説明

ブレード部材成型用金型

【課題】良好な剥離性および脱型性を長期に渡って継続することのできる、電子写真装置用ブレード部材の成型型を提供する。
【解決手段】国際ゴム硬度(IRHD)が60°以上90°以下である電子写真装置用ブレード部材を形成するための、ブレード部材成型用金型において、ブレード部材が熱硬化型ウレタンエラストマーを主剤とし、ブレード部材成型用金型表面に少なくともフッ素樹脂を含有する層を有し、フッ素樹脂を含有する層の膜厚が5μm以上、100μm以下であり、かつ、フッ素樹脂を含有する層を有する金型表面の十点平均粗さ(RzJIS)が2μm以上、25μm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した画像成型装置に用いられるブレードの製造に際し用いるブレード部材成型用金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の電子写真装置の画像成型工程に用いる現像装置において、現像剤(トナー)を蓄える現像剤容器の開口部に、一部を露出して設けられるローラーなどの現像剤担持体が用いられている。また、あわせて、この現像剤担持体の表面に当接するゴム材などで形成されたブレード部材を備えた現像剤量規制ブレードが用いられている。
【0003】
また、電子写真装置の感光体クリーニング工程に用いるクリーニング装置としては、記録用紙に転写を行った後、感光体上に残存するトナーを除去して繰り返し転写を行うために、支持体にブレード部材が接合されたクリーニングブレードが多用されている。
【0004】
現像剤量規制ブレードは、一般に、ゴム板、金属性薄板、樹脂板、およびこれらの積層体から形成される。特に、現像剤担持体に圧接されるブレード部材と、このブレード部材を所定の位置に支持する支持部材とから作製されることが多く、用いられるブレード部材としては、耐磨耗性に優れていることから、ポリウレタンエラストマーが通常使用される。
【0005】
クリーニングブレードは、装置等にブレードを貼り付けるための金属製の支持部材を有し、その支持部材に弾性体からなるブレード部材が一体化して形成されている。ブレード部材は、耐磨耗性や永久歪みに優れていることから、ポリウレタンエラストマーが通常使用される。
【0006】
近年、電子写真プロセスは、より高画質化、高速度化が進み、クリーニングブレード、現像剤量規制ブレードともより高性能が要求されている。特に現像剤量規制ブレードでは、現像剤が現像剤担持体表面に帯電量の揃った状態で薄く均一に担持されることが求められており、ブレード部材表面の表面性が現像剤の搬送力、帯電量に大きく影響する事が分かっている。
【0007】
また、クリーニングブレードにおいても、最近の小粒径現像剤に対して、感光体上の残存現像剤を完全に除去しなければならない為、ブレード部材の寸法高精度化が求められている。また、感光体に接触するクリーニングブレードの端面は表面粗さ精度(エッジ精度)が重要であり、エッジに傷等があると、クリーニング不良が発生し、記録紙上にスジとなってしまう場合がある。その為、ブレード部材の、ブレード部材を成型するための金型面に接する部分の表面性も重要になってくる。
【0008】
このような、寸法精度、表面性に対して、より高精度な電子写真装置用ブレードを安定して安価に作製するには、成型型が重要である。繰り返し成型するにあたり、良好な剥離性、脱型性を長期に渡って継続できる成型型が、寸法精度、表面性に優れた電子写真装置用ブレードを安価に製造する為に、望まれている。
【0009】
このようなポリウレタン製のブレード部材を有してなるクリーニングブレード及び現像剤量規制ブレードは、従来からポリウレタン形成材料を用いた注型成型操作を行うことによって製造されている。例えば、上型と下型で構成される成型型のブレード部形成用のキャビティ内に支持部材の方端部を突出した状態で配置し、この成型型内に、液状組成物を注入し、これを硬化反応させ、ついで硬化物を脱型することによりブレード部材を製造する事ができる。また、高速で回転する加熱した円筒形状の成型金型の内面に熱硬化性樹脂を流し込み、平面形状のシートを得る遠心成型法によって製造する事もできる。
【0010】
通常、成型型から離型させるために型内面に離型剤を塗布する方法が用いられる。用いられる離型剤は、シリコン系、フッ素系又はワックス系が多用されている。しかし、離型剤を使用すると、ブレード部材に残留した離型剤を除去するための洗浄工程が必要となり、工程数の増加につながる。
【0011】
更に、離型剤はブレード部材に移行されていくため、離型剤の塗布は毎ショット必要となり、塗布の均一性、塗布量の管理等、塗布工程の技術も困難である。
【0012】
特許文献1に、厚み精度に優れ、金型に精密な加工を施す事が無く、成型後にシートの洗浄もする必要が無い電子写真装置用ブレードの製造方法が記載される。この文献に開示される技術では、遠心成型法を用いた円筒形状の金型の内側に無溶媒2成分液状シリコーンゴムを流し込んでシリコーンゴムの成型体を形成した後、電子写真装置用ブレードの材料を流し込んで硬化させる。これによって、厚み精度を0.1mm以下にすることに効果があるとされている。しかし、この方法では、長期に渡って成型、脱型を繰り返すと、揮発成分が揮発する事によりシリコーンゴムが変形し、ちぎれ、脱型不良、模様(しわ)の発生等の問題が発生してしまう場合がある。
【0013】
特許文献2に、ブレードの接着面を形成するための接着面形成部と、当接面を形成する当接面形成部を備え、接着面形成部のみにフッ素樹脂含有メッキが施された金型で射出成型するブレードの製造方法が記載される。この文献に開示される技術では、フッ素樹脂含有メッキが施された金型で成型することによってブレードの当接部に模様(しわ)が生じることが適切に防止され、精度の高いブレードの製造に効果があるとされている。しかし、この方法では、ポリウレタンエラストマーのような反応基を持ち、機械的特性が高いゴムに対して長期に渡り成型、脱型を繰り返すと、メッキ表面が劣化し、離型性が悪化し、ちぎれ、脱型不良、模様(しわ)の発生等の問題が発生してしまう場合がある。
【特許文献1】特開2001−305858号公報
【特許文献2】特開2006−349933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
即ち、寸法精度、表面性に対し、より高精度な電子写真用ブレード部材を得るために、良好な剥離性、脱型性を長期に渡って継続できるブレード部材成型用金型が求められている。
【0015】
本発明の目的は、良好な剥離性および脱型性を長期に渡って継続することのできる、電子写真装置用ブレード部材の成型型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は以下のブレード部材成型用金型を提案するものである。
【0017】
国際ゴム硬度(IRHD)が60°以上90°以下である電子写真装置用ブレード部材を形成するための、ブレード部材成型用金型において、
該ブレード部材が熱硬化型ウレタンエラストマーを主剤とするものであって、
該ブレード部材成型用金型表面に少なくともフッ素樹脂を含有する層を有し、
該フッ素樹脂を含有する層の膜厚が5μm以上、100μm以下であり、かつ、
該フッ素樹脂を含有する層を有する金型表面の十点平均粗さ(RzJIS)が2μm以上、25μm以下である
ことを特徴とするブレード部材成型用金型。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、良好な剥離性および脱型性を長期に渡って継続することのできる、電子写真装置用ブレード部材の成型型が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、電子写真装置用ブレード部材を形成するための、ブレード部材成型用金型に関する。このブレード部材は、熱硬化型ウレタンエラストマーを主剤とする。またブレード部材の国際ゴム硬度(IRHD)が60°以上90°以下である。
【0020】
金型は、少なくとも前記熱硬化型ウレタンエラストマーが接触する面に少なくともフッ素樹脂を含有する層を有する。
【0021】
そして、フッ素樹脂を含有する層の膜厚が5μm以上、100μm以下である。また、フッ素樹脂を含有する層を有する金型表面の十点平均粗さ(RzJIS)が2μm以上、25μm以下である。
【0022】
本発明のブレード部材成型用金型によれば、簡単な手段によって、熱硬化型ウレタンエラストマーを成型型から剥離しやすく効率よく脱型する事が可能となり、脱型時のちぎれ、模様(しわ)の発生等の不良を低減する事ができる。また、ブレード部材成型用金型を長期に渡って繰り返し使用でき、安定した生産性を得る事ができる。さらに表面性が良好で、寸法精度が高く、均一なウレタンエラストマーの製造が可能となり、特に、電子写真装置用のクリーニングブレードや現像剤量規制ブレード等のブレード部材の製造に対して優位性を発揮する。
【0023】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0024】
図1には、現像剤担持体に摺動するブレード部材10と、ブレード部材が接着される支持部材11とを有する現像剤量規制ブレードの例を示した。ここで10と11の間はブレード部材10が支持部材11に接着される面(接着面)であり、14は現像剤担持体に摺動される面(摺動面)であり、現像剤の電荷を制御する面(電荷制御面)である。この様なブレード部材10及び支持部材11を積層して作製された現像剤量規制ブレードが現像剤容器(不図示)に固定されており、摺動部14で現像剤担持体12に圧接され、摺動部14を通過する現像剤粒子の量を規制する様子を図示した。
【0025】
現像剤担持体12が矢印の方向に回転されることにより、現像剤(トナー粒子)13が摺動部14に搬送される。この時現像剤担持体12に現像剤量規制ブレードの電荷を制御する面(電荷制御面)が当接している為、現像剤粒子に所定の摩擦帯電を付与させ、さらに摺動部14をすり抜け感光体まで搬送される現像剤粒子の量を規制することができる。
【0026】
図2には、感光体22に当接するブレード部材20と、ブレード部材が接着される支持部材21とを有する、クリーニングブレードの例を示した。ここで20と21の間はブレード部材20が支持部材21に接着される面(接着面)であり、24は感光体に当接する部分であり、残存した現像剤23を除去するエッジ部分である。この様なブレード部材20及び支持部材21により作製されたクリーニングブレードがクリーニング容器(不図示)に固定されており、エッジ部24で感光体22に圧接され、当接部24により現像剤が除去される様子を示した。
【0027】
(電子写真装置用ブレード)
ここで、電子写真装置用ブレードの製造方法、材料等について説明する。
【0028】
電子写真装置用ブレードは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ等の電子写真プロセスを利用した画像形成装置に用いられる弾性ブレードに関するものである。これらの弾性ブレードは一般に鋼板等の剛性の有する支持部材と、ゴム弾性を有するブレード部材及び接着剤層から構成される。
【0029】
支持部材は特に限定されるものではなく、クロメート処理及び潤滑樹脂等の表面処理鋼板、リン青銅、ばね鋼等の弾性金属板より加工した支持板金や、プラスチックやセラミックなど成型品等が挙げられる。
【0030】
ブレード部材は熱硬化型ウレタンエラストマーを主剤とするものである。熱硬化型ウレタンエラストマーは、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤および触媒を用い、プレポリマー法、セミワンショット法に準じて製造されている。
【0031】
例えば、プレポリマー法の場合は、ポリイソシアネートとポリオールを用いてプレポリマーを調製し、このプレポリマーに鎖延長剤および触媒を添加したのち、これを成型用の金型に注入して硬化させるものである。
【0032】
ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(1,5−NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート(PAPI)等があげられる。これらのなか中でも、MDIを用いることが好ましい。
【0033】
ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、カプロラクトンエステルポリオール、ポリカーボネートエステルポリオール、シリコーンポリオール等を挙げることができ、数平均分子量が1500〜5000であることが好ましい。数平均分子量が1500以上であると、得られるウレタンゴムの物性が優れ、また5000以下であると、プレポリマーの粘度が高くなりハンドリングが困難になることを優れて防止できる。
【0034】
ポリオールとして、低分子量の鎖延長剤を併用することができる。例えば、グリコールが使用され、このようなグリコールとしては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、1,6−ヘキサンジオール(1,6−HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコール等が挙げられる。また、上記グリコールの他に、その他の多価アルコールを使用することができ、このような多価アルコールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0035】
触媒としては、一般に用いられるポリウレタン硬化用の触媒を使用することができ、例えば三級アミン触媒が挙げられる。
【0036】
さらに、本発明におけるブレード部材の国際ゴム硬度(IRHD)は60°以上90°以下である。硬度が60°以上であると、現像剤量規制ブレードとして、現像担持体に対し、現像剤に充分な電荷を付与することができる当接圧を有することになり、得られる画像においてゴーストや画像ムラの発生を抑制することができる。さらに、クリーニングブレードとして、感光体に対して適当な当接圧を有する事になり、残存した現像剤を効率的に除去することが可能になる。また、90°以下であれば、現像剤量規制ブレードとして、現像剤担持体へ均一な膜厚で現像剤の薄膜を形成することができ、且つ、ブレード部材表面への現像剤の融着が生じるような当接圧とならず、得られる画像において画像スジの発生を抑制することができる。さらに、クリーニングブレードとして、エッジ欠けが発生することなく、感光体に当接することが可能になる。
【0037】
国際ゴム硬度(IRHD)は、微小硬度計を用い、JIS K 6253に基づいて測定した値とすることができる。
【0038】
また、ブレード部材成型用金型表面は少なくともフッ素樹脂を含有する層を有するものである。フッ素樹脂の離型性、非粘着性、滑り性により、反応基を持つポリウレタンエラストマーの成型金型にも優れた離型性を有する。
【0039】
また、前期フッ素樹脂は、四フッ化エチレン樹脂であることが好ましい。かかる場合には、四フッ化エチレン樹脂を含有する層の離型性、非粘着性、滑り性によりポリウレタンエラストマーの成型金型に優れた離型性を有し、ちぎれや模様(しわ)が生じることが適切に防止され、精度の高いブレード部材を成型することができる。
【0040】
また、前期フッ素樹脂を含有する層は、フッ素樹脂を含有するニッケルによるフッ素樹脂含有ニッケルメッキ皮膜であることが好ましい。前期フッ素樹脂含有ニッケルメッキ皮膜は、例えば、ニッケルメッキ層を形成し、フッ素樹脂を含浸させて形成する方法がある。かかる場合には、フッ素樹脂含有ニッケルメッキ層の離型性、非粘着性、滑り性によりポリウレタンエラストマーの成型金型に優れた離型性を有し、ちぎれや模様(しわ)が生じることが適切に防止され、精度の高いブレード部材を成型することができる。
【0041】
さらに、フッ素樹脂を含有する層の膜厚は5μm以上、100μm以下である。フッ素樹脂を含有する層が熱硬化型ウレタンエラストマーの離型性に影響するため、層の膜厚が重要である。層の膜厚が5μm未満であると、フッ素樹脂層の成膜性が困難となり、均一な離型性が得られなくなってしまう。その結果、ブレード部材としてちぎれ、破れ等の不良が発生してしまう。また、100μmより大きいと、フッ素樹脂層の強度不足となり、ポリウレタンエラストマーの成型、脱型を繰り返すと、離型性が維持できなくなる。その結果、ブレード部材として、ちぎれ、破れ、歪み、シワ等の不良が発生してしまう。
【0042】
また、フッ素樹脂を含有する層を有する金型表面の十点平均粗さ(RzJIS)は、2μm以上、25μm以下である。層表面の十点平均粗さ(RzJIS)が2μm未満であると、成型体であるポリウレタンエラストマーと金型内壁面との接触面積が増加するため、満足する離型性が得られない。また、層表面の十点平均粗さ(RzJIS)が25μmより大きいと、表面の凹凸がアンカー効果をもたらし、良好な離型性を得る事ができない。
【0043】
また本発明の成型型は遠心成型型、注型型に限定されるものではなく、他の成型方法においても適用することができる。他の成型方法においても、成型型面にフッ素樹脂を含有する層を有することにより、熱硬化型ウレタンエラストマーを成型型から剥離しやすく効率よく脱型する事が可能となり、脱型時のちぎれ、模様(しわ)の発生等の不良を低減することができる。また、ブレード部材成型用金型を長期に渡って繰り返し使用でき、安定した生産性を得る事ができる。さらに表面性が良好で、寸法精度が高く、均一なウレタンエラストマーの製造が可能となり、特に、電子写真装置用のクリーニングブレードや現像剤量規制ブレード等のブレード部材の製造に対して優位性を発揮する。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例について比較例と併せて説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
本実施例では、現像剤量規制ブレードを作成し、その効果を確認した。
【0046】
[実施例1]
本発明の現像剤量規制ブレードを以下のように作製した。
【0047】
支持部材としてウレタン変性オレフィン樹脂及びアクリル変性オレフィン樹脂を含む非クロム表面処理層を有する電気亜鉛メッキ鋼板ジンコート21(商品名:新日本製鐵(株)製)を使用した。これに、フィルム状ホットメルト接着剤エルファン−UH(商品名:日本マタイ(株)製)を仮接着した。
【0048】
次いで、アジペート系ウレタンプレポリマー100質量部(数平均分子量Mn:2000、NCO含有量7.0質量%)と、1、4−ブタンジオール3.7質量部、トリメチロールプロパン1.9質量部を注型機ミキシングチャンバー内で混合攪拌して熱硬化型ウレタンエラストマー原料混合物を得た。得られた原料混合物を遠心成型機に注入して130℃/1時間加熱硬化し、脱型し厚み1mmのシート状熱硬化型ポリウレタンエラストマーを得た。得られたポリウレタンエラストマーの国際ゴム硬度は70°であった。さらに得られたポリウレタンエラストマーを所定寸法に裁断し、ブレード部材とし、このブレード部材と上記ホットメルト接着剤を仮接着した支持板金とを加熱接着し、現像剤量規制ブレードを得た。
【0049】
この時の遠心成型機内の成型型表面は、フッ素樹脂を含有する層を有している。かかるフッ素樹脂として四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)を用いた。成型型に対して、無電解ニッケルをベースとし、この粒子状に析出させた無電解ニッケルに、四フッ化エチレン樹脂を含浸させ熱処理を行い、フッ素樹脂含有ニッケル皮膜を形成した。このときの層の膜厚は5μmとした。また型表面のブラスト加工を行いフッ素樹脂含有層表面の十点平均粗さ(RzJIS)を2μmとした。
【0050】
(硬度の評価方法)
国際ゴム硬度(IRHD)の測定は、ウォーレス(H.W.WALLACE)社製ウォーレス微小硬度計を用い、JIS K 6253に基づいて行った。
【0051】
(膜厚の測定方法)
金型表面のフッ素樹脂含有層の膜厚は、断面から電子顕微鏡により観察した。
【0052】
(粗さの評価方法)
ブレード部材の電荷制御面の十点平均粗さ(RzJIS)は、表面粗さ測定機SE3500(メーカー名:小坂研究所(株)製)を用い、JIS B 0601(2001年度版)に基づいて計測した。
【0053】
(離型性の評価方法)
離型性の評価として、130℃の温度を保持した上記成型型内に前記液状エラストマー原料(原料混合物)を投入して硬化・脱型する作業を繰り返し、離型耐久性について評価した。得られた薄膜円筒状のポリウレンエラストマ−成型体の、遠心成型型から脱型するときの剥離しやすさについて、1回目、50回目、80回目の離型性を以下の基準にて評価した。結果を表1に示す。
◎:成型体にちぎれ、脱型不良が原因である模様(しわ)等の発生が無く、容易な力での離型が可能であり良好な離型性を示す。
○:成型体にちぎれ、脱型不良が原因である模様(しわ)等の発生がない。
△:成型体の金型への密着性が増加し、成型体に脱型不良が原因である模様(しわ)等の発生がある。
×:成型体の金型への付着が発生し、成型体にちぎれが発生し、離型が困難である。
−:以降成型不可能。
【0054】
(画像評価)
このようにして作製した現像剤量規制ブレードについて、LASER SHOT−LBP(商品名。キヤノン社製レーザービームプリンター)用カートリッジに組み込み、画像スジについて評価を行った。画像スジの発生が見られなかったものを〇、多少の画像スジが確認できたものの実用上問題ないレベルであるものを△、画像スジの発生が確認でき実用上問題あるレベルであったものを×とした。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
金型表面に用いた四フッ化エチレン樹脂の微粒子を含有したニッケル皮膜の処理時間の調整により、フッ素樹脂を含有する層の膜厚を100μmとした。他は実施例1と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、金型表面(実際にはフッ素樹脂含有層表面)の十点平均粗さ(RzJIS)を測定し、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例3]
金型表面のブラスト加工により金型表面(実際にはフッ素樹脂含有層表面)の十点平均粗さを25μmとした。他は実施例1と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、フッ素樹脂含有層の膜厚を測定し、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
金型表面のブラスト加工により金型表面(実際にはフッ素樹脂含有層表面)の十点平均粗さ(RzJIS)を25μmとした。また、金型表面に用いた四フッ化エチレン樹脂の微粒子を含有したニッケル皮膜の処理時間の調整により、フッ素樹脂を含有する層の膜厚を100μmとした。他は実施例1と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
金型表面に何も表面層を設けず、型表面にショットブラスト加工のみ行いポリウレタンエラストマーを成型した。他は実施例1と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、金型表面の十点平均粗さ(RzJIS)を測定し、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表1に示す。
【0059】
[比較例2]
用いたアジペート系ウレタンプレポリマーを、重量平均分子量(MW)2000、NCO含有量6.2質量%のものに替えた。その他は実施例1と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、ポリウレタンエラストマーの国際ゴム硬度を測定し、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0060】
[比較例3]
金型表面に用いた四フッ化エチレン樹脂の微粒子を含有したニッケル皮膜の処理時間の調整により、フッ素樹脂を含有する層の膜厚を1μmとし、また、型表面のブラスト加工を行いフッ素樹脂含有層表面の十点平均粗さ(RzJIS)を10μmとした。他は実施例1と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0061】
[比較例4]
金型表面に用いた四フッ化エチレン樹脂の微粒子を含有したニッケル皮膜の処理時間の調整により、フッ素樹脂を含有する層の膜厚を150μmとした。他は比較例2と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、金型表面(実際にはフッ素樹脂含有層表面)の十点平均粗さ(RzJIS)を測定し、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0062】
[比較例5]
金型表面のブラスト加工により金型表面(実際にはフッ素樹脂含有層表面)の十点平均粗さを1μmとした。また、金型表面に用いた四フッ化エチレン樹脂の微粒子を含有したニッケル皮膜の処理時間の調整により、フッ素樹脂を含有する層の膜厚を10μmとした。他は実施例1と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0063】
[比較例6]
金型表面のブラスト加工により金型表面(実際にはフッ素樹脂含有層表面)の十点平均粗さ(RzJIS)を30μmとした。他は比較例4と同様にして、現像剤量規制ブレードを作製し、実施例1と同様に、フッ素樹脂含有層の膜厚を測定し、離型性の評価、画像評価を行った。結果を表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
上記の結果から、実施例では、熱硬化型ウレタンエラストマーを成型型から剥離しやすく効率良く脱型することが可能となり、1回目から80回目まで脱型時のちぎれ、模様(しわ)の発生なく成型可能である。また、得られた現像剤量規制ブレードとしても画像スジの発生が無く、良好な画像が得られた。これに対して、比較例1では、1回目の成型から脱型不可能となり、ブレード部材を得ることができなかった。また比較例2から比較例6では、成型1回目から模様(しわ)等の発生が見られ、50回目以降からはちぎれ不良が発生し、離型困難となった。また得られた現像剤量ブレードとしても、画像スジが発生した。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の現像剤量規制ブレードの模式的構成図を示す図である。
【図2】本発明のクリーニングブレードの模式的構成図を示す図である。
【符号の説明】
【0068】
10 ブレード部材
11 支持部材
12 現像剤担持体
13 現像剤(トナー粒子)
14 摺動部
20 ブレード部材
21 支持部材
22 感光体
23 現像剤(トナー粒子)
24 当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
国際ゴム硬度(IRHD)が60°以上90°以下である電子写真装置用ブレード部材を形成するための、ブレード部材成型用金型において、
該ブレード部材が熱硬化型ウレタンエラストマーを主剤とするものであって、
該ブレード部材成型用金型表面に少なくともフッ素樹脂を含有する層を有し、
該フッ素樹脂を含有する層の膜厚が5μm以上、100μm以下であり、かつ、
該フッ素樹脂を含有する層を有する金型表面の十点平均粗さ(RzJIS)が2μm以上、25μm以下である
ことを特徴とするブレード部材成型用金型。
【請求項2】
該フッ素樹脂が、四フッ化エチレン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載のブレード部材成型用金型。
【請求項3】
該フッ素樹脂を含有する層が、フッ素樹脂含有ニッケルメッキ皮膜であることを特徴とする請求項1または2記載のブレード部材成型用金型。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−94897(P2010−94897A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−267677(P2008−267677)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】