取得手段S14と、吸気管内の負圧を取得する負圧取得手段S11と、これらの取得手段S11,S14により取得した現時点での変速比、車速および負圧に基づき、現時点以降における最大減速度を予測する減速度予測手段S15と、減速度予測手段S15により予測された最大減速度が第1所定値TH1以上である場合に、ブレーキランプを点灯させるよう制御するブレーキランプ制御手段S22と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルの非操作時であってもエンジンブレーキが発揮されていればブレーキランプを点灯させる、ブレーキランプ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には、車両運転者によるブレーキペダル操作に伴い点灯させるブレーキランプを、ブレーキペダルの非操作時であってもエンジンブレーキが発揮されていれば点灯させる旨が記載されている。これによれば、ブレーキペダルの非操作時においてエンジンブレーキにより減速走行している旨を、例えば後続車両に報知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−96723号公報
【特許文献2】特公昭59−7014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、ブレーキペダルとアクセルペダルが操作されておらず、かつ、変速装置が前進ギア状態であるとの条件を満たした時に、ブレーキランプを点灯させる旨が記載されている。しかし、この条件にしたがってブレーキランプを点灯させると、エンジンブレーキによる車速の減速度が僅かである場合にまで点灯させてしまうことになるので、後続車両への報知が適正とは言えない。
【0005】
また、上記特許文献2には、減速度が所定値以上になったことをセンサで検出してブレーキランプを点灯させる旨が記載されている。しかし、この場合には減速度が所定値以上になった以降でなければブレーキランプを点灯させることができないので、点灯開始のタイミングが遅くなってしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、僅かな減速度の場合にまでブレーキランプを作動させることの回避と、迅速なブレーキランプの作動との両立を図ったブレーキランプ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明では、エンジンを駆動源として走行する車両に適用され、ブレーキ操作部材を操作していない時であってもエンジンブレーキが発揮されていればブレーキランプを点灯させるブレーキランプ制御装置において、前記エンジンの出力を変速装置により変速して車輪に伝達させる際の、前記変速装置による変速比を取得する変速比取得手段と、車速を取得する車速取得手段と、前記エンジンの吸気管内の負圧を取得する負圧取得手段と、前記変速比取得手段、前記車速取得手段および前記負圧取得手段により取得した現時点での変速比、車速および負圧に基づき、現時点以降における最大減速度を予測する減速度予測手段と、前記減速度予測手段により予測された前記最大減速度が所定値以上である場合に、前記ブレーキランプを点灯させるよう制御するブレーキランプ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
上記発明は、現時点での変速比、車速および負圧に基づけば、現時点の直後において最大減速度がどのように変化するのかを予測できることに着目して想起されたものである。
【0010】
例えば、変速装置をシフトダウンさせてエンジンブレーキが発揮される場合において(図3参照)、変速装置のクラッチ接続完了を待たずして接続を開始する現時点(半クラッチの状態)において、接続完了後の減速度を予測できる。この場合には、クラッチ接続完了時点での減速度が、予測される最大減速度に相当する。図3の例で言えば、例えばt2時点でt4時点での最大減速度を予測できる。
【0011】
或いは、変速比(減速比)が大きい時にアクセルペダルの踏込みを放してエンジンブレーキが発揮される場合において(図4参照)、その踏込みを放した時点(現時点)における変速比、車速および負圧に基づけば、その直後における減速度(最大減速度)を予測できる。図4の例で言えば、例えばt11時点でt13時点での最大減速度を予測できる。
【0012】
上記点を鑑みた上記発明では、現時点での変速比、車速および負圧に基づき、現時点以降における最大減速度を予測し、予測した最大減速度が所定値以上である場合にブレーキランプを点灯させる。これによれば、最大減速度が所定値以上であることを条件としてブレーキランプは点灯するので、僅かな減速度の場合にまでブレーキランプを点灯させることを回避できる。
【0013】
また、最大減速度を予測してブレーキランプを作動させるので、エンジンブレーキが発揮され始めた以降において減速度が所定値になる時点(例えばt3,t12時点)よりも前の時点で、ブレーキランプを作動させておくことができる。よって、僅かな減速度の場合にまでブレーキランプを作動させることの回避と、迅速なブレーキランプの作動との両立を図ることができる。
【0014】
請求項2記載の発明では、前記減速度予測手段は、前記変速比を変化させたことを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする。
【0015】
上記発明は、変速比(減速比)を大きくするよう変化させた時には減速度が所定値以上となる可能性が高いことに着目して想起されたものであり、変速比を変化させたことを条件として最大減速度の予測を開始するので、当該予測を車両走行中に常時実施する場合に比べて、予測のための演算処理負荷を軽減できる。
【0016】
請求項3記載の発明では、前記変速装置は、接続する変速ギアを切り替えることで変速比を段階的に切り替えるよう構成されたものであり、前記減速度予測手段は、シフトダウンさせるよう前記変速ギアを切り替えるにあたり、前記変速ギアへの接続を完了する前の時点で、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする。
【0017】
ここで、図3にて例示するように変速装置をシフトダウンさせてエンジンブレーキが発揮される場合において、減速度が最大となるのはクラッチ接続が完了するt3時点以降であり、変速ギアへの接続の途中(半クラッチの期間t2〜t3)では、減速度は最大とはならない。したがって、特許文献2記載の減速度センサを用いてブレーキランプを点灯させようとすると、クラッチ接続完了のt3時点以降でしか点灯させることができない。
【0018】
これに対し上記発明では、変速ギアへの接続を完了するt3時点よりも前の時点(例えばt2時点)で最大減速度の予測を開始するので、接続完了を待たずしてブレーキランプを点灯させることができる。よって、ブレーキランプを迅速に点灯させることができ、後続車両に対する報知のタイミングが遅くなることを回避できる。
【0019】
請求項4記載の発明では、前記減速度予測手段は、吸気量を調整するスロットル弁が所定以上の速さで閉弁作動したことを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする。
【0020】
図4にて例示するようにスロットル弁が所定以上の速さで閉弁作動した時には、エンジンのポンピングロスが急増するので、減速度が所定値以上となる可能性が高い。この点に着目した上記発明では、スロットル弁が所定以上の速さで閉弁作動したことを条件として最大減速度の予測を開始する。そのため、当該予測を車両走行中に常時実施する場合に比べて、予測のための演算処理負荷を軽減できる。
【0021】
また、スロットル弁を所定以上の速さで閉弁作動させた場合には、吸気管内の負圧が急激に増大するが、その閉弁作動開始から負圧が増大するまでにはタイムラグがある。したがって、特許文献2記載の減速度センサを用いてブレーキランプを点灯させようとすると、実際に減速度が所定値以上になるまではブレーキランプを点灯させることができない。
【0022】
これに対し、上記発明によれば、スロットル弁が所定以上の速さで閉弁作動した時点で、減速度予測手段による予測を実施してブレーキランプを点灯させることができるので、前記タイムラグが経過して実際の減速度が所定値以上になることに先立ちブレーキランプを点灯させることができる。よって、ブレーキランプを迅速に点灯させることができ、後続車両に対する報知のタイミングが遅くなることを回避できる。
【0023】
請求項5記載の発明では、前記車両は、吸気量を調整するスロットル弁および前記変速装置の作動を、自車両の車速が設定車速となるよう自動制御するクルーズ機能を備えており、前記減速度予測手段は、車両走行中に前記クルーズ機能を停止状態から作動状態に切り替えたことを条件として、或いは前記設定車速を低下させたことを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする。
【0024】
ここで、クルーズ機能を停止させた状態で設定車速よりも速い車速で走行運転している最中に、クルーズ機能を作動させるよう切り替えると、その切り替え直後には、スロットル弁を所定以上の速さで閉弁作動させたりシフトダウンさせたりすることが自動で為される可能性が高い。そのため、減速度が所定値以上となる可能性が高い。或いは、クルーズ機能を作動させている最中に設定車速を低下させると、その直後においても、スロットル弁を所定以上の速さで閉弁作動させたりシフトダウンさせたりすることが自動で為される可能性が高く、減速度が所定値以上となる可能性が高い。これらの点を鑑みた上記発明では、クルーズ機能を停止状態から作動状態に切り替えたことを条件として、或いは前記設定車速を低下させたことを条件として、最大減速度の予測を開始する。そのため、当該予測を車両走行中に常時実施する場合に比べて、予測のための演算処理負荷を軽減できる。
【0025】
請求項6記載の発明では、前記減速度予測手段は、前記負圧取得手段により取得した現時点での負圧が所定圧以上であることを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする。
【0026】
負圧が小さい場合には、車速や変速比の値に拘わらず最大減速度が所定値以上になる可能性は低い。この点を鑑みた上記発明では、負圧が所定圧以上であることを条件として最大減速度の予測を開始するので、当該予測を車両走行中に常時実施する場合に比べて、予測のための演算処理負荷を軽減できる。
【0027】
請求項7記載の発明では、前記減速度予測手段は、前記車速取得手段により取得した現時点での車速が所定速度以上であることを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする。
【0028】
車速が小さい場合には、負圧や変速比の値に拘わらず最大減速度が所定値以上になる可能性は低い。この点を鑑みた上記発明では、車速が所定速度以上であることを条件として最大減速度の予測を開始するので、当該予測を車両走行中に常時実施する場合に比べて、予測のための演算処理負荷を軽減できる。
【0029】
請求項8記載の発明では、予測された最大減速度が所定値以上であることに伴い前記ブレーキランプを点灯させた場合には、以降の最大減速度の予測値に拘わらず前記ブレーキランプの点灯を所定時間以上継続させることを特徴とする。
【0030】
ここで、減速度が所定値近傍で変動している場合には、ブレーキランプが短時間で点灯と停止を繰り返すハンチングの状態に陥り、後続車両に対して適正な報知ができなくなることが懸念される。この懸念に対し上記発明では、エンジンブレーキの発揮に伴いブレーキランプを点灯させた場合には、以降の最大減速度の予測値に拘わらずブレーキランプの点灯を所定時間以上継続させるので、上記ハンチングの懸念を解消できる。
【0031】
ちなみに、予測された最大減速度が所定値以上である場合にブレーキランプを点灯させるにあたり、ブレーキランプの点灯開始時における前記所定値を、ブレーキランプの点灯中における前記所定値よりも大きい値に設定することで、上記ハンチングの解消を図るようにしてもよい。
【0032】
また、ブレーキランプ制御手段によりブレーキランプの点灯を開始させた場合には、減速度予測手段による最大減速度の予測処理を継続させて、最大減速度が所定値未満となった時点でブレーキランプを消灯させるとともに最大減速度の予測処理を終了させることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の第1実施形態において、ブレーキランプ制御装置と、当該制御装置が搭載される車両の全体構成を示す図である。
【図2】図1に示すブレーキランプ制御装置が実施する、ブレーキランプ制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】図2の処理を実施した場合における、ギア段を6速から3速にシフトダウンさせた場合の一態様を示すタイムチャートである。
【図4】図2の処理を実施した場合における、ギア段を1速にした状態で急速閉弁作動させた場合の一態様を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明を具体化した各実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態にかかるブレーキランプ制御装置(ECU10)と、当該ECU10が搭載される車両20の全体構成を示す図である。
【0036】
図に示す車両20は、エンジン21(内燃機関)を駆動源として走行する4輪自動車であり、点火式のガソリンエンジンや圧縮自着火式のディーゼルエンジン等を想定している。エンジン21の動力は、クランク軸22、変速装置23、および差動装置24(デファレンシャル)を介して駆動輪25へ伝達される。
【0037】
クランク軸22の回転速度は、変速装置23のギア比(変速比)にしたがって変速される。そして、変速装置23の出力軸23aの回転速度に、差動装置24のギア比(デフ比)を乗算して得られる回転速度で、駆動輪25は回転する。
【0038】
図に示す変速装置23は、運転者の手動操作により変速比を切り替える手動変速装置(MT)を想定しているが、ECU10により変速比を自動で切り替える自動変速装置(AT)であってもよい。また、自動変速装置は、所定の変速比に段階的に切り替える構造の装置でもよいし、変速比を連続的に無段階に変化させる装置であってもよい。
【0039】
図示しないブレーキペダルを車両運転者が踏み込み操作すると、駆動輪25に備えられたホイールシリンダ25aが作動して制動力が発揮される。また、ブレーキペダルを所定量以上踏み込むと、ブレーキスイッチ26が作動してブレーキランプ27が点灯(作動)する。ブレーキランプ27は車両20の後方に設けられており、自車両が減速走行している旨を後続車両の運転者に報知するものである。
【0040】
ECU10は、後に詳述するブレーキランプ制御の他に、エンジン21の作動を、以下に説明する各種センサの検出信号に基づき制御する。すなわち、クランク軸22の回転速度(エンジン回転速度NE)を検出するクランク角センサ11、吸気量を調整するスロットル弁の弁開度(スロットル開度)を検出するスロットルセンサ12、駆動輪25の回転速度を検出する車速センサ13、変速装置23による変速比(変速ギアのギア段)を検出するギアセンサ14、変速装置23のクラッチの接続状態を検出するクラッチスイッチ15、吸気量を検出するエアフローメータ16等の各種センサから、検出信号がECU10へ入力される。
【0041】
具体的には、検出したエンジン回転速度NEおよびアクセル踏込量に基づき要求エンジン出力を算出し、要求エンジン出力に相当する吸気量となるようスロットル弁(図示せず)の作動を制御してスロットル開度(吸気量)を制御する。また、エアフローメータにより検出された吸気量およびエンジン回転速度NEに基づき目標燃料噴射量を算出し、算出した目標燃料噴射量となるよう燃料噴射弁(図示せず)の作動を制御する。以上により、排気エミッションが上限値を超えないように図りつつ、要求エンジン出力となるようにエンジン21の作動を制御する。
【0042】
ちなみに、クラッチスイッチ15は、車両運転者がクラッチペダル(図示せず)を所定量以上踏み込むとクラッチ断の検出信号を出力し、その踏込量を所定量未満にまで戻すとクラッチ接続の検出信号を出力する。また、ギアセンサ14は、車両運転者がシフトレバーやシフトスイッチ等のシフト操作部材(図示せず)の操作位置(ギア段)の検出信号を出力する。
【0043】
図2は、ECU10(ブレーキランプ制御装置)が有するマイクロコンピュータが実施する、ブレーキランプ制御の処理手順を示すフローチャートであり、当該処理は、所定周期(例えば先述のマイコンが行う演算周期又は所定のクランク角度毎)で繰り返し実行される。このブレーキランプ制御は、ブレーキペダルが操作されずにブレーキスイッチ26がオフになっている場合であっても、エンジンブレーキが発揮されている場合にはブレーキランプ27を点灯させるよう制御するものである。
【0044】
先ず、図2に示すステップS10において、車速センサ13の検出値に基づき、現時点での車速が所定速度THv以上であるか否かを判定する。続くステップS11(負圧取得手段)では、エアフローメータ16により検出された吸気量、およびクランク角センサ11により検出されたエンジン回転速度NEに基づき、吸気管内の負圧を算出する。なお、当該負圧は、吸気管圧センサ16a(図1中の一点鎖線参照)を用いて直接検出するようにしてもよいし、スロットル開度およびエンジン回転速度NE等から算出するようにしてもよい。そして、次のステップS12において、現時点での吸気管内の負圧が所定圧THp以上であるか否かを判定する。
【0045】
車速が所定速度THv以上、かつ、負圧が所定圧THp以上であると判定された場合(S10:YES、S12:YES)には、次のステップS13に進み、エンジンブレーキが発揮されていない状態から発揮される状態に推移する状況にあるか否かを判定する。具体的には、シフトダウン作動中、或いは、スロットル弁を急速に閉弁作動させているか否かに基づき、先述したエンジンブレーキ推移の状況にあるか否かを判定する。
【0046】
シフトダウン作動中であるか否かの判定については、例えば、クラッチスイッチ15およびギアセンサ14の検出値に基づき判定すればよい。スロットル弁の急速閉弁作動中であるか否かの判定については、スロットルセンサ12の検出値に基づき、閉弁速度が所定速度以上である場合に急速閉弁作動中であると判定すればよい。
【0047】
図3は、ギア段を6速から3速にシフトダウンさせた場合の一態様を示し、図4は、ギア段を1速にした状態で急速閉弁作動させた場合の一態様を示すタイムチャートであり、(a)車速、(b)減速度、(c)エンジン回転速度NE、(d)クラッチ接続状態、(e)ギア段、(f)スロットル開度、(g)ブレーキランプ27の作動状態の変化を各々示す。
【0048】
図3の態様では、t1時点でクラッチを切断作動させ、t2時点でクラッチの接続を開始して、t4時点でその接続を完了させている。つまり、t2〜t4の期間が半クラッチの状態であり、この期間においてエンジン回転速度NEは上昇して最大値(NEmax)となる。そして車速の減速度は、この最大値NEmaxとなった時点で、クラッチ接続開始時点t2以降における最大値(最大減速度)となる。
【0049】
図4の態様では、t10時点でスロットル弁が閉弁作動を開始し、t11時点で閉弁作動を終了させている。要するに、t10〜t11の時間でスロットル弁を全閉位置まで作動させており、閉弁作動の開始時点t10からエンジン回転速度NEは下降を開始する。そして車速の減速度は、閉弁作動の終了時点t11以降のt13時点で、閉弁作動の開始時点t10以降における最大値(最大減速度)となる。
【0050】
図2の説明に戻り、シフトダウン作動中、或いは急速閉弁作動中であると判定された場合(S13:YES)には、次のステップS14(車速取得手段、変速比取得手段)に進み、車速センサ13およびギアセンサ14による検出信号に基づき、現時点での車速、ギア段を取得する。
【0051】
続くステップS15(減速度予測手段)では、取得した車速およびギア段と、ステップS11で算出した吸気管負圧に基づき、現時点以降における車速の最大減速度を予測する。すなわち、車速が速いほど減速度は大きい。また、ギア比(減速比)が大きいギア段であるほど減速度は大きい。また、吸気管負圧が大きいほど、ポンピングロスが大きくなるので減速度は大きい。したがって、これらの車速、ギア段、吸気管負圧の値をパラメータとして最大減速度を算出するモデル式を、マイコンのメモリに予め記憶させておき、当該モデル式に車速、ギア段、吸気管負圧の値を代入して最大減速度算出することができる。
【0052】
続くステップS16では、ステップS15で算出した最大減速度が第1所定値TH1以上であるか否かを判定し、最大減速度≧TH1と判定されれば(S16:YES)、次のステップS17にてブレーキランプ点灯フラグをオンに設定する。一方、最大減速度<TH1と判定され(S16:NO)、かつ、次のステップS18にて減速度<TH2(第2所定値)と判定されれば(S18:YES)、続くステップS19によりブレーキランプ点灯フラグをオフに設定する。一方、減速度≧TH2と判定されれば(S18:NO)、現状のフラグ状態を維持させる。
【0053】
なお、点灯フラグをオフにして消灯させるか否かの判定に用いる第2所定値TH2を、点灯フラグをオンにして点灯させるか否かの判定に用いる第1所定値TH1よりも小さい値に設定している。これにより、点灯フラグのオンとオフが短時間で頻繁に切り替わるハンチングに陥ることを回避させている。
【0054】
そして、点灯フラグがオフに設定されていれば(S20:NO)、次のステップS21にてブレーキランプ27を消灯させるよう制御する。具体的には、図1に示すリレー17をオフ作動させて、ブレーキランプ27への通電を切断する。そして、図2の処理を一旦終了させる。
【0055】
一方、点灯フラグがオンに設定されていれば(S20:YES)、次のステップS22(ブレーキランプ制御手段)にてブレーキランプ27を点灯させるよう制御する。具体的には、前記リレー17をオン作動させてブレーキランプ27を通電させる。そして、ステップS14の処理に戻り、最大減速度の算出(S15)および点灯フラグをオフに切り替えるか否かの判定(S16,S18)を実施する。
【0056】
要するに、車速≧THv(S10:YES)、吸気管負圧≧THp(S12:YES)、シフトダウン作動開始またはスロットル閉弁作動開始(S13:YES)の3つの条件が成立した場合に、吸気管負圧、車速、ギア段に基づき最大限速度の算出(予測)を開始する。
【0057】
そして、ステップS15で算出される最大減速度の値は、t2時点またはt11時点での算出開始当初においてはt4時点またはt13時点での減速度(最大減速度)の予測値となる。この予測値が第1所定値TH1以上であればブレーキランプ27を点灯させる。
【0058】
一方、t4時点またはt13時点以降の時点でステップS15により算出される最大減速度の値は、現時点での減速度の値となる。そして、このようにステップS15で算出される現時点での減速度の値が第2所定値TH2未満になるまで、前記算出(予測)が継続され、ブレーキランプ27の点灯が継続されることとなる。
【0059】
以上により、本実施形態によれば、現時点での変速比、車速および負圧に基づき、現時点以降における最大減速度を予測し、予測した最大減速度が第1所定値TH1以上である場合にブレーキランプ27を点灯させる。これによれば、予測した最大減速度が第1所定値TH1未満であればブレーキランプ27を点灯させないので、僅かな減速度の場合にまでブレーキランプ27を点灯させることを回避できる。
【0060】
また、t2〜t4の期間またはt11〜t13の期間において、最大減速度を予測してブレーキランプ27を作動させるので、エンジンブレーキが発揮され始めたt2時点またはt11時点以降において、減速度が第1所定値TH1になる前(t3またはt12よりも前)の時点からブレーキランプ27を作動させることができる。よって、僅かな減速度の場合にまでブレーキランプ27を作動させることの回避と、迅速なブレーキランプ27の作動との両立を図ることができる。
【0061】
また、特許文献2記載の減速度センサ(吸気管内の負圧を検出するセンサ)を不要にできるのでコストアップを抑制できる。
【0062】
また、車速≧THv、吸気管負圧≧THp、シフトダウン作動開始またはスロットル閉弁作動開始の3つの条件が全て成立した場合に、ステップS14,S15による最大限速度の算出(予測)の処理を開始するので、当該予測を車両走行中に常時実施する場合に比べて、予測のためのECU10の演算処理負荷を軽減できる。
【0063】
(第2実施形態)
本実施形態にかかる車両は、吸気量を調整するスロットル弁および変速装置23の作動を、自車両の車速が設定車速となるよう自動制御するクルーズ機能を備えている。
【0064】
ここで、クルーズ機能を停止させた状態で設定車速よりも速い車速で走行運転している最中に、クルーズ機能を作動させるよう切り替えると、その切り替え直後には、スロットル弁を所定以上の速さで閉弁作動させたりシフトダウンさせたりすることが自動で為される可能性が高い。つまり、減速度が第1所定値TH1以上となる可能性が高い。また、クルーズ機能を作動させている最中に設定車速を低下させると、その直後においても、スロットル弁を所定以上の速さで閉弁作動させたりシフトダウンさせたりすることが自動で為される可能性が高い。つまり、減速度が所定値TH1以上となる可能性が高い。
【0065】
この点を鑑みた本実施形態では、図2のステップS13の判定処理において、クルーズ機能を停止状態から作動状態に切り替えたこと、クルーズ機能作動中に乗員が設定車速を低下させるように操作したこと、シフトダウンが為されたこと、スロットル弁が急速閉弁作動したこと、の少なくとも1つの条件が成立した場合に、ステップS14,S15による最大減速度の算出(予測)を開始する。
【0066】
以上により、本実施形態によれば、クルーズ機能を停止状態から作動状態に切り替えたこと、或いは前記設定車速を低下させたことを条件として最大減速度の算出(予測)を開始するので、当該予測を車両走行中に常時実施する場合に比べて、予測のための演算処理負荷を軽減できる。
【0067】
(第3実施形態)
図2の処理では、算出した最大減速度の値が第2所定値TH2未満となったことを条件としてブレーキランプ27を消灯させている。これに対し、本実施形態では、最大減速度の値が第2所定値TH2未満となっているか否かに拘わらず、図2の処理によりブレーキランプ27を点灯させた場合には、ブレーキランプ27の点灯を所定時間以上継続させる。これによれば、ブレーキランプ27が短時間で点灯と停止を繰り返すハンチングの状態に陥ることを回避できる。
【0068】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0069】
・図1に示す車両20は4輪車であるが、2輪車に本発明を適用させてもよい。2輪車の場合は、4輪車に比べて車両重量あたりに対するエンジン出力が大きいため、エンジンブレーキによる減速度が大きい。また、減速走行中の2輪車を後続車両の運転手が目視した場合、自車両との車間距離の予測精度が4輪車の場合に比べて悪い。これらのことから、本発明を2輪車に適用させれば、「迅速なブレーキランプ27の点灯作動」といった本発明による効果が好適に発揮される。
【0070】
さらに、2輪車は4輪車に比べ搭載スペースに限りがあるため、特許文献2等に記載の減速度センサを車両に搭載させることは難しい。そのため、本発明を2輪車に適用させれば、「減速度センサを要することなく減速度を予測できる」といった本発明による効果が好適に発揮される。
【0071】
・図1に示す変速装置23は、運転者の手動操作により変速比を切り替える手動変速装置(MT)であるが、ECU10により変速比を自動で切り替える自動変速装置(AT)であってもよい。また、自動変速装置は、所定の変速比に段階的に切り替える構造の装置でもよいし、変速比を連続的に無段階に変化させる装置であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
23…変速装置、27…ブレーキランプ、S11…負圧取得手段、S14…車速取得手段、S14…変速比取得手段、S15…減速度予測手段、S22…ブレーキランプ制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを駆動源として走行する車両に適用され、ブレーキ操作部材を操作していない時であってもエンジンブレーキが発揮されていればブレーキランプを点灯させるブレーキランプ制御装置において、
前記エンジンの出力を変速装置により変速して車輪に伝達させる際の、前記変速装置による変速比を取得する変速比取得手段と、
車速を取得する車速取得手段と、
前記エンジンの吸気管内の負圧を取得する負圧取得手段と、
前記変速比取得手段、前記車速取得手段および前記負圧取得手段により取得した現時点での変速比、車速および負圧に基づき、現時点以降における車速の最大減速度を予測する減速度予測手段と、
前記減速度予測手段により予測された前記最大減速度が所定値以上である場合に、前記ブレーキランプを点灯させるよう制御するブレーキランプ制御手段と、
を備えることを特徴とするブレーキランプ制御装置。
【請求項2】
前記減速度予測手段は、前記変速比を変化させたことを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする請求項1に記載のブレーキランプ制御装置。
【請求項3】
前記変速装置は、接続する変速ギアを切り替えることで変速比を段階的に切り替えるよう構成されたものであり、
前記減速度予測手段は、シフトダウンさせるよう前記変速ギアを切り替えるにあたり、前記変速ギアへの接続を完了する前の時点で、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする請求項2に記載のブレーキランプ制御装置。
【請求項4】
前記減速度予測手段は、吸気量を調整するスロットル弁が所定以上の速さで閉弁作動したことを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のブレーキランプ制御装置。
【請求項5】
前記車両は、吸気量を調整するスロットル弁および前記変速装置の作動を、自車両の車速が設定車速となるよう自動制御するクルーズ機能を備えており、
前記減速度予測手段は、車両走行中に前記クルーズ機能を停止状態から作動状態に切り替えたことを条件として、或いは前記設定車速を低下させたことを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のブレーキランプ制御装置。
【請求項6】
前記減速度予測手段は、前記負圧取得手段により取得した現時点での負圧が所定圧以上であることを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のブレーキランプ制御装置。
【請求項7】
前記減速度予測手段は、前記車速取得手段により取得した現時点での車速が所定速度以上であることを条件として、前記最大減速度の予測を開始することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のブレーキランプ制御装置。
【請求項8】
前記ブレーキランプ制御手段は、前記ブレーキランプを点灯させた場合、その点灯開始以降の最大減速度の予測値に拘わらず、前記ブレーキランプの点灯を所定時間以上継続させることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載のブレーキランプ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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