説明

ブロックマットの吊り上げ方法

【課題】 本発明は、ブロックマット1を吊り上げて下ろす場合に、荷重が軽くしかも滑り落ちることもなく、下ろした後も残った鉄製パレット等の大きな保管スペースを必要としないブロックマット1の吊り上げ方法を提供すること。
【解決手段】ブロックマット1の吊り上げ方法であって、複数の吊り上げ用のループ部を備えたフレキシブルなハンモックの上に複数のブロックマット1を載置し、該ハンモック2に備わった複数のループ部21に吊り上げ具に備わった複数の吊り下げ用のフック部を掛止し、その後、吊り上げるブロックマット1の吊り上げ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックマットの吊り上げ方法に関し、更に詳しくは、ハンモックを使ったブロックマットの吊り上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木業界においては、コンクリートマットが、河川護岸の根固め工、法覆い工、道路法面盛土又は切り土法尻押さえ等の施工に用いられている(特許文献1、特許文献2参照)。
これらの施工においては、現場までブロックマットを搬送する必要がある。
そのため、運搬用の大型トラックの荷台にブロックマットを吊り上げて載置する。
一般に行われているブロックマットの吊り上げ方法では、まずブロックマットよりやや大きい広さを有する矩形の鉄製パレット(載せ台)を用意する。
そしてこの重い鉄製パレットを荷台の上に吊り上げて載せる。
これにブロックマットを一枚一枚、クレーンで次々に吊り上げて載置していく。
クレーンで吊り上げる場合は、ブロックマットの両端を専用工具で把持して吊り上げる。
そして多数のブロックマット、例えば5枚を載置する。
その後、載置した最上位のブロックマットの上に更に鉄製パレットを載置する。
そしてまた5枚のブロックマットを載置し、これを繰り返すと荷台には多数枚(例えば3回の繰り返しで15枚)のブロックマットが積み上がる。
このように一定枚数積み上げた後、運搬用の大型トラックにより現場に移動される。
現場では、積み上げられたブロックマットを荷台から一枚一枚吊り上げては下ろさなければならない。
しかし現場での作業なので荷台から下ろす場合は、迅速に効率良く行わなければならない。
【0003】
現場で下ろす場合は、迅速に行うため、一枚一枚吊り上げながら下ろすのではなく、上面平面の鉄製パレットに積載した5枚のブロックマット単位ごと吊り上げて下ろす。
しかし、この方法は、1トン以上の鉄製パレットを使うため、積載荷重が非常に大きくなる欠点がある。
しかも鉄製パレットは厚さがあるので、積み上げた場合に嵩高にもなり、吊り上げるには枚数に限度がある。
また鉄製パレットは、平面なので傾くとブロックマットがずれて鉄製パレットの周辺から一部が垂れ下がったり、極端にはブロックマットが落下する欠点がある。
また、このような問題が生じないようにするには、鉄製パレットにブロックマットをワイヤー等で固定する必要があるが、その作業が面倒でありまた危険でもある。
更にまた別の意味では、施工後も広い面積の鉄製パレットが現場に残るため、載置スペースが必要である。
また、鉄製パレットは鉄製で荷重が嵩むので搬送も厄介でコストもかかる。
すなわち回収時にはクレーン車を準備して積載する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−303086号公報
【特許文献2】特開2006−241968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような技術的な背景をもとになされたものである。
すなわち本発明の目的は、ブロックマット1を吊り上げて下ろす場合に、荷重が軽くしかも滑り落ちることもなく、下ろした後も残った鉄製パレット等の大きな保管スペースを必要としないブロックマット1の吊り上げ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、吊り上げる際、鉄製パレットを使わないで、ハンモック2を使うことで、軽量化でき、空中でブロックマット1が安定することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)、ブロックマット1の吊り上げ方法であって、ハンモック2に複数のブロックマット1を載置し、該ハンモック2を吊り上げ具で吊り上げるブロックマット1の吊り上げ方法に存する。
【0008】
また、本発明は、(2)、ブロックマット1の吊り上げ方法であって、複数の吊り上げ用のループ部を備えたフレキシブルなハンモックの上に複数のブロックマット1を載置し、該ハンモック2に備わった複数のループ部21に吊り上げ具に備わった複数の吊り下げ用のフック部を掛止し、その後、吊り上げるブロックマット1の吊り上げ方法に存する。
【0009】
また、本発明は、(3)、ブロックマット1の周囲より外方の余ったハンモック2の部分を積載されたブロックマット1の周囲を包み込むような状態にする上記(1)、(2)記載のブロックマット1の吊り上げ方法に存する。
【0010】
また、本発明は、(4)、ハンモック2は繊維製ロープで格子状に形成され全体として矩形状であり、周囲にループ部21が設けられている上記(1)、(2)記載の吊り上げ方法に存する。
【0011】
また、本発明は、(5)、ハンモック2は繊維製ロープで格子状に形成され全体として矩形状であり、その対向縁辺にループ部21が設けられている上記(1)、(2)記載の吊り上げ方法に存する。
【0012】
また、本発明は、(6)、ブロックマット1の布帛シートの突出片をブロックマット1間に挟み込む上記(1),(2)記載のブロックマット1の吊り上げ方法に存する。
【0013】
また、本発明は、(7)、ハンモック2はポリエチレン繊維よりなる上記(1),(2)記載のブロックマット1の吊り上げ方法に存する。
【0014】
また、本発明は、(8)、吊り上げ具は、矩形の枠体を有し、該枠体にフックが設けられている上記(2)記載のブロックマット1の吊り上げ方法に存する。
【0015】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(8)を適宜組み合せた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0016】
1)本発明のブロックマット1の吊り上げ方法は、フレキシブルな(屈曲可能な)ハンモック2にブロックマット1を載置し、該ハンモック2を吊り上げ具で吊り上げるので、従来のような鉄製パレットを使う必要がなく荷重が軽減化される。
そのため、一回に吊り上げるブロックマットの枚数を多くできる。またハンモック2は折り畳みが可能であるため鉄製パレットのように保管場所を広く必要としない。
またハンモック2は鉄製ではないため10kg程度であり、人力で小さく梱包しトラック荷台に積載することが可能である。
【0017】
2)また、複数の吊り上げ用のループ部21を有するフレキシブルなハンモック2に複数のブロックマット1を載置し、該ハンモック2のループ部21に吊り上げ具に備わった複数の吊り下げ用のフック部31を掛止し、その後、吊り上げるので、ブロックマット1は均等に吊り上げられ、しかも吊り上げた姿勢も安定する。
また、フレキシブルなハンモック2がブロックマット1の周囲を包み込むように作用するのでブロックマット1がずれたりしない。
また、フック部がループ部に引っかけ易い。
更に、下ろす場合は、下ろす位置面が傾斜していても徐々に接地していけるため横滑りしない。
また位置面に多少の凹凸があってもハンモック2がそれに沿って馴染むため問題はない。
因みに鉄製パレットの場合は傾斜があり横滑りする。凹凸があると不安定となる。
ハンモックは折り畳みができるので現場での保管にスペースがいらない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態におけるブロックマットの吊り上げ方法を説明する概略図である。
【図2】図2は、吊り上げ対象となるブロックマットを示す平面図である。
【図3】図3は、吊り上げ対象となるブロックマットを示す側面図である。
【図4】図4は、ハンモックを説明する平面図である。
【図5】図5は、ハンモック上にブロックマットを載せる位置を示した平面図である。
【図6】図6は、この吊り上げ具を示した図である。
【図7】図7は、第2の実施の形態のハンモックを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の実施の形態〕
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明のブロックマット1の吊り上げ方法を説明する概略図であり、ブロックマット1が、ハンモック2に載せられて吊り上げられる状態を示す。
【0020】
図2は、吊り上げ対象となるブロックマット1を示す平面図であり、図3は側面図である。
なお、便宜的に、ブロックマットに取り付けられているブロックは図1より少ないもので示した。
ブロックマット1は、矩形の屈曲性のある基布シート11(編地シート、織地シート、不織布シート)の上に4角錐台のブロック12が複数個(例えば60個)取り付け固定されているものである。
このブロックマット1は、先述したように、河川や海岸の護岸用等に敷設されるものであり、例えば長さが6メートル、幅が1、6メートル等の長い矩形状(長方形状)である。
一方、ハンモック2は、ブロックマット1を載せて吊り上げるために使う。
【0021】
図4は、そのハンモック2を説明する平面図である。
ハンモック2は、格子状の繊維製ロープ22で形成され全体として矩形状となっている。
そのため荷重が極めて軽い(例えば10kg程度)。
そして周縁部の繊維製ロープ22には、間隔をおいて吊り上げ用のループ部21が設けられているが、図では、ハンモック2の対向する2つの縁辺(ここでは長縁辺)に沿うようにループ部21が設けられた例を示した。
このループ部21には、次に述べる吊り上げ具3のフック部31が挿入されて掛止される。
なお、ハンモック2を構成している繊維製ロープ22は、編紐(ロープ)が使われ、その材質は綿、麻等天然繊維或いはポリエステル、ポリアミド、炭素等の化学繊維が採用される。
また、ハンモック2は繊維製ロープ22を格子を形成するように結合した手作りでもよいし、編機で編成したものでもよい。
【0022】
図5は、ハンモック上にブロックマット1を載せる位置(鎖線で領域を示す)を示したものである。
このような位置にブロックマット1を載せて吊り上げた場合、ブロックマット1の周囲より外方の余ったハンモック2の部分2Xが積載されたブロックマット1の周囲を包み込むように作用する。
このような状態になることが後述するようにブロックマット1の吊り上げ方法として大きな利点となる。
ここで吊り上げ具3は、矩形状の鋼製枠体よりなり該枠体にはフック部31が
ロープを介して垂下するように複数個設けられている(図1参照)。
そして一枚一枚、順次、吊り上げていき、複数のブロックマット1、例えば5枚を載置する。
その後、載置した最上位のブロックマット1の上に更に別のハンモック2を載置する。
そしてまた複数のブロックマット1を、順次、載置していく。
【0023】
図6は、この吊り上げ具3を示した図である。
吊り上げ具3に備わったフック部31は、好ましくは、ハンモック2のループ部21に対応する位置にあり、その数も対応する数となっていることが好ましい。
なお、吊り上げ具自体はクレーン等によりそれと一体となって吊り上げられる。
【0024】
(吊り上げ方法)
次に、ブロックマット1を荷台から地面に下ろすために吊り上げる方法を述べる。
本発明では、荷台からブロックマット1を下ろすために、荷台から吊り上げる際、上述したようなフレキシブルな(屈曲可能な)ハンモック2を使う。
すなわちハンモック2の上に複数のブロックマット1を載置した状態(図1参照)で、該ハンモック2を一挙に吊り上げ具3で吊り上げる方法を採用する。
【0025】
本発明の吊り上げ方法を適用する前に、まず、運搬車の荷台に一定枚数のブロックマット1を載せなければならない。
それには、ブロックマット1よりやや大きい広さを有するハンモック2を用意する。
そして該ハンモック2を荷台に広げるように載せ、この上にブロックマット1をクレーン等を使って吊り上げて載置する。
【0026】
なお、その際、ブロックマット1の基布シート11の両端の余剰片11Xを上下のブロックマット1間に挟むことが好ましい。
これを繰り返すと荷台には多数枚(例えば3回の繰り返しで計15枚)のブロックマット1が積み上がることとなる。
このように荷台にハンモック単位(例えばブロックマット5枚)で複数回積み上げられた後、運搬車は現場に移動される。
現場では、ハンモック毎に積み上げられたブロックマット1をハンモック単位で吊り上げて荷台から下ろさなければならない。
ここで本発明の吊り上げ方法が採用される。
フレキシブルな(屈曲可能な)ハンモック2に複数のブロックマット1を載置した状態で、該ハンモック2を吊り上げ具で吊り上げるのである。
吊り上げる場合は、該ハンモック2の各ループ部21に吊り上げ具3の各フック部31を掛止する。
その際、繊維製ロープで形成されたループ部21も垂下されたフック部31もそれぞれ自由に動くので相互に引っ掛け易い。
そして吊り上げ具3を上昇させてハンモック2と共に一挙に多数枚(例えば5枚)のブロックマット1を吊り上げる。
【0027】
ハンモック2に設けられた複数のループ部21によりブロックマット1の荷重が支えられているので、均等に吊り上げられることとなる。
また、ハンモック2はフレキシブルであるためブロックマット1の周囲を包み込むように作用して、ブロックマット1の位置が安定する。
また、ハンモック2の繊維製ロープ22がブロック間で基布シート11に食い込むので、従来のような鉄製パレットを使った場合のように、ブロックマット1の一部が垂れ下がったり、滑って落下するようなことがない。
ヤード(置き場)にこれを下ろす場合は、下ろす地面が傾斜していても徐々にブロックマット1を接地させていくことができる。
また、下ろす面に多少の凹凸があってもハンモック2がそれに沿って馴染むため問題はない。
従来のような鉄製パレットの場合はそもそも傾斜面に置きにくいし、また凹凸により不安定となる。
【0028】
さて5枚のブロックマット1を吊り上げて下ろした後は、更にその下にある5枚のブロックマット1を載置したハンモック2を下ろし、以下、この作業を3回行うと、計15枚の全部のブロックマット1が荷台から吊り下ろされたことになる。
このように、荷台からハンモック単位(例えばブロックマット5枚)で何回か吊り上げて地面に下ろす。一枚一枚吊り上げて下ろしていくよりは、迅速で極めて効率的である。
【0029】
〔第2の実施の形態〕
図7は、第2の実施の形態を説明する概略図である。
この実施の形態はハンモック2のループ部21の備わっている位置が周縁部全域(2つの短縁辺と2つの長縁辺)にまである例である。
この場合は、それに対応するように、吊り上げ具3のフック部31も枠全体に設けられているものを使用する。
ハンモック2は、ブロックマット1の周囲全体(長縁辺及び短縁辺)を包み込むように作用するため、吊り上げて移動する場合に縦横の滑りが無くブロックマット位置がより安定することとなる。
【0030】
〔第3の実施の形態〕
この実施の形態は吊り上げ具3のフック部31の数と、ハンモック2のループ部21の数とが異なった場合の例である。
ハンモック2のループ部21の数より吊り上げ具3のフック部31の数が多くなっている。
従って、この吊り上げ具3は、使用するハンモック2のループ部21が異なっても対応できる自由度がある。
この場合に、吊り上げ具3のフック部31やハンモック2のループ部21の位置や数は、相対する長縁辺でも良いし周縁辺全域に設けられてもよい。
以上、本発明を述べたが、本発明は、これらに限定されることはなく、発明の目的を達成できる限り、種々の変形が可能である。
例えば、フック部31や、ループ部21の数は適宜調整可能である。
ハンモック2の形もブロックマット1の周囲を包み込むようにできるものであれば、必ずしも矩形に限らなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ブロックマットの吊り上げ方法及びハンモックを使ったブロックマットの吊り上げ方法に関するもので、フレキシブルな(屈曲可能な)ハンモックにブロックマットを載置し、該ハンモックを吊り上げるので効果的な積み下ろしが可能である。
したがって、ブロックマットのように重量が嵩み一枚状の屈曲性があるものならば同様な吊り上げ方法が採用でき、他の運搬方法にも活用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…ブロックマット
11…基布シート
12…ブロック
2…ハンモック
21…ループ部
22…繊維製ロープ
3…吊り上げ具
31…フック部
4…荷台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックマットの吊り上げ方法であって、ハンモックに複数のブロックマットを載置し、該ハンモックを吊り上げ具で吊り上げることを特徴とするブロックマットの吊り上げ方法。
【請求項2】
ブロックマットの吊り上げ方法であって、複数の吊り上げ用のループ部を備えたフレキシブルなハンモックの上に複数のブロックマットを載置し、該ハンモックに備わった複数のループ部に吊り上げ具に備わった複数の吊り上げ用のフック部を掛止し、その後、吊り上げることを特徴とするブロックマットの吊り上げ方法。
【請求項3】
ブロックマットの周囲より外方の余ったハンモックの部分を積載されたブロックマットの周囲を包み込むような状態にすることを特徴とする請求項1、2記載のブロックマットの吊り上げ方法。
【請求項4】
ハンモックは繊維製ロープで格子状に形成され全体として矩形状であり、周囲にループ部が設けられていることを特徴とする請求項1,2記載の吊り上げ方法。
【請求項5】
ハンモックは繊維製ロープで格子状に形成され全体として矩形状であり、その対向縁辺にループ部が設けられていることを特徴とする請求項1,2記載の吊り上げ方法。
【請求項6】
ブロックマットの布帛シートの突出片をブロックマット間に挟み込むことを特徴とする請求項1,2記載のブロックマットの吊り上げ方法。
【請求項7】
ハンモックはポリエチレン繊維よりなることを特徴とする請求項1,2記載のブロックマットの吊り上げ方法。
【請求項8】
吊り上げ具は、矩形の枠体を有し、該枠体にフックが設けられていることを特徴とする請求項2記載のブロックマットの吊り上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−179206(P2011−179206A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43561(P2010−43561)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】