ブロック型電力モジュール及び電力変換装置
【課題】組立工程の容易化を実現させるブロック型電力モジュール及び電力変換装置を提供する。
【解決手段】ブロック型電力モジュールは、端子の鉛直方向の長さが短縮されるので、寸法誤差または外力の影響が少なくなり、電力系統プリント基板とフレーム構造体110との組付作業の簡素化が図られる。また、電力変換装置1000では、機能毎に独立したモジュール(制御基板400、PFC回路のブロック型電力モジュール100、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール200)が構成されるので、かかるモジュールでは、其の構成が簡素な状態で完結され、組立て作業の容易化が図られる。
【解決手段】ブロック型電力モジュールは、端子の鉛直方向の長さが短縮されるので、寸法誤差または外力の影響が少なくなり、電力系統プリント基板とフレーム構造体110との組付作業の簡素化が図られる。また、電力変換装置1000では、機能毎に独立したモジュール(制御基板400、PFC回路のブロック型電力モジュール100、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール200)が構成されるので、かかるモジュールでは、其の構成が簡素な状態で完結され、組立て作業の容易化が図られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のブロック型電力モジュール及び電力変換装置に関し、特に、組立工程の容易化を図る際に好適にものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に係る種々の技術的要請を受け、プラグインハイブリッド自動車または電気自動車(以下、電気自動車等と呼ぶ)の技術開発が急速に進められている。かかる電気自動車等は、駆動輪の制御を行う動力用モータ、この他、燃料ポンプ又はパワーステアリング等の搭載装置に設けられる車載装置用モータ等を複数搭載させている。このうち、動力用モータには、大規模なバッテリユニット及びプラグイン充電装置が設けられる。そして、当該バッテリユニットは、プラグイン充電装置によって商用電力が充電電力に変換され、当該充電電力によって各々のユニットが蓄電される。尚、プラグイン充電装置は、車両にプラグインソケットが設けられ、当該プラグインソケットに家庭用コンセントが接続されることにより商用電力が入力される。一方、車載装置用モータ(パワーステアリング用モータ、パワーウィンドウ用モータ、フューエルモータ等)は、サブバッテリ及び降圧充電装置が設けられ、当該サブバッテリは、バッテリユニットの電力が降圧充電装置を介して蓄電される。これらの充電装置(特許請求の範囲における電力変換装置)は、入力された電力を変換させるパワースイッチング素子、パワースイッチング素子を駆動させるドライブ回路、入力電路を絶縁させるトランス回路を備え、当該トランス回路は、プラグイン充電装置の場合、家庭用コンセントと当該装置内の回路との絶縁が行われ、降圧用充電装置の場合、バッテリユニットと当該降圧用充電装置内の回路との絶縁が行われる。かかる充電装置は、人体に影響が出ないよう安全の確保のため確実な絶縁が要求される。また、プラグイン充電装置にあっては、近年、諸外国の安全規格などを準拠する為、絶縁規格に応じた回路構成が要求されている。
【0003】
また、かかるDC−DCコンバータ充電装置は、上述の如く、ドライブ回路とパワースイッチング素子との間にスイッチングトランスを備え、当該スイッチングトランスを介して双方の絶縁が確保されている。パワースイッチング素子は、樹脂モールドでパッケージされたパワー素子パッケージが広く用いられ、当該パワー素子パッケージは、パッケージ内外において絶縁距離が確保されている。かかるパワー素子パッケージは、図2(a)に示す如く、各リードによって内蔵されるパワースイッチング素子との導通を取り、リードを介して所定のプリント基板と接続される。パワースイッチは、スイッチング時に於ける導通又は遷移損失により発熱を伴う為、電源装置を構成するケース側ヒートシンクに固定され、発生した熱量をケース側ヒートシンクへ放熱させる。当該ケース側ヒートシンクは、放熱効果の高いアルミの鋳造加工で製作され、更に放熱効果を高める為、冷却流体との接触面積を拡大するフィン構造等の工夫が施されている。
【0004】
車載用の充電装置には、更に、PFC回路が構成され、当該PFC回路は、商用電源から供給される交流電力を直流電力へとへと変換させる。かかる回路は、交流電力をダイオードブリッジで全波整流し、フライバックコンバータにより電流入射角を拡大させ力率を改善し、これにより、直流変換を行なう。かかるPFC回路も先に述べたように、ケース側ヒートシンクに設置された回路であり、全波整流ダイオード、フライバックコンバータのパワースイッチング素子も同様に絶縁処理が必要となっている為、当該パワースイッチング素子の制御回路は、パワースイッチング素子から絶縁された回路構成が採用される。
【0005】
車載用の充電装置は、パワースイッチング素子の入力端子(ドレイン端子)には入力電源とほぼ同電位の電圧(例えばDC300V〜100V程度)が加わり、ソース端子には入力電源のマイナス側と同電位となっている。このため、プラグイン端子との接続端子における感電事故を防ぐため、適宜な絶縁処理が必要とされる。また、製品組立工程中または完成後に安全性の確認として耐圧試験が設けられている。併せて、交流電源は各国での安全規格(例えば北米であればUL)に準拠した絶縁距離や安全回路の設置などが各々要求される。
【0006】
これに対し、特開2008−235417号公報(特許文献1)では、パワー素子パッケージの替わりにパワースイッチング素子を直接実装させたパワーモジュール(特許請求の範囲における電力変換装置)が紹介されている。当該パワーモジュールは、電源・制御モジュールとパワー主回路モジュールとから構成される。このうち、電源・制御モジュールは、発振回路又はMOSFET等の微弱電力で駆動される実装領域と、電源トランス又は駆動回路等の比較的大電力を必要とする実装領域を具備している。一方、パワー主回路モジュールは、パワースイッチング素子と、パワースイッチング素子を実装させるプリント配線を積層させたベース基板と、所定の端子を具備するケース部材とをから構成され、ケース部材に配列された複数の端子は、電源・制御モジュールと異なる他の外部回路へと接続される。一方、ベース基板は、更に、所定数の端子を直立固定させる端子部が複数設けられ、当該端子の一端がプリント配線またはパワースイッチング素子に導通され、直立する他端が電源・制御モジュールの基板に形成された端子用ホールに挿通され、半田接続によって導通される。
【0007】
かかる構成によれば、パワースイッチング素子がベース基板上のプリント配線に直接実装されるので、当該ベース基板の実装密度が向上され、パワーモジュールの小型化が図られるとされている。
【0008】
また、特開2000−307056号公報(特許文献2)では、車載用半導体装置(特許請求の範囲における電力変換装置)が紹介されている。当該車載用半導体装置は、金属ベースと、金属ベースに積層されたパワーチップ基板と、パワーチップ基板に積層されたパワースイッチング素子と、外囲ケースと、外囲ケースに設けられた複数の端子と、制御基板とから構成され、外囲ケースに設けられた複数の端子は、各々、一端がパワースイッチング素子に導通され、他端が電源・制御モジュールの基板との導通部に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−235417号公報
【特許文献2】特開2000−307056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、ベース基板に設けられた直立する端子が3列以上とされるので、ケース部材に電源・制御モジュールを組付ける際、1列目の端子を電源・制御モジュールへ挿入させた後、直立端子に曲げモーメントを与えることで2列目の端子を電源・制御モジュールへ挿入させることは可能であるが、その後、残りの全ての列の端子を電源・制御モジュールへ挿入させることは困難である。
【0011】
また、かかる場合、直立する端子の長さに比例して、電源・制御モジュールと端子との組付けの難易度も向上するとの問題も生じる。
【0012】
更に、上述の如く、充電装置は、DC−DCコンバータ回路とPFC回路とから構成されるが、スイッチングトランス等の電路系基板(制御回路を除く基板)をDC−DCコンバータ回路及びPFC回路について同一の基板に実装させると、当該基板の規模拡大に伴い、電路系基板とケース部材との組付け作業が更に一層困難なものとされる。
【0013】
一方、特許文献2に係る技術では、スイッチングトランスの配置位置が明らかにされておらず、車載用充電装置の構成が具体化されていないため、スイッチングトランスを具備する車載用充電装置に適用させ得るものと認められない。また、DC−DCコンバータ回路及びPFC回路について同一の基板に実装させると、上述の課題と同様、当該基板の規模拡大に伴い、電路系基板とケース部材との組付け作業が更に一層困難なものとされる。
【0014】
本発明は上記課題に鑑み、組立工程の容易化を実現させるブロック型電力モジュール及び電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明では次のようなブロック型電力モジュールの構成とする。即ち、パワー半導体素子を実装させたパワー素子基板と、外周壁を形成するフレームの内部に前記パワー素子基板を収容させ前記フレームのうち少なくとも一辺の基板積層方向へ前記パワー半導体素子に導通された複数の端子を配列させたフレーム構造体と、前記パワー半導体素子に駆動信号を出力させるドライブ回路及び/又は電路を経由して前記パワー半導体素子に電力を供給させる電力供給回路を実装させた電力系統プリント基板とを備え、前記複数の端子は、前記フレームを構成する面のうち前記基板積層方向へ対向する面に固定端を有し、前記固定端から基板積層方向へ直線的に延在するものであって、前記電力系統プリント基板は、前記複数の端子に対応する端子用ホールが形成され、前記複数の端子を前記端子用ホールに挿通させつつ前記フレーム構造体へ積層されることとする。
【0016】
好ましくは、前記電力系統プリント基板の上層側に配置され前記ドライブ回路及び/又は前記電力供給回路を制御させる回路を実装させた制御基板を備えることとする。
【0017】
好ましくは、前記フレームは、前記複数の端子の一端を露出させ前記パワー素子基板にワイヤーボンディングさせるパワー素子側面と、前記固定端を有し前記パワー素子面のレベルより前記基板積層方向に形成された電力系統側面とを備えることとする。
【0018】
好ましくは、前記複数の端子は、前記フレームのうち第1のフレームに沿って直線状に1列、又は、前記第1のフレームに沿って直線状に1列且つ当該第1のフレームに平行な第2のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることとする。
【0019】
好ましくは、前記複数の端子は、更に、前記第1のフレームに対して略直角に配置される第3フレームに沿って直線状に1列、又は、前記第3のフレームに沿って直線状に1列且つ当該第3のフレームに平行な第4のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることとする。
【0020】
また、本発明では次のような電力変換装置の構成とする。即ち、上述した何れかの発明に記載のブロック型電力モジュールが、複数組み込まれて構成されることとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るブロック型電力モジュールによると、複数の端子がフレームに沿って配列されるので、当該端子による端子の列は、2列以内に抑えられる。従って、フレーム構造体に電力系統プリント基板を組付ける際、1列目の端子を電力系統プリント基板の端子用ホールへ挿入させた後、当該1列目の端子に曲げモーメントを与えることで2列目の端子を電力系統プリント基板の端子用ホールへの挿入が可能となり、これにより、組付け作業の容易化が図られる。加えて、複数の端子の固定端から当該端子の端部迄の長さも短縮されるので、寸法誤差または外力の影響が少なくなり、これにより、電力系統プリント基板とフレーム構造体との組付作業の簡素化が図られる。
【0022】
また、本発明に係る電力変換装置によると、機能毎に独立したモジュール(制御基板、PFC回路のブロック型電力モジュール、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール)が構成されるので、かかるモジュールでは、其の構成が簡素な状態で完結され、組立て作業の容易化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係るフレーム構造体の構成を示す図。
【図2】パワー素子パッケージとプリント配線に実装されたパワー半導体素子との配置の比較を示す図。
【図3】パワー素子パッケージのリード端子とフレームの端子との比較を示す図。
【図4】PFCユニットの電力系統プリント基板の構成を示す図。
【図5】PFCユニットのブロック型電力モジュールの構成を示す図。
【図6】パワー素子パッケージを採用した場合のプリント配線と本実施例に係るプリント配線との比較を示す図。
【図7】パワー素子パッケージを採用した場合の端子用ホールと本実施例に係る端子用ホールとのレイアウトの差異を示す図。
【図8】パワー素子パッケージを採用したPFCユニットと本実施例に係るPFCユニットとの断面構造の比較を示す図。
【図9】実施の形態に係るフレーム構造体の構成を示す図。
【図10】DC−DC変換ユニットの電力系統プリント基板の構成を示す図。
【図11】DC−DC変換ユニットのブロック型電力モジュールの構成を示す図。
【図12】本実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1に示す如く、PFC回路に係るフレーム構造体110は、複数のフレーム111によって構成され、当該フレーム111には、複数の端子112が配列されている。かかるフレーム構造体110は、図示の如く、複数のフレームによって空間111a,111b,111cが形成され、空間111aの内部には、パワー素子基板113が収容されている。
【0025】
図示の如く、フレーム111は、当該フレーム111を構成する面のうち基板積層方向(図3bのZ方向)へ対向する面(以下、基板当接面と呼ぶ)に複数の端子112bが配列される。複数の端子112bは、基板積層面に固定端を有し、当該固定端から基板積層方向へ直線的に延在支持されている。
【0026】
複数の端子112bは、フレームのうち所定の第1のフレームに沿って直線状に1列配列されることとしても良い。これにより、図4で説明される電力系統プリント基板120を組付ける際、複数の端子112bが一列のみしか配列されてないので、当該電力系統プリント基板120を容易に組付けることが可能となる。また、かかる第1のフレームに沿って直線状に1列、且つ、当該第1のフレームに平行な第2のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることとしても良い。かかる場合、1列目の端子111bを電力系統プリント基板へ挿入させた後、当該端子に曲げモーメントを与えることで2列目の端子111bが電力系統プリント基板120へ挿入され、当該組付け作業は容易に行なわれる。
【0027】
この他、複数の端子112bは、図1に示す如く、フレームのうち所定の第1のフレームに沿って直線状に1列配列され、且つ、第1のフレームに平行な第2のフレームへ沿って直線状に1列配列され、且つ、第1のフレームに対して略直角に配置される第3フレームに沿って直線状に1列配列されることとしても良い。かかる場合にあっても、電力系統プリント基板120との組付け作業は容易に行なわれる。更に、パワー素子基板113の全周(4辺)に複数の端子112bを配列させても良い。これによっても、平行な端子の列が2列以内とされるので、電力系統プリント基板120との組付け作業は容易に行なわれる。
【0028】
これらの複数の端子112bは、フレーム長の範囲で配置位置が自由に選択されるので、積層される電力系統プリント基板120との関係において、適宜なポジションにレイアウトすることが可能となり、また、互いの端子間の沿面距離を確保することが容易となる。また、沿面距離またはプリント配線の都合上、フレーム長の範囲内に配置できる端子数が飽和してしまうと、図1に示す如く、リード端子を延長させ、他のフレーム111に端子112bをレイアウトさせることも可能である。
【0029】
更に、図1を参照すると、フレーム構造体110には、固定部111dが複数形成されている。かかる固定部111dは、本実施の形態の場合、ボルト穴とされ、図示されないボルト及び被固定体の雌ネジによって、フレーム構造体110が図示されない被固定体に固定されることとなる。即ち、当該フレーム構造体110は、被固定体と着脱自在に固定されることとなり、これにより、フレーム構造体110を構成要素とするブロック型電力モジュールも、被固定体と着脱自在に固定されることとなる。
【0030】
パワー素子基板113は、図1に示す如く、アルミ基板(この他、アルミナ、窒化アルミ等であっても良い)上に絶縁層を形成させ、当該絶縁層の上層に銅箔等のプリント配線が積層されている。また、パワー素子基板113は、IGBT又はMOSFET等のパワー半導体素子113b、ダイオードブリッジを構成する半導体ダイオード113a、この他の整流素子113cを実装させている。これらの半導体素子は、通過電流に応じて発熱し、これによって発生した熱量がアルミ基板を介して被固定体へと放熱される。尚、パワー半導体素子113bをはじめとする電気的素子113a〜113cは、図示の如く、端子112の露出面112aと適宜にワイヤーボンディングされている。
【0031】
パワー素子パッケージでは、パッケージに所定数の端子が設けられているのに対し、かかるパワー素子基板では、パッケージの端子のような不要な端子が省略されるので、これに応じて、当該パワー素子基板の実装密度が向上し、装置の小型化が図られる。
【0032】
図2には、アルミ基板等の放熱性基板に実装されたパワー素子パッケージと、放熱基板上のプリント配線に直接実装されたパワー半導体素子との実装密度の比較が示されている。図2(a)を参照して、パワー素子パッケージPWPについて観察すると、当該パワー素子パッケージPWPは、パッケージ側ヒートシンクHSと、パッケージ側ヒートシンクHSに積層された絶縁層と、当該絶縁層に積層されたパワー半導体素子PWTと、当該パワー半導体素子PWTを内部に収容させるパッケージPACと、当該パッケージPACに設けられた複数のリード端子RDとから構成される。そして、パワー素子パッケージPWPは、パワー半導体素子PWTとリード端子RDとが内部でワイヤーボンディングされ、当該パッケージPACの内部に絶縁樹脂が含浸されている。
【0033】
かかるパワー素子パッケージPWPは、リード端子RDを互いに向き合わせて配置させる場合、端子間の絶縁距離D1とすると、パッケージPACに内蔵されるパワー半導体素子PWT同士の距離がD2とされる。
【0034】
一方、図2(b)を参照して、パワー素子パッケージPWTについて観察すると、直接プリント配線PRに実装されたパワー半導体素子PWTは、絶縁距離D1を必要とされるものの、パワー素子パッケージPWPにおけるワイヤーボンディング及びリード端子RDの水平方向の端子の構成が排除されるので、パワー半導体素子PWT同士の距離D3は、パワー素子パッケージPWPの場合の距離D2と比較して格段に短縮される。即ち、パワー素子基板113は、パワー半導体素子PWTを直接実装させる方が、上述の如く実装密度が高くなる。
【0035】
また、本実施の形態の場合、パワー素子基板113には、特開2008−235417号公報のような内部の直立端子を設けていないので、これによっても、基板の実装密度が向上する。
【0036】
図3には、アルミ基板等の放熱性基板に実装されたパワー素子パッケージと、放熱基板上のプリント配線に直接実装されたパワー半導体素子との端子の寸法誤差の比較が示されている。図3(a)に示す如く、パワー素子パッケージPWPのリード端子RDの場合、当該端子RDがL字型を成しているので、P1を支点とする誤差A(A=L1×θ1)と、P2を支点とする誤差B(B=L2×θ2)とが生じる。このため、リード端子RDの端部に基板の端子用ホールを挿入させようとすると、これらの誤差A,Bによって、基板の穴位置とリード端子RDの端部の位置とが一致できず、フレーム構造体110に基板120を組付けることが困難となる。また、かかるリード端子RDに外力が加わると、これらの支点P1,P2にて曲げモーメントによる変形が生じ、これによっても、基板の穴位置とリード端子RDの端部の位置とが一致できず、フレーム構造体110に基板120を組付けることが困難となる。
【0037】
一方、図3(b)に示す如く、本実施の形態に係る複数の端子112bでは、フレーム111によって支持される固定端が1箇所のみとされるので、当該端子112bの端部の位置に関する誤差が少なくなる。また、当該端子112bは、パッケージの規格として予め決定されているリード端子RDと異なり、板厚を自由に設定できるので、当該板厚を適宜に厚くすることにより、当該端子112bの端部の位置に関する誤差が少なくなる。更に、上述したフレーム111は、図示の如く、複数の端子112の一端を露出させパワー素子基板にワイヤーボンディングさせるパワー素子側面Spと、上述した固定端を有しパワー素子側面Spのレベルより高い基板積層方向Zに形成された電力系統側面Sqとが形成されている。そして、複数の端子112は、電力系統側面Sqを固定端とした状態にてフレーム111に配列されるので、固定端から端子112の端部迄の距離が短くなり、これによっても、当該端子112bの端部の位置に関する誤差が少なくなる。
【0038】
図4には、PFC回路に係る電力系統プリント基板の構成が示されている。かかる電力系統プリント基板120は、電路を経由してパワー半導体素子113bに電力を供給させる電力供給回路を実装させている。具体的に説明すると、電力系統プリント基板120は、プリント配線を適宜に積層させた回路基板121と、コイル122〜124と、リレー装置125と、各部に電気的に接続される端子126a〜126eと、過電流発生時に回路を遮断させるヒューズ127と、適宜なコンデンサ128a〜128eと、サーミスタ129とから構成されている。そして、当該電力系統プリント基板120は、プリント配線によって電路を形成させ、パワー素子基板113に実装されるパワー半導体素子113b等と協働して、PFC回路を構成させている。更に、
【0039】
電力系統プリント基板120は、複数の端子112に対応する端子用ホールHpが形成され、当該端子用ホールHpには、複数の端子112と導通される半田ランドが形成されている。そして、電力系統プリント基板120は、図5に示す如く、複数の端子112を端子用ホールHpに挿通させつつフレーム構造体110へ積層され、回路基板121にあってはビス止めされ、端子用ホールHpは複数の端子112と半田接続され、これにより、上述した構成の電力供給回路が複数の端子112を介してパワー半導体素子113bに導通されている。以下、フレーム構造体110と電力系統プリント基板120とから成る構成を、PFC回路のブロック型電力モジュール100と呼ぶ。
【0040】
図6(a)には、パワー素子パッケージを用いた場合のプリント配線が示されている。以下、電力系統プリント基板120に回路C1〜C4が実装され、パワー素子パッケージに配されたリード端子RDが各々回路C1〜C3に接続される場面について説明する。かかる場合、パワー素子パッケージPWPは、パワー素子基板113の中心寄りにレイアウトされるので、3本のリード端子RDもこれに応じて回路基板121の中心寄りにレイアウトされる。この時、リード端子RDは、各々の端子が近接した状態で連続して配列されているので、全てのリード端子RDが回路C1〜C3に各々接続されることとすると、図示の如く、リード端子RDから各々の回路に至るプリント配線が必要となり、回路素子の実装密度の低い配線領域ARが形成されてしまう。また、リード端子RDとの接続が不要な回路C4が配線領域ARに存在すると、当該配線領域ARは、プリント配線PRL2が回路C4を迂回する様に配線されるため、更に、其の面積を拡大させ、基板の実装密度を低下させてしまう。
【0041】
図6(b)には、本実施の形態に係るプリント配線が示されている。かかる場合にあっても、回路C1〜C3は、図6(a)と同位置にレイアウトされている。図を参照すると、フレーム111に配列された端子112は、フレームに沿った適宜な位置に設けられ、導通されるべき回路の近傍にレイアウトされている。即ち、端子112は、接続されるべき回路の直近に配置されるように、当該配置が最適化されている。これにより、図示の如く、所定の回路と端子112とは最短距離で導通され、プリント配線の長さが最小限に抑えられる。従って、かかる基板121では、不要なプリント配線が排除され、当該基板121の実装密度を向上させることが可能となる。また、リード端子RDとの接続が不要な回路C4が配線領域ARに存在していたとしても、導通されるべき所定の回路と端子112とは直近にレイアウトされるので、回路C4を迂回させるプリント配線を必要とせず、当該プリント配線の簡素化が図られ、基板121の実装密度を向上させることが可能となる。
【0042】
図7(a)には、パワー素子パッケージを用いた場合の回路基板が示されている。かかる場合、パワー素子パッケージPWPがパワー素子基板に3列以上配列されると、図示の如く、端子用ホールHpによって構成される穴の列が3列以上形成されてしまう。従って、フレーム構造体110に電力系統プリント基板120を組付ける際、1列目の端子(A1)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへ挿入させた後、当該1列目の端子(A1)に曲げモーメントを与えることで2列目の端子(A2)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへ挿入させることは可能であるが、その後、残りの全ての列の端子(A3,A4)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへ挿入させることは困難である。
【0043】
これに対し、本実施の形態に係るブロック型電力モジュールでは、図7(b)に示す如く、端子112がフレーム111に配列されるので、当該端子112による端子の列(B1,B2)は、2列以内に抑えられる。従って、フレーム構造体110に電力系統プリント基板120を組付ける際、1列目の端子(B1)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへ挿入させた後、当該1列目の端子(B1)に曲げモーメントを与えることで2列目の端子(B2)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへの挿入が可能となり、これにより、組付け作業の容易化が図られる。また、図示の如く、端子の列B1とB2とに対して垂直に配される端子の列(B3)は、端子用ホールの径寸法を適宜に設定することで、回路基板121へ容易に組付けられる。
【0044】
図8には、パワー素子パッケージを用いたブロック型電力モジュールの断面と、本実施の形態に係るブロック型モジュールの断面との比較が示されている。図8(a)に示す如く、パワー素子パッケージを用いた場合、パッケージの高さH01が厚いので、ブロック型電力モジュールの内部空間の高さH02も高くなり、更に、リード端子RDの長さH03も、これに応じて長くなる。この場合、直立する端子の長さH03に比例して、電力系統プリント基板120と端子112との組付け作業は困難となる。
【0045】
これに対し、本実施の形態に係るブロック型電力モジュールでは、パッケージPACが省略されているので、ブロック型電力モジュールの内部空間の高さH12も低くなり、これに応じて、端子112の鉛直方向の長さが短くなる。また、上述の如く、フレーム111に電力系統側面Sqが形成されているので、端子112の固定端から当該端子112の端部迄の長さも短縮される。そして、かかる如く、端子112の鉛直方向の長さが短縮されると、寸法誤差または外力の影響が少なくなるため、電力系統プリント基板120とフレーム構造体110との組付作業の簡素化が図られる。
【0046】
図9には、DC−DCコンバ−タ回路に係るフレーム構造体210の構成が示されている。図示の如く、当該フレーム構造体210は、複数のフレーム211によって構成され、フレーム211には、複数の端子212が配列されている。かかるフレーム構造体210は、複数のフレームによって空間211a,211b,211cが形成されている。このうち、空間211aの内部には、Hブリッジ回路(パワー半導体素子によって構成される回路)を実装させたパワー素子基板113が収容され、空間211bの内部には、パワー半導体素子214a及び整流素子214b及びスナバ回路を構成するパワー素子基板114が収容されている。尚、かかるフレーム構造体210の要素は、PFCコンバータのフレーム構造体110の要素と略同様であり、その説明を省略することとする。
【0047】
図10には、DC−DCコンバータ回路に係る電力系統プリント基板の構成が示されている。かかる電力系統プリント基板220は、パワー半導体素子に駆動信号を出力させるドライブ回路(以下、スイッチングトランスと呼ぶ)と、電路を経由してパワー半導体素子213a,214aに電力を供給させる電力供給回路を実装させている。具体的に説明すると、電力系統プリント基板220は、プリント配線を適宜に積層させた回路基板221と、コイル223〜224と、各部に電気的に接続される端子226a〜226iと、適宜なコンデンサ228a〜228cと、スイッチングトランス225a〜225cとから構成されている。そして、当該電力系統プリント基板220は、プリント配線によって電路を形成させ、パワー素子基板113に実装されるパワー半導体素子113b等と協働して、DC−DCコンバータ回路を構成させている。また、スイッチングトランス225a〜225cを実装させ、当該スイッチングトランス225a〜225cから駆動信号が出力されることにより、Hブリッジ回路を適宜に駆動させる。尚、かかる電力系統プリント基板220の要素は、PFCのフレーム構造体210の要素と略同様であり、その説明を省略することとする。
【0048】
電力系統プリント基板220は、複数の端子212に対応する端子用ホールHpが形成され、当該端子用ホールHpには、複数の端子212と導通される半田ランドが形成されている。そして、電力系統プリント基板220は、図11に示す如く、複数の端子212を端子用ホールHpに挿通させつつフレーム構造体210へ積層され、回路基板221にあってはビス止めされ、端子用ホールHpは複数の端子212と半田接続され、これにより、上述した構成の電力供給回路が複数の端子212を介してパワー半導体素子213a,214aに各々導通されている。以下、フレーム構造体210と電力系統プリント基板220とから成る構成を、DC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール200と呼ぶ。
【0049】
図12には、本実施の形態に係る電力変換装置の構成が示されている。かかる電力変換装置1000は、図示の如く、PFC回路のブロック型電力モジュール100と、DC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール200と、筐体側ヒートシンク300(特許請求の範囲における被固定体)と、制御基板400と、トランス及び平滑コンデンサを具備する大型素子アセンブリ500とから構成されている。尚、PFC回路のブロック型電力モジュール100及びDC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール200については、上述した構成とされる。
【0050】
筐体側ヒートシンク300は、アルミダイキャスト等の放熱性の高い材質から形成され、放熱面積を向上させるフィン301と、電力及び信号の入出力を行なう入出力端子302と、車体の所定箇所に固定させるブラケット303a〜303dと、図示されないケースを固定させるボルト穴304と、複数本の支柱305とが形成されている。このうち、入出力端子302は、信号及び電力を供給させる配線と接続され、ブロック型電力モジュール100及びDC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール200の各々に、プラグイン端子を介して商用電力が供給させ、この他、ECU等から適宜な信号を入力させる。また、筐体側ヒートシンク300のうち、ブロック型電力モジュールを搭載させる面は、略水平面を呈しており、当該水平面に雌ネジが適宜に形成され、雄ネジ及びボルトを用いてケース構造体を固定させる。尚、かかる筐体側ヒートシンク300は、グランドにアースされている。
【0051】
シールド基板406は、複数の支柱305によって支持されている。かかるシール基板406は、筐体側ヒートシンク300と供にグランドへアースされている。
【0052】
制御基板400は、電力系統プリント基板120の上層側に配置され、スイッチングトランス225a〜225d又は上述した双方の基板121,221の電力供給回路を制御させる回路を実装させている。
【0053】
ここで、入力電源から電力を変換するスイッチングトランス及びパワースイッチング素子は、出力が1KW以上の電源に関してはフルブリッジ回路が広く用いられる。フルブリッジ回路は、一般的にPWM制御でパワースイッチを駆動する為、スイッチングを行う専用ICやCPUで制御が行われる。このパワースイッチング素子を制御する制御基板400は、商用電源よりも電圧値の低い車載バッテリから電力が供給される。そのため、パワースイッチング素子の信号入力端子(ゲート端子)は、スイッチングトランスによって制御基板と絶縁されている。そして、本実施の形態に係る制御基板400にあっては、著しく発熱はせず、また、近年部品の小型化が進み、片面プリント基板または両面プリント基板に実装させることが可能とされる。即ち、かかる制御基板400は、ブロック型電力モジュールの電力系統プリント基板から独立させた方が、より効果的に小型化を実現させることが可能となる。また、ブロック型電力モジュールの電力系統プリント基板にあっても、制御基板400に実装される回路を排除させた方が、CPU等を電気的に保護する対策(例えば、沿面距離の確保等)を施す必要が無くなるので、基板の小型化に寄与することとなる。
【0054】
制御基板400は、シールド基板406又は支柱305にビス止めされ、且つ、着脱可能なハーネスを介して電力系統プリント基板110,210に接続されているので、電力変換装置1000からの着脱が可能とされる。かかるハーネスは、少なくとも一端が着脱可能な構造を有していれば足りる。
【0055】
また、本実施の形態に係る電力変換装置1000では、着脱可能なブロック型電力モジュール100,200が取付けられているので、半田接合部の取り外し作業又は接着層の剥がし作業を行なうことなく、当該電力変換装置1000からブロック型電力モジュールを取り外すことが可能となる。
【0056】
即ち、本実施の形態に係る電力変換装置1000では、機能毎に独立したモジュール(制御基板、PFC回路のブロック型電力モジュール、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール)が構成され、当該独立したモジュールが各々着脱自在とされるので、故障又は不具合が発生した場合、其の故障等が生じたモジュールのみを交換することで、電力変換装置1000を交換させることが可能となる。また、電力変換装置1000を輸送させる際、モジュール毎に梱包させることにより、梱包全体の小型化が図られ、輸送コストの低減が図られる。
【0057】
更に、本実施の形態に係る電力変換装置1000では、機能毎に独立したモジュール(制御基板、PFC回路のブロック型電力モジュール、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール)が構成されるので、かかるモジュールでは、其の構成が簡素な状態で完結され、組立て作業の容易化が図られる。
【0058】
加えて、本実施の形態に係るブロック型電力モジュールによると、制御基板と電力系統プリント基板とパワー素子基板との各々を独立させることにより、互いの基板が各々効果的に小型化される。そして、本実施の形態に係る電力変換装置1000では、機能毎に独立したモジュール(制御基板、PFC回路のブロック型電力モジュール、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール)が構成されるので、かかるモジュールでは、其の構成が簡素な状態で完結され、全体として装置の小型化が図られる。
【符号の説明】
【0059】
1000 電力変換装置
100 PFC回路のブロック型電力モジュール
110 フレーム構造体
113 パワー素子基板
120 電力系プリント基板
200 DC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール
210 フレーム構造体
213 パワー素子基板
220 電力系プリント基板
300 被固定体(筐体側ヒートシンク)
400 制御基板
500 大型素子アセンブリ
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のブロック型電力モジュール及び電力変換装置に関し、特に、組立工程の容易化を図る際に好適にものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に係る種々の技術的要請を受け、プラグインハイブリッド自動車または電気自動車(以下、電気自動車等と呼ぶ)の技術開発が急速に進められている。かかる電気自動車等は、駆動輪の制御を行う動力用モータ、この他、燃料ポンプ又はパワーステアリング等の搭載装置に設けられる車載装置用モータ等を複数搭載させている。このうち、動力用モータには、大規模なバッテリユニット及びプラグイン充電装置が設けられる。そして、当該バッテリユニットは、プラグイン充電装置によって商用電力が充電電力に変換され、当該充電電力によって各々のユニットが蓄電される。尚、プラグイン充電装置は、車両にプラグインソケットが設けられ、当該プラグインソケットに家庭用コンセントが接続されることにより商用電力が入力される。一方、車載装置用モータ(パワーステアリング用モータ、パワーウィンドウ用モータ、フューエルモータ等)は、サブバッテリ及び降圧充電装置が設けられ、当該サブバッテリは、バッテリユニットの電力が降圧充電装置を介して蓄電される。これらの充電装置(特許請求の範囲における電力変換装置)は、入力された電力を変換させるパワースイッチング素子、パワースイッチング素子を駆動させるドライブ回路、入力電路を絶縁させるトランス回路を備え、当該トランス回路は、プラグイン充電装置の場合、家庭用コンセントと当該装置内の回路との絶縁が行われ、降圧用充電装置の場合、バッテリユニットと当該降圧用充電装置内の回路との絶縁が行われる。かかる充電装置は、人体に影響が出ないよう安全の確保のため確実な絶縁が要求される。また、プラグイン充電装置にあっては、近年、諸外国の安全規格などを準拠する為、絶縁規格に応じた回路構成が要求されている。
【0003】
また、かかるDC−DCコンバータ充電装置は、上述の如く、ドライブ回路とパワースイッチング素子との間にスイッチングトランスを備え、当該スイッチングトランスを介して双方の絶縁が確保されている。パワースイッチング素子は、樹脂モールドでパッケージされたパワー素子パッケージが広く用いられ、当該パワー素子パッケージは、パッケージ内外において絶縁距離が確保されている。かかるパワー素子パッケージは、図2(a)に示す如く、各リードによって内蔵されるパワースイッチング素子との導通を取り、リードを介して所定のプリント基板と接続される。パワースイッチは、スイッチング時に於ける導通又は遷移損失により発熱を伴う為、電源装置を構成するケース側ヒートシンクに固定され、発生した熱量をケース側ヒートシンクへ放熱させる。当該ケース側ヒートシンクは、放熱効果の高いアルミの鋳造加工で製作され、更に放熱効果を高める為、冷却流体との接触面積を拡大するフィン構造等の工夫が施されている。
【0004】
車載用の充電装置には、更に、PFC回路が構成され、当該PFC回路は、商用電源から供給される交流電力を直流電力へとへと変換させる。かかる回路は、交流電力をダイオードブリッジで全波整流し、フライバックコンバータにより電流入射角を拡大させ力率を改善し、これにより、直流変換を行なう。かかるPFC回路も先に述べたように、ケース側ヒートシンクに設置された回路であり、全波整流ダイオード、フライバックコンバータのパワースイッチング素子も同様に絶縁処理が必要となっている為、当該パワースイッチング素子の制御回路は、パワースイッチング素子から絶縁された回路構成が採用される。
【0005】
車載用の充電装置は、パワースイッチング素子の入力端子(ドレイン端子)には入力電源とほぼ同電位の電圧(例えばDC300V〜100V程度)が加わり、ソース端子には入力電源のマイナス側と同電位となっている。このため、プラグイン端子との接続端子における感電事故を防ぐため、適宜な絶縁処理が必要とされる。また、製品組立工程中または完成後に安全性の確認として耐圧試験が設けられている。併せて、交流電源は各国での安全規格(例えば北米であればUL)に準拠した絶縁距離や安全回路の設置などが各々要求される。
【0006】
これに対し、特開2008−235417号公報(特許文献1)では、パワー素子パッケージの替わりにパワースイッチング素子を直接実装させたパワーモジュール(特許請求の範囲における電力変換装置)が紹介されている。当該パワーモジュールは、電源・制御モジュールとパワー主回路モジュールとから構成される。このうち、電源・制御モジュールは、発振回路又はMOSFET等の微弱電力で駆動される実装領域と、電源トランス又は駆動回路等の比較的大電力を必要とする実装領域を具備している。一方、パワー主回路モジュールは、パワースイッチング素子と、パワースイッチング素子を実装させるプリント配線を積層させたベース基板と、所定の端子を具備するケース部材とをから構成され、ケース部材に配列された複数の端子は、電源・制御モジュールと異なる他の外部回路へと接続される。一方、ベース基板は、更に、所定数の端子を直立固定させる端子部が複数設けられ、当該端子の一端がプリント配線またはパワースイッチング素子に導通され、直立する他端が電源・制御モジュールの基板に形成された端子用ホールに挿通され、半田接続によって導通される。
【0007】
かかる構成によれば、パワースイッチング素子がベース基板上のプリント配線に直接実装されるので、当該ベース基板の実装密度が向上され、パワーモジュールの小型化が図られるとされている。
【0008】
また、特開2000−307056号公報(特許文献2)では、車載用半導体装置(特許請求の範囲における電力変換装置)が紹介されている。当該車載用半導体装置は、金属ベースと、金属ベースに積層されたパワーチップ基板と、パワーチップ基板に積層されたパワースイッチング素子と、外囲ケースと、外囲ケースに設けられた複数の端子と、制御基板とから構成され、外囲ケースに設けられた複数の端子は、各々、一端がパワースイッチング素子に導通され、他端が電源・制御モジュールの基板との導通部に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−235417号公報
【特許文献2】特開2000−307056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に係る技術では、ベース基板に設けられた直立する端子が3列以上とされるので、ケース部材に電源・制御モジュールを組付ける際、1列目の端子を電源・制御モジュールへ挿入させた後、直立端子に曲げモーメントを与えることで2列目の端子を電源・制御モジュールへ挿入させることは可能であるが、その後、残りの全ての列の端子を電源・制御モジュールへ挿入させることは困難である。
【0011】
また、かかる場合、直立する端子の長さに比例して、電源・制御モジュールと端子との組付けの難易度も向上するとの問題も生じる。
【0012】
更に、上述の如く、充電装置は、DC−DCコンバータ回路とPFC回路とから構成されるが、スイッチングトランス等の電路系基板(制御回路を除く基板)をDC−DCコンバータ回路及びPFC回路について同一の基板に実装させると、当該基板の規模拡大に伴い、電路系基板とケース部材との組付け作業が更に一層困難なものとされる。
【0013】
一方、特許文献2に係る技術では、スイッチングトランスの配置位置が明らかにされておらず、車載用充電装置の構成が具体化されていないため、スイッチングトランスを具備する車載用充電装置に適用させ得るものと認められない。また、DC−DCコンバータ回路及びPFC回路について同一の基板に実装させると、上述の課題と同様、当該基板の規模拡大に伴い、電路系基板とケース部材との組付け作業が更に一層困難なものとされる。
【0014】
本発明は上記課題に鑑み、組立工程の容易化を実現させるブロック型電力モジュール及び電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明では次のようなブロック型電力モジュールの構成とする。即ち、パワー半導体素子を実装させたパワー素子基板と、外周壁を形成するフレームの内部に前記パワー素子基板を収容させ前記フレームのうち少なくとも一辺の基板積層方向へ前記パワー半導体素子に導通された複数の端子を配列させたフレーム構造体と、前記パワー半導体素子に駆動信号を出力させるドライブ回路及び/又は電路を経由して前記パワー半導体素子に電力を供給させる電力供給回路を実装させた電力系統プリント基板とを備え、前記複数の端子は、前記フレームを構成する面のうち前記基板積層方向へ対向する面に固定端を有し、前記固定端から基板積層方向へ直線的に延在するものであって、前記電力系統プリント基板は、前記複数の端子に対応する端子用ホールが形成され、前記複数の端子を前記端子用ホールに挿通させつつ前記フレーム構造体へ積層されることとする。
【0016】
好ましくは、前記電力系統プリント基板の上層側に配置され前記ドライブ回路及び/又は前記電力供給回路を制御させる回路を実装させた制御基板を備えることとする。
【0017】
好ましくは、前記フレームは、前記複数の端子の一端を露出させ前記パワー素子基板にワイヤーボンディングさせるパワー素子側面と、前記固定端を有し前記パワー素子面のレベルより前記基板積層方向に形成された電力系統側面とを備えることとする。
【0018】
好ましくは、前記複数の端子は、前記フレームのうち第1のフレームに沿って直線状に1列、又は、前記第1のフレームに沿って直線状に1列且つ当該第1のフレームに平行な第2のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることとする。
【0019】
好ましくは、前記複数の端子は、更に、前記第1のフレームに対して略直角に配置される第3フレームに沿って直線状に1列、又は、前記第3のフレームに沿って直線状に1列且つ当該第3のフレームに平行な第4のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることとする。
【0020】
また、本発明では次のような電力変換装置の構成とする。即ち、上述した何れかの発明に記載のブロック型電力モジュールが、複数組み込まれて構成されることとする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るブロック型電力モジュールによると、複数の端子がフレームに沿って配列されるので、当該端子による端子の列は、2列以内に抑えられる。従って、フレーム構造体に電力系統プリント基板を組付ける際、1列目の端子を電力系統プリント基板の端子用ホールへ挿入させた後、当該1列目の端子に曲げモーメントを与えることで2列目の端子を電力系統プリント基板の端子用ホールへの挿入が可能となり、これにより、組付け作業の容易化が図られる。加えて、複数の端子の固定端から当該端子の端部迄の長さも短縮されるので、寸法誤差または外力の影響が少なくなり、これにより、電力系統プリント基板とフレーム構造体との組付作業の簡素化が図られる。
【0022】
また、本発明に係る電力変換装置によると、機能毎に独立したモジュール(制御基板、PFC回路のブロック型電力モジュール、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール)が構成されるので、かかるモジュールでは、其の構成が簡素な状態で完結され、組立て作業の容易化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態に係るフレーム構造体の構成を示す図。
【図2】パワー素子パッケージとプリント配線に実装されたパワー半導体素子との配置の比較を示す図。
【図3】パワー素子パッケージのリード端子とフレームの端子との比較を示す図。
【図4】PFCユニットの電力系統プリント基板の構成を示す図。
【図5】PFCユニットのブロック型電力モジュールの構成を示す図。
【図6】パワー素子パッケージを採用した場合のプリント配線と本実施例に係るプリント配線との比較を示す図。
【図7】パワー素子パッケージを採用した場合の端子用ホールと本実施例に係る端子用ホールとのレイアウトの差異を示す図。
【図8】パワー素子パッケージを採用したPFCユニットと本実施例に係るPFCユニットとの断面構造の比較を示す図。
【図9】実施の形態に係るフレーム構造体の構成を示す図。
【図10】DC−DC変換ユニットの電力系統プリント基板の構成を示す図。
【図11】DC−DC変換ユニットのブロック型電力モジュールの構成を示す図。
【図12】本実施の形態に係る電力変換装置の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態につき図面を参照して説明する。図1に示す如く、PFC回路に係るフレーム構造体110は、複数のフレーム111によって構成され、当該フレーム111には、複数の端子112が配列されている。かかるフレーム構造体110は、図示の如く、複数のフレームによって空間111a,111b,111cが形成され、空間111aの内部には、パワー素子基板113が収容されている。
【0025】
図示の如く、フレーム111は、当該フレーム111を構成する面のうち基板積層方向(図3bのZ方向)へ対向する面(以下、基板当接面と呼ぶ)に複数の端子112bが配列される。複数の端子112bは、基板積層面に固定端を有し、当該固定端から基板積層方向へ直線的に延在支持されている。
【0026】
複数の端子112bは、フレームのうち所定の第1のフレームに沿って直線状に1列配列されることとしても良い。これにより、図4で説明される電力系統プリント基板120を組付ける際、複数の端子112bが一列のみしか配列されてないので、当該電力系統プリント基板120を容易に組付けることが可能となる。また、かかる第1のフレームに沿って直線状に1列、且つ、当該第1のフレームに平行な第2のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることとしても良い。かかる場合、1列目の端子111bを電力系統プリント基板へ挿入させた後、当該端子に曲げモーメントを与えることで2列目の端子111bが電力系統プリント基板120へ挿入され、当該組付け作業は容易に行なわれる。
【0027】
この他、複数の端子112bは、図1に示す如く、フレームのうち所定の第1のフレームに沿って直線状に1列配列され、且つ、第1のフレームに平行な第2のフレームへ沿って直線状に1列配列され、且つ、第1のフレームに対して略直角に配置される第3フレームに沿って直線状に1列配列されることとしても良い。かかる場合にあっても、電力系統プリント基板120との組付け作業は容易に行なわれる。更に、パワー素子基板113の全周(4辺)に複数の端子112bを配列させても良い。これによっても、平行な端子の列が2列以内とされるので、電力系統プリント基板120との組付け作業は容易に行なわれる。
【0028】
これらの複数の端子112bは、フレーム長の範囲で配置位置が自由に選択されるので、積層される電力系統プリント基板120との関係において、適宜なポジションにレイアウトすることが可能となり、また、互いの端子間の沿面距離を確保することが容易となる。また、沿面距離またはプリント配線の都合上、フレーム長の範囲内に配置できる端子数が飽和してしまうと、図1に示す如く、リード端子を延長させ、他のフレーム111に端子112bをレイアウトさせることも可能である。
【0029】
更に、図1を参照すると、フレーム構造体110には、固定部111dが複数形成されている。かかる固定部111dは、本実施の形態の場合、ボルト穴とされ、図示されないボルト及び被固定体の雌ネジによって、フレーム構造体110が図示されない被固定体に固定されることとなる。即ち、当該フレーム構造体110は、被固定体と着脱自在に固定されることとなり、これにより、フレーム構造体110を構成要素とするブロック型電力モジュールも、被固定体と着脱自在に固定されることとなる。
【0030】
パワー素子基板113は、図1に示す如く、アルミ基板(この他、アルミナ、窒化アルミ等であっても良い)上に絶縁層を形成させ、当該絶縁層の上層に銅箔等のプリント配線が積層されている。また、パワー素子基板113は、IGBT又はMOSFET等のパワー半導体素子113b、ダイオードブリッジを構成する半導体ダイオード113a、この他の整流素子113cを実装させている。これらの半導体素子は、通過電流に応じて発熱し、これによって発生した熱量がアルミ基板を介して被固定体へと放熱される。尚、パワー半導体素子113bをはじめとする電気的素子113a〜113cは、図示の如く、端子112の露出面112aと適宜にワイヤーボンディングされている。
【0031】
パワー素子パッケージでは、パッケージに所定数の端子が設けられているのに対し、かかるパワー素子基板では、パッケージの端子のような不要な端子が省略されるので、これに応じて、当該パワー素子基板の実装密度が向上し、装置の小型化が図られる。
【0032】
図2には、アルミ基板等の放熱性基板に実装されたパワー素子パッケージと、放熱基板上のプリント配線に直接実装されたパワー半導体素子との実装密度の比較が示されている。図2(a)を参照して、パワー素子パッケージPWPについて観察すると、当該パワー素子パッケージPWPは、パッケージ側ヒートシンクHSと、パッケージ側ヒートシンクHSに積層された絶縁層と、当該絶縁層に積層されたパワー半導体素子PWTと、当該パワー半導体素子PWTを内部に収容させるパッケージPACと、当該パッケージPACに設けられた複数のリード端子RDとから構成される。そして、パワー素子パッケージPWPは、パワー半導体素子PWTとリード端子RDとが内部でワイヤーボンディングされ、当該パッケージPACの内部に絶縁樹脂が含浸されている。
【0033】
かかるパワー素子パッケージPWPは、リード端子RDを互いに向き合わせて配置させる場合、端子間の絶縁距離D1とすると、パッケージPACに内蔵されるパワー半導体素子PWT同士の距離がD2とされる。
【0034】
一方、図2(b)を参照して、パワー素子パッケージPWTについて観察すると、直接プリント配線PRに実装されたパワー半導体素子PWTは、絶縁距離D1を必要とされるものの、パワー素子パッケージPWPにおけるワイヤーボンディング及びリード端子RDの水平方向の端子の構成が排除されるので、パワー半導体素子PWT同士の距離D3は、パワー素子パッケージPWPの場合の距離D2と比較して格段に短縮される。即ち、パワー素子基板113は、パワー半導体素子PWTを直接実装させる方が、上述の如く実装密度が高くなる。
【0035】
また、本実施の形態の場合、パワー素子基板113には、特開2008−235417号公報のような内部の直立端子を設けていないので、これによっても、基板の実装密度が向上する。
【0036】
図3には、アルミ基板等の放熱性基板に実装されたパワー素子パッケージと、放熱基板上のプリント配線に直接実装されたパワー半導体素子との端子の寸法誤差の比較が示されている。図3(a)に示す如く、パワー素子パッケージPWPのリード端子RDの場合、当該端子RDがL字型を成しているので、P1を支点とする誤差A(A=L1×θ1)と、P2を支点とする誤差B(B=L2×θ2)とが生じる。このため、リード端子RDの端部に基板の端子用ホールを挿入させようとすると、これらの誤差A,Bによって、基板の穴位置とリード端子RDの端部の位置とが一致できず、フレーム構造体110に基板120を組付けることが困難となる。また、かかるリード端子RDに外力が加わると、これらの支点P1,P2にて曲げモーメントによる変形が生じ、これによっても、基板の穴位置とリード端子RDの端部の位置とが一致できず、フレーム構造体110に基板120を組付けることが困難となる。
【0037】
一方、図3(b)に示す如く、本実施の形態に係る複数の端子112bでは、フレーム111によって支持される固定端が1箇所のみとされるので、当該端子112bの端部の位置に関する誤差が少なくなる。また、当該端子112bは、パッケージの規格として予め決定されているリード端子RDと異なり、板厚を自由に設定できるので、当該板厚を適宜に厚くすることにより、当該端子112bの端部の位置に関する誤差が少なくなる。更に、上述したフレーム111は、図示の如く、複数の端子112の一端を露出させパワー素子基板にワイヤーボンディングさせるパワー素子側面Spと、上述した固定端を有しパワー素子側面Spのレベルより高い基板積層方向Zに形成された電力系統側面Sqとが形成されている。そして、複数の端子112は、電力系統側面Sqを固定端とした状態にてフレーム111に配列されるので、固定端から端子112の端部迄の距離が短くなり、これによっても、当該端子112bの端部の位置に関する誤差が少なくなる。
【0038】
図4には、PFC回路に係る電力系統プリント基板の構成が示されている。かかる電力系統プリント基板120は、電路を経由してパワー半導体素子113bに電力を供給させる電力供給回路を実装させている。具体的に説明すると、電力系統プリント基板120は、プリント配線を適宜に積層させた回路基板121と、コイル122〜124と、リレー装置125と、各部に電気的に接続される端子126a〜126eと、過電流発生時に回路を遮断させるヒューズ127と、適宜なコンデンサ128a〜128eと、サーミスタ129とから構成されている。そして、当該電力系統プリント基板120は、プリント配線によって電路を形成させ、パワー素子基板113に実装されるパワー半導体素子113b等と協働して、PFC回路を構成させている。更に、
【0039】
電力系統プリント基板120は、複数の端子112に対応する端子用ホールHpが形成され、当該端子用ホールHpには、複数の端子112と導通される半田ランドが形成されている。そして、電力系統プリント基板120は、図5に示す如く、複数の端子112を端子用ホールHpに挿通させつつフレーム構造体110へ積層され、回路基板121にあってはビス止めされ、端子用ホールHpは複数の端子112と半田接続され、これにより、上述した構成の電力供給回路が複数の端子112を介してパワー半導体素子113bに導通されている。以下、フレーム構造体110と電力系統プリント基板120とから成る構成を、PFC回路のブロック型電力モジュール100と呼ぶ。
【0040】
図6(a)には、パワー素子パッケージを用いた場合のプリント配線が示されている。以下、電力系統プリント基板120に回路C1〜C4が実装され、パワー素子パッケージに配されたリード端子RDが各々回路C1〜C3に接続される場面について説明する。かかる場合、パワー素子パッケージPWPは、パワー素子基板113の中心寄りにレイアウトされるので、3本のリード端子RDもこれに応じて回路基板121の中心寄りにレイアウトされる。この時、リード端子RDは、各々の端子が近接した状態で連続して配列されているので、全てのリード端子RDが回路C1〜C3に各々接続されることとすると、図示の如く、リード端子RDから各々の回路に至るプリント配線が必要となり、回路素子の実装密度の低い配線領域ARが形成されてしまう。また、リード端子RDとの接続が不要な回路C4が配線領域ARに存在すると、当該配線領域ARは、プリント配線PRL2が回路C4を迂回する様に配線されるため、更に、其の面積を拡大させ、基板の実装密度を低下させてしまう。
【0041】
図6(b)には、本実施の形態に係るプリント配線が示されている。かかる場合にあっても、回路C1〜C3は、図6(a)と同位置にレイアウトされている。図を参照すると、フレーム111に配列された端子112は、フレームに沿った適宜な位置に設けられ、導通されるべき回路の近傍にレイアウトされている。即ち、端子112は、接続されるべき回路の直近に配置されるように、当該配置が最適化されている。これにより、図示の如く、所定の回路と端子112とは最短距離で導通され、プリント配線の長さが最小限に抑えられる。従って、かかる基板121では、不要なプリント配線が排除され、当該基板121の実装密度を向上させることが可能となる。また、リード端子RDとの接続が不要な回路C4が配線領域ARに存在していたとしても、導通されるべき所定の回路と端子112とは直近にレイアウトされるので、回路C4を迂回させるプリント配線を必要とせず、当該プリント配線の簡素化が図られ、基板121の実装密度を向上させることが可能となる。
【0042】
図7(a)には、パワー素子パッケージを用いた場合の回路基板が示されている。かかる場合、パワー素子パッケージPWPがパワー素子基板に3列以上配列されると、図示の如く、端子用ホールHpによって構成される穴の列が3列以上形成されてしまう。従って、フレーム構造体110に電力系統プリント基板120を組付ける際、1列目の端子(A1)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへ挿入させた後、当該1列目の端子(A1)に曲げモーメントを与えることで2列目の端子(A2)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへ挿入させることは可能であるが、その後、残りの全ての列の端子(A3,A4)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへ挿入させることは困難である。
【0043】
これに対し、本実施の形態に係るブロック型電力モジュールでは、図7(b)に示す如く、端子112がフレーム111に配列されるので、当該端子112による端子の列(B1,B2)は、2列以内に抑えられる。従って、フレーム構造体110に電力系統プリント基板120を組付ける際、1列目の端子(B1)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへ挿入させた後、当該1列目の端子(B1)に曲げモーメントを与えることで2列目の端子(B2)を電力系統プリント基板120の端子用ホールへの挿入が可能となり、これにより、組付け作業の容易化が図られる。また、図示の如く、端子の列B1とB2とに対して垂直に配される端子の列(B3)は、端子用ホールの径寸法を適宜に設定することで、回路基板121へ容易に組付けられる。
【0044】
図8には、パワー素子パッケージを用いたブロック型電力モジュールの断面と、本実施の形態に係るブロック型モジュールの断面との比較が示されている。図8(a)に示す如く、パワー素子パッケージを用いた場合、パッケージの高さH01が厚いので、ブロック型電力モジュールの内部空間の高さH02も高くなり、更に、リード端子RDの長さH03も、これに応じて長くなる。この場合、直立する端子の長さH03に比例して、電力系統プリント基板120と端子112との組付け作業は困難となる。
【0045】
これに対し、本実施の形態に係るブロック型電力モジュールでは、パッケージPACが省略されているので、ブロック型電力モジュールの内部空間の高さH12も低くなり、これに応じて、端子112の鉛直方向の長さが短くなる。また、上述の如く、フレーム111に電力系統側面Sqが形成されているので、端子112の固定端から当該端子112の端部迄の長さも短縮される。そして、かかる如く、端子112の鉛直方向の長さが短縮されると、寸法誤差または外力の影響が少なくなるため、電力系統プリント基板120とフレーム構造体110との組付作業の簡素化が図られる。
【0046】
図9には、DC−DCコンバ−タ回路に係るフレーム構造体210の構成が示されている。図示の如く、当該フレーム構造体210は、複数のフレーム211によって構成され、フレーム211には、複数の端子212が配列されている。かかるフレーム構造体210は、複数のフレームによって空間211a,211b,211cが形成されている。このうち、空間211aの内部には、Hブリッジ回路(パワー半導体素子によって構成される回路)を実装させたパワー素子基板113が収容され、空間211bの内部には、パワー半導体素子214a及び整流素子214b及びスナバ回路を構成するパワー素子基板114が収容されている。尚、かかるフレーム構造体210の要素は、PFCコンバータのフレーム構造体110の要素と略同様であり、その説明を省略することとする。
【0047】
図10には、DC−DCコンバータ回路に係る電力系統プリント基板の構成が示されている。かかる電力系統プリント基板220は、パワー半導体素子に駆動信号を出力させるドライブ回路(以下、スイッチングトランスと呼ぶ)と、電路を経由してパワー半導体素子213a,214aに電力を供給させる電力供給回路を実装させている。具体的に説明すると、電力系統プリント基板220は、プリント配線を適宜に積層させた回路基板221と、コイル223〜224と、各部に電気的に接続される端子226a〜226iと、適宜なコンデンサ228a〜228cと、スイッチングトランス225a〜225cとから構成されている。そして、当該電力系統プリント基板220は、プリント配線によって電路を形成させ、パワー素子基板113に実装されるパワー半導体素子113b等と協働して、DC−DCコンバータ回路を構成させている。また、スイッチングトランス225a〜225cを実装させ、当該スイッチングトランス225a〜225cから駆動信号が出力されることにより、Hブリッジ回路を適宜に駆動させる。尚、かかる電力系統プリント基板220の要素は、PFCのフレーム構造体210の要素と略同様であり、その説明を省略することとする。
【0048】
電力系統プリント基板220は、複数の端子212に対応する端子用ホールHpが形成され、当該端子用ホールHpには、複数の端子212と導通される半田ランドが形成されている。そして、電力系統プリント基板220は、図11に示す如く、複数の端子212を端子用ホールHpに挿通させつつフレーム構造体210へ積層され、回路基板221にあってはビス止めされ、端子用ホールHpは複数の端子212と半田接続され、これにより、上述した構成の電力供給回路が複数の端子212を介してパワー半導体素子213a,214aに各々導通されている。以下、フレーム構造体210と電力系統プリント基板220とから成る構成を、DC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール200と呼ぶ。
【0049】
図12には、本実施の形態に係る電力変換装置の構成が示されている。かかる電力変換装置1000は、図示の如く、PFC回路のブロック型電力モジュール100と、DC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール200と、筐体側ヒートシンク300(特許請求の範囲における被固定体)と、制御基板400と、トランス及び平滑コンデンサを具備する大型素子アセンブリ500とから構成されている。尚、PFC回路のブロック型電力モジュール100及びDC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール200については、上述した構成とされる。
【0050】
筐体側ヒートシンク300は、アルミダイキャスト等の放熱性の高い材質から形成され、放熱面積を向上させるフィン301と、電力及び信号の入出力を行なう入出力端子302と、車体の所定箇所に固定させるブラケット303a〜303dと、図示されないケースを固定させるボルト穴304と、複数本の支柱305とが形成されている。このうち、入出力端子302は、信号及び電力を供給させる配線と接続され、ブロック型電力モジュール100及びDC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール200の各々に、プラグイン端子を介して商用電力が供給させ、この他、ECU等から適宜な信号を入力させる。また、筐体側ヒートシンク300のうち、ブロック型電力モジュールを搭載させる面は、略水平面を呈しており、当該水平面に雌ネジが適宜に形成され、雄ネジ及びボルトを用いてケース構造体を固定させる。尚、かかる筐体側ヒートシンク300は、グランドにアースされている。
【0051】
シールド基板406は、複数の支柱305によって支持されている。かかるシール基板406は、筐体側ヒートシンク300と供にグランドへアースされている。
【0052】
制御基板400は、電力系統プリント基板120の上層側に配置され、スイッチングトランス225a〜225d又は上述した双方の基板121,221の電力供給回路を制御させる回路を実装させている。
【0053】
ここで、入力電源から電力を変換するスイッチングトランス及びパワースイッチング素子は、出力が1KW以上の電源に関してはフルブリッジ回路が広く用いられる。フルブリッジ回路は、一般的にPWM制御でパワースイッチを駆動する為、スイッチングを行う専用ICやCPUで制御が行われる。このパワースイッチング素子を制御する制御基板400は、商用電源よりも電圧値の低い車載バッテリから電力が供給される。そのため、パワースイッチング素子の信号入力端子(ゲート端子)は、スイッチングトランスによって制御基板と絶縁されている。そして、本実施の形態に係る制御基板400にあっては、著しく発熱はせず、また、近年部品の小型化が進み、片面プリント基板または両面プリント基板に実装させることが可能とされる。即ち、かかる制御基板400は、ブロック型電力モジュールの電力系統プリント基板から独立させた方が、より効果的に小型化を実現させることが可能となる。また、ブロック型電力モジュールの電力系統プリント基板にあっても、制御基板400に実装される回路を排除させた方が、CPU等を電気的に保護する対策(例えば、沿面距離の確保等)を施す必要が無くなるので、基板の小型化に寄与することとなる。
【0054】
制御基板400は、シールド基板406又は支柱305にビス止めされ、且つ、着脱可能なハーネスを介して電力系統プリント基板110,210に接続されているので、電力変換装置1000からの着脱が可能とされる。かかるハーネスは、少なくとも一端が着脱可能な構造を有していれば足りる。
【0055】
また、本実施の形態に係る電力変換装置1000では、着脱可能なブロック型電力モジュール100,200が取付けられているので、半田接合部の取り外し作業又は接着層の剥がし作業を行なうことなく、当該電力変換装置1000からブロック型電力モジュールを取り外すことが可能となる。
【0056】
即ち、本実施の形態に係る電力変換装置1000では、機能毎に独立したモジュール(制御基板、PFC回路のブロック型電力モジュール、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール)が構成され、当該独立したモジュールが各々着脱自在とされるので、故障又は不具合が発生した場合、其の故障等が生じたモジュールのみを交換することで、電力変換装置1000を交換させることが可能となる。また、電力変換装置1000を輸送させる際、モジュール毎に梱包させることにより、梱包全体の小型化が図られ、輸送コストの低減が図られる。
【0057】
更に、本実施の形態に係る電力変換装置1000では、機能毎に独立したモジュール(制御基板、PFC回路のブロック型電力モジュール、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール)が構成されるので、かかるモジュールでは、其の構成が簡素な状態で完結され、組立て作業の容易化が図られる。
【0058】
加えて、本実施の形態に係るブロック型電力モジュールによると、制御基板と電力系統プリント基板とパワー素子基板との各々を独立させることにより、互いの基板が各々効果的に小型化される。そして、本実施の形態に係る電力変換装置1000では、機能毎に独立したモジュール(制御基板、PFC回路のブロック型電力モジュール、DC−DCコンバータのブロック型電力モジュール)が構成されるので、かかるモジュールでは、其の構成が簡素な状態で完結され、全体として装置の小型化が図られる。
【符号の説明】
【0059】
1000 電力変換装置
100 PFC回路のブロック型電力モジュール
110 フレーム構造体
113 パワー素子基板
120 電力系プリント基板
200 DC−DCコンバータ回路のブロック型電力モジュール
210 フレーム構造体
213 パワー素子基板
220 電力系プリント基板
300 被固定体(筐体側ヒートシンク)
400 制御基板
500 大型素子アセンブリ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子を実装させたパワー素子基板と、外周壁を形成するフレームの内部に前記パワー素子基板を収容させ前記フレームのうち少なくとも一辺の基板積層方向へ前記パワー半導体素子に導通された複数の端子を配列させたフレーム構造体と、前記パワー半導体素子に駆動信号を出力させるドライブ回路及び/又は電路を経由して前記パワー半導体素子に電力を供給させる電力供給回路を実装させた電力系統プリント基板とを備え、
前記複数の端子は、前記フレームを構成する面のうち前記基板積層方向へ対向する面に固定端を有し、前記固定端から基板積層方向へ直線的に延在するものであって、
前記電力系統プリント基板は、前記複数の端子に対応する端子用ホールが形成され、前記複数の端子を前記端子用ホールに挿通させつつ前記フレーム構造体へ積層されることを特徴とするブロック型電力モジュール。
【請求項2】
前記電力系統プリント基板の上層側に配置され前記ドライブ回路及び/又は前記電力供給回路を制御させる回路を実装させた制御基板を備えることを特徴とする請求項1に記載のブロック型電力モジュール。
【請求項3】
前記フレームは、前記複数の端子の一端を露出させ前記パワー素子基板にワイヤーボンディングさせるパワー素子側面と、前記固定端を有し前記パワー素子面のレベルより前記基板積層方向に形成された電力系統側面とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブロック型電力モジュール。
【請求項4】
前記複数の端子は、前記フレームのうち第1のフレームに沿って直線状に1列、又は、前記第1のフレームに沿って直線状に1列且つ当該第1のフレームに平行な第2のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のブロック型電力モジュール。
【請求項5】
前記複数の端子は、更に、前記第1のフレームに対して略直角に配置される第3フレームに沿って直線状に1列、又は、前記第3のフレームに沿って直線状に1列且つ当該第3のフレームに平行な第4のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることを特徴とする請求項4に記載のブロック型電力モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載のブロック型電力モジュールが、複数組み込まれて構成されることを特徴とする電力変換装置。
【請求項1】
パワー半導体素子を実装させたパワー素子基板と、外周壁を形成するフレームの内部に前記パワー素子基板を収容させ前記フレームのうち少なくとも一辺の基板積層方向へ前記パワー半導体素子に導通された複数の端子を配列させたフレーム構造体と、前記パワー半導体素子に駆動信号を出力させるドライブ回路及び/又は電路を経由して前記パワー半導体素子に電力を供給させる電力供給回路を実装させた電力系統プリント基板とを備え、
前記複数の端子は、前記フレームを構成する面のうち前記基板積層方向へ対向する面に固定端を有し、前記固定端から基板積層方向へ直線的に延在するものであって、
前記電力系統プリント基板は、前記複数の端子に対応する端子用ホールが形成され、前記複数の端子を前記端子用ホールに挿通させつつ前記フレーム構造体へ積層されることを特徴とするブロック型電力モジュール。
【請求項2】
前記電力系統プリント基板の上層側に配置され前記ドライブ回路及び/又は前記電力供給回路を制御させる回路を実装させた制御基板を備えることを特徴とする請求項1に記載のブロック型電力モジュール。
【請求項3】
前記フレームは、前記複数の端子の一端を露出させ前記パワー素子基板にワイヤーボンディングさせるパワー素子側面と、前記固定端を有し前記パワー素子面のレベルより前記基板積層方向に形成された電力系統側面とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブロック型電力モジュール。
【請求項4】
前記複数の端子は、前記フレームのうち第1のフレームに沿って直線状に1列、又は、前記第1のフレームに沿って直線状に1列且つ当該第1のフレームに平行な第2のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のブロック型電力モジュール。
【請求項5】
前記複数の端子は、更に、前記第1のフレームに対して略直角に配置される第3フレームに沿って直線状に1列、又は、前記第3のフレームに沿って直線状に1列且つ当該第3のフレームに平行な第4のフレームへ沿って直線状に1列、配列されることを特徴とする請求項4に記載のブロック型電力モジュール。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載のブロック型電力モジュールが、複数組み込まれて構成されることを特徴とする電力変換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−23634(P2011−23634A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168716(P2009−168716)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000109093)ダイヤモンド電機株式会社 (387)
【Fターム(参考)】
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