説明

ブレーキ制御装置

【課題】ABS減圧弁の漏れ異常が検出された場合に、バックアップモードに切り換える確率をできるだけ少なくする。
【解決手段】マスタカット弁とレギュレータカット弁とを閉弁、連通弁を開弁した状態で増圧リニア制御弁を開弁して、制御圧がP1になるまで加圧する(S13〜S14)。続いて、連通弁を閉弁した状態で増圧リニア制御弁を開弁して再加圧する(S15〜S16)。制御圧が低下した場合には、ABS減圧弁が漏れ異常であると判定する(S17〜S25)。この場合バックアップモードに切り換えることなく、ABS減圧弁に作動液を通過させるリフレッシュ処理(S30)を行い、その後の再検査(S90)で異常が解消されていないと判定された場合にのみ、バックアップモードに切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力液圧源により加圧された作動液の液圧をリニア制御弁により調圧してホイールシリンダに伝達する制御液圧回路を備えたブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブレーキペダルの踏力により加圧された作動液の液圧をホイールシリンダに伝達する踏力液圧回路と、動力液圧源により加圧された作動液の液圧をリニア制御弁により調圧してホイールシリンダに伝達する制御液圧回路とを並列に備え、通常時においては、制御液圧回路を使用する制御液圧モードを選択し、バルブ等の異常が検出されている時においては、踏力液圧回路を使用したバックアップモードに切り替えるブレーキ制御装置が知られている。
【0003】
制御液圧モードにおいては、ブレーキ制御装置で発生させる要求制動力に基づいて目標液圧が演算され、目標液圧がホイールシリンダに伝達されるようにリニア制御弁の開度が制御される。こうした、ブレーキペダルの踏力を使用しないブレーキ制御方式は、一般に、ブレーキバイワイヤ方式と呼ばれている。
【0004】
例えば、特許文献1に提案されたブレーキ制御装置においては、踏力液圧回路を、マスタシリンダから前輪の各ホイールシリンダに液圧を伝達するマスタ流路と、レギュレータから後輪の各ホイールシリンダに液圧を伝達するレギュレータ流路との2系統にて構成する。マスタ流路とレギュレータ流路とは、それぞれマスタカット弁とレギュレータカット弁が設けられ、主流路に接続される。主流路には、マスタ流路とレギュレータ流路との連通/遮断を切り換える連通弁(特許文献1には分離弁と記載されている)が設けられる。動力液圧源は、リニア制御弁を介して主流路に接続される。
【0005】
制御液圧モードにおいては、マスタカット弁、レギュレータカット弁が閉弁され、連通弁が開弁された状態でリニア制御弁の開度が制御される。これにより、前輪および後輪の各ホイールシリンダに共通の制御液圧が伝達される。一方、バックアップモードにおいては、マスタカット弁、レギュレータカット弁が開弁され、連通弁、リニア制御弁が閉弁される。これにより、マスタシリンダの液圧が前輪の各ホイールシリンダに伝達され、レギュレータの液圧が後輪の各ホイールシリンダに伝達され。
【0006】
この特許文献1のブレーキ制御装置においては、連通弁に異物が詰まっている状況を検出した場合、制御液圧モードからバックアップモードに切り換える。そして、車両が停止中であることを確認して、その異物が詰まった方向とは逆方向に作動液を連通弁に流し、作動液の流れにより連通弁に詰まっていた異物が除去されたことが確認された場合には、バックアップモードを解除する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−302867号公報
【発明の概要】
【0008】
上記のブレーキ制御装置においては、異物が詰まっている状況を検出した場合には、必ずバックアップモードに切り換えている。連通弁の異物詰まりの場合には、すぐにバックアップモードに切り換えても何ら問題はないが、異物詰まりの発生個所によっては、できるだけバックアップモードに切り換えたくないケースがある。
【0009】
各ホイールシリンダには、それぞれホイールシリンダの液圧を下げるためのABS減圧弁が接続されるが、そのABS減圧弁に異物詰まりが発生したケースがそれに該当する。制御液圧モードからバックアップモードに切り換えると、各ホイールシリンダは動力液圧源から切り離され、前輪のホイールシリンダはマスタシリンダと連通し、後輪のホイールシリンダはレギュレータと連通することになる。従って、例えば、前輪のABS減圧弁の一つに異物詰まりが発生した場合、前輪のホイールシリンダはマスタシリンダから作動液が供給されることになるが、作動液がABS減圧弁から漏れてリザーバ流路に流れてしまうため、前輪のホイールシリンダには十分な液圧を発生させることができなくなる可能性がある。
【0010】
一方、動力液圧源は、4輪のホイールシリンダに作動液を供給できるように構成されているため、リニア制御弁から流すことができる作動液の流量は多い。このため、1輪のABS減圧弁に異物詰まりが生じて作動液がリザーバに漏れても、その漏れ量を補うだけの流量の作動液をリニア制御弁から供給することができる。従って、4輪ともに適切なホイールシリンダ圧を発生させることができる。
【0011】
こうした理由から、ABS減圧弁の漏れ異常に対しては、できるだけバックアップモードに切り換えたくないのである。
【0012】
本発明は、上記問題を解決するためになされるものであり、バックアップモードに切り換える確率をできるだけ少なくすることを目的とする。
【0013】
上記課題を解決する本発明の特徴は、複数の車輪のそれぞれに設けられ作動液の液圧を受けて車輪に制動力を与える複数のホイールシリンダ(42)と、ブレーキペダルに入力された踏力により加圧された作動液の液圧を前記複数のホイールシリンダに伝達する踏力液圧回路(LF,LR)と、前記ブレーキペダルの操作とは無関係に作動液を加圧する動力液圧源(30)と、前記動力液圧源で加圧された作動液の液圧をリニア制御弁(67,68)により調圧して前記複数のホイールシリンダに伝達する制御液圧回路(L1)と、前記制御液圧回路を使って車輪に制動力を発生させる制御液圧モードと、前記踏力液圧回路を使って車輪に制動力を発生させるバックアップモードとを切り換えるモード切換手段(50,100)と、前記各ホイールシリンダに対応して設けられ、ホイールシリンダの作動液をリザーバ流路に戻してホイールシリンダ圧を低減する減圧弁(63)と、前記減圧弁の漏れ異常を検査する減圧弁異常検査手段(100,S11〜S25))と、前記減圧弁異常検査手段により前記減圧弁の漏れ異常が検出されたとき、前記バックアップモードに切り換えずに、前記減圧弁に詰まった異物を除去するために前記制御液圧回路を使って前記減圧弁に作動液を通過させる処理であるリフレッシュ処理を行うリフレッシュ手段(100,S30)と、前記リフレッシュ手段によるリフレッシュ処理後に、前記減圧弁の漏れ異常を再度検査する減圧弁異常再検査手段(100,S90)と、前記リフレッシュ手段によるリフレッシュ処理にも関わらす減圧弁異常再検査手段により前記減圧弁の漏れ異常が検出された場合に、前記バックアップモードに移行させるモード移行指令手段(100,S96)とを備えたことにある。
【0014】
本発明のブレーキ制御装置は、踏力液圧回路と制御液圧回路とを備えており、モード切換手段により、制御液圧回路を使って車輪に制動力を発生させる制御液圧モードと、踏力液圧回路を使って車輪に制動力を発生させるバックアップモードとが切り換えられるように構成される。踏力液圧回路は、ブレーキペダルに入力された踏力により加圧された作動液の液圧を複数のホイールシリンダに伝達する。この場合、例えば、踏力液圧回路を、互いに独立した前輪用踏力液圧回路と後輪用踏力液圧回路にて構成し、前輪に設けられるホイールシリンダには前輪用踏力液圧回路から作動液の液圧を伝達し、後輪に設けられるホイールシリンダには後輪用踏力液圧回路から作動液の液圧を伝達するとよい。
【0015】
一方、制御液圧回路は、ブレーキペダルの操作とは無関係に作動液を加圧する動力液圧源で加圧された作動液の液圧をリニア制御弁により調圧して複数のホイールシリンダに伝達する。従って、リニア制御弁を通電制御することによりホイールシリンダに伝達される液圧を任意に調整することができる。尚、リニア制御弁は、各ホイールシリンダに対して共通に設けても良く、あるいは、各ホイールシリンダ毎に独立して設けてもよい。
【0016】
例えば、電動車両あるいはハイブリッド車両においては、液圧によるブレーキ制動だけでなく、車輪の回転力でモータを発電させ、この発電電力をバッテリに回生させる回生制動を行っている。こうした回生制動を行う場合には、必要総制動力から回生制動分を除いた制動力を、液圧によるブレーキ制動力に設定することにより、車両に適正な制動力を発生させることができる。従って、制御液圧回路は、回生制動と組み合わせた、いわゆるブレーキ回生協調制御を行う場合に好適である。
【0017】
各車輪には、ホイールシリンダ圧を減圧するための減圧弁が設けられる。この減圧弁は、例えば、ABS制御(アンチロックブレーキ制御)に使用される。減圧弁異常検査手段は、減圧弁の漏れ異常を検査する。例えば、減圧弁に異物が噛み込んで閉弁不良を生じた場合には、その減圧弁を接続するホイールシリンダの液圧が低下する。減圧弁異常検査手段は、こうした液圧の異常を検出することで減圧弁の漏れ異常を検査する。
【0018】
従来装置においては、ブレーキ制御装置において何らかの異常が発生した場合には、制御液圧回路を使って車輪に制動力を発生させる制御液圧モードから、踏力液圧回路を使って車輪に制動力を発生させるバックアップモードに切り換えるように構成されている。バックアップモードであれば、制御系が故障しても、ドライバーのブレーキペダルを踏み込む踏力を使って制動力を発生させることができるからである。
【0019】
しかし、減圧弁の漏れ異常が発生したケースにおいては、バックアップモードに切り換えると、ホイールシリンダに十分な液圧を発生させることができないことがある。特に、ブレーキペダルに入力された踏力により加圧された作動液を、前輪に設けられるホイールシリンダと後輪に設けられるホイールシリンダとに独立した液圧回路から供給する踏力液圧回路を構成した場合には、一つの減圧弁で漏れ異常が発生した場合には、その漏れを補うだけの量の作動液を片側の液圧回路から供給することが難しくなる。
【0020】
一方、減圧弁の漏れ異常に関しては、その原因が異物詰まりによるものであれば、減圧弁に作動液を通過させることにより異物を除去して漏れ異常を解消することができる。そこで、本発明においては、リフレッシュ手段と、減圧弁異常再検査手段と、モード移行指令手段とを備える。
【0021】
リフレッシュ手段は、減圧弁異常検査手段により減圧弁の漏れ異常が検出されたとき、バックアップモードに切り換えずに、制御液圧回路を使って減圧弁に作動液を通過させる処理、つまり、リフレッシュ処理を行う。これにより、減圧弁に詰まっていた異物が作動液とともに流される。減圧弁の漏れ異常は、異物詰まりによるものに限らない。そこで、減圧弁異常再検査手段は、リフレッシュ手段によるリフレッシュ処理後に、減圧弁の漏れ異常を再度検査する。
【0022】
そして、モード移行指令手段は、リフレッシュ手段による減圧弁のリフレッシュ処理にも関わらす減圧弁異常再検査手段により減圧弁の漏れ異常が検出された場合に、モード切換手段に対してバックアップモードに移行させる指令をする。換言すれば、リフレッシュ手段による減圧弁のリフレッシュ処理により異物が流されて、減圧弁が正常復帰した場合にはバックモードに移行させない。
【0023】
このように本発明によれば、減圧弁の漏れ異常が検出された場合には、直ちにバックアップモードに切り換えるのではなく、リフレッシュ処理を行って異物除去をトライし、それでも減圧弁が正常に戻らない場合にのみ、バックアップモードに切り換える。従って、異常判定によりバックアップモードに移行する確率を低減することができる。これにより、ドライバーの利便性が向上する。
【0024】
尚、減圧弁異常検査手段は、全ての減圧弁についての漏れ異常を検査する必要はなく、予め定められた特定の減圧弁についてのみ漏れ異常を検査するものであってもよい。例えば、弁開口面積が大きく作動液の漏れ異常の影響が大きい前輪の減圧弁についてのみ検査する構成であってもよい。また、リフレッシュ手段は、漏れ異常が検出された減圧弁のみについてリフレッシュ処理を行うものに限らず、全ての減圧弁に対してリフレッシュ処理を行うものであってもよい。
【0025】
本発明の他の特徴は、前記リフレッシュ手段は、システム起動からシステム停止までの期間を1トリップとして、1トリップにつき1回を限度として前記リフレッシュ処理を実行することにある。
【0026】
リフレッシュ処理を行う場合には、制御液圧回路に流れる作動液の音(特にリニア制御弁の通過時における音)が発生する。また、減圧弁の漏れ異常の原因が異物詰まりによるものであれば、1回のリフレッシュ処理で十分に異物詰まりを解消できる。そこで、本発明においては、システム起動からシステム停止まで(ブレーキ制御装置の起動から停止まで)の期間を1トリップとして、1トリップにつきにつき1回を限度としてリフレッシュ処理を実行する。これにより、作動液の流動音の発生を抑えることができる。尚、上記リフレッシュ手段とは別に、例えば、減圧弁の漏れ異常の有無に関係なく、リフレッシュ処理を、nトリップに1回(n:自然数)行う定期リフレッシュ手段を設けてもよい。この場合には、流動音の発生を抑えた適切な頻度でリフレッシュ処理を行うことができる。
【0027】
本発明の他の特徴は、前記制御液圧回路は、前記動力液圧源に接続され前記リニア制御弁を備えた主幹流路(52)と、前記主幹流路から分岐して各ホイールシリンダへ接続される個別流路(51)と、前記個別流路を開閉する開閉弁(61)とを備えており、前記リフレッシュ手段は、前記開閉弁(61)を一つずつ開弁することにより、全ての減圧弁に対して一つずつ前記リフレッシュ処理を行うことにある。
【0028】
リフレッシュ処理は、制御液圧回路を使って減圧弁に作動液を流すことにより行われるが、全輪の減圧弁に同時に作動液を流した場合、各減圧弁に流れた流量の合計がリニア制御弁に流れることになる。このため、作動液がリニア制御弁を通過するときに大きな音が発生する。一方、異物除去性能は、各減圧弁を通過する作動液の流量、流速に依存する。そこで、本発明においては、リフレッシュ手段は、全ての減圧弁に対して同時にリフレッシュ処理を行うのではなく、1輪ずつリフレッシュ処理を行う。この場合、リフレッシュ処理の対象となる減圧弁以外の減圧弁に通じる個別流路を開閉弁で閉弁しておくことで、1輪ずつリフレッシュ処理を行うことができる。これにより、リニア制御弁に流れる流速を低く抑えた状態で、異物除去に必要な流量を減圧弁に流すことができる。この結果、本発明によれば、作動液音の低減と、異物除去性能の向上とを両立させることができる。
【0029】
本発明の他の特徴は、前記リフレッシュ手段は、前記動力加圧源の出力する液圧が規定圧以下に低下している場合には、前記動力加圧源の出力する液圧が所定圧以上に上昇するまで待機する液圧確保手段(S31)を備えたことにある。
【0030】
減圧弁の異物除去性能は、減圧弁に流れる作動液の流量および流速に依存する。従って、動力加圧源の出力する液圧が異物除去に必要な十分の圧力に達していない場合には、所望の異物除去性能が得られなくなる。そこで、本発明においては、リフレッシュ手段は、動力加圧源の出力する液圧が規定圧以下に低下している場合には、動力加圧源の出力する液圧が所定圧以上に上昇するまで待機する液圧確保手段を備えている。
【0031】
液圧確保手段は、例えば、リフレッシュ処理を開始する際に、動力加圧源の出力する液圧が規定圧以下に低下している場合には、動力加圧源の出力する液圧が所定圧以上(=規定圧以上)に上昇するまで待機する。動力加圧源が、作動液圧を昇圧するポンプと、昇圧した作動液の液圧エネルギーを蓄えるアキュムレータとを備え、アキュムレータ圧が目標圧になるようにポンプを駆動する構成である場合には、液圧確保手段は、ポンプの作動によりアキュムレータ圧が所定圧以上に到達するまで待つとよい。リフレッシュ手段は、アキュムレータ圧が所定圧以上に到達するとリフレッシュ処理を開始する。
【0032】
また、液圧確保手段は、例えば、リフレッシュ処理の開始時だけでなく、リフレッシュ処理の実行中において、動力加圧源の出力する液圧が規定圧以下に低下している場合には、リフレッシュ処理を中断して、動力加圧源の出力する液圧が所定圧以上に上昇するまで待機するようにしてもよい。この場合においては、所定圧は、規定圧よりも大きな値に設定しておくとよい。
【0033】
この結果、本発明によれば、リフレッシュ処理を適切に行うことができ、良好な異物除去性能が得られる。
【0034】
本発明の他の特徴は、前記リフレッシュ手段は、前記リフレッシュ処理の開始時に、前記動力加圧源の出力する作動液を前記減圧弁に流すように前記リニア制御弁(67)を開弁するとき、前記リニア制御弁を開弁するのに必要な電流値よりも低い所定電流値から徐々に電流値を増加させるように前記リニア制御弁の電流を制御する開弁電流制御手段(S43)を備えたことにある。
【0035】
リフレッシュ手段は、リフレッシュ処理を開始するときに、動力加圧源の出力する作動液を減圧弁に流すようにリニア制御弁を開弁するが、リニア制御弁を瞬時に開弁すると、その瞬間に大きな作動音が発生してしまう。この作動音の大きさは、作動液の流量変化に比例する。そこで、本発明においては、開弁電流制御手段が、リフレッシュ処理の開始時において、リニア制御弁を開弁するのに必要な電流値よりも低い所定電流値から徐々に電流値を増加させるようにリニア制御弁の電流を制御する。これにより、リニア制御弁を滑らかに開弁することができ、リフレッシュ処理の開始時での作動音を低減することができる。尚、リニア制御弁を、ホイールシリンダに伝達する作動液の液圧を増加させる増圧リニア制御弁と、ホイールシリンダに伝達する作動液の液圧を減少させる減圧リニア制御弁とを備えて構成した場合には、減圧リニア制御弁を閉弁した状態で、増圧リニア制御弁を開弁するのに必要な電流値よりも低い所定電流値から徐々に電流値を増加させるように増圧リニア制御弁の電流を制御するとよい。
【0036】
本発明の他の特徴は、前記リフレッシュ手段は、前記リフレッシュ処理の終了時に、前記動力加圧源から前記減圧弁へ流れている作動液を停止させるように前記リニア制御弁(67)を閉弁するとき、前記リニア制御弁を開弁若しくは閉弁するのに必要な電流値よりも高い所定電流値から徐々に電流値を減少させるように前記リニア制御弁の電流を制御する閉弁電流制御手段(S43)を備えたことにある。
【0037】
リフレッシュ手段は、リフレッシュ処理を終了するときに、動力加圧源から減圧弁へ流れている作動液を停止させるようにリニア制御弁を閉弁するが、リニア制御弁を瞬時に閉弁すると、その瞬間に大きな作動音が発生してしまう。この作動音の大きさは、作動液の流量変化に比例する。そこで、本発明においては、閉弁電流制御手段が、リフレッシュ処理の終了時において、リニア制御弁を開弁若しくは閉弁するのに必要な電流値よりも高い所定電流値から徐々に電流値を減少させるようにリニア制御弁の電流を制御する。これにより、リニア制御弁を滑らかに閉弁することができ、リフレッシュ処理の終了時での作動音を低減することができる。尚、リニア制御弁を、ホイールシリンダに伝達する作動液の液圧を増加させる増圧リニア制御弁と、ホイールシリンダに伝達する作動液の液圧を減少させる減圧リニア制御弁とを備えて構成した場合には、減圧リニア制御弁を閉弁した状態で、増圧リニア制御弁を開弁若しくは閉弁するのに必要な電流値よりも高い所定電流値から徐々に電流値を減少させるように増圧リニア制御弁の電流を制御するとよい。
【0038】
本発明の他の特徴は、前記リフレッシュ手段は、前記リフレッシュ処理中における前記減圧弁に流れた流量を表すリフレッシュ流量を推定し、前記推定したリフレッシュ流量が設定流量に到達したときに当該減圧弁のリフレッシュ処理を終了する流量制御手段(S431〜S437)を備えたことにある。
【0039】
減圧弁の異物除去性能は、減圧弁に流れた作動液の流量に依存する。そこで、本発明においては、リフレッシュ手段は、流量制御手段を備えている。流量制御手段は、異物除去処理中における減圧弁に流れた流量(トータル流量)を表すリフレッシュ流量を推定する。例えば、動力液圧源に加圧される作動液の液圧の低下に基づいてリフレッシュ流量を推定する。そして、推定したリフレッシュ流量が規定流量に到達したときに当該減圧弁のリフレッシュ処理を終了する。従って、リフレッシュ処理を適切に行うことができる。
【0040】
本発明の他の特徴は、前記リフレッシュ手段は、前記リフレッシュ処理を終了するに際し、前記リニア制御弁を閉弁した後に前記減圧弁を閉弁する閉弁タイミング設定手段(S43,S44)を備えたことにある。
【0041】
リフレッシュ手段は、リニア制御弁と減圧弁とを開弁することにより、動力液圧源で加圧された作動液を減圧弁に流してリフレッシュ処理を行い、リフレッシュ処理を終了するときにはリニア制御弁と減圧弁とを閉弁する。このリニア制御弁と減圧弁とを閉弁する際に、減圧弁を先に閉弁してからリニア制御弁を閉弁してしまうと、作動液の逃げ場が無くなり作動音が発生する。そこで、本発明においては、閉弁タイミング設定手段が、リフレッシュ処理を終了するに際し、リニア制御弁を閉弁した後に減圧弁を閉弁する。これにより、リフレッシュ処理の終了時での作動音を低減することができる。
【0042】
本発明の他の特徴は、前記リフレッシュ手段は、前記減圧弁を通過する作動液の一連の流量変化が、複数回にわたって発生するように前記リフレッシュ処理を分割して実行することにある。
【0043】
減圧弁の異物除去性能は、減圧弁に流れる作動液の流量や流速だけでなく、流量変動にも依存する。そこで、本発明においては、リフレッシュ手段は、減圧弁を通過する作動液の一連の流量変化が、複数回にわたって発生するようにリフレッシュ処理を分割して実行する。例えば、リニア制御弁を複数回に分けて通電する。これにより、限られた時間を使って良好にリフレッシュ処理を行うことができる。
【0044】
尚、上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本実施形態におけるブレーキ制御装置の概略システム構成図である。
【図2】リニア制御モードにおける制御液圧回路を表す液圧回路図である。
【図3】バックアップモードにおける踏力液圧回路を表す液圧回路図である。
【図4】バルブ異常検査ルーチンを表すフローチャートである。
【図5】リフレッシュ制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図6】漏れ異常の再検査ルーチンを表すフローチャートである。
【図7】主流路の液圧の推移を表すグラフである。
【図8】リフレッシュ処理時において作動液の流れる流路を説明する液圧回路図である。
【図9】増圧リニア制御弁に流す目標電流波形を表すグラフである。
【図10】バルブ異常検査ルーチンが実行されたときの、制御圧Pconおよび目標電流値i*の推移を表すグラフである。
【図11】アキュムレータ圧と作動液の供給流量との関係を表すグラフである。
【図12】流量制御ルーチンを表すフローチャートである。
【図13】変形例2にかかる目標電流波形を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の一実施形態に係るブレーキ制御装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るブレーキ制御装置の概略システム構成図である。
【0047】
本実施形態のブレーキ制御装置は、ブレーキペダル10と、マスタシリンダユニット20と、動力液圧発生装置30と、液圧制御弁装置50と、各車輪にそれぞれ設けられるディスクブレーキユニット40FR,40FL,40RR,40RLと、ブレーキ制御を司るブレーキECU100とを備える。ディスクブレーキユニット40FR,40FL,40RR,40RLは、ブレーキディスク41FR,41FL,41RR,41RLとブレーキキャリパに内蔵されたホイールシリンダ42FR,42FL,42RR,42RLとを備える。尚、車輪毎に設けられる構成については、その符号の末尾に、右前輪についてはFR、左前輪についてはFL、右後輪についてはRR、左後輪についてはRLを付しているが、以下、車輪位置を特定しない場合には、末尾の符号を省略する。
【0048】
ホイールシリンダ42FR,42FL,42RR,42RLは、液圧制御弁装置50に接続され、液圧制御弁装置50から供給される作動液(ブレーキフルード)の液圧が伝達され、この液圧により、車輪と共に回転するブレーキディスク41FR,41FL,41RR,41RLにブレーキパッドを押し付けて車輪に制動力を付与する。
【0049】
マスタシリンダユニット20は、液圧ブースタ21、マスタシリンダ22、レギュレータ23、リザーバ24を備える。液圧ブースタ21は、ブレーキペダル10に連結されており、ブレーキペダル10に加えられたペダル踏力を増幅してマスタシリンダ22に伝達する。液圧ブースタ21は、動力液圧発生装置30からレギュレータ23を介して作動液が供給されることにより、ペダル踏力を増幅してマスタシリンダ22に伝達する。マスタシリンダ22は、ペダル踏力に対して所定の倍力比を有するマスタシリンダ圧を発生する。
【0050】
マスタシリンダ22とレギュレータ23との上部には、作動液を貯留するリザーバ24が設けられている。マスタシリンダ22は、ブレーキペダル10の踏み込みが解除されているときにリザーバ24と連通する。レギュレータ23は、リザーバ24と動力液圧発生装置30のアキュムレータ32との双方に連通し、リザーバ24を低圧源とするとともにアキュムレータ32を高圧源として、マスタシリンダ圧とほぼ等しい液圧を発生する。以下、レギュレータ23の液圧を、レギュレータ圧と呼ぶ。尚、マスタシリンダ圧とレギュレータ圧とは厳密に同一にする必要はなく、例えば、レギュレータ圧をマスタシリンダ圧よりも若干高圧になるように設定してもよい。
【0051】
動力液圧発生装置30は、動力液圧源であって、ポンプ31とアキュムレータ32とを備える。ポンプ31は、その吸入口がリザーバ24に接続され、吐出口がアキュムレータ32に接続され、モータ33を駆動することにより作動液を加圧する。アキュムレータ32は、ポンプ31により加圧された作動液の圧力エネルギーを窒素等の封入ガスの圧力エネルギーに変換して蓄える。また、アキュムレータ32は、マスタシリンダユニット20に設けられたリリーフバルブ25に接続されている。リリーフバルブ25は、作動液の圧力が異常に高まった場合には、開弁して作動液をリザーバ24に戻す。
【0052】
このように、ブレーキ制御装置は、ホイールシリンダ42に作動液の液圧を付与する液圧源として、ドライバーのブレーキ踏力(ブレーキペダル10を踏み込む力)を利用したマスタシリンダ22、レギュレータ23と、ドライバーのブレーキ踏力とは無関係に液圧を付与する動力液圧発生装置30とを備えている。マスタシリンダ22、レギュレータ23、動力液圧発生装置30は、マスタ配管11、レギュレータ配管12、アキュムレータ配管13を介してそれぞれ液圧制御弁装置50に接続される。また、リザーバ24は、リザーバ配管14を介して液圧制御弁装置50に接続される。
【0053】
液圧制御弁装置50は、各ホイールシリンダ42FR,42FL,42RR,42RLに接続される4つの個別流路51FR,51FL,51RR,51RLと、個別流路51FR,51FL,51RR,51RLを連通する主流路52と、主流路52とマスタ配管11とを接続するマスタ流路53と、主流路52とレギュレータ配管12とを接続するレギュレータ流路54と、主流路52とアキュムレータ配管13とを接続するアキュムレータ流路55とを備える。マスタ流路53とレギュレータ流路54とアキュムレータ流路55とは、主流路52に対して並列に接続される。
【0054】
各個別流路51FR,51FL,51RR,51RLには、その途中にそれぞれABS保持弁61FR,61FL,61RR,61RLが設けられる。ABS保持弁61は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドの通電中においてのみ閉弁状態となる常開式電磁開閉弁である。ABS保持弁61は、開弁状態においては、作動液を双方向に流すことができ方向性を有さない。
【0055】
また、各個別流路51FR,51FL,51RR,51RLには、ABS保持弁61FR,61FL,61RR,61RLと並列にリターンチェック弁62FR,62FL,62RR,62RLが設けられる。リターンチェック弁62は、主流路52からホイールシリンダ42に向かう作動液の流れを遮断し、ホイールシリンダ42から主流路52に向かう作動液の流れを許容する弁である。つまり、ホイールシリンダ42の液圧(ホイールシリンダ圧と呼ぶ)が主流路52の液圧よりも高圧となる場合に機械的に弁体が開いてホイールシリンダ42の作動液を主流路52側に流し、ホイールシリンダ圧が主流路52の液圧と等しくなると弁体が閉弁するように構成されている。従って、ABS保持弁61が閉弁されてホイールシリンダ圧が保持されているときに、主流路52における制御液圧が低下してホイールシリンダ圧を下回った場合には、ABS保持弁61を閉弁状態に維持したままホイールシリンダ圧を主流路52の制御液圧にまで減圧することができる。
【0056】
また、各個別流路51FR,51FL,51RR,51RLには、それぞれ減圧用個別流路56FR,56FL,56RR,56RLが接続される。各減圧用個別流路56は、リザーバ流路57に接続される。リザーバ流路57は、リザーバ配管14を介してリザーバ24に接続される。各減圧用個別流路56FR,56FL,56RR,56RLには、その途中にそれぞれABS減圧弁63FR,63FL,63RR,63RLが設けられている。各ABS減圧弁63は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドの通電中においてのみ開弁状態となる常閉式電磁開閉弁である。各ABS減圧弁63は、開状態において作動液をホイールシリンダ42から減圧用個別流路56を介してリザーバ流路57に流すことでホイールシリンダ圧を低下させる。
【0057】
ABS保持弁61およびABS減圧弁63は、車輪がロックしてスリップした場合に、ホイールシリンダ圧を下げて車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御の作動時などにおいて開閉制御される。
【0058】
主流路52には、その途中に連通弁64が設けられる。連通弁64は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドの通電中においてのみ開弁状態となる常閉式電磁開閉弁である。主流路52は、連通弁64を境として、一方側がマスタ流路53に接続される第1主流路521、他方側がレギュレータ流路54およびアキュムレータ流路55に接続される第2主流路522に区分けされる。連通弁64が閉弁状態にあるときには、第1主流路521と第2主流路522との間の作動液の流通が遮断され、連通弁64が開弁状態にあるときには、第1主流路521と第2主流路522との間の作動液の流通が双方向に許容される。
【0059】
マスタ流路53には、その途中にマスタカット弁65が設けられる。マスタカット弁65は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドの通電中においてのみ閉弁状態となる常開式電磁開閉弁である。マスタカット弁65が閉弁状態にあるときには、マスタシリンダ22と第1主流路521との間の作動液の流通が遮断され、マスタカット弁65が開弁状態にあるときには、マスタシリンダ22と第1主流路521との間の作動液の流通が双方向に許容される。
【0060】
マスタ流路53には、マスタカット弁65が設けられる位置よりもマスタシリンダ22側において、シミュレータ流路71が分岐して設けられる。シミュレータ流路71には、シミュレータカット弁72を介してストロークシミュレータ70が接続される。シミュレータカット弁72は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドの通電中においてのみ開弁状態となる常閉式電磁開閉弁である。シミュレータカット弁72が閉弁状態にあるときには、マスタ流路53とストロークシミュレータ70との間の作動液の流通が遮断され、シミュレータカット弁72が開弁状態にあるときには、マスタ流路53とストロークシミュレータ70との間の作動液の流通が双方向に許容される。
【0061】
ストロークシミュレータ70は、複数のピストンやスプリングを備えており、シミュレータカット弁72が開弁状態にあるときに、ブレーキ操作量に応じた量の作動液を内部に導入してブレーキペダル10のストローク操作を可能にするとともに、ペダル操作量に応じた反力を発生させて、ドライバーのブレーキ操作フィーリングを良好にするものである。
【0062】
レギュレータ流路54には、その途中にレギュレータカット弁66が設けられる。レギュレータカット弁66は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により開弁状態を維持し、ソレノイドの通電中においてのみ閉弁状態となる常開式電磁開閉弁である。レギュレータカット弁66が閉弁状態にあるときには、レギュレータ23と第2主流路522との間の作動液の流通が遮断され、レギュレータカット弁66が開弁状態にあるときには、レギュレータ23と第2主流路522との間の作動液の流通が双方向に許容される。
【0063】
アキュムレータ流路55には、その途中に増圧リニア制御弁67が設けられる。また、アキュムレータ流路55が接続される第2主流路522は、減圧リニア制御弁68を介してリザーバ流路57に接続される。増圧リニア制御弁67および減圧リニア制御弁68は、ソレノイドの非通電時にスプリングの付勢力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電量(電流値)の増加にしたがって開度を増加させる常閉式電磁リニア制御弁である。増圧リニア制御弁67および減圧リニア制御弁68は、スプリングが弁体を閉弁方向に付勢する力と、一次側(入口側)と二次側(出口側)の差圧により弁体が開弁方向に付勢される力との差分である閉弁力により閉弁状態を維持し、ソレノイドへの通電により発生する弁体を開弁させる力が、この閉弁力を上回った場合に、弁体に働く力のバランスに応じた開度で開弁する。従って、ソレノイドへの通電量(電流値)を制御することにより開度を調整することができる。この増圧リニア制御弁67および減圧リニア制御弁68は、本発明におけるリニア制御弁に相当する。
【0064】
動力液圧発生装置30および液圧制御弁装置50は、ブレーキECU100により駆動制御される。ブレーキECU100は、マイコンを主要部として備えるとともに、ポンプ駆動回路、電磁弁駆動回路、各種のセンサ信号を入力する入力インターフェース、通信インターフェース等を備えている。液圧制御弁装置50に設けられた電磁開閉弁、電磁リニア制御弁は、全てブレーキECU100に接続され、ブレーキECU100から出力されるソレノイド駆動信号により開閉状態および開度(電磁リニア制御弁の場合)が制御される。また、動力液圧発生装置30に設けられたモータ33についても、ブレーキECU100に接続され、ブレーキECU100から出力されるモータ駆動信号により駆動制御される。
【0065】
液圧制御弁装置50には、アキュムレータ圧センサ101、レギュレータ圧センサ102、制御圧センサ103が設けられる。アキュムレータ圧センサ101は、増圧リニア制御弁67よりも動力液圧発生装置30側(上流側)のアキュムレータ流路55における作動液の圧力であるアキュムレータ圧Paccを検出する。アキュムレータ圧センサ101は、検出したアキュムレータ圧Paccを表す信号をブレーキECU100に出力する。レギュレータ圧センサ102は、レギュレータカット弁66よりもレギュレータ23側(上流側)のレギュレータ流路54における作動液の圧力であるレギュレータ圧Pregを検出する。レギュレータ圧センサ102は、検出したレギュレータ圧Pregを表す信号をブレーキECU100に出力する。制御圧センサ103は、第1主流路521における作動液の圧力である制御圧Pconを表す信号をブレーキECU100に出力する。
【0066】
また、ブレーキECU100には、ブレーキペダル10に設けられたストロークセンサ104が接続される。ストロークセンサ104は、ブレーキペダル10の踏み込み量(操作量)であるペダルストロークを検出し、検出したペダルストロークSpを表す信号をブレーキECU100に出力する。
【0067】
次に、ブレーキECU100が実行するブレーキ制御について説明する。本実施形態においては、リニア制御モードとバックアップモードとの少なくとも2つの制動モードが設定されており、ブレーキECU100が、この制動モードを切り替える。リニア制動モードは、本発明における制御液圧モードに相当する。
【0068】
本実施形態のブレーキ制御装置が設けられる車両は、バッテリ電源により駆動されるモータと、ガソリン燃料により駆動される内燃機関とを備えたハイブリッド車両である。ハイブリッド車両においては、車輪の回転力でモータを発電させ、この発電電力をバッテリに回生させることにより制動力を得る回生制動を行っている。こうした回生制動を行う場合には、車両を制動させるために必要な総制動力から回生による制動力分を除いた制動力をブレーキ制御装置で発生させることにより、回生制動と液圧制動とを併用したブレーキ回生協調制御を行うことができる。
【0069】
ブレーキ回生協調制御は、リニア制御モードにおいて実行される。リニア制御モードにおいては、ドライバーがブレーキペダル10を踏み込んだ踏力は、ブレーキ操作量の検出用に使用されるだけで、ホイールシリンダ42に伝達されず、代わりに、動力液圧発生装置30の出力する液圧がリニア制御弁67,68により調圧されてホイールシリンダ42に伝達される。一方、バックアップモードは、ブレーキ制御装置内において何らかの異常が発生しているときに実行される制動モードであって、ブレーキペダル踏力により加圧された液圧がホイールシリンダ42に伝達される。ブレーキECU100は、液圧制御弁装置50により作動液の流れる流路を切り換えることにより、リニア制御モードとバックアップモードとを切り換える。尚、リニア制御モードは、通常時(異常が検出されていない時)に行われる制動モードであって、必ずしもブレーキ回生協調制御を実行することを必須としない。
【0070】
リニア制御モードにおいては、マスタカット弁65、レギュレータカット弁66は、ソレノイドへの通電により閉弁状態に維持され、連通弁64は、ソレノイドへの通電により開弁状態に維持される。また、シミュレータカット弁72は、ソレノイドへの通電により開弁状態に維持される。また、増圧リニア制御弁67および減圧リニア制御弁68は、ソレノイドが通電制御状態におかれて、通電量に応じた開度に制御される。また、ABS保持弁61およびABS減圧弁63については、アンチロックブレーキ制御など必要に応じて開閉され、通常においては、ABS保持弁61は開弁状態に維持され、ABS減圧弁63は閉弁状態に維持される。
【0071】
リニア制御モードにおいては、マスタカット弁65およびレギュレータカット弁66が閉弁されるため、マスタシリンダユニット20から出力される液圧は、ホイールシリンダ42に伝達されない。また、連通弁64が開弁状態に維持され、増圧リニア制御弁67および減圧リニア制御弁68が通電制御状態におかれる。従って、リニア制御モードにおいては、図2に示すように、動力液圧発生装置30と4輪のホイールシリンダ42とを連通する液圧回路L1(本発明における制御液圧回路)が形成される。このため、動力液圧発生装置30の出力する液圧(アキュムレータ圧)が増圧リニア制御弁67と減圧リニア制御弁68により調圧されて4輪のホイールシリンダ42に伝達される。この場合、各ホイールシリンダ42は、主流路52により連通されているため、ホイールシリンダ圧が4輪全て同じ値となる。このホイールシリンダ圧は、制御圧センサ103により検出することができる。
【0072】
ブレーキECU100は、制動要求を受けてブレーキ回生協調制御を開始する。制動要求は、例えばドライバーがブレーキペダル10を踏み込み操作した場合など、車両に制動力を付与すべきときにおいて発生する。ブレーキECU100は、制動要求を受けると、ストロークセンサ104により検出されるペダルストロークSpとレギュレータ圧センサ102により検出されるレギュレータ圧Pregとに基づいて要求制動力を演算する。要求制動力は、ペダルストロークSpが大きいほど、レギュレータ圧Pregが大きいほど大きな値に設定される。この場合、例えば、ペダルストロークSpとレギュレータ圧Pregとにそれぞれ重み付け係数Ks,Krを乗算するようにして、ペダルストロークSpが小さい範囲においては、ペダルストロークSpの重み付け係数Ksを大きく設定し、ペダルストロークSpが大きい範囲においては、レギュレータ圧Pregの重み付け係数Krを大きく設定して要求制動力を演算するとよい。
【0073】
ブレーキECU100は、演算した要求制動力を表す情報をハイブリッドECUに送信する。ハイブリッドECUは、要求制動力のうち、電力回生により発生させた制動力を演算して、その演算結果である回生制動力を表す情報をブレーキECU100に送信する。これにより、ブレーキECU100は、要求制動力から回生制動力を減算することによりブレーキ制御装置で発生させるべき制動力である要求液圧制動力を演算する。ハイブリッドECUで行う電力回生により発生する回生制動力は、モータの回転速度により変化するだけでなく、バッテリの充電状態(SOC)等によっても回生電流制御により変化する。従って、要求制動力から回生制動力を減算することにより、適切な要求液圧制動力を演算することができる。
【0074】
ブレーキECU100は、演算した要求液圧制動力に基づいて、各ホイールシリンダ42の目標液圧を演算し、ホイールシリンダ圧が目標液圧と等しくなるように、フィードバック制御により増圧リニア制御弁67と減圧リニア制御弁68の駆動電流を制御する。つまり、制御圧センサ103により検出される制御圧Pcon(=ホイールシリンダ圧)が目標液圧に追従するように、増圧リニア制御弁67と減圧リニア制御弁68の各ソレノイドに流す電流を制御する。
【0075】
これにより、作動液が動力液圧発生装置30から増圧リニア制御弁67を介して各ホイールシリンダ42に供給され、車輪に制動力が発生する。また、必要に応じてホイールシリンダ42から作動液が減圧リニア制御弁68を介して排出され、車輪に発生する制動力が調整される。
【0076】
また、ブレーキECU100は、アキュムレータ圧センサ101により検出されるアキュムレータ圧Paccを所定の周期で読み込み、アキュムレータ圧Paccが予め設定した最低設定圧を下回る場合にはモータ33を駆動してポンプ31により作動液を加圧し、常にアキュムレータ圧Paccが設定圧範囲内に維持されるように制御する。尚、このモータ33の制御については、リニア制御モードだけでなくバックアップモードにおいても実施される。
【0077】
また、リニア制御モードにおいては、ブレーキECU100は、シミュレータカット弁72を開弁状態に維持する。このため、ドライバーのブレーキペダル10の踏み込み操作に伴って、マスタシリンダ22から送出される作動液がストロークシミュレータ70に供給される。これにより、ドライバーのペダル踏力に応じた反力をブレーキペダル10に作用させることができ、ドライバーに対して良好なペダル操作フィーリングを与えることができる。
【0078】
尚、ブレーキECU100は、制動要求を受けていない場合においては、リニア制御モードから非制動モードに切り換える。非制動モードにおいては、マスタカット弁65、レギュレータカット弁66、連通弁64は、それぞれ開弁状態に維持され、シミュレータカット弁72、増圧リニア制御弁67、減圧リニア制御弁68は、閉弁状態に維持される。
【0079】
次に、バックアップモードについて説明する。バックアップモードにおいては、液圧制御弁装置50における電磁開閉弁および電磁リニア制御弁への通電が停止される。従って、常開式電磁弁であるマスタカット弁65、レギュレータカット弁66は、開弁状態に維持される。また、常閉式電磁弁である連通弁64、シミュレータカット弁72、および、常閉式電磁リニア弁である増圧リニア制御弁67、減圧リニア制御弁68は、閉弁状態に維持される。また、ABS保持弁61は開弁状態に維持され、ABS減圧弁63は閉弁状態に維持される。
【0080】
このため、バックアップモードにおいては、動力液圧発生装置30と各ホイールシリンダ42との連通が遮断され、代わりに、図3に示すように、マスタシリンダ22と前輪のホイールシリンダ42FR,42FLとを連通する前輪踏力液圧回路LF、および、レギュレータ23と後輪のホイールシリンダ42RR,42RLとを連通する後輪踏力液圧回路LRが形成される。前輪踏力液圧回路LFと後輪踏力液圧回路LRとは、連通弁64が閉弁状態に維持されることから互いに独立して設けられることになる。従って、マスタシリンダ圧が前輪のホイールシリンダ42FR,42FLに伝達され、レギュレータ圧が後輪のホイールシリンダ42RR,42RLに伝達される。
【0081】
バックアップモードは、ブレーキ制御装置内において何らかの異常が検出されているときに実行される制動モードである。従って、通常の(異常が検出されていない時)制動時においては、リニア制御モードが選択される。
【0082】
ブレーキ制御装置の異常の1つとして、ABS減圧弁63に異物が噛み込んで作動液が漏れてしまう異常がある。ブレーキ制御装置は、異常が検出されたときには、制動モードをリニア制御モードからバックアップモードに切り換えるが、ABS減圧弁63の漏れ異常に関しては、できるだけバックアップモードに切り換えたくない。例えば、右前輪のABS減圧弁63FRに漏れ異常が検出された場合、バックアップモードに切り換えると、前輪のホイールシリンダ42FR,42FLは、動力液圧発生装置30から切り離されてマスタシリンダ22と連通することになる。従って、ブレーキ制動時においては、マスタシリンダ22からホイールシリンダ42FR,42FLに作動液が供給されることになるが、作動液がABS減圧弁63FRから漏れてリザーバ流路57に流れてしまうため、十分なホイールシリンダ圧を発生させることができなくなることがある。特に、前輪のABS減圧弁63FR(63FL)は、後輪のABS減圧弁63RR(63RL)に比べて弁開口面積が大きいため、前輪のABS減圧弁63FR(63FL)に漏れ異常が発生した場合には、ホイールシリンダ圧が不足する傾向が強い。
【0083】
この場合、バックアップモードに切り換えなければ、4輪のホイールシリンダ42FR,42FL,42RR,42RLが動力液圧発生装置30に接続された状態となるため、ABS減圧弁63FRから作動液がリザーバ流路57に漏れてしまっても、その漏れ量を補うだけの流量の作動液を動力液圧発生装置30から供給することができる。つまり、動力液圧発生装置30は、ポンプ31およびアキュムレータ32を使って、4輪のホイールシリンダ42FR,42FL,42RR,42RLに液圧を伝達できるように構成されているため、アキュムレータ流路13から作動液を供給できる流量が多く、1つのABS減圧弁63FRから漏れた流量分を、作動液の供給量で補うことができる。
【0084】
しかし、リニア制御モードをそのまま継続してしまうと、作動液を加圧するためのポンプ31のモータ33の負荷が過大となり、今度は、ポンプ異常を招きやすくなる。仮に、モータ異常により動力液圧発生装置30の作動が停止してしまった場合には、レギュレータ23で作動液を加圧することができなくなり、バックアップモードでも、後輪のホイールシリンダ42RR,42RLに液圧を働かせることができなくなる。
【0085】
一方で、ABS減圧弁63の異物詰まりによる漏れ異常は、作動液を適切に通過させることで正常復帰可能である。特に、ABS減圧弁63の開口面積は、ABS保持弁61に比べて大きいため、ABS保持弁61を通過した異物であれば除去可能である。
【0086】
そこで、本実施形態においては、ABS減圧弁63の漏れ異常を検査し、ABS減圧弁63の漏れ異常を検出した場合には、すぐにバックアップモードにするのではなく、まず異物除去を試み、それでも漏れ異常が解消できない場合に限って、リニア制御モードからバックアップモードに切り換える。
【0087】
図4は、ブレーキECU100の実行するバルブ異常検査ルーチンを表すフローチャートである。このバルブ異常検査ルーチンは、前輪のABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常と連通弁64の漏れ異常についての検査処理と、前輪のABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常が検出された場合のリフレッシュ制御処理と、リフレッシュ制御処理後の再検査処理とを含んでいる。尚、バルブ異常検査ルーチンの起動時点では、ブレーキ制御装置内に異常が検出されていないものとして説明する。
【0088】
バルブ異常検査ルーチンが起動すると、ブレーキECU100は、ステップS11において、イグニッションスイッチがオン状態からオフ状態に切り替わったか否かを判断する。ブレーキECU100は、イグニッションスイッチがオフするまで待機し、イグニッションスイッチがオフしたことを検出すると、続くステップS12において、イグニッションスイッチのオフから所定時間Tig経過するまで待機する。尚、ブレーキECU100は、イグニッションスイッチのオフによりすぐにシステム停止するわけではなく、このバルブ異常検査ルーチンの終了後においてシステム停止する。続いて、ブレーキECU100は、ステップS13において、マスタカット弁65とレギュレータカット弁66とを閉弁状態にする。尚、各弁65,66が閉弁状態となっている場合には、その状態を維持すればよい。このとき、連通弁64は、開弁状態となっている。また、全てのABS保持弁61は開弁状態(非通電状態)、全てのABS減圧弁63は閉弁状態(非通電状態)となっている。
【0089】
続いて、ブレーキECU100は、ステップS14において、制御圧センサ103により検出される制御圧Pconが予め設定した設定圧P1(初期圧P1と呼ぶ)になるまで、増圧リニア制御弁67を開弁する。この場合、連通弁64が開弁状態になっているため、4輪の個別流路51に同じ液圧が作用する。ブレーキECU100は、制御圧Pconが初期圧P1に達すると、増圧リニア制御弁67を閉弁して加圧を停止する。
【0090】
続いて、ブレーキECU100は、ステップS15において、連通弁64を閉弁し、ステップS16において、再び、増圧リニア制御弁67を開弁する。この場合、ブレーキECU100は、予め設定された再加圧時間だけ、設定電流を増圧リニア制御弁67に通電する。これにより、後輪側の流路となる第2主流路522の作動液が更に加圧される。また、第1主流路521においては、連通弁64が閉弁されているため、連通弁64が正常であれば、作動液は加圧されない。再加圧時間が経過すると、ブレーキECU100は、増圧リニア制御弁67の通電を停止する。
【0091】
ブレーキECU100は、増圧リニア制御弁67による再加圧が終了すると、ステップS17において、予め設定した時間T1経過するまで待機する。続いて、ブレーキECU100は、ステップS18において、制御圧センサ103により検出される制御圧Pconを検出圧P2として記憶する。
【0092】
続いて、ブレーキECU100は、ステップS19において、検出圧P2と初期圧P1との差分|P2−P1|が、予め設定した漏れ判定閾値ΔPよりも大きいか否かを判断する。
【0093】
上述のステップS16において作動液を再加圧する際には、連通弁64およびABS減圧弁63が閉弁状態に維持されているため、連通弁64およびABS減圧弁63に漏れ異常が無ければ、図7に示すように、増圧リニア制御弁67の開弁による作動液の再加圧に関わらず、第1主流路521の液圧は一定に維持されるはずである。一方、連通弁64に漏れ異常が生じている場合には、連通弁64から作動液が第1主流路521に流れるため、第1主流路521の液圧は上昇する。また、前輪のABS減圧弁63FR,63FLが1つでも漏れ異常が生じている場合には、ABS減圧弁63FR(63FL)から作動液がリザーバ流路57に流出するため、第1主流路521の液圧は下降する。ブレーキECU100は、こうした第1主流路521の液圧の変化を制御圧センサ103の検出値の変化により検出することで、連通弁54およびABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常を判定する。
【0094】
ブレーキECU100は、ステップS19において、第1主流路521の圧力変動量|P2−P1|が漏れ判定閾値ΔP以下であると判定した場合には、ステップS20において、連通弁64およびABS減圧弁63FR,63FLが正常であると判定する。続いて、ステップS21において、制動モードとしてリニア制御モードを設定して、バルブ異常検査ルーチンを終了する。ブレーキECU100は、バルブ異常検査ルーチンの終了とともにシステムを停止させる。これにより、次回のシステム起動から(例えば、イグニッションスイッチのオン操作から)、リニア制御モードによるブレーキ制御が実行されることになる。
【0095】
ブレーキECU100は、ステップS19において、第1主流路521の圧力変動量|P2−P1|が漏れ判定閾値ΔPより大きいと判定した場合には、ステップS22において、第1主流路521の圧力変動が増加なのか減少なのかについて判断する。この場合、(P2−P1)が正の値であるか負の値であるかについて判断すればよい。ブレーキECU100は、ステップS22において、(P2−P1)が正の値であると判断した場合には、ステップS23において、連通弁54に漏れ異常が生じていると判定する。続いて、ステップS24において、制動モードとしてバックアップモードを設定して、バルブ異常検査ルーチンを終了する。これにより、次回のシステム起動から、バックアップモードによるブレーキ制御が実行されることになる。
【0096】
また、ブレーキECU100は、ステップS22において、(P2−P1)が負の値であると判断した場合には、ステップS25において、前輪のABS減圧弁63FR,63FLの少なくとも一方に漏れ異常が生じていると判定する。続いて、ステップS30において、リフレッシュ制御処理を実行し、続くステップS90において、前輪のABS減圧弁63FR,63FLの再検査処理を実行してバルブ異常検査ルーチンを終了する。
【0097】
リフレッシュ制御処理については、図5を用いて説明する。図5は、ステップS30の処理を表すリフレッシュ制御ルーチンを表すフローチャートである。このリフレッシュ制御ルーチンにおいては、4輪全てのABS減圧弁63FR,63FL,63RR,63RLについて、一つずつ順番に作動液を流す通液処理を実施し、全てのABS減圧弁63FR,63FL,63RR,63RLの通液処理が終了した後に、更に、減圧リニア制御弁68の通液処理も実施する。以下、異物を除去するために弁の開口流路に作動液を流す通液処理をリフレッシュ処理と呼ぶ。
【0098】
リフレッシュ制御ルーチンが起動すると、ブレーキECU100は、ステップS31において、アキュムレータ圧センサ101により検出されるアキュムレータ圧Paccが予め定めた規定圧Pacc0を超えているか否かを判断し、アキュムレータ圧Paccが規定圧Pacc0以下の場合には、規定圧Pacc0を超えるまで待機する。ポンプ31のモータ33は、アキュムレータ圧Paccが予め設定された最低設定圧を下回る場合には自動的に通電され、常にアキュムレータ圧Paccが設定圧範囲内に維持されるように制御される。従って、この規定圧Pacc0は、モータ33が通電駆動される範囲に入るように設定されている。
【0099】
このステップS31の処理は、リフレッシュ処理を開始するときには、適正なアキュムレータ圧を確保しておこうとするものである。ブレーキECU100は、アキュムレータ圧Paccが規定圧Pacc0を超えている場合、あるいは、規定圧Pacc0を超えるまで待機すると、続くステップS32において、連通弁64を開弁する。
【0100】
続いて、ブレーキECU100は、ステップS41〜S44において、右前輪のABS減圧弁63FRのリフレッシュ処理を実行する。ブレーキECU100は、まず、ステップS41において、右前輪のABS保持弁61FR以外のABS保持弁61FL,61RR,61RLを閉弁する。続いて、ステップS42において、右前輪のABS減圧弁63FRを開弁する。続いて、ステップS43において、増圧リニア制御弁67の電流制御により増圧リニア制御弁67を緩やかに開弁し、その後、緩やかに閉弁する。
【0101】
増圧リニア制御弁67を開弁すると、図8に示すように、作動液は、動力液圧発生装置30から増圧リニア制御弁67を通って主流路22に流れ、連通弁64、ABS保持弁61FR、ABS減圧弁63FRを通ってリザーバ流路57に戻される。ABS減圧弁63FRに異物が詰まっていた場合には、この作動液の流れにより、異物を除去することができる。異物除去性能は、ABS減圧弁66FRを通過する作動液の流量、流速に比例する。一方、このように作動液を流した場合、作動液の流量変化に比例した大きさの作動音(油撃音)が発生する。そこで、本実施形態においては、増圧リニア制御弁67に流す電流を制御することにより、開弁動作時と閉弁動作時における流量変化を小さくして作動音を低減する。
【0102】
図9は、リフレッシュ処理を行うときの増圧リニア制御弁67に通電する電流波形を表している。増圧リニア制御弁67の開弁動作における目標電流値i*は、次式により設定される。
i*=(iopen−Δi1)+K・t
ここで、iopenは、増圧リニア制御弁67が開弁動作するために必要となる電流(開弁に要する最小電流)を表す開弁電流値、Δi1は、開弁動作開始時における電流値が開弁電流値よりも小さくなるように予め設定した電流値、Kは電流値を増加させる度合を予め設定した電流勾配、tは経過時間を表す。
【0103】
増圧リニア制御弁67は、ソレノイドに通電する電流が大きいほど開度が大きくなり、一次側(入口側)と二次側(出口側)の差圧が大きいほど、同じ開度を得るために必要な電流は小さくてすむ。ブレーキECU100は、増圧リニア制御弁67の一次圧と二次圧との差圧と、開弁電流値iopenとの関係を表すマップを記憶しており、このマップを参照して開弁電流値iopenを計算する。この場合、アキュムレータ圧センサ101により検出されるアキュムレータ圧Paccと、制御圧センサ103により検出される制御圧Pconとの差圧に応じた開弁電流値iopenを計算すればよい。
【0104】
目標電流値i*は、通電開始から設定時間t1が経過すると、その時点の値((iopen−Δi1)+K・t1)を設定時間t2だけ維持するように設定され、設定時間t2が経過すると、増圧リニア制御弁67を閉弁するための値に設定される。増圧リニア制御弁67の閉弁動作における目標電流値i*は、次式により設定される。
i*=(iopen+Δi2)+α
ここで、Δi2は、閉弁動作開始時における電流値を開弁電流値に対して所定量だけ大きい値に設定するための電流値、αは、0より大きく1より小さい値に設定された減衰係数、nは、初期値を1として、所定時間(例えば、数ミリ秒)毎に値が1ずつ増加する変数を表す。また、目標電流値i*は、閉弁動作開始から設定時間t3が経過するとゼロとなるように設定される。尚、この実施形態においては、閉弁動作における目標電流値i*を計算するために使用したiopenを、増圧リニア制御弁67が閉弁状態から開弁状態に切り替わるのに必要となる電流値としているが、iopenは、増圧リニア制御弁67が開弁状態から閉弁状態に切り替わるのに必要となる電流値(電流値を下げていって閉弁状態に切りかわるときの電流値)としてもよい。
【0105】
このように、増圧リニア制御弁67に通電する目標電流値i*は、開弁動作時においては、一次関数的に増加し、閉弁動作時においては、指数関数的に減少するように設定されている。増圧リニア制御弁67の開弁動作時においては、高圧源から作動液の供給を開始させるものであるため、流量変化が大きくなりやすい。従って、目標電流値i*を一次関数的に増加させて増圧リニア制御弁67を滑らかに開弁する。また、増圧リニア制御弁67の閉弁動作は、作動液の供給により液圧が低下した状態から開始されるものであるため、開弁動作時ほど流量変化は大きくならない。そこで、目標電流値i*を指数関数的に減少させることにより、開弁動作よりも速い動作で閉弁するようにしている。
【0106】
ブレーキECU100は、ステップS43において、上述した目標電流値i*の電流を増圧リニア制御弁67に流す。これにより、増圧リニア制御弁67により調整された流量の作動液が右前輪のABS減圧弁63FRを通過し、異物が詰まっている場合には、作動液の流れにより異物が除去される。この場合、上述したように増圧リニア制御弁67の開度が目標電流値i*により制御されるため、増圧リニア制御弁67の開弁動作時、閉弁動作時における油撃音の発生が低減される。
【0107】
続いて、ブレーキECU100は、ステップS44において、右前輪のABS減圧弁63FRを閉弁する。この場合、増圧リニア制御弁67が閉弁してから右前輪のABS減圧弁63FRを閉弁する。こうして、1輪分のABS減圧弁63FRのリフレッシュ処理が完了する。続いて、ブレーキECU100は、ステップS50において、左前輪のABS減圧弁63FLのリフレッシュ処理を行い、ステップS60において、右後輪のABS減圧弁63RRのリフレッシュ処理を行い、ステップS70において、左後輪のABS減圧弁63RLのリフレッシュ処理を行う。各ステップS50〜S70の処理は、ステップS41〜S44の処理と同様であって、開弁対象となるABS保持弁61、ABS減圧弁63を当該対象車輪のものとすればよい。また、他の3輪においても、増圧リニア制御弁67の電流制御については、ステップS43の処理と同様である。
【0108】
ブレーキECU100は、左後輪のABS減圧弁63RLのリフレッシュ処理を行うと、ステップS81において、左後輪のABS保持弁61RLを閉弁する。これにより、4輪全てのABS保持弁61FR,61FL,61RR,61RLが閉弁状態となる。
【0109】
続いて、ブレーキECU100は、減圧リニア制御弁68のリフレッシュ処理を開始する。まず、ステップS82において、減圧リニア制御弁68を開弁する。続いて、ステップS83において、増圧リニア制御弁67の電流制御により増圧リニア制御弁67を緩やかに開弁し、その後、緩やかに閉弁する。この処理は、ステップS43の処理と同様である。これにより、増圧リニア制御弁67により調整された流量で作動液が減圧リニア制御弁68を通過し、異物が詰まっている場合には、作動液の流れにより異物が除去される。
【0110】
続いて、ブレーキECU100は、ステップS84において、4輪全てのABS保持弁61FR,61FL,61RR,61RLを開弁し、続くステップS85において、減圧リニア制御弁68を閉弁する。これにより、一連のリフレッシュ処理が完了すると、ブレーキECU100は、ステップS90において、ABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常再検査を実施する。
【0111】
この再検査処理は、図6に示す漏れ異常の再検査ルーチンに沿って実行される。漏れ異常の再検査ルーチンが開始されると、ブレーキECU100は、ステップS91において、圧力変化検出処理を実行する。この圧力変化検出処理は、上述したステップS14からステップS18の処理と同一である。続いて、ブレーキECU100は、ステップS92において、第1主流路521の圧力変動量|P2−P1|が漏れ判定閾値ΔPより大きいか否かを判断する。圧力変動量|P2−P1|が漏れ判定閾値ΔP以下であれば、ステップS93において、ABS減圧弁63FR,63FLが正常であると判定する。つまり、上述したリフレッシュ制御ルーチンの実行により、ABS減圧弁63FR(63FL)の異物が除去されて正常状態に戻ったと判定する。そして、ブレーキECU100は、ステップS94において、制動モードとしてリニア制御モードを設定して、再検査ルーチンを終了する。
【0112】
一方、圧力変動量|P2−P1|が漏れ判定閾値ΔPよりも大きい場合には、ステップS95において、前輪のABS減圧弁63FR(63FL)の漏れ異常が解消していないと判定する。この場合、ブレーキECU100は、ステップS96において、制動モードとしてバックアップモードを設定して、再検査ルーチンを終了する。
【0113】
尚、ブレーキECU100は、バルブ異常検査ルーチンを終了するときには、連通弁64を開弁するとともに、減圧リニア制御弁68を開弁して流路内を減圧しておく。
【0114】
図10は、バルブ異常検査ルーチンが実行されたときの、制御圧Pcon(1点鎖線)および目標電流値i*(実線)の推移を表している。この例では、初回の検査時において、前輪のABS減圧弁63FR(63FL)の漏れ異常が検出され、リフレッシュ制御により漏れ異常が解消されている。
【0115】
以上説明した本実施形態のブレーキ制御装置によれば、イグニッションスイッチがオフした所定時間後に、連通弁64と前輪のABS減圧弁63FR,63FLとの漏れ異常を検査する。そして、連通弁64の漏れ異常が検出された場合には、制動モードをバックアップモードに設定して、次回の起動時からはバックアップモードでスタートさせる。連通弁64の漏れ異常が発生した場合には、バックアップモードによるブレーキ制御であっても十分な制動力を確保することができる。一方、前輪のABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常が発生した場合には、バックアップモードに設定すると、制動力が不足する可能性がある。また、前輪のABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常が発生した場合であっても、その原因が異物詰まりによるものであれば、ABS減圧弁63FR,63FLに作動液を適切に通過させることで異物を除去することができる。特に、ABS減圧弁63は、その上流側となるABS保持弁61よりも開弁流路面積が大きいため、ABS保持弁61を通過した異物であれば、ABS減圧弁63を通過できるからである。
【0116】
そこで、本実施形態においては、前輪のABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常が検出された場合には、すぐにバックアップモードに設定するのではなく、リフレッシュ制御ルーチン(S30)を実行する。これにより、ABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常が解消された場合には、バックアップモードに設定することなくリニア制御モードに設定する。従って、次回の起動時からはリニア制御モードでスタートさせることができる。また、ABS減圧弁63FR,63FLの漏れ異常が解消されない場合にのみ、バックアップモードに設定する。これにより、ポンプ31のモータ33が過負荷となる状況を防止することができる。
【0117】
異物除去性能は、ABS減圧弁63を通過する作動液の流量、流速に依存するため、できるだけ流量、流速を増やしたい。一方で、作動液の流量、流速を増やすほど流動音が発生する。この流動音は、特に、増圧リニア制御弁67で発生する。増圧リニア制御弁67は、流路内において最も差圧が大きく、全流量が集中する部位となるためである。そこで、本実施形態のリフレッシュ制御ルーチンにおいては、4輪のABS減圧弁63FR,63FL,63RR,63RLに対して同時に作動液を通過させるのではなく、一輪ずつ順番に作動液を通過させてリフレッシュ処理を実施する。これにより、増圧リニア制御弁67に流れる作動液の流速を低く抑えた状態で、異物除去に必要となる流量をABS減圧弁63に通過させることができる。この結果、作動液の流動音の低減と、異物除去性能の向上とを両立させることができる。
【0118】
また、ABS減圧弁63に詰まった異物は、1回のリフレッシュ制御ルーチンの実行で十分に除去することができる。従って、リフレッシュ制御ルーチンの実行後の再検査(S90)において、異常が解消されなかった場合には、リフレッシュ制御ルーチンを再度実施しないようにしている。つまり、ブレーキ制御装置のシステム起動からシステム停止までの期間(ブレーキ制御が開始されてから終了するまでの期間)を1トリップとして、再検査結果に関わらず1トリップにつき1回のみ、リフレッシュ処理を実施する。また、リフレッシュ処理は、ABS減圧弁63の漏れ異常が検出された場合においてのみ実施される。これにより、作動液の流動音の発生回数を低減することができる。
【0119】
また、リフレッシュ制御ルーチンの実行時においては、増圧リニア制御弁67の通電電流制御により、増圧リニア制御弁67の開弁動作と閉弁動作とを緩やかに行うため、開弁動作時および閉弁動作時における作動液の流量変化が抑制される。これにより作動音(油撃音)を低減することができる。
【0120】
また、リフレッシュ制御ルーチンの実行時においては、各ABS減圧弁63のリフレッシュ処理を終了するときに、増圧リニア制御弁67を確実に閉弁してからABS減圧弁63を閉弁するようにしている(S43→S44)。これにより、作動音(油撃音)の発生を防止することができる。仮に、閉弁順序を逆にして、ABS減圧弁63を閉弁してから増圧リニア制御弁67を閉弁した場合には、導入された作動液の逃げ場がなくなるため作動音(油撃音)が発生してしまう。
【0121】
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。
【0122】
<変形例1>
本実施形態においては、各ABS減圧弁63のリフレッシュ処理期間を、増圧リニア制御弁67の通電時間で制御している(S43)。つまり、開弁動作の開始から所定時間(t1+t2)経過後に閉弁動作を開始するようにしている。これに対して、変形例1においては、増圧リニア制御弁67を通過した作動液の流量(ABS減圧弁63を通過した作動液のトータル流量)を推定し、その推定流量が予め設定された設定流量に達したら閉弁動作を開始する。
【0123】
この変形例1では、ブレーキECU100は、作動液の通過流量をアキュムレータ圧センサ101により検出されるアキュムレータ圧Paccの変動量ΔPacc、および、ポンプ31の供給流量Qponに基づいて推定流量Qxを演算する。アキュムレータ圧Paccと作動液の供給流量Qとの関係は、図11に示すような特性を有する。従って、増圧リニア制御弁67の開弁動作の開始から、アキュムレータ圧PaccがΔPaccだけ減った場合には、そのΔPaccに対応する流量ΔQの作動液が増圧リニア制御弁67を通過したことになる。この特性は、ポンプ31が作動していない場合の特性である。従って、ポンプ31が作動している場合には、ポンプ供給流量Qponを加算する必要がある。ポンプ供給流量Qponは、ポンプ31の単位時間当たりの供給流量(既知)にポンプ31の作動時間を乗算することで計算することができる。
【0124】
従って、推定流量Qxは、次式により計算することができる。
Qx=f(ΔPacc)+Qpon
fは、アキュムレータ圧Paccと作動液の供給流量Qとの関係を表す関数である。
【0125】
ブレーキECUは、リフレッシュ制御ルーチンのステップS43に代えて、図12に示す流量制御ルーチンを実行する。まず、ステップS431において、アキュムレータ圧センサ101により検出されるアキュムレータ圧Paccを読み込んで、その値を初期圧Pacc1としてメモリに記憶する。続いてステップS432において、増圧リニア制御弁67の電流制御を開始する。この場合、図9に示した目標電流値i*にて電流制御を行う。但し、通電開始から設定時間t1経過後は、その時点における目標電流値i*を維持するようにする。
【0126】
続いて、ブレーキECU100は、ステップS433において、アキュムレータ圧センサ101により検出されるアキュムレータ圧Paccを読み込んで、初期圧Pacc1からの低下分であるアキュムレータ圧変動量ΔPaccを計算する。続いて、ステップS434において、ポンプ31が作動している場合には、本流量制御ルーチンの開始(ステップS431の開始)からのポンプ供給流量Qponを計算する。続いて、ブレーキECU100は、ステップS435において、増圧リニア制御弁67を通過した推定流量Qxを上記式を使って計算する。
【0127】
続いて、ブレーキECU100は、ステップS436において、推定流量Qxが予め設定したリフレッシュ設定流量Q0以上になったか否かを判断し、推定流量Qxがリフレッシュ設定流量Q0以上になるまでステップS432からステップS436の処理を繰り返す。こうして、推定流量Qxがリフレッシュ設定流量Q0に到達すると、ブレーキECU100は、ステップS437において、増圧リニア制御弁67の目標電流値i*を閉弁動作用のものに切り換える。つまり、図9におけるt3期間における目標電流値i*に設定する。こうして、目標電流値i*が漸減されて0になると、ブレーキECU100は、本流量制御ルーチンを抜けて、その処理をメインルーチンのステップS44に進める。
【0128】
この変形例1によれば、ABS減圧弁63を通過させる作動液の流量を、過不足のない所望の流量に制御することができる。従って、リフレッシュ処理を一層適切に行うことができる。
【0129】
<変形例2>
本実施形態においては、リフレッシュ制御ルーチンにおいて、ABS減圧弁63FR,63FL,63RR,63RLを順番に1回だけ開弁してリフレッシュ処理を行っているが、変形例2においては、図13に示すように、複数回に分けて実施する。異物除去性能は、作動液を通過させる流量だけでなく流量変動にも依存する。従って、作動液を1回に長時間流すよりも、短時間で複数回に分けて流す方が異物除去性能は良好となる。これにより、限られた時間内でABS減圧弁63に詰まった異物を良好に除去することができる。尚、図11の例は、ABS減圧弁63FR,63FL,63RR,63RLごとに連続して2回のリフレッシュ用の開弁を行っているが、ABS減圧弁63FR,63FL,63RR,63RLに対して順番にリフレッシュ用の開弁を1回行った後、再度、同様なリフレッシュ用の開弁を繰り返すようにしてもよい。また、リフレッシュ処理の分割数は、任意に設定することができる。
【0130】
<変形例3>
本実施形態においては、リフレッシュ制御ルーチンは、ABS減圧弁63の漏れ異常が検出された場合においてのみ1回実施されるが、変形例3においては、異常検出に関わらず、nトリップに1回(n:自然数)だけリフレッシュ制御ルーチンを定期的に実施する。例えば、ブレーキECU100は、システム起動回数をカウントし、そのカウント値がnの倍数となる場合にのみ、バルブ異常検査ルーチンで異常が検出されなかった場合でも、バルブ異常検査ルーチンの終了後に、リフレッシュ制御ルーチン(S30と同一の処理)を実行する。この場合、n=1、つまり、毎トリップの終了時にリフレッシュ制御ルーチンを実行するようにしてもよい。
【0131】
<変形例4>
本実施形態においては、イグニッションスイッチがオフする度に、毎回、バルブ異常検査ルーチンを実行しているが、変形例4においては、例えば、nトリップに1回(n:2以上の整数)だけバルブ異常検査ルーチンを実施するように設定する。例えば、ブレーキECU100は、システム起動回数をカウントし、イグニッションスイッチがオフしたときに、そのカウント値がnの倍数となる場合にのみ、バルブ異常検査ルーチンを実施する。
【0132】
<変形例5>
本実施形態においては、リフレッシュ制御ルーチンを開始する際に、動力液圧発生装置30の出力する液圧であるアキュムレータ圧Paccが規定圧Pacc0に達していない場合には、規定圧Pacc0を超えるまで待機するが、変形例5においては、ブレーキECU100は、リフレッシュ制御ルーチンの実行中においても、所定の周期でアキュムレータ圧Paccを検出し、アキュムレータ圧Paccが規定圧Pacc1以下となる場合には、一旦リフレッシュ処理を中断して、アキュムレータ圧Paccが所定圧Pacc2以上になるまで待機する。この場合、リフレッシュ処理を再開させるための判定用閾値(所定圧Pacc2)は、リフレッシュ処理を中断させるための判定用閾値(規定圧Pacc1)よりもディファレンシャル分だけ高い値に設定するとよい。
【0133】
以上、本実施形態および変形例のブレーキ制御装置について説明したが、本発明は上記実施形態および変形例に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0134】
例えば、本実施形態のブレーキ制御装置は、ハイブリッド車両に適用したものであるが、電気自動車(EV)に適用しても良い。この場合でも、ブレーキ回生協調制御を実行することができる。
【0135】
また、本実施形態においては、イグニッションスイッチがオフした後にバルブ異常検査ルーチンを実行するが、イグニッションスイッチがオンしている状態で車両が停止しているときにバルブ異常検査ルーチンを実行する構成であってもよい。
【0136】
また、本実施形態においては、前輪のABS減圧弁63FR(63FL)の漏れ異常が検出されたとき、減圧リニア制御弁68のリフレッシュ処理も一緒に実行しているが、減圧リニア制御弁68のリフレッシュ処理については実行しない構成であってもよい。
【0137】
また、本実施形態においては、リフレッシュ処理時において、増圧リニア制御弁67の電流を、開弁動作時に漸増させ、閉弁動作時において漸減させることにより、開弁動作と閉弁動作とを緩やかに行うが、例えば、開弁動作時においてのみ、あるいは、閉弁動作時においてのみ、このような電流制御を行うようにしてもよい。また、開弁動作と閉弁動作との何れにおいても、瞬時に電流を切り換えるようにしてもよい。
【0138】
また、本実施形態においては、増圧リニア制御弁67と減圧リニア制御弁68とからなるリニア制御弁にて4輪のホイールシリンダ圧を共通に制御するブレーキ制御装置に適用しているが、制御液圧回路に4輪ごとに別々のリニア制御弁を設け、動力液圧源で加圧された作動液の液圧を各輪ごとにリニア制御弁で調圧してホイールシリンダに伝達するブレーキ制御装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0139】
10…ブレーキペダル、11…マスタ配管、12…レギュレータ配管、13…アキュムレータ配管、14…リザーバ配管、20…マスタシリンダユニット、21…液圧ブースタ、22…マスタシリンダ、23…レギュレータ、24…リザーバ、25…リリーフバルブ、30…動力液圧発生装置、31…ポンプ、32…アキュムレータ、33…モータ、42FR,42FL,42RR,42RL…ホイールシリンダ、50…液圧制御弁装置、51FR,51FL,51RR,51RL…個別流路、52…主流路、521…第1主流路、522…第2主流路、53…マスタ流路、54…レギュレータ流路、55…アキュムレータ流路、56FR,56FL,56RR,56RL…減圧用個別流路、57…リザーバ流路、61FR,61FL,61RR,61RL…ABS保持弁、63FR,63FL,63RR,63RL…ABS減圧弁、64…連通弁、65…マスタカット弁、66…レギュレータカット弁、67…増圧リニア制御弁、68…減圧リニア制御弁、70…ストロークシミュレータ、100…ブレーキECU、101…アキュムレータ圧センサ、102…レギュレータ圧センサ、103…制御圧センサ、104…ストロークセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪のそれぞれに設けられ作動液の液圧を受けて車輪に制動力を与える複数のホイールシリンダと、
ブレーキペダルに入力された踏力により加圧された作動液の液圧を前記複数のホイールシリンダに伝達する踏力液圧回路と、
前記ブレーキペダルの操作とは無関係に作動液を加圧する動力液圧源と、
前記動力液圧源で加圧された作動液の液圧をリニア制御弁により調圧して前記複数のホイールシリンダに伝達する制御液圧回路と、
前記制御液圧回路を使って車輪に制動力を発生させる制御液圧モードと、前記踏力液圧回路を使って車輪に制動力を発生させるバックアップモードとを切り換えるモード切換手段と、
前記各ホイールシリンダに対応して設けられ、ホイールシリンダの作動液をリザーバ流路に戻してホイールシリンダ圧を低減する減圧弁と、
前記減圧弁の漏れ異常を検査する減圧弁異常検査手段と、
前記減圧弁異常検査手段により前記減圧弁の漏れ異常が検出されたとき、前記バックアップモードに切り換えずに、前記減圧弁に詰まった異物を除去するために前記制御液圧回路を使って前記減圧弁に作動液を通過させる処理であるリフレッシュ処理を行うリフレッシュ手段と、
前記リフレッシュ手段によるリフレッシュ処理後に、前記減圧弁の漏れ異常を再度検査する減圧弁異常再検査手段と、
前記リフレッシュ手段によるリフレッシュ処理にも関わらす減圧弁異常再検査手段により前記減圧弁の漏れ異常が検出された場合に、前記バックアップモードに移行させるモード移行指令手段と
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
前記リフレッシュ手段は、システム起動からシステム停止までの期間を1トリップとして、1トリップにつき1回を限度として前記リフレッシュ処理を実行することを特徴とする請求項1記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
前記制御液圧回路は、前記動力液圧源に接続され前記リニア制御弁を備えた主幹流路と、前記主幹流路から分岐して各ホイールシリンダへ接続される個別流路と、前記個別流路を開閉する開閉弁とを備えており、
前記リフレッシュ手段は、前記開閉弁を一つずつ開弁することにより、全ての減圧弁に対して一つずつ前記リフレッシュ処理を行うことを特徴とする請求項1または2記載のブレーキ制御装置。
【請求項4】
前記リフレッシュ手段は、前記動力加圧源の出力する液圧が規定圧以下に低下している場合には、前記動力加圧源の出力する液圧が所定圧以上に上昇するまで待機する液圧確保手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項5】
前記リフレッシュ手段は、前記リフレッシュ処理の開始時に、前記動力加圧源の出力する作動液を前記減圧弁に流すように前記リニア制御弁を開弁するとき、前記リニア制御弁を開弁するのに必要な電流値よりも低い所定電流値から徐々に電流値を増加させるように前記リニア制御弁の電流を制御する開弁電流制御手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項6】
前記リフレッシュ手段は、前記リフレッシュ処理の終了時に、前記動力加圧源から前記減圧弁へ流れている作動液を停止させるように前記リニア制御弁を閉弁するとき、前記リニア制御弁を開弁若しくは閉弁するのに必要な電流値よりも高い所定電流値から徐々に電流値を減少させるように前記リニア制御弁の電流を制御する閉弁電流制御手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項7】
前記リフレッシュ手段は、前記リフレッシュ処理中における前記減圧弁に流れた流量を表すリフレッシュ流量を推定し、前記推定したリフレッシュ流量が設定流量に到達したときに当該減圧弁のリフレッシュ処理を終了する流量制御手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項6の何れか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項8】
前記リフレッシュ手段は、前記リフレッシュ処理を終了するに際し、前記リニア制御弁を閉弁した後に前記減圧弁を閉弁する閉弁タイミング設定手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れか一項記載のブレーキ制御装置。
【請求項9】
前記リフレッシュ手段は、前記減圧弁を通過する作動液の一連の流量変化が、複数回にわたって発生するように前記リフレッシュ処理を分割して実行することを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れか一項記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−22994(P2013−22994A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157555(P2011−157555)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】