Notice: Undefined variable: fterm_desc_sub in /mnt/www/biblio_conv.php on line 353
ブロック共重合体
説明

ブロック共重合体

【課題】 皮膜形成能に優れ、且つ基材との接着性にも優れた塗膜を形成することができ、且つタンパク質を吸着しない性質を付与できるブロック共重合体を提供する。
【解決手段】 (ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレート及び(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートから選択される1種以上のモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、(メタ)アクリルアミド及びN−若しくはN,N−置換(メタ)アクリルアミドから選択される1種以上のモノマー(b)を含むモノマーの重合体(B)とを主構成単位とするブロック共重合体により、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーの重合体と(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合体からなるブロック共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
異なるポリマーセグメントからなるブロック共重合体は、各々のポリマーセグメントの性質が現れ、機能するため、接着剤や高分子界面活性剤、熱可塑性樹脂などとして有用である。例えば、炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーの重合体Aと酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、及びアクリロニトリルから選ばれる少なくとも1種を主成分とする重合体BからなるA−B型ブロック共重合体からなる粘着剤組成物が平滑な基材に対して良好な粘着性および再剥離性を有し、再剥離時粘着剤が基材に残らないことが開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、ガラス転移温度が−60〜−20℃のビニル系重合体よりなるAセグメントと、ガラス転移温度が50〜130℃のビニル系重合体よりなるBセグメントとから構成され粉状又は粒状のA−B型ブロック共重合体及び熱可塑性樹脂を含有するものが、流動性に優れ、得られる成形体の耐衝撃性及び外観に優れることが開示されている(特許文献2参照)。
【0004】
更に、ポリ−N−イソプピルアクリルアミド−ポリ−N,N−ジメチルアクリルアミド−ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドのA−B−A型ブロック共重合体が、水中で相転移温度(約32℃)以上に加熱することにより、Aセグメントが親水性から疎水性へと転移し、共重合体が自己凝集することが報告されている(非特許文献1参照)。
【0005】
上記に示すA−B−A型ブロック共重合体は、相転移温度以下では親水性であり、基材との間に接着性を有していないが、相転移温度以上になると、Aセグメントが疎水性へと転移し、高いタンパク吸着性を示すと思われる。
その他、N,N−ジメチルアクリルアミドやN−メチルアクリルアミドに由来する繰り返し単位からなるブロックと、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体またはヒドロキシル基を有するスチレン系単量体に由来する繰り返し単位からなるブロックとからなるアミド系ブロック共重合体が血小板を高い収率で透過する白血球除去フィルターコート剤として有効であることが報告されている(特許文献3参照)。
【0006】
更に、メトキシエチル(メタ)アクリレートとN−イソプロピルアクリルアミドからなる星型ブロック共重合体が、相転移温度以下で水溶性であり、相転移温度以上で疎水性であることを利用して、該ブロック共重合体の低温の水溶液を医療器具に塗布し、その後相転移温度以上にすることにより該ブロック共重合体を医療器具に付着させる方法が報告されており、抗血栓性材料に利用されている(特許文献4参照)。
【0007】
一方、生化学や医療分野分野においては、皮膜形成能に優れ、且つ基材との接着性にも優れ、且つタンパク質を吸着しない性質を持つ共重合体が求められている。しかしながら、上記のブロック共重合体に関する特許文献を含めても、このような特性を満足する共重合体は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−251609
【特許文献2】特開2011−6555
【特許文献3】特開2004−339165
【特許文献4】特開2008−194363
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Macromolecular Chemistry and Physics、209、1389-1403(2008)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明が解決しようとする課題は、皮膜形成能に優れ、且つ基材との接着性にも優れ、且つタンパク質を吸着しない性質を持つ共重合体、特にブロック共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー(a)の重合体(A)と(メタ)アクリルアミド系モノマーの重合体(B)からなるブロック共重合体が、皮膜形成能に優れ、且つ基材との接着性が良好であり、該ブロック共重合体からなる塗膜が、タンパク質を吸着しない性質を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記一般式(1)で表されるモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、下記式(2)〜(7)で表されるモノマー(b)を含むモノマーの重合体(B)からなるブロック共重合体を提供する。
【0013】
【化1】

(1)
【0014】
【化2】

【0015】
【化3】

【0016】
【化4】

【0017】
【化5】

【0018】
【化6】

(6)
【0019】
【化7】

【0020】
(式(1)〜(7)中、Rは炭素原子数1〜3のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基、R、Rはそれぞれ独立に炭素原子数2〜3のアルキレン基、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基、Xは−CO、−SO、−OSO、−OSO、−OP(=O)(OR)O、−OP(=O)(R)O、−P(=O)(OR)O、−P(=O)(R)Oから選ばれる一価のアニオン、Rは炭素原子数1〜3のアルキル基であり、nは1〜9の整数である。)
【0021】
また、本発明は、前記ブロック共重合体の塗膜を提供する。
また、本発明は、前記塗膜表面を有するタンパク質吸着防止材を提供する。
また、本発明は、前記塗膜表面を有する細胞培養基材を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のブロック共重合体は、重合体(A)と重合体(B)の親/疎水バランスが良好で、溶剤に対する溶解性は勿論のこと、水に対しても良好な溶解性または分散性を示し、水溶液または均一性の高い水分散液を作製することが容易である。該共重合体の水溶液または水分散液は、沈殿や粘度変化、変色などの物性変化が小さく安定性が高い。また本発明のブロック共重合体は良好な皮膜形成能を有し、得られた皮膜は、高い透明性と、良好な弾性率と柔軟性、屈曲性を有する。また、本発明のブロック共重合体からなる塗膜は、大気中で安定して用いられるばかりでなく、水中でも膨潤せず優れた力学物性を示す特徴を有する。更に、本発明のブロック共重合体からなる塗膜は、特に低いタンパク吸着性に優れるため、細胞培養基材や、各種生化学・医療用具の表面改質剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明で用いるモノマー(a)としては、(ポリ)プロピレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートや(ポリ)エチレングリコールアルキルエーテル(メタ)アクリレートを使用する。好ましくは下記一般式(1)のモノマー(a)が用いられる。
【0024】
【化1】

(1)
【0025】
(式中、Rは炭素原子数1〜3のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基、Rは炭素原子数2〜3のアルキレン基であり、nは1〜9の整数である。)
モノマー(a)の使用により、共重合体の皮膜形成能、並びに基材との接着性がよく、塗膜の厚み制御幅が広く、より平滑な塗膜が得られる。該塗膜表面はタンパク質の吸着性が低い性質を有する。
【0026】
前記一般式(1)で表されるモノマー(a)の中でも、nが1〜3である化合物が好ましく、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、メチルカルビトールアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、エトキシトリエチレングリコールアクリレートがより好ましく、2−メトキシエチルアクリレート、2−エトキシエチルアクリレートが特に好ましい。
本発明における重合体(A)は、前記モノマー(a)を含むモノマーの重合体である。本発明では、前記モノマー(a)のみを重合させた重合体が好ましいが、モノマー(a)以外に本発明の効果を損なわない範囲で他のモノマーを使用することができる。重合体(A)はモノマー(a)を65モル%以上重合させた重合体であることが好ましく、95モル%以上重合させた重合体であることが、より好ましい。
【0027】
モノマー(a)以外に使用できるモノマーとしては、下記式(2)〜(7)で表されるモノマー、水酸基やグリシジル基、イソシアナト基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基などの官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーがある。
【0028】
本発明で用いるモノマー(b)としては、(メタ)アクリルアミド、および/またはこれらの誘導体(N−またはN,N置換(メタ)アクリルアミド)である。特に好ましくは下記式(2)〜(7)のアクリルアミド系モノマーが用いられる。
【0029】
【化2】

(2)
【0030】
【化3】

【0031】
【化4】

(4)
【0032】
【化5】

(5)
【0033】
【化6】

(6)
【0034】
【化7】

(7)
【0035】
(式(2)〜(7)中、Rは水素原子またはメチル基、R、Rはそれぞれ独立に炭素原子数2〜3のアルキレン基、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基、Xは−CO、−SO、−OSO、−OSO、−OP(=O)(OR)O、−OP(=O)(R)O、−P(=O)(OR)O、−P(=O)(R)Oから選ばれる一価のアニオン、Rは炭素原子数1〜3のアルキル基であり、nは1〜9の整数である。)
【0036】
モノマー(b)の使用により、得られるブロック共重合体の水に対する溶解または分散性が良好で安定性も高く、共重合体の皮膜形成能がよく、より平滑な塗膜が得られる。また、モノマー(b)としてN,N−ジメチルアクリルアミドを用いた場合、得られる塗膜表面に対し、細胞が非常に低い接着性を示し、浮遊状態での細胞培養に適している。
【0037】
重合体(B)はモノマー(b)を含む重合体であり、重合体(B)としては前記一般式(2)〜(7)で表されるモノマー(b)からなる重合体であるか、もしくは他のモノマーとの共重合体が含まれる。共重合体で用いられる他のモノマーとしては、モノマー(a)が好ましく用いられ、モノマー(b):モノマー(a)の比率(モル比)は、99:1〜10:90、より好ましくは95:5〜30:70、更に好ましくは90:10〜50:50、特に好ましくは90:10〜60:40である。かかるモノマー(b)とモノマー(a)からなる共重合体はブロック共重合体をより容易に合成できる特徴も有する。
【0038】
更に、重合体(B)または共重合体(B)において、前記一般式(1)〜(7)で表されるモノマーに加えて、ブロック共重合体の親/疎水性のバランスを調整したり、タンパク質との相互作用を更に低く抑えるための官能基を付与するために、必要に応じてその他の共重合モノマーを併用することができる。例えば、スルホン基やカルボキシル基のようなアニオン基を有するアクリル系モノマー、4級アンモニウム基のようなカチオン基を有するアクリル系モノマー、4級アンモニウム基と燐酸基とを持つ両性イオン基を有するアクリル系モノマー、カルボキシル基とアミノ基とをもつアミノ酸残基を有するアクリル系モノマー、糖残基を有するアクリル系モノマー、また、水酸基を有するアクリル系モノマー、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール鎖を有するアクリル系モノマー、更にポリエチレングリコールのような親水性鎖とノニルフェニル基のような疎水基を合わせ持つ両親媒性アクリル系モノマー、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなどを併用することができる。
【0039】
本発明のブロック共重合体は、前記諸性質を示すものであれば、重合体(A)と(B)の並び方は必ずしも限定されず、例えば、A−B型、A−B−A型、B−A−B型、 [B−A]で表される(pはBの分岐数で、3〜10である)が好適に使用されるが、この内、A−B型、A−B−A型、 [B−A]多分岐型がより好ましく、A−B−A型、 [B−A]多分岐型が最も好ましい。ここでいう [B−A]多分岐型とは、下記構造例に示すものをいう。
【0040】
[B−A]

【0041】
本発明のブロック共重合体中のA成分とB成分のモル比(A:B)が、1:60〜60:1の範囲が好ましく、1:20〜20:1の範囲がより好ましく、1:20〜1:1の範囲が最も好ましい。AとBのモル比がこの範囲であると、得られるブロック共重合体の水に対する溶解または分散性が良好で安定性も高く、共重合体の皮膜形成能がよく、より平滑な塗膜が得られる。また、塗膜表面のタンパク質に対する吸着性も低く、細胞培養性/剥離性が良好であり、好ましい。
【0042】
また、A−B−A型ブロック共重合体において、Aの重合度が30〜3000、Bの重合度が20〜20000の範囲が好ましく、Aの重合度が100〜1000、Bの重合度が100〜5000の範囲がより好ましく、Aの重合度が100〜500、Bの重合度が200〜2000の範囲が特に好ましい。この範囲であると、得られるブロック共重合体の水に対する溶解または分散性が良好で水性塗料の作製が容易であり、また、皮膜形成能がよく、得られる塗膜表面のタンパク質に対する吸着性も低く、細胞培養性/剥離性が良好であり、好ましい。
【0043】
本発明のブロック共重合体は、モノマー(a)と(b)がそれぞれ重合し、重合体(A)と重合体(B)からなるブロック共重合体を合成できれば、製造方法は特に限定されない。例えば公知慣用の重合法として、第1の方法は、トリチオカーボネートのような連鎖移動剤(以下RAFT剤という)の存在下に、ラジカル重合開始剤としてアゾ化合物及び/又は有機過酸化物を用いて、先ずモノマー(a)をリビングラジカル重合させ、得られた重合体(A)にモノマー(b)をリビングラジカル重合させる方法、第2の方法は、有機ハロゲン化物と遷移金属錯体の存在下、モノマー(b)をラジカル重合させ、次いで、モノマー(a)を添加し、ラジカル重合させるブロック共重合体の合成方法が挙げられる。
【0044】
特に、ブロック共重合体の合成法としては、公知のリビングラジカル重合法のうち、次に挙げる(1−1)ないし(2−2)の方法が好ましい。
(1−1)第1の方法において、少量の重合開始剤の存在下、RAFT剤とモノマー(a)を重合させた後、単離精製して重合体(A)のみからなるマクロRAFT剤を合成し、該マクロRAFT剤とモノマー(b)を、少量の重合開始剤存在下重合させてブロック共重合体を得る方法。
(1−2)第2の方法において、有機ハロゲン化物と遷移金属錯体の存在下、モノマー(b)を重合させた後、単離精製して重合体(B)のみからなる高分子末端ハロゲン化物を合成し、該高分子末端ハロゲン化物に遷移金属錯体の存在下、モノマー(a)を重合させてブロック共重合体を得る方法。
(2−1)第1の方法において、少量の重合開始剤の存在下、RAFT剤とモノマー(a)を重合させ、ついで単離することなくモノマー(b)を追加し、ブロック共重合体を得る方法。
(2−2)第2の方法において、有機ハロゲン化物と遷移金属錯体の存在下、モノマー(b)を重合させ、ついで単離することなくモノマー(a)を追加し、ブロック共重合体を得る方法。
(2−1)、(2−2)の方法の場合、最初のモノマーが完全に消費されるのを待って次のモノマーを添加する必要はなく、最初のモノマーの転化率が約65%以上になった時点で次のモノマーを添加すればよい。この場合に得られる重合体は、完全なブロック共重合体ではなく、一部モノマー(a)とモノマー(b)とが混在した、いわゆるTaperedブロック共重合体となるが、モノマー(a)とモノマー(b)の比率を適切に選べば、完全なブロック共重合体と同等の機能を有する共重合体が得られる。
【0045】
本発明において、重合体(B)がモノマー(a)とモノマー(b)の共重合体からなるブロック共重合体を得るためには、上記(2−1)、(2−2)の方法に加えて、モノマー(a)とモノマー(b)の混合物を重合する方法を用いることができる。
【0046】
本発明において、タンパク質吸着は、HRP標識した免疫グロブリンGをTMB発色剤にて発色させた時、450nmでの吸光度が0.5以下であることが好ましく、0.2以下であるとより好ましい。
【0047】
本発明では、細胞培養基材として多種の材質を用いることが出来る特徴を有する。例えば、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン(PU)などのほか、ポリプロピレン(PP)や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が用いられる。また、ガラス、金属などの素材も好適に用いられる。基材の形状としては板状、シート状、ストロー状、糸状、球状など任意の形状に塗膜を作製することができる。
【0048】
本発明のブロック共重合体は、コーティング用塗料特に水性塗料として、細胞培養基材や、各種生化学・医療用具の表面改質剤として有用である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲がこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレート(東亞合成株式会社製)1.46g、RAFT剤として2−(Dodecylthiocarbonothioylthio)−2−methylpropionic acid(シグマ−アルドリッチ社)0.0163g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0007g、1,4−ジオキサン10mLを窒素バブリングした後、70℃、13時間攪拌した。次いで、モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミド(株式会社興人製)6.66g、1,4−ジオキサン10mLを添加し、更に70℃、24時間攪拌した。反応終了後、反応液をジエチルエーテルに投入し、更にジエチルエーテルで3回洗浄した後、真空乾燥させ、A−B型ブロック共重合体を合成した。
【0051】
[ポリマーの同定]
上記反応液を重クロロホルムに入れ、H−NMR(日本電子(株)製JNM−LA300)測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は96%であった。また、ブロック共重合体の構造は下記式(8)のように同定された。
【0052】
【化8】

(8)
【0053】
上記転化率より、下記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−Bブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(250mol)、重合体(B)の理論分子量Mnは約143000(1440mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約175500であった。
【0054】
【数1】

(9)
【0055】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体0.5gを、9.5gの水に入れ、ポリマー水溶液1を得た。次いで、直径35mmのポリスチレン製シャーレ(CORNINGサスペンジョンカルチャデイッシュ430588)に薄く塗布した後乾燥させた。次いで、滅菌水によりシャーレを洗浄した後、乾燥させて、コートシャーレ1を得た。このコートシャーレ1を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0056】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ1に、HRP標識した免疫グロブリンG(IgG)水溶液を1mL入れ、室温にて静置し、IgGの吸着を行った。次いでPBSバッファーで3回リンスした後、TMB発色剤(KPL社製)を入れ、更に1Nの塩酸を入れた(シャーレ表面にタンパク質が残ると発色)。この溶液を、紫外可視分光光度計(日立株式会社製)を用いて、450nmでの吸光度を測定して、タンパク質の吸着度合いを評価した。その結果、吸光度は0.157であった。一方、上記未コートポリスチレン製シャーレを用いて、同様なタンパク質吸着試験を行ったところ、吸光度は0.624であった。
【0057】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ1に、培地としてHam’s F12/10%FCSを適量入れ、CHO−K1細胞(チャイニーズハムスター卵巣由来繊維芽細胞)を播種して(播種濃度は1×10個/cm)5%二酸化炭素中、37℃で3日間培養を行った。次いで、シャーレ中の培地及び浮遊している細胞を吸い取り、PBSバッファーで3回リンスした後、顕微鏡でシャーレ表面に細胞接着の有無を確認したところ、細胞は全くPBSバッファーで洗い流され、シャーレ表面には接着した細胞は観察されなかった。
一方、上記未コートポリスチレン製シャーレを用いて、同様な培養試験を行ったところ、細胞がかなりの数でシャーレに接着していた。
【0058】
以上の実施例より、上記ブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、得られた塗膜の透明度が高く、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制された。また、細胞の塗膜表面に対する細胞の接着性も低く、細胞を浮遊状態で培養できることが理解できる。
【0059】
(実施例2)
[RAFT剤の合成]
非特許文献「Macromolecules、35、6754(2002)」に従い、下記の手順でRAFT剤「2−(1−Carboxy−1−methylethylsulfanylthiocarbonylsulfanyl)−2−methylpropionic acid」を合成した。
【0060】
アセトン2.62g、トリクロロメタン5.38g、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩0.12g、及び二硫化炭素1.37g、ヘキサン6mLに50%水酸化ナトリウムを10.1g入れ、5時間攪拌の後一晩静置したところ、反応液全体が固化した。水を45mL加え固体を溶解した後、濃塩酸6mLを入れ窒素バブリングすると、沈殿が生じた。この沈殿を濾別し、水洗した後、乾燥した。60%のアセトン水溶液から再結晶して、淡黄色結晶934mgを得た。
【0061】
13C−NMR(日本電子(株)製JNM−LA300)測定により、RAFT剤の構造は下記式(10)のように同定された。
【0062】
【化9】

(10)
【0063】
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレート(東亞合成株式会社製)2.92g、RAFT剤として上記合成した「2−(1−Carboxy−1−methylethylsulfanylthiocarbonylsulfanyl)−2−methylpropionic acid」0.0127g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0007g、1,4−ジオキサン10mLを窒素バブリングした後、70℃、13時間攪拌した。次いで、モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミド(株式会社興人製)6.66g、1,4−ジオキサン10mLを添加し、更に70℃、24時間攪拌した。反応終了後、反応液をジエチルエーテルに投入し、更にジエチルエーテルで3回洗浄した後、真空乾燥させ、A−B−A型ブロック共重合体を合成した。
【0064】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は99.5%であった。また、ブロック共重合体の構造は下記式(11)のように同定された。
【0065】
【化10】

(11)
【0066】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−Aブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(250mol)、重合体(B)の理論分子量Mnは約148000(1480mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約213000であった。
【0067】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ2を作製した。このコートシャーレ2を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0068】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ2を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.044であった。また、基材をポリスチレンからガラス、ポリカーボネート、SUSに替えて同様の試験を実施したところ、塗膜と基材とは良好に密着し、タンパク質吸着量はそれぞれ0.039、0.073、0.076であった。
【0069】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ2を用いて、実施例1と同様にして、CHO−K1細胞の培養試験を行った。その結果、コートシャーレ1と同様に、細胞がシャーレ表面に全く接着することなく浮遊状態で培養されていることが観察された。
【0070】
以上の実施例より、上記ブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、得られた塗膜の透明度が高く、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制された。また、細胞の塗膜表面での接着性が低く、細胞を浮遊状態で培養できることが理解できた。
【0071】
(実施例3)
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(b)の替わりにモノマー(a)の3.50gとモノマー(b)の4.00gの混合物を用いたこと以外は全て実施例2と同様にして、A−B−A型のブロック共重合体を合成した。反応終了後、反応液をジエチルエーテルに投入し、更にジエチルエーテルで3回洗浄した後、真空乾燥させ、A−B−A型ブロック共重合体を合成した。
【0072】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、1H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は99.1%であった。
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−Aブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(250mol)、共重合体(B)の理論分子量Mnは約166500(1490mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約231500であった。
【0073】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ3を作製した。このコートシャーレ3を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0074】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ3を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.048であった。
【0075】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ3を用いて、実施例1と同様にして、CHO-K1細胞の培養試験を行った。その結果、コートシャーレ1と同様に、細胞がシャーレ表面に全く接着することなく浮遊状態で培養されていることが観察された。
【0076】
以上の実施例より、上記ブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、得られた塗膜の透明度が高く、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制された。また、細胞の塗膜表面での接着性が低く、細胞を浮遊状態で培養できることが理解できる。
【0077】
(実施例4)
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(a)の重合時間を5時間としたこと以外は全て実施例2と同様にして、A−B−A型のブロック共重合体を合成した。モノマー(a)の重合時間5時間の時点でのモノマー(a)の転化率をH−NMRにて測定したところ、81%であった。従って、重合体(B)部分には、モノマー(b)に加えて、5時間の重合時間で反応しなかったモノマー(a)が含まれることが分かった。反応終了後、反応液をジエチルエーテルに投入し、更にジエチルエーテルで3回洗浄した後、真空乾燥させ、A−B−A型ブロック共重合体を合成した。
【0078】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は約100%、モノマー(b)の転化率は約99%であった。
【0079】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−Aブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(200mol)、共重合体(B)の理論分子量Mnは約159400(1580mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約224400であった。
【0080】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ4を作製した。このコートシャーレ4を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0081】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ4を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.046であった。
【0082】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ4を用いて、実施例1と同様にして、CHO−K1細胞の培養試験を行った。その結果、コートシャーレ1と同様に、細胞がシャーレ表面に全く接着することなく浮遊状態で培養されていることが観察された。
【0083】
以上の実施例より、上記ブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、得られた塗膜の透明度が高く、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制された。また、細胞の塗膜表面での接着性が低く、細胞を浮遊状態で培養できることが理解できる。
【0084】
(実施例5)
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレートの量が5.83g、モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミドの量が22.21gであり、モノマー(b)添加後の重合時間が48時間で、溶媒の1,4−ジオキサンを合計60mL使用したこと以外は実施例2と同様にして、重合体(A)の重合度が500、重合体(B)の重合度が5000のA−B−A型のブロック共重合体を合成した。
【0085】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は97.0%であった。また、ブロック共重合体の構造は式(11)のように同定された。
【0086】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−Aブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約65000(500mol)、重合体(B)の理論分子量Mnは約480000(4840mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約610000であった。
【0087】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ5を作製した。このコートシャーレ5を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0088】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ5を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.069であった。
【0089】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ5を用いて、実施例1と同様にして、CHO−K1細胞の培養試験を行った。その結果、コートシャーレ1と同様に、細胞がシャーレ表面に全く接着することなく浮遊状態で培養されていることが観察された。
【0090】
以上の実施例より、上記ブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、得られた塗膜の透明度が高く、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制された。また、細胞の塗膜表面での接着性が低く、細胞を浮遊状態で培養できることが理解できる。
【0091】
(実施例6)
[マクロRAFT剤の合成]
モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレート(東亞合成株式会社製)5.84g、RAFT剤として上記合成した「2−(1−Carboxy−1−methylethylsulfanylthiocarbonylsulfanyl)−2−methylpropionic acid」0.0254g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0014g、1,4−ジオキサン10mLを窒素バブリングした後、70℃、18時間攪拌し重合させた。反応終了後、反応液をジエチルエーテルに投入し、生成した黄色油状物を、更にジエチルエーテルで3回洗浄した後、真空乾燥させ、重合体(A)のみからなるマクロRAFT剤を合成した。
[マクロRAFT剤を用いたブロック共重合体の合成]
N,Nージメチルアクリルアミド(株式会社興人製)6.66g、1段目で得られたマクロRAFT剤2.69g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0007g、1,4−ジオキサン10mLを窒素バブリングした後、70℃、24時間攪拌した。反応終了後、反応液をジエチルエーテルに投入し、更にジエチルエーテルで3回洗浄した後、真空乾燥させ、A−B−A型のブロック共重合体を合成した。
【0092】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は91.5%、モノマー(b)の転化率は94.8%であった。また、ブロック共重合体の構造は式(11)のように同定された。
【0093】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−Aブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約30000(230mol)、重合体(B)の理論分子量Mnは約141000(1420mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約201000であった。
【0094】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ6を作製した。このコートシャーレ6を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0095】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ6を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.058であった。
【0096】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ6を用いて、実施例1と同様にして、CHO−K1細胞の培養試験を行った。その結果、コートシャーレ1と同様に、細胞がシャーレ表面に全く接着することなく浮遊状態で培養されていることが観察された。
【0097】
(実施例7)
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレートの量が2.92g、モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミド6.00gとN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(株式会社興人製)1.05gを添加すること以外は実施例2と同様にして、A−B−A型ブロック共重合体を合成した。引き続き、該ブロック共重合体1.017gをアセトニトリル15mLに溶解し、1,3−プロパンスルトン742mgを加え、7日間室温に放置した。得られた溶液をジエチルエーテルに投入し、白色の沈殿を生成させた後、該沈殿を3回ジエチルエーテルにて洗浄した。ついで真空乾燥することにより、3−(N,N−ジメチル−N−(3−スルホプロピル)アンモニオ)プロピル基を有するブロック共重合体の白色粉末746mgを合成した。
【0098】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、上記A−B−A型ブロック共重合体のH−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は約100%、モノマーN,Nージメチルアクリルアミドの転化率は約95%、モノマーN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドの転化率は85%であった。また、ブロック共重合体の構造は式(12)のように同定された。
【0099】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、共重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−Aブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(250mol)、共重合体(B)の理論分子量Mnは約162000(1410mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約227000であった。
【0100】
【化11】

【0101】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ7を作製した。このコートシャーレ7を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0102】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ7を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.090であった。
【0103】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ7を用いて、実施例1と同様にして、CHO−K1細胞の培養試験を行った。その結果、コートシャーレ1と同様に、細胞がシャーレ表面に全く接着することなく浮遊状態で培養されていることが観察された。
【0104】
以上の実施例より、上記ブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、得られた塗膜の透明度が高く、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制された。また、細胞の塗膜表面での接着性が低く、細胞を浮遊状態で培養できることが理解できた。
【0105】
(実施例8)
[RAFT剤の合成]
非特許文献「Macromolecules、36、1505(2003)」に従い、下記の手順でRAFT剤「テトラキス(3−1S−(1−メトキシカルボニル)エチルトリチオカルボニルプロピオン酸)ペンタエリスリトール」を合成した。
【0106】
ジクロロメタン10mL、ペンタエリスリトール(3−メルカプトプロピオネート)1.22g、二硫化炭素2.00g、トリエチルアミン2.04gを入れ、1時間攪拌した。ついで、2−ブロモプロピオン酸メチル1.94gを入れ、更に5時間攪拌した後、5%KHSO水溶液で洗浄した。更に水洗の後、飽和食塩水で乾燥した。硫酸マグネシウム処理後、エバポレーターを用いてジクロロメタンを除いた。得られた橙色油状生成物を、ヘキサン/アセトンを溶離液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製してRAFT剤「テトラキス(3−1S−(1−メトキシカルボニル)エチルトリチオカルボニルプロピオン酸)ペンタエリスリトール」を得た。H−NMR測定により、該RAFT剤の構造は下記式(13)のように同定された。
【0107】
【化12】

(13)
【0108】
[多分岐型ブロック共重合体の合成]
モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレートの量が2.92g、モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミド6.66g、RAFT剤として式(13)の化合物を0.0255g使用すること以外は実施例2と同様にして、[B−A]多分岐型ブロック共重合体を合成した。
【0109】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は99.0%であった。また、ブロック共重合体の構造は式(14)のように同定された。
【0110】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、[B−A]多分岐型ブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(250mol)、重合体(B)の理論分子量Mnは約73300(740mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約423200であった。
【0111】
【化13】

(14)
【0112】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体0.5gを、9.5gの水に入れ、ポリマー水溶液8を得た。次いで、該水溶液8をポリプロピレン製15mL遠沈管(アズワン製)に入れ、内面塗布後、乾燥させた。次いで洗浄後、乾燥させて、コート遠沈管8を得た。このコート遠沈管8を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0113】
[タンパク質吸着試験]
上記遠沈管8を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、吸光度は0.056であった。一方、上記未コートの遠沈管を用いて、同様なタンパク質吸着試験を行ったところ、吸光度は1.375であった。
【0114】
以上の実施例より、上記多分岐型のブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、ポリプロピレン基材にも容易に塗布でき、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制されたことが理解できた。
【0115】
(実施例9)
【0116】
[多分岐型ブロック共重合体の合成]
モノマー(a)の重合時間を4時間とすること以外は実施例8と同様にして、[B-A]多分岐型ブロック共重合体を合成した。モノマー(a)の重合時間4時間の時点でのモノマー(a)の転化率を1H−NMRにて測定したところ、75%であった。従って、重合体(B)部分には、モノマー(b)に加えて、4時間の重合時間で反応しなかったモノマー(a)が含まれることが分かった。
【0117】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は約100%、モノマー(b)の転化率は約97.2%であった。
【0118】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、[B−A]多分岐型ブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約24400(190mol)、共重合体(B)の理論分子量Mnは約80100(790mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約418000であった。
【0119】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例8と同様にしてコート遠沈管9を得た。このコート遠沈管9を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0120】
[タンパク質吸着試験]
上記遠沈管9を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、吸光度は0.060であった。
【0121】
以上の実施例より、上記多分岐型ブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、ポリプロピレン基材にも容易に塗布でき、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制されたことが理解できた。
【0122】
(実施例10)
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミドの代わりに、アクリロイルモルホリンを9.49g使用すること以外は実施例2と同様にして、A−B−A型のブロック共重合体を合成した。
【0123】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は98.5%であった。また、ブロック共重合体の構造は式(15)のように同定された。
【0124】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−A型ブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(250mol)、重合体(B)の理論分子量Mnは約210000(1490mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約275000であった。
【0125】
【化14】

(15)
【0126】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ10を作製した。このコートシャーレ10を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0127】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ10を用いて、実施例1と同様にして、タンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.102であった。
【0128】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ10を用いて、実施例1と同様にして、CHO−K1細胞の培養試験を行った。その結果、コートシャーレ1と同様に、細胞がシャーレ表面に全く接着することなく浮遊状態で培養されていることが観察された。
【0129】
以上の実施例より、上記ブロック共重合体が水に対し良好な溶解性を有し、容易に水性塗料を作製でき、得られた塗膜の透明度が高く、基材との接着性も良好であり、塗膜表面へのタンパク質の吸着が大きく抑制された。また、細胞の塗膜表面での接着性が低く、細胞を浮遊状態で培養できることが理解できた。
【0130】
(実施例11)
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレートの量が2.92g、モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミドの量が66.62gであり、モノマー(b)添加後の重合時間が72時間で、溶媒の1,4−ジオキサンを合計100mL使用したこと以外は実施例2と同様にして、A−B−A型ブロック共重合体を合成した。
【0131】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は93.0%であった。また、ブロック共重合体の構造は式(11)のように同定された。
【0132】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−A型ブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(重合度250mol)、重合体(B)の理論分子量Mnは約1381000(重合度13940mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約1446000であった。
【0133】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ11を作製した。このコートシャーレ11を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0134】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ11を用いて、実施例1と同様にして、室温でのタンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.320であった。
【0135】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ11を用いて、実施例1と同様にして、CHO−K1細胞の培養試験を行った。その結果、細胞が殆どシャーレ表面に接着していないことが観察された。
【0136】
以上の実施例より、重合体AとBのモル比(A:B)が1:20を超えた場合、細胞の塗膜表面に対する接着性が低いレベルを維持していたが、タンパク質吸着量が増える傾向にあることが観察された。
【0137】
(実施例12)
[RAFT剤原料の合成]
非特許文献「Polymer、46、8458(2005)」に従い、下記の手順でRAFT剤原料「Sodium S−dodecyltrithiocarbonate」を合成した。
【0138】
ジエチルエーテル75mLに、攪拌しながら60%水素化ナトリウム1.18gを投入した。氷冷下ドデシルメルカプタン5.48gを加えた後二硫化炭素2.42gを入れると、ただちに黄色のRAFT剤原料が生成した。冷たいうちにろ過し、冷たいジエチルエーテルで3回洗浄し、真空乾燥し後黄色粉末6.14gを得た。
【0139】
[RAFT剤の合成]
1,4−ビスブロモメチルベンゼン226mgをトルエン10mLに溶解し、上記RAFT剤原料662mgを数回に分けて入れた。室温で4時間攪拌し、一晩放置後、ヘキサン5mLを加えた後、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗浄した。更に水洗の後、飽和食塩水で乾燥した。硫酸マグネシウム処理後、エバポレーターを用いてトルエンとヘキサンを除いた。得られた黄色粉末をヘキサンから再結晶して、RAFT剤「1,4−Bis(dodecylsulfanylthiocarbonylsulfanylmethyl)benzene」を黄色結晶として得た(式16)。
【0140】
【化15】

(16)
【0141】
[ブロック共重合体の合成]
モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミド0.22g、RAFT剤として上記合成した「1,4−Bis(dodecylsulfanylthiocarbonylsulfanylmethyl)benzene」0.0295g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0007g、1,4−ジオキサン10mLを窒素バブリングした後、70℃、13時間攪拌した。次いで、モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレート2.92g、1,4−ジオキサン10mLを添加し、更に70℃、24時間攪拌した。反応終了後、反応液をジエチルエーテルに投入し、更にジエチルエーテルで3回洗浄した後、真空乾燥させ、A−B−A型ブロック共重合体を合成した。
【0142】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は97.0%であった。また、ブロック共重合体の構造は式(17)のように同定された。
【0143】
【化16】

(17)
【0144】
上記転化率より、前記式(9)を用いて、重合体(A)、重合体(B)及びブロック共重合体の理論分子量を算出した。その結果、A−B−A型ブロック共重合体における、重合体(A)の理論分子量Mnは約32500(重合度250mol)、重合体(B)の理論分子量Mnは約4800(重合度48mol)、ブロック共重合体の理論分子量Mnは約70000であった。
【0145】
[ブロック共重合体の塗膜作製]
上記得られたブロック共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ12を作製した。このコートシャーレ12を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0146】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ12を用いて、実施例1と同様にして、室温でのタンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.310であった。
【0147】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ12を用いて、実施例1と同様にして、CHO−K1細胞の培養試験を行った。その結果、少量の細胞がシャーレ表面に接着していることが観察された。
【0148】
以上の実施例より、重合体AとBのモル比(A:B)が1:0.5未満の場合、タンパク質吸着量が増える傾向が見られ、細胞の塗膜表面に対する接着性も強くなる傾向が観察された。
【0149】
(比較例1)
[ランダム共重合体の合成]
モノマー(a)として2−メトキシエチルアクリレート(東亞合成株式会社製)2.92g、モノマー(b)としてN,Nージメチルアクリルアミド(株式会社興人製)6.66g、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.0007g、1,4−ジオキサン10mLを窒素バブリングした後、70℃、24時間攪拌し、モノマー(a)と(b)のランダム重合体を得た。反応終了後、反応液をジエチルエーテルに投入し、更にジエチルエーテルで3回洗浄した後、真空乾燥させ、(a)と(b)のモノマー比率が(a):(b)=500:1500である、ABランダム共重合体を合成した。
【0150】
[ポリマーの同定]
実施例1と同様にして、1H−NMR測定を行った。その結果、モノマー(a)の転化率は100%、モノマー(b)の転化率は98.3%であった。
【0151】
[ランダム共重合体の塗膜作製]
上記得られたランダム共重合体を用いて、実施例1と同様にしてコートシャーレ1’を作製した。このコートシャーレ1’を目視で観察したところ、塗布前と同等な透明度を有した。
【0152】
[タンパク質吸着試験]
上記コートシャーレ1’を用いて、実施例1と同様にして、室温でのタンパク質吸着試験を行った。その結果、タンパク質吸着量(吸光度値)は0.550であった。
【0153】
[細胞接着試験]
上記得られたコートシャーレ1’を用いて、実施例1と同様にして、正常ヒト真皮線維芽細胞の培養試験を行った。その結果、未コートシャーレと同等に、細胞がかなりの数でシャーレに接着していたことが観察された。
【0154】
以上の比較例より、上記ABランダム共重合体では、タンパク質吸着量が高く、細胞の塗膜表面に対する接着性も高いことが観察された。
【0155】
次に、全ての実施例と比較例のタンパク質吸着の結果を示す。
【0156】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるモノマー(a)を含むモノマーの重合体(A)と、下記式(2)〜(7)で表されるモノマー(b)を含むモノマーの重合体(B)からなるブロック共重合体。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

(式(1)〜(7)中、Rは炭素原子数1〜3のアルキル基、Rは水素原子またはメチル基、R、Rはそれぞれ独立に炭素原子数2〜3のアルキレン基、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素原子数1〜2のアルキル基、Xは−CO、−SO、−OSO、−OSO、−OP(=O)(OR)O、−OP(=O)(R)O、−P(=O)(OR)O、−P(=O)(R)Oから選ばれる一価のアニオン、Rは炭素原子数1〜3のアルキル基であり、nは1〜9の整数である。)
【請求項2】
前記重合体(A)と前記重合体(B)のモル比(A:B)が1:50〜50:1である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記ブロック共重合体において、重合体(B)がモノマー(b)とモノマー(a)の共重合体からなり、且つモノマー(b)とモノマー(a)の比率が99:1〜10:90のモル比である請求項1または2に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
ブロック共重合体がトリブロック型共重合体、ジブロック型共重合体、または多分岐型ブロック共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項5】
前記ブロック共重合体において、重合体(A)の重合度が30〜3000、重合体(B)の重合度が20〜20000である請求項1〜4のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のブロック共重合体の塗膜。
【請求項7】
請求項6記載の塗膜を用いたタンパク質吸着防止材。
【請求項8】
請求項7記載の塗膜を用いた細胞培養基材。

【公開番号】特開2013−57058(P2013−57058A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−172861(P2012−172861)
【出願日】平成24年8月3日(2012.8.3)
【出願人】(000173751)一般財団法人川村理化学研究所 (206)
【Fターム(参考)】