説明

ブレーキ制御装置

【課題】ブレーキ制御装置に用いられる電磁弁における消費電力を低減する。
【解決手段】ブレーキ制御装置は、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続する経路に設けられ、マスタシリンダからホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には開弁するとともに、アキュムレータからホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には閉弁するように制御される電磁弁22FL,22FRを備える。電磁弁22FL,22FRは、弁体142を弁座140から離間させる方向に付勢するバネ146が設けられており、通電時に弁体142がバネ146を圧縮しながら弁座に着座することで閉弁する電磁弁であって、弁体142が配置されている弁室147がマスタシリンダ側の流路152に接続され、弁座140を挟んで弁室147と反対側に設けられている液室154がホイールシリンダ側の流路に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられた車輪に付与する制動力を制御するブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両における制動装置として、車両の走行状況に応じて最適な制動力を車両に与えるよう各車輪の制動力を制御する電子制御ブレーキシステムが多く採用されている。このような電子制御ブレーキシステムでは、圧力センサによって各車輪のホイールシリンダ圧を監視し、運転者のブレーキペダル操作量に基づいて演算される目標油圧にホイールシリンダ圧がなるように、電磁制御弁を制御している(特許文献1参照)。
【0003】
上述のような電子制御ブレーキシステムにおいては、常開型の電磁制御弁がマスタシリンダとホイールシリンダとの間に配置されている。このような常開型の電磁制御弁として、特許文献2には、コイルに電流を流すことで、圧縮されたスプリングの付勢力に抗してロッド先端部の弁体が弁座に着座し、マスタシリンダ側に連結される液室とホイールシリンダ側に連結される液室が分離する構造を備えた電磁弁が開示されている。
【特許文献1】特開2006−199133号公報
【特許文献2】特開2001−130395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述の電子制御ブレーキシステムでは、マスタシリンダとホイールシリンダとの間に常開型の電磁弁を用いているが、このような常開型電磁弁においては、ホイールシリンダの残圧によりホイールシリンダ側がマスタシリンダ側よりも高圧になるような状況であっても差圧により弁が閉じないようにする必要がある。そのためには弁を開いておくための圧縮バネの荷重を大きくすればよいが、それに伴い電磁弁を閉弁する際に圧縮バネの荷重に抗してプランジャを動かすために必要な駆動電流も増大してしまう。そのため、消費電力の観点から更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ブレーキ制御装置に用いられる電磁弁における消費電力を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、ブレーキフルードを運転者によるブレーキ操作部材の操作量に応じて加圧するマニュアル液圧源と、運転者のブレーキ操作から独立した動力を用いてブレーキフルードによる蓄圧を行う動力液圧源と、前記マニュアル液圧源および前記動力液圧源の少なくとも一方からのブレーキフルードの供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、前記マニュアル液圧源と前記ホイールシリンダとを接続する経路に設けられ、前記マニュアル液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には開弁するとともに、前記動力液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には閉弁するように制御される制御弁と、を備える。前記制御弁は、弁体を弁座から離間させる方向に付勢するバネが設けられており、通電時に弁体がバネを圧縮しながら弁座に着座することで閉弁する電磁弁であって、前記弁体が配置されている弁室がマニュアル液圧源側の流路に接続され、前記弁座を挟んで前記弁室と反対側に設けられている液室がホイールシリンダ側の流路に接続されている。
【0007】
この態様によると、例えば、ブレーキ操作を解除したにもかかわらずホイールシリンダの減圧制御に不具合があり、ホイールシリンダの残圧によりホイールシリンダ側の流路に接続されている液室が弁室よりも高圧になるような状況であっても、弁体にかかる力は弁体が弁座から離間する向きである。そのため、弁体を弁座から離間させる方向に付勢するバネの荷重を大きく設定しなくても、ホイールシリンダの残圧の大きさにかかわらず非通電時の制御弁を開弁状態とすることが容易となる。その結果、ホイールシリンダのブレーキフルードをマニュアル液圧源側に確実に流すことが可能となり、ホイールシリンダの残圧によるブレーキの引きずりを低減することができる。また、ホイールシリンダが発生する最大圧力を考慮することなく、マニュアル液圧源からホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際に制御弁が自閉しない程度にバネの荷重を小さく設定できる。そのため、制御弁を閉弁する際にバネの荷重に打ち勝つために必要な駆動電流を小さくすることができ、ブレーキ制御装置の消費電力を低減することができる。
【0008】
本発明の別の態様もまた、ブレーキ制御装置である。この装置は、ブレーキフルードを運転者によるブレーキ操作部材の操作量に応じて加圧するマニュアル液圧源と、運転者のブレーキ操作から独立した動力を用いてブレーキフルードによる蓄圧を行う動力液圧源と、前記マニュアル液圧源および前記動力液圧源の少なくとも一方からのブレーキフルードの供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、前記マニュアル液圧源と前記ホイールシリンダとを接続し、前記マニュアル液圧源から前記ホイールシリンダへのブレーキフルードの供給が可能なように構成されているマニュアル液圧伝達経路と、前記動力液圧源と前記ホイールシリンダとを接続し、前記動力液圧源から前記ホイールシリンダへのブレーキフルードの供給が可能なように構成されている動力液圧伝達経路と、前記ホイールシリンダ、ブレーキフルードを収容するリザーバおよび前記動力液圧源を接続し、前記ホイールシリンダから排出されたブレーキフルードを前記リザーバで回収できるように構成された回収経路と、前記マニュアル液圧伝達経路に設けられ、前記マニュアル液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には開弁するとともに、前記動力液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には閉弁するように制御される第1制御弁と、前記動力液圧伝達経路に設けられ、前記動力液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には開弁するように制御される第2制御弁と、前記ホイールシリンダの下流側に設けられ、前記ホイールシリンダから前記回収経路へブレーキフルードを排出する際には開弁するように制御される第3制御弁と、を備える。前記第1制御弁は、弁体を弁座から離間させる方向に付勢するバネが設けられており、通電時に弁体がバネを圧縮しながら弁座に着座することで閉弁する電磁弁であって、前記弁体が配置されている弁室がマニュアル液圧源側の流路に接続され、前記弁座を挟んで前記弁室と反対側に設けられている液室がホイールシリンダ側の流路に接続されている。
【0009】
この態様によると、例えば、第3制御弁が故障しブレーキ操作を解除したにもかかわらずホイールシリンダから回収経路へのブレーキフルードの排出がうまく行われず、ホイールシリンダの残圧によりホイールシリンダ側の流路に接続されている第1制御弁の液室が弁室よりも高圧になるような状況であっても、弁体にかかる力は弁体が弁座から離間する向きである。そのため、弁体を弁座から離間させる方向に付勢するバネの荷重を大きく設定しなくても、ホイールシリンダの残圧の大きさにかかわらず非通電時の第1制御弁を開弁状態とすることが容易となる。その結果、ホイールシリンダのブレーキフルードをマニュアル液圧源側に確実に流すことが可能となり、ホイールシリンダの残圧によるブレーキの引きずりを低減することができる。また、ホイールシリンダが発生する最大圧力を考慮することなく、マニュアル液圧源からホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際に第1制御弁が自閉しない程度にバネの荷重を小さく設定できる。そのため、第1制御弁を閉弁する際にバネの荷重に打ち勝つために必要な駆動電流を小さくすることができ、ブレーキ制御装置の消費電力を低減することができる。
【0010】
前記電磁弁への通電量によって開閉を制御する制御手段を更に備えてもよい。前記制御手段は、前記マニュアル液圧源で発生している第1の液圧と前記ホイールシリンダで発生している第2の液圧との差圧に基づいて前記通電量を決定してもよい。これにより、差圧に関係なく通電量を固定値として第1制御弁の開閉を制御する場合と比較して、例えば、差圧が小さい場合には小さい通電量で閉弁することが可能となり、ブレーキ制御装置の消費電力を更に低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ブレーキ制御装置に用いられる電磁弁における消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
[ブレーキ制御装置の概略構成]
図1は、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10を示す系統図である。図1に示されるブレーキ制御装置10は、車両用の電子制御式ブレーキシステムを構成しており、運転者によるブレーキ操作部材としてのブレーキペダル12の操作に応じて車両の4輪のブレーキを最適に設定する。つまり、ブレーキ制御装置10は、車両に設けられた車輪に付与させる制動力を制御することができる。
【0014】
ブレーキペダル12は、運転者による踏み込み操作に応じて作動流体(作動液)としてのブレーキフルードを送り出すマスタシリンダ14に接続されている。ブレーキペダル12には、その踏み込みストロークを検出するためのストロークセンサ46が設けられている。
【0015】
マスタシリンダ14の一方の出力ポート14aには、運転者によるブレーキペダル12の操作力に応じた反力を創出するストロークシミュレータ24が接続されている。マスタシリンダ14とストロークシミュレータ24とを接続する流路の中途には、シミュレータカット弁23が設けられている。シミュレータカット弁23は、非通電時に閉状態にあり、運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に開状態に切り替えられる常閉型の電磁開閉弁である。
【0016】
また、マスタシリンダ14には、ブレーキフルードを収容するためのリザーバタンク26が接続されている。リザーバタンク26には、リザーバタンク26内のブレーキフルードの液面レベルを検出する液面レベル検出装置が設けられている。マスタシリンダ14は、収容されたブレーキフルードを運転者によるブレーキペダル12の操作量に応じて加圧することができるマニュアル液圧源として機能する。
【0017】
マスタシリンダ14の一方の出力ポート14aには、左前輪用のブレーキ油圧制御管16が接続されている。ブレーキ油圧制御管16は、図示されない左前輪に対して制動力を付与する左前輪用のホイールシリンダ20FLに接続されている。また、マスタシリンダ14の他方の出力ポート14bには、右前輪用のブレーキ油圧制御管18が接続されており、ブレーキ油圧制御管18は、図示されない右前輪に対して制動力を付与する右前輪用のホイールシリンダ20FRに接続されている。本実施の形態では、ブレーキ油圧制御管16,18がマニュアル液圧伝達経路として機能する。
【0018】
左前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、マスタカット弁としての左電磁弁22FLが設けられており、右前輪用のブレーキ油圧制御管18の中途には、同じくマスタカット弁としての右電磁弁22FRが設けられている。これらの左電磁弁22FLおよび右電磁弁22FRは、いずれも、非通電時に開状態にあり、通電時に閉状態に切り替えられる常開型電磁弁である。また、これらの左電磁弁22FLおよび右電磁弁22FRは、通常は運転者によるブレーキペダル12の操作が検出された際に閉状態に切り替えられる。以下、適宜、右電磁弁22FRおよび左電磁弁22FLを総称して「電磁弁22」という。
【0019】
また、左前輪用のブレーキ油圧制御管16の中途には、左前輪側のマスタシリンダ圧を検出する左マスタ圧力センサ48FLが設けられており、右前輪用のブレーキ油圧制御管18の途中には、右前輪側のマスタシリンダ圧を計測する右マスタ圧力センサ48FRが設けられている。ブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれた際、ストロークセンサ46によりその踏み込み操作量が検出されるが、これらの左マスタ圧力センサ48FLおよび右マスタ圧力センサ48FRによって検出されるマスタシリンダ圧からもブレーキペダル12の踏み込み操作力(踏力)を求めることができる。このように、ストロークセンサ46の故障を想定して、マスタシリンダ圧を2つの圧力センサ48FLおよび48FRによって監視することは、フェイルセーフの観点からみて好ましい。なお、以下では適宜、左マスタ圧力センサ48FLおよび右マスタ圧力センサ48FRを総称して、マスタシリンダ圧センサ48という。
【0020】
一方、リザーバタンク26には、油圧給排管28の一端が接続されており、この油圧給排管28の他端には、モータ32により駆動されるオイルポンプ34の吸込口が接続されている。オイルポンプ34の吐出口は、高圧管30に接続されており、この高圧管30には、アキュムレータ50とリリーフバルブ53とが接続されている。本実施の形態では、オイルポンプ34として、モータ32によってそれぞれ往復移動させられる2体以上のピストン(図示せず)を備えた往復動ポンプが採用される。また、アキュムレータ50としては、ブレーキフルードの圧力エネルギを窒素等の封入ガスの圧力エネルギに変換して蓄えるものが採用される。
【0021】
アキュムレータ50は、運転者のブレーキ操作から独立した動力として機能するオイルポンプ34によって例えば14〜22MPa程度にまで昇圧されたブレーキフルードを蓄える。また、リリーフバルブ53の弁出口は、油圧給排管28に接続されており、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力が異常に高まって例えば25MPa程度になると、リリーフバルブ53が開弁し、高圧のブレーキフルードは油圧給排管28へと戻される。さらに、高圧管30には、アキュムレータ50の出口圧力、すなわち、アキュムレータ50におけるブレーキフルードの圧力を検出するアキュムレータ圧センサ51が設けられている。
【0022】
そして、動力液圧伝達経路として機能する高圧管30は、増圧弁40FR,40FL,40RR,40RLを介して右前輪用のホイールシリンダ20FR、左前輪用のホイールシリンダ20FL、右後輪用のホイールシリンダ20RRおよび左後輪用のホイールシリンダ20RLに接続されている。以下、適宜、ホイールシリンダ20FR〜20RLを総称して「ホイールシリンダ20」といい、適宜、増圧弁40FR〜40RLを総称して「増圧弁40」という。増圧弁40は、いずれも、非通電時は閉じた状態にあり、必要に応じてホイールシリンダ20の増圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。
【0023】
例えば、増圧弁40は、アキュムレータ50からホイールシリンダ20へブレーキフルードを供給する際には開弁するように制御される。なお、図示されない車両の各車輪に対しては、ディスクブレーキユニットが設けられており、各ディスクブレーキユニットは、ホイールシリンダ20の作用によってブレーキパッドをディスクに押し付けることで制動力を発生する。
【0024】
また、右前輪用のホイールシリンダ20FRと左前輪用のホイールシリンダ20FLとは、それぞれ減圧弁42FRまたは42FLを介して油圧給排管28に接続されている。減圧弁42FRおよび42FLは、必要に応じてホイールシリンダ20FR,20FLの減圧に利用される常閉型の電磁流量制御弁(リニア弁)である。一方、右後輪用のホイールシリンダ20RRと左後輪用のホイールシリンダ20RLとは、常開型の電磁流量制御弁である減圧弁42RRまたは42RLを介して油圧給排管28に接続されている。以下、適宜、減圧弁42FR〜42RLを総称して「減圧弁42」という。例えば、減圧弁42は、ホイールシリンダ20から油圧給排管28へブレーキフルードを排出する際には開弁するように制御される。なお、油圧給排管28は、ホイールシリンダ20から排出されたブレーキフルードをリザーバタンク26で回収できるように構成された回収経路として機能する。
【0025】
また、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、図1に示すように、右前輪用、左前輪用、右後輪用および左後輪用のホイールシリンダ20FR〜20RL付近に、それぞれ対応するホイールシリンダ20に作用するホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ44FR,44FL,44RRおよび44RLが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLを総称して「ホイールシリンダ圧センサ44」という。ホイールシリンダ圧センサ44は、ホイールシリンダ20に作用するブレーキフルードの圧力を検出する圧力検出手段として機能する。
【0026】
上述の右電磁弁22FRおよび左電磁弁22FL、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL、オイルポンプ34、アキュムレータ50等は、ブレーキ制御装置10の油圧アクチュエータ80を構成する。そして、かかる油圧アクチュエータ80は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。
【0027】
ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ、計時用のタイマ等を備えるものである。
【0028】
ECU200には、上述の電磁弁22FR,22FL、シミュレータカット弁23、増圧弁40FR〜40RL、減圧弁42FR〜42RL等の油圧アクチュエータ80を含む各種アクチュエータ類が電気的に接続されている。
【0029】
また、ECU200には、制御に用いるための信号を出力する各種センサ・スイッチ類が電気的に接続されている。すなわち、ECU200には、ホイールシリンダ圧センサ44FR〜44RLから、ホイールシリンダ20FR〜20RLにおけるホイールシリンダ圧を示す信号が入力される。
【0030】
また、ECU200には、ストロークセンサ46からブレーキペダル12のペダルストロークを示す信号が入力され、右マスタ圧力センサ48FRおよび左マスタ圧力センサ48FLからマスタシリンダ圧を示す信号が入力され、アキュムレータ圧センサ51からアキュムレータ圧を示す信号が入力される。
【0031】
また、ECU200には、リザーバタンク26に設けられた液面レベル検出装置から、ブレーキフルードの液面レベルを示す信号が入力される。また、ECU200には、リザーバタンク26の液面レベルの低下を運転者に知らせるための警告ランプ54が接続されている。
【0032】
さらに、図示しないが、ECU200には、車輪ごとに設置された車輪速センサから各車輪の車輪速度を示す信号が入力され、ヨーレートセンサからヨーレートを示す信号が入力され、操舵角センサからステアリングホイールの操舵角を示す信号が入力されている。
【0033】
このように構成されるブレーキ制御装置10では、運転者によってブレーキペダル12が踏み込まれると、ECU200により、ブレーキペダル12の踏み込み量を表すペダルストロークとマスタシリンダ圧とから車両の目標減速度が算出され、算出された目標減速度に応じて各車輪のホイールシリンダ圧の目標値である目標油圧が求められる。そして、ECU200により増圧弁40、減圧弁42が制御され、各車輪のホイールシリンダ圧が目標油圧になるよう制御される。
【0034】
一方、このとき電磁弁22FRおよび22FLは閉状態とされ、シミュレータカット弁23は開状態とされる。よって、運転者によるブレーキペダル12の踏込によりマスタシリンダ14から送出されたブレーキフルードは、シミュレータカット弁23を通ってストロークシミュレータ24に流入する。
【0035】
また、アキュムレータ圧が予め設定された制御範囲の下限値未満であるときには、ECU200によりオイルポンプ34が駆動されてアキュムレータ圧が昇圧され、アキュムレータ圧がその制御範囲に入ればオイルポンプ34の駆動が停止される。
【0036】
(電磁弁の概略構成)
次に、本実施の形態に用いられる電磁弁の概略構成について説明する。図2は、本実施の形態のマスタカット弁として用いられる常開型の電磁弁の断面を模式的に示す断面図である。
【0037】
常開型の切替ソレノイドバルブである電磁弁22FL,22FRは、図2に示すように、弁座140と、弁体142と、ロッド143と、可動部材であるプランジャ144と、固定部材を兼ねるスリーブ145と、バネ146と、弁室147と、ソレノイド149とを含んで構成される。弁室147に設けられているバネ146は、先端がボール型の弁体142を弁座140から離間させる方向に付勢する。そして、通電時にソレノイド149に電流が供給されると、プランジャ144がスリーブ145に吸引される方向、すなわち、弁体142が弁座140に接近する方向に電磁駆動力が作用する。そして、弁体142がバネ146を圧縮しながら弁座140に着座することで閉弁する。一方、ソレノイド149に電流が供給されていない状態においてはバネ146の付勢力により弁体142が弁座140から離間して電磁弁は開状態とされている。
【0038】
また、電磁弁22FL,22FRは、マスタシリンダ14とホイールシリンダ20とを接続する経路を構成するブレーキ油圧制御管16,18にそれぞれ設けられており、マスタシリンダ14からホイールシリンダ20へブレーキフルードを供給する際には開弁するとともに、アキュムレータ50からホイールシリンダ20へブレーキフルードを供給する際には閉弁するように制御される。
【0039】
このように構成されたブレーキ制御装置10は、装置が正常時の場合、運転者がブレーキペダル12を踏み込むと、電磁弁22は閉状態とされ、ブレーキペダル12のストローク量に応じてアキュムレータ50から高圧のブレーキフルードが開弁された増圧弁40を通過してホイールシリンダ20へと供給される。そして、ホイールシリンダ20は、ブレーキフルードの供給を受けて車輪に制動力を付与する。その後、運転者がブレーキペダル12の踏み込みを解除すると、減圧弁42が開弁し、ホイールシリンダ20内のブレーキフルードは油圧給排管28を経由してリザーバタンク26に回収され、ホイールシリンダ20の圧力が減圧される。
【0040】
ところで、ブレーキ制御装置10において、減圧弁42が故障し開弁しないような状況では、ブレーキペダル12の操作を解除しても減圧弁42からブレーキフルードを油圧給排管28へ排出することができない。そのままでは、ホイールシリンダ20の残圧によるブレーキの引きずりが問題となる。しかしながら、ブレーキ制御装置10においてブレーキペダル12の操作が解除されると、電磁弁22が開弁される。通常、マスタシリンダ圧よりホイールシリンダ圧の方が圧力が高くなっているため、ホイールシリンダ側の高圧のブレーキフルードを、ブレーキ油圧制御管16,18を逆流させてリザーバタンク26に戻すことができる。
【0041】
このとき、電磁弁22の弁体142には、ホイールシリンダ圧とマスタシリンダ圧との差圧に基づく力がかかることになる。そのため、仮に弁座140側の液室154と連通している流路150をマスタシリンダ側に、弁室147と連通している流路152をホイールシリンダ側に接続したとすると、前述の差圧に打ち勝つだけの荷重でバネ146を圧縮しなくてはならない。ブレーキ制御装置10において発生し得るホイールシリンダ圧の最大圧はマスタシリンダ圧よりもかなり大きいため、電磁弁22を開弁するためには、圧縮されているバネ146の荷重を大きくしないと、非通電状態であってもロッド143を押し戻すことができない。バネ146の荷重を大きくすることでこのような問題は解消するが、一方で、通常の閉弁時においては、圧縮されたバネ146の大きな荷重に打ち勝つように過大な電流が必要となり、消費電力の観点から更なる改善が必要となっている。
【0042】
そこで、本実施の形態に係る電磁弁22は、弁体142が配置されている弁室147と連通している流路152がマスタシリンダ側に接続され、弁座140を挟んで弁室147と反対側に設けられている液室154と連通している流路150がホイールシリンダ側に接続されている。
【0043】
これにより、ブレーキペダル12の操作を解除したにもかかわらずホイールシリンダ20の減圧制御、例えば減圧弁42に不具合があり、ホイールシリンダ20の残圧によりホイールシリンダ側の流路に接続されている液室154が弁室147よりも高圧になるような状況であっても、弁体142にかかる力は弁体142が弁座140から離間する向きである。そのため、弁体142を弁座140から離間させる方向に付勢するバネ146の荷重を大きく設定しなくても、ホイールシリンダ20の残圧の大きさにかかわらず非通電時の電磁弁22を開弁状態とすることが容易となる。
【0044】
その結果、ホイールシリンダ20のブレーキフルードをマスタシリンダ14側に確実に流すことが可能となり、ホイールシリンダ20の残圧によるブレーキの引きずりを低減することができる。また、ホイールシリンダ20が発生する最大圧力を考慮することなく、マスタシリンダ14からホイールシリンダ20へブレーキフルードを供給する際に電磁弁22が自閉しない程度にバネ146の荷重を小さく設定できる。そのため、電磁弁22FL,22FRを閉弁する際にバネ146の荷重に打ち勝つために必要な駆動電流を小さくすることができ、ブレーキ制御装置10の消費電力を低減することができる。
【0045】
なお、バネ146の荷重の下限としては、ブレーキ制御装置10において、アキュムレータ50からではなくマスタシリンダ14からホイールシリンダ20へブレーキフルードを供給するような制動モードにおいて、マスタシリンダ14から供給されるブレーキフルードの圧力により電磁弁22が自閉しない程度に設定すればよい。なお、本実施の形態に係る電磁弁22は、マスタシリンダ14から供給されるブレーキフルードが弁体142の移動方向に対して垂直な方向で弁室147に流入するため、弁体142を直接下方に移動させる力が働きにくく、その点でも自閉しにくい構成となっている。
【0046】
また、本実施の形態に係るECU200は、電磁弁22への通電量によって開閉を制御する。ECU200は、マスタシリンダ14で発生しているマスタシリンダ圧の情報をマスタシリンダ圧センサ48から、ホイールシリンダ20で発生しているホイールシリンダ圧の情報をホイールシリンダ圧センサ44から取得し、マスタシリンダ圧とホイールシリンダ圧との差圧に基づいて通電量を制御する。これにより、差圧に関係なく通電量を固定値として電磁弁22の開閉を制御する場合と比較して、例えば、差圧が小さい場合には小さい通電量で電磁弁22を閉弁することが可能となり、ブレーキ制御装置10の消費電力を更に低減することができる。
【0047】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における処理の組合せや順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施の形態に係るブレーキ制御装置を示す系統図である。
【図2】本実施の形態のマスタカット弁として用いられる常開型の電磁弁の断面を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
10 ブレーキ制御装置、 12 ブレーキペダル、 14 マスタシリンダ、 16 ブレーキ油圧制御管、 18 ブレーキ油圧制御管、 20 ホイールシリンダ、 22 電磁弁、 23 シミュレータカット弁、 24 ストロークシミュレータ、 26 リザーバタンク、 28 油圧給排管、 30 高圧管、 32 モータ、 34 オイルポンプ、 40 増圧弁、 42 減圧弁、 44 ホイールシリンダ圧センサ、 46 ストロークセンサ、 48 マスタシリンダ圧センサ、 50 アキュムレータ、 51 アキュムレータ圧センサ、 80 油圧アクチュエータ、 140 弁座、 142 弁体、 143 ロッド、 144 プランジャ、 145 スリーブ、 146 バネ、 147 弁室、 149 ソレノイド、 150 流路、 152 流路、 154 液室、 200 ECU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキフルードを運転者によるブレーキ操作部材の操作量に応じて加圧するマニュアル液圧源と、
運転者のブレーキ操作から独立した動力を用いてブレーキフルードによる蓄圧を行う動力液圧源と、
前記マニュアル液圧源および前記動力液圧源の少なくとも一方からのブレーキフルードの供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、
前記マニュアル液圧源と前記ホイールシリンダとを接続する経路に設けられ、前記マニュアル液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には開弁するとともに、前記動力液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には閉弁するように制御される制御弁と、を備え、
前記制御弁は、弁体を弁座から離間させる方向に付勢するバネが設けられており、通電時に弁体がバネを圧縮しながら弁座に着座することで閉弁する電磁弁であって、前記弁体が配置されている弁室がマニュアル液圧源側の流路に接続され、前記弁座を挟んで前記弁室と反対側に設けられている液室がホイールシリンダ側の流路に接続されていることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
ブレーキフルードを運転者によるブレーキ操作部材の操作量に応じて加圧するマニュアル液圧源と、
運転者のブレーキ操作から独立した動力を用いてブレーキフルードによる蓄圧を行う動力液圧源と、
前記マニュアル液圧源および前記動力液圧源の少なくとも一方からのブレーキフルードの供給を受けて車輪に制動力を付与するホイールシリンダと、
前記マニュアル液圧源と前記ホイールシリンダとを接続し、前記マニュアル液圧源から前記ホイールシリンダへのブレーキフルードの供給が可能なように構成されているマニュアル液圧伝達経路と、
前記動力液圧源と前記ホイールシリンダとを接続し、前記動力液圧源から前記ホイールシリンダへのブレーキフルードの供給が可能なように構成されている動力液圧伝達経路と、
前記ホイールシリンダ、ブレーキフルードを収容するリザーバおよび前記動力液圧源を接続し、前記ホイールシリンダから排出されたブレーキフルードを前記リザーバで回収できるように構成された回収経路と、
前記マニュアル液圧伝達経路に設けられ、前記マニュアル液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には開弁するとともに、前記動力液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には閉弁するように制御される第1制御弁と、
前記動力液圧伝達経路に設けられ、前記動力液圧源から前記ホイールシリンダへブレーキフルードを供給する際には開弁するように制御される第2制御弁と、
前記ホイールシリンダの下流側に設けられ、前記ホイールシリンダから前記回収経路へブレーキフルードを排出する際には開弁するように制御される第3制御弁と、を備え、
前記第1制御弁は、弁体を弁座から離間させる方向に付勢するバネが設けられており、通電時に弁体がバネを圧縮しながら弁座に着座することで閉弁する電磁弁であって、前記弁体が配置されている弁室がマニュアル液圧源側の流路に接続され、前記弁座を挟んで前記弁室と反対側に設けられている液室がホイールシリンダ側の流路に接続されていることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記電磁弁への通電量によって開閉を制御する制御手段を更に備え、
前記制御手段は、前記マニュアル液圧源で発生している第1の液圧と前記ホイールシリンダで発生している第2の液圧との差圧に基づいて前記通電量を決定することを特徴とする請求項1または2に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−36627(P2010−36627A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199011(P2008−199011)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】