説明

ブロック化メルカプトシランカップリング剤、製造プロセス、およびラバー組成物における使用

本発明は、活性化されるまでの間、減少させられた活性状態にいる多重ブロック化メルカプト基を有する、サルファシランカップリング剤に関する。カップリング剤は、たとえば低転がり抵抗のタイヤを製造するためのラバー調合物において有利に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、35U.S.C.103条(C)に該当する、共同研究契約に従って開発された発明を対象とする。補正されたように、コンチネンタルAGと、現在ではモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社である、GEアドバンスドマテリアルズのシリコーン部門の代表としてのゼネラル・エレクトリック社との間の共同契約は、2001年5月7日付である。
【0002】
関連出願への相互参照
本出願は、本出願と同日付で出願された、以下の出願と関連しており、それぞれの出願の開示は参照によりその全文をここに組み入れる。
【0003】
本出願と同日付で出願された、「シラン化環状コアポリスルフィドを含有する、タイヤ組成物および成分」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/617,683。
【0004】
本出願と同日付で出願された、「自由流動性充填剤組成物を含有する、タイヤ組成物および成分」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/617,649。
【0005】
本出願と同日付で出願された、「自由流動性充填剤組成物を含有する、タイヤ組成物および成分」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/617,678。
【0006】
本出願と同日付で出願された、「シラン化コアポリスルフィドを含有する、タイヤ組成物および成分」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/617,663。
【0007】
本出願と同日付で出願された、「ブロック化メルカプトシランカップリング剤を含有する、タイヤ組成物および成分」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/617,659。
【0008】
本出願と同日付で出願された、「シラン化環状コアポリスルフィド、その製造および充填剤配合エラストマー組成物における使用」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/647,901。
【0009】
本出願と同日付で出願された、「自由流動性充填剤組成物およびそれを含有するラバー組成物」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/648,460。
【0010】
本出願と同日付で出願された、「自由流動性充填剤組成物およびそれを含有するラバー組成物」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/647,903。
【0011】
本出願と同日付で出願された、「シラン化コアポリスルフィド、その製造および充填剤配合エラストマー組成物における使用」というタイトルの米国特許出願シリアル番号11/648,287。
【0012】
本発明は、潜在性の、すなわち、それらがそれらを活性化するのに有用であると見出す時まで活性を抑制した状態にある、多重ブロック化メルカプト基を含有するサルファシラン(sulfur silane)カップリング剤に関する。本発明はまた、それらのシランカップリング剤を含有する無機充填剤配合の、エラストマー、ラバー及び無機充填剤の製造、ならびにそのシランの製造にも関する。
【背景技術】
【0013】
無機充填剤配合エラストマー中の硫黄含有カップリング剤を扱う技術の大部分は、一つもしくはそれ以上の下記の化学結合のタイプを含有するシランを含む。
【0014】
S−H(メルカプト)、S−S(ジスルフィドもしくはポリスルフィド)、C=S(チオカルボニル)またはC(=O)S(チオエステル)。メルカプトシランは、無機充填剤配合エラストマー中で用いられる有機ポリマーと高い化学反応性を有し、そしてそれゆえ、大幅に減らされた充填におけるカップリングを達成する。しかしながら、これらのカップリング剤と有機ポリマーとの間の化学結合は、有機ポリマーの炭素−炭素結合よりも弱い。高い負荷および/もしくは高い頻度の使用状況において、これらの化学結合は切断しやすく、そしてそれゆえ、有機ポリマーとカップリング剤との間のカップリングは消失しやすい。このカップリングの消失は磨耗およびエラストマーの他の物理的特性の低下の一因となる。メルカプトシランカップリング剤と有機ポリマーとの高い化学反応性は、加工および早期加硫(スコーチ)の時の、容認されないほど高い粘性につながる。それらの望まれなさは臭気によって悪化する。結果として、他の、S−S(ジスルフィドおよびポリスルフィド)、C=S(チオカルボニル)、もしくはC(=O)S(チオエステル)官能基のような、より低い反応性のカップリング剤が用いられる。それらのシランカップリング剤は有機ポリマーと低反応性であるため、それらはより多い使用レベルを要求し、そして、しばしば同レベルの結合を達成しない。メルカプトシランカップリング剤と同様、それらのサルファシランは、C−S結合を介して有機ポリマーと結合する。
【0015】
従来技術は、CHC(=O)S(CH1−3Si(OR)(ロシア、イルクーツク、Inst.Org.Khim.のM.G.Voronkovら)およびHOC(=O)CHCHC(=O)S(CHSi(OC(R.Bellらへの米国特許3,922,436号)のようなアシルチオアルキルシランを開示する。竹下と菅原は、日本特許公開昭63−270751A2において、一般式CH=C(CH)C(=O)S(CH1−6Si(OCHによって表される化合物のタイヤ設置面組成物中での使用を開示する。しかしながらこれらの化合物は、チオエステルのカルボニル基に対するα、β不飽和が、配合過程においてもしくは貯蔵中において重合化するという望ましくない可能性を有するために、望ましくない。オーストラリア特許AU−A−10082/97にけるYves BomalとOlivier Durelによる従来技術は、R3−nSi−(Alk)(Ar)−S(C=O)−R(式1P)〔式中、Rはフェニルもしくはアルキルであり;Xはハロゲン、アルコキシ、シクロアルコキシ、アシロキシ、もしくはOHであり;Alkはアルキルであり;Arはアリールであり;Rはアルキル、アルケニル、もしくはアリールであり;nは0から2であり;mおよびpはそれぞれ0もしくは1であるが両方ともがゼロではない。〕によって表される構造のシランのラバー中での使用を開示する。しかしながら、この従来技術は、式(1P)の構造の組成物が官能性シロキサンと共に使用されなければならかいことを要求する。この従来技術は、式(1P)の化合物の、潜在性のメルカプトシランカップリング剤としての使用を開示も示唆もせず、また、それらを潜在性のメルカプトシランの源として使用するという利点を生じさせるような任意の方法においてそれらの化合物を使用することもまた、開示も示唆もしない。さらに加えて、これらの特許は、適切な立体化学的な配置の複数のチオエステル基を有し、有機ポリマーに対する多重結合を助長するようなカップリング剤を記載しない。
【0016】
米国特許6,608125号、6,683,135号、6,20439号、6,127,468号、6,777,569号、6,528,673号、6,649,684号、米国特許公開US20050009955A1、20040220307A1、2003020900A1、20030130388A1、ならびに米国特許出願11/105916号、および10/128804号、そして欧州特許出願EP1270657A1は、[[(ROC(=O))−(G)−Y−S]−G−(SiX〔式中、ラバー化合物においてYは多価のブロック基(Q)A(=E)で、rは整数1から3であり、sは好ましくは1から3である〕で表される構造のブロック化メルカプトシランの、ラバーマスターバッチにおいておよび無機充填剤のための表面処理としての使用、ならびにシランの製造法を教唆する。これらの特許および特許出願は一つより多いブロック化メルカプト基、たとえばr=2もしくは3、を有する構造を開示するが、それらは、カップリング剤と有機ポリマーとの間の効率的な多重結合の達成に必要なケイ素原子と有機官能基との間の多価G構造の特定の立体化学的な配置を教唆しない。
【0017】
Ahmadらへの米国特許4,519,430号およびShippyらへの米国特許4,184,998号は、タイヤ組成物へと加えられる固体を生成するメルカプトシランのイソシアネートによるブロック化を開示し、ここで、これが熱メカニズムであるためプロセスの間いつでも起こりうるように、メルカプタンが熱する間に反応してタイヤへと変化する。このシランの目的はメルカプトシランの硫黄臭を避けるためであり、タイヤの加工を向上するためではない。さらに、使用されるイソシアネートは、シランを生成するために用いられるときおよびラバー加工中に放出されるとき、毒性の問題を有する。
【0018】
Porchetらへの米国特許3,957,718号は、シリカ、フェノール樹脂もしくはアミノ樹脂、ならびにキサントゲン酸塩、チオキサントゲン酸塩およびジチオカルバミン酸塩のようなシラン、を含有する組成物を開示する。しかしながら従来技術は、これらのシランを潜在性のメルカプトシランカップリング剤としての利用することについて開示も示唆もせず、また、それらを潜在性のメルカプトシランの源として用いる事の利点についても開示も示唆もしない。
【0019】
米国特許6,359,046号、5,663,226号、5,780,531号、5,827,912号、5,977,225号、4,709,065号、6,759,545号、および国際公開第2004000930A1は、分子当たり一つより多いS−S(ジスルフィドもしくはポリスルフィド)官能基を有するポリスルフィドシランカップリング剤のクラスを開示する。しかしながら、複数のS−S結合は、官能基を有機炭化水素ラジカルで分離する事によって達成される。使用の際、これらのS−S基は分解してポリマーへと結合する硫黄ラジカルを生成するが、しかしながら、ケイ素原子当たり一つのみの硫黄反応基を有する種を生成する。米国特許5,110,969号および6,268,421号においてDittrichらが、ならびにWellerらが、この特徴を克服した。環状炭化水素ラジカルを介してケイ素原子へと直接的に結合した一つより多い硫黄官能基を有する構造を彼らは開示した。その複数のS−S基は近接した炭素原子へと結合し、ケイ素原子はアルコキシシランのヒドロシラン化を介して環に直接的に結合し、ビニル含有環状炭化水素となる。しかしながらこれらの化合物はS−Sの環および炭素原子を有するかまたは、ポリマー物質であり、ここで、炭化水素ラジカルを有したシリルはS−S基を介して結合される。これらの環状もしくはポリマーのカップリング剤は、それらが第2の炭素へと直接的に結合されたS−S基を含んでいるために、有機ポリマーとの低い反応性を与えられている。S−S含有基の第2の炭素元素への結合は、S−S基の反応を妨害し、それらの有機ポリマーとの反応を阻害する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
それゆえに、スコーチのない無機充填剤配合エラストマーもしくはラバーの加工に影響を与える低い反応性を有し、有機ポリマーと多重結合を形成するのに望ましいときに活性化することのできる、潜在性のカップリング剤への必要性が存在する。これらの多重結合は、タイヤにおいて経験されるような、高い負荷および高頻度の使用状況において、ここに記載されるような不利な点を示すことなく、ラバーとカップリング剤との間のカップリングの消失が最小限にされるのに充分な結合を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、一つより多いメルカプト基がケイ素原子に炭素−炭素結合を介して直接的に結合し、そして、メルカプト基がブロック化され(「ブロック化メルカプトシラン」)、すなわちメルカプト水素原子が他の基によって置換される(以下、「ブロック基」と呼ぶ)、ブロック化メルカプトシラン誘導体の組成物、製造、および、使用を対象にする。特に、本発明のシランはブロック化メルカプトシランで、ここで、ブロック基は、硫黄と一重結合を介して直接的に化学結合された不飽和のヘテロ原子もしくは炭素を含有する。無機充填剤配合ラバーの製造におけるこれらのシランの使用が教唆され、ここで製造プロセスにおける脱ブロック化剤の使用によって脱ブロック化される。マスターバッチおよび処理された充填剤の作成におけるこれらシランの使用、ならびにそれらシランの製造は同様に教唆される。
【0022】
より詳細には、本発明は、
[R−Y−S(CH−G−(CH−(SiX) (1)
からなる式(1)の化学構造を有する少なくとも一つの成分を含有する、ブロック化メルカプトシラン組成物を対象とする。
【0023】
式中、Yの各々は、多価の種、(Q)A(=E)であり、好ましくは以下からなる群から選択される。
【0024】
−C(=NR)−;−SC(=NR)−;−SC(=O)−;(−NR)C(=O)−;(−NR)C(=S)−;−OC(=O)−;−OC(=S)−;−C(=O)−;−SC(=S)−;−C(=S)−;−S(=O)−;−S(=O)−;−OS(=O)−;(−NR)S(=O)−;−SS(=O)−;−OS(=O)−;(−NR)S(=O)−;−SS(=O)−;(−S)P(=O)−;−(−S)P(=O)−;−P(=O)(−);(−S)P(=S)−;−(−S)P(=S)−;−P(=S)(−);(−NRP(=O)−;(−NR)(−S)P(=O)−;(−O)(−NR)P(=O)−;(−O)(−S)P(=O)−;(−O)P(=O)−;−(−O)P(=O)−;−(−NR)P(=O)−;(−NRP(=S)−;(−NR)(−S)P(=S)−;(−O)(−NR)P(=S)−;(−O)(−S)P(=S)−;(−O)P(=S)−;−(−O)P(=S)−;および−(−NR)P(=S)−。
【0025】
ここで、不飽和のヘテロ原子(E)に結合するそれぞれの原子(A)は硫黄に結合し、それは次に基−(CHG(CH−を介してケイ素原子に結合する。
【0026】
Rの各々は、水素、直鎖の、環状のもしくは分岐の、アルキル、アルケニル基、アリール基、およびアラルキル基から独立して選択され、各々のRは約18までの炭素原子を有する。
【0027】
の各々は、水素、アルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキル基から独立して選択され、各々のRは約18までの炭素原子を有する。
【0028】
Gの各々は、アルカン、アルケン、もしくはアラルカンの置換によって誘導される3から30の炭素原子の三価のもしくは多価の炭化水素基、または2から29の炭素原子の三価のもしくは多価のヘテロカーボン(heterocarbon)基から独立して選択され、ただし各々のGは環状構造(環)を有するという条件である。
【0029】
の各々は、−Cl、−Br、RO−、RC(=O)O−、RC=NO−、RNO−、もしくはRN−からなる群の加水分解性基のセットから独立して選択され、ここで各々のRは上述の通りである。
【0030】
およびXの各々は、RおよびXのために列挙された要素からなる群から独立して選択される。
【0031】
Qの各々は、酸素、硫黄、もしくは(−NR−)から独立して選択される。
【0032】
Aの各々は、炭素、硫黄、リン、もしくはスルホニルから独立して選択される。
【0033】
Eの各々は、酸素、硫黄、もしくはNRから独立して選択される。
【0034】
kは1から2であり、m=1から5であり、n=1から5であり、rは2から4であり、zは0から2であり、ただし、もしAがリンならば、kは2である。
【0035】
他の実施態様において、本発明は、チオ酸と、末端炭素−炭素結合を有したシリル化炭化水素とを反応させることを含有する、ブロック化メルカプトシラン作成のためのプロセスを対象とする。
【0036】
他の実施態様において、本発明は、チオ酸の塩とハロアルキル基を有するシランとを反応させることを含有する、ブロック化メルカプトシラン作成のためのプロセスを対象とし、ここでハロゲンは第1級炭素原子に結合している。
【0037】
さらに他の実施態様において、本発明は、本発明のブロック化メルカプトシランを含有した充填剤配合のエラストマー組成物もしくはラバー組成物を対象とする。
【0038】
他の実施態様に置いて、本発明は処理された充填剤を対象とし、ここで、処理された充填剤は本発明のブロック化メルカプトシランを含有する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
シランの構造
本発明の新規のブロック化メルカプトシランは式(I):
[R−Y−S(CH−G−(CH−(SiX) (1)
によって表すことができる。
【0040】
ここで、
Yの各々は、多価の種(Q)A(=E)であり、好ましくは以下を含有するグループから選択される。
【0041】
−C(=NR)−;−SC(=NR)−;−SC(=O)−;(−NR)C(=O)−;(−NR)C(=S)−;−OC(=O)−;−OC(=S)−;−C(=O)−;−SC(=S)−;−C(=S)−;−S(=O)−;−S(=O)−;−OS(=O)−;(−NR)S(=O)−;−SS(=O)−;−OS(=O)−;(−NR)S(=O)−;−SS(=O)−;(−S)P(=O)−;−(−S)P(=O)−;−P(=O)(−);(−S)P(=S)−;−(−S)P(=S)−;−P(=S)(−);(−NRP(=O)−;(−NR)(−S)P(=O)−;(−O)(−NR)P(=O)−;(−O)(−S)P(=O)−;(−O)P(=O)−;−(−O)P(=O)−;−(−NR)P(=O)−;(−NRP(=S)−;(−NR)(−S)P(=S)−;(−O)(−NR)P(=S)−;(−O)(−S)P(=S)−;(−O)P(=S)−;−(−O)P(=S)−;および−(−NR)P(=S)−。
【0042】
ここで、不飽和のヘテロ原子(E)に結合するそれぞれの原子(A)は硫黄に結合し、それは次に基−(CHG(CH−を介してケイ素原子に結合する。
【0043】
Rの各々は、水素、直鎖の、環状のもしくは分岐の、アルキル、アルケニル基、アリール基、およびアラルキル基から独立して選択され、各々のRは約18までの炭素原子を有する。
【0044】
の各々は、水素、アルキル、アルケニル、アリールもしくはアラルキル基から独立して選択され、各々のRは1から18までの炭素原子を有する。
【0045】
Gの各々は、アルカン、アルケン、もしくはアラルカンの置換によって誘導される3から30の炭素原子の三価のもしくは多価の炭化水素基、または2から29の炭素原子の三価のもしくは多価のヘテロカーボン基から独立して選択され、ただし各々のGは環状構造(環)を有するという条件である。
【0046】
の各々は、−Cl、−Br、RO−、RC(=O)O−、RC=NO−、RNO−、もしくはRN−からなる群の加水分解性基のセットから独立して選択され、ここで各々のRは上述の通りである。
【0047】
およびXの各々は、RおよびXのために列挙された要素からなる群から独立して選択される。
【0048】
Qの各々は、酸素、硫黄、もしくは(−NR−)から独立して選択される。
【0049】
Aの各々は、炭素、硫黄、リン、もしくはスルホニルから独立して選択される。
【0050】
Eの各々は、酸素、硫黄、もしくはNRから独立して選択される。
【0051】
kは1から2であり、m=1から5であり、n=1から5であり、rは2から4であり、zは0から2であり、ただし、もしAがリンならば、kは2である。
【0052】
ヘテロカーボン(heterocarbon)という用語はここで用いられる時に、骨格における炭素−炭素結合が、窒素および/もしくは酸素の原子に対する結合によって分断される任意の炭化水素構造、または、骨格における炭素−炭素結合が、たとえばシアヌール酸塩(C)のような、窒素および/もしくは酸素を含む原子の基に対する結合によって分断される任意の炭化水素構造の事である。ヘテロカーボン基はまた、炭素に結合した、水素または二つもしくはそれ以上の水素が、たとえば、第一級アミン(−NH)およびオキソ(=O)のような酸素もしくは窒素原子と置き換えられている、任意の炭化水素構造をも指す。このように、Gは、少なくとも一つの環構造を含有した分岐の、直鎖の炭化水素、環状の、および/もしくは多環式の脂肪族の炭化水素であって、任意選択で、それらの各々が二つの独立した炭素原子に結合する酸素原子を介したエーテル官能性、それらの各々が三つの独立した炭素原子に結合する窒素原子を介した第三級アミン官能性、および/もしくはシアヌル(C)基;芳香族炭水化物;ならびに、先に述べた芳香族化合物の、分岐のまたは直鎖の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリールおよび/もしくはアラルキル基による置換によって誘導されるアレーンを含むが、しかしそれらには限定されない。
【0053】
ここで用いられる時に、「アルキル」は直鎖の、分岐の、および環状の、アルキル基を含む;「アルケニル」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有した任意の直鎖の、分岐の、もしくは環状のアルケニル基を含み、ここで置換の場所は、炭素−炭素二重結合においてか、または基の中の他の場所の、いずれか一方であり得る;「アルキニル」は、一つもしくはそれ以上の炭素−炭素三重結合を、ならびに任意選択で同様に一つもしくはそれ以上の炭素−炭素二重結合を含有した任意の直鎖の、分岐の、もしくは環状のアルキニル基を含み、ここで置換の場所は、炭素−炭素三重結合においてか、炭素−炭素二重結合においてか、または基の中の他の場所の、いずれかであり得る。アルキルの具体例は、メチル、エチル、プロピル、イソブチルを含む。アルケニルの具体例はビニル、プロペニル、アリル、メタリル、エチリデニル(ethylidenyl)ノルボルナン、エチリデンノルボルニル(Norbornyl)、エチリデニルノルボルネン、およびエチリデンノルボルネニルを含む。アルキニルの具体例は、アセチレニル、プロバルギル、およびメチルアセチレニルを含む。
【0054】
ここで用いられる時に、「アリール」は、そこから一つの水素原子が取り除かれた、任意の芳香族炭水化物を含む;「アラルキル」は、一つもしくはそれ以上の水素原子が、同じ数の同類のおよび/もしくは異なった(ここで定義されるような)アリールの置換基によって置換されている上述のアルキル基の任意のものを含む;ならびに「アレニル」は、一つもしくはそれ以上の水素原子が、同じ数の同類および/もしくは異なった(ここで定義された)アルキルの置換基によって置換されている上述のアリール基の任意のものを含む。アリールの具体例はフェニルおよびナフタレニルを含む。アラルキルの具体例はベンジルおよびフェネチルを含む。アレニルの具体例はトリルおよびキシリルを含む。
【0055】
ここで用いられる時に、「環状アルキル」、「環状アルケニル」、および「環状アルキニル」はまた、二環式の、三環式の、およびより高次の構造をも含み、ならびに、上述の環状構造はまた、アルキル、アルケニル、および/もしくはアルキニル基によって置換される。代表例は、ノルボルニル、ノルボルネニル、エチルノルボルニル、エチルノルボルネニル、エチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキセニル、シクロヘキシルシクロヘキシル、およびシクロドデカトリエニルを含む。
【0056】
本発明のシランに存在する官能基(−YS−)の代表例は、チオカルボキシラートエステル、−C(=O)S−(この官能基を有する任意のシランは「チオカルボキシラートエステルシラン」である);ジチオカルボキシラート、−C(=S)S−(この官能基を有する任意のシランは「ジチオカルボキシラートエステルシラン」である);チオカルボナートエステル、−OC(=O)S−(この官能基を有する任意のシランは「チオカルボナートエステルシラン」である);ジチオカルボナートエステル、−SC(=O)S−および−OC(=S)S−(この官能基を有する任意のシランは「ジチオカルボナートエステルシラン」である);トリチオカルボナートエステル、−SC(=S)S−(この官能基を有する任意のシランは「トリチオカルボナートエステルシラン」である);ジチオカルバメートエステル、(−N−)C(=S)S−(この官能基を有する任意のシランは「ジチオカルバメートエステルシラン」である);チオスルホナートエステル、−S(=O)S−(この官能基を有する任意のシランは「チオスルホナートエステルシラン」である);チオ硫酸エステル、−OS(=O)S−(この官能基を有する任意のシランは「チオ硫酸エステルシラン」である);チオサルファメート(thiosulfamate)エステル、(−N−)S(=O)S−(この官能基を有する任意のシランは「チオサルファメートエステルシラン」である);チオサルフィナート(thiosulfinate)エステル、−S(=O)S−(この官能基を有する任意のシランは「チオサルフィナートエステルシラン」である);チオ亜硫酸エステル、−OS(=O)S−(この官能基を有する任意のシランは「チオ亜硫酸エステルシラン」である);チオサルフィマート(thiosulfimate)エステル、(−N−)S(=O)S−(この官能基を有する任意のシランは「チオサルフィマートエステルシラン」である);チオリン酸エステル、P(=O)(O−)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「チオリン酸エステルシラン」である);ジチオリン酸エステル、P(=O)(O−)(S−)もしくはP(=S)(O−)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「ジチオリン酸エステルシラン」である);トリチオリン酸エステル、P(=O)(S−)もしくはP(=S)(O−)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「トリチオリン酸エステルシラン」である);テトラチオリン酸エステル、P(=S)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「テトラチオリン酸エステルシラン」である);チオホスファメート(thiophosphamate)エステル、−P(=O)(−N−)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「チオホスファメートエステルシラン」である);ジチオホスファメート(dithiophosphamate)エステル、−P(=S)(−N−)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「ジチオホスファメートエステルシラン」である);チオホスホロアミダート(thiophoshporamidate)エステル、(−N−)P(=O)(O−)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「チオホスホロアミダートエステルシラン」である);ジチオホスホロアミダート(dithiophoshporamidate)エステル、(−N−)P(=O)(S−)もしくは(−N)P(=S)(O−)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「ジチオホスホロアミダートエステルシラン」である);トリチオホスホロアミダート(trithiophoshporamidate)エステル、(−N−)P(=S)(S−)(この官能基を有する任意のシランは「トリチオホスホロアミダートエステルシラン」である)を含む。
【0057】
の代表例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、クロロ、およびアセトキシを含む。XおよびXの代表例はXのために上に列挙された代表例、および、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、フェニル、ビニル、シクロヘキシル、ならびにブチル、ヘキシル、オクチル、ラウリル、およびオクタデシルなどのより高次な直鎖アルキルを含む。
【0058】
三置換体のGの代表例は、−CHCH−ノルボルニル=、−CH(CH)−ノルボルニル=、−CH(CH−)−ノルボルニル−、−CHCH−シクロヘキシル=、−CH(CH)−シクロヘキシル=、および−CH(CH−)−シクロヘキシル−のような、ビニルノルボルネンおよびビニルシクロヘキセンから誘導可能な任意の構造;−CHCH(CH)[4−メチル−1−C=]CH]、−C(CH[(4−メチル−1−C=)CH]、および−CH(C−)(CH)[(4−メチルー1−C−)CH]であって、ここで、Cの表記が2の位置における置換を欠いている三置換されたシクロヘキセン環の異性体を示し、そしてCが1,4で二置換されたシクロヘキセン環を示すような、リモネンから誘導可能な任意の構造;−CH(CH−)(ビニルC)CHCH−および−CH(CH−)(ビニルC)CH(CH)−のような、トリビニルシクロヘキサンから誘導可能なビニル含有構造の任意のもの;(−CHCH、(−CHCHCH(CH)−,−CHCH[CH(CH)−]、およびC[CH(CH)−]であって、ここでCの表記が、三置換されたシクロヘキサン環の異性体の任意のものを示すような、トリビニルシクロヘキサンから誘導可能な構造の任意のもの;シクロペンタン、テトラヒドロシクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロデカン、シクロドデカン、任意のシクロドデセン、任意のシクロドデカジエン、シクロヘプタン、任意のシクロヘプテン、および任意のシクロヘプタジエンの三置換によって誘導可能な任意の構造;三置換された、シアヌール酸塩、ピペラジン、シクロヘキサノン、およびシクロヘキセノン;ならびに三置換されたベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンおよびナフタレンから誘導可能な任意の構造、を含む。
【0059】
四置換のGの代表例は、−CH(CH−)−ノルボルニル=および−CH(CH−)−シクロヘキシル=のような、ビニルノルボルネンもしくはビニルシクロヘキセンから誘導可能な任意の構造;−CH(C−)(CH)[(4−メチル−1−C=)CH]であって、ここでCの表記が、1,4二置換のシクロヘキセン環を示すような、リモネンから誘導可能な任意の構造;−CH(CH−)(ビニルC)(CH−)CH−であって、ここでCの表記が三置換のシクロヘキサン環の任意の異性体を示すような、トリビニルシクロヘキサンから誘導可能なビニル含有の構造の任意のもの;−CH(CH−)C[CH(CH)−]、−CH(CH−)C[CHCH−]、および、−CH(CH−)C[CH(CH)−][CHCH−]であって、ここでCの表記が、三置換のシクロヘキサン環の任意の異性体を示すような、トリシクロヘキサンから誘導可能な構造の任意のもの;シクロペンタン、テトラヒドロシクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロデカン、シクロドデカン、任意のシクロドデセン、任意のシクロドデカジエン、シクロヘプタン、任意のシクロヘプテン、および任意のシクロヘプタジエンの四置換によって誘導可能な任意の構造;ならびに、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、およびナフタレンの四置換によって誘導可能な任意の構造を含む。
【0060】
五置換のGの代表例は、−CHCH[(CH−)CH−]、−CH(CH)C[(CH−)CH−]、およびC[(CH−)CH−]であって、ここでCの表記が三置換のシクロヘキサン環の任意の異性体を示すような、トリビニルシクロヘキサンから誘導可能な構造の任意のもの;ならびに、シクロドデカンの五置換もしくは六置換によって誘導可能な任意の構造、を含む。
【0061】
Rの代表例は、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、ドデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、フェネチル、メタリル、およびアリルを含む。
【0062】
式(1)によって表される本発明の他の実施態様において、ここでYの各々は多価の種(Q)A(=E)で、Qの各々は酸素、硫黄、もしくはNRから独立して選択され、Aは炭素であり、そしてEは酸素、硫黄、もしくはNRから独立して選択される。代表的な例は、−C(=NR)−;−SC(=NR)−;−NRC(=NR)−;−C(=O)−;−SC(=O)−;−OC(=O)−;−NRC(=O)−;および−C(=S)−;−NRC(=S)−;−SC(=S)−の群から選択されるが、これらには限定されない。
【0063】
式(1)によって表される本発明の他の実施態様において、Yは−C(=O)−である。
【0064】
本発明の他の実施態様において、mの各々は2〜4でnは1〜4である。
【0065】
本発明の他の実施態様において、mの各々は2〜4であり、nは2〜4である。
【0066】
本発明の他の実施態様において、mの各々は2であり、nは2である。
【0067】
本発明の他の実施態様において、Gの各々は、少なくとも一つの環と1から18の炭素原子を含有する置換炭化水素である。
【0068】
本発明の他の実施態様において、Gの各々は、置換された、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロドデカン、およびベンゼンからなる群から選択される。
【0069】
本発明の他の実施態様において、Rの各々は、1から8までの炭素原子の直鎖のアルキル基である。
【0070】
本発明の他の実施態様において、Rの各々は、水素、メチル、エチル、およびプロピルからなる群から選択される。
【0071】
本発明のさらに他の実施態様において、分子内のR基中の炭素原子の合計は2から16までであり、さらに好ましくは6から14までである。このR基中の炭素の数は、無機充填剤の有機ポリマーに対する拡散を促進し、そして硬化の程度に影響を与え、それにより、硬化した充填剤配合ラバーの性能のバランスを向上する。
【0072】
本発明のさらに他の実施態様において、Gの各々は、三置換のシクロヘキサンもしくはベンゼンからなる群から選択され、Rは、1から8までの炭素原子の直鎖のアルキル基であり、r=2およびm=1もしくは2、ならびにn=1もしくは2である。
【0073】
本発明のシランの代表例は、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)ベンゼン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)ベンゼン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソヘプチル)ベンゼン、1−(2−トリプロポキシシリルメチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)ベンゼン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(2−チア−3−オキソペンチル)ベンゼン、1−(2−ジエトキシメチルシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)ベンゼン、4−(2−ジメチルエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チアー4−オキソペンチル)ベンゼン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(2−チア−3−オキソペンチル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−2,4−ビス−(2−チア−3−オキソペンチル)シクロヘキサン、2−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,4−ビス−(2−チア−3−オキソペンチル)シクロヘキサン、4−(2−ジエトキシメチルシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサン、4−(2−ジメチルエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−2,4−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサン、2−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,4−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソノニル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−2,4−ビス−(3−チアー4−オキソノニル)シクロヘキサン、2−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,4−ビス−(3−チア−4−オキソノニル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−2,4−ビス−(3−チア−4オキソウンデシル)シクロヘキサン、2−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,4−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサン、4−(2−ジメチルエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソ−5−アザ−5−メチルドデシル)シクロヘキサン、(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3,5−ジチア−4−オキソドデシル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)メシチレン、および6−(2−トリエトキシシリルプロピル)−2,2−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサノン、およびこれらの混合物を含むが、それらに限定しない。
【0074】
他の実施態様において、種々のブロック化メルカプトシランの混合物は、合成方法が結果的にに種々のシランの配分となるか、もしくは、ブロック化メルカプトシランの混合が、それらのさまざまの、官能性のブロック化もしくは官能性を残すことに用いられるように、用いられ得る。さらに、これらのブロック化メルカプトシランの部分加水分解物(すなわち、ブロック化メルカプトシロキサン)はまた、これらの部分加水分解物が、ブロック化メルカプトシランの多くの製造方法において副産物であり、ブロック化メルカプトシランの、特に湿潤状態での、貯蔵において生じる可能性があるため、ここでのブロック化メルカプトシランによって包含されることは理解されよう。
【0075】
さらに他の実施態様に置いて、シランは、もし液体なら、多孔ポリマー、カーボンブラック、シリカ充填剤、もしくはシリカのような担体の上に装填でき、ラバーへの送達のために固形であることが出来る。シランは、特にシランと充填剤との混合物が大気圧もしくは減圧において約50℃から150℃にまで温められた時、シリカ充填剤もしくはシリカの表面基と反応する事ができる。
【0076】
シランの製造
本発明の実施態様は、チオ酸を加えることによって、チオエステル基を炭素−炭素二重結合においてシランへ直接的に組み込む事を含み得る、ブロック化メルカプトシランの作成のための方法を含む。反応は、アルケン官能性シランの炭素−炭素結合におけるチオ酸のフリーラジカル付加であり、UV光、熱、もしくは適切なフリーラジカル開始剤によって触媒され、ここで、もしチオ酸がチオカルボン酸であるならば、もう一方に付加されるいずれかの試薬が、実質的に付加が進行する前に反応することを確実にするような方法によって、二つの試薬がお互いに接触するようにもたらされる。反応は、アルケン官能性シランとチオ酸との混合物を温めるかもしくは還流する事によって実施される。態様は、米国特許3,692,812号において、および、G.A.GornowiczらによるJ.Org.Chem.(1968)、33(7)、2918−24において、すでに開示されている。触媒無しの反応は105℃という低い温度において起こりうるが、しばしば失敗する。成功の確率は、温度と共に上昇し、温度が160℃を超えるとき、高くなる。反応は、UV照射もしくは触媒を用いたとき、信頼できるようになり、ほとんど完全になる。触媒を用いる事で、反応は90℃より下の温度で起こるようになる。適切な触媒は、たとえば、空気、過酸化物、好ましくは有機化酸化物、およびアゾ化合物のような、フリーラジカル開始剤である。過酸化物開始剤の例は、過安息香酸および過酢酸のような過酸;過酸のエステル;t−ブチルヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシド;ジ−t−ブチル過酸化物のような過酸化物;ならびに、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンのような過酸化アセタールおよびケタール、もしくは任意の他の過酸化物を含む。アゾ開始剤の例は、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、1,1−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(VAZO、DuPont製);およびアゾ−tert−ブタンを含む。反応はアルケン官能性シランとチオ酸との混合物を触媒と共に温める事によって実施される。最も高い転換を得るために、等モル基準かもしくは等モルに近い基準において、反応全般が実施されることが好ましい。反応は充分に発熱し、反応が開始し急速に進行するに従い、後に激しい還流へと続くような還流へと至る、急速な温度の上昇を導く傾向にある。この激しい還流は大量の有害な吹きこぼれを導く可能性がある。副反応、不純物汚染、産物のロスは同様に、制御されてない反応から起こりうる。一つの試薬の部分量を反応混合物へ加え、触媒と共に反応を開始し、おおむね完全になるまで反応を進行させ、そして試薬の残りを、一回の添加によってか、または複数回の添加によって、添加する事によって、反応は効果的に制御できる。最初の濃度ならびに添加の速度および欠乏した試薬の続けての添加の回数は、用いられる触媒のタイプおよび量、反応のスケール、開始物質の性質、ならびに、装置の熱を吸収し放散する能力に依存する。反応を制御する第二の方法は、同時に起こる連続的な触媒の添加をともなう、一つの試薬の他の試薬への連続的な添加を含む。連続的な添加もしくは順次的な添加のどちらが用いられても、触媒は単独でおよび/もしくは一つもしくは両方の試薬とあらかじめ混合されて、またはそれらの組み合わせで用いられる。二つの方法は、チオカルボン酸、および末端炭素−炭素二重結合を有するアルケン官能性シランのような、チオ酸を含む反応に好ましい。第一のものは最初にアルケン官能性シランを160℃から180℃の温度にすること、もしくは、温度がより低い限り還流することを含む。チオ酸の最初の部分は、激しいが制御された還流が維持されるような速度で添加される。沸点が100℃から120℃より高いアルケン官能性シランの場合、還流は、チオ酸の、アルケン官能性シランの温度に比べて比較的低い沸点(88℃から92℃、純度による)から主に生じる。添加が完了する時、還流の速度は急速に弱まる。それは、特に、沸点が120℃より高いアルケン官能性シランを用いたとき、反応が開始すると、数分内に再び加速する。もしそれが10から15分内に開始しない場合、触媒の添加によって開始される。好ましい触媒はジ−t−ブチル過酸化物である。触媒の適切な量は、触媒が加えられる混合物の総量の0.2から2パーセントであり、好ましくは0.5から1パーセントである。還流速度の上昇によって示されるように、反応は典型的には数分内に開始する。そして、チオ酸の次の部分が添加され、上述のステップの連続が繰り返される。約1から約4キログラムの総反応量に対する、チオ酸の添加の好ましい回数は2回であり、用いられるチオ酸全部の1/3が第一の添加で、残りが第二の添加である。約4から10キログラムの範囲の総量に対しては、合計で3回のチオ酸の添加が好ましく、配分は全量のおおよそ20パーセントが第一の添加においてであり、おおよそ30パーセントが第二の添加においてであり、そして残りが第三の添加においてである。チオ酸とアルケン官能性シランを含むより大きなスケールに対して、全部で3回より多いチオ酸の添加を用いる事が好ましく、より好ましくは試薬を逆順に添加する。最初に、チオ酸の全量が還流される。これに、潤滑であるが激しい反応速度になるような速度における、アルケン官能性シランのチオ酸へ対する連続的な添加が続く。触媒は好ましくはジ−t−ブチル過酸化物であり、反応の経過に沿って小部分で添加されるかもしくは連続的な流れで添加される。必要とされる最小の量の触媒で最も多い量の産物を得るために、反応が完全に進むに連れて触媒添加の速度が加速するのが最適である。用いられる触媒の全量は、用いられる試薬の全量の0.5から2パーセントであるべきである。いずれの方法が用いられても、反応の後に、揮発成分と反応していないチオ酸およびシランを取り除くために、真空吸引プロセスが続く。産物は蒸留によって精製され得る。
【0077】
本発明の他の実施態様において、反応は、チオ酸のアルカリ金属塩とハロアルキルシランとの間である。第一のステップはチオ酸の塩の作成を含む。アルカリ金属の誘導体が好まれ、ナトリウム誘導体がもっとも好まれる。これらの塩は溶媒中の溶液で作成され、ここで塩はかなり可溶性であるが、溶媒中に塩が固体でけん濁していて、ここで塩がわずかに可溶性であるものも、実行可能な選択肢である。プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、およびt−ブタノール、そして好ましくはメタノールおよびエタノールのようなアルコールは、アルカリ金属塩がそれらにわずかに可溶性であるため、有用である。所望の産物がアルコキシシランであるような場合、ケイ素エステルのエステル交換を妨げるために、シランアルコキシ基に対応するアルコールを用いることが好ましい。代替的に、非プロトン溶媒もまた用いることが出来る。適切な溶媒の例は、グリム、ジグリム、およびジオキサンのようなエーテルもしくはポリエーテル;N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリジノン;またはヘキサメチルホスホルアミドである。チオ酸の塩の溶液、けん濁液もしくはそれらの組み合わせが作成されると、第二のステップはそれを適切なハロアルキルシランと反応させる事である。これはハロアルキルシランとチオ酸の塩の溶液、けん濁液もしくはそれらの組み合わせとの混合物を、溶媒の液体範囲に対応する温度において、反応が実質的に完結するのに充分な時間、かく拌する事によって達成され得る。好ましい温度は、塩が溶媒中にかなり可溶性であり、反応が過剰な副反応無しに、許容できる速度で進むようなものである。反応が、塩素原子がアリルでもベンジルでもないクロロアルキルシランから開始する時、好ましい温度は60℃から160℃の範囲である。反応時間は、1時間もしくは数時間から数日間までの範囲であり得る。アルコールが4つもしくはそれ以下の炭素原子を有するアルコール溶媒に対し、もっとも好ましい温度は還流、もしくは還流に近いものである。もし、ジグリムが溶媒として用いられた場合、最も好ましい温度は、用いられるチオ酸塩に依存して、70℃から120℃の範囲である。もしハロアルキルシランが、塩素原子がアリルもしくはベンジルであるブロモアルキルシランもしくはクロロアルキルシランである場合、ブロモ基のより高い反応性のため、ベンジルで無いかもしくはアリルで無いクロロアルキルシランにとって適切なものと比較して、30℃から60℃の温度の減少が適切である。ブロモアルキルシランは、そのより高い反応性、より低い必要とされる温度、および副産物であるアルカリ金属ハロゲン化合物のろ過もしくは遠心除去の容易さのため、クロモアルキルシランより好ましい。しかしながら、この選好は、クロロアルキルシラン、特にアリルもしくはベンジル位においてハロゲンを有したものの、より低いコストによって覆され得る。チオカルボン酸エステルエトキシシランを生成する、直鎖クロロアルキルエトキシシランとチオカルボン酸ナトリウムとの間の反応にとって、産物中の5から20パーセントにメルカプトシランが許容出来るなら、10から20時間の還流においてエタノールを用いることが好ましい。さもなければ、ジグリムがすばらしい選択であり、ここでは反応は、80℃から120℃の範囲で1から3時間の間、好ましく進むであろう。反応が完結すると塩及び溶媒は取り除かれ、産物は蒸留されより高い純度を達成する。
【0078】
用いられるべきチオ酸の塩が市販されていない時、下で方法Aおよび方法Bとして記載される2つの方法によってその作成が達成できる。方法Aは、アルカリ金属もしくはアルカリ金属由来の塩基をチオ酸へと添加する事を含有する。反応は室温で起こる。適切な塩基はアルカリ金属アルコキシド、ヒドリド、カーボナート、およびバイカーボナートを含む。トルエン、キシレン、ベンゼン、脂肪族炭化水素、エーテル、およびアルコールのような溶媒は、アルカリ金属誘導体を作成するのに用いて良い。方法Bにおいて、酸塩化物もしくは酸無水物は、アルカリ金属硫化物もしくは水硫化物との反応によって、直接的にチオ酸の塩へと転換される。水和したアルカリ金属硫化物、もしくは、部分的に水和したアルカリ金属硫化物、または水硫化物が利用可能である;しかしながら無水のアルカリ金属硫化物、もしくはほとんど無水のアルカリ金属硫化物、または水硫化物が好ましい。水和物を用いることができるが、しかし、産物のロス、および、副産物としての硫化水素の産生を伴う。反応は、酸塩化物もしくは酸無水物をアルカリ金属硫化物および/もしくは水硫化物の溶液もしくはけん濁液へと添加することと、室温から溶媒の還流温度までの範囲の温度において、副産物の塩の形成によって証明される、反応が大部分完結するのに充分な時間、温めることとを含む。
【0079】
アルコールが、それが溶媒として使われたためか、それが、たとえば、チオ酸とアルカリ金属アルコキシドとの反応によって形成されたためかのいずれか一方の理由によって、存在するような方法によって、チオ酸のアルカリメタル塩が作成されるなら、もし、低メルカプトシランの産物が望まれるなら、アルコールが取り除かれることが望ましい。このような場合、チオ酸の塩とハロアルコキシシランとの反応に先立ち、アルコールを取り除くことが必要であろう。これは蒸留もしくは蒸発によって行う。メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、および、t−ブタノールのようなアルコールは、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレン、もしくは脂肪族炭化水素との共沸蒸留によって取り除かれる。トルエンおよびキシレンは好まれる。
【0080】
ここに記載されるブロック化メルカプトシランは有機ポリマー(すなわちラバー)と無機充填剤のためのカップリング剤、として有用である。ブロック化メルカプトシランは、メルカプトシランを用いる事と典型的に関連する、高い加工中の粘性、所望するより低い充填剤の分散、早期加硫(スコーチ)、および悪臭などの有害な副作用無しに、高効率のメルカプト基を利用できるという点で独特である。メルカプトシラン基が、ブロック基のおかげで開始時に無反応であることから、これらの利点が達成される。ブロック基は、ラバーの配合中において、シランが有機ポリマーとカップリングする事を実質的に防ぐ。一般的に、シラン、−SiX基と充填剤との反応のみが、配合プロセスのこの段階において起こる。このように、充填剤とポリマーとの実質的なカップリングは混合中においては排除され、それによって、望ましくない早期加硫(スコーチ)および関連した望ましくない粘性の上昇が最小限に抑えられる。早期加硫の防御のおかげで、高いモジュラスと耐摩耗とのバランスのような、より良い硬化した充填剤配合ラバーの性能が達成できる。
【0081】
mで示される、ケイ素とG基との間のメチレン基の数、および、nで示される、硫黄(ブロック化メルカプタン)とG基との間のメチレン基の数は、メチレン基がシランと充填剤およびポリマーとの間の過剰な立体相互作用を軽減するために、カップリングを向上させる。二つの連続したメチレン基は、立体相互作用をさらに軽減し、シランの化学構造に自由度を与え、それによって、界面におけるラバーと充填剤の両方の表面の形態によって強制される、分子レベルの位置的および方向的な制約に対して適応するそれの能力を高める。Gへと結合するケイ素および硫黄原子の総数が3から4まで、およびそれ以上に増加するにともなって、シランの自由度はますます重要になってくる。第2級炭素原子、および特に第3級炭素原子;環状構造;そして特に、ケイ素および/もしくは硫黄の近くのG上に芳香族構造を有したより密な構造は、より硬直しており、ケイ素およびポリマー上の結合可能な部位と遭遇するように向きを変えることが容易に出来ない。これは硫黄基をポリマーと結合しない状態に置く傾向があり、それにより、シランのポリマーへの、シランの多重ブロック化メルカプト基を介した多重結合の原理が現実化する効率を減らす。
【0082】
環状構造からの一つもしくはそれ以上のメチレン基を介して、ケイ素およびブロック化シラン基がそこから生じるG基はまた、環状構造の形状がお互いに基を生じることを志向するため、カップリングを改善する。これはそれらを、お互いの通路に入る事を妨げ、それらを異なった方向へ向けさせ、それゆえケイ素は充填剤に結合することが出来、一方で硫黄がポリマー表面に結合する。このように、それらはケイ素とブロック化メルカプト基を異なった方向に向けさせるが、それらの硬直性は方向の自由度を制限する。脂肪族環状G構造は、それらが結合した二重結合を有していないため、より自由度が高い。それらは、環状構造からのケイ素および硫黄の多様な方向と、脂肪族環状構造の自由度との利点を兼ね備える。
【0083】
本発明の一つの実施態様はラバー組成物であって:
a) 式1のブロック化メルカプトシラン、
b) 有機ポリマー、
c) 充填剤、そして任意選択で、
d) 他の添加剤および硬化剤、
を含有する。
【0084】
他の実施態様は、本発明のこれらブロック化メルカプトシランの使用を含む。一つもしくはそれ以上のブロック化メルカプトシランは、充填剤を有機ポリマーへと配合する前に、配合する間に、もしくは配合した後に、有機ポリマーと混合される。好ましい実施態様において、シランは、これらのシランが充填剤の分散を促進し、向上するため、充填剤を有機ポリマーへと配合する前もしくは配合する間に、加えられる。生成する混合物に存在するシランの全量は、有機ポリマーの100重量部当たり、約0.05から約25重量部(phr)であるべきで、より好ましくは1から10phrである。充填剤は、約5から100phr、より好ましくは25から80phr、の間の範囲の量で用いることが出来る。
【0085】
充填剤をポリマーへと結合させる混合物の反応が望まれるとき、ブロック化メルカプトシランを脱ブロック化するために脱ブロッキング剤が混合物に加えられる。脱ブロッキング剤は、約0.1から約5phrの範囲、より好ましくは0.5から3phrの範囲の量で加えることが出来る。もし、アルコールもしくは水が混合物中に存在する(普通にあることだが)場合、触媒(たとえば第3級アミン、ルイス酸もしくはチオール)が、加水分解によるブロック基の消失もしくは対応するメルカプトシランを開放するためのアルコール分解を開始し、促進するために用いられる。代替的に、脱ブロッキング剤は、水素原子を有した求核試薬であり得、水素原子が、メルカプトシランを形成するために、元のブロック基の部位へと移されるくらい充分に不安定である。このようにブロック基受容体分子を用いて、求核分子からの水素の交換がブロック化メルカプトシランのブロック基と起こり、メルカプトシランと元のブロック基を有した求核分子の対応する誘導体とを形成する。このシランから求核分子へのブロック基の移動は、たとえば、最初の反応物(ブロック化メルカプトシランおよび求核分子)と比較した産物(メルカプトシランおよびブロック基を有した求核分子)のより大きな熱力学的な安定性によって駆動される。たとえば、もし求核分子がN−H結合を有したアミンであるとき、ブロック化メルカプトシランからのブロック基の移動は、メルカプトシランと用いられるブロック基のタイプに対応したアミドのいくつかのクラスのうちの一つとを得る。たとえば、アミンによって脱ブロック化されるカルボキシルブロック基はアミドを得、アミンによって脱ブロック化されるスルホニルブロック基はスルホンアミドを得、アミンによって脱ブロック化されるスルフィニルブロック基はスルフィンアミドを得、アミンによって脱ブロック化されるホスホニルブロック基はホスホンアミドを得、アミンによって脱ブロック化されるホスフィニルはホスフィンアミドを得る。大事な事は、ブロック化メルカプトシラン上に最初から存在するブロック基に関わらず、そして、用いられる脱ブロックキング剤に関わらず、最初は実質的に(有機ポリマーへのカップリングの点から見て)不活性であったブロック化メルカプトシランが、ラバー配合手順の所望の時点において、活性なメルカプトシランへと実質的に転換されることである。特定の調合物の加硫の程度を制御するために、ブロック化メルカプトシランの一部のみを脱ブロック化する際、部分的な量(すなわち化学量論的に不足した)の求核分子が用いられ得ることは特筆すべきである。
【0086】
典型的に水は、無機充填剤において水和物として、もしくはヒドロキシ基の形で充填剤に結合して存在する。脱ブロッキング剤は、硬化パッケージ中に、もしくは代替的に、任意の他の段階で単独の成分として配合プロセスへと添加され得る。求核分子の例は、任意の第一級アミンもしくは第二級アミン、またはイミン、グアニジンのような、C=N二重結合を有したアミンを含み、ただし、前記アミンは少なくとも一つのN−H(窒素−水素)結合を有しているという条件である。グアニジン、アミン、およびイミンの数多くの具体的な例が当分野でよく知られており、それらはラバーの硬化剤中の成分として有用であり、J.Van Alphen、RubberChemicals(Plastics and Rubber Research Institute TNO、Delft、Holland、1983)に挙げられている。いくつかの例は、N,N’−ジフェニルグアニジン、N,N’,N’’−トリフェニルグアニジン、N,N’−ジ−オルト−トリグアニジン、オルソビグアニド、ヘキサメチレンテトラミン、シクロヘキシルエチルアミン、ジブチルアミン、および4,4’−ジアミノジフェニルメタン、を含む。エステルのエステル交換のために用いられる、プレンステッド酸もしくはルイス酸のような任意の一般的な酸触媒を、触媒として用いる事が出来る。
【0087】
ラバー組成物には、官能化されたシロキサン、特に、参照によりここに組み込むオーストラリア特許AU−A−10082/97に記載されるようなタイプのものが実質的に含まれていないという必要は無いが、しかし好ましくはそうである。もっとも好ましくは、ラバー組成物は官能化されたシロキサンが含まれていない。
【0088】
実施面では、硫黄加硫ラバー産物は典型的には、順次的な段階的な方法で、ラバーとさまざまな成分とを熱力学的に混合することによって作成され、加硫産物を作成するために、配合されたラバーを成型し硬化することが後に続く。最初に、典型的に硫黄と硫黄硫化促進剤(まとめて「硬化剤」)を除いた前述のラバーとさまざまな成分との混合のために、ラバーとさまざまなラバー配合成分は、典型的には、適切なミキサー内における、予備的な熱力学的混合の少なくとも一つ、そしてしばしば二つの段階で混合される。そのような予備的な混合は、非生産的混合または非生産的混合ステップもしくは段階と呼ばれる。そのような予備的な混合は通常、140℃から200℃で、しばしば150℃から180℃において実施される。そのような予備的な混合段階に続いて、しばしば生産的混合段階と呼ばれる、最終混合段階において、脱ブロッキング剤(本発明の場合)、硬化剤、ならびに場合によっては一つもしくはそれ以上の補足的な成分が、ラバー組成物もしくは成分と、典型的には、しばしばラバー組成物のスコーチと呼ばれる、硫黄硬化ラバーの早期加硫を防ぐかまたは遅らせるため、予備的な混合段階と比較してより低い温度である、50℃から130℃の範囲の温度において、混合される。しばしばラバー組成物もしくは成分と呼ばれるラバー混合物は、前述のさまざまな混合のステップの間で、しばしば、中間的なミル混合の後もしくはその最中に、たとえば約50℃もしくはそれより低い温度へと、典型的には冷まされる。ラバーを成型したり硬化することが望まれるなら、最低約130℃から約200℃までにおいて、ラバーは適切な型へと置かれ、これは、メルカプトシラン上のメルカプト基もしくはラバー混合物中の任意の他の遊離硫黄源によってラバーの加硫を引き起こす。
【0089】
熱力学的な混合によって意味されるのは、ラバー組成物、またはラバーの成分およびラバー配合成分がラバー混合物中において高いせん断条件において混合され、ここでそれは、一時的に、ラバーミキサー内のラバー混合物中のせん断と関連した摩擦とによって、混合の結果、自己生産的に熱を持つ事である。いくつかの化学反応は、混合もしくは硬化プロセスにおけるさまざまな段階において起こるであろう。
【0090】
最初の反応は、比較的速い反応であり、ここでは充填剤とブロック化メルカプトシランとの間で起こると考えられている。そのような反応は、たとえば、約120℃という比較的低い温度で起こる。第二および第三の反応は、ここではメルカプトシランの脱ブロック化であると考えられ、(脱ブロック化した)オルガノシランの硫黄部分と硫黄加硫ラバーとの間で、約140℃というより高い温度において起こる反応である。
【0091】
たとえば、Sとしての元素硫黄の形状のような他の硫黄源も用いられ得る。硫黄供給体は、ここでは、遊離のもしくは元素の硫黄を、140℃から190℃の範囲の温度において解放する、硫黄含有化合物であると考えられる。そのような硫黄供給体の例は、そのポリスルフィド架橋において少なくとも二つの結合硫黄原子をもつポリスルフィド加硫促進剤およびオルガノシランポリスルフィドであり得るが、それらに限定されない。混合物へ添加する遊離の硫黄源の量は、前述のブロック化メルカプトシランの添加から比較的独立した選択の問題として、制御されるか操作される。このように、たとえば、硫黄源の独立した添加は、それ自身の添加の量、およびラバー混合物への他の成分の添加と比較した添加の順序によって操作され得る。
【0092】
アルキルシランのカップリング剤系(ブロック化メルカプトシランと追加の遊離硫黄源および/もしくは加硫促進剤)への添加は、典型的には、アルキルシランのブロック化メルカプトシランへの1/50から1/2の範囲のモル比において、ラバー組成物の加工と熟成とのより良い制御を促進する。
【0093】
本発明の実施態様において、ラバー組成物は順次的なステップ:
(A)少なくとも一つの予備的な混合ステップにおける;
(i)共役ジエンホモポリマーおよび共役ジエンコポリマー、ならびに少なくとも一つの共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物の共重合体、から選択される、100重量部の少なくとも一つの硫黄加硫可能なラバー
(ii)5から100phr(100ラバー当たりの1部)、好ましくは25から80phr、の微粒子充填剤、ここで好ましくは充填剤は1から85重量パーセントのカーボンブラック、
(iii)0.05から20重量部の少なくとも一つのブロック化メルカプトシランの充填剤、
の熱力学的な混合ステップであって、そのような混合ステップは、140℃から200℃の温度、代替的に140℃から190℃の温度での、2から20分の間、代替的に4から15分の全混合時間である。
(B)そのすぐあとの、最終的な熱力学的な混合ステップにおける、50℃から130℃の温度での、ラバーを混合するのに充分な時間、好ましくは1から30分の間、より好ましくは1から3分の間の、充填剤の約0.05から20重量部の少なくとも一つの脱ブロッキング剤および0から5phrの硬化剤の順次的な混合;そして任意選択で
(C)130℃から200℃の温度での約5から60分の間の前記混合物の硬化、
を含有するプロセスによって作成される。
【0094】
本発明の他の実施態様において、プロセスはまた、本発明によって作成されたラバー組成物からなるタイヤもしくは接地面を持つ硫黄硬化可能なラバーの部品を作成し、その部品を130℃から200℃の範囲の温度において加硫する、追加的なステップを含有する。
【0095】
適切な有機ポリマーおよび充填剤は当分野に良く知られており、数多くのテキストに記載されており、それらのうちの二つの例は、The Vanderbilt Rubberr Handbook、R.F.Ohm編集、(R.T.Vanderbilt Company,Inc.,Norwalk,Connecticut,1990)、および、Manual for the Rubber Industry,T.Kempermann,S. KochおよびJ.Sumner編集(Bayer AG,Levekusen,Germany,1993)を含む。適切なポリマーの代表例は、溶液重合スチレンブタジエンラバー(sSBR)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、天然ラバー(NR)、ポリブタジエン(BR)、エチレンプロピレンコポリマーおよびter−ポリマー(EP、EPDM)、ならびにアクリロニトリルブタジエンラバー(NBR)を含む。ラバー組成物は、少なくとも一つのジエン系エラストマー、もしくはラバーからなる。適切な共役ジエンは、イソプレンおよび1,3−ブタジエンであり、適切なビニル芳香族化合物はスチレンおよびα−メチルスチレンである。このように、ラバーは硫黄硬化可能なラバーである。そのようなジエン系エラストマーもしくはラバーは、たとえば、シス−1,4−ポリイソプレンラバー(天然および/もしくは合成の、好ましくは天然のラバー)、エマルション重合製造スチレン/ブタジエンコポリマーラバー、有機溶液重合製造スチレン/ブタジエンラバー、3,4−ポリイソプレンラバー、イソプレン/ブタジエンラバー、スチレン/イソプレン/ブタジエンter−ポリマーラバー、シス−1,4−ポリブタジエン、中ビニルポリブタジエンラバー(35パーセントから50パーセントビニル)、高ビニルポリブタジエンラバー(50パーセントから75パーセントビニル)、スチレン/イソプレンコポリマー、エマルション重合製造スチレン/ブタジエン/アクリロニトリルter−ポリマーラバーならびにブタジエン/アクリロニトリルコポリマーラバー、の少なくとも一つから選択される。比較的汎用の、20パーセントから28パーセント結合スチレンのスチレン含量のエマルション重合由来のスチレン/ブタジエン(eSBR)、もしくは、いくつかの用途には、中程度から比較的高い結合スチレン含量、すなわち、30パーセントから45パーセントの結合スチレン含量を有したeSBRが、用いられるべきである。ter−ポリマー中に2から40重量パーセントの結合アクリロニトリルを有したエマルション重合作成のスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルter−ポリマーラバーはまた、ジエン系ラバーとして本発明における使用が意図される。
【0096】
溶液重合作成SBR(sSBR)は典型的には、結合スチレン含量が5から50パーセントの範囲であり、好ましくは9から36パーセントである。ポリブタジエンエラストマーは、汎用的に、たとえば、少なくとも90パーセントのシス−1,4含量を有していると特徴付けられるであろう。
【0097】
適切な充填剤物質の代表例は、シリカ(焼成および沈降)、二酸化チタン、アルミノケイ酸塩、アルミナのような、金属酸化物、粘土、タルクを含むシリカ物質、ならびにカーボンブラックを含む。微粒子の沈降シリカはまた、しばしばそのような目的、特にシリカがシランとの結合に用いられるときに、に用いられる。いくつかの例では、シリカとカーボンブラックの組み合わせが、タイヤの接地面のようなさまざまなラバー製品の強化充填剤として用いられる。アルミナは、単独でもシリカと組み合わせてでも用いられ得る。用語「アルミナ」はここでは酸化アルミニウムもしくはAlとして記載され得る。充填剤は、水和物もしくは無水物であり得る。アルミナをラバー組成物中で用いる事は、たとえば、米国特許5,116,886号、欧州特許631,982号において見られる。
【0098】
本発明の他の実施態様において、ブロック化メルカプトシランは、充填剤粒子と予備混合、もしくは予備反応され、またはラバーおよび充填剤の加工中または混合段階において、ラバー混合物へと添加される。もし、シランと充填剤とが、ラバーおよび充填剤の混合中にもしくは加工段階でラバー混合物中へ別々に添加されるなら、ブロック化メルカプトシランはその場で(in situ)充填剤と結合すると考えられる。
【0099】
加硫したラバー組成物は、合理的に高いモジュラスと高い耐摩耗性に寄与するのに充分な量の充填剤を含有すべきである。混合された充填剤の重量は約5から100phrという低さであるが、より好ましくは25phrから85phrである。
【0100】
本発明の他の実施態様において、沈降シリカは充填剤として用いられる。シリカは、窒素ガスを用いて計測される、好ましくは40から600m/gの範囲の、より好ましくは50から300m/gの範囲の、BET表面積を有する事で特徴付けられる。シリカは典型的には、100から350の範囲の、より通常には、150から300の、フタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有する事によって特徴付けられる。さらに、シリカは、前述のアルミナおよびアルミノケイ酸塩と同様、100から220の範囲のCTAB表面積を有すると予想される。CTAB表面積は、pH9の臭化セチルトリメチルアンモニウムによって評価されるような外部表面である。この方法はASTM D 3849に記載される。
【0101】
水銀多孔度表面積は、水銀ポロシメトリーによって決定される特定の表面積である。その技術のために、揮発物を取り除くための温度処理ののち、水銀はサンプルの孔に浸透させられる。セットアップ条件は100mgの試料を用いて適切に記載され、環境大気圧(周囲環境から2000バールの圧力測定範囲)で、2時間、105℃の間に揮発物が取り除かれる。そのような評価は、ASTM公報39ページ(1959)のWinslow,Shapiro記載の方法、もしくはDIN66133に従って実施される。そのような評価のため、CARLO−ERBA Porosimeter2000が使用されるかも知れない。シリカの平均水銀多孔度の特定の表面積は100から300m/gの範囲である。
【0102】
そのような水銀多孔度評価による、シリカ、アルミナ、およびアルミノケイ酸塩の適切な細孔径分布は:その孔の5%もしくはそれ以下が、約10nm以下の直径を有し、その孔の60パーセントから90パーセントが、10から100nmの直径を有し、その孔の10パーセントから30パーセントが100から1000nmの直径を有し、その孔の5パーセントから20パーセントが約1000nmより大きい直径を有する、とここでは考えられる。
【0103】
シリカは、電子顕微鏡によって決定されるように、たとえば0.01から0.05μmの範囲の平均素粒子径を有すると予想されるが、シリカ粒子がサイズとして、より小さくもしくは場合によってより大きい可能性がある。PRG Industriesからの、HI−SIL 210,243などの呼称を持つHI−SILの商標によるもの;Rhone−Poulencから入手可能な、たとえばZEOSIL 1165MPの呼称によるシリカ;Degussaから入手可能な、たとえばVN2およびVN3などの呼称によるシリカ;Huberから市販される、たとえばHUBERSIL8745の呼称を持つシリカのような、種々の市販のシリカは、本発明での使用を考えても良い。
【0104】
本発明の他の実施態様において、シリカ、アルミナおよび/もしくはアルミノケイ酸塩のようなシリカ充填剤とカーボンブラック強化顔料との両方を含有するラバー組成物にとって、強化顔料としてのシリカによってまず強化されることが望まれ、そのようなシリカ充填剤のカーボンブラックに対する重量比が少なくとも3/1、好ましくは少なくとも10/1、そして、3/1から30/1の範囲にあることがしばしば好ましい。充填剤は15から95重量パーセントの沈降シリカ、アルミナ、および/もしくはアルミノケイ酸塩、そして対応する5から85重量パーセントのカーボンブラックからなり、ここで、カーボンブラックは80から150の範囲のCTAB値を有する。代替的に、充填剤は60から95重量パーセントの、前記シリカ、アルミナ、および/もしくはアルミノケイ酸塩、そして対応する40から5重量パーセントのカーボンブラックからなる。シリカ充填剤とカーボンブラックは加硫ラバーの製造において予備混合もしくは一緒に混合できる。
【0105】
ラバー組成物は、種々の硫黄加硫可能な構成ラバーと種々の通常使用される添加物質とを混合するうような、ラバー配合分野において知られる方法によって配合される。そのような通常用いられる添加物質の例は、活性化剤、遅延剤、促進剤のような硬化助剤、オイルのような加工添加剤、粘着付与樹脂(tackifying resins)を含む樹脂、シリカ、可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、坑酸化剤およびオゾン劣化防止剤、素練り促進剤、および、たとえばカーボンブラックのような強化剤を含む。硫黄加硫可能な物質および硫黄加硫された物質(ラバー)の意図される使用に依存して、上述の添加剤は選択され、慣例的な量によって通常に用いられる。
【0106】
加硫は追加的な硫黄加硫剤の存在下で行われる。適切な硫黄加硫剤の例は、たとえば、最終的な生産的なラバー組成物混合ステップにおいて慣例的に添加される、たとえば、アミノジスルフィド、ポリマーポリスルフィド、もしくは硫化オレフィン付加物のような元素硫黄(遊離硫黄)もしくは硫黄供与加硫剤を含む。硫黄加硫剤(当分野で一般的に用いられる)は、0.4から3phrの範囲の量で、ある状況では約8phrまで、1.5から2.5phrの範囲で、しばしば、好ましくは2から2.5phrで、生産的な混合段階に添加される。
【0107】
加硫促進剤、すなわち、追加的な硫黄供与体はここでも用いる事が出来る。それらがたとえば、ベンゾチアゾール、アルキルチウラムジスルフィド、グアニジン誘導体、およびチオカーバメートのようなタイプのものであることが、好まれる。そのような促進剤の代表はたとえば、メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、ベンゾチアゾールジスルフィド、ジフェニルグアニジン、ジチオカルバメート亜鉛、アルキルフェノールジスルフィド、キサント酸ブチル亜鉛、N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N−オキシジエチレンベンゾチアゾール−2−スルフェンアミド、N,N−ジフェニルチオウレア、ジチオカルバミルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピルベンゾチオゾール−2−スルフェンアミド、2−メルカプトトルイミダゾール亜鉛、ジチオビス(N−メチルピペラジン)、ジチオビス(N−ベータ−ヒドロキシエチルピペラジン)、およびジチオビス(ジベンジルアミン)であるが、それらに限定されない。他の追加的な硫黄供与体はたとえば、チウラムおよびモルフォリン誘導体であり得る。そのような供与体の代表はたとえば、ジモルフォリンジスルフィド、ジモルフォリンテトラスルフィド、テトラメチルチウラムテトラスルフィド、ベンゾチアジル−2,N−ジチオモルフォリド、チオプラスト、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、およびジスルフィドカプロラクタムであるが、それらに限定されない。
【0108】
促進剤は、加硫に必要な時間および/もしくは温度を制御し、加硫の性質を改善するために用いられる。一つの実施態様において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が用いられ得る。慣例としてそして好ましくは、一次促進剤は0.5から4phr、好ましくは0.8から1.5phrの範囲の総量で用いられる。活性化し加硫の性能を向上するために、一次および二次促進剤の組み合わせを使用することが出来、二次促進剤はより少ない量(0.05から3phr)で用いる。作用遅延促進剤もまた用いる事が出来る。加硫遅延剤もまた用いても良いだろう。適切な促進剤のタイプは、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカーバメート、およびキサンテートである。好ましくは、一次促進剤はスルフェンアミドである。もし二次促進剤を用いるなら、二次促進剤は好ましくは、グアニジン、ジチオカーバメート、もしくはチオウラム化合物である。
【0109】
もし用いるとするならば、粘着付与樹脂の典型的な量は、0.5から10phr、通常は1から5phrを含有する。加工助剤の典型的な量は1から50phrを含有する。そのような加工助剤はたとえば、芳香族の、ナフテン酸の、および/もしくはパラフィンの加工オイルを含む。坑酸化剤の典型的な量は1から5phrを含む。代表的な坑酸化剤は、たとえば、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、および、Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344−46ページに開示されるような他の物であり得る。坑酸化剤の典型的な量は1から5phrを含有する。脂肪酸は、もし用いられるならステアリン酸を含み、典型的な量は0.5から3phrを含有する。酸化亜鉛の典型的な量は2から5phrを含有する。ワックスの典型的な量は1から5phrを含有する。しばしばマイクロクリスタリンワックスが用いられる。素練り促進剤の典型的な量は0.1から1phrを含む。典型的な素練り促進剤は、たとえば、ペンタクロロチオフェノールおよびジベンザミドジフェニルジスルフィドであり得る。
【0110】
本発明のさらに他の実施態様において、本発明のゴム組成物をさまざまな目的に用いる事が出来る。たとえば、それはさまざまなタイヤ合成物に持ちることが出来る。そのようなタイヤは、当業者にとって明白なよく知られたさまざまな方法によって、作られ、成型され、型に入れられ、そして硬化される。
【0111】
すべての引用された参照は、本願の関連物としてここに組み入れられる。
【0112】
本発明は、下記の実施例を参照する事により、より良く理解されるであろう。ここで、部およびパーセントは他に示されない限り重量部および重量パーセントである。
【実施例】
【0113】
比較例A
3−(オクタノイルチオ)−1−プロピルトリエトキシシランの作成
物理的スターラー、添加ロート、サーモカップル、加熱マントル、N注入口、および温度コントローラを備えた、12リットルの三口丸底フラスコに、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(1,021グラム、3.73モル、General Electric CompanyからSILQUEST(登録商標)A−1891シランとして購入)、トリエチルアミン(433グラム)、およびヘキサン(3,000ml)を充填した。溶液はアイスバスで冷まされ、オクタノールクロリド(693グラム、4.25モル)が、添加ロートを介して、2時間にわたって添加された。塩酸の添加が完結した後、混合物は、最初に0.1μmフィルターを通して、そして次に0.01μmフィルターを通しての2回、加圧フィルターでろ過され、塩が取り除かれた。残った黄色の液体は真空蒸留され、透明でとても明るい黄色の液体として、1,349グラムのオクタノイルチオプロピルトリエトキシシランを得た。収率は87パーセントであった。
【0114】
実施例1
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサンの作成
この実施例は、二つのビニル基を有したシランからの、中間産物であるチオアセタートシランの形成を介した、チオカルボキシラートアルコキシシランの作成を例証する。
【0115】
(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンの作成はヒドロシリル化によって行われた。マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、コンデンサー、および気体吸入口を備えた、5リットルの三口丸底フラスコに、トリビニルシクロヘキサン(2,001.1グラム、12.3モル)およびVCAT触媒(1.96グラム、0.01534グラム白金)が充填された。チューブがシランの表面より下にある気体吸入口によって、空気を泡立てながらビニルシランへ入れた。反応混合物は110℃に温められ、トリメトキシシラン(1,204グラム、9.9モル)は3.5時間にわたって添加された。反応混合物の温度は最高値130℃まで増加した。反応混合物は室温に冷まされ、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(3グラム、0.004モル)が添加された。反応混合物は122℃および1mmHgにおいて蒸留され、1,427グラムの(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンを提供する。収率は51パーセントであった。
【0116】
(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンはエステル交換によって作成された。マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、ト字管、および、コンデンサー、ならびに窒素注入口を備えた、3リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリメトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサン(284グラム、2.33モル)、ナトリウムエトキシド・エタノール溶液(49グラムの21%ナトリウムエトキシド、Aldrich Chemicalより購入)およびエタノール(777グラム、16.9モル)を充填した。反応混合物は温められ、メタノールとエタノールは大気圧における蒸留により取り除かれた。粗生成物はその後、106℃、0.4mmHgという減圧において蒸留され、675グラムの産物で89パーセントの収率を提供した。
【0117】
(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサンはチオ酢酸をジビニルシランへ添加する事によって作成された。マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、コンデンサー、気体注入口、および水酸化ナトリウムスクラバーを備えた、1リットル三口丸底フラスコに、チオ酢酸(210グラム、2.71モル)が充填された。(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサン(400グラム、1.23モル)は30分にわたり、室温で、添加ロートを介してゆっくりと添加された。反応は発熱性の反応であった。混合物の温度は94.6℃に上昇した。混合物は2.5時間かく拌され38.8℃まで冷された。追加的なチオ酢酸(10グラム、0.13モル)が添加され、わずかな発熱反応が観察された。反応混合物は25℃で終夜(18時間)かく拌された。分析は、反応混合物が2パーセント以下のチオ酢酸を有している事を示した。その全体的な純度は91パーセントであった。反応混合物は、減圧下でクーゲル装置によって蒸留する事でさらに精製された。
【0118】
ジメルカプトシランである中間産物は、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサンからアセチル基を取り除くことによって作成された。マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、ト字管、および、コンデンサー、10段Oldershawカラム、ならびに窒素注入口を備えた5リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサン(2,000グラム、4.1モル)、エタノール(546.8グラム、11.8モル)およびナトリウムエトキシド・エタノール溶液(108グラムの21%ナトリウムエトキシド・エタノール溶液)を充填した。反応混合物のpHは約8であった。反応混合物は、24時間、88℃に温められ、酢酸エチルおよびエタノールが反応混合物から取り除かれた。二度、エタノール(1リットル)が混合物へと添加され、21%ナトリウムエトキシド・エタノール溶液(21グラム)の添加によって、反応混合物のpHが約10にまで上昇し、そして追加で6.5時間温められた。反応混合物は冷され、加圧ろ過された。反応混合物は、95℃以下の温度と1mmHGの圧力においてストリップされた。ストリップされた産物はろ過され(2−トリエトキシシリルエチル)ビス(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン(1398グラム、3.5モル、86%の収率)を提供した。
【0119】
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサンは、ビスメルカプトシランのアセチル化によって作成された。マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、アイス/ウォーターバス、添加ロート、および、コンデンサー、を備えた5リットルの三口丸底フラスコに、(2−トリエトキシシリルエチル)ビス(2−メルカプトエチル)シクロヘキサン(1010.6グラム、2.56モル)、トリエチルアミン(700グラム、6.93モル)およびメチレンクロライド(1000グラム)を充填した。プロピオニルクロライド(473.8グラム、5.12モル)が、かく拌された反応混合物に1.5時間にわたって添加された。反応混合物の温度は50℃にまで上昇した。追加的なプロピオニルクロライド(45.4グラム、0.49モル)が添加された。反応混合物はろ過され、塩が500mlのメチレンクロライドと混合され、蒸留水で3回、飽和食塩水で2回、洗浄された。有機相は、無水硫酸マグネシウム上で乾燥され、124℃、減圧下において、揮発性化合物を取り除くためにストリップされた。ストリップされた産物(1196グラム、2.36モル)はGC/MS、NMR、およびLCによって分析され、収率は92パーセントであった。
【0120】
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサンは以下の構造を有する。
【化1】

【0121】
実施例2および3
低転がり抵抗のタイヤ接地面調合物におけるシランの使用
表1に記載されるような低転がり抵抗の乗用車用タイヤ接地面調合物のモデルと混合手順とは、本発明のシランの代表例を評価するために用いられた。実施例1のシランは後述のように、1690ml(103cu.in.)のチャンバ容量の「B」BANBURY(登録商標)(Farrell Corp.)ミキサーにおいて混合された。ラバーの混合は2ステップで行われた。ミキサーを80rpmにし、冷却水を71℃にして、ミキサーを起動した。ラバーポリマーはミキサーに添加され、30秒間ラムダウン(ram down)混合された。シランおよびオイルを除く、表1のマスターバッチ1のシリカおよび他の成分がミキサーに添加され、60秒間ラムダウン混合された。ミキサーの速度が35rpmに減ぜられ、そしてマスターバッチ1のシランおよびオイルがミキサーに添加され、60秒間ラムダウン混合された。ミキサー口(mixer throat)は塊を落とされ、成分は温度が149℃に達するまでラムダウン混合された。成分は追加的に3分30秒間混合された。ミキサーの速度は、温度が152℃と157℃に維持されるように調整された。ラバーは投げ下ろされ(ミキサーから取り出され)、約85℃から88℃にセットされたロールミルの上でシートが形成され、その後、室温に冷まされた。
【0122】
第二のステップにおいて、マスターバッチ1はミキサーに再び充填された。ミキサーの速度は80rpmであり、冷却水は71℃で、そしてバッチの圧は6MPaにセットされた。マスターバッチ1は30秒間ラムダウン混合され、マスターバッチ1の温度は149度にまでされ、ミキサーの速度は32rpmに減ぜられた。酸化亜鉛およびステアリン酸が添加され(マスターバッチ2)、ラバーは3分20秒、152℃と157℃の間の温度で混合された。混合中、(もし必要なら)トリメチロールプロパンが添加された。混合の後、ラバーは投げ下ろされ(ミキサーから取り出され)、約85℃から88℃にセットされたロールミルの上でシートが形成され、その後、室温に冷された。
【0123】
ラバーマスターバッチと硬化剤は、48℃と52℃の間に温められた15cm×33cmの2ロールミルにおいて混合された。硫黄と促進剤はラバーに添加され(マスターバッチ1と2)、ロールミル上で完全に混合され、シートを形成させた。シートは、硬化される前に、室温にて24時間冷された。硬化条件は160℃で20分間であった。
【0124】
実施例1のシランは、上述の手順によってタイヤ接地面調合物へと配合された。実施例1で作成されたシランの性能は、従来技術において作成されたシラン、ビス−(3−トリエトキシシリル−1−プロピル)ジスルフィド(TESPD)、および比較例Aの性能と比較された。試験手順は下記のASTM法に記載される:
ムーニースコーチ ASTM D1646
ムーニー粘度 ASTM D1646
振動ディスクレオメーター(ODR)
ASTM D2084
貯蔵モジュラス、ロスモジュラス、
張力および伸長 ASTM D412およびD224
DIN磨耗 DIN手順53516
発熱性 ASTM D623
パーセント永久変形 ASTM D623
ショアA硬さ ASTM D2240
【0125】
この手順の結果は以下の表1で一覧できる。
【0126】
【表1】

【0127】
表1からのデータは、粘着摩擦改善の指標であるdeltaリバウンド、および、摩耗改善の指標であるトルクにおける改善を示し、一方で、トリメチロールプロパンが活性化剤として加えられた場合、他の加工性能および物理性能を維持している。
【0128】
実施例4および5
表2に記載のラバー組成物が実施例2および3の手順に従って作成された。表2からのデータは二つの比較例DおよびEを超えるdeltaリバウンドにおける改善を示す。
【0129】
【表2】

【0130】
実施例6
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサンの作成
この実施例は、二つのビニル基を有したシランとチオ酸からのチオカルボキシラートアルコキシシランの作成を例証する。マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、コンデンサー、気体注入口、および水酸化ナトリウムスクラバーを備えた、3リットル三口丸底フラスコに、チオオクタン酸(780.1グラム、4.87モル)を充填した。チューブがチオ酸の表面よりも低い気体注入口によって、空気を泡立てながらチオ酸へと入れた。(2−トリエトキシシリルエチル)−ジビニルシクロヘキサン(755.0グラム、2.31モル)が、添加ロートによって32分間にわたってゆっくりとチオ酸へと添加された。添加は22.3℃において始まり、わずかな発熱反応が起こり、温度が34.9℃に上昇した。反応混合物は、3時間にわたって84.8℃までゆっくりと温められた。ジ−tert−ブチルペルオキシド(1.1グラム)が添加され、2時間かく拌された。2,2’−アゾイソブチロニトリル(1.2グラム、Aldrich Chemicalからのもの)が添加され、混合物はさらに4.4時間、85℃で温められた。チオオクタン酸(32.4グラム)が減圧下(0.5mmHg)で取り除かれ、温度が167℃に上昇し、1,472.1グラムの産物を提供した。13CNMRによる分析は、95%の反応がチオオクタン酸と(2−トリエトキシシリルエチル)ジビニルシクロヘキサンのビニル基との間に起きた事を示した。
【0131】
実施例7
(2−トリエトキシシリルエチル)−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサン
この実施例は、二つのビニル基を有したシランとチオ酸からのチオカルボキシラートアルコキシシランの作成を例証する。マグネチックスターラーバー、温度プローブ/コントローラ、加熱マントル、添加ロート、コンデンサー、気体注入口、および水酸化ナトリウムスクラバーを備えた、3リットル三口丸底フラスコに、チオプロパン酸(591.8グラム、6.49モル)が充填された。チューブがチオ酸の表面よりも低い気体注入口によって、空気を泡立てながらチオ酸へと入れた。(2−トリエトキシシリルエチル)−ジビニルシクロヘキサン(1052.0グラム、3.22モル)が、添加ロートによって、15分間にわたってチオ酸に添加された。添加は21.0℃において始まり、発熱反応が起こって、温度を86.7℃に上昇された。70分後、反応混合物は、86℃の温度を保って、さらに20分間温められた。2,2’−アゾイソブチロニトリル(1.2グラム、Aldrich Chemicalからのもの)が添加され、混合物は1時間、86℃で温められた。ジ−tert−ブチルペルオキシド(2.0グラム)が充填され、反応混合物は7時間、86℃で温められた。チオプロパン酸は減圧下(0.5mmHg)で取り除かれ、温度が70度に上昇し、産物を提供した。
【0132】
上の記述は多くの具体例を含んでいるが、これらの具体例は発明の限定と解釈されるべきでなく、単にそれらの好ましい実施態様の例示として取られるべきである。当業者なら、ここに添付された請求項によって定義される、本発明の範囲と精神に含まれる、多くの他の実施態様を想像する事ができよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物であって、式1:
[R−Y−S(CH−G−(CH−(SiX) (1)
を有し、
ここで、Yの各々が多価の種(Q)zA(=E)であり、ここで不飽和のヘテロ原子(E)に結合する原子(A)は硫黄に結合し、それは次に基−(CHG(CH−を介してケイ素原子へと結合し;
Rの各々が、水素、直鎖の、環状のもしくは分岐の、アルキル、アルケニル基、アリール基、およびアラルキル基から独立して選択され、それぞれのRは約18までの炭素原子を含有しており;
Gの各々が、アルカン、アルケン、もしくはアラルカンの置換によって誘導される、3から30の炭素原子の三価のもしくは多価の炭化水素基、または2から29の炭素原子の三価のもしくは多価のヘテロカーボン基からなる群から独立して選択され、ただし、Gは環状構造(環)を含有しているという条件であり;
の各々が、−Cl、−Br、RO−、RC(=O)O−、RC=NO−、RNO−もしくはRN−からなる加水分解性基のセットから独立して選択され、各々のRは約18までの炭素原子を有し;
およびXの各々が、RおよびXのために列挙された要素からなる群から独立して選択され;
Qの各々が、酸素、硫黄、もしくは(−NR−)から独立して選択され;
Aの各々が、炭素、硫黄、リン、もしくはスルホニルから独立して選択され;
Eの各々が、酸素、硫黄、もしくはNRから独立して選択され;そして
kが1から2であり;m=1から5であり;n=1から5であり;rが2から4であり;zが0から2であり;ただしAがリンであるならばKが2であるという条件である、化合物。
【請求項2】
Yが、−C(=NR)−;−SC(=NR)−;−SC(=O)−;(−NR)C(=O)−;(−NR)C(=S)−;−OC(=O)−;−OC(=S)−;−C(=O)−;−SC(=S)−;−C(=S)−;−S(=O)−;−S(=O)−;−OS(=O)−;(−NR)S(=O)−;−SS(=O)−;−OS(=O)−;(−NR)S(=O)−;−SS(=O)−;(−S)P(=O)−;−(−S)P(=O)−;−P(=O)(−);(−S)P(=S)−;−(−S)P(=S)−;−P(=S)(−);(−NRP(=O)−;(−NR)(−S)P(=O)−;(−O)(−NR)P(=O)−;(−O)(−S)P(=O)−;(−O)P(=O)−;−(−O)P(=O)−;−(−NR)P(=O)−;(−NRP(=S)−;(−NR)(−S)P(=S)−;(−O)(−NR)P(=S)−;(−O)(−S)P(=S)−;(−O)P(=S)−;−(−O)P(=S)−;および−(−NR)P(=S)−、からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、クロロ、およびアセトキシを含むXからなる群から選択され、そして、XおよびXが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、フェノキシ、ベンジルオキシ、ヒドロキシ、クロロ、およびアセトキシ、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、sec−ブチル、フェニル、ビニル、シクロヘキシル、および、ブチル、ヘキシル、オクチル、ラウリル、および、オクタデシルからなる群からそれぞれ独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Gが、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキセン、リモネン、もしくはトリビニルシクロヘキサンから誘導可能な構造、またはシクロペンタン、テトラヒドロシクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロデカン、シクロドデカン、任意のシクロドデセン、任意のシクロドデカジエン、シクロヘプタン、任意のシクロヘプテン、および任意のシクロヘプタジエンの三置換によって誘導可能な任意の構造;三置換された、シアヌール酸塩、ピペラジン、シクロヘキサノン、およびシクロヘキセノン;三置換されたベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンおよびナフタレンから誘導可能な任意の構造である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Rが、水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、ドデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、フェニル、ベンジル、フェネチル、メタリル、およびアリルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Qの各々が酸素、硫黄、およびNRから独立して選択され、Aが炭素であり、そしてEが酸素、硫黄、もしくはNRから独立して選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Yが、−C(=NR)−、−SC(=NR)−、−NRC(=NR)−、−C(=O)−、−SC(=O)−、−OC(=O)−、−NRC(=O)−、−C(=S)−、−NRC(=S)−、−SC(=S)−からなる群から選択される、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
Yが−C(=O)−である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
mが2〜4でありnが1〜4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
mの各々が2〜4でありnが2〜4である、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
mの各々が2であり、nが2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Gの各々が、少なくとも一つの環と1から18までの炭素原子とを有している置換炭化水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
Gの各々が、置換された、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロドデカン、およびベンゼンからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Rの各々が、1から8までの炭素原子の直鎖アルキル基からなる群から選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
Rの各々が、水素、メチル、エチル、およびプロピルからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
分子内のR基中の炭素原子の合計が、2から16までである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
Gの各々が、三置換のシクロヘキサンもしくはベンゼン、からなる群から選択され、Rが1から8の炭素原子を有した直鎖アルキル基であり、r=2、ならびにm=1もしくは2、ならびにn=1もしくは2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物が、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)ベンゼン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)ベンゼン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソヘプチル)ベンゼン、1−(2−トリプロポキシシリルメチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)ベンゼン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(2−チア−3−オキソペンチル)ベンゼン、1−(2−ジエトキシメチルシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)ベンゼン、4−(2−ジメチルエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チアー4−オキソペンチル)ベンゼン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(2−チア−3−オキソペンチル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−2,4−ビス−(2−チア−3−オキソペンチル)シクロヘキサン、2−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,4−ビス−(2−チア−3−オキソペンチル)シクロヘキサン、4−(2−ジエトキシメチルシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサン、4−(2−ジメチルエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−2,4−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサン、2−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,4−ビス−(3−チア−4−オキソヘキシル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソノニル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−2,4−ビス−(3−チアー4−オキソノニル)シクロヘキサン、2−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,4−ビス−(3−チア−4−オキソノニル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−2,4−ビス−(3−チア−4オキソウンデシル)シクロヘキサン、2−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,4−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサン、4−(2−ジメチルエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソウンデシル)シクロヘキサン、4−(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3−チア−4−オキソ−5−アザ−5−メチルドデシル)シクロヘキサン、(2−トリエトキシシリルエチル)−1,2−ビス−(3,5−ジチア−4−オキソドデシル)シクロヘキサン、1−(2−トリエトキシシリルエチル)−3,5−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)メシチレン、および6−(2−トリエトキシシリルプロピル)−2,2−ビス−(3−チア−4−オキソペンチル)シクロヘキサノン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物を作成するための方法であって、フリーラジカル添加の反応条件において、チオ酸とアルケニル官能性シランとを反応させる事を含有する、方法。
【請求項20】
前記チオ酸がチオカルボン酸である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記反応条件が、少なくとも約160℃である温度を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記反応がUV照射によって触媒される、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記反応がフリーラジカル開始剤の存在下で行われる、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記フリーラジカル開始剤が、過酸、過酸のエステル、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、過酸化アセタール、過酸化ケタール、アゾビスイソブチロニトリル、1,1−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、および、アゾ−tert−ブタンからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
溶媒の存在下で、反応が実質的に完結するように進行するのに充分な反応条件において、チオ酸のアルカリ金属塩と、ハロアルキルシランもしくはハロアルキルエトキシシランとを反応させることを含有する、請求項1に記載の化合物を作成するための方法。
【請求項26】
前記溶媒がアルカノールである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アルカノールが、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、メタノール、およびエタノールからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記溶媒が非プロトン性溶媒である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記溶媒が、グリム、ジグリム、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド;N,N−ジメチルアセトアミド;ジメチルスルホキシド;N−メチルピロリジノン;またはヘキサメチルホスホルアミドからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記反応条件が約60℃から約160℃までの温度を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の化合物を含む、ラバー組成物。
【請求項32】
ラバー組成物であって:
a)式1のブロック化メルカプトシラン;
b)有機ポリマー;
c)充填剤;そして任意選択で、
d)他の添加剤および硬化剤、
を含有する、組成物。
【請求項33】
硬化ラバー組成物を作成するためのプロセスであって:
(A)少なくとも一つの予備的な混合ステップにおける;
(i)共役ジエンホモポリマーおよび共役ジエンコポリマー、ならびに少なくとも一つの共役ジエンおよび芳香族ビニル化合物の共重合体、から選択される、100重量部の少なくとも一つの硫黄加硫可能なラバー
(ii)5から100phr(100ラバー当たりの1部)の、好ましくは25から80phrの、微粒子充填剤、ここで好ましくは充填剤は1から85重量パーセントのカーボンブラック、
(iii)0.05から20重量部の少なくとも一つのブロック化メルカプトシランの充填剤、
の熱力学的な混合ステップであって、そのような混合ステップが、140℃から200℃の温度、代替的に140℃から190℃の温度での、2から20分の間、代替的に4から15分の間の、全混合時間である、熱力学的な混合ステップ、
(B)そのすぐあとの、最終的な熱力学的な混合ステップにおける、50℃から130℃の温度での、ラバーを混合するのに充分な時間の、好ましくは1から30分の間の、より好ましくは1から3分の間の、充填剤の約0.05から20重量部の少なくとも一つの脱ブロッキング剤と、0から5phrの硬化剤との順次的な混合;そして任意選択で
(C)130℃から200℃の温度での約5から60分の間の前記混合物の硬化、
を含有する、プロセス。
【請求項34】
自由流動性充填剤組成物であって、少なくとも一つのシランと微粒子充填剤とを含有し、ここで前記シランは請求項1から選択される化学構造を有している、組成物。


【公表番号】特表2010−514764(P2010−514764A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544050(P2009−544050)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2007/026175
【国際公開番号】WO2008/085415
【国際公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【出願人】(508229301)モメンティブ パフォーマンス マテリアルズ インコーポレイテッド (120)
【Fターム(参考)】