説明

ブレーキ制御装置

【課題】
ブレーキ操作フィーリングを向上することができるブレーキ制御装置を提供すること。
【解決手段】
回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ制御装置であって、ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ4と前記ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダ5を接続する第1ブレーキ回路(管路11,12)と、マスタシリンダ4内のブレーキ液を増圧し第1ブレーキ回路に接続する第2ブレーキ回路(管路15)を介してホイルシリンダ5へ送る倍力装置(第1ポンプ32)と、第1ブレーキ回路から分岐し、倍力装置に接続する第3ブレーキ回路(管路16,17)と、第3ブレーキ回路に設けられたリザーバ29と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ制御装置であって、ドライバの要求制動力に対する回生制動力の不足分を補うように摩擦制動力を発生する、所謂回生協調制御を行うものが知られている。例えば特許文献1に記載のブレーキ制御装置は、摩擦制動力を発生するために液圧制御を行うものであって、マスタシリンダとホイルシリンダとを接続する第1ブレーキ回路と、マスタシリンダ内の作動液(ブレーキ液)を増圧し、第1ブレーキ回路に接続する第2ブレーキ回路を介してホイルシリンダへ送る倍力装置と、第1ブレーキ回路から分岐し、倍力装置に接続する第3ブレーキ回路と、ホイルシリンダからのブレーキ液を貯留するリザーバとを備え、ホイルシリンダ圧を増減圧可能に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−67907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のブレーキ制御装置では、ドライバによるブレーキ操作に対して、適切なブレーキ操作フィーリングを与えつつホイルシリンダ圧を任意に制御することが困難であった。本発明の目的とするところは、ブレーキ操作フィーリングを向上することができるブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のブレーキ制御装置は、好ましくは、リザーバを第3ブレーキ回路に設けた。
【発明の効果】
【0006】
よって、ドライバによるブレーキ操作に対して、マスタシリンダからリザーバにブレーキ液を流入させることで、ブレーキ操作フィーリングを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のブレーキ制御装置が適用される車両のシステム構成を示す。
【図2】実施例1の液圧制御ユニットの回路構成を示す。
【図3】実施例1のペダル踏力創生のための各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図4】実施例1の通常ブレーキにおけるペダル踏み込み時のブレーキ液の流れを示す。
【図5】実施例1の通常ブレーキにおけるペダル踏み込み時の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図6】実施例1の通常ブレーキにおけるペダルストローク保持時のブレーキ液の流れを示す。
【図7】実施例1の通常ブレーキにおけるペダルストローク保持時の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図8】実施例1の通常ブレーキにおけるペダル踏み戻し時のブレーキ液の流れを示す。
【図9】実施例1の通常ブレーキにおけるペダル踏み戻し時の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図10】実施例1の通常ブレーキにおけるペダル踏み戻し終了間際のブレーキ液の流れを示す。
【図11】実施例1の通常ブレーキにおけるペダル踏み戻し終了間際の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図12】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み込み時であってホイルシリンダ増圧時のブレーキ液の流れを示す。
【図13】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み込み時であってホイルシリンダ増圧時の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図14】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み込み時であってホイルシリンダ圧保持時のブレーキ液の流れを示す。
【図15】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み込み時であってホイルシリンダ圧保持時のブレーキ液の流れを示す。
【図16】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み込み時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が小さい場合)のブレーキ液の流れを示す。
【図17】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み込み時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が小さい場合)の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図18】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み込み時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が大きい場合)のブレーキ液の流れを示す。
【図19】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み込み時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が大きい場合)の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図20】実施例1の回生協調制御におけるペダルストローク保持時であってホイルシリンダ増圧時のブレーキ液の流れを示す。
【図21】実施例1の回生協調制御におけるペダルストローク保持時であってホイルシリンダ増圧時の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図22】実施例1の回生協調制御におけるペダルストローク保持時であってホイルシリンダ圧保持時のブレーキ液の流れを示す。
【図23】実施例1の回生協調制御におけるペダルストローク保持時であってホイルシリンダ圧保持時のブレーキ液の流れを示す。
【図24】実施例1の回生協調制御におけるペダルストローク保持時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が小さい場合)のブレーキ液の流れを示す。
【図25】実施例1の回生協調制御におけるペダルストローク保持時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が小さい場合)の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図26】実施例1の回生協調制御におけるペダルストローク保持時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が大きい場合)のブレーキ液の流れを示す。
【図27】実施例1の回生協調制御におけるペダルストローク保持時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が大きい場合)の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図28】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み戻し時であってホイルシリンダ増圧時のブレーキ液の流れを示す。
【図29】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み戻し時であってホイルシリンダ増圧時の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図30】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み戻し時であってホイルシリンダ圧保持時のブレーキ液の流れを示す。
【図31】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み戻し時であってホイルシリンダ圧保持時のブレーキ液の流れを示す。
【図32】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み戻し時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が小さい場合)のブレーキ液の流れを示す。
【図33】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み戻し時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が小さい場合)の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図34】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み戻し時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が大きい場合)のブレーキ液の流れを示す。
【図35】実施例1の回生協調制御におけるペダル踏み戻し時であってホイルシリンダ減圧時(減圧勾配が大きい場合)の各アクチュエータの作動状態を示す。
【図36】実施例1の通常ブレーキにおける各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図37】実施例1の制動初期に回生制動力を発生させ摩擦制動力を発生させない場合の各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図38】実施例1の制動初期に回生制動力を発生させた後に摩擦制動力を発生させる場合の各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図39】実施例1の制動初期に回生制動力を発生させた後に摩擦制動力を発生させる場合であって摩擦制動力の減少勾配が大きいときの各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図40】実施例1の制動初期に回生制動力を発生させた後の比較的早期に摩擦制動力を発生させる場合の各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図41】実施例1の制動初期に回生制動力を発生させた後の比較的早期に摩擦制動力を発生させる場合であって摩擦制動力の減少勾配が大きいときの各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図42】実施例1の制動初期に摩擦制動力を発生させた後に回生制動力を発生させる場合の各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図43】実施例1の制動初期に摩擦制動力を発生させた後に回生制動力を発生させる場合であって摩擦制動力の減少勾配が大きいときの各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。
【図44】実施例2の液圧制御ユニットの回路構成を示す。
【図45】実施例3の液圧制御ユニットの回路構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のブレーキ制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施例は、多くのニーズに適応できるように検討されており、回生協調制御時のペダルフィーリングの向上というニーズのほか、例えば制御の応答性の向上というニーズにも対応している。
【0009】
〔実施例1〕
まず、構成を説明する。
図1は実施例1のブレーキ制御装置1を適用した車両の制駆動系を示すシステム構成図、図2は実施例1のブレーキ制御装置1の回路構成図である。車両は、前輪FL,FRが内燃機関(エンジン100)により駆動されると共に、後輪RL,RRが電動機(モータジェネレータ101)により駆動されるハイブリッド車両である。各車輪FL,FR,RL,RRには、その回転速度(車輪速)を検出する車輪速検出手段(車輪速センサ)108が設けられている。なお、各電子制御ユニット(コントロールユニット7、モータコントロールユニット104、駆動コントローラ105)は、情報交換が可能な信号線(CAN通信線109)を介して互いに接続されている。車両の駆動系は、エンジン100とモータジェネレータ101とインバータ102とバッテリ103とモータコントロールユニット104と駆動コントローラ105とを有している。エンジン100は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、その出力軸は図外の自動変速機を介して前輪FL,FRの駆動軸に連結されている。エンジン100は、電子制御ユニットである駆動コントローラ105からの制御指令に基づいて、スロットルバルブの開度等が制御される。駆動コントローラ105には、アクセルペダルAPに設けられたアクセル操作量検出手段(アクセル開度センサ)106からの信号が入力される。
【0010】
モータジェネレータ101は、ロータに永久磁石を埋設しステータにコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、ロータの出力軸は、プロペラシャフトPS及びディファレンシャルギアDGを介して後輪RL,RRの駆動軸RDSに連結されている。モータジェネレータ101は、電子制御ユニットであるモータコントロールユニット104からの制御指令に基づいて、インバータ102により作り出された三相交流を印加することにより制御される。モータジェネレータ101は、バッテリ103からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ103を充電することもできる(以下、この動作状態を「回生」と呼ぶ)。インバータ102は、モータコントロールユニット104からの駆動指令に基づいて、バッテリ103の直流電力を交流電力に変換しモータジェネレータ101に供給することで、モータジェネレータ101を力行運転する。一方、インバータ102は、モータコントロールユニット104からの回生指令に基づいて、モータジェネレータ101で発生する交流電力を直流電力に変換してバッテリ103を充電することで、モータジェネレータ101を回生運転する。車両の操舵系は、ステアリングホイールと転舵輪とを連結するステアリングシャフトと、ステアリングシャフトに設けられた操舵状態検出手段(操舵角センサ107等)を有している。
【0011】
車両の制動系(ブレーキシステム)は、ブレーキ制御装置1とブレーキペダル2とマスタシリンダ4とホイルシリンダ5を有している。ブレーキペダル2は、インプットロッド3を介してマスタシリンダ4に接続されている。ブレーキペダル2には、ドライバのブレーキ操作状態としてブレーキペダル2のストローク量(以下、ペダルストロークSという)を検出するブレーキペダルストロークセンサ8(ブレーキ操作状態検出部)が設けられている。マスタシリンダ4は、ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧(マスタシリンダ圧P1)を発生する液圧発生装置である。マスタシリンダ4には、作動液(ブレーキ液)を貯留する液源としてのリザーバタンク40が一体に設けられており、マスタシリンダ4は、リザーバタンク40からブレーキ液の供給を受ける。マスタシリンダ4は所謂タンデム型であって、独立した2系統(プライマリP系統,セカンダリS系統)のブレーキ配管系を介して液圧制御ユニット6に接続されている。ホイルシリンダ5は、各車輪FL,FR,RL,RRに設けられ、ブレーキ液圧(ホイルシリンダ圧P2)により摩擦制動力を発生するように構成されている。
【0012】
ブレーキ制御装置1は、各車輪FL,FR,RL,RRのブレーキ液圧を制御可能に設けられた液圧制御ユニット6と、液圧制御ユニット6を制御する電子制御ユニットであるブレーキコントロールユニット7とを有しており、これらが一体化された所謂機電一体型のユニットである。なお、両ユニット6、7を別体としてもよい。液圧制御ユニット(液圧制動装置)6は、ブレーキ配管を介してマスタシリンダ4とホイルシリンダ5との間に配置されたアクチュエータであり、各ホイルシリンダ5に供給する制御液圧を発生するための液圧機器(アクチュエータ)として、液圧発生源である(例えば回転式の)ポンプ及び複数の制御弁等を有すると共に、これら液圧機器を内蔵するハウジングを有する。液圧制御ユニット6は、ブレーキコントロールユニット7(液圧制御部70)からの摩擦制動力指令に基づいて、左前輪FLのホイルシリンダ5a、右前輪FRのホイルシリンダ5b、左後輪RLのホイルシリンダ5c、右後輪RRのホイルシリンダ5dの各液圧を増減又は保持する。
【0013】
モータコントロールユニット104は、駆動コントローラ105からの駆動力指令に基づいて、インバータ102に駆動指令を出力する。また、ブレーキコントロールユニット7からの回生制動力指令に基づいて、インバータ102に回生指令を出力する。モータコントロールユニット104は、モータジェネレータ101による駆動力又は回生制動力の出力制御の状況と、現時点で発生可能な最大回生制動力を、通信線109を介してブレーキコントロールユニット7、駆動コントローラ105へと送る。ここで、「発生可能な最大回生制動力」は、例えば、バッテリ103の端子間電圧と電流値とから推定されるバッテリSOCや、車輪速センサ108により算出(推定)される車体速(車速)から算出する。また、旋回時には、車両のステア特性も加味して算出する。すなわち、バッテリSOCが上限値又は上限値に近い状態にある満充電時には、バッテリ保護の観点から過充電防止を図る必要がある。また、制動により車速が減少した場合、モータジェネレータ101で発生可能な最大回生制動力は減少する。さらに、高速走行時に回生制動を行うと、インバータ102が高負荷となるため、高速走行時にも最大回生制動力を制限する。加えて、実施例1の車両では、回生制動力を後輪RL,RRに付与しているため、旋回時に摩擦制動力に対して回生制動力過大、すなわち前輪FL,FRに対して後輪RL,RRの制動力が大き過ぎると、車両のステア特性はオーバーステア傾向が顕著となり、旋回挙動が乱れてしまう。このため、オーバーステア傾向が強くなった場合は最大回生制動力を制限し、旋回時における制動力の前後輪配分を、車両の諸元に応じた理想配分(例えば、前:後=6:4)に近づける必要がある。モータジェネレータ101、インバータ102、バッテリ103及びモータコントロールユニット104より、車輪(左右後輪RL,RR)に対して回生制動力を発生させる回生制動装置が構成される。
【0014】
駆動コントローラ105は、直接又は通信線109を介して、アクセル開度センサ106からのアクセル開度、車輪速センサ108により算出される車速(車体速)、バッテリSOC等が入力される。駆動コントローラ105は、各センサからの情報に基づき、エンジン100の動作制御と、図外の自動変速機の動作制御と、モータコントロールユニット104への駆動力指令によるモータジェネレータ101の動作制御とを行う。
【0015】
ブレーキコントロールユニット7は、直接又は通信線109を介して、マスタシリンダ圧センサ(マスタシリンダ状態検出部)42からのマスタシリンダ圧P1、ブレーキペダルストロークセンサ(ブレーキ操作状態検出部)8からのペダルストロークS、操舵角センサ107からのハンドル操舵角θ、車輪速センサ108からの各車輪速Va,Vb,Vc,Vd、ホイルシリンダ圧センサ(ホイルシリンダ状態検出部)43からのホイルシリンダ圧P2、バッテリSOC等が入力される。ブレーキコントロールユニット7は、ブレーキペダルストロークセンサ8から得られるペダルストロークSや、他のセンサからの情報に基づいてドライバ要求制動力を算出する。駆動コントローラ105は、算出されたドライバ要求制動力を回生制動力と摩擦制動力とに配分し、ブレーキコントロールユニット7への摩擦制動力指令による液圧制御ユニット6の動作制御と、モータコントロールユニット104への回生制動力指令によるモータジェネレータ101の動作制御とを行う。ここで、実施例1では、回生協調制御として、摩擦制動力よりも回生制動力を優先し、ドライバ要求制動力を回生分で賄える限りは液圧分を用いることなく、最大限(最大回生制動力)まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。なお、ブレーキコントロールユニット7は、回生制動中、車速の低下や上昇等に伴い回生制動力が制限される場合には、回生制動力を減少させ、その分だけ摩擦制動力を増加させて必要な制動力(ドライバ要求制動力)を確保する。以下、回生制動力を減少させて摩擦制動力を増加させることを回生制動力から摩擦制動力へのすり替えといい、逆に、摩擦制動力を減少させて回生制動力を増加させることを摩擦制動力から回生制動力へのすり替えという。
【0016】
ブレーキコントロールユニット7は、各センサからの信号に基づいてホイルシリンダ圧P2を増減又は保持することにより、アンチロックブレーキ制御(以下、ABS制御という)を始めとして、各種車両制御で要求される制動力に基づき自動的にホイルシリンダ圧P2を増減圧する制御である自動制動制御を実行可能である。ここで、ABS制御とは、ドライバのブレーキ操作時に車輪がロック傾向になったことを検知すると、当該車輪に対し、ロックを防止しつつ最大の制動力を発生させるためにホイルシリンダ圧P2の減圧・保持・増圧を繰り返す制御である。また、上記自動制動制御には、車両旋回時にオーバーステア傾向やアンダーステア傾向が強くなったことを検出すると、所定の制御対象輪のホイルシリンダ圧P2を制御して車両挙動安定化を図る車両挙動安定制御に加え、ドライバのブレーキ操作時に実際にマスタシリンダ4で発生する圧力よりも高い圧力をホイルシリンダ5で発生させるブレーキアシスト制御(BAS)、前輪FL,FRのホイルシリンダ圧P2を緩増圧して前後制動力配分を所定の理想制動力配分に近づけるEBD制御、オートクルーズコントロールにより先行車との相対関係に応じて自動的に制動力を発生させる制御が含まれる。
【0017】
[ブレーキ回路構成]
実施例1の液圧制御ユニット6は、車両の第1の所定輪群からなるP系統(第1配管系統)と第2の所定輪群からなるS系統(第2配管系統)との2系統からなる配管構造を有している。実施例1では、X配管と呼ばれる配管構造を採用しており、P系統には、左前輪FLのホイルシリンダ5a、右後輪RRのホイルシリンダ5dが接続され、S系統には、右前輪FRのホイルシリンダ5b、左後輪RLのホイルシリンダ5cが接続される。以下、図2に記載された各部位の符号の末尾に付けられたPはP系統、SはS系統を示し、a,b,c,dは左前輪、右前輪、左後輪、右後輪にそれぞれ対応することを示す。以下の説明では、P,S系統又は各輪を区別しないとき、P,S又はa,b,c,dの記載を省略する。液圧制御ユニット6の第1,第2ポンプ32,33、各バルブ及び各ブレーキ回路は、P系統とS系統にそれぞれ設けられている。第1ポンプ32と第2ポンプ33は互いに独立して駆動可能に構成されている。第1ポンプ32P,32Sは、例えば、シングルギヤポンプであって、共通の第1モータ30により駆動され、吸入部320から吸入したブレーキ液を加圧して吐出部321へ吐出する。第2ポンプ33P,33Sは、例えば、シングルギヤポンプであって、共通の第2モータ31により駆動され、吸入部330から吸入したブレーキ液を加圧して吐出部331へ吐出する。
【0018】
液圧制御ユニット6は、クローズド油圧回路を用いている。ここで、クローズド油圧回路とは、ホイルシリンダ5へ供給されたブレーキ液を、マスタシリンダ4を介してリザーバタンク40へと戻す油圧回路をいう。マスタシリンダ4とホイルシリンダ5とは、管路11と管路12により接続されている。管路12Pは、管路12a,12dに分岐し、管路12aはホイルシリンダ5aと接続され、管路12dはホイルシリンダ5dと接続されている。管路12Sは、管路12b,12cに分岐し、管路12bはホイルシリンダ5bと接続され、管路12cはホイルシリンダ5cと接続されている。管路11,12により、第1ブレーキ回路が構成される。管路12Pにはホイルシリンダ圧センサ43Pが設けられ、管路12Sにはホイルシリンダ圧センサ43Sが設けられている。管路11上には、常開型の比例電磁弁であるゲートアウトバルブ20が設けられている。管路11上には、ゲートアウトバルブ20と並列に管路13が設けられている。管路13上には、リリーフバルブ21が設けられている。リリーフバルブ21は、ホイルシリンダ5からマスタシリンダ4へ向かうブレーキ液の流れを禁止し、反対方向の流れを許容する一方向弁である。リリーフバルブ21の設定圧(リリーフバルブ21を開弁させる上下流の差圧、すなわち開弁圧)Prは、回生制動装置により発生させる最大減速度相当のブレーキ液圧、すなわち最大回生制動力限界値(モータジェネレータ101やインバータ102の特性、能力により決まる最大回生制動力の上限値)の液圧換算値とする。
【0019】
管路12上には、各ホイルシリンダ5に対応する常開型の比例電磁弁であるソレノイドインバルブ(流入弁)22が設けられている。管路12上には、ソレノイドインバルブ22と並列に管路14が設けられている。管路14上には、チェックバルブ23が設けられている。チェックバルブ23は、ホイルシリンダ5からマスタシリンダ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。管路11と管路12の接続点と、第1ポンプ32の吐出部321とは、管路15により接続されている。管路15により、第1ブレーキ回路に接続する第2ブレーキ回路が構成される。管路15上には、第1ポンプ32の吐出弁24が設けられている。吐出弁24は、吐出部321から管路11及び管路12へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。第1ポンプ32は、マスタシリンダ4内のブレーキ液を増圧し第2ブレーキ回路を介してホイルシリンダ5へ送る倍力装置が構成する。すなわち、第1ポンプ32は、マスタシリンダ4内のブレーキ液を吸入して第2ブレーキ回路を介して第1ブレーキ回路へブレーキ液を吐出し、ホイルシリンダ5の液圧を増圧する。
【0020】
管路11のゲートアウトバルブ20よりもマスタシリンダ4側の位置と第1ポンプ32の吸入部320とは、管路16と管路17により接続されている。管路16,17により、第3ブレーキ回路が構成される。第3ブレーキ回路は、第1ブレーキ回路から分岐し、第1ポンプ32の吸入側に接続する。ゲートアウトバルブ20は、第1ブレーキ回路(管路11)の第2ブレーキ回路(管路15)との接続点と第3ブレーキ回路(管路16)の分岐点の間に設けられている。管路11に接続する管路16上には、常閉型の比例電磁弁であるゲートインバルブ25が設けられている。管路16と管路17の接続点には、液圧制御ユニット6の内部のリザーバタンクであるリザーバ29が設けられている。S系統の管路16Sのゲートインバルブ25Sよりもマスタシリンダ4側の位置には、マスタシリンダ圧センサ42が設けられている。マスタシリンダ圧センサ42は、ゲートアウトバルブ20Sよりもマスタシリンダ4側の位置に設けられている。
【0021】
第1ポンプ32の吸入部320に接続する管路17と、管路16のゲートインバルブ25よりもマスタシリンダ4側の位置とは、管路18により接続されている。管路18により、還流回路が構成される。還流回路(管路18)は、第3ブレーキ回路のリザーバ29と第1ポンプ32の吸入側との間(管路17)から分岐し、第3ブレーキ回路の第1ブレーキ回路(管路11)との分岐点より下流側とリザーバ29との間(管路16)に接続する。ゲートインバルブ25は、第3ブレーキ回路(管路16)の還流回路(管路18)が接続する接続点とリザーバ29との間に設けられている。管路18上には第2ポンプ33が設けられており、第2ポンプ33の吐出側は管路16に接続する。管路18上には、第2ポンプ33の吐出弁26が設けられている。吐出弁26は、吐出部331から管路16へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。第2ポンプ33は、リザーバ29に貯留したブレーキ液を第1ブレーキ回路(管路11)側へ還流させる還流装置を構成する。すなわち、第2ポンプ33は、リザーバ29に貯留したブレーキ液を吸入し、第1ブレーキ回路(管路11)側へ還流させる。管路15の吐出弁24よりも第1ポンプ32(吐出部321)側の位置と、管路17の管路18との接続点よりも第1ポンプ32(吸入部320)側の位置とは、管路10により接続されている。管路10により、第1ポンプ32の吐出側と吸入側とを連通する連通路が構成される。管路10上には、常閉型のオンオフ電磁弁である切替えバルブ27が設けられている。
【0022】
管路12のソレノイドインバルブ22よりもホイルシリンダ5側の位置と第1ポンプ32の吸入部320とは、管路19により接続されている。管路19により、第4ブレーキ回路が構成される。第4ブレーキ回路は、ホイルシリンダ5とリザーバ29を接続する。管路19上には、常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ(流出弁)28が設けられている。各ソレノイドアウトバルブ28a,28d,28b,28cのうち、前輪FL,FR側のバルブ28a,28bは比例電磁弁であり、後輪RL,RR側のバルブ28c,28dはオンオフ弁である。
【0023】
ブレーキコントロールユニット7は、検出されたブレーキ操作状態(ペダルストロークS)と回生制動装置(モータジェネレータ101,インバータ102,バッテリ103)の作動状態とに応じて、各バルブ(ゲートインバルブ25、ゲートアウトバルブ20、ソレノイドインバルブ22、ソレノイドアウトバルブ28、切替えバルブ27)及びモータ30,31の作動を制御する液圧制御部70を有している。液圧制御部70は、駆動コントローラ105からの摩擦制動力指令に基づきホイルシリンダ圧P2の目標値(目標ホイルシリンダ圧)を設定すると共に、検出されたペダルストロークSに基づきマスタシリンダ圧P1の目標値(目標マスタシリンダ圧)を設定する。目標マスタシリンダ圧は、ペダルストロークSとの間で所定の関係を満たすように設定する。この所定の関係は、ブレーキペダル踏力(マスタシリンダ圧P1)とペダルストロークSとの関係特性(ブレーキペダル特性)であり、予め設定されている。液圧制御部70は、ゲートインバルブ25、ゲートアウトバルブ20、ソレノイドインバルブ22、前輪FL,FR側のソレノイドアウトバルブ28a,28b及びモータ30,31をPWM制御し、後輪RL,RR側のソレノイドアウトバルブ28c,28d及び切替えバルブ27をオンオフ制御する。
【0024】
液圧制御部70は、ブレーキペダルストロークセンサ8によりペダルストロークSが検出されている間、第1モータ30を連続的に駆動するための指令回転数(回転指令値)を算出し、指令回転数に基づいて第1モータ30を作動させる。つまり、ドライバがブレーキペダル2を操作している間、第1ポンプ32を回転駆動し続ける。具体的には、ホイルシリンダ圧P2の保持時又は減圧時には、第1モータ30の指令回転数を、回転を維持できるだけの低い所定値(基本回転数)に設定する。ホイルシリンダ圧P2の増圧時には、ホイルシリンダ圧センサ43により検出されるホイルシリンダ圧P2が目標ホイルシリンダ圧を下回ると、検出されるホイルシリンダ圧P2が目標ホイルシリンダ圧に一致するように、両圧の偏差に応じて指令回転数を上記所定値(基本回転数)よりも増大させる。
【0025】
また、液圧制御部70は、第2ポンプ33を回転駆動してブレーキペダル踏力(ペダル反力)を創生するペダル踏力創生部71を備えている。図3は、ペダル踏力創生部71による各アクチュエータの動作例を示すタイムチャートである。ペダル踏力創生部71は、ドライバによるブレーキ操作中、すなわちブレーキペダルストロークセンサ8によりペダルストロークSが検出されている間は、ゲートインバルブ25を制御して液圧制御を実行する(図3の時刻t1〜t5)。具体的には、マスタシリンダ圧センサ42により検出されるマスタシリンダ圧P1が目標マスタシリンダ圧に一致するように、ゲートインバルブ25に指令電流を出力してその開閉動作(開弁量)を制御する。言換えると、検出されるペダルストロークSと検出されるマスタシリンダ圧P1との関係が常に所定の関係(所定のブレーキペダル特性)となるように、ペダルストロークSとマスタシリンダ圧P1を、ゲートインバルブ25にてコントロールする。このとき、ゲートインバルブ25は、目標マスタシリンダ圧(検出されたペダルストロークSと所定の関係を満たすマスタシリンダ圧)に対して、検出されたマスタシリンダ圧P1が高い場合に、リザーバ29へブレーキ液を送るために動作する(図3の時刻t1〜t2,t3〜t4)。
【0026】
また、ペダル踏力創生部71は、ドライバによるブレーキ操作中は基本的に常に、第2モータ31を連続的に駆動するための指令回転数を算出し、指令回転数に基づいて第2モータ31を作動させる(図3の時刻t1〜t5)。具体的には、第2モータ31の指令回転数を所定の一定値(基本回転数)に設定する。上記一定値(基本回転数)は、回転を維持できるだけの所定値に設定し、例えば、回生協調制御時にドライバが所定速度でブレーキペダル2を踏み戻した際、ペダルストロークSの減少を可能にするだけのブレーキ液をマスタシリンダ4側に供給できる回転数に設定する。マスタシリンダ圧センサ42により検出されるマスタシリンダ圧P1が目標マスタシリンダ圧を下回ると、検出されるマスタシリンダ圧P1が目標マスタシリンダ圧に一致するように、両圧の偏差に応じて指令回転数を上記一定値(基本回転数)よりも増大させる(図3の時刻t2〜t3,t4〜t5)。
【0027】
以下、各シーンにおける液圧制御ユニット6の各アクチュエータ(各バルブ及びポンプ32,33 )の動作及び各制動力(ドライバ要求制動力、回生制動力、摩擦制動力)の変化を、油圧回路におけるブレーキ液の流れと各制動力のタイムチャートを用いて説明する。ブレーキ液の流れは、油圧回路に太線及び矢印で図示する。なお、油圧回路は、ABS制御介入時等のように1つのホイルシリンダ圧P2のみを増減又は保持する場合を除き、P系統とS系統が同じ動作を行う。
【0028】
[通常ブレーキ]
図4,図6,図8,図10は通常ブレーキにおけるブレーキ液の流れを示す油圧回路図、図5,図7,図9,図11は通常ブレーキにおける各アクチュエータの作動状態を示す表、図36は通常ブレーキにおけるタイムチャートである。ここで、通常ブレーキとは、回生制動装置による回生協調制御介入がなされておらず、さらに、ABSや車両挙動安定制御等の自動制動制御を実施していない状態で、ドライバのブレーキ操作に応じて摩擦制動力を発生させることをいう。図36は、ブレーキペダル2が踏み込まれた後、ペダルストロークSが保持され、その後、踏み戻された場合のタイムチャートを示す。実施例1では、通常ブレーキにおいて、ソレノイドインバルブ22とソレノイドアウトバルブ28は非制御とする。
【0029】
[通常ブレーキでペダル踏み込み時:ホイルシリンダ増圧時]
図4は通常ブレーキにおけるペダル踏み込み時(ドライバ要求制動力の増大時)のブレーキ液の流れを示し、図5はそのときの各アクチュエータの作動状態を示し、図36の時刻t1からt2までの区間はそのときのタイムチャートを示す。回生制動力が発生していないため、ドライバ要求制動力の増大に応じてホイルシリンダ圧P2を増圧する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することでマスタシリンダ4とホイルシリンダ5との連通を遮断する。また、ゲートインバルブ25を開弁制御する。よって、マスタシリンダ4から第1ブレーキ回路(管路11)を通ってホイルシリンダ5へのブレーキ液の流れ込みが抑制されると共に、マスタシリンダ4からのブレーキ液は、第3ブレーキ回路(管路16)を通りゲートインバルブ25を介してリザーバ29へ送られ、これによりペダルストロークSを発生させる。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量は増加する。切替えバルブ27を非制御として閉弁し、連通路を遮断する。よって、第1ポンプ32がリザーバ29から吸入し第2ブレーキ回路(管路15)へ吐出したブレーキ液は、主に第1ブレーキ回路(管路12)を通りソレノイドインバルブ22を介してホイルシリンダ5へ送られる。これによりホイルシリンダ圧P2が増圧される。第1モータ30の回転数は、ホイルシリンダ圧P2の昇圧速度に応じて高くする。また、第2モータ31(第2ポンプ33)を回転駆動する。第2ポンプ33は、リザーバ29へ流れ込んだブレーキ液を第3ブレーキ回路(管路17)から吸入すると共に、還流回路(管路18)を介して、第3ブレーキ回路(管路16)におけるゲートインバルブ25とゲートアウトバルブ20の上流側、すなわちマスタシリンダ4側へ吐出する。ゲートインバルブ25の開弁量を制御すると共に、第2モータ31の回転数(第2ポンプ33の吐出量)を制御することで、ペダルストロークSの増大に応じてマスタシリンダ圧P1を増圧する。上記吐出されたブレーキ液のうちマスタシリンダ圧P1の増圧のために不要な余剰分はゲートインバルブ25を介し第3ブレーキ回路(管路16)を通ってリザーバ29に還流する。
【0030】
[通常ブレーキでペダルストローク保持時:ホイルシリンダ圧保持時]
図6は通常ブレーキにおけるペダルストローク保持時(ドライバ要求制動力の保持時)のブレーキ液の流れを示し、図7はそのときの各アクチュエータの作動状態を示し、図36の時刻t2からt3までの区間はそのときのタイムチャートを示す。回生制動力が発生していないため、ドライバ要求制動力の保持に応じてホイルシリンダ圧P2を保持する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することでマスタシリンダ4とホイルシリンダ5との連通を遮断する。また、ゲートインバルブ25を開弁制御する。第1モータ30は、ブレーキペダル2の踏み込みによる増圧に備えて回転数を低くして(基本回転数として)駆動する。切替えバルブ27を開弁制御し、連通路を連通する。よって、第1ポンプ32が第2ブレーキ回路(管路15)へ吐出するブレーキ液は連通路を介して第1ポンプ32の吸入側に戻され、ホイルシリンダ5へ送られない。これによりホイルシリンダ圧P2が保持される。また、第2モータ31(第2ポンプ33)を回転駆動する。第2ポンプ33がリザーバ29から吸入し、還流回路を介して第3ブレーキ回路(管路16)におけるマスタシリンダ4側へ吐出したブレーキ液は、ゲートインバルブ25を介して第3ブレーキ回路(管路16)を通ってリザーバ29へ戻される。リザーバ29内のブレーキ液量は略一定に保持される。ゲートインバルブ25の開弁量を制御すると共に、第2モータ31の回転数(第2ポンプ33の吐出量)を制御することで、ペダルストロークSの保持に応じてマスタシリンダ圧P1を保持する。
【0031】
[通常ブレーキでペダル踏み戻し時:ホイルシリンダ減圧時]
図8は通常ブレーキにおけるペダル踏み戻し時(ドライバ要求制動力の減少時)のブレーキ液の流れを示し、図9はそのときの各アクチュエータの作動状態を示し、図36の時刻t3からt4までの区間はそのときのタイムチャートを示す。回生制動力が発生していないため、ドライバ要求制動力の減少に応じてホイルシリンダ圧P2を減圧する。ゲートアウトバルブ20を開弁制御する。ホイルシリンダ5からのブレーキ液は、第1ブレーキ回路(管路12,11)を通りゲートアウトバルブ20を介してマスタシリンダ4へ戻される。これによりホイルシリンダ圧P2が減圧される。第1モータ30を駆動すると共に、切替えバルブ27を開弁制御し、連通路を連通する。よって、第1ポンプ32が第2ブレーキ回路(管路15)へ吐出するブレーキ液は連通路を介して第1ポンプ32の吸入側に戻され、ホイルシリンダ5ないしマスタシリンダ4へ送られない。第1モータ30は、ブレーキペダル2の踏み込みによる増圧に備えて回転数を低くして(基本回転数として)駆動する。また、第2モータ31(第2ポンプ33)を回転駆動する。第2ポンプ33がリザーバ29から吸入し、還流回路を介して第3ブレーキ回路(管路16)におけるマスタシリンダ4側へ吐出したブレーキ液は、主にゲートインバルブ25を介して第3ブレーキ回路(管路16)を通ってリザーバ29へ戻される。リザーバ29内のブレーキ液量は略一定に保持される。ゲートインバルブ25の開弁量を制御すると共に、第2モータ31の回転数(第2ポンプ33の吐出量)を制御することで、ペダルストロークSの減少に応じてマスタシリンダ圧P1を減圧する。
【0032】
図10は通常ブレーキにおけるペダル踏み戻し終了間際(ドライバ要求制動力のの極小域での減少時)のブレーキ液の流れを示し、図11はそのときの各アクチュエータの作動状態を示し、図36の時刻t4からt5までの区間はそのときのタイムチャートを示す。回生制動力が発生していないため、ドライバ要求制動力の極小域での減少に応じてホイルシリンダ圧P2を極低圧域で減圧する。図36の時刻t3からt4まで(図8,図9)と異なり、第2モータ31(第2ポンプ33)を非制御とし、回転駆動しない。リザーバ29内のブレーキ液は、第3ブレーキ回路(管路16)を通ってゲートインバルブ25を介してマスタシリンダ4へ戻され、最終的にリザーバ29内のブレーキ液量は略ゼロとなる。ゲートインバルブ25の開弁量を制御することで、ペダルストロークSの減少に応じてマスタシリンダ圧P1を減圧する。なお、時刻t3からt4までと同様、第2モータ31の駆動を継続することとしてもよい。
【0033】
以上のように、通常ブレーキでは、ドライバのブレーキペダル2の操作に応じて、マスタシリンダ4から液圧制御ユニット6へ流入したブレーキ液を倍力装置(第1ポンプ32)により加圧し、これをホイルシリンダ5に供給する。これにより、マスタシリンダ圧P1とホイルシリンダ圧P2とに差圧を発生させ(P1<P2)、倍力作用を実現する。また、マスタシリンダ4からのブレーキ液をリザーバ29へ流入させることでペダルストロークを可能にすると共に、リザーバ29内のブレーキ液を還流装置(第2ポンプ33)によりマスタシリンダ4側へ還流させることで、ブレーキペダル踏力(ペダル反力)の創生作用を実現する。
【0034】
[回生協調制御]
図12,図14,図16,図18,図20,図22,図24,図26,図28,図30,図32,図34は回生協調制御時におけるブレーキ液の流れを示す油圧回路図、図13,図15,図17,図19,図21,図23,図25,図27,図29,図31,図33,図35は回生協調制御時における各アクチュエータの作動状態を示す表である。図37〜図43は回生協調制御時におけるタイムチャートであり、ブレーキペダル2が踏み込まれた後、ペダルストロークSが保持され、その後、踏み戻された場合を示す。実施例1では、回生協調制御時において、ソレノイドインバルブ22は非制御とする。
【0035】
[回生協調制御でペダル踏み込み時]
図12,図14,図16,図18は回生協調制御時におけるペダル踏み込み時(ドライバ要求制動力の増大時)のブレーキ液の流れを示す。
(ホイルシリンダ増圧時)
図12はホイルシリンダ圧P2の増圧時のブレーキ液の流れを示し、図13はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。回生制動力が増大し又は保持され又は減少している場合であって、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分が増大しているとき、この差分を埋める摩擦制動力を発生するようにホイルシリンダ圧P2を増圧する。例えば図38の時刻t2からt3までの区間は、回生制動力の増大量(増大勾配)よりもドライバ要求制動力の増大量(増大勾配)のほうが大きいときのタイムチャートを示す。この場合の各アクチュエータの制御及びブレーキ液の流れは、図4(通常ブレーキにおけるペダル踏み込み時)と同様である。
【0036】
(ホイルシリンダ圧保持時)
図14はホイルシリンダ圧P2の保持時のブレーキ液の流れを示し、図15はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。ドライバ要求制動力と回生制動力との差分が変わらない場合、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力も不変であり、ホイルシリンダ圧P2を保持する。例えば図38の時刻t1からt2までの区間は、回生制動力がドライバ要求制動力と略同じ値で増大しているため、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力は略ゼロであり、ホイルシリンダ圧P2をゼロに保持するときのタイムチャートを示す。この場合の各アクチュエータの制御及びブレーキ液の流れは、図6(通常ブレーキにおけるペダルストローク保持時)と同様である。ペダル踏み込み時であるため、ペダルストロークSの増大に応じてマスタシリンダ4からリザーバ29へブレーキ液が流入する点のみ、図6と異なる。
【0037】
(ホイルシリンダ減圧時)
図16及び図18はホイルシリンダ圧P2の減圧時のブレーキ液の流れを示す。ドライバ要求制動力の増大量(増大勾配)よりも回生制動力の増大量(増大勾配)が大きい場合、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力は減少する。よって、ホイルシリンダ圧P2を減圧する。図16はホイルシリンダ圧P2の減圧勾配が小さい場合のブレーキ液の流れを示し、図17はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。例えば図42の時刻t2からt3までの区間はそのときのタイムチャートを示す。図14と異なり、前輪FL,FR側のソレノイドアウトバルブ28a,28bを開弁制御し、前輪FL,FRのホイルシリンダ5a,5bとリザーバ29とを連通する。前輪FL,FRのホイルシリンダ5a,5bからのブレーキ液は、第4ブレーキ回路(管路19a,19b)を通りソレノイドアウトバルブ28を介してリザーバ29へ排出される。これにより前輪FL,FRのホイルシリンダ圧P2が減圧される。なお、ソレノイドアウトバルブ28a,28bは比例電磁弁であるため、減圧量を細かく制御できる。後輪RL,RRのホイルシリンダ5c,5dからのブレーキ液は、第1ブレーキ回路(管路12)を介して前輪FL,FRの第4ブレーキ回路(管路19a,19b)を通りリザーバ29へ排出される。これにより後輪RL,RRのホイルシリンダ圧P2が減圧される。その他は、図14(ホイルシリンダ圧P2の保持時)と同様である。
【0038】
図18はホイルシリンダ圧P2の減圧勾配が大きい場合のブレーキ液の流れを示し、図19はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。例えば図43の時刻t2からt3までの区間はそのときのタイムチャートを示す。図16と異なり、前輪FL,FR側だけでなく後輪RL,RR側のソレノイドアウトバルブ28c,28dをも開弁制御し、前後輪のホイルシリンダ5とリザーバ29とを連通する。前後輪のホイルシリンダ5からのブレーキ液は、第4ブレーキ回路(管路19)を通りソレノイドアウトバルブ28を介してリザーバ29へ排出される。これにより前後輪のホイルシリンダ圧P2がより大きな勾配で減圧される。その他は、図16(ホイルシリンダ圧P2の減圧勾配が小さい場合)と同様である。
【0039】
[回生協調制御でペダルストローク保持時]
図20,図22,図24,図26は回生協調制御時におけるペダルストローク保持時(ドライバ要求制動力の保持時)のブレーキ液の流れを示す。
(ホイルシリンダ増圧時)
図20はホイルシリンダ圧P2の増圧時のブレーキ液の流れを示し、図21はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。ドライバ要求制動力が保持される一方で回生制動力が減少する場合、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力を発生するようにホイルシリンダ圧P2を増圧する。例えば図38の時刻t5からt6までの区間はそのときのタイムチャートを示す。この場合の各アクチュエータの制御及びブレーキ液の流れは、図4(通常ブレーキにおけるペダル踏み込み時)と同様である。ペダルストローク保持時であるため、マスタシリンダ4からリザーバ29へブレーキ液が送らない点のみ、図4と異なる。
【0040】
(ホイルシリンダ圧保持時)
図22はホイルシリンダ圧P2の保持時のブレーキ液の流れを示し、図23はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。ドライバ要求制動力が保持され、回生制動力も保持される場合、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力も不変である。よって、ホイルシリンダ圧P2を保持する。例えば図38の時刻t4からt5までの区間は、回生制動力がドライバ要求制動力と同じ値で保持されているため、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力はゼロであり、ホイルシリンダ圧P2をゼロに保持するときのタイムチャートを示す。この場合の各アクチュエータの制御及びブレーキ液の流れは、図6(通常ブレーキにおけるペダルストローク保持時)と同様である。
【0041】
(ホイルシリンダ減圧時)
図24及び図26はホイルシリンダ圧P2の減圧時のブレーキ液の流れを示す。ドライバ要求制動力が保持される一方で回生制動力が増大する場合、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力は減少する。よって、ホイルシリンダ圧P2を減圧する。図24はホイルシリンダ圧P2の減圧勾配が小さい場合のブレーキ液の流れを示し、図25はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。例えば図38の時刻t3からt4までの区間はそのときのタイムチャートを示す。各アクチュエータの制御は、図16(ペダル踏み込み時のホイルシリンダ減圧勾配が小さい場合)と同様であり、ペダルストローク保持時であるため、マスタシリンダ4から第3ブレーキ回路(管路16)を通りリザーバ29へブレーキ液が送られない点のみ異なる。図26はホイルシリンダ圧P2の減圧勾配が大きい場合のブレーキ液の流れを示し、図27はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。例えば図39の時刻t3からt4までの区間はそのときのタイムチャートを示す。各アクチュエータの制御は、図18(ペダル踏み込み時のホイルシリンダ減圧勾配が大きい場合)と同様であり、ペダルストローク保持時であるため、マスタシリンダ4から第3ブレーキ回路(管路16)を通りリザーバ29へブレーキ液が送られない点のみ異なる。
【0042】
[回生協調制御でペダル踏み戻し時]
図28,図30,図32,図34は回生協調制御時におけるペダル踏み戻し時(ドライバ要求制動力の減少時)のブレーキ液の流れを示す。これらの場合の各アクチュエータの制御は、図12,図14,図16,図18(回生協調制御時におけるペダル踏み込み時)とそれぞれ同様であるが、ブレーキ液の流れが以下の点で異なる。すなわち、ペダル踏み戻し時であるため、マスタシリンダ4から第3ブレーキ回路(管路16)を通りリザーバ29へブレーキ液が送られない。第2ポンプ33は、リザーバ29に貯留したブレーキ液を吸入して還流回路(管路18)へ吐出し、マスタシリンダ4側に戻す。ゲートインバルブ25の開弁量を制御すると共に、第2モータ31の回転数(第2ポンプ33の吐出量)を制御することで、ペダルストロークSの減少に応じてマスタシリンダ圧P1を減圧する。
(ホイルシリンダ増圧時)
図28はホイルシリンダ圧P2の増圧時のブレーキ液の流れを示し、図29はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。ドライバ要求制動力の減少量(減少勾配)よりも回生制動力の減少量(減少勾配)が大きい場合、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力は増大する。よって、ホイルシリンダ圧P2を増圧する。例えば図37の時刻t4からt5までの区間はそのときのタイムチャートを示す。この場合の各アクチュエータの制御は、図12(回生協調制御時におけるペダル踏み込み時)と同様である。
【0043】
(ホイルシリンダ圧保持時)
図30はホイルシリンダ圧P2の保持時のブレーキ液の流れを示し、図31はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。ドライバ要求制動力と回生制動力との差分が変わらない場合、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力も不変であり、ホイルシリンダ圧P2を保持する。例えば図40の時刻t5からt6までの区間は、回生制動力がドライバ要求制動力と同じ値で減少しているため、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分を埋める摩擦制動力はゼロであり、ホイルシリンダ圧P2をゼロに保持するときのタイムチャートを示す。この場合の各アクチュエータの制御は、図14(回生協調制御時におけるペダル踏み込み時)と同様である。
【0044】
(ホイルシリンダ減圧時)
図32及び図34はホイルシリンダ圧P2の減圧時のブレーキ液の流れを示す。ドライバ要求制動力が減少する一方、回生制動力が増大し又は保持され又は減少する場合であって、この回生制動力とドライバ要求制動力との差分が減少するとき、上記差分を埋める摩擦制動力は減少する。よって、ホイルシリンダ圧P2を減圧する。図32はホイルシリンダ圧P2の減圧勾配が小さい場合のブレーキ液の流れを示し、図33はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。例えば図40の時刻t4からt5までの区間はそのときのタイムチャートを示す。この場合の各アクチュエータの制御は、図16(回生協調制御時におけるペダル踏み込み時)と同様である。図34はホイルシリンダ圧P2の減圧勾配が大きい場合のブレーキ液の流れを示し、図35はそのときの各アクチュエータの作動状態を示す。例えば図41の時刻t4からt5までの区間はそのときのタイムチャートを示す。この場合の各アクチュエータの制御は、図18(回生協調制御時におけるペダル踏み込み時)と同様である。
【0045】
以上のように、回生協調制御では、ブレーキ液を倍力装置(第1ポンプ32)により加圧し、これをホイルシリンダ5に供給することで所望の摩擦制動力を発生させる。また、マスタシリンダ4からのブレーキ液をリザーバ29へ流入させると共に、リザーバ29内のブレーキ液を還流装置(第2ポンプ33)によりマスタシリンダ4側へ還流させることで、ブレーキペダル踏力(ペダル反力)の創生作用を実現する。
【0046】
次に、回生協調制御時におけるタイムチャートを説明する。
(初期フル回生)
図37は、車速が低い状態での制動時に、ドライバがブレーキペダル2の踏み込みを開始した制動初期から回生制動力を発生させる場合のタイムチャートである。低速からの制動時、ペダル踏み込みの初期から回生制動力がドライバ要求制動力と略同じ値となり、ドライバ要求制動力が全て回生制動力で賄われる(初期フル回生)。
図37において、時刻t1からt2では、ブレーキペダル2が踏み込まれてドライバ要求制動力が増大し、回生制動力がドライバ要求制動力と略同じ値で増大するため、摩擦制動力が略ゼロに保持される。よって、図14,図15のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御し、ゲートインバルブ25を開弁制御することで、マスタシリンダ4からホイルシリンダ5へのブレーキ液の流れ込みを抑制すると共に、マスタシリンダ4からのブレーキ液をリザーバ29に流入させてペダルストロークSを発生させる。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量は増加する。第1モータ30を、ホイルシリンダ圧P2の増圧に備えて回転数を低くして駆動する。切替えバルブ27を開弁制御することで、第1ポンプ32によるホイルシリンダ圧P2の増圧を抑制する。ホイルシリンダ圧P2は略ゼロに保たれる。第2モータ31の回転数及びゲートインバルブ25の開弁量を制御することで、ペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を発生させる。具体的には、ペダルストロークSの増大に応じてマスタシリンダ圧P1が増圧するように制御する。
【0047】
時刻t2からt3では、ペダルストロークSが保持されてドライバ要求制動力が保持される一方、回生制動力がドライバ要求制動力と同じ値で保持されるため、摩擦制動力が略ゼロに保持される。よって、図22,図23のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することで、マスタシリンダ4からホイルシリンダ5へのブレーキ液の流れ込みを抑制する。第1モータ30を、増圧に備えて回転数を低くして駆動する。切替えバルブ27を開弁制御することで、第1ポンプ32によるホイルシリンダ圧P2の増圧を抑制する。ホイルシリンダ圧P2は略ゼロに保たれる。第2モータ31を駆動すると共にゲートインバルブ25を開弁制御し、ブレーキ液を還流回路及び第3ブレーキ回路(管路16)を介して循環させる。これにより、マスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を略一定に保持する。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量も略一定となる。
【0048】
時刻t3からt4では、ペダルストロークSが保持されてドライバ要求制動力が保持される一方、回生制動力が減少する。よって、摩擦制動力を増大させる。図20,図21のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することで、マスタシリンダ4からホイルシリンダ5へのブレーキ液の流れ込みを抑制する。切替えバルブ27を非制御として閉弁し、第1モータ30を駆動することで、リザーバ29内のブレーキ液を用いて第1ポンプ32によりホイルシリンダ圧P2を増圧する。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量が減少する。第2モータ31を駆動すると共にゲートインバルブ25を開弁制御し、ブレーキ液を還流回路及び第3ブレーキ回路(管路16)を介して循環させる。これにより、マスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を略一定に保持する。
【0049】
時刻t4からt5では、ペダルストロークSが減少してドライバ要求制動力が減少する一方、ドライバ要求制動力の減少分よりも回生制動力の減少分のほうが大きい。よって、摩擦制動力を増大させる。図28,図29のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することで、マスタシリンダ4とホイルシリンダ5との連通を遮断する。切替えバルブ27を非制御として閉弁し、第1モータ30を駆動することで、リザーバ29内のブレーキ液を用いて第1ポンプ32によりホイルシリンダ圧P2を増圧する。第2モータ31を駆動し、リザーバ29内のブレーキ液をマスタシリンダ4側へ戻すことで、ペダルストロークSの減少を可能にする。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量が減少する。第2モータ31の回転数及びゲートインバルブ25の開弁量を制御することで、ペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を発生させる。具体的には、ペダルストロークSの減少に応じてマスタシリンダ圧P1が減圧するように制御する。
【0050】
時刻t5からt6では、ペダルストロークSが減少してドライバ要求制動力が減少する一方、回生制動力が略ゼロである。よって、摩擦制動力をドライバ要求制動力と略一致させた状態でドライバ要求制動力の減少に応じて減少させる。図8,図9のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20の開弁量を制御することで、ホイルシリンダ5のブレーキ液を、第1ブレーキ回路(管路12,11)を介してマスタシリンダ4側へ戻す。これによりホイルシリンダ圧P2を減圧する。第1モータ30を、増圧に備えて回転数を低くして駆動する。切替えバルブ27を開弁制御することで、第1ポンプ32の吐出圧が第1ブレーキ回路(管路11,12)に供給されることを抑制する。第2モータ31を駆動すると共にゲートインバルブ25を開弁制御し、ペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を発生させる。具体的には、ペダルストロークSの減少に応じてマスタシリンダ圧P1が減圧するように制御する。ブレーキ液が還流回路及び第3ブレーキ回路(管路16)を介して循環することに伴い、リザーバ29内のブレーキ液量は略一定となる。時刻t6で、ペダルストロークSがゼロになると、ドライバの足がブレーキペダル2から完全に離れたと判断し、各バルブ及びモータ30,31の作動を停止する。
【0051】
以上の動作により、ドライバがブレーキペダル2の踏み込みを開始した制動初期からドライバ要求制動力を回生制動力のみで発生させ(時刻t1〜t3)、これによりエネルギ回収効率を高めることができる。また、ペダルストローク保持時及びペダル踏み戻し時に(時刻t3〜t5)、回生制動力から摩擦制動力へのすり替えを実現できる。また、各時刻で、ドライバのブレーキペダル2の操作に応じた踏力(ペダル反力)を発生させることができる。
【0052】
(徐々に回生増加→フル回生)
図38、図39は、車速が中程度である状態での制動時に、制動初期から回生制動力を発生させる場合のタイムチャートである。中速からの制動時、ペダル踏み込みの初期に回生制動力がドライバ要求制動力と同じ値で増加した後、最大回生制動力に達する。その後、(最大)回生制動力がドライバ要求制動力よりも小さな値で徐々に増加し、再びドライバ要求制動力と同じ値となる(徐々に回生増加→フル回生)。
図38、図39において、時刻t1からt2までは、図37の時刻t1からt2までと同様である。時刻t2からt3では、ブレーキペダル2が踏み込まれてドライバ要求制動力が増大し、回生制動力も徐々に増大する一方、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分が増大するため、摩擦制動力が増大する。よって、図12,図13のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御し、ゲートインバルブ25を開弁制御することで、マスタシリンダ4からホイルシリンダ5へのブレーキ液の流れ込みを抑制すると共に、マスタシリンダ4からのブレーキ液をリザーバ29に流入させてペダルストロークSを発生させる。切替えバルブ27を非制御として閉弁し、第1モータ30を駆動することで、リザーバ29内のブレーキ液を用いて第1ポンプ32によりホイルシリンダ圧P2を増圧する。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量が若干減少する。第2モータ31の回転数及びゲートインバルブ25の開弁量を制御することで、ペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を発生させる。具体的には、ペダルストロークSの増大に応じてマスタシリンダ圧P1が増圧するように制御する。
【0053】
時刻t3からt4では、ペダルストロークSが保持されてドライバ要求制動力が保持される一方、回生制動力が徐々に増大する。よって、摩擦制動力を徐々に減少させる。図24,図25のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することで、マスタシリンダ4とホイルシリンダ5との連通を遮断する。前輪FL,FR側のソレノイドアウトバルブ28を開弁制御し、前輪FL,FRのホイルシリンダ5からブレーキ液をリザーバ29へ排出することで、前輪FL,FRのホイルシリンダ圧P2を減圧する。後輪RL,RRのホイルシリンダ5からブレーキ液を前輪FL,FRの第4ブレーキ回路(管路19a,19b)を介してリザーバ29へ排出することで、後輪RL,RRのホイルシリンダ圧P2を減圧する。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量が増加する。第1モータ30を、増圧に備えて回転数を低くして駆動する。切替えバルブ27を開弁制御することで、第1ポンプ32によるホイルシリンダ圧P2の増圧を抑制する。第2モータ31を駆動すると共にゲートインバルブ25を開弁制御し、ブレーキ液を還流回路及び第3ブレーキ回路(管路16)を介して循環させることで、マスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を略一定に保持する。
【0054】
図39の時刻t3からt4では、摩擦制動力の減少勾配が、図38の時刻t3からt4よりも大きい。よって、図26,図27のように各アクチュエータを制御する。前輪FL,FR側だけでなく後輪RL,RR側のソレノイドアウトバルブ28をも開弁制御し、排出流路の断面積を増やすことで、前後輪のホイルシリンダ圧P2をより大きな勾配で減圧する。
【0055】
時刻t4からt5では、回生制動力がドライバ要求制動力と略一致した状態で保持されるため、摩擦制動力を略ゼロに保持する。図37の時刻t2からt3までと同様である。時刻t5からt6では、ドライバ要求制動力が保持される一方、回生制動力が減少するため、摩擦制動力を増大させる。図37の時刻t3からt4までと同様である。時刻t6からt7では、ドライバ要求制動力が保持される一方、回生制動力が略ゼロとなるため、摩擦制動力をドライバ要求制動力と一致した状態で保持する。図22,図23のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することで、ホイルシリンダ5からマスタシリンダ4へのブレーキ液の流れ込みを抑制する。第1モータ30を、増圧に備えて回転数を低くして駆動する。このとき、切替えバルブ27を開弁制御することで、第1ポンプ32によるホイルシリンダ圧P2の増圧を抑制する。ホイルシリンダ圧P2は略一定に保たれる。第2モータ31を駆動すると共にゲートインバルブ25を開弁制御し、ブレーキ液を還流回路及び第3ブレーキ回路(管路16)を介して循環させる。これにより、マスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を一定に保持する。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量も略一定となる。時刻t7からt8までは、図37の時刻t5からt6までと同様である。
【0056】
以上の動作により、制動初期から回生制動力を発生させると共に、ペダル踏み込みの途中から回生制動力を徐々に増大し、その後、ドライバ要求制動力まで増大することができる(時刻t1〜t5)。また、ペダルストローク保持時に、摩擦制動力から回生制動力へのすり替え(時刻t3〜t4)及び回生制動力から摩擦制動力へのすり替え(時刻t5〜t6)を実現できる。また、各時刻で、ドライバのブレーキペダル2の操作に応じた踏力(ペダル反力)を発生させることができる。
【0057】
(徐々に回生増加)
図40、図41は、車速が高い状態での制動時に、制動初期から回生制動力を発生させる場合のタイムチャートである。高速からの制動時、ペダル踏み込みの初期に回生制動力がドライバ要求制動力と同じ値で増加した後、車速が中程度での制動時(図38)よりも早く最大回生制動力に達する。その後、(最大)回生制動力がドライバ要求制動力よりも小さな値で徐々に増加する(徐々に回生増加)。図40、図41において、時刻t1からt2までは、図38の時刻t1からt2までと同様である。時刻t2からt3までは、図38の時刻t2からt3までと同様である。時刻t3からt4までは、図38の時刻t3からt4までと同様である。
【0058】
時刻t4からt5では、ペダルストロークSが減少してドライバ要求制動力が減少する一方、回生制動力が徐々に増大する。回生制動力の増大量(増大勾配)よりもドライバ要求制動力の減少量(減少勾配)のほうが大きい。すなわち、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分が減少するため、摩擦制動力を減少させる。図32,図33のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することで、マスタシリンダ4側からホイルシリンダ5へのブレーキ液の流れ込みを抑制する。前輪FL,FR側のソレノイドアウトバルブ28を開弁制御し、前輪FL,FRのホイルシリンダ5からブレーキ液をリザーバ29へ排出することで、前輪FL,FRのホイルシリンダ圧P2を減圧する。後輪RL,RRのホイルシリンダ5からブレーキ液を前輪FL,FRの第4ブレーキ回路(管路19a,19b)を介してリザーバ29へ排出することで、後輪RL,RRのホイルシリンダ圧P2を減圧する。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量が増加する。第1モータ30を、増圧に備えて回転数を低くして駆動する。切替えバルブ27を開弁制御することで、第1ポンプ32によるホイルシリンダ圧P2の増圧を抑制する。第2モータ31を駆動し、リザーバ29内のブレーキ液をマスタシリンダ4側に戻すことで、ペダルストロークSの減少を可能にする。第2モータ31の回転数及びゲートインバルブ25の開弁量を制御することで、ペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を発生させる。具体的には、ペダルストロークSの減少に応じてマスタシリンダ圧P1が減圧するように制御する。
【0059】
図41の時刻t4からt5では、摩擦制動力の減少勾配が、図40の時刻t4からt5よりも大きい。よって、図34,図35のように各アクチュエータを制御する。前輪FL,FR側だけでなく後輪RL,RR側のソレノイドアウトバルブ28をも開弁制御し、前後輪のホイルシリンダ圧P2をより大きな勾配で減圧する。
【0060】
時刻t5からt6では、ペダルストロークSが減少してドライバ要求制動力が減少する一方、回生制動力がドライバ要求制動力と一致した状態で減少する。よって、摩擦制動力を略ゼロに保持する。図30,図31のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することで、マスタシリンダ4側からホイルシリンダ5へのブレーキ液の流れ込みを抑制すると共に、第2モータ31を駆動することでリザーバ29からのブレーキ液をマスタシリンダ4に流入させてペダルストロークS(の減少)を発生させる。これに伴いリザーバ29内のブレーキ液量が減少する。第1モータ30を、増圧に備えて回転数を低くして駆動する。切替えバルブ27を開弁制御することで、第1ポンプ32によるホイルシリンダ圧P2の増圧を抑制する。ホイルシリンダ圧P2は略ゼロに保たれる。第2モータ31を駆動し、リザーバ29内のブレーキ液をマスタシリンダ4側に戻すことで、ペダルストロークSの減少を可能にする。第2モータ31の回転数及びゲートインバルブ25の開弁量を制御することで、ペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を発生させる。具体的には、ペダルストロークSの減少に応じてマスタシリンダ圧P1が減圧するように制御する。
【0061】
以上の動作により、制動初期から回生制動力を発生させると共に、ペダル踏み込みの途中から回生制動力を徐々に増大することができる(時刻t1〜t5)。また、ペダルストローク保持時及びペダル踏み戻し時に(時刻t3〜t5)、摩擦制動力から回生制動力へのすり替えを実現できる。また、各時刻で、ドライバのブレーキペダル2の操作に応じた踏力(ペダル反力)を発生させることができる。
【0062】
(初期満充電→回生)
図42、図43は、制動初期から摩擦制動力を発生させる場合のタイムチャートである。ペダル踏み込みの初期には例えば満充電により回生制動力が発生せず、ペダルストロークSが所定値となった後に回生制動力が発生する。その後、回生制動力は増加し、ドライバ要求制動力と同じ値となる(初期満充電→回生)。図42、図43において、時刻t1からt2までは、図36の時刻t1からt2までと同様である。
時刻t2からt3では、ペダルストロークSが増大してドライバ要求制動力が増大する一方、回生制動力が増大する。ドライバ要求制動力の増大量(増大勾配)よりも回生制動力の増大量(増大勾配)のほうが大きい。すなわち、ドライバ要求制動力と回生制動力との差分が減少するため、摩擦制動力を減少させる。図16,図17のように各アクチュエータを制御する。ゲートアウトバルブ20を閉弁制御することで、マスタシリンダ4とホイルシリンダ5との連通を遮断する。ゲートインバルブ25を開弁制御することで、ペダルストロークSの増大に応じてマスタシリンダ4からリザーバ29へブレーキ液が流入する。前輪FL,FR側のソレノイドアウトバルブ28を開弁制御し、前輪FL,FRのホイルシリンダ5からブレーキ液をリザーバ29へ排出することで、前輪FL,FRのホイルシリンダ圧P2を減圧する。後輪RL,RRのホイルシリンダ5からブレーキ液を前輪FL,FRの第4ブレーキ回路(管路19a,19b)を介してリザーバ29へ排出することで、後輪RL,RRのホイルシリンダ圧P2を減圧する。これらに伴いリザーバ29内のブレーキ液量が増加する。第1モータ30を、増圧に備えて回転数を低くして駆動する。切替えバルブ27を開弁制御することで、第1ポンプ32によるホイルシリンダ圧P2の増圧を抑制する。第2モータ31を駆動し、リザーバ29内のブレーキ液をマスタシリンダ4側に吐出する。第2モータ31の回転数及びゲートインバルブ25の開弁量を制御することで、ペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1、すなわちブレーキペダル踏力(ペダル反力)を発生させる。具体的には、ペダルストロークSの増大に応じてマスタシリンダ圧P1が増圧するように制御する。
【0063】
図43の時刻t2からt3では、摩擦制動力の減少勾配が、図42の時刻t2からt3よりも大きい。よって、図18,図19のように各アクチュエータを制御する。前輪FL,FR側だけでなく後輪RL,RR側のソレノイドアウトバルブ28をも開弁制御し、前後輪のホイルシリンダ圧P2をより大きな勾配で減圧する。
【0064】
時刻t3からt4では、ペダルストロークSが保持されドライバ要求制動力が保持される一方、回生制動力が増大する。よって、摩擦制動力を減少させる。時刻t2からt3までと同様に各アクチュエータを制御する。時刻t4からt5までは、図37の時刻t2からt3までと同様である。時刻t5からt6までは、図37の時刻t3からt4までと同様である。時刻t6からt7までは、図38の時刻t6からt7までと同様である。時刻t7からt8までは、図38の時刻t7からt8までと同様である。
【0065】
以上の動作により、ペダル踏み込みの途中から回生制動力をゼロから発生させてドライバ要求制動力まで増大し、エネルギ回収効率を高めることができる(時刻t2〜t5)。また、ペダル踏み込み時及びペダルストローク保持時に(時刻t2〜t4)、摩擦制動力から回生制動力へのすり替えを実現し、ペダルストローク保持時に(時刻t5〜t6)、回生制動力から摩擦制動力へのすり替えを実現できる。また、各時刻で、ドライバのブレーキペダル2の操作に応じた踏力(ペダル反力)を発生させることができる。
【0066】
[回生協調制御中の自動制動制御介入]
実施例1では、EBD制御中やABS制御介入前に、ペダルストロークSに応じて前輪FL,FRのホイルシリンダ圧P2を増圧しつつ後輪RL,RRの制動力を保持する場合、第1ポンプ32でリザーバ29からブレーキ液を吐出しながらソレノイドインバルブ22c, 22dにて後輪RL,RRのホイルシリンダ圧P2をコントロールする。
ABS制御時には、回生制動力の減少又は摩擦制動力の減少により、ABS制御対象輪のロック傾向を抑制する。例えば、第1ポンプ32でリザーバ29からブレーキ液を吐出しながら各ソレノイドインバルブ22a, 22d, 22c, 22b及び各ソレノイドアウトバルブ28a, 28d, 28c, 28bにて各輪FL,RR,RL,FRのホイルシリンダ圧P2をコントロールする。ABS制御介入時は増圧時の応答性をより高めるために、第1モータ30の回転数を高めに維持しておくこととしてもよい。
ブレーキアシスト制御時には、回生制動力の増加又は摩擦制動力の増加により、ブレーキアシストを実現する。例えば、第1ポンプ32でリザーバ29からブレーキ液を吐出しながらソレノイドインバルブ22にてホイルシリンダ圧P2をコントロールする。ブレーキアシスト制御介入時は車輪スリップまでホイルシリンダ圧P2を上昇させることを考えると、モータ回転数を高い状態で駆動し続けることとしてもよい。ゲートインバルブ25は、ペダルストロークSと所定の関係を満たすマスタシリンダ圧に対し検出されたマスタシリンダ圧P1が高い場合に、リザーバ29へブレーキ液を送るために動作させるが、ブレーキアシスト制御の要求制動力(BAS要求制動力)がドライバ要求制動力よりも大きくなる場合には、増圧に必要な液量に応じてブレーキ液を供給するようにコントロールを行う。
【0067】
[リリーフバルブ]
以上の各シーンでは、マスタシリンダ圧P1とホイルシリンダ圧P2との差圧(P1-P2)が、ゲートアウトバルブ20と並列に設けられたリリーフバルブ21の設定圧を越えない場合を想定している((P1-P2)<Pr)。上記各シーンで、上記差圧がリリーフバルブ21の設定圧以上となった場合((P1-P2)≧Pr)は、ブレーキ液がリリーフバルブ21から漏れてホイルシリンダ5に供給される。なお、P1≫P2であれば、P1-P2はP1と見なせる。つまり、P1がPr以上の場合、Pr以上のブレーキ液がホイルシリンダ5に供給される。
【0068】
次に、実施例1の作用を説明する。
実施例1のブレーキ制御装置1(以下、単に装置1という)は、各車輪FL,FR,RL,RRのブレーキ液圧を制御して自動制動制御を実行可能に設けられた従来の液圧制御ユニットを流用して、通常ブレーキ時、ブレーキの倍力作用を実現することができる。すなわち、装置1は、マスタシリンダ4とホイルシリンダ5とを接続する第1ブレーキ回路を有し、ホイルシリンダ5は、(ゲートアウトバルブ20及びソレノイドインバルブ22の開状態で)マスタシリンダ圧P1が作用するように構成されている。また、装置1は、マスタシリンダ4内のブレーキ液を増圧し、第1ブレーキ回路に接続する第2ブレーキ回路を介してホイルシリンダ5へ送る倍力装置を有する。倍力装置は第1ポンプ32を備え、第1ポンプ32を駆動することで、ホイルシリンダ圧P2をマスタシリンダ圧P1よりも高く増圧でき、これによりブレーキの倍力作用を実現することができる。よって、ブレーキペダル2の踏力を増幅してマスタシリンダ4に伝達する倍力装置(例えばエンジン100の発生する負圧を利用する負圧ブースタ)を省略することができる。第1,第2ブレーキ回路、及び倍力装置を構成する第1ポンプ32は、従来の液圧制御ユニットに備えられたものである。そして、第1ブレーキ回路において倍力装置(第1ポンプ32)とホイルシリンダ5との間にソレノイドインバルブ22を設けたため、ソレノイドインバルブ22の作動を制御することで、ホイルシリンダ圧P2をより正確に制御することができる。また、ソレノイドインバルブ22を閉弁することで、ホイルシリンダ圧P2を保持することが可能となる。
【0069】
また、装置1は、従来の液圧制御ユニットを流用し、液圧制御を行うことで、ドライバ要求制動力に対する回生制動力の不足分を摩擦制動力で補う回生協調制御を実現することができる。すなわち、装置1は、第1ブレーキ回路から分岐して倍力装置(第1ポンプ32)に接続する第3ブレーキ回路を備える。また、ホイルシリンダ5とリザーバ29を接続する第4ブレーキ回路を備える。ブレーキ液を第3ブレーキ回路及び第2ブレーキ回路を介してホイルシリンダ5に供給し、ホイルシリンダ5から第4ブレーキ回路を介してリザーバ29にブレーキ液を排出することで、ドライバのブレーキペダル操作とは独立にホイルシリンダ圧P2を任意に増減圧制御することができる。これにより、所望の摩擦制動力を発生して回生協調制御を実現することができる。第3,第4ブレーキ回路、及びリザーバ29は、従来の液圧制御ユニットに備えられたものである。そして、第4ブレーキ回路にソレノイドアウトバルブ28を設けたため、ソレノイドアウトバルブ28の作動を制御することで、ホイルシリンダ圧P2を任意に減圧することができる。また、ソレノイドアウトバルブ28を閉弁することでホイルシリンダ5からリザーバ29へのブレーキ液の流出を抑制し、ホイルシリンダ圧P2を保持することが可能となる。
【0070】
また、装置1は、ブレーキ液を貯留可能なリザーバ29を第3ブレーキ回路上に有する。言換えると、リザーバ29が第3ブレーキ回路に接続し、マスタシリンダから第3ブレーキ回路を介してリザーバにブレーキ液が流入可能に設けられている。よって、ブレーキ操作フィーリングを向上することができる。すなわち、例えば特許文献1に記載のブレーキ制御装置では、ドライバによるブレーキペダル操作に対して、マスタシリンダからリザーバにブレーキ液を流入させることができない。よって、適切なブレーキ操作フィーリングを与えつつホイルシリンダ圧を任意に制御することが困難である。例えば、ブレーキペダルの踏み込み初期から回生制動力分だけホイルシリンダ圧の増大を抑制して回生協調制御を行おうとすると、所謂ペダル板踏み状態となり、ドライバに違和感を与えるおそれがある。これに対し、実施例1の装置1は、ドライバによるブレーキペダル操作に対して、マスタシリンダ4から第3ブレーキ回路を介してリザーバ29にブレーキ液を流入させることができる。よって、ブレーキペダル操作に応じてブレーキペダル2がストローク可能であるため、ブレーキ操作フィーリングを向上することができる。このとき、マスタシリンダ4からのブレーキ液がホイルシリンダ5に流入することを回避できる一方、リザーバ29に流入したブレーキ液を用いてホイルシリンダ圧P2を任意に増圧可能である。よって、例えば、ブレーキペダルの踏み込み初期から回生制動力分だけホイルシリンダ圧の増大を抑制して回生協調制御を行うことができる。
【0071】
また、第1ブレーキ回路にはゲートアウトバルブ20を設け、ゲートアウトバルブ20は第1ブレーキ回路のマスタシリンダ4側とホイルシリンダ5側との連通・遮断を切替える。第2ブレーキ回路は、第1ブレーキ回路のゲートアウトバルブ20よりもホイルシリンダ5側(ホイルシリンダライン)に接続されている。第3ブレーキ回路は、第1ブレーキ回路のゲートアウトバルブ20よりもマスタシリンダ4側(マスタシリンダライン)に接続されている。よって、ゲートアウトバルブ20を閉弁してマスタシリンダラインとホイルシリンダラインとの連通を遮断することで、ドライバによるブレーキペダル2の踏み込み操作に応じてペダルストロークSを発生しつつ回生協調制御を行うことを、より容易に達成できる。すなわち、ペダル踏み込み時には、ブレーキペダル2の踏み込み操作に応じて、マスタシリンダ4からのブレーキ液を第3ブレーキ回路を介してリザーバ29へ流す。これにより、ペダルストロークSを確保することができる。また、倍力装置(第1ポンプ32)は、リザーバ29に貯留したブレーキ液を用いて(マスタシリンダ4ではなく)ホイルシリンダ5のみにブレーキ液圧を供給することができる。このように、ゲートアウトバルブ20を作動させることで、ドライバによるブレーキ操作に対し、ホイルシリンダ圧P2(摩擦制動力)の制御を分離して、これを独立に制御することを容易化できる。
【0072】
マスタシリンダ4とリザーバ29とを接続する第3ブレーキ回路上には、差圧発生手段としてのゲートインバルブ25が設けられている。マスタシリンダ4からブレーキ液をリザーバ29へ流す際、ゲートインバルブ25を作動させてリザーバ29へのリーク量(絞り量)を調整することで、ゲートインバルブ25のマスタシリンダ4側(上流側)とリザーバ29側(下流側)との間に所望の差圧を発生することができる。ゲートインバルブ25によって上記差圧すなわちマスタシリンダ圧P1(ペダル反力)を制御することで、違和感の少ない良好なペダルフィーリングをより確実に実現できる。このように、ドライバのブレーキペダル操作に対する反力(ペダル反力)を発生するストロークシミュレータとして、従来から備えられたリザーバ29及びゲートインバルブ25を機能させることで、新たにストロークシミュレータを追加する必要がない。なお、差圧発生手段として、ゲートインバルブ25ではなく、第3ブレーキ回路の流路断面積を部分的に縮小する絞り部(例えば可変絞り弁やオリフィス等)を設けることとしてもよい。
【0073】
回生協調制御において、ペダル踏み戻し時に適切なペダルフィーリングを発生させるためには、まずペダルストロークSの減少を可能にする必要があり、リザーバ29に貯留したブレーキ液をマスタシリンダ4へ戻す制御が必要となる。低圧のリザーバ29からペダル操作によりマスタシリンダ圧P1が発生している比較的高圧のマスタシリンダ4へブレーキ液を戻すには、この液圧勾配に抗して積極的にブレーキ液を還流させることが必要である。その際、ホイルシリンダ圧P2に影響(変動)を与えないようにすることも重要である。これらの要求を満たすために、実施例1の装置1は、リザーバ29に貯留したブレーキ液を第1ブレーキ回路側(マスタシリンダライン)へ還流させる還流装置を備える。よって、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制しつつ、良好なペダルフィーリングを実現できる。
【0074】
ここで、実施例1のような還流装置(第2ポンプ33)を設けず、例えば、第1ブレーキ回路のマスタシリンダ4側(マスタシリンダライン)とホイルシリンダ5側(ホイルシリンダライン)とを連通し(具体的にはゲートアウトバルブ20を開弁し)、かつ第1ポンプ32を還流装置として作動させることで、リザーバ29からブレーキ液をマスタシリンダ4に戻す方法も考えられる(実施例3参照)。しかしこの場合、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制するために、第1ポンプ32の吐出側とホイルシリンダ5との連通状態(言換えるとホイルシリンダ5へ供給するブレーキ液量)を制御する必要がある。具体的には、ホイルシリンダラインに設けられた電磁弁(ソレノイドインバルブ22等)の開弁量を適切に制御する必要がある。また、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制しつつ、良好なペダルフィーリング(ブレーキペダル踏力)を発生させるために、すなわちペダル踏み戻し時のペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1を発生させるために、ホイルシリンダラインに設けられた電磁弁(ソレノイドインバルブ22等)の開弁量、マスタシリンダラインに設けられたゲートアウトバルブ20の開弁量、及び第1ポンプ32の吐出量(第1モータ30の回転数)を協調して適切に制御することが必要になる。よって、制御対象が多く(ソレノイドインバルブ22等、ゲートアウトバルブ20、第1ポンプ32)、液圧制御が複雑になるおそれがある。
【0075】
これに対し、実施例1の装置1は、リザーバ29に貯留したブレーキ液を第1ブレーキ回路側(マスタシリンダライン)へ還流させるために、第1ポンプ32やゲートアウトバルブを20用いるのではなく、新たに設けた還流装置(第2ポンプ33)を用いる。すなわち、この還流装置(第2ポンプ33)は、リザーバ29に貯留したブレーキ液を、第1ブレーキ回路のホイルシリンダラインを介さずに、マスタシリンダ4側へ戻す。よって、上記問題を解決し、違和感の少ない良好なペダルフィーリングを、より簡便に実現できる。具体的には、第1ブレーキ回路のマスタシリンダラインとリザーバ29とを接続する還流回路(管路18)を新たに設け、還流回路に還流装置(第2ポンプ33)を設けた。還流装置は、還流回路を介してリザーバ29からマスタシリンダ4側へブレーキ液を戻すことで、ペダルストロークSの減少を可能にする。ここで還流回路(管路18)は第1ブレーキ回路のホイルシリンダライン(管路12)や第2ブレーキ回路(管路15)とは別に設けられている。よって、リザーバ29からマスタシリンダ4側へブレーキ液を戻すために第1ポンプ32を制御する必要がなく、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制するために第1ポンプ32の吐出側とホイルシリンダ5との連通状態(ソレノイドインバルブ22等の作動)を制御する必要がない。また、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制しつつ良好なペダルフィーリング(ブレーキペダル踏力)を発生させるために、ソレノイドインバルブ22等とゲートアウトバルブ20と第1ポンプ32の作動を協調して制御する必要がない。よって、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制しつつ違和感の少ない適切なペダルフィーリングを実現するための制御の対象が少なく、また液圧制御をより簡便に行うことができる。
【0076】
また、第3ブレーキ回路(管路16)の還流回路(管路18)が接続する接続点とリザーバ29との間にゲートインバルブ25が設けられている。よって、第3ブレーキ回路(管路16)における還流装置(第2ポンプ33)によるブレーキ液の戻し側(マスタシリンダ4側)とリザーバ29側との間の差圧すなわちマスタシリンダ圧P1(ペダル反力)を、ゲートインバルブ25を制御することで、所望の値に制御することができる。したがって、違和感の少ない良好なペダルフィーリングをより確実に実現することができる。なお、実施例1では、回生協調制御中のペダル踏み戻し時に、ペダルストロークSと所定の関係(所定のブレーキペダル特性)を保つマスタシリンダ圧P1を発生させるために、主にゲートインバルブ25の作動を制御することでこれを実現し、還流装置(第2ポンプ33)はゲートインバルブ25によるマスタシリンダ圧P1の制御を補助するようにブレーキ液をマスタシリンダ4側へ供給することとしたが、ゲートインバルブ25の作動を特に細かく制御せず(一定の開弁量に保ち)、還流装置の作動(第2ポンプ33の吐出量)を制御することで、所定のブレーキペダル特性を保つマスタシリンダ圧P1を発生させることとしてもよい。
【0077】
また、還流回路(管路18)は第3ブレーキ回路(管路16,17)とは別に設けられているため、リザーバ29に貯留したブレーキ液をマスタシリンダ4側(マスタシリンダライン)へ戻す際、第3ブレーキ回路上のゲートインバルブ25の作動(差圧発生機能)と干渉するおそれもない。具体的には、還流回路(管路18)のマスタシリンダ4側の端は、ゲートインバルブ25よりもマスタシリンダ4側の管路16に接続されている。なお、還流回路(管路18)のマスタシリンダ4側の端は、第1ブレーキ回路(管路11)におけるゲートアウトバルブ20よりもマスタシリンダ4側に接続することとしてもよい。また、還流回路(管路18)のリザーバ29側の端は、第3ブレーキ回路における第1ポンプ32とリザーバ29とを接続する管路17に限らず、第3ブレーキ回路におけるゲートインバルブ25とリザーバ29とを接続する管路16や、第4ブレーキ回路におけるソレノイドアウトバルブ28とリザーバ29とを接続する管路19に接続することとしてもよく、またリザーバ29に直接接続することとしてもよい。
【0078】
実施例1の還流装置は第2ポンプ33を備え、第2ポンプ33は第1ポンプ32から独立して駆動可能に構成されている。よって、倍力装置(第1ポンプ32)の作動とは独立して還流装置(第2ポンプ33)を作動させることができる。具体的には、第1ポンプ32を駆動する第1モータ30と、第2ポンプ33を駆動する第2モータ31とを、別々に設けた。よって、両モータ30,31の回転数をそれぞれ制御することで、第1,第2ポンプ32,33の吐出量を個別に正確に制御することができる。言換えると、マスタシリンダ圧P1の制御とホイルシリンダ圧P2の制御の自由度を向上することができる。また、第1,第2ポンプ32,33はその用途に応じて要求性能が異なる。具体的には、第1ポンプ32はホイルシリンダ圧P2を増圧するという要求性能を満たすため、ある程度大きな吐出性能が必要とされる。よって、第1モータ30の体格もある程度大型化することが必要となる。一方、第2ポンプ33はペダルストロークSの減少に対してマスタシリンダ圧P1の変動を制御するという要求性能を満たせば足りるため、それほど大きな吐出性能が要求されない。すなわち、第2モータ31の負荷は小さく、その体格を小型化することができる。なお、実施例1のように液圧制御ユニット6に倍力装置(第1ポンプ32)を備えて負圧ブースタ等の従来の倍力装置を省略した場合、ドライバのブレーキペダル操作により発生するマスタシリンダ圧P1は、従来の倍力装置を備えた場合よりも低くなる。回生協調制御中も、マスタシリンダ圧P1は、従来の倍力装置を備えた場合より低く、ペダル踏み戻し時のマスタシリンダ圧P1の変動もより小さくなる。よって、実施例1では第2モータ31の体格をより小型化することができる。このように要求性能の異なる第1,第2ポンプ32,33のモータを別々に設けることで、第1,第2ポンプ32,33の駆動に必要なエネルギを全体として効率化することができる。なお、第1,第2ポンプ32,33を共通の駆動力源により駆動することとしてもよい。
【0079】
装置1は、ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部(ブレーキペダルストロークセンサ8)と、検出されたブレーキ操作状態(に基づき算出されるドライバ要求制動力)と回生制動装置の作動状態(回生制動力の大きさ等)に応じてモータ30,31(ポンプ32,33)及び各バルブ(ゲートアウトバルブ20等)をコントロールする液圧制御部70を備える。ドライバ要求制動力に対して回生制動力が不足する場合、この不足分を補う摩擦制動力を発生するように液圧制御部70が液圧制御を行うことで、上記のように回生協調制御を実行することができる。すなわち、回生制動力と摩擦制動力との和がブレーキ操作状態に応じて決定されるドライバ要求制動力と一致するように摩擦制動力をコントロールできるため、エネルギ回収効率の向上を図りつつドライバ要求制動力を達成できる。なお、液圧制御部70による各アクチュエータ(例えば第1モータ30)の制御方法は実施例1のものに限らず、他の方法により各アクチュエータの動作を制御することとしてもよい。
【0080】
液圧制御部70は、ドライバによるブレーキ操作(ペダル踏み戻し)中に第2ポンプ33を駆動しブレーキペダル踏力を創生するペダル踏力創生部71を備える。これにより、上記のように良好なペダルフィーリングを簡便に実現することができる。なお、ペダル踏力創生部71による各アクチュエータ(例えば第2モータ31)の制御方法は実施例1のものに限らず、他の方法により各アクチュエータの動作を制御することとしてもよい。
【0081】
液圧制御部70は、ブレーキ操作状態検出部によってドライバによるブレーキ操作(ペダル踏み込み、ペダルストローク保持、ペダル踏み戻し)がなされていると検出されている間、第1ポンプ32及び第2ポンプ33を駆動し続け、各バルブを制御して液圧制御を実行する。よって、制御の応答性を向上することができる。すなわち、ホイルシリンダ圧P2を保持又は減圧する際には、本来的には第1ポンプ32を駆動する必要はない。しかし、第1ポンプ32は上記のようにホイルシリンダ5にブレーキ液を供給するものであるため、第1モータ30はある程度大きな体格となり、その駆動当初には比較的大きなトルクが必要となる。例えば、ホイルシリンダ圧P2の保持又は減圧中、発生可能な最大回生制動力が低下して回生制動力から摩擦制動力へすり替える必要が生じたとき、第1ポンプ32を停止状態から駆動すると、ホイルシリンダ圧P2の増圧に遅れが生じる。回生制動力の低下速度に対してホイルシリンダ圧P2の立ち上がり速度が遅れると、減速度の抜けが発生するおそれがある。これに対し、実施例1では、ドライバがブレーキペダル2を操作している(踏んでいる)間は常時、第1ポンプ32(第1モータ30)を駆動し続け、その回転を維持する。これにより、ホイルシリンダ圧P2の増圧指令後速やかに第1ポンプ32によりホイルシリンダ圧P2を増圧することが可能になる。このようにホイルシリンダ圧P2の増圧応答性を高めることで、回生制動力から摩擦制動力へのすり替えの応答性向上を図ることができ、減速度の抜けを抑制できる。具体的には、ホイルシリンダ圧P2の保持時又は減圧時には、増圧に備えて回転数を低くして第1モータ30を駆動する。第1モータ30の指令回転数を、回転を維持できるだけの低い所定値(基本回転数)に設定することで、消費電力を抑えることができる。
【0082】
しかし、この場合、ホイルシリンダ圧P2を保持又は減圧する場面であるにも関わらず、第1ポンプ32からホイルシリンダ5にブレーキ液が送られてしまうおそれがある。これに対し、実施例1では、装置1は、第1ポンプ32の吐出側と吸入側を連通する連通路(管路10)を備え、連通路の連通・遮断を切替える切替えバルブ27を設けた。よって、ホイルシリンダ圧P2の非増圧時には、切替えバルブ27を開弁制御することで連通路が連通し、第1ポンプ32が第2ブレーキ回路(管路15)へ吐出するブレーキ液は連通路を介して第1ポンプ32の吸入側に戻される。これにより、第1ポンプ32の作動によるホイルシリンダ圧P2の意図しない増圧を抑制することができる。切替えバルブ27は常閉電磁弁であり、開弁作動させることで連通路を連通する。よって、第1ポンプ32の駆動時であって余剰のブレーキ液が発生する場合にのみ通電によって切替えバルブ27を開弁作動させればよいため、消費電力を抑えることができる。なお、連通路(管路10)の第1ポンプ32の吸入側に接続する端は、第3ブレーキ回路における第1ポンプ32とリザーバ29とを接続する管路17に限らず、第3ブレーキ回路におけるゲートインバルブ25とリザーバ29とを接続する管路16や、第4ブレーキ回路におけるソレノイドアウトバルブ28とリザーバ29とを接続する管路19に接続することとしてもよく、またリザーバ29に直接接続することとしてもよい。
【0083】
また、(ペダル踏み戻し時にはブレーキ液をホイルシリンダ5から第1ブレーキ回路を介してマスタシリンダ4へ戻す)通常ブレーキ時や、回生協調制御時であってもドライバによるペダル踏み込み又はペダルストローク保持がされるときは、本来的には第2ポンプ33を駆動する必要はない。しかし、これらの場面で第2ポンプ33を停止していると、回生協調制御時にブレーキペダル2が踏み戻され、第2ポンプ33によりマスタシリンダ4側へブレーキ液を戻す必要が生じたとき、ブレーキ液の戻しに遅れが生じる。ブレーキペダル2の踏み戻し速度に対してブレーキ液の戻し速度が遅れると、ペダルフィーリングの違和感が発生するおそれがある。これに対し、実施例1では、ドライバによるブレーキ操作中は常時、第2ポンプ33(第2モータ31)を駆動し続け、その回転を維持することで、回生協調制御時にペダル踏み戻し後、速やかに第2ポンプ33によりブレーキ液をマスタシリンダ4側へ戻すことが可能になる。このようにペダルストロークSやマスタシリンダ圧P1(ペダル反力)の制御応答性を高めることで、ペダルフィーリングの違和感の発生をより確実に抑制できる。具体的には、通常ブレーキ時や、回生協調制御時にドライバによるペダル踏み込み又はペダルストローク保持がされるときにも、回生協調制御時のペダル踏み戻しに備え、一定回転数で第2モータ31を駆動する。実施例1では、上記一定回転数(基本回転数)を、例えば、回生協調制御時にドライバが所定速度でブレーキペダル2を踏み戻した際、ペダルストロークSの減少を可能にするだけのブレーキ液をマスタシリンダ4側に供給できる回転数に限定して設定する。これにより、ペダルフィーリングの違和感の発生をより確実に抑制しつつ、消費電力を抑えることができる。
【0084】
ここで、装置1は、第2ポンプ33の吐出側と吸入側(ないしリザーバ29)とを連通する連通路(還流回路としての管路18、第3ブレーキ回路)を備え、この連通路にはゲートインバルブ25が設けられている。よって、通常ブレーキ時や、回生協調制御時にドライバによるペダル踏み込み又はペダルストローク保持がされるときに、ゲートインバルブ25を開弁制御することで、第2ポンプ33が還流回路(管路18)へ吐出するブレーキ液は、上記連通路(管路16〜18)を介して第2ポンプ33の吸入側(ないしリザーバ29)に戻される。これにより、第2ポンプ33によるマスタシリンダ圧P1(ブレーキペダル踏力)の意図しない変動を抑制することができる。なお、回生制動力を発生させない等の理由により、ブレーキペダル2が踏み戻されるとブレーキ液をホイルシリンダ5からマスタシリンダ4へ戻すこととなる場面(例えば図37の時刻t5からt6や図42の時刻t1からt2等)では、第2ポンプ33の応答遅れという課題が発生しにくい。よって、このような場面では、第2ポンプ33を駆動せず、停止状態とすることとしてもよい。
【0085】
実施例1では、ゲートアウトバルブ20に並列に、マスタシリンダ4からのブレーキ液の流れを許容するリリーフバルブ21を設け、リリーフバルブ21の開弁圧Prを、回生制動装置により発生させる最大減速度相当のブレーキ液圧(最大回生制動力限界値の液圧換算値)に設定した。よって、ドライバ要求制動力が(最大未満の)回生制動力で足りる場合に、ゲートアウトバルブ20を閉弁して第1ブレーキ回路を遮断したとき、マスタシリンダ4で発生したブレーキ液圧がリリーフバルブ21を介してホイルシリンダ5へ流れ込んで摩擦制動力が発生することが抑制される。これにより、エネルギ回収効率を高めることができる。一方、ドライバ要求制動力に対して最大回生制動力では不足する場合は、リリーフバルブ21が開弁し、マスタシリンダ4で発生したブレーキ液圧がゲートアウトバルブ20をバイパスしてホイルシリンダ5へ流れ込む。よって、高圧のマスタシリンダ圧P1を利用してホイルシリンダ圧P2を早期に増圧することができる。例えば図37の時刻t2からt3までのように、ドライバ要求制動力を回生制動力のみで賄い、摩擦制動力を発生させない(ホイルシリンダ圧P2が略ゼロである)ときに、ドライバ要求制動力が最大回生制動力限界値以上になると、ドライバ要求制動力に応じて発生させるマスタシリンダ圧P1が開弁圧Pr以上になる。このときリリーフバルブ21が開弁し、マスタシリンダ4で発生したブレーキ液圧がホイルシリンダ5へ供給され、ドライバ要求制動力が最大回生制動力限界値を上回る分の摩擦制動力が発生する。このように、回生制動力が限界値に達した場合でも、リリーフバルブ21が開弁することで自動的に摩擦制動力を発生させ、ドライバ要求制動力に対する不足分を補うことで、第1ポンプ32によるホイルシリンダ圧P2の増圧制御が実行される前に、ドライバ要求制動力を速やかに発生させることができる。
【0086】
各ポンプ32,33、各バルブ及び各ブレーキ回路は、車両の第1の所定輪群からなる第1の系統(P系統)と第2の所定輪群からなる第2の系統(S系統)にそれぞれ設けられる。よって、両系統の同時失陥を抑制でき、一方の系統が失陥した場合であっても他方の系統を用いて2輪のホイルシリンダ圧P2を制御できる。
一方、第1モータ30及び第2モータ31は、各系統に設けられた対応するポンプ(第1ポンプ32毎、第2ポンプ33毎)に共通に設けられている。よって、モータをP系統とS系統で別々に設けた場合に比べ、モータの数を減らし、装置1を小型化することができる。
【0087】
[実施例1の効果]
以下、実施例1のブレーキ制御装置1が奏する効果を列挙する。
(1)回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ制御装置であって、ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダ4と前記ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダ5を接続する第1ブレーキ回路(管路11,12)と、マスタシリンダ4内のブレーキ液を増圧し第1ブレーキ回路に接続する第2ブレーキ回路(管路15)を介してホイルシリンダ5へ送る倍力装置(第1ポンプ32)と、第1ブレーキ回路から分岐し、倍力装置に接続する第3ブレーキ回路(管路16,17)と、第3ブレーキ回路に設けられたリザーバ29と、リザーバ29に貯留したブレーキ液を第1ブレーキ回路側へ還流させる還流装置(第2ポンプ33)と、を備えた。
よって、回生協調制御において、ペダル踏み戻し時のペダルフィーリングを向上することができる。
【0088】
(2)第3ブレーキ回路の倍力装置(第1ポンプ32)とリザーバ29との間(管路17)から分岐し、第3ブレーキ回路の第1ブレーキ回路(管路11)との分岐点より下流側とリザーバ29との間(管路16)に接続する還流回路(管路18)を備え、還流装置(第2ポンプ33)は還流回路に設けられている。
よって、回生協調制御においてペダル踏み戻し時に、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制しつつ違和感の少ないペダルフィーリングをより簡便に実現することができる。
【0089】
(3)第3ブレーキ回路(管路16)の還流回路(管路18)が接続する接続点とリザーバ29との間にゲートインバルブ25を設けた。
よって、ゲートインバルブ25を作動させることで、違和感の少ない良好なペダルフィーリングをより確実に実現することができる。
【0090】
(4)第1ブレーキ回路(管路11)の第2ブレーキ回路(管路15)との接続点と第3ブレーキ回路(管路16)の分岐点の間にゲートアウトバルブ20を設けた。
よって、ゲートアウトバルブ20を作動させることで、より容易に回生協調制御を実現することができる。
【0091】
(5)倍力装置は第1ポンプ32を備え、還流装置は第2ポンプ33を備え、それぞれのポンプ32,33は独立して駆動可能に構成されている。
よって、制御の自由度や制御性能を向上することができる。
【0092】
(6)ゲートアウトバルブ20に並列にマスタシリンダ4からのブレーキ液の流れを許容するリリーフバルブ21を設け、リリーフバルブ21の開弁圧は回生制動装置により発生させる最大減速度相当のブレーキ液圧である。
よって、回生制動力が限界値に達した場合でも、リリーフバルブ21が開弁することでドライバ要求制動力を速やかに発生させることができる。
【0093】
(7)第1ポンプ32を駆動する第1モータ30と、第2ポンプ33を駆動する第2モータ31を備えた。
よって、第1,第2ポンプ32,33の駆動に必要なエネルギを全体として効率化することができる。
【0094】
(8)第1ブレーキ回路であってホイルシリンダ5と第1ポンプ32との間に設けられたインバルブ(ソレノイドインバルブ22)と、ホイルシリンダ5とリザーバ29を接続する第4ブレーキ回路(管路19)に設けられたアウトバルブ(ソレノイドアウトバルブ28)を備えた。
よって、ホイルシリンダ圧P2をより正確に制御することができる。
【0095】
(9)第1ポンプ32は吐出側と吸入側を連通する連通路(管路10)を備え、連通路に切替えバルブ27を設けた。
よって、第1ポンプ32の作動によるホイルシリンダ圧P2の意図しない増圧を抑制し、制御の自由度を向上することができる。
【0096】
(10)ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部(ブレーキペダルストロークセンサ8)と、検出されたブレーキ操作状態と回生制動装置の作動状態に応じモータ30,31及び各バルブをコントロールする液圧制御部70を備えた。
よって、ドライバの要求制動力に対する回生制動力の不足分を補うように摩擦制動力を発生し、ドライバ要求制動力を達成しつつエネルギ回収効率の向上を図ることができる。
【0097】
(11)液圧制御部70は、ドライバによるブレーキ操作中に第2ポンプ33を駆動しブレーキペダル踏力を創生するペダル踏力創生部71を備えた。
よって、良好なペダルフィーリングを簡便に実現することができる。
【0098】
(12)液圧制御部70はブレーキ操作状態検出部によりドライバによるブレーキ操作がなされていると検出されている間、第1及び第2ポンプ32,33を駆動し続け、各バルブを制御して液圧制御を実行する。
よって、回生制動力から摩擦制動力へのすり替えの応答性を向上し、かつペダルフィーリングの違和感の発生をより確実に抑制することができる。
【0099】
〔実施例2〕
実施例2のブレーキ制御装置1は、液圧制御ユニット6の配管構造の2系統(P系統、S系統)のうち片方、例えばS系統にのみゲートインバルブ25と還流装置(第2ポンプ33)及び還流回路(管路18)を設けた点で、実施例1の装置1と異なる。
【0100】
まず、構成を説明する。
図44は、実施例2の装置1の液圧制御ユニット6の回路構成図である。S系統の構成は、実施例1(図2)と同様である。P系統についてみると、管路18及び第2ポンプ33が設けられていない。第2モータ31はS系統の第2ポンプ33Sのみを駆動する。P系統の第3ブレーキ回路(管路16)上にはゲートインバルブ25が設けられておらず、P系統のリザーバ29Pには調圧弁としてのチェック弁290が一体に設けられている。すなわちリザーバ29Pは調圧機能付きであり、リザーバ29 Pに所定量のブレーキ液が貯留されるとメカ的にチェック弁290が閉弁し、第1ポンプ32の吸入側(管路17)とマスタシリンダ4側(管路16)との連通を遮断する。管路16Pからマスタシリンダ圧P1が供給されないとき、リザーバ29 Pのピストン291はスプリング292により付勢され、ロッド294を介してチェック弁290のボール部材293を(チェック弁用リターンスプリングの力に抗して)押し上げる。よって、ボール部材293はシート部295から離間し、チェック弁290は開弁状態となる。このときマスタシリンダ4(管路16P)はリザーバ29 Pを介して第1ポンプ32の吸入側に連通するとともに、ソレノイドアウトバルブ28に連通する。
【0101】
管路16Pからマスタシリンダ圧P1が供給されると、チェック弁290が開弁状態から閉弁状態となり、マスタシリンダ4とリザーバ29 Pとの間が遮断される。具体的には、スプリング292の付勢力(チェック弁用リターンスプリングの付勢力を割り引いたもの)をF、ピストン291の受圧面積をS1とする。チェック弁290が開弁した状態でマスタシリンダ圧P1がピストン291に加わり、P1×S1>Fとなると、ピストン291はスプリング292を圧縮する方向に移動するため、ボール部材293はシート部295へ向かって移動する。マスタシリンダ圧P1が所定値以上であれば、ボール部材293はシート部295に着座し、管路16Pとリザーバ29Pとの間でブレーキ液が流通しない。ホイルシリンダ5a,5d内のブレーキ液が管路19Pを介してリザーバ29Pに流入すると、ピストン291がスプリング292を圧縮する方向に移動してリザーバ29Pの容積が増大し、ブレーキ液が貯留される。
【0102】
第1ポンプ32Pが作動すると、リザーバ29Pに貯留したブレーキ液は、管路17Pを介して汲み上げられ、第1ブレーキ回路側に還流される。このとき、管路16Pからのマスタシリンダ圧P1によりチェック弁290が閉じていたとしても、第1ポンプ32Pによる汲み上げによってリザーバ29P内が減圧され、チェック弁290を押し開く。具体的には、チェック弁290の閉弁状態で第1ポンプ32Pが作動すると、ボール部材293の管路16P側の圧力はマスタシリンダ圧P1であり、ボール部材293のリザーバ29P側の圧力Ps=F/S1となる。よって、チェック弁290の閉弁状態で第1ポンプ32Pの吸入側の圧力PsはF/S1以上にはならず、第1ポンプ32Pの吸入側に加わる圧力は所定圧以下に保たれる。この状態で第1ポンプ32Pがリザーバ29Pのブレーキ液を吸入すると、圧力Psが低下するため、ピストン291はスプリング292の付勢力Fによりボール部材293の側に押される。このとき、チェック弁290の油路径(バルブシート径)、すなわちチェック弁290においてブレーキ液が流通する際の通路断面積をS2とすると、P1×S2<Fであれば、ボール部材293はシート部295から離れ、チェック弁290が開弁状態となる。開弁圧F/S2は所定圧に設定されている。この開弁状態で、第1ポンプ32Pは、リザーバ29Pからブレーキ液を吸入すると共に、マスタシリンダ4(管路16P)からブレーキ液を吸入可能な状態になる。そして、マスタシリンダ圧P1がリザーバ29Pのピストン291に加わり、ピストン291がスプリング292を圧縮する方向に移動すると、上記説明したように、閉弁動作を行う。以上のように、チェック弁290は、第1ポンプ32Pの作動時に、開閉を自動的に繰り返すことで、第1ポンプ32Pがマスタシリンダ4からブレーキ液を吸入してホイルシリンダ圧を増圧することを可能にするとともに、任意の範囲のマスタシリンダ圧P1に対し、第1ポンプ32Pの吸入側に加わる圧力を所定値以下に調圧する。
【0103】
S系統の各アクチュエータの動作は実施例1と同様である。すなわち、ゲートインバルブ25Sと第2ポンプ33SによりペダルストロークSとマスタシリンダ圧P1との関係を制御しつつ、第1ポンプ32Sによりホイルシリンダ圧P2を制御する。P系統の各アクチュエータの動作は、ゲートインバルブ25と第2ポンプ33を制御しない点を除き、S系統と同様である。
【0104】
次に、実施例2の作用を説明する。
装置1は、2系統(P系統、S系統)のうち片方だけに設けた還流回路(管路18)や還流装置(第2ポンプ33)により、回生協調制御におけるペダル踏み戻し時に、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制しつつ、ペダルストロークSの減少を可能にし、かつ良好なペダルフィーリング(ブレーキペダル踏力)を発生させることができる。よって、実施例1に比べ、ポンプ等のアクチュエータの数を減らすことができる。なお、還流回路(管路18)や還流装置(第2ポンプ33)を設けない側の系統(P系統)において、チェック弁290付きのリザーバ29Pに代えて(S系統のリザーバ29Sと同様の)通常のリザーバを用い、第3ブレーキ回路(管路16)上にゲートインバルブ25等の差圧発生手段を設けることとしてもよい。他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0105】
〔実施例3〕
実施例3のブレーキ制御装置1は、液圧制御ユニット6における還流装置として、還流回路(管路18)上に第2ポンプ33を設けるのではなく、第1ポンプ32を還流装置として作動させる点で、実施例1の装置1と異なる。
【0106】
まず、構成を説明する。
図45は、実施例3の装置1の液圧制御ユニット6の回路構成図である。図2と異なり、P系統、S系統において、管路18及び第2ポンプ33が設けられていない。また、第1ブレーキ回路において、車輪毎の管路12a,12d,12b,12cに分岐する前の管路12P,12S上にそれぞれ、常開型の電磁弁である第2切替えバルブ41P,41Sが設けられている。管路11と管路12の接続点には、ゲートアウトバルブ20と第2切替えバルブ41との間の第1ブレーキ回路の液圧を検出する液圧センサ44が設けられている。他の構成は実施例1(図2)と同様である。
【0107】
液圧制御部70は第2切替えバルブ41をPWM制御する。液圧制御部70(ペダル踏力創生部71)は、ゲートインバルブ25とゲートアウトバルブ20と第2切替えバルブ41と第1ポンプ32とを協調して制御することにより、ペダルストロークSとマスタシリンダ圧P1との関係を制御しつつ、ホイルシリンダ圧P2を制御する。具体的には、通常ブレーキ時や、回生協調制御時であってドライバによるペダル踏み込み又はペダルストローク保持がされるときは、第1ポンプ32を駆動すると共に、第2切替えバルブ41を非制御(開弁状態)とする。マスタシリンダ圧センサ42により検出されるマスタシリンダ圧P1が目標マスタシリンダ圧に一致するように、ゲートインバルブ25の作動を制御する。他の動作は実施例1と同様である。
【0108】
回生協調制御時であってドライバによるペダル踏み戻しがされるときは、まず目標マスタシリンダ圧と目標ホイルシリンダ圧とを比較する。目標マスタシリンダ圧のほうが目標ホイルシリンダ圧よりも高い場合、第1ポンプ32を駆動すると共に、切替えバルブ27を非制御(閉弁状態)として、リザーバ29のブレーキ液を第1ブレーキ回路側に供給する。ゲートアウトバルブ20を非制御(開弁状態)とし、リザーバ29のブレーキ液を第1,第2ブレーキ回路を介してマスタシリンダ4側に供給することで、ペダルストロークSの減少を可能とする。更に、マスタシリンダ圧センサ42により検出されるマスタシリンダ圧P1が目標マスタシリンダ圧に一致するように、ゲートインバルブ25の作動を制御する。また、ホイルシリンダ圧センサ43と液圧センサ44の検出値に基づき、ホイルシリンダ圧P2が目標ホイルシリンダ圧に一致するように、第2切替えバルブ41の作動を制御する。この場合、液圧センサ44を省略し、ホイルシリンダ圧センサ43の検出値のみに基づきホイルシリンダ圧P2を制御することとしてもよい。また、液圧制御をより正確ないしより容易に制御するため、液圧センサ44等の検出値に基づき第1ポンプ32の吐出量(第1モータ30の回転数)を適宜制御することとしてもよい。
【0109】
目標ホイルシリンダ圧のほうが目標マスタシリンダ圧よりも高い場合、第1ポンプ32を駆動すると共に、切替えバルブ27を非制御(閉弁状態)として、リザーバ29のブレーキ液を第1ブレーキ回路側に供給する。第2切替えバルブ41を非制御(開弁状態)とする。また、ゲートアウトバルブ20を開弁制御し、リザーバ29のブレーキ液をマスタシリンダ4側に供給することで、ペダルストロークSの減少を可能とする。マスタシリンダ圧センサ42と液圧センサ44の検出値に基づき、マスタシリンダ圧センサ42により検出されるマスタシリンダ圧P1が目標マスタシリンダ圧に一致し、かつ液圧センサ44により検出されるホイルシリンダ圧P2が目標ホイルシリンダ圧に一致するように、ゲートアウトバルブ20の作動を制御する。この場合、液圧センサ44を省略し、ホイルシリンダ圧センサ43の検出値に基づきホイルシリンダ圧P2を制御することとしてもよい。また、液圧制御をより正確ないしより容易に制御するため、液圧センサ44等の検出値に基づき第1ポンプ32の吐出量(第1モータ30の回転数)を適宜制御することとしてもよいし、ゲートインバルブ25の作動も並行して制御することしてもよい。他の動作は、実施例1と同様である。
【0110】
次に、実施例3の作用を説明する。
装置1は、リザーバ29に貯留したブレーキ液を第1ブレーキ回路側へ還流させる還流装置として第1ポンプ32を利用し、第1ポンプ32が第2ブレーキ回路に吐出したブレーキ液を、第1ブレーキ回路(管路11)を介してマスタシリンダ4側に戻す。よって、実施例1,2のように新たな還流回路(管路18)や還流装置(第2ポンプ33)を設けることなく、回生協調制御におけるペダル踏み戻し時に、ホイルシリンダ圧P2の変動を抑制しつつ、ペダルストロークSの減少を可能にし、かつ良好なペダルフィーリング(ブレーキペダル踏力)を発生させることができる。なお、第2切替えバルブ41を省略し、ソレノイドインバルブ22を上記第2切替えバルブ41のように制御することとしてもよい。これに対し、実施例3のように第2切替えバルブ41を設けた場合、制御対象となるバルブの数を減らすことができる。また、ゲートインバルブ25、ゲートアウトバルブ20、第2切替えバルブ41、及び第1ポンプ32の上記協調制御は一例を示すにすぎず、他の制御方法によりこれらを協調させることとしてもよい。他の作用効果は、実施例1と同様である。
【0111】
[他の実施例]
以上、本発明を実現するための形態を、実施例1〜3に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。例えば、実施例では、本発明のブレーキ制御装置1をハイブリッド車に適用した例を示したが、電気自動車等の回生制動装置を備えた車両であれば、任意の車両に適用でき、実施例と同様の作用効果を得ることができる。実施例ではブレーキ配管をX配管構造としたが、これに限らず、例えば前後配管構造、すなわち前輪FL,FRと後輪RL,RRの2系統に分けたH字型の配管構造としてもよい。実施例ではブレーキペダル2の踏力を増幅してマスタシリンダ4に伝達する倍力装置を省略したが、これを設けることとしてもよい(例えば電動式の倍力装置)。
【0112】
実施例では、液圧センサ42の検出値を用いたフィードバック制御によりゲートインバルブ25の作動を制御することとしたが、ゲートインバルブ25に釣り合い電流値を通電することでゲートインバルブ25の上下流の差圧(言換えるとマスタシリンダ圧P1)を制御することとしてもよい。すなわち、ゲートインバルブ25は、例えば、弁体(プランジャ)と、弁体が当接することで管路を閉じ離間することで管路を開けるバルブシート部と、弁体をバルブシート部から離間する方向に付勢するスプリング(付勢手段)と、弁体をスプリングの付勢力に抗してバルブシート部の方向に移動させるための電磁力を発生させるソレノイドとを有する。弁体には、ゲートインバルブ25の上流側の圧力(マスタシリンダ圧P1に相当)と下流側の圧力(リザーバ29側の圧力であり、略ゼロとみなすことができる)との差圧による力が作用する。ソレノイドに通電する電流を制御することで、上記差圧を所望の値に制御することができる。すなわち、弁体の位置に応じてスプリングの付勢力は一意に決まる。このため、電流値を所定値に制御すれば、この電流値に応じた電磁力とスプリングの付勢力とが最終的に釣り合うような上記差圧による力が弁体に作用するようになるまで、弁体がストロークしてゲートインバルブ25を流れる流量を調節する。これにより、目標とする差圧(マスタシリンダ圧P1)が実現される。これをゲートインバルブ25の釣り合い制御といい、上記差圧を所定値に制御するためにソレノイドに通電する電流値を釣り合い電流値という。例えば実施例1,2では、ゲートアウトバルブ20が閉弁状態のときは、マスタシリンダ4へのブレーキ液供給量は、第2ポンプ33の吐出液量とゲートインバルブ25からリザーバ29側へのリーク液量との差に応じて決定される。リザーバ29の圧力がゼロのとき、ゲートインバルブ25の上下流の差圧はマスタシリンダ圧P1に相当する。このため、ゲートインバルブ25のソレノイドに通電する電流値を、上記差圧が目標マスタシリンダ圧となるような値(釣り合い電流値)に予め設定してその電磁力を制御すれば、ゲートインバルブ25の開度(上記リーク液量)が自動的に調整され、マスタシリンダ圧P1を目標マスタシリンダ圧に調圧することができる。実施例3のゲートインバルブ25についても同様である。実施例3のゲートアウトバルブ20や第2切替えバルブ41についても、上記釣り合い制御を適用することとしてもよい。
【0113】
実施例ではゲートインバルブ25等として比例電磁弁を用いたが、比例制御弁でなく例えばオンオフ弁を用いてもよく、この場合、例えばPWM制御により実効電流を制御することで中間開度を達成することができる。
【0114】
以下に、実施例から把握される、特許請求の範囲に記載した発明以外の技術的思想を列挙する。
[A6]
請求項5に記載のブレーキ制御装置において、
前記ゲートアウトバルブに並列に前記マスタシリンダからのブレーキ液の流れを許容するリリーフバルブを設け、前記リリーフバルブの開弁圧は前記回生制動装置により発生させる最大減速度相当のブレーキ液圧であることを特徴とするブレーキ制御装置。
【0115】
[A7]
[A6]に記載のブレーキ制御装置において、
前記第1ポンプを駆動する第1モータと、前記第2ポンプを駆動する第2モータを備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0116】
[A8]
[A7]に記載のブレーキ制御装置において、
前記第1ブレーキ回路であって前記ホイルシリンダと前記第1ポンプとの間に設けられたインバルブと、前記ホイルシリンダと前記リザーバを接続する第4ブレーキ回路に設けられたアウトバルブを備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0117】
[A9]
[A8]に記載のブレーキ制御装置において、
前記第1ポンプは吐出側と吸入側を連通する連通路を備え、前記連通路に切替えバルブを設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0118】
[A10]
[A8]に記載のブレーキ制御装置において、
ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部と、前記検出されたブレーキ操作状態と前記回生制動装置の作動状態に応じ前記モータ及び各バルブをコントロールする液圧制御部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0119】
[A11]
[A10]に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は、ドライバによるブレーキ操作中に前記第2ポンプを駆動しブレーキペダル踏力を創生するペダル踏力創生部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0120】
[A12]
[A10]に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は前記ブレーキ操作状態検出部によりドライバによるブレーキ操作がなされていると検出されている間、前記第1及び第2ポンプを駆動し続け、前記各バルブを制御して液圧制御を実行することを特徴とするブレーキ制御装置。
【0121】
[B1]
回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ制御装置であって、
ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと前記ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダを接続する第1ブレーキ回路と、
前記マスタシリンダ内のブレーキ液を吸入して前記第1ブレーキ回路に接続する第2ブレーキ回路を介して前記第1ブレーキ回路へブレーキ液を吐出し前記ホイルシリンダの液圧を増圧する第1ポンプと、
前記第1ブレーキ回路から分岐し、前記第1ポンプの吸入側に接続する第3ブレーキ回路と、
前記第3ブレーキ回路に設けられたリザーバと、
前記第3ブレーキ回路の前記第1ポンプの吸入側と前記リザーバとの間から分岐し、前記第3ブレーキ回路の前記第1ブレーキ回路との分岐点より下流側と前記リザーバとの間に接続する還流回路と、
前記還流回路に設けられ、前記リザーバに貯留したブレーキ液を吸入し、前記第1ブレーキ回路側へ還流させる第2ポンプと、を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0122】
[B2]
[B1]に記載のブレーキ制御装置において、
前記第1ブレーキ回路の前記第2ブレーキ回路との接続点と前記第3ブレーキ回路の分岐点との間に設けられたゲートアウトバルブと、前記第1ブレーキ回路であって前記ホイルシリンダと前記第1ポンプとの間に設けられたインバルブと、前記ホイルシリンダと前記リザーバを接続する第4ブレーキ回路に設けられたアウトバルブとを備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0123】
[B3]
[B1]に記載のブレーキ制御装置において、
ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部と、前記検出されたブレーキ操作状態と前記回生制動装置の作動状態に応じ前記各ポンプ及び各バルブをコントロールする液圧制御部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0124】
[B4]
[B3]に記載のブレーキ制御装置において、
前記第1ポンプを駆動する第1モータと、前記第2ポンプを駆動する第2モータを備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0125】
[B5]
[B4]に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は前記ブレーキ操作状態検出部によりドライバによるブレーキ操作がなされていると検出されている間、前記第1及び第2ポンプを駆動し続け、前記各バルブを制御して液圧制御を実行することを特徴とするブレーキ制御装置。
【0126】
[B6]
[B3]に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御部は、ドライバによるブレーキ操作中に前記第2ポンプを駆動しブレーキペダル踏力を創生するペダル踏力創生部を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0127】
[B7]
[B3]に記載のブレーキ制御装置において、
前記第1ポンプは吐出側と吸入側を連通する連通路を備え、前記連通路に切替えバルブを設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【0128】
[C1]
回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ制御装置であって、
ドライバのブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作状態検出部と、
ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと前記ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダを接続する第1ブレーキ回路と、
前記マスタシリンダ内のブレーキ液を吸入して前記第1ブレーキ回路に接続する第2ブレーキ回路を介して前記第1ブレーキ回路へブレーキ液を吐出し前記ホイルシリンダの液圧を増圧する第1ポンプと、
前記第1ブレーキ回路から分岐し、前記第1ポンプの吸入側に接続する第3ブレーキ回路と、
前記第3ブレーキ回路に設けられたリザーバと、
前記第3ブレーキ回路の前記第1ポンプの吸入側と前記リザーバとの間から分岐し、前記第3ブレーキ回路の前記第1ブレーキ回路との分岐点より下流側と前記リザーバとの間に接続する還流回路と、
前記還流回路に設けられ、前記リザーバに貯留したブレーキ液を吸入し、前記第1ブレーキ回路側へ還流させる第2ポンプと、
前記第1のポンプを駆動する第1のモータと、
前記第2のポンプを駆動する第2のモータと、
前記第1ブレーキ回路の前記第2ブレーキ回路との接続点と前記第3ブレーキ回路の分岐点の間に設けられたゲートアウトバルブと、
前記第1ブレーキ回路であって前記ホイルシリンダと前記第1ポンプとの間に設けられたインバルブと、
前記ホイルシリンダと前記リザーバを接続する第4ブレーキ回路に設けられたアウトバルブと、
前記検出されたブレーキ操作状態と前記回生制動装置の作動状態に応じ前記各ポンプ及び各バルブをコントロールする液圧制御部と、を備え、
各ポンプ、各バルブ及び各ブレーキ回路は車両の第1の所定輪群からなる第1の系統と第2の所定輪群からなる第2の系統にそれぞれ設けられる一方、
前記第1のモータ及び第2のモータは各系統に設けられた対応するポンプに共通に設けられていることを特徴とするブレーキ制御装置。
【符号の説明】
【0129】
4 マスタシリンダ
5 ホイルシリンダ
10 管路(連通路)
11 管路(第1ブレーキ回路)
12 管路(第1ブレーキ回路)
15 管路(第2ブレーキ回路)
16 管路(第3ブレーキ回路)
17 管路(第3ブレーキ回路)
18 管路(還流回路)
19 管路(第4ブレーキ回路)
20 ゲートアウトバルブ
21 リリーフバルブ
22 ソレノイドインバルブ(インバルブ)
25 ゲートインバルブ
27 切替えバルブ
28 ソレノイドアウトバルブ(アウトバルブ)
29 リザーバ
30 第1モータ
31 第2モータ
32 第1ポンプ(倍力装置)
33 第2ポンプ(還流装置)
70 液圧制御部
71 ペダル踏力創生部
8 ブレーキペダルストロークセンサ(ブレーキ操作状態検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回生制動装置を備えた車両に用いられるブレーキ制御装置であって、
ドライバのブレーキ操作によってブレーキ液圧を発生するマスタシリンダと前記ブレーキ液圧が作用するように構成されたホイルシリンダを接続する第1ブレーキ回路と、
前記マスタシリンダ内のブレーキ液を増圧し前記第1ブレーキ回路に接続する第2ブレーキ回路を介して前記ホイルシリンダへ送る倍力装置と、
前記第1ブレーキ回路から分岐し、前記倍力装置に接続する第3ブレーキ回路と、
前記第3ブレーキ回路に設けられたリザーバと、
前記リザーバに貯留したブレーキ液を前記第1ブレーキ回路側へ還流させる還流装置と、を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記第3ブレーキ回路の前記倍力装置と前記リザーバとの間から分岐し、前記第3ブレーキ回路の前記第1ブレーキ回路との分岐点より下流側と前記リザーバとの間に接続する還流回路を備え、
前記還流装置は前記還流回路に設けられていることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
前記第3ブレーキ回路の前記還流回路が接続する接続点と前記リザーバとの間にゲートインバルブを設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項4】
請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
前記第1ブレーキ回路の前記第2ブレーキ回路との接続点と前記第3ブレーキ回路の分岐点の間にゲートアウトバルブを設けたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載のブレーキ制御装置において、
前記倍力装置は第1ポンプを備え、前記還流装置は第2ポンプを備え、それぞれのポンプは独立して駆動可能に構成されていることを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公開番号】特開2013−60031(P2013−60031A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197854(P2011−197854)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】