説明

ブレード部材の製造方法及び製造装置

【課題】電子写真装置用ブレードのポリウレタン樹脂製のブレード部材を個別に間欠的に製造する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一つの成型溝を形成した成型ドラム、それに当接したエンドレスベルトを用いたブレード部材の製造装置を用い、該成型溝は、成型されるブレード部材の大きさ形状を有しており、かつ、成型ドラム回転方向に対して平行又は直交して設けられており、ポリウレタン樹脂原料はエンドレスベルト上にブレード部材相当量が間欠的に吐出され、成型ドラムの回転に伴い、該原料が成型溝とエンドレスベルトに挟まれ、さらにそこで加熱硬化されてブレード部材となり、さらに、成型ドラムが回転し、ブレード部材の脱型位置で脱型手段により取り出される。なお、ポリウレタン樹脂原料の吐出及びブレード部材の脱型は成型溝の位置を検出して行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した画像形成装置に使用されるクリーニングブレード、現像剤量規制ブレード等の電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真複写機、レーザービームプリンタ、ファクシミリ等の電子写真装置の画像形成工程における現像装置として、以下の装置が用いられている。現像剤(トナー)を蓄える現像剤容器の開口部に一部を露出して設けられたローラなどの現像剤担持体と、この現像剤担持体の表面に当接するゴム材などで形成されたブレード部材を備えた現像剤量規制ブレードとを有する装置である。
【0003】
また、電子写真装置の感光体クリーニング工程におけるクリーニング装置としては、支持体にブレード部材が接合されたクリーニングブレードが用いられている。これは、記録用紙に転写を行った後、感光体上に残存するトナーを除去して繰り返し転写を行うためである。
【0004】
現像剤量規制ブレードは、一般に、ゴム板、金属製薄板、樹脂板及びこれらの積層体から形成されている。現像剤量規制ブレードは使用する現像剤によって種類が選択される。一般的に使用される現像剤量規制ブレードとして、現像剤担持体に圧接されるブレード部材と、このブレード部材を所定の位置に支持する支持部材とから作製されるものがある。このブレード部材には、耐磨耗性等の機械的特性に優れていることから、ポリウレタン樹脂が通常使用されている。
【0005】
クリーニングブレードは、装置等にブレードを取り付けるための金属製の支持部材と、その支持部材に弾性体からなるブレード部材が一体化して形成されている。該ブレード部材には、耐磨耗性や永久歪みに優れていることから、ポリウレタン樹脂が通常使用されている。
【0006】
このようなポリウレタン樹脂製のブレード部材を備える電子写真装置用ブレードは、従来下記の製造方法で製造されている。
【0007】
一つは、遠心成型法でポリウレタン樹脂の円筒状シートを作製し、これを所定寸法に切り出して、ブレード部材を得て、次いで、所定の支持部材に接着剤等で接着して電子写真装置用ブレードを製造する方法である。遠心成型法とは、円筒金型にポリウレタン樹脂原料を入れ、高速で回転させて遠心力により内周面にポリウレタン樹脂原料層を形成し、その層を加熱硬化して、薄肉円筒状のシートを成型する方法である。こうして得られた円筒状のシートは円筒金型から取り出し、必要に応じて二次架橋を行い、ブレード部材のシートとされる。このシートを目的に応じた所定寸法・形状に切断することにより、ブレード部材とされ、その一側縁部を支持部材に接着剤などによって接着することにより、最終製品としてクリーニングブレードや現像剤量規制ブレードが完成する。
【0008】
二つ目の方法として、型成型法がある。予め接着剤等を塗布した支持部材を分割金型内にセットし、ポリウレタン樹脂原料を分割金型内に注入し、そこで加熱硬化して、支持部材とブレード部材を一体に成型する方法である。その後、分割金型を開放して成型体を取り出す。エッジ(稜線)精度を確保するため、成型後に切断する場合もある。
【0009】
これらの方法には、次のような改善すべき点がある。まず、遠心成型法ではバッチ処理になり、連続自動化が困難である。また、型成型法では、大量生産には相当数の金型を準備する必要があり、硬化炉も必要になる。その結果、装置全体が大きくなり、スペースの確保、装置コストの増加につながる。
【0010】
従来のポリウレタン樹脂シートを連続的に成型する方法として、熱硬化型ポリウレタン樹脂原料を、水平に保持され、加熱された断面凹状の連続した成形用溝を有する成形ドラムの該溝に吐出し、加熱、加圧して一定幅で連続成型する方法がある(特許文献1)。そして、連続成型されたポリウレタン樹脂シートを所定長さに切断することによって、ブレード部材が連続して製造される。この技術では、連続的に電子写真装置用ブレード部材を成型することが可能であり、製造工程の自動化が容易で、簡略化でき、設備コストを安くできるとしている。
【0011】
近年、電子写真の技術分野でもコスト競争が加速し、より生産性を向上した製造方法でコストダウンが求められている。ポリウレタン樹脂を使用する電子写真装置用ブレード部材も、より速い硬化時間の処方にすることにより生産効率の向上と、装置の小型化が求められている。
【0012】
しかし、硬化時間の速いポリウレタン樹脂の原料組成物を使用した場合、加熱された成型ドラムの成形用溝内に注入すると、成型ドラムに接触した直後から該樹脂原料は硬化が開始する。このため、その後接触するエンドレスベルト接触面との間に硬化タイミングに差が生じて、硬化ムラが発生する。その結果、ひけ等の外観上の模様発生、気泡の混入等が発生し、電子写真装置用のブレード部材として、機能を満足しない成型体になってしまう可能性がある。
【0013】
さらに、硬化時間の速いポリウレタン樹脂の原料を使用した場合、加熱された成型ドラムの成型溝内で、エンドレスベルトと挟み込む前に硬化が進行してしまうおそれがある。この際は、硬化が進み、半硬化状態で、エンドレスベルトで挟み込んでも、均一な、所定の厚みを有するポリウレタン樹脂シートが得られない可能性がある。
【0014】
そのために、エンドレスベルトの背面から加圧して、成型ドラムにエンドレスベルトを押し付けるための背面加圧装置が設けられることがある。そして、この効果として、成型ドラムの外周面に対する加圧力がエンドレスベルトの加圧力だけで不足する場合に、加圧装置により加圧力を加えることができるとしている。なお、エンドレスベルトの背面から加圧する背面加圧装置を備えた成型装置が特許文献2にも開示されているが、上記問題については、何ら考慮されていない。
【0015】
また、連続成型されたポリウレタン樹脂シートをブレード部材にするには、成型ドラムからはがした帯状のシートを切断装置へ搬送することが必要であり、この搬送に際して、該シートの変形、歪みなどの不良が発生する可能性がある。帯状シートの搬送には、装置が高価となり、帯状のシート搬送などの自動化が複雑となってしまう場合がある。
【0016】
以上から、電子写真装置用のブレード部材が、連続的に、工数が少なく効果的に、個別の形状で製造する、より優れた連続自動化方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特許第2645980号公報
【特許文献2】特許平10−15967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の課題は、硬化時間の速いポリウレタン樹脂原料を使用しても、硬度等の物性のムラが少なく、外観上の模様や気泡混入の発生も殆どない、高品質なブレード部材を、個別に、間欠的に、連続製造する方法を提供することである。また、本発明の課題は、該製造方法に用いうる、生産効率が高く、自動化が容易な構造で設備コストも安い製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、
外周面に成型溝を有する成型ドラムと該成型ドラムの外周面に当接するエンドレスベルトで形成されるブレード部材成型金型を用い、該金型内でポリウレタン樹脂原料を硬化させる電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法であって、
該成型溝は、少なくとも該ブレード部材の寸法を有するブレード部材形状であり、かつ、成型ドラムの回転方向と長手方向が同じか直交する様に少なくとも1つ形成されており、
エンドレスベルト上の成型ドラムと当接する上流側で、移動に伴って成型ドラムと当接する際に成型ドラム上の成型溝と同期する位置のベルト上にポリウレタン樹脂原料が間欠的に供給され、
該間欠的に供給されたポリウレタン樹脂原料が、成型ドラム及びエンドレスベルトの移動に伴い、成形溝とエンドレスベルトで形成されるブレード部材成型金型中で、加熱硬化され、
かつ、該ポリウレタン樹脂原料が、少なくとも、
(A)ポリイソシアネート、
(B)数平均分子量が1000乃至4000のアジペート系ポリエステルポリオール、
(C)分子量200以下の鎖延長剤、及び、
(D)ウレタン硬化用触媒として、イソシアヌレート化触媒20乃至500ppmとウレタン化触媒200乃至1500ppm
を含み、かつ、その粘度が500乃至3000mPa・sである
ことを特徴とする電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法
である。
【0020】
また、本発明は、
外周面に成型溝を形成した成型ドラムと該成型ドラムの外周面に当接されたエンドレスベルトを用いた電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造装置であって、
該成型溝は、長手方向を成型ドラムの回転方向と平行或いは直交にした、少なくとも1つブレード部材の形状で設けられており、
ポリウレタン樹脂原料の計量・混合・攪拌手段の吐出口は、該エンドレスベルト上にポリウレタン樹脂原料が吐出できるように、成型ドラムとエンドレスベルトが当接開始点よりエンドレスベルトの移動方向の上流側で、エンドレスベルトの移動及び成型ドラムの回転により、該成型溝に対向する位置の垂直上方に設けられ、
該エンドレスベルトは、駆動ロール対、ガイドロール及びテンションロールにかけまわされ、該成型ドラムと当接されて、該成型溝とブレード部材を成型するための成型金型を形成しており、
該エンドレスベルトが該成型ドラムから離れる位置に、該成型金型中で加熱硬化されて形成されたブレード部材を成型ドラムから脱型する脱型手段が設けられている
ことを特徴とする電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造装置
である。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、硬化時間の速いポリウレタン樹脂原料を使用しても、硬度等物性のムラが少なく、外観上の模様や気泡混入の発生が低減した、高品質な電子写真装置用ブレード用のブレード部材を個別に間欠的に成型することができる。また、本発明により、生産効率が高く、自動化が容易な構造で設備コストも安くできる製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のブレード部材の製造に用いる装置の一例の概略図である。
【図2】上記装置における、成型ドラムの成型溝とエンドレスベルトとに囲まれた空間(ブレード部材成形金型)を示す断面図である。
【図3】上記装置における、成型ドラムに形成されている成型溝の例を示す断面図である。
【図4】上記装置における、成形溝の設けられた成型ドラムの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を詳述する。
【0024】
本発明は、成型溝を有する成型ドラム及びこの成型ドラムに当接するエンドレスベルトで形成される成型金型を用いる、電子写真装置用ブレードの製造に用いられる、ポリウレタン樹脂製のブレード部材の製造方法に係る。
【0025】
ポリウレタン樹脂原料としては、従来から用いられているポリウレタン樹脂原料であればいずれでも使用可能であるが、本発明では、硬化時間の早いポリウレタン樹脂原料を用いる場合に好適な製造方法である。
【0026】
従って、本発明では、ポリウレタン樹脂原料は、少なくとも下記(A)乃至(D)からなり、かつ、その粘度が500乃至3000mPa・sであるものを用いる。
(A)ポリイソシアネート。
(B)数平均分子量1000乃至4000のアジペート系ポリエステルポリオール。
(C)分子量200以下の鎖延長剤。
(D)ウレタン硬化用触媒として、イソシアヌレート化触媒20乃至500ppmとウレタン化触媒200乃至1500ppm。
【0027】
(A)ポリイソシアネート
成分(A)である、ポリイソシアネートとしては、従来から、ブレード部材に用いられるものならば支障なく使用でき、具体的には以下のものを挙げることができる。例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(PAPI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、リジンジイソシアネートメチルエステル(LDI)、ジメチルジイソシアネート(DDI)等。これらの中では、4,4’−MDIを用いることが好ましい。また、これらは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
(B)アジペート系ポリエステルポリオール
成分(B)であるアジペート系ポリエステルポリオールは、数平均分子量Mnが1000乃至4000のものであればいずれでも使用できる。アジペート系ポリエステルポリオールの具体例として、以下のものを挙げることができる。ポリエチレンアジペートエステルポリオール、ポリブチレンアジペートエステルポリオール、ポリヘキシレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−プロピレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−ブチレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−ネオペンチレンアジペートエステルポリオール等。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0029】
成分(B)のポリオールは、数平均分子量が1000未満であると、ポリウレタン樹脂を構成するポリオール成分全体の数平均分子量が小さくなり、得られるポリウレタン樹脂の物性が低くなる。また、数平均分子量が4000以上であると、成型物の表面にひけ模様が発生したり、硬化ムラが発生したりしやすくなる。
【0030】
本発明では、成分(B)のポリオールは、成分(A)のポリイソシアネートと予め反応させて、イソシアネート末端のプレポリマーとして用いることが好ましい。
【0031】
(C)鎖延長剤
成分(C)として、鎖延長剤を使用する。そして、該鎖延長剤は分子量が200以下のものである。具体的には、例えば、次のようなグリコールが使用される。エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(14BD)、ヘキサンジオール(HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコール等。また、グリコールの他に、その他の多価アルコールも使用することができる。このような多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
成分(C)の鎖延長剤は、上記したようにその分子量は200以下である。該分子量が200を超えると、ハードセグメントの凝集が少なくなり、物性が低下するため電子写真装置用のブレード部材として必要な特性を得られない場合がある。
【0033】
(D)ウレタン硬化用触媒
成分(D)であるウレタン硬化用触媒として、イソシアヌレート化触媒及びウレタン化触媒を併用する。なお、それらの配合量は、質量基準で、イソシアヌレート化触媒20乃至500ppm、ウレタン化触媒200乃至1500ppmである。
【0034】
イソシアヌレート化触媒によって、反応硬化時間の短縮を図り、成型装置の小型化、装置コストダウン、生産効率の向上が可能になる。また、感温性を持たせることによって、室温では反応を遅らせ、加温によって硬化を進行させて効率的な硬化反応を進める。さらに、ウレタン化触媒を併用することにより、電子写真装置用ブレード部材として必要な特性を有しているウレタン樹脂を得ることが可能になる。
【0035】
イソシアヌレート化触媒が20ppm未満であると、ポリウレタン樹脂原料が硬化するまでに長時間を要し、装置の大型化・装置のコスト増加につながる。また、イソシアヌレート化触媒が500ppmより多いとポリウレタン樹脂原料を混合攪拌している最中から硬化が始まり、ポリウレタン樹脂原料のエンドレスベルト上への供給口に汚れが発生し、異物の混入、模様の発生等の不具合が発生する場合がある。なお、ポリウレタン樹脂原料中のイソシアヌレート化触媒の配合量は、50乃至300ppmであることが、より好ましい。
【0036】
更に、ウレタン化触媒が200ppm未満であると、ポリウレタン組成物中のウレタン化反応の割合減少し、電子写真装置用ブレード部材として必要な物性が得られなくなる場合がある。また、反応ムラが生じ、表面に模様が発生してしまう。ウレタン化触媒が1500ppmより多いとポリウレタン樹脂原料を混合攪拌している最中に硬化が始まり、ポリウレタン樹脂原料のエンドレスベルト上への供給口の汚れが発生し、異物の混入、模様の発生等の不具合が発生する。なお、ポリウレタン樹脂原料中のウレタン化触媒の配合量は、300乃至1000ppmであることが、より好ましい。
【0037】
イソシアヌレート化触媒としては、例えば、第3級アミン、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩、ドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩、カルボン酸の金属塩またはその混合物などが使用可能である。具体的には、第3級アミンとして、N−エチルピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−エチルモルフォリン等が挙げられる。また、テトラアルキルアンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等がある。さらに、ヒドロキシアルキルアンモニウムとしては、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等がある。そして、カルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、吉草酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ナフテン酸等を挙げることができる。これらの中では、加温によって硬化反応が開始される感温性を持ち、成型後にブルームして他のパーツに影響を及ぼすことのないカルボン酸の金属塩が好ましい。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
また、ウレタン化触媒としては、一般に用いられるポリウレタン硬化用の触媒を使用することができ、例えば三級アミン触媒が挙げられる。ジメチルエタノールアミン等のアミノアルコール、トリエチルアミン等のトリアルキルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン等のテトラアルキルジアミン、トリエチレンジアミン、ピペラジン系、トリアジン系などを例示できる。また、通常、ウレタンに用いられる金属触媒でもよく、ジブチル錫ジラウレートなどを例示することができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
(粘度)
また、本発明では、ポリウレタン樹脂原料は、混合攪拌後の粘度が500乃至3000mPa・sであることが必要である。すなわち、該粘度が500mPa・s未満ではエンドレスベルト上に配置する時点で、流動性が高いため、エンドレスベルト上で流れて広がってしまいやすい。従って、後に成型ドラムと接触しても成型ドラムの成型溝を充満できずブレード部材として必要な形状、厚みを得られなくなってしまう場合がある。一方、粘度が3000mPa・sより大きいと、ポリウレタン樹脂原料の流動性が低すぎるため、成型溝へ上手く広がらず、これもまたブレード部材として必要な形状、厚みが得られない場合がある。エンドレスベルト上での流れ性、成型溝への充填性の観点から、ポリウレタン樹脂原料の粘度がより良好なのは、混合攪拌後の粘度は800乃至2000mPa・sである。
【0040】
(E)他のポリオール
本発明では、ポリウレタン樹脂原料は、成分(C)として分子量200以下の鎖延長剤と成分(B)として数平均分子量1000乃至4000のポリオールという分子量の差があるものを含んでいる。このように分子量差が大きい成分を成分(A)であるポリイソシアネートと反応させると、反応が不均一になる場合があり、その結果、硬化ムラ等による表面模様が発生する可能性がある。
【0041】
そこで、本発明では、ポリウレタン樹脂原料には、成分(B)のポリオールの数平均分子量より小さく、成分(C)の鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有するポリオールを、成分(E)として含有させることがより好ましい。成分(E)として、成分(B)のポリオールと成分(C)の鎖延長剤の間の数平均分子量を持つ、他のポリオールを導入することにより、分子量の差が多段階的にできる。このため、感温性触媒を使用し反応がより急激な場合でも、収縮ムラからくる表面模様の発生を抑制できて、良好な性能のブレード部材を得ることができる。
【0042】
成分(E)である他のポリオールとしては、上記条件にあるならば、いずれのポリオールでも使用可能である。具体的には、以下のものを挙げることができる。ポリエチレンアジペートエステルポリオール、ポリブチレンアジペートエステルポリオール、ポリヘキシレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−プロピレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−ブチレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−ネオペンチレンアジペートエステルポリオール等。これらのポリオールは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、成分(E)である他のポリオールとして、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルも用いることができる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0043】
(成分(B)のポリオールと成分(E)の他のポリオールの比と混合物の分子量)
ポリウレタン樹脂原料に含有される(E)他のポリオールの(B)ポリオールに対する質量比((E)/(B))は0.02乃至0.60であることが好ましい。該質量比が0.02以上であると、(E)他のポリオールにより(C)鎖延長剤と(B)ポリオールとの間の分子量の差を効果的に段階的にできるため、収縮ムラに起因する表面模様を抑制する効果がより向上する。また、該質量比が0.60以下であると、(B)ポリオールに比べて数平均分子量が小さい(E)他のポリオールの比率が好適であるため、得られるポリウレタン樹脂の物性がブレード部材としてより好ましい物性を有する傾向になる。
【0044】
また、(B)ポリオールと(E)他のポリオールを合わせたポリオール全体(混合物)での数平均分子量が1000乃至3000であることが好ましい。該数平均分子量が1000以上にあると、得られるポリウレタン樹脂が、電子写真装置用ブレード部材としてより好適な物性を有する。また、該数平均分子量を3000以下とすると、プレポリマーの粘度が低くなり、成型ドラムの成型溝とエンドレスベルトによって形成される成型金型への流れ性がより良くなる。
【0045】
[電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造装置]
図1に、電子写真装置用ブレードのブレード部材を製造するのに適した装置の一例を示す。
【0046】
本製造装置は、外周にブレード部材の形状及び厚みに相当する成型溝23を少なくとも1つ有する成型ドラム18及び該成型ドラム18の少なくとも半周に当接するように設けられたエンドレスベルト19からなる。図2に示すように成型ドラム18とエンドレスベルト19から形成される空間(成型溝23)がブレード部材成型金型となる。そして、その形状は図3の部分断面図に示すように、(a)深さ方向に矩形であっても、(b)外に向かって開いたテーパー形状(台形)であってもかまわない。なお、成型溝23は、図4に示すように、ブレード部材の長手方向を成型ドラム18の回転方向に対して(a)平行あるいは(b)直交する方向に設ける。そして、成型溝23は、成型ドラム18の大きさ、硬化時間等により適宜に設定できるが、成型ドラムの回転方向に長手方向を平行にした場合は3乃至15個、直交する場合は4乃至60個程度とするのが、装置の大きさ、運転性等から好ましい。
【0047】
エンドレスベルト19が移動と共に成型ドラム18に当接する上流の成型溝23と相当するエンドレスベルト19の位置に、ポリウレタン樹脂原料を供給できるように吐出口16aが設けられたポリウレタン樹脂原料の計量・混合・攪拌装置を有する。なお、吐出口16aはエンドレスベルト19上にポリウレタン樹脂原料が装置の運転に同期して間欠的に吐出されるようになっている。そして、該吐出口16aは、成型溝23の方向に対応してポリウレタン樹脂原料がエンドレスベルト19上に吐出可能なように、移動可能に設けられていることが好ましい。
【0048】
一方、成型ドラム18の成型溝23とエンドレスベルト19で形成されたブレード部材成型金型中に供給され、成型ドラム18の回動中に加熱硬化されてブレード部材が形成される。該ブレード部材が、さらに成型ドラム18が回動し、エンドレスベルト19が離れる位置に、成型溝23から取り出すための脱型装置24が設けられている。
【0049】
[ブレード部材の製造]
以下、上記装置を用いたブレード部材の製造について説明する。
【0050】
(計量・混合・攪拌)
ポリウレタン樹脂原料を計量、混合攪拌して混合物を調製する。図1に示すようにポリウレタン樹脂原料を混合攪拌する装置は、少なくとも2台のタンク10a及び10bを備える。また、各タンク出口から計量ポンプ12a及び12bを介してミキシングヘッド16に接続され、吐出・循環用配管14a(b)及び15a(b)によってミキシングヘッド16とタンク10a及び10bを接続している。さらにミキシングヘッド16は液状物の導入口と吐出口16aを備えたチャンバー内に攪拌用回転子を備えた公知の構造からなり、ポリウレタン樹脂原料を高精度に吐出できる。このような定量混合機を用い、計量ポンプにより一定量ミキシングヘッドに供給し、混合攪拌を行う。
【0051】
(吐出)
成型装置は、外周面に、長手方向を回転方向と平行にして、少なくとも1つの所定寸法とされたブレード部材の成型溝23を有した成型ドラム18、該成型ドラム18の外周面に成型溝を覆うように当接されたエンドレスベルト19が配設された構成をしている。また、成型ドラム18に内蔵又は近接して、或いは、成型ドラム18とエンドレスベルト19の圧接された部分のエンドレスベルト19外側に密接又は近接して、加熱手段が備えられている(不図示)。該加熱手段により、成型ドラム18上の成型溝23とエンドレスベルト19とに囲まれた空間内に供給されたポリウレタン樹脂原料を加熱硬化する。成型ドラム18は、例えば、硬質アルミニウム、鉄、ステンレス等からなり、成型ドラムは、水平な回転軸17により回転自在に支持され、駆動装置(不図示)により所定速度で回転する。
【0052】
成型ドラム18の成型溝23の配置は、成型ドラム18の回転方向と平行にブレード部材の長手方向又は短手方向に配置されている。例えば、図4(a)に示すように成型ドラム18の回転方向と平行にブレード部材の長手方向を配置した、閉じられた成型溝23であってよい。ただし、成型ドラム18の外周面に設けられた成型溝23の大きさ、形状、配置は、製造するブレード部材に合わせて適宜選択することができる。なお、成型溝23の断面は、図3(a)に示すように矩形であっても、図3(b)に示すように断面が台形であってもよい。
【0053】
エンドレスベルト19は、例えばステンレス等の金属帯板からなる。金属帯板以外の樹脂ベルトなどでも使用可能であるが、その時には、樹脂ベルトの外側からも加熱することが好ましい。
【0054】
エンドレスベルト19は、成型ドラム18とは別の駆動機構(不図示)をもつ駆動ロール対20、エンドレスベルト走行を調整するガイドロール21及びエンドレスベルト19に張力を付与するテンションロール22に掛け渡されている。成型ドラム18の周速とエンドレスベルト19の走行速度は同等とされる。
【0055】
また、成型ドラム18とエンドレスベルト19の駆動手段を別にすることが、エンドレスベルト19のテンションの低荷重化を図ることができるため好ましい。駆動手段としては、例えばモータ、クラッチ、ブレーキなどの組み合わせを行うことが考えられる。しかし、成型ドラム18の周速に合わせて、成型ドラム18とエンドレスベルト19のテンションを一定化するために、成型ドラム18は、モータによる駆動、エンドレスベルト19は パウダーブレーキとモータによる駆動が好ましい。なお、エンドレスベルト19のキズ、成型品の模様などを考慮しながら、成型ドラム18の周速とエンドレスベルト19の走行速度を設定することが好ましい。
【0056】
エンドレスベルト19に張力を付与するためのテンションロール22のテンションは、エンドレスベルト19を成型ドラム18に押し当てるテンションと同等かそれよりやや小さくすることが好ましい。この時、エンドレスベルト19の駆動中のテンションへの影響やエンドレスベルト19の折れ,変形などを考慮して設定する。
【0057】
成型ドラム18の加熱方法としては、外部からと内部からの加熱方法があるが、外部からの加熱では、外乱(室温など)に影響されるので、成型ドラム18を直接加熱できる内部加熱が好ましい。内部加熱を行う手段としては、電熱、熱オイル、熱水などの手段があるが、省スペース、温度管理の面から、電熱が好ましい。なお、加熱温度としては、成型品へ外観異常等が発生しないことを考慮して、硬化設定温度の±5℃以内に制御することが望ましい。±3℃以内で温度制御することが必要な場合には、成型ドラム18を直接加熱する内部加熱手段と共にエンドレスベルト19の外近傍に設けた外部加熱手段(不図示)で外側から加熱することが望ましい。該外部加熱手段としては、近赤外線、遠赤外線、高周波、ヒートロール(ヒータ、水、オイル等で加熱される)等があり、これらの公知の手段より適宜選択すればよい。
【0058】
図1に示す装置において、該混合攪拌手段のミキシングヘッド16にはポリウレタン樹脂原料を吐出する吐出口16aが設けられている。ミキシングヘッド16内のポリウレタン樹脂原料は、成型ドラム18とエンドレスベルト19とが初めに接触する位置(当接開始点ともいう)からエンドレスベルト19の移動方向に対して上流側のエンドレスベルト19上に吐出口16aより吐出される。
【0059】
成型ドラムの回転方向と、長手方向が平行して配置されている成型溝23を有した成型ドラムを用いた(図4(a))場合、所定速度で回転する成型ドラム18の位置を検出する位置検出手段(不図示)により、例えば、成型溝23上の吐出開始位置29を検出する。その吐出開始位置30の検出信号からシーケンス(不図示)を介して、エンドレスベルト19上へポリウレタン樹脂原料がエンドレスベルトの位置を考慮して吐出されるようにポリウレタン樹脂原料の計量・攪拌・混合装置により、吐出口16aから吐出される。そして、成型ドラム18の位置検出手段により、成型溝23上の吐出終了位置30を検出した時に、同様にシーケンスを介して吐出口16aからの吐出が停止される。
【0060】
なお、吐出開始(終了)位置は必ずしも成型溝23内に設けておく必要は無く、成型溝の先端(終端)であってもよい。このように吐出口16aからポリウレタン樹脂原料を間欠吐出することにより、成型ドラム18とエンドレスベルト19によって形成される成型金型内に必要な量のポリウレタン樹脂原料が注入される。なお、注入量は、成型溝23に応じて、適宜注入条件を設定することによりコントロールされる。
【0061】
また、成型溝23が成型ドラム18の回転方向と直交して、長手方向が形成された成型ドラム18を用いた(図4(b))場合は、所定速度で回転する成型ドラム18の位置を検出する位置検出手段(不図示)により、成型溝23上の吐出開始位置29を検出する。その検出により、成型ドラム18の回転及びエンドレスベルト19の走行を停止し、エンドレスベルト19上の成型溝23の吐出開始位置29に対応する位置にポリウレタン樹脂原料が吐出口16aより吐出を開始する。その後、吐出口16aからエンドレスベルト19の幅方向にポリウレタン樹脂原料を吐出させながら移動させる。なお、この移動は、吐出口16aから吐出されたポリウレタン樹脂原料の液滴がエンドレスベルト19上に到達してから移動開始することが好ましい。この際、エンドレスベルト19上へのポリウレタン樹脂原料が均一な厚みに流延するために、吐出開始時にポリウレタン樹脂原料を少量吐出した後、その液滴がエンドレスベルトに到達した後に再び移動を開始させ、吐出口を移動させるとよい。
【0062】
一方、成型ドラムの位置検出手段を、ポリウレタン樹脂原料の吐出口の移動開始後に成型溝23の長手方向に移動させ、成型溝23上の吐出終了位置30を検知すると、吐出口16aからのポリウレタン樹脂原料の吐出停止する。なお、ポリウレタン樹脂原料の吐出の終了位置は、エンドレスベルト19上の成形溝23の吐出終了位置30に相当する位置とする。そして、その移動速度は、ポリウレタン樹脂原料の硬化速度、成形ドラムの回転速度等を勘案して、適宜とする。なお、吐出終了位置30の検出に代えて、単にポリウレタン樹脂原料のエンドレスベルト19上への吐出幅を予め決め、吐出口16aが決められた幅移動したときをポリウレタン樹脂原料の吐出終了とすることでもかまわない。
【0063】
エンドレスベルト19上に、成型溝23に対応する幅でポリウレタン樹脂原料が吐出され、吐出が終了すると、再び成型ドラム18、エンドレスベルト19を所定の速度で回転、走行を開始する。その後、成型ドラム18とエンドレスベルト19の当接位置でポリウレタン樹脂原料は成型溝(成型金型)23に充填される。
【0064】
ここで、成型ドラム位置検出手段、ポリウレタン樹脂原料の吐出口16aは、ポリウレタン樹脂原料のエンドレスベルト上への吐出終了後、直ちに元の位置に戻り、次の位置検出・吐出開始に備える。
【0065】
成型溝の長手方向を成型ドラムの回転方向と平行にした場合は、装置を稼動したままでの例を示し、直交させた場合は装置を一次止める例を示した。
【0066】
しかし、前者においては、ポリウレタン樹脂原料を、吐出口16aから吐出した後にエンドレスベルトの走行方向と逆向きに平行移動させながら吐出してエンドレスベルト19上に成型溝への必要量を流延し、その終了後に装置の再稼動することもできる。また、後者においては、装置を稼動させたままであるときは、エンドレスベルト19上へのポリウレタン樹脂原料の吐出流延がエンドレスベルトの走行に直交するように、吐出口16aを移動させる。
【0067】
成型ドラムの位置検出手段としては、成型ドラム回転モータ内臓エンコーダ、成型ドラムの回転が検出可能な外部エンコーダ、成型ドラムの溝の位置を検出するセンサーなどが挙げられ、成型ドラム回転モータ内臓エンコーダが好ましい。ただし、モータ内臓エンコーダに限定されるものではなく、成型ドラムの溝形状、モータなどの種類により、エンコーダ、センサーなどを公知の技術より適宜選択することが可能である。
【0068】
位置検出された信号は、そのまま間欠吐出と連動しても良いが、タイマー、位置演算など適宜使用し、信号検出とは一致しない時期に間欠吐出としても良い。なお、位置演算により間欠吐出をすることが好ましい。
【0069】
ここで、定量混合機のミキシングヘッド16の吐出口16a位置はエンドレスベルト上のポリウレタン樹脂原料吐出位置から垂直上方に5mm以上、200mm以内のエンドレスベルト19に配置することが好ましい。5mm未満であると吐出口16aが吐出されたポリウレタン樹脂原料と接触しやすくなり、吐出口16aが汚れてしまう場合があり、その結果、注入したポリウレタン樹脂原料に異物が混入し、高品質な電子写真装置用ブレード部材が得られなくなってしまう可能性がある。200mmより高い位置から吐出すると、吐出口16a周辺の空気の流れ等、周囲環境の影響を受けやすく、吐出液の揺らぎ等が生じる。このため、成型溝に対応するエンドレスベルト19上の吐出適正位置からずれてポリウレタン樹脂原料が吐出されたり、ポリウレタン樹脂原料に気泡が混入したりしてしまう場合がある。
【0070】
また、ポリウレタン樹脂原料の吐出位置は、成型ドラム18とエンドレスベルト19が初めに接触する部分からエンドレスベルト19の移動方向に対して上流側5mm以上、350mm以内のエンドレスベルト19上の、成型溝に対向する位置であることが好ましい。上記位置が5mm未満であると吐出されたポリウレタン樹脂原料は、注入時の気泡混入や注入ムラがそのまま残ってしてしまうため所望の電子写真装置用ブレード部材が得られない場合がある。また、350mmより大きいと、吐出されたポリウレタン樹脂原料が成型溝の幅を超えて流れて広がってしまい、所望の形状(厚み、大きさ等)でブレード部材が得られない場合がある。本発明の吐出位置は、エンドレスベルト19上の成型溝に対向する位置に調整される。その調整方法はシリンダ、NC、メカストッパー等、公知技術の中から選択すれば良い。
【0071】
本発明に示すポリウレタン樹脂原料は、加熱によって硬化反応が促進されるが、ポリウレタン樹脂原料は、加熱されていないエンドレスベルト19上に吐出されるので、熱で加速されるウレタン重合反応が進まない。エンドレスベルト19は加熱された成型ドラムと接触後、接触表面が即座に昇温し、エンドレスベルト19上に吐出されたポリウレタン樹脂原料は、成型ドラム18上の成型溝に移動充填されると加熱かつ加圧され、ウレタン重合反応が開始する。これにより、ポリウレタン樹脂原料をムラなく均一に硬化することができる。
【0072】
成型ドラム18上に設けられた成型溝に直接ポリウレタン樹脂原料が吐出されると、初めに接触した面で硬化が開始し、成型ドラム18との接触面のみ先行して硬化が進行し、その後エンドレスベルト19と接触しても、流延ムラや硬化ムラが生じる。その結果、ブレード部材には表面模様や物性の不均一性が発生してしまう。
【0073】
ポリウレタン樹脂原料が吐出される位置でエンドレスベルト19が30℃以上になるような場合は、成型ドラム18の温度コントロールに影響しない吐出位置の上手に冷却機構を設けて、吐出位置におけるエンドレスベルト温度を制御することが好ましい。なお、冷却機構としては、水冷、エアー冷却など公知の冷却手段から適宜選択すれば良い。
【0074】
(硬化)
成型ドラム18の成型溝23とエンドレスベルト19により構成される成型金型に充填されたポリウレタン樹脂原料は所定の時間で加熱硬化される。これにより、ポリウレタン樹脂原料のウレタン重合反応が成型ドラム18とエンドレスベルト19から脱型可能な程度まで完了し、必要な幅と厚み及び表面性を備えたブレード部材が間欠的に形成される。
【0075】
なお、図1に示す製造装置を用いた場合においては、加熱温度は80乃至200℃が好ましく、ポリウレタン樹脂原料が成型ドラム18とエンドレスベルト19から脱型可能な程度までにかかる加熱硬化時間は20乃至90秒である。なお、成型ドラム18とエンドレスベルト19から脱型可能な程度までに硬化していれば、脱型を行うことが可能であるので、加熱温度、加熱時間はポリウレタン樹脂原料の組成、製造装置の構成に合わせて適宜選択することができる。
【0076】
(脱型・切断)
成型ドラム18の成型溝23とエンドレスベルト19で形成された成型金型中で加熱硬化されたブレード部材は、成型ドラム18が回転して、脱型位置にきたときに脱型手段24により脱型開始される。なお、その脱型手段24は、成型ドラムの位置検出手段により、成型ドラム上の成型溝の脱型開始位置を検出し、稼動する。その後、成型ドラム18の回転により位置検出手段が該成型ドラム18上の成型溝23の脱型終了位置を検出し、脱型手段24が脱型を終了して、間欠的にブレード部材が脱型される。なお、脱型手段24としては、スクレーパ、吸引など公知のものから、適宜選択すればよい。なお、図1において、25は成型ドラム18から剥離されたブレード部材を成型装置から取り出し搬送する搬送手段である。
【0077】
間欠的に成型されたブレード部材は、熱収縮を考慮した所定のブレード部材の寸法であれば、余計な切断なしで、使用でき、支持部材との接着が可能である。しかし、成型されたブレード部材を所定の寸法を得るためやブレード部材のエッジ性を確保するために、切断し、所定のブレード部材とすることもできる。なお、ブレード部材の切断は、刃物による切断、抜きによる切断等、公知の方法から適したものを選択することができる。
【0078】
(離型処理)
成型ドラム18には、少なくともポリウレタン樹脂原料が接触する部分、例えば、成型溝23の底面に離型処理を施しておくことが望ましい。離型処理は、離型剤処理装置等を用い、型表面に離型剤を塗布する方法、成型ドラム18の表面にPTFE、フッ素含有メッキ等のメッキ処理を行う方法、シリコン等離型性のある樹脂をコーティングする方法等が挙げられる。すなわち、ポリウレタン樹脂の離型が可能であれば、それらの中から適当な離型処理を選択すれば良い。
【0079】
また、エンドレスベルト19についても、少なくともポリウレタン樹脂原料が、接触する部分に離型処理を施しておくことが望ましい。離型処理としては、離型剤処理装置等を用い、エンドレスベルト19表面に離型剤を塗布する方法、エンドレスベルト19の表面にPTFE、フッ素含有メッキ等のメッキ処理を行う方法、シリコン等離型性のある樹脂をコーティングする方法等が挙げられる。成型ドラムにおけると同様に、ポリウレタン樹脂の離型が可能なものから適宜選択すれば良い。
【0080】
[電子写真装置用ブレード]
本発明に係る電子写真装置用ブレードは、複写機、レーザービームプリンタ、LEDプリンタ、電子写真製版システム等の電子写真技術を応用した電子写真装置用のクリーニングブレード、現像剤量規制ブレード等として用いられるブレードである。電子写真装置用ブレードは、本発明に係る方法により製造されたブレード部材と、支持部材とが接合された構成を有する。支持部材及びブレード部材の形状は、特に限定されず、使用目的に適した形状とすることができる。
【0081】
支持部材を構成する材料については、特に限定されず、金属、樹脂等を用いることができる。具体的には、鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛メッキクロメート皮膜鋼板、クロムフリー鋼板等の金属材料、6−ナイロン、6,6−ナイロン等の樹脂材料を用いることができる。支持部材と電子写真装置用ブレード部材の接合方法は、特に限定されず、公知の方法の中から適宜選択することができる。
【0082】
(粗面処理)
本発明に係るブレード部材を現像剤量規制ブレードのブレード部材として用いる場合、ブレード部材は、少なくとも現像剤担持体に当接される部分において、現像剤と接触する部分を粗面化しておくことが望ましい。なお、現像剤量規制ブレードは、電子写真装置内において現像剤担持体との間で現像剤を摩擦帯電させつつ均一薄層状に現像剤量を規制するブレードのことである。
【0083】
近年、電子写真プロセスは、より高画質化、高速度化が進み、いかに現像剤粒子を均一に帯電し搬送するかが現像剤量規制ブレードの重要なポイントとなっている。特に現像剤量規制ブレードの表面性は現像剤の搬送力、帯電量の双方に与える影響が大きく特に重要である。従来、現像剤粒子を均一に帯電し搬送するには、この現像剤量規制ブレードの電荷制御面を滑らかにするほど良いと考えられてきた。ところが、近年電荷制御面の平坦性が、現像剤の均一な帯電及び搬送に与える影響を詳細に研究したところ、電荷制御面をある程度粗面化した方が、現像剤の均一な帯電及び搬送を実現でき、画像スジ及び画像ムラ等の画像不良を抑制することが見出された。
【0084】
従って、成型ドラム18の成型溝23の少なくとも現像剤と接触するであろうブレード部材表面を形成する底面を粗面化されていることが好ましい。これにより、製造されたブレード部材を現像剤量規制ブレードに用いた場合、少なくとも現像剤担持体に当接される部分が粗面化されているため、現像剤の均一な帯電及び搬送が実現される。
【0085】
成型ドラム18の成型溝23の底面の粗面化方法としては、例えば、物理的手法により粗面化する方法が挙げられる。物理的手法の具体例としては、サンドペーパー・粗しフィルムを用い、成型ドラム18表面を粗面化する方法、又は成型溝内に設置する方法、その他、サンドブラスト法等のショットブラスト法が挙げられる。また、化学的手法により粗面化することもできる。化学的手法の具体例としては、エッチング法、粗面化微粒子を含む被膜を形成する方法などがある。粗面化の程度としては、十点平均粗さ(RzJIS)で2乃至25μmが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明を説明する。しかし、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0087】
ブレード部材のポリウレタン樹脂原料として、下記のものを用いた。
【0088】
(A)ポリイソシアネート
MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート「ミリオネートMT」(商品名)、日本ポリウレタン工業株式会社製。
【0089】
(B)アジペート系ポリエステルポリオール
PBA2000:数平均分子量2000のポリブチレンアジペート(PBA)のポリオール、「ニッポラン4010」(商品名)、日本ポリウレタン工業株式会社製。
PBA1000:数平均分子量1000のPBAのポリオール、「ニッポラン4009」(商品名)、日本ポリウレタン工業株式会社製。
PEA2000:数平均分子量2000のポリエチレンアジペート(PEA)のポリオール、「ニッポラン4040」(商品名)、日本ポリウレタン工業株式会社製。
PBA4000:数平均分子量4000のPBAのポリオール(試作品)。
PBA800 :数平均分子量800のPBAのポリオール(試作品)。
PBA4500:数平均分子量4500のPBAのポリオール(試作品)。
【0090】
水酸基末端のPBAの数平均分子量は、下記式により算出できる。ここで、式中の水酸基価は、JIS−K1557−1に準じて算出したものである。
数平均分子量=(1000/水酸基価)×水酸基数×56.11
【0091】
(C)鎖延長剤
14BD:1,4−ブタンジオール(分子量90.1)、三菱化学株式会社製。
TMP :トリメチロールプロパン(分子量134.2)、三菱ガス化学株式会社製。
【0092】
(D)硬化用触媒
・イソシアヌレート化触媒
P15 :酢酸カリウムのエチレングリコール(EG)溶液「BABCO P15」(商品名)、エアプロダクツ ジャパン株式会社製。
・ウレタン化触媒
TEDA:トリエチレンジアミン「DABCO crystal」(商品名)、エアプロダクツ ジャパン株式会社製。
【0093】
(E)他のポリオール
(E)他のポリオールとして、上記(B)で示したPBA1000を用いた。
【0094】
[実施例1]
(熱硬化性ポリウレタン樹脂原料の調製)
MDI 32.0質量部と、PBA2000 61.0質量部を80℃窒素雰囲気下3時間反応して、NCO含有量8.8%のプレポリマーを得た。一方、14BD 3.9質量部、TMP 3.2質量部及びウレタン硬化用触媒(イソシアヌレート化触媒とウレタン化触媒の併用)を混合し、硬化剤組成物を得た。イソシアヌレート化触媒として「P15」を、ポリウレタン樹脂原料における配合量が80ppmとなるように、また、ウレタン化触媒としてTEDAを、ポリウレタン樹脂原料におけるウレタン化触媒の配合量が340ppmになるようにした。
【0095】
前記プレポリマーと硬化剤組成物をそれぞれタンク10a、10bに投入し、計量ポンプ12a、12bにより計量しながらミキシングヘッド16に供給した。ミキシングヘッド16で均一に攪拌・混合しながら、ポリウレタン樹脂原料を調整した。この時の粘度は1400mPa・sであった。
【0096】
(ブレード部材の製造)
ブレード部材の製造には、図1に示す装置を用いた。なお、成型装置の成型ドラム18は鉄製であり、回転軸17により回転自在に、概略水平に支持されている。成型ドラム18は、その外周に電子写真装置用ブレード部材となる長さ250mm、幅15mm、深さ1mmの成型溝23が長手方向を成型ドラムの回転方向と平行にして4つ配置されている。成型ドラムの外周はフッ素含有メッキ処理を施されている。本実施例においては、成型ドラム18は駆動装置により、1.0rpmで回転させた。
【0097】
エンドレスベルト19は金属製であり、成型ドラム18上の成型溝23を覆うように、成型ドラム18当接して配置されている。エンドレスベルト19のポリウレタン樹脂原料が接触する部分には、フッ素含有メッキ処理を施されている。このエンドレスベルト19は、成型ドラム18とは別の駆動機構をもつ駆動ロール20、エンドレスベルト走行を調整するガイドロール21、エンドレスベルトに張力を付与するテンションロール22、に掛け渡されている。なお、エンドレスベルト19の走行速度は成型ドラムの周速とあわせた。また、エンドレスベルト19の成形ドラム18へのテンションは90Nであり、エンドレスベルト19へのテンションロール22のテンションは30Nであった。
【0098】
ここで、別々に構成された成型ドラム18とエンドレスベルト19の駆動は、成型ドラム18とエンドレスベルト19全体のテンションを一定化するために、成型ドラム18側はモータで、また、エンドレスベルト19側はパウダーブレーキ+モータで行った
図1に示す装置において、ミキシングヘッド16にはポリウレタン樹脂原料を吐出できる吐出口16aが設けられている。ミキシングヘッド16内のポリウレタン樹脂原料は、成型ドラム18とエンドレスベルト19が当接する位置からエンドレスベルト19の移動方向に対して上流側のエンドレスベルト19上に吐出口16aより吐出される。この時、成型ドラム18及びエンドレスベルト19は所定の速度で回転及び走行しており、成型ドラムの位置検出手段により、成型溝23内の開始位置29が検出された(図4(a))時、エンドレスベルト19上の成型溝に対向する位置に原料の吐出を開始した。その後、成型ドラムの位置検出手段が成型溝23内の終了位置30(図4(a))を検出した時に、原料の吐出を終了した。なお、総ポリウレタン樹脂原料の吐出量は、成型ドラム18の成形溝23とエンドレスベルト19によって形成される成形金型に対応した必要な量であった。
【0099】
成型ドラムの位置検出手段は、成型ドラム回転モータ内臓エンコーダを使用し、成型ドラム取り付け時に成型溝の位置とエンドレスベルト上の吐出位置を照合し、予め間欠吐出タイミングの設定を行った。成型ドラム回転モータ内臓エンコーダにより位置検出された信号は、定量混合機に連動させて、ポリウレタン樹脂原料を間欠吐出した。
【0100】
ポリウレタン樹脂原料の吐出位置は、成型ドラム18とエンドレスベルト19の当接開始位置からエンドレスベルト19の移動方向に対して上流側に5mm離れたエンドレスベルト19上であって、成型溝23に対向する位置であった。また、ポリウレタン樹脂原料の吐出はエンドレスベルト表面から垂直方向に5mm上部の位置とした。
【0101】
吐出されたポリウレタン樹脂原料は、成型ドラム18の成型溝23内において成型ドラム18を内蔵したカートリッジヒータにて135℃に温度調整し、40秒間加熱硬化した。
【0102】
成型ドラム18の成形溝23とエンドレスベルト19で形成された成形金型内で硬化したブレード部材を、成型ドラムの位置検出手段により、脱型開始位置(不図示)を検出した時、脱型手段24により脱型開始する。その後、成型ドラムの位置検出手段により、脱型終了位置(不図示)を検出した時、脱型手段24の脱型を終了して、間欠的に長さ250mm、幅15mm、厚み1mmの電子写真装置用ブレードのブレード部材を得た。なお、 脱型手段としては、スクレーパを用いた。
【0103】
(現像剤量規制ブレードの製造)
得られたブレード部材を、ウレタン変性オレフィン樹脂及びアクリル変性オレフィン樹脂を含む非クロム表面処理層を有する電気亜鉛メッキ鋼板ジンコート21(商品名:新日本製鐵(株)製)製の支持部材に、接着剤にて接着して現像剤量規制ブレードを得た。なお、接着剤としてはフィルム状ホットメルト接着剤エルファン−UH(商品名:日本マタイ(株)製)を使用し、接着は加熱接着によった。
【0104】
上記で調製したポリウレタン樹脂原料の粘度、製造した現像剤量規制ブレードのゴム硬度、ゴム硬度差、硬化ムラによる表面模様、気泡・異物の混入、及び作製した現像剤量規制ブレードを画像形成装置に組み込んで得られる画像評価について下記方法で評価した。得られた結果を表1に示す。
【0105】
(粘度の測定)
上記で調製したポリウレタン樹脂原料の粘度を、ブルックフィールド社製デジタル粘度計レオメータDV−III(商品名)を用いて、測定を行った。測定は円盤形スピンドルを使用し、スピンドル回転数を10rpmにて測定を行った。
【0106】
(ゴム硬度及びゴム硬度差の測定)
ゴム硬度はH.W.ウォーレス(WALLACE)社製のウォーレス微小硬度計(商品名)を用い、JIS K6253に基づいて国際ゴム硬さ(IRHD)を測定した。製造したブレード部材の中央部、その両側へ50mm、100mm離れた箇所の計5箇所を測定し、それらの平均値をゴム硬度とし、それらの最大値と最小値の差を硬度差とした。
【0107】
(硬化ムラ(表面模様)の評価)
表面の硬化ムラは、製造したブレード部材の表面を目視により確認し、表面模様の有無を観察し、以下の基準で評価した。
○:表面模様が無い。
△:外観上識別できる表面模様が有るが、問題なく使用できる程度。
×:画像不良が発生するレベルの表面模様が有る。
【0108】
(気泡・異物の混入の評価)
気泡の混入、異物の混入は、製造したブレード部材の表面を目視により気泡、異物の有無を確認し、以下の基準で評価した。
○:気泡(異物)の混入は無い。
△:気泡(異物)の混入が僅かに見られるが、問題ない程度。
×:気泡・異物の混入が有り、使用には問題がある。
【0109】
(画像評価)
作製した現像剤量規制ブレードを組み込んだ画像形成装置「LASER SHOT−LBP」(商品名、キヤノン株式会社製)用カートリッジを用いて、画像評価用標準チャートを連続10枚画出し、出力10枚目の画像を目視により観察し、下記基準で評価した。なお、画像評価は、ゴースト、画像スジについて行った。
【0110】
・ゴースト
○:ゴーストの発生は確認されない。
△:僅かにゴーストが確認されるが、支障がない程度。
×:はっきりゴーストが確認される。
【0111】
・画像スジ
○:画像スジの発生は確認されない。
△:画像スジが画像上の僅かな変化として確認されるが、支障がない程度。
×:画像スジが画像上の大きな変化として確認される。
【0112】
[実施例2]
硬化剤組成物をPBA1000 14.9質量部、14BD 2.6質量部,TMP 2.1質量部及び実施例1と同濃度になる量の硬化用触媒から製造した。一方、実施例1と同じプレポリマーを80.4質量部(MDI 27.7質量部、PBA2000 52.7質量部)を用意した。以下実施例1と同様にしてブレード部材を製造し、さらに現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0113】
なお、前記ポリウレタン樹脂原料における成分(B)に該当するPBA2000と成分(E)の他のポリオールに該当するPBA1000質量比率(D)/(E)0.28であり、これらから算出されるポリオールの数平均分子量は1780であった。また、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度は1300mPa・sであった。
【0114】
[実施例3]
成分(B)としてPEA2000を用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに、現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。なお、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度は1400mPa・sであった。
【0115】
[実施例4]
成分(B)として試作したPBA4000を用い、MDIの仕込み量を調整して得たNCO含有量8.8%のプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例1と同様の評価をした。得られた結果を表1に示す。なお、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度は1400mPa・sであった。
【0116】
[実施例5]
成分(B)としてBPA1000を用い、MDIの仕込み量を調整して得たNCO含有量8.8%のプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに、現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。なお、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度は2000mPa・sであった。
【0117】
[実施例6]
NCO含有量15%のプレポリマーを、MDI 35.9質量部とBPA2000 34.7質量部を80℃窒素雰囲気下3時間反応させて得た。一方、硬化剤組成物をBPA1000 22.3質量部、14BD 3.9質量部、TMP 3.2質量部及び実施例1と同濃度になる量の硬化用触媒を混合して調製した。硬化用触媒の配合量は実施例1と同様にした。以下実施例1と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに、現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例1と同様の評価をした。得られた結果を表1に示す。
【0118】
なお、ポリウレタン樹脂原料における成分(B)に該当するPBA2000と成分(E)に該当するPBA1000の質量比率(E)/(B)は0.64であり、これらから算出されるポリオールの数平均分子量は1600であった。また、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度は500mPa・sであった。
【0119】
[実施例7](粘度3000mPa・s)
NCO含有量の5%のプレポリマーを、MDI 21.4質量部とBPA2000 66.4質量部を80℃窒素雰囲気下3時間反応させて得た。一方、BPA1000 9.3質量部、14BD 1.6質量部、TMP 1.3質量部及び実施例1同様の同濃度になる量の硬化用触媒を混合して、硬化剤組成物を調製した。以下、実施例1と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに、現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
【0120】
なお、ポリウレタン樹脂原料における成分(B)に該当するPBA2000と成分(E)に該当するPBA1000の質量比率(E)/(B)は0.14であり、これらから算出されるポリオールの数平均分子量は1880であった。また、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度は3000mPa・sであった。
【0121】
[実施例8乃至11]
イソシアヌレート化触媒およびウレタン化触媒の配合量を表1に示すように用いる以外は実施例2と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに、現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例2と同様の評価をした。得られた結果を表1に示す。なお、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度はいずれも1400mPa・sであった。
【0122】
[比較例1、2]
成分(B)として試作したBPA800またはBPA500を用い、MDIの量を調節して得たNCO含有量8.8質量%のプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。なお、この時のポリウレタン原料の粘度はそれぞれ550mPa・s(比較例1)、2000mPa・s(比較例2)であった。
【0123】
[比較例3]
NCO含有量20%のプレポリマーをMDI 41.2質量部とBPA2000 23.1質量部を80℃窒素雰囲気下3時間反応させて得た。一方、BPA1000 27.1質量部、14BD 4.7質量部、TMP 3.9質量部及び実施例1と同濃度となる硬化用触媒を混合し、硬化剤組成物を調製した。以下、実施例1と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0124】
なお、ポリウレタン樹脂原料における成分(B)に該当するPBA2000と成分(E)に該当するPBA1000の質量比率(E)/(B)は1.17であり、これらから算出されるポリオールの数平均分子量は1460であった。また、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度は420mPa・sであった。
【0125】
[比較例4]
ミキシングヘッド16内で均一に攪拌・混合しながら、吐出時のポリウレタン樹脂原料の粘度が3800mPa・sになるまでポリウレタン樹脂原料を滞留させた以外は実施例7と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに、現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例7と同様の評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0126】
[比較例5乃至8]
表2に示すように硬化用触媒組成をする以外は実施例2と同様にして、ブレード部材を製造し、さらに現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例2と同様の評価を行った。結果を表2に示す。なお、この時のポリウレタン樹脂原料の粘度は、触媒組成に応じて変化し、それぞれ1200mPa・s(比較例5)、500mPa・s(比較例6)、3000mPa・s(比較例7)、1400mPa・s(比較例8)であった。
【0127】
[比較例9]
ポリウレタン樹脂原料の成型溝23へ直接吐出できるように、ポリウレタン樹脂原料の吐出位置を図1における成型ドラム18の頂点27の垂直方向に5mm上部に移した。この装置を用い、実施例2と同じポリウレタン樹脂原料を用い、成型溝23へ直接ポリウレタン樹脂原料を吐出し、以下、実施例2と同様の条件でブレード部材を製造し、さらに、現像剤量規制ブレードを作製した。これらについて、実施例2と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
【表1】

【0129】
【表2】

【0130】
[実施例12]
成型ドラム18として、その外周にブレード部材となる長さ250mm、幅15mm、深さ1mmの閉じられた成型溝23を、その長手方向を成型ドラムの回転方向に直行して、20箇所設けたものを用いた(図4(b))。一方、ポリウレタン樹脂原料として実施例1と同じものを用いた。
【0131】
成型ドラム18の回転により、成形溝23に設けられた吐出開始位置29を検出したら、一旦装置を停止し、ポリウレタン樹脂原料を吐出口16aより吐出を開始し、吐出口を成型ドラム18(エンドレスベルト19)の移動方向と垂直方向に移動させた。成形ドラムの位置検出手段が成形溝23の吐出終了位置30を検出すると、成形ドラムの位置検出手段及び吐出口16aの移動を停止し、停止後にポリウレタン樹脂原料の吐出を停止した。その後、再び成型ドラム18及びエンドレスベルト19を回転(走行)させた。一方、成形ドラムの位置検出手段及び吐出口は次の成型(吐出)に供えて、そのまま待機させた。なお、成形ドラムの位置検出手段及び吐出口16aは、元の位置に戻して、次の成型に備えさせることも可能である。
【0132】
ポリウレタン樹脂原料のエンドレスベルト19上への吐出位置の移動は、混合機の吐出口16aをNCにより、移動させることによった。なお、成型ドラム18の回転、停止を繰り返し、ポリウレタン樹脂原料が成型ドラム18の成型溝23とエンドレスベルト19で形成される成型金型中での加熱硬化時間が40秒となるようにした。また、成型ドラムは内蔵したカートリッジヒータにて135℃に温度調整した。
【0133】
成型ドラムの位置検出手段は、成型ドラム回転モータ内臓エンコーダを使用し、成型ドラム取り付け時に成型溝23の位置とエンドレスベルト19上の吐出位置を照合し、予め間欠吐出位置を設定した。また、成型ドラム回転モータ内蔵エンコーダにより位置検出された信号は、定量混合機と連動して、間欠吐出を行った。
【0134】
成型金型内で加熱硬化して作成されたブレード部材は、成型ドラムから脱型手段により取り出され、以下実施例1と同様にして現像剤量規制ブレードを作製した。得られたブレード部材、現像剤量規制ブレードの評価を実施例1と同様に行ったところ、実施例1と同等の結果を得た。
【0135】
[実施例13]
実施例1において、ポリウレタン樹脂原料の吐出位置を、成型ドラム18とエンドレスベルト19の当接開始位置から上流側に350mm離れたエンドレスベルト19上の成型溝23に対向する位置とした。また、ポリウレタン樹脂原料の吐出はエンドレスベルト表面から垂直上方に200mmとした。その他は実施例1と同様にして、ブレード部材を製造し、現像剤量規制ブレードを作製した。得られたブレード部材、現像剤量規制ブレードの評価を実施例1と同様に行ったところ、実施例1と同等の結果を得た。
【0136】
[実施例14]
実施例1において、ポリウレタン樹脂原料の吐出位置を、成型ドラム18とエンドレスベルト19の当接開始位置から上流側に400mm離れたエンドレスベルト19上の成形溝23に対向した位置とした他は、実施例1と同様にして、ブレード部材を製造した。これを用いて実施例1と同様に現像剤量規制ブレードを作製したが、成型溝23よりもポリウレタン樹脂原料の液が広がってしまったために、形状安定性が不足で、評価不可のブレード部材が幾つかできた。なお、良好な形状のものを用いて作製した現像剤量規制ブレードは実施例1と同様に良好な性能であった。
【0137】
[実施例15]
実施例1において、ポリウレタン樹脂原料の吐出をエンドレスベルト表面から垂直方向に250mm上部の位置とした他は、実施例1と同様にして、ブレード部材を製造した。得られたブレード部材を目視にて観察したところ、気泡等が混入したものがあった。なお、良好な形状のものを用いて作製した現像剤量規制ブレードは実施例1と同様に良好な性能であった。
【0138】
上記の結果より、実施例では、硬化速度の速いポリウレタン樹脂原料を使用しても、硬度等物性のムラが減少し、外観上の模様や気泡混入の発生が低減し、画像評価も良好な結果が得られた。これに対して、比較例では、硬化後のポリウレタン樹脂の硬度差が大きく、表面に硬化ムラ模様が発生し、気泡・異物の混入が発生し画像不良が発生した。
【0139】
なお、実施例で使用した以外のポリイソシアネート、アジペート系ポリエステルポリオール、鎖延長剤、イソシアヌレート化触媒及びウレタン化触媒について、詳細な説明で記載したものを使用した場合も、同様に良好な結果が得られた。
【0140】
また、長さ250mm、幅15mm、深さ2mmの成型溝23が形成されている成型ドラムを用い、実施例1〜11、比較例1〜9と同様にして、長さ250mm、幅15mm、厚み2mmのブレード部材を作成した。その後、刃物により幅14mmになるように切断して、エッジをつけた後、実施例1と同様にして、クリーニングブレード用支持部材に接着し、クリーニングブレードを作製した。得られたクリーニングブレードを「LASERSHOT−LBP」(商品名)用カートリッジに組み込み、画像出力して、クリーニング不良による画像スジの発生の様子を確認した。その結果、実施例1〜11と同様にして製造したクリーニングブレードは良好なクリーニング機能が発揮して、良好な画像が得られた。しかし、比較例1〜9と同様にして製造したものでは、ブレード部材のエッジ部での欠けやすり抜けによるクリーニング不良や画像スジが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明によれば、硬化時間の速いポリウレタン樹脂原料を使用して、硬度等物性のムラが少なく、外観上の模様や気泡混入の発生が低減した高品質な電子写真装置用ブレード部材を個別に間欠的に成型することができ、生産効率が高く、自動化が容易な構造であり、設備コストも安くできる。
【0142】
更に、電子写真技術分野に限らず、ブレードを使用する分野に対しても高品質なブレードを安価に提供することができる。
【符号の説明】
【0143】
10a、10b タンク
12a、12b 計量ポンプ
14a、14b 吐出用配管
15a、15b 循環用配管
16 ミキシングヘッド
16a 吐出口
17 成型ドラム駆動回転軸
18 成型ドラム
19 エンドレスベルト
20 ベルト駆動ロール対
21 ガイドロール
22 テンションロール
23 成型溝(成型金型)
24 脱型手段
25 搬送手段
27 成型ドラムの頂点
29 吐出開始位置
30 吐出終了位置
31 成型ドラム回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に成型溝を有する成型ドラムと該成型ドラムの外周面に当接するエンドレスベルトで形成されるブレード部材成型金型を用い、該金型内でポリウレタン樹脂原料を硬化させる電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法であって、
該成型溝は、少なくとも該ブレード部材の寸法を有する形状であり、かつ、成型ドラムの回転方向と長手方向が同じか直交する様に少なくとも1つ形成されており、
エンドレスベルト上の成型ドラムと当接する上流側で、移動に伴って成型ドラムと当接する際に成型ドラム上の成型溝と同期する位置のベルト上にポリウレタン樹脂原料が間欠的に供給され、
該間欠的に供給されたポリウレタン樹脂原料が、成型ドラム及びエンドレスベルトの移動に伴い、成形溝とエンドレスベルトで形成されるブレード部材成型金型中で、成型ドラムの回転と共に加熱硬化され、
かつ、該ポリウレタン樹脂原料が、少なくとも、
(A)ポリイソシアネート、
(B)数平均分子量が1000乃至4000のアジペート系ポリエステルポリオール、
(C)分子量200以下の鎖延長剤、及び、
(D)ウレタン硬化用触媒として、イソシアヌレート化触媒20乃至500ppmとウレタン化触媒200乃至1500ppm
を含み、かつ、その粘度が500乃至3000mPa・sである
ことを特徴とする電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂原料が間欠的に供給される位置が、前記成型ドラムと前記エンドレスベルトとが当接開始点からエンドレスベルトの移動方向の上流側に5mm以上、350mmで、垂直上方に5mm以上、200mm以内にあることを特徴とする請求項1に記載の電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂原料が、さらに、前記(B)アジペート系ポリエステルポリオールの数平均分子量より小さく、前記(C)鎖延長剤の分子量よりも大きい、数平均分子量を有する(E)ポリオールを含有する請求項1又は2に記載の電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法。
【請求項4】
前記ポリウレタン樹脂原料に含まれる、前記(B)アジペート系ポリエステルポリオールの質量に対する前記(E)ポリオールの質量比率(E)/(B)が、0.02乃至0.60であり、かつ、混合したポリオールでの数平均分子量が1000乃至3000である請求項3に記載の電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法。
【請求項5】
少なくとも前記成型ドラム及び又は前記エンドレスベルトのポリウレタン樹脂原料が接触する部分が離型処理されている請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法。
【請求項6】
前記電子写真装置用ブレードが現像剤量規制ブレードであり、そのブレード部材を製造する前記成型溝の底面の、少なくとも、製造されたブレード部材を現像剤量規制ブレードとしたときに該ブレード部材が現像剤担持体と当接する部分に相当する部分が粗面処理されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造方法。
【請求項7】
外周面に成型溝を形成した成型ドラムと該成型ドラムの外周面に当接されたエンドレスベルトを用いた電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造装置であって、
該成型溝は、長手方向を成型ドラムの回転方向と平行或いは直交にしたブレード部材の形状で、少なくとも1つ設けられており、
ポリウレタン樹脂原料の計量・混合・攪拌手段の吐出口は、該エンドレスベルト上にポリウレタン樹脂原料が吐出できるように、成型ドラムとエンドレスベルトが当接開始点よりエンドレスベルトの移動方向の上流側で、エンドレスベルトの移動及び成型ドラムの回転により、該成型溝に対向する位置の垂直上方に設けられ、
該エンドレスベルトは、駆動ロール対、ガイドロール及びテンションロールにかけまわされ、該成型ドラムと当接されて、該成型溝とブレード部材を成型するための成型金型を形成しており、
該エンドレスベルトが該成型ドラムから離れる位置に、該成型金型中で加熱硬化されて形成されたブレード部材を成型ドラムから脱型する脱型手段が設けられている
ことを特徴とする電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造装置。
【請求項8】
前記成型ドラム及び又は前記エンドレスベルトは、少なくとも、ポリウレタン樹脂原料と接触する部分が離型処理されている請求項6に記載の電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造装置。
【請求項9】
前記電子写真装置用ブレードが現像剤量規制ブレードであり、そのブレード部材の製造装置の前記成型溝の底面の、少なくとも、製造されたブレード部材を現像剤量規制ブレードとしたときに該ブレード部材が現像剤担持体と当接する部分に相当する部分が粗面処理されている請求項6又は7に記載の電子写真装置用ブレードのブレード部材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−192603(P2012−192603A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57748(P2011−57748)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】