ブロメラインインヒビター及びブロメラインインヒビター前駆体の組換え体調製物
本発明は、一般的に、ブロメライン、具体的には、タンパク質のこの複雑な混合物に含まれる活性化合物に関する。本発明は、ブロメラインに見出される、組換え発現されたブロメラインインヒビター前駆体及びブロメラインインヒビターを提供する。組換え発現されたインヒビターは、植物抽出物からのブロメライン又はそのタンパク質画分よりも、疾患及び症状の治療の点に優れた効果を有することが見出されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にブロメライン、具体的には、タンパク質のこの混合物に含まれる活性化合物に関する。本発明は、ブロメライン中に見出される、組換え発現ブロメラインインヒビター前駆体及びブロメラインインヒビターを提供する。該組換え発現インヒビターは、ブロメライン又は植物抽出物由来のそのタンパク質画分よりも、疾患及び症状の治療の点でより優れた効果を有することが見出されている。
【背景技術】
【0002】
ブロメラインは、生化学的にはパイナップルの幹からの粗抽出物として定義され、薬理学的にはシステインプロテアーゼの混合物として定義される。その多数の陽性効果は、タンパク質分解性、特に線維素溶解性から少なくとも部分的に起こる。ブロメラインの抗腫瘍効果は、タンパク質分解活性とは異なった効果に依拠することも知られており、未知のメカニズムが未だ存在する。ブロメラインは、ブロメリア科植物の組織、特に幹及び果実に見出されるタンパク質分解酵素の包括的名称である。ブロメラインの最も一般的な形態は、パイナップル植物(アナナス・コモスス(Ananas comosus))の幹から得られた様々な成分の混合物である。幹ブロメライン(以下、ブロメラインと称する)は、少なくとも5つのタンパク質分解酵素を含むが、酸性ホスファターゼ及びペルオキシダーゼを含む非-タンパク質分解酵素を含むことも知られている;アミラーゼ及びセルラーゼ活性を含むこともある。加えて、様々な他の成分が存在する。
【0003】
ブロメラインの物理的抽出法は、例えば、CN1186118に開示されている。この方法は、特に、ジュースを得るための、凍結、粉砕、圧搾による予備処理、透明な液体を得るための濾過、ウルトラフィルタフィルム及び逆浸透フィルムによる濃縮、スポンジの形態で生成物を得るための凍結真空乾燥、を含む。温度、時間及びpH値の調節は、酵素活性及び収率を向上させることが報告されている。
【0004】
米国特許第3,658,651号明細書は、パイナップル植物幹から抽出されたブロメライン-含有ジュースが、重炭酸塩形態でのアニオン交換体と、弱酸官能基を有するカチオン交換体と、重炭酸塩形態での第2のアニオン交換体とのイオン交換関係において、該ジュースを通過させることによって酵素の沈殿前に精製されること、に関する。
【0005】
米国特許第4,286,064号明細書は、特にブロメライン粗抽出物の調製を開示する。パイナップル幹からのジュースは、先ず、リン酸によって約3又は4のpHに調整され、次亜塩素酸ナトリウムが、スルフヒドリル酸化に対して保護するために加えられる。不活性物質は、例えばアセトン中で沈殿され、濾過される。透明の液体はアセトンで沈殿され、沈殿物は遠心によって回収され、リン酸で酸性化され再沈殿された次亜塩素酸ナトリウム含有水で再溶解されるか、あるいは直接真空オーブンで乾燥される。この粗抽出物の更なる精製は、小分子及びタンパク質の除去のための、濾過、透析又はダイアフィルトレーション、次いで凍結乾燥前に得られた溶液を濃縮することによって行ってもよい。
【0006】
分解及び/又は他の望ましくない化学反応、例えば酸化反応、を抑制するために、特定の処理条件、例えば温度、pH、溶媒及びバッファ、及び/又は添加物、例えば安定剤及び抗酸化剤、の選択は、避けられない。
【0007】
上記の問題とは別に、粗抽出物の更なる精製が必要とされることがある。かかる精製は、例えば米国特許出願第2002/188107号に概略したHPLCによって行われる。
【0008】
従って、医薬的、皮膚用及び栄養的組成物に含有され得、そして従来のブロメライン含有製剤の上記欠点を示さない、ブロメラインの、化学的に安定でかつ純粋な医薬活性成分を提供することが非常に望まれる。
【発明の概要】
【0009】
上記の問題点は、異種的に発現されたブロメラインインヒビターであって、該ブロメラインインヒビターが可溶性形態で実質的な量で異種宿主において実質的な量で溶解して発現されているブロメラインインヒビターを提供することによって解決された。
【0010】
本発明は、ブロメラインに帰属される陽性効果が、該インヒビター単独で提供されても又は組合せで提供されてもよいことを見出したことに基づく。本インヒビターは、高い純度、特に他のタンパク質又はタンパク質断片の存在を含まずに得られ、これは減少した副作用をもたらす。本ブロメラインインヒビターは、水溶液であっても、長期間高い保存安定性を有する、ことも見出された。本ブロメラインインヒビターは、任意のペプチドを含有する医薬組成物、例えば抗生物質含有経口組成物、を安定化するために使用することもできる。
【0011】
本研究において、ブロメラインインヒビターの前駆体タンパク質(ブロメラインインヒビター前駆体、BIP)がブロメラインに含まれるシステインプロテアーゼの天然基質を示す、ことも見出されている。上記前駆体タンパク質の異種発現によって、前記の天然基質は、システインプロテアーゼの活性及び特異性を明らかにするために十分な純度の可溶性形態で入手できる。ブロメラインインヒビター前駆体タンパク質は、特にブロメラインに含まれる様々なシステインプロテアーゼの作用によって、その具体的な医薬活性成分、すなわち数種類のブロメラインインヒビターに分解するので、上記のブロメラインインヒビター前駆体タンパク質は、例えばブロメラインから生じるシステインプロテアーゼを含む医薬中の活性成分として使用することもできる。ブロメラインの作用から明らかにされたブロメラインインヒビターは、次には、システインプロテアーゼの活性を阻害し、そこでは、ブロメラインの医薬活性のみならずシステインプロテアーゼ含有組成物の任意の他の種類が変更される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ブロメラインインヒビター前駆体(BIP)の一部としてのブロメラインインヒビターIII(bi-III)を示す。示されたアミノ酸配列は、内部鎖領域を有する軽鎖及び重鎖に相当する。
【図2】図2は、ブロメラインインヒビターIIIの発現コンストラクトを示す。使用したベクター(Novagen)は、E.コリについて設計されている。選択は、β-ラクタマーゼによって達成される。溶解性は、NusA-タグと融合することによって顕著に亢進できる。
【図3】図3は、E.コリによる粗抽出物中のブロメラインインヒビターを示す。特に、E.コリRosetta 2を発現宿主として用いる、pET43.1a/BIPからの粗抽出物の10% SDS PAGE。矢印は、NusA-タグ由来の融合タンパク質、及び約75 kDaのサイズを示すブロメラインインヒビターBI-IIIを示す。左レーンは、E.コリRosetta 2で発現された対照pET43.1aを意味する。
【図4】図4は、ブロメラインインヒビター前駆体の発現を示す。特に、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)発現培養物からの100 μl上清を有する10% SDS-PAGEを示す。左レーンは、陽性BIP-クローン4を示し、右レーンは、陰性BIP-クローン5を示す。
【図5】図5は、ペプチドマスフィンガープリントによって見出されたペプチド(下線部)を有する、ブロメラインインヒビター前駆体のタンパク質配列のスキームを示す。
【図6】図6は、シグナルP後のERシグナルペプチドを示す。
【図7】図7は、システインプロテアーゼan1を含むベクターpPICZalpha(Invitrogen)を示す。前記コンストラクトは、ピキア・パストリスで発現され、ブロメラインインヒビター活性に関する定量的/定性的アッセイのために使用できる。
【図8】図8は、図7のコンストラクトを用いるピキア・パストリス中の組換えアナナインの発現を示す。高収率(45 kDaの矢印は分泌された酵母タンパク質を示す)で発現されたProenzyme(35 kDaの矢印)から活性化された(25 kDaの矢印)アナナインを有する、ピキア・パストリスKM71Hの発現培養物の上清。組換えアナナインは、ブロメラインインヒビターを試験する活性のために使用できる。
【図9】図9は、ブロメラインインヒビター前駆体のDNA(図9a)及びタンパク質(図9b)配列を示す。
【図10】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図11】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図12】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図13】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図14】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図15】図15は、該インヒビタータンパク質bi-III、bi-VI及びbi-VIIをコードするブロメラインインヒビター前駆体ブロメラインを示す。該インヒビタータンパク質は、おそらくエンドペプチターゼによって開裂される、内部ドメイン領域(ID)を共有する。インンヒビターは、ブロメラインの「標的」を示す内部鎖領域(IC)によって連結された、軽及び重鎖LC及びHCそれぞれから成り、該インヒビターの自動調節を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施態様によれば、可溶性タンパク質として実質的な量で異種的に発現されている、異種発現されたブロメラインインヒビター(BI)又はブロメラインインヒビター前駆体(BIP)が提供される。
【0014】
本明細書で用いる用語「異種的に発現された」は、一般的には起源の生物とは異なった宿主生物におけるタンパク質発現を言い、本願では、アナナス属以外の属、すなわちパイナップル植物でない属を宿主として使用する発現を言う。かかる宿主の例は、特にピチアパストリス(Pichia pastoris)又はE.コリを含む。
【0015】
本明細書で使用するブロメラインインヒビターは、そのアミノ酸配列によってブロメラインに含まれる他のインヒビターから識別される、ブロメライン粗抽出物の任意の画分に含まれる単一のインヒビターを言う。一般的には、該インヒビターの活性は、活性部位及び反応性に必要とされる特定の3次元構造に影響を与えるその近傍に予備的に依拠するが、アミノ酸のより離れたストレッチ、例えばループ及びシート構造は、インヒビターの基質親和性、並びにインヒビター表面上での基質及び水溶性へのアクセスに影響を与えることがある。
【0016】
ブロメラインインヒビターは、該インヒビターを放出するためのプロテアーゼの方法による活性化を必要とする、1以上の各々のブロメラインインヒビターの不活性な前駆体タンパク質を言う。活性化は、一方ではシステインプロテアーゼによって付与され、他方では更なるエンドペプチターゼによって付与され得る。ブロメラインインヒビター前駆体は、図15に示すように構成され得る。
【0017】
本明細書で使用する用語「実質的な量」は、1 mg/l以上、好ましくは4 mg/l以上、8 mg/l以上、12 mg/l以上、16 mg/l以上、20 mg/l以上、30 mg/l以上又は40 mg/l以上の量で、より好ましくは50 mg/l以上の量で異種的に発現された、ブロメラインインヒビター前駆体又は活性なブロメラインインヒビターを言う。
【0018】
本明細書で使用される用語「可溶性」は、対応する天然型、野生型インヒビターと同一の3次元構造を本質的に示す、インヒビター又はインヒビター前駆体を言う。このことは、該インヒビターがシステインプロテアーゼに対する所望の活性を示し、例えば再生目的のための他の基質の添加が避けられる、ことを確実にし、これは、一方では取り込みに対して改善された寛容を確実にし、他方では、該ポリペプチドの望ましくない修飾を避ける。該インヒビターは、周囲の十分な親水性アミノ酸に対して更に影響を示す、すなわち、水分子との水素結合を行う、つまり、医薬目的での使用に適合させる生物学的利用性を示す。用語「生物学的利用性」は、活性成分又は活性部分が薬物から吸収され、活性部位で利用可能になる割合及び程度を言う。経口で摂取された薬物の生物学的利用性は、分子の性質、その安定性、及び患者に投与された製剤を含む因子、例えば結腸疾患又は腸切除の結果としての減少した腸表面積、及び該薬物が食事と一緒に摂取されるか否か、によって決定される。生物学的利用性に影響を与える因子は、胃腸管からの低い吸収、肝初回通過効果、及び全身的循環に到達する前の薬物の部分的分解を含むが、これらに限定されないものを含む。本発現系は、本インヒビターの予測できない高い収量及び予測できない高い溶解性を可能にするのみならず、プロテアーセによる消化が軽減又は避けられるので高量の活性インヒビターをもたらす。
【0019】
本ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体は、例えば、第1ステップにおける植物材料からのRNA単離の方法によって、例えばTRIzol plus RNA Purification System(Invitrogen)を適用することによって、得られる。DNA及びタンパク質は、Trizol(Invitrogen)の方法によって単離できる。幹としてのデンプン豊富生物由来の多量のRNAは、デンプンがタンパク質からのRNAの分離のために必要とされるグラジエントを破壊するので、RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いて単離できる。次のステップでは、cDNAライブラリを作製することができる。これは、当業者に公知の任意の方法、例えばSMART(商標)cDNA Library Construction Kit(Clontech)を使用することによって実施できる。このcDNAは好適なプラスミド又はベクター中でライゲートされ、次いで取り扱いを簡単にする宿主生物、例えばE.コリ中で形質転換することができる。ご承知のとおり、このことは、当業者に周知の任意の方法によって行うことができる。挿入物は、標準的なDNA配列決定法の手段によって配列決定することができる。発現のために、該DNA配列は、構成的又は誘導的プロモーターの制御下で好適な発現ベクター中でライゲートすることができる。好適な発現系は、例えば、pPICZalpha(Invitrogen)であり、これは、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)のような好適な宿主中で、エレクトロポレーションのような任意の好適な技術によって形質転換することができる。異種発現のための宿主としてのピキア・パストリスは、α-1,3-マンノシルトランスフェラーゼの同族体が該生物には存在しないので、グリコシル化パターンがより高度な真核生物のそれに本質的に対応するという特定の利益を示す。発現用の他の宿主は、カンジタ・アルビカンス(Candida albicans)又は昆虫細胞株でよい。個々のブロメラインインヒビターは、ブロメラインインヒビター前駆体を提供し、組成物を含むプロテアーゼ、例えばブロメラインに供し、そして当業者に周知の方法、例えばクロマトグラフィによって該個々のインヒビターを単離することによって得てもよい。
【0020】
形質転換及びその後のタンパク質発現は、当該技術の状況で利用できるプロトコールに従って行うことができる。組換えDNA技術の必要な知識は、Maniatis他; Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版, (1989) から得られる。発現されたインヒビターの活性は、例えばブロメライン由来のシステインプロテアーゼが使用されるアッセイで容易に試験できる。かかるプロテアーゼは、基質としてのカゼインを使用することができ、それをカゼイン加水分解物に開裂/分解することができる。この変換は、定性的に及び定量的に測定できる。定性的には、固体マトリックス中にカゼインを含め、マトリックス表面に該プロテアーゼを加えることによって測定できる。カゼインの分解は、該プロテアーゼの周囲に透明な光輪の出現をもたらす。定量的には、カゼインは、カゼインを所定の濃度で溶液に準備し、異なった量のプロテアーゼを加えることによって測定できる。カゼインの加水分解物への変換は、例えば600 nmの可視範囲での波長での分光光度計の作動によって行うことができる。ご承知のとおり、試験される化合物、すなわち仮想的なブロメラインインヒビターは、サンプル中に含まれ、その効果は、プロテアーゼ及びカゼインのみを含み、試験される化合物を含まないサンプルとの比較によって測定することができる。従って、システインプロテアーゼ又はヒドロラーゼの活性の共通の検出のための他の好適なアッセイは、改変し、改造することができる。他のアッセイの例は、Bornscheuer U.T., Kazlauskas, R.J., Hydrolases in Organic Synthesis, Wiley-VCH, Weinheim (ドイツ), 1999) に見出される。組換えDNA技術の必要な知識は、例えば、Maniatis他; Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版, (1989) から得られる。仮想的ブロメラインインヒビターの阻害効果はまた、E64(Merck)のような公知の特定のシステインプロテアーゼインヒビターに匹敵し得る。
【0021】
E.コリ中での前記インヒビター前駆体及びインヒビターの発現は、ER-転移ペプチドを除くことによって可能になることを、驚くべきことに発見した。加えて、本ブロメラインインヒビター/インヒビター前駆体の収量は、ER-転移ペプチドをなお有するブロメラインインヒビター/インヒビター前駆体の異種発現と比べて、因子2、好ましくは因子3又は4、より好ましくは因子5又はそれ以上によって顕著に拡大された。任意の理論に拘束されるものではないが、ER-転移ペプチドが、発現宿主に対するER-転移ペプチドの毒性効果を示唆する細胞分割を抑制する、細胞膜への該タンパク質の結合を付与すると推測される。このことは、特に、正確な3次元構造を付与するために折り畳みタンパク質/シャペロンを使用する必要なく、ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体のE.コリでの発現を可能にする。
【0022】
従って、本発明の第1の局面では、対応するブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体のER-転移ペプチドをコードするDNAが除かれている、異種的に発現したブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が提供される。ご承知のように、ER-転移ペプチドのDNA配列の決定は、当業者の知識に従って容易に行うことができる。
【0023】
本発明の別の局面によれば、異種的に発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が提供される。BI又はBIPは、使用される発現系によってナナナス属によって付与されるものとはことなった翻訳後修飾を有する。アナナス属とは異なった生物を用いることによって、別個の翻訳後修飾(PTM)が確実に得られる。PTMは、一般に、その翻訳後のタンパク質の化学修飾を言い、そこでは、メッセンジャーRNAは、特定のポリペプチド又はタンパク質を生成するためにデコードされる。PTMは、翻訳されたタンパク質に対するその作用に従って分類される。それは、官能基又は他のタンパク質/ペプチドの付加を与え、該タンパク質を形成するアミノ酸の化学的性質を変化させ、構造的変化をもたらす。翻訳後修飾の例は、糖類が該タンパク質に添加される間のグリコシル化である。具体的な異なったグリコシル化は、次にはタンパク質の生物学的利用性に積極的に影響を与えることがある、異なった水溶性をもたらすことがある。
【0024】
当業者はご承知のように、ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の機能は、様々な異なったアミノ酸配列によって達成され得る。別の実施態様では、異種的に発現されたBI又はBIPは、BI又はBIPの各々と少なくとも90%の配列同一性を示すからである。好ましくは、この配列同一性は、少なくとも95%、98%、99%又は99.5%であり、より好ましくは少なくとも99.8%である。
【0025】
本BIP又はBIPの1つに対してそれぞれ上で述べた同一性を示すかかるBI又はBIPは、活性に必須でないアミノ酸残基の変化、すなわちもとのブロメラインインヒビターとはアミノ酸配列が異なるが生物学的機能又は活性を保持する、を含むポリペプチドである。例えば、アミノ酸は、「非-必須」アミノ酸残基で置換してよい。「非-必須」アミノ酸残基は、生物学的機能又は構造的な折り畳みを変えることなく、野生型配列から改変することができるが、必須」アミノ酸残基が生物学的機能に必要とされる、残基である。類似の機能は、通常、類似の構造的又は化学的性質を有するアミノ酸、例えば、ロイシンのイソロイシンへの置換、によって維持される。稀には、変異体は、「非-保存的」変化、例えばグリシンのトリプトファンへの置換を有することがある。これは、単一のアミノ酸残基についてのみ当てはまるものではないが、タンパク質の生物学的機能を変えることなく付加又は削除され得るアミノ酸の全体配列について当てはまる。従って、類似の小さな変化は、アミノ酸の削除、挿入又はそれらの両方を含んでもよい。一般には、より大きなポリペプチド内の短いアミノ酸配列は、タンパク質の生物学的活性又は機能に主による。従って、本発明は、BI又はBIPのホモログをも含む。タンパク質配列のホモロジー、配列類似性又は配列同一性は、例えば、確立されたソフトウェア又はコンピュータプログラム、例えば、クエリーがタンパク質又はDNAであるかに関係なく入手できる配列データベースのすべてを探索するように設計されている1セットの類似性検索プログラムを提供する、Altschul, S.F.他(J. Mol. Biol.; 215 (1990) 403-410 and Nucleic Acids Res.; 25 (1997) 3389-3402)の仕事に基づくBLAST(Basic Local Alignment and Search Tool)プログラム、を用いて、当該分野で周知の技術に従って容易に決定できる。BLASTプログラムはスピードに合わせて設計されており、離れた配列関係への感度の最小犠牲を有する。BLST検索で帰属されたスコアは、非常によく定義された統計的な解釈を有し、真の適合をランダムバックグラウンドヒットと簡単に識別する。BLASTは、世界的なアラインメントとは反対にローカルを追求する発見的アルゴリズムを使用し、よって、類似性の単離された領域のみを共有する配列間の相互関係を検出することができる。前記プログラムは、2つの配列間の同一性又は類似性の最良の断片を見い出すための、Smith及びWatermanの改変アルゴリズム(J. Mol. Biol. 147 (1981) 195-197)、及びSellersの改変アルゴリズム(Bull. Math. Biol. 46 (1984) 501-514)に基づいている。配列相同性、類似性又は同一性の程度を決定するための配列アラインメントプログラム、例えばBLASTを用いる場合に、デフォルト設定を使用でき、あるいは、好適なスコアリングマトリックス、例えばBLOSUM又はPAMが、同一性、類似性又は相同性スコアを最適化するために選択できる。
【0026】
ご承知のように、本発明の組換えで産生されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体は、生物学的活性及び植物におけるその役割を評価するために使用できる。このことは、インヒビターの場合には、特にシステインプロテアーゼとの相互作用に当てはまるが、ブロメラインに含まれるシステインプロテアーゼの天然基質を形成するブロメラインインヒビター前駆体は、例えば活性アッセイを実行するために、あるいは同一又は改良された性質を有する他の天然基質(複数)のインビトロ又はインシリコ検索のために使用できる。
【0027】
様々な理由のために導入され得るアミノ酸配列の人工的改変を説明するために、本発明はまた、相同ではないが、少なくとも上で定義された配列類似性あるいは本発明に従うブロメラインタンパク質の3次元構造又は機能を共有する、配列を包含する。ご承知のように、単一アミノ酸の交換によって、又はブロメラインインヒビターもしくはブロメラインインヒビター前駆体の性質とは異なったグリコシル化パターンの交換によって、具体的に得られる。かかる交換の1つの効果は、例えば特定の交換を有さないインヒビターと比較してより高い溶解性を得ることによる、例えば改良された生物学的利用性にあり得る。
【0028】
本発明の更に別の実施態様では、異種発現されたブロメラインインヒビターは、配列番号1〜5(図10〜14bに示すタンパク質配列に相当)のいずれかを示す。異種発現されたブロメラインインヒビター前駆体は、配列番号6(図9aに示すタンパク質配列に相当)を示す。
【0029】
配列番号1〜6を示すタンパク質の収量は、好ましくは、上記の程度までのER-転移ペプチドの省略によって拡大される。配列番号1〜6のタンパク質に相当するDNA配列は、配列番号7〜12(図10〜14aに示すDNA配列については配列番号7〜11;図9aに示すDNA配列については配列番号12)によって示される。
【0030】
本発明の実施態様によれば、異種的に発現されたタンパク質と野生型タンパク質とを識別できる前記の翻訳後修飾は、異なったグルコシル化パターンをもたらす。ポリペプチドの異種発現のために使用される異なった生物が、特に該タンパク質の生物学的利用性に影響を与える、異なったグリコシル化パターンを与えることは、当業者には周知である。
【0031】
更に別の実施態様によれば、異種的に発現されたBI又はBIPの翻訳語修飾は、酵母、昆虫細胞、植物細胞及びE.コリから成る群より選ばれる宿主生物によって提供される。かかる発現宿主の選択は、当業者の知識の範囲内にあり、高い発現を確実にするために上記インヒビター又はインヒビター前駆体をコードするヌクレオチド配列のコドンの利用の予備的適合を含む。コドンの利用は、数個のコドン、すなわち、同一の所定のアミノ酸をコードする、ポリペプチド中のアミノ酸残基を特定するヌクレオチドの三連符、の1つのための異なった生物の選択の現象を言う。かかる選択を避けるために、例えば該タンパク質をコードするDNAであって、コドンの利用は選択された発現宿主に適合されるDNAを化学的に合成することが必要であるかもしれない。このことは、当業者の知識内である。BI又はBIPの発現は、当業者に周知の標準的プロトコールに従って行われる。ご承知のように、特に温度、培地、容器の種類、通気等を含む発現の条件は、当業者の知識内にあり、個々の要件に容易に適合することができる。
【0032】
特定の好適な発現宿主、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)が承認されている。かかる株は、BI又はBIPの発現、並びに上で示したシステインプロテアーゼ及びカゼインを使用する各々のアッセイを妨害しないことが分かっている。好ましいP.パストリス(P. pastoris)株は、AOX2-遺伝子座での統合を可能にし、メタノール代謝を遅くする、KM71又はKM71 Hである。遅いメタノール消費及び対応するBI又はBIPの遅い産生速度によって、インヒビターの正確な折りたたみ及び分泌が促進される、ことが予想される。好適なプラスミド、例えばpPIC9又はpPICZalpha(いずれもInvitrogen製)を用いるピキア・パストリスでの発現は、高い転写及び翻訳率を保証した。加えて、ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体は可溶性を維持し、活性ペプチドの更なる分解は減少したか又は分解しなかった。本BI又はBIPは、この宿主に対して顕著な毒性を示さなかった。発現宿主として酵母例えばピキア・パストリスを用いる別の利点は、すなわち、フラスコの代わりに例えば24ウェル又は96ウェルのマイクロタイタープレートを用いて、増殖実験の規模を縮小する可能性にある。このことは、システインプロテアーゼを阻害するのみならず他のプロテアーゼを阻害する能力のような性質についての試験のハイスループットを保証する。前記プロテアーゼの各々の基質に分解する可能性、例えばシステインプロテアーゼはカゼインを開裂する、は、本ブロメラインインヒビターの1つを用いて変えることができる。前記インヒビターの活性は、言い換えると、根底にある医薬活性の指標であり、少なくとも一部分は、ブロメラインの活性に対応する。
【0033】
本発明の更に別の実施態様によれば、異種的に発現されたBI又はBIPは、該インヒビターの精製を可能にする手段を有する。かかる技術は当業者には周知であり、例えば、カラム材料のマトリックスに可逆的に結合し得る、該インヒビター又は該インヒビター前駆体と特定のアミノ酸配列との融合ペプチドを作製し、発現することによって達成される。アミノ酸配列は、例えば精製されるペプチドのN-又はC-末端に融合したポリ-ヒスチジンタグ配列でよい。タンパク質発現後に、該タグは親和性物質に結合し、イミダゾールグラジエントの方法によって放出され、それによって、融合タンパク質又は融合ペプチドを他のタンパク質及びタンパク質断片から分離する。必要ならば、該タグは除いてもよい。かかる技術は当業者には周知である。ご承知のように、任意の種類のタグが本発明で使用できる。
【0034】
好ましい実施態様によれば、医薬、皮膚用又は栄養組成物への1以上の異種的に発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の含有が考慮される。ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の場合に、該組成物は、ブロメラインインヒビター前駆体をその活性形態に消化するプロテアーゼの包含も必要とする。プロテアーゼは、例えば、ブロメラインの形態で、又はシステインプロテアーゼ及び他のエンドペプチターゼの混合物として供給できる。ご承知のとおり、当業者は、ブロメラインインヒビター前駆体をその活性形態に開裂することができるプロテアーゼ混合物を決定するためのアッセイを容易に変更できる。
【0035】
別の実施態様によれば、本発明の組成物は、摂取に好適な任意の方法で調合される。栄養組成物は、摂取の直前に、又は代わって製造工程中に調製できる。しかし、直接に利用できない形態での栄養組成物が好ましい。活性成分は、経口消費用の許容される賦形剤及び/又は担体中に含まれる。表現「栄養的に又は薬学的に許容される担体」は、活性成分をその活性部位に送達し、ヒト及び動物レシピエントに顕著な害を起こさない、栄養的又は医薬的用途のいずれかのためのビヒクルを言う。しかし、該担体の実際の形態は重要でない。
【0036】
本発明の別の好ましい実施態様は、拡大されたシステインプロテアーゼ発現と関連した疾患の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための、1以上の本ブロメラインインヒビター及び/又はブロメラインインヒビター前駆体の使用に関する。
【0037】
ブロメラインインヒビター由来の正の効果は、水腫(edeme)減少、溶血性、線維素溶解、抗炎症性、抗転移性及び腫瘍阻害性を含む。
【0038】
従って、別の実施態様は、癌、アテローム性動脈性硬化症、細菌感染、炎症、血栓症及び水腫の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための、1以上の本ブロメラインインヒビター及び/又はブロメラインインヒビター前駆体の使用に関する。癌は、好ましくは前立腺、直腸、乳房及び皮膚癌から選ばれる。
【0039】
ご承知のとおり、ブロメラインインヒビター前駆体は、例えば上で示したブロメラインによる好適な活性化を必要とする。
【0040】
更に別の実施態様によれば、安定剤としてのブロメラインインヒビターの使用は、経口適用を意図した医薬組成物を含む抗生物質のような、組成物を含む任意のペプチドにおいて考慮される。
【0041】
本ブロメラインインヒビターは、ボーマン・バーク・インヒビターのような類似の3次元構造を示すので、類似の適用での利用が考慮される。
【0042】
ボーマン・バーク・インヒビターは、最初に大豆で発見され、このタンパク質は、71-アミノ酸を含む。BBIは、可能性のある化学予防活性がトリプシン及びキモトリプシンの異なった阻害部位を含む、ことを示す。BBIが発癌を抑制する正確なメカニズムは未知であり、その抗増殖性活性は、キモトリプシン阻害部位に関連しているようである。
【0043】
上の記載は、血液凝固及び炎症プロセスにおける本インヒビターの可能な影響を強調する。加えて、エステラーゼの阻害が考慮される。BBIタンパク質は、経口投与用に設計された医薬の安定性を更に増加し、殺虫剤として働くことが知られている(Qi他, 2005)。本発明は以下の実施例によって説明されるが、それに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
他に記載しない限り、組換えDNA技術は、Maniatisg他; Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版 (1989) によって達成されている。精製水は、PURELAB ultra(ELGA)を用いて得た。
【0045】
RNA単離
RNAのみならず、DNA及びタンパク質は、製造者の指示:1 ml Qiazolと50〜100 mgの新鮮重量の植物材料とを混合する、に従ってQiazolキット(Invitrogen)を用いて単離した。多糖を除くために、該混合物は、室温で12.000 x gで10分間遠心した。上清は30℃で5分間インキュベートした。クロロホルムを0.2 ml/ml Qiazol加えた。この溶液を15秒間混合した。この混合物を分間30℃でインキュベートした。次いで、この混合物を4℃で2000 x gで15分間遠心した。RNAを含む上相を除き、0.5 mlのイソプロパノール/ml Qiazolを加えた。混合物を4℃で12.000 x gで10分間遠心し、上清を除いた。RNA-ペレットを1 ml 75%エタノール (DEPC-水で調製) /ml Qiazolで洗浄し、4℃、7500 x gで5分間遠心した。上清の除去後、ペレットはRNaseを含まない水に再懸濁した。
【0046】
DNAがなくかつパイナップル幹由来のタンパク質のない大量のRNAをRNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いて得た。
【0047】
ゲノムcDNAライブラリの調製
ゲノムcDNAライブラリの調製のために、SMART IV (商標) cDNA Library Construction Kit(Clontech)を使用した。第1及び第2の鎖合成、プロテイナーゼKによる消化、SfiIによる消化、cDNAサイズ排除分画、SfiI切断におけるSfiI切断cDNAのライゲーション、脱リン酸化(dephosporylated)pDNR-LIBベクター、及びベクターを含む得られた挿入物の形質転換を、製造者の指示に従って行った。
【0048】
PCR産物の調製
コロニーPCRのためのPCR反応は、94℃で5分間を1ステップ、それぞれ94℃で1分間及び54℃で1分間及び72℃で1分間を30サイクル、次いで72℃で7分間、4℃での保存を含んだ。
【0049】
クローニング目的のための配列の増幅のPCR反応は、94℃で5分間を1ステップ、それぞれ98℃で8秒間及び59℃で20秒間及び72℃で25秒間を25サイクル、次いで72℃で5分間、4℃での保存を含んだ。使用したプライマーは表Iに示す。BI-フォワード及びBI-リバースは、該前駆体のプライマーを示し、残りのプライマーは、個々のブロメラインインヒビター/アイソフォームの発現に関する。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
クローニング目的のためのアイソフォーム配列のアセンブリ用のPCR反応は、94℃で5分間を1ステップ、それぞれ95℃で8秒間及び59℃で15秒間及び60℃で25秒間を25サイクル、次いで72℃で5分間、4℃での保存を含んだ。
【0053】
PCR反応
PCR反応は、フィージョン(商標)ポリメラーゼを有する高い保証のHFバッファ中での製造者の指示に従って行った。
【0054】
【表3】
【0055】
テンプレートとしてcDNA断片を含むpDNR-LIBを使用した。製造者の指示に従って、増幅した配列は、TOPO TA Cloning(商標)Kit(Invitrogen)によってpCRIIにサブクローン化した。
【0056】
コロニーPCRは、taq-ポリメラーゼ(Fermentas)を用いて行った。従って、すべての成分をピペットし、細胞材料を反応に加えた。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
マスターサイクラーグラジエント(Eppendorf, ドイツ)における殺菌PCR反応容器(Eppendorf, ハンブルグ, ドイツ)ですべて行ったPCR反応は、慣用的SDSアガロースゲルの方法によって分離し、そして、シークエンスのための、NucleoSpin(登録商標)Plasmid-DNA Kit(Macherey & Nagel, Duren, ドイツ)又はMicrospin Columns(Amersham Pharmacia)の方法によって切断及び精製した。生成物はpTOPO-PCRII(Invitrogen)でクローン化した。ゲル化は、SUB-CELL(登録商標) GT又はMINI-SUB-CELL(登録商標) GT(いずれもBiorad)を用いるMighty Small SE250/SE260(Hoefer)の方法によって行った。遠心機として、Avanti JE冷却遠心機(Beckmann Coulter)、Biofuge pico又はBiofuge fresco(いずれもHeraeus)を使用した。
【0060】
配列決定
DNA配列決定は、キャピラリーシーケンサ(MWG)の製造者の指示に従って行った。
【0061】
クローニング/増殖条件
ER-転移ペプチドを有さないブロメラインインヒビターBIP(ブロメラインインヒビターIII)の配列は、pPET43.1a(Novagen)にクローン化し、製造者の指示(図3参照)に従ってE.コリRosetta 2中でクローン化した。Ni-セファロースを用いるアフィニティクロマトグラフィによる該インヒビターの精製は、約40 mg/lの精製インヒビターを与えた。
【0062】
ブロメラインシステインプロテアーゼan1(Acnr1: CAA05487)の配列、及びブロメラインインヒビターBIPは、EcoRI及びNotI制限部位を用いて、pPIC9又はpPICZA(いずれもInvitrogen)のフレームにおいてクローン化した。クローニングは、製造者の指示に従って、Gene pulser/Pulse Controller(いずれもBiorad)によって行った。
【0063】
対照として、Glieder, TU Grazから提供されたpPICZ/gfpを使用した。前記プラスミドは、増殖及び誘導のための、同一の制限部位及び同一の条件を用いる、gfp(Shimomura O.他, J. Cell. Comp. Physiol., 59 (1962), 223-239; Shimomura O., J. Microsc, 217 (2005), 1-15)を含む。
【0064】
システインプロテアーゼ阻害についてのアッセイ
ブロメラインインヒビターをE.コリ培養物から精製し、ブロメライン又はトリプシンで2時間、予備インキュベートした。混合物は、ブロメライン予備インキュベーションの場合にはタンパク質分解活性を除くために80℃で20分間によって処理し、又はトリプシンの場合にはセリンプロテアーゼインヒビターによって処理した。アナナス・コモスス由来の異種的に発現された活性なシステインプロテアーゼ及びカゼイン(0.5%)を含むピキア・パストリスからの上清を加えた。標準的なマイクロタイタープレートリーダーを用いて室温で1時間インキュベーションの後、OD600を測定した。様々なサンプルの結果を比較した。他のプロテアーゼは、ボーマン・バーク・インヒビター、トリプシン、キモトリプシン、エタスターゼ、ファルシパイン(Falcipain)及びブロメラインBP、のような阻害活性のための基質として使用した。サンプルを不活性化したプロテアーゼ抽出物及び好適な合成インヒビター(例えば、システインプロテアーゼの場合にはE64)と比較した。
【0065】
アルファ因子、プロペプチド及びアナナイン(An1)を有するがC-末端システインプロテアーゼ配列を有さないpPICZAを含むP.パストリスは、Unitron HT振とうインキュベータ(Infors)を用いて、230 rpm及び28℃の、3つ又は4つのバッフルを備えた振とうフラスコ中で最大48時間増殖させた1 lのBMM培地(pH 6)中に、12 mg/l活性AN1(基質としてのカゼイン)を与えた。上記の試験はまた、異なった温度で行い(それぞれ30、40、50、60、70及び80℃で1時間のインキュベーション)、BBIタンパク質との類似性及びBIPの各々の使用に基づいて、室温(22〜24℃)での活性(結果は非表示)と比較して、70℃で82%±8%のブロメラインインヒビターの残余活性を示した。
【0066】
ブロメラインタンパク質のMaldi-Tof型分析
上清からのサンプルは、培養の3日目に採取し、Zip-Tips(Millipore)で精製し、4800 TOF/TOFマスアナライザー(Applied Biosystems)を用いるMaldi-Tof分析に供した。
【0067】
分泌シグナルが正確な方法で開裂されたことを判明した。P.パストリス中で発現されたタンパク質は、Glykomodツール(www.ExPASy.ch; 結果は非表示)で検証したグリコシル化を示した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にブロメライン、具体的には、タンパク質のこの混合物に含まれる活性化合物に関する。本発明は、ブロメライン中に見出される、組換え発現ブロメラインインヒビター前駆体及びブロメラインインヒビターを提供する。該組換え発現インヒビターは、ブロメライン又は植物抽出物由来のそのタンパク質画分よりも、疾患及び症状の治療の点でより優れた効果を有することが見出されている。
【背景技術】
【0002】
ブロメラインは、生化学的にはパイナップルの幹からの粗抽出物として定義され、薬理学的にはシステインプロテアーゼの混合物として定義される。その多数の陽性効果は、タンパク質分解性、特に線維素溶解性から少なくとも部分的に起こる。ブロメラインの抗腫瘍効果は、タンパク質分解活性とは異なった効果に依拠することも知られており、未知のメカニズムが未だ存在する。ブロメラインは、ブロメリア科植物の組織、特に幹及び果実に見出されるタンパク質分解酵素の包括的名称である。ブロメラインの最も一般的な形態は、パイナップル植物(アナナス・コモスス(Ananas comosus))の幹から得られた様々な成分の混合物である。幹ブロメライン(以下、ブロメラインと称する)は、少なくとも5つのタンパク質分解酵素を含むが、酸性ホスファターゼ及びペルオキシダーゼを含む非-タンパク質分解酵素を含むことも知られている;アミラーゼ及びセルラーゼ活性を含むこともある。加えて、様々な他の成分が存在する。
【0003】
ブロメラインの物理的抽出法は、例えば、CN1186118に開示されている。この方法は、特に、ジュースを得るための、凍結、粉砕、圧搾による予備処理、透明な液体を得るための濾過、ウルトラフィルタフィルム及び逆浸透フィルムによる濃縮、スポンジの形態で生成物を得るための凍結真空乾燥、を含む。温度、時間及びpH値の調節は、酵素活性及び収率を向上させることが報告されている。
【0004】
米国特許第3,658,651号明細書は、パイナップル植物幹から抽出されたブロメライン-含有ジュースが、重炭酸塩形態でのアニオン交換体と、弱酸官能基を有するカチオン交換体と、重炭酸塩形態での第2のアニオン交換体とのイオン交換関係において、該ジュースを通過させることによって酵素の沈殿前に精製されること、に関する。
【0005】
米国特許第4,286,064号明細書は、特にブロメライン粗抽出物の調製を開示する。パイナップル幹からのジュースは、先ず、リン酸によって約3又は4のpHに調整され、次亜塩素酸ナトリウムが、スルフヒドリル酸化に対して保護するために加えられる。不活性物質は、例えばアセトン中で沈殿され、濾過される。透明の液体はアセトンで沈殿され、沈殿物は遠心によって回収され、リン酸で酸性化され再沈殿された次亜塩素酸ナトリウム含有水で再溶解されるか、あるいは直接真空オーブンで乾燥される。この粗抽出物の更なる精製は、小分子及びタンパク質の除去のための、濾過、透析又はダイアフィルトレーション、次いで凍結乾燥前に得られた溶液を濃縮することによって行ってもよい。
【0006】
分解及び/又は他の望ましくない化学反応、例えば酸化反応、を抑制するために、特定の処理条件、例えば温度、pH、溶媒及びバッファ、及び/又は添加物、例えば安定剤及び抗酸化剤、の選択は、避けられない。
【0007】
上記の問題とは別に、粗抽出物の更なる精製が必要とされることがある。かかる精製は、例えば米国特許出願第2002/188107号に概略したHPLCによって行われる。
【0008】
従って、医薬的、皮膚用及び栄養的組成物に含有され得、そして従来のブロメライン含有製剤の上記欠点を示さない、ブロメラインの、化学的に安定でかつ純粋な医薬活性成分を提供することが非常に望まれる。
【発明の概要】
【0009】
上記の問題点は、異種的に発現されたブロメラインインヒビターであって、該ブロメラインインヒビターが可溶性形態で実質的な量で異種宿主において実質的な量で溶解して発現されているブロメラインインヒビターを提供することによって解決された。
【0010】
本発明は、ブロメラインに帰属される陽性効果が、該インヒビター単独で提供されても又は組合せで提供されてもよいことを見出したことに基づく。本インヒビターは、高い純度、特に他のタンパク質又はタンパク質断片の存在を含まずに得られ、これは減少した副作用をもたらす。本ブロメラインインヒビターは、水溶液であっても、長期間高い保存安定性を有する、ことも見出された。本ブロメラインインヒビターは、任意のペプチドを含有する医薬組成物、例えば抗生物質含有経口組成物、を安定化するために使用することもできる。
【0011】
本研究において、ブロメラインインヒビターの前駆体タンパク質(ブロメラインインヒビター前駆体、BIP)がブロメラインに含まれるシステインプロテアーゼの天然基質を示す、ことも見出されている。上記前駆体タンパク質の異種発現によって、前記の天然基質は、システインプロテアーゼの活性及び特異性を明らかにするために十分な純度の可溶性形態で入手できる。ブロメラインインヒビター前駆体タンパク質は、特にブロメラインに含まれる様々なシステインプロテアーゼの作用によって、その具体的な医薬活性成分、すなわち数種類のブロメラインインヒビターに分解するので、上記のブロメラインインヒビター前駆体タンパク質は、例えばブロメラインから生じるシステインプロテアーゼを含む医薬中の活性成分として使用することもできる。ブロメラインの作用から明らかにされたブロメラインインヒビターは、次には、システインプロテアーゼの活性を阻害し、そこでは、ブロメラインの医薬活性のみならずシステインプロテアーゼ含有組成物の任意の他の種類が変更される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、ブロメラインインヒビター前駆体(BIP)の一部としてのブロメラインインヒビターIII(bi-III)を示す。示されたアミノ酸配列は、内部鎖領域を有する軽鎖及び重鎖に相当する。
【図2】図2は、ブロメラインインヒビターIIIの発現コンストラクトを示す。使用したベクター(Novagen)は、E.コリについて設計されている。選択は、β-ラクタマーゼによって達成される。溶解性は、NusA-タグと融合することによって顕著に亢進できる。
【図3】図3は、E.コリによる粗抽出物中のブロメラインインヒビターを示す。特に、E.コリRosetta 2を発現宿主として用いる、pET43.1a/BIPからの粗抽出物の10% SDS PAGE。矢印は、NusA-タグ由来の融合タンパク質、及び約75 kDaのサイズを示すブロメラインインヒビターBI-IIIを示す。左レーンは、E.コリRosetta 2で発現された対照pET43.1aを意味する。
【図4】図4は、ブロメラインインヒビター前駆体の発現を示す。特に、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)発現培養物からの100 μl上清を有する10% SDS-PAGEを示す。左レーンは、陽性BIP-クローン4を示し、右レーンは、陰性BIP-クローン5を示す。
【図5】図5は、ペプチドマスフィンガープリントによって見出されたペプチド(下線部)を有する、ブロメラインインヒビター前駆体のタンパク質配列のスキームを示す。
【図6】図6は、シグナルP後のERシグナルペプチドを示す。
【図7】図7は、システインプロテアーゼan1を含むベクターpPICZalpha(Invitrogen)を示す。前記コンストラクトは、ピキア・パストリスで発現され、ブロメラインインヒビター活性に関する定量的/定性的アッセイのために使用できる。
【図8】図8は、図7のコンストラクトを用いるピキア・パストリス中の組換えアナナインの発現を示す。高収率(45 kDaの矢印は分泌された酵母タンパク質を示す)で発現されたProenzyme(35 kDaの矢印)から活性化された(25 kDaの矢印)アナナインを有する、ピキア・パストリスKM71Hの発現培養物の上清。組換えアナナインは、ブロメラインインヒビターを試験する活性のために使用できる。
【図9】図9は、ブロメラインインヒビター前駆体のDNA(図9a)及びタンパク質(図9b)配列を示す。
【図10】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図11】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図12】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図13】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図14】図10〜14は、1つのブロメラインインヒビターbi-I、bi-II、bi-III、bi-VI及びbi-VIIのDNA配列(図10〜14a)及びタンパク質配列(図10〜14b)を示す。該DNA配列は、出発コドン、軽鎖、内部鎖領域、重鎖及び停止コドンを含む。
【図15】図15は、該インヒビタータンパク質bi-III、bi-VI及びbi-VIIをコードするブロメラインインヒビター前駆体ブロメラインを示す。該インヒビタータンパク質は、おそらくエンドペプチターゼによって開裂される、内部ドメイン領域(ID)を共有する。インンヒビターは、ブロメラインの「標的」を示す内部鎖領域(IC)によって連結された、軽及び重鎖LC及びHCそれぞれから成り、該インヒビターの自動調節を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施態様によれば、可溶性タンパク質として実質的な量で異種的に発現されている、異種発現されたブロメラインインヒビター(BI)又はブロメラインインヒビター前駆体(BIP)が提供される。
【0014】
本明細書で用いる用語「異種的に発現された」は、一般的には起源の生物とは異なった宿主生物におけるタンパク質発現を言い、本願では、アナナス属以外の属、すなわちパイナップル植物でない属を宿主として使用する発現を言う。かかる宿主の例は、特にピチアパストリス(Pichia pastoris)又はE.コリを含む。
【0015】
本明細書で使用するブロメラインインヒビターは、そのアミノ酸配列によってブロメラインに含まれる他のインヒビターから識別される、ブロメライン粗抽出物の任意の画分に含まれる単一のインヒビターを言う。一般的には、該インヒビターの活性は、活性部位及び反応性に必要とされる特定の3次元構造に影響を与えるその近傍に予備的に依拠するが、アミノ酸のより離れたストレッチ、例えばループ及びシート構造は、インヒビターの基質親和性、並びにインヒビター表面上での基質及び水溶性へのアクセスに影響を与えることがある。
【0016】
ブロメラインインヒビターは、該インヒビターを放出するためのプロテアーゼの方法による活性化を必要とする、1以上の各々のブロメラインインヒビターの不活性な前駆体タンパク質を言う。活性化は、一方ではシステインプロテアーゼによって付与され、他方では更なるエンドペプチターゼによって付与され得る。ブロメラインインヒビター前駆体は、図15に示すように構成され得る。
【0017】
本明細書で使用する用語「実質的な量」は、1 mg/l以上、好ましくは4 mg/l以上、8 mg/l以上、12 mg/l以上、16 mg/l以上、20 mg/l以上、30 mg/l以上又は40 mg/l以上の量で、より好ましくは50 mg/l以上の量で異種的に発現された、ブロメラインインヒビター前駆体又は活性なブロメラインインヒビターを言う。
【0018】
本明細書で使用される用語「可溶性」は、対応する天然型、野生型インヒビターと同一の3次元構造を本質的に示す、インヒビター又はインヒビター前駆体を言う。このことは、該インヒビターがシステインプロテアーゼに対する所望の活性を示し、例えば再生目的のための他の基質の添加が避けられる、ことを確実にし、これは、一方では取り込みに対して改善された寛容を確実にし、他方では、該ポリペプチドの望ましくない修飾を避ける。該インヒビターは、周囲の十分な親水性アミノ酸に対して更に影響を示す、すなわち、水分子との水素結合を行う、つまり、医薬目的での使用に適合させる生物学的利用性を示す。用語「生物学的利用性」は、活性成分又は活性部分が薬物から吸収され、活性部位で利用可能になる割合及び程度を言う。経口で摂取された薬物の生物学的利用性は、分子の性質、その安定性、及び患者に投与された製剤を含む因子、例えば結腸疾患又は腸切除の結果としての減少した腸表面積、及び該薬物が食事と一緒に摂取されるか否か、によって決定される。生物学的利用性に影響を与える因子は、胃腸管からの低い吸収、肝初回通過効果、及び全身的循環に到達する前の薬物の部分的分解を含むが、これらに限定されないものを含む。本発現系は、本インヒビターの予測できない高い収量及び予測できない高い溶解性を可能にするのみならず、プロテアーセによる消化が軽減又は避けられるので高量の活性インヒビターをもたらす。
【0019】
本ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体は、例えば、第1ステップにおける植物材料からのRNA単離の方法によって、例えばTRIzol plus RNA Purification System(Invitrogen)を適用することによって、得られる。DNA及びタンパク質は、Trizol(Invitrogen)の方法によって単離できる。幹としてのデンプン豊富生物由来の多量のRNAは、デンプンがタンパク質からのRNAの分離のために必要とされるグラジエントを破壊するので、RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いて単離できる。次のステップでは、cDNAライブラリを作製することができる。これは、当業者に公知の任意の方法、例えばSMART(商標)cDNA Library Construction Kit(Clontech)を使用することによって実施できる。このcDNAは好適なプラスミド又はベクター中でライゲートされ、次いで取り扱いを簡単にする宿主生物、例えばE.コリ中で形質転換することができる。ご承知のとおり、このことは、当業者に周知の任意の方法によって行うことができる。挿入物は、標準的なDNA配列決定法の手段によって配列決定することができる。発現のために、該DNA配列は、構成的又は誘導的プロモーターの制御下で好適な発現ベクター中でライゲートすることができる。好適な発現系は、例えば、pPICZalpha(Invitrogen)であり、これは、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、好ましくはピキア・パストリス(Pichia pastoris)のような好適な宿主中で、エレクトロポレーションのような任意の好適な技術によって形質転換することができる。異種発現のための宿主としてのピキア・パストリスは、α-1,3-マンノシルトランスフェラーゼの同族体が該生物には存在しないので、グリコシル化パターンがより高度な真核生物のそれに本質的に対応するという特定の利益を示す。発現用の他の宿主は、カンジタ・アルビカンス(Candida albicans)又は昆虫細胞株でよい。個々のブロメラインインヒビターは、ブロメラインインヒビター前駆体を提供し、組成物を含むプロテアーゼ、例えばブロメラインに供し、そして当業者に周知の方法、例えばクロマトグラフィによって該個々のインヒビターを単離することによって得てもよい。
【0020】
形質転換及びその後のタンパク質発現は、当該技術の状況で利用できるプロトコールに従って行うことができる。組換えDNA技術の必要な知識は、Maniatis他; Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版, (1989) から得られる。発現されたインヒビターの活性は、例えばブロメライン由来のシステインプロテアーゼが使用されるアッセイで容易に試験できる。かかるプロテアーゼは、基質としてのカゼインを使用することができ、それをカゼイン加水分解物に開裂/分解することができる。この変換は、定性的に及び定量的に測定できる。定性的には、固体マトリックス中にカゼインを含め、マトリックス表面に該プロテアーゼを加えることによって測定できる。カゼインの分解は、該プロテアーゼの周囲に透明な光輪の出現をもたらす。定量的には、カゼインは、カゼインを所定の濃度で溶液に準備し、異なった量のプロテアーゼを加えることによって測定できる。カゼインの加水分解物への変換は、例えば600 nmの可視範囲での波長での分光光度計の作動によって行うことができる。ご承知のとおり、試験される化合物、すなわち仮想的なブロメラインインヒビターは、サンプル中に含まれ、その効果は、プロテアーゼ及びカゼインのみを含み、試験される化合物を含まないサンプルとの比較によって測定することができる。従って、システインプロテアーゼ又はヒドロラーゼの活性の共通の検出のための他の好適なアッセイは、改変し、改造することができる。他のアッセイの例は、Bornscheuer U.T., Kazlauskas, R.J., Hydrolases in Organic Synthesis, Wiley-VCH, Weinheim (ドイツ), 1999) に見出される。組換えDNA技術の必要な知識は、例えば、Maniatis他; Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版, (1989) から得られる。仮想的ブロメラインインヒビターの阻害効果はまた、E64(Merck)のような公知の特定のシステインプロテアーゼインヒビターに匹敵し得る。
【0021】
E.コリ中での前記インヒビター前駆体及びインヒビターの発現は、ER-転移ペプチドを除くことによって可能になることを、驚くべきことに発見した。加えて、本ブロメラインインヒビター/インヒビター前駆体の収量は、ER-転移ペプチドをなお有するブロメラインインヒビター/インヒビター前駆体の異種発現と比べて、因子2、好ましくは因子3又は4、より好ましくは因子5又はそれ以上によって顕著に拡大された。任意の理論に拘束されるものではないが、ER-転移ペプチドが、発現宿主に対するER-転移ペプチドの毒性効果を示唆する細胞分割を抑制する、細胞膜への該タンパク質の結合を付与すると推測される。このことは、特に、正確な3次元構造を付与するために折り畳みタンパク質/シャペロンを使用する必要なく、ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体のE.コリでの発現を可能にする。
【0022】
従って、本発明の第1の局面では、対応するブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体のER-転移ペプチドをコードするDNAが除かれている、異種的に発現したブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が提供される。ご承知のように、ER-転移ペプチドのDNA配列の決定は、当業者の知識に従って容易に行うことができる。
【0023】
本発明の別の局面によれば、異種的に発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が提供される。BI又はBIPは、使用される発現系によってナナナス属によって付与されるものとはことなった翻訳後修飾を有する。アナナス属とは異なった生物を用いることによって、別個の翻訳後修飾(PTM)が確実に得られる。PTMは、一般に、その翻訳後のタンパク質の化学修飾を言い、そこでは、メッセンジャーRNAは、特定のポリペプチド又はタンパク質を生成するためにデコードされる。PTMは、翻訳されたタンパク質に対するその作用に従って分類される。それは、官能基又は他のタンパク質/ペプチドの付加を与え、該タンパク質を形成するアミノ酸の化学的性質を変化させ、構造的変化をもたらす。翻訳後修飾の例は、糖類が該タンパク質に添加される間のグリコシル化である。具体的な異なったグリコシル化は、次にはタンパク質の生物学的利用性に積極的に影響を与えることがある、異なった水溶性をもたらすことがある。
【0024】
当業者はご承知のように、ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の機能は、様々な異なったアミノ酸配列によって達成され得る。別の実施態様では、異種的に発現されたBI又はBIPは、BI又はBIPの各々と少なくとも90%の配列同一性を示すからである。好ましくは、この配列同一性は、少なくとも95%、98%、99%又は99.5%であり、より好ましくは少なくとも99.8%である。
【0025】
本BIP又はBIPの1つに対してそれぞれ上で述べた同一性を示すかかるBI又はBIPは、活性に必須でないアミノ酸残基の変化、すなわちもとのブロメラインインヒビターとはアミノ酸配列が異なるが生物学的機能又は活性を保持する、を含むポリペプチドである。例えば、アミノ酸は、「非-必須」アミノ酸残基で置換してよい。「非-必須」アミノ酸残基は、生物学的機能又は構造的な折り畳みを変えることなく、野生型配列から改変することができるが、必須」アミノ酸残基が生物学的機能に必要とされる、残基である。類似の機能は、通常、類似の構造的又は化学的性質を有するアミノ酸、例えば、ロイシンのイソロイシンへの置換、によって維持される。稀には、変異体は、「非-保存的」変化、例えばグリシンのトリプトファンへの置換を有することがある。これは、単一のアミノ酸残基についてのみ当てはまるものではないが、タンパク質の生物学的機能を変えることなく付加又は削除され得るアミノ酸の全体配列について当てはまる。従って、類似の小さな変化は、アミノ酸の削除、挿入又はそれらの両方を含んでもよい。一般には、より大きなポリペプチド内の短いアミノ酸配列は、タンパク質の生物学的活性又は機能に主による。従って、本発明は、BI又はBIPのホモログをも含む。タンパク質配列のホモロジー、配列類似性又は配列同一性は、例えば、確立されたソフトウェア又はコンピュータプログラム、例えば、クエリーがタンパク質又はDNAであるかに関係なく入手できる配列データベースのすべてを探索するように設計されている1セットの類似性検索プログラムを提供する、Altschul, S.F.他(J. Mol. Biol.; 215 (1990) 403-410 and Nucleic Acids Res.; 25 (1997) 3389-3402)の仕事に基づくBLAST(Basic Local Alignment and Search Tool)プログラム、を用いて、当該分野で周知の技術に従って容易に決定できる。BLASTプログラムはスピードに合わせて設計されており、離れた配列関係への感度の最小犠牲を有する。BLST検索で帰属されたスコアは、非常によく定義された統計的な解釈を有し、真の適合をランダムバックグラウンドヒットと簡単に識別する。BLASTは、世界的なアラインメントとは反対にローカルを追求する発見的アルゴリズムを使用し、よって、類似性の単離された領域のみを共有する配列間の相互関係を検出することができる。前記プログラムは、2つの配列間の同一性又は類似性の最良の断片を見い出すための、Smith及びWatermanの改変アルゴリズム(J. Mol. Biol. 147 (1981) 195-197)、及びSellersの改変アルゴリズム(Bull. Math. Biol. 46 (1984) 501-514)に基づいている。配列相同性、類似性又は同一性の程度を決定するための配列アラインメントプログラム、例えばBLASTを用いる場合に、デフォルト設定を使用でき、あるいは、好適なスコアリングマトリックス、例えばBLOSUM又はPAMが、同一性、類似性又は相同性スコアを最適化するために選択できる。
【0026】
ご承知のように、本発明の組換えで産生されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体は、生物学的活性及び植物におけるその役割を評価するために使用できる。このことは、インヒビターの場合には、特にシステインプロテアーゼとの相互作用に当てはまるが、ブロメラインに含まれるシステインプロテアーゼの天然基質を形成するブロメラインインヒビター前駆体は、例えば活性アッセイを実行するために、あるいは同一又は改良された性質を有する他の天然基質(複数)のインビトロ又はインシリコ検索のために使用できる。
【0027】
様々な理由のために導入され得るアミノ酸配列の人工的改変を説明するために、本発明はまた、相同ではないが、少なくとも上で定義された配列類似性あるいは本発明に従うブロメラインタンパク質の3次元構造又は機能を共有する、配列を包含する。ご承知のように、単一アミノ酸の交換によって、又はブロメラインインヒビターもしくはブロメラインインヒビター前駆体の性質とは異なったグリコシル化パターンの交換によって、具体的に得られる。かかる交換の1つの効果は、例えば特定の交換を有さないインヒビターと比較してより高い溶解性を得ることによる、例えば改良された生物学的利用性にあり得る。
【0028】
本発明の更に別の実施態様では、異種発現されたブロメラインインヒビターは、配列番号1〜5(図10〜14bに示すタンパク質配列に相当)のいずれかを示す。異種発現されたブロメラインインヒビター前駆体は、配列番号6(図9aに示すタンパク質配列に相当)を示す。
【0029】
配列番号1〜6を示すタンパク質の収量は、好ましくは、上記の程度までのER-転移ペプチドの省略によって拡大される。配列番号1〜6のタンパク質に相当するDNA配列は、配列番号7〜12(図10〜14aに示すDNA配列については配列番号7〜11;図9aに示すDNA配列については配列番号12)によって示される。
【0030】
本発明の実施態様によれば、異種的に発現されたタンパク質と野生型タンパク質とを識別できる前記の翻訳後修飾は、異なったグルコシル化パターンをもたらす。ポリペプチドの異種発現のために使用される異なった生物が、特に該タンパク質の生物学的利用性に影響を与える、異なったグリコシル化パターンを与えることは、当業者には周知である。
【0031】
更に別の実施態様によれば、異種的に発現されたBI又はBIPの翻訳語修飾は、酵母、昆虫細胞、植物細胞及びE.コリから成る群より選ばれる宿主生物によって提供される。かかる発現宿主の選択は、当業者の知識の範囲内にあり、高い発現を確実にするために上記インヒビター又はインヒビター前駆体をコードするヌクレオチド配列のコドンの利用の予備的適合を含む。コドンの利用は、数個のコドン、すなわち、同一の所定のアミノ酸をコードする、ポリペプチド中のアミノ酸残基を特定するヌクレオチドの三連符、の1つのための異なった生物の選択の現象を言う。かかる選択を避けるために、例えば該タンパク質をコードするDNAであって、コドンの利用は選択された発現宿主に適合されるDNAを化学的に合成することが必要であるかもしれない。このことは、当業者の知識内である。BI又はBIPの発現は、当業者に周知の標準的プロトコールに従って行われる。ご承知のように、特に温度、培地、容器の種類、通気等を含む発現の条件は、当業者の知識内にあり、個々の要件に容易に適合することができる。
【0032】
特定の好適な発現宿主、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)が承認されている。かかる株は、BI又はBIPの発現、並びに上で示したシステインプロテアーゼ及びカゼインを使用する各々のアッセイを妨害しないことが分かっている。好ましいP.パストリス(P. pastoris)株は、AOX2-遺伝子座での統合を可能にし、メタノール代謝を遅くする、KM71又はKM71 Hである。遅いメタノール消費及び対応するBI又はBIPの遅い産生速度によって、インヒビターの正確な折りたたみ及び分泌が促進される、ことが予想される。好適なプラスミド、例えばpPIC9又はpPICZalpha(いずれもInvitrogen製)を用いるピキア・パストリスでの発現は、高い転写及び翻訳率を保証した。加えて、ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体は可溶性を維持し、活性ペプチドの更なる分解は減少したか又は分解しなかった。本BI又はBIPは、この宿主に対して顕著な毒性を示さなかった。発現宿主として酵母例えばピキア・パストリスを用いる別の利点は、すなわち、フラスコの代わりに例えば24ウェル又は96ウェルのマイクロタイタープレートを用いて、増殖実験の規模を縮小する可能性にある。このことは、システインプロテアーゼを阻害するのみならず他のプロテアーゼを阻害する能力のような性質についての試験のハイスループットを保証する。前記プロテアーゼの各々の基質に分解する可能性、例えばシステインプロテアーゼはカゼインを開裂する、は、本ブロメラインインヒビターの1つを用いて変えることができる。前記インヒビターの活性は、言い換えると、根底にある医薬活性の指標であり、少なくとも一部分は、ブロメラインの活性に対応する。
【0033】
本発明の更に別の実施態様によれば、異種的に発現されたBI又はBIPは、該インヒビターの精製を可能にする手段を有する。かかる技術は当業者には周知であり、例えば、カラム材料のマトリックスに可逆的に結合し得る、該インヒビター又は該インヒビター前駆体と特定のアミノ酸配列との融合ペプチドを作製し、発現することによって達成される。アミノ酸配列は、例えば精製されるペプチドのN-又はC-末端に融合したポリ-ヒスチジンタグ配列でよい。タンパク質発現後に、該タグは親和性物質に結合し、イミダゾールグラジエントの方法によって放出され、それによって、融合タンパク質又は融合ペプチドを他のタンパク質及びタンパク質断片から分離する。必要ならば、該タグは除いてもよい。かかる技術は当業者には周知である。ご承知のように、任意の種類のタグが本発明で使用できる。
【0034】
好ましい実施態様によれば、医薬、皮膚用又は栄養組成物への1以上の異種的に発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の含有が考慮される。ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の場合に、該組成物は、ブロメラインインヒビター前駆体をその活性形態に消化するプロテアーゼの包含も必要とする。プロテアーゼは、例えば、ブロメラインの形態で、又はシステインプロテアーゼ及び他のエンドペプチターゼの混合物として供給できる。ご承知のとおり、当業者は、ブロメラインインヒビター前駆体をその活性形態に開裂することができるプロテアーゼ混合物を決定するためのアッセイを容易に変更できる。
【0035】
別の実施態様によれば、本発明の組成物は、摂取に好適な任意の方法で調合される。栄養組成物は、摂取の直前に、又は代わって製造工程中に調製できる。しかし、直接に利用できない形態での栄養組成物が好ましい。活性成分は、経口消費用の許容される賦形剤及び/又は担体中に含まれる。表現「栄養的に又は薬学的に許容される担体」は、活性成分をその活性部位に送達し、ヒト及び動物レシピエントに顕著な害を起こさない、栄養的又は医薬的用途のいずれかのためのビヒクルを言う。しかし、該担体の実際の形態は重要でない。
【0036】
本発明の別の好ましい実施態様は、拡大されたシステインプロテアーゼ発現と関連した疾患の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための、1以上の本ブロメラインインヒビター及び/又はブロメラインインヒビター前駆体の使用に関する。
【0037】
ブロメラインインヒビター由来の正の効果は、水腫(edeme)減少、溶血性、線維素溶解、抗炎症性、抗転移性及び腫瘍阻害性を含む。
【0038】
従って、別の実施態様は、癌、アテローム性動脈性硬化症、細菌感染、炎症、血栓症及び水腫の予防及び/又は治療のための医薬の製造のための、1以上の本ブロメラインインヒビター及び/又はブロメラインインヒビター前駆体の使用に関する。癌は、好ましくは前立腺、直腸、乳房及び皮膚癌から選ばれる。
【0039】
ご承知のとおり、ブロメラインインヒビター前駆体は、例えば上で示したブロメラインによる好適な活性化を必要とする。
【0040】
更に別の実施態様によれば、安定剤としてのブロメラインインヒビターの使用は、経口適用を意図した医薬組成物を含む抗生物質のような、組成物を含む任意のペプチドにおいて考慮される。
【0041】
本ブロメラインインヒビターは、ボーマン・バーク・インヒビターのような類似の3次元構造を示すので、類似の適用での利用が考慮される。
【0042】
ボーマン・バーク・インヒビターは、最初に大豆で発見され、このタンパク質は、71-アミノ酸を含む。BBIは、可能性のある化学予防活性がトリプシン及びキモトリプシンの異なった阻害部位を含む、ことを示す。BBIが発癌を抑制する正確なメカニズムは未知であり、その抗増殖性活性は、キモトリプシン阻害部位に関連しているようである。
【0043】
上の記載は、血液凝固及び炎症プロセスにおける本インヒビターの可能な影響を強調する。加えて、エステラーゼの阻害が考慮される。BBIタンパク質は、経口投与用に設計された医薬の安定性を更に増加し、殺虫剤として働くことが知られている(Qi他, 2005)。本発明は以下の実施例によって説明されるが、それに限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
他に記載しない限り、組換えDNA技術は、Maniatisg他; Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版 (1989) によって達成されている。精製水は、PURELAB ultra(ELGA)を用いて得た。
【0045】
RNA単離
RNAのみならず、DNA及びタンパク質は、製造者の指示:1 ml Qiazolと50〜100 mgの新鮮重量の植物材料とを混合する、に従ってQiazolキット(Invitrogen)を用いて単離した。多糖を除くために、該混合物は、室温で12.000 x gで10分間遠心した。上清は30℃で5分間インキュベートした。クロロホルムを0.2 ml/ml Qiazol加えた。この溶液を15秒間混合した。この混合物を分間30℃でインキュベートした。次いで、この混合物を4℃で2000 x gで15分間遠心した。RNAを含む上相を除き、0.5 mlのイソプロパノール/ml Qiazolを加えた。混合物を4℃で12.000 x gで10分間遠心し、上清を除いた。RNA-ペレットを1 ml 75%エタノール (DEPC-水で調製) /ml Qiazolで洗浄し、4℃、7500 x gで5分間遠心した。上清の除去後、ペレットはRNaseを含まない水に再懸濁した。
【0046】
DNAがなくかつパイナップル幹由来のタンパク質のない大量のRNAをRNeasy Plant Mini Kit(Qiagen)を用いて得た。
【0047】
ゲノムcDNAライブラリの調製
ゲノムcDNAライブラリの調製のために、SMART IV (商標) cDNA Library Construction Kit(Clontech)を使用した。第1及び第2の鎖合成、プロテイナーゼKによる消化、SfiIによる消化、cDNAサイズ排除分画、SfiI切断におけるSfiI切断cDNAのライゲーション、脱リン酸化(dephosporylated)pDNR-LIBベクター、及びベクターを含む得られた挿入物の形質転換を、製造者の指示に従って行った。
【0048】
PCR産物の調製
コロニーPCRのためのPCR反応は、94℃で5分間を1ステップ、それぞれ94℃で1分間及び54℃で1分間及び72℃で1分間を30サイクル、次いで72℃で7分間、4℃での保存を含んだ。
【0049】
クローニング目的のための配列の増幅のPCR反応は、94℃で5分間を1ステップ、それぞれ98℃で8秒間及び59℃で20秒間及び72℃で25秒間を25サイクル、次いで72℃で5分間、4℃での保存を含んだ。使用したプライマーは表Iに示す。BI-フォワード及びBI-リバースは、該前駆体のプライマーを示し、残りのプライマーは、個々のブロメラインインヒビター/アイソフォームの発現に関する。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
クローニング目的のためのアイソフォーム配列のアセンブリ用のPCR反応は、94℃で5分間を1ステップ、それぞれ95℃で8秒間及び59℃で15秒間及び60℃で25秒間を25サイクル、次いで72℃で5分間、4℃での保存を含んだ。
【0053】
PCR反応
PCR反応は、フィージョン(商標)ポリメラーゼを有する高い保証のHFバッファ中での製造者の指示に従って行った。
【0054】
【表3】
【0055】
テンプレートとしてcDNA断片を含むpDNR-LIBを使用した。製造者の指示に従って、増幅した配列は、TOPO TA Cloning(商標)Kit(Invitrogen)によってpCRIIにサブクローン化した。
【0056】
コロニーPCRは、taq-ポリメラーゼ(Fermentas)を用いて行った。従って、すべての成分をピペットし、細胞材料を反応に加えた。
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
【0059】
マスターサイクラーグラジエント(Eppendorf, ドイツ)における殺菌PCR反応容器(Eppendorf, ハンブルグ, ドイツ)ですべて行ったPCR反応は、慣用的SDSアガロースゲルの方法によって分離し、そして、シークエンスのための、NucleoSpin(登録商標)Plasmid-DNA Kit(Macherey & Nagel, Duren, ドイツ)又はMicrospin Columns(Amersham Pharmacia)の方法によって切断及び精製した。生成物はpTOPO-PCRII(Invitrogen)でクローン化した。ゲル化は、SUB-CELL(登録商標) GT又はMINI-SUB-CELL(登録商標) GT(いずれもBiorad)を用いるMighty Small SE250/SE260(Hoefer)の方法によって行った。遠心機として、Avanti JE冷却遠心機(Beckmann Coulter)、Biofuge pico又はBiofuge fresco(いずれもHeraeus)を使用した。
【0060】
配列決定
DNA配列決定は、キャピラリーシーケンサ(MWG)の製造者の指示に従って行った。
【0061】
クローニング/増殖条件
ER-転移ペプチドを有さないブロメラインインヒビターBIP(ブロメラインインヒビターIII)の配列は、pPET43.1a(Novagen)にクローン化し、製造者の指示(図3参照)に従ってE.コリRosetta 2中でクローン化した。Ni-セファロースを用いるアフィニティクロマトグラフィによる該インヒビターの精製は、約40 mg/lの精製インヒビターを与えた。
【0062】
ブロメラインシステインプロテアーゼan1(Acnr1: CAA05487)の配列、及びブロメラインインヒビターBIPは、EcoRI及びNotI制限部位を用いて、pPIC9又はpPICZA(いずれもInvitrogen)のフレームにおいてクローン化した。クローニングは、製造者の指示に従って、Gene pulser/Pulse Controller(いずれもBiorad)によって行った。
【0063】
対照として、Glieder, TU Grazから提供されたpPICZ/gfpを使用した。前記プラスミドは、増殖及び誘導のための、同一の制限部位及び同一の条件を用いる、gfp(Shimomura O.他, J. Cell. Comp. Physiol., 59 (1962), 223-239; Shimomura O., J. Microsc, 217 (2005), 1-15)を含む。
【0064】
システインプロテアーゼ阻害についてのアッセイ
ブロメラインインヒビターをE.コリ培養物から精製し、ブロメライン又はトリプシンで2時間、予備インキュベートした。混合物は、ブロメライン予備インキュベーションの場合にはタンパク質分解活性を除くために80℃で20分間によって処理し、又はトリプシンの場合にはセリンプロテアーゼインヒビターによって処理した。アナナス・コモスス由来の異種的に発現された活性なシステインプロテアーゼ及びカゼイン(0.5%)を含むピキア・パストリスからの上清を加えた。標準的なマイクロタイタープレートリーダーを用いて室温で1時間インキュベーションの後、OD600を測定した。様々なサンプルの結果を比較した。他のプロテアーゼは、ボーマン・バーク・インヒビター、トリプシン、キモトリプシン、エタスターゼ、ファルシパイン(Falcipain)及びブロメラインBP、のような阻害活性のための基質として使用した。サンプルを不活性化したプロテアーゼ抽出物及び好適な合成インヒビター(例えば、システインプロテアーゼの場合にはE64)と比較した。
【0065】
アルファ因子、プロペプチド及びアナナイン(An1)を有するがC-末端システインプロテアーゼ配列を有さないpPICZAを含むP.パストリスは、Unitron HT振とうインキュベータ(Infors)を用いて、230 rpm及び28℃の、3つ又は4つのバッフルを備えた振とうフラスコ中で最大48時間増殖させた1 lのBMM培地(pH 6)中に、12 mg/l活性AN1(基質としてのカゼイン)を与えた。上記の試験はまた、異なった温度で行い(それぞれ30、40、50、60、70及び80℃で1時間のインキュベーション)、BBIタンパク質との類似性及びBIPの各々の使用に基づいて、室温(22〜24℃)での活性(結果は非表示)と比較して、70℃で82%±8%のブロメラインインヒビターの残余活性を示した。
【0066】
ブロメラインタンパク質のMaldi-Tof型分析
上清からのサンプルは、培養の3日目に採取し、Zip-Tips(Millipore)で精製し、4800 TOF/TOFマスアナライザー(Applied Biosystems)を用いるMaldi-Tof分析に供した。
【0067】
分泌シグナルが正確な方法で開裂されたことを判明した。P.パストリス中で発現されたタンパク質は、Glykomodツール(www.ExPASy.ch; 結果は非表示)で検証したグリコシル化を示した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性形態で実質的な量で異種的に発現される、異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項2】
前記ブロメラインインヒビターのER転移ペプチドをコードするDNA配列が除かれている、請求項1記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項3】
前記ブロメラインインヒビターが、アナナス属(Ananas)によって付与される翻訳後修飾とは異なった翻訳後修飾を有する、請求項1又は2記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項4】
前記の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が、少なくとも90%の、ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の各々との同一の配列を示す、請求項1〜3のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項5】
前記ブロメラインインヒビターが、配列番号2〜6のいずれかの配列を示し、又は前記ブロメラインインヒビター前駆体が、配列番号1の配列を示す、請求項1〜4のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項6】
前記の翻訳後修飾が異なったグリコシル化パターンをもたらす、請求項1〜5のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項7】
前記の翻訳後修飾が、酵母、昆虫細胞、植物細胞及びE.コリからなる群より選ばれる宿主生物によって付与される、請求項6記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項8】
前記ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が精製を可能にする手段を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体を含む、医薬の、皮膚用又は栄養の組成物。
【請求項10】
前記ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が、組成物の総重量基準で0.1〜15重量%の範囲の量で含まれる、請求項9記載の医薬の、皮膚用又は栄養の組成物。
【請求項11】
前記栄養組成物が、チョコレート、ミルク、ヨーグルト、カード、チーズ、発酵ミルク、ミルク型発酵生成物、アイスクリーム、発酵シリアル型生成物、ミルク型粉末、乳児調製物又はペットフードであり;及び/又は前記皮膚組成物が、ローション、シャンプー、クリーム、サンスクリーン、日焼け後クリーム又は抗老化クリーム、及び/又は軟膏から選ばれ;及び/又は前記栄養組成物が、錠剤、液状懸濁液、乾燥経口サプリメント、湿った経口サプリメント、乾燥チューブ食事又は湿ったチューブ食事から選ばれる、請求項9又は10記載の医薬の、皮膚用又は栄養の組成物。
【請求項12】
希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑剤(lubricant)、甘味料、滑剤(glidant)、香味料及び着色剤からなる群より選ばれる賦形剤を更に含む、請求項9〜11のいずれか1項記載の医薬の、皮膚用又は栄養の組成物。
【請求項13】
増強されたシステインプロテアーゼ発現に関連した疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の使用。
【請求項14】
癌、アテローム性動脈硬化症、細菌感染、炎症、血栓症及び水腫の治療及び/又は予防のための医薬組成物の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の使用。
【請求項1】
可溶性形態で実質的な量で異種的に発現される、異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項2】
前記ブロメラインインヒビターのER転移ペプチドをコードするDNA配列が除かれている、請求項1記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項3】
前記ブロメラインインヒビターが、アナナス属(Ananas)によって付与される翻訳後修飾とは異なった翻訳後修飾を有する、請求項1又は2記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項4】
前記の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が、少なくとも90%の、ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の各々との同一の配列を示す、請求項1〜3のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項5】
前記ブロメラインインヒビターが、配列番号2〜6のいずれかの配列を示し、又は前記ブロメラインインヒビター前駆体が、配列番号1の配列を示す、請求項1〜4のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項6】
前記の翻訳後修飾が異なったグリコシル化パターンをもたらす、請求項1〜5のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項7】
前記の翻訳後修飾が、酵母、昆虫細胞、植物細胞及びE.コリからなる群より選ばれる宿主生物によって付与される、請求項6記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項8】
前記ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が精製を可能にする手段を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体を含む、医薬の、皮膚用又は栄養の組成物。
【請求項10】
前記ブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体が、組成物の総重量基準で0.1〜15重量%の範囲の量で含まれる、請求項9記載の医薬の、皮膚用又は栄養の組成物。
【請求項11】
前記栄養組成物が、チョコレート、ミルク、ヨーグルト、カード、チーズ、発酵ミルク、ミルク型発酵生成物、アイスクリーム、発酵シリアル型生成物、ミルク型粉末、乳児調製物又はペットフードであり;及び/又は前記皮膚組成物が、ローション、シャンプー、クリーム、サンスクリーン、日焼け後クリーム又は抗老化クリーム、及び/又は軟膏から選ばれ;及び/又は前記栄養組成物が、錠剤、液状懸濁液、乾燥経口サプリメント、湿った経口サプリメント、乾燥チューブ食事又は湿ったチューブ食事から選ばれる、請求項9又は10記載の医薬の、皮膚用又は栄養の組成物。
【請求項12】
希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑剤(lubricant)、甘味料、滑剤(glidant)、香味料及び着色剤からなる群より選ばれる賦形剤を更に含む、請求項9〜11のいずれか1項記載の医薬の、皮膚用又は栄養の組成物。
【請求項13】
増強されたシステインプロテアーゼ発現に関連した疾患の治療及び/又は予防のための医薬組成物の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の使用。
【請求項14】
癌、アテローム性動脈硬化症、細菌感染、炎症、血栓症及び水腫の治療及び/又は予防のための医薬組成物の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項記載の異種発現されたブロメラインインヒビター又はブロメラインインヒビター前駆体の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図14a】
【図14b】
【図15】
【公表番号】特表2011−529459(P2011−529459A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520372(P2011−520372)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005426
【国際公開番号】WO2010/012438
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510069939)ウルサファルム アルツナイミッテル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005426
【国際公開番号】WO2010/012438
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(510069939)ウルサファルム アルツナイミッテル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】
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