ブレーキ付き車椅子
【課題】この発明は車椅子の後輪にブレーキ部材によって円滑にブレーキをかけたり、ブレーキ状態を解除できるようにした車椅子を提供することにある。
【解決手段】座部5に前端部を支点として回動可能に載置される座クッション体15と、中途部が座クッション体の下面側に配置された作動ベルト25と、作動ベルトの両端部を車体1の両側の下方向に導くガイドローラ29と、作動ベルトの両端部を下方に向かって弾性的に引張りばね34と、一端が作動ベルトの末端に連結され他端が車体に回動可能に連結されていて、座クッション体が前端部を支点として回動して作動ベルトの両端部が上下方向に移動したときに回動する連結リンク36と、連結リンクの回動に連動して作動するよう設けられ連結リンクの回動方向によってブレーキ部材44を後輪から離してブレーキを解除する状態或いはブレーキ部材を後輪に圧接させてブレーキをかける状態に変位させる作動リンク機構45を具備する。
【解決手段】座部5に前端部を支点として回動可能に載置される座クッション体15と、中途部が座クッション体の下面側に配置された作動ベルト25と、作動ベルトの両端部を車体1の両側の下方向に導くガイドローラ29と、作動ベルトの両端部を下方に向かって弾性的に引張りばね34と、一端が作動ベルトの末端に連結され他端が車体に回動可能に連結されていて、座クッション体が前端部を支点として回動して作動ベルトの両端部が上下方向に移動したときに回動する連結リンク36と、連結リンクの回動に連動して作動するよう設けられ連結リンクの回動方向によってブレーキ部材44を後輪から離してブレーキを解除する状態或いはブレーキ部材を後輪に圧接させてブレーキをかける状態に変位させる作動リンク機構45を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は利用者が座部体から立ち上がったときに後輪の回転がブレーキ部材によって阻止されるブレーキ付き車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、介護用或いは身体が不自由な人が利用する車椅子は車体に前輪と後輪とが設けられ、この車体には背部及び座部が形成されている。上記車椅子は、利用者が上記座部に着座したならば、介護者が背部に設けられたハンドルを利用して押したり、或いは利用者が後輪の外側に設けられた補助輪を手で回転させることで走行させるようにしている。
【0003】
上記構成によると、利用者が座部から立ち上がって車椅子から降りるとき、車椅子が不用意に走行することがある。そこで、上記車椅子にブレーキ装置を設け、利用者が車椅子から降りる不使用時には、上記ブレーキ装置を作動させて車椅子が不用に走行するのを防止するということが行なわれている。
【0004】
上記ブレーキ装置としては、利用者が座部から立ち上がる前に操作して後輪の回転を阻止する手動式のものがある。しかしながら、手動式のブレーキ装置では利用者が操作を忘れるということがあるため、確実性に乏しいということある。
【0005】
そこで、最近では特許文献1に示されるように、利用者が座部から立ち上がったときに自動的に後輪の回転を阻止することができるブレーキ装置を備えた車椅子が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3139882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されたブレーキ装置は、椅子の座面に沿って着座バンド(作動ベルト)を掛け渡し、この着座バンドの左右両端部に車椅子の車輪に当接することでブレーキ作用を担うピストンロッドを取り付ける。上記ピストンロッドはロッドホルダに収容され、車椅子の幅方向に出没可能な状態となるよう、付勢手段によって突出方向に付勢される。
【0008】
そして、利用者が着座すると、着座バンドによってピストンロッドが付勢手段の付勢力に抗してロッドホルダ内に没入してブレーキ作用が解除され、利用者が立ち上がると、ピストンロッドが付勢手段の付勢力によって突出して車輪に当接し、ブレーキ作用が生じるようになっている。
【0009】
このような構成によると、利用者が着座したとき、椅子の座面に沿って掛け渡された着座バンドは下方に向かって引張られるのに対し、ブレーキ作用を解除するピストンロッドは付勢手段の付勢力に抗して水平方向にスライドしてロッドホルダ内に没入する。
【0010】
つまり、上記着座バンドにより発生して上記ピストンロッドを引張る引張り力の方向と、このピストンロッドがロッドホルダ内に没入するスライド方向とが大きく異なる。そのため、利用者が着座したときに上記着座バンドによる上記ピストンロッドのスライドが円滑に行なわれず、ブレーキ作用が解除され難くなるということがある。
【0011】
また、椅子の座面に沿って着座バンドを掛け渡して設けると、利用者が椅子の座面に着座したときの上記着座バンドの撓み長さは座面と、この座面の上方に掛け渡される着座バンドとの高さの差によって定まることになる。
【0012】
しかしながら、着座バンドは利用者が座面に着座するときに臀部によって押し下げることができる高さでなければならないから、上記座面の高さに対して着座バンドの高さを十分に高くして掛け渡すことができない。つまり、座面に利用者が着座したときの着座バンドの撓み量を十分に長くすることができない。
【0013】
そのため、座面に利用者が着座したときの上記着座バンドによる上記ピストンロッドのスライド長さを大きくすることができないから、たとえば着座バンドが円滑に撓まないような場合にはピストンロッドが十分にスライドせず、ブレーキが確実に解除されないということが生じる。
【0014】
しかも、着座バンドの撓み量を十分に長くすることができないと、利用者が座面から立ち上がったときにピストンロッドが付勢手段の付勢力によって確実に作動し難くなるということがあるから、そのような場合にはブレーキの解除が円滑に行われ難くなるということになる。
【0015】
この発明は、利用者が座部体上の座クッション体に着座したり、立ち上がったりしたとき、作動ベルトによるブレーキ部材のスライドが円滑に行われるようにしたブレーキ付き車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、後輪の回転を阻止するブレーキ部材を備えたブレーキ付き車椅子であって、
背部及び両側に肘掛け部が設けられた座部を有する車体と、
この車体を走行可能に支持した前輪及び後輪と、
上記座部に前端部を支点として回動可能に設けられる座クッション体と、
中途部が上記座クッション体の下面側に配置される作動ベルトと、
上記肘掛け部に設けられ上記作動ベルトの両端部を上記車体の両側外方から下方向に導くガイド部と、
一端が上記作動ベルトの末端に連結され他端が上記車体の上記肘掛け部よりも下方の部分に連結されていて、上記作動ベルトの両端部を下方に向かって弾性的に引張る弾性部材と、
一端が上記作動ベルトの末端に連結され他端が上記車体に対して回動可能に連結されていて、上記座クッション体が前端部を支点として回動して上記作動ベルトの両端部が上下方向に移動したときにその移動によって回動する連結リンクと、
この連結リンクの回動に連動して作動するよう設けられ上記連結リンクの回動方向によって上記ブレーキ部材を上記後輪から離してブレーキを解除する状態或いは上記ブレーキ部材を上記後輪に当接させてブレーキをかける状態に変位させる作動リンク機構と
を具備したことを特徴とするブレーキ付き車椅子にある。
【0017】
上記ガイド部は、上記作動ベルトの両端部を車体の後方に向かう斜め下方の角度に導くとともに、上記連結リンクは上記作動ベルトの両端部を上記ガイド部とともに車体の後方に向かう斜め下方の角度で保持することが好ましい。
【0018】
上記ガイド部は、上記肘掛け部に上記車体の前後方向に沿って揺動可能に設けられたガイド体に形成されていることが好ましい。
【0019】
上記ガイド体は、上記肘掛け部に上記車体の前後方向に沿って揺動可能に設けられた揺動部材を有し、上記ガイド部は上記揺動部材に回転可能に設けられたガイドローラであることが好ましい。
【0020】
上記ガイド体は、上記肘掛け部に設けられた揺動部材を有し、この揺動部材には上記作動ベルトの両端部を上記車体の後方に向かう斜め下方に導くことができる通孔が形成されていることが好ましい。
【0021】
上記作動リンク機構は、上記車体の側部に回動可能に設けられて上記連結リンクの他端部が連結された作動レバー及びこの作動レバーを上記車体の前後方向に回動させることで作動して上記ブレーキ部材を上記後輪に対して当接する方向及び離反する方向に変位させる複数の作動リンクを有し、
上記連結リンクは中途部で折り畳み可能な構造になっていて、上記ブレーキ部材が上記後輪に当接した状態で上記連結リンクを折り畳むことで、上記作動レバーが上記ブレーキ部材を上記後輪から離す方向に回動させることができることが好ましい。
【0022】
上記作動リンク機構は、上記車体の側部に回動可能に設けられた作動レバー、この作動レバーを上記車体の前後方向に回動させることで作動して上記ブレーキ部材を上記後輪に対して当接する方向及び離反する方向に変位させる複数の作動リンク及び先端に接触部材が設けられ上記連結リンクの他端に取付けられた押圧片を有し、
上記座クッション体が倒伏した状態から前端部を支点として上昇する方向に回動し、上記連結リンクが上記座クッション体の回動に連動して一端が下降する方向に回動したとき、上記接触部材が上記作動レバーの下端部に当接してこの作動レバーが回動し、上記ブレーキ部材が上記後輪に当接してこの後輪をロックすることが好ましい。
【0023】
上記押圧片は、上記連結リンクの他端に弾性的に回動可能に設けられていることが好ましい。
【0024】
上記接触部材は、上記座クッション体が倒伏しているときには上記作動レバーの下端部から離間し、上記座クッション体が前端部を支点として後端部が上昇する方向に回動したときに上記作動レバーの下端部に当接するようになっていることが好ましい。
【0025】
上記座クッション体は、先端部が上記座部体に回動可能に連結されていて、後端部には上記座クッション体に加わる荷重が除去されたときに、上記座クッション体が上記座部体上で先端部を支点として回動上昇不能に保持することができる保持部材が設けられていることが好ましい。
【0026】
上記連結リンクの一端部には下方に向かって屈曲した連結部が設けられ、この連結部には上記作動ベルトの両端部に設けられた連結具が選択的に取付けられる複数の連結孔が上下方向に沿って設けられていることが好ましい。
【0027】
上記座クッション体は、硬質な板材が収容された基部と、弾性材が収容され上記基部の上面に着脱可能に設けられるクッション部とによって構成されていることが好ましい。
【0028】
上記座クッション体の下面の上記作動ベルトに対応する部分には、上記座クッション体の下面が上記作動ベルトによって直接擦られるのを防止する補強テープが設けられることが好ましい。
【0029】
上記座クッション体の上面には、利用者が着座する部分を視認できる彩分け部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、中途部が座クッション体の下面側に配置された作動ベルトの両端部を、肘掛け部に設けられたガイド体のガイド部から車体の下方向に導き、上記作動ベルトの変位によって連結リンクを介して作動リンク機構を作動させることで、ブレーキ部材による後輪のブレーキ状態を解除したり、ブレーキをかけることができるようにした。
【0031】
そのため、座部に前端を支点として回動可能に設けられた座クッション体に利用者が着座して上記作動ベルトがその両端に連結された弾性部材の復元力に抗して引張られたとき、或いは座クッション体から利用者が立ち上がって上記弾性部材の復元力によって上記作動ベルトが引張られたとき、上記作動ベルトの移動方向を上記座クッション体の回動方向に近づけることができる。
【0032】
上記作動ベルトの移動方向が上記座クッション体の回動方向に近くなると、上記作動ベルトが上記ガイド体のガイド部に沿って円滑に移動し、その移動に上記ブレーキ部材が連動するため、このブレーキ部材によるブレーキの解除やブレーキ動作を円滑に行なうことが可能となる。
【0033】
しかも、作動ベルトの変位を連結リンクを介して作動リンク機構に伝達し、この作動リンク機構の作動によってブレーキ部材を変位させるため、ブレーキ部材を確実に作動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す車椅子の斜視図。
【図2】車椅子の座部を上方から見た斜視図。
【図3】座部のシート及びこのシートに着脱可能に設けられる座クッション体を分解して示す側面図。
【図4】ガイド体の断面。
【図5】座クッション体が回動上昇した状態を示す車椅子の側面図。
【図6】座クッション体が回動上昇したときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図7】座クッション体がほぼ水平に倒伏した状態を示す車椅子の側面図。
【図8】座クッション体がほぼ水平に倒伏したときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図9】座クッション体がほぼ水平に倒伏した状態で連結リンクを屈曲させた状態を示す車椅子の側面図。
【図10】座クッション体がほぼ水平に倒伏したときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図11】この発明の第2の実施の形態を示す座クッション体が回動上昇して後輪がブレーキ部材によってロックされたときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図12】座クッション体が回動上昇した状態でブレーキ部材による後輪のロック状態が解除されたときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図13】座クッション体が水平状態に倒伏した状態でブレーキ部材による後輪のロック状態が解除されたときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図14】この発明の第3の実施の形態を示すガイド体の正面図。
【図15】この発明の第4の実施の形態を示す車椅子の作動ベルト及び作動リンク機構の部分の拡大図。
【図16】この発明の第5の実施の形態を示す座クッション体の縦断面図。
【図17】この発明の第6の実施の形態を示す座クッション体の下面図。
【図18】同じく側面図。
【図19】この発明の第7の実施の形態を示す座クッション体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図10はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1はブレーキ付き車椅子を示す斜視図であって、この車椅子は車体1を備えている。この車体1はパイプ材によって形成された一対の側部フレーム2を所定間隔で連結して構成されていて、これら側部フレーム2間には布製のシート3が張設されている。それによって、上記車体1には背部4及び座部5が形成されている。さらにこの座部5の両側には肘掛け部6が形成されている。
【0036】
なお、上記シート3は上記背部4に設けられた部分と、上記座部5に設けられた部分とが上記背部4の下端と上記座部5の後端の部分とで分断されている。
【0037】
上記車体1の両側後端部には一対の後輪8(一方のみ図示)が回転可能に設けられ、この後輪8の外面には後輪8よりの小径な補助輪9が一体的に設けられている。さらに、車体1の両側前端部には一対の前輪11が水平軸線及び垂直軸線を中心にして回転可能に設けられている。それによって、上記車椅子は走行可能及び方向変換可能となっている。
【0038】
なお、上記背部4の上端部は後方に向かって屈曲されていて、この屈曲部分には上記後輪8に対して手動でブレーキを掛けるためのブレーキハンドル12が設けられている。さらに、上記車体1の上記座部5の前端側の下端部両側には利用者が座部5に着座したときに足を載せるための足載せ板13が車体1の幅方向に回動可能に設けられ、幅方向内方に倒したときに水平な状態で保持できるようになっている。
【0039】
上記座部5には図3に示すように硬質な板材15aの上面に比較的硬質なウレタンフォームなどの弾性材15bを重合し、これらを外装地15cによって被覆して形成された座クッション体15が載置されている。
【0040】
図3は座部5を示す側面図であって、この座部5に載置される上記座クッション体15の先端側には折り曲げ可能な材料、たとえば布地などによって形成された第1の保持片16の一端が上記座クッション体15の幅方向全長にわたって連結されている。
【0041】
上記第1の保持片16の他端の内面には布製の第1のファスナ17が設けられている。そして、上記第1の保持片16の他端部は上記座部5のシート3の下面側に折り曲げられることで、上記第1のファスナ17が上記座部5の下面の前端部に設けられた第2のファスナ18に着脱可能に係着される。
【0042】
それによって、上記座クッション体15は、上記座部5の上面で上記第1の保持片16を屈曲させながら、先端部を支点として後端側が上昇する方向に回動できるようになっている。
【0043】
なお、上記座クッション体15の後端には第2の保持片21の一端が連結されている。この第2の保持片21の他端の内面には布製の第3のファスナ22が設けられている。この第3のファスナ22は上記座部5の下面の後端部に設けられた第4のファスナ23に着脱可能に係着させることができる。第3のファスナ22を第4のファスナ23に係着させれば、上記座クッション体15は上記座部5の上面で回動不能に保持されることになる。
【0044】
上記第3のファスナ22は、通常、上記座クッション体15が上記座部5の上面で回動可能となるよう、上記第4のファスナ23に係着させずに、上記座クッション体15の下面の後端部に設けられた第5のファスナ24に係着させて保持されている。
【0045】
図2に示すように、上記座部5の上面で、上記座クッション体15の下面側には帯状の作動ベルト25の中途部が配置されている。この作動ベルト25の両端部は上記肘掛け部6の下面に設けられたガイド体26に支持されて車体1の幅方向両側から下方に向かって導出されている。
【0046】
上記ガイド体26は、図4乃至図10に示すように上記肘掛け部6に支軸27によって車体1の前後方向に沿って回動可能に設けられた揺動部材28を有する。この揺動部材28は図4に示すように断面形状が逆U字状をなしていて、その両側間にはガイド部を構成するガイドローラ29が支軸31によって回転可能に支持されている。
【0047】
上記ガイドローラ29は、軸方向の両端に鍔29aが設けられ、一対の鍔29a間の長さ寸法は上記作動ベルト25の幅寸法と同等或いはわずかに大きく設定されている。それによって、上記作動ベルト25は上記ガイドローラ29を回転させながら上記一対の鍔29a間から外れることなく、円滑に移動することができるようになっている。
【0048】
なお、上記作動ベルト25の上記座部5上に載置された中途部には、図2に示すように作動ベルト25の長さを調整する長さ調整部材32が設けられている。それによって、上記作動ベルト25の長さを、たとえば座部5の幅寸法などに応じて設定できるようになっている。
【0049】
上記作動ベルト25の、上記ガイドローラ29に係合して車体1の幅方向外方に導出された両端部の末端には連結具33が取り付けられている。この連結具33と、上記車体1の側部フレーム2の上記肘掛け部6よりも下方の部分とには弾性部材としてのばね34が張設されている。
【0050】
上記ばね34は、その復元力によって上記作動ベルト25の上記ガイドローラ29にガイドされた両端部、つまりガイドローラ29から車体1の幅方向両側外方に導出された導出部分25aを車体1の上下方向の下方に向かって付勢している。
【0051】
それによって、上記作動ベルト25の上記座部5上に配置された中途部は上方に向かって変位させられるから、その変位によって座部5上に設けられた座クッション体15は、図5と図6に示すように前端を支点として後端が上昇する方向に回動させられている。
【0052】
図5乃至図10に示すように、上記作動ベルト25の両端に設けられた連結具33は連結リンク36の一端に回動可能に連結されている。この連結リンク36の他端には短管37が設けられ、この短管37には作動レバー38が連結されている。
【0053】
上記作動レバー38の下端部は、上記側部フレーム2の上記座部5よりも下方の部分に固着されたプレート39に支軸41によって回動可能に取り付けられている。それによって、上記連結リンク36の他端は上記作動レバー38を介して上記プレート39、つまり車体1に間接的に回動可能に連結されていることになる。
【0054】
上記作動レバー38の下端には第1の作動リンク42の一端が枢着され、この第1の作動リンク42の他端にはV字状の第2の作動リンク43の一端が枢着されている。この第2の作動リンク43の他端は上記プレート39に枢着されている。
【0055】
上記第2の作動リンク43の屈曲部には軸状のブレーキ部材44の一端が連結固定されている。このブレーキ部材44は他端部が上記後輪8の外周面に対向するよう軸線を車体1の幅方向に沿わせて設けられている。
【0056】
この実施の形態では、上記プレート39、上記第1の作動リンク42、上記第2の作動リンク43及び上記作動レバー38の一部とで作動リンク機構45を構成している。
【0057】
図6に示すように、上記ばね34の復元力によって上記作動ベルト25の導出部分25aが矢印Lで示す車体1の下方向に引張られた状態にあるとき、上記座クッション体15は前端を支点として後端が上昇する状態に回動するとともに、上記連結リンク36は矢印Dで示すように上記連結具33に連結された一端が下方へ変位する方向に回動する。
【0058】
それによって、上記作動レバー38は矢印Rで示すように車体1の後方に向かって回動するから、その回動によって上記第2の作動リンク43の屈曲部に突設されたブレーキ部材44が後輪8の外周面に圧接するよう変位する。
【0059】
上記座クッション体15に利用者が着座すると、この座クッション体15は図7と図8に示すように利用者の荷重によって後端が上昇した状態から前端を支点として倒伏する方向へ回動する。座クッション体15が倒伏方向へ回動すると、この座クッション体15の下面側に配置された上記作動ベルト25の中途部が押し下げられるから、この作動ベルト25のばね34に連結された導出部分25aがこのばね34の復元力に抗して図8に矢印Uで示す上昇方向に変位する。
【0060】
上記作動ベルト25の両端が上昇すると、その上昇に上記連結リンク36が連動して回動する。つまり、上記連結リンク36は作動ベルト25の末端に連結された一端が矢印Fで示す上昇方向に回動する。
【0061】
それによって、上記作動レバー38が先程と逆方向である、矢印Bで示す車体1の前方に向かって回動するから、その回動に第1、第2の作動リンク42,43が連動し、第2の作動リンク43の屈曲部に設けられたブレーキ部材44が図8に示すように後輪8の外周面から離れる方向に変位する。つまり、後輪8のブレーキが解除されることになる。
【0062】
上記連結リンク36は、図6に示すように座クッション体15が上昇方向に回動した状態、及び図8に示すように倒伏状態に回動した状態のいずれであっても、上記作動ベルト25の上記ガイドローラ29から車体1の幅方向外方に導出された導出部分25aが車体1の後方に向かって斜め下方に傾斜した状態で保持する長さ寸法に設定されている。
【0063】
上記作動ベルト25の上記導出部分25aが車体1の後方に向かって斜め下方に傾斜することで、この導出部分25aが係合したガイドローラ29を有するガイド体26の揺動部材28も、上記導出部分25aと同方向に揺動している。
【0064】
つまり、上記ガイド体26は支軸27によって車体1に揺動可能に支持されているため、上記作動ベルト25の上記ガイド体26からの上記導出部分25aが車体1の下方に向かって導出されるとともに、車体1の斜め下方に向かった傾斜することになる。
【0065】
それによって、上記導出部分25aの傾斜角度は、上記ガイド体26のガイドローラ29から垂直方向下方に向かって導出している場合に比べ、上記座部5の上面で先端を支点として後端が上昇する方向或いは下降する方向に回動する上記座クッション体15の回動角度に近づくことになる。
【0066】
上記導出部分25aの傾斜角度が上記座クッション体15の回動角度に近づけば、上記座クッション体15が回動したときに、上記導出部分25aが車体1の前後方向に引張られる度合が少なくなる。
【0067】
それによって、上記作動ベルト25はガイドローラ29を回転させながら円滑に移動することになる。つまり、作動ベルト25はガイドローラ29上で軸方向にずれ動いて円滑に移動しなくなるのが防止される。
【0068】
上記連結リンク36は第1のリンク片36aと第2のリンク片36bとが支軸46によって枢着されている。上記第1のリンク片36aの端部には係止ピン47が突設され、上記第2のリンク片36bの上記係止ピン47側の端部には、この係止ピン47に係合する凹部48が形成されている。
【0069】
上記連結リンク36は上記係止ピン47が上記凹部48に係合していることで、への字状の形状が維持されている。図7と図8に示すように、利用者が着座することで、座クッション体15が倒伏して上記ブレーキ部材44が後輪8から離れた状態にあるとき、上記作動レバー38を車体1の後方に向かって回動させることで、図9と図10に示すように第2のリンク片36bの凹部48が第1のリンク片36aの係止ピン47から外れて上記第2のリンク片36bが上方へ回動するから、連結リンク36が下方に向かって凸状である、V字状に屈曲する。
【0070】
つまり、利用者が座クッション体15に着座した状態で、上記作動レバー38を車体1の後方に向かって回動させることができるから、その回動によって第1、第2の作動リンク42,43が作動してブレーキ部材44を後輪8に圧接させてブレーキをかけることができる。すなわち、利用者が座部5に着座しているときに、ブレーキをかけて車椅子を走行不能にすることができる。
【0071】
なお、ガイド体26を肘掛け部6に揺動可能に設けることで、上記作動ベルト25の上記導出部分25aとともに上記ガイド体26が揺動するようにしているが、上記ガイド体26を上記肘掛け部6に予め所定の角度で傾斜した状態で固定的に設けることで、上記導出部分25aを車体1の後方に向かって斜めに傾斜した状態で保持するようにしてもよい。つまり、連結リンク36の長さ寸法の設定によって上記導出部分25aを車体1の後方に向かって斜めに傾斜した状態で保持することができる。
【0072】
このように構成された車椅子によれば、座部5に利用者が着座していないときには、作動ベルト25の両端部がばね34の張力によって引張られることで、座クッション体15が図6に示すように先端を支点として後端が上昇している。このとき、ブレーキ部材44は後輪8の外周面に圧接し、車椅子は走行不能な状態にある。
【0073】
利用者が回動上昇した座クッション体15に着座すると、この座クッション体15は図8に示すように利用者の荷重によって水平方向に倒伏する。それによって、作動ベルト25の導出部分25aはばね34の復元力に抗して上昇方向に移動するから、この作動ベルト25の導出部分25aによって連結リンク36は一端が上昇する方向Fに回動する。
【0074】
上記連結リンク36が上昇方向Fに回動すると、その回動によって第1、第2の作動リンク42,43が作動するから、第2の作動リンク43に設けられたブレーキ部材44が後輪8の外周面から離れ、この後輪8のブレーキが解除される。それによって、車椅子は走行可能な状態となる。
【0075】
回動上昇した座クッション体15に利用者が着座してこの座クッション体15が倒伏方向に回動するとき、上記作動ベルト25の導出部分25aは、作動ベルト25の末端に設けられた連結具33に連結された連結リンク36によって車体1の後方に向かって斜め下方に傾斜した角度で保持された状態で、肘掛け部6に設けられたガイド体26のガイドローラ29に沿って移動する。このとき、ガイド体26は作動ベルト25の移動方向に対してガイドローラ29の軸線が直交する角度になるよう揺動する。
【0076】
したがって、座クッション体15が前端を支点として回動するとき、この座クッション体15の回動方向と作動ベルト25の導出部分25aの移動方向Uとがほぼ同じ方向になるから、上記座クッション体15の回動によって移動する作動ベルト25に移動方向と交差する幅方向に力が加わり難くなるから、この作動ベルト25がガイドローラ29上で軸方向にずれ動き難くなり、その移動が円滑に行なわれることになる。
【0077】
なお、上記作動ベルト25の導出部分25aを、上記ガイドローラ29及び上記作動ベルト25の末端に設けられた連結具33に連結された連結リンク36によって車体1の後方に向かう斜め下方に傾斜した角度で導くようにしたが、上記導出部分25aを単に車体1のした方向に導くようにするだけであっても、座クッション体15が回動したときに上記作動ベルト25の上記ガイドローラ29上での移動を比較的円滑に行なうことができる。
【0078】
作動ベルト25の移動が円滑に行なわれることで、連結リンク36を介して第1、第2の作動リンク42,43も円滑に作動するから、ブレーキ部材44によるブレーキ状態の解除も円滑に行われることになる。
【0079】
水平に倒伏した座クッション体15から利用者が立ち上がって、この座クッション体15が図6に示すように前端を支点として回動上昇するときも、図8に示すように座クッション体15を倒伏させるときと同様、作動ベルト25の移動が円滑に行なわれるから、そのときには上記ブレーキ部材44によって後輪8にブレーキを確実かつ円滑に作動させることができる。
【0080】
上記作動ベルト25の末端の連結具33と上記作動レバー38とを連結した上記連結リンク36は中途部で屈曲可能な構造となっている。そのため、図10に示すように、利用者が座部5に着座して座クッション体15が水平に倒伏した状態で、作動レバー38を車体1の後方に回動させることで、上記連結リンク36を屈曲させることができる。
【0081】
それによって、利用者が座部5上の座クッション体15上に着座した状態で、回転可能な状態にある後輪8の外周面にブレーキ部材44を圧接させてブレーキをかけることができる。
【0082】
したがって、利用者が着座した状態であっても、たとえば介護者が車椅子から離れるような場合や車椅子を置いておくような場合に、この車椅子が走行しないようにブレーキをかけることができる。
【0083】
なお、上記第1の実施の形態において、図示はしないが、作動レバー38を回動操作するワイヤを車体1の背部4側に導き、その部分で操作ハンドルによって押し引き操作できるようにしてもよい。それによって、介護者が車体1を取り扱う場合に、上記操作レバー38の操作を介護者が容易に操作することが可能となる。
【0084】
図11乃至図13は、作動リンク機構の変形例を示すこの発明の第2の実施の形態である。なお、第1の実施の形態と同一部分には同一記号を付して説明を省略する。
【0085】
図11に示すように、第2の実施の形態の作動リンク機構45Aは一端が作動ベルト25の導出部分25aの連結具33に枢着された連結リンク136を有する。この連結リンク136の他端部は上方に向かって屈曲された屈曲部136aが形成されている。
【0086】
上記屈曲部136aの部分が車体1の座部5の下面に板面を垂直にして設けられたプレート39に支軸51によって枢着されている。上記連結リンク136の上記屈曲部136aの先端部には押圧片52の一端がトーションバーからなる支軸52aによって矢印Sで示す方向に弾性的に付勢されて設けられている。上記押圧片52の他端には接触部材としてのローラ53が回転可能に支持されている。
なお、押圧片52は上記屈曲部136aの先端部に固定して設けるようにしてもよい。
【0087】
上記プレート39に作動レバー38の下端部が支軸41によって枢着されていること、この作動レバー38の下端部に第1の作動リンク42の一端が枢着され、他端にV字状の第2の作動リンク43の一端が枢着されていること、この第2の作動リンク43の他端が上記プレートに枢着されていること、及び第2の作動リンク43の屈曲部に軸状のブレーキ部材44の一端が連結固定されていることは、上記第1の実施の形態と同じ構成である。
【0088】
なお、上記作動レバー38と上記連結リンク136はともに上記プレート39に回動可能に連結されているが、上記第1の実施の形態のように上記作動レバー38の下端は上記連結リンク136の他端に連結されてはいない。
【0089】
そして、図11に示すように利用者が立って座クッション体15が上昇して上記作動レバー38が矢印R方向に回動しているとき、上記ブレーキ部材44が後輪8の外周面に当接して後輪8の回転をロックしている。
【0090】
さらに、押圧片52に設けられたローラ53が上記作動レバー38の下端部の上斜面38aと下斜面38bのうちの、上斜面38aに弾性的に当接し、上記作動レバー38が矢印R方向と反対側に自由に戻るのを阻止している。つまり、上記押圧片52は上記ブレーキ部材44による後輪8のロック状態を弾性的に保持している。
【0091】
このような構成によると、図13に示す利用者が着座して座クッション体15が水平に倒伏した状態から、座クッション体15から利用者が立ち上がると、図11に示すように作動ベルト25の両端部がばね34によって下方に引張られるから、座クッション体15が前端を支点として後端が上昇する方向に回動する。
【0092】
それによって、上記連結リンク136は図13から図11に示すように作動ベルト25に連結された一端が下降する方向に回動するから、上記連結リンク136の他端に設けられた押圧片52のローラ53が上記作動レバー38の下端部の上斜面38aに弾性的に当たる。
【0093】
上記ローラ53が上記作動レバー38の下端部の上斜面38aに弾性的に当たると、上記作動レバー38が図11に矢印Rで示す方向に回動するから、この作動レバー38の回動によって上記第1,第2の作動リンク42,43が作動してブレーキ部材44が後輪8の外周面に当接し、この後輪8の回転をロックすることになる。
【0094】
図12は、利用者が座クッション体15から立ち上がって後輪8がロックされた図11に示す状態から、上記作動レバー38を矢印Rと逆方向である、図12に矢印N方向に回動させた状態を示す。
【0095】
上記作動レバー38を矢印N方向に回動させると、その回動に第1、第2の作動リンク42,43が連動し、上記ブレーキ部材44が後輪8の外周面から離れるから、後輪8のロック状態が解除される。このとき、押圧片52のローラ53は上記作動レバー38の下端部の上斜面38aから下斜面38bに移行して上記作動レバー38を弾性的に保持し、この作動レバー38が矢印N方向と逆方向に自由に回動するのを阻止する。つまり、後輪8のロック解除状態が維持される。
【0096】
図13は、図12に示すように座クッション体15の後端側が上昇した状態で、利用者が座クッション体15に着座した状態を示す。利用者が座クッション体15に着座すると、作動ベルト25の両端側の導出部分25aがばね34の復元力に抗して上方へ引張られる。
【0097】
それによって、連結リンク136は、支軸51を支点として連結具33に連結された一端側が上昇する方向に回動する。このとき、上記作動レバー38は、すでに上記ブレーキ部材44による後輪8のロック状態を解除するよう矢印N方向に回動させられている。
【0098】
そのため、上記作動レバー38は上記連結リンク136の回動に連動して回動することはないが、押圧片52のローラ53は上記連結リンク136の回動によって上記作動レバー38の下端部の下斜面38bから離れることになる。
【0099】
一方、図11に示すように後輪8がブレーキ部材44によってロックされ、しかも座クッション体15の後端側が上昇した状態において、利用者が着座して上記座クッション体15が倒伏方向に回動すると、連結リンク136の一端が上昇する方向に回動するとともに、この回動に第1、第2の作動リンク42,43が連動して回動する。
【0100】
それによって、作動レバー38は図11に示す状態から矢印R方向と逆方向に回動して図13に示すように後輪8の上記ブレーキ部材44によるロック状態が解除されることになる。
【0101】
図13に示す利用者が着座した状態において、上記作動レバー38を図11に示す矢印R方向に回動すれば、その回動に第1、第2の作動リンク42,43が連動するから、上記ブレーキ部材44によって後輪8がロックされることになる。
【0102】
すなわち、第2の実施の形態に示す構成の作動リンク機構45Aであっても、第1の実施の形態と同様、後輪8のロックやロック状態の解除を行なうことができる。
【0103】
図14はこの発明の第3の実施の形態のガイド体26の変形例を示す。この実施の形態では、ガイド体26にガイドローラ29を設ける代わりに、ガイド体26の揺動部材28に作動ベルト25を挿通する扁平状で、作動ベルト25と接触する面が凸状の円弧面に形成された通孔61を設けるようにしている。
【0104】
なお、ガイド体26の揺動部材28に通孔61を形成する場合、このガイド体26を肘掛け部6に揺動可能に設けてもよいし、上記通孔61が車体1の後方に向かって所定の角度で高くなるよう傾斜した状態で固定して設けてもよい。
【0105】
また、図示はしないが、車体1に揺動部材28を設けずに、肘掛け部6に通孔を形成し、その通孔に作動ベルト25を挿通するようにしてもよい。その場合、上記通孔を車体1の後方に向かって高くなるよう傾斜させて形成すれば、この通孔に挿通される作動ベルト25を斜め下降に向かう角度で導出することができる。
【0106】
また、第1の実施の形態において、ガイド体26にガイドローラ29を設けたが、ガイドローラ29に代わって作動ベルト25と接触する面が円弧面に形成されたガイド部材を設けるようにしてもよい。
【0107】
図15は第4の実施の形態を示す。この実施の形態では上記作動ベルト25の長さ調整を、図2に示す長さ調整部材32に代わって第2の実施の形態に示された作動ベルト25の両端に設けられた連結具33が連結される連結リング136によって行なえるようにしている。
【0108】
すなわち、上記連結リンク136の一端部には下方に向かって屈曲した連結部136aが形成されている。
【0109】
上記連結部136aには上下方向に複数、この実施の形態では3つの連結孔65a〜65cが形成されている。そして、上記連結具33は3つの連結孔65a〜65cのうちの1つにピン66によって選択的に連結される。なお、ピン66に代わりねじであってもよい。
【0110】
この実施の形態では、上記連結具33は3つの連結孔65a〜65cのうち、最上段の連結孔65aに連結されている。それによって、上記作動ベルト25を最も長い状態で使用することができる。上記連結具33を最下段の連結孔65cに連結すれば、上記作動ベルト25を最も短い状態で使用することができる。
【0111】
すなわち、座部5の幅寸法や作動ベルト25に与えるテンションなどに応じて、上記作動ベルト25の長さを、上記連結リング136の屈曲部136aに設けられた3つの連結孔65a〜65cによって設定できるようになっている。
【0112】
図16は座クッション体の変形例を示すこの発明の第5の実施の形態である。この実施の形態に示された座クッション体115は硬質な板材71が外装地72によって被覆された基部73と、弾性材74が外装地75によって被覆されたクッション部76とが布製テープ(図示せず)によって着脱可能に積操作れている。
【0113】
それによって、使用にともないクッション部76にへたりが生じた場合、このクッション部76を基部73から取り外して交換することができるようになっている。
【0114】
図17と図18は座クッション体の変形例を示すこの発明の第6の実施の形態である。この実施の形態では座クション体15の下面の作動ベルト25に当たる部分に、この作動ベルト25と同じ或いは少し大きめの幅寸法を有する補強テープ81を面状ファスナ(図示せず)によって着脱可能に設けるようにしている。
【0115】
それによって、座クション体15の下面が作動ベルト25によって擦られても、その下面が損傷するのを防止するようにしている。そして、長期の使用によって上記補強テープ81が傷んだならば、この補強テープ81を交換することができる。
【0116】
なお、座クション体15の下面に作動ベルト25を面状ファスナによって着脱可能に設ける場合、オス側とメス側の面状ファスナのうち、オス側の面状ファスナを補強テープ81に設け、メス側の面状ファスナを座クション体15の下面に設けるようにする。
【0117】
メス側の面状ファスナはループ状であり、フック状のオス側の面状ファスナに比べて柔らかい。そのため、補強テープ81が正規の取付け位置からずれて座クション体15の下面に取付けられることで、メス側の面状ファスナが補強テープ81から露出しても、メス側の面状ファスナによって作動ベルト25や座部5を傷めるのを防止できる。
【0118】
図19は座クッション体の変形例を示すこの発明の第7の実施の形態である。この実施の形態では、座クッション体15の上面には、後端側の角部2箇所と、それ以外との部分が識別できるよう色分けされている。たとえば、後端側の角部2箇所は黄色の第1の色分け部15aに形成され、他の部分は黒色の第2の色分け部15bとなっている。
【0119】
それによって、とくに老人などの利用者が着座するとき、臀部を第2の色分け部15bに載るよう着座するよう視覚的に認識できるから、第1の色分け部15aである、座クッション体15の上面の後端側の角部に着座し、不安定な状態となるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
1…車体、4…背部、5…座部、8…後輪、15…座クッション体、25…作動ベルト、26…ガイド体、28…揺動部材、29…ガイドローラ、36…連結リンク、36a…第1のリンク片、36b…第2のリンク片、38…作動レバー、42…第1の作動リンク、43…第2の作動リンク、44…ブレーキ部材。
【技術分野】
【0001】
この発明は利用者が座部体から立ち上がったときに後輪の回転がブレーキ部材によって阻止されるブレーキ付き車椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、介護用或いは身体が不自由な人が利用する車椅子は車体に前輪と後輪とが設けられ、この車体には背部及び座部が形成されている。上記車椅子は、利用者が上記座部に着座したならば、介護者が背部に設けられたハンドルを利用して押したり、或いは利用者が後輪の外側に設けられた補助輪を手で回転させることで走行させるようにしている。
【0003】
上記構成によると、利用者が座部から立ち上がって車椅子から降りるとき、車椅子が不用意に走行することがある。そこで、上記車椅子にブレーキ装置を設け、利用者が車椅子から降りる不使用時には、上記ブレーキ装置を作動させて車椅子が不用に走行するのを防止するということが行なわれている。
【0004】
上記ブレーキ装置としては、利用者が座部から立ち上がる前に操作して後輪の回転を阻止する手動式のものがある。しかしながら、手動式のブレーキ装置では利用者が操作を忘れるということがあるため、確実性に乏しいということある。
【0005】
そこで、最近では特許文献1に示されるように、利用者が座部から立ち上がったときに自動的に後輪の回転を阻止することができるブレーキ装置を備えた車椅子が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3139882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示されたブレーキ装置は、椅子の座面に沿って着座バンド(作動ベルト)を掛け渡し、この着座バンドの左右両端部に車椅子の車輪に当接することでブレーキ作用を担うピストンロッドを取り付ける。上記ピストンロッドはロッドホルダに収容され、車椅子の幅方向に出没可能な状態となるよう、付勢手段によって突出方向に付勢される。
【0008】
そして、利用者が着座すると、着座バンドによってピストンロッドが付勢手段の付勢力に抗してロッドホルダ内に没入してブレーキ作用が解除され、利用者が立ち上がると、ピストンロッドが付勢手段の付勢力によって突出して車輪に当接し、ブレーキ作用が生じるようになっている。
【0009】
このような構成によると、利用者が着座したとき、椅子の座面に沿って掛け渡された着座バンドは下方に向かって引張られるのに対し、ブレーキ作用を解除するピストンロッドは付勢手段の付勢力に抗して水平方向にスライドしてロッドホルダ内に没入する。
【0010】
つまり、上記着座バンドにより発生して上記ピストンロッドを引張る引張り力の方向と、このピストンロッドがロッドホルダ内に没入するスライド方向とが大きく異なる。そのため、利用者が着座したときに上記着座バンドによる上記ピストンロッドのスライドが円滑に行なわれず、ブレーキ作用が解除され難くなるということがある。
【0011】
また、椅子の座面に沿って着座バンドを掛け渡して設けると、利用者が椅子の座面に着座したときの上記着座バンドの撓み長さは座面と、この座面の上方に掛け渡される着座バンドとの高さの差によって定まることになる。
【0012】
しかしながら、着座バンドは利用者が座面に着座するときに臀部によって押し下げることができる高さでなければならないから、上記座面の高さに対して着座バンドの高さを十分に高くして掛け渡すことができない。つまり、座面に利用者が着座したときの着座バンドの撓み量を十分に長くすることができない。
【0013】
そのため、座面に利用者が着座したときの上記着座バンドによる上記ピストンロッドのスライド長さを大きくすることができないから、たとえば着座バンドが円滑に撓まないような場合にはピストンロッドが十分にスライドせず、ブレーキが確実に解除されないということが生じる。
【0014】
しかも、着座バンドの撓み量を十分に長くすることができないと、利用者が座面から立ち上がったときにピストンロッドが付勢手段の付勢力によって確実に作動し難くなるということがあるから、そのような場合にはブレーキの解除が円滑に行われ難くなるということになる。
【0015】
この発明は、利用者が座部体上の座クッション体に着座したり、立ち上がったりしたとき、作動ベルトによるブレーキ部材のスライドが円滑に行われるようにしたブレーキ付き車椅子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この発明は、後輪の回転を阻止するブレーキ部材を備えたブレーキ付き車椅子であって、
背部及び両側に肘掛け部が設けられた座部を有する車体と、
この車体を走行可能に支持した前輪及び後輪と、
上記座部に前端部を支点として回動可能に設けられる座クッション体と、
中途部が上記座クッション体の下面側に配置される作動ベルトと、
上記肘掛け部に設けられ上記作動ベルトの両端部を上記車体の両側外方から下方向に導くガイド部と、
一端が上記作動ベルトの末端に連結され他端が上記車体の上記肘掛け部よりも下方の部分に連結されていて、上記作動ベルトの両端部を下方に向かって弾性的に引張る弾性部材と、
一端が上記作動ベルトの末端に連結され他端が上記車体に対して回動可能に連結されていて、上記座クッション体が前端部を支点として回動して上記作動ベルトの両端部が上下方向に移動したときにその移動によって回動する連結リンクと、
この連結リンクの回動に連動して作動するよう設けられ上記連結リンクの回動方向によって上記ブレーキ部材を上記後輪から離してブレーキを解除する状態或いは上記ブレーキ部材を上記後輪に当接させてブレーキをかける状態に変位させる作動リンク機構と
を具備したことを特徴とするブレーキ付き車椅子にある。
【0017】
上記ガイド部は、上記作動ベルトの両端部を車体の後方に向かう斜め下方の角度に導くとともに、上記連結リンクは上記作動ベルトの両端部を上記ガイド部とともに車体の後方に向かう斜め下方の角度で保持することが好ましい。
【0018】
上記ガイド部は、上記肘掛け部に上記車体の前後方向に沿って揺動可能に設けられたガイド体に形成されていることが好ましい。
【0019】
上記ガイド体は、上記肘掛け部に上記車体の前後方向に沿って揺動可能に設けられた揺動部材を有し、上記ガイド部は上記揺動部材に回転可能に設けられたガイドローラであることが好ましい。
【0020】
上記ガイド体は、上記肘掛け部に設けられた揺動部材を有し、この揺動部材には上記作動ベルトの両端部を上記車体の後方に向かう斜め下方に導くことができる通孔が形成されていることが好ましい。
【0021】
上記作動リンク機構は、上記車体の側部に回動可能に設けられて上記連結リンクの他端部が連結された作動レバー及びこの作動レバーを上記車体の前後方向に回動させることで作動して上記ブレーキ部材を上記後輪に対して当接する方向及び離反する方向に変位させる複数の作動リンクを有し、
上記連結リンクは中途部で折り畳み可能な構造になっていて、上記ブレーキ部材が上記後輪に当接した状態で上記連結リンクを折り畳むことで、上記作動レバーが上記ブレーキ部材を上記後輪から離す方向に回動させることができることが好ましい。
【0022】
上記作動リンク機構は、上記車体の側部に回動可能に設けられた作動レバー、この作動レバーを上記車体の前後方向に回動させることで作動して上記ブレーキ部材を上記後輪に対して当接する方向及び離反する方向に変位させる複数の作動リンク及び先端に接触部材が設けられ上記連結リンクの他端に取付けられた押圧片を有し、
上記座クッション体が倒伏した状態から前端部を支点として上昇する方向に回動し、上記連結リンクが上記座クッション体の回動に連動して一端が下降する方向に回動したとき、上記接触部材が上記作動レバーの下端部に当接してこの作動レバーが回動し、上記ブレーキ部材が上記後輪に当接してこの後輪をロックすることが好ましい。
【0023】
上記押圧片は、上記連結リンクの他端に弾性的に回動可能に設けられていることが好ましい。
【0024】
上記接触部材は、上記座クッション体が倒伏しているときには上記作動レバーの下端部から離間し、上記座クッション体が前端部を支点として後端部が上昇する方向に回動したときに上記作動レバーの下端部に当接するようになっていることが好ましい。
【0025】
上記座クッション体は、先端部が上記座部体に回動可能に連結されていて、後端部には上記座クッション体に加わる荷重が除去されたときに、上記座クッション体が上記座部体上で先端部を支点として回動上昇不能に保持することができる保持部材が設けられていることが好ましい。
【0026】
上記連結リンクの一端部には下方に向かって屈曲した連結部が設けられ、この連結部には上記作動ベルトの両端部に設けられた連結具が選択的に取付けられる複数の連結孔が上下方向に沿って設けられていることが好ましい。
【0027】
上記座クッション体は、硬質な板材が収容された基部と、弾性材が収容され上記基部の上面に着脱可能に設けられるクッション部とによって構成されていることが好ましい。
【0028】
上記座クッション体の下面の上記作動ベルトに対応する部分には、上記座クッション体の下面が上記作動ベルトによって直接擦られるのを防止する補強テープが設けられることが好ましい。
【0029】
上記座クッション体の上面には、利用者が着座する部分を視認できる彩分け部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
この発明によれば、中途部が座クッション体の下面側に配置された作動ベルトの両端部を、肘掛け部に設けられたガイド体のガイド部から車体の下方向に導き、上記作動ベルトの変位によって連結リンクを介して作動リンク機構を作動させることで、ブレーキ部材による後輪のブレーキ状態を解除したり、ブレーキをかけることができるようにした。
【0031】
そのため、座部に前端を支点として回動可能に設けられた座クッション体に利用者が着座して上記作動ベルトがその両端に連結された弾性部材の復元力に抗して引張られたとき、或いは座クッション体から利用者が立ち上がって上記弾性部材の復元力によって上記作動ベルトが引張られたとき、上記作動ベルトの移動方向を上記座クッション体の回動方向に近づけることができる。
【0032】
上記作動ベルトの移動方向が上記座クッション体の回動方向に近くなると、上記作動ベルトが上記ガイド体のガイド部に沿って円滑に移動し、その移動に上記ブレーキ部材が連動するため、このブレーキ部材によるブレーキの解除やブレーキ動作を円滑に行なうことが可能となる。
【0033】
しかも、作動ベルトの変位を連結リンクを介して作動リンク機構に伝達し、この作動リンク機構の作動によってブレーキ部材を変位させるため、ブレーキ部材を確実に作動させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の第1の実施の形態を示す車椅子の斜視図。
【図2】車椅子の座部を上方から見た斜視図。
【図3】座部のシート及びこのシートに着脱可能に設けられる座クッション体を分解して示す側面図。
【図4】ガイド体の断面。
【図5】座クッション体が回動上昇した状態を示す車椅子の側面図。
【図6】座クッション体が回動上昇したときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図7】座クッション体がほぼ水平に倒伏した状態を示す車椅子の側面図。
【図8】座クッション体がほぼ水平に倒伏したときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図9】座クッション体がほぼ水平に倒伏した状態で連結リンクを屈曲させた状態を示す車椅子の側面図。
【図10】座クッション体がほぼ水平に倒伏したときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図11】この発明の第2の実施の形態を示す座クッション体が回動上昇して後輪がブレーキ部材によってロックされたときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図12】座クッション体が回動上昇した状態でブレーキ部材による後輪のロック状態が解除されたときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図13】座クッション体が水平状態に倒伏した状態でブレーキ部材による後輪のロック状態が解除されたときの作動ベルト及び作動リンク機構の拡大図。
【図14】この発明の第3の実施の形態を示すガイド体の正面図。
【図15】この発明の第4の実施の形態を示す車椅子の作動ベルト及び作動リンク機構の部分の拡大図。
【図16】この発明の第5の実施の形態を示す座クッション体の縦断面図。
【図17】この発明の第6の実施の形態を示す座クッション体の下面図。
【図18】同じく側面図。
【図19】この発明の第7の実施の形態を示す座クッション体の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、この発明を図面を参照しながら説明する。
図1乃至図10はこの発明の第1の実施の形態を示し、図1はブレーキ付き車椅子を示す斜視図であって、この車椅子は車体1を備えている。この車体1はパイプ材によって形成された一対の側部フレーム2を所定間隔で連結して構成されていて、これら側部フレーム2間には布製のシート3が張設されている。それによって、上記車体1には背部4及び座部5が形成されている。さらにこの座部5の両側には肘掛け部6が形成されている。
【0036】
なお、上記シート3は上記背部4に設けられた部分と、上記座部5に設けられた部分とが上記背部4の下端と上記座部5の後端の部分とで分断されている。
【0037】
上記車体1の両側後端部には一対の後輪8(一方のみ図示)が回転可能に設けられ、この後輪8の外面には後輪8よりの小径な補助輪9が一体的に設けられている。さらに、車体1の両側前端部には一対の前輪11が水平軸線及び垂直軸線を中心にして回転可能に設けられている。それによって、上記車椅子は走行可能及び方向変換可能となっている。
【0038】
なお、上記背部4の上端部は後方に向かって屈曲されていて、この屈曲部分には上記後輪8に対して手動でブレーキを掛けるためのブレーキハンドル12が設けられている。さらに、上記車体1の上記座部5の前端側の下端部両側には利用者が座部5に着座したときに足を載せるための足載せ板13が車体1の幅方向に回動可能に設けられ、幅方向内方に倒したときに水平な状態で保持できるようになっている。
【0039】
上記座部5には図3に示すように硬質な板材15aの上面に比較的硬質なウレタンフォームなどの弾性材15bを重合し、これらを外装地15cによって被覆して形成された座クッション体15が載置されている。
【0040】
図3は座部5を示す側面図であって、この座部5に載置される上記座クッション体15の先端側には折り曲げ可能な材料、たとえば布地などによって形成された第1の保持片16の一端が上記座クッション体15の幅方向全長にわたって連結されている。
【0041】
上記第1の保持片16の他端の内面には布製の第1のファスナ17が設けられている。そして、上記第1の保持片16の他端部は上記座部5のシート3の下面側に折り曲げられることで、上記第1のファスナ17が上記座部5の下面の前端部に設けられた第2のファスナ18に着脱可能に係着される。
【0042】
それによって、上記座クッション体15は、上記座部5の上面で上記第1の保持片16を屈曲させながら、先端部を支点として後端側が上昇する方向に回動できるようになっている。
【0043】
なお、上記座クッション体15の後端には第2の保持片21の一端が連結されている。この第2の保持片21の他端の内面には布製の第3のファスナ22が設けられている。この第3のファスナ22は上記座部5の下面の後端部に設けられた第4のファスナ23に着脱可能に係着させることができる。第3のファスナ22を第4のファスナ23に係着させれば、上記座クッション体15は上記座部5の上面で回動不能に保持されることになる。
【0044】
上記第3のファスナ22は、通常、上記座クッション体15が上記座部5の上面で回動可能となるよう、上記第4のファスナ23に係着させずに、上記座クッション体15の下面の後端部に設けられた第5のファスナ24に係着させて保持されている。
【0045】
図2に示すように、上記座部5の上面で、上記座クッション体15の下面側には帯状の作動ベルト25の中途部が配置されている。この作動ベルト25の両端部は上記肘掛け部6の下面に設けられたガイド体26に支持されて車体1の幅方向両側から下方に向かって導出されている。
【0046】
上記ガイド体26は、図4乃至図10に示すように上記肘掛け部6に支軸27によって車体1の前後方向に沿って回動可能に設けられた揺動部材28を有する。この揺動部材28は図4に示すように断面形状が逆U字状をなしていて、その両側間にはガイド部を構成するガイドローラ29が支軸31によって回転可能に支持されている。
【0047】
上記ガイドローラ29は、軸方向の両端に鍔29aが設けられ、一対の鍔29a間の長さ寸法は上記作動ベルト25の幅寸法と同等或いはわずかに大きく設定されている。それによって、上記作動ベルト25は上記ガイドローラ29を回転させながら上記一対の鍔29a間から外れることなく、円滑に移動することができるようになっている。
【0048】
なお、上記作動ベルト25の上記座部5上に載置された中途部には、図2に示すように作動ベルト25の長さを調整する長さ調整部材32が設けられている。それによって、上記作動ベルト25の長さを、たとえば座部5の幅寸法などに応じて設定できるようになっている。
【0049】
上記作動ベルト25の、上記ガイドローラ29に係合して車体1の幅方向外方に導出された両端部の末端には連結具33が取り付けられている。この連結具33と、上記車体1の側部フレーム2の上記肘掛け部6よりも下方の部分とには弾性部材としてのばね34が張設されている。
【0050】
上記ばね34は、その復元力によって上記作動ベルト25の上記ガイドローラ29にガイドされた両端部、つまりガイドローラ29から車体1の幅方向両側外方に導出された導出部分25aを車体1の上下方向の下方に向かって付勢している。
【0051】
それによって、上記作動ベルト25の上記座部5上に配置された中途部は上方に向かって変位させられるから、その変位によって座部5上に設けられた座クッション体15は、図5と図6に示すように前端を支点として後端が上昇する方向に回動させられている。
【0052】
図5乃至図10に示すように、上記作動ベルト25の両端に設けられた連結具33は連結リンク36の一端に回動可能に連結されている。この連結リンク36の他端には短管37が設けられ、この短管37には作動レバー38が連結されている。
【0053】
上記作動レバー38の下端部は、上記側部フレーム2の上記座部5よりも下方の部分に固着されたプレート39に支軸41によって回動可能に取り付けられている。それによって、上記連結リンク36の他端は上記作動レバー38を介して上記プレート39、つまり車体1に間接的に回動可能に連結されていることになる。
【0054】
上記作動レバー38の下端には第1の作動リンク42の一端が枢着され、この第1の作動リンク42の他端にはV字状の第2の作動リンク43の一端が枢着されている。この第2の作動リンク43の他端は上記プレート39に枢着されている。
【0055】
上記第2の作動リンク43の屈曲部には軸状のブレーキ部材44の一端が連結固定されている。このブレーキ部材44は他端部が上記後輪8の外周面に対向するよう軸線を車体1の幅方向に沿わせて設けられている。
【0056】
この実施の形態では、上記プレート39、上記第1の作動リンク42、上記第2の作動リンク43及び上記作動レバー38の一部とで作動リンク機構45を構成している。
【0057】
図6に示すように、上記ばね34の復元力によって上記作動ベルト25の導出部分25aが矢印Lで示す車体1の下方向に引張られた状態にあるとき、上記座クッション体15は前端を支点として後端が上昇する状態に回動するとともに、上記連結リンク36は矢印Dで示すように上記連結具33に連結された一端が下方へ変位する方向に回動する。
【0058】
それによって、上記作動レバー38は矢印Rで示すように車体1の後方に向かって回動するから、その回動によって上記第2の作動リンク43の屈曲部に突設されたブレーキ部材44が後輪8の外周面に圧接するよう変位する。
【0059】
上記座クッション体15に利用者が着座すると、この座クッション体15は図7と図8に示すように利用者の荷重によって後端が上昇した状態から前端を支点として倒伏する方向へ回動する。座クッション体15が倒伏方向へ回動すると、この座クッション体15の下面側に配置された上記作動ベルト25の中途部が押し下げられるから、この作動ベルト25のばね34に連結された導出部分25aがこのばね34の復元力に抗して図8に矢印Uで示す上昇方向に変位する。
【0060】
上記作動ベルト25の両端が上昇すると、その上昇に上記連結リンク36が連動して回動する。つまり、上記連結リンク36は作動ベルト25の末端に連結された一端が矢印Fで示す上昇方向に回動する。
【0061】
それによって、上記作動レバー38が先程と逆方向である、矢印Bで示す車体1の前方に向かって回動するから、その回動に第1、第2の作動リンク42,43が連動し、第2の作動リンク43の屈曲部に設けられたブレーキ部材44が図8に示すように後輪8の外周面から離れる方向に変位する。つまり、後輪8のブレーキが解除されることになる。
【0062】
上記連結リンク36は、図6に示すように座クッション体15が上昇方向に回動した状態、及び図8に示すように倒伏状態に回動した状態のいずれであっても、上記作動ベルト25の上記ガイドローラ29から車体1の幅方向外方に導出された導出部分25aが車体1の後方に向かって斜め下方に傾斜した状態で保持する長さ寸法に設定されている。
【0063】
上記作動ベルト25の上記導出部分25aが車体1の後方に向かって斜め下方に傾斜することで、この導出部分25aが係合したガイドローラ29を有するガイド体26の揺動部材28も、上記導出部分25aと同方向に揺動している。
【0064】
つまり、上記ガイド体26は支軸27によって車体1に揺動可能に支持されているため、上記作動ベルト25の上記ガイド体26からの上記導出部分25aが車体1の下方に向かって導出されるとともに、車体1の斜め下方に向かった傾斜することになる。
【0065】
それによって、上記導出部分25aの傾斜角度は、上記ガイド体26のガイドローラ29から垂直方向下方に向かって導出している場合に比べ、上記座部5の上面で先端を支点として後端が上昇する方向或いは下降する方向に回動する上記座クッション体15の回動角度に近づくことになる。
【0066】
上記導出部分25aの傾斜角度が上記座クッション体15の回動角度に近づけば、上記座クッション体15が回動したときに、上記導出部分25aが車体1の前後方向に引張られる度合が少なくなる。
【0067】
それによって、上記作動ベルト25はガイドローラ29を回転させながら円滑に移動することになる。つまり、作動ベルト25はガイドローラ29上で軸方向にずれ動いて円滑に移動しなくなるのが防止される。
【0068】
上記連結リンク36は第1のリンク片36aと第2のリンク片36bとが支軸46によって枢着されている。上記第1のリンク片36aの端部には係止ピン47が突設され、上記第2のリンク片36bの上記係止ピン47側の端部には、この係止ピン47に係合する凹部48が形成されている。
【0069】
上記連結リンク36は上記係止ピン47が上記凹部48に係合していることで、への字状の形状が維持されている。図7と図8に示すように、利用者が着座することで、座クッション体15が倒伏して上記ブレーキ部材44が後輪8から離れた状態にあるとき、上記作動レバー38を車体1の後方に向かって回動させることで、図9と図10に示すように第2のリンク片36bの凹部48が第1のリンク片36aの係止ピン47から外れて上記第2のリンク片36bが上方へ回動するから、連結リンク36が下方に向かって凸状である、V字状に屈曲する。
【0070】
つまり、利用者が座クッション体15に着座した状態で、上記作動レバー38を車体1の後方に向かって回動させることができるから、その回動によって第1、第2の作動リンク42,43が作動してブレーキ部材44を後輪8に圧接させてブレーキをかけることができる。すなわち、利用者が座部5に着座しているときに、ブレーキをかけて車椅子を走行不能にすることができる。
【0071】
なお、ガイド体26を肘掛け部6に揺動可能に設けることで、上記作動ベルト25の上記導出部分25aとともに上記ガイド体26が揺動するようにしているが、上記ガイド体26を上記肘掛け部6に予め所定の角度で傾斜した状態で固定的に設けることで、上記導出部分25aを車体1の後方に向かって斜めに傾斜した状態で保持するようにしてもよい。つまり、連結リンク36の長さ寸法の設定によって上記導出部分25aを車体1の後方に向かって斜めに傾斜した状態で保持することができる。
【0072】
このように構成された車椅子によれば、座部5に利用者が着座していないときには、作動ベルト25の両端部がばね34の張力によって引張られることで、座クッション体15が図6に示すように先端を支点として後端が上昇している。このとき、ブレーキ部材44は後輪8の外周面に圧接し、車椅子は走行不能な状態にある。
【0073】
利用者が回動上昇した座クッション体15に着座すると、この座クッション体15は図8に示すように利用者の荷重によって水平方向に倒伏する。それによって、作動ベルト25の導出部分25aはばね34の復元力に抗して上昇方向に移動するから、この作動ベルト25の導出部分25aによって連結リンク36は一端が上昇する方向Fに回動する。
【0074】
上記連結リンク36が上昇方向Fに回動すると、その回動によって第1、第2の作動リンク42,43が作動するから、第2の作動リンク43に設けられたブレーキ部材44が後輪8の外周面から離れ、この後輪8のブレーキが解除される。それによって、車椅子は走行可能な状態となる。
【0075】
回動上昇した座クッション体15に利用者が着座してこの座クッション体15が倒伏方向に回動するとき、上記作動ベルト25の導出部分25aは、作動ベルト25の末端に設けられた連結具33に連結された連結リンク36によって車体1の後方に向かって斜め下方に傾斜した角度で保持された状態で、肘掛け部6に設けられたガイド体26のガイドローラ29に沿って移動する。このとき、ガイド体26は作動ベルト25の移動方向に対してガイドローラ29の軸線が直交する角度になるよう揺動する。
【0076】
したがって、座クッション体15が前端を支点として回動するとき、この座クッション体15の回動方向と作動ベルト25の導出部分25aの移動方向Uとがほぼ同じ方向になるから、上記座クッション体15の回動によって移動する作動ベルト25に移動方向と交差する幅方向に力が加わり難くなるから、この作動ベルト25がガイドローラ29上で軸方向にずれ動き難くなり、その移動が円滑に行なわれることになる。
【0077】
なお、上記作動ベルト25の導出部分25aを、上記ガイドローラ29及び上記作動ベルト25の末端に設けられた連結具33に連結された連結リンク36によって車体1の後方に向かう斜め下方に傾斜した角度で導くようにしたが、上記導出部分25aを単に車体1のした方向に導くようにするだけであっても、座クッション体15が回動したときに上記作動ベルト25の上記ガイドローラ29上での移動を比較的円滑に行なうことができる。
【0078】
作動ベルト25の移動が円滑に行なわれることで、連結リンク36を介して第1、第2の作動リンク42,43も円滑に作動するから、ブレーキ部材44によるブレーキ状態の解除も円滑に行われることになる。
【0079】
水平に倒伏した座クッション体15から利用者が立ち上がって、この座クッション体15が図6に示すように前端を支点として回動上昇するときも、図8に示すように座クッション体15を倒伏させるときと同様、作動ベルト25の移動が円滑に行なわれるから、そのときには上記ブレーキ部材44によって後輪8にブレーキを確実かつ円滑に作動させることができる。
【0080】
上記作動ベルト25の末端の連結具33と上記作動レバー38とを連結した上記連結リンク36は中途部で屈曲可能な構造となっている。そのため、図10に示すように、利用者が座部5に着座して座クッション体15が水平に倒伏した状態で、作動レバー38を車体1の後方に回動させることで、上記連結リンク36を屈曲させることができる。
【0081】
それによって、利用者が座部5上の座クッション体15上に着座した状態で、回転可能な状態にある後輪8の外周面にブレーキ部材44を圧接させてブレーキをかけることができる。
【0082】
したがって、利用者が着座した状態であっても、たとえば介護者が車椅子から離れるような場合や車椅子を置いておくような場合に、この車椅子が走行しないようにブレーキをかけることができる。
【0083】
なお、上記第1の実施の形態において、図示はしないが、作動レバー38を回動操作するワイヤを車体1の背部4側に導き、その部分で操作ハンドルによって押し引き操作できるようにしてもよい。それによって、介護者が車体1を取り扱う場合に、上記操作レバー38の操作を介護者が容易に操作することが可能となる。
【0084】
図11乃至図13は、作動リンク機構の変形例を示すこの発明の第2の実施の形態である。なお、第1の実施の形態と同一部分には同一記号を付して説明を省略する。
【0085】
図11に示すように、第2の実施の形態の作動リンク機構45Aは一端が作動ベルト25の導出部分25aの連結具33に枢着された連結リンク136を有する。この連結リンク136の他端部は上方に向かって屈曲された屈曲部136aが形成されている。
【0086】
上記屈曲部136aの部分が車体1の座部5の下面に板面を垂直にして設けられたプレート39に支軸51によって枢着されている。上記連結リンク136の上記屈曲部136aの先端部には押圧片52の一端がトーションバーからなる支軸52aによって矢印Sで示す方向に弾性的に付勢されて設けられている。上記押圧片52の他端には接触部材としてのローラ53が回転可能に支持されている。
なお、押圧片52は上記屈曲部136aの先端部に固定して設けるようにしてもよい。
【0087】
上記プレート39に作動レバー38の下端部が支軸41によって枢着されていること、この作動レバー38の下端部に第1の作動リンク42の一端が枢着され、他端にV字状の第2の作動リンク43の一端が枢着されていること、この第2の作動リンク43の他端が上記プレートに枢着されていること、及び第2の作動リンク43の屈曲部に軸状のブレーキ部材44の一端が連結固定されていることは、上記第1の実施の形態と同じ構成である。
【0088】
なお、上記作動レバー38と上記連結リンク136はともに上記プレート39に回動可能に連結されているが、上記第1の実施の形態のように上記作動レバー38の下端は上記連結リンク136の他端に連結されてはいない。
【0089】
そして、図11に示すように利用者が立って座クッション体15が上昇して上記作動レバー38が矢印R方向に回動しているとき、上記ブレーキ部材44が後輪8の外周面に当接して後輪8の回転をロックしている。
【0090】
さらに、押圧片52に設けられたローラ53が上記作動レバー38の下端部の上斜面38aと下斜面38bのうちの、上斜面38aに弾性的に当接し、上記作動レバー38が矢印R方向と反対側に自由に戻るのを阻止している。つまり、上記押圧片52は上記ブレーキ部材44による後輪8のロック状態を弾性的に保持している。
【0091】
このような構成によると、図13に示す利用者が着座して座クッション体15が水平に倒伏した状態から、座クッション体15から利用者が立ち上がると、図11に示すように作動ベルト25の両端部がばね34によって下方に引張られるから、座クッション体15が前端を支点として後端が上昇する方向に回動する。
【0092】
それによって、上記連結リンク136は図13から図11に示すように作動ベルト25に連結された一端が下降する方向に回動するから、上記連結リンク136の他端に設けられた押圧片52のローラ53が上記作動レバー38の下端部の上斜面38aに弾性的に当たる。
【0093】
上記ローラ53が上記作動レバー38の下端部の上斜面38aに弾性的に当たると、上記作動レバー38が図11に矢印Rで示す方向に回動するから、この作動レバー38の回動によって上記第1,第2の作動リンク42,43が作動してブレーキ部材44が後輪8の外周面に当接し、この後輪8の回転をロックすることになる。
【0094】
図12は、利用者が座クッション体15から立ち上がって後輪8がロックされた図11に示す状態から、上記作動レバー38を矢印Rと逆方向である、図12に矢印N方向に回動させた状態を示す。
【0095】
上記作動レバー38を矢印N方向に回動させると、その回動に第1、第2の作動リンク42,43が連動し、上記ブレーキ部材44が後輪8の外周面から離れるから、後輪8のロック状態が解除される。このとき、押圧片52のローラ53は上記作動レバー38の下端部の上斜面38aから下斜面38bに移行して上記作動レバー38を弾性的に保持し、この作動レバー38が矢印N方向と逆方向に自由に回動するのを阻止する。つまり、後輪8のロック解除状態が維持される。
【0096】
図13は、図12に示すように座クッション体15の後端側が上昇した状態で、利用者が座クッション体15に着座した状態を示す。利用者が座クッション体15に着座すると、作動ベルト25の両端側の導出部分25aがばね34の復元力に抗して上方へ引張られる。
【0097】
それによって、連結リンク136は、支軸51を支点として連結具33に連結された一端側が上昇する方向に回動する。このとき、上記作動レバー38は、すでに上記ブレーキ部材44による後輪8のロック状態を解除するよう矢印N方向に回動させられている。
【0098】
そのため、上記作動レバー38は上記連結リンク136の回動に連動して回動することはないが、押圧片52のローラ53は上記連結リンク136の回動によって上記作動レバー38の下端部の下斜面38bから離れることになる。
【0099】
一方、図11に示すように後輪8がブレーキ部材44によってロックされ、しかも座クッション体15の後端側が上昇した状態において、利用者が着座して上記座クッション体15が倒伏方向に回動すると、連結リンク136の一端が上昇する方向に回動するとともに、この回動に第1、第2の作動リンク42,43が連動して回動する。
【0100】
それによって、作動レバー38は図11に示す状態から矢印R方向と逆方向に回動して図13に示すように後輪8の上記ブレーキ部材44によるロック状態が解除されることになる。
【0101】
図13に示す利用者が着座した状態において、上記作動レバー38を図11に示す矢印R方向に回動すれば、その回動に第1、第2の作動リンク42,43が連動するから、上記ブレーキ部材44によって後輪8がロックされることになる。
【0102】
すなわち、第2の実施の形態に示す構成の作動リンク機構45Aであっても、第1の実施の形態と同様、後輪8のロックやロック状態の解除を行なうことができる。
【0103】
図14はこの発明の第3の実施の形態のガイド体26の変形例を示す。この実施の形態では、ガイド体26にガイドローラ29を設ける代わりに、ガイド体26の揺動部材28に作動ベルト25を挿通する扁平状で、作動ベルト25と接触する面が凸状の円弧面に形成された通孔61を設けるようにしている。
【0104】
なお、ガイド体26の揺動部材28に通孔61を形成する場合、このガイド体26を肘掛け部6に揺動可能に設けてもよいし、上記通孔61が車体1の後方に向かって所定の角度で高くなるよう傾斜した状態で固定して設けてもよい。
【0105】
また、図示はしないが、車体1に揺動部材28を設けずに、肘掛け部6に通孔を形成し、その通孔に作動ベルト25を挿通するようにしてもよい。その場合、上記通孔を車体1の後方に向かって高くなるよう傾斜させて形成すれば、この通孔に挿通される作動ベルト25を斜め下降に向かう角度で導出することができる。
【0106】
また、第1の実施の形態において、ガイド体26にガイドローラ29を設けたが、ガイドローラ29に代わって作動ベルト25と接触する面が円弧面に形成されたガイド部材を設けるようにしてもよい。
【0107】
図15は第4の実施の形態を示す。この実施の形態では上記作動ベルト25の長さ調整を、図2に示す長さ調整部材32に代わって第2の実施の形態に示された作動ベルト25の両端に設けられた連結具33が連結される連結リング136によって行なえるようにしている。
【0108】
すなわち、上記連結リンク136の一端部には下方に向かって屈曲した連結部136aが形成されている。
【0109】
上記連結部136aには上下方向に複数、この実施の形態では3つの連結孔65a〜65cが形成されている。そして、上記連結具33は3つの連結孔65a〜65cのうちの1つにピン66によって選択的に連結される。なお、ピン66に代わりねじであってもよい。
【0110】
この実施の形態では、上記連結具33は3つの連結孔65a〜65cのうち、最上段の連結孔65aに連結されている。それによって、上記作動ベルト25を最も長い状態で使用することができる。上記連結具33を最下段の連結孔65cに連結すれば、上記作動ベルト25を最も短い状態で使用することができる。
【0111】
すなわち、座部5の幅寸法や作動ベルト25に与えるテンションなどに応じて、上記作動ベルト25の長さを、上記連結リング136の屈曲部136aに設けられた3つの連結孔65a〜65cによって設定できるようになっている。
【0112】
図16は座クッション体の変形例を示すこの発明の第5の実施の形態である。この実施の形態に示された座クッション体115は硬質な板材71が外装地72によって被覆された基部73と、弾性材74が外装地75によって被覆されたクッション部76とが布製テープ(図示せず)によって着脱可能に積操作れている。
【0113】
それによって、使用にともないクッション部76にへたりが生じた場合、このクッション部76を基部73から取り外して交換することができるようになっている。
【0114】
図17と図18は座クッション体の変形例を示すこの発明の第6の実施の形態である。この実施の形態では座クション体15の下面の作動ベルト25に当たる部分に、この作動ベルト25と同じ或いは少し大きめの幅寸法を有する補強テープ81を面状ファスナ(図示せず)によって着脱可能に設けるようにしている。
【0115】
それによって、座クション体15の下面が作動ベルト25によって擦られても、その下面が損傷するのを防止するようにしている。そして、長期の使用によって上記補強テープ81が傷んだならば、この補強テープ81を交換することができる。
【0116】
なお、座クション体15の下面に作動ベルト25を面状ファスナによって着脱可能に設ける場合、オス側とメス側の面状ファスナのうち、オス側の面状ファスナを補強テープ81に設け、メス側の面状ファスナを座クション体15の下面に設けるようにする。
【0117】
メス側の面状ファスナはループ状であり、フック状のオス側の面状ファスナに比べて柔らかい。そのため、補強テープ81が正規の取付け位置からずれて座クション体15の下面に取付けられることで、メス側の面状ファスナが補強テープ81から露出しても、メス側の面状ファスナによって作動ベルト25や座部5を傷めるのを防止できる。
【0118】
図19は座クッション体の変形例を示すこの発明の第7の実施の形態である。この実施の形態では、座クッション体15の上面には、後端側の角部2箇所と、それ以外との部分が識別できるよう色分けされている。たとえば、後端側の角部2箇所は黄色の第1の色分け部15aに形成され、他の部分は黒色の第2の色分け部15bとなっている。
【0119】
それによって、とくに老人などの利用者が着座するとき、臀部を第2の色分け部15bに載るよう着座するよう視覚的に認識できるから、第1の色分け部15aである、座クッション体15の上面の後端側の角部に着座し、不安定な状態となるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0120】
1…車体、4…背部、5…座部、8…後輪、15…座クッション体、25…作動ベルト、26…ガイド体、28…揺動部材、29…ガイドローラ、36…連結リンク、36a…第1のリンク片、36b…第2のリンク片、38…作動レバー、42…第1の作動リンク、43…第2の作動リンク、44…ブレーキ部材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後輪の回転を阻止するブレーキ部材を備えたブレーキ付き車椅子であって、
背部及び両側に肘掛け部が設けられた座部を有する車体と、
この車体を走行可能に支持した前輪及び後輪と、
上記座部に前端部を支点として回動可能に設けられる座クッション体と、
中途部が上記座クッション体の下面側に配置される作動ベルトと、
上記肘掛け部に設けられ上記作動ベルトの両端部を上記車体の両側外方から下方向に導くガイド部と、
一端が上記作動ベルトの末端に連結され他端が上記車体の上記肘掛け部よりも下方の部分に連結されていて、上記作動ベルトの両端部を下方に向かって弾性的に引張る弾性部材と、
一端が上記作動ベルトの末端に連結され他端が上記車体に対して回動可能に連結されていて、上記座クッション体が前端部を支点として回動して上記作動ベルトの両端部が上下方向に移動したときにその移動によって回動する連結リンクと、
この連結リンクの回動に連動して作動するよう設けられ上記連結リンクの回動方向によって上記ブレーキ部材を上記後輪から離してブレーキを解除する状態或いは上記ブレーキ部材を上記後輪に当接させてブレーキをかける状態に変位させる作動リンク機構と
を具備したことを特徴とするブレーキ付き車椅子。
【請求項2】
上記ガイド部は、上記作動ベルトの両端部を車体の後方に向かう斜め下方の角度に導くとともに、上記連結リンクは上記作動ベルトの両端部を上記ガイド部とともに車体の後方に向かう斜め下方の角度で保持することを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項3】
上記ガイド部は、上記肘掛け部に上記車体の前後方向に沿って揺動可能に設けられ他ガイド体に形成されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項4】
上記ガイド体は、上記肘掛け部に上記車体の前後方向に沿って揺動可能に設けられた揺動部材を有し、上記ガイド部は上記揺動部材に回転可能に設けられたガイドローラであることを特徴とする請求項3記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項5】
上記ガイド体は、上記肘掛け部に設けられた揺動部材を有し、この揺動部材には上記作動ベルトの両端部を上記車体の後方に導く通孔が形成されていることを特徴とする請求項3記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項6】
上記作動リンク機構は、上記車体の側部に回動可能に設けられて上記連結リンクの他端部が連結された作動レバー及びこの作動レバーを上記車体の前後方向に回動させることで作動して上記ブレーキ部材を上記後輪に対して当接する方向及び離反する方向に変位させる複数の作動リンクを有し、
上記連結リンクは中途部で折り畳み可能な構造になっていて、上記ブレーキ部材が上記後輪に当接した状態で上記連結リンクを折り畳むことで、上記作動レバーが上記ブレーキ部材を上記後輪から離す方向に回動させることができることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項7】
上記作動リンク機構は、上記車体の側部に回動可能に設けられた作動レバー、この作動レバーを上記車体の前後方向に回動させることで作動して上記ブレーキ部材を上記後輪に対して当接する方向及び離反する方向に変位させる複数の作動リンク及び先端に接触部材が設けられ上記連結リンクの他端に取付けられた押圧片を有し、
上記座クッション体が倒伏した状態から前端部を支点として上昇する方向に回動し、上記連結リンクが上記座クッション体の回動に連動して一端が下降する方向に回動したとき、上記接触部材が上記作動レバーの下端部に当接してこの作動レバーが回動し、上記ブレーキ部材が上記後輪に当接してこの後輪をロックすることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項8】
上記押圧片は、上記連結リンクの他端に弾性的に回動可能に設けられていることを特徴とする請求項7記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項9】
上記接触部材は、上記座クッション体が倒伏しているときには上記作動レバーの下端部から離間し、上記座クッション体が前端部を支点として後端部が上昇する方向に回動したときに上記作動レバーの下端部に当接するようになっていることを特徴とする請求項7記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項10】
上記座クッション体は、先端部が上記座部体に回動可能に連結されていて、後端部には上記座クッション体に加わる荷重が除去されたときに、上記座クッション体が上記座部体上で先端部を支点として回動上昇不能に保持することができる保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項11】
上記連結リンクの一端部には下方に向かって屈曲した連結部が設けられ、この連結部には上記作動ベルトの両端部に設けられた連結具が選択的に取付けられる複数の連結孔が上下方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項12】
上記座クッション体は、硬質な板材が収容された基部と、弾性材が収容され上記基部の上面に着脱可能に設けられるクッション部とによって構成されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項13】
上記座クッション体の下面の上記作動ベルトに対応する部分には、上記座クッション体の下面が上記作動ベルトによって直接擦られるのを防止する補強テープが設けられることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項14】
上記座クッション体の上面には、利用者が着座する部分を視認できる彩分け部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項1】
後輪の回転を阻止するブレーキ部材を備えたブレーキ付き車椅子であって、
背部及び両側に肘掛け部が設けられた座部を有する車体と、
この車体を走行可能に支持した前輪及び後輪と、
上記座部に前端部を支点として回動可能に設けられる座クッション体と、
中途部が上記座クッション体の下面側に配置される作動ベルトと、
上記肘掛け部に設けられ上記作動ベルトの両端部を上記車体の両側外方から下方向に導くガイド部と、
一端が上記作動ベルトの末端に連結され他端が上記車体の上記肘掛け部よりも下方の部分に連結されていて、上記作動ベルトの両端部を下方に向かって弾性的に引張る弾性部材と、
一端が上記作動ベルトの末端に連結され他端が上記車体に対して回動可能に連結されていて、上記座クッション体が前端部を支点として回動して上記作動ベルトの両端部が上下方向に移動したときにその移動によって回動する連結リンクと、
この連結リンクの回動に連動して作動するよう設けられ上記連結リンクの回動方向によって上記ブレーキ部材を上記後輪から離してブレーキを解除する状態或いは上記ブレーキ部材を上記後輪に当接させてブレーキをかける状態に変位させる作動リンク機構と
を具備したことを特徴とするブレーキ付き車椅子。
【請求項2】
上記ガイド部は、上記作動ベルトの両端部を車体の後方に向かう斜め下方の角度に導くとともに、上記連結リンクは上記作動ベルトの両端部を上記ガイド部とともに車体の後方に向かう斜め下方の角度で保持することを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項3】
上記ガイド部は、上記肘掛け部に上記車体の前後方向に沿って揺動可能に設けられ他ガイド体に形成されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項4】
上記ガイド体は、上記肘掛け部に上記車体の前後方向に沿って揺動可能に設けられた揺動部材を有し、上記ガイド部は上記揺動部材に回転可能に設けられたガイドローラであることを特徴とする請求項3記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項5】
上記ガイド体は、上記肘掛け部に設けられた揺動部材を有し、この揺動部材には上記作動ベルトの両端部を上記車体の後方に導く通孔が形成されていることを特徴とする請求項3記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項6】
上記作動リンク機構は、上記車体の側部に回動可能に設けられて上記連結リンクの他端部が連結された作動レバー及びこの作動レバーを上記車体の前後方向に回動させることで作動して上記ブレーキ部材を上記後輪に対して当接する方向及び離反する方向に変位させる複数の作動リンクを有し、
上記連結リンクは中途部で折り畳み可能な構造になっていて、上記ブレーキ部材が上記後輪に当接した状態で上記連結リンクを折り畳むことで、上記作動レバーが上記ブレーキ部材を上記後輪から離す方向に回動させることができることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項7】
上記作動リンク機構は、上記車体の側部に回動可能に設けられた作動レバー、この作動レバーを上記車体の前後方向に回動させることで作動して上記ブレーキ部材を上記後輪に対して当接する方向及び離反する方向に変位させる複数の作動リンク及び先端に接触部材が設けられ上記連結リンクの他端に取付けられた押圧片を有し、
上記座クッション体が倒伏した状態から前端部を支点として上昇する方向に回動し、上記連結リンクが上記座クッション体の回動に連動して一端が下降する方向に回動したとき、上記接触部材が上記作動レバーの下端部に当接してこの作動レバーが回動し、上記ブレーキ部材が上記後輪に当接してこの後輪をロックすることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項8】
上記押圧片は、上記連結リンクの他端に弾性的に回動可能に設けられていることを特徴とする請求項7記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項9】
上記接触部材は、上記座クッション体が倒伏しているときには上記作動レバーの下端部から離間し、上記座クッション体が前端部を支点として後端部が上昇する方向に回動したときに上記作動レバーの下端部に当接するようになっていることを特徴とする請求項7記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項10】
上記座クッション体は、先端部が上記座部体に回動可能に連結されていて、後端部には上記座クッション体に加わる荷重が除去されたときに、上記座クッション体が上記座部体上で先端部を支点として回動上昇不能に保持することができる保持部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項11】
上記連結リンクの一端部には下方に向かって屈曲した連結部が設けられ、この連結部には上記作動ベルトの両端部に設けられた連結具が選択的に取付けられる複数の連結孔が上下方向に沿って設けられていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項12】
上記座クッション体は、硬質な板材が収容された基部と、弾性材が収容され上記基部の上面に着脱可能に設けられるクッション部とによって構成されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項13】
上記座クッション体の下面の上記作動ベルトに対応する部分には、上記座クッション体の下面が上記作動ベルトによって直接擦られるのを防止する補強テープが設けられることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【請求項14】
上記座クッション体の上面には、利用者が着座する部分を視認できる彩分け部が設けられていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ付き車椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−125545(P2012−125545A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176678(P2011−176678)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)
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