ブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法
【課題】外面に累進屈折面を有するセミフィニッシュトブランクのその外面側にブロックピースを装着する際に使用されるブロックリングに汎用性を持たせて加入度又はレンズカーブの異なる多種類のセミフィニッシュトブランクに適用できるようにするためのロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法を提供すること。
【解決手段】セミフィニッシュトブランク支持部としてブロックリング11の中央部の透孔を包囲する円環状の壁部の上縁位置に所定の基準面を設計ベースとして変形させて畝部15を形成する。その畝部15形状をより多くの外面累進ブランクに対応できるようにするために基準面を変形させて特定の外面累進ブランクに畝部の上面が完全に密着しないように設計する。
【解決手段】セミフィニッシュトブランク支持部としてブロックリング11の中央部の透孔を包囲する円環状の壁部の上縁位置に所定の基準面を設計ベースとして変形させて畝部15を形成する。その畝部15形状をより多くの外面累進ブランクに対応できるようにするために基準面を変形させて特定の外面累進ブランクに畝部の上面が完全に密着しないように設計する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセミフィニッシュトブランクにブロックピースを装着する際に使用される粘着性接着材料の流動を防止するためにセミフィニッシュトブランクとブロックピースの間に配置されるブロックリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
装用者の処方に応じたプラスチックレンズを加工する場合においては、ごく一般的な処方パターンであれば処方に応じた形状のガラス型枠を使用して前もってレンズを成形し、常備品として確保しておいて適宜提供するようにするのが一般的である。しかし、装用者の細かい処方に応じたり特殊な処方が必要である場合にはそれら処方に応じたレンズを個々に作製しなければならない。そのような場合にはセミフィニッシュトブランクを用意し、この凹面側(内面側)あるいは凸面側(外面側)のいずれかを加工して半オーダーメード的にレンズを作製するようにしている。セミフィニッシュトブランクは常備品と同様にガラス型枠で前もって成形するレンズの前駆体であり、一般に加工装置で凹面側を加工する。このようなセミフィニッシュトブランクを加工して半オーダーメード的にレンズを作製する先行技術として一例として特許文献1を示す。
【0003】
凹面側が加工面であるセミフィニッシュトブランクを加工する場合には切削工具あるいは研削工具方向に加工すべき凹面側を向くように加工装置にセミフィニッシュトブランクを固定しなければならない。そのためセミフィニッシュトブランクの凸面側に加工装置に固定させるためのブロックピースを装着する必要がある。ブロックピースは加工装置に装着してセミフィニッシュトブランクを所定位置に固定させる一種のコネクタである。この際、ブロックピースはレンズを傷つけず、なおかつ凸面上にしっかりと取り付けられなくてはいけない。そのための固定手段として一般に低融点のアロイ(合金)や熱可塑性樹脂、あるいはワックス等の粘着性接着材料を介してブロックピースはセミフィニッシュトブランクに固定される。このような固定手段を一般にブロッキングと称している。ブロッキングされたセミフィニッシュトブランクにブロックピースがブロッキングされた状態を説明する先行技術の一例として特許文献2を挙げる。
ブロックピースを装着するためには図25(a)及び(b)に示すように、斜めの作業面の凹部100内にブロックピース101を配置する。そして凹部100を包囲するようにブロックリング102をセットし、セミフィニッシュトブランク103の外面側(凸面側)をブロックリング102のセミフィニッシュトブランク支持部上に載置する。つまり、ブロックリング102をセミフィニッシュトブランク103とブロックピース101の間に配置する。そして、作業面の最上部位置に配置させた充填口104からアロイのような粘着性接着材料を充填し、この接着材料が固化したところでブロックリング102を取り外すようにしている。つまりブロックリング102の役割はセミフィニッシュトブランク103を安定的に載置させるとともに内部に形成される空間に充填した粘着性接着材料が漏れ出さないようにすることである。特に充填した粘着性接着材が洩れ出さないようにするため、ブロックリング102のセミフィニッシュトブランク支持部とセミフィニッシュトブランク103との間は完全に密着するか、あるいは完全に密着しないまでも粘着性接着材が洩れない程度のごくわずかな隙間に留める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−175149号公報
【特許文献2】特開2004−202679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、セミフィニッシュトブランクが単純な球面あるいは非球面の外面側のカーブを有するものであれば、どのようなカーブであろうとセミフィニッシュトブランク支持部にセミフィニッシュトブランクの凸面がきれいに密着するためブロックリングは一種類で足る。
一方、ブロックピースを装着するセミフィニッシュトブランクの外面に累進屈折面が形成されている場合(以下、そのようなセミフィニッシュトブランクを外面累進ブランクとする)には凸面の形状は一定ではないため、ある加入度でかつあるレンズカーブで形成した外面累進ブランクに対して隙間がないようなセミフィニッシュトブランク支持部のブロックリングを構成したとしても、それとは異なる加入度又はレンズカーブの外面累進ブランクではどうしても隙間が形成されてしまい、それを使用すれば粘着性接着材が洩れ出してしまうこととなる(隙間がごく小さい場合には使用可能である)。
基本的には外面累進ブランク用のブロックリングにはあまり汎用性がないため、累進屈折面に応じた形状のセミフィニッシュトブランク支持部を有するブロックリングを多種類用意しなければならなかった。
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、外面に累進屈折面を有するセミフィニッシュトブランクのその外面側にブロックピースを装着する際に使用されるブロックリングに汎用性を持たせて加入度又はレンズカーブの異なる多種類のセミフィニッシュトブランクに適用できるようにするためのロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明では、累進屈折力レンズの前駆体である外面側に累進屈折面が形成されたセミフィニッシュトブランクの外面に対してブロックピースを固定する際に使用される粘着性接着材料の流動を防止するために前記セミフィニッシュトブランクと前記ブロックピースの間に配置されるブロックリングであって、
セミフィニッシュトブランク支持部として中央部の透孔を包囲する円環状の壁部の上縁位置に所定の基準面を設計ベースとして変形させた前記透孔を包囲する畝部を形成し、加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件がそれぞれ異なる一群の前記セミフィニッシュトブランクを前記畝部上に載置させるために前記畝部上面形状を以下のa)〜c)の条件となるように設計するようにしたことをその要旨とする。
a)前記畝部上面の周方向において、前記畝部の横断面方向における全幅のすべてを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させずに当該幅方向の一部のみを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる
b)前記畝部上面と交錯する前記粘着性接着材料の充填口を有する場合に前記充填口を除く前記畝部上面の全周において前記畝部を一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる。但し、前記畝部上面に前記セミフィニッシュトブランクが支持されることを前提として周方向に一部当接しない部分があってもよい
c)b)において前記畝部上面と一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面との間に一部当接しない部分がある場合にはその部分における間隔を前記粘着性接着材料が漏れ出さない程度とする
【0007】
また、請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記所定の基準面は立体曲面であることをその要旨とする。
また、請求項3の発明では請求項2に記載の発明の構成に加え、前記立体曲面は一群の前記セミフィニッシュトブランクから選択された所定の前記セミフィニッシュトブランクの累進屈折面形状に合致する形状であることをその要旨とする。
また、請求項4に記載の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の基準面は複数の前記セミフィニッシュトブランクの形状を合成して設計されることをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形は前記畝部上面の外周寄りにマイナスのサグ量を与えるものであることをその要旨とする。
また、請求項6の発明では請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形は前記畝部上面の外周寄りの180度対向した2方向にマイナスのサグ量を与えるものであることをその要旨とする。
また、請求項7の発明では請求項2〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形によって前記ブロックリングの径方向における前記畝部上面の形状は、前記セミフィニッシュトブランクを前記ブロックリングへ載置させた状態での両者の最接近位置が頂点となるような曲線の連続面として構成されることをその要旨とする。
また、請求項8の発明では請求項7に記載の発明の構成に加え、前記曲線は前記セミフィニッシュトブランクへの最接近位置を頂点とするガウス関数の正規分布曲線となることをその要旨とする。
【0008】
また、請求項9の発明では請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記畝部に仮の設計データを与え、その仮の設計データ及び使用する予定の一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面の三次元形状データに基づいて前記畝部に対して前記各セミフィニッシュトブランクを載置した際の当接状態をシミュレーションし、その結果に基づいて前記仮の設計データを修正して再度シミュレーションを行い前記c)の条件についてより好適な設計データを決定するようにしたことをその要旨とする。
また、請求項10の発明では請求項9に記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションにおいては、前記各セミフィニッシュトブランクごとに前記畝部上面との間隙量を評価し、間隙量の大きさに応じて前記セミフィニッシュトブランクに重みを設定し、前記各セミフィニッシュトブランクの重みを考慮して前記仮の設計データを修正し再度シミュレーションを行うようにしたことをその要旨とする。
また、請求項11の発明では請求項10に記載の発明の構成に加え、前記重みは前記畝部の全周に対する前記セミフィニッシュトブランクの最接近位置の隙間量を積算した間隙得点に基づいて前記各セミフィニッシュトブランクごとに求められることをその要旨とする。
また、請求項12の発明では請求項10又は11に記載の発明の構成に加え、前記重みは最接近位置からの離間距離に応じて前記セミフィニッシュトブランクの位置データ毎に設定されることをその要旨とする。
また、請求項13の発明では請求項9〜12のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションは前記各セミフィニッシュトブランクごとに算出された前記間隙得点の分散状態に基づいて行うことをその要旨とする。
また、請求項14の発明では請求項9〜13のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションにおいては前記畝部上面に重複配置される前記セミフィニッシュトブランクの外面の間隔を前記畝部の平面視方向からの分布図として表示手段に表示させるようにしたことをその要旨とする。
【0009】
上記のような構成では、ブロックピースを固定するために外面累進ブランクをブロックリングの畝部上面(外面累進ブランクが当接する載置面)に載置してブロックリングに包囲される内部空間に粘着性接着材料を充填する際に、より多くの種類の外面累進ブランクをその材料が漏れ出すことなく載置させることが可能となる。
ここに、本発明ではより多くの外面累進ブランクに対応できるために上記のように畝部を設計する際にa)〜c)の条件が与えられている。これら条件は要するに特定の外面累進ブランクに畝部の上面を完全に密着させることがないように設計し、たとえ多少の隙間が空いていてもそれが粘着性接着材料が漏れ出さない程度の許容できる隙間であれば構わないような畝部の上面形状として、より多くの外面累進ブランクに対する適合性を向上させるようにしたものである。
a)は畝部上面においてはある所定の幅が与えられているが、載置される外面累進ブランクの外面とはこの幅方向のすべてで当接するのではなく、畝部上面の周方向において当接しない部分を有するように設計することを意味する。すなわち図26(a)〜(d)に示すように、外面累進ブランクBは畝部の横断面方向(径方向)での当接位置は図25(a)のように全幅すべてで当接する場合だけでなく、図26(b)〜(d)のように一部で当接する場合があり、なおかつ当接位置はこれら図に示すように幅方向の内寄り〜外寄りと自由に設定される。これによって以下のb)c)設計をする際の裕度を与えることができる。
b)は基本的に畝部上面の全周において畝部を一群の外面累進ブランクの外面に当接させるが、一部当接しない部分があっても外面累進ブランクが支持され、その部分における隙間がc)のように粘着性接着材料が漏れ出さない程度であればよいということである。基本的には全周囲に渡って外面累進ブランクの外面側と畝部上面とが接することで粘着性接着材料が漏れ出さないわけであるが、接していなくともそれが非常に狭い間隔であれば粘着性接着材料が漏れ出さないため、許容範囲の隙間であれば外面累進ブランクが支持される限りは隙間があいてもよいという設計思想である。
【0010】
畝部を設計する際にはまったく0からその形状を構築するのではなく、所定の基準面をベースとしてその形状を変形させていくものである。所定の基準面としては立体曲面であることが好ましく、更に立体曲面は当該ブロックリングを使用する一群のセミフィニッシュトブランクから選択された既存の所定のセミフィニッシュトブランクの累進屈折面形状に合致する形状であることが好ましい。つまり、当該ブロックリングを使用する予定の外面累進ブランク、例えば加入やカーブの中間的な性質の外面累進ブランクを選択し、その外面累進ブランクを凹凸の関係で支持する形状をベースに変形させていくことが好ましい。つまり、基本的に畝部形状は外面累進ブランクの外面がなるべく隙間なく載置されることから自ずと外面累進ブランクの外面の形状に近い形状であることは間違いないわけであるから、これを変形の出発点とすれば変形量もそれほど大きく設定する必要がないため計算上も都合がよく、設計作業が大きく軽減されることとなる。
また、上記のように既存の所定のセミフィニッシュトブランクの形状をそのまま基準面とするだけでなく、複数のセミフィニッシュトブランクの形状を合成して設計することも可能である。このような形状をベースとするほうが、
このとき選択される複数のセミフィニッシュトブランクは比較的中間的な特徴を備えたものであることが、その後の大きな変形を行わずにすむため、好ましい。
【0011】
また、変形はこのような所定の外面累進ブランクを凹凸の関係で支持する形状をまず畝部のベース形状として、その畝部の外周寄りにマイナスのサグを与える、つまり畝部の外周寄りをベース形状に対してより低くなるように変形させるものであることが好ましい。畝部の外周は全周にサグを与えても必要な方向にのみサグを与えてよい。たとえば180度対向する2方向にサグを同等に与えることが考えられる。このように畝部の外周寄りにマイナスのサグを与える理由は次の通りである。
基本的に外面累進ブランクが載置される畝部の上面は、その外面累進ブランクとまったく同じカーブ形状をベースと考えると図27(a)のように接することとなる。さて、これを基準としてカーブが浅くなっていくと考えた場合に外面累進ブランクは図27(b)のように畝部の外寄りで当接するようになる。この際にベースよりも小さい加入度のブランクを載置すると、当接面はリングの上下方向であり、左右方向には許容以上の隙間が生じてしまう可能性がある。一方、ベースよりも大きい加入度のブランクを載置した場合、当接面はリングの左右方向であり、上下方向に許容以上の隙間が空いてしまう可能性がある。そのため、図26(c)のように畝部上面の外寄りの高さを抑制することでブランク全体をより畝部方向に接近させて当接部分を多くしたり隙間をより狭くするというものである。サグ量を与える際の断面線形状は図26(c)のように与えない内周寄りとは段差なく接続されなおかつ上凸となるように偶関数を用いることが好ましい。
外面累進ブランクは加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件が異なれば異なる外面累進ブランクとなるが、レンズカーブは素材屈折率によって曲率が変わるため、素材屈折率が異なれば自動的に相互にレンズカーブが違う外面累進ブランクである。このように基材屈折率が異なる基材から作製される場合であっても共通したブロックリングが使用できるように畝部を設計することが好ましい。
【0012】
また、畝部の形状に変形を加える場合には、ブロックリングの径方向における畝部上面の形状を、セミフィニッシュトブランクを前記ブロックリングへ載置させた状態での両者の最接近位置が頂点となるような曲線の連続面として構成することが好ましい。これによってブロックリングの畝部上面の形状について内側から外側にかけて変形させることができ、変形の自由度が増すこととなる。また、外面累進ブランクを畝部上面にセットした際に径方向における隙間が多い場合の対応にも好適である。曲線としては例えばセミフィニッシュトブランクへの最接近位置を頂点とするガウス関数の正規分布曲線とすることができる。基本的に正規分布曲線は左右対称なつりがね状の曲線となるが、必ずしも左右対称でなくともよい。
【0013】
また、実際の畝部の設計手法としてはコンピュータの計算によって畝部の形状の設計データを得ることで実現されるが、その際に設計データについて仮の設計値を与え、その仮の設計データ及び使用する予定の一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面の三次元形状データに基づいて前記畝部に対して前記各セミフィニッシュトブランクを載置した際の当接状態をシミュレーションし、その結果に基づいて前記仮の設計データを修正して再度シミュレーションを行い前記c)の条件についてより好適な設計データを決定するようにすることが好ましい。
また、シミュレーションにおいては、前記各セミフィニッシュトブランクごとに畝部上面との間隙量を評価し、間隙量の大きさに応じて前記セミフィニッシュトブランクに重みを設定し、前記各セミフィニッシュトブランクの重みを考慮して前記仮の設計データを修正し再度シミュレーションを行うようにすることが好ましい。これによって、繰り返しシミュレーションを行う際に、好適な畝部の形状とするまでの収束速度が速くなる。また、各セミフィニッシュトブランクの形状特性を考慮した最適な畝部形状を設計することは可能となる。
ここに重みとしては例えば畝部の全周に対するセミフィニッシュトブランクの最接近位置の隙間量を積算した間隙得点に基づいて各セミフィニッシュトブランクごとに求めることが想定される。
また、重みとして最接近位置からの離間距離に応じて前記セミフィニッシュトブランクの位置データ毎に設定するものが想定される。
また、シミュレーションは前記各セミフィニッシュトブランクごとに算出された前記間隙得点の分散状態に基づいて行うことが挙げられる。
また、シミュレーションとして畝部上面に重複配置されるセミフィニッシュトブランクの外面の間隔を畝部の平面視方向からの分布図として表示手段に表示させ、この表示に基づいて行うことが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
上記各請求項の発明では、1つのブロックリングで加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件が異なる多くの外面側に累進屈折面が形成されたセミフィニッシュトブランクを載置させることができることとなりブロックリングの汎用性が増す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1において使用されるブロックリングの(a)は断面図、(b)は平面図。
【図2】本発明の実施の形態1において使用されるコンピュータの電気的構成を説明するブロック図。
【図3】本発明の実施の形態1を説明するフローチャート。
【図4】畝部のxyz軸方向を説明する説明図。
【図5】4カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを従来のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図6】3カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図7】4カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図8】5カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図9】7カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図10】3カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを修正した実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図11】4カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを修正した実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図12】5カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを修正した実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図13】7カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを修正した実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図14】畝部上面についてベース形状を基準に上下方向にマイナスのサグを与えた状態を説明する説明図。
【図15】畝部上面についてベース形状を基準に左右方向にマイナスのサグを与えた状態を説明する説明図。
【図16】本発明の実施の形態2を説明するフローチャート。
【図17】セミフィニッシュトブランクのxyz軸方向を説明する説明図。
【図18】ある外面累進ブランクの累進面形状関数の係数を導くための二乗和Sとこれを最小にする係数を求める連立一次方程式の関係を説明するイメージ図。
【図19】3つの外面累進ブランクを合成した累進面形状関数の係数を導くための二乗和Sとこれを最小にする係数を求める連立一次方程式の関係を説明するイメージ図。
【図20】ガウス関数の正規分布曲線によってブロックリングの畝部形状を変形させるイメージを説明するイメージ図。
【図21】ブロックリングの畝部位置にガウス関数の正規分布曲線を適用したグラフであって、(a)は標準偏差を1.0とし、(b)は標準偏差を5.0とし、(c)は標準偏差を10.0とした場合。
【図22】畝部の形状を次々と修正していった際にそれぞれの修正バージョンに対して121種類の外面累進ブランクを載置して間隙得点を算出した推移を示すグラフ。
【図23】すべての外面累進ブランクの位置データを考慮した累進面形状関数の係数を導くための二乗和Sとこれを最小にする係数を求める連立一次方程式の関係を説明するイメージ図。
【図24】ガウス関数の正規分布曲線を適用したブロックリングの畝部位置のP1〜P4の位置を説明する説明図。
【図25】(a)及び(b )はブロックリングを使用してブロックピースをセミフィニッシュトブランクに装着する方法を説明する説明図。
【図26】(a)〜(d)は畝部上面と外面累進ブランクとの当接状態を説明する説明図。
【図27】(a)〜(c)は畝部上面の外周寄りにマイナスのサグを与える理由を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法を具体化した各実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1の方法で設計されるブロックリング11の一例である。ブロックリング11は合金製の薄板状の本体12を備えている。本体12は平面視において円形の外郭形状とされ、中央に円形の透孔13が形成されて全体としてリング形状をなしている。本体12の外周の一部には方形の切り欠き14が形成されている。切り欠き14は粘着性接着材料としてのアロイを充填する際の注入容器の収容部とされる。透孔13の周囲の円環状の壁部の上縁位置にはセミフィニッシュトブランク支持部となるリング状の畝部15が形成されている。本実施の形態1では畝部15の外径は96mm、内径は48mm、畝部の幅は10mm、畝部の高さは6mmに設定されている。畝部15上面に外面累進ブランクの外面が載置されることとなる。前記切り欠き14に面した畝部15の一部には内外に連通する溝16が形成されている。溝16から畝部15に包囲された空間にアロイが充填されることとなる。
【0017】
次に、このようなブロックリング11の畝部15設計方法の具体的な実施の形態1について説明する。本発明ではコンピュータ21を使用して畝部15を設計する。設計した畝部15上面に対して使用予定の外面累進ブランクの外面を載置するシミュレーションを繰り返し、最適な畝部上面の立体曲面形状を求める。
図2に示すように、コンピュータ21はシステムバス22に対してCPU23、モニター24、キーボードやマウス等の入力部25、ハードディスクや外付け記憶媒体等から構成される記憶部26、主メモリ27及び加工手段としてのブロックリング加工装置28等がそれぞれ接続されている。主メモリ27には外面累進ブランクの三次元形状データが記憶されるとともに三次元形状データに基づいて畝部15や外面累進ブランクの画像データを作成し、また、作成したグラフィックを加工したりモニター24に所定の表示をさせるグラフィックプログラム、畝部15と外面累進ブランクの位置関係を計算する計算プログラム、加工装置28のシステムプログラム、NC加工プログラム、CL(カッターロケーション)データ作成プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。等の各種プログラムが記憶されている。また、本実施の形態1においては外面累進ブランクの形状データとして東海光学製の屈折率1.6の素材屈折率のものが記憶部26に記憶されている。具体的には3カーブ、4カーブ、5カーブ、7カーブの4種をそれぞれ1加入〜3加入(1.6換算でのカーブ)で作成した計12種の外面累進ブランクの外面の形状データが記憶部26に記憶されているものとする。
制御手段としてのCPU23は入力部25からの指示によって上記プログラムに基づいて畝部15の三次元形状を作成してモニター24に表示させる。また、CPU23は入力部25からの指示によって上記プログラムに基づいて作成した畝部15の三次元形状に対して前もってデフォルトで記憶されている外面累進ブランクの外面を載置させるシミュレーションを実行させ、その結果をモニター24に表示させる。
【0018】
次に、図3のフローチャートに基づいてCPU23の制御下で実行されるブロックリング11の畝部15の設計工程及び設計した畝部15について外面累進ブランクの外面を載置させるシミュレーションの手法を説明する。
ステップS1において入力部25からの指示に基づいてデフォルトで既に記憶部26に記憶されている外面累進ブランクの形状データからベースとなる畝部15の形状が作成される。本実施の形態1では具体的に4カーブ2加入の外面累進ブランクの外面の形状データp0を採用し、この形状データp0の幾何中心から24mm〜34mmが本実施の形態1の畝部15の幅と対応する領域であるため、形状データp0からこの領域のデータを取得してまず畝部15のベース形状データb0とするものとする。ここに、図4に示すように形状データは畝部15の幅方向に対する2次元方向をx軸、y軸方向とし、高さ方向をz軸方向とする。尚、形状データは所定間隔の格子の交点位置をサンプリングしたデータであるため、実際にはデータ間の位置は補完計算によって求めるものとする。この段階におけるベース形状データb0に基づいて補完計算された立体曲面は4カーブ2加入の外面累進ブランクに対して完全に密着する形状となる(図5参照)。
【0019】
次いで、ステップS2において入力部25からの指示に基づいてベース形状データb0に対して所定の変形関数に基づく変形が加えられ、その変形後の立体曲面が畝部15の形状としてモニター24に表示される。ここで変形された畝部15の形状は上記外面累進ブランクとシミュレーションすることによって修正がなければそのままその形状が、修正が加えられれば修正後の形状が決定された畝部15の形状とされる。
ここで、ベース形状データb0は平面方向のx、y座標と高さ方向のz座標から構成されているが、本実施の形態1では下記式を用いてa、bの係数を任意に設定して新たにz座標に付加サグ量Δzを与える(マイナスに与える場合も含める)。
ここに、下記式において、−a*(r−29)2*|cos(θ+(π/2))|は、リングの上下方向に与えるサグ量を定義する。すなわち、この関数は、リングの上下(90度および270度)において、最も大きいマイナスのサグ量を与え、リングの左右(0度および180度)において0となるサグ量を与える。また、その大きさは半径に依存する2次関数として定義されるため、外側ほど大きくサグ量が設定される(大きくカットされる)こととなる。29という数値は畝部15の幅方向の中央位置を示す。
また、−b*(r−29)2*|cosθ|は、リングの左右方向に与えるサグ量を定義する。すなわち、この関数は、リングの上下(0度および180度)において、最も大きいマイナスのサグ量を与え、リングの上下(90度および270度)において0となるサグ量を与える。また、その大きさは半径に依存する2次関数として定義されるため、外側ほど大きくサグ量が設定される(大きくカットされる)こととなる。
【0020】
【数1】
【0021】
上記のように畝部15の形状が求められた段階で、ステップS3において入力部25からの指示に基づいてステップS2で変形させた畝部15の設計に対して上記12種の外面累進ブランクの外面を載置させるシミュレーションを実行させる。
本実施の形態1におけるシミュレーションの手法は次の通りである。
a)畝部15と各外面累進ブランクの幾何中心との位相を対応させ、畝部15の各測点のz軸方向(つまり高さ)と対応する外面累進ブランクの各点のz軸方向を検討する。
b)畝部15の高さを固定し、外面累進ブランクの高さを調整して、外面累進ブランクが畝部15内に埋没しない状態で外面累進ブランクが畝部15に当接する位置s0(上方から下降させた際に最初に畝部15当接する位置)を探し、その状態の外面累進ブランクの幾何中心0の高さh0を取得する。
c)幾何中心0における高さh0位置を傾斜させる原点位置として外面累進ブランク全体を位置s0と幾何中心0とを結ぶ延長方向(つまり幾何中心0を挟んだ対向方向)に向かって大きく傾斜させる。
d)傾斜させることでデータ的に外面累進ブランクが畝部15と交錯(潜り込んでしまう)ため、一旦外面累進ブランクの上方に移動させ、外面累進ブランクが畝部15内に埋没しない状態で外面累進ブランクが畝部15に当接する位置s1を探す。そして、その状態の外面累進ブランクの幾何中心0の高さh1を取得する。
e)これを繰り返し行って幾何中心0の高さhnと高さhn+1を得る。その際に高さhnより高さhn+1が低ければ次回も同じ傾斜角度とする。一方、高さhnより高さhn+1が高くなるような場合では過剰に傾斜させていることになるので、傾斜角度を半減させて設定する。
f)これを繰り返すことで傾斜角度→0に収束することとなり、それが最も幾何中心0位置の低い安定した状態、つまり外面累進ブランクが畝部15上に載置された状態となる。
【0022】
ステップS3でシミュレーションが完了するとステップS4において各外面累進ブランクと畝部15との間隔を畝部15の各側点のz軸位置に対する各外面累進ブランクのz軸位置との差としてx、y軸方向に分布させた分布図がモニター24に表示される。分布図は所定の隙間範囲ごとに等高線によって区分けされるとともに各領域ごとに異なる表現(色やドットの密度等の違い)で一見して区別可能なように表示される。等高線によって区切られる所定の隙間範囲は任意に設定が可能となっている。
ここに、操作する者がモニター24への表示結果から畝部15の形状が好適ではないと判断した場合にはステップS2に戻り、CPU23は入力部25からの新たな指示(改めてベース形状データb0に対する変形関数の係数値の入力)に基づいて畝部15の形状を修正させる。そして、好適なシミュレーション結果が得られるまでステップS2〜S4が繰り返されることとなる。
一方、シミュレーション結果から好適な畝部15の形状が得られていると判断されれば入力部25からの指示によってステップS5でデータをCLデータに変換して加工装置28に出力し、畝部15の加工を実行させる。
【0023】
次に、図5〜図13に基づいて具体的な外面累進ブランクを畝部15上に載置した場合のその間隙のシミュレーション結果についての検証の一例を説明する。図5〜図13は図における上下方向が実際のレンズの上下方向とは逆向き、つまり上側が近用部となり下側が遠用部となるように配置されている。尚、各図において付記されているプラスあるいはマイナスの数値は、外面累進ブランクがブロックリングに当接した状態の方向と角度を表している。方向は図に対して上下左右、角度はリング底面の水平面を基準とした。ここに図5の分布図はベース形状データを変形させていない畝部15を使用した比較例であり、図6〜図9はベース形状データを変形させたシミュレーション結果の分布図である。図10〜図13は図6〜図9の結果を検証した結果に基づいて修正を加えより好適な設計としたシミュレーション結果の分布図である。
図5〜図13の分布図ではドット表示で等高線で区切られた異なる領域を表示するようにしている。ドット密度と隙間の関係は表1の通りである。完全に黒塗りの状態が当接又はほぼ当接であり、以下ドットの密度が低くなるほど隙間が空いている。ドット表示のまったくない領域(0.21mm以上)は隙間が大きすぎて妥当でないとした部分である。本修正した実施の形態1のではドット表示のまったくない領域がリングの内外に連通しているような分布状態では充填したアロイが漏れ出すとしてこのようなシミュレーション結果のものを「不適合」と判断した。
【0024】
【表1】
【0025】
図5は比較例としてベース形状データを変形させないで使用した場合の畝部15上面に4カーブの1加入〜3加入の外面累進ブランクを載置したものである。ベース形状データはそもそも4カーブ2加入の形状に基づいて作成されているため、4カーブ2加入の外面累進ブランクは周方向も幅方向もまったく隙間なく畝部15上面に密着することがシミュレーション結果から分かる。しかし、この畝部15の形状では例えば4加入1カーブでは横方向に大きく隙間が空いてしまっており、アロイが漏れ出すケースであるため不適合ということになる。4加入3カーブでは全周において当接するか当接しないまでも所定以下の隙間で保たれているため適合する。
【0026】
一方、図6〜図9については畝部15の形状を図14のようにベース形状データの上下方向の外方を三日月形状にマイナスのサグ量を与えている。このとき、上記数式1における係数はa=0.045である。
このような変形関数にこのような数値を代入して、サグ量を調整することによって上下方向では外寄りが変形前に比べてなだらかなカーブで構成されている。このような畝部15では、変形前に比べて4加入1カーブの隙間は全周にわたって小さくなり許容範囲となって適合することとなる。しかし、他のカーブまで拡げて全体として見れば依然として不適合な外面累進ブランクは残っている。この場合では1〜3加入3カーブの3種の外面累進ブランクが不適合であった。そこで、図14に図15のような左右方向の外方を三日月形状にマイナスのサグ量を与え畝部15の外側寄りにマイナスのサグ量を与えるようにした。より具体的な数値としては上記数式1における係数はa=0.045、b=0.030である。
これを検証した結果が図10〜図13である。図10〜図13では12種のすべての外面累進ブランクが適合することとなった。
【0027】
上記のような構成とすることで、上記実施の形態1では次のような効果が奏される。
(1)畝部15上面の形状について特定のある外面累進ブランクに密着させる(図5の4カーブ2加入の状態)ようにせず、畝部15の幅方向の一部のみを当接させるように変形させることで、より多くの外面累進ブランクに対する適合性を向上させることが可能となった。この際畝部15の外周寄りにマイナスのサグ量を与えることによって、より多くの外面累進ブランクに対する適合性を向上させることが可能となっている。
(2)畝部15を設計した後で外面累進ブランクを載置するシミュレーションをして両者間の当接状態や隙間の大小を目視でき、それを念頭に畝部15を修正できるため、速やかに多くの外面累進ブランクを載置させるための最適な形状の畝部15を設計することが可能である。
【0028】
(実施の形態2)
実施の形態2は上記実施の形態1において図3のステップS1を変更して実施した場合の例である。
図16に示すように、実施の形態2ではステップS11において記憶部26に記憶されている3種類の外面累進ブランクの形状データに基づいてベースとなる畝部15の形状が作成される。実施の形態1ではある1つの外面累進ブランクの外面の形状データp0をいわば切り取ってそのまま畝部15の形状としていたが、実施の形態2ではより共通性のある形状を出発点とするものである。
ここで、図17に示すように外面累進ブランクの外面の形状データは水平方向をX軸方向とY軸方向とし、これと直交する厚み方向をZ軸方向として立体的なある1つの位置を3軸の位置で示すことができる。本実施の形態2では外面累進ブランクの外面の形状データとして例えば1164箇所の位置データを有するものとする(3軸方向であるからデータとしては実際は3倍)。
このとき、この外面累進ブランクの累進面形状関数は、次の数式のように表すことが可能である。
【0029】
【数2】
【0030】
ここでは次数としてN=10としたが、これは真の値に近づけなるべく滑らかな曲面とするためにある程度の次数を設定するものであり、適宜変更は可能である。上記式においては係数aijを求めることで、一般式が求まることとなる。ここで、係数aijを求める手段として図18に示すような重み付き最小二乗法によることが考えられる。関数による値と目標値との差分の二乗和Sを考え、これが最小となるような係数が求める係数aijとなるはずである。そのためにはSを係数aijで偏微分したN2個(ここでは121個)の式からなる連立一次方程式を解けばよい。この解を求めるため、例えばベクトルを利用した掃き出し法による解法を使用することが考えられる。これによって121個の係数aijを求めることができる。そして、それら係数aijを代入して計算することで上記累進面形状関数の一般式を定義することができる。
さて、実施の形態2では3種類の平均値を得るという発想である。この場合も3つ(3種類)の平均値の外面累進ブランクの累進面形状関数は上記数式のように表すことが可能である。
【0031】
しかし、3つの外面累進ブランクの位置データとして1164×3=3492個の位置データが混在して分散しているため、上記と同様に連立一次方程式を解くようにする。二乗和Sとこれを最小にする連立一次方程式のイメージは図19のごとくである。ここではすべての重みW0〜3492=1に設定されている。つまり、各位置データには軽重はなく、ここでは3つの外面累進ブランクの平均値の集合である累進面形状を求めることになる。
このようにして得られた各係数aijを上記数式に代入して計算することで累進面形状関数の一般式を定義することができる。
【0032】
ステップS11においてはCPU23は入力部25からの指示によって上記プログラムに基づいてこのように外面累進ブランクの外面の形状データp0を作成し、この形状データp0の幾何中心から畝部15の幅と対応する領域(上記実施の形態1と同様ならば24mm〜34mm)について、畝部15のベース形状データb0とするものとする。尚、畝部15の幅と対応する領域はブロックリング11によって必ずしも共通ではないので、、畝部15の幅に合わせて適宜変更して計算する。
ステップS12以下の工程は実施の形態1のステップS2以下と同様であるため、説明は省略する。
【0033】
(実施の形態3)
実施の形態3は上記実施の形態1及び2におけるステップS2で畝部15の形状を修正する際のより具体的な修正手法を説明するものである。実施の形態3では修正手法のみに特化して説明する。
<間隙得点に基づく重みの設定>
各外面累進ブランク毎に畝部15に対する外面累進ブランクの接近状態を重みとして設定する。当該ブロックリング11を使用するすべての外面累進ブランク(ここでは121種類)についてステップS3と同様の操作によってCPU23は当該ブロックリング11の畝部15上に当接させるようにシミュレーションを行い、当該ブロックリング11の全周に渡って載置した外面累進ブランクとブロックリング11(の畝部15)との間隙が最小になる位置(最接近位置)を1度ずつ合計360点設定し、隣接する点の間を補完計算して滑らかな最接近曲線を得る。また、360点のすべての間隙を積算し、それを各外面累進ブランクの間隙得点とする。ここでは間隙得点が大きいこと、つまり間隙量が多いほど重みを大きく設定するようにする。そのため、CPU23は上記プログラムに基づいて各外面累進ブランクの間隙得点を最も大きな間隙得点で除すことで(つまり最も大きな間隙得点を分母とする)各外面累進ブランクの重みWaを算出する。重みWaは各外面累進ブランク毎に1つ定まる。
【0034】
<最接近位置からの離間距離に応じた重みの設定>
当該ブロックリング11の中心Oを通る直線上にある位置データに当該直線上にある最接近位置から離間している距離に応じた重みを設定する。この重みは各外面累進ブランクのすべての位置データに固有に与える重みである。
上記のように最接近曲線を得る。その最接近位置を最大値(つまり平均値)として標準偏差σを変数とする下記の数式のガウス関数の正規分布曲線f(r)を考える。これを当該ブロックリング11の中心Oを通る直線に適用する。
【0035】
【数3】
【0036】
上記式において標準偏差σを変更することで、分布特性を変化させることができる。具体的に説明する。図20のように当該ブロックリング11の中心Oを通るある直線d0を想定する。この直線d0における最接近位置が36.0mm位置にあるとする。ここで例えば、標準偏差σ=1.0と設定すると図21(a)のような急峻な特性となり、標準偏差σ=5.0、標準偏差σ=10.0となると徐々になだらかな特性となるっているのがわかる(図21(b)及び(c))。正規分布曲線f(r)の極値を最接近位置としてこれを重み1と設定する。そして、最接近位置からの距離に応じた重みをこの直線d0上の位置データに与えることを考える。例えば標準偏差σ=1.0であれば、図21(a)から中心から35.0mm位置にある位置データの重みは0.6となる。
本実施の形態3ではCPU23は上記プログラムに基づいて中心Oを通る直線の360度全方向について標準偏差σ=10.0の正規分布曲線f(r)を使用してすべての外面累進ブランクの位置データについて重みWbを算出した。
【0037】
<重みを考慮した累進面形状関数の計算>
CPU23は上記プログラムに基づいて上記2つの重みを与えたすべての外面累進ブランクの位置データに基づいて畝部15の形状を修正する。121種類の外面累進ブランクの位置データとして1164×121=140844に基づいて上記と同様に連立一次方程式を解くようにする。二乗和Sとこれを最小にする連立一次方程式のイメージは図23のごとくである。図23に示すように、各位置データには重みWtが与えられる。重みWtは上記のWaと重みWbの積で求められる。
このようにして、得られた累進面形状に基づいて前回の畝部15の形状を修正し、ステップS3以降を実行する。図22は実施の形態3のように重み付けしながら畝部15の形状を次々と修正していった際にそれぞれの修正バージョンで121種類の外面累進ブランクを載置して間隙得点を算出した推移を折れ線グラフ化したものである。このグラフから修正を繰り返すことで徐々に間隙得点のばらつきがなくなり分散状態が安定していくのがわかる。ここから例えば第3設計の安定したある段階の設計を選択することが妥当と考えられる。
【0038】
(実施の形態4)
実施の形態4は畝部15の形状を上記のガウス関数の正規分布曲線f(r)を使用して変形させる例である。図24に基づいて説明する。実施の形態3では正規分布曲線f(r)は各外面累進ブランクのすべての位置データに固有に与える重みを設定するために使用したが、実施の形態4では特に径方向における畝部15と外面累進ブランクの間隙が多い場合に適用して畝部15の形状を修正する。
畝部15上の最接近曲線を最も大きな重みとし、上記と同様に正規分布曲線f(r)における極値をこの最接近位置として重みを1と設定する。つまり、最接近位置から離間するに従って重みは小さくなる。表2は図24におけるP1〜P4位置の重みを表している。
CPU23は上記プログラムに基づいて畝部15の形状データに対して最接近位置との距離に応じて正規分布曲線f(r)に従って重みを加える修正をする。実施の形態3と同時にこの修正を行うことも可能である。
【0039】
【表2】
【0040】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記修正した実施の形態ではコンピュータ21はシステムバス22を介して接続されたブロックリング加工装置28で加工するようにしていたが、加工用データをなんらかの格納手段(FD、MO等の記録媒体)に記憶させ、別途用意されたブロックリング加工装置で行うようにしてもよい。
・分布図における隙間の分布状態の表現方法は上記に限定されない。
・分布図においては使用するアロイ等の材料の流動性によって許容される隙間は異なるため、例えば、より粘度の大きな材料を使用するのであれば許容される隙間はより大きくなる。
・上記実施の形態では載置されるべき外面累進ブランクの形状データから選択された中間的な形状に基づいてベースとなる畝部15の形状を作成するようにしていたが、他の形状データに基づいてベースとなる畝部15の形状を作成するようにしてもよい。例えば球面あるいは非球面のような立体曲面形状や計算は複雑になるものの単純な平面形状をベースとすることも可能である。
・上記具体的な手法において重みを考慮しない(実施の形態2のように重みW0〜3492=1と設定する)ことで累進面形状関数を計算して、その結果に基づいて外面累進ブランクの外面の形状データp0を作成し、この形状データp0の幾何中心から畝部15の幅と対応する領域について、形状データp0からこの領域のデータを取得してこれを修正した畝部15の形状とするようにしてもよい。
・上記実施の形態3では外面累進ブランクの位置データについて重みWbを算出する際に標準偏差σ=10.0の正規分布曲線f(r)を使用したが、標準偏差は適宜変更して計算することが可能である。
・間隙得点の設定(取得)において上記では最接近位置を1度ずつ取得するようにしたが、これは一例であって、その他の間隔で取得するようにしてもよい。
・ブロックリング11の形状は上記に限定されるものではない。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0041】
11…ブロックリング、15…畝部、13…ブロックピース。
【技術分野】
【0001】
本発明はセミフィニッシュトブランクにブロックピースを装着する際に使用される粘着性接着材料の流動を防止するためにセミフィニッシュトブランクとブロックピースの間に配置されるブロックリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
装用者の処方に応じたプラスチックレンズを加工する場合においては、ごく一般的な処方パターンであれば処方に応じた形状のガラス型枠を使用して前もってレンズを成形し、常備品として確保しておいて適宜提供するようにするのが一般的である。しかし、装用者の細かい処方に応じたり特殊な処方が必要である場合にはそれら処方に応じたレンズを個々に作製しなければならない。そのような場合にはセミフィニッシュトブランクを用意し、この凹面側(内面側)あるいは凸面側(外面側)のいずれかを加工して半オーダーメード的にレンズを作製するようにしている。セミフィニッシュトブランクは常備品と同様にガラス型枠で前もって成形するレンズの前駆体であり、一般に加工装置で凹面側を加工する。このようなセミフィニッシュトブランクを加工して半オーダーメード的にレンズを作製する先行技術として一例として特許文献1を示す。
【0003】
凹面側が加工面であるセミフィニッシュトブランクを加工する場合には切削工具あるいは研削工具方向に加工すべき凹面側を向くように加工装置にセミフィニッシュトブランクを固定しなければならない。そのためセミフィニッシュトブランクの凸面側に加工装置に固定させるためのブロックピースを装着する必要がある。ブロックピースは加工装置に装着してセミフィニッシュトブランクを所定位置に固定させる一種のコネクタである。この際、ブロックピースはレンズを傷つけず、なおかつ凸面上にしっかりと取り付けられなくてはいけない。そのための固定手段として一般に低融点のアロイ(合金)や熱可塑性樹脂、あるいはワックス等の粘着性接着材料を介してブロックピースはセミフィニッシュトブランクに固定される。このような固定手段を一般にブロッキングと称している。ブロッキングされたセミフィニッシュトブランクにブロックピースがブロッキングされた状態を説明する先行技術の一例として特許文献2を挙げる。
ブロックピースを装着するためには図25(a)及び(b)に示すように、斜めの作業面の凹部100内にブロックピース101を配置する。そして凹部100を包囲するようにブロックリング102をセットし、セミフィニッシュトブランク103の外面側(凸面側)をブロックリング102のセミフィニッシュトブランク支持部上に載置する。つまり、ブロックリング102をセミフィニッシュトブランク103とブロックピース101の間に配置する。そして、作業面の最上部位置に配置させた充填口104からアロイのような粘着性接着材料を充填し、この接着材料が固化したところでブロックリング102を取り外すようにしている。つまりブロックリング102の役割はセミフィニッシュトブランク103を安定的に載置させるとともに内部に形成される空間に充填した粘着性接着材料が漏れ出さないようにすることである。特に充填した粘着性接着材が洩れ出さないようにするため、ブロックリング102のセミフィニッシュトブランク支持部とセミフィニッシュトブランク103との間は完全に密着するか、あるいは完全に密着しないまでも粘着性接着材が洩れない程度のごくわずかな隙間に留める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−175149号公報
【特許文献2】特開2004−202679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、セミフィニッシュトブランクが単純な球面あるいは非球面の外面側のカーブを有するものであれば、どのようなカーブであろうとセミフィニッシュトブランク支持部にセミフィニッシュトブランクの凸面がきれいに密着するためブロックリングは一種類で足る。
一方、ブロックピースを装着するセミフィニッシュトブランクの外面に累進屈折面が形成されている場合(以下、そのようなセミフィニッシュトブランクを外面累進ブランクとする)には凸面の形状は一定ではないため、ある加入度でかつあるレンズカーブで形成した外面累進ブランクに対して隙間がないようなセミフィニッシュトブランク支持部のブロックリングを構成したとしても、それとは異なる加入度又はレンズカーブの外面累進ブランクではどうしても隙間が形成されてしまい、それを使用すれば粘着性接着材が洩れ出してしまうこととなる(隙間がごく小さい場合には使用可能である)。
基本的には外面累進ブランク用のブロックリングにはあまり汎用性がないため、累進屈折面に応じた形状のセミフィニッシュトブランク支持部を有するブロックリングを多種類用意しなければならなかった。
本発明は、このような課題に着目してなされたものである。その目的とするところは、外面に累進屈折面を有するセミフィニッシュトブランクのその外面側にブロックピースを装着する際に使用されるブロックリングに汎用性を持たせて加入度又はレンズカーブの異なる多種類のセミフィニッシュトブランクに適用できるようにするためのロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明では、累進屈折力レンズの前駆体である外面側に累進屈折面が形成されたセミフィニッシュトブランクの外面に対してブロックピースを固定する際に使用される粘着性接着材料の流動を防止するために前記セミフィニッシュトブランクと前記ブロックピースの間に配置されるブロックリングであって、
セミフィニッシュトブランク支持部として中央部の透孔を包囲する円環状の壁部の上縁位置に所定の基準面を設計ベースとして変形させた前記透孔を包囲する畝部を形成し、加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件がそれぞれ異なる一群の前記セミフィニッシュトブランクを前記畝部上に載置させるために前記畝部上面形状を以下のa)〜c)の条件となるように設計するようにしたことをその要旨とする。
a)前記畝部上面の周方向において、前記畝部の横断面方向における全幅のすべてを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させずに当該幅方向の一部のみを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる
b)前記畝部上面と交錯する前記粘着性接着材料の充填口を有する場合に前記充填口を除く前記畝部上面の全周において前記畝部を一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる。但し、前記畝部上面に前記セミフィニッシュトブランクが支持されることを前提として周方向に一部当接しない部分があってもよい
c)b)において前記畝部上面と一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面との間に一部当接しない部分がある場合にはその部分における間隔を前記粘着性接着材料が漏れ出さない程度とする
【0007】
また、請求項2の発明では請求項1に記載の発明の構成に加え、前記所定の基準面は立体曲面であることをその要旨とする。
また、請求項3の発明では請求項2に記載の発明の構成に加え、前記立体曲面は一群の前記セミフィニッシュトブランクから選択された所定の前記セミフィニッシュトブランクの累進屈折面形状に合致する形状であることをその要旨とする。
また、請求項4に記載の発明では請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記所定の基準面は複数の前記セミフィニッシュトブランクの形状を合成して設計されることをその要旨とする。
また、請求項5の発明では請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形は前記畝部上面の外周寄りにマイナスのサグ量を与えるものであることをその要旨とする。
また、請求項6の発明では請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形は前記畝部上面の外周寄りの180度対向した2方向にマイナスのサグ量を与えるものであることをその要旨とする。
また、請求項7の発明では請求項2〜5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記変形によって前記ブロックリングの径方向における前記畝部上面の形状は、前記セミフィニッシュトブランクを前記ブロックリングへ載置させた状態での両者の最接近位置が頂点となるような曲線の連続面として構成されることをその要旨とする。
また、請求項8の発明では請求項7に記載の発明の構成に加え、前記曲線は前記セミフィニッシュトブランクへの最接近位置を頂点とするガウス関数の正規分布曲線となることをその要旨とする。
【0008】
また、請求項9の発明では請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記畝部に仮の設計データを与え、その仮の設計データ及び使用する予定の一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面の三次元形状データに基づいて前記畝部に対して前記各セミフィニッシュトブランクを載置した際の当接状態をシミュレーションし、その結果に基づいて前記仮の設計データを修正して再度シミュレーションを行い前記c)の条件についてより好適な設計データを決定するようにしたことをその要旨とする。
また、請求項10の発明では請求項9に記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションにおいては、前記各セミフィニッシュトブランクごとに前記畝部上面との間隙量を評価し、間隙量の大きさに応じて前記セミフィニッシュトブランクに重みを設定し、前記各セミフィニッシュトブランクの重みを考慮して前記仮の設計データを修正し再度シミュレーションを行うようにしたことをその要旨とする。
また、請求項11の発明では請求項10に記載の発明の構成に加え、前記重みは前記畝部の全周に対する前記セミフィニッシュトブランクの最接近位置の隙間量を積算した間隙得点に基づいて前記各セミフィニッシュトブランクごとに求められることをその要旨とする。
また、請求項12の発明では請求項10又は11に記載の発明の構成に加え、前記重みは最接近位置からの離間距離に応じて前記セミフィニッシュトブランクの位置データ毎に設定されることをその要旨とする。
また、請求項13の発明では請求項9〜12のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションは前記各セミフィニッシュトブランクごとに算出された前記間隙得点の分散状態に基づいて行うことをその要旨とする。
また、請求項14の発明では請求項9〜13のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記シミュレーションにおいては前記畝部上面に重複配置される前記セミフィニッシュトブランクの外面の間隔を前記畝部の平面視方向からの分布図として表示手段に表示させるようにしたことをその要旨とする。
【0009】
上記のような構成では、ブロックピースを固定するために外面累進ブランクをブロックリングの畝部上面(外面累進ブランクが当接する載置面)に載置してブロックリングに包囲される内部空間に粘着性接着材料を充填する際に、より多くの種類の外面累進ブランクをその材料が漏れ出すことなく載置させることが可能となる。
ここに、本発明ではより多くの外面累進ブランクに対応できるために上記のように畝部を設計する際にa)〜c)の条件が与えられている。これら条件は要するに特定の外面累進ブランクに畝部の上面を完全に密着させることがないように設計し、たとえ多少の隙間が空いていてもそれが粘着性接着材料が漏れ出さない程度の許容できる隙間であれば構わないような畝部の上面形状として、より多くの外面累進ブランクに対する適合性を向上させるようにしたものである。
a)は畝部上面においてはある所定の幅が与えられているが、載置される外面累進ブランクの外面とはこの幅方向のすべてで当接するのではなく、畝部上面の周方向において当接しない部分を有するように設計することを意味する。すなわち図26(a)〜(d)に示すように、外面累進ブランクBは畝部の横断面方向(径方向)での当接位置は図25(a)のように全幅すべてで当接する場合だけでなく、図26(b)〜(d)のように一部で当接する場合があり、なおかつ当接位置はこれら図に示すように幅方向の内寄り〜外寄りと自由に設定される。これによって以下のb)c)設計をする際の裕度を与えることができる。
b)は基本的に畝部上面の全周において畝部を一群の外面累進ブランクの外面に当接させるが、一部当接しない部分があっても外面累進ブランクが支持され、その部分における隙間がc)のように粘着性接着材料が漏れ出さない程度であればよいということである。基本的には全周囲に渡って外面累進ブランクの外面側と畝部上面とが接することで粘着性接着材料が漏れ出さないわけであるが、接していなくともそれが非常に狭い間隔であれば粘着性接着材料が漏れ出さないため、許容範囲の隙間であれば外面累進ブランクが支持される限りは隙間があいてもよいという設計思想である。
【0010】
畝部を設計する際にはまったく0からその形状を構築するのではなく、所定の基準面をベースとしてその形状を変形させていくものである。所定の基準面としては立体曲面であることが好ましく、更に立体曲面は当該ブロックリングを使用する一群のセミフィニッシュトブランクから選択された既存の所定のセミフィニッシュトブランクの累進屈折面形状に合致する形状であることが好ましい。つまり、当該ブロックリングを使用する予定の外面累進ブランク、例えば加入やカーブの中間的な性質の外面累進ブランクを選択し、その外面累進ブランクを凹凸の関係で支持する形状をベースに変形させていくことが好ましい。つまり、基本的に畝部形状は外面累進ブランクの外面がなるべく隙間なく載置されることから自ずと外面累進ブランクの外面の形状に近い形状であることは間違いないわけであるから、これを変形の出発点とすれば変形量もそれほど大きく設定する必要がないため計算上も都合がよく、設計作業が大きく軽減されることとなる。
また、上記のように既存の所定のセミフィニッシュトブランクの形状をそのまま基準面とするだけでなく、複数のセミフィニッシュトブランクの形状を合成して設計することも可能である。このような形状をベースとするほうが、
このとき選択される複数のセミフィニッシュトブランクは比較的中間的な特徴を備えたものであることが、その後の大きな変形を行わずにすむため、好ましい。
【0011】
また、変形はこのような所定の外面累進ブランクを凹凸の関係で支持する形状をまず畝部のベース形状として、その畝部の外周寄りにマイナスのサグを与える、つまり畝部の外周寄りをベース形状に対してより低くなるように変形させるものであることが好ましい。畝部の外周は全周にサグを与えても必要な方向にのみサグを与えてよい。たとえば180度対向する2方向にサグを同等に与えることが考えられる。このように畝部の外周寄りにマイナスのサグを与える理由は次の通りである。
基本的に外面累進ブランクが載置される畝部の上面は、その外面累進ブランクとまったく同じカーブ形状をベースと考えると図27(a)のように接することとなる。さて、これを基準としてカーブが浅くなっていくと考えた場合に外面累進ブランクは図27(b)のように畝部の外寄りで当接するようになる。この際にベースよりも小さい加入度のブランクを載置すると、当接面はリングの上下方向であり、左右方向には許容以上の隙間が生じてしまう可能性がある。一方、ベースよりも大きい加入度のブランクを載置した場合、当接面はリングの左右方向であり、上下方向に許容以上の隙間が空いてしまう可能性がある。そのため、図26(c)のように畝部上面の外寄りの高さを抑制することでブランク全体をより畝部方向に接近させて当接部分を多くしたり隙間をより狭くするというものである。サグ量を与える際の断面線形状は図26(c)のように与えない内周寄りとは段差なく接続されなおかつ上凸となるように偶関数を用いることが好ましい。
外面累進ブランクは加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件が異なれば異なる外面累進ブランクとなるが、レンズカーブは素材屈折率によって曲率が変わるため、素材屈折率が異なれば自動的に相互にレンズカーブが違う外面累進ブランクである。このように基材屈折率が異なる基材から作製される場合であっても共通したブロックリングが使用できるように畝部を設計することが好ましい。
【0012】
また、畝部の形状に変形を加える場合には、ブロックリングの径方向における畝部上面の形状を、セミフィニッシュトブランクを前記ブロックリングへ載置させた状態での両者の最接近位置が頂点となるような曲線の連続面として構成することが好ましい。これによってブロックリングの畝部上面の形状について内側から外側にかけて変形させることができ、変形の自由度が増すこととなる。また、外面累進ブランクを畝部上面にセットした際に径方向における隙間が多い場合の対応にも好適である。曲線としては例えばセミフィニッシュトブランクへの最接近位置を頂点とするガウス関数の正規分布曲線とすることができる。基本的に正規分布曲線は左右対称なつりがね状の曲線となるが、必ずしも左右対称でなくともよい。
【0013】
また、実際の畝部の設計手法としてはコンピュータの計算によって畝部の形状の設計データを得ることで実現されるが、その際に設計データについて仮の設計値を与え、その仮の設計データ及び使用する予定の一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面の三次元形状データに基づいて前記畝部に対して前記各セミフィニッシュトブランクを載置した際の当接状態をシミュレーションし、その結果に基づいて前記仮の設計データを修正して再度シミュレーションを行い前記c)の条件についてより好適な設計データを決定するようにすることが好ましい。
また、シミュレーションにおいては、前記各セミフィニッシュトブランクごとに畝部上面との間隙量を評価し、間隙量の大きさに応じて前記セミフィニッシュトブランクに重みを設定し、前記各セミフィニッシュトブランクの重みを考慮して前記仮の設計データを修正し再度シミュレーションを行うようにすることが好ましい。これによって、繰り返しシミュレーションを行う際に、好適な畝部の形状とするまでの収束速度が速くなる。また、各セミフィニッシュトブランクの形状特性を考慮した最適な畝部形状を設計することは可能となる。
ここに重みとしては例えば畝部の全周に対するセミフィニッシュトブランクの最接近位置の隙間量を積算した間隙得点に基づいて各セミフィニッシュトブランクごとに求めることが想定される。
また、重みとして最接近位置からの離間距離に応じて前記セミフィニッシュトブランクの位置データ毎に設定するものが想定される。
また、シミュレーションは前記各セミフィニッシュトブランクごとに算出された前記間隙得点の分散状態に基づいて行うことが挙げられる。
また、シミュレーションとして畝部上面に重複配置されるセミフィニッシュトブランクの外面の間隔を畝部の平面視方向からの分布図として表示手段に表示させ、この表示に基づいて行うことが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
上記各請求項の発明では、1つのブロックリングで加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件が異なる多くの外面側に累進屈折面が形成されたセミフィニッシュトブランクを載置させることができることとなりブロックリングの汎用性が増す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態1において使用されるブロックリングの(a)は断面図、(b)は平面図。
【図2】本発明の実施の形態1において使用されるコンピュータの電気的構成を説明するブロック図。
【図3】本発明の実施の形態1を説明するフローチャート。
【図4】畝部のxyz軸方向を説明する説明図。
【図5】4カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを従来のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図6】3カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図7】4カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図8】5カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図9】7カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図10】3カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを修正した実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図11】4カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを修正した実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図12】5カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを修正した実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図13】7カーブ1加入〜3加入の外面累進ブランクを修正した実施の形態1のブロックリングの畝部に載置した場合の隙間の状態をシミュレーションした分布図。
【図14】畝部上面についてベース形状を基準に上下方向にマイナスのサグを与えた状態を説明する説明図。
【図15】畝部上面についてベース形状を基準に左右方向にマイナスのサグを与えた状態を説明する説明図。
【図16】本発明の実施の形態2を説明するフローチャート。
【図17】セミフィニッシュトブランクのxyz軸方向を説明する説明図。
【図18】ある外面累進ブランクの累進面形状関数の係数を導くための二乗和Sとこれを最小にする係数を求める連立一次方程式の関係を説明するイメージ図。
【図19】3つの外面累進ブランクを合成した累進面形状関数の係数を導くための二乗和Sとこれを最小にする係数を求める連立一次方程式の関係を説明するイメージ図。
【図20】ガウス関数の正規分布曲線によってブロックリングの畝部形状を変形させるイメージを説明するイメージ図。
【図21】ブロックリングの畝部位置にガウス関数の正規分布曲線を適用したグラフであって、(a)は標準偏差を1.0とし、(b)は標準偏差を5.0とし、(c)は標準偏差を10.0とした場合。
【図22】畝部の形状を次々と修正していった際にそれぞれの修正バージョンに対して121種類の外面累進ブランクを載置して間隙得点を算出した推移を示すグラフ。
【図23】すべての外面累進ブランクの位置データを考慮した累進面形状関数の係数を導くための二乗和Sとこれを最小にする係数を求める連立一次方程式の関係を説明するイメージ図。
【図24】ガウス関数の正規分布曲線を適用したブロックリングの畝部位置のP1〜P4の位置を説明する説明図。
【図25】(a)及び(b )はブロックリングを使用してブロックピースをセミフィニッシュトブランクに装着する方法を説明する説明図。
【図26】(a)〜(d)は畝部上面と外面累進ブランクとの当接状態を説明する説明図。
【図27】(a)〜(c)は畝部上面の外周寄りにマイナスのサグを与える理由を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法を具体化した各実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1の方法で設計されるブロックリング11の一例である。ブロックリング11は合金製の薄板状の本体12を備えている。本体12は平面視において円形の外郭形状とされ、中央に円形の透孔13が形成されて全体としてリング形状をなしている。本体12の外周の一部には方形の切り欠き14が形成されている。切り欠き14は粘着性接着材料としてのアロイを充填する際の注入容器の収容部とされる。透孔13の周囲の円環状の壁部の上縁位置にはセミフィニッシュトブランク支持部となるリング状の畝部15が形成されている。本実施の形態1では畝部15の外径は96mm、内径は48mm、畝部の幅は10mm、畝部の高さは6mmに設定されている。畝部15上面に外面累進ブランクの外面が載置されることとなる。前記切り欠き14に面した畝部15の一部には内外に連通する溝16が形成されている。溝16から畝部15に包囲された空間にアロイが充填されることとなる。
【0017】
次に、このようなブロックリング11の畝部15設計方法の具体的な実施の形態1について説明する。本発明ではコンピュータ21を使用して畝部15を設計する。設計した畝部15上面に対して使用予定の外面累進ブランクの外面を載置するシミュレーションを繰り返し、最適な畝部上面の立体曲面形状を求める。
図2に示すように、コンピュータ21はシステムバス22に対してCPU23、モニター24、キーボードやマウス等の入力部25、ハードディスクや外付け記憶媒体等から構成される記憶部26、主メモリ27及び加工手段としてのブロックリング加工装置28等がそれぞれ接続されている。主メモリ27には外面累進ブランクの三次元形状データが記憶されるとともに三次元形状データに基づいて畝部15や外面累進ブランクの画像データを作成し、また、作成したグラフィックを加工したりモニター24に所定の表示をさせるグラフィックプログラム、畝部15と外面累進ブランクの位置関係を計算する計算プログラム、加工装置28のシステムプログラム、NC加工プログラム、CL(カッターロケーション)データ作成プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。等の各種プログラムが記憶されている。また、本実施の形態1においては外面累進ブランクの形状データとして東海光学製の屈折率1.6の素材屈折率のものが記憶部26に記憶されている。具体的には3カーブ、4カーブ、5カーブ、7カーブの4種をそれぞれ1加入〜3加入(1.6換算でのカーブ)で作成した計12種の外面累進ブランクの外面の形状データが記憶部26に記憶されているものとする。
制御手段としてのCPU23は入力部25からの指示によって上記プログラムに基づいて畝部15の三次元形状を作成してモニター24に表示させる。また、CPU23は入力部25からの指示によって上記プログラムに基づいて作成した畝部15の三次元形状に対して前もってデフォルトで記憶されている外面累進ブランクの外面を載置させるシミュレーションを実行させ、その結果をモニター24に表示させる。
【0018】
次に、図3のフローチャートに基づいてCPU23の制御下で実行されるブロックリング11の畝部15の設計工程及び設計した畝部15について外面累進ブランクの外面を載置させるシミュレーションの手法を説明する。
ステップS1において入力部25からの指示に基づいてデフォルトで既に記憶部26に記憶されている外面累進ブランクの形状データからベースとなる畝部15の形状が作成される。本実施の形態1では具体的に4カーブ2加入の外面累進ブランクの外面の形状データp0を採用し、この形状データp0の幾何中心から24mm〜34mmが本実施の形態1の畝部15の幅と対応する領域であるため、形状データp0からこの領域のデータを取得してまず畝部15のベース形状データb0とするものとする。ここに、図4に示すように形状データは畝部15の幅方向に対する2次元方向をx軸、y軸方向とし、高さ方向をz軸方向とする。尚、形状データは所定間隔の格子の交点位置をサンプリングしたデータであるため、実際にはデータ間の位置は補完計算によって求めるものとする。この段階におけるベース形状データb0に基づいて補完計算された立体曲面は4カーブ2加入の外面累進ブランクに対して完全に密着する形状となる(図5参照)。
【0019】
次いで、ステップS2において入力部25からの指示に基づいてベース形状データb0に対して所定の変形関数に基づく変形が加えられ、その変形後の立体曲面が畝部15の形状としてモニター24に表示される。ここで変形された畝部15の形状は上記外面累進ブランクとシミュレーションすることによって修正がなければそのままその形状が、修正が加えられれば修正後の形状が決定された畝部15の形状とされる。
ここで、ベース形状データb0は平面方向のx、y座標と高さ方向のz座標から構成されているが、本実施の形態1では下記式を用いてa、bの係数を任意に設定して新たにz座標に付加サグ量Δzを与える(マイナスに与える場合も含める)。
ここに、下記式において、−a*(r−29)2*|cos(θ+(π/2))|は、リングの上下方向に与えるサグ量を定義する。すなわち、この関数は、リングの上下(90度および270度)において、最も大きいマイナスのサグ量を与え、リングの左右(0度および180度)において0となるサグ量を与える。また、その大きさは半径に依存する2次関数として定義されるため、外側ほど大きくサグ量が設定される(大きくカットされる)こととなる。29という数値は畝部15の幅方向の中央位置を示す。
また、−b*(r−29)2*|cosθ|は、リングの左右方向に与えるサグ量を定義する。すなわち、この関数は、リングの上下(0度および180度)において、最も大きいマイナスのサグ量を与え、リングの上下(90度および270度)において0となるサグ量を与える。また、その大きさは半径に依存する2次関数として定義されるため、外側ほど大きくサグ量が設定される(大きくカットされる)こととなる。
【0020】
【数1】
【0021】
上記のように畝部15の形状が求められた段階で、ステップS3において入力部25からの指示に基づいてステップS2で変形させた畝部15の設計に対して上記12種の外面累進ブランクの外面を載置させるシミュレーションを実行させる。
本実施の形態1におけるシミュレーションの手法は次の通りである。
a)畝部15と各外面累進ブランクの幾何中心との位相を対応させ、畝部15の各測点のz軸方向(つまり高さ)と対応する外面累進ブランクの各点のz軸方向を検討する。
b)畝部15の高さを固定し、外面累進ブランクの高さを調整して、外面累進ブランクが畝部15内に埋没しない状態で外面累進ブランクが畝部15に当接する位置s0(上方から下降させた際に最初に畝部15当接する位置)を探し、その状態の外面累進ブランクの幾何中心0の高さh0を取得する。
c)幾何中心0における高さh0位置を傾斜させる原点位置として外面累進ブランク全体を位置s0と幾何中心0とを結ぶ延長方向(つまり幾何中心0を挟んだ対向方向)に向かって大きく傾斜させる。
d)傾斜させることでデータ的に外面累進ブランクが畝部15と交錯(潜り込んでしまう)ため、一旦外面累進ブランクの上方に移動させ、外面累進ブランクが畝部15内に埋没しない状態で外面累進ブランクが畝部15に当接する位置s1を探す。そして、その状態の外面累進ブランクの幾何中心0の高さh1を取得する。
e)これを繰り返し行って幾何中心0の高さhnと高さhn+1を得る。その際に高さhnより高さhn+1が低ければ次回も同じ傾斜角度とする。一方、高さhnより高さhn+1が高くなるような場合では過剰に傾斜させていることになるので、傾斜角度を半減させて設定する。
f)これを繰り返すことで傾斜角度→0に収束することとなり、それが最も幾何中心0位置の低い安定した状態、つまり外面累進ブランクが畝部15上に載置された状態となる。
【0022】
ステップS3でシミュレーションが完了するとステップS4において各外面累進ブランクと畝部15との間隔を畝部15の各側点のz軸位置に対する各外面累進ブランクのz軸位置との差としてx、y軸方向に分布させた分布図がモニター24に表示される。分布図は所定の隙間範囲ごとに等高線によって区分けされるとともに各領域ごとに異なる表現(色やドットの密度等の違い)で一見して区別可能なように表示される。等高線によって区切られる所定の隙間範囲は任意に設定が可能となっている。
ここに、操作する者がモニター24への表示結果から畝部15の形状が好適ではないと判断した場合にはステップS2に戻り、CPU23は入力部25からの新たな指示(改めてベース形状データb0に対する変形関数の係数値の入力)に基づいて畝部15の形状を修正させる。そして、好適なシミュレーション結果が得られるまでステップS2〜S4が繰り返されることとなる。
一方、シミュレーション結果から好適な畝部15の形状が得られていると判断されれば入力部25からの指示によってステップS5でデータをCLデータに変換して加工装置28に出力し、畝部15の加工を実行させる。
【0023】
次に、図5〜図13に基づいて具体的な外面累進ブランクを畝部15上に載置した場合のその間隙のシミュレーション結果についての検証の一例を説明する。図5〜図13は図における上下方向が実際のレンズの上下方向とは逆向き、つまり上側が近用部となり下側が遠用部となるように配置されている。尚、各図において付記されているプラスあるいはマイナスの数値は、外面累進ブランクがブロックリングに当接した状態の方向と角度を表している。方向は図に対して上下左右、角度はリング底面の水平面を基準とした。ここに図5の分布図はベース形状データを変形させていない畝部15を使用した比較例であり、図6〜図9はベース形状データを変形させたシミュレーション結果の分布図である。図10〜図13は図6〜図9の結果を検証した結果に基づいて修正を加えより好適な設計としたシミュレーション結果の分布図である。
図5〜図13の分布図ではドット表示で等高線で区切られた異なる領域を表示するようにしている。ドット密度と隙間の関係は表1の通りである。完全に黒塗りの状態が当接又はほぼ当接であり、以下ドットの密度が低くなるほど隙間が空いている。ドット表示のまったくない領域(0.21mm以上)は隙間が大きすぎて妥当でないとした部分である。本修正した実施の形態1のではドット表示のまったくない領域がリングの内外に連通しているような分布状態では充填したアロイが漏れ出すとしてこのようなシミュレーション結果のものを「不適合」と判断した。
【0024】
【表1】
【0025】
図5は比較例としてベース形状データを変形させないで使用した場合の畝部15上面に4カーブの1加入〜3加入の外面累進ブランクを載置したものである。ベース形状データはそもそも4カーブ2加入の形状に基づいて作成されているため、4カーブ2加入の外面累進ブランクは周方向も幅方向もまったく隙間なく畝部15上面に密着することがシミュレーション結果から分かる。しかし、この畝部15の形状では例えば4加入1カーブでは横方向に大きく隙間が空いてしまっており、アロイが漏れ出すケースであるため不適合ということになる。4加入3カーブでは全周において当接するか当接しないまでも所定以下の隙間で保たれているため適合する。
【0026】
一方、図6〜図9については畝部15の形状を図14のようにベース形状データの上下方向の外方を三日月形状にマイナスのサグ量を与えている。このとき、上記数式1における係数はa=0.045である。
このような変形関数にこのような数値を代入して、サグ量を調整することによって上下方向では外寄りが変形前に比べてなだらかなカーブで構成されている。このような畝部15では、変形前に比べて4加入1カーブの隙間は全周にわたって小さくなり許容範囲となって適合することとなる。しかし、他のカーブまで拡げて全体として見れば依然として不適合な外面累進ブランクは残っている。この場合では1〜3加入3カーブの3種の外面累進ブランクが不適合であった。そこで、図14に図15のような左右方向の外方を三日月形状にマイナスのサグ量を与え畝部15の外側寄りにマイナスのサグ量を与えるようにした。より具体的な数値としては上記数式1における係数はa=0.045、b=0.030である。
これを検証した結果が図10〜図13である。図10〜図13では12種のすべての外面累進ブランクが適合することとなった。
【0027】
上記のような構成とすることで、上記実施の形態1では次のような効果が奏される。
(1)畝部15上面の形状について特定のある外面累進ブランクに密着させる(図5の4カーブ2加入の状態)ようにせず、畝部15の幅方向の一部のみを当接させるように変形させることで、より多くの外面累進ブランクに対する適合性を向上させることが可能となった。この際畝部15の外周寄りにマイナスのサグ量を与えることによって、より多くの外面累進ブランクに対する適合性を向上させることが可能となっている。
(2)畝部15を設計した後で外面累進ブランクを載置するシミュレーションをして両者間の当接状態や隙間の大小を目視でき、それを念頭に畝部15を修正できるため、速やかに多くの外面累進ブランクを載置させるための最適な形状の畝部15を設計することが可能である。
【0028】
(実施の形態2)
実施の形態2は上記実施の形態1において図3のステップS1を変更して実施した場合の例である。
図16に示すように、実施の形態2ではステップS11において記憶部26に記憶されている3種類の外面累進ブランクの形状データに基づいてベースとなる畝部15の形状が作成される。実施の形態1ではある1つの外面累進ブランクの外面の形状データp0をいわば切り取ってそのまま畝部15の形状としていたが、実施の形態2ではより共通性のある形状を出発点とするものである。
ここで、図17に示すように外面累進ブランクの外面の形状データは水平方向をX軸方向とY軸方向とし、これと直交する厚み方向をZ軸方向として立体的なある1つの位置を3軸の位置で示すことができる。本実施の形態2では外面累進ブランクの外面の形状データとして例えば1164箇所の位置データを有するものとする(3軸方向であるからデータとしては実際は3倍)。
このとき、この外面累進ブランクの累進面形状関数は、次の数式のように表すことが可能である。
【0029】
【数2】
【0030】
ここでは次数としてN=10としたが、これは真の値に近づけなるべく滑らかな曲面とするためにある程度の次数を設定するものであり、適宜変更は可能である。上記式においては係数aijを求めることで、一般式が求まることとなる。ここで、係数aijを求める手段として図18に示すような重み付き最小二乗法によることが考えられる。関数による値と目標値との差分の二乗和Sを考え、これが最小となるような係数が求める係数aijとなるはずである。そのためにはSを係数aijで偏微分したN2個(ここでは121個)の式からなる連立一次方程式を解けばよい。この解を求めるため、例えばベクトルを利用した掃き出し法による解法を使用することが考えられる。これによって121個の係数aijを求めることができる。そして、それら係数aijを代入して計算することで上記累進面形状関数の一般式を定義することができる。
さて、実施の形態2では3種類の平均値を得るという発想である。この場合も3つ(3種類)の平均値の外面累進ブランクの累進面形状関数は上記数式のように表すことが可能である。
【0031】
しかし、3つの外面累進ブランクの位置データとして1164×3=3492個の位置データが混在して分散しているため、上記と同様に連立一次方程式を解くようにする。二乗和Sとこれを最小にする連立一次方程式のイメージは図19のごとくである。ここではすべての重みW0〜3492=1に設定されている。つまり、各位置データには軽重はなく、ここでは3つの外面累進ブランクの平均値の集合である累進面形状を求めることになる。
このようにして得られた各係数aijを上記数式に代入して計算することで累進面形状関数の一般式を定義することができる。
【0032】
ステップS11においてはCPU23は入力部25からの指示によって上記プログラムに基づいてこのように外面累進ブランクの外面の形状データp0を作成し、この形状データp0の幾何中心から畝部15の幅と対応する領域(上記実施の形態1と同様ならば24mm〜34mm)について、畝部15のベース形状データb0とするものとする。尚、畝部15の幅と対応する領域はブロックリング11によって必ずしも共通ではないので、、畝部15の幅に合わせて適宜変更して計算する。
ステップS12以下の工程は実施の形態1のステップS2以下と同様であるため、説明は省略する。
【0033】
(実施の形態3)
実施の形態3は上記実施の形態1及び2におけるステップS2で畝部15の形状を修正する際のより具体的な修正手法を説明するものである。実施の形態3では修正手法のみに特化して説明する。
<間隙得点に基づく重みの設定>
各外面累進ブランク毎に畝部15に対する外面累進ブランクの接近状態を重みとして設定する。当該ブロックリング11を使用するすべての外面累進ブランク(ここでは121種類)についてステップS3と同様の操作によってCPU23は当該ブロックリング11の畝部15上に当接させるようにシミュレーションを行い、当該ブロックリング11の全周に渡って載置した外面累進ブランクとブロックリング11(の畝部15)との間隙が最小になる位置(最接近位置)を1度ずつ合計360点設定し、隣接する点の間を補完計算して滑らかな最接近曲線を得る。また、360点のすべての間隙を積算し、それを各外面累進ブランクの間隙得点とする。ここでは間隙得点が大きいこと、つまり間隙量が多いほど重みを大きく設定するようにする。そのため、CPU23は上記プログラムに基づいて各外面累進ブランクの間隙得点を最も大きな間隙得点で除すことで(つまり最も大きな間隙得点を分母とする)各外面累進ブランクの重みWaを算出する。重みWaは各外面累進ブランク毎に1つ定まる。
【0034】
<最接近位置からの離間距離に応じた重みの設定>
当該ブロックリング11の中心Oを通る直線上にある位置データに当該直線上にある最接近位置から離間している距離に応じた重みを設定する。この重みは各外面累進ブランクのすべての位置データに固有に与える重みである。
上記のように最接近曲線を得る。その最接近位置を最大値(つまり平均値)として標準偏差σを変数とする下記の数式のガウス関数の正規分布曲線f(r)を考える。これを当該ブロックリング11の中心Oを通る直線に適用する。
【0035】
【数3】
【0036】
上記式において標準偏差σを変更することで、分布特性を変化させることができる。具体的に説明する。図20のように当該ブロックリング11の中心Oを通るある直線d0を想定する。この直線d0における最接近位置が36.0mm位置にあるとする。ここで例えば、標準偏差σ=1.0と設定すると図21(a)のような急峻な特性となり、標準偏差σ=5.0、標準偏差σ=10.0となると徐々になだらかな特性となるっているのがわかる(図21(b)及び(c))。正規分布曲線f(r)の極値を最接近位置としてこれを重み1と設定する。そして、最接近位置からの距離に応じた重みをこの直線d0上の位置データに与えることを考える。例えば標準偏差σ=1.0であれば、図21(a)から中心から35.0mm位置にある位置データの重みは0.6となる。
本実施の形態3ではCPU23は上記プログラムに基づいて中心Oを通る直線の360度全方向について標準偏差σ=10.0の正規分布曲線f(r)を使用してすべての外面累進ブランクの位置データについて重みWbを算出した。
【0037】
<重みを考慮した累進面形状関数の計算>
CPU23は上記プログラムに基づいて上記2つの重みを与えたすべての外面累進ブランクの位置データに基づいて畝部15の形状を修正する。121種類の外面累進ブランクの位置データとして1164×121=140844に基づいて上記と同様に連立一次方程式を解くようにする。二乗和Sとこれを最小にする連立一次方程式のイメージは図23のごとくである。図23に示すように、各位置データには重みWtが与えられる。重みWtは上記のWaと重みWbの積で求められる。
このようにして、得られた累進面形状に基づいて前回の畝部15の形状を修正し、ステップS3以降を実行する。図22は実施の形態3のように重み付けしながら畝部15の形状を次々と修正していった際にそれぞれの修正バージョンで121種類の外面累進ブランクを載置して間隙得点を算出した推移を折れ線グラフ化したものである。このグラフから修正を繰り返すことで徐々に間隙得点のばらつきがなくなり分散状態が安定していくのがわかる。ここから例えば第3設計の安定したある段階の設計を選択することが妥当と考えられる。
【0038】
(実施の形態4)
実施の形態4は畝部15の形状を上記のガウス関数の正規分布曲線f(r)を使用して変形させる例である。図24に基づいて説明する。実施の形態3では正規分布曲線f(r)は各外面累進ブランクのすべての位置データに固有に与える重みを設定するために使用したが、実施の形態4では特に径方向における畝部15と外面累進ブランクの間隙が多い場合に適用して畝部15の形状を修正する。
畝部15上の最接近曲線を最も大きな重みとし、上記と同様に正規分布曲線f(r)における極値をこの最接近位置として重みを1と設定する。つまり、最接近位置から離間するに従って重みは小さくなる。表2は図24におけるP1〜P4位置の重みを表している。
CPU23は上記プログラムに基づいて畝部15の形状データに対して最接近位置との距離に応じて正規分布曲線f(r)に従って重みを加える修正をする。実施の形態3と同時にこの修正を行うことも可能である。
【0039】
【表2】
【0040】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記修正した実施の形態ではコンピュータ21はシステムバス22を介して接続されたブロックリング加工装置28で加工するようにしていたが、加工用データをなんらかの格納手段(FD、MO等の記録媒体)に記憶させ、別途用意されたブロックリング加工装置で行うようにしてもよい。
・分布図における隙間の分布状態の表現方法は上記に限定されない。
・分布図においては使用するアロイ等の材料の流動性によって許容される隙間は異なるため、例えば、より粘度の大きな材料を使用するのであれば許容される隙間はより大きくなる。
・上記実施の形態では載置されるべき外面累進ブランクの形状データから選択された中間的な形状に基づいてベースとなる畝部15の形状を作成するようにしていたが、他の形状データに基づいてベースとなる畝部15の形状を作成するようにしてもよい。例えば球面あるいは非球面のような立体曲面形状や計算は複雑になるものの単純な平面形状をベースとすることも可能である。
・上記具体的な手法において重みを考慮しない(実施の形態2のように重みW0〜3492=1と設定する)ことで累進面形状関数を計算して、その結果に基づいて外面累進ブランクの外面の形状データp0を作成し、この形状データp0の幾何中心から畝部15の幅と対応する領域について、形状データp0からこの領域のデータを取得してこれを修正した畝部15の形状とするようにしてもよい。
・上記実施の形態3では外面累進ブランクの位置データについて重みWbを算出する際に標準偏差σ=10.0の正規分布曲線f(r)を使用したが、標準偏差は適宜変更して計算することが可能である。
・間隙得点の設定(取得)において上記では最接近位置を1度ずつ取得するようにしたが、これは一例であって、その他の間隔で取得するようにしてもよい。
・ブロックリング11の形状は上記に限定されるものではない。
・その他、本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0041】
11…ブロックリング、15…畝部、13…ブロックピース。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
累進屈折力レンズの前駆体である外面側に累進屈折面が形成されたセミフィニッシュトブランクの外面に対してブロックピースを固定する際に使用される粘着性接着材料の流動を防止するために前記セミフィニッシュトブランクと前記ブロックピースの間に配置されるブロックリングであって、
セミフィニッシュトブランク支持部として中央部の透孔を包囲する円環状の壁部の上縁位置に所定の基準面を設計ベースとして変形させた前記透孔を包囲する畝部を形成し、加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件がそれぞれ異なる一群の前記セミフィニッシュトブランクを前記畝部上に載置させるために前記畝部上面形状を以下のa)〜c)の条件となるように設計することを特徴とするブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
a)前記畝部上面の周方向において、前記畝部の横断面方向における全幅のすべてを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させずに当該幅方向の一部のみを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる
b)前記畝部上面と交錯する前記粘着性接着材料の充填口を有する場合に前記充填口を除く前記畝部上面の全周において前記畝部を一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる。但し、前記畝部上面に前記セミフィニッシュトブランクが支持されることを前提として周方向に一部当接しない部分があってもよい
c)b)において前記畝部上面と一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面との間に一部当接しない部分がある場合にはその部分における間隔を前記粘着性接着材料が漏れ出さない程度とする
【請求項2】
前記所定の基準面は立体曲面であることを特徴とする請求項1に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項3】
前記立体曲面は一群の前記セミフィニッシュトブランクから選択された所定の前記セミフィニッシュトブランクの累進屈折面形状に合致する形状であることを特徴とする請求項2に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項4】
前記所定の基準面は複数の前記セミフィニッシュトブランクの形状を合成して設計されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項5】
前記変形は前記畝部上面の外周寄りにマイナスのサグ量を与えるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項6】
前記変形は前記畝部上面の外周寄りの180度対向した2方向にマイナスのサグ量を与えるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項7】
前記変形によって前記ブロックリングの径方向における前記畝部上面の形状は、前記セミフィニッシュトブランクを前記ブロックリングへ載置させた状態での両者の最接近位置が頂点となるような曲線の連続面として構成されることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項8】
前記曲線は前記セミフィニッシュトブランクへの最接近位置を頂点とするガウス関数の正規分布曲線となることを特徴とする請求項7に記載のセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項9】
前記畝部に仮の設計データを与え、その仮の設計データ及び使用する予定の一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面の三次元形状データに基づいて前記畝部に対して前記各セミフィニッシュトブランクを載置した際の当接状態をシミュレーションし、その結果に基づいて前記仮の設計データを修正して再度シミュレーションを行い前記c)の条件についてより好適な設計データを決定するようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項10】
前記シミュレーションにおいては、前記各セミフィニッシュトブランクごとに前記畝部上面との間隙量を評価し、間隙量の大きさに応じて前記セミフィニッシュトブランクに重みを設定し、前記各セミフィニッシュトブランクの重みを考慮して前記仮の設計データを修正し再度シミュレーションを行うようにしたことを特徴とする請求項9に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項11】
前記重みは前記畝部の全周に対する前記セミフィニッシュトブランクの最接近位置の隙間量を積算した間隙得点に基づいて前記各セミフィニッシュトブランクごとに求められることを特徴とする請求項10に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項12】
前記重みは最接近位置からの離間距離に応じて前記セミフィニッシュトブランクの位置データ毎に設定されることを特徴とする請求項10又は11に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項13】
前記シミュレーションは前記各セミフィニッシュトブランクごとに算出された前記間隙得点の分散状態に基づいて行うことを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のブロックリング
【請求項14】
前記シミュレーションにおいては前記畝部上面に重複配置される前記セミフィニッシュトブランクの外面の間隔を前記畝部の平面視方向からの分布図として表示手段に表示させることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項1】
累進屈折力レンズの前駆体である外面側に累進屈折面が形成されたセミフィニッシュトブランクの外面に対してブロックピースを固定する際に使用される粘着性接着材料の流動を防止するために前記セミフィニッシュトブランクと前記ブロックピースの間に配置されるブロックリングであって、
セミフィニッシュトブランク支持部として中央部の透孔を包囲する円環状の壁部の上縁位置に所定の基準面を設計ベースとして変形させた前記透孔を包囲する畝部を形成し、加入度又はレンズカーブの少なくとも一方の条件がそれぞれ異なる一群の前記セミフィニッシュトブランクを前記畝部上に載置させるために前記畝部上面形状を以下のa)〜c)の条件となるように設計することを特徴とするブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
a)前記畝部上面の周方向において、前記畝部の横断面方向における全幅のすべてを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させずに当該幅方向の一部のみを一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる
b)前記畝部上面と交錯する前記粘着性接着材料の充填口を有する場合に前記充填口を除く前記畝部上面の全周において前記畝部を一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面に当接させる。但し、前記畝部上面に前記セミフィニッシュトブランクが支持されることを前提として周方向に一部当接しない部分があってもよい
c)b)において前記畝部上面と一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面との間に一部当接しない部分がある場合にはその部分における間隔を前記粘着性接着材料が漏れ出さない程度とする
【請求項2】
前記所定の基準面は立体曲面であることを特徴とする請求項1に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項3】
前記立体曲面は一群の前記セミフィニッシュトブランクから選択された所定の前記セミフィニッシュトブランクの累進屈折面形状に合致する形状であることを特徴とする請求項2に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項4】
前記所定の基準面は複数の前記セミフィニッシュトブランクの形状を合成して設計されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項5】
前記変形は前記畝部上面の外周寄りにマイナスのサグ量を与えるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項6】
前記変形は前記畝部上面の外周寄りの180度対向した2方向にマイナスのサグ量を与えるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項7】
前記変形によって前記ブロックリングの径方向における前記畝部上面の形状は、前記セミフィニッシュトブランクを前記ブロックリングへ載置させた状態での両者の最接近位置が頂点となるような曲線の連続面として構成されることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項8】
前記曲線は前記セミフィニッシュトブランクへの最接近位置を頂点とするガウス関数の正規分布曲線となることを特徴とする請求項7に記載のセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項9】
前記畝部に仮の設計データを与え、その仮の設計データ及び使用する予定の一群の前記セミフィニッシュトブランクの外面の三次元形状データに基づいて前記畝部に対して前記各セミフィニッシュトブランクを載置した際の当接状態をシミュレーションし、その結果に基づいて前記仮の設計データを修正して再度シミュレーションを行い前記c)の条件についてより好適な設計データを決定するようにしたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項10】
前記シミュレーションにおいては、前記各セミフィニッシュトブランクごとに前記畝部上面との間隙量を評価し、間隙量の大きさに応じて前記セミフィニッシュトブランクに重みを設定し、前記各セミフィニッシュトブランクの重みを考慮して前記仮の設計データを修正し再度シミュレーションを行うようにしたことを特徴とする請求項9に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項11】
前記重みは前記畝部の全周に対する前記セミフィニッシュトブランクの最接近位置の隙間量を積算した間隙得点に基づいて前記各セミフィニッシュトブランクごとに求められることを特徴とする請求項10に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項12】
前記重みは最接近位置からの離間距離に応じて前記セミフィニッシュトブランクの位置データ毎に設定されることを特徴とする請求項10又は11に記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【請求項13】
前記シミュレーションは前記各セミフィニッシュトブランクごとに算出された前記間隙得点の分散状態に基づいて行うことを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のブロックリング
【請求項14】
前記シミュレーションにおいては前記畝部上面に重複配置される前記セミフィニッシュトブランクの外面の間隔を前記畝部の平面視方向からの分布図として表示手段に表示させることを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載のブロックリングにおけるセミフィニッシュトブランク支持部の設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図22】
【公開番号】特開2013−11634(P2013−11634A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125823(P2011−125823)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
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