説明

ブロックポリイソシアネート組成物及びこれを含む塗料組成物

【課題】100℃以下で架橋塗膜を形成可能であり、貯蔵安定性に優れたブロックポリイソシアネート組成物の提供。
【解決手段】式(I)で示される少なくとも1種のブロックポリイソシアネートを含み、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル化合物の含有量が樹脂固形分に対し1.0質量%以下であるブロックポリイソシアネート組成物。


(Rは、脂肪族、脂環族及び芳香族ポリイソシアネートから選ばれる1種以上から形成されたポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基であり、Aは、特定式に示される1種以上のケト体あるいはそのエノール異性体群であり、Bは、式−NHCORに示される1種以上の構造単位であり、Cは、式−NHCORに示される1種以上の構造単位であり、x+y+z=2.0〜20であり、x、zはいずれも0ではない。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、100℃以下の温度で架橋塗膜を形成可能であり、かつ、水性塗料組成物としての貯蔵安定性に優れ、貯蔵後の硬化性も良好なブロックポリイソシアネート組成物、及びそれを用いた塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境、安全、衛生などの観点から水系塗料が注目されている。中でも、自動車塗料や建築塗料に関しては、種々の水系塗料が提案されている。水系塗料のうち、イソシアネート基により架橋されるウレタン系塗料は、得られる塗膜が非常に優れた耐磨耗性、耐チッピング性、耐薬品性及び耐汚染性等を有している。
【0003】
このようなウレタン系塗料では、ライン用塗料など一液性が必要とされる場合、通常、ポリイソシアネートの遊離イソシアネート基を熱解離ブロック剤で封鎖したブロックイソシアネートが使用される。このブロックイソシアネートは、常温ではポリオールと反応しないが、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生されてポリオールと架橋反応する。ブロック剤としては、メチルエチルケトオキシム、カプロラクタム、アルコール、フェノール系のものが使用される。しかし、これらの中で最も低温で架橋塗膜を形成しうるオキシムブロックイソシアネートにおいても、一般的に140℃以上の高い焼付け温度を必要とする。そのため、エネルギーコストが非常に大きくなる。また、耐熱性の低いプラスチックへの加工には、高温焼付けが必要なブロックイソシアネートは使用することができないという制限があった。
【0004】
そのような欠点を克服するため、比較的低温で架橋塗膜を形成するブロックイソシアネートとして、ピラゾール系ブロックイソシアネートが提案されている(特許文献1)。しかし、ピラゾール系ブロックイソシアネートにおいても120℃程度の焼付け温度が必要であり、焼付け温度の更なる低温化が望まれていた。
【0005】
さらに、低い温度で架橋塗膜を形成するブロックイソシアネートとして、活性メチレン系ブロックイソシアネートが提案されている(特許文献2〜5)。特許文献2では、マロン酸ジエステル及びアセト酢酸エステルをブロック剤とし、さらに、非イオン系性親水性基化合物を使用することで水分散性を改善している。特許文献3では、マロン酸ジエステル及び/またはアセト酢酸エステルをブロック剤とし、さらに、脂肪族/脂環式ジアミンにより鎖延長した後に、組込み形態のホルムアルデヒドを添加使用することで貯蔵安定性を改善している。
【0006】
また、特許文献4では、マロン酸ジエステル及び/またはアセト酢酸エステルをブロック剤とし、そのエステル部を、親水基となりうる基を含有するアルコール化合物とエステル交換反応させることで、水分散性を改善している。特許文献5では、マロン酸ジエステル及び/またはアセト酢酸エステルをブロック剤とし、さらにスルホン酸基を有する親水性化合物とポリアミン化合物を使用しエマルジョン化することで、貯蔵安定性を改善している。
【0007】
しかし、特許文献2〜5の1液水系塗料用硬化剤を使用する際には、水が存在した場合に、マロン酸ジエステルブロック体の分解反応が進行し炭酸ガスを発生しうる、または、水が存在した場合に、基本構造中のアセト酢酸エステルブロック体の分解反応が進行し、貯蔵後の硬化性が低下しうる等の課題があった。
【0008】
また、特許文献6では、新たな活性メチレン系ブロックイソシアネートが提案されており、炭酸ガスの発生が抑制されることが示されている。しかし、使用するポリオールによっては、塗液のpHが低下する場合があった。
【0009】
そこで、100℃以下で架橋塗膜を形成可能で、水性塗料組成物としての貯蔵安定性が良好で、かつ貯蔵後の硬化性保持率も高いブロックイソシアネート組成物が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−178505号公報
【特許文献2】特許第3947260号公報
【特許文献3】特表2003−508562号公報
【特許文献4】特開2006−160936号公報
【特許文献5】特開2007−45867号公報
【特許文献6】特開2009−155409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情にかんがみてなされたものであり、100℃以下の温度で架橋塗膜を形成可能であり、かつ、水性塗料組成物としての貯蔵安定性に優れ、貯蔵後の硬化性も良好なブロックポリイソシアネート組成物、及びそれを用いた塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意研究した結果、驚くべきことに、ある特定構造を有する少なくとも一種のブロックポリイソシアネートを含み、分子量400以下のエステル化合物の含有量が所定量以下である組成物が、低温硬化性を保持しつつ、水性塗料組成物としての貯蔵安定性、貯蔵後硬化性が格段に向上することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1].式(I)により示される少なくとも1種のブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル化合物の含有量が、当該組成物の樹脂固形分に対し1.0質量%以下である、ブロックポリイソシアネート組成物。
【化1】


(式中、Rは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートから選ばれる1種又は2種以上から形成されたポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基であり、
Aは、式(II)に示される1種又は2種以上のケト体あるいはそのエノール異性体群であり、
Bは、式(III)に示される1種又は2種以上の構造単位であり、
Cは、式(IV)に示される1種又は2種以上の構造単位であり、
x+y+z=2.0〜20であり、かつ、x、zはいずれも0ではない。)
【化2】


(式中、Rは、炭素数1〜8個のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示し、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であり、任意にR、Rは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、またはRとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成することができる。)
【化3】


(式中、Rは、活性水素含有化合物の活性水素を除く残基である。)
【化4】


(式中、Rは、活性水素含有親水性化合物の活性水素を除く残基である。)
[2].少なくとも分子中に1個の水酸基を有する分子量400以下のアルコール系化合物の含有量、及び、少なくとも分子中に1個の1級アミノ基あるいは2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン化合物の含有量のいずれもが、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し1.0質量%以下であることを特徴とする、上記[1]項記載のブロックポリイソシアネート組成物。
[3].上記[1]又は[2]項に記載のブロックポリイソシアネート組成物、及びポリオールを含む塗料組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、100℃以下の温度で架橋塗膜を形成可能であり、かつ、水性塗料組成物としての貯蔵安定性、貯蔵後硬化性に優れるブロックポリイソシアネート組成物、及びそれを含む塗料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明について、特にその好ましい形態を中心に、詳述する。
本発明のブロックポリイソシアネート組成物に含まれるブロックポリイソシアネートは、下記式(I)により表される。
【化5】


式中、Rは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートから選ばれる1種又は2種以上から形成されたポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基である。
【0016】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネート、リジントリイソシアネート(以下LTIと示す)、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート(トリマートリイソシアネート:以下TTIと示す)、ビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート(グルタミン酸エステルトリイソシアネート:以下GTIと示す)を例示することができる。
【0017】
脂肪族ポリイソシアネートに使用される脂肪族ジイソシアネートとしては、炭素数4〜30のものが好ましく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIと記載する)、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネートなどが挙げられる。中でも、工業的入手のしやすさからHDIが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0018】
脂環族ポリイソシアネートとしては、以下に示される脂環族ジイソシアネートが主に用いられる。脂環族ジイソシアネートとしては、炭素数8〜30のものが好ましく、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIと記載する)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネートなどが例示される。中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、IPDIが好ましい。脂環族ジイソシアネートは単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0019】
芳香族ポリイソシアネートとしては、以下に示される芳香族ジイソシアネートが主に用いられる。芳香族ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ジイソシアネートは、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
【0020】
これらのポリイソシアネートの中でも、脂肪族ポリイソシアネート及び/または脂環族ポリイソシアネートが耐候性に優れるため、好ましい。さらに、脂肪族ポリイソシアネートの中では、脂肪族ジイソシアネートが最も好ましい。
【0021】
これらのポリイソシアネートから選ばれる1種又は2種以上から形成されたポリイソシアネートのイソシアネート基平均数は2.0〜20が好ましい。更に、下限値は、2.3であることが好ましく、より好ましくは2.5、最も好ましくは3.0である。上限値は、15であることが更に好ましく、より好ましくは10である。このイソシアネート基平均数が2.0以上であることによって、架橋性が向上し、目的とする塗膜物性を得ることができる。一方、このイソシアネート基平均数が20以下であることによって、凝集力が高くなりすぎることを防止し、平滑な塗膜を得ることができる。
【0022】
イソシアネート基平均数は、以下の数式により求められる。
【数1】

【0023】
式(I)中のRの源となるポリイソシアネートの例としては、LTI、TTI、GTI等のトリイソシアネート、あるいは、これらの誘導体に加え、ビウレット結合、尿素結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレタン結合、アロファネート結合、オキサジアジントリオン結合等を形成することにより製造されたジイソシアネートの2〜20量体のオリゴマーが挙げられる。ビウレット結合を有するポリイソシアネートは、水、t−ブタノール、尿素などのいわゆるビウレット化剤とジイソシアネートとを、ビウレット化剤/ジイソシアネートのイソシアネート基のモル比が約1/2〜約1/100で反応させた後、未反応ジイソシアネートを除去精製し得られる。イソシアヌレート結合を有するポリイソシアネートは、例えば、触媒などにより環状3量化反応を行い、転化率が約5〜約80質量%になった時に反応を停止し、未反応ジイソシアネートを除去精製して得られる。この際に、1〜6価のアルコール化合物を併用することができる。
【0024】
上記イソシアヌレート化反応の触媒としては、一般に塩基性を有するものが好ましい。このような触媒の例としては、
(1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルベンジルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば、酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、
(2)トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや、例えば酢酸、カプリン酸等の有機弱酸塩、
(3)アルキルカルボン酸の例えば錫、亜鉛、鉛等のアルキル金属塩、
(4)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート、
(5)ヘキサメチルジシラザン等のアミノシリル基含有化合物、
(6)マンニッヒ塩基類、
(7)第3級アミン類とエポキシ化合物との併用、
(8)トリブチルホスフィン等の燐系化合物等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0025】
用いた反応触媒が塗料または塗膜物性に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、該触媒を酸性化合物などで中和することが好ましい。この場合の酸性化合物としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル等のスルホン酸またはその誘導体、燐酸エチル、燐酸ジエチル、燐酸イソプロピル、燐酸ジイソプロピル、燐酸ブチル、燐酸ジブチル、燐酸2−エチルヘキシル、燐酸ジ(2−エチルヘキシル)、燐酸イソデシル、燐酸ジイソデシル、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、ピロリン酸ブチル、亜燐酸ブチル等があり、2種以上を併用しても良い。
【0026】
ウレタン結合を有するポリイソシアネートは、例えば、トリメチロールプロパンなどの2〜6価のアルコール系化合物とジイソシアネートとを、アルコール系化合物の水酸基/ジイソシアネートのイソシアネート基のモル比が約1/2〜約1/100で反応させた後、未反応ジイソシアネートを除去精製し得られる。
【0027】
LTI、TTI、GTIの誘導体もジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートと同様の方法で、製造される。これらのトリイソシアネートの場合、未反応トリイソシアネートの除去精製は必ずしも必要ではない。
【0028】
式(I)中のAは、下記式(II)に示される1種又は2種以上のケト体あるいはそのエノール体群である。
【化6】


式(II)は、ケト体を示しているが、ケト−エノール互変異性体であるエノール体群も含む。例えば、メチン基のプロトンがアミド基側でエノール体となった構造や、エステル基側でエノール体となった構造も含む。この場合のケト体の組成比は、50%以上であることが好ましく、更に好ましくは75%以上であり、より好ましくは90%以上である。
【0029】
式(II)中のRは、炭素数1〜8個のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示す。Rが炭素数9以上のアルキル基であると、有効NCO%が低下するとともに、塗料とした時の主剤等との相溶性が低下する場合があり、好ましくない。これらの中でも、Rは炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基であり、最も好ましくは、エチル基である。
【0030】
式(II)中のR、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であり、任意にR、Rは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、またはRとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成することができるものである。その中でも、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であるか、RとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成することができるものであることが好ましい。
【0031】
ここで、式(II)中のR、Rを、それぞれ独立して存在する構造(以後、独立構造と言う)と、連結している構造(以後、連結構造と言う)に分けて説明する。
【0032】
まず、R及びRの独立構造について説明する。
独立構造の場合の式(II)中のR、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基である。その中でも、R、Rは、炭素数1〜8個の炭化水素基であることが好ましく、より好ましくは、炭素数3〜6の分岐アルキル基であることが好ましく、さらに好ましくは、炭素数3〜4の分岐アルキル基であり、最も好ましくは、イソプロピル基である。R、Rが含んでもいい好ましい置換基としては、エーテル結合、エステル結合が挙げられる。R、Rが、炭素数30以下のアルキル基であることによって、有効NCO%の低下を抑制し、塗料とした時の主剤等との相溶性を高く保つことができる。
【0033】
次に、R及びRの連結構造について説明する。
連結構造の場合の式(II)中の(R)(R)N−部分は、以下に示す窒素原子を含む環状二級アミンの活性水素を除く残基である。具体的な環状二級アミンとしては、2−アザビシクロ[2.1.1]ヘキサン、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンのようなアザビシクロ系化合物、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、3−ピロリジオール、2−ピロリドン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、4−ベンジルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、2−ピペリドン、4−ピペリドン、4−ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4−ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、4−ピペリジノピペリジン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−アリルピペラジン、N−イソブチルピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−シクロペンチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、1−(4−ピリジル)ピペラジン、1−(2−ピリミジル)ピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、N−ブチリルホモピペラジン、オキサゾリジン、モルホリン、イミダゾリジン、2−イミダゾリドン、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、5−メチルヒダントイン、クレアチニン、パラバン酸、ウラゾール、チアゾリジン、チアルジンのような飽和環状二級アミン、ピロール、2−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、2−アセチルピロール、2−ピロールカルボン酸、インドール、3H−インドール、3−メチルインドール、2−フェニルインドール、3−ヒドロキシルインドール、3−インドール酢酸、インドリン、2−インドリノン、イサチン、α−イサチンオキシム、イソインドール、イソインドリン、1−イソインドリノン、カルバゾール、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、9−アクリドン、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾロン、1H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、プリン、キサンチン、フェノキサジン、無水イサト酸、ベンゾチアゾリン、2−ベンゾチアゾロン、フェノチアジン、5,10−ジヒドロフェナジン、β−カルボリン、ペリミジンのような芳香族二級アミン、2−ピロリン、3−ピロリン、ジヒドロピリジン、2−ピラゾリン、5−ピラゾロン、2−イミダゾリン、4H−1,4−オキサジン、4H−1,4−チアジン、2H,6H−1,5,2−ジチアジンのような不飽和結合含有環状二級アミン等が挙げられる。
【0034】
これらの環状二級アミンの中でも、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、3−ピロリジオール、2−ピロリドン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、4−ベンジルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、2−ピペリドン、4−ピペリドン、4−ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4−ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、4−ピペリジノピペリジン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−アリルピペラジン、N−イソブチルピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−シクロペンチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、1−(4−ピリジル)ピペラジン、1−(2−ピリミジル)ピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、N−ブチリルホモピペラジン、オキサゾリジン、モルホリン、イミダゾリジン、2−イミダゾリドン、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、5−メチルヒダントイン、クレアチニン、パラバン酸、ウラゾール、チアゾリジン、チアルジンが好ましい。
【0035】
より好ましくは、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、4−ベンジルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4−ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、4−ピペリジノピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−アリルピペラジン、N−イソブチルピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−シクロペンチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、1−(4−ピリジル)ピペラジン、1−(2−ピリミジル)ピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、N−ブチリルホモピペラジンであり;さらに好ましくは、ピロリジン、2−メチルピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであり;最も好ましくは、2−メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0036】
上記に具体例を示したように、窒素原子を含む環状二級アミン化合物として、飽和環状二級アミン、芳香族二級アミン、不飽和結合含有環状二級アミンが挙げられるが、その中でも飽和環状二級アミンが好ましい。また、飽和環状二級アミンの中でも、窒素原子一個のみを含む二級アミンが好ましく、より好ましくは5員環あるいは6員環であり、更に好ましくは、下記式(V)で示される構造を有し、2,6位の置換基が水素かメチル基で、かつ、その中の少なくとも1つはメチル基であるピペリジン誘導体である。具体的な化合物名としては、上記の2−メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが該当する。
【化7】


式(V)中、R、R、R、R10は、各々独立して水素あるいはメチル基を示し、かつ、そのうち少なくとも1つはメチル基である。
すなわち、上記式(II)における窒素原子上のアルキル置換基において、窒素原子と隣接する炭素原子の少なくとも1つが2個以上の炭素原子と結合していることが好ましい。
【0037】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、式(I)中のAの代替として、以下の式(VII)に示されるケト体あるいはそのエノール体群を有するブロックポリイソシアネートを、一部含んでもよい。
【0038】
【化8】

【0039】
(式中、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であり、任意にR、Rは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、またはRとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成することができる。
【0040】
11、R12は、同じでも異なっていてもよく、水素、あるいは炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であり、任意にR11、R12は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、またはR11とR12に挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成することができる。)
【0041】
式(I)中のAにおける式(VII)に示されるブロックポリイソシアネートの含有量は、低温硬化性を維持しつつ、結晶化を抑制する観点から、50質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、最も好ましくは10質量%以下である。
【0042】
式(I)中のBは、下記式(III)に示される1種又は2種以上の構造単位である。
【化9】


式(III)におけるRは、活性水素含有化合物の活性水素を除く残基である。
【0043】
式(III)中のRの源となる活性水素含有化合物としては、イソシアネート基と反応しうる活性水素含有化合物であれば、特に制限されることはない。使用される活性水素含有化合物としては、一般にブロック剤として知られているものが好ましい。ブロック剤としては、活性水素を分子内に1個有する化合物が好ましく、例えば、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系、アミン系、イミド系、ピラゾール系化合物等がある。
【0044】
より具体的なブロック剤の例を下記に示す。
(1)メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノールなどの脂肪族アルコール類、
(2)アルキルフェノール系;炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノおよびジアルキルフェノール類であって、例えばn−プロピルフェノール、i−プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類、
(3)フェノール系;フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等、
【0045】
(4)活性メチレン系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、
(5)メルカプタン系;ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等、
(6)酸アミド系;アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、
(7)酸イミド系;コハク酸イミド、マレイン酸イミド等、
(8)イミダゾール系;イミダゾール、2−メチルイミダゾール等、
(9)尿素系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、
(10)オキシム系;ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、
(11)アミン系;ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−ブチルアミン)、ジ(t−ブチル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、N−t−ブチルシクロヘキシルアミン、2−メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等、
(12)イミン系;エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、
(13)ピラゾール系;ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等がある。
【0046】
好ましい活性水素含有化合物は、アルコール系、オキシム系、アミン系、酸アミド系、活性メチレン系、ピラゾール系のブロック剤から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、オキシム系、活性メチレン系、ピラゾール系のブロック剤から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくは、活性メチレン系のブロック剤の中から選ばれる少なくとも1種である。最も好ましくは、マロン酸ジエステルである。
【0047】
上記の活性水素含有化合物の活性水素としては、アルコール系であれば、水酸基の水素、また、活性メチレン系であれば、2つのカルボニル基に挟まれたメチレン基の水素、アミン系であれば、窒素原子に結合している水素が例示される。すなわち、活性水素含有化合物の活性水素を除く残基とは、アルコール系、活性メチレン系、アミン系等の活性水素含有化合物から各々の活性水素を除いた残基を示す。
【0048】
式(I)中のCは、下記式(IV)に示される1種又は2種以上の構造単位である。
【化10】


式(IV)におけるRは、活性水素含有親水性化合物の活性水素を除く残基である。
【0049】
式(I)中のCの源となる活性水素含有親水性化合物は、ノニオン系親水性化合物、アニオン系親水性化合物、カチオン系親水性化合物から選ばれる。これらの中でも、製造容易性から、ノニオン系親水性化合物、アニオン系親水性化合物が好ましく、さらに好ましくは、ノニオン系親水性化合物である。これらの親水性化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0050】
ノニオン系親水性化合物としては、少なくとも3個連続したエチレンオキサイド基を有するポリエチレングリコール系化合物が挙げられる。さらに、ノニオン系親水性化合物の数平均分子量は200〜2000であることが好ましい。数平均分子量の下限は、より好ましくは300、さらに好ましくは400である。数平均分子量の上限は、より好ましくは1500、さらに好ましくは1200、最も好ましくは1000である。数平均分子量の下限が200以上であることによって、組成物の十分な水分散性を得ることができる。一方、数平均分子量の上限が2000以下であることによって、焼付け後の耐水性等の塗膜物性の低下を抑制することができる。
【0051】
例示した少なくとも3個連続したエチレンオキサイド基を有するポリエチレングリコール系化合物には、エチレンオキサイド繰り返し単位に、その他のオキシアルキレン基、具体的にはオキシプロピレン基、あるいはオキシスチレン基などを含有していても良い。その場合のエチレンオキサイド基モル比率は、60モル%以上が好ましく、より好ましくは70モル%以上、最も好ましくは80モル%以上である。エチレンオキサイド基モル比率が高い場合、水系塗料における配合性を効率よく向上することができるため、好ましい。
【0052】
このようなポリエチレングリコール系化合物として、モノアルコキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させた所謂プルロニックタイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオールが挙げられる。特にモノアルコキシポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールが好ましく、さらに好ましくは、モノアルコキシポリエチレングリコールである。モノアルコキシポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコールの片末端にアルコールが付加したものである。モノアルコキシポリエチレングリコールに使用しうるモノアルコールとしては、炭素数1〜8が好ましく、より好ましくは炭素数1〜6であり、さらに好ましくは炭素数1〜4である。最も好ましくは、メタノール、エタノールである。
【0053】
従って、モノアルコキシポリエチレングリコールの中でも、モノメトキシポリエチレングリコール、モノエトキシポリエチレングリコールが好ましく、モノメトキシポリエチレングリコールが最も好ましい。
活性水素含有親水性化合物として用いられるこれらのポリエチレングリコール系化合物の中でも、数平均分子量200〜2000の片末端に炭素数1〜4のモノアルコールが付加したポリエチレングリコール系化合物が特に好ましい。
【0054】
ポリエチレングリコールの具体例としては、日本油脂株式会社製PEG200、300、400、600、1000、2000が挙げられる。また、モノメトキシポリエチレングリコールとしては、日本油脂株式会社製ユニオックスM400、550、1000、2000、日本乳化剤株式会社の製品MPG−081が挙げられる。
【0055】
アニオン系親水性化合物としては、カルボン酸基含有化合物、スルホン酸基含有化合物が挙げられる。カルボン酸基含有化合物としては、モノヒドロキシカルボン酸あるいはジヒドロキシカルボン酸あるいはそれらの誘導体が挙げられる。カルボン酸基含有化合物の中では、モノヒドロキシカルボン酸あるいはジヒドロキシカルボン酸が好ましく、さらに好ましくは、モノヒドロキシカルボン酸である。
【0056】
カルボン酸含有化合物の具体例としては、ヒドロキシピバリン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、あるいはこれらを開始剤としたポリカプロラクトンジオールやポリエーテルポリオール等の誘導体が挙げられる。カルボン酸基含有化合物を使用する場合には、ブロックポリイソシアネート組成物の製造後、中和剤で中和することが好ましい。中和剤としては、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0057】
スルホン酸基含有化合物としては、アミノエチルスルホン酸、エチレンジアミノ−プロピル−β−エチルスルホン酸、1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタンスルホン酸が挙げられる。スルホン酸基含有化合物を使用する場合には、上記同様にブロックポリイソシアネート組成物の製造後、中和剤で中和することが好ましい。中和剤としては、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。
【0058】
カルボン酸基含有化合物とスルホン酸基含有化合物とを比較した場合、製造容易性、水系塗料における配合性から、カルボン酸基含有化合物が好ましい。
【0059】
カチオン系親水性化合物としては、水酸基含有アミノ化合物が挙げられる。具体的には、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ヒドロキシピリジン等が挙げられる。水酸基含有アミノ化合物を使用する場合には、上記同様にブロックポリイソシアネート組成物の製造後、中和剤で中和することが好ましい。中和剤としては、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、2−エチルヘキサン酸等の有機酸が挙げられる。
【0060】
上記の活性水素含有親水性化合物の活性水素としては、ノニオン系親水性化合物であれば、水酸基の水素が例示される。アニオン系親水性化合物であるヒドロキシピバリン酸であれば、水酸基の水素、また、アミノエチルスルホン酸であれば、アミノ基の水素が例示される。カチオン系親水性化合物であるジメチルエタノールアミンであれば、水酸基の水素が例示される。すなわち、活性水素含有親水性化合物の活性水素を除く残基とは、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の活性水素含有親水性化合物から各々の活性水素を除いた残基を示す。
【0061】
式(I)中のx、y、zの合計は、Rの源となるポリイソシアネートのイソシアネート基平均数に相当する値であり、2.0〜20であることが好ましい。下限値は、2.3であることがより好ましく、さらに好ましくは2.5、最も好ましくは3.0である。上限値は、15であることがより好ましく、さらに好ましくは10である。なお、ここでのx、y、zは、A、B、C各々の、Rに対する統計的平均数を意味する。
【0062】
式(I)中のx、y、zの合計が2.0以上であることによって、架橋性の低下を抑制し、目的とする塗膜物性を得ることができる。一方、x、y、zの合計が20以下であることによって、凝集力が高くなりすぎることを防止し、平滑な塗膜を得ることができる。また、x、zはいずれも0ではない。yは0であってもよいが、0でないことがより好ましい。x=0ではないことによって、塗液組成物の低温硬化性、貯蔵安定性が良好に保たれる。また、z=0ではないことによって、塗液組成物の分離や沈降等の発生を避けることができる。
【0063】
式(I)中のx、y、zは49≧(x+y)/z≧1であることが好ましい。より好ましくは、下限値が1.5であり、さらに好ましくは2.0である。また、式(I)中のx、yはx/y≧1であることが好ましく、より好ましくはx/y≧1.5、さらに好ましくは、x/y≧2である。
【0064】
なお、本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、一部イソシアネート基が残存しているものも含まれる。残存イソシアネート基の好ましい量は、使用目的により異なるが、ポリオール等と配合し、1液塗料組成物として使用する場合には、貯蔵安定性確保のため、ブロック化前のイソシアネート基のうち20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることが更に好ましく、より好ましくは、5モル%以下であり、最も好ましくは残存イソシアネート基が存在しないことである。
【0065】
本発明におけるブロックポリイソシアネート組成物に対して、後述のように、各種の添加剤を添加して使用することが可能である。その中で、使用が好ましくない成分としては、例えば、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル化合物、少なくとも分子中に1個の水酸基を有する分子量400以下のアルコール化合物、少なくとも分子中に1個の1級アミノ基あるいは2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン化合物が挙げられる。本発明のブロックポリイソシアネート組成物において、これらの化合物(とりわけエステル化合物)の含有量をブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し、それぞれ1.0質量%以下にすることで、塗料組成物としての貯蔵安定性(ガス発生抑制、塗料pH変化抑制)を良好に保つことができたことは驚くべきことであった。
【0066】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル化合物の含有量が1.0質量%以下である。上記エステル化合物の含有量(残存量)としては、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.6質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以下であってよい。また、上記エステル化合物の含有量の下限は、好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.001質量%、最も好ましくは0質量%である。
【0067】
ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し、1.0質量%を超える量で含有することが好ましくないエステル化合物としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、イソ吉草酸、サリチル酸、ステアリン酸、セバシン酸、乳酸、酪酸等の1価カルボン酸のエステル化合物、シュウ酸、酒石酸、炭酸、フタル酸、マレイン酸、アジピン酸等の2価カルボン酸のカルボキシル基のうち少なくとも1個がエステル化されたエステル化合物、アセト酢酸、イソブタノイル酢酸、n−プロパノイル酢酸、n−ブタノイル酢酸、n−ヘキサノイル酢酸、マロン酸等の活性メチレン化合物のカルボキシル基のうち少なくとも1個がエステル化されたエステル化合物、クエン酸、アセチルクエン酸等の3価カルボン酸のカルボキシル基のうち少なくとも1個がエステル化されたエステル化合物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール誘導体由来のエステル化合物などが挙げられる。その中でも、活性メチレン化合物のカルボキシル基のうち少なくとも1個がエステル化されたエステル化合物メチルは、容易に加水分解されるため、含有することが特に好ましくない。
【0068】
エステル化合物の具体例としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸n−プロピル、ギ酸n−ブチル、ギ酸イソブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸アミル、酢酸アリル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸n−ブチル、イソ吉草酸メチル、イソ吉草酸エチル、サリチル酸メチル、サリチル酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、セバチン酸メチル、セバチン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸n−ブチル等の1価カルボン酸由来のエステル化合物、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジオクチル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジオクチル等の2価カルボン酸由来のエステル化合物、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸アリル、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル、イソブタノイル酢酸n−プロピル、イソブタノイル酢酸イソプロピル、イソブタノイル酢酸n−ブチル、イソブタノイル酢酸2−エチルヘキシル、イソブタノイル酢酸フェニル、イソブタノイル酢酸ベンジル、n−プロパノイル酢酸メチル、n−プロパノイル酢酸エチル、n−プロパノイル酢酸n−プロピル、n−プロパノイル酢酸イソプロピル、n−プロパノイル酢酸n−ブチル、n−プロパノイル酢酸イソブチル、n−プロパノイル酢酸t−ブチル、n−ブタノイル酢酸メチル、n−ブタノイル酢酸エチル、n−ブタノイル酢酸n−プロピル、n−ブタノイル酢酸イソプロピル、n−ブタノイル酢酸n−ブチル、n−ブタノイル酢酸イソブチル、n−ブタノイル酢酸t−ブチル、n−ペンタノイル酢酸メチル、n−ペンタノイル酢酸エチル、n−ペンタノイル酢酸n−プロピル、n−ペンタノイル酢酸イソプロピル、n−ペンタノイル酢酸n−ブチル、n−ペンタノイル酢酸イソブチル、n−ペンタノイル酢酸t−ブチル、n−ヘキサノイル酢酸メチル、n−ヘキサノイル酢酸エチル、n−ヘキサノイル酢酸n−プロピル、n−ヘキサノイル酢酸イソプロピル、n−ヘキサノイル酢酸n−ブチル、n−ヘキサノイル酢酸イソブチル、n−ヘキサノイル酢酸t−ブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジシクロヘキシル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジル等の活性メチレン化合物由来のエステル化合物、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等の3価カルボン酸由来のエステル化合物、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、グリセリン1,3−ジアセテート等の多価アルコール誘導体由来のエステル化合物が挙げられる。
【0069】
また、本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、少なくとも分子中に1個の水酸基を有する分子量400以下のアルコール化合物の含有量、及び、少なくとも分子中に1個の1級アミノ基あるいは2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン化合物の含有量のいずれもが、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し1.0質量%以下であることが好ましい。これらの含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し、より好ましくは、それぞれ0.8質量%以下、さらに好ましくは0.6質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。また、これらの含有量の下限は、好ましくは0.1質量%、より好ましくは0.01質量%、さらに好ましくは0.001質量%、最も好ましくは0質量%である。
【0070】
ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し、1.0質量%を超える量で含有することが好ましくないアルコール化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、2−エチル−1−プロパノール、n−アミルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール等の1価飽和脂肪族アルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3,6−ジオキサ−1−ヘプタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール等、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、シクロへキサンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコール等が挙げられる。
【0071】
ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し、1.0質量%を超える量で含有することが好ましくない有機アミン化合物としては、例えば、モノエチルアミン、モノn−ブチルアミン、モノエタノールアミン等の脂肪族1級アミン、アニリン等の芳香族1級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジトリデシルアミン、ジステアリルアミンのような直鎖二級アミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−ブチルアミン)、ジ(t−ブチル)アミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−メチルシクロヘキシル)アミンのような分岐二級アミン、ジアリルアミンのような不飽和二重結合含有二級アミン、メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、メチルt−ブチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、エチルt−ブチルアミン、N−エチルヘキシルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N−エチルイソアミルアミン、N−エチルラウリルアミン、N−エチルステアリルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−t−ブチルシクロヘキシルアミンのような非対称二級アミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン、t−ブチルベンジルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−シクロヘキシルアニリン、3−(ベンジルアミノ)プロピオン酸エチルエステルのような芳香族置換基を有する二級アミン、2−(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、4−メチルアミノブタノール、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン等の鎖状2級アミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、3−ピロリジオール、2−ピロリドン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、4−ベンジルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、2−ピペリドン、4−ピペリドン、4−ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4−ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、4−ピペリジノピペリジン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−アリルピペラジン、N−イソブチルピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−シクロペンチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、1−(4−ピリジル)ピペラジン、1−(2−ピリミジル)ピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、N−ブチリルホモピペラジン、オキサゾリジン、モルホリン、イミダゾリジン、2−イミダゾリドン、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、5−メチルヒダントイン、クレアチニン、パラバン酸、ウラゾール、チアゾリジン、チアルジン等の窒素原子を含む環状2級アミン等が例示される。
【0072】
次に、本発明のブロックポリイソシアネート組成物の製造方法について説明する。当該ブロックポリイソシアネート組成物は、大きく分類して、2つの製造方法で合成しうる(以下、「製造方法1」及び「製造方法2」と称する)。
【0073】
製造方法1は、第1工程として、式(I)中のRの源となるポリイソシアネート(a)と、下記式(VIII)に示されるマロン酸ジエステル(b)及び活性水素含有親水性化合物(d)とを反応させた後に、第2工程として、下記式(IX)に示される有機アミン化合物(c)を反応させ、さらに第3工程として、(i)第2工程で残存した有機アミン化合物、(ii)第1工程で生成したポリイソシアネートとマロン酸ジエチルとの反応生成物のエステル基及び有機アミン化合物の反応(すなわち第2工程の反応)により解離したアルコール化合物、(iii)第1工程実施後に残存したマロン酸ジエステル、並びに(iv)第1工程実施後に残存したマロン酸ジエステルと第2工程で添加した有機アミン化合物(c)との反応物であるマロン酸モノエステルモノアミドを、所望の上限以下まで低減させる方法である。
【0074】
第1工程においては、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基と活性水素含有親水性化合物(d)との反応、マロン酸ジエステル(b)との反応を同時に行うこともできるし、あらかじめどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を実施することもできる。その中でも、イソシアネート基と活性水素含有親水性化合物(d)とを反応した後に、マロン酸ジエステル(b)と反応させることが好ましい。
【0075】
【化11】

【0076】
(式中、R、Rは、炭素数1〜8個のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示し、RとRは同一でも、異なっていてもよい。)
【0077】
【化12】

【0078】
(式中、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であり、任意にR、Rは、一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、またRとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成することができる。)
【0079】
製造方法2は、第1工程として、式(I)中のRの源となるポリイソシアネートのイソシアネート基と活性水素含有親水性化合物(d)、下記式(X)で示される化合物(マロン酸モノエステルモノアミド)を反応させた後に、第2工程として、第1工程実施後に残存した式(X)で示される化合物を所望の上限以下まで低減させる方法である。ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基と活性水素含有親水性化合物(d)との反応、下記式(X)で示される化合物との反応を同時に行うこともできるし、あらかじめどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を実施することもできる。その中でも、イソシアネート基と活性水素含有親水性化合物(d)とを反応させた後に、下記式(X)で示される化合物と反応させることが好ましい。
【0080】
【化13】

【0081】
(式中、Rは、炭素数1〜8個のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示し、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であり、任意にR、Rは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、またはRとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる3員、4員、5員または6員環を形成することができる。)
【0082】
製造の簡便さから、製造方法1がより好ましい。以下に製造方法1について説明する。
【0083】
製造方法1は、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートからなる群から選ばれる1種又は2種以上を骨格として有するポリイソシアネート(a)に、式(VIII)で示されるマロン酸ジエステル(b)及び活性水素含有親水性化合物(d)を、好ましくはポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対する合計量として77−150モル%添加し、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基とマロン酸ジエステル(b)及び活性水素含有親水性化合物(d)とを反応させる第1工程、この第1工程で得られた生成物のエステル基と式(IX)で示される有機アミン化合物(c)の1種又は2種以上とを反応させる第2工程、(i)第2工程で残存した有機アミン化合物、(ii)第1工程で生成したポリイソシアネートとマロン酸ジエチルとの反応生成物のエステル基及び有機アミン化合物の反応(すなわち第2工程の反応)により解離したアルコール化合物、(iii)第1工程実施後に残存したマロン酸ジエステル、並びに(iv)第1工程実施後に残存したマロン酸ジエステルと第2工程で添加した有機アミン化合物(c)との反応物であるマロン酸モノエステルモノアミドを、所望の上限以下まで低減させる第3工程の3つの工程からなる。
【0084】
第1工程について説明する。
製造方法1の第1工程において、ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対し、活性水素含有親水性化合物(d)と式(VIII)で示されるマロン酸ジエステル(b)との合計量が77〜150モル%であることが好ましい。上記割合の下限値としては、90モル%であることがより好ましく、さらに好ましくは、95モル%であり、最も好ましくは、100モル%である。上記割合の上限値としては、130モル%がより好ましく、さらに好ましくは、120モル%であり、最も好ましくは110モル%である。上記化合物の合計量の割合が77モル%以上であることによって、組成物の低温硬化性の悪化を防止することができる。また、上記化合物の合計の割合が150モル%以下であることによって、焼付塗膜の耐水性等の塗膜物性に対する悪影響を抑制することができる。第1工程において用いられる活性水素含有親水性化合物は、水系塗料における配合性を高める機能を有する。
【0085】
製造方法1の第1工程におけるマロン酸ジエステル(b)の添加量は、ブロックポリイソシアネートの前駆体であるポリイソシアネート(a)におけるイソシアネート基に対し、75〜148モル%であることが好ましい。上記割合の下限値としては、88モル%がより好ましく、さらに好ましくは98モル%である。上記割合が75モル%以上であることによって、架橋密度の低下を防止し、塗膜の耐水性等の所望の物性を得ることができる。上記割合が148モル%以下であることによって、焼付塗膜の耐水性等の塗膜物性に対する悪影響を抑制することができる。
【0086】
活性水素含有親水性化合物(d)の添加量は、活性水素のモル数を基準として、ブロックポリイソシアネートの前駆体であるポリイソシアネート(a)におけるイソシアネート基に対し、2〜50モル%であることが好ましい。上記割合の上限値としては、40モル%がより好ましく、さらに好ましくは35モル%である。上記割合が2モル%以上であることによって、組成物の充分な水分散性を得ることができる。また、上記割合が50モル%以下であることによって、架橋密度の低下を抑制し、塗膜の耐水性等の所望の物性を得ることができる。
【0087】
第1工程における活性水素含有親水性化合物(d)は、前記のノニオン系親水性化合物、アニオン系親水性化合物、カチオン系親水性化合物から選ばれる。これらの中で、製造容易性から、ノニオン系親水性化合物、アニオン系親水性化合物が好ましく、さらに好ましくはノニオン系親水性化合物である。これらの親水性化合物は、単独で用いてもいいし、2種以上を併用して用いてもよい。
【0088】
製造方法1の第1工程におけるマロン酸ジエステル(b)は、式(VIII)に示される。具体的には、R、Rは、炭素数1〜8のアルキル基、フェニル基またはベンジル基である。R、Rは同一であっても、異なっていても構わないが、入手の容易さから、R=Rであることが好ましい。R、Rが炭素数8以下のアルキル基であることによって、有効NCO%の低下を抑制すると共に、塗料とした時の主剤等との相溶性の悪化を防止することができる。これらの中でも、炭素数1〜8のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基またはエチル基であり、最も好ましくは、エチル基である。ここで有効NCO質量%とは、ブロックポリイソシアネート組成物の全質量に対する潜在的に存在するイソシアネート基の質量%である。
【0089】
マロン酸ジエステル(b)の具体例としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチルエステル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ2−エチルヘキシル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ジベンジルが挙げられる。その中でも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチルエステル、マロン酸ジn−ヘキシル、マロン酸ジ2−エチルヘキシルが好ましい。より好ましくは、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn−プロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn−ブチル、マロン酸ジイソブチル、マロン酸ジt−ブチル、マロン酸メチルt−ブチルエステルであり、さらに好ましくは、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルであり、最も好ましくは、マロン酸ジエチルである。上記に示したマロン酸ジエステルは、単独で用いることもできるし、2種以上を併用して使用することもできる。
【0090】
上記第1工程の反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性でかつ加水分解しにくい溶剤を用いるのが好ましい。好ましい溶剤は、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤である。
【0091】
第1工程の反応に際しては、反応触媒を使用することができる。具体的な反応触媒としては、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、金属アルコラート、及び3級アミン等が挙げられる。その中でも3級アミンがより好ましい。
【0092】
用いた反応触媒が塗料または塗膜物性に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、該触媒を酸性化合物などで失活させることが好ましい。この場合の酸性化合物としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸などの無機酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル等のスルホン酸またはその誘導体、燐酸エチル、燐酸ジエチル、燐酸イソプロピル、燐酸ジイソプロピル、燐酸ブチル、燐酸ジブチル、燐酸2−エチルヘキシル、燐酸ジ(2−エチルヘキシル)、燐酸イソデシル、燐酸ジイソデシル、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、ピロリン酸ブチル、亜燐酸ブチル等が挙げられる。これらの酸性化合物は、2種以上を併用しても良い。
【0093】
第1工程の反応は、一般に−20〜150℃で行うことができるが、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは40〜80℃である。150℃以下で反応を行うことによって副反応を抑制することができ、また、−20℃以上で反応を行うことによって反応速度を高く維持することができる。
【0094】
式(I)におけるx、y、zの組成比は、第1工程におけるポリイソシアネート(a)におけるイソシアネート基に対する活性水素含有親水性化合物(d)、マロン酸ジエステル(b)の添加モル%とその反応率に依存する。しかし、別の反応槽で合成したブロックポリイソシアネート組成物を最終的に混合し、本発明のブロックポリイソシアネート組成物とする場合には、混合比にも依存する。x、y、zの組成比は、第1工程でのポリイソシアネート(a)におけるイソシアネート基に対する活性水素含有親水性化合物(d)、マロン酸ジエステル(b)の添加モル%だけでなく、その反応率に依存するため、第2工程実施前に、第1工程終了時のイソシアネート残存率を確認することが好ましい。未反応のイソシアネート基が残存している場合、第2工程の有機アミン(c)は、第1工程で生成したイソシアネート基とマロン酸ジエステル(b)との反応生成物のエステル部との反応よりも、イソシアネート基と優先して反応する。本発明ではx比率が高いこと、及び、残存イソシアネート基が少ないことが好ましいため、第1工程において、イソシアネート基が消滅したことを確認した後に、第2工程を行うことがより好ましい。
【0095】
次に、製造方法1の第2工程について説明する。第2工程における式(IX)に示される有機アミン化合物(c)の添加量は、ブロックポリイソシアネートの前駆体であるポリイソシアネート(a)のイソシアネート基に対し、50〜500モル%であることが好ましい。この添加量の下限値としては、70モル%がより好ましく、さらに好ましくは90モル%である。この合計添加量の上限値としては、400モル%であることがより好ましく、さらに好ましくは300モル%であり、最も好ましくは200モル%である。合計添加量が50モル%以上であることによって、貯蔵安定性を高く保つことができ、500モル%以下であることによって、フリーなアミンの量を低減し、焼付塗膜の着色を防止することができる。
【0096】
第2工程で使用する有機アミン(c)は、第1工程後のポリイソシアネートとマロン酸ジエステル(b)との反応生成物のエステル部との反応を主目的として、添加している。しかしながら、第1工程後にイソシアネート基が残存している場合は、残存イソシアネート基と第2工程で用いる有機アミン(c)が反応しても構わない。その場合、式(I)におけるBとなる。
【0097】
また、第1工程でポリイソシアネート(a)におけるイソシアネート基に対するマロン酸ジエステル(b)および活性水素含有親水性化合物(d)の合計量が100モル%を超える量で添加された場合には、第1工程終了後に、マロン酸ジエステル(b)が残存する場合がある。その場合、第一工程後に残存するマロン酸ジエステル(b)と第2工程で添加した有機アミン化合物(c)との反応物であるマロン酸モノエステルモノアミドあるいはマロン酸ジアミドを、一部含んでいても構わない。
【0098】
第2工程で用いられる有機アミン化合物(c)は、式(IX)に示される。具体的には、式(IX)に示される有機アミン化合物(c)において、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であり、任意にR、Rは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、またはRとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成するものである。これらの中でも、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であるか、RとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成するものであることが好ましい。
【0099】
有機アミン化合物(c)は、大きく分けて、鎖状二級アミン化合物と窒素原子を含む環状二級アミン化合物に分類される。まず、鎖状二級アミン化合物について説明する。式(IX)の鎖状二級アミン化合物におけるR、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素である。その中でも炭素数は1〜8個の炭化水素であることが好ましく、より好ましくは、炭素数3〜6の分岐アルキル基であり、さらに好ましくは炭素数3〜4の分岐アルキル基であり、最も好ましくはイソプロピル基である。R、Rが、炭素数30以下のアルキル基であることによって、有効NCO%の低下を抑制し、塗料とした時の主剤等との相溶性を高く保つことができる。
【0100】
本発明に用いる鎖状二級アミン化合物の具体例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジトリデシルアミン、ジステアリルアミンのような直鎖二級アミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−ブチルアミン)、ジ(t−ブチル)アミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−メチルシクロヘキシル)アミンのような分岐二級アミン、ジアリルアミンのような不飽和二重結合含有二級アミン、メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、メチルt−ブチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、エチルt−ブチルアミン、N−エチルヘキシルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N−エチルイソアミルアミン、N−エチルラウリルアミン、N−エチルステアリルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−t−ブチルシクロヘキシルアミンのような非対称二級アミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン、t−ブチルベンジルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−シクロヘキシルアニリン、3−(ベンジルアミノ)プロピオン酸エチルエステルのような芳香族置換基を有する二級アミン、2−(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、4−メチルアミノブタノール、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0101】
これらの鎖状二級アミン化合物の中でも、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−ブチルアミン)、ジ(t−ブチル)アミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−メチルシクロヘキシル)アミン、ジアリルアミン、メチルエチルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、メチルt−ブチルアミン、N−メチルヘキシルアミン、エチルt−ブチルアミン、N−エチルヘキシルアミン、N−エチル−1,2−ジメチルプロピルアミン、N−エチルイソアミルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、N−エチルシクロヘキシルアミン、N−t−ブチルシクロヘキシルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン、t−ブチルベンジルアミン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、2−(ヒドロキシメチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、4−メチルアミノブタノール、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミンが好ましい。より好ましくは、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−ブチルアミン)、ジ(t−ブチル)アミン、ジシクロヘキシルアミン、N−t−ブチルシクロヘキシルアミンであり、さらに好ましくは、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ(2−ブチルアミン)、ジ(t−ブチル)アミンであり、最も好ましくは、ジイソプロピルアミンである。
【0102】
次に、窒素原子を含む環状二級アミン化合物について説明する。窒素原子を含む環状二級アミン化合物としては、式(IX)において、R、Rが一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成するものである。
【0103】
窒素原子を含む環状二級アミン化合物の具体例としては、2−アザビシクロ[2.1.1]ヘキサン、7−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタンのようなアザビシクロ系化合物、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、3−ピロリジオール、2−ピロリドン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、4−ベンジルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、2−ピペリドン、4−ピペリドン、4−ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4−ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、4−ピペリジノピペリジン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−アリルピペラジン、N−イソブチルピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−シクロペンチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、1−(4−ピリジル)ピペラジン、1−(2−ピリミジル)ピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、N−ブチリルホモピペラジン、オキサゾリジン、モルホリン、イミダゾリジン、2−イミダゾリドン、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、5−メチルヒダントイン、クレアチニン、パラバン酸、ウラゾール、チアゾリジン、チアルジンのような飽和環状二級アミン、ピロール、2−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、2−アセチルピロール、2−ピロールカルボン酸、インドール、3H−インドール、3−メチルインドール、2−フェニルインドール、3−ヒドロキシルインドール、3−インドール酢酸、インドリン、2−インドリノン、イサチン、α−イサチンオキシム、イソインドール、イソインドリン、1−イソインドリノン、カルバゾール、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン、9−アクリドン、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾロン、1H−1,2,3−トリアゾール、1H−1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、プリン、キサンチン、フェノキサジン、無水イサト酸、ベンゾチアゾリン、2−ベンゾチアゾロン、フェノチアジン、5,10−ジヒドロフェナジン、β−カルボリン、ペリミジンのような芳香族二級アミン、2−ピロリン、3−ピロリン、ジヒドロピリジン、2−ピラゾリン、5−ピラゾロン、2−イミダゾリン、4H−1,4−オキサジン、4H−1,4−チアジン、2H,6H−1,5,2−ジチアジンのような不飽和結合含有環状二級アミン等が挙げられる。
【0104】
これらの窒素原子を含む環状二級アミン化合物の中でも、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、3−ピロリジオール、2−ピロリドン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、4−ベンジルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、3−ピペリジンメタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール、4−ピペリジノール、2−ピペリドン、4−ピペリドン、4−ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4−ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、4−ピペリジノピペリジン、デカヒドロキノリン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−アリルピペラジン、N−イソブチルピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−シクロペンチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、1−(4−ピリジル)ピペラジン、1−(2−ピリミジル)ピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、N−ブチリルホモピペラジン、オキサゾリジン、モルホリン、イミダゾリジン、2−イミダゾリドン、ヒダントイン、1−メチルヒダントイン、5−メチルヒダントイン、クレアチニン、パラバン酸、ウラゾール、チアゾリジン、チアルジンが好ましい。
【0105】
これらの中でも、より好ましくは、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、2−メチルピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、4−ベンジルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ピペリジンカルボン酸メチルエステル、4−ピペリジンカルボン酸エチルエステル、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン、4−ピペリジノピペリジン、ピペラジン、N−メチルピペラジン、N−エチルピペラジン、N−アリルピペラジン、N−イソブチルピペラジン、N−シクロヘキシルピペラジン、N−シクロペンチルピペラジン、N−フェニルピペラジン、1−(2−ピリジル)ピペラジン、1−(4−ピリジル)ピペラジン、1−(2−ピリミジル)ピペラジン、N−メチルホモピペラジン、N−アセチルホモピペラジン、N−ブチリルホモピペラジンであり;さらに好ましくは、ピロリジン、2−メチルピロリジン、ピペリジン、2−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、4−メチルピペリジン、2,4−ジメチルピペリジン、3,5−ジメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであり;最も好ましくは、2−メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンである。
【0106】
窒素原子を含む環状二級アミン化合物として、上記に具体例を示したように、飽和環状二級アミン、芳香族二級アミン、不飽和結合含有環状二級アミンが挙げられるが、その中でも飽和環状二級アミンが好ましい。また、飽和環状二級アミンの中でも、窒素原子一個のみを含む二級アミンが好ましく、より好ましくは5員環あるいは6員環であり、更に好ましくは下記式(XI)に示される2,6位の置換基が水素かメチル基で、かつ、その中の少なくとも1つはメチル基であるピペリジン誘導体である。具体的な化合物名としては、上記記載の2−メチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンが該当する。
【0107】
【化14】


式(XI)中、R、R、R、R10は、各々独立して水素あるいはメチル基を示し、かつ、そのうち少なくとも1つはメチル基である。
すなわち、有機アミン化合物(c)としては、上記式(IX)における窒素原子上のアルキル置換基において、窒素原子と隣接する炭素原子の少なくとも1つが2個以上の炭素原子と結合していることが、好ましい。
【0108】
製造方法1の第2工程においては、上記の鎖状アミン化合物、窒素原子を含む環状アミン化合物を単独で用いることもできるし、2種以上を併用して使用することもできる。第2工程の反応も、第1工程の反応と同様、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性でかつ加水分解しにくい溶剤を用いるのが好ましい。好ましい溶剤は、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤である。
【0109】
製造方法1の第2工程の反応に際しては、第1工程用として上記の触媒も使用することもできるが、使用した場合、反応液が着色する場合があり、使用しないことが望ましい。また、第1工程で触媒を使用した場合には、酸性化合物などで失活させた後、第2工程を実施することが好ましい。
【0110】
第2工程の反応も、第1工程と同様、一般に−20〜150℃で行うことができるが、好ましくは0〜100℃であり、より好ましくは40〜80℃である。150℃以下で反応を行うことによって副反応を抑制することができ、また、−20℃以上で反応を行うことによって反応速度を高く維持することができる。
【0111】
次に、製造方法1の第3工程について説明する。
第3工程は、製造方法1の第2工程の反応後に、(i)第2工程で残存した有機アミン化合物、(ii)第1工程で生成したポリイソシアネートとマロン酸ジエチルとの反応生成物のエステル基及び有機アミン化合物の反応(すなわち第2工程の反応)により解離したアルコール化合物、(iii)第1工程実施後に残存したマロン酸ジエステル、並びに(iv)第1工程実施後に残存したマロン酸ジエステルと第2工程で添加した有機アミン化合物(c)との反応物であるマロン酸モノエステルモノアミドを、所望の上限以下まで低減させる工程である。
【0112】
上記第2工程で残存した有機アミン化合物(c)、第1工程で生成したポリイソシアネートとマロン酸ジエステルとの反応生成物のエステル基及び有機アミン化合物の反応により解離したアルコール化合物、第1工程実施後に残存したマロン酸ジエステル、並びに第1工程実施後に残存したマロン酸ジエステルと第2工程で添加した有機アミン化合物(c)との反応物であるマロン酸モノエステルモノアミドの低減は、塗料組成物としての貯蔵安定性(ガス発生抑制、塗液pH変化抑制)を向上させる効果がある。
【0113】
そのため、第2工程の反応後に、例えば減圧度1.33×10−3〜13.33KPa、温度20〜120℃等の条件における除去精製、n−ヘキサン等の貧溶媒を加えて実施する再沈殿等の方法により、上記各成分の含有量を低減させることが好ましい。除去精製を実施する場合の減圧度の上限値は、13.33KPaであることが好ましく、より好ましくは、1.33KPaであり、さらに好ましくは、1.33×10−1KPaである。減圧度を13.33KPa以下で行うことにより、沸点が高めのマロン酸ジエステル等も低減することができ、好ましい。加熱温度としては、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。120℃以下の温度で除去精製を行うことにより、ブロックポリイソシアネート組成物の黄変等が防止でき、好ましい。
【0114】
除去精製、再沈殿等の工程を実施後、目的の溶剤を追加し、固形分を調整することが好ましい。この工程で使用されうる溶剤としては、各種溶剤が使用可能であるが、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル溶剤、少なくとも分子中に1個の水酸基を有する分子量400以下のアルコール溶剤、少なくとも分子中に1個の1級アミノ基あるいは2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン溶剤は好ましくない。溶剤の一部に上記分子量400以下のエステル溶剤が含有される場合には、この溶剤の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し1.0質量%以下である必要がある。また、溶剤の一部に上記分子量400以下のアルコール溶剤及び/又は上記分子量400以下の有機アミン溶剤が含有される場合には、当該溶剤の含有量は、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し1.0質量%以下であることが好ましい。これらの溶剤の含有量は、より好ましくは0.8質量%以下であり、さらに好ましくは0.6質量%以下であり、最も好ましくは0.5質量%以下である。
【0115】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物の希釈溶剤としては、水分散性、貯蔵安定性等の観点から多価アルコール由来のエーテル溶剤が好ましい。
【0116】
また、本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、上記のいずれかの製造方法で一括製造してもいいし、別々に製造したブロックポリイソシアネート組成物を混合しても構わない。
【0117】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物に、既存の活性メチレン系、オキシム系、アミン系、ピラゾール系ブロック剤から選ばれる単独あるいは2種以上のブロック剤から誘導されるブロックポリイソシアネートを混合して使用することもできる。
【0118】
しかし、既存の活性メチレン系ブロックポリイソシアネートを多く混合した際には、塗料組成物とした際の貯蔵安定性が低下する場合がある。また、オキシム系ブロックポリイソシアネート、アミン系ブロックポリイソシアネート、ピラゾール系ブロックポリイソシアネートを多く混合した際には、低温硬化性が低下する場合がある。そのため、式(I)によるブロックポリイソシアネート以外のブロックポリイソシアネートの混合量は、それらのブロックポリイソシアネートの合計量に対して20質量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。既存の活性メチレン系ブロックポリイソシアネートを混合する場合は、混合した後に、残存する既存の活性メチレン系ブロック剤の量を低減させるため、上記第3工程で示した除去精製を実施することが好ましい。また、アミン系ブロックポリイソシアネートを混合する場合は、混合した後に、残存するブロック剤であるアミン系ブロック剤の量を低減させるため、上記第3工程で示した除去精製を実施することが好ましい。
【0119】
既存の活性メチレン系ブロック剤としては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンが例示される。この中でも、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルが、低温硬化性に優れるため、好ましい。オキシム系ブロック剤としては、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムが挙げられる。
【0120】
また、アミン系ブロック剤としては、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミンが挙げられる。ピラゾール系ブロック剤としては、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。
【0121】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物の数平均分子量は、500〜5,000であることが好ましい。その下限値は、700であることが更に好ましく、より好ましくは800、最も好ましくは1,000である。また、その上限値は、4,000であることが更に好ましく、より好ましくは3,000であり、最も好ましくは2,000である。数平均分子量が500以上であれば、1分子あたりのブロックイソシアネート基の官能基数2.0以上を確保することが可能となり、また、数平均分子量が5,000以下であれば、高粘度化を抑制することができる。
【0122】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物の粘度は、溶剤等で希釈された、樹脂固形分60質量%の状態で、100〜1,000mPa・s/25℃である。粘度が100mPa・s以上であれば、1分子あたりのブロックイソシアネート基の官能基数2.0以上を確保することが可能となり、1,000mPa・s以下であれば、塗料への配合が容易になる。
【0123】
塗料組成物としての貯蔵安定性(ガス発生量抑制、塗液pH変化抑制)を向上させるため、ブロックポリイソシアネート組成物のブロックイソシアネート基に対し、酸解離定数(PKa)が7.0〜8.5である3級アミン化合物(e)を10モル%以上混合することが好ましい。ここでの酸解離定数(PKa)は、電位差滴定法により20℃で測定される値である。
【0124】
PKa7.0〜8.5の3級アミン化合物(e)の具体例としては、N−アリルモルホリン(PKa:7.1)、N−メチルモルホリン(PKa:7.4)、N−エチルモルホリン(PKa:7.7)等のモルホリン誘導体、トリアリルアミン(PKa:8.3)、トリエタノールアミン(PKa:7.8)等が挙げられる。その中でも、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリンが好ましい。
【0125】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物に使用される3級アミン化合物(e)のPKaの上限値は、更に好ましくは8.3であり、より好ましくは8.0である。3級アミン化合物のPKaが7.0以上であれば、貯蔵安定性が改良されるため好ましく、8.5以下であれば、塗料配合時のpHが高くなりすぎないため好ましい。
【0126】
3級アミン化合物(e)の混合量は、ブロックポリイソシアネート組成物のブロックイソシアネート基に対し、10モル%以上であることが好ましい。3級アミン化合物の混合量の下限値は、より好ましくは20モル%、さらに好ましくは30モル%である。その上限値としては、好ましくは500モル%、より好ましくは400モル%、さらに好ましくは300モル%である。この場合のブロックイソシアネート基のモル数は、前駆体であるポリイソシアネートのうちA及びBの部分構造の源となるイソシアネート基を基準としたモル数を示す。
【0127】
また、PKaが8.5を超える3級アミン化合物を一部混合しても構わない。混合量としては、ブロックポリイソシアネート組成物のブロックイソシアネート基に対し、100モル%以下が好ましく、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、最も好ましくは10モル%以下である。
【0128】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物中に存在するPKa7.0〜8.5の3級アミン化合物(e)は、第1工程、第2工程及び第3工程が終了した後に、添加することが好ましい。
【0129】
本発明において、式(I)の構造を有するブロックポリイソシアネートを含む組成物を塗料組成物として用いることによって、低温硬化性を保持しつつ、水性塗料組成物としての貯蔵安定性、貯蔵後硬化性を格段に向上させることが可能となる。従来技術に関するEP600314A1公報には、(α)ジイソプロピルアミン、(β)活性メチレン化合物、及び(γ)オキシムをブロック剤とする共ブロックポリイソシアネート組成物(ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基のモル当量に対し、α+β+γ=100モル%となる)が記載されている。しかし、本発明の組成物に含まれるブロックポリイソシアネートは、式(I)中にAの構造を有しているという点で大きく異なる。
【0130】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、ポリオールの少なくとも1種と配合することにより塗料組成物を形成することができる。また、塗料組成物には、ポリオールと共に/又はこれに代えて、ポリアミン及び/又はアルカノールアミンの少なくとも1種を配合することができる。
【0131】
水系塗料組成物における配合性の向上の目的に応じて、本発明におけるブロックポリイソシアネート組成物に対して、界面活性剤、水に対し混和性の傾向を示す溶剤等を使用してもよい。界面活性剤の具体的としては、脂肪族セッケン、ロジン酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩などのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンジアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマーなどのノニオン性界面活性剤が挙げられる。水に対し混和性の傾向を示す溶剤としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、N−メチルピロリドン、ブチルジグリコール等が挙げられる。
【0132】
上述のように、本発明におけるブロックポリイソシアネート組成物において、使用が好ましくない成分としては、例えば、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル化合物、少なくとも分子中に1個の水酸基を有する分子量400以下のアルコール化合物、少なくとも分子中に1個の1級アミノ基あるいは2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン化合物が挙げられる。これらの化合物の具体例は、上で挙げたとおりである。
【0133】
このように調製されたブロックポリイソシアネート組成物は、ポリオールの少なくとも1種と共に塗料組成物の主要構成成分となる。このポリオールの例としては、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオールなどが挙げられる。
【0134】
ポリエステルポリオールとしては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの群から選ばれた多価アルコールの単独または混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール、及び、例えば多価アルコールを用いたε−カプロラクトンの開環重合により得られるポリカプロラクトン類等が挙げられる。
【0135】
アクリルポリオールは、ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独または混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独または混合物とを共重合させることにより得られる。
【0136】
ヒドロキシル基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。好ましくは、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチルである。
【0137】
上記単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のビニル系単量体、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体等が挙げられる。
【0138】
ポリエーテルポリオール類としては、多価ヒドロキシ化合物の単独または混合物に、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、エチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、及び、これらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られるいわゆるポリマーポリオール類等が含まれる。
【0139】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、
(1)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど、
(2)エリスリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等糖アルコール系化合物、
(3)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、
(4)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオースなどの二糖類、
(5)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトースなどの三糖類、
(6)スタキオースなどの四糖類等が挙げられる。
【0140】
ポリオレフィンポリオールとしては、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレンなどが挙げられる。ポリオールの統計的1分子が持つ水酸基数(以下、水酸基平均数)は2以上であることが好ましい。ポリオールの水酸基平均数が2以上であることによって、得られた塗膜の架橋密度の低下を抑制することができる。
【0141】
フッ素ポリオールは分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば特開昭57−34107号公報、特開昭61−275311号公報で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体がある。
【0142】
ポリカーボネートポリオール類としては、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート等の低分子カーボネート化合物と、前述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオールとを、縮重合して得られるものが挙げられる。
【0143】
ポリウレタンポリオールは、常法により、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることにより得ることができる。カルボキシル基を含有しないポリオールとしては、低分子量のものとして、エチレングリコール、プロピレングリコール等が例示され、高分子量のものとして、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が例示される。
【0144】
前記ポリオールの樹脂あたりの水酸基価は10〜300mgKOH/樹脂gであることが好ましい。樹脂あたりの水酸基価が10mgKOH/樹脂g以上であることによって、架橋密度が減少することを防止し、本発明の目的とする物性を十分に達成することができる。一方、樹脂あたりの水酸基価が300mgKOH/樹脂g以下であることによって、架橋密度が過度に増大することを抑制し、塗膜の機械的物性を高度に維持することができる。
【0145】
また、前記ポリオールの樹脂あたりの酸価は、好ましくは5〜150mgKOH/樹脂g、より好ましくは8〜120mgKOH/樹脂g、更に好ましくは、10〜100mgKOH/樹脂gである。酸価が5mgKOH/樹脂g以上であることにより、水分散性を高く保ち、150mgKOH/樹脂g以下であることにより、塗膜の耐水性の低下を防止することができる。
【0146】
上で列挙したポリオールの中でも、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。ポリオールを用いる場合の塗料組成物において、ブロックイソシアネート基とポリオールの水酸基の当量比は、通常10:1〜1:10に設定される。
【0147】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物とポリオールを水系塗料組成物に使用する場合、ブロックポリイソシアネート組成物とポリオールの配合方法は、ポリオールにブロックポリイソシアネート組成物をそのまま混合・分散させてもいいし、一旦ブロックポリイソシアネート組成物を水と配合させた後、ポリオールと混合させてもよい。
【0148】
式(I)で表されるブロックポリイソシアネート組成物を含む水系塗料組成物のpHは、7.0〜9.0であることが好ましい。その下限としては、より好ましくは7.5であり、さらに好ましくは8.0であり、その上限としては、より好ましくは8.8であり、さらに好ましくは8.6である。水系塗料組成物のpHが7.0〜9.0であることによって、配合されているアルミ等の顔料、レオロジーコントロール剤等の添加剤の安定性を保つことができるため、好ましい。
【0149】
また、上記のPKa7.0〜8.5の3級アミン化合物(e)は、水系塗料配合時に添加しても構わない。その場合、pKaが8.5を超える3級アミン化合物(e2)と併用しても構わない。該弱塩基性の3級アミン化合物(e)と該塩基性の3級アミン化合物(e2)との和(全3級アミン化合物)に対する弱塩基性の3級アミン化合物(e)の構成比は、20モル%以上であることが好ましい。
【0150】
3級アミン化合物(e)の構成比の下限値は、30モル%が好ましく、より好ましくは40モル%、さらに好ましくは50モル%である。本発明においては、3級アミン化合物(e)が全3級アミン化合物中20モル%以上添加されることで、塗料中の各成分に存在する全酸性分の中和塩を形成するよりも過剰に存在した場合にも、調整した塗料組成物のpHが高くなりすぎないため、好適である。中和の対象となる酸性基としては、カルボニル基、スルホニル基等が例示されるが、その中でもカルボニル基が好ましい。また、カルボキシル基を有するポリオールの場合のカルボキシル基については、ポリオール製造時の仕込みの酸成分を基準として、全3級アミン化合物の添加量を決定することができる。
【0151】
全3級アミン化合物の添加量は、そのアミノ基が、塗料中の各成分に存在する全酸性分100モル%に対し、30モル%以上であることが好ましい。下限値としては、さらに好ましくは50モル%であり、より好ましくは70モル%、最も好ましくは100モル%以上である。また、上限値としては、好ましくは500モル%であり、より好ましくは400モル%、さらに好ましくは300モル%である。
【0152】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物を含む塗料組成物に、既存のメラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂を配合することができる。また、前述したポリオールがカルボキシル基を有する場合には、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物を配合することができる。また、前述したポリオールがカルボニル基を有する場合には、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物を配合することができる。これらの化合物は単独で配合するだけでなく、2種以上の化合物を配合することもできる。
【0153】
メラミン樹脂としては、例えばメラミンとアルデヒドとの反応によって得られる部分もしくは完全メチロール化メラミン樹脂が挙げられる。上記アルデヒドとしは、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが挙げられる。また、このメチロール化メラミン樹脂のメチロール基をアルコールによって部分的にもしくは完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノールなどが挙げられる。
【0154】
該メラミン樹脂の具体例としては、日本サイテックインダストリーズ社製のサイメル303、サイメル323、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル380、サイメル385、サイメル212、サイメル251、サイメル254、マイコート776(以上いずれも商品名)などを挙げることができる。
【0155】
メラミン系硬化剤を併用する場合は、硬化させる際の触媒として、酸性化合物の添加が有効である。酸性化合物の具体例としては、カルボン酸、スルホン酸、酸性リン酸エステル、亜リン酸エステルが挙げられる。
【0156】
カルボン酸としては、酢酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、マレイン酸、デカンジカルボン酸が代表例として挙げられる。スルホン酸としては、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸が代表例として挙げられる。また、酸性リン酸エステルとしては、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジラウリルホスフェート、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェートが代表例として挙げられる。亜リン酸エステルとしては、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジラウリルフホスファイト、モノエチルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、モノラウリルホスファイトが代表例として挙げられる。
【0157】
エポキシ樹脂としては、1分子にエポキシ基を2個以上有する樹脂であれば特に制限はなく、それ自体既知のものを使用することができる。エポキシ樹脂として、例えば、ビスフェノールにエポクロルヒドリンを付加させて得られるビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを付加させて得られるノボラック型エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。該エポキシ樹脂は、必要に応じて水分散化して使用することができる。
【0158】
ポリウレタン樹脂としては、塗料に一般的に用いられているものなら限定されないが、イソシアネート基とポリオールを反応させて鎖延長されたポリウレタン樹脂が好ましい。該ポリウレタン樹脂は、ポリオールの一部にカルボキシル基含有ポリオールを使用して得られたカルボキシル基を有するものや、末端に水酸基を有するものも含まれる。カルボキシル基を有するポリウレタン樹脂は、塩基性物質を用いて中和するものが好ましい。市販品としては、スーパーフレックスシリーズ110、150、460S(第一工業製薬社製、商品名)、ネオレッツR9649、R966(アビシア社製、商品名)などを挙げることができる。
【0159】
オキサゾリン基含有化合物としては、オキサゾリン基を側鎖に少なくとも2個有する重合体状の化合物、1分子中にオキサゾリン基を少なくとも2個有する単量体の化合物などが挙げられる。
【0160】
カルボジイミド基含有化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得ることができる。カルボジイミド基含有化合物の市販品としては、例えば、カルボジライトV−02、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−04、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02(いずれも日清紡社製、商品名)などを挙げることができる。
【0161】
ヒドラジド基含有化合物としては、−CO−NH−NHで示されるヒドラジド基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜10個有する化合物が包含される。ヒドラジド基含有化合物として、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドなどの2〜18個の炭素原子を有する飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなどのモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジンまたはヒドラジン水和物と反応させることにより得られるポリヒドラジドなどが挙げられる。
【0162】
セミカルバジド基含有化合物としては、−NH−CO−NH−NHで示されるセミカルバジド基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは2〜10個有する化合物が包含される。セミカルバジド基含有化合物として、例えば、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートなどのジイソシアネート又はそれから誘導されるポリイソシアネート化合物にN,N−ジメチルヒドラジンなどのN,N−置換ヒドラジンや上記例示のヒドラジンを反応させて得られる多官能セミカルバジドなどが挙げられる。
【0163】
本発明の塗料組成物は、必要に応じて、酸化防止剤例えばヒンダードフェノール等、紫外線吸収剤例えばベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等、顔料例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インジゴ、キナクリドン、パールマイカ等、金属粉顔料例えばアルミ等、レオロジーコントロール剤例えばヒドロキシエチルセルロース、尿素化合物、マイクロゲル等、硬化促進剤例えば、錫化合物、亜鉛化合物、アミン化合物等を含んでもよい。
【0164】
この様に調製された塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装などにより、鋼板、表面処理鋼板などの金属及びプラスチック、無機材料などの素材に、プライマーまたは中塗り、上塗りとして好適に使用される。
【0165】
又、この塗料組成物は、更に防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装、プラスチック塗装などに、美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、密着性などを付与するために好適に用いられる。また、当該塗料組成物は、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤などのウレタン原料としても有用である。
【0166】
本発明の塗料組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装などにより塗装後、焼付け工程を経て、塗膜を形成する。この塗料組成物は、焼付け工程を経て、架橋塗膜が形成されていることが好ましい。塗料組成物の硬化後の架橋塗膜は、ブロック化反応前のポリイソアネート由来のウレタン結合だけでなく、ブロックイソシアネート基由来のアミド結合、エステル結合等の極性基を有することが特徴である。そのため、本発明の塗料組成物から形成された架橋塗膜は、一般的なウレタン架橋塗膜の特徴である耐薬品性、耐熱性、耐水性等に加え、積層塗装あるいはリコートを行う場合に、層間での水素結合等が可能となり、層間の密着性に優れる点が挙げられる。焼付け工程後、架橋構造が完全に形成されていない塗膜においても、上記の極性基を有するため、積層塗装あるいはリコート時に、密着性に優れる点は架橋塗膜と同様に優れている。
【0167】
また、自動車の新車ラインの塗装のように、数層の塗液をウェットオンウェットで積層する場合、本発明の塗料組成物中あるいは硬化後の架橋塗膜中に有機アミン化合物が存在するため、下層あるいは上層の架橋反応の触媒として働く可能性もある。
【実施例】
【0168】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。まず、各種物性の測定・評価方法について説明する。なお、以下の「部」及び「%」は、特に断らない限り、質量基準の数値を示すものとする。
【0169】
<測定方法>
(数平均分子量の測定)
ポリイソシアネートの数平均分子量は、下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPCという)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)HLC−8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)TSKgel SuperH1000(商品名)×1本
TSKgel SuperH2000(商品名)×1本
TSKgel SuperH3000(商品名)×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0170】
また、ポリオールの数平均分子量は、下記のGPC測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置:東ソー(株)HLC−8120GPC(商品名)
カラム:東ソー(株)TSKgel SuperHM−H(商品名)×2本
キャリアー:N,N−ジメチルホルムアミド
検出方法:示差屈折計
【0171】
(粘度の測定)
E型粘度計(トキメック社製VISCONIC ED型(商品名))を用いて、25℃で測定した。
【0172】
(有効NCO基質量%の算出)
ここでの有効NCO基質量%とは、ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物中に存在する架橋反応に関与しうるブロックイソシアネート基量を定量化するものであって、式(I)におけるA及びB由来のイソシアネート基の質量%として表し、以下の式により算出される。
{(ブロックポリイソシアネート組成物の固形分(質量%))×(反応に使用したポリイソシアネート質量×前駆体のポリイソシアネートのうちA及びBの部分構造の源となるイソシアネート基含有量%)}/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物の樹脂質量)
なお、溶剤等で希釈されている場合は、希釈された状態での値を記載する。
【0173】
(ブロックポリイソシアネートのx、y、zの比)
・zの組成比
活性水素含有親水性化合物の反応前後で、赤外スベクトル測定により、イソシアネート基の残存モル%を測定することにより算出した。
・x、yの組成比
製造方法1における第1工程反応後のイソシアネート基残存モル%をpとし、第2工程反応後の有機アミン化合物の反応モル%をqとし、第2工程における有機アミン化合物のイソシアネート基に対する添加モル%をrとする。
p≠0の場合、有機アミン化合物は、残存するイソシアネート基と優先して反応するため、有機アミン化合物の反応分からその量も考慮する必要がある。そのため、x={((q×r)/100)−p}、y=(100−(x+z))として算出した。マロン酸ジエステル反応後のイソシアネート基残存モル%は反応液の赤外スペクトル測定より定量し、有機アミン化合物の反応率は、第2工程終了後に減少した有機アミン化合物の量をガスクロマトグラフ測定で定量することによって算出した。
装置:島津製作所製GC−14A(商品名)
カラム:島津ジーエルシー製DB−1(商品名)
【0174】
なお、式(VII)に示される置換基を有するブロックポリイソシアネートは、第2工程の有機アミン2モル等量がマロン酸ジエステル部分1モル当量と反応することで生成しうる。しかし、モデル化合物での実験結果(イソシアネート成分として、n−ヘキシルイソシアネートを使用)から第2工程で有機アミンとして、2級アミンを使用した場合、おそらく立体障害から、ブロックポリイソシアネート全体の1質量%以下しか生成しないことがわかった。そこで、x/y比の算出には、式(VII)の置換基を有するブロックポリイソシアネートの生成は無視した。
また、第1工程で残存するマロン酸ジエステルと第2工程で添加する有機アミン化合物が反応しうる。しかし、上記のモデル実験例のガスクロマトグラフ測定により、マロン酸モノエステルモノアミド、マロン酸ジアミドの合計量が1質量%以下であることから、有機アミンとして2級アミンを使用した場合のx/yの算出には、この反応による有機アミンの減少は無視した。
【0175】
(ブロックポリイソシアネートの構造特定:NMR測定)
以下の装置を用いたH−NMR測定から、ブロックポリイソシアネートの構造特定を実施した。ケミカルシフト基準:テトラメチルシランを0ppmとした。
第1工程生成物であるイソシアネート基とマロン酸ジエステルとの反応物のケト体のメチンプロトンは、4.3ppm付近に、そのエノール体のプロトンは16.5ppm付近に観測された。また、第2工程後の生成物である式(II)のAのケト体のメチンプロトンは、4.5ppm付近に、そのエノール体のプロトンが19.2ppm付近に観測された。これらのピークの積分値から、第2工程の反応比、ケト体とエノール体の存在比を確認した。
装置:日本電子製ECS−400(商品名)
溶剤:重クロロホルム
積算回数:128回
試料濃度:5質量%
ケミカルシフト基準:テトラメチルシランを0ppmとした。
【0176】
(第3工程終了後の残存成分の定量)
第3工程終了後の成分を、ガスクロマトグラフ測定で定量することによって算出した。
装置:島津製作所製GC−14A(商品名)
カラム:島津ジーエルシー製DB−1(商品名)
【0177】
(初期ゲル分率)
作成した塗料溶液を乾燥後膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装し、90℃で30分間焼付けし、硬化塗膜を得た。その硬化塗膜を焼付け後、20℃で1時間放置し、アセトン中に20℃、24時間浸漬後、未溶解部質量の浸漬前質量に対する値を計算した。ゲル分率が85%以上の場合を◎、80%以上85%未満の場合を○、70%以上80%未満の場合を○△、60%以上70%未満を△、50%以上60%未満の場合を×、50%未満の場合を××とした。
【0178】
(貯蔵後ゲル分率保持率)
作成した塗料溶液を40℃、10日間貯蔵し、その後、乾燥後膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装し、90℃で30分間焼付けし、硬化塗膜を得た。その硬化塗膜を焼付け後、20℃で1時間放置し、アセトン中に20℃、24時間浸漬後、未溶解部質量の浸漬前質量に対する値(貯蔵後ゲル分率)を計算した。貯蔵後ゲル分率が、貯蔵後ゲル分率/初期ゲル分率=0.90以上の場合を◎、0.85以上0.90未満の場合を○、0.80以上0.85未満の場合を△、0.75以上0.80未満の場合を×、0.75未満の場合を××とした。
【0179】
(塗液の外観)
各成分を添加した塗液を2時間室温で放置し、放置後の状態を肉眼で観察した。乳化、分散あるいは溶解状態の場合を○、一部、分散の状態が変化し、塗液の白化が進行したものを△、分離や沈降等の異常があった場合は×とした。
【0180】
(塗液配合時のpH設定)
塗液(水系塗料組成物)の配合時に、ジメチルエタノールアミンで塗液のpHを8.5に調整した。ジメチルエタノールアミン添加前に塗液のpHが8.5以上のものは、ジメチルエタノールアミンを添加せずにそのまま物性測定・評価を実施した。
【0181】
(貯蔵前後の塗液pH変化)
初期塗液調製時の塗液pHを8.5に調整した。40℃、10日間貯蔵後の塗液pHの初期との差が0.2以内の場合を◎◎、0.2を超えて0.4以内の場合を◎、0.4を超えて0.6以内の場合を○、0.6を超えて0.9以内の場合を△、0.9を超えて1.2以内の場合を×、1.2を超える場合を××とした。
【0182】
(貯蔵中ガス発生試験)
ブロックポリイソシアネート組成物を有効NCO基として30mmol分取り、そこに、全体の溶液の質量が200gとなるように水を添加し、試験溶液を得た。その溶液を内量300ccの三角フラスコに移し、そこに、シリコンゴム詮で固定したメスピペットの先を液面に浸漬させた状態で固定し、40℃のウォーターバスに入れて、メスピペットの液面の高さにより、ガス発生量を測定した。40℃、10日間貯蔵し、その期間に発生したガス(炭酸ガス)の量が4cc未満の場合を◎◎、4cc以上8cc未満の場合を◎、8cc以上16cc未満の場合を○、16cc以上24cc未満の場合を△、24cc以上32cc未満の場合を×、32cc以上の場合を××とした。
【0183】
(製造例1)(HDI系イソシアヌレート型ポリイソシアネートの製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4つ口フラスコの内部を窒素置換し、HDI:1000gを仕込み、60℃で攪拌下、触媒としてトリメチルベンジルアンモニウム・ハイドロオキサイド0.1gを加えた。4時間後、反応液の転化率が38%になった時点でリン酸0.2gを添加して反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーは薄膜蒸留により除去した。
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は2,700mPa・s、イソシアネート基含有量は22.2質量%、数平均分子量は650、イソシアネート基平均数は3.4であった。その後、NMR測定により、イソシアヌレート結合の存在を確認した。
【0184】
(製造例2)(HDI系ウレタン結合、アロファネート結合含有イソシアヌレート型ポリイソシアネートの製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000質量部、3価アルコールであるトリメチロールプロパン(分子量134)22質量部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化を行った。その後反応液温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒トリメチルベンジルアンモニウム・ハイドロオキサイドを加え、転化率が48%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去した。
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は25,000mPa・s、イソシアネート基含有量は19.9質量%、数平均分子量は1080、イソシアネート基平均数は5.1であった。その後、NMR測定により、ウレタン結合、アロファネート結合、イソシアヌレート結合の存在を確認した。
【0185】
(実施例1)(ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例1で得られたポリイソシアネート100質量部(この場合のポリイソシアネートのイソシアネート基モル数を100とする)、数平均分子量400のモノメトキシポリエチレングリコール(日本油脂株式会社の商品名「ユニオックスM400」)42.3質量部(ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の20モル%に相当)、ジエチレングリコールジメチルエーテル131.3質量部を仕込み、80℃で6時間保持した。その後反応液温度を60℃に冷却し、マロン酸ジエチル72.0質量部(ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の85モル%に相当)、ナトリウムメチラートの28%メタノール溶液0.88質量部を添加し、4時間保持した後、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86質量部を添加した。その後、ジイソプロピルアミン45.5質量部(ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基の85モル%に相当)を添加し、反応液温度を70℃に昇温し、5時間保持した。この反応液をガスクロマトグラフで分析し、ジイソプロピルアミンの反応率が70%であることを確認した。次いで、得られた反応液を温度70℃、減圧度1.33×10−1KPaで薄膜蒸留を行うことにより、残存成分の除去精製を行った。得られた反応液をガスクロマトグラフィーで分析することにより、残存する有機アミン化合物、アルコール化合物、並びに、マロン酸ジエステル、及びマロン酸モノエステルモノアミドを定量し、各成分がブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し、1.0質量%以下であることを確認した。その後、ジエチレングリコールジメチルエーテルを添加し、固形分60質量%のブロックポリイソシアネート組成物を得た。
得られたブロックポリイソシアネート組成物の物性とブロックポリイソシアネートの式(I)における構造を表1に示す。
【0186】
(実施例2−4)(ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
表1に示す成分及び割合を用いた以外は実施例1と同様に行った。得られたブロックポリイソシアネート組成物の物性と、ブロックポリイソシアネートの式(I)における構造を表1に示す。
【0187】
(比較例1)(ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
第1、第2工程の反応終了後、第3工程における除去精製工程以降の操作を実施しなかった以外は、実施例1と同様に行った。得られたブロックポリイソシアネート組成物の物性と、ブロックポリイソシアネートの式(I)における構造を表1に示す。
【0188】
(比較例2)(ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
第1、第2工程の反応時の溶剤、第3工程終了後に追加する溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル溶剤)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。得られたブロックポリイソシアネート組成物の物性と、ブロックポリイソシアネートの式(I)における構造を表1に示す。
【0189】
(比較例3)(ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
第1、第2工程の反応終了後、第3工程における除去精製工程を温度70℃、減圧度13.33kPaで実施した以外は、実施例1と同様に行った。得られたブロックポリイソシアネート組成物の物性とブロックポリイソシアネートの式(I)における構造を表1に示す。
【0190】
(比較例4)(ブロックポリイソシアネート組成物の製造)
第2工程の反応を実施しなかった以外は、実施例2と同様に行った。得られたブロックポリイソシアネート組成物の物性とブロックポリイソシアネートの式(I)における構造を表1に示す。
【0191】
【表1−1】

【0192】
【表1−2】

【0193】
【表1−3】

【0194】
表1中における*部の注解は、以下のとおりである。
*1 (各化合物のモル数)/(ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数)のモル%
*2 2−エチルヘキシルアシッドホスフェート(城北化学工業の商品名)
*3 (消失したアミンのモル数)/(反応に添加したアミンのモル数)をGC分析から算出した値
*4 表1記載の配合物としての有効NCO基質量%(計算値)
*5 第3工程(除去精製)実施後の各成分のブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対する質量%
*6 < >内に記載する化合物の活性水素を除く残基
*7 DMDG:ジエチレングリコールジメチルエーテル
*8 ユニオックスM400(数平均分子量400のモノメトキシポリエチレングリコール:日本油脂株式会社の商品名(表中では「M400]))
*9 DEM:マロン酸ジエチル(R1:エチル基、R2:エチル基)
*10 DIPA:ジイソプロピルアミン(R3:イソプロピル基、R4:イソプロピル基)
*11 DMDP:ジプロピレングリコールジメチルエーテル
*12 ユニオックスM550(数平均分子量550のモノメトキシポリエチレングリコール:日本油脂株式会社の商品名(表中では「M550]))
*13 DNBA:ジn−ブチルアミン(R3:n−ブチル基、R4:n−ブチル基)
*14 DNBAと2,6−ジメチルピペリジンとの2種類
*15 DNBAと2,6−ジメチルピペリジンとの合計量
*16 鎖状アミン化合物であるDNBAと窒素原子を含む環状アミン化合物である2,6−ジメチルピペリジン由来のR3及びR4の混合
*17 VESTANAT T1890−100(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート:エポニックデグサ社の商品名(表中では「T1890−100」))
*18 PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0195】
(実施例5)(ブロックポリイソシアネート組成物の評価)
主剤にアクリルエマルジョン(樹脂あたりの水酸基価40mgKOH/g、樹脂あたりの酸価13mgKOH/樹脂g、Tg20℃、数平均分子量100,000、樹脂分濃度42質量%、ジメチルエタノールアミンでpH8.5に調整済み)100質量部と、実施例1で得られたブロックポリイソシアネート組成物14.0質量部(主剤の水酸基モル当量Gとブロックポリイソシアネート組成物の有効NCO基のモル当量Hの比がH/G=0.5となるように配合)と、水30.0質量部とを配合した(塗料固形分35質量%になるように調整)。さらに、この塗液のpHが8.5となるようにジメチルエタノールアミンを添加しながら、最終調整を行った。作成した塗料溶液を室温で2時間放置して塗液の外観を観察した後、乾燥後膜厚40μmになるようにアプリケーター塗装し、90℃で30分間焼付けし、初期ゲル分率を測定した。結果を表2に示した。
【0196】
この塗料溶液を作成した後、40℃で10日間貯蔵し、貯蔵後、上記と同様の方法で塗装し、貯蔵後のゲル分率を測定した。貯蔵後のゲル分率保持率の結果を表2に示した。また、40℃で10日間貯蔵後の塗料溶液のpHを測定した。さらに、実施例1で得られたブロックポリイソシアネート組成物28.0g(有効NCO基として30mmolに相当)と水172.0g(全体質量を200.0gになるように添加)を配合し、ブロックポリイソシアネート組成物の水溶液を得た。この水溶液の40℃、10日間貯蔵中に発生したガス(炭酸ガス)の量を測定した。結果を表2に示した。
【0197】
(実施例6−8、比較例5−8)(ブロックポリイソシアネート組成物の評価)
表2に示す成分及び割合を用いた以外は実施例5と同様に行った。得られたブロックポリイソシアネート組成物の評価結果を表2に示す。
【0198】
【表2−1】

【0199】
【表2−2】

【0200】
表2中における*部の注解は、以下のとおりである。
*19 アクリルエマルジョン(樹脂分濃度42質量%、樹脂あたりの水酸基価40mgKOH/g、Tg20℃、数平均分子量100,000)
*20 初期のpHが8.5を超えていたため、結果を( )書きで示した。
【0201】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、上記実施例及び比較例の結果から、100℃以下の焼付け温度で架橋可能であり、かつ、水性塗料組成物としての貯蔵安定性(pH変化、ガス発生、貯蔵後硬化性等)に優れていることが分った。
【産業上の利用可能性】
【0202】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、低温硬化性及び貯蔵後硬化性に優れた塗料組成物として、好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)により示される少なくとも1種のブロックポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物であって、少なくとも分子中に1個のエステル基を有する分子量400以下のエステル化合物の含有量が、当該組成物の樹脂固形分に対し1.0質量%以下である、ブロックポリイソシアネート組成物。
【化1】


(式中、Rは、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及び芳香族ポリイソシアネートから選ばれる1種又は2種以上から形成されたポリイソシアネートのイソシアネート基を除く残基であり、
Aは、式(II)に示される1種又は2種以上のケト体あるいはそのエノール異性体群であり、
Bは、式(III)に示される1種又は2種以上の構造単位であり、
Cは、式(IV)に示される1種又は2種以上の構造単位であり、
x+y+z=2.0〜20であり、かつ、x、zはいずれも0ではない。)
【化2】


(式中、Rは、炭素数1〜8個のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を示し、R、Rは、同じでも異なっていてもよく、炭素数1〜30個の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、及びチオール基から選ばれる少なくとも一種を含んでもよい炭化水素基であり、任意にR、Rは一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、またはRとRに挟まれた窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含んでもよい3員、4員、5員または6員環を形成することができる。)
【化3】


(式中、Rは、活性水素含有化合物の活性水素を除く残基である。)
【化4】


(式中、Rは、活性水素含有親水性化合物の活性水素を除く残基である。)
【請求項2】
少なくとも分子中に1個の水酸基を有する分子量400以下のアルコール化合物の含有量、及び、少なくとも分子中に1個の1級アミノ基あるいは2級アミノ基を有する分子量400以下の有機アミン化合物の含有量のいずれもが、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂固形分に対し1.0質量%以下であることを特徴とする、請求項1記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物、及びポリオールを含む塗料組成物。

【公開番号】特開2013−6935(P2013−6935A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139608(P2011−139608)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】