説明

ブロックイソシアネート解離触媒及びその用途

【課題】 ウレタン塗料等の硬化剤としてブロックイソシアネートが利用されているが、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、フェノール等のブロック剤を解離させるためには、140℃以上の高い焼付け温度が必要であり、省エネルギーの観点で不利であり、かつ、耐熱性の低いプラスチック基材には適用できない欠点があった。従来のブロックイソシアネート解離触媒は、解離効果が十分と言えず、安全性、安定性、及びコスト面でも問題があった。
【解決手段】 比較的低コストで、安全性、安定性が高く、解離効果が高いブロック剤の解離触媒として、α,β−不飽和カルボン酸を含むブロックイソシアネート解離触媒を提供するとともに、当該ブロックイソシアネート解離触媒、ブロックイソシアネート及びイソシアネート反応性基を有する化合物からなる一液型熱硬化性組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α,β−不飽和カルボン酸の亜鉛塩を含むブロックイソシアネート解離触媒、及びそれを用いた一液型熱硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートは、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、活性メチレン基等の活性水素の他、エポキシ基、カルボン酸無水物と反応するため、ウレタン塗料、アクリル塗料、アクリルウレタン塗料、エポキシ塗料等の架橋剤として使用されている。
【0003】
一方、イソシアネート基と活性水素との反応は常温でも進行するため、活性水素を有する塗料樹脂とポリイソシアネートを予め混合しておく、いわゆる一液型塗料としての使用は困難である。そこで、ポリイソシアネートを活性水素基含有化合物(ブロック剤)と反応させて不活性化したブロックイソシアネートを用いる方法が実用化されている。このブロックイソシアネートは、常温では塗料樹脂と反応しないが、加熱されることでブロック剤が解離してイソシアネート基を再生し、塗料樹脂との架橋反応が進むものである。このため、可使時間に制限がなく、一液型塗料とすることや、活性水素を有する水を媒体とする水性塗料への適用も可能となる。
【0004】
ポリイソシアネートのブロック剤として使用される化合物としては、例えば、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、フェノール等が知られている。しかしながら、これらを用いたブロックイソシアネートはブロック剤を解離させるのに140℃以上の高い焼付け温度を必要とするため、省エネルギーの観点で不利であり、耐熱性の低いプラスチック基材には適用できないという問題があった。
【0005】
このため、触媒(ブロックイソシアネート解離触媒)の使用によって焼付け温度を低くする試みが従来から行われている。このような触媒としては、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫が公知であるが(例えば、非特許文献1参照)、毒性の問題からその使用は好ましいとは言えない。また、その他にビスマス塩(例えば、特許文献1参照)等が触媒として報告されているが、比較的高価であり、触媒活性も充分とは言えない。尚、ブロックイソシアネート解離触媒としてのカルボン酸亜鉛も公知であり、例えば、2−エチルヘキサン酸亜鉛(例えば、特許文献2、3参照)や酢酸亜鉛(例えば、非特許文献2参照)が知られている。しかしながら、有機錫よりも触媒活性が低く、塗料への溶解性が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3293633号明細書
【特許文献2】特開平11−114492号公報
【特許文献3】特許第4443581号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Progress in Organic Coatings 36巻、148−172頁(1999年)
【非特許文献2】Progress in Organic Coatings 66巻、296−305頁(2009年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的安価で、安全性と安定性が高く、かつ、ブロック剤解離効果が高いブロックイソシアネート解離触媒及びその用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、比較的安価な原料から製造でき、安全性、安定性が高いα,β−不飽和カルボン酸亜鉛が、驚くべきことに、優れたブロックイソシアネート解離触媒となること、更には、上記α,β−不飽和カルボン酸亜鉛と、α,β−不飽和カルボン酸以外のカルボン酸の亜鉛塩とを併用することにより、上記特性を大きく損なわせることなく、塗料への溶解性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのα,β−不飽和カルボン酸の亜鉛塩を含むブロックイソシアネート解離触媒、及びそれを用いた一液型熱硬化性組成物である。
【0011】
[1]カルボン酸の亜鉛塩を含むブロックイソシアネート解離触媒であって、カルボン酸としてα,β−不飽和カルボン酸亜鉛を含むことを特徴とするブロックイソシアネート解離触媒。
【0012】
[2]α,β−不飽和カルボン酸が、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、マレイン酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上のα,β−不飽和カルボン酸であることを特徴とする上記[1]に記載のブロックイソシアネート解離触媒。
【0013】
[3]ブロックイソシアネート解離触媒中の、カルボン酸の全含有量に対するα,β−不飽和カルボン酸の含有量が、40モル%以上であることを特徴とする上記[1]又は[2]記載のブロックイソシアネート解離触媒。
【0014】
[4]α,β−不飽和カルボン酸以外のカルボン酸として、炭素数4〜20のカルボン酸を含有することを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のブロックイソシアネート解離触媒。
【0015】
[5]上記[1]乃至[4]記載のいずれか一項に記載のブロックイソシアネート解離触媒、ブロックイソシアネート、及びイソシアネート反応性基を有する化合物を含有することを特徴とする一液型熱硬化性組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明のα,β−不飽和カルボン酸亜鉛を含むブロックイソシアネート解離触媒は、有機錫、ビスマス等の公知触媒よりも安価であり、安全性、安定性が高く、高い解離触媒活性を示すため、産業上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をさらに詳しく述べる。
【0018】
本発明のブロックイソシアネート解離触媒は、カルボン酸の亜鉛塩を含有するものであるが、カルボン酸としてα,β−不飽和カルボン酸を使用するところにその特徴がある。
【0019】
α,β−不飽和カルボン酸としては、特に限定するものではないが、例えば、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸の他、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノペンチル、マレイン酸モノヘキシル等のマレイン酸モノエステル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノペンチル、フマル酸モノヘキシル等のフマル酸モノエステル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、イタコン酸モノブチル、イタコン酸モノペンチル、イタコン酸モノヘキシル等のイタコン酸モノエステル等が挙げられる。
【0020】
α,β−不飽和カルボン酸以外のカルボン酸としては、特に限定するものではないが、塗料への溶解性と解離触媒活性を考慮すると、炭素数4〜20のカルボン酸が好ましく、例えば、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、2−ヒドロキシブタン二酸、2−ヒドロキシプロパントリカルボン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、ベンゼンカルボン酸、ベンゼン−1,2−ジカルボン酸、ベンゼン−1,3−ジカルボン酸、ベンゼン−1,4−ジカルボン酸、2−ヒドロキシベンゼンカルボン酸、3,4,5−トリヒドロキシベンゼンカルボン酸、ベンゼンヘキサカルボン酸、3−フェニルプロパ−2−エン酸等の芳香族カルボン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。
【0021】
本発明のブロックイソシアネート解離触媒中の、カルボン酸の全含有量に対するα,β−不飽和カルボン酸の含有量([α,β−不飽和カルボン酸の含有量]/[カルボン酸の全含有量])は、解離触媒活性を考慮すると、40モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることが更に好ましい。本発明のブロックイソシアネート解離触媒の解離触媒活性と、その溶解性は、使用するカルボン酸の種類と量で決まるため、ブロックイソシアネート、塗料、及び塗料希釈剤の種類によって適宜調整、又は選択すれば良い。
【0022】
本発明のカルボン酸亜鉛は、市販品を使用することもできるが、公知の方法で製造することができる。例えば、有機溶剤中、酸化亜鉛と、酸化亜鉛に対して0.4〜0.6モルのα,β−不飽和カルボン酸及びその他のカルボン酸を反応させた後、中和反応によって生成した水と有機溶剤を減圧留去することによって製造することができる。
【0023】
ここで、有機溶剤としては、特に限定するものではないが、例えば、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、1−メトキシ−2−プロパノール、エトキシエタノール等のアルコール、ジプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノn−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸2−メトキシエチル、酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル等の酢酸エステル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、エチレングリコールジブチルエーテル等のエーテル等が挙げられる。
【0024】
また、反応条件については、α,β−不飽和カルボン酸が重合しない条件であればよく、特に制限はない。例えば、常温〜60℃で1〜10時間反応すれば良い。また、α,β−不飽和カルボン酸の重合を防止する目的で、フェノール系酸化防止剤等を添加して反応しても良い。反応後、余剰の酸化亜鉛があれば、ろ過、遠心分離等の方法によって除去すれば良い。
【0025】
本発明のブロックイソシアネート解離触媒は、それ単独で使用することができるが、触媒活性をさらに向上させるため、有機錫化合物、金属錯体、カルボン酸金属塩(ただし、カルボン酸の亜鉛塩を除く)、アミン化合物等の、従来のブロックイソシアネート解離触媒を併用しても良い。
【0026】
ここで、有機錫化合物としては、例えば、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシド、トリブチル錫オキシド、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート等が挙げられる。
【0027】
また、金属錯体としては、例えば、亜鉛ビスアセチルアセトナート、亜鉛ビス3,5−ヘプタンジオナート、亜鉛ビス1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオナート、亜鉛ビス1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ペンタンジオナート、亜鉛ビスアセト酢酸メチル、亜鉛ビスアセト酢酸エチル、亜鉛ビスアセト酢酸n−プロピル、亜鉛ビスアセト酢酸イソプロピル、亜鉛ビスマロン酸ジメチル、亜鉛ビスマロン酸ジエチル、亜鉛ビスアセトアセトアニリド、亜鉛ビス酢酸、亜鉛ビスプロピオン酸、亜鉛ビスブタン酸、亜鉛ビスペンタン酸、亜鉛ビスヘキサン酸、亜鉛ビスヘプタン酸、亜鉛ビスオクタン酸、亜鉛ビス2−エチルヘキサン酸、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、マンガンビスアセチルアセトナート、ビスマストリス2−エチルヘキサン酸、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムビスアセチルアセトナートイソプロポキシド、アルミニウムビスアセチルアセトナートn−プロポキシド、アルミニウムビスアセチルアセトナートメトキシド、アルミニウムビスアセチルアセトナートエトキシド、アルミニウムビスアセチルアセトナートn−ブトキシド、アルミニウムビスアセチルアセトナートsec−ブトキシド、アルミニウムビスアセチルアセトナートtert−ブトキシド、アルミニウムトリス(3,5−ヘプタンジオナート)等が挙げられる。
【0028】
また、アミン化合物としては、例えば、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)ネオペンタンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)ヘキサンジアミン、N−(N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノエチル)ピペリジン、N,N−ビス(ジメチルアミノプロピル)−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ビス(ジメチルアミノプロピル)−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシプロピル)プロパンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシプロピル)ネオペンタンジアミン、N,N−ジメチル−N’,N’−ビス(ヒドロキシプロピル)ヘキサンジアミン、N−(N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノエチル)ピペリジン、N,N−ビス(ジメチルアミノプロピル)−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、及びN,N−ビス(ジメチルアミノプロピル)−N’,N’−ビス(ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N’,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N’−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N”,N”−テトラメチルジエチレントリアミン、N’−(2−ヒドロキシプロピル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、及びN’−(2−ヒドロキシエチル)−N,N,N’−トリメチルービス(2−アミノエチル)エーテル、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−1,3−ジアジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等、2−エチルヘキサン酸アルキルアミン塩、2−エチルヘキサン酸ヒドロキシアルキルアミン塩、クロトン酸アルキルアミン塩、チグリン酸アルキルアミン塩、メタクリル酸アルキルアミン塩、アクリル酸アルキルアミン塩、マレイン酸モノエステルアミン塩、フマル酸アルキルアミン塩等のアミン化合物が挙げられる。
【0029】
次に、本発明の一液型熱硬化性組成物について説明する。
【0030】
本発明の一液型熱硬化性組成物は、上記した本発明のブロックイソシアネート解離触媒、ブロックイソシアネート、及びイソシアネート反応性基を有する化合物を含有する。
【0031】
本発明の一液型熱硬化性組成物において、ブロックイソシアネ−トとしては、例えば、非水性ブロックイソシアネート、水性ブロックイソシアネート等を挙げることができる。
【0032】
非水性ブロックイソシアネートとしては、例えば、従来公知のブロック剤(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール類、フェノール、クレゾール、ニトロフェノール、クロロフェノール、レゾルシノール等のフェノール類、ベンゼンチオール等のチオール類、ε−カプロラクタム等のカプロラクタム類、エチルカーバメイト等のカーバメイト類、アセチルアセトン等のケトエノール類、メチルエチルケトンオキシム等のケトオキシム類、ジイソプロピルアミン、トリアゾール、3,5−ジメチルピラゾール等のアミン類、重亜硫酸ソーダ等)を用いて、従来公知のイソシアネート化合物又はそれらのプレポリマーをブロックした化合物を挙げることができる。
【0033】
ここで、従来公知のイソシアネート化合物としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等が挙げられる。
【0035】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDI、イソホロンジイソシアネート)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、粗製MDI、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0037】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0038】
また、上記以外のイソシアネート化合物として、例えば、イソシアネート化合物と活性水素基含有化合物との反応によるイソシアネート基末端化合物、これら化合物の反応物(例えば、アダクト型ポリイソシアネートや、アロファネート化反応、カルボジイミド化反応、ウレトジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレトンイミン化反応、ビウレット化反応等によるイソシアネート変性体等)、又はこれらの混合物等を挙げることができる。
【0039】
一方、水性ブロックイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネートと、イソシアネート基と反応しうる活性水素基を1個以上有する親水性基とを反応させ、これを公知のブロック剤でブロックすることにより得ることができる。親水性基としては、例えば、カチオン、アニオン等のイオン性基、ノニオン性基等が挙げられる。ポリイソシアネートにノニオン性基を導入するためのノニオン性化合物としては、例えば、ポリアルキレンエーテルアルコール、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0040】
本発明の一液型熱硬化性組成物において、イソシアネート反応性基を有する化合物としては、例えば、ポリオールが挙げられる。本発明において、ポリオールとは、イソシアネート基に対して反応性を有する水酸基を2個以上含む化合物をいい、具体的には、非水性ポリオール、水性ポリオール等が例示される。
【0041】
非水性ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール等が挙げられる。
【0042】
アクリルポリオールとしては、例えば、一分子中に1個以上の活性水素を持つ重合性モノマーと、これに共重合可能なモノマーの共重合物が挙げられる。
【0043】
一分子中に1個以上の活性水素を持つ重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等のアクリル酸ヒドロキシエステル類、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル等のメタクリル酸ヒドロキシエステル類、グリセリンのアクリル酸モノエステル若しくはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル若しくはメタクリル酸モノエステル、又はこれらの活性水素にε−カプロラクトンを開環重合させることにより得られるモノマー等が挙げられる。
【0044】
上記重合性モノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル類、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド類、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0045】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、縮合ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール等が挙げられる。
【0046】
縮合ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のジオール類と、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸との反応物が挙げられる。
【0047】
具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチレンアジペートジオール、ポリエチレンプロピレンアジペートジオール、ポリエチレンブチレンアジペートジオール、ポリブチレンヘキサメチレンアジペートジオール、ポリ(ポリテトラメチレンエーテル)アジペートジオール等のアジペート系縮合ポリエステルジオール、ポリエチレンアゼレートジオール、ポリブチレンアゼレートジオール等のアゼレート系縮合ポリエステルジオール等を例示できる。
【0048】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のジオール類と、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネートとの反応物等が挙げられる。具体的には、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリ3−メチルペンタメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール等が例示される。
【0049】
ポリラクトンポリオールとしては、例えば、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン及びこれらの2種以上の混合物の開環重合物等が挙げられる。具体的にはポリカプロラクトンジオール等が例示される。
【0050】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA等の活性水素原子を2個以上含む化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーを付加重合させた反応物が挙げられる。モノマーを2種以上付加重合させた反応物の場合、ブロック付加、ランダム付加又は両者の混合系でも良い。具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が例示される。
【0051】
エポキシポリオールとしては、例えば、ノボラック型、β−メチルエピクロ型、環状オキシラン型、グリシジルエーテル型、グリコールエーテル型、脂肪族不飽和化合物のエポキシ型、エポキシ化脂肪酸エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、ハロゲン化型、レゾルシン型等のエポキシポリオールが挙げられる。
【0052】
また、上記した以外の非水性ポリオールとして、例えば、これらのポリオールにイソシアネート化合物を反応させることによって生成したOH末端プレポリマーも同様に使用することができる。
【0053】
一方、水性ポリオールとしては、例えば、上記した非水性ポリオールを、水に乳化、分散又は溶解させた化合物が挙げられる。水に乳化、分散又は溶解させる方法としては、例えば、カルボキシル基、スルホン基等を導入し中和させる方法等が挙げられる。ここで中和剤としては、例えば、アンモニアや、水溶性アミノ化合物であるモノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。これらの中でも第三級アミンであるトリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等が好適に使用される。
【0054】
本発明の一液型熱硬化性組成物において、ポリオールの水酸基価としては、特に限定するものではないが、固形分あたり10〜300mgKOH/gの範囲が好ましく、より好ましくは20〜250mgKOH/gの範囲である。水酸基価を10mgKOH/g以上にすることにより、得られる樹脂の強度が向上し、300mgKOH/g以下とすることにより、得られる樹脂の可塑性が向上する。
【0055】
本発明の一液型熱硬化性組成物において、ポリオール成分は、ポリオール(イソシアネート基に対して反応性を有する水酸基を2個以上含む化合物)、中和剤、酸化防止剤、及び水を含有する組成物として、通常使用されるが、これらのうち固形分とは、ポリオール、中和剤、及び酸化防止剤を意味する。
【0056】
本発明の一液型熱硬化性組成物におけるポリオールの水酸基とイソシアネート基との当量比([水酸基]/[イソシアネート基])は、必要とする塗膜物性により決定され、特に限定するものではないが、通常0.2〜2の範囲である。
【0057】
本発明の一液型熱硬化性組成物における本発明のブロックイソシアネート解離触媒の使用量は、特に制限されるものではないが、ブロックイソシアネートの使用量に対する上記したカルボン酸亜鉛の使用量([カルボン酸亜鉛の使用量]/[ブロックイソシアネートの使用量])として、通常0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%の範囲である。カルボン酸亜鉛の使用量をブロックイソシアネートの使用量に対して0.1重量%以上とすることで充分な硬化性が得られる。一方、カルボン酸亜鉛の使用量がブロックイソシアネートの使用量に対して15重量%を越えても低温硬化性のそれ以上の向上は見られず、経済的には不利である。
【0058】
また、本発明の一液型熱硬化性組成物における本発明のブロックイソシアネート解離触媒の使用量は、特に限定するものではないが、固形分に対する上記したカルボン酸亜鉛の使用量([カルボン酸亜鉛の使用量]/[固形分])として、通常0.05〜10重量%、好ましくは0.25〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%の範囲である。なお、本発明において、「固形分」とは、一液型熱硬化性組成物中の溶媒以外の成分を表し、例えば、非水性一液型熱硬化性組成物の場合、非水性ポリオール中のメチルエチルケトン、アセトン等の溶媒以外の成分と、非水性ブロックイソシアネート中のメチルエチルケトン等の溶媒以外の成分との合計を表す。カルボン酸亜鉛の使用量を固形分に対して0.05重量%以上とすることで充分な硬化性が得られる。一方、カルボン酸亜鉛の使用量が固形分に対して10重量%を越えても硬化性のそれ以上の向上は見られず、経済的には不利である。
【0059】
本発明の一液型熱硬化性組成物においては、必要に応じて、当該技術分野で常用される添加剤、顔料、溶剤等を使用することができる。
【0060】
添加剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤、錫系、亜鉛系、アミン系等のウレタン化触媒、その他、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤等が挙げられる。
【0061】
顔料としては、特に限定するものではないが、例えば、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ等の無機顔料、その他、炭素系顔料、金属箔状顔料、防錆顔料等の顔料が挙げられる。
【0062】
溶剤としては、特に限定するものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられ、これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
高温下での貯蔵等が想定される場合は、本発明の一液型熱硬化性組成物を、ブロックソシアネートとイソシアネート反応性基を有する化合物とに分けて二液型熱硬化性組成物として使用することも可能である。
【0064】
本発明の一液型熱硬化性組成物は、自動車の上中塗り塗料、耐チッピング塗料、電着塗料、自動車部品用塗料、自動車補修用塗料、家電・事務機器等の金属製品等のプレコートメタル・防錆鋼板、建築資材用塗料、プラスチック用塗料、接着剤、接着性付与剤、シーリング剤等として使用することができる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何らの制限を受けるものではない。
【0066】
なお、以下の実施例において、ポリオールの水酸基価の測定、イソシアネートの分析、一液型熱硬化性組成物の焼付け、耐溶剤性の測定、カルボン酸亜鉛の同定は以下に示すとおり実施した。
【0067】
<ポリオール中の水酸基価の測定>
JIS−K0070に規定された方法により測定した。すなわち、試料に無水酢酸及びピリジンを加えて溶解させ、放冷後、水、トルエンを加えて調製した滴定試料液を、水酸化カリウムのエタノール溶液で中和滴定した。水酸基価は、1gの試料に含まれる水酸基をアセチル化するために消費された酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表される。
【0068】
<イソシアネートの分析>
ポリオール、及びブロックイソシアネート合成時のイソシアネート分析は以下の方法で行った。100ml三角フラスコに反応液を0.5〜1g、及びn−ブチルアミンの10重量%N,N−ジメチルホルムアミド溶液を約2g精秤した後、約40mlのN,N−ジメチルホルムアミドを加えて、窒素雰囲気下、約20分攪拌した。この溶液に、0.1重量%ブロモフェノールブルーを適量添加した後、0.1N塩酸水溶液で滴定し、当量点から反応液中のイソシアネート濃度を測定した。
【0069】
<一液型熱硬化性組成物の焼付け>
一液型熱硬化性組成物をポリプロピレン板に塗布し、50℃のオーブンで30分間予備乾燥した後、所定の温度のオーブンに入れ30分間焼付けを行った。
【0070】
<耐溶剤性の測定>
上記した焼付けを行った塗膜をポリプロピレン板から剥離し、メチルエチルケトンに常温で12時間浸漬した。メチルエチルケトン浸漬後の塗膜の重量残存率よりゲル分率を求め、耐溶剤性を評価した。
【0071】
<カルボン酸亜鉛の元素分析>
カルボン酸亜鉛試料を硫酸と硝酸で湿式分解し、ICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析装置)により亜鉛分を定量した。
【0072】
製造例1.
(カルボン酸亜鉛1の調製)
還流冷却管を取り付けた三口フラスコに、酸化亜鉛粉末3.53g(43.33mmol)とトルエン15.00gを仕込み、マグネチックスターラーで攪拌して懸濁状態にした。攪拌下、メタクリル酸5.46g(63.42mmol)と2−エチルヘキサン酸3.20g(22.19mmol)を10分で滴下し、常温で60分反応させ、更に、40℃で4時間反応させた。不溶分をろ過後、50℃で水分とトルエンを減圧留去し、10.50gの固体状生成物を得た。ICP−AESで分析した生成物中の亜鉛含量は24.5重量%であり、塗料用溶剤として一般的な酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルに可溶だったことから、目的のカルボン酸亜鉛(全カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボンの割合は74モル%)が得られたと判断した。
【0073】
製造例2.
(カルボン酸亜鉛2の調製)
還流冷却管を取り付けた三口フラスコに、酸化亜鉛粉末3.53g(43.33mmol)とトルエン10.00gを仕込み、マグネチックスターラーで攪拌して懸濁状態にした。攪拌下、メタクリル酸6.45g(74.92mmol)、パルミチン酸3.00g(11.70mmol)、トルエン10.00gの混合溶液を10分で滴下し、常温で60分反応させ、更に、40℃で4時間反応させた。不溶分をろ過後、50℃で水分とトルエンを減圧留去し、11.10gの固体状生成物を得た。ICP−AESで分析した生成物中の亜鉛含量は23.1重量%であり、塗料用溶剤として一般的な酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルに可溶だったことから、目的のカルボン酸亜鉛(全カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボンの割合は86モル%)が得られたと判断した。
【0074】
製造例3.
(カルボン酸亜鉛3の調製)
還流冷却管を取り付けた三口フラスコに、酸化亜鉛粉末3.53g(43.33mmol)とトルエン10.00gを仕込み、マグネチックスターラーで攪拌して懸濁状態にした。攪拌下、クロトン酸6.45g(74.92mmol)、パルミチン酸3.00g(11.70mmol)、トルエン10.00gの混合溶液を10分で滴下し、常温で60分反応させ、更に、40℃で4時間反応させた。不溶分をろ過後、50℃で水分とトルエンを減圧留去し、11.15gの固体状生成物を得た。ICP−AESで分析した生成物中の亜鉛含量は23.2重量%であり、塗料用溶剤として一般的な酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルに可溶だったことから、目的のカルボン酸亜鉛(全カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボンの割合は86モル%)が得られたと判断した。を得た。
【0075】
製造例4.
(カルボン酸亜鉛4の調製)
還流冷却管を取り付けた三口フラスコに、酸化亜鉛粉末3.53g(43.33mmol)と1−メトキシ−2−プロパノール2.00g、トルエン15.00gを仕込み、マグネチックスターラーで攪拌して懸濁状態にした。攪拌下、アクリル酸3.80g(52.73mmol)と2−エチルヘキサン酸4.90g(33.98mmol)を10分で滴下し、常温で60分反応させ、更に、40℃で4時間反応させた。不溶分をろ過後、50℃で水分とトルエンを減圧留去し、10.46gの固体状生成物を得た。ICP−AESで分析した生成物中の亜鉛含量は24.4重量%であり、塗料用溶剤として一般的な酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルに可溶だったことから、目的のカルボン酸亜鉛(全カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボンの割合は61モル%)が得られたと判断した。
【0076】
製造例5.
(カルボン酸亜鉛5の調製)
還流冷却管を取り付けた三口フラスコに、酸化亜鉛粉末3.53g(43.33mmol)とトルエン10.00gを仕込み、マグネチックスターラーで攪拌して懸濁状態にした。攪拌下、メタクリル酸6.71g(77.94mmol)、ステアリン酸2.50g(8.79mmol)、トルエン10.00gの混合溶液を10分で滴下し、常温で60分反応させ、更に、40℃で4時間反応させた。不溶分をろ過後、50℃で水分とトルエンを減圧留去し、8.70gの固体状生成物を得た。ICP−AESで分析した生成物中の亜鉛含量は23.3重量%であり、塗料用溶剤として一般的な酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルに可溶だったことから、目的のカルボン酸亜鉛(全カルボン酸に対するα,β−不飽和カルボンの割合は90モル%)が得られたと判断した。
【0077】
製造例6.
(ポリオール溶液の調製)
窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内にポリテトラメチレングリコール(PTG−2000SN、保土谷化学工業社製、数平均分子量1993)500gを仕込み、130℃で1時間減圧乾燥した。反応器内温度を下げ反応器内を窒素雰囲気にした後、攪拌羽根、還流冷却管を取り付けた。次いで、反応器内に、ネオペンチルグリコール13.1g、ヘキサメチレンジイソシアネート79.3g、メチルエチルケトン149gを加え、80℃で3時間反応させた。その後、反応器内にメチルエチルケトン106gを加え、80℃で3時間反応を継続し、イソシアネート残留量が1.06重量%に達したところで室温に冷却し反応を停止した。そして、攪拌しながら、反応器内にアセトン341g、ジエタノールアミン22.6gを加え、ポリオール溶液を得た。得られたポリオール溶液は固形分濃度50重量%、固形分に対する水酸基価35.0mgKOH/gであった。
【0078】
製造例7.
(ブロックイソシアネート溶液の調製)
窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコに攪拌羽根を取り付け、当該容器内を窒素雰囲気にした後、容器内にコロネートHX(日本ポリウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネート三量体、NCO 21.3重量%)50.2g、脱水したメチルエチルケトン114gを仕込み、40℃で5分間攪拌した。その後、容器に滴下ロートを取り付け、40℃に保ったまま、容器内にメチルエチルケトンオキシム22.2gを1時間掛けて滴下した。そして容器に還流冷却管を取り付け、70℃で1時間反応させ、イソシアネートが検出されなくなったところで室温に冷却し反応を停止し、ブロックイソシアネート溶液を得た。得られたブロックイソシアネート溶液は固形分濃度40重量%、有効NCO 1.36mmol/gであった。
【0079】
ここで、有効NCOとは、ブロックイソシアネートを加熱してブロック剤が解離することにより反応可能となるイソシアネート基(NCO)の量を意味する。そして、有効NCOが1.36mmol/gであるとは、ブロックイソシアネート1g中に、1.36mmolのイソシアネート基が潜在的に含まれる(ブロック剤が解離することにより再生される)ことを意味する。
【0080】
実施例1〜5.
(製造例で得られたカルボン酸亜鉛のブロックイソシアネート解離触媒としての性能評価)
製造例1〜5で得られたカルボン酸亜鉛の、ブロックイソシアネート解離触媒としての性能を評価した。結果を表1に併せて示す。製造例で得られたカルボン酸亜鉛は、塗料用溶剤として一般的な酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルへの溶解性が優れ、塗膜のゲル分も高いことから、ブロックイソシアネート解離触媒として有用なことが明らかである。
【0081】
【表1】

実施例6〜7.
(メタクリル酸亜鉛市販品のブロックイソシアネート解離触媒としての性能評価)
実施例1〜5と同様の方法により、市販のメタクリル酸亜鉛(α,β−不飽和カルボン酸亜鉛)の、ブロックイソシアネート解離触媒としての性能を評価した。結果を表1にア併せて示す。製造例で得られたカルボン酸亜鉛は、塗料用溶剤として一般的な酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルへの溶解性が優れ、塗膜のゲル分も高いことから、ブロックイソシアネート解離触媒として有用なことが明らかである。
【0082】
比較例1〜2.
(α,β−不飽和カルボン酸を含まないカルボン酸亜鉛のブロックイソシアネート解離触媒としての性能評価)
実施例1〜7と同様の方法により、α,β−不飽和カルボン酸を含まない市販のカルボン酸亜鉛の、ブロックイソシアネート解離触媒としての性能を評価した。結果を表1に併せて示す。α,β−不飽和カルボン酸を含まないカルボン酸亜鉛は、塗料用溶剤として一般的な酢酸2−メトキシ−1−メチルエチルへの溶解性が劣り、塗膜のゲル分も低いことから、ブロックイソシアネート解離触媒としての価値が劣ることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸の亜鉛塩を含むブロックイソシアネート解離触媒であって、カルボン酸としてα,β−不飽和カルボン酸亜鉛を含むことを特徴とするブロックイソシアネート解離触媒。
【請求項2】
α,β−不飽和カルボン酸が、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、チグリン酸、マレイン酸モノエステル、及びフマル酸モノエステルからなる群より選ばれる1種又は2種以上のα,β−不飽和カルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載のブロックイソシアネート解離触媒。
【請求項3】
ブロックイソシアネート解離触媒中の、カルボン酸の全含有量に対するα,β−不飽和カルボン酸の含有量が、40モル%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブロックイソシアネート解離触媒。
【請求項4】
α,β−不飽和カルボン酸以外のカルボン酸として、炭素数4〜20のカルボン酸を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のブロックイソシアネート解離触媒。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のブロックイソシアネート解離触媒、ブロックイソシアネート、及びイソシアネート反応性基を有する化合物を含有することを特徴とする一液型熱硬化性組成物。

【公開番号】特開2012−152725(P2012−152725A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16618(P2011−16618)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】