説明

ブレードの再生方法及び装置

【課題】金属板の端部にゴム状弾性体を形成してなるブレードからゴム状弾性体を、金属板の損傷と変形を軽微に剥離し、効率良い金属板の再生方法及び再生装置を提供する。
【解決手段】金属板の再生方法は、金属板の端部にゴム状弾性体を形成してなるブレードから、ゴム状弾性体を剥離する金属板の再生方法であって、少なくとも、前記金属板と前記ゴム状弾性体の接合部位を前記金属板の両面から選択的に高周波誘導加熱し、前記ゴム状弾性体を剥離する加熱・剥離工程と、前記金属板のゴム状弾性体の剥離面の残留物を拭き取る清掃工程と、前記ゴム状弾性体が剥離された金属板を冷却する冷却工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属板の端部にゴム状弾性体を形成してなるブレードの金属板からゴム状弾性体を剥離する金属板の再生方法及び再生装置に関する。詳しくは電子写真装置の画像形成部に使用するクリーニングブレードや現像ブレード等のブレードの金属板からゴム状弾性体を剥離する、金属板の再生方法及び再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、廃棄物の削減の要求が高まっており、金属とゴム又は樹脂等からなる複合体においても、個別部品に剥離又は分解し、耐久性のある部品は廃棄せず再利用する試みがなされている。
【0003】
プリンターや複写機等に使用される電子写真画像形成装置においては、感光ドラムに残留するトナーを除去するクリーニングブレード、現像ローラ外周に摩擦によりトナーに電荷を与え均一の厚みで付着させる現像ブレード等、金属板とゴム状弾性体からなるブレードが使用されている。クリーニングブレードのゴム状弾性体は感光ドラムに、現像ブレードのゴム状弾性体は現像ローラに、各々当接した状態でローラが回転する。このためブレードのゴム状弾性体は摺擦摩耗を生じ、摩耗が甚だしい場合、電子写真装置の画像形成がうまくいかず画像不良が発生し、各ブレードの耐久寿命となる。
【0004】
一般に、感光ドラム、トナー、各種ローラ及び前述のブレード等からなる電子写真装置の画像形成プロセス用部品をカートリッジ化した製品は、搭載するトナーの消費量、感光ドラム、各種ローラ及び前述のブレードの耐久寿命から、印字枚数は数千〜数万枚である。しかし、印字枚数使用後のブレードの金属板には損傷は発生せず、再生・再利用の要望が強まっていた。
【0005】
このようなブレードの金属板とゴム状弾性体の分離装置には、高周波誘導加熱装置を使用して、磁性体である金属板を加熱し、金属板とゴム状弾性体を固定している接着剤を溶融することで、ゴム状弾性体を金属板から剥離する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−208943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような金属板の再生を効率的に行うためには、ゴム状弾性体の誘導加熱手段以外にも、金属板の清掃手段が必要であり、加熱から清掃までを効率的に行う装置が必要であった。また、ゴム状弾性体を剥離した部分は、清掃工程を経てもわずかにべとつきがあり、そのまま外部に搬送するとゴミが付着したり、再生した金属板を重ね合わせる際に金属板同士が付着して作業効率が悪くなると言う問題もあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決する金属板の再生方法及び再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明に係る金属板の再生方法は、
金属板の端部にゴム状弾性体を形成してなるブレードから、ゴム状弾性体を剥離する金属板の再生方法であって、
少なくとも、
前記金属板と前記ゴム状弾性体の接合部位を前記金属板の両面から選択的に高周波誘導加熱して前記ゴム状弾性体を剥離する加熱・剥離工程と、
前記金属板のゴム状弾性体の剥離面の残留物を冷却前に拭き取る清掃工程と、
前記清掃工程を経た金属板を冷却する冷却工程と、
を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る金属板の再生装置は、
金属板の端部にゴム状弾性体を形成してなるブレードから、ゴム状弾性体を剥離する金属板の再生装置であって、
少なくとも、
前記ブレードから前記ゴム状弾性体を剥離するため、前記金属板と前記ゴム状弾性体の接合部位を前記金属板の表裏両面から選択的に高周波誘導加熱する加熱手段と、
前記金属板のゴム状弾性体を剥離した面の残留物を拭き取る清掃手段と、
前記残留物が拭き取られた金属板を冷却する冷却手段と、
前記金属板を、前記加熱手段、前記清掃手段、前記冷却手段へ順に搬送する搬送手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、効率よくブレードの金属板からゴム状弾性体を剥離し、金属板を再利用可能に再生できる。また、本発明によれば、表面の損傷の少ない金属板が再生され、特に接合部位以外の部分の損傷が極めて軽微な状態で再生できる。さらに、メッキ又は塗装等で被覆した金属板についても、表面の損傷が軽微な状態で再生できる。また、本発明に係る方法により再生した金属板は、新しい金属板と遜色なく、再生ブレードの部品として再利用できる。特に本発明では、ゴム状弾性体を剥離した金属板を取り出す前に、清掃工程及び冷却工程を有することで、ゴミ等の付着を防止でき、後工程で金属板を重ね合わせて搬送する際にも金属板同士が付着して作業効率が低下することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。
【0012】
図2は再生対象品のブレード1を示す斜視図であり、金属板5及びゴム状弾性体7から構成されている。該ブレードは、図3の断面図に示すように、金属板5の端部にゴム状弾性体7が接合部位2を介して形成されている。接合部位2は金属板5とゴム状弾性体7を接合する接着剤(不図示)からなる。なお、接着剤を塗布する接合部位2としては、図2のようにゴム状弾性体と接触する部分全体に塗布しても良いし、金属板の厚み方向の裏表両面だけに塗布しても良い。そして、再生されたブレードの金属板5を図4の斜視図に示した。図4において、剥離面3は、ゴム状弾性体7が接合されていた金属板の表面部分に相当する。また、剥離面3cは前記剥離面3のうち金属板の厚み方向の表裏両面に相当する面であり、剥離面3dは前記剥離面3のうち剥離面3c以外の側面(側面数としては3面)である。
【0013】
また、再生対象品のブレード1における金属板5としては、高周波誘導加熱可能な金属であればよい。特に限定されるものではないが、例えば、鋼板に亜鉛メッキ・亜鉛ニッケルメッキ等のメッキ処理、リン酸系皮膜、クロメート皮膜又は各種塗装等の方法で表面処理を施したもの、ステンレス、銅合金又はアルミニウム合金等を挙げることができる。ゴム状弾性体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン、ブチル、フッ素、エピクロルヒドリン、シリコーンその他の各種熱硬化性ゴム、ウレタン、スチレン、オレフィン系等の熱可塑性エラストマー又はこれらの組合せ等を挙げることができる。また、接着剤としては、例えば、ウレタンやシランカップリング剤等のプライマー類、ホットメルト系接着剤、熱硬化性接着剤、気乾性接着剤、嫌気性接着剤又は吸湿性接着剤等から選択されるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
それでは、図1を参照しつつ、本発明の金属板の再生方法を説明する。図1は本発明に係る金属板の再生方法を表す工程図であり、再生対象のブレード1は、加熱・剥離工程、清掃工程、冷却工程の順に処理されて、再生金属板として再生される。
【0015】
ブレード1は、まず、加熱・剥離工程において、誘導コイルを用いて金属板5を高周波で誘導加熱する。誘導コイルに高周波電流を通電すると、高周波磁束が発生し、これにより金属板5の表面に渦電流が発生する。この渦電流により金属板5の表面が発熱する。この高周波誘導加熱による昇温は、誘導コイルと金属板5との距離に反比例するため、金属板5において誘導コイルとの距離が近い部分が最も発熱する。したがって、接合部位近傍の金属板が最も加熱されるように誘導コイルを配置すれば、接合部位2が選択的に加熱されることになる。これにより、前記高周波誘導加熱によって、接合部位2を熱破壊することができる。なお、当然、ゴム状弾性体にも熱が加わるため、熱破壊される部分にはゴム状弾性体も含まれる。
【0016】
通常、前記高周波誘導加熱により接合部位2は熱破壊(又は溶融)するので、ゴム状弾性体7は金属板5から自重により剥離し、自然落下する。しかし、ゴム状弾性体7を自然に剥離させるのではなく、ゴム状弾性体7を別の剥離手段(不図示)を用いて金属板5から剥離してもよい。例えば、誘導加熱後に、ゴム状弾性体を挟んで引き落とすことで剥がすことができる。
【0017】
次に、清掃工程において、前記加熱・剥離工程後に、剥離面3上に残った溶融したゴム状弾性体及び接着剤等の残留物を所定の拭きテープにて拭き取ることで除去する。これにより、ブレードの金属板5から、ほとんどの残留物は後工程の冷却前に除去される。しかし、剥離面3cに薄く残ったり、剥離面3dの一部に残留してしまうことがある。
【0018】
次に、冷却工程において、金属板5の剥離面上の残留物を冷却して固化させる。これにより、金属板5の剥離面上に未だ残留しているゴム状弾性体や接着剤等の粘着性をなくすことができるので、金属板の剥離面上にゴミが付着したり、金属板5を搬送する際に、作業者や搬送手段にゴム状弾性体等が付着して汚れることがなくなり、すみやかに後工程に移ることができる。ここで、後工程としては、例えば、再生した金属板の回収工程があり、省スペースや効率をよくするために、金属板を積み重ねたり、トレイに積み込んだりする。したがって、金属板の剥離面に粘着性がある状態で金属板を回収しようとすると、剥離面同士が触れないようにする必要があり、金属板を並べるための大きなスペースが必要となり、金属板の回収手段(不図示)が複雑となってしまう。そこで、前記冷却工程を有することで、剥離面の粘着性を考慮する必要がなくなり、効率よく後工程の処理をすることができる。
【0019】
冷却工程における冷却温度は、金属板5の剥離面上の残留したゴム状弾性体や接着剤の粘着性が十分に低下する温度まで冷却できれば特に制限されるものではなく、ゴム状弾性体や接着剤等の特性に応じて適宜決定すればよい。
【0020】
次に、図5〜図8を参照しつつ、本発明の金属板の再生装置の構成について説明する。
【0021】
本発明の金属板の再生装置10は、図5のブロック図に示すように、
金属板の端部にゴム状弾性体を形成してなるブレードから、ゴム状弾性体を剥離する金属板の再生装置であって、
少なくとも、
前記ブレードから前記ゴム状弾性体を剥離するため、前記金属板と前記ゴム状弾性体の接合部位を前記金属板の表裏両面から選択的に高周波誘導加熱する加熱手段30と、
前記金属板のゴム状弾性体の剥離面を拭き取る清掃手段40と、
前記ゴム状弾性体が剥離された金属板を冷却する冷却手段50と、
前記金属板を、前記加熱手段、前記清掃手段、前記冷却手段へ順に搬送する搬送手段20と、
を有することを特徴としている。
【0022】
次に、各々の手段の構成について図6〜図8を参照しつつ、説明する。
【0023】
本発明に係る金属板の再生装置における加熱手段は、誘導コイルを用いた高周波誘導加熱により前記接合部位2を熱破壊又は溶融する機能を有する。図6は本発明における加熱手段の一例を表す模式的斜視図である。1はブレード、31は誘導コイル部分を示している。このU字型の誘導コイル31は、金属板5とゴム状弾性体7との接合部位2を選択的に加熱できるように配置され、また、コイルの2つの棒状部分が金属板5の両表面からそれぞれ等間隔になるように配置される。ここで、誘導コイル31は、金属板5の輻射熱及び高周波電流による自身の発熱による熱変形を防止するため、例えば、水冷又は空冷用の流路を有し、冷却手段及び温度制御手段により一定温度に保つことができる。また、誘導コイル31としては、パイプ形状を図示したが、いわゆるパイプ材を巻回したコイル形状でも可能である。
【0024】
図6の21a及び21bは、金属板5を固定して、金属板5と加熱手段又は清掃手段との位置決めを行う金属板の固定手段21の一部となる固定部材である(後述するように、該固定手段21は搬送手段20の一部である)。固定部材21a及び固定部材21bは、これら1対の固定部材を金属板の長手方向の端部寄りにそれぞれ1対ずつ配置することが好ましい。詳しくは、ゴム状弾性体近傍の金属板の長手方向両端部を固定部材21aと固定部材21bで、それぞれ押圧挟持することが好ましい。また、固定部材21aと固定部材21bは、例えば、片方を固定して、もう一方をエアーシリンダーとスライドガイド等の押圧手段(不図示)等で押すことで金属板5を挟持することができる。また、厚み方向に配置された対の誘導コイル31の中心に金属板5を配置することが好ましい。なお、ここで、誘導コイルは接合部位2の接合幅と同じ幅であるほうがよい。このようにすることで、金属板5の接合部位2から一定の位置に誘導コイルを配置することができ、さらに接合部位2のみを誘導加熱することができる。したがって、金属板5の接合部位2以外の部分の不要な加熱を抑えられて、金属板5の損傷を軽微にできる。なお、図6の金属板の形状によれば、固定部材21a又は21bのどちらか一方を固定した方が効率が良い。また、金属板5の固定には、前記固定手段21とは別に、加熱手段に設置されている固定手段35を使用しても良い。例えば、加熱手段に設置された固定部材35で、金属板の長手方向のほぼ中央を押し、金属板5を固定部材21aと固定部材35で挟持するようにすると良い。これにより、金属板5を誘導加熱することにより金属板5のソリが発生した場合においても、固定手段21からの金属板5のズレを防止することができる。
【0025】
本発明に係る金属板の再生装置における清掃手段は、金属板5からゴム状弾性体が剥離した剥離面3に残留した接着剤やゴム状弾性体を除去する機能を有する。該清掃手段としては、例えば拭きテープ41を剥離面3に接触させて拭き取ることで清掃を行う。図7は本発明の清掃手段の一例を表す図であり、41は拭きテープ、42は押部材である。21は、固定手段(搬送手段の一部)であり、金属板を固定して清掃工程時の金属板と清掃手段との位置決めを行う。清掃は、例えば、拭きテープ41を所定の幅だけ剥離面3の一部に接した状態で、金属板5に沿って移動させることにより剥離面3を拭き取ることにより行う。この場合、金属板5を動かしてもよいし、拭きテープ41を移動させてもよい。また、金属板5と拭きテープ41を相対運動させてもよい。ここで、例えば、拭きテープ41は押部材42によって金属板5に所定の力で押付けられる。押部材42は、例えばエアーシリンダとスライドガイドなどの押圧手段(不図示)で金属板に所定の力で押付けることができる。押部材42の材質は、拭きテープ41と剥離面3の均一なあたりを得るために、また、金属表面を傷つけないために、樹脂やゴムなどの金属板5よりやわらかい材質、例えば金属板5より弾性率が小さい材質を選択することが好ましい。ただし、清掃工程時の金属板5は高温であるので、耐熱性のある材質を選ぶほうが好ましい。また、拭きテープ41としては、耐熱性のあるテープや布が使用できるが、綾織された綿テープなどが好ましい。拭きテープ41の厚みは用途に応じて選べるが、0.1〜2.5mm程度が使用可能である。また、拭きテープ41と金属板5を相対移動させるには、例えば、固定手段21または清掃手段40の一方を剥離面3に沿って搬送することにより行うことができる。
【0026】
なお、拭き取りは、前記図4に示す剥離面3cだけでよく、剥離面3dは必要に応じて行うようにすることもできる。これにより拭き取り作業は簡便になる。また、例えば、拭きテープ41の幅としては、剥離面3cの短辺の長さよりわずかに大きい幅を確保すればよく、相対移動も剥離面3cの長辺方向の1軸移動のみ行えばよい。また、剥離面3cを拭き取るときに、金属板5の端部の角で拭きテープを破損し、拭き取り不良となる可能性があるので、拭きテープ41を剥離面3cの端面の角から離れた位置に押付けた後に端面側に拭き取るようにすることが好ましい。例えば、図7の左右に別々に拭くようにすると良い。拭きテープは、同一箇所で複数回の拭き取りを行うことは困難であるので、1度拭き取り作業に使用したあとは、拭きテープ41を送り、常に新しい箇所を使用できるようにすることが好ましい。
【0027】
また、清掃手段40は、テープ供給部、テープ搬送部、テープ回収部(不図示)を具備しても良い。例えば、テープ供給部とテープ回収部を連続したテープでつなぎ、テープ供給部とテープ回収部の間のテープ搬送部によりテープを送っても良い。テープ供給部は、拭きテープをリボン状に巻いた状態でも良い。テープ搬送部は、シリンダ等でピッチ搬送してもよい。テープ回収部は、使用済みのテープをリボン状に回収しても良い。なお、テープ回収部は、テープの使用済みの部分を裁断して箱に回収しても良い。なお、清掃工程における金属板5の固定には、清掃手段に設置した固定部材45を設けても良い。この固定部材45は、拭きテープ41と金属板5を相対運動させたときの金属板5のズレを防止するものであり、相対運動の方向である金属板の長手方向に配置すると良い。この固定手段45は、搬送手段に備えても良い。
【0028】
本発明に係る金属板の再生装置における冷却手段は、ゴム状弾性体7が剥離された金属板5を冷却し、剥離面に残留する接着剤やゴム状弾性体を固化する機能を有する。図8は本発明の冷却手段の一例を表す図であり、51aと51bは冷却部材(冷却部材1)である。55は、金属板の剥離面3にエアー55aをふきつけるためのエアーノズル(冷却部材2)の部分断面図である。なお、冷却部材51aと冷却部材51bは、例えば、エアーシリンダとスライドガイドなどの押圧手段(不図示)で金属板を所定の力で挟持することができる。また冷却部材51a及び冷却部材51bの温度制御は、冷却部材に所定の温度の液体を流したり、エアーで冷却してもよい。また、冷却手段としては、図8に示すように、剥離面3に直接エアーを吹き付けて金属板の冷却を促進させた方が好ましい。なお、ここで、冷却部材51aは、金属板5の形状を考慮して、図8のような形状にすることが好ましい。これにより金属板の位置決めの精度がよくなる。また、冷却部材51a及び51bは、前記搬送手段の固定部材21から金属板の受け渡しを容易とするため、固定部材21で挟持していない金属板の中央部分全体を挟持するようにすることが好ましい。また、この受け渡しは、清掃手段と冷却手段の領域の間で行っても、冷却手段の内部で行っても良い。さらに、冷却工程を経た金属板を再生装置外に搬出するには、冷却部材51a及び51bで挟持したまま搬出しても、前記固定手段21を有する搬送手段に受け渡してから搬出しても良い。前者の場合、冷却部材51a及び51bを有する搬送手段を用いることになる。
【0029】
本発明に係る金属板の再生装置における搬送手段は、金属板の固定手段21を有しており、この固定手段21で金属板5を保持した状態で、金属板を前記加熱手段から前記清掃手段に搬送する機能を有する。また、同時に、前記清掃手段から前記冷却手段に搬送する機能を有していても良い。これにより、加熱手段から清掃手段の間を固定手段の開閉などを必要とせずに搬送・処理することが可能となるので、搬送時間が短くなる。したがって、誘導加熱して溶融したゴム状弾性体をすばやく拭き取ることができるので、金属板へのゴム状弾性体の残留を少なくすることができる。
【0030】
以下、上記の金属板の再生装置を用いた金属板の再生について説明する。
【0031】
まず、再生対象品のブレード1は、前記加熱手段で以下のように処理される。再生対象品のブレード1は、ゴム状弾性体7を下側にして、固定手段21で固定される。誘導加熱を開始すると、誘導コイル31に近い金属板部分が選択的に加熱され、接合部位2が熱破壊され、ゴム状弾性体7が金属板から剥離し、下方に自然落下する。なお、ここで自然落下ではなく、ゴム状弾性体を引き剥がしてもよい。
【0032】
このため、接合部位近傍の金属板部分のみを加熱すれば足り、その部分以外の温度上昇は抑えられるので、金属板表面の熱による損傷は軽微に抑えられる。また、加熱時、誘導コイル2は金属板1の厚み方向に等距離に配置することで、誘導コイル金属板の厚み方向の表裏で温度差は無く、均一に加熱されるため、金属板の熱による反りを低減できる。また、金属板の加熱速度は、金属板の厚み、金属板の材質、誘導コイルに加える電力量等により影響を受ける。一般に高周波加熱手段の周波数を上げる程、金属板表面で発熱がより生じることは周知の事実であるが、金属板の厚みにもよるが、周波数を上げ過ぎると加熱が金属板表面のみに集中し、かえって昇温時間が遅くなる傾向がある。したがって、50〜1,000(kHz)程度の周波数が好適である。なお、誘導コイルによる金属板の加熱量は、プログラムにより制御することができる。
【0033】
次に、ゴム状弾性体が剥離された金属板は、搬送手段により、清掃手段へと搬送される。まず、金属板は、固定手段で固定される。その後、清掃手段にて、前記の加熱工程で剥離面に残った残留物、例えば溶融したゴム状弾性体を拭き取る。これにより、金属板から、ほとんどの残留物は除去される。これにより、この再生された金属板を使用して成形したブレードは、新品の金属板を使用して成形したブレードと遜色がない。
【0034】
次に、清掃手段により処理された金属板は、搬送手段により、冷却手段へと搬送される。金属板は、冷却手段にて、金属板の剥離面以外の部分を冷却部材にて押圧挟持されることで、冷却される。金属板が冷却されることで、清掃工程によって、金属板の剥離面に残った溶融したゴム状弾性体を固化させて粘着性をなくすことができる。それにより、その後の金属板の回収作業を効率的に行うことができる。
【0035】
また、得られた再生金属板を用いて所定の位置にゴム状弾性体を成形した再生ブレードは、新品の金属板を使用したブレードと精度及び機能上の差異は認められなかった。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を挙げて、本発明の実施例を詳述するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
図6は、本発明の実施例である金属板の再生装置の加熱手段を示す図である。金属板5とゴム状弾性体7の接合部位2に沿って、U字型の誘導コイル31の二つの棒状部分がそれぞれ金属板5の両表面から等間隔になるように対向配置されている。また、搬送手段に具備した固定手段21で、ゴム状弾性体近傍の金属板部分を押圧挟持されている。
【0038】
ここで、誘導コイル31は銅製パイプをU字形状とし、誘導コイル内部に水を循環させ熱変形を防止する構成とした。また、固定手段21の金属板に接触する部材の材質は断熱材として、加熱工程と清掃工程の間の金属板の温度の低下を防ぐ構成とした。
【0039】
加熱制御は、予め設定した出力パターンを直流電圧として出力する構成とした。また、3相交流電力を整流回路により全波整流し、前記温度偏差の直流電圧をゲート電圧とし、サイリスタ等でPWM制御(パルス幅変調)し、更にインバータにより高周波電力に変換し、誘導コイルに供給し、ゲート電圧に比例する高周波電力を誘導コイルに出力する構成とした。高周波電源T5300((株)高周波ネッスル製:商品名)は、周波数:300kHz、高周波最大出力:5Kwを使用した。
【0040】
なお、設定した出力パターンによる金属板の表面の温度を測定したところ、おおよそ室温から230℃迄加熱するのに2秒間、その後230℃で0.5秒間保持し、さらに310℃迄加熱するのに2秒かかっていた。
【0041】
ブレード1の金属板5は、鋼板に亜鉛メッキし更に特殊皮膜を施したジンコート21(新日鐵製(株)製:商品名)を使用した。ゴム状弾性体7は、ポリウレタンエラストマーを使用し、接着剤としてウレタン系プライマーを介して、金属板5と結合している。
【0042】
なお上記金属板5の寸法は、長手方向の長さが240mm、ゴムを形成する端部までの長さが20mm、厚みが1.6mmである。また、ゴム状弾性体は、金属板の端面から金属板側に約5mm、逆側に約7mm形成されており、厚みは約3mmである。
【0043】
ブレードを上記装置にセットし、加熱を開始すると、ゴム状弾性体が金属板から剥離し、自重で落下した。
【0044】
次に、図7に示す清掃手段を用いて、清掃工程を行う。清掃工程では、金属板の剥離面を拭きテープで剥離面の長辺の中心付近から各端部方向に1回づつ拭き取った。なお、押部材42の材質としては、シリコンゴムを使用した。拭きテープとしては、綾織の綿テープを使用し、テープの幅は約7mm、厚みは1.0mmのものを使用した。また、綿テープの拭き取に使用する部分は、1度拭き取った後には、テープを送り、常にテープの新しい部分を使用できるようにした。
【0045】
なお、本実施例では、金属板の固定手段21を有する搬送手段を用い、金属板を固定手段21に保持したまま搬送、処理を行うことで、ゴム状弾性体が剥離してから清掃工程の拭き取りを開始するまでの時間を短くすることができ、おおよそ3秒であった。
【0046】
次に、清掃工程を完了した金属板を図8に示す冷却手段に搬送し、固定部材21の挟持から冷却部材51での挟持に持ち替えて、冷却工程を行った。冷却工程では、金属板の剥離面以外の部分を、20℃の水で水冷した冷却部材51で60秒間挟持するとともに、エアーノズル55よりエアー55aを吹き付けて冷却した。この冷却により金属板の温度は約100℃まで低下した。冷却した金属板を再生装置から取り出し、保持容器に重ねて保管したが、ゴミ等の付着、金属板同士の接着は見られなかった。
【0047】
以上により、ブレードの金属板を再生した。
【0048】
再生した金属板は、接合部位2近傍の剥離前後におけるソリの変化は、金属板の長さ220mmの範囲において最大12μmであった。金属板のソリの要求精度100μmから十分の精度を確保できた。また、再生金属板に再度接着剤を塗布し、成形型でゴム状弾性体を成形した結果、金属板の反り起因によるゴム状弾性体の変形は無かった。また、金属板の接合部位にのみ軽微なプライマーの変色は見られたが、亜鉛メッキ及び特殊皮膜とも損傷は無く、金属板とゴム状弾性体の接着強度も再生の有無で差異は無かった。再生ブレードを電子写真式プリンタのトナーカートリッジに組込み、図9に示すように、感光ドラム9に残留するトナーを除去するため、クリーニングブレード1のゴム状弾性体7の当接部8をE方向に回動する感光ドラム9に押圧させ、画出しテストを行った。その結果、良好な印字が可能であった。なお、電子写真式プリンタはLBP1310(キヤノン(株)製:商品名)、トナーカートリッジはEP−32(キヤノン(株)製:商品名)を用いた。
【0049】
金属板の種類を、亜鉛メッキにクロメート処理を施したジンコート鋼板(新日鐵製(株)製:商品名)に変更した場合も前記ジンコート21と同様に金属板の損傷は無く、電子写真式プリンタLBP1310を使用しての画出しテストも良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係る金属板の再生方法のを示す工程図である。
【図2】金属板とゴム状弾性体からなるブレードを示す図である。
【図3】ブレードにおける金属板とゴム状弾性体の接合状態を示す断面図である。
【図4】再生されたブレードの金属板の図である。
【図5】本発明に係る金属板の再生装置のブロック図である。
【図6】本発明における加熱手段の一例を示す説明図である。
【図7】本発明における清掃手段の一例を示す説明図である。
【図8】本発明における冷却手段の一例を示す説明図である。
【図9】ブレードの使用形態図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ブレード
2 接合部位
3 剥離面
3c 剥離面
3d 剥離面
5 金属板
7 ゴム状弾性体
8 当接部
9 感光ドラム
10 再生装置
20 搬送手段
21 固定手段
21a 固定部材A
21b 固定部材B
30 加熱手段
31 誘導コイル
35 加熱手段に設置された固定手段
40 清掃手段
41 拭きテープ
42 押部材
45 清掃手段に設置された固定手段
50 冷却手段
51 冷却部材
51a 冷却部材
51b 冷却部材
55 エアノズル
55a エアー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の端部にゴム状弾性体を形成してなるブレードから、ゴム状弾性体を剥離して金属板を再生する方法であって、
少なくとも、
前記金属板と前記ゴム状弾性体の接合部位を前記金属板の両面から選択的に高周波誘導加熱して前記ゴム状弾性体を剥離する加熱・剥離工程と、
前記金属板のゴム状弾性体の剥離面の残留物を冷却前に拭き取る清掃工程と、
前記清掃工程を経た金属板を冷却する冷却工程と、
を有することを特徴とする金属板の再生方法。
【請求項2】
前記加熱・剥離工程において、前記金属板からゴム状弾性体を引き落とす剥離手段を用いることを特徴とする請求項1に記載の金属板の再生方法。
【請求項3】
前記金属板を、前記加熱・剥離工程、前記清掃工程、前記冷却工程の順に搬送する搬送手段を有し、前記加熱・剥離工程及び前記清掃工程において前記金属板を固定手段に保持したまま搬送・処理することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属板の再生方法。
【請求項4】
金属板の端部にゴム状弾性体を形成してなるブレードから、ゴム状弾性体を剥離して金属板を再生する装置であって、
少なくとも、
前記ブレードから前記ゴム状弾性体を剥離するため、前記金属板と前記ゴム状弾性体の接合部位を前記金属板の表裏両面から選択的に高周波誘導加熱する加熱手段と、
前記金属板のゴム状弾性体を剥離した面の残留物を拭き取る清掃手段と、
前記残留物が拭き取られた金属板を冷却する冷却手段と、
前記金属板を、前記加熱手段、前記清掃手段、前記冷却手段へ順に搬送する搬送手段と、
を有することを特徴とする金属板の再生装置。
【請求項5】
前記清掃手段が、
前記金属板より弾性率が小さい押部材で金属板の表裏両面に対向して配置された拭きテープを介して前記剥離面を厚み方向に挟持して、前記拭きテープ又は前記金属板を動かすことにより前記金属板の表裏両面の剥離面を同時に拭き取ることを特徴とする請求項4に記載の金属板の再生装置。
【請求項6】
前記冷却手段が、
温度を制御する手段を有した固定部材にて、前記剥離面以外の前記金属板部分を押圧挟持する第1の冷却手段と、
前記剥離面にエアーを吹き付ける第2の冷却手段と、
を有することを特徴とする請求項4又は5に記載の金属板の再生装置。
【請求項7】
前記搬送手段が、
前記金属板を厚み方向に押圧挟持することで、前記金属板と前記加熱手段又は前記清掃手段との位置決めをする固定手段を有し、
該固定手段に前記金属板を保持したまま前記加熱手段から前記清掃手段に搬送し、処理することを特徴とする請求項4乃至6のいずれかの請求項に記載の金属板の再生装置。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれかの請求項に記載の金属板の再生方法により再生した金属板。
【請求項9】
請求項8に記載の金属板の所定の位置にゴム状弾性体を形成したことを特徴とする再生ブレード。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−83444(P2009−83444A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259895(P2007−259895)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】