説明

ブレーキ液圧制御装置

【課題】ブレーキ液圧制御装置において、耐久性を向上すること。
【解決手段】モータ12,13により駆動されるポンプ10,11から供給される液圧により各車輪に制動力を発生させるホイルシリンダとリザーバとの間に配置された出口弁を、常開弁である第1出口弁16’、17’と常閉弁である第2出口弁18’、19’を直列に配置した構成とし、第1出口弁16’、17’を比例制御弁とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のブレーキ液圧制御装置は、ブレーキペダルのストローク等を検出し、検出された結果に基づきアキュムレータに蓄圧された圧力により、制動力を得るようになっている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−526150号公報(第9頁、図15)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のブレーキ液圧制御装置にあっては、4輪すべてに対し、1つのアキュムレータの蓄圧力で制動をかけるため、アキュムレータには多くのブレーキ液を溜めておく必要がある。ここで、アキュムレータはダイヤフラム式やピストン式が多いが、ブレーキ液の流入、流出を頻繁に繰り返すと、ダイヤフラムやピストンシール部の疲労が促進され、アキュムレータの耐久性低下に繋がるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ブレーキ液圧制御装置において、耐久性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、モータにより駆動されるポンプから供給される液圧により各車輪に制動力を発生させるホイルシリンダとリザーバとの間に配置された出口弁を、常開弁である第1出口弁と常閉弁である第2出口弁を直列に配置した構成とし、第1出口弁を比例制御弁とした。
【発明の効果】
【0007】
よって、アキュムレータを廃止することができ、耐久性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明のブレーキ液圧制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0009】
まず、本実施例のブレーキ液圧制御装置を説明するにあたり、ポンプユニットの構成について説明する。尚、ポンプユニットのようにエンジンルームに搭載するものは、通常車両の上側あるいは下側から取付けを行う。その際、ポンプユニットの設置を容易にするためには、ポンプユニットと配管の接続作業をできる限り容易にし、車両上下方向の投影面積をできるだけ小さくするのが望ましい。そこで、ポンプユニットと配管の接続作業を容易にするためにギアポンプ10,11のポートの取付け位置をモータ軸より上にし、車両上下方向の投影面積を極力小さくするような設置方法をとることとした。
【0010】
図1は、実施例1におけるブレーキ液圧制御ユニットを、ポンプモータ側から見た斜視図である。ブレーキ液圧制御ユニットは、ポンプモータ12,13と、ハウジングHと、コントロールユニットC/Uから構成され、それぞれが層状に重なるように配置されている。更に、ポンプモータ12,13はハウジングHに対し、鉛直方向に重合して配置されている。
【0011】
図2は、実施例1のブレーキ液圧制御ユニットを、コントロールユニットC/U側から見た場合の斜視図である。尚、コントロールユニットC/Uは説明のため取り外された状態となっている。ブレーキ液圧制御ユニットはホイルシリンダの液圧を増減圧するために複数の制御弁を有する。ここで、遮断弁6',7'、入口弁(比例弁)14',15'、第1出口弁(比例弁)16',17'、第2出口弁18',19'、リリーフバルブ21'、チェックバルブ22'の各制御弁は各々ハウジングHに形成された取付孔(6,7,14,15,16,17,18,19,21,22)内に収容され、ギアポンプ10,11の駆動軸側から見て駆動軸に対して水平方向にオフセットした位置に配置されている。
【0012】
なお、ブレーキ液圧制御ユニットは取り付けられた制御弁によって、図5に示すような油圧回路を構成している。
【0013】
図5に基づき、作動について概略説明する。本回路はドライバのブレーキ操作に応じて油圧源であるギアポンプ10,11を駆動してホイルシリンダ内を加圧し制動力を得るブレーキバイワイヤ制御回路である。
【0014】
まず、ドライバの操作によりイグニションがオンされると、遮断弁6',7'が通電され遮断する。これによって、マスタシリンダM/CとホイルシリンダW/C間の連通が絶たれる。この状態で、ドライバがブレーキペダルを踏み込むと、ペダルストロークに応じた液圧が発生するようにコントロールユニットからポンプモータ12,13に対して駆動信号が発せられる。この信号に応じてポンプモータ12,13が回転し、ギアポンプ10,11が駆動され、ホイルシリンダW/Cに液圧を供給し、制動力を得る、増圧制御を行う。
【0015】
なお、この増圧時には第1出口弁16',17'または、第2出口弁18',19'のうち少なくとも一方は閉じられ、入口弁14',15'は開けられている。
【0016】
また、ホイルシリンダ内の液圧を減圧制御するには第1出口弁16',17'、第2出口弁18',19'を開けることでホイルシリンダ内の液圧をリザーバRに戻すようになっている。この様にして増圧、減圧制御を行うことができる。なお、リリーフバルブ21'は制御回路が必要液圧以上になったときに開弁するようになっている。また、チェックバルブ22'はホイルシリンダ内の液圧がギアポンプ側へ逆流することを防止している。また、液圧センサ23,24はホイルシリンダ内の液圧を検出するようになっている。また、アイソレーションバルブ20'は閉じた状態で左右の油圧回路を独立させることができる。これにより、急増圧時はアイソレーションバルブ20を閉じることにより、ギアポンプを2つ駆動(ホイルシリンダ1つにつき、ギアポンプを1つ)、緩増圧時はアイソレーションバルブ20を開くことにより、ギアポンプを1つ駆動(ホイルシリンダ2つにつき、ギアポンプを1つ)といった使い方も可能である。
【0017】
(制御弁のオフセット配置とポンプユニット上下方向投影面積の縮小)
ここで、各制御弁を、ギアポンプ10,11の駆動軸を挟んで従動ギアと対向する位置に配置する場合について説明する。まず、各制御弁を片側に寄せるのは、ポートに繋がる油路構成を簡略化することができる。また、制御弁取付け面を例えばハウジングHのポンプモータ12,13取付面の対向面にまとめることにより、ハウジングHを覆う取付けカバー(コントロールユニットC/Uを含む)も1つにまとめることができる。
【0018】
また、各制御弁は取付孔内に設置され、取付孔縁をカシメることでハウジングHに取り付けられる。カシメる際にはハウジングHに対して大きな力が作用するため、制御弁が仮に対向する面にも設置されていると、各制御弁をハウジングHに設置する際、対向面に設けられた制御弁を保護する必要があり、その為の設備が必要となる。よって、制御弁を一側面に集約し、一側のみからカシメて固定し、その後、他側にポンプモータを固定することで、ハウジングHに容易に取付けすることができる。
【0019】
更に、各制御弁をギアポンプ10,11の図中左側にまとめて設置し、更に、ギアポンプ10,11をポンプモータ駆動軸に対して制御弁の反対側に偏心して配置する。これにより、ギアポンプ10,11の左側にある程度のスペースを設けることが可能となり、ブレーキ液圧制御ユニットをコンパクトにしつつ強度を確保できる。
【0020】
図3は、実施例1の図5に示す油圧回路をハウジングHに形成した例である。
図3にあっては、油路を簡潔にしつつ、本願の車両上下方向の投影面積を極力小さくできる構成が求められる。
【0021】
そこで、車両の上下方向の投影面積が小さい上面に入力ポートであるマスタシリンダポート28,29と出力ポートであるホイルシリンダポート34,35の各ポートをまとめて配置することとした。これにより、ポンプユニットの中にエアが溜まりにくくなるという効果がある。また、制御弁をギアポンプ10,11に近接させつつ、左輪用と右輪用とにまとめて配置することとした。
【0022】
ここで、ギアポンプ10,11は鉛直方向に重合して配置しているため、左右制御弁も鉛直方向に重合して並べることになる。
【0023】
このとき、左輪側の入出力ポートを左側の制御弁に近いところに配置し、右輪側の入出力ポートを右制御弁から離れたところに配置することにより、バルブユニットV/Uの空いている箇所を有効に用いて簡潔な油路を構成することができる。
【0024】
(ポートの取付け位置)
マスタシリンダポート28,29、ホイルシリンダポート34,35及び吸入サクションポートSの各ポートは、少なくとも一方のギアポンプ10,11を駆動するモータ軸よりも上側に設けている。ポンプユニットと配管との接続作業を行うにあたり、作業者は通常車両の上側から作業を行う。このとき、接続箇所よりも下側にモータが配置されるように各ポートを配置することで、接続作業時のモータ部の影響を最小限に抑えることができる。
【0025】
図4は、実施例1におけるエンジンルーム内におけるブレーキ液圧制御ユニットの位置を表す図である。(a)は、ポンプモータ12,13が車両上下方向と垂直な方向に並んだ状態で配置された場合であるが、この場合、車両上下方向の投影面積(斜線部)が大きくなる。そこで、本実施例にあっては、(b)に示されるように、車両上下方向から見たときにポンプモータ12,13が鉛直方向に重合した状態になるように配置することで、車両上下方向の投影面積(斜線部)をより小さくできる。
【0026】
また、ポンプモータ12,13の配置については、ポンプモータ12,13の軸線方向が互いに同一方向になるように配置する。つまり、モータ軸の方向を揃えることで、ポンプモータ12,13による車両上下方向の投影面積拡大を一方向の拡大に抑えることが可能となり、投影面積を極力小さくできる。
【0027】
以上説明したように、本実施例のギアポンプ10,11及び制御弁によって各輪に設けられたホイルシリンダ圧を制御する液圧制御手段を備えたブレーキ液圧制御装置において、各ポートは、少なくとも一方のギアポンプ10,11を駆動するモータ軸よりも上側に設けている。また、ギアポンプ10,11の駆動軸側から見て駆動軸に対し水平方向にオフセットした位置に制御弁を配置したポンプユニットを車両に固定することとした。
【0028】
これにより、ポンプユニットと配管との接続作業を行うにあたり、作業者は通常車両の上側から作業を行う際に、接続箇所よりも下側にモータが配置されるように各ポートを配置することで、接続作業時のモータ部の影響を最小限に抑えることができる。また、エンジンルーム内での車両上下方向の投影面積を小さくすることが可能となり、ポンプユニットの小型化を図ることができる。
【0029】
また、車両上下方向から見たときにポンプモータ12,13が鉛直方向に重合した状態になるように配置することとした。これにより、車両上下方向の投影面積を、更に小さくすることができる。
【0030】
また、ポンプモータ12,13の軸線方向が互いに同一方向になるように配置することとした。よって、モータ軸の方向を揃えることで、ポンプモータ12,13による車両上下方向の投影面積拡大を一方向の拡大に抑えることが可能となり、投影面積を極力小さくすることができる。
【0031】
本発明のブレーキ液圧制御装置は、ギアポンプ10,11以外のポンプを用いたブレーキ液圧制御装置に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施例1におけるブレーキ液圧制御ユニットを、ポンプモータ側から見た斜視図である。
【図2】実施例1のブレーキ液圧制御ユニットを、コントロールユニットC/U側から見た場合の斜視図である。
【図3】実施例1のブレーキ液圧制御装置の油路をハウジングHに形成した例である。
【図4】実施例1におけるエンジンルーム内におけるブレーキ液圧制御ユニットの位置を表す図である。
【図5】実施例1のブレーキ液圧制御ユニットの油圧回路である。
【符号の説明】
【0033】
S 吸入サクションポート
6',7' 遮断弁
10,11 ギアポンプ
12,13 ポンプモータ
14',15' 入口弁(比例弁)
16',17' 第1出口弁(比例弁)
18',19' 第2出口弁
20' アイソレーションバルブ
21' リリーフバルブ
22' チェックバルブ
23,24 液圧センサ
28,29 マスタシリンダポート
34,35 ホイルシリンダポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動されるポンプから供給される液圧により、各車輪に制動力を発生させるホイルシリンダと、
前記ホイルシリンダとリザーバとの間に配置された出口弁と、
前記出口弁に対し、前記ホイルシリンダ圧を減圧及び増圧指令を出力する液圧制御手段と、
を備えたブレーキ制御装置において、
前記出口弁を、常開弁である第1出口弁と常閉弁である第2出口弁を直列に配置した構成とし、
前記第1出口弁を比例制御弁としたことを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記ポンプは、各車輪に設けられ、
前記液圧制御手段は、運転者のブレーキ操作に応じて、前記ポンプの駆動により前記ホイルシリンダにブレーキ液圧を供給するブレーキバイワイヤ加圧を実行することを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−162263(P2012−162263A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98412(P2012−98412)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【分割の表示】特願2010−286961(P2010−286961)の分割
【原出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】