説明

ブレーキ液圧制御装置

【課題】本発明は、振動吸収部材のブラケットへの組み付けを容易にすることのできるブレーキ液圧制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を制御してアンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットと、車体に取り付けられるブラケット41と、前記ブラケット41に形成された開口41dに組み付けられて前記液圧ユニットを支持する支持部42とを備えたブレーキ液圧制御装置70において、前記支持部42は、前記液圧ユニットに固定される固定部材49と、前記固定部材49と前記ブラケット41との間に介在する第1振動吸収部材51と第2振動吸収部材52を備え、前記第1振動吸収部材51は、前記開口41dに引っ掛かる第1爪部51bを有して、前記開口41dに組み付けられ、前記第2振動吸収部材52は、前記第1振動吸収部材51に組み付けられて、前記第1振動吸収部材51との間に前記ブラケット41を挟む第2振動吸収部材52とを含むようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットがブラケットを介して車体に取付けられるブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を液圧回路で制御してアンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットを、ブラケットを介して車体に取付けるブレーキ液圧制御装置が知られている。この種のブレーキ液圧制御装置では、ブラケットに形成された開口に組み付けられた支持部を介して、液圧ユニットをブラケット上で支持していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−285164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、支持部は、マウントラバーを介してブラケットに組み付けられており、このマウントラバーは、車体の振動等によりブラケットから脱落しないように、弾性力の強いゴムで形成されていた。このため、マウントラバーをブラケットの開口に組み付ける際に、大きな挿入力が必要とされ、作業工数が多く、また、挿入冶具が必要であった。
【0005】
本発明の目的は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、振動吸収部材のブラケットへの組み付けを容易にすることのできるブレーキ液圧制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を制御してアンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットと、車体に取り付けられるブラケットと、前記ブラケットに形成された開口に組み付けられて前記液圧ユニットを支持する支持部とを備えたブレーキ液圧制御装置において、前記支持部は、前記液圧ユニットに固定される固定部材と、前記固定部材と前記ブラケットとの間に介在する第1振動吸収部材及び第2振動吸収部材とを備え、前記第1振動吸収部材は、前記開口に引っ掛かる第1爪部を有して、前記開口に組み付けられ、前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材に組み付けられて、前記第1振動吸収部材との間に前記ブラケットを挟むことを特徴とする。
【0007】
この場合において、前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材の前記第1爪部よりも、前記開口から離れた位置で前記ブラケットに接していてもよい。前記第1振動吸収部材の前記第1爪部は、前記開口から前記第1爪部の先端までの距離が、前記先端から前記第2振動吸収部材の前記ブラケットに接する面の外縁までの距離よりも小さくてもよい。前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材に嵌め合わされるための嵌合部が形成されていてもよい。前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材に引っ掛かる第2爪部を有していてもよい。前記第1振動吸収部材は、前記第2振動吸収部材よりも前記開口を貫通する方向に肉厚に形成されていてもよい。前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材を貫通して前記第1振動吸収部材に取り付けられていてもよい。前記第2振動吸収部材の前記ブラケットに接する面の裏面、及び、前記裏面から立ち上がる側面に押し当てられて前記第2振動吸収部材の変形を抑える補助部材を備えていてもよい。前記第1振動吸収部材または前記第2振動吸収部材に形成された貫通孔内に組み付けられ、前記支持部の前記固定部材が貫通して配置されるスリーブを備えていてもよい。前記スリーブの外径は、前記貫通孔よりも大径に形成されていてもよい。前記スリーブは、外径がテーパ状に拡がって形成されていてもよい。前記液圧ユニットと前記振動吸収部材との間には板状の座面部が介在し、前記座面部は、前記スリーブと一体に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、振動吸収部材のブラケットへの組み付けを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキ用油圧回路を示す回路図である。
【図2】ブレーキ液圧制御装置を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態に係る支持部の断面図である。
【図4】第2実施形態に係る支持部の断面図である。
【図5】第3実施形態に係る支持部の断面図である。
【図6】第4実施形態に係る支持部の断面図である。
【図7】第5実施形態に係る支持部の断面図である。
【図8】第6実施形態に係る支持部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
[1]第1実施形態
図1は、第1実施形態に係るブレーキ用油圧回路を示す回路図である。なお、上記及び下記説明において上方及び下方とは、それぞれ、車両上方及び車両下方を指すものとする。
【0011】
図1に示すブレーキ用油圧回路100は、例えば、自動二輪車両に搭載されるものであり、周知のアンチロックブレーキ制御用の油圧回路に適用されている。ここで、アンチロックブレーキ制御(いわゆるABS制御)とは、例えば、車両制動時において、ブレーキ液圧を断続的に減少させて、車輪のロック状態を抑制するような制御を指す。なお、アンチロックブレーキ制御の作動原理、及び基本的な制御手法等については、当業者には既知であるため、詳しい説明を省略する。
【0012】
ブレーキ用油圧回路100は、前輪に対する制動力を発生させるための前輪用ディスクブレーキ装置(制動部)111の前輪用マスタシリンダ101、前輪用リザーバタンク102及び前輪用ホイールシリンダ103と、後輪に対する制動力を発生させるための後輪用ディスクブレーキ装置(制動部)116の後輪用マスタシリンダ104、後輪用リザーバタンク105及び後輪用ホイールシリンダ106と、液圧ユニット10とを備えている。
【0013】
液圧ユニット10は、前輪用及び後輪用マスタシリンダ101、104と、前輪用及び後輪用ホイールシリンダ103、106との間に設けられている。また、液圧ユニット10は、前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して、及び/又は、後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して、上述のアンチロックブレーキ制御を行う。
【0014】
前輪用マスタシリンダ101には、第1配管107を介して前輪用リザーバタンク102が接続されている。また、前輪用マスタシリンダ101には、第2配管108、液圧ユニット10及び第3配管109を介して、前輪用ホイールシリンダ103が接続されている。
【0015】
前輪用マスタシリンダ101は、例えば、車両のハンドルレバー110が操作されることにより作動すると、液圧ユニット10を介して、前輪用ホイールシリンダ103のブレーキ液圧を上昇させる。また、前輪用ホイールシリンダ103は、供給されるブレーキ液圧に応じて前輪用ディスクブレーキ装置111を作動させて前輪を制動させる。
【0016】
後輪用マスタシリンダ104には、第4配管112を介して後輪用リザーバタンク105が接続されている。また、後輪用マスタシリンダ104には、第5配管113、液圧ユニット10及び第6配管114を介して、後輪用ホイールシリンダ106が接続されている。
【0017】
後輪用マスタシリンダ104は、例えば、車両のフットペダル115が操作されることにより作動すると、液圧ユニット10を介して、後輪用ホイールシリンダ106のブレーキ液圧を上昇させる。また、後輪用ホイールシリンダ106は、供給されるブレーキ液圧に応じて後輪用ディスクブレーキ装置116を作動させて後輪を制動させる。
【0018】
次に、本実施形態に係る液圧ユニット10について、詳細に説明する。
液圧ユニット10は、前輪用EV電磁弁1、前輪用AV電磁弁2、後輪用EV電磁弁3、後輪用AV電磁弁4、前輪用ポンプ5、後輪用ポンプ6、モータ7および電子制御ユニットであるECU(不図示)を有している。
【0019】
前輪用EV及びAV電磁弁1、2と、後輪用EV及びAV電磁弁3、4とは、例えば、周知の2位置型電磁弁である。また、通常状態、すなわちアンチロックブレーキ制御が行われていない状態において、前輪用EV電磁弁1及び後輪用EV電磁弁3は、開状態となり、前輪用AV電磁弁2及び後輪用AV電磁弁4は、閉状態となる。また、前輪用ポンプ5及び後輪用ポンプ6は、モータ7により駆動される構成となっている。各電磁弁1、2、3、4及びモータ7は、ECUに接続されており、このECUからの制御信号に基づいて、駆動制御される。
【0020】
液圧ユニット10は、前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液が流動するための前輪用流路11と、後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液が流動するための後輪用流路21とを含んでいる。
【0021】
前輪用流路11において、第1流路11aは、一端側が第2配管108に接続されており、他端側が前輪用EV電磁弁1に接続されている。第2流路11bは、一端側が前輪用EV電磁弁1に接続されており、他端側が第3配管109に接続されている。第1流路11aには第3流路11cの一端側が接続されており、第3流路11cの他端側が前輪用ポンプ5の吐出側に接続されている。第4流路11dは、一端側が前輪用ポンプ5の吸引側に接続されており、他端側が前輪用AV電磁弁2に接続されている。前輪用ポンプ5は、第4流路11d側から第3流路11c側へ、すなわち、前輪用ホイールシリンダ103側から前輪用マスタシリンダ101側へ、ブレーキ液を流動させる。第4流路11dには、ブレーキ液の圧力を減圧するアキュムレータ9が接続されている。第2流路11bには第5流路11eの一端側が接続されており、第5流路11eの他端が前輪用AV電磁弁2に接続されている。第2流路11bには、前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を検出するための圧力センサ13が設けられている。
【0022】
一方、後輪用流路21において、上述した前輪用流路11と略同様に、第1流路21aは、一端側が第2配管113に接続されており、他端側が後輪用EV電磁弁3に接続されている。第2流路21bは、一端側が後輪用EV電磁弁3に接続されており、他端側が第3配管114に接続されている。第1流路21aには、第3流路21cの一端が接続されており、第3流路21cの他端が後輪用ポンプ6の吐出側に接続されている。第4流路21dは、一端側が後輪用ポンプ6の吸引側に接続されており、他端側が後輪用AV電磁弁4に接続されている。後輪用ポンプ6は、第4流路21d側から第3流路21c側へ、すなわち、後輪用ホイールシリンダ106側から後輪用マスタシリンダ104側へ、ブレーキ液を流動させる。第4流路21dには、ブレーキ液の圧力を減圧するアキュムレータ12が接続されている。第2流路21bには、第5流路21eの一端が接続されており、第5流路21eの他端が後輪用AV電磁弁4に接続されている。
【0023】
なお、前輪用及び後輪用EV電磁弁1、3には、チェック弁がそれぞれ併設されており、前輪用及び後輪用ポンプ5、6の吐出側には、絞り弁がそれぞれ設けられている。また、前輪用及び後輪用EV電磁弁1、3の前後と、前輪用及び後輪用ポンプ5、6の前と、前輪用及び後輪用AV電磁弁2、4の前とには、図示せぬフィルタが1つずつ設けられている。
【0024】
図2は、本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す斜視図である。
ブレーキ液圧制御装置70は、図2に示すように、液圧ユニット100と、ブラケット41、第1支持部42及び第2支持部43からなる液圧ユニット支持構造40とを備えている。液圧ユニット10は、液圧ユニット支持構造40に取付けられ、この液圧ユニット支持構造40を介して車体に取付けられる。第1支持部42及び第2支持部43は、ブラケット41に設けられている。第1支持部42は、液圧ユニット10のハウジング30のモータ取付面30aに略垂直な下面30bを支持する。一方、第2支持部43は、液圧ユニット10のモータ取付面30a及び下面30bの各々と略垂直に形成された側面30cを支持する。
【0025】
ブラケット41は、板形状に形成され、液圧ユニット10が取付けられたときに液圧ユニット10の下面30bと対向する板部41aを備えている。この板部41aは、略中央に第1支持部42が組み付けられるための開口41d(図3参照)が板部41aの厚さ方向に貫通して形成されている。
【0026】
ブラケット41は板部41aから直角に立ち上がる側壁部41bが形成されており、第2支持部43が組み付けられるための開口が側壁部41bの厚さ方向に貫通して形成されている。ブラケット41は、さらに、車体にブラケット41を固定するための第1固定孔41gが側壁部41bの厚さ方向に貫通して形成されている。
【0027】
また、ブラケット41は、板部41aから垂直に垂れ下がる取付部41cが形成されている。取付部41cは、車体にブラケットを固定するための固定孔41fが取付部部41cを厚さ方向に貫通して形成されている。ブレーキ液圧制御装置70は、ブラケット41の側壁部41b及び取付部41cがボルト等によって車体に設けられた車体側ブラケット60,61に固定されることにより車体に取付けられるようになっている。
【0028】
図3は、支持部を示す断面図である。以下、第1支持部42のみについて説明するが、第2支持部43も同様の構成を有している。
第1支持部42は、図3に示すように、マウントラバー50、スペーサ46、ワッシャ48及びボルト(固定部材)49を備えている。
【0029】
マウントラバー50は、弾力性を有するゴムで形成された振動吸収部材であり、軸心c方向の中央近傍がくびれた円筒形状に形成されている。マウントラバー50は、くびれた部分の外径がブラケット41の開口41dの内径と略同じ大きさに形成されている。これにより、マウントラバー50は、ブラケット41に形成された円形の開口41dに組み付けられたときに、スペーサ46、ワッシャ48及びボルト49とブラケット41との間に介在するようになっている。
【0030】
マウントラバー50は、共に同じ材質のゴムで形成された第1マウントラバー(第1振動吸収部材)51と第2マウントラバー(第2振動吸収部材)52とを備えている。
第1マウントラバー51は、円筒形状に形成された本体部分51aを有している。第1マウントラバー51は、外径が開口41dよりも大きく、内径が開口41dよりも小さくなるように形成されている。
【0031】
第1マウントラバー51は、ブラケット41の開口41dに引っ掛かる第1爪部51bを有している。第1爪部51bは、開口41dに第1マウントラバー51が組み付けられたときに、開口41dを通って板部41aの反対側に突出するとともに、第1マウントラバー51の軸心Cから拡がる方向に板部41aに沿って突出するように形成されている。この第1爪部51bは、軸心cを中心とした円周に沿って全周にわたって形成されている。
【0032】
第1爪部51bは、開口41dから第1爪部51bの先端までの距離aが、第1爪部51bの先端から第2マウントラバー52のブラケット41に接する面の外縁までの距離bよりも小さく形成されている。これにより、第1爪部51bの引っ掛かる量が小さいため、第1爪部41dは、作業者が第1マウントラバー51をブラケット41の開口41dに組み付けるときに、挿入冶具等を用いることなく、素手で容易に組み付けられる程度の弾力性になるように形成されている。
【0033】
第1マウントラバー51は、本体部分51aと第1爪部51bとでブラケット41を挟むように形成されており、一旦ブラケット41に組み付けられるとブラケット41から脱落しないようになっている。
【0034】
第1マウントラバー51は、第2マウントラバー52が嵌め合わされるための第1嵌合部51cが第1爪部51bの内側に形成されている。
第2マウントラバー52は、円筒形状に形成されている。第2マウントラバー52は、外径が開口41dよりも大きく、内径が開口41dよりも小さくなるように形成されている。
【0035】
第2マウントラバー52は、第1マウントラバー51の第1爪部51bよりも開口41dから離れた位置でブラケット41に接するように設けられている。
第2マウントラバー52は、第1マウントラバー51の第1嵌合部51cに嵌め合わされて位置決めするための第2嵌合部52aが形成されている。
【0036】
第2マウントラバー52は、第1マウントラバー51に組み付けられると、第1マウントラバー51との間にブラケット41の板部41aを挟むようになっている。このとき、第1マウントラバー51と第2マウントラバー52とは、接着剤で接着されて一体に設けられてもよい。
【0037】
スペーサ46は、図3に示すように、スリーブ46aと座面部46bと一体に設けられている。
スリーブ46aは、円柱形状に形成され、第1マウントラバー51及び第2マウントラバー52の貫通孔の内径よりも、外径が約1mm(ミリメートル)大径に形成されている。これにより、スリーブ46aは、第1マウントラバー51内に組み付けられると、第1マウントラバー51をブラケット41の板部41aに沿って押し広げるように膨らませるため、マウントラバー51がブラケット41から抜け難くなるようになっている。また、スリーブ46aは、軸心方向の長さも第1マウントラバー51及び第2マウントラバー52の貫通孔の軸心方向長さと略同じ長さに形成されている。
【0038】
座面部46bは、スリーブ46aの一端に板状に設けられ、スリーブ46aよりも大径に形成されている。これにより、座面部46bは、液圧ユニット支持構造40に組み付けられた状態で、第1マウントラバー51の端面と広範囲で接するようになっている。すなわち、座面部46bは、液圧ユニット10が液圧ユニット支持構造40に組み付けられたときに、液圧ユニット10と第1マウントラバー51との間に介在するようになっている。このとき、座面部46bは、マウントラバー50と接する面の裏面が、液圧ユニット10の下面30bに面接触により広範囲で接するようになっている。
【0039】
ワッシャ48は、第2マウントラバー52の嵌合部52aよりも大径に形成されて第2マウントラバー52の端面と広範囲で接するように形成されている。
ボルト49は、ねじ部がワッシャ48及びスペーサ46を貫通するが、ヘッド部がワッシャ48を貫通しないように形成されている。液圧ユニット支持構造40に液圧ユニット10が取付けられる際に、ボルト49は、ワッシャ48、スペーサ46の順に貫通して、液圧ユニット10の下面30bに形成されたねじ穴30gにねじ込まれて固定されるようになっている。液圧ユニット支持構造40に液圧ユニット10が取付けられたときに、液圧ユニット10は、下面30bがスペーサ46、ワッシャ48及びボルト49に固定され、弾力性を有するマウントラバー50を介してブラケット41に支持される。
【0040】
以下、作業員が第1支持部42をブラケット41に取り付けるとともに、第1支持部42に液圧ユニット10を取り付けるときの手順について説明する。
先ず、作業員は、ブラケット41の開口41dに第1マウントラバー51を素手で組み付ける。このとき、第1マウントラバー51の第1爪部51bは、開口41dに引っ掛かるため、一度開口41dに組み付けられた第1マウントラバー51は、容易に脱落しないようになっている。
【0041】
第1マウントラバー51を開口41dに組み付けると、作業員は、第2マウントラバー52を第1マウントラバー51に組み付けてマウントラバー50を組み立てる。
第2マウントラバー52を第1マウントラバー51に組み付けると、作業員は、スペーサ46をマウントラバー50に挿入するとともに、ワッシャ48が組み付けられたボルト49をスペーサ46に挿入する。
【0042】
スペーサ46にボルト49を挿入すると、作業員は、スペーサ46上に液圧ユニット10を支持しながら、ボルト49を液圧ユニット10にねじ込んで締め付け、第1支持部42に液圧ユニット10が取り付けられる。
【0043】
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、開口41dに引っ掛かる第1爪部51bを有して開口41dに組み付けられる第1マウントラバー51と、第1マウントラバーに組み付けられて、第1マウントラバー51との間にブラケット41を挟む第2マウントラバーとを備えている。これにより、第1マウントラバー51は、軽い力でブラケット41に組み付けられるとともに、第1爪部51bが引っ掛かってブラケット41から脱落しないようになっており、また、第2マウントラバー52は、軽い力で第1マウントラバー51に組み付けられることができる。このため、ブレーキ液圧制御装置70は、振動吸収部材のブラケット41への組み付けを容易にすることができる。
【0044】
[2]第2実施形態
図4は、第2実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す断面図である。第2実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、マウントラバー150の一部の構成のみが第1実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70とは異なっている。以下、第1実施形態と略同様の構成は同一符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0045】
本実施形態に係るマウントラバー150は、第1マウントラバー51の内径が、第2マウントラバー52の勘合部52aの外径と略同径に形成されている。すなわち、マウントラバー150がブラケット41に組み付けられたときに、第2マウントラバー52の勘合部52aとブラケット41との間に第1マウントラバー51が介在するようになっている。このため、スペーサ46のスリーブ46aは、第2マウントラバー52のみに接するようにマウントラバー150内に挿入されるようになっている。
【0046】
第2マウントラバー52は、第1マウントラバー51に組み付けられたときに、嵌合部52aが第1マウントラバー51の奥深くまで挿入されて座面部46b近傍まで到達するように形成されている。
【0047】
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、第2マウントラバー52の勘合部52aが第1マウントラバー51の奥深くまで挿入されるように形成されている。これにより、第2マウントラバー52を第1マウントラバー51に組み付けたときに、第2マウントラバー52が脱落し難くなっている。このため、第2マウントラバー52を第1マウントラバー51に組み付けたときに、第2マウントラバー52を支持する必要がなく、ボルト49等をマウントラバー150に挿入する作業を容易にすることができる。
【0048】
[3]第3実施形態
図5は、第3実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す断面図である。第3実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、マウントラバー250の一部の構成のみが第2実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70とは異なっている。以下、第2実施形態と略同様の構成は同一符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0049】
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、第2マウントラバー52が第1マウントラバー52に組み付けられたときに、第2マウントラバー52の勘合部52aが第1マウントラバー51を貫通するようになっている。
【0050】
第2マウントラバー52は、第1マウントラバー51に引っ掛かる第2爪部52bを有している。第2爪部52bは、第1マウントラバー51に第2マウントラバー52が組み付けられるときに、第1マウントラバー51の内側を通って配置され、軸心Cから拡がる方向に板部41aに沿って突出している。なお、第2爪部52bは、第2マウントラバー52の円筒形状の円周に沿って全周に形成されているが、円筒形状の円周に沿って部分的に形成されていてもよい。
【0051】
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、第2マウントラバー52が第2爪部52bを有している。これにより、第2マウントラバー52が第1マウントラバー52に組み付けられるときに、第2マウントラバー52の勘合部52aが第1マウントラバー51の奥深くまで挿入されると、第2爪部52bが拡がって第1マウントラバー51内に引っ掛かるようになっている。このため、第2マウントラバー52が第1マウントラバー51から脱落し難くすることができるとともに、第2マウントラバー52が第1マウントラバー51に適切に組み付けられたことを、作業者に分かり易くすることができる。
【0052】
[4]第4実施形態
図6は、第4実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す断面図である。第4実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、マウントラバー350の一部の構成のみが第1実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70とは異なっている。以下、第1実施形態と略同様の構成は同一符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0053】
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、第1マウントラバー51の勘合部51cが第2マウントラバー52側に突出するとともに、第2マウントラバー52の勘合部52aが第1マウントラバー51の勘合部51cを受けるように凹んでいる。これにより、第1マウントラバー51は、開口41dを貫通する軸心cの方向に第2マウントラバー52よりも肉厚に形成されており、第1マウントラバー51の強度を上げて高重量の液圧ユニット10を支持することができる。また、第1マウントラバー51と第2マウントラバー52との境界面がブラケット41の板部41aを通る面から離れているため、ブラケット41から付与されるせん断応力に対する強度を強くすることができる。
【0054】
[5]第5実施形態
図7は、第5実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す断面図である。第5実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、一部の構成のみが第4実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70とは異なっている。以下、第4実施形態と略同様の構成は同一符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0055】
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、第2マウントラバー52のブラケット41に接する面の裏面52c、及び、裏面52cから立ち上がる側面52dに押し当てられて第2マウントラバー52の変形を抑える補助部材53を備えている。この補助部材53は、圧延鋼板をプレスして成形されており、マウントラバー450とともにブラケット41に組み付けられたときに、ブラケット41と接触しないようにブラケット41との間に隙間が形成されている。補助部材53は、ワッシャ48との接触面が平面で形成されている。
【0056】
本実施形態に係るブレーキ液制御装置70は、補助部材53を備えている。これにより、ワッシャ48と一体のボルト49を締め付けることにより、マウントラバー450を全体的に締め付けることができる。このため、マウントラバー450の剛性が向上し、高重量の液圧ユニット10を支持することができる。
【0057】
[6]第6実施形態
図8は、第6実施形態に係るブレーキ液圧制御装置を示す断面図である。第6実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は、一部の構成のみが第4実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70とは異なっている。以下、第4実施形態と略同様の構成は同一符号を付して重複する説明を省略し、異なる部分を詳細に説明する。
【0058】
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70では、 スリーブ46aと座面部46bとが一体に形成されたスペーサ46は、スリーブ46aと座面部46bとの境界にテーパ部46cを有しており、スリーブ46aの外径が座面部46bの向きにテーパ状に拡がって形成されている。マウントラバー550がブラケット41に組み付けられた状態で、スペーサ46を通してボルト49を液圧ユニット10にねじ込むときに、スペーサ46はマウントラバー550を押し広げながらマウントラバー550内に挿入される。すなわち、スペーサ46は、第1マウントラバー51内に押し込まれるにしたがって、テーパ部46cが第1マウントラバー51の領域dを軸心cの方向、及び、軸心cに垂直な方向に押し広げるようになっている。
【0059】
本実施形態に係るブレーキ液制御装置70は、スペーサ46がテーパ状に拡がったテーパ部46cを有している。これにより、スペーサ46がマウントラバー550に挿入されたときに、テーパ部46cが第1マウントラバー51の領域dを押し広げてマウントラバー550を圧縮することができる。このため、ブレーキ液制御装置70は、マウントラバー550とブラケット41との接触している部分近傍の隙間が減り、また、マウントラバー550が圧縮されて振動及び衝撃に対する液圧ユニット10を保持する力を向上させることができる。
【0060】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。上記実施形態では、第1マウントラバー51と第2マウントラバー52との接触面は、平面で形成されているが、これに限定されず、山形状やジグザグ形状に形成することにより、互いに対してずれ難くなるようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、第1爪部51bは、軸心cを中心とした円周に沿って全周にわたって形成されているが、これに限定されず、円筒形状の円周に沿って部分的に形成されていてもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、スペーサ46は、スリーブ46aと座面部46bが一体に設けられているが、これに限定されず、これらスリーブと座面部とは別体に設けられていてもよい。
【0063】
さらにまた、上記実施形態では、モータサイクルに搭載されるブレーキ制御装置70を用いて説明しているが、これに限定されず、自動車等のその他の乗り物に搭載されるブレーキ制御装置であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
7 モータ
10 液圧ユニット
30 ハウジング
30a モータ取付面
30b 下面
30c 側面
40 液圧ユニット支持構造
41 ブラケット
41a 板部
41b 側壁部
41c 取付部
41d 開口
41f 固定孔
41g 固定孔
42 第1支持部
43 第2支持部
46 スペーサ
46a スリーブ
46b 座面部
48 ワッシャ
49 ボルト(固定部材)
50,150,250,350,450,550 マウントラバー
51 第1マウントラバー(第1振動吸収部材)
51a 本体部分
51b 第1爪部
51c 第1嵌合部
52 第2マウントラバー(第2振動吸収部材)
52a 第2嵌合部
60 車体側固定ブラケット
61 車体側固定ブラケット
70 ブレーキ液圧制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を制御してアンチロックブレーキ制御を行う液圧ユニットと、車体に取り付けられるブラケットと、前記ブラケットに形成された開口に組み付けられて前記液圧ユニットを支持する支持部とを備えたブレーキ液圧制御装置において、
前記支持部は、前記液圧ユニットに固定される固定部材と、前記固定部材と前記ブラケットとの間に介在する第1振動吸収部材及び第2振動吸収部材とを備え、
前記第1振動吸収部材は、前記開口に引っ掛かる第1爪部を有して、前記開口に組み付けられ、
前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材に組み付けられて、前記第1振動吸収部材との間に前記ブラケットを挟むことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材の前記第1爪部よりも、前記開口から離れた位置で前記ブラケットに接することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第1振動吸収部材の前記第1爪部は、前記開口から前記第1爪部の先端までの距離が、前記先端から前記第2振動吸収部材の前記ブラケットに接する面の外縁までの距離よりも小さいことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材に嵌め合わされるための嵌合部が形成されたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材に引っ掛かる第2爪部を有することを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第1振動吸収部材は、前記第2振動吸収部材よりも前記開口を貫通する方向に肉厚に形成されたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第2振動吸収部材は、前記第1振動吸収部材を貫通して前記第1振動吸収部材に取り付けられることを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第2振動吸収部材の前記ブラケットに接する面の裏面、及び、前記裏面から立ち上がる側面に押し当てられて前記第2振動吸収部材の変形を抑える補助部材を備えたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記第1振動吸収部材または前記第2振動吸収部材に形成された貫通孔内に組み付けられ、前記支持部の前記固定部材が貫通して配置されるスリーブを備えたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記スリーブの外径は、前記貫通孔よりも大径に形成されたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記スリーブは、外径がテーパ状に拡がって形成されたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載のブレーキ液圧制御装置において、
前記液圧ユニットと前記振動吸収部材との間には板状の座面部が介在し、前記座面部は、前記スリーブと一体に形成されたことを特徴とするブレーキ液圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−112054(P2013−112054A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257770(P2011−257770)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】