説明

ブレーキ装置

【課題】電動アクチュエータでピストンを駆動してマスタシリンダで液圧を発生させるブレーキ装置において、ピストンの制御原点を精度よく適切に設定する。
【解決手段】ブレーキペダルBの操作による入力ピストン32の移動に対して、電動モータ40によってプライマリピストン10を駆動してマスタシリンダ2のプライマリ室16に液圧を発生させ、ブレーキ液をブレーキキャリパ71に供給して制動を行なう。非制動時のプライマリピストン10の保持位置として、プライマリ室16がリザーバ5から遮断される第1制御原点と、プライマリ室16がリザーバ5に連通される第2制御原点との2つを設定し、これらを適宜切換えることにより、ブレーキの応答性を改善しつつ、ブレーキの引き摺りを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動に用いられるブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の制動に用いられる液圧式のブレーキ装置において、例えば特許文献1にブレーキ指示を出すためのブレーキペダルに連結された入力ピストンと電動モータによって駆動されるアシストピストンとの相対位置に基づき、電動モータの作動を制御してマスタシリンダでブレーキ液圧を発生させて制動力を制御するようにしたものが知られている。このブレーキ装置によれば、倍力制御、ブレーキアシスト制御、回生協調制御等の種々のブレーキ制御を実行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−239142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなブレーキ装置では、ブレーキの指示に対する車両制動の良好な応答性を得るため、電動モータによって駆動されるアシストピストンの非制動時の保持位置である制御原点を精度よく設定することが要求される。
【0005】
本発明は、ブレーキ指示に対する車両制動の良好な応答性を得られるようにしたブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係るブレーキ装置は、ブレーキ液を貯留するリザーバと、該リザーバに連通し、ピストンの前進によって前記リザーバとの連通を遮断して圧力室に液圧を発生させるマスタシリンダと、前記マスタシリンダのピストンを作動させる倍力装置と、前記圧力室で発生した液圧を検出する液圧検出手段と、前記倍力装置を制御する制御手段とを備え、
前記倍力装置は、ブレーキペダルの操作により移動する入力部材と、前記ピストンを駆動する電動アクチュエータと、前記ピストンの位置を検出するための位置検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記電動アクチュエータによって前記ピストンを前進させ、前記液圧検出手段によって検出した前記圧力室の液圧が所定の閾値に達したとき、前記位置検出手段が検出した前記ピストンの位置を基準位置として、前記ピストンが基準位置から所定量だけ後退して前記圧力室と前記リザーバとが連通する位置を第2制御原点とし、前記ピストンが第2制御原点から所定量だけ前進した位置を第1制御原点として設定することを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るブレーキ装置によれば、ブレーキ指示に対する車両制動の良好な応答性を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1実施形態に係るブレーキ装置の全体構成及びそのマスタシリンダ及び電動倍力装置の縦断面を示す図である。
【図2】図1に示すマスタシリンダのプライマリピストンの非制動時の位置を示す拡大図である。
【図3】図1のブレーキ装置のコントローラによる制御を示すフローチャートである。
【図4】図1のブレーキ装置の作動の一例を示すタイムチャートである。
【図5】第2実施形態に係るブレーキ装置のコントローラによる制御を示すフローチャートである。
【図6】第2実施形態に係るブレーキ装置の作動の一例を示すタイムチャートである。
【図7】第3実施形態に係るブレーキ装置のコントローラによる制御を示すフローチャートである。
【図8】第3実施形態に係るブレーキ装置の作動の一例を示すタイムチャートである。
【図9】第4実施形態に係るブレーキ装置のコントローラによる制御を示すフローチャートである。
【図10】第4実施形態に係るブレーキ装置の作動の一例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
第1実施形態について図1乃至図3及び図7を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係るブレーキ装置1は、タンデム型のマスタシリンダ2と、電動倍力装置(倍力装置)が組込まれたケース4とを備えている。マスタシリンダ2には、リザーバ5が接続されている。マスタシリンダ2は、略有底円筒状のシリンダ本体2Aを含み、その開口部側がケース4の前部にスタッドボルト6A及びナット6Bによって結合されている。ケース4の上部には、制御手段であるコントローラCが取付けられている。ケース4の後部には、平坦な取付座面7が形成され、取付座面7からマスタシリンダ2と同心の円筒状の案内部8が突出している。そして、ブレーキ装置1は、車両のエンジンルーム内に配置され、案内部8をエンジンルームと車室との隔壁Wに貫通させて車室内に延ばし、取付座面7を隔壁Wに当接させて取付座面7に設けられたスタッドボルト9を用いて固定される。
【0010】
マスタシリンダ2のシリンダ本体2A内には、開口側に、先端部がカップ状に形成されたピストンでる円筒状のプライマリピストン10が嵌装され、底部側にカップ状のセカンダリピストン11が嵌装されている。プライマリピストン10の後端部は、マスタシリンダ2の開口部からケース4内に突出して、案内部8付近まで延びている。プライマリピストン10及びセカンダリピストン11は、シリンダ本体2Aのシリンダボア12内に嵌合されたスリーブ13の両端側に配置された環状のガイド部材14、15によって摺動可能に案内されている。シリンダ本体2A内は、プライマリピストン10及びセカンダリピストン11によってプライマリ室16及びセカンダリ室17の2つの圧力室が形成されている。これらプライマリ室16及びセカンダリ室17には、液圧ポート18、19がそれぞれ設けられている。液圧ポート18、19は、2系統の液圧回路からなる液圧制御装置70を介して各車輪のブレーキキャリパ71に接続されている。ブレーキキャリパは、ブレーキ液の供給により制動力を発生して車輪を制動するブレーキ機構である。
【0011】
シリンダ本体2Aの側壁の上部側には、プライマリ室16及びセカンダリ室17をリザーバ5に接続するためのリザーバポート20、21が設けられている。シリンダ本体2Aのシリンダボア12と、プライマリピストン10及びセカンダリピストン11との間は、それぞれ2つのシール部材22A、22B及び23A、23Bによってシールされている。シール部材22A、22Bは、軸方向に沿ってリザーバポート20を挟むように配置されている。これらのうちシール部材22Aにより、プライマリピストン10が図1に示す非制動位置にあるときに、プライマリ室16がプライマリピストン10の側壁に設けられたポート24を介してリザーバポート20に連通する。プライマリピストン10が非制動位置から前進したとき、シール部材22Aによってプライマリ室16がリザーバポート20から遮断される。同様に、シール部材23A、23Bは、軸方向に沿ってリザーバポート21を挟むように配置されている。これらのうちシール部材23Aにより、セカンダリピストン11が図1に示す非制動位置にあるとき、セカンダリ室17がセカンダリピストン11の側壁に設けられたポート25を介してリザーバポート21に連通する。セカンダリピストン11が非制動位置から前進したとき、シール部材23Aによってセカンダリ室17がリザーバポート21から遮断される。
【0012】
プライマリ室16内のプライマリピストン10とセカンダリピストン11との間には、バネアセンブリ26が介装されている。また、セカンダリ室17内のマスタシリンダ2の底部とセカンダリピストン11との間には、圧縮コイルバネである戻しバネ27が介装されている。バネアセンブリ26は、圧縮コイルバネを伸縮可能な円筒状のリテーナ29によって所定の圧縮状態で保持し、そのバネ力に抗して圧縮可能としたものである。
【0013】
プライマリピストン10は、カップ状の先端部と円筒状の後部と、内部を軸方向に仕切る中間壁30とを備え、中間壁30には、案内ボア31が軸方向に沿って貫通されている。案内ボア31には、入力部材である段部32Aを有する段付形状の入力ピストン32の小径の先端部が摺動可能かつ液密的に挿入されており、入力ピストン32の先端部は、プライマリ室16内のバネアセンブリ26の円筒状のリテーナ29に挿入されている。
【0014】
入力ピストン32の後端部には、ケース4の円筒部8及びプライマリピストン10の後部に挿入された入力ロッド34の先端部が連結されている。入力ロッド34の後端側は、円筒部8から外部に延出され、その端部には、ブレーキ指示を出すために操作されるブレーキペダルBが連結される。プライマリピストン10の後端部には、フランジ状のバネ受35が取付けられている。プライマリピストン10は、ケース4の前壁側とバネ受35との間に介装された圧縮コイルバネである戻しバネ36によって後退方向に付勢されている。入力ピストン32は、プライマリピストン10の中間壁30との間及びバネ受35との間にそれぞれ介装されたバネ部材であるバネ37、38によって、図1に示す中立位置に弾性的に保持されている。入力ロッド34の後退位置は、ケース4の円筒部8の後端部に設けられたストッパ39によって規定されている。
【0015】
ケース4内には、電動アクチュエータである電動モータ40及び電動モータ40の回転を直線運動に変換してプライマリピストン10に推力を付与するボールネジ機構41を含むアクチュエータ3が設けられている。電動モータ40は、ケース4に固定されたステータ42と、ステータ42に対向させてベアリング43、44によってケース4に回転可能に支持された中空のロータ45とを備えている。ボールネジ機構41は、ロータ45の内周部に固定された回転部材であるナット部材46と、ナット部材46及びケース4の円筒部8内に挿入されて軸方向に沿って移動可能で、かつ、軸回りに回転しないように支持された直動部材である中空のネジ軸47と、これらの対向面に形成されたネジ溝間に装填された複数のボール48とを備えている。ボールネジ機構41は、ナット部材46の回転により、ネジ溝に沿ってボール48が転動することにより、ネジ軸47が軸方向に移動するようになっている。なお、ボールネジ機構41は、ナット部材46とネジ軸47との間で、回転及び直線運動を相互に変換可能となっている。
【0016】
なお、電動モータ40とボールネジ機構41との間に、遊星歯車機構、差動減速機構等の公知の減速機構を介装して、電動モータ40の回転を減速してボールネジ機構41に伝達するようにしてもよい。
【0017】
ボールネジ機構41のネジ軸47は、ケース4の前壁側との間に介装された圧縮テーパコイルバネである戻しバネ49によって後退方向に付勢され、ケース4の円筒部8に設けられたストッパ39によって後退位置が規制されている。ネジ軸47内には、プライマリピストン10の後端部が挿入され、ネジ軸47の内周部に形成された段部50にバネ受35が当接してプライマリピストン10の後退位置が規制されている。これにより、プライマリピストン10は、ネジ軸47と共に前進し、また、段部50から離間して単独で前進することができる。そして、図1に示すように、ストッパ39に当接したネジ軸47の段部50によってプライマリピストン10の後退位置が規定され、後退位置にあるプライマリピストン10及びバネアセンブリ26の最大長によって、セカンダリピストン11の後退位置が規定されている。ネジ軸47の段部50は、ナット部材46の軸方向の長さの範囲に配置されている。
【0018】
ブレーキ装置1には、ブレーキペダルBや、入力ピストン32、入力ロッド34の変位を検出するためのストロークセンサ(図示せず)、電動モータ40のロータ45の回転位置を検出する回転位置センサ60(すなわち、ロータ45に連結されたプライマリピストン10の位置を検出するための検出手段)、プライマリ、セカンダリ室16、17の液圧を検出する液圧検出手段である液圧センサ72、電動モータ40の通電電流を検出する電流センサ及びこれらを含む各種センサが設けられている。コントローラCは、CPU及びRAM等を含むマイクロプロセッサベースの電子制御装置であり、これらの各種センサから検出信号に基づき、電動モータ40の回転を制御する。
【0019】
また、液圧制御装置70は、マスタシリンダ2のプライマリ室16及びセカンダリ室17との接続を遮断するカットオフバルブ73A、73B、液圧ポンプ74、アキュムレータ、切換弁等を備えている。そして、マスタシリンダ2からの液圧を各車輪のブレーキキャリパ71に供給する通常制動モード、各車輪のブレーキキャリパ71の液圧を減圧する減圧モード、各車輪のブレーキキャリパ71の液圧を保持する保持モード、減圧されたブレーキキャリパ71の液圧を復帰させる増圧モード、及び、マスタシリンダ2の液圧にかかわらず、液圧ポンプ74の作動によって各車輪のブレーキキャリパ71に液圧を供給する加圧モードの各制御を実行することができる。
【0020】
そして、これらの作動モードの制御を車両状態に応じたブレーキ指示を適宜実行することにより、各種ブレーキ制御を行なうことができる。例えば、制動時に接地荷重等に応じて各車輪に適切に制動力を配分する制動力配分制御、制動時に各車輪の制動力を自動的に調整して車輪のロックを防止するアンチロックブレーキ制御、走行中の車輪の横滑りを検知して、ブレーキペダルの操作量にかかわらず各車輪に適宜自動的に制動力を付与することにより、アンダーステア及びオーバステアを抑制して車両の挙動を安定させる車両安定性制御、坂道(特に上り坂)において制動状態を保持して発進を補助する坂道発進補助制御、発進時等において車輪の空転を防止するトラクション制御、先行車両に対して一定の車間を保持する車両追従制御、走行車線を保持する車線逸脱回避制御、障害物との衝突を回避する障害物回避制御等を実行することができる。
【0021】
次にブレーキ装置1の作動について説明する。ブレーキペダルBを操作して入力ロッド34を介して入力ピストン32を前進させると、入力ピストン32の変位をストロークセンサによって検出し、コントローラCによって入力ピストン32の変位に基づいて電動モータ40の作動を制御し、ボールネジ機構41を介してプライマリピストン10を前進させて入力ピストン32の変位に追従させる。これにより、プライマリ室16に液圧が発生し、また、この液圧がセカンダリピストン11を介してセカンダリ室17に伝達される。このようにして、マスタシリンダ2で発生したブレーキ液圧は、液圧ポート18、19から液圧供給装置70を介して各車輪のブレーキキャリパ71に供給されて制動力を発生させる。
【0022】
また、ブレーキペダルBの操作を解除すると、入力ピストン32、プライマリピストン10及びセカンダリピストン11が後退して、プライマリ及びセカンダリ室16、17が減圧し、制動が解除される。なお、プライマリピストン10とセカンダリピストン11とは、略同様に作動するので、以下、プライマリピストン10についてのみ説明することとする。
【0023】
制動時に、プライマリ室16の液圧の一部を入力ピストン32(プライマリピストン10よりも受圧面積が小さい)によって受圧し、その反力を、入力ロッド34を介してブレーキペダルBにフィードバックする。これにより、プライマリピストン10と入力ピストン32との受圧面積比に応じた所定の倍力比をもって所望の制動力を発生させることができる。また、入力ピストン32に対するプライマリピストン10の追従位置を適宜調整して、バネ37、38のバネ力を入力ピストン32に作用させて、入力ロッド34に対する反力を加減することにより、倍力制御、ブレーキアシスト制御、回生協調制御等のブレーキ制御時に適したブレーキペダル反力を得ることができる。
【0024】
次に、プライマリピストン10の非制動時の保持位置となる制御原点の設定について、図2を参照して説明する。なお、図2において、プライマリピストン10の位置は、ポート24の中心位置Oとシール部材23Aの後端部位置23Bとが一致する位置からのストロークによって表している。
【0025】
図2(A)に示すように、制動開始時には、プライマリピストン10が、その側壁のポート24とリザーバポート20との連通がシール部材23Aによって遮断される液圧発生位置LPまで前進していることにより、プライマリ室16がリザーバ5から遮断されてプライマリ室16の昇圧がすぐに開始される。
【0026】
また、図2(B)に示すように、プライマリピストン10は、非制動時には、プライマリピストン10が、その側壁のポート24とリザーバポート20とが連通する液圧解放位置LO(LO<LP)まで後退することより、プライマリ室16がリザーバ5に連通してプライマリ室16の液圧が解放される。これにより、プライマリ室16の液圧を解放してブレーキの引き摺りを防止し、また、プライマリ室16とリザーバ5との間でブレーキ液の授受を可能にしてブレーキパッドの摩耗補償及びブレーキ液の体積補償を可能にする。
【0027】
ここで、従来は、液圧解放位置LOに基づき、各部の寸法精度のばらつきを考慮してプライマリピストン10の最大後退位置を機構的(メカ的)に設定し、その位置をプライマリピストン10の非制動位置(制御原点)として、プライマリピスト10の位置を制御するようにするものがあった。しかしながら、このようにした場合、制動開始時に、プライマリピストン10がプライマリ室16の液圧が立ち上がる液圧発生位置LPに前進するまでのストローク(無効ストローク)が大きくなり、ブレーキの操作フィーリングの低下の原因となる。特に、各部の寸法精度のばらつきによって液圧解放位置LOとプライマリピストン10の最大後退位置との距離が大きい場合、その分だけ無効ストロークも大きくなり、ブレーキの操作フィーリングの観点で問題となる。
【0028】
そこで、本実施形態では、プライマリピストン10の非制動時の位置(制御原点)として、液圧発生位置LPに対応する第1制御原点S1と、液圧解放位置LOに対応する第2制御原点L2との2つを設定する。ここで、プライマリピストン10が液圧発生位置LPに対応する第1制御原点L1にあるとき、プライマリ室16とリザーバ5との間の流路は、完全に遮断されてもよいが、プライマリピストン10の前進によってプライマリ室16に液圧が発生する程度に絞られてもよい。一方、プライマリピストン10が第2制御原点L2にあるとき、プライマリ室16とリザーバ5との間の流路は、少なくともプライマリ室16の液圧をリザーバ5に解放できる程度に連通する必要がある。
【0029】
これにより、非制動時に、プライマリピストン10を液圧発生位置LPに対応する第1制御原点L1で保持することにより、無効ストロークが減少してプライマリピストン10の前進に対してプライマリ室16の液圧が迅速に立ち上がるので、ブレーキペダル操作に対する車両制動の応答性が高まる。また、本実施形態のように、入力ピストン32の先端部がプライマリ室16内に臨んでいる構造のものにおいては、ブレーキ操作フィーリングが改善される。また、プライマリピストン10を液圧解放位置LOに対応する第2制御原点S2で保持することにより、プライマリ室16の液圧がリザーバ5に確実に解放されるので、ブレーキの引き摺りを防止することができる。また、ブレーキパッドの摩耗補償及びブレーキ液の体積補償を円滑に行なうことができる。これらの第1及び第2制御原点L1、L2を車両状態に応じて適宜切換えてプライマリピストン10の位置制御を実行する。
【0030】
コントローラCは、次のようにしてプライマリピストン10の第1及び第2制御原点L1、L2を設定する。
電動モータ40によってプライマリピストン10を一定の速度で前進させ、液圧センサ72によってプライマリ室16の液圧を監視する。プライマリ室16の液圧が所定の閾値(例えば0.01〜0.05MPa程度)に達するまでプライマリピストン10が前進したとき、そのときのプライマリピストン10の位置(液圧発生判断位置)を基準位置LBとする。このとき、液圧制御ユニット70のカットオフバルブ73A、73Bによって液圧ポート18、19を遮断してプライマリ室16を密閉しておくとよい。これにより、プライマリ室16の液圧剛性が高まるので、液圧センサ72による液圧検出の感度を高めることができるとともに、短時間に液圧検出が可能になる。そして、基準位置LBから所定の距離αを減じた位置を第1制御原点L1とし、基準位置LBから距離αよりも大きい所定の距離βを減じた位置を第2制御原点L2とする。
第1制御原点L1=基準位置LB−α
第2制御原点L2=基準位置LB−β
ただし、β>α
【0031】
このとき、第1制御原点L1を決定する距離αは、プライマリピストン10が第1制御原点L1にあるとき、プライマリピストン10の側壁のポート24とリザーバポート20との連通がシール部材23Aによって確実に遮断される、あるいは、上述のようにプライマリ室16に液圧が発生する程度絞られるように、ポート24、シール部材23A、及びシール部材23Aが格納されるシール溝の各部の寸法及び寸法公差を考慮して決定する。また、第2制御原点L2を決定する距離βは、プライマリピストン10が第2制御原点にあるとき、プライマリ室16がプライマリピストン10の側壁のポート10を介して適当な流路面積をもってリザーバ5に開放されるように、ポート24、シール部材23A、及びシール部材23Aが格納されるシール溝の各部の寸法及び寸法公差を考慮して決定する。なお、距離αを負の値として、第1制御原点L1を基準位置LBの前方に設定してもよい。この場合、更に無効ストロークを小さくしてブレーキペダル操作に対する車両制動の応答性を高めることができる。
【0032】
したがって、プライマリピストン10が基準位置LBから所定量βだけ後退してプライマリ室16とリザーバ5とが連通する位置を第2制御原点L2とし、プライマリピストン10が第2制御原点L2から所定量(すなわちβ−α)だけ前進した位置を第1制御原点L1として設定することができる。
【0033】
コントローラCは、このようにして設定した第1及び第2制御原点L1、L2を用いてプライマリピストン10の位置を次のように制御する。ブレーキ操作が行われていない非制動状態おいて、プライマリピストン10を所定時間だけ第1制御原点L1で保持した後、第2制御原点L2まで後退させて所定時間保持し、その後、所定の時間間隔で第1、第2制御原点L1、L2で交互に保持する。これにより、制動開始時には、無効ストロークを減少させて応答性を高めつつ、非制動時にはプライマリ室16の液圧をリザーバ5に解放してブレーキの引き摺りを防止することができる。
【0034】
コントローラCによる制御フローについて図3のフローチャート及び図4のタイムチャートを参照して説明する。ステップS1で、電動モータ40を作動させてプライマリピストン10を前進させると(時刻t1)、プライマリ室16の液圧が上昇する(時刻t2)。ステップS2で、液圧センサ72によってプライマリ室16の液圧を監視し、液圧が発生したか否かを判断するための所定の閾値に達したか否かを判定する。プライマリ室16の液圧が所定の閾値に達したとき(時刻t3)、ステップS3に進み、ステップS3で電動モータ40を停止し(時刻t3)、ステップS4に進む。
【0035】
ステップS4では、電動モータ40の回転位置を回転位置センサ60によって検出し、プライマリ室16の液圧が所定の閾値に達したときの電動モータ40の回転位置を基準位置(すなわちプライマリピストン10の基準位置LB)として記憶する。そして、プライマリピストン10の基準位置SBに基づき、上述のようにして第1及び第2制御原点L1、L2(L1=LB−α、L2=LB−β)を演算して記憶し、ステップS5に進む。
【0036】
ステップS5では、電動モータ40を逆回転させてプライマリピストン10の後退を開始し(時刻t4)、ステップS6で、電動モータ40の回転位置(すなわち、プライマリピストン10の位置)を回転位置センサ60によって検出し、プライマリピストン10が第1制御原点L1に達したか否かを判定する。プライマリピストン10が第1制御原点L1に達したとき、ステップS7に進む、ステップS7で電動モータ40を停止し(時刻t5)、ステップS8に進む。
【0037】
ステップS8では、ブレーキペダルBの操作を検知するブレーキスイッチBS等に基づき、ブレーキ操作中か否かを判定する。操作中である場合には、ステップS9に進み、ステップS9で上述の通常のブレーキ制御を実行してブレーキペダルBの操作量に応じてマスタシリンダ2によって液圧を発生させ、各車輪のブレーキキャリパ71に供給して制動力を発生させる。ステップS8で、ブレーキ操作中でないと判定された場合には、ステップS10に進む。
【0038】
ステップS10では、第1制御原点L1の保持時間についてのタイマのカウントを開始し、プライマリピストン10の第1制御原点L1での保持時間が所定時間に達したか否かを判定する。保持時間が所定時間に達していない場合には、ステップS11に進み、ステップS11でプライマリピストン10を第1制御原点L1に保持してステップS8に戻る。ステップS10でプライマリピストン10の第1制御原点L1での保持時間が所定時間に達したと判定した場合(時刻t6)、ステップS12に進む。
【0039】
ステップS12では、プライマリピストン10を第2制御原点L2まで後退させて(時刻t7)、タイマのカウント開始し、プライマリピストン10を第2制御原点L2に保持する処理を実行してステップS8に戻る。そして、これが繰り返され、ステップS12でプライマリピストン10の第2制御原点L2での保持時間が所定時間に達したと判定した場合(時刻t8)、第1制御原点L1の保持を開始する処理をした後、ステップS8に進む。詳細には、図7のフローチャートのステップS214〜S216の処理を行うようにする。これにより、プライマリピストン10を所定の時間間隔で第1、第2制御原点L1、L2で交互に保持する(時刻t6〜t10の処理を一周期として繰り返す)。このようにして、プライマリピストン10の第1、第2制御原点L1、L2を切換える。
【0040】
次に、本発明の第2実施形態について、主に図5及び図6を参照して説明する。なお、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。本実施形態では、コントローラCは、車両のアクセルペダルの操作をアクセルペダルセンサAS等を用いて監視し、ブレーキ操作が行われていない非制動状態おいて、アクセルペダルが踏込まれていない場合には、プライマリピストン10を液圧発生位置LPに対応する第1制御原点L1で保持し、アクセルペダルが踏込まれている場合には、プライマリピストン10を液圧解放位置LOに対応する第2制御原点L2で保持する。
【0041】
非制動状態において、アクセルペダルが踏込まれていない場合には、通常、車両は減速中であり、運転者によるブレーキ操作開始前であることが予測され、このとき、プライマリピストン10は、第1制御原点L1で保持されているので、ブレーキペダルBの操作に応答して迅速にプライマリ室16の液圧を立ち上げて制動力を発生させることができ、ブレーキの操作に対する車両制動の応答性を向上させることができる。一方、アクセルペダルが踏込まれている場合には、通常、車両は、加速中又は定常走行中であり、運転者によるブレーキ操作は予測されない。この場合、プライマリピストン10は、第2制御原点L2で保持されているので、プライマリ室16の液圧を確実にリザーバ5に解放することができ、ブレーキの引き摺りを防止して車両の低燃費に寄与すると共に、ブレーキパッドの摩耗補償及びブレーキ液の体積補償を行うことができる。
【0042】
コントローラCによる制御フローについて図5のフローチャート及び図6のタイムチャートを参照して説明する。
ステップS101〜S109(時刻t1〜t5)までの処理は、上記第1実施形態のステップS1〜S9の処理と同様であるから、ここでは説明を省略する。
ステップS110では、アクセルペダルセンサASにより、アクセルペダルが踏込まれているか否かを判定する。アクセルペダルが踏込まれていない場合には(時刻t7)、ステップS111に進み、プライマリピストン10を第1制御原点S1で保持して、ステップS108に戻る。アクセルペダルが踏込まれている場合には(時刻t6)、ステップS112に進み、プライマリピストン10を第2制御原点S102で保持して、ステップS108に戻る。このようにして、プライマリピストン10の第1、第2制御原点L1、L2を切換える。
【0043】
次に、本発明の第3実施形態について、主に図7及び図8を参照して説明する。なお、上記第1実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。本実施形態では、コントローラCは、ブレーキペダルBを操作していない非制動状態において、ブレーキ操作終了直後には、プライマリピストン10を所定時間だけ液圧解放位置LOに対応する第2制御原点L2で保持し、これ以外の場合には、プライマリピストン10を液圧発生位置LPに対応する第1制御原点L1で保持する。これにより、制動時の摩擦熱の影響を受け易い制動直後において、プライマリ室16の液圧をリザーバ5に解放するので、摩擦熱に対するブレーキ液の体積補償を確実に行うことができ、ブレーキの引き摺りを防止することができる。また、液圧回路が比較的安定している通常状態では、プライマリピストン10を第1制御原点L1に保持することにより、ブレーキペダルBの操作に応答して迅速にプライマリ室16の液圧を立ち上げて制動力を発生させることができ、ブレーキの操作フィーリング向上させることができる。
【0044】
コントローラCによる制御フローについて図7のフローチャート及び図8のタイムチャートを参照して説明する。ステップS201〜S209(時刻t1〜t5)までの処理は、上記第1実施形態のステップS1〜S9と同様であるから、ここでは説明を省略する。ステップS210では、第2制御原点保持フラグの有無を判定し、第2制御原点保持フラグがない場合には、ステップS211に進み、第2制御原点保持フラグが有る場合には、ステップS213に進む。ステップS211では、ブレーキスイッチBSのオン−オフ等に基づき、ブレーキ操作終了直後か否かを判定する。ブレーキ操作終了直後である場合には(ブレーキペダルBを時刻t6で踏込んだ後、時刻t7で解放)、ステップS212に進み、ブレーキ操作終了直後でない場合には、ステップS217に進む。ステップS212では、第2制御原点保持フラグを設定してステップS213に進む。
【0045】
ステップS213では、プライマリピストン14を第2制御原点L2で保持して(時刻T7)、ステップS214に進む。ステップS214では、第2制御原点L2の保持時間についてのタイマのカウントを開始して、ステップS215に進む。ステップS215では、タイマのカウントに基づき、第2制御原点L2の保持時間が所定の時間Tに達したか否かを判定し、保持時間が所定時間Tに達した場合には、ステップS216で第2制御原点フラグをクリアし、第2制御原点L2の保持時間のタイマのカウントをリセットしてステップS208に戻り、保持時間が所定時間Tに達していない場合には、直接、ステップS208に戻る。ステップS217では、プライマリピストン10を第1制御原点L1で保持して(時刻t8)、ステップS208に戻る。このようにして、プライマリピストン10の第1、第2制御原点L1、L2を切換える。
【0046】
次に、本発明の第4実施形態について、図2、図9及び図10を参照して説明する。なお、上記第2実施形態に対して、同様の部分には同じ符号を用いて、異なる部分についてのみ詳細に説明する。本実施形態では、上述の第1及び第2制御原点L1、L2に加えて、更に、第3制御原点L3を設定する。第3制御原点L3は、図2(C)に示すように、プライマリピストン10が図2(B)の液圧解除位置L0及び第2制御原点L2から更に後退した位置であり、プライマリ室16がポート24を介して、より大きな流路面積をもってリザーバ5に連通する。そして、プライマリピストン10が第3制御原点L3まで後退することにより、車両安定性制御の実行等のため、液圧供給装置70の液圧ポンプ74が作動して各車輪のブレーキキャリパ71にブレーキ液を供給する際、必要な量のブレーキ液がリザーバ5からプライマリ室16に供給できるようにする。これにより、液圧供給装置70からブレーキキャリパ71への迅速なブレーキ液の供給が可能になり、液圧供給装置70による加圧及び増圧制御を効果的に行なうことができる。
【0047】
コントローラCによる制御フローについて図9のフローチャート及び図10のタイムチャートを参照して説明する。本実施形態では、上記第2実施形態の制御フロー(図4)に対して、ステップS313及びステップS314の処理を追加したものである。ステップS313は、上記第第2実施形態の制御フローのステップS308とステップS310との間に挿入されている。ステップS313では、車両安定性制御の実行等により液圧供給装置70の液圧ポンプ74が作動中か否かを判定する。液圧ポンプ74が作動していない場合には、ステップS310に進み、作動中である場合には、ステップS314に進む。ステップS314では、プライマリピストン10を第3制御原点L3に保持して、ステップS308に戻る。このようにして、プライマリピストン10の第1、第2及び第3制御原点L1、L2及びL3を切換える。
【0048】
図10のタイムチャートを参照して、時刻t1〜t5までは、上記第2実施形態のステップS101〜S108と同様の処理(ステップS301〜S308)を実行する。時刻t6で液圧供給装置70の液圧ポンプ74が作動して(ステップS313でイエス)、プライマリピストン10が第3制御原点S3に移動する(ステップS314)。時刻t7で液圧供給装置70の液圧ポンプ74が停止し(ステップS313でノー)、プライマリピストン10が第1制御原点L1に移動する(ステップS310でノー)。時刻t8でアクセルペダルが踏込まれて、プライマリピストン10が第2制御原点L2に移動する(ステップS310でイエス)。ここで、時刻t1〜t8を通してブレーキペダルは解放されている。
【0049】
なお、上記第1乃至第4実施形態においては、一例として、2系統の液圧ポート18、19を有するタンデム型のマスタシリンダ2を備えたブレーキ装置について説明しているが、本発明は、これに限らず、セカンダリピストン11及びセカンダリ室17を省略してシングル型のマスタシリンダとしたブレーキ装置にも適用することができる。また、上記第1乃至第4実施形態において、ボールネジ機構41のほか、他の公知の回転−直動変換機構を用いることもできる。また、電動モータ40として、ボールネジ機構41及びプライマリピストン10と同軸のものを用いて説明しているが、これに限らず、ボールネジ機構41やプライマリピストン10の軸と異なる軸に電動モータを設けるようにしても良い。さらに、電動モータ40とボールネジ機構41とから電動アクチュエータを構成しているが、電動アクチュエータとしては、他の形式のもの、例えば、液圧ポンプとシリンダとを含む液圧式の電動アクチュエータや、気圧式の差圧動力筐体と電磁ソレノイドバルブとを含む気圧式の電動アクチュエータを用いても良い。
【0050】
さらに、上記第1乃至第4実施形態では、入力ピストン32及びプライマリピストン10が共にマスタシリンダ2に挿入されている構成(プライマリピストン10の案内ボア31に入力ピストン32が摺動可能かつ液密的に挿入されている構成)を用いている。しかし、必ずしも入力ピストンがマスタシリンダに挿入される必要はなく、アクチュエータによって駆動されるピストンがマスタシリンダに挿入されていればよい。したがって、例えば、ブレーキペダルの踏力がマスタシリンダに直接伝達されない、いわゆるバイワイヤ式の構成に上記実施形態の制御を適用することもできる。
【0051】
上記実施形態のブレーキ装置は、ブレーキ液を貯留するリザーバと、該リザーバに連通し、ピストンの前進によって前記リザーバとの連通を遮断して圧力室に液圧を発生させるマスタシリンダと、前記マスタシリンダのピストンを作動させる倍力装置と、前記圧力室で発生した液圧を検出する液圧検出手段と、前記倍力装置を制御する制御手段とを備え、前記倍力装置は、ブレーキペダルの操作により移動する入力部材と、前記ピストンを駆動する電動アクチュエータと、前記ピストンの位置を検出するための位置検出手段とを備え、前記制御手段は、前記電動アクチュエータによって前記ピストンを前進させ、前記液圧検出手段によって検出した前記圧力室の液圧が所定の閾値に達したとき、前記位置検出手段が検出した前記ピストンの位置を基準位置として、前記ピストンが基準位置から所定量だけ後退して前記圧力室と前記リザーバとが連通する位置を第2制御原点とし、前記ピストンが第2制御原点から所定量だけ前進した位置を第1制御原点として設定するようにしている。このようなブレーキ装置によれば、ブレーキペダル操作や車両姿勢制御装置によるブレーキ指示に対する車両制動の良好な応答性を得られる。
【0052】
上記実施形態のブレーキ装置は、前記ピストンが第1制御原点にあるとき、第2制御原点にあるときよりも前記圧力室と前記リザーバとの連通が絞られるようにしている。さらに、上記実施形態のブレーキ装置は、前記ピストンが第1制御原点にあるとき、前記圧力室と前記リザーバとの連通が遮断されるようにしてもよい。このようなブレーキ装置によれば、ブレーキペダル操作や車両姿勢制御装置によるブレーキ指示に対する車両制動のさらに良好な応答性を得られる。
【0053】
上記実施形態のブレーキ装置は、前記制御手段が、非制動時の前記ピストンの保持位置を第1制御原点と第2制御原点とで切換えるようにしている。さらに、上記実施形態のブレーキ装置は、前記制御手段が、非制動時の前記ピストンの保持位置を所定時間毎に第1制御原点と第2制御原点とで交互に切換えるようにしている。このようなブレーキ装置によれば、ブレーキペダル操作や車両姿勢制御装置によるブレーキ指示の前に、ピストンの保持位置を第1制御原点に切換えておくことにより、車両制動の良好な応答性を得られ、また、第2制御原点に切り換えることにより、圧力室の液圧をリザーバに解放してブレーキの引き摺りを防止することができる。また、ピストンの保持位置を所定時間毎に第1制御原点と第2制御原点とに切り替えるので、より確実に上記効果を奏し得る。
【0054】
上記実施形態のブレーキ装置は、前記制御手段が、ブレーキペダルの操作開始前に前記ピストンを第1制御原点に移動させるようにしている。このようなブレーキ装置によれば、ブレーキペダル操作開始の前に、ピストンの保持位置を第1制御原点に移動させておくことにより、ブレーキペダル操作に対して車両制動の良好な応答性を得られる。
【0055】
上記実施形態のブレーキ装置は、前記制御手段が、アクセルペダルが操作されていないとき、非制動時の前記ピストンの保持位置を第1制御原点に切換えるようにしている。このようなブレーキ装置によれば、アクセルペダルが操作されていないことによって、ブレーキペダル操作開始前であることを予測して、ピストンの保持位置を第1制御原点に移動させておくことにより、ブレーキペダル操作に対して車両制動の良好な応答性を得られる。
【0056】
上記実施形態のブレーキ装置は、前記制御手段が、前記ブレーキペダルの操作が解放されたとき、前記ピストンを第2制御原点に移動させるようにしている。このようなブレーキ装置によれば、ブレーキペダルの操作の解放によってホイールシリンダから戻ってくるブレーキ液を含めて、マスタシリンダの圧力室の液圧をリザーバに解放してブレーキの引き摺りを防止することができる。
【0057】
上記実施形態のブレーキ装置は、前記制御手段が、アクセルペダルが操作されたとき、非制動時の前記ピストンの保持位置を第2制御原点に切換えるようにしている。このようなブレーキ装置によれば、アクセルペダルが操作されたときに、マスタシリンダの圧力室の液圧をリザーバに解放してブレーキの引き摺りを防止することができる。
【0058】
上記第4の実施形態のブレーキ装置は、ブレーキ液の供給により制動力を発生するブレーキ機構と、前記圧力室との間に介装され、液圧ポンプによって前記圧力室から前記ブレーキ機構にブレーキ液を供給する液圧供給装置を含み、前記制御装置が、非制動時に、前記液圧ポンプが作動したとき、前記ピストンを前記第2制御原点よりも後退した位置で前記圧力室と前記リザーバとの流路が拡大する第3制御原点に保持するようにしている。このようなブレーキ装置によれば、液圧供給装置からブレーキキャリパへの迅速なブレーキ液の供給が可能になり、液圧供給装置による加圧及び増圧制御を効果的に行なうことができる。
【符号の説明】
【0059】
1 ブレーキ装置、2 マスタシリンダ、5 リザーバ、10 プライマリピストン(ピストン)、16 プライマリ室(圧力室)、32 入力ピストン(入力部材)、40 電動モータ(電動アクチュエータ)、72 液圧センサ(液圧検出手段)、B ブレーキペダル、C コントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液を貯留するリザーバと、該リザーバに連通し、ピストンの前進によって前記リザーバとの連通を遮断して圧力室に液圧を発生させるマスタシリンダと、前記マスタシリンダのピストンを作動させる倍力装置と、前記圧力室で発生した液圧を検出する液圧検出手段と、前記倍力装置を制御する制御手段とを備え、
前記倍力装置は、ブレーキペダルの操作により移動する入力部材と、前記ピストンを駆動する電動アクチュエータと、前記ピストンの位置を検出するための位置検出手段とを備え、
前記制御手段は、前記電動アクチュエータによって前記ピストンを前進させ、前記液圧検出手段によって検出した前記圧力室の液圧が所定の閾値に達したとき、前記位置検出手段が検出した前記ピストンの位置を基準位置として、前記ピストンが基準位置から所定量だけ後退して前記圧力室と前記リザーバとが連通する位置を第2制御原点とし、前記ピストンが第2制御原点から所定量だけ前進した位置を第1制御原点として設定することを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ装置において、前記ピストンが第1制御原点にあるとき、第2制御原点にあるときよりも前記圧力室と前記リザーバとの連通が絞られることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ装置において、前記ピストンが第1制御原点にあるとき、前記圧力室と前記リザーバとの連通が遮断されることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のブレーキ装置において、前記制御手段は、非制動時の前記ピストンの保持位置を第1制御原点と第2制御原点とで切換えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のブレーキ装置において、前記制御手段は、非制動時の前記ピストンの保持位置を所定時間毎に第1制御原点と第2制御原点とで交互に切換えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項6】
請求項4に記載のブレーキ装置において、前記制御手段は、ブレーキペダルの操作開始前に前記ピストンを第1制御原点に移動させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項7】
請求項4に記載のブレーキ装置において、前記制御手段は、アクセルペダルが操作されていないとき、非制動時の前記ピストンの保持位置を第1制御原点に切換えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項8】
請求項4に記載のブレーキ装置において、前記制御手段は、前記ブレーキペダルの操作が解放されたとき、前記ピストンを第2制御原点に移動させることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項9】
請求項4に記載のブレーキ装置において、前記制御手段は、アクセルペダルが操作されたとき、非制動時の前記ピストンの保持位置を第2制御原点に切換えることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のブレーキ装置において、更に、ブレーキ液の供給により制動力を発生するブレーキ機構と、前記圧力室との間に介装され、液圧ポンプによって前記圧力室から前記ブレーキ機構にブレーキ液を供給する液圧供給装置を含み、
前記制御装置は、非制動時に、前記液圧ポンプが作動したとき、前記ピストンを前記第2制御原点よりも後退した位置で前記圧力室と前記リザーバとの流路が拡大する第3制御原点に保持することを特徴とするブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−71737(P2012−71737A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218921(P2010−218921)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】