説明

ブロック共重合体の製造方法、それに用いる触媒組成物、およびブロック共重合体

【課題】メタロセン錯体を用いた共重合体の新規な製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のブロック重合体の製造方法は、(1)第3族金属原子またはランタノイド金属原子である中心金属M、該中心金属に結合した置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体を含む配位子Cp*、モノアニオン配位子QおよびQ、ならびにW個の中性ルイス塩基Lを含む、一般式(I)で表されるメタロセン錯体、および(2)非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物を含んでいる触媒組成物を触媒として、環上にエステル結合またはエーテル結合を含んでおり極性を示す複素環式の脂肪族化合物の単量体と、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体とを共重合させる工程を包含する。
【化1】


(式中、Wは0〜3の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体の製造方法、それに用いる触媒組成物、およびブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロセン錯体は、種々の重合反応の触媒成分のひとつとして利用されている化合物であり、1つまたは2つ以上のシクロペンタジエニルまたはその誘導体が、その中心金属に結合している錯体化合物である。その中でも、中心金属に結合しているシクロペンタジエニルまたはその誘導体が1つであるメタロセン錯体を、ハーフメタロセン錯体などと称することがある。
【0003】
メタロセン錯体は、その中心金属の種類によってその特性(重合反応に対する触媒活性を含む)が全く異なる。中心金属が第3族金属またはランタノイド金属原子であるメタロセン錯体について、例えば以下の報告がされている。
【0004】
1.構造式(II)に代表される錯体が、重合触媒系の成分として用いることができると開示されている(特許文献1参照)。当該文献において開示されている錯体は、シクロペンタジエニル(またはその誘導体)を有する架橋型配位子を含むことを特徴としている。構造式(II)において、Mは、第3族金属原子またはランタノイド金属原子であり、Aは、シクロペンタジエニル誘導体を含む配位子であり、Qは、モノアニオン配位子であり、Lは、W個の中性ルイス塩基であり、Wは0〜3の整数である。
【0005】
【化1】

【0006】
2.(CMe5)LnH(THF)(Lnは第3族金属またはランタノイド金属を表す。以下において同様である。)によって表されるヒドリド錯体が知られている(例えば非特許文献1参照)。該ヒドリド錯体の前駆体として用いられる(CMeSiMe)Ln(CHSiMe(THF)によって表される錯体も知られている。
【0007】
また、(CMeSiMe)LnH(THF)のうち、[(CMeSiMe)YH(THF)(4核錯体)は、スチレンと反応して1:1付加体を与え、重合活性は示さないと報告されている(例えば非特許文献5参照)。
【0008】
3.前記した(CMeSiMe)Ln(CHSiMe(THF)のうち、Lnがイットリウム(Y)である錯体は、スチレンに対する重合活性を示さないことが知られている(非特許文献2参照)。
【0009】
4.また、(CMeSiMe)La(CH(SiMe(THF)なる錯体が知られている。この錯体は、単独にか、またはメチルアミノキサン(MAO)と組み合わせて、ポリスチレン重合の触媒となり得て、アタクチックポリスチレンを与えることが報告されている(非特許文献3参照)。
【0010】
一方、スチレン重合体は、一般グレードポリスチレン(GPPS)または耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)などと称されるアタクチックなスチレン重合体の他に、メタロセン錯体を用いる重合反応によって得られるシンジオタクチックなスチレン重合体(sPS)が工業的に生産されている。sPSの合成は、1986年に出光興産から発表されており、チタニウムメタロセン錯体を含む触媒系を用いて合成されている(例えば、非特許文献4参照)。該触媒系としては、主にCpTiX/MAO、およびCpTiR/B(C(Cpは置換または無置換のシクロペンタジエニルまたはインデニル:Xはハライドまたはアルコキシ:Rはアルキル:MAOはメチルアルミノキサン)などが用いられている。
【0011】
このようにして合成されるsPSは、高いシンジオタクチシティーを有するものの、分子量分布がややブロードであるという特徴があり(例えば、特許文献2〜3参照)、より狭い分子量分布を有するsPSは興味が持たれる化合物である。
【0012】
sPSは、高融点(約270℃)を有し、結晶性がよく、耐熱性、耐薬品性および寸法安定性などに優れるといった利点があるので、広く工業的に利用されているポリマーである。しかし、sPSには成形加工の困難さが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第WO00/18808号パンフレット(2000年4月6日公開)
【特許文献2】特開昭62−104818号公報(1987年5月15日公開)
【特許文献3】特開昭62−187708号公報(1987年8月17日公開)
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Z. Hou et al., Organometallics, 22, 1171 (2004)
【非特許文献2】J. Okuda et al., Angew. Chem. Int. Ed., 38, 227 (1999)
【非特許文献3】K. Tanaka, M. Furo, E. Ihara, H. Yasuda, J. Polym. Sci. A: Polym. Chem. 39, 1382 (2001)
【非特許文献4】N, Ishihara et al., Macromolecules, 19, 2464 (1986)
【非特許文献5】Z. Hou et al., J. Am. Chem. Soc., 126, 1312 (2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
メタロセン錯体(特に中心金属を第3族金属またはランタノイド金属とするメタロセン錯体)の重合触媒成分としての有用性は、いまだ十分に解明されたとは言えない。特に、sPSに官能基(例えば水酸基、アミン基またはエーテル基など)を導入することは、以前から工業的に注目され、種々の研究が試みられているが、その成功例は非常に限られたものでしかない。その例としては、Y. Lu, Y. Hu, T.C. Mike Chung, Polymer, 2005, 46, 10585.が挙げられる。しかし、この文献に記載の方法では、ポリスチレンの末端にアルキルボロン(BR)を導入し、当該ボロンを酸化してOH基を導入し、さらに当該OH基を、金属イオンを含む基と置換するという、多段階の反応によって、後のブロック共重合体の合成を可能にしている。このような合成方法は、各反応条件の最適化および中間生成物の精製などを考慮すると、非常に煩雑である。そして、例えば、これ以外の方法にしたがって重合させる場合、極性の単量体とオレフィンの重合に伴って、一般的に触媒毒または不活性化といった不都合が生じるので、sPSに極性の単量体を重合させることは、依然として非常に困難である。
【0016】
本発明はメタロセン錯体を用いたブロック共重合体の新規な製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るブロック共重合体の製造方法は、(1)第3族金属原子またはランタノイド金属原子である中心金属M、該中心金属に結合した置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体を含む配位子Cp*、モノアニオン配位子QおよびQ、ならびにW個の中性ルイス塩基Lを含む、一般式(I)で表されるメタロセン錯体、および
(2)非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物
を含んでいる触媒組成物を触媒として、
環内にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる複素環式の脂肪族化合物の単量体と、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体とを共重合させる工程を包含する。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、Wは0〜3の整数を表す。)
上記の方法によれば、単一の触媒を用いることによって、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体に対して、直接かつ簡便に、環内にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる複素環式の脂肪族化合物の単量体を共重合させることができる。つまり、上記の方法によれば、上記重合体に反応性の官能基を導入することなく、一段階の反応によって非常に簡便に上記のようなブロック共重合体を得ることができる。
【0020】
また、本発明の製造方法において、スチレン単位からなる上記重合体ブロックを含んでいる上記重合体を、上記触媒を用いて溶液重合によって調製する工程をさらに包含し、上記単量体と上記重合体とを共重合させる上記工程が、上記溶液重合後の反応液に上記単量体を加えて、当該触媒の作用によって当該重合体ブロックと当該単量体とを共重合させる工程であることが好ましい。
【0021】
上記の方法は、一段階目の重合反応が終了した反応液に対して、次の重合体の材料を加えることによって、一段階目の反応と同じ、活性を維持している触媒を用いて、ブロック共重合を行う反応、すなわちリビング重合を利用した反応である。このように、上記の方法では、各ブロックの重合に同じ反応液および触媒を使用することができ、各ブロックの重合後に生成物を精製することなく、単に次の重合体ブロックの材料を加えて反応させるだけで、ブロック共重合体が得られる。したがって、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体と、上記単量体とを共重合させることが非常に簡単である。
【0022】
また、本発明の製造方法において、上記中心金属Mが第3金属原子であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の製造方法において、上記中心金属Mがスカンジウム(Sc)またはイットリウム(Y)であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の製造方法において、上記中心金属Mがスカンジウム(Sc)であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の製造方法において、上記置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体が、
シクロペンタジエニル環(組成式:C5−X1X1;X1は0〜5の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)、フルオレニル環(組成式:C139−X2X2;X2は0〜9の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)またはオクタヒロドフルオレニル環(組成式:C1317−X3X3;X3は0〜17の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の製造方法において、上記置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体が、
シクロペンタジエニル環(組成式:C5−X1X1;X1は0〜5の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)であることが好ましい。
【0027】
また、本発明の製造方法において、上記置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体が、
シクロペンタジエニル環(組成式:C5−X11’X1;X1は0〜5の整数を示し、R1’は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルキル基を置換基として有してもよいシリル基を示す)であることが好ましい。
【0028】
また、本発明の製造方法において、上記置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体が、
シクロペンタジエニル環(組成式:C5−X11’’X1;X1は0〜5の整数を示し、R1’’はメチル基またはトリメチル基を示す)であることが好ましい。
【0029】
また、本発明の製造方法において、上記QおよびQが、それぞれ独立して、置換または無置換の、ヒドリド、ハライド、炭素数1〜20のヒドロカルビル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミド基またはホスフィノ基のモノアニオン配位子である(ただし、上記QおよびQは互いに結合するかまたは一緒になってジアニオン配位子になっていてもよい)ことが好ましい。
【0030】
また、本発明の製造方法において、上記QおよびQが、それぞれ独立して、炭素数1〜20の置換基を有してよいヒドロカルビル基であることが好ましい。
【0031】
また、本発明の製造方法において、上記QおよびQが、それぞれ独立して、オルト−ジメチルアミノベンジル基、トリメチルシリル基またはメトキシフェニル基であることが好ましい。
【0032】
また、本発明の製造方法において、上記中性ルイス塩基Lは、テトラヒドロフランであることが好ましい。
【0033】
また、本発明の製造方法において、スチレン単位からなる上記重合体ブロックを含んでいる上記重合体が、共役ジエン単位からなる重合体ブロックをさらに含んでいることが好ましい。
【0034】
また、本発明の製造方法において、その側鎖においてシンジオタクチックな立体規則性を有する芳香族基を含んでおり、シンジオタクチシティーが80rrrr%以上であることが好ましい。
【0035】
また、本発明の製造方法において、スチレン単位からなる上記重合体ブロックが、ポリ(アルキル化)スチレンまたはポリビニルナフタレンであることが好ましい。
【0036】
また、本発明の製造方法において、上記単量体が、3員環、4員環、6員環または7員環の複素環式化合物であること好ましい。
【0037】
また、本発明の製造方法において、上記単量体が、ラクトン、エポキシドまたはラクチドであることが好ましい。
【0038】
また、本発明の製造方法において、上記単量体が、カプロラクトン、バレロラクトン、ラクチド、プロピレンオキシドまたはシクロヘキセンオキシドであることが好ましい。
【0039】
本発明の触媒組成物は、(1)第3族金属原子またはランタノイド金属原子である中心金属M、該中心金属に結合した置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体を含む配位子Cp*、モノアニオン配位子QおよびQ、ならびにW個の中性ルイス塩基Lを含む、一般式(I)で表されるメタロセン錯体、および
(2)非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物
を含んでおり、
環内にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる複素環式の脂肪族化合物の単量体と、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体とを共重合させる触媒組成物である。
【0040】
【化3】

【0041】
(式中、Wは0〜3の整数を表す。)
また、本発明のブロック共重合体は、スチレン単位からなる重合体ブロック、共役ジエン単位からなる重合体ブロックおよび主鎖にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる炭化水素鎖の単位からなる、重合体ブロックを含んでいる。
【0042】
また、本発明のブロック共重合体において、スチレン単位からなる上記重合体ブロックにおけるシンジオタクチシティーが80rrrr%以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、メタロセン錯体の新規な用途である、ポリエチレンと極性単量体とを共重合させるブロック共重合体の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1において得られたシンジオタクチックポリスチレン−ポリカプロラクトンのジブロック共重合体のGPCプロファイルを示す。
【図2】実施例1において得られたジブロック共重合体のDSC曲線を示す。
【図3】実施例1において得られたジブロック共重合体の13C NMRスペクトルチャートを示す。
【図4】実施例1において得られたジブロック共重合体のH NMRスペクトルチャートを示す。
【図5】実施例2において得られたシンジオタクチックポリスチレン−ポリイソプレン−ポリカプロラクトンのトリブロック共重合体のGPCプロファイルを示す。
【図6】実施例2において得られたトリブロック共重合体のDSC曲線を示す。
【図7】実施例2において得られたトリブロック共重合体の13C NMRスペクトルチャートを示す。
【図8】実施例2において得られたトリブロック共重合体のH NMRスペクトルチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明に係るブロック共重合体の製造方法(以下、単に「本発明に係る製造方法」という。)は、後述の触媒組成物(以下、単に「本発明に係る触媒組成物」という。)を触媒として、環内にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる複素環式の脂肪族化合物の単量体と、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体とを、共重合させる工程(以下、「重合工程A」ともいう。)を包含する。これにより、新規の共重合体を得ることができる。
【0046】
〔本発明に係る触媒組成物〕
本発明に係る触媒組成物は、メタセロン錯体、ならびに非配位性のアニオンおよびカチオンからなるイオン性化合物を含んでいる。当該メタセロン錯体は、第3族金属原子またはランタノイド金属原子である中心金属M、該中心金属に結合した置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体を含む配位子Cp*、モノアニオン配位子QおよびQ、ならびにW個の中性ルイス塩基Lを含み、一般式(I)によってその構造が表される。当該錯体は、好ましくはハーフメタロセン錯体である。
【0047】
(一般式(I)のメタセロン錯体)
一般式(I)において、Mはメタロセン錯体における中心金属である。中心金属Mは第3族金属またはランタノイド金属である。本発明で用いるメタロセン錯体は、重合触媒組成物の一構成成分として用いることができるので、中心金属Mは、重合させようとするモノマーの種類などによって適宜選択される。中でも第3族金属が好ましく、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)がより好ましく、Scがさらに好ましい。
【0048】
また、置換または無置換のスチレンを重合する場合は、いずれの第3族金属またはランタノイド金属を用いてもよいが、例えば、中心金属MはSc、Gd、Y、Luであることが好ましい。
【0049】
一般式(I)においてCp*は、シクロペンタジエニル誘導体を含む配位子であり、中心金属Mにπ結合している。該配位子は、例えば非架橋型配位子である。ここで、非架橋型配位子とは、シクロペンタジエニル誘導体が中心金属にπ結合して、シクロペンタジエニル誘導体以外の配位原子または配位基を有していない配位子を意味する。また、該配位子は、例えば架橋型配位子である。ここで架橋型配位子とは、シクロペンタジエニル誘導体に加えて、さらに配位原子または配位基を有している配位子を意味する。
【0050】
Cp*に含まれる置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体としては、例えば、シクロペンタジエニル環、フルオレニル環もしくはオクタヒロドフルオレニル環等の非架橋型配位子および架橋型配位子が挙げられる。
【0051】
中でも、最も好ましいシクロペンタジエニル誘導体は、シクロペンタジエニル環である。シクロペンタジエニル環は、組成式:C5−X1X1で表される。ここでX1は0〜5の整数を表す。Rはそれぞれ独立して、ヒドロカルビル基、置換ヒドロカルビル基、またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す。好ましくは、組成式:C5−X1X1(X1は0〜5の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)で表されるシクロペンタジエニル環であり、より好ましくは、組成式:C5−X11’X1(X1は0〜5の整数を示し、R1’は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルキル基を置換基として有してもよいシリル基を示す)で表されるシクロペンタジエニル環であり、さらに好ましくは、組成式:C5−X11’’X1(X1は0〜5の整数を示し、R1’’はメチル基、トリメチル基またはメトキシフェニル基を示す)で表されるシクロペンタジエニル環である。
【0052】
また、ヒドロカルビル基は、好ましくは炭素数1〜20のヒドロカルビル基であるが、より好ましくは炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基、フェニル基、ベンジル基などであり、最も好ましくはメチル基である。
【0053】
また、置換基を有するヒドロカルビル基としては、例えば、ヒドロカルビル基の少なくとも1の水素原子が、ハロゲン原子、アミド基、ホスフィド基、アルコキシ基、またはアリールオキシ基などで置換されたヒドロカルビル基が挙げられる。
【0054】
また、ヒドロカルビル基が置換したメタロイド基におけるメタロイドは、例えば、ゲルミル(Ge)、スタニル(Sn)、シリル(Si)などが挙げられる。また、メタロイド基に置換したヒドロカルビル基の置換数は、メタロイドの種類によって決定される(例えばシリル基の場合は、ヒドロカルビル基の置換数は3である)。
【0055】
なお、好ましくは、シクロペンタジエニル環のRの少なくとも一つが、ヒドロカルビル基が置換したメタロイド基(好ましくはシリル基)であり、より好ましくはトリメチルシリル基である。
【0056】
好ましいシクロペンタジエニル環としては、以下の構造式で表されるものが例示されるが、これらに限定されることはない。
【0057】
【化4】

【0058】
また、フルオレニル環としては、例えば組成式:C139−X2X2(X2は0〜9の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)で表されるものが挙げられる。
【0059】
また、オクタヒロドフルオレニル環としては、例えば組成式:C1317−X3X3(X3は0〜17の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)で表されるものが挙げられる。
【0060】
また、配位子Cp*に含まれるシクロペンタジエニル誘導体は、インデニル環(組成式:C7−X4X4)またはテトラヒドロインデニル環(組成式:C11−X5X5)などでもよい。ここでRは前記したシクロペンタジエニル環のRと同様であり、X4は0〜7の整数であり、X5は0〜11の整数である。
【0061】
一般式(I)で表される錯体において、QおよびQはモノアニオン配位子である。QおよびQは、例えば、それぞれ独立して、置換または無置換の、ヒドリド、ハライド、炭素数1〜20のヒドロカルビル基、アルコキシ基またはアリールオキシ基、アミド基またはホスフィノ基のモノアニオン配位子が挙げられるがこれらに限定されない。中でもQおよびQは、それぞれ独立して、炭素数1〜20の置換基を有してよいヒドロカルビル基であることが好ましく、それぞれ独立して、オルト−ジメチルアミノベンジル基またはトリメチルシリル基であることがより好ましい。
【0062】
また、QおよびQは互いに結合するか、あるいは一緒になって、ジアニオン性の配位子(ジアニオン配位子)となっていてもよい。ジアニオン性の配位子としては、アルキリデン、ジエン、シクロメタル化されたヒドロカルビル基、二座のキレート配位子などが挙げられる。
【0063】
ハライドとしては、例えばクロリド、ブロミド、フルオリド、アイオダイドが挙げられる。
【0064】
炭素数1〜20のヒドロカルビル基としては、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ベンジル基などの無置換ヒドロカルビル基のほか、置換ベンジル基、トリアルキルシリルメチル基、ビス(トリアルキルシリル)メチル基などの置換ヒドロカルビル基でもよい。好ましいヒドロカルビル基の例には、置換または無置換ベンジル基、トリアルキルシリルメチル基が挙げられ、さらに好ましい例にはオルト−ジメチルアミノベンジル基やトリメチルシリルメチル基が挙げられる。
【0065】
アルコキシ基またはアリールオキシ基としては、好ましくはメトキシ基、置換または無置換のフェノキシ基などを例示できる。
【0066】
アミド基としては、好ましくはジメチルアミド基、ジエチルアミド基、メチルエチルアミド基、ジ−t−ブチルアミド基、ジイソプロピルアミド基、無置換または置換ジフェニルアミド基などを例示できる。
【0067】
ホスフィノ基としては、好ましくはジフェニルホスフィノ基、ジシクロヘキシルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジメチルホスフィノ基などを例示できる。
【0068】
アルキリデンとしては、好ましくはメチリデン、エチリデン、プロピリデンなどを例示できる。
【0069】
シクロメタル化されたヒドロカルビル基としては、好ましくはプロピレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレンなどを例示できる。
【0070】
一般式(I)で表される錯体において、Lは中性ルイス塩基である。中性ルイス塩基としては、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウムなどが挙げられ、好ましくはテトラヒドロフランである。
【0071】
また、LはQおよび/またはQと結合して、いわゆる多座配位子となっていてもよい。
【0072】
一般式(I)におけるLのWは、中性ルイス塩基Lの個数を表す。Wは0〜3の整数であり、好ましくは0〜1である。
【0073】
本発明で用いるメタロセン錯体は、従来公知の方法で合成することができ、例えば(1)Tardif, O.; Nishiura, M.; Hou, Z. M. Organometallics 22, 1171, (2003).、(2)Hultzsch, K. C.; Spaniol, T. P.; Okuda, J. Angew. Chem. Int. Ed, 38, 227, (1999).等に記載された方法に従って合成することができる。また、後述の実施例にも、これらの錯体の製造方法の具体例が記載されている。
【0074】
(イオン性化合物)
本発明に係る触媒組成物はイオン性化合物を含む。イオン性化合物とは、非配位性アニオンとカチオンからなるものである。イオン性化合物は、前記したメタロセン錯体と組み合わされることにより、メタロセン錯体に重合触媒としての活性を発揮させる。そのメカニズムとして、イオン性化合物が、メタロセン錯体と反応し、カチオン性の錯体(活性種)を生成させると考えることができる。
【0075】
イオン性化合物の構成成分である非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが好ましく、テトラ(フェニル)ボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル,ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル),フェニル]ボレート、トリデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレートなどが挙げられる。これらの非配位性アニオンのうち、好ましくはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートである。
【0076】
イオン性化合物の構成成分であるカチオンの例には、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが含まれる。
【0077】
カルボニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ置換フェニルカルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンが挙げられる。トリ置換フェニルカルボニウムカチオンとしては、例えば、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンが挙げられる。
【0078】
アンモニウムカチオンとしては、例えば、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンが挙げられる。
【0079】
ホスホニウムカチオンとしては、例えば、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0080】
これらのカチオンのうち、好ましくはアニリニウムカチオンまたはカルボニウムカチオンであり、さらに好ましくはトリフェニルカルボニウムカチオンである。
【0081】
すなわち、本発明に係る触媒組成物に含まれるイオン性化合物は、前記した非配位性アニオンおよびカチオンからそれぞれ選ばれるものを組み合わせたものであり得る。
【0082】
好ましくは、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1,1’−ジメチルフェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが例示される。イオン性化合物は1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
これらのイオン性化合物のうち、特に好ましいものは、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
【0084】
また、遷移金属化合物と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成させることができるルイス酸である、B(C、Al(Cなどをイオン性化合物として用いてもよく、これらを前記のイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。
【0085】
また、アルキルアルミ化合物(アルミノオキサン、好ましくはMAOまたはMMAO)、またはアルキルアルミ化合物とボレート化合物との組み合わせを、イオン性化合物として用いることができる。また、他のイオン性化合物と組み合わせて用いてもよい。特に、一般式(I)中のモノアニオン配位子QおよびQが、アルキルまたはヒドリド以外である場合(例えばハロゲンである場合)は、アルキルアルミ化合物、またはアルキルアルミ化合物とボレート化合物の組み合わせを用いることが好ましい。
【0086】
〔本発明に係る触媒組成物に含まれるその他の任意成分〕
本発明に係る触媒組成物は、メタロセン錯体およびイオン性化合物以外にも、任意の成分を含むことができる。任意の成分とは、例えば、アルキルアルミ化合物、シラン化合物、水素などが挙げられる。
【0087】
アルキルアルミ化合物は、メタロセン重合触媒で用いられるアルミノオキサン(アルモキサン)と称される有機アルミニウム化合物を含む。例えば、メチルアルミノキサン(MAO)などが挙げられる。
【0088】
シラン化合物としては、例えば、フェニルシランなどが挙げられる。
【0089】
(本発明に係る触媒組成物における各成分の組成)
本発明に係る触媒組成物において、イオン性化合物のメタロセン錯体に対するモル比率は、錯体およびイオン性化合物の種類によって異なる。
【0090】
モル比率は、例えば、イオン性化合物がカルボニウムカチオンとホウ素アニオンとからなるもの(例えば[PhC][B(C])である場合は0.5〜1であることが好ましく、MAOなどである場合は300〜4000程度であることが好ましい。
【0091】
イオン性化合物は、メタロセン錯体をイオン化、即ちカチオン化させて、触媒活性種とすると考えられるため、上記したモル比率にすることで、十分にメタロセン錯体を活性化することができる。また、上記したモル比率であれば、カルボニウムカチオンとホウ素アニオンからなるイオン性化合物が、重合反応させるべきモノマーと反応してしまうことを抑制できる。
【0092】
また、ルイス塩基Lがオレフィンモノマーの活性中心への配位を阻害するおそれがあると考えられるので、W=0である一般式(I)で表される錯体が、本発明に係る触媒組成物に含まれるメタロセン錯体として好ましいと考えることもできる。
【0093】
本発明に係る触媒組成物は、重合触媒組成物(特に付加重合触媒組成物)として用いられることができる。
【0094】
例えば、(1)各構成成分(メタロセン錯体およびイオン性化合物など)を含む組成物を重合反応系中に提供する、あるいは(2)各構成成分を別個に重合反応系中に提供し、反応系中において組成物を構成させることにより、重合触媒組成物として用いることができる。
【0095】
上記(1)において、「組成物として提供する」とは、イオン性化合物との反応により活性化されたメタロセン錯体(活性種)を提供することを含む。
【0096】
また、本発明に係る触媒組成物は、ホモ重合反応だけでなく、共重合反応における重合触媒組成物として用いることもできる。共重合される単量体は付加重合性があればよい。
【0097】
〔本発明に係る製造方法に用いる材料〕
上述のように、本発明に係る製造方法は、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体、および環内にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる複素環式の脂肪族化合物を必須の材料として使用する。これらの詳細について以下に説明する。
【0098】
(スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体)
本発明の製造方法における共重合反応には、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体を使用する。当該重合体ブロックは、置換されたスチレン単位、無置換のスチレン単位、またはこれらの組合せから構成される。ここで、置換されたスチレン単位は、多種類であり得る。置換されたスチレン単位が有する置換基としては、特に限定されないが、例えば、例えば、フェニル環上における、ハロゲン原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、アルキルシリル基、カルボキシアルキル基などが挙げられる。置換されたスチレン単位のフェニル環上に存在する置換基の数は、特に限定されないが、好ましくは1〜3個、より好ましくは1個である。なお、置換または無置換のスチレンのうち、最も好ましくは無置換のスチレンである。
【0099】
置換されたスチレン単位の置換基の種類および置換される位置としては、より詳には以下の通りである。
(1)p−メチル、m−メチル、o−メチル、2,4−ジメチル、2,5−ジメチル、3,4−ジメチル、3,5−ジメチル、p−ターシャリーブチルなどのアルキル
(2)p−クロロ、m−クロロ、o−クロロ、p−ブロモ、m−ブロモ、o−ブロモ、p−フルオロ、m−フルオロ、o−フルオロ、o−メチル−p−フルオロなどのハロゲン
(3)p−クロロメチル、m−クロロメチル、o−クロロメチルなどのハロゲン置換アルキル
(4)p−メトキシ、m−メトキシ、o−メトキシ、p−エトキシ、m−エトキシ、o−エトキシなどのアルコキシ
(5)p−カルボキシメチル、m−カルボキシメチル、o−カルボキシメチルなどのカルボキシアルキル
(6)p−トリメチルシリルなどのアルキルシリル。
【0100】
スチレン単位からなる重合体ブロックは、立体規則性を有するシンジオタクチックポリスチレンであることが好ましい。本明細書において「シンジオタクチック」とは、隣合うスチレン単位におけるフェニル環が、重合体ブロックの主鎖によって形成される平面に対して交互に配置(以下において、シンジオタクチシティーと記載する)されている割合が高いことを意味する。スチレン単位からなる重合体ブロックが有するシンジオタクチシティーは、ペンタッド表示において80rrrr%(例えば、好ましくは85rrrr%、より好ましくは90rrrr%、特に好ましくは95rrrr%、最も好ましくは99rrrr%)以上である。これらのシンジオタクチシティーは、本発明のブロック共重合体のNMR(特に13C−NMR)を測定して得られるデータから算出することができる。この算出について、後述の実施例において具体的に説明した。
【0101】
本発明に係る製造方法に用いられる重合体に含まれるスチレン単位からなる重合体ブロックは、例えば、ポリ(アルキル化)スチレンまたはポリビニルナフタレンなどである。
【0102】
また、本発明に係る製造方法に用いられる重合体には、共役ジエン単位からなる重合体ブロックが含まれ得る。当該重合体ブロックを構成する共役ジエンは、例えば、鎖状の共役ジエンまたは環状の共役ジエンである。このような共役ジエンの例としては、イソプレン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4−ジメチル−1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、およびシクロヘキサジエンなどが挙げられる。
【0103】
上述のような、シンジオタクチックなポリスチレンの重合体ブロックを含んでいる重合体は、本発明に係る触媒組成物を用いて、以下のような条件において重合し得る。なお、以下において、シンジオタクチックなポリスチレンの重合体ブロックを含んでいる重合体の重合工程を、ポリスチレンの重合段階であれば重合工程Bと記載し、ポリスチレン−ポリ共役ジエンの共重合の段階であれば重合工程Cと記載する。
【0104】
例えば、重合工程B(または重合工程C)において、スチレン(またはポリスチレンと共役ジエンと)を溶媒に溶解させた材料溶液を調製する場合は、本発明に係る触媒組成物を当該材料溶液に加えてもよいし、本発明に係る触媒組成物を溶媒に溶解させた触媒溶液に材料溶液を加えてもよい。また、重合材料が気体であれば、本発明に係る触媒組成物を溶媒に溶解した液相にガス管等を通して供給してもよい。ここで、重合工程Bおよび重合工程Cは連続的に行われ得る。すなわち、重合工程Cにおいて、重合工程Bの終了後の反応液に共役ジエンを添加することによって、ポリスチレン−ポリ共役ジエンのジブロック共重合体を重合し得る。
【0105】
また、重合工程Bおよび重合工程Cにおける重合方法は、気相重合法、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、固相重合法などの任意の方法であり得る。溶液重合法による場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、重合体材料および触媒を溶解させ得る溶媒であれば特に限定されない。例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の飽和脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロルエチレン、パークロルエチレン、1,2−ジクロロエタン、クロルベンゼン、ブロムベンゼン、クロルトルエン等のハロゲン化炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。
【0106】
また、生体に対する毒性の低い溶媒が好ましい。具体的には、芳香族炭化水素、特にトルエンが好ましい。溶媒は1種を単独で用いてもよいが、2種以上組み合わせた混合溶媒を用いてもよい。
【0107】
また、用いられる溶媒の量は任意であるが、本発明に係る触媒組成物に含まれるメタロセン錯体の濃度を0.1〜0.0001mol/lとする量であることが好ましい。
【0108】
重合工程Bおよび重合工程Cを溶液重合で行なう場合の重合温度は、任意の温度、例えば−90℃以上、100℃以下で行い得る。重合温度は、重合させるモノマーの種類などに応じて適宜選択すればよいが、例えば、室温近辺、すなわち約25℃で行なうことができる。
【0109】
重合時間は、例えば、数秒〜数時間程度であり、重合させるモノマーの種類などに応じて適宜選択すればよい。例えば、1時間以下、場合によっては1分以下でよい。
【0110】
また、重合工程の際に供給する単量体の量としては、製造する目的の共重合体に応じて適宜設定できる。例えば、置換または無置換のスチレンは、メタロセン錯体に対してモル比で50倍以上、2500倍以下にすることが好ましく、100倍以上、1000倍以下にすることがより好ましい。また、共役ジエンは、メタロセン錯体に対してモル比で50倍以上、2500倍以下にすることが好ましく、100倍以上、1000倍以下にすることがより好ましい。置換または無置換のスチレン、ならびに共役ジエンを、メタセロン錯体に対してモル比で2500倍以下の割合において供給することによって、触媒の活性および選択性を好適に維持することができる。そして、置換または無置換のスチレン、ならびに共役ジエンを、メタセロン錯体に対してモル比で50倍以上の割合において供給することによって、ある一定以上の分子量を有するポリマーが得られ、共重合体としての性質が十分に現れる。
【0111】
(複素環式の脂肪族化合物)
本発明に係る触媒組成物を用いて共重合される複素環式の脂肪族化合物(以下において極性モノマーと記載する)は、上述のように、極性を有し、環上にエーテル結合を含んでいる。本発明に係る極性モノマーは、上述の触媒組成物を用いた重合工程Aにおいて、主鎖にエーテル結合が含まれるように、開環重合される化合物であれば、特に限定されない。当該極性モノマーは、3員環、4員環、6員環または7員環の複素環式化合物であることが好ましい。また、当該極性モノマーは、例えばラクトン、エポキシドおよびラクチドから選択される。
【0112】
本発明に係る極性モノマーとして使用し得るラクトンは、β−、δ−、またはε−ラクトンである。すなわち、当該ラクトンは、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトンまたはε−カプロラクトンなどである。
【0113】
本発明に係る単量体の脂肪族化合物として使用し得るエポキシドは、以下の化学式によって表されるエポキシドである。
【0114】
【化5】

【0115】
ここで、上記化学式において、RおよびRは、同じか、または異なっており、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換の芳香族基であるか、あるいはRおよびRが互いに結合して置換もしくは無置換の環を形成する。
【0116】
本発明に係る単量体の脂肪族化合物として使用し得るエポキシドは、例えば脂環式のエポキシド、無置換のエポキシドまたは1〜4置換のエポキシドである。
【0117】
脂環式のエポキシドとしては、1,2−エポキシ−5,9−シクロドデカジエン、シクロドデセンオキシド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメチルシラン、1,2−エポキシシクロペンタデカン、シクロペンテンオキシド、シクロオクテンオキシド、2,3−エポキシ−2,3−ジヒドロ−1,4−ナフトキノン、2,3−エポキシ−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、1,2−エポキシ−4−シクロヘキセン、tert−ブチル6−オキサ−3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−カルボキシレート、3,6−ジオキサビシクロ[3.1.0]ヘキサン、およびシクロヘキセンオキシドなどが挙げられる。
【0118】
無置換のエポキシドとしては、エチレンオキシドなどが挙げられる。
【0119】
置換を有するエポキシドとしては、1置換のエポキシド(プロピレンオキシド、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシ−9−デセン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシエイコサン、スチレンオキシド、1,2−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシオクタデカン、グリシジルイソプロピルエーテル、グリシジルメチルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、グリシジルトリチルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、4−ビニルベンジルグリシジルエーテル、および[2−(4−ビニルフェネチルオキシ)メチル]オキシランなど)、2置換のエポキシド(イソブチレンオキシド、1−フェニルプロピレンオキシド、cis−2,3−エポキシブタン、cis−3,4−エポキシヘキサン、cis−4,5−エポキシオクタン、およびcis−2,3−エポキシペンタンなど)、3置換のエポキシド(α-ピネンオキシドなど)、および4置換のエポキシド(2,3−ジメチル−2−ブテンオキシドなど)が挙げられる。
【0120】
本発明に係る単量体の脂肪族化合物の他の例として、ラクチドが挙げられる。
【0121】
〔重合工程A〕
本発明に係る製造方法における重合工程Aは、本発明に係る触媒組成物を触媒として、極性モノマーと、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体とを、当該極性モノマーを開環重合することによって、共重合させる工程であればよい。
【0122】
重合工程Aの重合条件、例えば、溶液重合法の際に用いる溶媒の種類、当該溶媒の量、重合温度、及び重合時間等は、上述の重合工程Bおよび重合工程Cと同様に行うことができる。したがって、重合工程Bおよび重合工程Cと異なる点についてのみ以下に説明する。
【0123】
また、重合工程Aの際に供給する極性モノマーの量としては、製造する目的の共重合体に応じて適宜設定できる。極性モノマーは、メタロセン錯体に対してモル比で50倍以上、2000倍以下にすることが好ましく、100倍以上、1000倍以下にすることがより好ましい。当該比率が2000倍以下であれば、重合工程Aにおいて触媒が高い活性を維持できる。そして、当該比率が50以上であれば、ある一定以上の分子量を有するポリマーが得られ、共重合体としての性質が十分に現れる。
【0124】
また、重合工程Aは、重合工程B(または重合工程C)によって生じたポリスチレン(またはポリスチレン−ポリ共役ジエンのジブロック共重合体)を用いて行われる。例えば、本発明に係るブロック共重合体は、ポリスチレン(またはポリスチレン−ポリ共役ジエンのジブロック共重合体)および極性モノマーを、触媒組成物を含む反応系中に供給することによって製造することができる。また、本発明に係るブロック共重合体は、重合体の材料として、スチレン、(使用する場合には共役ジエン)および極性モノマーの順に、各ブロックの重合が終了してから触媒組成物を含む反応系中に供給することによって製造することができる。2つ目の合成方法は、いわゆるリビング重合である。リビング重合では、各ブロックの重合反応の後に重合生成物を精製したり、洗浄したりする必要がない。したがって、本発明に係るブロック共重合体をリビング重合によって生成することは、煩雑な手順を省いて、極めて簡便に目的のブロック共重合体を得る好適な方法である。通常の触媒であれば、ポリスチレンの重合後に極性を有する単量体を加えても、重合反応が進まない。これは、極性の単量体とスチレンなどのオレフィンのと重合に伴って、一般的に触媒毒または不活性化といった不都合が生じるためである。
【0125】
重合工程の終了後は、反応後の混合物をメタノールなどにあけることで、生成した共重合体を沈殿させてもよい。沈殿した共重合体を濾取し、乾燥させることにより共重合体を得ることができる。また、重合工程後の反応液を、濾過により重合生成物を回収し、メタノール等で洗浄してもよい。
【0126】
得られる共重合体の収率は、本発明に係る触媒組成物に含まれるメタロセン錯体の種類によって異なるが、ほぼ100%付近にすることが可能である。特に、Sc錯体を用いた場合に高収率にできる。
【0127】
〔本発明に係るブロック共重合体〕
本発明に係るブロック共重合体は、本発明に係る製造方法により得られた共重合体である。
【0128】
本発明に係るブロック共重合体では、極性モノマーが開環重合されている。本発明に係る共重合体において、極性モノマーに由来する繰り返し単位は、主鎖にエーテル結合を含んでいる炭化水素鎖を含んでなる。
【0129】
本発明に係るブロック共重合体において、極性モノマー由来の繰り返し単位の好ましい構成比は1モル%以上、99モル%以下であり、より好ましくは3モル%以上、97モル%以下である。当該構成比の範囲内であれば、本発明に係るブロック共重合体が、ブロック共重合体としての性質を十分に示し得る。
【0130】
本発明に係るブロック共重合体の分子量分布は任意であるが、分子量分布の比較的狭いブロック共重合体とすることもできる。ここで分子量分布は、GPC法(ポリスチレンを標準物質、1,2−ジクロロベンゼンを溶出液として、145℃で測定(THFを溶出液として40℃で測定してもよい))により測定される値(Mw/Mn)を意味し、例えばGPC測定装置(TOSOH HLC 8121 GPC/HT)を用いて測定することができる。
【0131】
本発明に係るブロック共重合体の分子量分布は、例えば、Mw/Mnが5以下、好ましくは4以下、さらに好まくは3以下である。当該分子量分布を有するブロック共重合体は、例えば、上述のリビング重合のような簡便な合成方法を利用して合成可能である。
【0132】
本発明に係る共重合体の数平均分子量は任意であるが、例えば1000以上、好ましくは5000以上、さらに好ましくは10000以上である。
【0133】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0134】
〔実施例1:スチレンとカプロラクトンとのリビング重合〕
以下の反応式の通りに、スチレンとカプロラクトンとを、リビング重合によって共重合した。
【0135】
なお、本実施例において使用するメタセロン触媒(η−CMeOMe−ο)Sc(CHSiMeは、X. Li, M. Nishiura, L. Hu, K. Mori, Z. Hou, J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 13870.に記載の合成方法にしたがって合成した。
【0136】
【化6】

【0137】
本実施例で行なった重合における単量体のモル比率等を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
表1のRun1を例に、詳細な重合方法について説明する。他のRunは、単量体のモル比率および使用した触媒の組合せを表1の通りに変更したこと以外は、以下に説明する方法と同じ方法によって重合した。
【0140】
グローブボックス中で、[PhC][B(C](19mg,21μmol)のトルエン溶液(4ml)を、50mlフラスコ中における(η−CMeSiMe)Sc(CHSiMe(10mg,21μmol)のトルエン溶液(2ml)に加えた。室温に2分間にわたって混合物を攪拌し、それから0.215gのスチレン(2.1mmol)をフラスコの中に加えた。10分間が経過してスチレンが完全に消費された後に、20mlのトルエンおよび0.95gのε−カプロラクトン(8.4mmol)を、懸濁している反応混合物に加えた。共重合反応は30分間にわたって行われ、それからフラスコがグローブボックスから取り出され、10mlのメタノールを加えて共重合を停止させた。生成した混合物を400mlのメタノールに注いで、重合生成物を沈殿させた。重合体はろ過によって回収され、それからその粗精製物を200mlのアセトンに加え、10分間にわたって攪拌し、ろ過して、アセトンによって数回にわたって洗浄して、ε−カプロラクトンのホモ重合体を取り除いた。それから、生成した固体を、60℃においてその重量が一定になるまで乾燥させた。
【0141】
図1に表1のRun1から得られたシンジオタクチックポリスチレン−ポリカプロラクトンのジブロック共重合体のGPCプロファイルを示す。図2に表1のRun1から得られたジブロック共重合体のDSC曲線を示す。図3に表1のRun1から得られたジブロック共重合体の13C NMRスペクトルチャートを示す。図4に表1のRun6から得られたジブロック共重合体のH NMRスペクトルチャートを示す。なお、DSC測定についてはSII社製のDSC6200を用いて、10℃、1分間の条件において測定した。
【0142】
〔実施例2:スチレンとイソプレンとカプロラクトンとのリビング重合〕
以下の反応式の通りに、スチレンとイソプレンとカプロラクトンとを、リビング重合によって共重合した。
【0143】
【化7】

【0144】
本実施例で行なった重合における単量体のモル比率等を表2に示す。
【0145】
【表2】

【0146】
表2のRun1を例に詳細な重合方法について説明する。他のRunは単量体のモル比率および触媒の組合せを表1の通りに変更したこと以外は、以下に説明する方法と同じ方法によって重合した。
【0147】
グローブボックス中で、[PhC][B(C](19mg,21μmol)のトルエン溶液(4ml)を、50mlフラスコ中における(η−CMeSiMe)Sc(CHSiMe(10mg,21μmol)のトルエン溶液(2ml)に加えた。室温に2分間にわたって混合物を攪拌し、それから0.215g(2.1mmol)のスチレンをフラスコの中に加えた。10分間が経過してスチレンが完全に消費された後に、0.49g(7.45mmol)のイソプレンのトルエン溶液(20ml)を懸濁している反応混合物に加えた。2時間後に0.48g(4.2mmol)のε−カプロラクトンおよび10mlのトルエンを加えた。共重合反応はさらに1時間にわたって行われ、それからフラスコがグローブボックスから取り出され、10mlのメタノールを加えて共重合を停止させた。生成した混合物を400mlのメタノールに注いで、重合生成物を沈殿させた。重合体はろ過によって回収され、それからその粗精製物を200mlのアセトンに加え、10分間にわたって攪拌し、ろ過して、アセトンによって数回にわたって洗浄して、ε−カプロラクトンのホモ重合体を取り除いた。それから、生成した固体を、60℃においてその重量が一定になるまで乾燥させた。
【0148】
図5に表2のRun5から得られたポリスチレン−ポリイソプレン−ポリカプロラクトンのトリブロック共重合体のGPCプロファイルを示す。図6に表2のRun5から得られたトリブロック共重合体のDSC曲線を示す。図7に表2のRun5から得られたトリブロック共重合体の13C NMRスペクトルチャートを示す。図8に表2のRun5から得られたトリブロック共重合体H NMRスペクトルチャートを示す。
【0149】
表2に示すように、Run1〜7とRun8〜17との間において、ポリイソプレンの繰返し構造の規則性が大きく異なる。Run1〜7では、1,4(主鎖にイソプレン由来の二重結合を含まない)と3,4(主鎖にイソプレン由来の二重結合を含む)とがおおよそ同程度の割合を有している(表2の「PIPの構造」を参照のこと)。一方で、Run8〜17では、1,4がほぼ90%かそれ以上の割合を占めている。Run1〜7とRun8〜17とでは使用した触媒が異なる。よって、触媒の一部として(η−CMeOMe−ο)Sc(CHSiMeのメタセロン錯体を使用すると、トリブロック重合体のポリイソプレンにおける立体規則性を高めることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の重合触媒組成物を用いることによって、種々の高分子化合物の新たな製造方法が提供され、さらに、新たな高分子化合物が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第3族金属原子またはランタノイド金属原子である中心金属M、該中心金属に結合した置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体を含む配位子Cp*、モノアニオン配位子QおよびQ、ならびにW個の中性ルイス塩基Lを含む、一般式(I)で表されるメタロセン錯体、および
(2)非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物
を含んでいる触媒組成物を触媒として、
環内にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる複素環式の脂肪族化合物の単量体と、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体とを共重合させる工程を包含する、ブロック共重合体の製造方法。
【化1】

(式中、Wは0〜3の整数を表す。)
【請求項2】
スチレン単位からなる上記重合体ブロックを含んでいる上記重合体を、上記触媒を用いて溶液重合によって調製する工程をさらに包含し、
上記単量体と上記重合体とを共重合させる上記工程が、上記溶液重合後の反応液に上記単量体を加えて、当該触媒の作用によって当該重合体と当該単量体とを共重合させる工程であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記中心金属Mが第3金属原子である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
上記中心金属Mがスカンジウム(Sc)またはイットリウム(Y)である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
上記中心金属Mがスカンジウム(Sc)である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
上記置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体が、
シクロペンタジエニル環(組成式:C5−X1X1;X1は0〜5の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)、フルオレニル環(組成式:C139−X2X2;X2は0〜9の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)またはオクタヒロドフルオレニル環(組成式:C1317−X3X3;X3は0〜17の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基またはヒドロカルビル基が置換したメタロイド基を示す)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
上記置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体が、
シクロペンタジエニル環(組成式:C5−X1X1;X1は0〜5の整数を示し、Rは炭素数1〜20の置換基を有してもよいヒドロカルビル基、またはヒドロカルビル基によって置換されているメタロイド基を示す)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
上記置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体が、
シクロペンタジエニル環(組成式:C5−X11’X1;X1は0〜5の整数を示し、R1’は置換基を有してもよい炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルキル基を置換基として有してもよいシリル基を示す)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体が、
シクロペンタジエニル環(組成式:C5−X11’’X1;X1は0〜5の整数を示し、R1’’はメチル基、トリメチル基またはメトキシフェニル基を示す)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
上記QおよびQが、それぞれ独立して、オルト−ジメチルアミノベンジル基またはトリメチルシリル基である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
上記中性ルイス塩基Lは、テトラヒドロフランである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
スチレン単位からなる上記重合体ブロックを含んでいる上記重合体が、共役ジエン単位からなる重合体ブロックをさらに含んでいることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
スチレン単位からなる上記重合体ブロックは、その側鎖においてシンジオタクチックな立体規則性を有する芳香族基を含んでおり、そのシンジオタクチシティーが80rrrr%以上であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
スチレン単位からなる上記重合体ブロックが、ポリ(アルキル化)スチレンまたはポリビニルナフタレンであることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
上記単量体が、3員環、4員環、6員環または7員環の複素環式化合物であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
上記単量体が、ラクトン、エポキシドまたはラクチドであることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
上記単量体が、カプロラクトン、バレロラクトン、ラクチド、プロピレンオキシドまたはシクロヘキセンオキシドであることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
(1)第3族金属原子またはランタノイド金属原子である中心金属M、該中心金属に結合した置換または無置換のシクロペンタジエニル誘導体を含む配位子Cp*、モノアニオン配位子QおよびQ、ならびにW個の中性ルイス塩基Lを含む、一般式(I)で表されるメタロセン錯体、および
(2)非配位性アニオンとカチオンからなるイオン性化合物
を含んでおり、
環内にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる複素環式の脂肪族化合物の単量体と、スチレン単位からなる重合体ブロックを含んでいる重合体とを共重合させる、触媒組成物。
【化2】

(式中、Wは0〜3の整数を表す。)
【請求項19】
スチレン単位からなる重合体ブロック、共役ジエン単位からなる重合体ブロックおよび主鎖にエステル結合またはエーテル結合を含んでいる炭化水素鎖の単位からなる重合体ブロックを含んでいるブロック共重合体。
【請求項20】
スチレン単位からなる上記重合体ブロックにおけるシンジオタクチシティーが80rrrr%以上である、請求項19に記載のブロック共重合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−190288(P2011−190288A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54829(P2010−54829)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】