説明

ブロック共重合体組成物及びシート、及びブロック共重合体組成物の製造方法。

【課題】機械的物性を損なうことなく、青白い曇りを減らし透明性に優れているブロック共重合体組成物、及び、該共重合体組成物を成形して得られたシートを提供する。
【解決手段】ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとをリビングアニオン重合法により重合したブロック共重合体と、400nmを超え500nm以下の波長範囲に最大吸収ピークを有する着色剤と、を含有するブロック共重合体組成物である。さらに、ブロック共重合体組成物にビニル芳香族炭化水素系重合体を混合してなるブロック共重合体組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体組成物及びそれを成形して得られたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとをリビングアニオン重合することにより得られるブロック共重合体、及び該ブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素系重合体とからなるブロック共重合体組成物(例えば、特許文献1、2を参照。)が知られている。さらにこのブロック共重合体や組成物を成形したシートは、包装容器やトレイなどの材料として広く実用に供されている。
【特許文献1】特開平04−039351号公報
【特許文献2】特開2006−089593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとをリビングアニオン重合したブロック共重合体の高次構造は所謂ミクロ相分離構造となるため、可視光線の散乱が起こらず高い透明性を保つことが一般に知られている。しかしながらブロック共重合体の重合処方や、ブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素系重合体とを混合して組成物とした場合に、わずかに青白く曇ったように見えることがあるため、特に包装用シートの分野では他のシート物性を損なうことなく、さらなる透明性の改善が求められる場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記目的を達成するもので、以下の要旨を有するものである。
(1)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとをリビングアニオン重合法により重合したブロック共重合体と、400nmを超え500nm以下の波長範囲に最大吸収ピークを有する着色剤と、を含有するブロック共重合体組成物。
(2)上記(1)に記載のブロック共重合体組成物にビニル芳香族炭化水素系重合体を混合してなるブロック共重合体組成物。
(3)上記着色剤の添加量が0.1〜10ppmである上記(1)又は(2)に記載のブロック共重合体組成物。
(4)上記着色剤が、カラーインデックス番号の呼称がソルベントイエロー、ソルベントオレンジ、ソルベントレッドから選択される選択される少なくとも1種以上である上記(1)〜(3)のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
(5)上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物からなるシート。
(6)溶剤を脱揮する前の重合液に着色剤を添加する上記(1)〜(4)のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明で得られたブロック共重合体組成物からなるシートは、機械的物性を損なうことなく、青白い曇りを減らし透明性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のブロック共重合体は、有機溶媒中で有機リチウム化合物を重合開始剤とし、ビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンの中から、それぞれ一種又は二種以上を選びリビングリビングアニオン重合させることにより製造できる。本発明において使用されるビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどがあるが、特に好ましくはスチレンが挙げられる。
【0007】
また、共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどであるが、特に好ましくは1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0008】
本発明ではブロック共重合体の化学構造に特に限定はないが、少なくとも1以上のビニル芳香族炭化水素ブロック、及び1以上の共役ジエン又はビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロックを有する構造であることが好ましい。なおビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるブロックにあっては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとがランダムに配置する構造であっても、ビニル芳香族炭化水素の濃度が連続的に変化する所謂テーパー構造であってもいずれでもよい。
【0009】
ブロック共重合体の質量全体に対する共役ジエンの質量割合に関して特に制限はないが、実用的な耐衝撃性や柔軟性を確保するために共役ジエンの質量割合は好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上である。耐熱劣化性やビニル芳香族炭化水素系重合体とブレンドしたときの透明性を維持するためには、共役ジエンの質量割合は好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらにより好ましくは40%以下である。共役ジエンの質量割合が15質量%未満であると、耐衝撃性が不足するため実用には供し得ない場合がある。一方、共役ジエンの質量割合が80質量%を超えると熱による劣化の進行が早くなるため、製造時にブロック共重合体が著しく変色して、ゲルが生成して製品の外観不良を起こしやすくなる場合がある。
【0010】
ブロック共重合体の分子量についても特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPC)による数平均分子量(ポリスチレン換算法)が50,000以上、500,000以下の範囲内にあることが望ましい。ブロック共重合体の分子量が50,000未満では、例えばシート製膜時など半溶融状態にある場合に形状の保持が難しくなりシートが得られないことがある。一方、ブロック共重合体の分子量が500,000を超えると流動性が悪くなりブロック共重合体の製造に多大な時間やエネルギーを要する場合がある、又成形加工性が低下する場合がある。
【0011】
本発明における分子量は下記の方法で測定される。
装置名:高速液体クロマトグラフィー(東ソー社製、商品名:HLC−8220GPC)
カラム:KF−404HQ(昭和電工社製)を4本直列接続
温度:40℃
検出:示差屈折計
溶媒:テトラヒドロフラン
濃度:1mg/1mL(THF)
流速:0.2mL/分
圧力:3.8MPa
その他:本発明の分子量は、ピークトップ分子量既知の標準ポリスチレンセット(PL社製、PS−1)を用いて作成した検量線により求めた分子量(PS換算値)である
【0012】
リビングアニオン重合では、化学的に安定な有機溶媒中で、重合活性末端が存在する限り原料モノマーの重合が継続するため、モノマーの残留は低く抑えられる。又、ラジカル重合反応のように、特別な条件がない限り重合途中での反応活性末端の失活や、重合活性点の移動が起こらないという重合反応上の特徴を持つ。そのため本発明における共重合体の分子量や分子構造は、モノマー、重合開始剤、ランダム化剤、活性末端の失活のために用いるプロトン供与性の物質(以下、「重合停止剤」という)の仕込量、及びその添加時期、添加回数や添加順序を目的に応じて適宜変えることにより制御することが可能である。
【0013】
例えば、ビニル芳香族炭化水素、又は共役ジエンのみからなるブロックを重合する場合には、ビニル芳香族炭化水素、又は共役ジエンのみ反応系に仕込めばよい。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンが連続的に濃度を変える所謂テーパー構造を重合する場合には、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを同時に反応系内に添加すればよい。
【0014】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのランダム構造のブロックを作るには、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンを同時に少量ずつ反応系内に仕込めばよい。ランダムブロックを重合する際には、できるだけ均一に反応させるため反応系の温度を40℃以上、120℃以下の温度範囲内で一定に保つことが好ましい。テーパー構造やランダム構造を作るときビニル芳香族炭化水素と共役ジエンのランダム性をさらに高めるために、反応系内にランダム化剤を適宜添加することができる。
【0015】
本発明においてランダム化剤は極性を持つ分子であり、アミン類やエーテル類、チオエーテル類、及びホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸塩、その他にカリウム又はナトリウムのアルコキシドなどが使用可能である。適当なアミン類としては第三級アミン、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンの他、環状第三級アミンなども使用できる。エーテル類としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。その他にトリフェニルフォスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム又はナトリウム、カリウム、ナトリウムなどのブトキシドなどを挙げることができる。
【0016】
ランダム化剤は一種、又は複数の種類を使用することができ、その添加濃度としては、原料とするモノマー100質量部あたり合計0.001以上、10質量部以下とすることが適当である。
【0017】
有機溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、などの脂環式炭化水素、或いはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素などが使用できる。
【0018】
重合開始剤である有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、本発明では例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムなどの単官能性重合開始剤、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムなどの多官能性重合開始剤が使用できる。
【0019】
重合停止剤として、本発明では水、アルコール、無機酸、有機酸、及びフェノール系化合物から選ばれる少なくとも一種以上が選ばれ、反応系中に添加されることにより重合が停止する。重合停止剤として水はとくに賞用できる。なお、重合活性末端の失活量論数は加えた重合停止剤の化学量論数に比例するので、重合の途中で一部の重合活性末端のみを失活させ、引き続き原料モノマーを追加添加してさらに重合を継続させる製造方法も採ることができる。途中の失活回数については重合活性末端を全て失活させない限り特に制限はない。
【0020】
重合停止剤としてのアルコールとしてはメタノール、エタノール、ブタノールなどが、無機酸としては塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、炭酸などが、有機酸としてオクチル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレフィン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ベヘン酸などのカルボン酸、その他スルホン酸、スルフィン酸などが、フェノール系化合物として2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。
【0021】
重合の完了時にはその時点における活性末端数に対して十分過剰な量の重合停止剤を添加して活性末端を全て失活させることが必要である。
【0022】
失活処理の終わった共重合体溶液は溶剤から分離するための方法としては、(1)メタノールなどの貧溶媒中に析出させる方法、(2)加熱ロールなどに共重合体溶液を供給し、溶剤のみを蒸発させて共重合体を分離する方法(ドラムドライヤー法)、(3)加熱した共重合体溶液を、そこに含まれる有機溶剤の該温度における平衡蒸気圧よりも低い圧力に保った缶中に連続的、あるいは間欠的に供給して脱揮する方法(フラッシュ蒸発法)、(4)ベント式押出機に通して脱揮させる方法、(5)温水中に撹拌しながら、共重合体溶液を吹き込んで溶剤を蒸発させる方法(スチームストリッピング法)などや、これらを組み合わせた方法が挙げられる。
【0023】
本発明のブロック共重合体は、一種類のみを用いても二種以上のブロック共重合体を混合して用いても特に制限はない。
【0024】
本発明においてブロック共重合体に添加する着色剤の種類には特に制限ないが、アゾ系染料、メチン系染料、アンスラキノン系染料、キノフタロン系染料、ペリノン系染料、その他キサンテン系、クマリン系、ペリレン系染料が一般的に好ましく用いられる。色調としては黄色からオレンジ色系統の着色剤が好ましく、ソルベントイエロー、ソルベントオレンジ、ソルベントレッドの呼称が冠されるカラーインデックス番号を持つもので、最大吸収波長は400nmを超え500nm以下、さらに好ましくは440nmを超え500nm以下の範囲にある着色剤が好ましく用いられる。最大吸収波長ピークが400nm未満であると黄緑色、又、500nmを超えると赤色に着色され、いずれも青白い曇りを減じる効果が発揮されず、透明性が改善されない。なお、用いる着色剤は1種類でも良く、2以上の着色剤を混合しても構わない。
【0025】
着色剤の添加量は、ブロック共重合体、又は該ブロック共重合体とビニル芳香族炭化水素系重合体とからなる組成物100質量部に対して、0.1〜10ppmが好ましく、特に、0.5〜5ppmが好ましい。着色剤が0.1ppm未満であると、透明性改善の効果が十分でない場合がある。一方、着色剤が10ppmを超えると全体の色が濃くなりすぎ本来の透明性が低下する場合がある。
【0026】
着色剤の添加は、ブロック共重合体の製造途中でも、製造終了後に添加してもいずれでも良い。即ち製造途中で添加する場合は、好ましくは溶剤を脱揮する前の重合液に着色剤を加えればよく、既に製造されたブロック共重合体のペレットに対して、改めて練り込む方法で着色剤を添加してもよい。ブロック共重合体に対する着色剤の添加割合はごく微量であるため、重合液に着色剤を加える方法をとる場合には、予め溶剤で希釈した着色剤を添加することが好ましい。ペレットに練り込む場合には、着色剤のカラーマスターバッチペレットを予め準備しておき、これと溶融混合することが好ましい。
【0027】
さらに、このようにして製造された本発明のブロック共重合体組成物は、必要に応じて下記の重合体より選ばれる少なくとも一種以上を含有するビニル芳香族炭化水素系重合体を混合して組成物とすることができる。
【0028】
本発明のブロック共重合体に混合できるビニル芳香族炭化水素系重合体合体としては、ブロック共重合体の製法において例示されたビニル芳香族炭化水素を重合させたものでよく、ポリスチレンが好ましく用いられる。その他のビニル芳香族炭化水素系重合体としては、ビニル芳香族炭化水素−(メタ)アクリル酸エステル及び/又は(メタ)アクリル酸共重合体が挙げられる。このときに用いられるビニル芳香族炭化水素のモノマーも、ブロック共重合体の製法において例示したものでよい。又(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレートなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。さらに透明性に大きく影響を与えない範囲でブロッキング性を改良する目的でハイインパクトポリスチレンを加えることも可能である。
【0029】
ここに挙げたビニル芳香族炭化水素系重合体は単独で使用しても、2種以上を併用しても特に制限はない。
【0030】
本発明においてブロック共重合体組成物に対するビニル芳香族炭化水素系重合体の配合割合は、ビニル芳香族炭化水素系重合体/ブロック共重合体組成物=0/100〜70/30である。上記範囲外だと得られるシートの耐衝撃性が損なわれる場合がある。特に、ビニル芳香族炭化水素系重合体としてハイインパクトポリスチレンを用いる場合には、ブロック共重合体組成物100質量部に対して5質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。ハイインパクトポリスチレンが5質量部を超えると本来の透明性が阻害され、本発明の効果が意味をなさなくなる場合がある。これらビニル芳香族炭化水素系重合体の混合は押出機などを用い溶融混練することが好ましい。又、射出成形機やシート押出機などで溶融混練しながら同時に種々の形状や、シート状に二次加工することも可能である。
【0031】
本発明で得られるブロック共重合体組成物には、必要に応じて透明性を妨げない範囲でさらに各種の添加剤を配合することができる。ブロック共重合体組成物が各種の加熱処理を受ける場合や、その成形品などが酸化性雰囲気や紫外線などの照射下にて使用され物性が劣化することに対処するため、又使用目的に適した物性をさらに付与するため、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤などの添加剤を添加できる。
【0032】
安定剤としては、例えば、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートや、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイトなどのリン系酸化防止剤などが挙げられる。
【0033】
滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチルなどの脂肪酸エステルやペンタエリスリトール脂肪酸エステル、さらにエルカ酸アマイド、オレイン酸アマイド、ステアリン酸アマイドなどの脂肪酸アマイドや、エチレンビスステアリン酸アマイド、またグリセリン−モノ−脂肪酸エステル、グリセリン−ジ−脂肪酸エステル、その他にソルビタン−モノ−パルミチン酸エステル、ソルビタン−モノ−ステアリン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどに代表される高級アルコール、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスに代表される石油系ワックスなどが挙げられる。
【0034】
耐候性向上剤としては2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系や2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどのサリシレート系、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤、又、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン型耐候性向上剤が例として挙げられる。さらにホワイトオイルや、シリコーンオイルなども加えることができる。
【0035】
これらの添加剤はブロック共重合体組成物100質量部に対して、5質量部以下の範囲で使用することが望ましい。5質量部を超えると透明性が低下したり、添加剤がシート表面に析出して外観不良や印刷性低下などを引き起こす場合がある。
【0036】
本発明では、得られたシートの表面特性を良好にするために帯電防止剤や滑剤などを表面に塗布してもよい。耐衝撃性や透明性などのシート物性と表面特性などとバランスさせるために、本発明の共重合体組成物を主体とした少なくとも一層を有する多層シートとすることも可能である。
【0037】
シートの製造方法としては、Tダイを用いた押出し成形やカレンダー成形などがある。該シートを加熱炉内に設けたテンター、及び/又は回転数差のある複数のロールに掛けて1軸、あるいは2軸方向に延伸することによりさらに配向性を持たせたシートを作製することも可能である。
【0038】
多層シートを製造する場合にはフィードブロックを有するTダイやマルチマニホールドダイを用いて共押し出しする方法が一般的である。又、単独で押出し成形して得られたシート同士をラミネートすることで多層化することもできる。
【0039】
本発明のブロック共重合体は一旦シート状に成形し、さらに2次加工して得た成形体として実用に供されることが好ましい。本発明のシートは、例えば真空成形法、真空圧空成形法、熱盤成形法などの公知の成形方法で各種の成形体を得ることができる。ここで言う成形体は、例えばトレイ、蓋材、ブリスターパック、ケース、カップ(容器)などが挙げられるが、その他一般的な樹脂成形体として適宜利用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、参考例、実施例、比較例を示して本発明を説明する。但し、実施例などにより本発明が限定されるものではない。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
[透明性の評価方法]
シートの透明性(Haze、全光線透過率)は、成形したシートから4cm×8cmの試験片を切り出し、下記の評価装置を用い、ASTM D1003に準拠して測定した。Hazeの値が5%以下であれば良好と判断できる。
評価装置:日本電色工業(株)製 Hazeメーター NDH−2000型
【0045】
[シート耐衝撃性の評価方法]
耐衝撃性は各シートから6cm四方で切り出した試験片を20枚用い、300gの落錘、先端が1/4インチRのポンチにより下記1)〜4)の手順に従ってシートの破壊に要するエネルギー値を算出した。測定に際してはデュポン衝撃試験機(東洋精機製作所社製)を用いた。
1)受け台の上に試験片を置き、さらにポンチを試験片上に静かに載せ、次いでポンチ上端に落錘を落として、目視によりシートに生じた割れの有無を調べた。なお、本測定の前に別の予備試験片2〜3枚を用いて、シートが破壊し始めるおおよその落錘高さを求めた。
2)1枚目は予備測定の結果から定めた落錘高さで測定した。
3)2枚目以降は前回の結果を基に、シートが割れなかった場合は落錘高さを5cm上げ、割れた場合は落錘高さを5cm下げて同様に測定した。
4)この操作を連続して20回行い、各回での落錘高さと割れの有無の記録から、以下に示した式により耐衝撃性を評価した。なお、耐衝撃性はエネルギー値に換算して表示した。
○は割れが生じないシートを表し、●は割れが生じたシートを表す。
X(m)=((高さ(m)×○の枚数)の高さ毎の合計)/○の合計枚数
Y(m)=((高さ(m)×●の枚数)の高さ毎の合計)/●の合計枚数
Z=(X+Y)/2(m)
耐衝撃性(J)=0.3(kg)×9.8(m/s)×Z(m)
【0046】
実施例、比較例に用いたブロック共重合体は参考例として以下の方法により作製した。
【0047】
[参考例1]
(1)容積1.3mの反応容器に150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン259kgをとり、さらにスチレンモノマー4.5kgを添加した。このときの温度は29℃であった。
(2)次いでn−ブチルリチウムを含むシクロヘキサン溶液(開始剤)610mLを添加し80℃まで昇温することによりスチレンモノマーを重合させた。
(3)その後、温度を65℃まで下げてブタジエンを1.8kg添加して重合させた後、温度を40℃まで冷却した。
(4)さらにブタジエンを14.6kg、スチレンモノマー26.3kg一括添加し、引き続き重合反応させた。このとき反応温度は最高98℃まで達した。
(5)さらに50℃に冷却後、スチレンモノマーを43.8kg添加して重合させた。反応熱により温度は86℃まで達したが、反応終了後ポリマー液を70℃まで冷却した。
(6)ポリマー液は別のタンクに移送してから、水を165g添加して失活させ、数平均分子量19.7万のポリマーAが得られた。
(7)このポリマー液に安定剤として住友化学(株)製スミライザーGS、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製イルガノックス1076をブロック共重合体100phrあたり、それぞれ0.40phr、0.20phrを溶解させてから減圧ベント付き2軸押出機で脱揮押出しして、ペレット状の樹脂を得た。
【0048】
[参考例2]
(1)参考例1と同じ反応容器に150ppmのテトラヒドロフランを含むシクロヘキサン518kgをとり、さらにスチレンモノマー18.2kgを添加した。このときの温度は30℃であった。
(2)次いでn−ブチルリチウムを含むシクロヘキサン溶液(開始剤)2170mLを添加し80℃まで昇温することによりスチレンモノマーを重合させた。
(3)その後、温度を65℃まで下げてブタジエンを5.5kg添加して重合させた後、温度を40℃まで冷却した。
(4)さらにブタジエンを56.4kg、スチレンモノマー101.9kg一括添加して引き続き重合させた。反応熱により温度は134℃まで達したが、反応終了後ポリマー液を70℃まで冷却した。
(5)ポリマー液は別のタンクに移送してから、水を165g添加して失活させ、数平均分子量11.2万のポリマーBが得られた。
(6)参考例1と同様に安定剤を加えた後に脱揮押出しして、ペレット状の樹脂を得た。
【0049】
[参考例3]
参考例1で得たポリマーのペレット10kgに、着色剤としてダイヤレジン イエローGR(三菱化学社製、ソルベントイエロー113)を0.500g混合して、田端機械工業社製40mmφ単軸押出機で練り込み押出してペレット状とし、50ppmのカラーマスターバッチaを製作した。
【0050】
[参考例4]
着色剤をダイヤレジン オレンジHS(三菱化学社製、ソルベントオレンジ60)とした以外は参考例3と同様な方法で、カラーマスターバッチbを製作した。
【0051】
[参考例5]
着色剤をダイヤレジン イエローL3G(三菱化学社製、ソルベントイエロー93)とした以外は参考例3と同様な方法で、カラーマスターバッチcを製作した。
【0052】
[参考例6]
着色剤をダイヤレジン レッドS(三菱化学社製、ソルベントレッド111))とした以外は参考例3と同様な方法で、カラーマスターバッチdを製作した。
【0053】
着色剤として用いたダイヤレジン イエローGR・オレンジHS・イエローL3G・レッドSの吸収曲線を図1〜図4に示した。
【0054】
(実施例1)
ポリマーペレットAとポリマーペレットB、更に着色剤としてカラーマスターバッチaを表1の実施例1に示す配合で混合した後、下記に示すシート成形機で厚さ0.6mmのシートを製膜した。シート厚みはダイのリップ開度で調整し、シートの引き取り速度(冷却ロール周速)は一定とした。
シート成形機:田辺プラスティック(株)製 40mmφ単軸押出機VE40(40cm幅Tダイ付き)
冷却ロール直径:25cmφ
冷却ロール(タッチ部)とダイ出口間の距離:10(cm)
冷却ロール周速:1.0m/分
【0055】
(実施例2〜4)(比較例1〜3)
原料の配合を変えた他は、実施例1と同様な方法で実施例2〜4、比較例1〜3のシートを製膜した。配合の詳細は表1に示した。
【0056】
(実施例5)
ポリマーペレットAとポリマーペレットB、並びに汎用ポリスチレン(東洋スチレン社製、トーヨースチロールG200C)、更にカラーマスターバッチaを表2の実施例5に示す配合で混合した後、実施例1と同様な方法で、厚さ0.6mmのシートを製膜した。
【0057】
(実施例6〜13)(比較例4,7,8)
原料の配合を変えた他は、実施例5と同様な方法で実施例6〜13、比較例4,7,8のシートを製膜した。配合の詳細は表2に示した。
【0058】
(実施例12、比較例5)(実施例13、比較例6)
ポリマーペレットAとポリマーペレットB、並びに汎用ポリスチレン、トーヨースチロールG200C、更にカラーマスターバッチbを表3に示す配合で混合した後、実施例1と同様な方法で、厚さ0.6mmのシートを製膜した。配合の詳細は表3に示した。
【0059】
表1(ポリマーBが66.7質量部)より、着色剤を添加することで透明性(Haze)が大幅に改善されていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明で得られたブロック共重合体組成物からなるシートは、例えば、包装容器やトレイに好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】着色剤として用いたダイヤレジン イエローGRの吸収曲を示す図である。
【図2】着色剤として用いたダイヤレジン オレンジHSの吸収曲を示す図である。
【図3】着色剤として用いたダイヤレジン イエローL3Gの吸収曲を示す図である。
【図4】着色剤として用いたダイヤレジン レッドSの吸収曲を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとをリビングアニオン重合法により重合したブロック共重合体と、400nmを超え500nm以下の波長範囲に最大吸収ピークを有する着色剤と、を含有するブロック共重合体組成物。
【請求項2】
請求項1記載のブロック共重合体組成物にビニル芳香族炭化水素系重合体を混合してなるブロック共重合体組成物。
【請求項3】
上記着色剤の添加量が0.1〜10ppmである請求項1又は2に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項4】
上記着色剤が、カラーインデックス番号の呼称がソルベントイエロー、ソルベントオレンジ、ソルベントレッドから選択される選択される少なくとも1種以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物からなるシート。
【請求項6】
溶剤を脱揮する前の重合液に着色剤を添加する請求項1〜4のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−116432(P2010−116432A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288632(P2008−288632)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】