説明

ブレースの接合構造及びブレース固定金物

【課題】施工容易なブレースの接合構造及びブレース固定金物を提供する。
【解決手段】ブレースを躯体に固定するブレースと躯体の接合構造は、躯体6に固定され、躯体6に対しブレース3を任意の角度で固定することができるブレース固定金物2と、端部に長さ調整機構を設けたブレース3とからなる。ブレース接合金物2は、短冊状の基端部2aとそのそれぞれの両端に接続する半円弧型のブレース接続部2bから構成され平面視半円形をしている。ブレース接続部2bには、ブレース3の端部を挿入固定するためのスリット2dが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレースの接合構造及びブレース固定金物に関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示すように柱や梁などで四辺形に組み立てられた軸組7の対角線上に軸組みの水平方向の耐力の向上を図るためブレース8が組み込まれている。
【0003】
従来のブレース構造では、ブレース8の長さを調整するためのターンバックル9がブレース本体に組み込まれるとともに、ブレース8の端部には躯体側と取りあうためのブレースシート10が溶接等により固定されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−136564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のブレース構造では、ブレース本体の端部にブレースシート10を溶接で接合する必要があるとともに、ブレースを接合する柱や梁などの躯体側にもブレースを接合するためのプレート11を溶接などにより固定しておく必要がある。
【0006】
また、ブレース8の長さ調整のためにブレース本体にターンバックル9が組み込まれているため、ブレース8を軸組へ取り付ける際には、始めにターンバックル9を調整してブレース本体の全長を取り付ける躯体の長さにおおよそ調整する。そして、ブレース端部のブレースシート10に設けられた孔と躯体に固定されたプレート11に設けられた孔とをボルトにより接合する。最後にターンバックル9を再度調整しブレース8に張力を加える。この一連の工程のためブレースの施工は非常に手間のかかる作業となる。特にターンバックル9は断面視角型の鋼管からなり、回転させてブレース長さを調整することは施工の点においても非常にやっかいである。
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑み、施工容易なブレースの接合構造及びブレース固定金物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、ブレースを躯体に固定するブレースと躯体の接合構造であって、躯体に固定され、躯体に対しブレースを任意の角度で固定することができるブレース固定金物と端部に長さ調整機構を設けたブレースとからなることを特徴とするブレースの接合構造、またはブレースを躯体に固定するブレース固定金物であって、ブレースを躯体に対し任意の角度で固定することができることを特徴とするブレース固定金物により解決される。
【0009】
本ブレースの接合構造及びブレース固定金物では、ブレース固定金物を躯体側に固定するため、ブレース接合金物を躯体側に溶接する必要がない。また、ブレースの端部に長さ調整機構を設けているため、長さ調整のためのターンバックルが不要でありブレース取り付け後にターンバックルを調整してブレースの長さを調整する必要がない。さらに上記の効果と相まって、既存の鉄骨構造物に対し耐震補強などの目的で後付けでブレースを容易に取り付けることが可能となる。
【0010】
また、ブレース固定金物はブレースを躯体に対して任意の角度で固定させることができるため、柱や梁で四辺形に組み立てられたさまざまな形状の躯体であってもブレースを固定することができる。
【0011】
また、本ブレース接合構造において、ブレース接合金物が平面視半円形をしているとよい。ブレース接合金物が平面視半円形をしていることで、ブレース固定金物はブレースを躯体に対して多段的に任意の角度に調整し固定させることができる。
【0012】
また、本ブレース接合構造において、ブレース接合金物が平面視4分の1円形をしているとよい。ブレース接合金物が平面視4分の1円形をしていることで、ブレース固定金物はブレースを躯体に対して多段的に任意の角度に調整し固定させることができる。特に平面視4分の1円形の接合金物を用いることで、四周4部材を接合して構成されるパネルフレームに本ブレース構造を適用する場合、ブレースの引付け点とパネルフレームの節点の位置を近接させ構造上効果的な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は以上のとおりであるから、施工容易なブレースの接合構造及びブレース固定金物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示す本発明の第1の実施形態であるブレース接合構造1において、2はブレース接合金物、3はブレース、4は締結部材としてのナット、5は締結部材、6は躯体としての梁である。
【0016】
ブレース接合金物2は、図2に示すように短冊状の基端部2aとそのそれぞれの両端に接続する半円弧型のブレース接続部2bから構成され平面視半円形をしている。基端部2aの中央部には、ボルト5で躯体側に固定するための孔2cが設けられている。一方、ブレース接続部2bには、ブレース3の端部を挿入固定するためのスリット2dが設けられている。
【0017】
本接合構造1で用いられるブレース3は、図3(ロ)に示すように両端部に螺子3aがきられた棒状部材からなる。
【0018】
ブレース接合構造1において、上下のフランジ6a、6aとこれらフランジをつなぐウェブ6bを備えたH型鋼からなる梁6のウェブ6bにブレース接合金物固定用の孔6dが設けられ、ここにボルト接合金物2の固定用孔2cを介してブレース接合金物2が梁6にボルトとナットからなる締結部材5で固定されている。
【0019】
躯体としての梁6に固定されたブレース固定金物2のスリット2dにブレース3を挿通し、ブレース接続部2bの両側から挟みこむようにナット4で固定する。図示しないが、ブレース3のもう一方の端部も同様に梁に固定されたブレース固定金物2のスリット2dにナット4で固定する。躯体に取り付けたブレースの効果を得るためにはブレースの長さを調整しブレースに張力を与えることが必要であるが、本ブレース接合構造1では、ブレース端部の螺子3aへのナット4の固定位置を調整するだけでブレースの長さが調整されるため、ブレースの張力を容易に調整することができる。
【0020】
本ブレースの接合構造及びブレース固定金物では、ブレース固定金物を躯体側に固定するため、ブレース接合金物を躯体側に溶接する必要がない。また、ブレースの端部に長さ調整機構を設けているため、長さ調整のためのターンバックルが不要でありブレース取り付け後にターンバックルを調整してブレースの長さを調整する必要がない。
【0021】
図4、5に本発明の第2の実施形態であって、平面視4分の1円形のブレース接合金物を外壁パネルフレームのブレースに適用した例である。本実施形態でブレース接合構造は、鋼製のフレームにより四周の枠体が構成された外壁パネルフレームに適用される。なお、符号は先に示した実施例と同じ符号を付している。本発明のブレース構造を適用することにより、ブレース固定金物を固定するための孔を設けるだけでよく、躯体にブレース固定用のブレースシートを溶接し固定する必要がなく、ブレースの取り付けを容易に行うことができる。特に耐震補強など建物の完成後にブレースの取り付けを行う場合などにおいては現場での溶接作業が必要でなく、簡易な方法でパネルフレームにブレースを取り付けることができる。また、四周4部材を接合して構成されるパネルフレームに本ブレース構造において、平面視4分の1円形の接合金物を用いることで、ブレースの引付け点とパネルフレームの節点の位置を近接させ構造上効果的な構成とすることができる。
【0022】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、ブレース固定金物を躯体の一方の側に取り付けた場合について示したが、図6に示すように躯体の両方の側に取り付けてもよく、その場合、躯体の両側へのブレース固定金物の取り付けを共通の締結部材で一度に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態のブレース構造を示す図であって、(イ)は(ロ)のA-A’線断面である正面図、(ロ)は側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態のブレース接合金物を示す斜視図である。
【図3】本ブレース構造に使用されるブレースであって、(イ)は要部拡大一部断面側面図、(ロ)はブレース全体を示す側面図である。
【図4】本発明の第2実施形態のブレース構造を示す一部断面正面図である。
【図5】本発明の第2実施形態のブレース構造を適用した外壁パネルフレームを示す正面図である。
【図6】本部ブレース構造の第3の実施例を示す図であって、躯体側の両側にブレース接合金物を取り付けた状態を示す一部断面正面図である。
【図7】従来のブレース構造を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・ブレース接合構造
2・・・ブレース接合金物
3・・・ブレース
4・・・ナット(締結部材)
5・・・ボルトとナット(締結部材)
6・・・梁(躯体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレースを躯体に固定するブレースと躯体の接合構造であって、
躯体に固定され、躯体に対しブレースを任意の角度で固定することができるブレース固定金物と、
端部に長さ調整機構を設けたブレース、
とからなることを特徴とするブレースの接合構造。
【請求項2】
前記ブレース固定金物が平面視半円形をしている請求項1に記載の接合構造。
【請求項3】
前記ブレース固定金物が平面視4分の1円形をしている請求項1に記載の接合構造。
【請求項4】
ブレースを躯体に固定するブレース固定金物であって、ブレースを躯体に対し任意の角度で固定することができることを特徴とするブレース固定金物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−91785(P2009−91785A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262563(P2007−262563)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】