説明

ブロックポリイソシアネート組成物

【課題】水分安定性が改良されたブロックポリイソシアネート組成物、およびそれを用いた一液型コーティング組成物の提供。
【解決手段】(A)脂肪族および/または脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを活性メチレン系化合物を含むブロック剤でブロックしたブロックポリイソシアネートおよび(B)下記一般式(1)で表わされるエステル化合物を含むことを特徴とする、ブロックポリイソシアネート組成物。
−C−(OR ・・・(1)
(式中、Rは水素、アルキル基、置換アルキル基を表し、Rはアルキル基または置換アルキル基を表す)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、およびそれを用いた一液型コーティング組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物の水分安定性を改良したブロックポリイソシアネート組成物、およびそれを用いた一液型コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂塗料に用いられる低温焼付け型のブロックポリイソシアネートにおいて、ブロック剤としてアセト酢酸エステル、マロン酸ジエステル等の活性メチレン系化合物を用いたブロックポリイソシアネートの研究が数多くなされている。近年、例えば、特許文献1には、ヒドロキシ化合物で変性したイソシアヌレート型ブロックポリイソシアネートにおいて、当該ブロック剤が30〜90当量%のマロン酸ジエステルと10〜70当量%のアセト酢酸エステルであるブロックポリイソシアネートが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、少なくとも一部がマロン酸ジエステル化合物である活性メチレン系化合物とポリイソシアネートとの反応により得られ、そのpH値が8.5以下である活性メチレン系ブロックポリイソシアネート組成物が記載されている。これらの活性メチレン系ブロックポリイソシアネート、およびその組成物は、卓越した低温硬化性を示し、ますますその利用価値は高まっている。しかしながら、これらの活性メチレン系ブロックポリイソシアネート、およびその組成物は、使用する原材料に含有する水分、または、製造時や、取り扱い時の混入水分、湿気などにより加水分解等を受け、ガス発生等による貯蔵容器の膨れや、一液型コーティング組成物での硬化性の低下を生じる場合があった。そのため、活性メチレン系ブロックポリイソシアネート、およびその組成物の水分安定性の改良が強く求められていた。
【特許文献1】特開平8−225630号公報
【特許文献2】特開平9−278865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、活性メチレン系ブロックポリイソシアネート組成物の水分安定性を改良した標記組成物、およびそれを用いた一液型コーティング組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、活性メチレン系化合物を含むブロック剤でブロックしたブロックポリイソシアネートに、下記一般式(1)で表わされるエステル化合物を含むブロックポリイソシアネート組成物にすることによって、前記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0007】
1)(A)脂肪族および/または脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを活性メチレン系化合物を含むブロック剤でブロックしたブロックポリイソシアネートおよび(B)下記一般式(1)で表わされるエステル化合物を含むことを特徴とする、ブロックポリイソシアネート組成物。
また、第2の発明は、次の通り。
【0008】
2)前記活性メチレン系化合物が、マロン酸ジエステルである点に特徴を有する。また、第3の発明は、次の通り。
3)前記ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートを含む混合物である点に特徴を有する。また、第4の発明は、次の通り。
【0009】
4)上記1)記載のブロックポリイソシアネート組成物と多価ヒドロキシ化合物とを主成分とする、一液型コーティング組成物。
【0010】
−C−(OR ・・・(1)
(式中、Rは水素、アルキル基または置換アルキル基を表わし、Rはアルキル基または置換アルキル基を表わす。アルキル基または置換アルキル基は、同一でも異なっていてもよい。)
【発明の効果】
【0011】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物は、ブロックポリイソシアネート組成物の水分安定性を大幅に向上させる効果を有する。また、これを用いた一液型コーティング組成物においても、水分安定性を著しく向上させ、貯蔵容器の膨れや硬化性の低下等の問題を生じる恐れがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明に使用するブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートのイソシアネート基を、例えば、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル等の活性メチレン系化合物を用いて公知の方法で反応させることによって得られる。
1)ポリイソシアネート成分
(1)脂肪族及び/または脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートの使用が好ましい。
脂肪族ジイソシアネートとしては炭素数4〜30のものが良く、脂環族ジイソシアネートとしては炭素数8〜30のものが好ましい。
例えば、1,4ーテトラメチレンジイソシアネート、1,5ーペンタメチレンジイソシアネート,1,6ーヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略す),2,2,4(または、2,4,4)ートリメチルー1、6ーヘキサメチレンジイソシアネート,リジンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す),1,3ービス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン,4,4ージシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。中でも耐候性、工業的入手の容易さからHDI、IPDIが好ましく、HDIがより好ましい。また、これらは、単独で使用しても併用しても構わない。
【0013】
(2)これらジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートとしては、例えば、イソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、ウレタン型ポリイソシアネート、アロファネート型ポリイソシアネート等およびこれらを含む混合物がある。好ましくは、耐候性、耐熱性に優れたイソシアヌレート型ポリイソシアネートを含むものである。
例えば、イソシアヌレート型ポリイソシアネートの場合は、特開昭57―47321号公報、特開昭61―111371号公報、特開平6―312969号公報、特開平3―7252号公報、特開平8―225630号公報、特開平9―278865号公報等に記載のように、イソシアヌレート化反応前、反応中及び/または反応後にヒドロキシル化合物を用いて変性、即ちウレタン化することにより合成したものも用いることができる。ヒドロキシル化合物の具体例、イソシアヌレート化反応の触媒、反応条件等としては、例えば、特開平8―225630号公報、特開平9―278865号公報に記載ものが挙げられる。
(3)上記のヒドロキシル化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、フェノール等のモノヒドロキシル化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3―ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ジメチロールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコール、2,2,4―トリメチルー1,3−ペンタンジオール等のジヒドロキシル化合物、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価ヒドロキシ化合物、アクリルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、脂肪族炭化水素ポリオール類、エポキシポリオール類、含フッ素ポリオール類等がある。
【0014】
(4)上記のイソシアヌレート化反応に用いられる触媒としては、一般に塩基性を有するものが好ましい。例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド;その酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩;トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド;その酢酸塩、オクチル酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩;酢酸、カプロン酸、オクチル酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩;ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物等が挙げられる。触媒濃度は、通常イソシアネート化合物に対して、10ppm〜1.0重量%の範囲から選択される。
【0015】
(5)反応は、溶剤の有無に関わらず行うことが出来る。溶剤を用いる場合、イソシアネート基に不活性な溶剤を用いる必要がある。反応温度は、通常、20〜160℃、好ましくは、40〜130℃である。反応が目的の収率に達したならば、例えば、スルホン酸、燐酸等により触媒を失活させ、反応を停止する。未反応物と溶剤を除去し、イソシアヌレート型ポリイソシアネートを得る。
2)ブロックポリイソシアネートの製造
(1)ブロック剤としての活性メチレン系化合物
本発明に使用する活性メチレン系化合物としては、例えば、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル、マロン酸ジニトリル、アセチルアセトン、メチレンジスルホン、ジベンゾイルメタン、ジピバリルメタン、アセトンジカルボン酸ジエステル等が挙げられ、マロン酸ジエステル、アセト酢酸エステル等が好ましく用いられる。
(2)ブロック剤としてのマロン酸ジエステル
本発明に使用するマロン酸ジエステルとしては、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジn―プロピル、マロン酸ジn―ブチル、マロン酸エチルn―ブチル、マロン酸メチルn―ブチル、マロン酸エチルt―ブチル、マロン酸メチルt―ブチル、メチルマロン酸ジエチル、マロン酸ジベンジル、マロン酸ジフェニル、マロン酸ベンジルメチル、マロン酸エチルフェニル、マロン酸t―ブチルフェニル、イソプロピリデンマロネート等があり、これらの一種または二種以上を用いることができる。
【0016】
マロン酸ジエステルは、ポリイソシアネート基のイソシアネート基に対して好ましくは50当量%以上、より好ましくは60当量%以上、更に好ましくは80当量以上が用いられる。
マロン酸ジエステルの量が50当量%未満では、活性メチレンブロックポリイソシアネートが持つ好ましい低温硬化性が発現されない場合がある。
【0017】
(3)他のブロック剤
また、マロン酸ジエステル以外のブロック剤には、アセト酢酸エステル等が好ましく用いられる。
アセト酢酸エステルとしては、例えば、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n―プロピル、アセト酢酸t―ブチル、アセト酢酸n―ブチル、アセト酢酸フェニル等が挙げられ、これらの一種または二種以上を用いることができる。
アセト酢酸エステルは、ポリイソシアネート基のイソシアネート基に対して50当量%以下が好ましく用いられる。より好ましくは40当量%以下、更に好ましくは20当量%以下である。アセト酢酸エステルの量が50当量%を超えると、塗膜の加熱黄変性が悪くなり易い。
マロン酸ジエステルとアセト酢酸エステルとの二種のブロック剤以外のブロック剤、例えばアルコール系、フェノール系、オキシム系、アミン系、酸アミド系、イミダゾール系、ピリジン系、メルカプタン系等のブロック剤については、ポリイソシアネートのイソシアネート基に対して、低温硬化性等の物性を損なわない範囲で使用しても良い。
【0018】
(4)ブロック化条件
二種のブロック剤によるブロック化反応は、同時に行っても良いし、一方のブロック剤で先にブロックしてから残った遊離イソシアネート基を他方のブロック剤でブロックしても構わない。
【0019】
ブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いることが好ましい。
【0020】
ブロック化反応に際して、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、ナトリウムフェノラート、カリウムメチラート等の金属アルコラート、及び三級アミン等を触媒として用いても良い。
ブロック化反応は、一般に、―20〜150℃で行うことができるが、好ましくは0〜100℃である。150℃以上では、副反応を起こす可能性があり、他方あまり低温になると反応速度が小さくなり不利である。実質的に活性なイソシアネート基がなくなるようにブロック化されることが好ましい。
【0021】
(5)ブロック化後の中和処理
また、上記のブロック化反応に用いた触媒の少なくとも一部を下記の酸性化合物等で中和しても良い。中和により、ブロックポリイソシアネートの熱安定性が良くなり好ましい。
【0022】
酸性化合物としては、例えば、塩酸、亜燐酸、燐酸等の無機酸、メタンスルホン酸、p―トルエンスルホン酸等のスルホン酸、燐酸エチル、燐酸ジエチル、燐酸イソプロピル、燐酸ジイソプロピル、燐酸ブチル、燐酸ジブチル、燐酸2―エチルヘキシル、燐酸ジ(2―エチルヘキシル)等の燐酸エステルが挙げられる。
なお、酸性化合物は、触媒に対して、0.3〜3当量の範囲が好ましく、より好ましくは、0.5〜2当量、更に好ましくは、0.7〜1.5当量である。
【0023】
(6)本発明のブロックポリイソシアネート組成物には、ブロックポリイソシアネート組成物自体の結晶性や、ブロックポリイソシアネート組成物を用いた一液型コーティング組成物における貯蔵安定性を改良するために、モノアルコール類を含んでも良い。例えば、メタノール、エタノール、n―プロパノール、イソプロパノール、n―ブタノール、イソブタノール、2―ブタノール、t―ブタノール、n―アミルアルコール、イソアミルアルコール、2―メチルー1―ブタノール、n―ヘキサノール、2―メチルー1―ペンタノール、2―エチルー1―ブタノール、n―ヘプタノール、n―オクタノール、2―エチルー1―ヘキサノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコール等が挙げられ、一種または二種以上選択して用いることができる。
モノアルコール類の添加量は、任意に選択することができるが、ブロックされたイソシアネート基に対して10〜500当量%が好ましく、より好ましくは20〜400当量%、更に好ましくは30〜300当量%である。
【0024】
(7)本発明のブロックポリイソシアネート組成物には、ブロックポリイソシアネート組成物、およびブロックポリイソシアネート組成物を用いた一液型コーティング組成物における経時による着色を抑制するために、亜燐酸エステル化合物を含んでも良い。このような亜燐酸エステル化合物の具体的な例としては、例えば、特開2001−278945号公報に記載ものが挙げられ、一種または二種以上選択して用いることができる。
【0025】
亜燐酸エステル化合物の添加量は、任意に選択することができるが、好ましい範囲としては、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂分に対して、0.01〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.1〜2質量%である。0.01質量%未満では、着色抑制効果の持続性が不十分となり、10質量%を超えると硬化性の低下を招く場合がある。
【0026】
3)前記一般式(1)で表わされるエステル化合物
本発明のブロックポリイソシアネート組成物には、前記一般式(1)で表わされるエステル化合物を含むことが必要である。当該エステル化合物を含むことによって、ブロックポリイソシアネート組成物、およびこれを用いた一液型コーティング組成物の水分安定性を著しく向上させることができる。また、前記一般式中、R1、R2が表すアルキル基としては、炭素数1〜4低級アルキル基が好ましく、また、その置換基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基などが好ましい。このようなエステル化合物の例としては、オルトギ酸エステル類、オルト酢酸エステル類、オルトプロピオン酸エステル類等が挙げられる。
オルトギ酸エステル類としては、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル等が挙げられる。オルト酢酸エステル類としては、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル等が挙げられる。また、オルトプロピオン酸エステル類としては、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル等が挙げられる。上記のエステル化合物は、一種または二種以上併用することもできる。当該エステル化合物の添加量は、ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂分、またはブロックポリイソシアネート組成物を用いた一液型コーティング組成物の樹脂分に対して、0.1〜15質量%、より好ましくは0.3〜10質量%、更に好ましくは0.5〜8質量%である。0.1質量%未満では、水分安定性の持続効果が十分でなく、15質量%を超えると硬化性の低下を招く場合がある。
【0027】
4)一液型コーティング組成物
(1)本発明の一液型コーティング組成物の主成分として、当該ブロックポリイソシアネート組成物と共に使用する多価ヒドロキシ化合物とは、一分子中に少なくとも二個の水酸基を有する化合物である。
例えば、脂肪族炭化水素ポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、アクリルポリオール類、含フッ素ポリオール類、エポキシポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、及び、ウレタンポリオール類等が挙げられる。
脂肪族炭化水素ポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジェンやその水素添加物等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、例えば、グリセリンやプロピレングリコール等の多価アルコールの単独または混合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの単独または混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、ポリテトラメチレングルコール類;更に、アルキレンオキサイドにエチレンジアミン、エタノールアミン類等の多官能化合物を反応させて得られるポリエーテルポリオール類、及び、これらのポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が挙げられる。
ポリエステルポリオール類としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のカルボン酸の群から選ばれた二塩基酸の単独または混合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の群から選ばれた多価アルコールの単独または混合物との縮合反応によって得られるポリエステルポリオール樹脂類:及び、ε―カプロラクトンを多価アルコールにより開環重合して得られるようなポリカプロラクトン:更には、ひまし油に代表される、水酸基を有する脂肪族と多価アルコールとのエステル類等が挙げられる。
アクリルポリオール類としては、一分子中に一個以上の活性水素を持つ重合性モノマーと、これに共重合可能なモノマーを共重合させることによって得られる。
【0028】
例えば、(イ)アクリル酸―2ヒドロキシエチル、アクリル酸―2―ヒドロキシプロピル、アクリル酸―2―ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル類:メタアクリル酸―2ヒドロキシエチル、メタアクリル酸―2―ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸―2―ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタアクリル酸エステル類:または、グリセリンのアクリル酸モノエステル或いはメタアクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステル或いはメタアクリル酸モノエステル等の多価活性水素を有する(メタ)アクリル酸エステル類等の群から選ばれた単独または混合物と、
(ロ)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸―n―ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸―2―エチルヘキシル等のアクリル酸エステル類:メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸―n―ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸―n―ヘキシル等のメタアクリル酸エステル類の群から選ばれた単独または混合物とを、
(ハ)アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸,アクリルアミド,N−メチロールアクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド:及びスチレン、ビニルトルエン,酢酸ビニル、アクリロニトリル等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独または混合物の存在下,或いは非存在下において重合させて得られるアクリルポリオール樹脂類が挙げられる。
含フッ素ポリオール類としては、フルオロオレフィンまたはフッ素含有ビニル単量体と水酸基含有ビニル単量体を必須成分として,これらと共重合可能なビニル単量体と共重合させて得られるフッ素ポリオール類が挙げられる。
エポキシポリオール類としては、例えば、ノボラック型,β―メチルエピクロルヒドリン型、環状オキシラン型,グリシジルエーテル型,グリシジルエステル型,グリコールエーテル型、脂肪族不飽和化合物のエポキシ化型、エポキシ化脂肪族エステル型、多価カルボン酸エステル型、アミノグリシジル型、レゾルシン型等のエポキシ樹脂類が挙げられる。
ポリカーボネートポリオール類としては、ビスフェノールA等のような芳香族多価アルコールや1,6―ヘキサンジオール等の脂肪族・脂環族多価アルコール類を原料として常法により得られるもの等が挙げられる。
ウレタンポリオール類としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートと活性水素を持つ化合物との重付加反応の繰り返しで生成するポリマーであり、ポリマー中にウレタン結合を持ち、ポリマー側鎖や末端にOH基を持つもの等を挙げることができる。
【0029】
(2)上記の多価ヒドロキシ化合物は、一種または二種以上適宜混合して用いることができる。
これらの中で好ましいものは、上記のポリエステルポリオール類、アクリルポリオール類、含フッ素ポリオール類である。
本発明に使用する多価ヒドロキシ化合物は、好ましくは樹脂分水酸基価が10〜300mgKOH/g、より好ましくは20〜250mgKOH/gである。
樹脂分水酸基価が10mgKOH/g未満の場合には、架橋密度が減少し、耐酸性、耐候性等が低下する場合があり、樹脂分水酸基価が300mgKOH/gを超えると、逆に架橋密度が増大し塗膜の機械的強度が低下する場合がある。
【0030】
(3)本発明の一液型コーティング組成物において、本発明のブロックポリイソシアネート組成物中のブロックされたイソシアネート基と、多価ヒドロキシ化合物の水酸基との当量比は、必要とする塗膜物性により決定されるが、0.1〜2、好ましくは0.2〜1.8の範囲から選択されるのが通常である。
また、メラミン樹脂を併用することもできる。メラミン樹脂としては、ヘキサメトキシメチロールメラミン、メチル・ブチル化メラミン、ブチル化メラミン等が例示される。
(4)その他の成分
本発明のブロックポリイソシアネート組成物及び一液型コーティング組成物においては、以下に示すような当該技術分野で常用される顔料、添加剤、溶剤等が使用できる。
【0031】
例えば、キナクリドン系、アゾ系、フタロシアニン系等の有機顔料:酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、シリカ等の無機顔料、炭素系顔料、金属箔状顔料、防錆顔料等の顔料:ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤:ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、ヒドラジド系等の酸化防止剤:錫系、亜鉛系、アミン系等のウレタン化触媒:レベリング剤、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤等の添加剤等である。
また、本発明のブロックポリイソシアネート組成物には、適当な溶剤を用いることができる。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n―ブチル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類等の群から目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は、単独で用いても良く、二種以上を用いても良い。
【実施例】
【0032】
本発明を実施例に基づいて説明する。また、評価法は下記の通りである。(水分安定性の評価)20℃にて、ブロックポリイソシアネート組成物、およびブロックポリイソシアネート組成物を用いた一液型コーティング組成物を、それぞれ100ccの金属製塗料缶に仕込み、水を添加、蓋をして混合した。混合直後、20℃にて蓋を開けたときガス発生の程度と、蓋を閉めて50℃で45日間保存した後の缶の膨張の程度、および蓋を開けたときのガス発生の程度を、目視観察で評価した。
【0033】
[製造例1]ポリイソシアネートの製造―1
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四つ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI100g、トリメチロールプロパン3.3gを仕込み、攪拌下、反応器内温度を80℃で2時間保持した。その後、反応器内温度を60℃に保持し、テトラブチルアンモニウムアセテートを添加、収率が45%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。25℃における粘度が25000mPa・s、イソシアネート(以下、NCOと略す)基含有量19.5%のヒドロキシル変性イソシアヌレート型ポリイソシアネートー1を得た。
【0034】
[製造例2]ポリイソシアネートの製造―2
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四つ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI100gを仕込み、攪拌下、反応器内温度を60℃に保持し、テトラブチルアンモニウムアセテートを添加、収率が23%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。25℃における粘度が1600mPa・s、NCO基含有量23.2%のイソシアヌレート型ポリイソシアネートー2を得た。
【0035】
[実施例1]
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四つ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例1のポリイソシアネートー1を100g、マロン酸ジエチル62g、アセト酢酸エチル13g、キシレン39gを仕込み、それに28%ナトリウムメチラート溶液0.7gを室温で添加し80℃で2時間反応した。その後、n―ブタノールを71g添加し、80℃で1.5時間反応を続けた。次ぎに、燐酸2―エチルヘキシル0.7gを添加し、更に、トリブチルホスファイトを0.17g添加した。この後、オルトプロピオン酸トリエチル(分子量176.25)1.1g(ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂分に対して0.64%)を添加、混合し、ブロックポリイソシアネート組成物(樹脂分60%、ブロックされたNCO基の含有量6.8%)を得た。
(水分安定性評価)20℃にて、前記ブロックポリイソシアネート組成物40gを、100ccの金属製塗料缶に仕込み、水0.02gを添加、蓋をして混合した。混合直後(20℃)、および50℃で45日間保存した後の結果を表1に示す。
また、前記ブロックポリイソシアネート組成物とアクリルポリオール(大日本インキ化学工業(株)製アクリディックA801、樹脂分水酸基価100mgKOH/g、樹脂分50%)を、ブロックされたNCO基とアクリルポリオールの水酸基価が当量(NCO/OH=1/1)になるように配合し、これにシンナーとして、酢酸エチル/トルエン/酢酸n−ブチル/キシレン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(重量比=30/30/20/15/5)の混合液を加え、全樹脂分50%の一液型コーティング組成物を得た。得られた一液型コーティング組成物に、水(前記ブロックポリイソシアネート組成物に対して0.05%の水分量)を添加、蓋をして混合した。混合直後(20℃)、および50℃で45日間保存した後の結果を表1に示す。
【0036】
[実施例2]
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四つ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例2のポリイソシアネートー2を100g、マロン酸ジエチル88g、アセト酢酸エチル4g、トルエン62gを仕込み、それに28%ナトリウムメチラート溶液0.8gを室温で添加し80℃で2時間反応した。その後、n―ブタノールを57g添加し、80℃で1時間反応を続けた。その後、燐酸2―エチルヘキシル0.8gを添加し、更に、トリス(2―エチルヘキシル)ホスファイトを0.94g添加した。この後、オルト酢酸トリメチル(分子量120.15)2.1g(ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂分に対して1.1%)を添加、混合し、ブロックポリイソシアネート組成物(樹脂分60%、ブロックされたNCO基の含有量7.4%)を得た。
(水分安定性評価)前記ブロックポリイソシアネート組成物に対して、水0.04gを添加した以外は、実施例1と同様にして水分安定性評価を実施した。結果を表1に示す。
また、前記ブロックポリイソシアネート組成物を用いて実施例1と同様にして得られた一液型コーティング組成物に、水(前記ブロックポリイソシアネート組成物に対して0.1%の水分量)を添加した以外は、実施例1と同様にして水分安定性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0037】
[実施例3]
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四つ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例2のポリイソシアネートー2を100g、マロン酸ジエチル88g、アセト酢酸エチル4g、酢酸n−ブチル31gを仕込み、それに28%ナトリウムメチラート溶液0.8gを室温で添加し80℃で2時間反応した。その後、イソアミルアルコールを50g添加し、80℃で0.5時間反応を続けた。次ぎに、イソブタノールを38g添加し、80℃で1時間反応を続けた。その後、燐酸2―エチルヘキシル0.8gを添加し、更に、トリス(イソトリデシル)ホスファイトを1.9g添加した。この後、オルトギ酸トリメチル(分子量106.12)11.1g(ブロックポリイソシアネート組成物の樹脂分に対して5.9%)を添加、混合し、ブロックポリイソシアネート組成物(樹脂分58%、ブロックされたNCO基の含有量7.1%)を得た。
(水分安定性評価)前記ブロックポリイソシアネート組成物に対して、水0.2gを添加した以外は、実施例1と同様にして水分安定性評価を実施した。結果を表1に示す。
また、前記ブロックポリイソシアネート組成物を用いて実施例1と同様にして得られた一液型コーティング組成物に、水(前記ブロックポリイソシアネート組成物に対して0.5%の水分量)を添加した以外は、実施例1と同様にして水分安定性評価を実施した。結果を表1に示す。
【0038】
[比較例1]
実施例2で、オルト酢酸トリメチルを添加しない以外は、実施例2と同様にしてブロックポリイソシアネート組成物を得た。
このブロックポリイソシアネート組成物、およびこれを用いて実施例1と同様にして得られた一液型コーティング組成物の水分安定性評価は、実施例2と同様に行った。結果を表2に示す。
【0039】
[比較例2]
実施例3で、オルトギ酸トリメチルを添加しない以外は、実施例3と同様にしてブロックポリイソシアネート組成物を得た。
このブロックポリイソシアネート組成物、およびこれを用いて実施例1と同様にして得られた一液型コーティング組成物の水分安定性評価は、実施例3と同様に行った。結果を表2に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のブロックポリイソシアネート組成物、およびこれを用いた一液型コーティング組成物は、水分安定性に優れ、貯蔵容器の膨れや硬化性の低下等の問題を生じる恐れがなくなる。このため塗料、インキ、接着剤、自動車用塗料、プレコートメタル用塗料、ポストコートメタル用塗料、家電用塗料、パソコンや携帯電話等の情報機器関連用塗料等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)脂肪族および/または脂環族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを活性メチレン系化合物を含むブロック剤でブロックしたブロックポリイソシアネートおよび(B)下記一般式(1)で表わされるエステル化合物を含むことを特徴とする、ブロックポリイソシアネート組成物。
−C−(OR ・・・(1)
(式中、Rは水素、アルキル基または置換アルキル基を表わし、Rはアルキル基または置換アルキル基を表わす。アルキル基または置換アルキル基は、同一でも異なっていてもよい。)
【請求項2】
活性メチレン系化合物が、マロン酸ジエステルであることを特徴とする請求項1記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートを含む混合物であることを特徴とする、請求項1記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項1記載のブロックポリイソシアネート組成物と多価ヒドロキシ化合物とを主成分とすることを特徴とする、一液型コーティング組成物。

【公開番号】特開2008−19340(P2008−19340A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−192269(P2006−192269)
【出願日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】