ブロック共重合体
【課題】150℃以下の加熱温度で液晶相互作用を発現できるような、新規な液晶性側鎖を有する(ポリジメチルシロキサン−ポリスチレン)ブロック共重合体の提供。
【解決手段】下記式(1):
{式中、R1、R2、X、Y、l、m、n、a及びbは、明細書で規定された通りである。}で表されるブロック共重合体。
【解決手段】下記式(1):
{式中、R1、R2、X、Y、l、m、n、a及びbは、明細書で規定された通りである。}で表されるブロック共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィーを使うことなく微細なパターンを形成するためのブロック共重合体、及びこれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の集積回路に代表される、ナノメータオーダーの微細なパターン形成において、これまで用いられて来たフォトリソグラフィーの手法は、パターンのサイズが小さくなるに連れ、飛躍的なコストアップを伴うため、昨今、ナノインプリント、又は自己組織化といったフォトリソグラフィーに変わる手法が模索され始めている。
【0003】
ここで、自己組織化とは、分子が何らかの相互作用により、自発的に配列することを利用したパターン形成手法をいい、その中で最もよく利用されるのは、ブロックコポリマーを用いる方法である。
【0004】
2種以上の互いに相溶しないポリマー同士が結合したブロックコポリマーは、それぞれのポリマーが集まってドメインを形成することが知られている。例えば、互いに相溶しない2種のポリマーA及びBが結合したジブロックコポリマーは、Aの分率に応じて、Aが島状にBの中に点在する海島構造、Aが柱状にBの中に配列するシリンダー構造、A及びBが互いに層状に配列するラメラ構造等を形成することが知られている。このとき、例えば、AとBのエッチング耐性に差があれば、これらの構造を更にエッチングにより転写することができる。
【0005】
このようなエッチング耐性に差があるポリマー同士のブロックコポリマーとして、これまで、例えばポリスチレンとポリジメチルシロキサンのブロックコポリマーが用いられて来た。しかしながら、ポリジメチルシロキサンは有機高分子と容易にミクロ相分離し、かつ耐エッチング性が高いという特長を有するが、一方、ガラス転移温度(Tg)が低いため、例えばポリジメチルシロキサンブロックの方がポリスチレンブロックより分子量が大きいときに、塗布後の表面にべたつきを生じるという問題があった。
【0006】
これに対し、ジメチルシロキサンに液晶性の側鎖をつけ、その液晶相互作用を発現させることで、べたつきを防止する方法が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Macromolecules, vol.40, P.777(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に開示の技術では、液晶相互作用を発現させるために、170℃以上の温度への加熱が必要であった。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ポリジメチルシロキサンに、150℃以下の加熱温度で液晶相互作用を発現させられるような、新規な液晶性側鎖を有するポリマーと、ポリスチレンとを組み込んだブロック共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討し、実験を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
[1] 下記式(1):
【化1】
{式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜20の2価の基であり、Xは、水素原子又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基であり、Yは、下記式(2):
【化2】
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。)又は下記式(3):
【化3】
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。)で表される基であり、lは、10〜5000の整数であり、(m+n)は、10〜5000の整数であり、(n/m)>1であり、aは、1〜4の整数であり、そしてbは、3〜5の整数である。}
で表されるブロック共重合体。
【0012】
[2] 前記式(1)において、Yは下記式(2):
【化4】
{式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。}で表される基である、[1]に記載のブロック共重合体。
【0013】
[3] 前記式(1)において、Yは下記式(3):
【化5】
{式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。}で表される基である、[1]に記載のブロック共重合体。
【0014】
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のブロック共重合体を基板上に塗布する塗布工程、及び該基板ごとアニールするアニール工程を順に含むパターン形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のブロック共重合体は、150℃以下の加熱温度で液晶相互作用を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】PS−b−PVMSの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】PS−b−PVMS(Stb)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図3】スキーム4における化合物aの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図4】スキーム4における化合物bの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図5】スキーム4における化合物cの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図6】DSCにおける発熱ピークを示す図である。
【図7】PS−b−PVMS(PCH)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図8】スキーム9で得られた化合物の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図9】スキーム10で得られた化合物の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図10】DSCにおける発熱ピークを示す図である。
【図11】PS−OHの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図12】PS−b−PVMSの1H NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ブロック共重合体>
本発明のブロック共重合体は、上記一般式(1)で表される通り、有機材料に近い性質を有するポリスチレン構造と無機材料に近い性質を有するポリシロキサン構造とを含み、その側鎖に液晶部位が導入されている。
【0018】
具体的には、本発明で用いることのできるブロック共重合体は、側鎖に、Si原子並びにスチルベン若しくはシクロヘキシルフェニルユニットをメソゲンとして有する液晶性ポリジメチルシロキサン誘導体と、ポリスチレンとのジブロック共重合体である。
【0019】
好ましくは、本発明のブロック共重合体は、下記式(4):
【化6】
{式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜20の2価の基であり、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基であり、Xは、水素原子又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基であり、lは、10〜5000から選ばれる整数であり、(m+n)は、10〜5000から選ばれる整数であり、(n/m)>1であり、aは、1〜4から選ばれる整数であり、そしてbは、3〜5から選ばれる整数である。}
又は下記式(5):
【化7】
{式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜20の2価の基であり、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基であり、Xは、水素原子又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基であり、lは、10〜5000から選ばれる整数であり、(m+n)は、10〜5000から選ばれる整数であり、(n/m)>1であり、aは、1〜4から選ばれる整数であり、そしてbは、3〜5から選ばれる整数である。)
により表される。
【0020】
上記式(4)又は(5)において、R1は、好ましくは、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基又はtert−ブチル基である。
【0021】
また、R2は、2価の基であり、好ましくは、飽和又は不飽和でよく、直鎖又は分岐鎖でよく、置換型又は非置換型でよい。より好ましくは、R2は、炭化水素基、ヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、ハロゲン系原子など)を含む基、シロキサン骨格を含む基、複素環(例えば、3〜7員複素環、より具体的には、窒素原子を含む5又は6員複素環など)を含む基である。
【0022】
また、R3は、飽和又は不飽和でよく、直鎖又は分岐鎖でよく、そして置換型又は非置換型でよい。R3は、好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくは、ブチル基又はペンチル基である。
【0023】
また、Xは、好ましくは、炭素数3〜9のトリアルキルシリル基であり、より好ましくは、トリメチルシリル基である。
【0024】
また、lは、10〜5000の範囲から選ばれる整数である。
【0025】
また、m及びnは、(m+n)が10〜5000の範囲から選ばれる整数であり、かつ(n/m)が1を超える限り、任意の整数でよい。例えば、mは、1〜2499の整数であり、nは、9〜4999の整数である。また、上記式(4)又は(5)において、mで表される繰り返し単位とnで表される繰り返し単位の配列は、ランダム、統計、交互又は周期でよく、好ましくはランダムである。
【0026】
また、aは、1〜4の範囲から選ばれる整数であり、例えば、1又は2である。
【0027】
また、bは、3〜5の範囲から選ばれる整数であり、例えば、3である。
【0028】
本発明のブロック共重合体の数平均分子量MNは、好ましくは、10,000〜100,000であり、より好ましくは、40,000〜60,000である。本発明のブロック共重合体の重量平均分子量MWは、好ましくは、10,000〜100,000であり、より好ましくは、50,000〜70,000である。分子量の測定方法としては、本技術分野で知られている任意の方法を使用してよい。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などで測定したスペクトルを、既知の分子量を有するポリスチレンについて作成した検量線と比較することにより、ポリスチレン換算重量平均分子量とポリスチレン換算数平均分子量とを計算してよい。
【0029】
本発明のブロック共重合体は、その側鎖にメソゲンを有することができる。一般に、メソゲンとは、液晶性を発現するために、剛直であり、かつ配向性を有する官能基(原子団)(例えば、芳香環など)の名称をいう。本発明のブロック共重合体では、メソゲンは、液晶性を発現するという観点から、主鎖からメチレン骨格又はシロキサン骨格を介して、原子数として好ましくは8〜16個、より好ましくは8〜10個離れており、かつその先端に炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はシアノ基から成る群から選ばれる一つの基を有していることが好ましい。
【0030】
また、本発明では耐エッチング性を上げる観点から、ケイ素(Si)原子を側鎖に導入するが、その導入の方法としては、合成の容易性の観点から、ジメチルシロキシ基の形で、主鎖とメソゲンの中間に導入することが好ましい。これらをまとめると、主鎖から先ず炭素数2のメチレン基があり、次にジメチルシロキシ基を1個〜4個介し、更に炭素数3〜5のメチレン基を経てメソゲンが結合し、メソゲンの先端には炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる基が結合していることが好ましい。
【0031】
メソゲンとしては、無秩序から液晶性への相転移温度が150℃以下であるという観点から、スチルベン若しくはシクロヘキシルフェニルユニットが好ましい。
【0032】
上述したような、Si原子並びにスチルベン若しくはシクロヘキシルフェニルユニットをメソゲンとして有する液晶性の側鎖は、メソゲン含有化合物(例えば、メソゲン含有ジシロキサン系化合物など)として、例えば下記工程1〜3を含む方法により合成される。
1.片末端にアルキル基、もう一方の末端にフェノキシ基を有するメソゲン(スチルベン)の合成
4−ブロモアルキルベンゼンのブロム基と、p−ビニルフェノールのビニル基を、パラジウム(Pd)触媒を用いてカップリングする。
2.メソゲンのフェノキシ基の末端ビニル基への変換
アルカリ触媒を用いて、臭化アリル若しくは臭化ブテニル等をフェノキシ基と反応させ、メソゲンに酸素及びメチレンを介して末端ビニル基を導入する。
3.末端ビニル基へのジメチルシロキサン骨格の導入
白金(Pt)触媒を用いて、上記式(1)、(4)又は(5)におけるaが1である場合には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどのジヒドロ(ジメチルシロキサン)の片末端のSi−Hのみを末端ビニル基へ付加させるか、又は上記式(1)、(4)又は(5)におけるaが2〜4である場合には、ジヒドロポリ(ジメチルシロキサン)の片末端のSi−Hのみを末端ビニル基へ付加させる(ヒドロシリル化)。
【0033】
<ブロック共重合体の製造方法>
本発明のブロック共重合体の製造方法について説明する。本発明のような液晶性側鎖を有するポリジメチルシロキサンとポリスチレンとのブロック共重合体は、まずスチレンを重合し、次いで、得られたポリスチレンの末端からメチルビニルシロキサン三量体を開環重合してから、得られたポリジメチルシロキサン部分のビニル基にヒドロシリル化反応を用いて、液晶性側鎖を導入することにより得られる。
【0034】
別の製造方法としては、スチレンの重合とメチルビニルシロキサンの重合を別々に行なった後に、末端同士を反応させてブロック共重合体とする。このとき、スチレンの重合はリビング重合であれば、アニオン重合又はラジカル重合のいずれの方法で行なってもよい。ポリスチレン末端からのメチルビニルシロキサン三量体の開環重合は、通常リビングアニオン重合を用いて行なわれる。この後、主鎖に残っているビニル基と、側鎖部分となるメソゲン含有化合物の片末端のSi−Hをヒドロシリル化反応により結合させる。
【0035】
いずれの製造方法においても上記式(1)、(4)又は(5)におけるl及び(m+n)は、ミクロ相分離形成の観点からそれぞれ10以上であることが好ましく、合成の容易性の観点からそれぞれ5000以下が好ましい。また、べたつき抑制の観点から、(n/m)>1が好ましい。
【0036】
<パターン形成方法>
また、本発明は、上記ブロック共重合体を用いて、半導体の集積回路などの微細なパターンを形成する方法に関する。本方法は、上記ブロック共重合体を基板上に塗布する塗布工程、及び該基板ごとアニールするアニール工程を順に含む。本発明の方法によれば、ブロック共重合体を塗布した基板の表面上ではべたつきが抑制され、パターン形成プロセスにおいてハンドリング性、経済性などが向上する。
【0037】
ブロック共重合体を基材上へ塗布する方法としては、ブロック共重合体を含むパターン形成用溶液を、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スプレーコーターなどを用いる塗布方法若しくはインクジェット法で塗布する方法、又はスクリーン印刷機、グラビア印刷機、オフセット印刷機等で印刷する方法を挙げることができる。次いで、得られた塗布膜を、風乾、オーブン、ホットプレート等により加熱乾燥又は真空乾燥させて溶剤を揮発させる。溶剤を揮発させた後の膜厚は、シリンダー構造を基板に垂直に配列させるという観点から、50nm〜5μmが好ましい。膜厚の測定法としては、膜に傷を付け、端子を表面に接触させてその段差を測る接触法、又はエリプソメトリーを用いる非接触法で求めることができる。
【0038】
上記塗布膜を基材ごと加熱する(アニールする)方法としては、大別してホットプレートのように基材の下側から直接伝熱させる方法、及びオーブンのように高温の気体を対流させる方法を挙げることができる。直接伝熱させる場合の方が、より短時間で海島構造を得ることができる。加熱する(アニールする)工程は、好ましくは30℃以上280℃以下の温度範囲で、好ましくは5分以上100時間以下の範囲で行う。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明について具体的に説明する。また、生成物のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定、NMRスペクトル測定及び示差走査熱量(DSC)分析については、下記方法に従って行なった(以下、分子量測定、NMRスペクトル測定及びDSC分析について同様である):
<ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定>
ポンプとして日本分光社製PU−2089を用い、そして日本分光社製カラム槽(カラムオーブン)JASCO860にテトラヒドロフラン(THF)カラム(東ソー(TOSOH)社製TSKgel MultiporeHXL−M K9091C, K9092C)を直列に接続して使用した。ディテクター(検出器)としては、紫外分光光度計(UV)のために日本分光社製JASCO870、及び示差屈折率計(RI)のために昭和電工社製Shodex RI−101をそれぞれ用いた。また、溶媒としては、安定剤を含まないテトラヒドロフラン(THF)(特級 ナカライテスク製)を精製せずにそのまま用いた。また、分子量の検量線を作成するための標準ポリスチレンとして、164,000の分子量のためにケムコ株式会社製30129番、48,900の分子量のためにケムコ株式会社製30908番、25,470の分子量のためにケムコ株式会社製30811、及び2,500の分子量のためにアルドリッチ社製32771−9番をそれぞれ使用した。これらの機器、溶媒及び標準ポリスチレンを用いてゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定を行なって、分子量を算出した。
【0040】
<NMRスペクトル測定>
ブルカー社製AV−300(300MHz)を用いてNMRスペクトルを測定した。
【0041】
<示差走査熱量(DSC)分析>
セイコーインスルメンツ社製の示差走査熱量分析装置DSC 6200を用いた。簡易密閉型アルミニウム製パンに測定試料の粉末を3〜5mg入れ、蓋をして簡易密封した。昇温及び降温速度は±5℃/分であり、−70℃から150℃までの温度領域で測定を行い、熱処理を2回行った後、1回目の降温過程と2回目の昇温過程のピークを用いた。
【0042】
[実施例1]スチルベンを液晶メソゲンとして導入したブロック共重合体の合成
【化8】
【0043】
1.スキーム1における化合物aの合成
【化9】
3方コックを付けた30mLナスフラスコに脱水シクロヘキサン3mL、s−ブチルリチウム(1.6M/ヘキサン)300μL(0.48mmol)を加え、そこにスチレン1mL(8.73mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で5時間撹拌した。その後、トリメチルトリビニルシクロシロキサン1.5mL(mmol)、シクロヘキサン4mL、テトラヒドロフラン1.5mLを加え、室温で12時間撹拌した。その後、トリメチルクロロシラン200μLを加え反応を停止させた。エバポレーターで溶媒を留去し、少量のクロロホルムで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行なった。無色の固体が得られた。
【0044】
収量:1.609g(MN=29700,MW=44200,MW/MN=1.49)
PS−b−PVMSの1H NMRスペクトル(CDCl3,300MHz):図1参照
【0045】
2.スキーム1における化合物bの合成
【化10】
試験管にPS−b−PVMS(MN=36100, MW=43600, MW/MN=1.21)100.1mg、キシレン20μL中の2%白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体、脱水トルエン0.5mLを加え、そこに下記式(6):
【化11】
で表されるジシロキサン系化合物213.2mg、脱水トルエン1.5mLを加え、窒素雰囲気下、60℃で4日間還流させた。その後、カラムクロマトグラフィー(和光純薬製シリカ ワコーゲル(silica wakogel)C−200、φ1.5×3cm、クロロホルム)にて触媒を除去し、エバポレーターにて溶媒を留去した。メタノールで洗浄し、少量のクロロホルムで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行った。ヘキサンにてソックスレー抽出を3日間行った。残った固体をテトラヒドロフランで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行った。
【0046】
収量:70 mg(MN=52100,MW=65000,MW/MN=1.25)
PS−b−PVMS(Stb)の1H NMRスペクトル(CDCl3,300MHz):図2参照
【0047】
3.上記式(6)で表されるジシロキサン系化合物の合成
【化12】
【0048】
(3−1)スキーム4における化合物aの合成
【化13】
K2CO3を2当量にして反応を行った。
二口100mLフラスコに4−ビニルフェニルアセテート:2.169g(13.4mmol)、1−ブロモ−4−ブチルベンゼン:1.912g(9.00mmol)、Me2N(CH2)3CO2H・HCl:1.7mg(10.1μmol)、Pd(OAc)2:2.6mg(11.6μmol)、K2CO3:2.473g(17.9mmol)、及びNMP:8mLを加え、窒素雰囲気下、130℃まで少しずつ上げていき、20時間還流させた。分液漏斗に移し、水層を50 mLのCH2Cl2で2回抽出した。有機層を水50mLで2回、塩水50mLで2回洗い、Na2SO4を加えて脱水した。エバポレーターで溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカ: ワコーゲル C−200, φ5×11cm, ヘキサン:エチルアセテート=5:1)にて精製した。エバポレーターで溶媒を留去し、MeOHで再結晶し、無色の針状結晶を得た。
収量:1.145g(4.54mmol,50.4%)
【0049】
また、K2CO3を4当量にして反応を行った。
二口300mLフラスコに4−ビニルフェニルアセテート:12.721g(78.4mmol)、1−ブロモ−4−ブチルベンゼン:11.543g(54.2mmol)、Me2N(CH2)3CO2H・HCl:10.2mg(60.8μmol)、Pd(OAc)2:15.4mg(68.6μmol)、K2CO3:28.158g(203.7mmol)、NMP:50mLを入れ、窒素雰囲気下、130℃まで少しずつ上げていき24時間還流させた。分液漏斗に移し、水層を100mLのCH2Cl2で4回抽出した。有機層を100mLの1N HClで2回、塩水100mLで2回洗い、Na2SO4を加えて脱水した。エバポレーターで溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカ ワコーゲル C−200,φ9×10cm, ヘキサン:エチルアセテート=5:1)にて精製した。エバポレーターで溶媒を留去し、MeOHで再結晶し、無色の針状結晶を得た。
収量:8.075g(32.0mmol,59.0%)
スキーム4における化合物aの1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図3参照
【0050】
(3−2)スキーム4における化合物bの合成
【化14】
300mLナスフラスコに(E)−4−(4−ブチルスチリル)フェノール:6.010g(23.8mmol)、KOH:2.764g(49.3mmol)、KI:30.9mg(0.235mmol)、臭化アリル:7.123g(58.9mmol)、EtOH:200mL、及び水:10mLを加え、窒素雰囲気下、60℃で17時間還流させた。エバポレーターで溶媒を留去した後、CH2Cl2で溶解し、分液漏斗に移した。水層を50mLのCH2Cl2で2回抽出し、有機層を水100mLで2回、塩水100mLで2回洗い、Na2SO4を加えて脱水した。エバポレーターで溶媒を留去した後、MeOH中で再結晶を行い、無色の固体を得た。
収量:5.84g(20.0mmol,84.0%)
スキーム4における化合物bの1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図4参照
【0051】
(3−3)スキーム4における化合物cの合成
【化15】
50mL二口フラスコに1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン:18mL(102mmol)、キシレン中の2%白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体:300μL、トルエン:21mLを加え、そこに(E)−1−(アリルオキシ)−4−(4−ブチルスチリル)ベンゼン:2.909g(9.95mmol)、トルエン:100mLを少しずつ滴下し、窒素雰囲気下、60℃で21時間還流した。エバポレーターで溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカ ワコーゲル C−200,φ8×10cm,ヘキサン:エチルアセテート=30:1)にて精製し、エバポレーターで溶媒を留去した。4mLのCHCl3に溶解させ、分取GPCにて精製し、エバポレーターで溶媒を留去した。無色の固体を得た。
収量:2.060g(4.83mmol,48.5%)
スキーム4における化合物cの1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図5参照
【0052】
この化合物を140℃まで加熱した後、冷却時に125℃付近にDSCで発熱ピークが見られ(図6参照)、同時にTEMで液晶性の構造の発現が見られた。これは、加熱温度が150℃以下であっても液晶性が発現することを意味している。
【0053】
[実施例2]シクロヘキシルフェニルユニットを液晶メソゲンとして導入したブロック共重合体の合成
【化16】
実施例1と同様にポリスチレンとポリメチルビニルシロキサンのブロック共重合体を合成した後、シロキサン部分に、下記のように液晶性側鎖を導入した。
試験管にPS−b−PVMS(MN=36100, MW=43600, MW/MN=1.21)106.7mg、キシレン20μL中の2%白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体、脱水トルエン0.5mLを加え、そこに下記式(7):
【化17】
で表されるジシロキサン系化合物210.5mg、脱水トルエン0.5mLを加え、窒素雰囲気下、60℃で3日間還流させた。その後、カラムクロマトグラフィー(シリカ ワコーゲル C−200, φ1.5×3cm,クロロホルム)にて触媒を除去し、エバポレーターにて溶媒を留去した。少量のテトラヒドロフランで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行った。
収量:214mg(MN=52100, MW=65000, MW/MN=1.25)
PS−b−PVMS(PCH)の1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図7参照
【0054】
(2−1)上記式(7)で表されるジシロキサン系化合物の合成
【化18】
1Lナスフラスコ内で、p−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール15.09g(61.22mmol)、KOH6.531g(116.4mmol)、KI0.068g(0.410mmol)をEtOH500mL及びイオン交換水24.8mLに溶解し、そこに臭化アリル12.647g(104.5mmol)を加えて7時間還流させた。反応後、ろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。分液漏斗に移し、エーテル250mL、及びイオン交換水100mLを加え、有機層をイオン交換水100mLで2回、塩水100mLで2回洗った。さらに、NaSO4を加えて脱水し、エバポレーターで溶媒を留去した。MeOHで再結晶を行った。無色の針状結晶が得られた。
収量:16.48g(57.52mmol,93.96%)
スキーム9で得られた化合物の1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図8参照
【0055】
【化19】
50mL二口ナスフラスコに1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン7mL(39.6mmol)、THF:5mLを加え、そこにTHF1mL中に溶解させた13.5mgのH2PtCl6・6H2Oを加えた1−(アリルオキシ)−4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゼン1.061g(3.70mmol)、THF10mLを滴下し、窒素雰囲気下、60℃で40時間還流させた。エバポレーターで溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ,activated 300,φ3×3cm,ヘキサン:エチルアセテート(50:1))にて触媒を除去した。エバポレーターで溶媒を留去し、再びカラムクロマトグラフィー(シリカ ワコーゲル C−200,φ5×10cm,ヘキサン:エチルアセテート(50:1))にて精製した。エバポレーターで溶媒を留去し、無色の液体を得た。1H NMRより目的物質であることが確認できた。
収量:0.948g(2.25mmol,60.8%)
スキーム10で得られた化合物の1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図9参照
【0056】
この化合物を150℃まで加熱した後、冷却時に20℃付近にDSCで発熱ピークが見られ(図10参照)、同時にTEMで液晶性の構造の発現が見られた。これは、加熱温度が150℃以下であっても液晶性が発現することを意味している。
【0057】
[実施例3]
実施例1及び2記載のブロック共重合体の主鎖部分は、リビングアニオン重合の他に、下記スキーム(11):
【化20】
又は下記スキーム(12):
【化21】
のように、リビングラジカル重合若しくはクリック反応によって合成することもできる。
【0058】
以下、リビングラジカルによるブロック共重合体の主鎖部分の合成法について詳細に述べる。
1−1 スキーム11又は12における化合物aの合成
【化22】
試験管にスチレン:6.04g(58.0mmol)、2−ヒドロキシエチル2−ブロモ−2−メチルプロパノエート:246.6mg(1.17mmol)、CuBr:156.5mg(1.09mol)、PMDETA:250μL(1.19mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、110℃、5時間攪拌させた。その後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ,φ3×3cm,ジクロロメタン)にて触媒を除去し、エバポレーターにて溶媒を留去した。メタノールで洗浄し、少量のクロロホルムで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行った。無色の固体が得られた。
収量:4.041g(mNMR=60, MN,NMR=6300, MN,GPC=30700,MW=33800, MW/MN=1.10)
PS−OHの1H NMRスペクトル(CDCl3, 600MHz):図11参照
【0059】
1−2 スキーム11における化合物bの合成
【化23】
試験管にPS−OH(MN,NMR=6300):298.2mg(0.047mmol)、トリメチルトリビニルシクロシロキサン:215mg(0.832mmol)、TBD:6.4mg(0.046mmol)、ジクロロメタン:1.5mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で16.5時間攪拌させた。その後、安息香酸を過剰量加え、反応を停止させ、メタノール中に再沈殿を行った。無色の固体が得られた。
収量:331mg(転化率(conv.)=53.1%,nNMR=20, MN,NMR=8000, MW/MN=1.10)
PS−b−PVMSの1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図12参照
【0060】
1−3 スキーム12における化合物b及びcの合成
反応器中にTBD、CH2Cl2、トリメチルトリビニルシクロシロキサン及び2−アジドエタノールを加えて、トリメチルトリビニルシクロシロキサンと2−アジドエタノールを反応させて生成物(スキーム12における化合物b)を得る。次に、反応器に、この生成物(スキーム12における化合物b)、CuBr、PMDETA、CH2Cl2、及びスキーム11又は12における化合物aを加えて、スキーム11又は12における化合物aのアルキン部分とスキーム12における化合物bのアジド部分とを付加環化反応(フイスゲン反応)させて、1,2,3,−トリアゾール環を介して結合を形成して、新たな生成物(スキーム12における化合物c)を得る。
【0061】
実施例3で合成した主鎖を用い、実施例1及び2と同様に液晶性側鎖を反応させて、実施例1及び2と同様のブロック共重合体を得ると、加熱冷却時、実施例1及び2と同様の挙動を示す。
【0062】
[比較例1]
下記式(8):
【化24】
で表されるブロック共重合体を調製した。このブロック共重合体は、液晶性側鎖を有するブロック共重合体(ただし、y及びzの配列はランダム構造である)であり、ポリスチレン(PS)の数平均分子量は26,900g/molであり、液晶性重合体(LCP)の数平均分子量は79,400g/molであり、ブロック共重合体の全体としての数平均分子量は106,300g/molであり、その多分散指数{PDI=(MW/MN)}は1.28であった。したがって、式(8)中のn、x、y及びzは、このような分子量の関係を達成できる任意の整数であると考えられる。また、このブロック共重合体では、NMR測定に基づくメソゲン置換率(%)は55%であり、このブロック共重合体の全質量を基準として、75質量%を構成する液晶性重合体(LCP)の部分が得られる。
【0063】
このブロック共重合体は、本発明とは液晶性側鎖について異なっており、液晶性を発現させるためには、170℃以上の加熱温度が必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のブロック共重合体を用いることで、ナノメータオーダーの微細なパターン形成が可能となり、半導体の集積回路の製造などに利用することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトリソグラフィーを使うことなく微細なパターンを形成するためのブロック共重合体、及びこれを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の集積回路に代表される、ナノメータオーダーの微細なパターン形成において、これまで用いられて来たフォトリソグラフィーの手法は、パターンのサイズが小さくなるに連れ、飛躍的なコストアップを伴うため、昨今、ナノインプリント、又は自己組織化といったフォトリソグラフィーに変わる手法が模索され始めている。
【0003】
ここで、自己組織化とは、分子が何らかの相互作用により、自発的に配列することを利用したパターン形成手法をいい、その中で最もよく利用されるのは、ブロックコポリマーを用いる方法である。
【0004】
2種以上の互いに相溶しないポリマー同士が結合したブロックコポリマーは、それぞれのポリマーが集まってドメインを形成することが知られている。例えば、互いに相溶しない2種のポリマーA及びBが結合したジブロックコポリマーは、Aの分率に応じて、Aが島状にBの中に点在する海島構造、Aが柱状にBの中に配列するシリンダー構造、A及びBが互いに層状に配列するラメラ構造等を形成することが知られている。このとき、例えば、AとBのエッチング耐性に差があれば、これらの構造を更にエッチングにより転写することができる。
【0005】
このようなエッチング耐性に差があるポリマー同士のブロックコポリマーとして、これまで、例えばポリスチレンとポリジメチルシロキサンのブロックコポリマーが用いられて来た。しかしながら、ポリジメチルシロキサンは有機高分子と容易にミクロ相分離し、かつ耐エッチング性が高いという特長を有するが、一方、ガラス転移温度(Tg)が低いため、例えばポリジメチルシロキサンブロックの方がポリスチレンブロックより分子量が大きいときに、塗布後の表面にべたつきを生じるという問題があった。
【0006】
これに対し、ジメチルシロキサンに液晶性の側鎖をつけ、その液晶相互作用を発現させることで、べたつきを防止する方法が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Macromolecules, vol.40, P.777(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1に開示の技術では、液晶相互作用を発現させるために、170℃以上の温度への加熱が必要であった。
【0009】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、ポリジメチルシロキサンに、150℃以下の加熱温度で液晶相互作用を発現させられるような、新規な液晶性側鎖を有するポリマーと、ポリスチレンとを組み込んだブロック共重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討し、実験を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
【0011】
[1] 下記式(1):
【化1】
{式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜20の2価の基であり、Xは、水素原子又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基であり、Yは、下記式(2):
【化2】
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。)又は下記式(3):
【化3】
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。)で表される基であり、lは、10〜5000の整数であり、(m+n)は、10〜5000の整数であり、(n/m)>1であり、aは、1〜4の整数であり、そしてbは、3〜5の整数である。}
で表されるブロック共重合体。
【0012】
[2] 前記式(1)において、Yは下記式(2):
【化4】
{式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。}で表される基である、[1]に記載のブロック共重合体。
【0013】
[3] 前記式(1)において、Yは下記式(3):
【化5】
{式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。}で表される基である、[1]に記載のブロック共重合体。
【0014】
[4] [1]〜[3]のいずれか1項に記載のブロック共重合体を基板上に塗布する塗布工程、及び該基板ごとアニールするアニール工程を順に含むパターン形成方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明のブロック共重合体は、150℃以下の加熱温度で液晶相互作用を発現させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】PS−b−PVMSの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図2】PS−b−PVMS(Stb)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図3】スキーム4における化合物aの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図4】スキーム4における化合物bの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図5】スキーム4における化合物cの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図6】DSCにおける発熱ピークを示す図である。
【図7】PS−b−PVMS(PCH)の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図8】スキーム9で得られた化合物の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図9】スキーム10で得られた化合物の1H NMRスペクトルを示す図である。
【図10】DSCにおける発熱ピークを示す図である。
【図11】PS−OHの1H NMRスペクトルを示す図である。
【図12】PS−b−PVMSの1H NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<ブロック共重合体>
本発明のブロック共重合体は、上記一般式(1)で表される通り、有機材料に近い性質を有するポリスチレン構造と無機材料に近い性質を有するポリシロキサン構造とを含み、その側鎖に液晶部位が導入されている。
【0018】
具体的には、本発明で用いることのできるブロック共重合体は、側鎖に、Si原子並びにスチルベン若しくはシクロヘキシルフェニルユニットをメソゲンとして有する液晶性ポリジメチルシロキサン誘導体と、ポリスチレンとのジブロック共重合体である。
【0019】
好ましくは、本発明のブロック共重合体は、下記式(4):
【化6】
{式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜20の2価の基であり、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基であり、Xは、水素原子又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基であり、lは、10〜5000から選ばれる整数であり、(m+n)は、10〜5000から選ばれる整数であり、(n/m)>1であり、aは、1〜4から選ばれる整数であり、そしてbは、3〜5から選ばれる整数である。}
又は下記式(5):
【化7】
{式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜20の2価の基であり、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基であり、Xは、水素原子又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基であり、lは、10〜5000から選ばれる整数であり、(m+n)は、10〜5000から選ばれる整数であり、(n/m)>1であり、aは、1〜4から選ばれる整数であり、そしてbは、3〜5から選ばれる整数である。)
により表される。
【0020】
上記式(4)又は(5)において、R1は、好ましくは、置換されていてもよい炭素数1〜6のアルキル基であり、より好ましくは、置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基であり、特に好ましくは、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基又はtert−ブチル基である。
【0021】
また、R2は、2価の基であり、好ましくは、飽和又は不飽和でよく、直鎖又は分岐鎖でよく、置換型又は非置換型でよい。より好ましくは、R2は、炭化水素基、ヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、ハロゲン系原子など)を含む基、シロキサン骨格を含む基、複素環(例えば、3〜7員複素環、より具体的には、窒素原子を含む5又は6員複素環など)を含む基である。
【0022】
また、R3は、飽和又は不飽和でよく、直鎖又は分岐鎖でよく、そして置換型又は非置換型でよい。R3は、好ましくは、炭素数1〜5のアルキル基であり、より好ましくは、ブチル基又はペンチル基である。
【0023】
また、Xは、好ましくは、炭素数3〜9のトリアルキルシリル基であり、より好ましくは、トリメチルシリル基である。
【0024】
また、lは、10〜5000の範囲から選ばれる整数である。
【0025】
また、m及びnは、(m+n)が10〜5000の範囲から選ばれる整数であり、かつ(n/m)が1を超える限り、任意の整数でよい。例えば、mは、1〜2499の整数であり、nは、9〜4999の整数である。また、上記式(4)又は(5)において、mで表される繰り返し単位とnで表される繰り返し単位の配列は、ランダム、統計、交互又は周期でよく、好ましくはランダムである。
【0026】
また、aは、1〜4の範囲から選ばれる整数であり、例えば、1又は2である。
【0027】
また、bは、3〜5の範囲から選ばれる整数であり、例えば、3である。
【0028】
本発明のブロック共重合体の数平均分子量MNは、好ましくは、10,000〜100,000であり、より好ましくは、40,000〜60,000である。本発明のブロック共重合体の重量平均分子量MWは、好ましくは、10,000〜100,000であり、より好ましくは、50,000〜70,000である。分子量の測定方法としては、本技術分野で知られている任意の方法を使用してよい。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)などで測定したスペクトルを、既知の分子量を有するポリスチレンについて作成した検量線と比較することにより、ポリスチレン換算重量平均分子量とポリスチレン換算数平均分子量とを計算してよい。
【0029】
本発明のブロック共重合体は、その側鎖にメソゲンを有することができる。一般に、メソゲンとは、液晶性を発現するために、剛直であり、かつ配向性を有する官能基(原子団)(例えば、芳香環など)の名称をいう。本発明のブロック共重合体では、メソゲンは、液晶性を発現するという観点から、主鎖からメチレン骨格又はシロキサン骨格を介して、原子数として好ましくは8〜16個、より好ましくは8〜10個離れており、かつその先端に炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又はシアノ基から成る群から選ばれる一つの基を有していることが好ましい。
【0030】
また、本発明では耐エッチング性を上げる観点から、ケイ素(Si)原子を側鎖に導入するが、その導入の方法としては、合成の容易性の観点から、ジメチルシロキシ基の形で、主鎖とメソゲンの中間に導入することが好ましい。これらをまとめると、主鎖から先ず炭素数2のメチレン基があり、次にジメチルシロキシ基を1個〜4個介し、更に炭素数3〜5のメチレン基を経てメソゲンが結合し、メソゲンの先端には炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる基が結合していることが好ましい。
【0031】
メソゲンとしては、無秩序から液晶性への相転移温度が150℃以下であるという観点から、スチルベン若しくはシクロヘキシルフェニルユニットが好ましい。
【0032】
上述したような、Si原子並びにスチルベン若しくはシクロヘキシルフェニルユニットをメソゲンとして有する液晶性の側鎖は、メソゲン含有化合物(例えば、メソゲン含有ジシロキサン系化合物など)として、例えば下記工程1〜3を含む方法により合成される。
1.片末端にアルキル基、もう一方の末端にフェノキシ基を有するメソゲン(スチルベン)の合成
4−ブロモアルキルベンゼンのブロム基と、p−ビニルフェノールのビニル基を、パラジウム(Pd)触媒を用いてカップリングする。
2.メソゲンのフェノキシ基の末端ビニル基への変換
アルカリ触媒を用いて、臭化アリル若しくは臭化ブテニル等をフェノキシ基と反応させ、メソゲンに酸素及びメチレンを介して末端ビニル基を導入する。
3.末端ビニル基へのジメチルシロキサン骨格の導入
白金(Pt)触媒を用いて、上記式(1)、(4)又は(5)におけるaが1である場合には、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサンなどのジヒドロ(ジメチルシロキサン)の片末端のSi−Hのみを末端ビニル基へ付加させるか、又は上記式(1)、(4)又は(5)におけるaが2〜4である場合には、ジヒドロポリ(ジメチルシロキサン)の片末端のSi−Hのみを末端ビニル基へ付加させる(ヒドロシリル化)。
【0033】
<ブロック共重合体の製造方法>
本発明のブロック共重合体の製造方法について説明する。本発明のような液晶性側鎖を有するポリジメチルシロキサンとポリスチレンとのブロック共重合体は、まずスチレンを重合し、次いで、得られたポリスチレンの末端からメチルビニルシロキサン三量体を開環重合してから、得られたポリジメチルシロキサン部分のビニル基にヒドロシリル化反応を用いて、液晶性側鎖を導入することにより得られる。
【0034】
別の製造方法としては、スチレンの重合とメチルビニルシロキサンの重合を別々に行なった後に、末端同士を反応させてブロック共重合体とする。このとき、スチレンの重合はリビング重合であれば、アニオン重合又はラジカル重合のいずれの方法で行なってもよい。ポリスチレン末端からのメチルビニルシロキサン三量体の開環重合は、通常リビングアニオン重合を用いて行なわれる。この後、主鎖に残っているビニル基と、側鎖部分となるメソゲン含有化合物の片末端のSi−Hをヒドロシリル化反応により結合させる。
【0035】
いずれの製造方法においても上記式(1)、(4)又は(5)におけるl及び(m+n)は、ミクロ相分離形成の観点からそれぞれ10以上であることが好ましく、合成の容易性の観点からそれぞれ5000以下が好ましい。また、べたつき抑制の観点から、(n/m)>1が好ましい。
【0036】
<パターン形成方法>
また、本発明は、上記ブロック共重合体を用いて、半導体の集積回路などの微細なパターンを形成する方法に関する。本方法は、上記ブロック共重合体を基板上に塗布する塗布工程、及び該基板ごとアニールするアニール工程を順に含む。本発明の方法によれば、ブロック共重合体を塗布した基板の表面上ではべたつきが抑制され、パターン形成プロセスにおいてハンドリング性、経済性などが向上する。
【0037】
ブロック共重合体を基材上へ塗布する方法としては、ブロック共重合体を含むパターン形成用溶液を、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スプレーコーターなどを用いる塗布方法若しくはインクジェット法で塗布する方法、又はスクリーン印刷機、グラビア印刷機、オフセット印刷機等で印刷する方法を挙げることができる。次いで、得られた塗布膜を、風乾、オーブン、ホットプレート等により加熱乾燥又は真空乾燥させて溶剤を揮発させる。溶剤を揮発させた後の膜厚は、シリンダー構造を基板に垂直に配列させるという観点から、50nm〜5μmが好ましい。膜厚の測定法としては、膜に傷を付け、端子を表面に接触させてその段差を測る接触法、又はエリプソメトリーを用いる非接触法で求めることができる。
【0038】
上記塗布膜を基材ごと加熱する(アニールする)方法としては、大別してホットプレートのように基材の下側から直接伝熱させる方法、及びオーブンのように高温の気体を対流させる方法を挙げることができる。直接伝熱させる場合の方が、より短時間で海島構造を得ることができる。加熱する(アニールする)工程は、好ましくは30℃以上280℃以下の温度範囲で、好ましくは5分以上100時間以下の範囲で行う。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明について具体的に説明する。また、生成物のゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定、NMRスペクトル測定及び示差走査熱量(DSC)分析については、下記方法に従って行なった(以下、分子量測定、NMRスペクトル測定及びDSC分析について同様である):
<ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定>
ポンプとして日本分光社製PU−2089を用い、そして日本分光社製カラム槽(カラムオーブン)JASCO860にテトラヒドロフラン(THF)カラム(東ソー(TOSOH)社製TSKgel MultiporeHXL−M K9091C, K9092C)を直列に接続して使用した。ディテクター(検出器)としては、紫外分光光度計(UV)のために日本分光社製JASCO870、及び示差屈折率計(RI)のために昭和電工社製Shodex RI−101をそれぞれ用いた。また、溶媒としては、安定剤を含まないテトラヒドロフラン(THF)(特級 ナカライテスク製)を精製せずにそのまま用いた。また、分子量の検量線を作成するための標準ポリスチレンとして、164,000の分子量のためにケムコ株式会社製30129番、48,900の分子量のためにケムコ株式会社製30908番、25,470の分子量のためにケムコ株式会社製30811、及び2,500の分子量のためにアルドリッチ社製32771−9番をそれぞれ使用した。これらの機器、溶媒及び標準ポリスチレンを用いてゲル透過クロマトグラフィー(GPC)測定を行なって、分子量を算出した。
【0040】
<NMRスペクトル測定>
ブルカー社製AV−300(300MHz)を用いてNMRスペクトルを測定した。
【0041】
<示差走査熱量(DSC)分析>
セイコーインスルメンツ社製の示差走査熱量分析装置DSC 6200を用いた。簡易密閉型アルミニウム製パンに測定試料の粉末を3〜5mg入れ、蓋をして簡易密封した。昇温及び降温速度は±5℃/分であり、−70℃から150℃までの温度領域で測定を行い、熱処理を2回行った後、1回目の降温過程と2回目の昇温過程のピークを用いた。
【0042】
[実施例1]スチルベンを液晶メソゲンとして導入したブロック共重合体の合成
【化8】
【0043】
1.スキーム1における化合物aの合成
【化9】
3方コックを付けた30mLナスフラスコに脱水シクロヘキサン3mL、s−ブチルリチウム(1.6M/ヘキサン)300μL(0.48mmol)を加え、そこにスチレン1mL(8.73mmol)を加え、窒素雰囲気下、室温で5時間撹拌した。その後、トリメチルトリビニルシクロシロキサン1.5mL(mmol)、シクロヘキサン4mL、テトラヒドロフラン1.5mLを加え、室温で12時間撹拌した。その後、トリメチルクロロシラン200μLを加え反応を停止させた。エバポレーターで溶媒を留去し、少量のクロロホルムで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行なった。無色の固体が得られた。
【0044】
収量:1.609g(MN=29700,MW=44200,MW/MN=1.49)
PS−b−PVMSの1H NMRスペクトル(CDCl3,300MHz):図1参照
【0045】
2.スキーム1における化合物bの合成
【化10】
試験管にPS−b−PVMS(MN=36100, MW=43600, MW/MN=1.21)100.1mg、キシレン20μL中の2%白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体、脱水トルエン0.5mLを加え、そこに下記式(6):
【化11】
で表されるジシロキサン系化合物213.2mg、脱水トルエン1.5mLを加え、窒素雰囲気下、60℃で4日間還流させた。その後、カラムクロマトグラフィー(和光純薬製シリカ ワコーゲル(silica wakogel)C−200、φ1.5×3cm、クロロホルム)にて触媒を除去し、エバポレーターにて溶媒を留去した。メタノールで洗浄し、少量のクロロホルムで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行った。ヘキサンにてソックスレー抽出を3日間行った。残った固体をテトラヒドロフランで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行った。
【0046】
収量:70 mg(MN=52100,MW=65000,MW/MN=1.25)
PS−b−PVMS(Stb)の1H NMRスペクトル(CDCl3,300MHz):図2参照
【0047】
3.上記式(6)で表されるジシロキサン系化合物の合成
【化12】
【0048】
(3−1)スキーム4における化合物aの合成
【化13】
K2CO3を2当量にして反応を行った。
二口100mLフラスコに4−ビニルフェニルアセテート:2.169g(13.4mmol)、1−ブロモ−4−ブチルベンゼン:1.912g(9.00mmol)、Me2N(CH2)3CO2H・HCl:1.7mg(10.1μmol)、Pd(OAc)2:2.6mg(11.6μmol)、K2CO3:2.473g(17.9mmol)、及びNMP:8mLを加え、窒素雰囲気下、130℃まで少しずつ上げていき、20時間還流させた。分液漏斗に移し、水層を50 mLのCH2Cl2で2回抽出した。有機層を水50mLで2回、塩水50mLで2回洗い、Na2SO4を加えて脱水した。エバポレーターで溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカ: ワコーゲル C−200, φ5×11cm, ヘキサン:エチルアセテート=5:1)にて精製した。エバポレーターで溶媒を留去し、MeOHで再結晶し、無色の針状結晶を得た。
収量:1.145g(4.54mmol,50.4%)
【0049】
また、K2CO3を4当量にして反応を行った。
二口300mLフラスコに4−ビニルフェニルアセテート:12.721g(78.4mmol)、1−ブロモ−4−ブチルベンゼン:11.543g(54.2mmol)、Me2N(CH2)3CO2H・HCl:10.2mg(60.8μmol)、Pd(OAc)2:15.4mg(68.6μmol)、K2CO3:28.158g(203.7mmol)、NMP:50mLを入れ、窒素雰囲気下、130℃まで少しずつ上げていき24時間還流させた。分液漏斗に移し、水層を100mLのCH2Cl2で4回抽出した。有機層を100mLの1N HClで2回、塩水100mLで2回洗い、Na2SO4を加えて脱水した。エバポレーターで溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカ ワコーゲル C−200,φ9×10cm, ヘキサン:エチルアセテート=5:1)にて精製した。エバポレーターで溶媒を留去し、MeOHで再結晶し、無色の針状結晶を得た。
収量:8.075g(32.0mmol,59.0%)
スキーム4における化合物aの1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図3参照
【0050】
(3−2)スキーム4における化合物bの合成
【化14】
300mLナスフラスコに(E)−4−(4−ブチルスチリル)フェノール:6.010g(23.8mmol)、KOH:2.764g(49.3mmol)、KI:30.9mg(0.235mmol)、臭化アリル:7.123g(58.9mmol)、EtOH:200mL、及び水:10mLを加え、窒素雰囲気下、60℃で17時間還流させた。エバポレーターで溶媒を留去した後、CH2Cl2で溶解し、分液漏斗に移した。水層を50mLのCH2Cl2で2回抽出し、有機層を水100mLで2回、塩水100mLで2回洗い、Na2SO4を加えて脱水した。エバポレーターで溶媒を留去した後、MeOH中で再結晶を行い、無色の固体を得た。
収量:5.84g(20.0mmol,84.0%)
スキーム4における化合物bの1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図4参照
【0051】
(3−3)スキーム4における化合物cの合成
【化15】
50mL二口フラスコに1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン:18mL(102mmol)、キシレン中の2%白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体:300μL、トルエン:21mLを加え、そこに(E)−1−(アリルオキシ)−4−(4−ブチルスチリル)ベンゼン:2.909g(9.95mmol)、トルエン:100mLを少しずつ滴下し、窒素雰囲気下、60℃で21時間還流した。エバポレーターで溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(シリカ ワコーゲル C−200,φ8×10cm,ヘキサン:エチルアセテート=30:1)にて精製し、エバポレーターで溶媒を留去した。4mLのCHCl3に溶解させ、分取GPCにて精製し、エバポレーターで溶媒を留去した。無色の固体を得た。
収量:2.060g(4.83mmol,48.5%)
スキーム4における化合物cの1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図5参照
【0052】
この化合物を140℃まで加熱した後、冷却時に125℃付近にDSCで発熱ピークが見られ(図6参照)、同時にTEMで液晶性の構造の発現が見られた。これは、加熱温度が150℃以下であっても液晶性が発現することを意味している。
【0053】
[実施例2]シクロヘキシルフェニルユニットを液晶メソゲンとして導入したブロック共重合体の合成
【化16】
実施例1と同様にポリスチレンとポリメチルビニルシロキサンのブロック共重合体を合成した後、シロキサン部分に、下記のように液晶性側鎖を導入した。
試験管にPS−b−PVMS(MN=36100, MW=43600, MW/MN=1.21)106.7mg、キシレン20μL中の2%白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン複合体、脱水トルエン0.5mLを加え、そこに下記式(7):
【化17】
で表されるジシロキサン系化合物210.5mg、脱水トルエン0.5mLを加え、窒素雰囲気下、60℃で3日間還流させた。その後、カラムクロマトグラフィー(シリカ ワコーゲル C−200, φ1.5×3cm,クロロホルム)にて触媒を除去し、エバポレーターにて溶媒を留去した。少量のテトラヒドロフランで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行った。
収量:214mg(MN=52100, MW=65000, MW/MN=1.25)
PS−b−PVMS(PCH)の1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図7参照
【0054】
(2−1)上記式(7)で表されるジシロキサン系化合物の合成
【化18】
1Lナスフラスコ内で、p−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)フェノール15.09g(61.22mmol)、KOH6.531g(116.4mmol)、KI0.068g(0.410mmol)をEtOH500mL及びイオン交換水24.8mLに溶解し、そこに臭化アリル12.647g(104.5mmol)を加えて7時間還流させた。反応後、ろ過し、エバポレーターで溶媒を留去した。分液漏斗に移し、エーテル250mL、及びイオン交換水100mLを加え、有機層をイオン交換水100mLで2回、塩水100mLで2回洗った。さらに、NaSO4を加えて脱水し、エバポレーターで溶媒を留去した。MeOHで再結晶を行った。無色の針状結晶が得られた。
収量:16.48g(57.52mmol,93.96%)
スキーム9で得られた化合物の1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図8参照
【0055】
【化19】
50mL二口ナスフラスコに1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン7mL(39.6mmol)、THF:5mLを加え、そこにTHF1mL中に溶解させた13.5mgのH2PtCl6・6H2Oを加えた1−(アリルオキシ)−4−(trans−4−ペンチルシクロヘキシル)ベンゼン1.061g(3.70mmol)、THF10mLを滴下し、窒素雰囲気下、60℃で40時間還流させた。エバポレーターで溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィー(アルミナ,activated 300,φ3×3cm,ヘキサン:エチルアセテート(50:1))にて触媒を除去した。エバポレーターで溶媒を留去し、再びカラムクロマトグラフィー(シリカ ワコーゲル C−200,φ5×10cm,ヘキサン:エチルアセテート(50:1))にて精製した。エバポレーターで溶媒を留去し、無色の液体を得た。1H NMRより目的物質であることが確認できた。
収量:0.948g(2.25mmol,60.8%)
スキーム10で得られた化合物の1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図9参照
【0056】
この化合物を150℃まで加熱した後、冷却時に20℃付近にDSCで発熱ピークが見られ(図10参照)、同時にTEMで液晶性の構造の発現が見られた。これは、加熱温度が150℃以下であっても液晶性が発現することを意味している。
【0057】
[実施例3]
実施例1及び2記載のブロック共重合体の主鎖部分は、リビングアニオン重合の他に、下記スキーム(11):
【化20】
又は下記スキーム(12):
【化21】
のように、リビングラジカル重合若しくはクリック反応によって合成することもできる。
【0058】
以下、リビングラジカルによるブロック共重合体の主鎖部分の合成法について詳細に述べる。
1−1 スキーム11又は12における化合物aの合成
【化22】
試験管にスチレン:6.04g(58.0mmol)、2−ヒドロキシエチル2−ブロモ−2−メチルプロパノエート:246.6mg(1.17mmol)、CuBr:156.5mg(1.09mol)、PMDETA:250μL(1.19mmol)を加え、アルゴン雰囲気下、110℃、5時間攪拌させた。その後、カラムクロマトグラフィー(アルミナ,φ3×3cm,ジクロロメタン)にて触媒を除去し、エバポレーターにて溶媒を留去した。メタノールで洗浄し、少量のクロロホルムで溶解させ、メタノール中に再沈殿を行った。無色の固体が得られた。
収量:4.041g(mNMR=60, MN,NMR=6300, MN,GPC=30700,MW=33800, MW/MN=1.10)
PS−OHの1H NMRスペクトル(CDCl3, 600MHz):図11参照
【0059】
1−2 スキーム11における化合物bの合成
【化23】
試験管にPS−OH(MN,NMR=6300):298.2mg(0.047mmol)、トリメチルトリビニルシクロシロキサン:215mg(0.832mmol)、TBD:6.4mg(0.046mmol)、ジクロロメタン:1.5mLを加え、アルゴン雰囲気下、室温で16.5時間攪拌させた。その後、安息香酸を過剰量加え、反応を停止させ、メタノール中に再沈殿を行った。無色の固体が得られた。
収量:331mg(転化率(conv.)=53.1%,nNMR=20, MN,NMR=8000, MW/MN=1.10)
PS−b−PVMSの1H NMRスペクトル(CDCl3, 300MHz):図12参照
【0060】
1−3 スキーム12における化合物b及びcの合成
反応器中にTBD、CH2Cl2、トリメチルトリビニルシクロシロキサン及び2−アジドエタノールを加えて、トリメチルトリビニルシクロシロキサンと2−アジドエタノールを反応させて生成物(スキーム12における化合物b)を得る。次に、反応器に、この生成物(スキーム12における化合物b)、CuBr、PMDETA、CH2Cl2、及びスキーム11又は12における化合物aを加えて、スキーム11又は12における化合物aのアルキン部分とスキーム12における化合物bのアジド部分とを付加環化反応(フイスゲン反応)させて、1,2,3,−トリアゾール環を介して結合を形成して、新たな生成物(スキーム12における化合物c)を得る。
【0061】
実施例3で合成した主鎖を用い、実施例1及び2と同様に液晶性側鎖を反応させて、実施例1及び2と同様のブロック共重合体を得ると、加熱冷却時、実施例1及び2と同様の挙動を示す。
【0062】
[比較例1]
下記式(8):
【化24】
で表されるブロック共重合体を調製した。このブロック共重合体は、液晶性側鎖を有するブロック共重合体(ただし、y及びzの配列はランダム構造である)であり、ポリスチレン(PS)の数平均分子量は26,900g/molであり、液晶性重合体(LCP)の数平均分子量は79,400g/molであり、ブロック共重合体の全体としての数平均分子量は106,300g/molであり、その多分散指数{PDI=(MW/MN)}は1.28であった。したがって、式(8)中のn、x、y及びzは、このような分子量の関係を達成できる任意の整数であると考えられる。また、このブロック共重合体では、NMR測定に基づくメソゲン置換率(%)は55%であり、このブロック共重合体の全質量を基準として、75質量%を構成する液晶性重合体(LCP)の部分が得られる。
【0063】
このブロック共重合体は、本発明とは液晶性側鎖について異なっており、液晶性を発現させるためには、170℃以上の加熱温度が必要であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のブロック共重合体を用いることで、ナノメータオーダーの微細なパターン形成が可能となり、半導体の集積回路の製造などに利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
{式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜20の2価の基であり、Xは、水素原子又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基であり、Yは、下記式(2):
【化2】
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。)又は下記式(3):
【化3】
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。)で表される基であり、lは、10〜5000の整数であり、(m+n)は、10〜5000の整数であり、(n/m)>1であり、aは、1〜4の整数であり、そしてbは、3〜5の整数である。}
で表されるブロック共重合体。
【請求項2】
前記式(1)において、Yは下記式(2):
【化4】
{式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。}で表される基である、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記式(1)において、Yは下記式(3):
【化5】
{式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。}で表される基である、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロック共重合体を基板上に塗布する塗布工程、及び該基板ごとアニールするアニール工程を順に含むパターン形成方法。
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
{式中、R1は、炭素数1〜6のアルキル基であり、R2は、炭素数1〜20の2価の基であり、Xは、水素原子又は炭素数3〜15のトリアルキルシリル基であり、Yは、下記式(2):
【化2】
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。)又は下記式(3):
【化3】
(式中、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。)で表される基であり、lは、10〜5000の整数であり、(m+n)は、10〜5000の整数であり、(n/m)>1であり、aは、1〜4の整数であり、そしてbは、3〜5の整数である。}
で表されるブロック共重合体。
【請求項2】
前記式(1)において、Yは下記式(2):
【化4】
{式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。}で表される基である、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記式(1)において、Yは下記式(3):
【化5】
{式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びシアノ基から成る群から選ばれる一つの基である。}で表される基である、請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のブロック共重合体を基板上に塗布する塗布工程、及び該基板ごとアニールするアニール工程を順に含むパターン形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−236866(P2012−236866A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104748(P2011−104748)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【出願人】(504255685)国立大学法人京都工芸繊維大学 (203)
【Fターム(参考)】
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