説明

ブロッコリーハイブリッドPX05181808およびその親

【課題】1以上の形質、例えば、除草剤耐性、昆虫抵抗性、病害抵抗性、および改変された炭水化物代謝を付与したブロッコリーハイブリッドを提供する。
【解決手段】ブロッコリーハイブリッドPX 05181808およびその親系統の植物、種子、ならびに組織培養物、さらには、かかる植物をそれ自身または別のブロッコリー植物、例えば、別の遺伝子型の植物と交配させることにより得られるブロッコリー植物を生産するための方法。さらに、かかる交配により得られる種子および植物、さらにかかる植物の部分。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育種の分野、より具体的には、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに親ブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の開発に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2011年6月15日に出願した米国仮特許出願第61/ 572,271号、および2012年1月20日に出願した米国仮特許出願第61/ 632,821号(これらのすべての開示は参照により本明細書中に組み込まれる)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
野菜育種の目標は、様々な望ましい形質を単一の品種/ハイブリッドの中に併合させることである。かかる望ましい形質としては、生産者および/または消費者が有益であると考えるいずれの形質も挙げることができ、これには、より多い収穫量、昆虫または病害に対する抵抗性、環境ストレスに対する耐性、および栄養価が含まれる。
【0004】
育種技術は、植物の受粉方法を利用する。受粉には2つの一般的方法がある:1つの花からの花粉が同じ植物もしくは植物品種の同じまたは別の花へ伝達されると、植物は自家受粉する。花粉が、異なる植物品種の花から来る場合には、植物は他家受粉する。
【0005】
自家受粉し、多世代にわたりタイプについて選択されてきた植物は、ほぼ全ての遺伝子座についてホモ接合型となり、真の育種後代であるホモ接合型植物の均一な集団を生じる。遺伝子型が異なる2種類のかかるホモ接合型植物の間での交配によっては、多くの遺伝子座についてヘテロ接合型であるハイブリッド植物の均一な集団が生じる。逆に、多数の遺伝子座が各々、ヘテロ接合型である2種類の植物の交配によっては、遺伝的に異なり、均一ではないハイブリッド植物の集団が生じる。生じた不均一性により、その性能を予測することができない。
【0006】
均一な品種の開発には、ホモ接合型近交系植物の開発、これらの近交系植物の交配と、交配の評価が必要である。系統育種と反復選択が、育種集団から近交系植物を開発するために使用されてきた育種方法の例である。それらの育種方法により、2種類以上の植物または様々な他の幅広い起源に由来する遺伝的背景を、育種プールに併合し、この育種プールから、それらに由来する新しい系統およびハイブリッドを、所望の表現型の自殖および選択によって開発する。新しい系統およびハイブリッドは、それらのうちのどれが商業的可能性を有しているかを決定するために評価される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、植物育種の分野、より具体的には、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに親ブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の開発に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの態様においては、本発明は、PX 05181808と表示するハイブリッド、ブロッコリー系統BRM 51-1210またはブロッコリー系統BRL 51-1128のブロッコリー植物を提供する。かかる植物の生理学的および形態学的特徴を全て有しているブロッコリー植物もまた提供する。花粉、胚珠、小花、結球、および植物細胞を含む、これらのブロッコリー植物の部分もまた提供する。
【0009】
本発明の別の態様においては、加えられた遺伝形質を含むブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の植物を提供する。遺伝形質には、例えば、優性または劣性対立遺伝子である遺伝子座が含まれ得る。本発明の1つの具体例においては、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の植物を、単一遺伝子座変換を含むものとして定義する。本発明の特定の具体例においては、加えた遺伝子座は、1以上の形質、例えば、除草剤耐性、昆虫抵抗性、病害抵抗性、および改変された炭水化物代謝を付与する。さらなる具体例においては、形質は、戻し交配によって1つの系統のゲノム中に導入された自然界に存在している遺伝子、天然のもしくは誘導された突然変異、または遺伝的形質転換技術を介して植物もしくはその任意の前の世代の祖先に導入された導入遺伝子によって付与され得る。形質転換により導入された場合は、遺伝子座には、染色体上の単一の位置に組み込まれた1以上の遺伝子が含まれ得る。
【0010】
本発明はまた、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の種子にも関する。本発明のブロッコリー種子は、特定の具体例においては、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128のブロッコリー種子の本質的に均質な集団として提供され得る。種子の本質的に均質な集団には、通常、実質的な数の他の種子は含まれない。したがって、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の種子は、本発明の特定の具体例においては、全種子の少なくとも約97%を形成するものとして得ることができ、これには、種子の少なくとも約98%、99%、またはそれ以上を占めるものが含まれる。種子集団は、PX 05181808と命名したブロッコリー植物ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の本質的に均質な集団が得られるように、別々に生育させることができる。
【0011】
本発明のさらに別の態様においては、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128のブロッコリー植物の、再生可能な細胞の組織培養物を提供する。組織培養物は、好ましくは、出発植物の生理学的および形態学的特徴の全てを発現することができるブロッコリー植物を再生することができ、出発植物と実質的に同じ遺伝子型を有する植物を再生することができる。ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の生理学的および形態学的特徴のいくつかの例としては、本明細書中の表に示す形質が挙げられる。かかる組織培養物中の再生可能な細胞は、例えば、胚、成長点、子葉、花粉、葉、葯、根、根端、雌ずい、花、種子および茎由来であってよい。さらになお、本発明は、本発明の組織培養物から再生させた、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の全ての生理学的および形態学的特徴を有しているブロッコリー植物を提供する。
【0012】
本発明のさらになお別の態様において、ブロッコリー種子、植物およびその部分を生産するためのプロセスを提供する。このプロセスには、通常、第1の親ブロッコリー植物を第2の親ブロッコリー植物と交配させることが含まれ、ここでは、第1のまたは第2の親ブロッコリー植物の少なくとも一方が、ブロッコリー系統BRM 51-1210またはブロッコリー系統BRL 51-1128の植物である。これらのプロセスは、ハイブリッドブロッコリー種子または植物を作出するためのプロセスとしてさらに例示することができる。ここでは、その親の一方としてブロッコリー系統BRM 51-1210またはブロッコリー系統BRL 51-1128の植物を有するハイブリッドを提供するために、第1のブロッコリー植物を異なる別の遺伝子型の第2のブロッコリー植物と交配させる。これらのプロセスでは、交配は、種子の生産をもたらす。種子生産は、種子が収集されるかどうかに関わらず起こる。
【0013】
本発明の1つの具体例においては、「交配」の第1の工程には、受粉が例えば、媒介昆虫によって媒介されて起こるように、多くの場合は接近させて、第1のおよび第2の親ブロッコリー植物の種子を播くことが含まれる。あるいは、花粉を手作業で移動させることができる。植物が自家受粉する場合、受粉は、植物の栽培以外の直接的な人間の介入を必要とすることなく起こり得る。
【0014】
第2の工程には、第1のおよび第2の親ブロッコリー植物の種子を、花をつける植物にまで栽培するかまたは生育させることが含まれ得る。第3の工程には、植物の自家受粉を、例えば、花を除雄すること(すなわち、花粉を死滅させることまたは除去すること)によって防ぐことが含まれ得る。
【0015】
ハイブリッド交配のための第4の工程には、第1のおよび第2の親ブロッコリー植物の間での他家受粉が含まれ得る。さらに別の工程には、親ブロッコリー植物の少なくとも一方から種子を収穫することが含まれる。収穫した種子は、ブロッコリー植物またはハイブリッドブロッコリー植物を生産するために生育させることができる。
【0016】
本発明はまた、第1の親ブロッコリー植物を第2の親ブロッコリー植物と交配させることを含むプロセスにより生産されるブロッコリー種子および植物も提供し、ここでは、上記第1のまたは第2の親ブロッコリー植物の少なくとも一方が、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の植物である。本発明の1つの具体例においては、上記方法によって生産されるブロッコリー種子および植物は、植物を、本発明にしたがって別の異なる植物と交配させることによって生産される第1世代(F1)ハイブリッドのブロッコリー種子および植物である。本発明はさらに、かかるF1ハイブリッドブロッコリー植物の植物部分、およびその使用方法を意図する。したがって、本発明の特定の例示的な具体例は、F1ハイブリッドブロッコリー植物およびその種子を提供する。
【0017】
さらになお別の態様において、本発明は、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128に由来する植物を生産する方法を提供する。この方法には以下の工程が含まれる:(a)ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128に由来する後代植物を作出する工程であって、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の植物を第2の植物と交配させることを含む、工程;ならびに、(b)上記後代植物をそれ自身または第2の植物と交配させて、次の世代の後代植物の種子を生産する工程。さらなる具体例において、上記方法には以下の工程がさらに含まれ得る:(c)上記次の世代の後代植物の種子から次の世代の後代植物を生育させ、次の世代の後代植物をそれ自身または第2の植物と交配させる工程;ならびに、上記工程をさらに3〜10世代繰り返して、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128に由来する植物を生産する工程。ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128に由来する植物は、近交系統であり得、上記の繰り返される交配工程は、近交系統を生産するために十分な単系交配を含むものとして定義することができる。上記方法では、工程(c)により生じた特定の植物を、工程(b)および(c)による連続的交配のために選択することが望まれ得る。1以上の望ましい形質を有している植物を選択することによって、上記系統/ハイブリッドの望ましい形質のいくつかおよび他の潜在的に選択された形質を有する、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128に由来する植物が得られる。
【0018】
特定の具体例において、本発明は、以下の工程を含む食物または飼料を生産する方法を提供する:(a)成熟するまで栽培したブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の植物を得る工程、ならびに、(b)上記植物の組織を収集する工程。
【0019】
本発明のさらになお別の態様においては、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の遺伝的相補体を提供する。語句「遺伝的相補体」は、その配列の発現が、本願においては、ブロッコリー植物、またはその植物の細胞もしくは組織の表現型を定義する、ヌクレオチド配列の集合体をいうために使用される。したがって、遺伝的相補体は、細胞、組織または植物の遺伝的構成を表し、ハイブリッドの遺伝的相補体は、ハイブリッドの細胞、組織または植物の遺伝的構成を表す。したがって、本発明は、本明細書中に開示するブロッコリー植物細胞に一致する遺伝的相補体を有するブロッコリー植物細胞、ならびにかかる細胞を含む植物、種子および植物を提供する。
【0020】
植物の遺伝的相補体は、遺伝的マーカープロフィールによって、および上記遺伝的相補体の発現の特徴である表現型形質の発現、例えば、アイソザイム分類プロフィールによって、評価することができる。ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128は、多くの周知の技術、例えば、単純配列長多型(SSLP)(Williamsら, Nucleic Acids Res., 18: 6531-6535, 1990)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特性化増幅領域(SCAR)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、増幅断片長多型(AFLP)(EP 534 858、特に、参照により全体が本明細書中に組み込まれる)、および一塩基多型(SNP)(Wangら, Science, 280: 1077-1082, 1998)のいずれかによって同定できることが理解される。
【0021】
さらになお別の態様において、本発明は、本発明のブロッコリー植物の半数体の遺伝的相補体と、第2のブロッコリー植物、好ましくは別の異なるブロッコリー植物の半数体の遺伝的相補体との組み合わせによって形成されたブロッコリー植物の細胞、組織、植物、および種子が表す、ハイブリッドの遺伝的相補体を提供する。別の態様において、本発明は、本発明のハイブリッドの遺伝的相補体を含む組織培養物から再生されたブロッコリー植物を提供する。
【0022】
さらになお別の態様において、本発明は、植物のゲノム中の少なくとも1つの第1の多型を検出することを含む、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の植物の遺伝子型を決定する方法を提供する。上記方法には、特定の具体例において、上記植物のゲノム中の複数の多型を検出することが含まれ得る。上記方法にはさらに、複数の多型を検出する工程の結果をコンピューター可読媒体に保存する工程が含まれ得る。本発明はさらに、かかる方法によって作成されたコンピューター可読媒体を提供する。
【0023】
本発明の1つの態様に関して本明細書中で議論する全ての具体例を、特に断りのない限り、本発明の他の態様にも同様に適用する。
【0024】
用語「約」は、値が、その値を決定するのに用いられる装置または方法についての平均値の標準偏差を含むことを示すために用いる。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢だけを言うかまたは選択肢が相互に排他的であることを明白に断らない限りは、「および/または」を意味するように使用される。特許請求の範囲における語句「含む」または他のオープン形式の用語と組み合わせて使用される場合は、語句「1つの(aおよびan)」は、特に断りのない限り「1以上の」を意味する。用語「含む」、「有する」、および「包含する」は、オープンエンド形式の連結動詞である。これらの動詞の1以上のいずれかの形または時制(例えば、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、「包含する」、および「包含している」)もまた、オープンエンド形式である。例えば、1以上の工程を「含む」、「有する」、または「包含する」いかなる方法も、かかる1以上の工程のみを有しているものには限定されず、他の列挙されていない工程もまた含まれる。同様に、1以上の形質を「含む」、「有する」、または「包含する」いかなる植物も、かかる1以上の形質のみを有しているものには限定されず、他の列挙されていない形質も含まれる。
【0025】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の精神および範囲内にある様々な変更および修正が、この詳細な説明から当業者にとって明らかとなるので、詳細な説明および本発明の特定の具体例を示しつつ、提供されるいかなる特定の実施例も、説明のみを目的として提供されることが理解されるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM51-1210およびブロッコリー系統BRL 51-1128の植物、種子、および誘導体に関する方法ならびに組成物を提供する。ハイブリッドPX 05181808は、親系統BRM 51-1210とBRL 51-1128との交配によって生産した。親系統は、環境の影響の制限内で均一性および安定性を示す。親系統を交配することによって、ハイブリッドPX 05181808の均一な植物を得ることができる。
【0027】
A.ブロッコリーハイブリッドPX 05181808の起源および育種過程
ハイブリッドPX 05181808の親は、BRM 51-1210およびBRL 51-1128であり、通常は、BRM 51-1210を雄親とする。これらの親は以下のように創製した。
【0028】
BRL 51-1128(2010年8月18日に出願された米国特許出願第12/ 859,034号の中で開示されている)は、BRL 51-99の単交配(SC)の、キャベツBlue Dynastyの細胞質を有している細胞質雄性不稔性(CMS)ブロッコリーとの第1の交配により開発された。BRL 51-99は、倍加半数体の近交系統398-1254であった。反復親としてBRL 51-99を使用する戻し交配プログラムを、5世代にわたり続けた。5世代の戻し交配の後、BRL 51-1128 CMS BC 5系統を生産場所に送り、育種源05BajaBK 76-2A/ CP 1915を創製し、この近交系についての原種プログラムにおいて使用した。
【0029】
系統146/293を作付けし、成熟度、葉に関連する樹冠の位置、および早期開葉時期について観察した。この集団もまた、他のブロッコリー親系統と比較すると高いMSPレベルと低いMSBレベルを有していた(VQLから得られるデータ)。この系統を、この放出に特有のものの中でこれらの形質について選択し、個体を自家受粉させた。S1世代をBRM-51-1107と命名し、選択番号4が、これらの形質について選択した表現型について最も均一であるようであった。BRM-51-1107-4の後代を栽培し、これらの特徴について均一かつ純粋育種であることを観察した。これらの種子を使用してミツバチで集団を作成し、この種子をひとかたまりにし、BRM 51-1210の育種源として用いた。
【0030】
B.ブロッコリーハイブリッドPX 05181808、ブロッコリー系統BRM 51-1210およびブロッコリー系統BRL 51-1128の生理学的および形態学的特徴
本発明の1つの態様により、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808およびその親系統の生理学的および形態学的特徴を有している植物が提供される。かかる植物の生理学的および形態学的特徴についての説明を、表1〜3に示す。
【0031】
【表1−1】

【0032】
【表1−2】

【0033】
【表1−3】

【0034】
【表1−4】

【0035】
【表1−5】

【0036】
【表2−1】

【0037】
【表2−2】

【0038】
【表2−3】

【0039】
【表2−4】

【0040】
【表2−5】

【0041】
【表3−1】

【0042】
【表3−2】

【0043】
【表3−3】

【0044】
【表3−4】

【0045】
【表3−5】

【0046】
C.ブロッコリー植物の育種
本発明の1つの態様は、ブロッコリー系統BRM 51-1210とBRL 51-1128を交配させることを含む、ブロッコリーハイブリッドPX 05181808の種子を生産するための方法に関する。あるいは、本発明の他の具体例においては、ハイブリッドPX 05181808、系統BRM 51-1210または系統BRL 51-1128は、それ自身と、またはいずれかの第2の植物と交配させることができる。かかる方法は、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の増殖のために用いることができ、また、ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128に由来する植物を生産するために用いることができる。ハイブリッドPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128に由来する植物は、特定の具体例においては、新規のブロッコリー品種の開発のために用いることができる。
【0047】
1以上の出発品種を用いる新しい品種の開発は、当該技術分野において周知である。本発明によれば、ハイブリッドPX 05181808の交配とその後のかかる周知の方法による複数世代の育種によって新しい品種を作出することができる。新しい品種は、いずれかの第2の植物と交配させることによって作出することができる。新規な系統を開発する目的のために交配させるかかる第2の植物の選択においては、それ自身が1以上の選択された望ましい特徴を示すか、またはハイブリッドの組み合わせの場合に望ましい特徴(単数または複数)を示すかのいずれかである植物を選択することが所望され得る。最初の交配を行った後に、新しい品種を生産するために単系交配および選択を行う。均一な系統を開発するためには、多くの場合、5世代以上の自殖および選択を行う。
【0048】
新しい品種の均一な系統は、倍加半数体の方法によっても開発することができる。この技術は、複数世代の自殖および選択を必要とすることなく、純粋育種系統の作出を可能にする。この様式では、純粋育種系統をわずか1世代で生産することができる。半数体の胚は、小胞子、花粉、葯培養物、または子房培養物から生産することができる。次いで、半数体の胚は、自発的にまたは化学処理(例えば、コルヒチン処理)によって倍加させることができる。あるいは、半数体の胚を半数体の植物へと生長させ、染色体倍加を誘導するように処理をすることができる。いずれの場合にも、稔性のホモ接合型植物が得られる。本発明に従い、ホモ接合型系統を得るために、本発明の植物およびその後代と組み合わせていずれのかかる技術も用いることができる。
【0049】
戻し交配もまた、近交系植物を改良するために用いることができる。戻し交配は、特定の望ましい形質を、1つの近交系または非近交系の集団から、その形質を持たない近交系に移行させる。これは、例えば、優れた近交系(A)(反復親)を、目的の形質に関する1つまたは複数の適切な遺伝子座を持つドナー近交系(非反復親)に対して最初に交配することによって達成することができる。次いで、この交配の後代を、上記の優れた反復親(A)に交配して戻し、続いて、得られた後代において、上記非反復親から移行されるべき所望の形質についての選択を行う。上記所望の形質についての選択を伴う5世代以上の戻し交配の後、後代は、上記移行した特徴を有するが、ほとんどまたはほぼ全ての他の遺伝子座については上記優れた親と同じである。最後の戻し交配世代は、上記移行した形質について純粋な育種後代を得るために自殖される。
【0050】
本発明の植物は、植物の遺伝的背景の優れた性質に基づく新しい系統の開発に特に良く適合する。新規なブロッコリー系統を開発する目的でPX 05181808ならびに/またはブロッコリー系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128と交配させる第2の植物の選択においては、典型的には、それら自身が1以上の選択された望ましい特徴を示すか、またはハイブリッドの組み合わせの場合に望ましい特徴(単数または複数)を示すかのいずれかである植物を選択することが好ましい。望ましい形質の例としては、特定の具体例においては、高い種子収量、高い種子発芽、苗の生長力、高い収量、病害耐性または抵抗性、ならびに土壌および気候条件への適応性を挙げることができる。消費者主導の形質(例えば、結球の形状、栄養価、および味)は、本発明によって開発されるブロッコリー植物の新しい系統に取り込まれ得る形質の他の例である。
D.品質の特徴
【0051】
上記のように、ハイブリッドPX 05181808は望ましい農業形質を示す。ハイブリッドPX 05181808の品質の特徴は、他の品種と比較した品質の形質の客観的分析の対象であった。上記分析の結果を以下に示す。
【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

測定可能なグルコイベリンが存在しない(MSP)
【0054】
E.本発明のさらなる具体例
本発明の特定の態様においては、少なくとも第1の所望の遺伝形質を含むように改変した本明細書中に記載する植物を提供する。かかる植物は、1つの具体例においては、戻し交配と呼ばれる植物育種技術によって作出することができ、ここでは、戻し交配技術により、植物に導入される遺伝子座に加えて1つの品種の本質的に全ての形態学的および生理学的特徴が回復する。本明細書中で用いる場合は、用語、単一遺伝子座変換植物は、戻し交配と呼ばれる植物育種技術によって開発され、戻し交配技術により、品種に導入される上記単一遺伝子座に加えて上記品種の本質的に全ての形態学的および生理学的特徴が回復したブロッコリー植物をいう。本質的に全ての形態学的および生理学的特徴は、同じ環境において比較した場合に、戻し交配または導入遺伝子の直接導入の間に生じる可能性がある偶然の変異形質以外に存在する植物の特徴が回復することを意味する。
【0055】
戻し交配法は、現存する品種を改良するため、または現存する品種に1つの特徴を導入するために、本発明とともに用いることができる。所望の特徴についての遺伝子座を提供する親ブロッコリー植物は、非反復親またはドナー親と呼ばれる。この技術用語は、非反復親が戻し交配プロトコールにおいて一度用いられ、したがって、復帰しないという事実をいう。非反復親からの1つまたは複数の遺伝子座が移行される親ブロッコリー植物は、それが戻し交配プロトコールにおいて数回使用されるため、反復親として知られている。
【0056】
典型的な戻し交配プロトコールにおいては、注目する対象である元の品種(反復親)を、注目する対象である導入しようとする単一の遺伝子座を有する第2の品種(非反復親)と交配させる。この交配により得られる後代を、その後、再び反復親と交配させ、非反復親から導入された単一の遺伝子座に加えて反復親の本質的に全ての形態学的および生理学的特徴が変換された植物において回復しているブロッコリー植物が得られるまで、上記プロセスを繰り返す。
【0057】
適切な反復親の選択は、戻し交配プロセスを成功させるために重要な工程である。戻し交配プロトコールの目的は、元の品種の単一の形質または特徴を変更あるいは置換することである。これを達成するために、残りの所望の遺伝的構成の本質的に全てを維持したまま、反復品種の単一の遺伝子座を非反復親に由来する所望の遺伝子座で改変または置換し、したがって、元の品種の所望の生理学的および形態学的構成を維持する。特定の非反復親の選択は、戻し交配の目的に依存する;主な目的の1つは、いくつかの商業上望ましい形質を植物に付加することである。正確な戻し交配プロトコールは、変更される特徴または形質、および反復親と非反復親との間での遺伝的距離に依存する。移行する特徴が優性の対立遺伝子である場合には戻し交配方法は単純化されるが、劣性の対立遺伝子または相加的対立遺伝子(劣性と優性の間)もまた導入することができる。この場合、所望の特徴がうまく移行されたかどうかを決定するために、後代の試験を導入することが必要となる場合がある。
【0058】
1つの具体例においては、本明細書中に記載する植物が反復親である戻し交配の後代のブロッコリー植物は、同じ環境条件において生育させた場合に5%の有意水準で決定される、(i)非反復親由来の所望の形質、ならびに(ii)反復親の全ての生理学的および形態学的特徴を含む。
【0059】
新しい品種は、2つより多い親から開発することもできる。改変型の戻し交配として知られている技術は、戻し交配の間に異なる反復親を使用する。改変型の戻し交配は、元の反復親を特定のより望ましい特徴を有している品種で置き換えるために用いることができるか、あるいは、各々から様々な望ましい特徴を得るために複数の親を使用することができる。
【0060】
特定の形質と関連する分子マーカーの開発により、本明細書中に示すごとく、確立された生殖細胞系統にさらなる形質を付加することが可能であり、最終結果は、1つの新しい形質または複数の形質が付加された実質的に同系の生殖質となる。分子育種は、例えば、MooseおよびMumm, 2008(Plant Physiology, 147: 969-977)および他の文献に記載されるごとく、1つまたは多数の形質もしくはQTLを優れた系統に組み込むための機構を提供する。この分子育種により促進される、1つの形質または複数の形質の優れた系統への移動には、隣接しているかまたは関与するマーカーアッセイの使用での組み込まれたゲノム断片の同定の機構による、注目する特定の形質と関連する特定のゲノム断片の、優れた系統への取り込みが含まれ得る。本明細書中で示す具体例においては、例えば、1個、2個、3個、または4個のゲノム遺伝子座を、この方法論により優れた系統に組み込むことができる。さらなる遺伝子座を含有しているこの優れた系統をハイブリッド子孫を生産するために別の親である優秀な系統とさらに交配させる場合には、少なくとも8個の別のさらなる遺伝子座をハイブリッドに組み込むことが可能である。これらのさらなる遺伝子座は、例えば、病害抵抗性また果実の品質の形質のような形質を付与し得る。1つの具体例においては、各遺伝子座が別々の形質を付与し得る。別の具体例においては、遺伝子座はホモ接合型であり、ハイブリッドに1つの形質を付与する各々の親系統の中に存在することが必要であり得る。さらに別の具体例においては、複数の遺伝子座を、所望の形質の単一の頑強な表現型を付与するために組み合わせることができる。
【0061】
新しい近交系の開発においては通常選択されないが、戻し交配技術によって改良することができる多数の単一遺伝子座形質が同定されている。単一遺伝子座形質は、遺伝子組換えであってもよく、そうでなくてもよい;これら形質の例としては、除草剤抵抗性、細菌性病害、真菌性病害またはウイルス性病害に対する抵抗性、昆虫抵抗性、改変された脂肪酸または炭水化物代謝、ならびに変更された栄養価が挙げられるが、これらに限定されない。これらは、一般的には、核を介して遺伝する遺伝子を含む。
【0062】
単一遺伝子座が優性形質として作用する場合は、直接的な選択を適用することができる。この選択プロセスについては、最初の交配の後代を、戻し交配の前にウイルス抵抗性および/または対応する遺伝子の存在についてアッセイする。選択によって所望の遺伝子および抵抗性形質を持たないいずれの植物も除外し、上記形質を有する植物だけをその後の戻し交配に用いる。その後、全てのさらなる戻し交配世代についてこのプロセスを繰り返す。
【0063】
育種のためのブロッコリー植物の選択は、必ずしも植物の表現型には依存せず、代わりに遺伝的調査に基づくことができる。例えば、注目する形質と遺伝的に密接に連鎖している適切な遺伝的マーカーを利用することができる。これらマーカーの1つは、特定の交配の子孫における形質の有無を同定するために用いることができ、かつ、継続される育種の間の後代の選択において用いることができる。この技術は通常、マーカー支援選択という。植物における注目する形質の相対的な有無を同定することができるいずれの他のタイプの遺伝的マーカーまたは他のアッセイも、育種目的に有用であり得る。マーカー支援選択の手順は当該技術分野において周知である。かかる方法は、劣性形質および変化する表現型の場合、あるいは従来のアッセイがより高価であるか、時間を要するか、または他の不都合がありうる場合に、特に有用である。本発明に従って用いることができる遺伝的マーカーのタイプとしては、以下が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されない:単純配列長多型(SSLP)(Williamsら, Nucleic Acids Res., 18: 6531-6535, 1990)、ランダム増幅多型DNA(RAPD)、DNA増幅フィンガープリンティング(DAF)、配列特性化増幅領域(SCAR)、任意プライムポリメラーゼ連鎖反応(AP-PCR)、増幅断片長多型(AFLP)(EP 534 858、特に、参照により全体が本明細書中に組み込まれる)、および一塩基多型(SNP)(Wangら, Science, 280:1077-1082, 1998)。
【0064】
F.遺伝子操作によって導かれる植物
戻し交配によっても、直接的にも植物に導入することができる多数の有用な形質は、遺伝的形質転換技術によって導入されるものである。したがって、遺伝的形質転換は選択された導入遺伝子を本発明の植物に挿入するために用いることができ、あるいは、戻し交配によって導入することができる導入遺伝子の調製のために用いることもできる。当業者に周知であり、多数の作物種に適用できる植物の形質転換方法としては、エレクトロポレーション、微粒子銃、アグロバクテリウム媒介形質転換、およびプロトプラストによる直接のDNA取込みが挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
エレクトロポレーションによって形質転換を行うために、脆弱な組織、例えば、細胞の懸濁培養物または胚発生カルスを使用することができ、また代わりに、未成熟な胚または他の有機組織を直接的に形質転換することもできる。この技術においては、選択した細胞をペクチン分解酵素(ペクトリアーゼ)に曝露することによってその細胞壁を部分的に分解するか、または制御された様式で組織を機械的に傷つけるであろう。
【0066】
形質転換するDNAセグメントを植物細胞に送達するための有効な方法は、微粒子銃である。この方法では、粒子を核酸でコーティングし、これを推進力により細胞へと送達する。例示的な粒子としては、タングステン、白金、および好ましくは、金で構成されるものが挙げられる。上記微粒子銃のために、懸濁状態の細胞をフィルターまたは固形培地上で濃縮する。あるいは、未成熟な胚または他の標的細胞を固形の培養培地上に配列することもできる。砲撃する細胞を、巨大粒子発射阻止プレート下に適当な距離で配置する。
【0067】
加速によってDNAを植物細胞へと送達するための方法の例示的具体例は、DNAまたは細胞でコーティングされた粒子を、スクリーン(例えば、ステンレス鋼またはNytexスクリーンを介して、標的細胞で覆われた表面上へと推進するために用いることができるBiolistics Particle Delivery Systemである。上記スクリーンは、粒子が大きな凝集体の状態で受容細胞へと送達されないように、上記粒子を分散させる。微粒子銃技術は広く応用することが可能であり、事実上いずれの植物種も形質転換するために用いることができる。
【0068】
アグロバクテリウム媒介導入は、遺伝子座を植物細胞に導入するための広く応用できる別の系である。上記技術の利点は、植物の全組織にDNAを導入することができ、それによりプロトプラストから完全な植物を再生させる必要性を回避することである。近代のアグロバクテリウム形質転換ベクターは、大腸菌ならびにアグロバクテリウムの中で複製させることができ、簡単な操作を可能にする(Kleeら, Bio-Technology, 3(7) : 637-642, 1985)。さらに、アグロバクテリウム媒介遺伝子導入用のベクターにおける最近の技術的進歩により、様々なポリペプチドをコードする遺伝子を発現することができるベクターの構築を促進するための上記ベクター内の遺伝子および制限部位の配置が改良された。記載するベクターは、挿入されたポリペプチドをコードする遺伝子の直接的発現のためのプロモーターおよびポリアデニル化部位に隣接して挟まれる、便利なマルチリンカー領域を有する。加えて、病原性Ti遺伝子および非病原性Ti遺伝子の双方を保有しているアグロバクテリウムを、形質転換のために用いることができる。
【0069】
アグロバクテリウム媒介形質転換が有効である植物の系統においては、遺伝子座移行の容易かつ定義された性質の理由から、これが最適な方法である。DNAを植物細胞に導入するためのアグロバクテリウム媒介植物組込みベクターの使用は、当該技術分野において周知である(Fraleyら, Bio/ Technology, 3: 629-635, 1985;米国特許第5,563,055号)。
【0070】
また、植物プロトプラストの形質転換は、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーション、およびこれらの処理の組合せに基づく方法を使用して達成することもできる(例えば、Potrykusら, Mol. Gen. Genet., 199: 183-188, 1985: Omirullehら, Plant Mol. Biol., 21(3): 415-428, 1993; Frommら, Nature, 312: 791-793, 1986; Uchimiyaら, Mol. Gen. Genet., 204: 204, 1986; Marcotteら, Nature, 335: 454, 1988を参照)。植物の形質転換および外来性遺伝子エレメントの発現は、Choiら(Plant Cell Rep., 13; 344-348, 1994)およびEllulら(Theor. Appl. Genet., 107: 462-469, 2003)の中で説明されている。
【0071】
多数のプロモーターが、これらに限定されないが、選択マーカー、スコアマーカー、有害生物抵抗性、病害抵抗性、栄養強化のための遺伝子、および農業上目的のいずれかの他の遺伝子を含むいずれかの注目する遺伝子の植物遺伝子発現について有用性を有する。植物遺伝子の発現に有用な構成的プロモーターの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:単子葉植物(例えば、Dekeyserら, Plant Cell, 2; 591, 1990; TeradaおよびShimamoto, Mol. Gen. Genet., 220: 389, 1990を参照)を含めた大部分の植物組織(例えば、Odelら, Nature, 313: 810, 1985を参照)において構成的で高レベルの発現をもたらすカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)P-35Sプロモーター;CaMV 35S プロモーターの直列に重複したバージョンである、強化された35Sプロモーター(P-e35S)、ノパリンシンターゼプロモーター(Anら, Plant Physiol., 88: 547, 1988)、オクトピンシンターゼプロモーター(Frommら, Plant Cell, 1: 977, 1989);ならびに、米国特許第5,378,619号に記載されるゴマノハグサモザイクウイルス(P-FMV)プロモーター、およびP-FMVのプロモーター配列が直列に重複しているFMVプロモーターの強化バージョン(P-eFMV);カリフラワーモザイクウイルス19Sプロモーター;サトウキビ桿状ウイルスプロモーター;コメリナイエローモットルウイルスプロモーター;ならびに、植物細胞中で発現することが知られている他の植物DNAウイルスプロモーター。
【0072】
また、環境、ホルモン、化学的、および/または発生のシグナルに応答して調節される多様な植物遺伝子プロモーターも、植物細胞中での作動可能に連結した遺伝子の発現のために用いることができ、(1)熱(Callisら, Plant Physiol., 88: 965, 1988)、(2)光(例えば、エンドウrbcS-3Aプロモーター、Kuhlemeierら, Plant Cell , 1: 471, 1989; トウモロコシrbcSプロモーター、SchaffnerおよびSheen, Plant Cell, 3: 997, 1991;またはクロロフィルa/b結合タンパク質プロモーター、Simpsonら, EMBO J., 4: 2723, 1985)、(3)ホルモン、例えば、アブシジン酸(Marcotteら, Plant Cell, 1: 969, 1989)、(4)創傷(例えば、wunl、Siebertzら, Plant Cell, 1: 961, 1989);あるいは、(5)化学物質(例えば、ジャスモン酸メチル、サリチル酸、または薬害軽減剤)によって調節されるプロモーターを含む。器官特異的プロモーター(例えば、Roshalら, EMBO J., 6: 1155, 1987; Schernthanerら, EMBO J., 7: 1249, 1988; Bustosら, Plant Cell, 1: 839, 1989)を使用することも有効であり得る。
【0073】
本発明の植物に導入することができる例示的な核酸としては、例えば、別の種由来のDNA配列または遺伝子、または同じ種を起源とするかもしくは同じ種の中に存在するが、伝統的な繁殖または育種技術ではなく遺伝子操作方法によって受容細胞に取り込まれる遺伝子または配列が挙げられる。しかしながら、用語「外来」はまた、形質転換される細胞中に通常は存在しない遺伝子、またはおそらく単に形質転換するDNAセグメントもしくは遺伝子において見出されるとおりの形態、構造などでは存在しない遺伝子、または通常存在し、天然の発現パターンとは異なる様式で発現させること、例えば、過剰発現させることを望む遺伝子をも意味するように意図される。したがって、用語「外来」遺伝子またはDNAは、類似する遺伝子が受容細胞中に既に存在しているかどうかに関わらず、受容細胞に導入されるいずれかの遺伝子またはDNAセグメントを意味するように意図される。外来性DNAに含まれるDNAのタイプとしては、植物細胞中に既に存在しているDNA、別の植物由来のDNA、異なる生物由来のDNA、または外部で作成されたDNA(例えば、遺伝子のアンチセンスメッセージを含有しているDNA配列または遺伝子の合成もしくは修飾されたバージョンをコードするDNA配列)を挙げることができる。
【0074】
数千とは言わないまでも数百の異なる遺伝子が知られており、これらは本発明のブロッコリー植物に導入できる可能性がある。ブロッコリー植物に導入するために選択することができる特定の遺伝子および対応する表現型の非限定的な例としては、昆虫耐性のための1以上の遺伝子(例えば、バチルス・チューリンゲンシス(B.t.)遺伝子)、有害生物耐性、例えば、真菌性病害制御のための遺伝子、除草剤耐性、例えば、グリホサート耐性を付与する遺伝子、および質の改良、例えば、収量、栄養強化、環境もしくはストレス耐性、または植物の生理、生育、発達、形態または植物の生産物におけるいずれかの望ましい変化のための遺伝子が挙げられる。例えば、構造遺伝子としては、参照により全体が本明細書中に組み込まれるWO 99/ 31248、参照により全体が本明細書中に組み込まれる米国特許第5,689,052号、参照により全体が本明細書中に組み込まれる米国特許第5,500,365号および同第5,880,275号に記載されているバチルス昆虫制御タンパク質遺伝子を含む、昆虫耐性を付与するいずれの遺伝子も挙げられるが、これらに限定されない。別の具体例において、構造遺伝子は、これらに限定されないが、参照により全体が本明細書中に組み込まれる米国特許第5,633,435号に記載されているアグロバクテリウムCP4系統のグリホサート耐性EPSPS遺伝子(aroA: CP4)、または参照により全体が本明細書中に組み込まれる米国特許第5,463,175号に記載されているグリホサート酸化還元酵素遺伝子(GOX)を含む遺伝子によって付与されるような、除草剤グリホサートに対する耐性を付与することができる。
【0075】
あるいは、DNAをコードする配列は、内在性遺伝子の発現の標的化された抑制を引き起こす非翻訳RNA分子をコードすることによって、例えば、アンチセンスまたはコサプレッション媒介機構を介して、これらの表現型に影響できる(例えば、Birdら, Biotech. Gen. Engin. Rev., 9: 207, 1991を参照)。RNAは、所望の内在性mRNA産物を切断するように操作された触媒性RNA分子(すなわち、リボザイム)であってもよい(例えば、GibsonおよびShillito, Mol. Biotech., 7: 125, 1997を参照)。したがって、注目する表現型または形態の変化を発現するタンパク質またはmRNAを生産するいずれの遺伝子も、本発明の実施のために有用である。
G.定義
【0076】
本明細書中の説明および表において、多数の用語が用いられる。明細書および特許請求の範囲の明確かつ一貫した理解を提供するために、以下の定義を提供する:
【0077】
対立遺伝子:遺伝子座の1以上の代替形態のいずれかであり、その対立遺伝子のすべてが1つの形質または特徴に関連する。二倍体の細胞または生物においては、所定の遺伝子の2つの対立遺伝子が1対の相同染色体上の対応する遺伝子座を占める。
【0078】
戻し交配:育種者が、ハイブリッド後代、例えば、第1世代ハイブリッド(F1)を、上記ハイブリッド後代の親の一方と繰り返し交配して戻すプロセス。戻し交配は、1つの遺伝的背景から別の遺伝的背景に、1以上の単一遺伝子座変換を導入するために用いることができる。
【0079】
交配:2つの親植物を交配すること。
【0080】
他家受粉:異なる植物由来の2つの配偶子の結合による受精。
【0081】
二倍体:2組の染色体を有している細胞または生物。
【0082】
除雄:植物の雄性器官を除去すること、または細胞質もしくは核の遺伝因子または雄性不稔をもたらす化学物質を用いて上記器官を不活化すること。
【0083】
酵素:生物学的反応において触媒として働くことができる分子。
【0084】
F1ハイブリッド:2つの非同質遺伝子植物の交配の第1世代の後代。
【0085】
遺伝子型:細胞または生物の遺伝的構成。
【0086】
半数体:二倍体における2組の染色体のうちの1組を有している細胞または生物。
【0087】
連鎖:同じ染色体上の対立遺伝子が、それらの伝達が独立である場合に偶然によって期待されるよりも頻繁に、一緒に分離する傾向にある現象。
【0088】
マーカー:環境分散の要素が全く無い、すなわち遺伝率が1である、容易に検出できる表現型であり、好ましくは共優性の様式で遺伝する(二倍体ヘテロ接合体において1つの遺伝子座の双方の対立遺伝子が容易に検出できる)もの。
【0089】
表現型:遺伝子発現の顕現である、細胞または生物の検出可能な特徴。
【0090】
量的形質遺伝子座(QTL):量的形質遺伝子座(QTL)は、通常連続的に分布する数値表示可能な形質をある程度制御する遺伝子座をいう。
【0091】
抵抗性:本明細書中で使用される場合は、用語「抵抗性」および「耐性」は、特定の有害生物、病原体、非生物的影響または環境条件に対して症状を示さない植物を説明するために互換的に用いられる。これらの用語は、いくらか症状を示すが、なおも販売することができる生産物を許容可能な収量で生産することができる植物を説明するためにも用いられる。抵抗性または耐性と称されるいくつかの植物には、単に、上記植物の発育が阻止され収量が減少してもなお、依然として作物を生産することができるという意味においてのみ抵抗性または耐性である。
【0092】
再生:組織培養物からの植物の発生。
【0093】
英国王立園芸協会(RHS)カラーチャート値:RHSカラーチャートは、いずれの色の正確な同定も可能な標準化された参照である。このチャート上の色の指定は、その色調、明度、および彩度を記載している。色は、グループの名称、シート番号、および文字を同定することにより、RHSカラーチャートで正確に命名される(例えば、黄色-橙色群19Aまたは赤色群41B)。
【0094】
自家受粉:同じ植物の葯から柱頭への花粉の移動。
【0095】
単一遺伝子座変換(コンバージョン)植物:戻し交配と呼ばれる植物育種技術によって開発され、戻し交配技術を介しておよび/または遺伝的形質転換によって品種へと移動された上記単一遺伝子座の特徴に加えて、ブロッコリー品種の本質的に全ての所望の形態学的および生理学的特徴が回復している植物。
【0096】
実質的に等価:比較した場合に、平均から統計学的な有意差(例えば、p = 0.05)を示さない特徴。
【0097】
組織培養物:同一のもしくは異なるタイプの単離された細胞または植物の部分へと組織化されたかかる細胞の集合を含む組成物。
【0098】
導入遺伝子:形質転換によってブロッコリー植物のゲノム中に導入された配列を含む遺伝子座。
【0099】
H.寄託情報
上記に開示した、特許請求の範囲に記載するブロッコリーハイブリッドPX 05181808ならびに系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の寄託を、アメリカンタイプカルチャーコレクション((ATCC), 10801 University Blvd., Manassas, VA 20110-2209)に行った。寄託日は、各々、2011年4月13日、2011年5月4日、および2008年12月23日である。ブロッコリーハイブリッドPX 05181808、ならびに近交系親系統BRM 51-1210およびBRL 51-1128の寄託された種子の受託番号は、各々、ATCC受託番号PTA-11824、ATCC受託番号PTA-11868、およびATCC受託番号PTA-9674である。特許が付与されれば、上記寄託についての全ての制限が解除され、上記寄託は、37 C.F.R. §1.801-1.809の全ての要件を満たすよう意図される。上記寄託は、30年の期間、または最後の請求の後5年間、または特許の有効期間のいずれか長い期間の間、寄託機関において維持され、その期間中において必要であれば交換される。
【0100】
上記発明は、明確化および理解の目的のために、例示および実施例によっていくらか詳細に記載してきたが、特定の変更および修正が、添付の特許請求の範囲によってのみ制限されるような本発明の範囲内において行われ得ることは明らかである。
【0101】
本明細書中で引用した全ての参考文献は、参照により明確に本明細書中に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロッコリー系統BRM 51-1210の少なくとも第1の組の染色体を含むブロッコリー植物であって、該系統の種子の試料がATCC受託番号PTA-11868下で寄託されている該ブロッコリー植物。
【請求項2】
ブロッコリー系統BRM 51-1210の少なくとも第1の組の染色体を含む種子であって、該系統の種子の試料がATCC受託番号PTA-11868下で寄託されている該種子。
【請求項3】
近交系である、請求項1に記載の植物。
【請求項4】
ハイブリッドである、請求項1の植物。
【請求項5】
近交系である、請求項2に記載の種子。
【請求項6】
ハイブリッドである、請求項2に記載の種子。
【請求項7】
ハイブリッド植物がブロッコリーハイブリッドPX 05181808であり、該ハイブリッドPX 05181808の種子の試料がATCC受託番号PTA-11824下で寄託されている、請求項4に記載の植物。
【請求項8】
ブロッコリーハイブリッドPX 05181808の種子として定義される、該ハイブリッドPX 05181808の種子の試料がATCC受託番号PTA-11824下で寄託されている、請求項6に記載の種子。
【請求項9】
系統BRM 51-1210の種子として定義される、請求項2に記載の種子。
【請求項10】
請求項1の植物の植物部分。
【請求項11】
葉、胚珠、小花、花粉、結球、または細胞としてさらに定義される、請求項10に記載の植物部分。
【請求項12】
請求項7に記載のブロッコリー植物の全ての生理学的および形態学的特徴を有しているブロッコリー植物。
【請求項13】
請求項1に記載の植物の再生可能な細胞の組織培養物。
【請求項14】
胚、成長点、子葉、花粉、葉、葯、根、根端、雌ずい、花、種子、および茎からなる群より選択される植物部分からの細胞またはプロトプラストを含む、請求項13に記載の組織培養物。
【請求項15】
請求項13に記載の組織培養物から再生されるブロッコリー植物。
【請求項16】
(a)増殖させることができる組織を請求項1の植物から収集する工程;
(b)該組織を培養し、増殖させたシュートを得る工程;および
(c)該増殖させたシュートを発根させ、発根した小植物体を得る工程
を含む、請求項1に記載の植物を栄養増殖させる方法。
【請求項17】
該発根した小植物体から少なくとも第1の植物を生育させる工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(a)系統BRM 51-1210の植物を所望の形質を含む第2のブロッコリー植物と交配してF1後代を得る工程、ここに、該系統の種子の試料が、ATCC受託番号PTA-11868下で寄託されている;
(b)所望の形質を含むF1後代を選択する工程;
(c)選択したF1後代を系統BRM 51-1210の植物と戻し交配して、戻し交配後代を得る工程;
(d)所望の形質ならびにブロッコリー系統BRM 51-1210の生理学的および形態学的特徴を含む戻し交配後代を選択する工程;ならびに
(e)工程(c)と(d)を3回以上繰り返して、所望の形質を含む選択した第4代以上の戻し交配後代を得る工程
を含む、所望の形質をブロッコリー系統に導入する方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法により生産されるブロッコリー植物。
【請求項20】
形質が付加された植物を生産する方法であって、該形質を付与する導入遺伝子を、ハイブリッドPX 05181808または系統BRM 51-1210の植物に導入することを含み、該ハイブリッドおよび系統の種子の試料が、各々、ATCC受託番号PTA-11824およびATCC受託番号PTA-11868下で寄託されている該方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法により生産される植物。
【請求項22】
導入遺伝子を含む、請求項1に記載の植物。
【請求項23】
導入遺伝子が、雄性不稔性、除草剤耐性、昆虫抵抗性、有害生物抵抗性、病害抵抗性、改変された脂肪酸代謝、環境ストレス耐性、改変された炭水化物代謝、および改変されたタンパク質代謝からなる群から選択される形質を付与する、請求項22に記載の植物。
【請求項24】
単一遺伝子座変換を含む、請求項1に記載の植物。
【請求項25】
単一遺伝子座変換が、雄性不稔性、除草剤耐性、昆虫抵抗性、有害生物抵抗性、病害抵抗性、改変された脂肪酸代謝、環境ストレス耐性、改変された炭水化物代謝、および改変されたタンパク質代謝からなる群から選択される形質を付与する、請求項24に記載の植物。
【請求項26】
(a)ハイブリッドPX 05181808または系統BRM 51-1210のブロッコリー植物を、それ自身または第2のブロッコリー植物と交配する工程、ここに、該ハイブリッドおよび系統の種子の試料が、各々、ATCC受託番号PTA-11824およびATCC受託番号PTA-11868下で寄託されている;および
(b)ハイブリッドPX 05181808または系統BRM 51-1210に由来するブロッコリー植物の種子を形成させる工程
を含む、ハイブリッドPX 05181808または系統BRM 51-1210の少なくとも1つに由来する植物の種子を生産する方法。
【請求項27】
さらに、
(c)該ハイブリッドPX 05181808またはBRM 51-1210に由来するブロッコリー種子から成長させた植物を自殖させて、ハイブリッドPX 05181808または系統BRM 51-1210に由来するさらなるブロッコリー種子を生産する工程;
(d)該工程(c)のハイブリッドPX 05181808または系統BRM 51-1210に由来するさらなるブロッコリー種子を成長させて、ハイブリッドPX 05181808または系統BRM 51-1210に由来するさらなるブロッコリー植物を生産する工程;および
(e)(c)および(d)の交配および成長させる工程を繰り返し、少なくとも第1のさらなるハイブリッドPX 05181808または系統BRM 51-1210に由来するブロッコリー植物を作出する工程
を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第2のブロッコリー植物がブロッコリー近交系統のものである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
系統BRM 51-1210を系統BRL 51-1128と交配する工程を含む請求項26に記載の方法であって、該系統の種子の試料が、各々、ATCC受託番号PTA-11868およびATCC受託番号PTA-9674下で寄託されている該方法。
【請求項30】
さらに、
(f)該さらなるハイブリッドPX 05181808またはBRM 51-1210に由来するブロッコリー植物を第2のブロッコリー植物と交配して、ハイブリッド後代植物の種子を生産する工程
を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
請求項7に記載の植物の植物部分。
【請求項32】
葉、胚珠、小花、花粉、結球、または細胞としてさらに定義される、請求項31に記載の植物部分。
【請求項33】
請求項1に記載の植物をそれ自身または第2のブロッコリー植物と交配させる工程、および種子を形成させる工程を含む、ブロッコリー種子を生産する方法。
【請求項34】
(a)請求項1に記載の植物を得る工程、ここに、該植物は成熟するまで栽培される工程;および
(b)該植物からブロッコリーを収集する工程
を含む、ブロッコリーを生産する方法。
【請求項35】
単一遺伝子座変換を含む系統BRL 51-1128の植物を得る工程、および該植物を第2のブロッコリー植物と交配させる工程を含む、単一遺伝子座変換を含む後代植物を生産する方法であって、前記系統BRL 51-1128の種子の試料が、ATCC受託番号PTA-9674下で寄託されている該方法。

【公開番号】特開2013−46608(P2013−46608A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−133738(P2012−133738)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(500195035)セミニス・ベジタブル・シーズ・インコーポレイテツド (17)
【氏名又は名称原語表記】Seminis Vegetable Seeds,Inc.
【Fターム(参考)】