説明

ブレーキ制御装置

【課題】モータ回転数の推定誤差を低減することができる装置を提供すること。
【解決手段】モータMの端子間電圧VmotとモータMの特性に基づいてモータMの回転数を推定するモータ回転数推定部4を有するコントロールユニットCPUを備えた。ブレーキ回路内のブレーキ液を流動させるポンプPを回転駆動するモータMの回転数ωを推定する際、モータ端子間電圧VmotとモータMの特性(イナーシャIや容積効率η等の諸元、及びトルク−回転数特性)に基づいて推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関し、特にポンプを駆動するモータの回転数を推定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータの回転数を推定する装置が知られている。例えば特許文献1に記載の装置は、ブレーキ制御装置に適用され、ブレーキ回路内のブレーキ液を流動させるポンプを回転駆動するモータの回転数を推定し、推定したモータ回転数を用いてモータ(ポンプ)を制御する。この装置は、モータ非通電時にはモータ逆起電力からモータ回転数を推定し、モータ通電時には電源電圧であるバッテリ電圧とモータ端子間電圧とに基づいてモータ回転数を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−295120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の装置では、モータ回転数の推定誤差が生じるおそれがある。本発明の目的とするところは、モータ回転数の推定誤差を低減することができる装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の装置は、好ましくは、モータの端子間電圧とモータの特性に基づいてモータ回転数を推定する。
【発明の効果】
【0006】
よって、モータ回転数の推定誤差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置BCUを搭載したブレーキシステムの構成図である。
【図2】実施例1の液圧制御ユニットHCUにおける油圧回路構成を示す。
【図3】実施例1の電子制御ユニットECUにおけるモータ駆動制御に関する各部の構成を示す。
【図4】モータのトルク−回転数特性線図を示す。
【図5】モータ駆動回路に電流センサを設けた例を示す。
【図6】実施例1のコントロールユニットCPUによる制御フローを示す。
【図7】実施例1のブレーキ制御装置BCUによりモータ駆動制御を実施した場合のタイムチャートを示す。
【図8】実施例3のコントロールユニットCPUによる制御フローを示す。
【図9】実施例3のブレーキ制御装置BCUによりモータ駆動制御を実施した場合のタイムチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の装置を実現する形態を、図面に基づき説明する。
【0009】
[実施例1]
[実施例1の構成]
実施例1のモータ回転数推定装置(以下、装置1という。)は、自動車のブレーキ制御装置(以下、装置BCUという。)に適用される。図1は、装置BCUを搭載した車両のブレーキシステムの概略構成図である。ブレーキシステムは、マスタシリンダM/Cと、ホイルシリンダW/Cと、これらに接続された装置BCUと、各種センサと、を有している。ブレーキペダルBPは、倍力装置であるブースタBSを介してマスタシリンダM/Cに接続されている。マスタシリンダM/Cは、一体に設けられたリザーバタンクRESからブレーキ液の供給を受けてブレーキペダルBPの踏み込み量に応じた液圧(マスタシリンダ圧)Pmcを発生する。マスタシリンダM/Cは所謂タンデム型であって、2系統のブレーキ配管10,20を介して装置BCU(具体的には液圧制御ユニットHCU)に接続されている。マスタシリンダM/Cは、ブレーキペダルBPが踏み込まれると、ブレーキ回路10,20を介してブレーキ液を各ホイルシリンダW/Cに供給する。ホイルシリンダW/Cは各車輪FL,FR,RL,RRに設けられてブレーキ圧(ホイルシリンダ圧Pwc)を発生する。ホイルシリンダW/Cは、夫々ブレーキ配管10l,20l,20m,10mを介して、装置BCU(液圧制御ユニットHCU)に接続されている。各種センサは、車両情報の検出手段であり、車輪速度センサS1と、操舵角センサS2と、車両挙動センサユニットSUとを有している。車輪速度センサS1は、各車輪FL,FR,RL,RRに設けられ、夫々の回転速度(車輪速度)を検出する。操舵角センサS2は、運転者(ドライバ)が操作するステアリングホイールSW(ハンドル)の回転角、すなわち操舵角を検出する。車両挙動センサユニットSUは、車両のヨーレイト、前後加速度(前後G)、横加速度(横G)等の、車両の挙動を夫々検出するセンサS3〜S5を集積したユニットである。
【0010】
装置BCUは、電子制御ユニットECU(エレクトロニック・コントロールユニット)と液圧制御ユニットHCU(ハイドロリック・コントロールユニット)とを一体のユニットとして有している。なお、両ユニットECU,HCUを別体としてもよい。電子制御ユニットECUは、各センサS1〜S5の信号の入力を受け、これらの信号を基にブレーキ制御の介入及び離脱の判断を行う。ブレーキ制御とは、アンチスキッド制御ABS(Anti Lock Brake System)やスタビリティ制御VDC(Vehicle Dynamics Control)や車間距離制御ACC(Adaptive Cruise Control)等、安全性や利便性を確保する機能の要求により、車両の各車輪FL等のブレーキ圧を制御することを意味する。電子制御ユニットECUは、液圧制御ユニットHCUの各アクチュエータを駆動して、各車輪FL等のホイルシリンダW/Cの圧力(ブレーキ圧)を調整することにより、車両挙動等を制御する。液圧制御ユニットHCUは、アクチュエータとして各種のバルブ11〜17、21〜27とポンプP(モータM)を有しており、電子制御ユニットECUからの指令に従いこれらを駆動して各車輪FL等のホイルシリンダ圧Pwcを制御する。液圧制御ユニットHCU は、ABSのようにマスタシリンダ圧Pmc以下にホイルシリンダ圧Pwcを制御することも、VDCやACC等のようにマスタシリンダ圧Pmc以上にホイルシリンダ圧Pwcを制御することも可能に設けられている。
【0011】
図2は、液圧制御ユニットHCUにおける油圧回路の概略構成を示す。ブレーキ回路は、マスタシリンダM/Cから、独立した2つの系統すなわちプライマリ(P)系統とセカンダリ(S)系統に分かれている。具体的には、左前輪FLと右後輪RRのホイルシリンダW/CがP系統のブレーキ回路10に、右前輪FRと左後輪RLのホイルシリンダW/CがS系統のブレーキ回路20に夫々接続された、いわゆるX配管構造となっている。なお、所謂前後配管構造としてもよい。ポンプPはP,S系統ごとに設けられており、第1ポンプP1と第2ポンプP2を有している。ポンプP(P1,P2)は、モータMにより回転駆動されて作動し、ブレーキ液の吸入・吐出を行うポンプである。ポンプPは、モータMの回転に伴い、マスタシリンダM/C内のブレーキ液をホイルシリンダW/Cに供給し、又は液圧制御ユニットHCUに内蔵のリザーバ16,26に貯留したブレーキ液を掻き出す。モータMは、ポンプ駆動用モータ(ポンプモータ)であり、直流ブラシモータである。各バルブは、電磁弁(ソレノイドバルブ)であり、遮断弁(アウト側ゲート弁)11,21と、供給弁(イン側ゲート弁)17,27と、保持弁(増圧弁)12,13,22,23と、減圧弁14,15,24,25とを有している。これらのバルブは、コイルへ駆動電流が通電されることにより電磁力を発生し、プランジャ等を往復移動させることで弁を開閉作動する周知のものである。
【0012】
以下、p系統を例にとり、ブレーキ回路10について説明する。ブレーキ回路10のマスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/C側に向かう途中には、遮断弁11が設けられている。遮断弁11のホイルシリンダW/C側のブレーキ回路10kはブレーキ回路10a,10bに分岐している。ブレーキ回路10a,10bは、夫々ブレーキ回路10l,10mを介してホイルシリンダW/C(FL,RR)に接続している。ブレーキ回路10a,10b上には、保持弁12,13が夫々設けられている。保持弁12,13のホイルシリンダW/C側のブレーキ回路10a,10bには、リターン通路10c,10dが夫々接続している。リターン通路10c,10d上には減圧弁14,15が夫々設けられている。リターン通路10c,10dは合流してリターン通路10eを形成し、リターン通路10eはリザーバ16に接続している。リザーバ16は、液圧制御ユニットHCUに内蔵されたリザーバタンクであり、ブレーキ液を貯留可能に設けられている。一方、ブレーキ回路10は遮断弁11のマスタシリンダM/C側で分岐し、吸入回路10gを形成している。吸入回路10g上には、吸入回路10gの連通・遮断を切り換える供給弁17が設けられている。吸入回路10gは、リザーバ16からのリターン通路10fと合流して吸入回路10hを形成している。吸入回路10hには、マスタシリンダM/C以外の液圧源として、第1ポンプP1が接続されている。ポンプP1は、吐出回路10iを介して、遮断弁11のホイルシリンダW/C側のブレーキ回路10kと接続している。なお、リザーバ16からのリターン通路10f上には、リザーバ16へのブレーキ液の逆流を防止するチェック弁が設けられている。また、吸入回路10h上には、第1ポンプP1へのブレーキ液の流通のみを許容するチェック弁が設けられ、吐出回路10i上には、第1ポンプP1へのブレーキ液の逆流を防止するチェック弁が設けられている。s系統のブレーキ回路20も、上記p系統(ブレーキ回路10)と同様に構成されている。なお、ブレーキ回路20における吸入回路20gの上流側には、マスタシリンダ圧Pmcを検出する液圧センサS6が設けられている。
【0013】
供給弁17,27は、オン・オフ弁であり、非通電時に閉弁する常閉弁である。供給弁17,27は、ホイルシリンダ圧Pwcをマスタシリンダ圧Pmc以上にする場合、通電によって開弁し、マスタシリンダM/C内のブレーキ液をポンプPを介してホイルシリンダW/Cに供給することを可能にする。遮断弁11,21は、比例制御弁であり、非通電時に開弁する常開弁である。遮断弁11,21は、ホイルシリンダ圧Pwcをマスタシリンダ圧Pmc以上にする場合、通電によって閉弁し、ポンプPで過給されたブレーキ液がマスタシリンダM/Cに戻らないようにしたり、遮断弁11,21の開弁代を調節することによって下流側(ホイルシリンダW/C側)と上流側(マスタシリンダM/C側、ポンプP側)との液圧差を任意に制御したりする。なお、遮断弁11,21のマスタシリンダM/C側にはオリフィスが設けられている。また、ホイルシリンダW/C側(ポンプP側)からマスタシリンダM/C側へのブレーキ液の流通を防止するチェック弁が、遮断弁11,21と並列に設けられている。保持弁12,13,22,23は、比例制御弁であり、非通電時に開弁する常開弁である。保持弁12等は、上流側よりもホイルシリンダ圧Pwcを低く保ちたい場合、通電によって閉弁したり、上流側と下流側の差圧を利用してホイルシリンダ圧Pwcを増圧したい場合に保持弁12等の開弁代又は開弁時間を調節することによって任意のホイルシリンダ圧Pwcの増圧勾配を得たりする。なお、保持弁12等のマスタシリンダM/C側にはオリフィスが設けられている。また、上流側から下流側へのブレーキ液の流通を防止するチェック弁が、保持弁12等と並列に設けられている。減圧弁14,15,24,25は、オン・オフ弁であり、非通電時に閉弁する常閉弁である。減圧弁14等は、ABS時のようにホイルシリンダ圧Pwcを減圧したい場合、通電によって開弁し、ホイルシリンダW/Cからのブレーキ液をリザーバ16,26に流す。リザーバ16等は、減圧弁14等によりホイルシリンダ圧Pwcを減圧した場合、ホイルシリンダW/Cから流出したブレーキ液を一時的に貯留する。なお、減圧弁14等のホイルシリンダW/C側にはオリフィスが設けられている。
【0014】
以上の構成により、装置BCUは、車両挙動や車輪速度に応じて各車輪のブレーキ圧を調整し、ABS、VDC、ACC等のブレーキ制御を実行する。これら制御の詳細は周知であるため、説明を省略する。
【0015】
図3は、電子制御ユニットECUにおけるモータ駆動制御に関する各部の概略構成を示す。電子制御ユニットECUは、コントロールユニットCPUと、駆動回路2と、信号回路3とを有している。CPUは、各センサS1〜S5の信号を読み込み、ブレーキ制御の介入を判断して、液圧制御ユニットHCUを駆動する。その際、モータMの回転数(モータ回転数)を推定し、推定されたモータ回転数ωに基づいてモータMの作動を制御する。
【0016】
駆動回路2は、電源であるバッテリBATからモータMへ駆動電力を供給するための回路であり、バッテリBATとグラウンド(接地)GNDとを接続する電源回路2aと、電源回路2a上に設けられた電界効果トランジスタFETと、モータMと並列に電源回路2aに接続されたダイオードDとを有している。FETは、モータ駆動用のスイッチング素子であり、CPUの指令に基づき駆動され、モータMを回転させるための電源電圧をモータMへ供給する。FETは、モータMのハイ側(モータMから見てバッテリBAT側)に配置されたFET1と、モータMのロー側(モータMから見てグラウンドGND側)に配置されたFET2を有している。なお、本実施例1では、FETを2つ搭載した場合の例を示したが、FET1, FET2のどちらか一方のみを搭載することとしてもよい。モータMのハイ側(モータM とFET1の間)とロー側(モータM とFET2の間)とを接続するバイパス回路2b上には、整流素子としてのダイオードDが設けられている。ダイオードDは、モータMをON-OFF制御する場合に、逆電圧保護ダイオードとして動作する。なお、モータMのON-OFF制御時に、駆動周期が十分に長くてFETの発熱性に問題がなければ、ダイオードDを装着しないこととしてもよい。
【0017】
信号回路3は、モータMの端子間電圧Vmotを検出するための検出回路であり、信号のノイズ除去又は平滑化のためのフィルタ回路として特定の(低)周波数範囲のみを通過させるローパスフィルタLPFを有している。信号回路3は、モータMのハイ側(モータM とFET1の間)に接続された信号回路3aと、ロー側(モータM とFET2の間)に接続された信号回路3bとを有しており、フィルタLPF1,LPF2が信号回路3a,3bに夫々設けられている。モータMのハイ側の電圧は、信号回路3aを通ってフィルタLPF1を経由してCPUに取り込まれ、CPU内でAD変換されて、モータハイ側電圧Vmot1として検出される。モータMのロー側の電圧は、信号回路3bを通ってフィルタLPF2を経由してCPUに取り込まれ、CPU内でAD変換されて、モータロー側電圧Vmot2として検出される。
【0018】
CPUは、モータ回転数を推定する推定手段としてのモータ回転数推定部4と、モータMの回転数を制御する制御手段としてのモータ回転数制御部(モータ駆動制御部)5とを有している。モータ回転数推定部4は、装置1を構成しており、モータMの端子間電圧VmotとモータMの特性とに基づいてモータMの回転数を推定する(以下、推定されたモータ回転数を推定モータ回転数ωという。)。モータ回転数推定部4は、モータMに掛かる負荷トルク(モータ負荷トルク)TLoadを算出する算出手段としてのモータ負荷トルク算出部40と、モータMが発生するモータ発生トルク(モータトルク)Tmを算出する算出手段としてのモータ発生トルク算出部41と、算出された負荷トルクTLoad及び発生トルクTmに基づいて推定モータ回転数ωを算出するモータ回転数算出部42とを有している。モータ負荷トルク算出部40は、液圧に関するモータ負荷トルク(モータ負荷トルクのうちの液圧負荷分である液圧負荷トルク)TLを算出する算出手段としての液圧負荷トルク算出部401と、モータMの回転数に依存するモータ負荷トルク(モータ負荷トルクのうちの粘性抵抗分である粘性負荷トルク)Tcを算出する算出手段としての粘性負荷トルク算出部402とを備えている。
【0019】
(液圧負荷トルク算出)
まず、液圧負荷トルク算出部401の算出内容について説明する。各ブレーキ系統(p系統及びs系統)でモータMに作用する液圧負荷トルクTLは、p,s系統ごとの圧力負荷(モータ負荷圧)PLoadと、モータM及びポンプP等のフリクション等がその要因となる。モータ負荷圧PLoadは、マスタシリンダ圧Pmcと各ホイルシリンダ圧Pwcのセレクトハイ値であり、各輪FL等のホイルシリンダ圧PwcをPxx(xx:FL,FR,RL,RR)とすると、p,s系統ごとに次式で表される。
p系統: PLoad_p=max(Pmc,PFL,PRR
s系統: PLoad_s=max(Pmc,PFR,PRL
マスタシリンダ圧Pmcは液圧センサS6により検出される。ホイルシリンダ圧Pwcは、(前回の制御周期で算出された)推定モータ回転数ωすなわちポンプPの吐出量や、各バルブ12等の開弁時間等に基づき推定される。なお、ホイルシリンダ圧Pwcを検出する液圧センサを別途設けることとしてもよい。各系統の液圧負荷トルクTL_p,TL_sは、ポンプPの容積効率をη、ポンプPのプランジャ断面積をS、モータ回転軸偏心量をe、円周率をπ、ポンプPやモータMのフリクション損失トルクをTfとすると、次式で近似される。
p系統: TL_p=(η×PLoad_p×S×e)/π+Tf
s系統: TL_s=(η×PLoad_s×S×e)/π+Tf
よって、両系統の液圧負荷トルクTL_p,TL_sの和から、液圧負荷トルクTLは、次式で算出される。
TL=TL_P+ TL_S
【0020】
(粘性負荷トルク算出)
本実施例1では、モータMの負荷トルクTLoadとして、モータ回転数に依存する成分も考慮する。例えば前回の制御周期で算出された推定モータ回転数ωを用い、粘性係数をcとして、粘性負荷トルク算出部402は、粘性負荷トルクTcを次式で算出する。
Tc=c×ω
モータ負荷トルク算出部40は、算出したモータ負荷トルクの両成分TL,Tcを加算して、モータ負荷トルクTLoadを算出する(TLoad=TL + Tc)。
【0021】
(モータ発生トルク算出)
モータ発生トルク算出部41は、モータ非通電時には、モータMがトルクを発生しないので、次式によりモータ発生トルクTmを算出する。
Tm=0
モータ発生トルク算出部41は、モータ通電時には、モータ端子間電圧(モータ両端電圧)Vmotに基づきモータ発生トルクTmを算出する。モータ両端電圧Vmotは、検出されたVmot1とVmot2の差により算出される(Vmot=Vmot1−Vmot2)。なお、本実施例1では、モータロー側電圧Vmot2を検出することとしたが、検出しないこととしてもよい。この場合、モータ端子間電圧Vmotは、Vmot1により算出される(Vmot=Vmot1)。モータ発生トルクTmは、モータ特性を表すために広く用いられているモータ性能線図のうち、トルク−回転数特性線図か ら算出可能である。図4は、周知のトルク−回転数特性線図を示す。図4に示すように、モータ発生トルクTmとモータ回転数ωは線形の関係にあり、モータ端子間電圧Vmotに応じて、その特性線は平行に移動する。モータ電圧基準値をVmot_ref、トルクゼロ(無負荷)時のモータ回転数基準値をωref、最大モータ発生トルク基準値をTm_refとすると、モータ発生トルクTmは、(前回の制御周期で算出された)推定モータ回転数ωを用いて次式により算出される。
Tm=Vmot/Vmot_ref×Tm_ref−Tm_ref/ωref×ω
【0022】
なお、モータ発生トルクTmを以下の方法で算出することとしてもよい。すなわち、モータMの電流をi、モータMの電気抵抗をR、モータMのインダクタンスをL、モータMの逆起電力定数をKeとすると、モータMの電気的釣り合い式は、
Vmot=R×i+L×di/dt+Ke×ω
である。この式から、電流iは以下のように算出される。
di/dt=1/L(Vmot−R×i−Ke×ω)
i=1/L×∫(Vmot−R×i−Ke×ω)dt
Tmは、モータ電流iに比例するため、モータMのトルク定数Ktを用いて、次式により算出される。
Tm=Kt×i=Kt/L×∫(Vmot−R×i−Ke×ω)dt
なお、インダクタンスLの項を省略して以下のように算出することとしてもよい。
Vmot=R×i+Ke×ω
i=1/R×(Vmot−Ke×ω)
Tm=Kt×i=Kt/R×(Vmot−Ke×ω)
【0023】
また、モータ電流iを電流センサにより検出し、上記のように算出した電流値iに代えて検出された電流値を用い、次式によりTmを算出することも可能である。
Tm=Kt×i
図5に、モータ駆動回路に電流センサS7を設けた例を示す。電流センサS7は、モータMに流れる電流iを検出するための検出回路であり、電源回路2aにおいてモータMのハイ側(具体的にはバイパス回路2bの接続部位とモータMとの間)に設けられた抵抗R1と、抵抗R1の両端に接続された増幅器AMPと、増幅器AMPに接続された信号回路3cとから構成されている。信号回路3cには、ローパスフィルタLPF3が設けられている。電源回路2aに流れる電流iは増幅器AMPにより増幅された後、信号回路3cを通ってフィルタLPF3を経由してCPUに取り込まれ、CPU内でAD変換されて、モータ電流iとして検出される。
【0024】
(モータ回転数算出)
モータ回転数算出部42は、モータ負荷トルク算出部40及びモータ発生トルク算出部41により算出された負荷トルクTLoad及び発生トルクTmと、予め設定されたモータMのイナーシャIとに基づいて、モータMの回転数ωを算出する。具体的には、モータ回転数ωの単位時間(例えば1制御周期)当たりの変化量をdωとすると、モータMにおけるトルクの釣り合い式は次式となる。
Tm=I×dω+TLoad
よって、推定モータ回転数ωは、次式で算出される。
ω=∫(dω)dt=1/I×∫(Tm−TLoad)dt
モータ発生トルクTmは、モータ通電時にはモータ端子間電圧Vmotとトルク−回転数特性に基づき算出される。よって、モータ回転数推定部4は、モータ端子間電圧Vmotと、モータMの固有の特性(トルク−回転数特性)と、モータMにかかる負荷トルクTLoadとに基づいて、モータ回転数ωを推定する。また、モータ負荷トルクTLoadはモータMの諸元(容積効率η等)に基づき算出される。よって、モータ回転数推定部4は、モータ端子間電圧Vmotと、モータMの固有の特性(イナーシャIや容積効率η等の諸元、及びトルク−回転数特性)とに基づいて、モータ回転数ωを推定する。
【0025】
(モータ回転数制御)
モータ回転数制御部5は、モータ回転数推定部4により推定されたモータ回転数(推定モータ回転数)ωに基づいて、モータMを駆動制御する。具体的には、推定モータ回転数ωと予め設定された目標モータ回転数ξとに基づいて、推定モータ回転数ωが目標モータ回転数ξに追従するよう、FET1,FET2に指令信号を出力してモータMの通電量を調節し、モータMの回転数を制御する。言い換えると、推定モータ回転数ωと目標モータ回転数ξとの関係により、モータMの通電と非通電を制御する。本実施例1では、推定モータ回転数ωを、比較的遅い(100Hz程度の低周波の)モータ駆動制御であるON-OFF制御に用いている。具体的には、CPUには、第1の所定回転数βと第2の所定回転数αが記憶されており、目標モータ回転数ξより第1の所定回転数βだけ高い第1の閾値(非通電閾値=ξ+β)と、目標モータ回転数ξより第2の所定回転数αだけ低い第2の閾値(通電閾値=ξ−α)とが設定されている。モータMへの通電中、推定モータ回転数ωが第1の閾値を上回ると、モータMに対する通電を終了する。モータMへの非通電中、推定モータ回転数ωが第2の閾値を下回ると、モータMに対する通電を開始(再開)する。
【0026】
図6は、CPUで実行される制御のフローチャートを示す。この制御フローは所定の制御周期ごとに実行される。
ステップS1では、モータ回転数推定部4が推定モータ回転数ωを算出し、ステップS2へ進む。
ステップS2では、CPUのブレーキ制御判断部が、ABS、VDC、ACC等のブレーキ制御の要否を判断し、ステップS3へ進む。
ステップS3では、CPUのモータ駆動要求判断部が、制御の要否判断等に基づきモータMの駆動の要否を判断し、ステップS4へ進む。
ステップS4では、モータ駆動要求がなければモータ駆動要求フラグF1及びモータ通電フラグF2を0としてステップS81へ進む。モータ駆動要求があればモータ駆動要求フラグF1を1としてステップS5へ進む。
ステップS5では、CPUの目標モータ回転数演算部が、モータMの目標回転数(目標モータ回転数)ξを算出し、ステップS6へ進む。目標モータ回転数ξは、例えばABSでは、リザーバ16等が満杯にならない回転数、VDC等では、ホイルシリンダW/Cの必要な増圧勾配を確保可能な回転数に設定される。
ステップS1〜S5以外のステップS6〜S9は、モータ回転数制御部5が実行する。
ステップS6では、モータ回転数偏差ω_errを次式で算出し、ステップS71へ進む。
ω_err=目標モータ回転数ξ−推定モータ回転数ω
ステップS71では、ω_errが負でありかつその絶対値が第1の所定回転数βを上回る(ω_err<−βである)か否かを判断する。YESであれば、推定モータ回転数ωが非通電閾値(=ξ+β)を上回ると判断し、モータ通電フラグF2を0としてステップS81へ進む。NOであれば、ステップS72へ進む。
ステップS72では、ω_errが正(ゼロ以上)でありかつ第2の所定回転数αを上回る(ω_err>αである)か否かを判断する。YESであれば、推定モータ回転数ωが通電閾値(=ξ−α)を下回ると判断し、モータ通電フラグF2を1としてステップS82へ進む。NOであれば、ステップS9へ進む。
ステップS9では、前回制御周期のモータ駆動状態、すなわち通電又は非通電の状態を継続し、ステップS1へ戻る。ステップS9へ進んだということは、推定モータ回転数ωが、通電状態で非通電閾値(=ξ+β)に到達しておらず、又は非通電状態で通電閾値(=ξ−α)に到達していないことを表しているからである。
ステップS81では、モータMを非通電状態として、ステップS1へ戻る。
ステップS82では、モータMを通電状態として、ステップS1へ戻る。
【0027】
[実施例1の作用]
次に、装置1の作用を説明する。図7は、実施例1の装置BCUによりモータ駆動制御を実施した場合のタイムチャートを示す。
時刻t1以前では、ブレーキ制御の要求がなく、モータ駆動要求がないため、モータ駆動要求フラグF1及びモータ通電フラグF2は0である。モータMは非通電状態である(S4→S81)ため、検出されるモータ端子間電圧(モータ両端電圧)Vmotは0である。目標モータ回転数ξは算出されないため0であり、モータMは停止しているため推定されるモータ回転数ωは0である。
時刻t1で、ABS、VDC、ACC等のブレーキ制御の要求が出されるため、モータ駆動要求フラグF1を1とすると共に、目標モータ回転数ξを算出する(S4→S5)。なお、時刻t16までブレーキ制御要求(モータ駆動要求)が出され続け、時刻t14まで目標モータ回転数ξが略一定に保たれるものとする。時刻t1では、推定モータ回転数ω(=0)が通電閾値(=ξ−α)を下回っているため、モータ通電フラグF2を1としてモータMを通電状態とする(S6→S71→S72→S82)。時刻t1後、モータ端子間電圧Vmotによりモータ回転数は上昇し、推定モータ回転数ωも同様に上昇する。その間、逆起電力によりVmotは徐々に減少する。時刻t2まで、推定モータ回転数ωが通電閾値(=ξ−α)を下回っているため、モータ通電フラグF2を1として通電状態を継続する(S6→S71→S72→S82)。
時刻t2で、モータ回転数(推定モータ回転数ω)が通電閾値(=ξ−α)を上回る。以後、時刻t3まで、推定モータ回転数ωが非通電閾値(=ξ+β)以下であるため、モータ通電フラグF2を1として通電状態を継続する(S6→S71→S72→S9)。
時刻t3で、推定モータ回転数ωが非通電閾値(=ξ+β)を上回る。よって、モータ通電フラグF2を0としてモータMを非通電状態とする(S6→S71→S81)。以後、非通電によりモータ回転数は下降し、推定モータ回転数ωも同様に下降する。Vmotは時刻t3で非通電に切り替わったときに逆起電圧まで低下し、その後、モータ回転数の低下に伴い徐々に低下する。時刻t4まで、推定モータ回転数ωは非通電閾値(=ξ+β)以下であり、かつ通電閾値(=ξ−α)以上である。よって、モータ通電フラグF2を0として非通電状態を継続する(S6→S71→S72→S9)。
時刻t4で、推定モータ回転数ωが通電閾値(=ξ−α)を下回る。よって、モータ通電フラグF2を1としてモータMを通電状態とする(S6→S71→S72→S82)。通電によりモータ回転数(推定モータ回転数ω)は再び上昇する。Vmotは時刻t4で通電に切り替わったときに電流相当の電圧が加算される。
時刻t4から時刻t5までは、時刻t2から時刻t3までと同様であり、時刻t5から時刻t6までは、時刻t3から時刻t4までと同様である。以後同様に、時刻t13まで、モータMの通電と非通電とを繰り返すことで、モータ回転数が目標回転数ξの近傍に制御される。
時刻t13でモータMが非通電状態とされ、その後、時刻t14で、算出される目標モータ回転数ξが徐々に減少し始める。それに伴い、非通電閾値(=ξ+β)と通電閾値(=ξ−α)も徐々に減少し始める。モータMが非通電状態であることに伴い、モータ回転数(推定モータ回転数ω)は徐々に減少するが、その勾配は通電閾値(=ξ−α)の減少勾配よりも緩やかである。よって、時刻t15で、推定モータ回転数ωが通電閾値(=ξ−α)を上回るが、モータ通電フラグF2を0として非通電状態を継続する(S6→S71→S81)。
時刻t16で、ブレーキ制御の要求がなくなり、モータ駆動要求がなくなるため、モータ駆動要求フラグF1を0とすると共に、モータ通電フラグF2を0として非通電状態を継続する(S4→S81)。その後、時刻t17でモータMが停止する。時刻t16以後、目標モータ回転数ξは算出されないため0となり、モータ端子間電圧Vmot及び推定モータ回転数ωは徐々に減少し、時刻t17で0となる。
【0028】
上記モータMの駆動制御(ON-OFF制御)の間、装置1は、通電状態か非通電状態かに関わらず、モータMの回転数を推定する。よって、例えば、ブレーキシステムの要求に応じてモータMの通電を継続する必要がある状況でも、モータMの通電を中断することなくモータ回転数を推定できる。装置BCUは、装置1により推定されたモータ回転数ωに基づいてモータMを駆動制御することで、ブレーキ制御をより適確に行うことができる。なお、ブレーキ制御装置BCU以外の制御装置や、自動車に搭載される以外の制御装置に、本発明のモータ回転数推定装置を適用してもよい。
【0029】
(従来例との対比における作用効果)
従来の装置は、ポンプモータの非通電時に、発生するモータの逆起電力(逆起電圧)によりモータ回転数を推定している。また、ブレーキシステムの急制動要求時のようにモータの通電を継続する必要がある状況でもモータ回転数を推定できるようにするため、制御直前に電源電圧であるバッテリ電圧を推定すると共に、モータ通電時にモータ端子間電圧を検出し、上記バッテリ電圧推定値とモータ端子間電圧とに基づいてモータ回転数を推定している。これにより、急制動等で高液圧を要求する条件下でも、モータの通電を中断することなく液量還流制御を実行することを可能とし、ブレーキシステムの信頼性向上を図っている。しかし、この従来装置では、制御中のバッテリ電圧の変動によりモータ回転数の推定誤差が生じる可能性がある。例えば、この従来装置は、電源ラインにおける全ての抵抗分を考慮して、全バルブの端子間電圧により、バッテリ電圧を算出している。よって、バルブ駆動による全バルブ端子間電圧変動の影響を与えないためには、制御直前のバルブ非駆動時の全バルブ間電圧を記憶しておき、これをバッテリ電圧として使用する必要がある。このため、制御中のバッテリ電圧の変動時に、バッテリ電圧推定値の検出誤差(実値との乖離)が生じ、これによりモータ回転数の推定誤差が生じるおそれがある。また、従来の装置では、車両ハーネス抵抗や回路抵抗を加味した算出式でモータ回転数推定が行われているため、適用車種が変わると推定モータ回転数のチューニング(合わせ込み)が必要となる。
【0030】
これに対し、本実施例1の装置1では、ブレーキ回路内のブレーキ液を流動させるポンプPを回転駆動するモータMの回転数ωを推定する際、モータ端子間電圧VmotとモータMの特性(イナーシャIや容積効率η等の諸元、及びトルク−回転数特性)に基づいて推定する。よって、ブレーキ制御の実行による影響、例えば電源(バッテリBAT)の電圧の変動に影響されずに、モータ回転数を正確に推定することができる。したがって、モータ回転数の推定誤差を低減して推定精度を向上することができ、ポンプPの流量をより精度良く制御して、ブレーキシステムの信頼性をより向上することができる。また、適用車種ごとに車両ハーネス抵抗が変わっても、モータ回転数推定の合わせ込みが不要であるため、低コスト化し、また作業性を向上することができる。なお、モータ回転数を推定するために、モータ電流リップルやモータ端子間電圧リップルから算出する方法も考えられる。しかし、リップルを読み取り回転数を算出するには、高サンプリングな信号読み取りと演算が必要であり、また、リップル検出のための閾値の設定精度も難しい。これに対し、本実施例1では、リップルに基づかずにモータ回転数を推定するため、比較的簡易な構成、かつ簡便な算出方法で、モータ回転数の推定が可能である。
【0031】
装置1は、モータ負荷トルクTLoad及びモータ発生トルクTmを算出し、これらと、予め設定されたモータMのイナーシャIとに基づいてモータMの回転数ωを推定する。このように、モータMのトルク釣り合い式における各パラメータを直接用いてモータ回転数を推定するため、推定精度を向上することができる。また、装置1は、モータ端子間電圧Vmotと、モータMの固有の特性(トルク−回転数特性)と、モータ負荷トルクTLoadとに基づいてモータMの回転数ωを推定する。このように、モータ負荷トルクTLoadをパラメータとして分離し、これに基づきモータ回転数ωを推定することとしたため、モータ負荷トルクTLoadが刻々と変化するブレーキ制御中であっても、この変化に影響されずに(この変化による影響を入れ込んだ形で)モータ回転数を推定できるので、推定精度を向上することができる。また、非通電時にも、通電時と同じ算出式でモータ回転数ωを推定することが可能である。ここで、モータ負荷トルクTLoadを算出する際、モータMに作用する複数の負荷トルク成分を想定できるところ、これらの中から適当な成分を取捨選択することで、構成の簡素化と推定精度の向上との両立を図ることができる。本実施例1では、液圧に関する負荷トルク成分として液圧負荷トルクTLを、モータ回転数に関する負荷トルク成分として粘性負荷トルクTcを夫々算出し、これらを加算してモータ負荷トルクTLoadを算出する。このように液圧負荷トルクTLをパラメータとして分離し、これに基づきモータ回転数ωを推定することとしたため、モータMが作動液を流動させるポンプPを回転駆動する場合において、ブレーキ制御に伴いポンプP(モータM)に掛かる液圧負荷が変動したときでも、これに影響されずにモータMの回転数ωをより正確に推定することができる。なお、粘性負荷トルクTcの算出を省略することとしてもよい。本実施例1では、粘性負荷トルクTcを算出してこれをモータ負荷トルクTLoadに加えているため、モータ回転数に対する負荷トルクの影響をより正確に反映させることができる。
【0032】
装置BCUでは、ポンプPは、マスタシリンダM/Cから吸入したブレーキ液をホイルシリンダW/Cに向けて吐出する。よって、マスタシリンダM/Cからブレーキ液を吸入してホイルシリンダW/Cに向けて吐出するタイプのブレーキ制御において、装置1によりモータ回転数ωの推定精度を向上してモータ回転数(すなわちポンプPの吐出流量)の制御をより正確なものとすることで、上記ブレーキ制御の性能を向上することができる。また、ポンプPは、リザーバ16等に貯留したブレーキ液をマスタシリンダM/Cに向けて吐出する。よって、ABS等において、例えば運転者がブレーキペダルBPを強く踏み込んでも、装置1によりモータ回転数(ポンプ吐出流量)の制御をより正確なものとすることで、リザーバ16等に貯留したブレーキ液をより確実にマスタシリンダM/C側へ還流させることができる。なお、本実施例1では安価なプランジャ式のポンプPを用いることとしたが、他の形式、例えばギヤ式のポンプを用いることとしてもよい。この場合、液圧負荷トルクTLを算出するためのパラメータとして、プランジャ断面積S等に代えて、ポンプ形式に合った適当なパラメータを選ぶこととなる。
【0033】
本実施例1では、モータ駆動制御としてON-OFF制御を採用したため、制御構成を簡素化することができる。具体的には、モータMへの通電中、目標モータ回転数ξより第1の所定回転数βだけ高い第1の閾値(非通電閾値=ξ+β)を推定モータ回転数ωが上回ると通電を終了し、モータMへの非通電中、目標モータ回転数ξより第2の所定回転数αだけ低い第2の閾値(通電閾値=ξ−α)を推定モータ回転数ωが下回ると通電を開始する。このようにモータMの通電と非通電とを繰り返すことで、モータ回転数が目標回転数ξに追従する。なお、所定回転数α、βは同じ値でも異なる値でもよく、夫々適当な値を設定することができる。言い換えると、通電・非通電の閾値をどのように設定するかは任意である。また、閾値を用いる方法とは別の方法でモータMをON-OFF制御し、モータ回転数を目標回転数ξに追従させることとしてもよい。
【0034】
[実施例1の効果]
以下、実施例1の装置が奏する効果を列挙する。
(1)ブレーキ回路10,20内のブレーキ液を流動させるポンプPと、ポンプPを回転駆動するモータMと、モータMの端子間電圧VmotとモータMの特性に基づいてモータMの回転数を推定するモータ回転数推定部4と、モータ回転数推定部4により推定されたモータ回転数ωと予め設定した目標モータ回転数ξに基づいてモータMの回転数を制御するモータ回転数制御部5を有するコントロールユニットCPUを備えた。
よって、通電時にもモータMの回転数を推定する際の推定精度を向上し、ブレーキ制御の性能を向上することができる。
【0035】
(2)モータMにかかる負荷トルクTLoadを算出するモータ負荷トルク算出部40と、モータMが発生するモータトルクTmを算出するモータ発生トルク算出部41とを備え、モータ回転数推定部4は、算出された負荷トルクTLoad及びモータトルクTmと、予め設定されたモータMのイナーシャIに基づいてモータの回転数を推定する。
よって、モータMのトルク釣り合い式における各パラメータを直接用いてモータ回転数ωを推定することで、推定精度を向上することができる。
【0036】
(3)モータ負荷トルク算出部40は、液圧に関するモータ負荷トルクTLを算出する液圧負荷トルク算出部401と、モータMの回転数に依存するモータ負荷トルクTcを算出する粘性抵抗負荷トルク算出部402とを備え、両方のモータ負荷トルクTL、Tcを加算してモータ負荷トルクTLoadを算出する。
よって、ブレーキ制御に伴いポンプP(モータM)に掛かる液圧負荷が変動したときでも、これに影響されずにモータ回転数ωを正確に推定することができる。
【0037】
(4)マスタシリンダM/Cから吸入したブレーキ液をホイルシリンダW/Cに向けて吐出するポンプPと、ポンプPを回転駆動する直流ブラシモータMと、直流ブラシモータMの端子間電圧Vmotと、直流ブラシモータMの固有の特性と、直流ブラシモータMにかかる負荷トルクTLoadとに基づいてモータ回転数を推定するモータ回転数推定手段(モータ回転数推定部4)と、モータ回転数推定手段により推定されたモータ回転数ωに基づいてモータMを駆動制御するモータ駆動制御手段(モータ回転数制御部5)とを有するコントロールユニットCPUを備えた。
よって、上記(1)と同様の効果を得ることができるだけでなく、モータ負荷トルクTLoadが刻々と変化するブレーキ制御中であっても、この変化に影響されずにモータ回転数を精度よく推定することができる。
【0038】
(5)モータ駆動制御部(モータ回転数制御部5)は、モータ回転数推定部4により推定されたモータ回転数ωが目標モータ回転数ξに追従するように制御する。
このように、推定モータ回転数ωをモータ駆動制御に用いることで、モータ制御の精度を向上することができる。
【0039】
(6)コントロールユニットCPUは、目標モータ回転数ξより所定回転数βだけ高く設定された第1の閾値(非通電閾値=ξ+β)と、目標モータ回転数ξより所定回転数αだけ低く設定された第2の閾値(通電閾値=ξ−α)を備え、モータMへの通電時にモータ回転数推定部4により推定されたモータ回転数ωが第1の閾値を上回るとモータMに対する通電を終了し、モータ回転数推定部4により推定されたモータ回転数ωが第2の閾値を下回ったらモータMに対し通電を開始する。
よって、簡便な構成でON-OFF制御を実現し、推定モータ回転数ωを目標モータ回転数ξに追従させることで上記(5)と同様の効果を得ることができる
【0040】
[実施例2]
実施例2の装置1は、モータMの通電・非通電に応じてモータ回転数の推定方法を変える。通電時のモータ回転数の推定方法は実施例1と共通する一方、非通電時に逆起電力を用いてモータ回転数を推定する点で実施例1と異なる。以下、実施例1との相違点のみ説明する。
【0041】
実施例2のモータ回転数推定部4は、通電時にモータ回転数を推定する推定手段としての通電時モータ回転数推定部4aと、非通電時にモータ回転数を推定する推定手段としての非通電時モータ回転数推定部4bとを有している。通電時モータ回転数推定部4aは、通電直前に(具体的には非通電時における通電時へ切り替わる直前の制御周期で)推定されたモータ回転数ω0に、今回(通電時の各制御周期で)推定したモータ回転数変化量dωを加算した値を、推定モータ回転数ωとする。dωは、実施例1と同様、次式で算出される。
dω=1/I×(Tm−TLoad
よって、通電中のモータ回転数は、次式により算出される。
ω=ω0+∫(dω)dt=ω0+1/I×∫(Tm−TLoad)dt
一方、モータ非通電時のモータ回転数は、(非通電時の)モータ端子間電圧Vmotで観測される逆起電力に比例しているため、モータMの逆起電力定数をKeとすると、次式で算出される。
ω=Vmot/Ke
よって、非通電時モータ回転数推定部4bは、推定モータ回転数ωを上式により算出する。CPUは、通電時モータ回転数推定部4aと非通電時モータ回転数推定部4bにより推定されたモータ回転数ωに基づいてモータMへの通電と非通電を切換え、モータMを駆動制御する。その他の構成は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0042】
実施例2の装置1は、非通電時のモータ回転数を、モータMの逆起電力Vmotに基づいて推定することで、推定則を簡素化して演算負荷を軽減することができる。一方、通電時には、通電直前に推定されたモータ回転数ω0に、今回推定したモータ回転数変化量dωを加算した値を推定モータ回転数ωとすることで、非通電時のモータ回転数を上記のように推定した場合であっても、通電時におけるモータ回転数を実施例1と同様の算出式で精度良く推定することができるため、実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、実施例1でも、見方を変えれば、通電時には、通電直前に推定されたモータ回転数に今回推定したモータ回転数変化量を加算した値を推定モータ回転数としていることとなるため、この点は実施例2と同様である。
【0043】
[実施例2の効果]
(1)コントロールユニットCPUは、モータMの逆起電力Vmotに基づいて非通電時の回転数を推定する非通電時モータ回転数推定部4bを備えた。
よって、推定則を簡素化して演算負荷を軽減することができる。
【0044】
(2)モータ回転数推定部4は、通電時には、通電直前の推定されたモータ回転数ω0に今回推定したモータ回転数変化量dωを加算した値を推定モータ回転数ωとする。よって、上記(1)の効果を得つつ、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(3)ブレーキ回路10,20内のブレーキ液を流動させるポンプPと、ポンプPを回転駆動するブラシモータMと、ブラシモータMを制御するコントロールユニットCPUを備え、コントロールユニットCPUは、ブラシモータMの端子間電圧Vmotと、ブラシモータMの特性とに基づいて通電時のモータ回転数を推定する通電時モータ回転数推定部4aと、ブラシモータMの逆起電力Vmotに基づいて非通電時のモータ回転数を推定する非通電時モータ回転数推定部4bと、を備え、通電時モータ回転数推定部4aと非通電時モータ回転数推定部4bにより推定されたモータ回転数ωに基づいてブラシモータMへの通電と非通電を切換える。
このように、モータMの通電・非通電に応じてモータ回転数の推定方法を変えることで、実施例1と同様の効果を得つつ、上記(1)の効果を得ることができる。
【0046】
[実施例3]
実施例3の装置1は、推定モータ回転数ωを、比較的速い(概ね1kHz以上の高周波の)モータ駆動制御であるPWM制御に用いた例を示す。以下、実施例1との相違点のみ説明する。
【0047】
本実施例3でモータMを高周波PWM制御する場合、図3の駆動回路2において、ダイオードDは、フライホイールダイオードとして動作する。PWM制御の周期(モータ駆動周期)は、ダイオードDのフライホイール効果を得られる程度に短く設定する。モータ回転数制御部5は、予め設定された目標モータ回転数ξと算出された推定モータ回転数ωとの偏差(モータ回転数偏差ω_err)を算出する手段として回転数偏差算出部50を有している。モータ回転数制御部5は、算出された偏差ω_errに応じて、モータMを駆動する駆動デューティ比(モータ駆動Duty)を調整する。具体的には、偏差ω_errからPID制御量ζを算出してモータ駆動Dutyを決定し、このDutyに基づきモータMの通電と非通電を制御する。
【0048】
図8は、実施例3のCPUで実行される制御のフローチャートを示す。この制御フローは所定の制御周期ごとに実行される。ステップS11〜S13は、実施例1(図6)のステップS1〜S3と同様である。
S14では、モータ駆動要求がなければモータ駆動要求フラグF1を0としてステップS21へ進む。モータ駆動要求があればモータ駆動要求フラグF1を1としてS15へ進む。ステップS15、S16は、実施例1のステップS5、S6と同様である。
ステップS17では、モータ回転数偏差変化勾配(微分値)dωerrを次式で算出し、ステップS18へ進む。
err=ωerr(今回サンプリング値)−ωerr(前回サンプリング値)
なお、ωerr(前回サンプリング値)に関しては、ノイズの影響を受けにくくするため、より古いサンプリング値を使用することも可能である。また、ノイズ除去のためのローパスフィルタをdωerrに掛けることとしてもよい。
ステップS18では、モータ回転数偏差積分値iωerrを、iωerrの前回サンプリング値を用いて次式により算出し、ステップS19へ進む。
err=∫ωerrdt
ステップS19では、モータ回転数フィードバックFB制御のFB制御量(PID制御量)ζを次式により算出し、ステップS20へ進む。
ζ=Kp×ωerr+Kd×ωerr+Ki×iωerr
ここでKp、Kd、Kiは、PID制御の各フィードバック成分の制御ゲインである。
ステップS20では、モータ駆動Dutyを次式により算出し、モータMをDutyに応じた通電状態として、ステップS1に戻る。
Duty=Kduty×ζ
ここでKdutyは、FB制御量ζをDutyに変換する係数である。
ステップS21,S22では、モータMを非通電とする。具体的には、ステップS21で、モータ回転数偏差積分値iωerrを0にリセットし、ステップS22へ進んで、モータ駆動Dutyを0%にセットする。その後、ステップS1に戻る。
【0049】
図9は、実施例3の装置BCUによりモータ駆動制御を実施した場合のタイムチャートを示す。図9に示すように、高周波PWM制御により、ON-OFF制御(図7参照)よりも滑らかにモータ回転数が制御される。よって、作動音や振動の低減に有利である。
【0050】
[実施例3の効果]
(1)コントロールユニットCPUは、目標モータ回転数ξと算出された推定モータ回転数ωとの偏差ωerrを算出する回転数偏差算出部50を備え、算出された偏差ωerrに応じてモータMを駆動する駆動デューティ比Dutyを調整する。
よって、作動音や振動を低減することができる。
【0051】
(2)なお、実施例2のモータ回転数推定則を本実施例3の装置BCUに適用することとしてもよい。この場合、コントロールユニットCPUは、予め設定された目標モータ回転数ξと算出された通電時推定モータ回転数ωとの偏差ωerr、及び、目標モータ回転数ξと算出された非通電時推定モータ回転数ωとの偏差ωerrを算出する回転数偏差算出部50を備え、算出された偏差ωerrに応じてモータMを駆動する駆動デューティ比Dutyを調整する。
この場合、上記(1)の効果を得つつ、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0052】
[実施例4]
実施例4は、モータ回転数の推定においてモータ電流の検出値を用いる。以下、実施例1との相違点のみ説明する。電流センサとして、図5に示すような、モータ駆動回路に設けた電流センサS7を用いることができる。実施例4のモータ回転数推定部4は、モータMの電気的釣り合い式から、推定モータ回転数ωを、以下のように算出する。
Vmot=R×i+L×di/dt+Ke×ω
ω=1/Ke(Vmot−R×i−L×di/dt)
なお、インダクタンスLの項を省略して以下のように算出することとしてもよい。
Vmot=R×i+Ke×ω
ω=1/ Ke×(Vmot−R×i)
本実施例4のように推定したモータ回転数ωは、実施例1のようなモータMのON-OFF制御に用いても良いし、実施例3のようなPWM制御に用いてもよい。
【0053】
[実施例4の効果]
モータ回転数推定部4は、モータ端子間電圧Vmotと、モータMの固有の特性(逆起電力定数Keや電気抵抗R等)とに基づいて、モータ回転数ωを推定するため、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0054】
[他の実施例]
以上、本発明を実現するための形態を、実施例1〜4に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例1〜4に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、モータ駆動制御において、実施例1のON-OFF制御と実施例3のPWM制御を組み合わせることとしてもよい。具体的には、モータMへの通電時(回転数偏差ωerrに応じて0%より大きいDutyとしたPWM制御の実行時)に推定モータ回転数ωが第1の閾値(非通電閾値=ξ+β)を上回るとモータMに対する通電(上記Dutyが0%より大きいPWM制御)を終了し(Dutyを0%とし)、モータMの非通電時(上記Dutyを0%とした間)に推定モータ回転数ωが第2の閾値(通電閾値=ξ−α)を下回ったらモータMに対し通電(上記回転数偏差ωerrに応じて0%より大きいDutyとするPWM制御)を開始することとしてもよい。この場合、目標モータ回転数に対するモータ回転数の過度のオーバーシュートを抑制してモータ回転数を目標モータ回転数に迅速に収束させつつ、作動音や振動を低減することができる。
【0055】
以下、実施例1〜4から把握される各発明の構成と効果を列挙する。
(A1)ブレーキ回路内のブレーキ液を流動させるポンプと、
前記ポンプを回転駆動するモータと、
前記モータ端子間電圧と前記モータの特性に基づいてモータ回転数を推定するモータ回転数推定部と、
前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数と予め設定した目標モータ回転数に基づいて前記モータの回転数を制御するモータ回転数制御部を有する
コントロールユニットを備えた
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、モータの回転数の推定誤差を低減することができる。
【0056】
(A2)上記(A1)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは前記目標モータ回転数より所定回転数高く設定された第1の閾値(モータ非通電閾値)と前記目標モータ回転数より所定回転数低く設定された第2の閾値(モータ通電閾値)を備え、
前記モータへの通電時に前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記第1の閾値を上回ると前記モータに対する通電を終了し、前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記第2の閾値を下回ったら前記モータに対し通電を開始する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、簡便な構成でモータの制御精度を向上することができる。
【0057】
(A3)上記(A2)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは前記モータの逆起電力に基づいて非通電時のモータ回転数を推定する非通電時モータ回転数推定部を備えた
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、推定則を簡素化して演算負荷を軽減することができる。
【0058】
(A4)上記(A1)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータ駆動制御部は前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記目標モータ回転数に追従するように制御する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、モータ制御の精度を向上することができる。
【0059】
(A5)上記(A1)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータにかかる負荷トルクを算出するモータ負荷トルク算出部と、
前記モータが発生するモータトルクを算出するモータトルク算出部とを備え、
前記モータ回転数推定部は前記算出された負荷トルク及びモータトルクと予め設定された前記モータのイナーシャに基づいて前記モータの回転数を推定する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、モータ回転数の推定精度を向上することができる。
【0060】
(A6)上記(A5)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータ負荷トルク算出部は、液圧に関するモータ負荷トルクを算出する液圧負荷トルク算出部と、モータの回転数に依存するモータ負荷トルクを算出する粘性抵抗負荷トルク算出部とを備え、両方のモータ負荷トルクを加算してモータ負荷トルクを算出する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、モータ回転数の推定精度を向上することができる。
【0061】
(A7)上記(A5)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータ回転数推定部は、通電時には、通電直前の推定されたモータ回転数に今回推定したモータ回転数変化量を加算した値を推定モータ回転数とする
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、演算負荷を軽減しつつ、モータ回転数の推定誤差を低減することができる。
【0062】
(A8)上記(A1)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記目標モータ回転数と算出された推定モータ回転数との偏差を算出する回転数偏差算出部を備え、算出された偏差に応じて前記モータを駆動する駆動デューティ比を調整する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、モータ回転数の推定誤差を低減しつつ、作動音や振動を低減することができる。
【0063】
(B1)マスタシリンダから吸入したブレーキ液をホイルシリンダに向けて吐出するポンプと、
前記ポンプを回転駆動する直流ブラシモータと、
前記モータの端子間電圧と前記直流ブラシモータの固有の特性と前記モータにかかる負荷トルクに基づいてモータ回転数を推定するモータ回転数推定手段と、
前記モータ回転数推定手段により推定されたモータ回転数に基づいて前記モータを駆動制御するモータ駆動制御手段とを有するコントロールユニットを備えた
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、ブレーキ制御中であっても、モータ回転数の推定誤差を低減することができる。
【0064】
(B2)上記(B1)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータ駆動制御手段は予め設定した目標モータ回転数に基づいて前記モータを駆動制御することを特徴とするブレーキ制御装置。
このように、モータを回転数制御しつつ、モータ回転数の推定誤差を低減することで、モータ制御(ブレーキ制御)の精度を向上することができる。
【0065】
(B3)上記(B2)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータにかかる負荷トルクを算出するモータ負荷トルク算出手段と、
前記モータが発生するモータトルクを算出するモータトルク算出手段とを備え、
前記モータ回転数推定手段は前記算出された負荷トルクとモータトルクと予め設定された前記モータのイナーシャに基づいて前記モータの回転数を推定する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、モータ回転数の推定精度を向上することができる。
【0066】
(B4)上記(B3)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータ負荷トルク算出手段は、液圧に関するモータ負荷トルクを算出する液圧負荷トルク算出手段と、モータの回転数に依存するモータ負荷トルクを算出する粘性抵抗負荷トルク算出手段を備え、両方のモータ負荷トルクを加算してモータ負荷トルクを算出する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、モータ回転数の推定精度を向上することができる。
【0067】
(B5)上記(B4)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータ回転数推定手段は、通電時には、通電直前の推定されたモータ回転数に今回推定したモータ回転数変化量を加算した値を推定モータ回転数とする
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、演算負荷を軽減しつつ、モータ回転数の推定誤差を低減することができる。
【0068】
(B6)上記(B5)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは前記目標モータ回転数より所定回転数高く設定された第1の閾値(モータ非通電閾値)と前記目標モータ回転数より所定回転数低く設定された第2の閾値(モータ通電閾値)を備え、前記モータの通電時に前記モータ回転数推定手段により推定されたモータ回転数が前記第1の閾値を上回ると前記モータに対する通電を終了し、前記モータの非通電時に前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記第2の閾値を下回ったら前記モータに対し通電を開始する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、簡便な構成でモータの制御精度を向上することができる。
【0069】
(B7)上記(B6)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは前記モータの逆起電力に基づいて非通電時のモータ回転数を推定する非通電時モータ回転数推定手段を備えた
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、推定則を簡素化して演算負荷を軽減することができる。
【0070】
(B8)上記(B7)に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータ駆動制御手段は前記モータ回転数推定手段により推定したモータ回転数が前記目標モータ回転数に追従するように制御する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、モータ回転数制御の精度を向上することができる。
【0071】
(B9)上記(B8)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記目標モータ回転数と算出された推定モータ回転数との偏差を算出する回転数偏差算出手段を備え、算出された偏差に応じて前記モータを駆動する駆動デューティ比を調整する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、作動音や振動を低減することができる。
【0072】
(C1)ブレーキ回路内のブレーキ液を流動させるポンプと、
ポンプを回転駆動するブラシモータと、
前記ブラシモータを制御するコントロールユニットを備え、
前記コントロールユニットは、前記モータ端子間電圧と前記ブラシモータの特性とに基づいて通電時のモータ回転数を推定する通電時モータ回転数推定部と、
前記ブラシモータの逆起電力に基づいて非通電時のモータ回転数を推定する非通電時モータ回転数推定部と、を備え、
前記通電時モータ回転数推定部と前記非通電時モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数に基づいて前記ブラシモータへの通電と非通電を切り換える
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
このように通電・非通電に応じてモータ回転数の推定方法を変えることで、演算負荷を軽減しつつ、モータ回転数の推定誤差を低減することができる。
【0073】
(C2)上記(C1)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは前記目標モータ回転数より所定回転数高く設定された第1の閾値(モータ非通電閾値)と前記目標モータ回転数より所定回転数低く設定された第2の閾値(モータ通電閾値)を備え、
前記モータの通電時に前記通電時モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記第1の閾値を上回ると前記モータに対する通電を終了し、前記非通電時モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記第2の閾値を下回ったら前記モータに対し通電を開始する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、簡便な構成でモータの制御精度を向上することができる。
【0074】
(C3)上記(C2)に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、予め設定された目標モータ回転数と算出された通電時モータ推定回転数の偏差を算出する回転数偏差算出部を備え、算出された偏差に応じて前記モータを駆動する駆動デューティ比を調整する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
よって、作動音や振動を低減することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 モータ回転数推定装置
10 ブレーキ回路(プライマリ系統)
20 ブレーキ回路(セカンダリ系統)
4 モータ回転数推定部
40 モータ負荷トルク算出部
41 モータ発生トルク算出部
5 モータ回転数制御部
BCU ブレーキ制御装置
CPU コントロールユニット
M モータ
P ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ回路内のブレーキ液を流動させるポンプと、
前記ポンプを回転駆動するモータと、
前記モータの端子間電圧と前記モータの特性に基づいて前記モータの回転数を推定するモータ回転数推定部と、
前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数と予め設定した目標モータ回転数に基づいて前記モータの回転数を制御するモータ回転数制御部と
を有するコントロールユニットを備えた
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記目標モータ回転数より所定回転数高く設定された第1の閾値と、前記目標モータ回転数より所定回転数低く設定された第2の閾値を備え、
前記モータへの通電時に前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記第1の閾値を上回ると前記モータに対する通電を終了し、前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記第2の閾値を下回ったら前記モータに対し通電を開始する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
前記コントロールユニットは、前記モータの逆起電力に基づいて非通電時のモータ回転数を推定する非通電時モータ回転数推定部を備えた
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータ駆動制御部は、前記モータ回転数推定部により推定されたモータ回転数が前記目標モータ回転数に追従するように制御する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記モータにかかる負荷トルクを算出するモータ負荷トルク算出部と、
前記モータが発生するモータトルクを算出するモータトルク算出部とを備え、
前記モータ回転数推定部は、前記算出された負荷トルク及びモータトルクと、予め設定された前記モータのイナーシャに基づいて前記モータの回転数を推定する
ことを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−101676(P2012−101676A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251752(P2010−251752)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】