説明

ブロックトポリイソシアネート

本発明は、新規ブロックトポリイソシアネートおよびそれを含有する一成分焼付系、その製造方法、並びにラッカー、ペイント、接着剤およびエラストマーを製造するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なブロックトポリイソシアネートおよび自己架橋性の一成分焼付系、並びにラッカー、ペイント、接着剤およびエラストマーを製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネート基の一時的保護のためのブロック化剤の使用は、以前から知られている。ブロックトポリイソシアネートは、とりわけ、室温で貯蔵安定な熱硬化性一成分ポリウレタン焼付系(1CPUR)を製造するために使用される。ここでブロックトポリイソシアネートは、例えばヒドロキシル基含有ポリエステル、ポリアクリレート、他のポリマー並びにラッカーおよびペイントの他の成分、例えば顔料、補助溶剤または添加剤と混合される。結合剤として、ブロックトイソシアネートとヒドロキシル基の両方を1分子中に含むポリマーを含有する自己架橋性の焼付系は、室温で貯蔵安定な焼付ラッカーの別の形態である。
【0003】
ブロックトポリイソシアネートの使用の概説は、例えば、Wicks, Z. Progress in Organic Coatings 3 (1975年) 第73〜99頁、Wicks, Z. Progress in Organic Coatings 9 (1981年) 第3〜28頁、D. A. Wicks and Z. W. Wicks, Progress in Organic Coatings, (1999年) 第148〜172頁に見出される。
【0004】
ポリイソシアネートをブロックするために使用される最も重要な化合物は、例えば欧州特許出願公開第0 576 952号(EP-A 0 576 952)、同第0 566 953号、同第0 159 117号、米国特許第4 482 721号(US-A 4482 721)、国際公開第97/12924号(WO 97/12924)または欧州特許出願公開第0 744 423号に記載されているような、ε-カプロラクタム、メチルエチルケトキシム(ブタノンオキシム)、マロン酸ジエチルエステル、第2級アミン、並びにトリアゾールおよびピラゾール誘導体である。
【0005】
欧州特許出願公開第0 096 210号に、第2級アミンがブロック化剤として記載されている。しかし、アルキル、シクロアルキルおよびアラルキル基を含有するアミンのみがブロック化剤としてそこに明記されている。炭素-ヘテロ原子多重結合またはヘテロ原子-ヘテロ原子多重結合を有する官能基を含有するアミンは、そこには明記されていない。さらに、欧州特許出願公開第0 096 210号に記載された第2級アミンでブロックされたポリイソシアネートは、有機溶媒中での溶解度が不十分であるため、溶媒含有または「ハイソリッドの」ラッカーの製造のためには一般に使用できない。
【0006】
最も頻繁に使用されるイソシアネート用ブロック化剤は、ε−カプロラクタムとブタノンオキシムである。ε−カプロラクタムの場合、通例、約160℃またはそれ以上の焼付温度が使用されるのに対し、ブロック化剤としてブタノンオキシムが使用されたブロック化1CPU焼付ラッカーは、10〜20℃低い温度でさえ焼付することができる。しかし、近時のラッカー系では、一方でエネルギーを節約して焼付オーブンをより低い温度で動作できるように、他方でまた熱に敏感な基材をそのような1CPUラッカーで被覆できるように、所要焼付温度を更に下げることが目指されている。
【0007】
より低い焼付温度での1C焼付系を調製し得るブロックトポリイソシアネートは、ポリイソシアネートをマロン酸ジエチルエステル、1,2,4−トリアゾールおよびジイソプロピルアミンでブロックすることにより製造し得る。しかし、特に直鎖脂肪族ジイソシアネートをベースとするポリイソシアネートと組み合わせると、それらは有機溶媒に十分溶解性でなく、このような溶液から結晶化するため、一般的には使用できないという不都合がある。更に、3,5−ジメチルピラゾールでブロックされたポリイソシアネートをベースとする低焼付の1CPU焼付系を調製することはできる。この焼付系には、3,5−ジメチルピラゾールは室温で固体であり、そのため計量しにくいという不都合がある。液状で計量するためには、それを高温でラッカー溶媒に溶解するか、または溶融させなければならず、これは追加的な処理工程を意味する。欧州特許出願公開第0 0713 871号は、実際に、3,5−ジメチルピラゾールをラッカー溶媒中で調製し、固形分を単離させることなく即座に反応溶液をブロック化に使用する、3,5−ジメチルピラゾールでブロックされたポリイソシアネートの製造方法を開示する。しかし、この方法では、装置および/または時間をさらに費やすこと、および、ブロック化剤を調製するために発癌性のヒドラジンを使用することが必要である。その上、3,5−ジメチルピラゾール製造の副生成物が製品に入り込んで、例えばその色調など製品の欠陥をもたらすことを阻止できないことがあり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、上述した従来技術の不都合がなく、とりわけブタノンオキシム-ブロックトポリイソシアネートより低い架橋または焼付温度を可能とし、有機溶液中での結晶化に対して安定であって簡易な方法で製造し得るブロックトポリイソシアネートを提供するという課題に基づくものであった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、本発明のブロックトポリイソシアネートおよびこれを含有する自己架橋性一成分焼付系によって解決された。
【0010】
本発明は、式(I):
【化1】

〔式中、
〜Rは、同一または異なっていてよく、水素、C〜C−アルキルまたはシクロアルキルを表し、
は、C〜C10−アルキル、C〜C10−シクロアルキルを表し、
yは、2〜8の数を表し、
Aは、官能価yのイソシアネートの核を表し、
Bは、
【化2】

(式中、
〜Rは、同一または異なっていてよく、互いに独立して、C〜C−アルキルおよび/またはC〜C−シクロアルキルを表し、
は、水素またはC〜C−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルを表す。)
を表す。〕
に示されるブロックトポリイソシアネートを提供する。
【0011】
本発明はまた、一般式(II):
【化3】

〔式中、Aおよびyは、式Iに対して与えられた意味を有する。〕
に示されるポリイソシアネートを、一般式(III):
【化4】

〔式中、R〜RおよびBは、式(I)について与えられた意味を有する。〕
に示される第2級アミンと反応させることを特徴とする、式(I)に示されるブロックトポリイソシアネートの製造方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、ラッカー、ペイントおよび接着剤またはエラストマーのような他の焼付系を製造するための、およびゴムの加硫における添加剤としての本発明のブロックトポリイソシアネートの使用、並びに本発明のブロックトポリイソシアネートを含んでなるラッカーで基材を被覆する方法、更にはそれらで被覆されたこれらの材料および基材の目的物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
式(III)のブロック化剤は、例えば、Organikum、第19版、Deutscher Verlag der Wissenschaften、ライプツィヒ、1993年、第523〜525頁に記載されたように、例えば、化合物上の第1級アミンと活性化炭素-炭素二重結合の反応によって調製し得る。この反応では、第1級アミンは炭素-炭素二重結合と選択的に反応して、第2級非対称アミンを与える。立体障害第1級アルキルアミンの上記の意味での反応生成物と解釈し得る物質、例えば、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、必要に応じてアルキル置換されたシクロヘキシルアミン、イソ-プロピルアミン、シクロプロピルアミン、ペンチル-、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-およびノニルアミンの分枝または環状異性体またはベンジルアミン、並びに活性化炭素-炭素二重結合を有する化合物、例えば、α,β-不飽和カルボン酸エステル、α,β-不飽和N,N−カルボン酸ジアルキルアミド、ニトロアルケン、アルデヒドおよびケトンは、式(III)のブロック化剤として好ましく用いられる。アクリル酸、メタクリル酸およびクロトン酸のアルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、イソ−ノルボルニルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソ−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソ−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソ−プロピルアクリレート、イソ−ノルボルニルアクリレート、n−ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、クロトン酸メチルエステル、クロトン酸エチルエステル、クロトン酸プロピルエステルへの、第1級アミン付加生成物と解釈し得る物質は、特に好ましく用いられる。
【0014】
アクリル酸またはメタクリル酸またはクロトン酸のメチルまたはエチルまたはプロピルまたはイソ−プロピルまたはn−ブチルまたはイソ−ブチルまたはtert-ブチルエステルへの、tert-ブチルアミンまたはイソ-プロピルアミンまたはシクロヘキシルアミン付加生成物と解釈し得る物質は、好ましく用いられる。
【0015】
メチルアクリレートへのtert-ブチルアミン付加生成物またはメチルメタクリレートへのtert-ブチルアミン付加生成物またはtert-ブチルアクリレートへのtert-ブチルアミン付加生成物と解釈し得る物質は、特に好ましく用いられる。
【0016】
ブロック化剤の製造は、適当な、好ましくは極性溶媒中で行い得る。所望の生成物は、必要に応じて、溶媒および/または副生成物から蒸留により或いは抽出によって分離することができ、次いで、これをポリイソシアネートと反応させ得る。しかし、反応を適当なラッカー溶媒中で行い、得られた反応混合物を、直接、ブロックトポリイソシアネートを製造するために用いることも可能である。
【0017】
上記以外の手段、例えば式(III)のエチルエステルをメチルエステルにエステル交換することによって調製した式(III)のブロック化剤も、もちろん使用し得る。
【0018】
式(III)のブロック化剤は、互いの任意の所望混合物において、もちろん使用し得る。
【0019】
本発明のブロックトポリイソシアネートを製造するために用いられるポリイソシアネート(II)としては、トリイソシアナトノナンおよび全ての既知の脂肪族、脂環式および芳香族ジイソシアネート、およびそれらをベースとし0.5〜60重量%、好ましくは3〜30重量%、特に好ましくは5〜25重量%のイソシアネート含有量を有するポリイソシアネート、またはそれらの混合物を使用し得る。これらは例えば、1,4−ジイソシアナトブタン、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2−メチル−1,5−ジイソシアナトペンタン、1,5−ジイソシアナト−2,2−ジメチルペンタン、2,2,4−または2,4,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、1,10−ジイソシアナトデカン、1,3−および1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、2,6−および2,4−ジイソシアナト−1−メチルシクロヘキサン、1,3−および1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロン−ジイソシアネート、IPDI)、2,4−および4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、1−イソシアナト−1−メチル−4(3)イソシアナト−メチルシクロヘキサン(IMCI)、ビス−(イソシアナトメチル)−ノルボルナン、1,3−および1,4−ビス−(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)−ベンゼン(TMXDI)、2,4−および2,6−ジイソシアナトトルエン(TDI)、ジフェニルメタン−2,4’−および/または−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、1,5−ジイソシアナトナフタレンまたは相当するジイソシアネートに基づくポリイソシアネートである。
【0020】
オキサジアジントリオン基、カルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、イミノオキサジアジントリオン基、ウレタン基およびビウレット基を含有するポリイソシアネートは、好ましく適当である。本発明のために特に好適なものは、主としてラッカーを製造するために使用される既知のポリイソシアネート、例えば上記の単純ポリイソシアネート、特にヘキサメチレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネートまたは2,4’−或いは4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンの、オキサジアジントリオン、アロファネート、および/またはビウレット、および/またはイソシアヌレート、ウレットジオン基および/またはイミノオキサジアジントリオン基を有する変性生成物である。また適当なものは、ウレタン基を有する低分子量ポリイソシアネートであり、例えばこれは、過剰に使用されるIPDIまたはTDIと、分子量範囲62〜300の単純な多価アルコール、特にトリメチロールプロパンまたはグリセロールとの反応により得ることができる。
【0021】
ヘキサメチレン−ジイソシアネート(HDI)、イソホロン−ジイソシアネート(IPDI)および/または2,4’−および/または4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンまたはこれらの化合物の混合物に基づき、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオンまたはビウレット構造を有するポリイソシアネートは、特に好ましい。
【0022】
上述した、ジイソシアネートモノマーの変性によって調製されたポリイソシアネートを、その調製後に例えば薄膜蒸留によって過剰のモノマーを除去し得る。しかし、変性後に得られたジイソシアネートモノマーを含有する反応混合物を、即座にブロック化に使用することも可能である。
【0023】
適当なポリイソシアネートはまた、末端イソシアネート基を有する既知のプレポリマーであり、例えばこれは、特に、上記単純ポリイソシアネート、好ましくはジイソシアネートと、少なくとも2個のイソシアネート反応性官能基を有する少量の有機化合物との反応により得ることができる。これらの既知のプレポリマー中におけるイソシアネート基対NCO反応性水素原子の比は、1.3:1〜20:1、好ましくは1.5:1〜3:1に相当し、この水素原子は、好ましくはヒドロキシル基から導かれる。NCOプレポリマーの製造において使用される出発物質の性質および量比は、NCOプレポリマーが、好ましくは平均NCO官能価2〜3および数平均分子量500〜10,000、好ましくは800〜4,000を有するように、好ましくは選択される。プレポリマーの製造後に、未反応ポリイソシアネートを好ましくは蒸留によって除去することも可能である。
【0024】
もちろん、上記ポリイソシアネートを互いの混合物として使用することもできる。
【0025】
本発明のブロックトポリイソシアネート(I)の製造を、それ自体既知の方法によって行うことができる。例えば、1種またはそれ以上のポリイソシアネートをまず反応容器に導入し、攪拌しながら(例えば約10分間にわたって)ブロック化剤を計量添加することができる。遊離イソシアネートが検出できなくなるまで混合物を攪拌する。1種またはそれ以上のポリイソシアネートを2種またはそれ以上のブロック化剤の混合物でブロックすることもできる。
【0026】
しかし、ポリイソシアネートの遊離NCO基の一部だけを本発明のブロック化剤と反応させ、残りを以下に詳述するヒドロキシル基を含む過剰のポリエステル、ポリウレタンおよび/またはポリアクリレート、および必要に応じてその混合物と反応させて、イソシアネート基および/またはヒドロキシル基を含む物質を更に添加することなく適当な焼付温度に加熱すると架橋する、遊離ヒドロキシル基とブロック化NCO基を含むポリマーを生成させることもできる。
【0027】
また、ジイソシアネートの遊離NCO基の一部だけを本発明のブロック化剤と反応させ、その後に非ブロック化NCO基の一部を反応させて、少なくとも2種のジイソシアネートから構築されたポリイソシアネートを形成させることもできる。
【0028】
ブロックトポリイソシアネートおよび自己架橋性一成分焼付系の製造は、必要に応じ、適当な有機溶媒中で行い得る。適当な溶媒は、例えば、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、1−メトキシプロピル2−アセテート、3−メトキシ−n−ブチルアセテート、アセトン、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン、N−メチルピロリドン、クロロベンゼンまたはホワイトスピリットのような、それ自体慣用のラッカー溶媒である。とりわけ比較的多置換の芳香族化合物を含む混合物も適当であり、それらは商業的に入手可能な、例えば、ソルベントナフサの名称での、Solvesso(登録商標)(Exxon Chemicals、ヒューストン、米国)、Cypar(登録商標)(Shell Chemicals、エッシュボーン、ドイツ)、Cyclo Sol(登録商標)(Shell Chemicals、エッシュボーン、ドイツ)、Tolu Sol(登録商標)(Shell Chemicals、エッシュボーン、ドイツ)、Shellsol(登録商標)(Shell Chemicals、エッシュボーン、ドイツ)のようなものである。しかし、本発明のブロックトポリイソシアネートの製造後に、例えば粘度を下げるために溶媒を添加することもできる。この場合、存在するNCO基をその後にイソシアネート反応性基と完全に反応させるために、例えばイソブタノールのようなアルコールを用いることもできる。好適な溶媒は、アセトン、酢酸ブチル、2−ブタノン、1−メトキシプロピル2−アセテート、キシレン、トルエン、とりわけ比較的多置換の芳香族化合物を含む混合物であって、それらは商業的に入手可能な、例えば、ソルベントナフサの名称での、Solvesso(登録商標)(Exxon Chemicals、ヒューストン、米国)、Cypar(登録商標)(Shell Chemicals、エッシュボーン、ドイツ)、Cyclo Sol(登録商標)(Shell Chemicals、エッシュボーン、ドイツ)、Tolu Sol(登録商標)(Shell Chemicals、エッシュボーン、ドイツ)、Shellsol(登録商標)(Shell Chemicals、エッシュボーン、ドイツ)のようなものである。
【0029】
触媒、補助溶媒並びに他の補助物質および添加剤を、本発明のポリイソシアネートの製造に使用することもできる。
【0030】
本発明のブロックトポリイソシアネートは、ラッカー、ペイントおよび他の焼付系、例えば接着剤およびエラストマーのための結合剤を製造するために用いられ、ここでポリオール成分用の架橋剤として機能する。
【0031】
上述したように、本発明のブロックトポリイソシアネートは、自己架橋性ポリマーであり、および/または、ポリオール成分用架橋剤としても使用できる。ポリオール成分であり得るものは、混合物として使用してもよいが、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリエーテルまたは他のヒドロキシル基含有ポリマー、例えば生成物100%に基づき20〜200、好ましくは50〜130のヒドロキシル価を有するそれ自体既知のポリヒドロキシポリアクリレート、またはポリヒドロキシカーボネートまたはポリヒドロキシウレタンである。
【0032】
適当なポリエステルポリオールとして、特に、ポリウレタン化学でそれ自体既知の、例えば先に例示したタイプのアルカンポリオール等の多価アルコールと、過剰量のポリカルボン酸もしくはポリカルボン酸無水物、特にはジカルボン酸もしくはジカルボン酸無水物との反応生成物を例示できる。適当なポリカルボン酸またはポリカルボン酸無水物として、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、マレイン酸、マレイン酸無水物、それらとシクロペンタジエンとのディールス−アルダー付加物、フマル酸又は脂肪酸の二量体もしくは三量体を例示することができる。ポリエステルポリオールを製造する際に、もちろん例示した多価アルコールの所望の混合物又は例示した酸もしくは酸無水物の所望の混合物を使用することができる。
【0033】
ポリエステルポリオールの製造は、例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie、第XIV/2巻、G. Thieme-Verlag、1963年、第1〜47頁に記載されている既知の方法を用いて行うことができる。必要であれば、これらのポリヒドロキシ化合物の親水変性を、例えば、欧州特許出願公開第0 157 291号又は同第0 427 028号に記載されているような、それ自体既知の方法に基づいて行うことができる。
【0034】
適当なポリエーテルポリオールは、ポリウレタン化学でそれ自体既知の、例えば、水、エチレングリコール、プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセロール及び/もしくはペンタエリスリトール等の2〜4官能価を有する適切なスターター分子のエトキシ化及び/もしくはプロポキシ化生成物である。
【0035】
ポリヒドロキシポリアクリレートは、アクリル酸及び/もしくはメタクリル酸の単純エステルとスチレンのそれ自体既知のコポリマーであって、水酸基を導入する目的で、例えば、これらの酸の、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、2−、3−もしくは4−ヒドロキシブチルエステル等のヒドロキシアルキルエステルを用いられる。
【0036】
水含有1Cポリウレタンラッカーは、必要に応じ溶媒を含有する本発明のブロックトポリイソシアネートを、ヒドロキシル基を含有する親水変性ポリマーと一緒に水中へ分散させることによって製造することもできる。
【0037】
本発明のポリイソシアネートを使用するラッカー、ペイントおよび他の配合物は、それ自体既知の方法により製造される。ポリイソシアネートおよびポリオールに加えて、通例の添加剤および他の補助物質(例えば溶媒、顔料、フィラー、流れ調整剤、脱泡剤、触媒)を、当業者が実験によって容易に定めることができる量で配合物に添加することができる。
【0038】
NCO反応性基含有化合物と反応し得る更なる化合物を、追加的な架橋剤成分として用いることもできる。これらは、例えば、アミノプラスト樹脂である。ラッカー技術において既知であるメラミンおよびホルムアルデヒドまたは尿素およびホルムアルデヒドの縮合生成物は、アミノプラスト樹脂と考えられる。エーテル化されていないか、或いは1〜4個の炭素原子を有する飽和モノアルコールでエーテル化された通例のメラミン-ホルムアルデヒド縮合物は、全て適当である。他の架橋剤成分を一緒に使用する場合、NCO反応性ヒドロキシル基を有する結合剤の量を適宜適合させなければならない。
【0039】
本発明のブロックトポリイソシアネートは、焼付ラッカーを製造するため、例えば工業用ラッカー塗のため、および自動車の一次ラッカー塗のために使用される。このために、本発明の被覆組成物を、ナイフ塗布、浸漬、例えば圧縮空気または無気吹付などの吹付、および例えば高速回転ベル塗装などの静電塗装により付与することができる。その乾燥塗膜層厚は、例えば10〜120μmであり得る。塗膜層を、90〜160℃、好ましくは110〜140℃の温度範囲で焼き付けして硬化させる。本発明のブロックトポリイソシアネートを連続ベルト塗布用焼付ラッカーの製造に使用することができ、「ピーク温度」または基材が金属である場合には「ピーク金属温度」として専門家に既知の最高焼付温度が130と300℃の間、好ましくは190〜260℃、および例えば、3〜40μmの乾燥塗膜層厚を達成することが可能である。
【0040】
以下に例示として、本発明の目的が本発明によるポリイソシアネートおよび自己架橋性焼付系によって達成されることを説明するが、それらは本発明を限定するものではない。ポリオールと組み合わせると、本発明のポリイソシアネートはブタノンオキシム-ブロックトポリイソシアネートより低い架橋および焼付温度を有し、有機溶液中での結晶化に対して安定であって、簡易な方法で製造し得る。また、本発明のブロックトポリイソシアネートの有機溶液は、従来のブロックトポリイソシアネートより著しく低粘性であり、近時のラッカー系中の溶媒含有量を減少させる点で望ましい。
【実施例】
【0041】
特に明記しない限り、百分率データは重量パーセントによる。固形分含有量およびBNCO含有量は、以下のようにして算出された計算パラメータである。
固形分含有量(%)=[(総重量−溶媒総重量)/総重量]×100
BNCO含有量(%)=[(ブロックトNCO基の当量×42)/総重量]×100
粒度は、レーザー相関分光法(LCS)によって決定した。
【0042】
〔出発物質の由来〕
ポリイソシアネートA1
Desmodur(登録商標) N3300、Bayer AG、1,6−ジイソシアナトヘキサン(HDI)をベースとし、NCO含有量21.8重量%、23℃での粘度約3,000mPasおよびNCO官能価約3.5のイソシアヌレート基含有ラッカーポリイソシアネート
【0043】
ポリイソシアネートA2
Desmodur(登録商標) Z4470BA、Bayer AG、イソホロンジイソシアネート(IPDI)をベースとし、30重量%の酢酸ブチルを含有し、NCO含有量11.8重量%、23℃での粘度約700mPasおよびNCO官能価約3.4のイソシアヌレート基含有ラッカーポリイソシアネート
【0044】
ポリイソシアネートA3
Desmodur(登録商標) Z4470MPA/X、Bayer AG、イソホロン−ジイソシアネート(IPDI)をベースとし、キシレンとメトキシプロピルアセテートの1:1混合物30重量%を含有し、NCO含有量11.8重量%、23℃での粘度約700mPasおよびNCO官能価約3.4のイソシアヌレート基含有ラッカーポリイソシアネート
【0045】
ブロック化剤B1
メチルアクリレート86.09gを、室温で撹拌しながら、メタノール160.0g中に溶解したtert-ブチルアミン73.14gへ添加し、生じた透明溶液を室温で更に16時間撹拌した。溶媒を蒸留除去し、式:
【化5】

に示される生成物158.1gが、ブロックトポリイソシアネートを得るための更なる反応にとって十分な純度で得られた。
【0046】
ブロック化剤B2
メチルメタクリレート100.1gを、室温で撹拌しながら、エタノール175.0g中に溶解したtert-ブチルアミン95.09gへ添加し、生じた透明溶液を70℃で更に72時間撹拌した。易揮発性成分を蒸留除去し、生成物相を濾過し、式:
【化6】

に示される生成物165.7gが、濾液として、ブロックトポリイソシアネートを得るための更なる反応にとって十分な純度で得られた。
【0047】
ブロック化剤B3
tert-ブチルアクリレート128.1gを、室温で撹拌しながら、メタノール200.0gに溶解したtert-ブチルアミン73.14gへ添加し、生じた透明溶液を室温で更に16時間撹拌した。溶媒を蒸留除去し、式:
【化7】

に示される生成物199.1gが、ブロックトポリイソシアネートを得るための更なる反応にとって十分な純度で得られた。
【0048】
ブロック化剤B4
メチルアクリレート86.09gを、室温で撹拌しながら、メタノール185.0g中に溶解したシクロヘキシルアミン99.18gへ添加し、生じた透明溶液を室温で更に16時間撹拌した。溶媒を蒸留除去し、式:
【化8】

に示される生成物184.2gが、ブロックトポリイソシアネートを得るための更なる反応にとって十分な純度で得られた。
【0049】
ブロック化剤B5
メチルメタクリレート100.1gを、室温で撹拌しながら、メタノール135.0g中に溶解したイソプロピルアミン59.0gへ添加し、生じた透明溶液を室温で更に12時間撹拌した。溶媒を蒸留除去し、式:
【化9】

に示される生成物158.2gが、ブロックトポリイソシアネートを得るための更なる反応にとって十分な純度で得られた。
【0050】
ブロック化剤B6
クロトン酸メチルエステル100.1gを、室温で撹拌しながら、エタノール175.0g中に溶解したtert-ブチルアミン73.14gへ添加し、生じた透明溶液を70℃で更に72時間撹拌した。溶媒を蒸留除去し、式:
【化10】

に示される生成物168.9gが、ブロックトポリイソシアネートを得るための更なる反応にとって十分な純度で得られた。
【0051】
〔実施例1〕
(本発明による溶媒含有ポリイソシアネート架橋剤の製造)
159.3g(1当量)のブロック化剤B1を、酢酸ブチル88.0g中に溶解した192.7g(1当量)のポリイソシアネートA1へ10分かけて滴加した。この間に温度が約40℃に上昇した。この温度で4時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:80%
BNCO含有量:9.54%
粘度(23℃) 3,500mPas
を有する透明生成物440.0gが得られた。
【0052】
〔比較例1〕
(3,5−ジメチルピラゾールでブロックしたブロックトポリイソシアネートの製造)
96.0g(1当量)の3,5−ジメチルピラゾールを、酢酸ブチル72.2g中に溶解した192.7g(1当量)のポリイソシアネートA1へ添加した。この間に温度が約60℃に上昇した。この温度で2時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:80%
BNCO含有量:11.6%
粘度(23℃) 10,000mPas
を有する透明生成物360.9gが得られた。
【0053】
〔実施例2〕
(本発明による溶媒含有ポリイソシアネート架橋剤の製造)
159.3g(1当量)のブロック化剤B1を、酢酸ブチル69.0g中に溶解した356g(1当量)のポリイソシアネートA2へ10分かけて滴加した。温度は約60℃に上昇した。この温度で6時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:70%
BNCO含有量:7.19%
粘度(23℃) 10,000mPas
以下の特性値を有する透明生成物584.3gが得られた。
【0054】
〔比較例2〕
(3,5−ジメチルピラゾールでブロックしたブロックトポリイソシアネートの製造)
96.0g(1当量)の結晶質3,5−ジメチルピラゾールを、酢酸ブチル41.0g中に溶解した356g(1当量)のポリイソシアネートA2へ添加した。温度は約60℃に上昇した。この温度で2時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:70%
BNCO含有量:8.52%
粘度(23℃) 70,000mPas
を有する透明生成物493gが得られた。
【0055】
〔実施例3〕
(本発明による自己架橋性一成分焼付系の製造)
127.4g(0.8当量)のブロック化剤B1を、酢酸ブチル85g中に溶解した391.6g(1.1当量)のポリイソシアネートA2へ10分かけて滴加した。この間に温度が約40℃に上昇した。この温度で4時間撹拌した後、935g(1.1当量)のDesmophen(登録商標) T XP 2013(Bayer AG)(ヒドロキシル基含有オイルフリーポリエステル、ソルベントナフサ100中75%、DIN 53 240/2によるOH含有量2.0%)を添加し、次いで混合物を70℃で更に4時間撹拌し、その後には遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。酢酸ブチル300gで蒸留した後、以下の特性値:
固形分含有量:60%
ブロックトNCO基:0.8当量
遊離ヒドロキシル基:0.8当量
粘度(23℃) 750mPas
を有する透明生成物1,839.0gが得られた。
【0056】
〔比較例3〕
(ブタノンオキシムブロック化による自己架橋性一成分焼付系の製造)
69.6g(0.8当量)のブロック化剤B1を、391.6g(1.1当量)のポリイソシアネートA2へ10分かけて滴加した。この間に温度が約40℃に上昇した。この温度で4時間撹拌した後、935g(1.1当量)のDesmophen(登録商標) T XP 2013(Bayer AG)(ヒドロキシル基含有オイルフリーポリエステル、ソルベントナフサ100中75%、DIN 53 240/2によるOH含有量2.0%)を添加し、次いで混合物を70℃で更に4時間撹拌し、その後には遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。酢酸ブチル345gで蒸留した後、以下の特性値:
固形分含有量:60%
ブロックトNCO基s:0.8当量
遊離ヒドロキシル基:0.8当量
粘度(23℃) 900mPas
を有する透明生成物1,741.2gが得られた。
【0057】
ブロック化剤B1でブロックした実施例1〜3のポリイソシアネートは、相当する3,5−ジメチルピラゾールまたはブタノンオキシムでブロックした比較例1〜3のポリイソシアネートより低い粘度を有することがわかる。
【0058】
〔実施例4〕
(溶媒含有ポリイソシアネート架橋剤の製造)
173.3g(1当量)のブロック化剤B2を、酢酸ブチル157.0g中に溶解した192.7g(1当量)のポリイソシアネートA1へ10分かけて滴加した。この間に温度が約40℃に上昇した。この温度で4時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:70%
BNCO含有量:8.03%
粘度(23℃) 2,000mPas
を有する透明生成物523.0gが得られた。
【0059】
〔実施例5〕
(溶媒含有ポリイソシアネート架橋剤の製造)
201.3g(1当量)のブロック化剤B3を、酢酸ブチル131.0g中に溶解した192.7g(1当量)のポリイソシアネートA1へ10分かけて滴加した。この間に温度が約40℃に上昇した。この温度で4時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:75%
BNCO含有量:8.00%
粘度(23℃) 2,500mPas
を有する透明生成物525.0gが得られた。
【0060】
〔実施例6〕
(溶媒含有ポリイソシアネート架橋剤の製造)
185.3g(1当量)のブロック化剤B4を、酢酸ブチル126.0g中に溶解した192.7g(1当量)のポリイソシアネートA1へ10分かけて滴加した。この間に温度が約40℃に上昇した。この温度で4時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:75%
BNCO含有量:8.33%
粘度(23℃) 3,000mPas
を有する透明生成物504.0gが得られた。
【0061】
〔実施例7〕
(溶媒含有ポリイソシアネート架橋剤の製造)
145.3g(1当量)のブロック化剤B5を、酢酸ブチル145.0g中に溶解した192.7g(1当量)のポリイソシアネートA1へ10分かけて滴加した。この間に温度が約40℃に上昇した。この温度で4時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:70%
BNCO含有量:8.71%
粘度(23℃) 2,500mPas
を有する透明生成物482.9gが得られた。
【0062】
〔実施例8〕
(溶媒含有ポリイソシアネート架橋剤の製造)
173.3g(1当量)のブロック化剤B6を、酢酸ブチル157.0g中に溶解した192.7g(1当量)のポリイソシアネートA1へ10分かけて滴加した。この間に温度が約40℃に上昇した。この温度で4時間撹拌した後、遊離NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:70%
BNCO含有量:8.03%
粘度(23℃) 2,000mPas
を有する透明生成物523.0gが得られた。
【0063】
〔比較例4〕
(ジイソプロピルアミンまたは1,2,4−トリアゾールまたはマロン酸ジエチルエステルでブロックした溶媒含有ポリイソシアネート)
192.7gのポリイソシアネートA1を酢酸ブチル136gで希釈し、101.0gのジイソプロピルアミン(1当量)乾燥窒素下で撹拌しながら添加したところ、僅かな発熱が観察された。添加が完了したら混合物を70℃に加熱し、この温度で30分間撹拌した後、混合物を室温に冷却した。その後、遊離イソシアネート基はもはやIR分光法によって検出できなかった。以下の特性値:
固形分含有量:65%
BNCO含有量:9.30%
粘度(23℃) 1,900mPas
を有する透明でほぼ無色の生成物が得られた。
【0064】
室温で14日間貯蔵後、結晶化によって凝固が始まった。室温で18日間貯蔵後、固体で白色の不透明塊が生じた。実施例1〜8による生成物は、12週間後でさえ結晶化または固化の兆しを示さなかった。1,2,4−トリアゾールでブロックしポリイソシアネートA1をベースとする同様に製造したブロックトポリイソシアネートは、製造中に既に結晶化した。マロン酸ジエチルエステルでブロックしポリイソシアネートA1をベースとする同様に製造したブロックトポリイソシアネートは、約21日後に結晶化する。
【0065】
〔実施例および比較例9〕
(実施例3および比較例1の自己架橋性一成分焼付系からの被覆物製造)
各場合について、1.4gのジブチル錫ジラウレート(DBTL)、0.15gのModaflow(登録商標)(流れ調整助剤、Solutia製アクリルコポリマー、メトキシプロピルアセテート中10%)および0.15gのBaysilon(登録商標) OL 17(流れ調整助剤、ポリエーテル-ポリシロキサン、メトキシプロピルアセテート中10%、Bayer AG、レーフェルクーゼン)を、各場合つき実施例3および比較例1による生成物142.9gへ添加し、混合物をそれぞれよく撹拌した。ドクターナイフを用いて、2つの混合物を各場合につき3枚のガラス板に塗布し、ガラス板上の溶媒を空気中で10分間蒸発させた。循環空気炉内で各々100℃、140℃および160℃にて30分間の焼付後、乾燥塗膜層厚40μmの被覆物が得られた。架橋を試験するため、得られた膜の耐溶剤性を測定した。
【0066】
【表1】

【0067】
1)0−良;5−劣、
2)X=キシレン、MPA=メトキシプロピルアセテート、EA=酢酸エチル、Ac=アセトン
【0068】
表1からわかるように、実施例3の自己架橋性一成分焼付系では、140℃で30分間の焼付により、160℃での焼付と同じ耐溶剤性が達成されるが、比較例1の自己架橋性一成分焼付系では、最終的塗布性は、より高い温度での焼付後にのみ達成される。
【0069】
〔実施例および比較例10〕(実施例1による本発明のブロックトポリイソシアネートに由来する1CPU透明ラッカーと3,5−ジメチルピラゾールでブロックしたポリイソシアネートに由来する1CPU透明ラッカーの製造)
0.75gのジブチル錫ジラウレート(DBTL)、0.08gのModaflow(登録商標)(流れ調整助剤、Solutia製アクリルコポリマー、メトキシプロピルアセテート中10%)および0.08gのBaysilon OL 17(流れ調整助剤、Bayer AG(レーフェルクーゼン)製ポリエーテル-ポリシロキサン、メトキシプロピルアセテート中1%)を、実施例1による生成物44.0gと57.5gのDesmophen(登録商標) A 870(OH−官能性ポリアクリレートポリマー、Bayer AG、レーフェルクーゼン、酢酸ブチル中70%、DIN 53 240/2によるOH含有量3.0%)に添加し、混合物をよく撹拌した。ドクターナイフを用いて、混合物を水性白色ベースラッカーでプレコートした2枚のアルミニウムシートに塗布し、空気中で10分間シートから溶媒を蒸発させた。循環空気炉内で各々120℃および140℃にて30分間の焼付後、乾燥塗膜層厚40μmの被覆物が得られた。表2に、被覆物について測定したラッカー特性の概要をまとめる。
【0070】
0.7gのジブチル錫ジラウレート(DBTL)、0.07gのModaflow(登録商標)(流れ調整助剤、Solutia製アクリルコポリマー、メトキシプロピルアセテート中10%)および0.07gのBaysilon(登録商標) OL 17 (流れ調整助剤、ポリエーテル-ポリシロキサン、メトキシプロピルアセテート中1%、Bayer AG、レーフェルクーゼン)を、40.0gのDesmodur(登録商標) BL VP LS 2253(Bayer AG、ジメチルピラゾールでブロックしDesmodur(登録商標) N 3300(Bayer AG)をベースとするポリイソシアネート、MPA/ソルベントナフサ中75%)および57.5gのDesmophen(登録商標) A 870(OH−官能性ポリアクリレートポリマー、Bayer AG、レーフェルクーゼン、酢酸ブチル中70%、DIN 53 240/2によるOH含有量3.0%)に添加し、混合物をよく撹拌した。ドクターナイフを用いて、混合物を水性白色ベースラッカーでプレコートしたアルミニウムシートに塗布し、空気中で10分間シートから溶媒を蒸発させた。循環空気炉内で140℃にて30分間の焼付後、乾燥塗膜層厚40μmの被覆物が得られた。表2に、被覆物について測定したラッカー特性の概要をまとめる。
【0071】
【表2】

【0072】
1)0−良;5−劣
【0073】
本発明のポリイソシアネートをベースとするラッカー系は、3,5−ジメチルピラゾールでブロックしたポリイソシアネートをベースとするラッカー系を140℃で焼付を行ったものに匹敵する特性を、120℃の焼付温度で有することは明らかである。140℃では、非常に良好な耐溶剤性、耐引掻性および耐薬品性を有し、黄変傾向の低い被覆物が、本発明のラッカーによって得られる。
【0074】
〔実施例11〕
(実施例1のブロックトポリイソシアネートに由来する水性1CPU透明ラッカーの製造)
N−メチルピロリドン57.54g中28.77g(0.43当量OH)のジメチルプロピオン酸の溶液を、50℃で撹拌しながら、95.41g(0.86当量)のイソホロン−ジイソシアネートに5分かけて滴加した。80℃で更に150分間撹拌後、NCO含有量9.19重量%に達した。28.08g(0.08当量)のポリイソシアネートA3およびアジピン酸、イソフタル酸、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールおよびプロピレングリコールから構成された446.72g(1.404当量OH)のポリエステルの添加後、反応混合物を80℃で更に180分間撹拌した。その後、NCO基はもはやIR分光法によって検出できなかった。次に、実施例1による本発明のポリイソシアネート198.02gを70℃で添加し、次いで混合物を更に10分間撹拌した。次に、ジメチルエタノールアミン19.12g(0.215モル)を添加し、次いで混合物を更に10分間撹拌した。次に、70℃に加熱した脱イオン水833.23gを激しく攪拌しながら添加し、次いで混合物を90分間撹拌し、撹拌しながら冷却した。得られた分散体は以下の特性:
固形分含有量:45%
pH:8.08
粘度(23℃):3,400mPas
粒度:59nm
を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

〔式中、互いに独立して、
〜Rは、同一または異なっていてよく、水素、C〜C−アルキルまたはシクロアルキルを表し、
は、C〜C10−アルキル、C〜C10−シクロアルキルを表し、
yは、1〜8の数を表し、
Aは、官能価yのイソシアネートの基を表し、
Bは、
【化2】

(式中、互いに独立して、
〜Rは、同一または異なっていてよく、C〜C−アルキルおよび/またはC〜C−シクロアルキルを表し、
は、水素、C〜C−アルキルまたはC〜C−シクロアルキルを表す。)
を表す。〕
に示されるブロックトポリイソシアネート。
【請求項2】
はアミル基、イソプロピル基、イソブチル基またはtert-ブチル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載のブロックトポリイソシアネート。
【請求項3】
はメチル基を表し、R、R、Rは水素原子を表すことを特徴とする請求項1に記載のブロックトポリイソシアネート。
【請求項4】
はメチル基を表し、R、R、Rは水素原子を表すことを特徴とする請求項1に記載のブロックトポリイソシアネート。
【請求項5】
、R、RおよびRは水素原子を表すことを特徴とする請求項1に記載のブロックトポリイソシアネート。
【請求項6】
ブロックトポリイソシアネート基と遊離ヒドロキシル基がいずれも一分子中に存在することを特徴とする請求項1に記載のブロックトポリイソシアネート。
【請求項7】
一般式(II):
【化3】

〔式中、Aおよびyは、請求項1における式(I)に対して与えられた意味を有する。〕
に示されるポリイソシアネートを、一般式(III):
【化4】

〔式中、R〜RおよびBは、請求項1における式(I)に対して与えられた意味を有する。〕
に示される第2級アミンと反応させることを特徴とする、請求項1に記載の式(I)に示されるブロックトポリイソシアネートの製造方法。
【請求項8】
ブロック化剤(III)を、一般式(II)のポリイソシアネートと、その製造直後にその製造に用いた溶媒中で更なる精製を行わずに反応させることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
一成分ポリウレタン焼付系におけるポリオール成分用架橋剤としての、請求項1に記載のブロックトポリイソシアネートの使用。
【請求項10】
エラストマーを製造するための、請求項1に記載のブロックトポリイソシアネートの使用。
【請求項11】
請求項1に記載のブロックトポリイソシアネートを含んでなる、ラッカー、ペイントおよび接着剤。
【請求項12】
請求項1に記載のブロックトポリイソシアネートを含んでなる水性分散液。
【請求項13】
有機溶媒における請求項1に記載のブロックトポリイソシアネートの溶液。
【請求項14】
請求項1に記載のブロックトポリイソシアネートを含んでなる塗料を基材に塗布し、次いで被覆物を90〜160℃の温度または130〜300℃のピーク温度で焼き付けることを特徴とする、基材の被覆方法。

【公表番号】特表2007−528427(P2007−528427A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515950(P2006−515950)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006475
【国際公開番号】WO2005/000936
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】