説明

ブロックコポリマを含む薬物送達構成体及び医療器具

【課題】治療薬を送達する構成体を提供する。
【解決手段】構成体は、(a)1以上のエラストマブロック及び1以上の熱可塑性ブロックを含む生体適合性を有するブロックコポリマと、(b)ブロックコポリマに加えられた治療薬とを備える。ブロックコポリマは、好ましくは、Aをエラストマブロックとし、Bを熱可塑性ブロックとし、nを正の自然数とし、Xをシード分子として、X−(AB)として表される。エラストマブロックは、好ましくは、ポリオレフィンブロックとし、熱可塑性ブロックは、好ましくは、ビニル芳香族ブロック及びメタクリル酸ポリマブロックから選択される。本発明の他の側面として、本発明は、少なくとも一部が患者の生体内に挿入又は移植可能な医療器具を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療薬が加えられたブロックコポリマを備える治療薬送達のための構成体に関する。更に、本発明は、血管内又は血管間医療器具において使用される生体適合性ブロックコポリマ材料に関する。
【背景技術】
【0002】
生体に移植又は挿入されて、薬物を放出するポリマが知られている。ここで、当分野では、効果的に薬物を放出できるとともに、物理的一体性(mechanical integrity)及び生体適合性に優れたポリマの実現が望まれている。
【0003】
また、移植可能な又は挿入可能な医療器具に関連して、ポリマを使用する技術が知られている。しかしながら、このようなポリマは、強い免疫応答又は異物反応を誘発することが多い。特に、血管内又は血管間医療器具を血管内に挿入した後には、炎症及び新生内膜肥大症(neointimal thickening)が生じやすく、したがって、上述のような問題が生じやすい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上述及びその他の目的は、本発明により達成される。
【0005】
本発明に係る構成体は、治療薬を送達するための構成体において、(a)1以上のエラストマブロック及び1以上の熱可塑性ブロックを含む生体適合性を有するブロックコポリマと、(b)ブロックコポリマに加えられた治療薬とを備える。
【0006】
本発明において好適に使用される治療薬としては、抗血栓薬、抗増殖薬、抗炎症薬、抗遊走薬、細胞外マトリックスの形成及び組織化に影響を与える薬剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、麻酔薬、抗凝血薬、血管細胞増殖促進薬、脈管細胞増殖阻害薬、コレステロール低減薬、血管拡張薬、内因性血管作用メカニズムを阻害する薬剤、及びこれらの任意の組合せ等がある。特定の一具体例においては、治療薬としてパクリタキセルを用いる。治療薬が加えられたブロックコポリマにおける治療薬の割合は、好ましくは、0.1〜70重量%とする。
【0007】
ポリマ構成について、ブロックコポリマは、好ましくは、Aをエラストマブロックとし、Bを熱可塑性ブロックとし、nを正の自然数とし、Xをシード分子として、X−(AB)nとして表される。
【0008】
コポリマ内のブロックについて、エラストマブロックは、好ましくは、ポリオレフィンブロックとする。より好ましくは、ポリオレフィンブロックは、R及びR'を直鎖状又は分岐状脂肪族基、又は環状脂肪族基とし、一般式−(CRR'−CH2n−として表される。更に好ましくは、ポリオレフィンブロックは、ポリイソブチレンブロックである。ポリオレフィンブロックの量は、好ましくは、ブロックコポリマの95〜45モル%とする。
【0009】
熱可塑性ブロックは、好ましくは、ビニル芳香族ブロック及びメタクリル酸ポリマブロックから選択される。メタクリル酸ブロックは、好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルから選択される1以上のモノマ、又はこれらのモノマの混合物から選択される。ビニル芳香族ポリマブロックは、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン及びこれらのモノマの混合物から選択される。
【0010】
ブロックコポリマの分子量は、好ましくは、80000〜300000ダルトンの範囲内とする。いくつかの具体例においては、ポリオレフィンブロックの分子量は、好ましくは、60000〜200000ダルトンの範囲内とし、ビニル芳香族ポリマブロックの分子量は、20000〜100000ダルトンの範囲内とする。
【0011】
本発明の他の側面として、本発明は、少なくとも一部が患者の生体内に挿入又は移植可能な医療器具を提供する。この医療器具は、(a)1以上のエラストマブロック及び1以上の熱可塑性ブロックを含む生体適合性を有するブロックコポリマと、(b)ブロックコポリマに加えられた治療薬とを備える。
【0012】
いくつかの具体例においては、医療器具の一部のみがブロックコポリマを備える。一具体例として、医療器具の一部がコーティングされたものであってもよい。コーティングの厚みは、好ましくは、0.1〜50ミクロンとする。
【0013】
好ましくは、治療薬は、当該医療器具を患者に移植した後、所定の期間に亘って放出される。
【0014】
医療器具を移植又は挿入するのに適する部位は、例えば、冠状血管系、末梢血管系、食道、気管、結腸、胆管、尿道、前立腺、脳である。
【0015】
いくつかの具体例においては、医療器具を生体内に挿入又は移植することにより、ブロックコポリマの少なくとも一部が体液に晒される。他の具体例においては、ブロックコポリマの少なくとも一部が例えば固体組織等の組織に晒される。好ましい医療器具としては、例えば、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ、ステント、ステント植皮、血管移植片、血管パッチ、シャント、内腔内ペービング装置(intraluminal paving system)等がある。いくつかの具体例においては、医療器具は、ブロックコポリマを被覆し、生体内に挿入される際に、治療薬が早期に放出されてしまうことを防ぐシースを備える。
【0016】
一具体例においては、医療器具は、ポリカルボキシル酸、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、クロスリンクされたポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマ、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ハロゲン化ポリアルキレン、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリペプチド、シリコン、シロキサンポリマ、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、吉草酸ポリヒドロキシブチレート、フィブリン、コラーゲン、コラーゲン誘導体、ヒアルロン酸のうちの1以上のポリマ又はコポリマを備える。特に、好ましいポリマ及びコポリマは、ポリアクリル酸、エチレン−酢酸ビニルコポリマ、ポリ乳酸とポリカプロラクトンのコポリマのうちから選択される。
【0017】
これらのポリマ又はコポリマは、生体適合性を有するコポリマに混合してもよく、生体適合性を有するコポリマを含まない層を有していてもよい。
【0018】
本発明の一側面として、本発明は、上述した医療器具を患者の生体内に移植又は挿入し、治療薬を所定の期間に亘って上記患者の生体内に放出されるようにする治療方法を提供する。
【0019】
本発明の一側面として、本発明は、(a)血管間又は血管内医療器具と、(b)血管間又は血管内医療器具を被覆し、1以上のエラストマブロック及び1以上の熱可塑性ブロックを含む生体適合性を有するブロックコポリマを有するコーティングとを備える被覆された医療器具を提供する。このような被覆された医療器具の好適な具体例としては、バルーン、ステント、ステント植皮、血管移植片、血管パッチ、シャント、カテーテル、フィルタ等がある。
【0020】
本発明により、物理的一体性に優れた、ポリマを用いた薬剤送達構成体が提供できる。
【0021】
更に、本発明により、生体適合性に優れた、ポリマを用いた薬剤送達構成体が提供できる。
【0022】
更に、本発明により、血管に挿入された場合に、従来より知られているポリマ材料に比べて、炎症及び新生内膜肥大症が低減できる医療器具が提供される。
【0023】
本発明の実施の形態及び更なる利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲により、当業者にとって明らかとなる。
【0024】
本発明は、治療薬の送達に有用な、治療薬が加えられたブロックコポリマを備える構成体及び、例えば血管内又は血管間医療器具において使用される生体適合性ブロックコポリマ材料に関する。
【0025】
本発明を実現するのに好適なブロックコポリマは、好ましくは、第1のエラストマブロックと、第2の熱可塑性ブロックとを有する。より好ましくは、ブロックコポリマは、中央部のエラストマブロックと、端部の熱可塑性ブロックとを備える。更に好ましくは、ブロックコポリマは、以下に示す一般式で表される。
(a)BAB又はABA(直鎖状3元ブロック)
(b)B(AB)n又はA(BA)n(直鎖状交互ブロック)
(c)X−(AB)n又はX−(BA)n(2元ブロック、3元ブロック、及び他の放射状ブロックコポリマを含む)
ここで、Aはエラストマブロックを表し、Bは熱可塑性ブロックを表し、nは正の自然数を表し、Xは開始シード分子を表す。
【0026】
最も好ましい構造は、X−(AB)nであり、これは、n=1の場合2元ブロックコポリマであり、n=2の場合3元ブロックコポリマである(この用語では、開始シード分子の存在を無視している。例えば、A−X−Aを3元ブロックを有する単一のAブロックとして扱い、したがってBABと表す)。ここで、nが3以上の場合、これらの構造は、星形ブロックコポリマと呼ばれる。
【0027】
Aブロックは、好ましくは、1以上のポリオレフィンに基づく軟質のエラストマ成分であり、より好ましくは、一般式−(CRR'−CH2n−で表される交互に第2級及び第4級炭素を有するポリオレフィンブロックである。ここで、R及びR'は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の直鎖状又は分岐状脂肪族基、又はシクロヘキサン、シクロペンタン等の環状脂肪族基を表し、これらは、懸垂(pendant)基を有していてもよく、有していなくてもよい。
【0028】
ここで、以下に示すような、イソブチレンのポリマ(すなわち、R及びR'が同じメチル基であるポリマ)が最も好ましい。
【0029】
【化1】

【0030】
Bブロックは、好ましくは、硬い熱可塑性ブロックであり、軟らかいAブロックと組み合わされ、特に、最終的に構成されるコポリマの硬度を変更又は調整し、所望の質の組合せを実現する。Bブロックの好ましい材料は、メタクリル酸ポリマ又はビニル芳香族ポリマである。より好ましくは、Bブロックは、(a)以下に示すスチレンのモノマ、
スチレン誘導体(例えば、α−メチルスチレン、環状アルキル化スチレン、環状ハロゲン化スチレン、又はこれらの混合物、又は(b)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、又はこれらの混合物である。
【0031】
【化2】

【0032】
本発明において用いられるブロックコポリマの特性は、AブロックとBブロックの長さ及び各ブロックの相対量に依存する。
【0033】
例えば、ブロックコポリマの弾性は、Aブロックの連鎖の長さに依存し、重量平均分子量を約2000〜30000ダルトンとすると、弾性がないコポリマとなり、重量平均分子量を40000ダルトン以上にすると、より軟らかく、弾性があるコポリマとなる。そこで、本発明の目的を達成するために、ブロックコポリマの組み合わされた分子量は、40000ダルトン以上が好ましく、60000ダルトン以上がより好ましく、90000〜300000ダルトンの範囲とすることが最も好ましい。
【0034】
他の具体例においては、ブロックコポリマの硬度は、Bブロックの相対量に比例する。一般的に、コポリマの好ましいショアー硬度は、20A〜75Dの範囲であり、より好ましくは、40A〜90Aの範囲である。このような硬度は、AブロックとBブロックの比率を変化させることにより実現でき、Bブロックの比率を低くすると、コポリマの硬度が低くなり、Bブロックの比率を高めると、コポリマの硬度が高くなる。特定の具体例として、分子量が大きい(すなわち、100000ダルトン以上)のポリイソブチレンは、ショアー硬度が約10Aの軟らかいゴム状の物質である。ポリスチレンは、より硬く、通常、ショアー硬度が100Dの桁となる。この結果、ポリイソブチレンブロックとポリスチレンブロックとを組み合わせると、コポリマのショアー硬度は、ポリスチレン及びポリイソブチレンの相対量に応じて、10A程度の軟らかさから100D程度の硬さにまで調整できる。多くの場合、ショアー硬度は、30A〜90Aの範囲が好ましく、これを実現するためには、ポリスチレンの量を2〜25モル%とするとよい。より好ましいショアー硬度は、35A〜70Aであり、これを実現するためには、ポリスチレンの量を5〜20モル%とするとよい。
【0035】
多分散性(すなわち、重量平均分子量と数平均分子量との比)は、コポリマの分子量分布を示し、この値が4より大きいことは、分子量分布が広いことを示している。多分散性の値は、試料内の全ての分子が同じサイズを有しているとき、1となる。本発明に関連して使用されるコポリマの分子量分布は、比較的狭く、約1.1〜1.7程度の分子量分布が望ましい。
【0036】
このようなコポリマは、引っ張り強度が高いという利点を有している。例えば、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンの3元ブロックコポリマの引っ張り強度は、2000〜4000psi又はこれ以上である。
【0037】
更に、このようなコポリマは、生体内において、クラッキングやその他の劣化に対する耐性を有しているという利点がある。更に、これらのコポリマは、血管適合性を含む優秀な生体適合性を有し、望ましくない組織反応を最小限に抑制するように作用し、顆粒球を減少させ、及びマクロファージの活動を抑制する。更に、これらのコポリマは、多くの場合、血液適合性を有し、冠状ステントをこのようなコポリマでコーティングすることにより、毛細血管における血栓による閉塞を最小限に抑制することができる。この点は、後述する実施例6により明らかとなる。
【0038】
上述のブロックコポリマは、当分野において周知のいかなる手法を用いて作成してもよい。ブロックコポリマの作成に適する手法としては、カルボカチオン重合を用いてもよく、例えば、まず、所定のモノマ又はモノマの混合物を重合してAブロックを形成した後、更なるモノマ又はモノマの混合物を付加することによりBブロックを形成してもよい。
【0039】
このような重合反応は、例えば、米国特許第4,276,394号、第4,316,973号、第4,342,849号、第4,910,321号、第4,929,683号、第4,946,899号、第5,066,730号、第5,122,572号及び/又は米国再発行特許第34,640号に開示されている。これらの文献は参照により本願に援用される。
【0040】
これらの文献に開示されている手法では、概ね「触媒開始分子(catalyst starting molecule)(「開始剤(initiator)」、「テレケリック開始分子(telechelic starting molecule)」、「シード分子(seed molecule)」、「イニファ(inifer)」等とも呼ばれる)」を用いて、X−(AB)n構造を形成している。ここで、Xは、触媒開始分子を表し、nは、1、2、3又はこれ以上の数を表す。上述のように、この処理により形成される分子は、nが1の場合2元ブロックコポリマであり、nが2の場合3元ブロックコポリマ(開始分子の存在を無視している)であり、nが3以上の場合星形ブロックコポリマである。
【0041】
一般的に、重合反応は、連鎖移動及びポリマ連鎖の成長の終了を最小化又は回避する条件下で行われる。ここでは、活性水素原子(水、アルコール等)を最小限に抑えるような処理を行う。重合が行われる温度は、通常、10℃〜90℃であり、特に60℃〜80℃の範囲が好ましいが、必要に応じて、これより低い温度を用いてもよい。
【0042】
好ましくは、第1のステップにおいて、例えばポリイソブチレンブロック等の1以上のAブロックを形成し、これに続いて、Aブロックの端部に、例えばポリスチレンブロック等のBブロックを付加する。
【0043】
詳しくは、第1の重合ステップは、適切な溶媒系、通常、例えば塩化メチル及びヘキサン等の極性及び無極性溶媒の混合液内において行われる。反応槽には、通常、以下のようなものが加えられる。
・上述の溶媒系
・例えばイソブチレン等のオレフィンモノマ
・開始剤(イニファ又はシード分子)。例えば、tert−エステル、tert−エーテル、tert−ヒドロキシル、tert−ハロゲンを含む化合物、及び、より一般的には、炭化水素酸のクミル(cumyl)エステル、アルキルクミルエーテル、クミルハロゲン化物及びクミルヒドロキシル化合物、並びにこれらの化合物の干渉された(hindered)バージョン
【0044】
・例えば三塩化ホウ素又は四塩化チタン等、通常、ルイス酸である共開始剤
例えばジメチルアセタミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルフタレート等の電子対供与体を溶媒系に添加してもよい。更に、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)−ナフタレン、ジイソプロピルエチルアミン等、水を捕捉するプロトンスカベンジャを添加してもよい。
【0045】
この反応では、まず、シード分子をルイス酸と反応させることにより、シード分子からtert−エステル、tert−エーテル、tert−ヒドロキシル又はtert−ハロゲン(ここでは、「tert−脱離基」と呼ぶ)を脱離させる。tert−脱離基の位置は、周囲の第3級炭素原子と、極性溶媒系及び電子対供与体とによって安定化された、準安定又はリビングカチオンとなる。カチオンが得られた後、例えばイソブチレン等のAブロックモノマが導入され、このAブロックモノマは、シード分子上の各カチオンから、カチオン的に成長し、又は重合される。Aブロックが重合されると、伝播したカチオンがAブロックの端部に残る。続いて、例えばスチレン等のBブロックモノマが導入され、このBブロックモノマは、Aブロックの端部から重合し)成長する。Bブロックが重合されると、例えばメタノールや水等の終結分子を付加することにより、反応を停止させる。
【0046】
多くの場合、生成物の分子量は、反応時間、反応温度、反応物の性質及び濃度等によって決定される。したがって、反応条件が異なれば、異なる生成物が生成される。所望の反応生成物の合成は、通常、繰り返し処理によって実現され、ここで、反応の経過は、反応進行中に定期的に取り出されるサンプルを調べることにより監視される。この手法は、当分野において広く用いられている。所望の生成物を実現するためには、反応時間、温度、反応物濃度等を変更した更なる反応が必要な場合もある。
【0047】
カチオン反応によってコポリマを作成する手法の詳細については、例えば、米国特許第4,276,394号、第4,316,973号、第4,342,849号、第4,910,321号、第4,929,683号、第4,946,899号、第5,066,730号、第5,122,572号及び/又は米国再発行特許第34,640号にも開示されている。
【0048】
上述したブロックコポリマは、溶媒の蒸発、アルコール又はアルコール/アセトン混合液等の非溶媒による沈殿及びこれに続く乾燥等の手法によって回収できる。更に、コポリマの精製は、様々なアルコール、エーテル及びケトンを用いた、又は用いない、水性溶媒における連続抽出によって行うことができる。
【0049】
ブロックコポリマを合成すると、このブロックコポリマは、治療薬送達のための、治療薬が加えられたブロックコポリマ構成体として、又は生体適合性を有する血管内又は血管間医療器具として利用することができる。
【0050】
薬剤投与の任意のモードに対して、遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬、細胞を含む広範囲に亘る治療薬を本発明に基づくブロックコポリマとともに用いることができる。
【0051】
非遺伝子治療薬としては、以下の薬剤が含まれる。
・ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニン・プロリン・アルギニン・クロロメチルケトン)等の抗血栓薬
・デキサメタゾン、プレドニソロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン、メサラミン等の抗炎症薬
・パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンギオスタチン、アンギオペプチン、平滑筋細胞増殖を抑制するモノクローナル抗体、チミジンキナーゼ阻害薬等の抗新生/抗増殖/抗縮瞳薬
・リドカイン、ブピバカイン、ロピバカイン等の麻酔薬
・D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、ダニ(tick)由来抗血小板ペプチド等の抗凝血薬
・増殖因子、転写アクチベータ、転写プロモータ等の血管細胞増殖促進薬
・増殖因子阻害薬、増殖因子受容体拮抗薬、転写リプレッサ、翻訳リプレッサ、複製阻害薬、抑制抗体、増殖因子に向けられた抗体、増殖因子と細胞毒素とからなる二官能基を有する分子、抗体と細胞毒素とからなる二官能基を有する分子等の血管細胞増殖阻害薬
・プロテインキナーゼ及びチロシンキナーゼ(例えば、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)
・プロスタサイクリン及びこれに類似する物質
・コレステロール低減薬
・アンギオポエチン
・トリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド、ニトロフラントイン等の抗菌剤
・細胞障害性薬物、細胞分裂抑制薬、細胞増殖作動薬
・血管拡張薬
・内因性血管作用メカニズムを阻害する薬剤
【0052】
遺伝子治療薬としては、以下の薬剤が含まれる。
・アンチセンスDNA及びアンチセンスRNA
・以下をコードするDNA
・アンチセンスRNA
・欠陥又は欠失がある内因性分子を置換するtRNA又はrRNA
・酸性及び塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮細胞増殖因子、上皮成長因子、トランスフォーミング増殖因子α及びβ、血小板由来内皮細胞増殖因子、血小板由来増殖因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞増殖因子、インシュリン様増殖因子等の増殖因子を含む血管新生因子
・CD阻害薬を含む細胞周期阻害因子
・チミジンキナーゼ(TK)及び細胞増殖を阻害する他の薬剤
・BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16を含む骨形成タンパク質(bone morphogenic protein:BMP)。現在、好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7のいずれかである。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体であってもよく、ヘテロ二量体であってもよく、これらの組合せであってもよく、単独で提供しても、他の分子とともに提供してもよい。これに代えて、又はこれに加えて、BMPの上流又はム下流効果を誘導する分子を加えてもよい。このような分子は、あらゆる「ヘッジホッグ」タンパク質、又はこれらをコードするDNAを含む。
・遺伝子治療薬の送達用として注目されている以下のベクタ
・プラスミド
・アデノウイルス(AV)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス等のウイルスベクタ
・脂質、リポソーム、カチオン性脂質
【0053】
細胞には、幹細胞を含むヒト由来(自己由来又は同種異系)の細胞、又は必要に応じて、所望のタンパク質を送達するために遺伝子工学的に用いられる動物由来(異種)の細胞を含む細胞が含まれる。
【0054】
本発明に適する上述のいくつかの、及び更なる多数の治療薬については、参照により本願に援用される、NeoRx社(NeoRx Corporation)に譲渡されている米国特許第5,733,925号明細書に開示されている。この文献に開示されている治療薬には、以下の治療薬が含まれる。
・「細胞分裂抑制薬」(すなわち、例えばDNAの複製を阻害し、又は紡錘子の形成を阻害することにより、増殖細胞の細胞分裂を阻害又は遅延させる薬剤)。細胞分裂抑制薬の具体例としては、修飾されたトキシン、メトトレキサート、アドリアマイシン、放射性核種(例えば、フリッツバーグ(Fritzberg)他により米国特許第4,897,255号に開示されている)、スタウロスポリンを含むプロテインキナーゼ阻害薬、以下の化学式により表されるプロテインキナーゼC阻害薬、
【0055】
【化3】

【0056】
以下に示す一般構造のいずれかを有するジインドロアルカロイド(diindoloalkaloid)、
【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
【化6】

【0060】
タモキシフェン及び機能的に等価な誘導体(例えば、プラスミン、ヘパリン、リポタンパク質Lp(a)又は糖タンパク質アポリポタンパク質(a)のレベルを低減又は不活性化させる化合物)を含むTGF−βを生成又は活性化させる刺激薬、TGF−β又は機能的等価物、及びこの誘導体又はこれに類似する物質、スラミン、窒素酸化物生成化合物(例えば、ニトログリセリン)又はこれに類似する物質又は機能的等価物、パクリタキセル及びこれに類似する物質(例えば、タキソテレ)、特定酵素の阻害薬(例えば、核酵素DNAトポイソメラーゼII及びDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、アデニルグアニルシクラーゼ)、スーパーオキシドジスムターゼ阻害薬、ターミナル・デオキシヌクレオチジル・トランスフェラーゼ(terminal deoxynucleotidyl-transferase)、逆転写酵素、平滑筋増殖を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド等。
【0061】
「細胞分裂抑制薬」の他の具体例としては、例えばサイトカイン(例えば、IL−1等のインターロイキン)、増殖因子(例えば、PDGF、TGF−α、TGF−β、腫瘍壊死因子、平滑筋及び内皮細胞由来増殖因子、すなわち、エンドセリン、FGF)、ホーミング受容体(例えば、血小板又は白血球用)、及び細胞外マトリックス受容体(例えば、インテグリン)等、(例えば、細胞外マトリックスの存在下で)平滑筋細胞又は周細胞の増殖をトリガする細胞因子のペプチド阻害薬又はミメティック阻害薬(すなわち、アンタゴニスト、アゴニスト、又は競合若しくは非競合阻害薬)がある。平滑筋増殖に効用を有する細胞分裂抑制薬の範疇に属する有用な治療薬の代表例としては、ヘパリンのサブフラグメント、チアゾロピリミジン(トラピジル;PDGF拮抗薬)、ロバスタチン、プロスタグランジンE1又はI2等がある。
【0062】
・内側壁から内膜への血管平滑筋の遊走を阻害する薬剤(抗遊走薬)。好ましい具体例のいくつかは、フェニルアラニン(サイトカラシン)、トリプトファン(キートグロボシン(chaetoglobosin))、ロイシン(アスポカラシン(aspochalasin))等から誘導され、置換ペルヒドロイソインドール−1−1部位のC−3位において、それぞれベンジル基、インドール−3−イルメチル基、イソブチル基を結合させる(式V、式VI)。
【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
ペルヒドロイソインドール部位は、C−8位及びC−9位に結合した11,13,14原子炭素環式の又は酸素を含む環を含む。天然の全てのサイトカラシンは、C−5位にメチル基を有し、C−12位にメチル又はメチレン基を有し、C−14位又はC−16位にメチル基を有する。分子の具体例としては、サイトカラシンA、サイトカラシンB、サイトカラシンC、サイトカラシンD、サイトカラシンE、サイトカラシンF、サイトカラシンG、サイトカラシンH、サイトカラシンJ,サイトカラシンK,サイトカラシンL、サイトカラシンM、サイトカラシンN、サイトカラシンO、サイトカラシンP、サイトカラシンQ、サイトカラシンR、サイトカラシンS、キートグロボシン(chaetoglobosin)A、キートグロボシンB、キートグロボシンC、キートグロボシンD、キートグロボシンE、キートグロボシンF、キートグロボシンG、キートグロボシンH、キートグロボシンJ、キートグロボシンK、デオキサフォミン(deoxaphomin)プロキシフォミン(proxiphomin)、プロトフォミン(protophomin)、ザイゴスポリン(zygosporin)D、ザイゴスポリンE、ザイゴスポリンF、ザイゴスポリンG、アスポカラシン(aspochalasin)B,アスポカラシンC、アスポカラシンD等及びこれらの機能的等価物及び誘導体等がある。サイトカラシンの誘導体については、日本国特許第7201925号、第7214219号、第7208533号、第7223394号、第7201924号、第7204164号にも開示されている。
【0066】
抗遊走薬の他の具体例としては、走化性因子及びその受容体(例えば、Ca5、Ca5 desarg、Ca4等の補体由来ケモタキシン、コラーゲン分解断片等の細胞外マトリックス)又は移動に関連する細胞内骨格タンパク質(例えば、移動に関連するアクチン、細胞骨格要素、ホスホターゼ及びキナーゼ)の阻害薬(すなわち、アゴニスト、アンタゴニスト、競合阻害薬、非競合阻害薬)が含まれる。この抗遊走薬の範疇において有用な治療薬の具体例としては、コーヒー酸誘導体、ニルバジピン(カルシウム拮抗薬)及びステロイドホルモン等がある。
【0067】
・細胞骨格阻害薬又は代謝阻害薬等、細胞内の細胞体積(すなわち、細胞によって占有される組織体積)の増加を阻害する薬剤。細胞骨格阻害薬の具体例としては、細胞内の微小管及びミクロフィラメントに作用するコルチシン、ビンブラスチン、サイトカラシン、パクリタキセル等が含まれる。代謝阻害薬の具体例としては、スタウロスポリン、トリコセシン、修飾されたジフテリア及びリシン毒素、シュードモナス外毒素等がある。トリコセシンには、単純なトリコセシン(すなわち、中心となるセスキテルペノイド構造のみを有するトリコセシン)と、大環状トリコセシン(すなわち、大環状の環が付加されたトリコセシン)が含まれ、これらの具体例としては、例えばベルカリンA、ベルカリンB、ベルカリンC、ベルカリンJ(サトラトキシンC)、ロリジンA、ロリジンC、ロリジンD、ロリジンE(サトラトキシンD)、ロリジンH等のベルカリン又はロリジン等がある。
【0068】
・細胞タンパク質の合成及び/又は分泌、又は細胞外マトリックスの組織をブロックする阻害薬として機能する薬剤(すなわち、「抗マトリックス薬」)。抗マトリックス薬の具体例としては、マトリックスの合成、分泌、組立、組織的クロスリンク(例えば、トランスグルタミナーゼクロスリンクコラーゲン)、及びマトリックスのリモデリング(例えば、外傷の治癒に伴う)の阻害薬(すなわち、アゴニスト、アンタゴニスト、競合阻害薬、非競合阻害薬)等が含まれる。抗マトリックス薬の具体例の範疇において有用な治療薬としては、細胞外マトリックスの分泌を阻害するコルチシンがある。この他の具体例としては、血管形成に伴う平滑筋の組織化及び/又は安定化、及び増殖抑制の効用が認められているタモキシフェンがある。この組織化又は安定化は、病理学上の増殖形式における血管平滑筋細胞の成熟分裂をブロックすることによっても阻害される。
【0069】
・特に癌細胞等の細胞に対して細胞毒性を有する薬剤。好ましい薬剤としては、ロリジンA、シュードモナス外毒素等、及びこれに類似する物質又は機能的等価物がある。放射性同位体を含むこれらの治療薬は、当分野において特定され、知られている。更に、外毒素部位(cytotoxic moietie)を特定するプロトコルについては、当分野で周知であり、一般的に用いられている。
【0070】
上述した多数の治療薬及び他の治療薬は、例えば、再狭窄を対象とする薬剤等、血管処置養生法用の候補としても知られている。このような薬剤は、本発明に好適に用いられるものであり、このような薬剤としては、以下に示す薬剤のうち1以上の薬剤が含まれる。
・以下を含むCaチャンネル遮断薬
・ジルチアゼム及びクレンチアゼム等のベンゾジアゼピン
・ニフェジピン、アムロジピン、ニカルジピン等のジヒドロピリジン
・ベラパミル等のフェニルアルキルアミン
・以下を含むセロトニン経路モジュレータ
・ケタンセリン及びナフチドロフリル(naftidrofuryl)等の5HT拮抗薬
・フルオキセチン等の5HT取り込み阻害薬
・以下を含む環状ヌクレオチド経路薬
・シロスタゾール及びジピリダモール等のホスホジエステラーゼ阻害薬
・フォルスコリン等のアデニル酸/グアニル酸シクラーゼ刺激薬
・アデノシン類似薬
・以下を含むカテコラミンモジュレータ
・プラゾシン及びブナゾシン等のα遮断薬
・プロプラノロール等のβ遮断薬
・ラベタロール及びカルベジロール等のα/β遮断薬
・エンドセリン受容体拮抗薬
・以下を含む酸化窒素供与/放出分子
・ニトログリセリン、二硝酸イソソルバイド、亜硝酸アミル等の有機硝酸塩及び有機亜硝酸塩
・ニトロプルシドナトリウム等の無機ニトロソ化合物
・モルシドミン及びリンシドミン等のシドノニミン(sydnonimine)
・ジアゼニウムジオレート及びアルカンジアミンのNO付加物
・低分子化合物(カプトプリル、グルタチオン、N−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)及び高分子化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖類、合成ポリマ/低重合体、天然ポリマ/低重合体のS−ニトロソ誘導体)を含むS−ニトロソ化合物
・C−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物
・L−アルギニン
・シラザプリル、フォシノプリル、エナラプリル等のACE阻害薬
・サララシン及びロサルタン等のATII(アンギオテンシン2)受容体拮抗薬
・アルブミン及びポリエチレンオキシド等の血小板接着阻害薬
・以下を含む血小板凝集阻害薬
・アスピリン及びチエノピリジン(チクロピジン及びクロピドグレル)
・アブシキシマブ、エプチフィバタイド、チロフィバン等のGP2b/3a阻害薬
・以下を含む凝固経路モジュレータ
・ヘパリン、低分子量ヘパリン、硫酸デキストラン、β−シクロデキストリンテトラデカ硫酸塩等のヘパリノイド
・ヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−プロピル−L−Arg−クロロメチルケトン)及びアルガトロバン等のトロンビン阻害薬
・アンチスタチン及びTAP(ダニ由来抗凝固性ペプチド:tick anticoagulant peptide)等のFXa阻害薬
・ワルファリン等のビタミンK阻害薬
・活性プロテインC
・アスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、スルフィンピラゾン等のシクロオキシゲナーゼ経路阻害薬
・デキサメタゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾン等の天然及び合成コルチコステロイド
・ノルジヒドログアイアレチン酸及びコーヒー酸等のリポキシゲナーゼ経路阻害薬
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
・E−セレクチン及びP−セレクチンの拮抗薬
・VCAM−1及びICAM−1の相互作用の阻害薬
・以下を含むプロスタグラジン及びこれに類似する物質
・PGE1及びPGE2等のプロスタグラジン
・シプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト、ベラプロスト等のプロスタサイクリンに類似する物質
・ビスホスホネートを含むマクロファージ活性抑制薬
・ロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、セリバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害薬
・魚油及びω−3−脂肪酸
・プロブコル、ビタミンC、ビタミンE、エブセレン、トランスレチノイン酸、SODミミック等のフリーラジカルスカベンジャ/抗酸化剤
・以下を含む様々な増殖因子に影響を与える薬剤
・bFGF抗体及びキメラ融合タンパク質等のFGF経路薬
・トラピジル等のPDGF受容体拮抗薬
・アンギオペプチン及びオクレオチド等のソマトスタチンに類似する物質を含むIGF経路薬
・ポリアニオン薬(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、TGF−β抗体等のTGF−β経路薬
・EGF抗体、受容体拮抗薬、キメラ融合タンパク質等のEGF経路薬
・タリドミド及びこれに類似する物質等のTNF−α経路薬
・スロトロバン(sulotroban)、バピプロスト(vapiprost)、ダゾキシベン(dazoxiben)、リドグレル(ridogrel)等のトロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレータ
・チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン誘導体等のタンパク質チロシンキナーゼ阻害薬
・マリマスタット、イロマスタット(ilomastat)、メタスタット等のMMP経路阻害薬
・サイトカラシンB等の細胞運動阻害薬
・以下を含む抗増殖/抗腫瘍薬
・プリンに類似する物質(6−メルカプトプリン等)、ピリミジンに類似する物質(サイタラビン、5−フルオロウラシル等)、メトトレキサート等の代謝拮抗物質
・ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホン酸塩、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン等)、ニトロソ尿素、シスプラチン
・微小管機能に影響を与える薬剤(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルチシン、パクリタキセル、エポチロン)
・カスパーゼ活性薬
・プロテアソーム阻害薬
・血管新生阻害薬(例えば、エンドスタチン、アンギオスタチン、スクアラミン)
・ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドール、スラミン
・ハロフジノン又は他のキナゾリノン誘導体及びトラニラスト等のマトリックス沈着/組織経路阻害薬
・VEGF及びRGDペプチド等の内皮化促進薬
・ペントキシフィリン等の血液レオロジーモジュレータ
更に、上述の薬剤を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
上述のブロックコポリマに広範囲に亘る治療薬を加えることができる。当業者は、処置すべき条件、治療薬自体の特性、治療薬が加えられたコポリマを所定の患部においてどのように扱うか等に基づいて、加える治療薬の量を決定することができる。コポリマにおける治療薬の含有率は、多くの場合、1wt%以下〜70wt%の範囲内である。
【0072】
本発明の好適な具体例の多くにおいては、コポリマは、(a)医療器具の全体を構成し、若しくは(b)医療器具の一部を構成する(すなわち、コポリマは、「器具又は器具の一部」として使用される)。本発明に基づくコポリマが使用される医療器具の一部には、器具のコーティング、器具の部品等、医療器具の部分が含まれる。
【0073】
いくつかの具体例においては、治療薬は、生体組織又は体液と接触して、器具又は器具の一部から放出される。薬剤の放出速度を緩やか(24時間で50%以下)にすることが望ましい場合もある。
【0074】
他の具体例においては、例えば、基質に作用する酵素、細胞及び他の薬剤を治療薬として使用する場合、この治療薬は、コポリママトリックス内に残留させてもよい。
【0075】
本発明が好適に適用される医療器具としては、カテーテル、好ましくは血管カテーテル、更に好ましくはバルーンカテーテルと、ガイドワイヤと、バルーンと、フィルタ(例えば、大静脈フィルタ)と、血管ステント(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)被覆ステントを含む)と、ステント植皮と、大脳ステントと、大脳動脈瘤フィルタコイル(GDC(Guglilmi detachable coil)及び金属コイルを含む)と、血管移植片と、心筋プラグと、ペースメーカーリードと、心臓弁と、血管内ペービング装置とが含まれる。ステントの具体例としては、メディノール社(Medinol)(イスラエル)のNIRステント、サイムドライフシステムズ社(Scimed Life Systems)(ミネソタ州、メイプルグルーブ(Maple Grove))のRADIUSステント、ボストンサイエンティフィック社(Boston Scientific)(マサチューセッツ州、ナティック(Natick))のWALLSTENTステント、ボストンサイエンティフィック社(マサチューセッツ州、ナティック)のSYMPHONYステント等がある。本発明に基づくコポリマは、動脈瘤フィルタ用の合成材料(例えば、アルギン酸、シアノアクリレート、親水性ポリマ等を重合したコポリマ)としても用いることができる。更に、本発明に基づくコポリマは、細胞治療用に細胞を組み込んでもよく、組織処置用途(例えば、心臓への細胞送達のための足場(scaffold)、肝臓再生等)にも用いることができる。
【0076】
上述のように、コポリマは、器具全体を構成してもよく、器具のコーティング又は器具の部分等を含む器具の一部を構成してもよい。
【0077】
本発明に基づく、治療薬が加えられたコポリマ器具又は器具の一部は、生体組織又は体液と接触させるために、人体の様々な部位に設置することができる。この医療器具の好ましい設置部位としては、例えば、冠状血管系又は末梢血管系(ここでは、総称して血管と呼ぶ)、食道、気管、結腸、胆管、尿道、前立腺、脳等がある。
【0078】
いくつかの具体例においては、医療器具が目的の部位に設置される前に薬剤が放出してしまうことを防ぐために、治療薬が加えられたコポリマを一時的に封入することが望ましい場合がある。特定の具体例においては、治療薬が加えられたステント又はカテーテルをシースで覆って生体に挿入することにより、治療薬が早期に放出されることを防止する。
【0079】
上述したブロックコポリマから医療器具又は医療器具の一部を製造する手法としては、様々な手法がある。
【0080】
例えば、ブロックコポリマは、熱可塑性を有するため、圧縮成型、射出成型、吹込み成型、紡績、真空成型、カレンダリング(calendaring)、並びにシート、ファイバ、ロッド、チューブ、この他様々な長さ及び断面を有する形状への押し出し加工等を含む標準的な様々な熱可塑性処理技術を用いて、器具又は器具の一部を形成することができる。これらの及びこの他の技術を用いて、バルーン、カテーテル、ステント、及び器具の一部をコポリマから製造することができる。
【0081】
加えられる治療薬が処理温度で安定であると仮定すると、治療薬は、熱可塑性処理以前に、押し出しによりコポリマに組み込むことができ、これにより、治療薬が加えられた器具又は器具の一部を製造することができる。これに代えて、治療薬は、後述するように、器具又は器具の一部を成型した後に加えてもよい。
【0082】
器具又は器具の一部は、溶媒を用いた技術によって製造することもできる。この場合、ブロックコポリマは、溶媒に溶解され、このブロックコポリマの溶液を用いて器具又は器具の一部を形成する。この溶媒は、勿論、ブロックコポリマに適合性を有するものが用いられる。例えば、スチレン及びイソブチレンのコポリマに適合性を有する溶媒としては、テトラヒドロフラン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン及びこれらの混合液等がある。この手法において用いられる好適な技術としては、溶媒鋳造(solvent casting)、スピンコーティング、ウェブコーティング、溶媒噴霧、含浸、ファイバ成型、インクジェット法等がある。多くの場合、溶媒をテンプレートに塗布し、溶媒を除去し、テンプレートからブロックコポリマを剥離することにより、所望の部品を得ることができる。このような手法は、特に、シート、チューブ、シリンダ等の単純なオブジェクトを成型する場合に好適である。
【0083】
溶媒を用いて器具又は器具の一部を製造する手法の一具体例は、ピンチャンク(Pinchuk)に付与されている米国特許第5,741,331号の実施例3に開示されている。この具体例では、6%(特に指定がない限り、ここで使用するパーセンテージは、重量パーセントを示すものとする)のスチレン/イソブチレンコポリマの固体がテトラヒドロフランに溶解され、この溶液は、エアーブラシによって、テンプレートとして機能する回転心棒に噴霧される。噴霧中に環境が制御され、テトラヒドロフランは、噴霧器と回転心棒との間で蒸発し、回転心棒上に多孔質のマットが形成される。この試料は、空気中で完全に乾燥され、心棒から剥離される。このような手法は、例えば、血管移植片、ステント植皮、血管パッチ、ヘルニアパッチ、心臓弁縫合リング等を形成するために用いることができる。
【0084】
溶媒を用いた手法で、治療薬を含む装置又は装置の一部を製造する場合、溶媒が治療薬に適合性を有する限り、治療薬は、例えば、溶解した形式で又は粒子懸濁液として、コポリマ/溶媒混合液に混入することができる。このような手法により、部品の形成と同時に治療薬を加えることができる。
【0085】
必要であれば、コポリマ/溶媒混合液は、2種類以上の溶媒(例えば、ブロックコポリマに適した溶媒と治療薬に適した他の溶媒)を含んでいてもよい。薬剤をパクリタキセルとし、コポリマをポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレン3元ブロックコポリマとする特定の具体例においては、溶液は、トルエン、テトラヒドロフラン、パクリタキセル及びコポリマを含んでいてもよい。
【0086】
治療薬が器具又は器具の一部の形成と同時には加えられない場合、必要であれば、後述するように、器具又は器具の一部を形成した後に治療薬を加えることもできる。
【0087】
コーティングは、本発明に基づく多くの具体例に用いられる好適な器具の一部の1つである。例えば、ここに開示するコポリマは、医療器具の表面(例えば、内表面又は外表面)を被覆するコーティングとしても使用できる。このような表面は、ガラス、金属、ポリマ、セラミクス、及びこれらの組合せ等、広範囲に亘る様々な物質から構成される。
【0088】
医療器具の表面にコポリマのコーティングを形成する手法としては、様々な手法を用いることができる。
【0089】
コーティングは、例えば医療器具部品とコーティングとを共に押し出し成型することにより、熱可塑性処理によって形成できる。
【0090】
好適な手法においては、コポリマは、まず、コポリマに適合性を有する溶媒に溶解され、続いて、このコポリマ溶液を医療器具の少なくとも一部に塗布する。好適な手法としては、溶媒鋳造、スピンコーティング、ウェブコーティング、溶媒噴霧、含浸、インクジェット法、及びこれらの処理の組合せ等がある。必要であれば(例えば、所望の厚みを有するコーティングを実現するために)、上述したコーティング法を繰り返し、又は組み合わせて行い、被覆層を重ねて所望の厚みにしてもよい。コーティングの厚みは、この他の手法を用いて変更することもできる。例えば、溶媒噴霧を用いる好ましい一具体例において、溶媒の噴霧量を増加させる、被覆される器具と噴霧器ノズルとの間の移動速度を遅める、噴霧を繰り返す等、コーティング処理のパラメータを変化させることにより、コーティングの厚みを変更することができる。多くの場合、最終的なコーティングの厚みは、約0.5〜50ミクロンの範囲であり、より好ましくは、2〜30ミクロンの範囲である。
【0091】
必要であれば、所定の治療薬をコポリマコーティングとともに付加してもよく、例えば、熱可塑性処理の間にコポリマが融解している際に治療薬を加えてもよく、上述のように、溶媒を用いた手法において、コポリマ溶液に薬剤を加えてもよい。更に、これに代えて、後に説明するように、コーティングが形成された後に薬剤を加えてもよい。
【0092】
上述のように、本発明のいくつかの具体例においては、治療薬は、器具又は器具の一部を形成した後に付加してもよい。このような具体例の1つにおいて、治療薬は、コポリマ及び治療薬の両方に適合性を有する溶媒に溶解される。好ましくは、コーティング又は部品は、最大でも僅かにしか溶媒に溶解しない。これに続いて、器具又は器具の一部に溶液が供給され、これにより治療薬がコポリマに加えられる(例えば、浸出/拡散)。このようなプロセスのために、器具又は器具の一部を溶液に含浸又は沈下させてもよく、例えば噴霧等により、溶液を器具又は器具の一部に塗布してもよい。次に、器具又は器具の一部を乾燥し、治療薬がこの器具又は器具の一部に残留する。
【0093】
上述したいくつかの具体例において、治療薬は、本発明に基づくコポリマからなるマトリクスに供給される。治療薬は、共有結合、水素結合又は静電結合によりコポリマに結合させてもよい。特定の具体例においては、例えばS−ニトロソ−チオール等の酸化窒素を放出する官能基をコポリマに結合してもよく、又はコポリマに電荷を有する官能基を設け、逆の電荷を有する治療薬の官能基をここに結合してもよい。
【0094】
これに代えて、治療薬を器具又は器具の一部に沈殿させてもよい。更に、上述の手法により、この表面をコポリマ(更なる治療薬を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい)のコーティングで被覆してもよい。
【0095】
このように、ブロックコポリマに治療薬を「加える(load)」という表現は、治療薬を上述の手法又は関連する手法によってブロックコポリマに関連付けることを意味する。
【0096】
上述のように、本発明に基づくコポリマは、医療器具全体を構成してもよく、医療器具の一部を構成してもよい。本発明に基づくコポリマの用途は(1)単一の器具、(2)器具の組合せ、(3)単一の器具の一部(例えば器具の部品又は器具のコーティング)、(4)器具の一部の組合せ等を含む。
【0097】
ブロックコポリマは、所望の結果を得るために、補助的な材料又は器具の一部に関連させて使用することもできる。このような補助的な材料又は器具としては、結合剤、境界層、混合剤等が含まれる。
【0098】
例えば、いくつかの具体例において、結合剤は、基材への接着に用いられる。本発明に利用される結合剤として好適な材料の具体例としては、シラン、チタネート、イソシアネート、カルボキシル、アミド、アミン、アクリレートヒドロキシル、エポキシド等があり、これにはEVA、ポリイソブチレン、天然ゴム、ポリウレタン、シロキサン結合剤、エチレン、ポリプロピレンオキシド等の特定のポリマが含まれる。
【0099】
本発明に基づくコポリマ(治療薬を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい)を更なるポリマ層(治療薬を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい)の層によって被覆してもよい。この層は、例えば、治療薬の拡散を遅延させる境界層であってもよく、これにより、器具又は器具の一部が移植部位に晒された際に、多くの薬剤が瞬時に放出されてしまうバースト現象を防止してもよい。コーティング又は境界層を構成する材料は、薬剤が加えられたコポリマと同じコポリマであってもよく、異なるコポリマであってもよい。
【0100】
例えば、バリア層も以下に示すクラスから選択されるポリマ又は小分子であってもよい。すなわち、このクラスは、ポリアクリル酸を含むポリカルボキシル酸、酢酸セルロース及び硝酸セルロースを含むセルロースポリマ、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、クロスリンクされたポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマを含むポリアンヒドリド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、EVA(エチレン−酢酸ビニルコポリマ)等のビニルモノマのコポリマ、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、高分子量ポリエチレンを含むポリアルキレン、ポリテトラフルオロエチレンを含むハロゲン化ポリアルキレン、ポリウレタン、ポリオルトエステル、タンパク質を含むポリペプチド、シリコン、シロキサンポリマ、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、吉草酸ポリヒドロキシブチレート並びにその混合物及びコポリマ、ポリウレタン分散媒(polyurethane dispersion)(BAYHDROL(商標)等)等のポリマ分散媒からのコーティング、フィブリン、コラーゲン及びその誘導体、セルロース、デンプン、デキストラン、アルギン酸塩及びこれらの誘導体等の多糖類、及びヒアルロン酸等から構成される。
【0101】
これらの材料のコポリマ及び混合物を用いてもよい。
【0102】
好ましいポリマとしては、HYDROPLUS(商標)(マサチューセッツ州、ナティック、ボストンサイエンティフィック社)として入手可能で、参照により本願に援用される米国特許第5,901,205号に開示されているポリアクリル酸がある。更に好適な具体例においては、ポリマは、ポリアクリル酸とポリカプロラクトンのコポリマである。
【0103】
更に、本発明に基づくブロックコポリマに、上述又はこの他の1以上のポリマを加えて混合材を形成してもよい。このような具体例を以下に示す。
【0104】
・ブロックコポリマ相(block copolymer phase)の1つと混合可能なホモポリマにより混合材を形成してもよい。例えば、ポリフェニレンオキシドは、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマのスチレンブロックと混合可能である。これにより、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマ及びポリフェニレンオキシドから形成された成型部分又はコーティングの強度が向上する。
【0105】
・本発明に基づくコポリマのいずれのブロックとも完全には混合されない追加的なポリマ又は他のコポリマから混合材を形成してもよい。追加的なポリマ又はコポリマは、例えば、他の治療薬に適合性を有し、又は本発明に基づくコポリマ(例えば、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマ)から治療薬が放出される速度を変更するために用いて好適である。
【0106】
・器具又は器具の一部から濾過されるショ糖(上述のリスト参照)等の成分を用いて混合材を形成してもよい。これにより、器具又は器具の一部の多孔度が高まり、この多孔質構造からの薬剤放出速度を制御できる。
【0107】
治療薬が加えられたブロックコポリマは、生体への挿入又は移植を含む様々な処置に好適である。ブロックコポリマが比較的長期に亘って生体に挿入又は移植される場合、生体適合性が問題となる。
【0108】
本発明に基づく、治療薬が加えられたブロックコポリマから治療薬が放出される速度は、様々な手法で制御することができる。以下にその例を示す。
・ブロックコポリマの分子量を変更する。
・ブロックコポリマのエラストマ部分及び熱可塑性部分として選択された特定の構成材料を変更し、及びこれらの構成材料の相対量を変更する。
・ブロックコポリマを処理するために用いる溶媒の種類及び相対量を変更する。
・ブロックコポリマの多孔度を変更する。
・ブロックコポリマ上に境界層を設ける。
・本発明に基づくコポリマと、他のポリマ又はコポリマとを混合する。
【0109】
上述のように、本発明において使用されるブロックコポリマは、良好な生体適合性を有する。本発明の具体例において使用されるポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマの生体適合性は、後述する実施例6においても示される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマ及びパクリタキセルによってコーティングされたステントにおける、薬剤放出速度を、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマ及びパクリタキセルの様々な比とともに示すグラフ図である。
【図2A】無加工のステンレススチールステントを用いた場合の28日後の豚の冠状動脈の組織を示す写真図である。
【図2B】従来の「生体安定性」ポリウレタンカーボネートポリマによってコーティングされたステントを用いた場合の28日後の豚の冠状動脈の組織を示す写真図である。
【図2C】従来の「生体分解性」ポリ乳酸(PLA)ポリグリコール酸(PGA)コポリマによってコーティングされたステントを用いた場合の28日後の豚の冠状動脈の組織を示す写真図である。
【図2D】本発明に基づくポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマによってコーティングされたステントを用いた場合の28日後の豚の冠状動脈の組織を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0111】
本発明の実施例を用いて本発明を更に説明する。以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0112】
ブロックコポリマ合成
スチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマは、周知の手法を用いて合成される。カチオン化学の分野において周知のように、全ての溶媒及び反応物は、湿気、酸、抑制剤を含まないものである必要がある。したがって、購入した材料の品質によっては、反応処理を行う前に、これらの化学製品を蒸留し、又は乾燥剤、抑制剤除去剤等を含むカラムを通す必要がある場合がある。
【0113】
全ての溶媒が高純度で、湿気及び抑制剤を含まない場合、スチレンは、乾燥された気密性を有するスチレン混合タンクに導入される。このスチレン混合タンクは、まず、液体窒素又は他の熱伝導媒体を用いて、−19℃(塩化メチルの凝結点)及び−31℃(純粋なスチレンの凝固点)の間の温度に冷却され、ここに塩化メチルガスが凝結され、加えられる。次に、ジ−tert−ブチル−ピリジンがスチレン混合タンクに加えられ、続いて更にヘキサンが導入される。次に、イソブチレンがスチレン混合タンクに加えられ、更に、スチレン混合タンク内のヘキサンを所定量とするために十分量のヘキサンが更に加えられる。続いて、スチレン混合タンクの温度を約−70℃に下げ、使用時までこの温度を維持する。
【0114】
次に、ヘキサンは、冷却コイル及び冷却ジャケットを備える乾燥された気密性を有する反応器に排出される。ヘキサンが導入された反応器は、液体窒素又はこの他の熱伝導媒体によって冷却される。塩化メチルは、冷却されたヘキサンによってガスを攪拌することにより、反応器内で凝結する。続いて、干渉された(hindered)t−ブチルジクミルエーテル、フタル酸ジメチル、ジ−tert−ブチル−ピリジンが反応器に加えられ、ヘキサンとともにフラッシュ(flushing)する。次に、イソブチレンが反応器に導入され、冷却された溶媒系によって攪拌することにより反応器内で凝結される。このときの温度は、約−70℃に維持される。反応器にイソブチレンが導入された後、四塩化チタンが反応器に導入され、ヘキサンとともにフラッシュされ、反応が開始する。適量のイソブチレンが加えられた後、反応は、15〜30分継続される。続いて、スチレン混合タンク内の内容物(予め−60〜−70℃に冷却されている)を約−70℃の温度に維持されている反応器に導入する。スチレン混合タンク内の全ての内容物を反応器に加えた後、反応器内の内容物は、15〜45分間反応され、この後、メタノールの導入によって反応が終了される。
【0115】
次に、圧力の上昇を監視しながら、反応器の温度を室温に上昇させ、塩化メチルを沸騰させることにより塩化メチルを反応器から取り除き、この塩化メチルを冷却された回収タンクにおいて凝結させる。取り除かれた塩化メチルの代わりに、反応器には更なるヘキサン、若しくはテトラヒドロフラン又はトルエン等の他の溶媒を加える。これらの更なる溶媒は、ポリマの溶解度を増すために使用され、これによりポリマは、反応器から排出できるようになる。この処理を行わないと、ポリマは、溶解度が低く、容易に流れない。次に、反応器からのコポリマ溶液をメタノール内に沈殿させる(これは、凝固される初期のコポリマ/ヘキサンと同じ質量である)。沈殿されたポリマはふるいに流され、ポリマが取り出され、真空オーブンにおいて、完全な真空状態で、約125℃の温度で少なくとも24時間乾燥される。
【実施例2】
【0116】
溶媒を用いたコーティング法
溶媒を用いて、例えばステント等の医療器具をコーティングする手法の実施例を以下に説明する。周知のように、このような処理のために使用される溶媒は、選択されたブロックコポリマ及び治療薬の特性に応じて選択される。ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマ及びパクリタキセル治療薬とを用いる場合、好ましい溶液は、(1)0〜94%、好ましくは94%のトルエンと、(2)5〜99%、好ましくは5%のテトラヒドロフランと、(3)1%のコポリマ及びパクリタキセルの組合せとを含む。このような溶液は、(1)パクリタキセルとテトラヒドロフランとを混合し、(2)コポリマを加え、(3)トルエンを加え、(4)十分に(例えば、一晩)混合し、(5)(0.22ミクロンフィルタ等の微細なフィルタを介して)フィルタリングを行うことにより提供できる。続いて、この溶液を注射器に入れ、噴霧器ノズルに供給する。処理される部品(例えば、カテーテル、カテーテルバルーン、ステント、ステント植皮、血管移植片等)をノズルに平行な保持部材に装着し、必要であれば、回転させて(例えば、45RPMの速度で)、均一に被覆する。使用される噴霧器の種類に応じて、器具又は噴霧器ノズルのいずれを移動させてもよいが、噴霧器から1以上の経路を介して溶液を噴霧する間に、ノズルとコンポーネントとを相対的に移動させる。例えば、溶液(ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマ、パクリタキセル、トルエン、テトラヒドロフラン)を15psiの圧力、6.3mL/hrの流速で噴霧した場合、ノズルから部品までの距離を1.0インチとし、部品と噴霧器とが0.3〜0.5mm/秒の速度で移動しているとすると、2.5〜4.0ミクロンの厚みのコーティングが形成される。
【実施例3】
【0117】
溶媒を用いたコーティング法
他の好ましい実施例においては、例えばステント等の医療器具を回転させた状態で、エアーブラシを用いて、上述と同様の(1)0〜94%のトルエンと、(2)5〜99%のテトラヒドロフランと、(3)1%のコポリマ及びパクリタキセルとを含む溶液を噴霧する。噴霧中に、噴霧器と部品との間でテトラヒドロフラン及びトルエンが蒸発するように環境を制御することにより、回転されている部品上に、治療薬を含む多孔質のマットが形成される。噴霧は、所望の厚みが得られたときに終了する。
【実施例4】
【0118】
乾燥処理
上述した溶媒を用いた手法によって部品又は層が形成された後、この部品又は層は、例えば、予熱されたオーブンに収納され、乾燥される(例えば、65℃で30分、70℃で3時間)。
【実施例5】
【0119】
放出特性
薬剤の放出速度は、薬剤及びコポリマの相対量を変更することによって変更できる。図1は、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマ及びパクリタキセルによってコーティング法されたNIRステントにおいて、薬剤の放出速度をポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマ及びパクリタキセルの様々な比とともに示している。コーティングの調合物は、94%のトルエンと、5%のテトラヒドロフランと、1%のパクリタキセル及びポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマとから構成され、図1では、同じ重量のコーティングにおいて、パクリタキセルとポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマの重量比を35%−65%、32.5%−67.5%、30%−70%、25%−75%、22.5%−87.5%、20%−80%、17.5%−83.5%にした場合のそれぞれの放出速度を示している。なお、コーティングの厚みは、約16ミクロンであった。図1に示すように、薬剤の放出速度は、パクリタキセルの比率が高い場合(35%)に速く、パクリタキセルの比率が低い場合(17.5%)に遅くなる。
【実施例6】
【0120】
生体適合性
実験のため、次のような各種のステントを準備した。(1)無加工のステンレススチールNIRステント(イスラエル、メディノール社(Medinol))、(2)周知の「生体安定性」ポリカーボネートウレタンポリマ(マサチューセッツ州、ウーバン、カルディオテック社(CardioTech Inc.)、クロノフレックスAL(Chronoflex AL)によってコーティングされたNIRステント(3)ポリ乳酸(PLA)及びポリグリコール酸(PGA)からなる周知の「生体分解性」コポリマ(アラバマ州、バーミンガム、バーミンガムポリマ社(Birmingham Polymers)によってコーティングされたNIRステント、(4)本発明に基づく、ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマによってコーティングされたNIRステント。
【0121】
これらのステントを豚の冠状動脈に移植した。28日後に豚からステントを取り出し、狭窄症(新生内膜肥大症)及び炎症について調べた。狭窄症については、血管造影法を用いて調べた。炎症は、予備知識が与えられていない観察者によって、豚から取り出したの動脈の一部を顕微鏡により検査することにより行われた。炎症レベルは4段階に分けられ、最も程度が低い炎症を1とし、最も程度が高い炎症を4とした。この結果を以下の表に示す。
【0122】
【表1】

【0123】
この表から明らかなように、周知のポリカーボネートウレタンポリマによってコーティングされたステントを用いると、無加工のステント又はポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマによってコーティングされたステントに比べて、狭窄症及び炎症の程度が若干高くなることがわかる。
【0124】
図2A〜図2Dは、ステントが挿入された動脈の一部の組織を示している。炎症及び新生内膜肥大症の程度は、図2C(周知の「生体安定性」ポリウレタンカーボネートポリマによってコーティングされたステント)及び図2D(周知の「生体分解性」PLA/PGAコポリマによってコーティングされたステント)の方が、図2A(無加工のステント)又は図2B(ポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンコポリマによってコーティングされたステント)に比べて高いことがわかる。
【0125】
以上、本発明の特定の具体例を例示的に説明したが、ここに開示された具体例を様々に変形若しくは変更することができ、これらの変形若しくは変更は、本発明の思想及び意図された範囲から逸脱することなく、添付の請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬を送達するための構成体において、
1以上のエラストマブロック及び1以上の熱可塑性ブロックを含む生体適合性を有するブロックコポリマと、
上記ブロックコポリマに加えられた治療薬とを備える構成体。
【請求項2】
上記1以上のエラストマブロックは、ポリオレフィンブロックであり、上記1以上の熱可塑性ブロックは、ビニル芳香族ブロック及びメタクリル酸ブロックのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の構成体。
【請求項3】
上記ブロックコポリマは、Aをエラストマブロックとし、Bを熱可塑性ブロックとし、nを正の自然数とし、Xをシード分子として、X−(AB)nとして表されることを特徴とする請求項1記載の構成体。
【請求項4】
上記Aは、ポリオレフィンブロックであり、上記Bは、ビニル芳香族ブロック及びメタクリル酸ポリマブロックのいずれかであることを特徴とする請求項3記載の構成体。
【請求項5】
上記Bは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルから選択される1以上のモノマであることを特徴とする請求項4記載の構成体。
【請求項6】
上記Aは、R及びR'を直鎖状又は分岐状脂肪族基、又は環状脂肪族基とし、一般式−(CRR'−CH2n−として表されるポリオレフィンブロックであり、上記Bは、ビニル芳香族ポリマブロックであることを特徴とする請求項4記載の構成体。
【請求項7】
上記ポリオレフィンブロックは、イソブチレンモノマを含み、上記ビニル芳香族ポリマブロックは、スチレン及びα−メチルスチレンから選択される1以上のモノマを含むことを特徴とする請求項6記載の構成体。
【請求項8】
上記ポリオレフィンブロックの量は、ブロックコポリマの95〜45モル%の範囲内であることを特徴とする請求項6記載の構成体。
【請求項9】
上記ブロックコポリマの分子量は、80000〜300000ダルトンの範囲内であることを特徴とする請求項6記載の構成体。
【請求項10】
上記ポリオレフィンブロックの分子量は、60000〜200000ダルトンの範囲内であり、上記ビニル芳香族ポリマブロックの分子量は、20000〜100000ダルトンの範囲内であることを特徴とする請求項6記載の構成体。
【請求項11】
上記加えられたブロックコポリマは、0.1〜70重量%の治療薬を含むことを特徴とする請求項2記載の構成体。
【請求項12】
上記加えられたブロックコポリマは、0.1〜70重量%の治療薬を含むことを特徴とする請求項6記載の構成体。
【請求項13】
上記加えられたブロックコポリマは、0.1〜70重量%の治療薬を含むことを特徴とする請求項7記載の構成体。
【請求項14】
少なくとも一部が患者の生体内に挿入又は移植可能な医療器具において、
1以上のエラストマブロック及び1以上の熱可塑性ブロックを含む生体適合性を有するブロックコポリマと、
上記ブロックコポリマに加えられた治療薬とを備える医療器具。
【請求項15】
上記1以上のエラストマブロックは、ポリオレフィンブロックであり、上記1以上の熱可塑性ブロックは、ビニル芳香族ブロック及びメタクリル酸ブロックのいずれかであることを特徴とする請求項14記載の医療器具。
【請求項16】
上記ブロックコポリマは、Aをエラストマブロックとし、Bを熱可塑性ブロックとし、nを正の自然数とし、Xをシード分子として、X−(AB)nとして表されることを特徴とする請求項14記載の医療器具。
【請求項17】
上記Aは、ポリオレフィンブロックであり、上記Bは、ビニル芳香族ブロック及びメタクリル酸ポリマブロックのいずれかであることを特徴とする請求項16記載の医療器具。
【請求項18】
上記Aは、R及びR'を直鎖状又は分岐状脂肪族基、又は環状脂肪族基とし、一般式−(CRR'−CH2n−として表されるポリオレフィンブロックであり、上記Bは、ビニル芳香族ポリマブロックであることを特徴とする請求項17記載の医療器具。
【請求項19】
上記ポリオレフィンブロックは、イソブチレンモノマを含み、上記ビニル芳香族ポリマブロックは、ポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレンから選択される1以上のモノマを含むことを特徴とする請求項18記載の医療器具。
【請求項20】
当該医療器具の一部のみが上記ブロックコポリマにより構成されていることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項21】
上記医療器具の一部は、当該医療器具のコーティングであることを特徴とする請求項20記載の医療器具。
【請求項22】
上記治療薬は、当該医療器具を患者に移植した後、所定の期間に亘って放出されることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項23】
当該医療器具を生体内に挿入又は移植することにより、上記ブロックコポリマの少なくとも一部が体液に晒されることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項24】
当該医療器具を生体内に挿入又は移植することにより、上記ブロックコポリマの少なくとも一部が組織に晒されることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項25】
当該医療器具は、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ、ステント、ステント植皮、血管移植片、血管パッチ、シャント、内腔内ペービング装置のいずれかであることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項26】
当該医療器具は、冠状血管系、末梢血管系、食道、気管、結腸、胆管、尿道、前立腺、脳のいずれかに移植又は挿入されることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項27】
当該医療器具は、上記ブロックコポリマを被覆し、生体内に挿入される際に、治療薬が早期に放出されてしまうことを防ぐシースを備えるステント又はカテーテルであることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項28】
上記コーティングの厚みは、0.1乃至50ミクロンの範囲内であることを特徴とする請求項21記載の医療器具。
【請求項29】
上記治療薬は、抗血栓薬、抗増殖薬、抗炎症薬、抗遊走薬、細胞外マトリックスの形成及び組織化に影響を与える薬剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、麻酔薬、抗凝血薬、血管細胞増殖促進薬、血管細胞増殖阻害薬、コレステロール低減薬、血管拡張薬、内因性血管作用メカニズムを阻害する薬剤からなるグループから選択される1以上の薬剤であることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項30】
上記治療薬は、アンチセンスDNA、アンチセンスRNA、アンチセンスRNAをコードするDNA、tRNA又はrRNAをコードするDNA、血管新生因子をコードするDNA、細胞周期阻害因子をコードするDNA、増殖阻害因子をコードするDNA、骨形成タンパク質をコードするDNAからなるグループから選択されることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項31】
上記治療薬は、自己由来細胞、同種異系細胞、異種細胞からなるグループから選択されることを特徴とする請求項15記載の医療器具。
【請求項32】
上記治療薬が所定の期間に亘って上記患者の生体内に放出されるように、請求項15記載の医療器具を該患者の生体内に移植又は挿入する治療方法。
【請求項33】
少なくとも一部が患者の血管内に挿入又は移植可能な医療器具において、
R及びR'を直鎖状又は分岐状脂肪族基又は環状脂肪族基として一般式−(CRR'−CH2n−として表されるポリオレフィンブロックをAとし、ビニル芳香族ポリマブロックをBとし、nを正の自然数とし、Xをシード分子として、X−(AB)nとして表されるブロックコポリマと、
上記ブロックコポリマに加えられた治療薬であって、抗血栓薬、抗増殖薬、抗炎症薬、抗遊走薬、細胞外マトリックスの形成及び組織化に影響を与える薬剤、抗腫瘍薬、細胞分裂抑制薬、麻酔薬、抗凝血薬、血管細胞増殖促進薬、血管細胞増殖阻害薬、コレステロール低減薬、血管拡張薬、血管作用メカニズムを阻害する薬剤からなるグループから選択される1以上の薬剤である治療薬とを備える医療器具。
【請求項34】
上記ポリオレフィンブロックは、ポリイソブチレンブロックであり、上記ビニル芳香族ポリマブロックは、ポリスチレン及びポリ−α−メチルスチレンから選択される1以上のモノマであることを特徴とする請求項33記載の医療器具。
【請求項35】
上記医療器具は、カテーテル、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ、ステント、ステント植皮、血管移植片、血管パッチ、シャント、内腔内ペービング装置のいずれかであることを特徴とする請求項33記載の医療器具。
【請求項36】
上記ブロックコポリマは、当該医療器具の少なくとも一部を被覆するコーティングであることを特徴とする請求項33記載の医療器具。
【請求項37】
当該医療器具は、バルーン、ステント、シャント、カテーテル、フィルタからなるグループから選択され、上記ブロックコポリマは、当該医療器具の少なくとも一部を被覆するコーティングであり、上記治療薬はパクリタキセルであることを特徴とする請求項34記載の医療器具。
【請求項38】
上記コーティングの厚みは、0.1乃至50ミクロンの範囲内であることを特徴とする請求項37記載の医療器具。
【請求項39】
上記ブロックコポリマに0.1〜75重量%のパクリタキセルが加えられていることを特徴とする請求項37記載の医療器具。
【請求項40】
上記ポリイソブチレンブロックの分子量は、60000〜200000ダルトンの範囲内であり、上記ポリスチレン又はポリ−α−メチルスチレンブロックの分子量は、20000〜100000ダルトンの範囲内であることを特徴とする請求項37記載の医療器具。
【請求項41】
血管間又は血管内医療器具と、
血管間又は血管内医療器具を被覆し、1以上のエラストマブロック及び1以上の熱可塑性ブロックを含む生体適合性を有するブロックコポリマを有するコーティングとを備える被覆された医療器具。
【請求項42】
上記1以上のエラストマブロックは、ポリオレフィンブロックであり、上記1以上の熱可塑性ブロックは、ビニル芳香族ブロック及びメタクリル酸ブロックのいずれかであることを特徴とする請求項41記載の医療器具。
【請求項43】
上記ブロックコポリマは、Aをエラストマブロックとし、Bを熱可塑性ブロックとし、nを正の自然数とし、Xを触媒シード分子として、X−(AB)nとして表されることを特徴とする請求項41記載の医療器具。
【請求項44】
上記Aは、ポリオレフィンブロックであり、上記Bは、ビニル芳香族ブロック及びメタクリル酸ポリマブロックのいずれかであることを特徴とする請求項43記載の医療器具。
【請求項45】
上記Bは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルから選択される1以上のモノマであることを特徴とする請求項44記載の医療器具。
【請求項46】
上記Aは、R及びR'を直鎖状又は分岐状脂肪族基、又は環状脂肪族基とし、一般式−(CRR'−CH2n−として表されるポリオレフィンブロックであり、上記Bは、ビニル芳香族ポリマブロックであることを特徴とする請求項44記載の医療器具。
【請求項47】
上記ポリオレフィンブロックは、イソブチレンモノマを含み、上記ビニル芳香族ポリマブロックは、スチレン及びα−メチルスチレンから選択される1以上のモノマを含むことを特徴とする請求項46記載の医療器具。
【請求項48】
上記ポリオレフィンブロックの量は、ブロックコポリマの95〜45モル%の範囲内であることを特徴とする請求項46記載の医療器具。
【請求項49】
上記ブロックコポリマの分子量は、80000〜300000ダルトンの範囲内であることを特徴とする請求項46記載の医療器具。
【請求項50】
上記ポリオレフィンブロックの分子量は、60000〜200000ダルトンの範囲内であり、上記ビニル芳香族ポリマブロックの分子量は、20000〜100000ダルトンの範囲内であることを特徴とする請求項46記載の医療器具。
【請求項51】
バルーン、ステント、シャント、カテーテル、ステント植皮、血管移植片、血管パッチ、シャント、フィルタからなるグループから選択されることを特徴とする請求項40記載の医療器具。
【請求項52】
ポリカルボキシル酸、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、クロスリンクされたポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマ、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖類、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアルキレン、ハロゲン化ポリアルキレン、ポリウレタン、ポリオルトエステル、ポリペプチド、シリコン、シロキサンポリマ、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、吉草酸ポリヒドロキシブチレート、フィブリン、コラーゲン、コラーゲン誘導体、ヒアルロン酸のうちの1以上のポリマ又はコポリマを含む請求項40記載の医療器具。
【請求項53】
上記ポリマ又はコポリマは、ポリアクリル酸、エチレン−酢酸ビニルコポリマ、ポリ乳酸とポリカプロラクトンのコポリマのうちから選択されることを特徴とする請求項52記載の医療器具。
【請求項54】
上記ポリマ又はコポリマは、上記生体適合性を有するブロックコポリマに混合されることを特徴とする請求項52記載の医療器具。
【請求項55】
上記ポリマ又はコポリマは、上記生体適合性を有するブロックコポリマを含まない層を備えることを特徴とする請求項52記載の医療器具。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2010−194355(P2010−194355A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136238(P2010−136238)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【分割の表示】特願2002−549300(P2002−549300)の分割
【原出願日】平成13年12月12日(2001.12.12)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】