説明

ブローチ盤のプルヘッド

【課題】単一の径のブローチシャンク専用のプルヘッドとほぼ同じ長さで複数種の径の異なるブローチシャンクを把持することができるブローチ盤を提供する。
【解決手段】テーブル12に挿着されたストッパー13は一側にブローチ20が出し入れ可能な穴14が形成され、他側に比較的大径の開口部15が形成されている。開口部15にはプルヘッド本体16が摺動自在に嵌挿されている。プルヘッド本体16は一側に円盤状の頭部16aと、他側に中心部に向かって傾斜面を有する底部16bと、頭部16a及び底部16b間に形成された軸受部16cと、を備える。プルヘッド本体16の軸受部16cには、円周方向に均等に4個の板状のレバー17a乃至17dがピン18を介して配に回動自在に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローチ盤において使用されるブローチを把持、案内するためのプルヘッドであって、径の異なる複数種のブローチシャンクを把持できるようにしたブローチ盤のプルヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブローチシャンクを把持するプルヘッドは、1個のプルヘッドで一種類の径のブローチシャンクを案内、把持するものが最も一般的であった。このため、一つの機械でシャンク径の異なるブローチを使用する場合には、その都度ブローチシャンク径に合わせてプルヘッド全体を交換するやり方がとられていた。このため、プルヘッドの段取り作業を頻繁に行なわなければならず、多くの工数と時間を要するほか安全上の観点からも好ましくないものであった。
この問題に対処するため、一つのプルヘッドで径の異なる複数種のブローチシャンクを把持できるようにしたものがあり、二つ以上の径の異なるブローチシャンク把持手段を長手方向に連接したもので、プルヘッドの先端側では大径のブローチシャンクを、またプルヘッドの奥側では小径のブローチシャンクをそれぞれ把持可能なようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−39823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたプルヘッドは、2種以上の径の異なるブローチシャンクの把持手段を長手方向に設けているため、プルヘッドの全長が長くなり重量もかさみ取扱い不便となるうえ、ブローチ盤の最大ストロークが制限を受ける欠点がある。また、ブローチシャンクの細いものほどブローチのシャンク部分を長くしなければならないブローチ製作上の不利が生じる。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、単一の径のブローチシャンク専用のプルヘッドとほぼ同じ長さで複数種の径の異なるブローチシャンクを把持することができ、しかも段取り替えを容易に速く行うことのできるブローチ盤のプルヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、
径の異なる複数種のブローチシャンクを把持することが可能なプルヘッドであって、
ボルスタに装着されたスリーブに摺動自在に嵌挿したプルヘッド本体と、
前記ブローチシャンクの径に合せて交換可能で前記プルヘッド本体の内孔に装着されたブッシュと、
前記プルヘッド本体に円周方向に少なくとも3個均等に配置され一端が該プルヘッド本体に回動自在に支持されて垂下すると共に、他端が前記プルヘッド本体に形成された溝に沿って円弧運動をして自重により前記プルヘッド本体の軸心側に移動することができる略逆T字状のレバーと、
を備え、
前記プルヘッド本体または前記ブッシュに前記ブローチシャンクを嵌挿した際に前記レバーが該ブローチシャンクに係合してブローチを把持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、スリーブに装着されたプルヘッド本体と、前記ブローチシャンクの径に合せて交換可能で前記プルヘッド本体の内孔に装着されたブッシュと、前記プルヘッド本体に円周方向に少なくとも3個均等に配置され一端が前記プルヘッド本体に回動自在に支持されて垂下すると共に、他端が前記プルヘッド本体に形成された溝に沿って円弧運動をして自重により前記プルヘッド本体の中心に移動する逆T字状のレバーと、を備えているので、前記プルヘッド本体または前記ブッシュに前記ブローチシャンクを嵌挿した際に前記レバーが該ブローチシャンクに係合することができるので、径の異なるブローチシャンクを同一のプルヘッドにブローチを把持することができ、ブローチ盤の段取り作業に要する時間と工数を節減して作業性を大幅に改善できるほか、安全性を確保することができる。
また、異なる径のシャンク把持手段を連設したものと比較して、プルヘッドの長さ、重量が格段に小さいので取扱い容易であり、ブローチ盤のストロークが制限されることもない。さらに細径のブローチのシャンク部分を長く製作する不利も避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係るブローチ盤のプルヘッドの概略構造を示す縦断面図で、ラムが上昇端に位置する状態を示す。
【図2】図1のII−II線の断面図である。
【図3】図1に示すラムが下降端に位置した状態を示すプルヘッドの概略構造を示す縦断面図である。
【図4】図1に示すレバーが三等配に配置された他の実施の形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係るブローチ盤のプルヘッドにつき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブローチ盤のプルヘッド10の概略構造を示す正面図である。図1において参照符号11は移動体を示し、参照符号12は移動体11に設けられたテーブルを示している。図1では移動体11が上昇端に位置する状態を示している。
テーブル12には円筒形状で一側が圧肉のストッパー13が挿着されている。ストッパー13は一側(図1で上方)にブローチ20が出し入れ可能な穴14が形成され、他側(図1で下方)に比較的大径の開口部15が形成されている。開口部15には円筒形状のプルヘッド本体16が摺動自在に嵌挿されている。プルヘッド本体16は一側(図1で上方)に円盤状の頭部16aと、他側(図1で下方)に 中心部に向かって傾斜面を有する底部16bと、頭部16a及び底部16b間に形成された軸受部16cと、を備える。
【0009】
図2に示すように、プルヘッド本体16の軸受部16cには、放射状に複数個、実施例では4個の板状のレバー17a乃至17dがピン18を介して等配に回動自在に配置されている。この場合、レバー17a乃至17dは軸受部16cに形成された溝19a乃至19dに遊挿されている。本実施のプルヘッド16では少なくとも3個設けてあればよく、それ以上、例えば4個設けてもよい。
レバー17a乃至17dの形状は、図1に示すように略逆T字形のようになってピン18に支持されている。よって、レバー17a乃至17dは自重で軸受部16cに垂下されて、半径方向の内方に延伸する先端でブローチ20のくびれ20aの外周を把持するようになっている。
【0010】
参照符号21はプルヘッド本体16の内孔16dに嵌挿された円筒形状のブッシュを示すもので、ブローチ20をプルヘッド本体16の嵌挿した際のガイド機能を有する。
このため、ブッシュ21はブローチ20の径によってその都度、プルヘッド本体16の内孔16dから着脱する際、ネジ部材23をフタ22から取り外し、取り付けを行って使用するブローチ20をブッシュ21に着脱できるようにしている。
なお、ブッシュ21をガイド機能にしないで直接、プルヘッド本体16に嵌挿できるブローチの最大径は、例えば直径36mmまで可能であり、参照符号36で示している。
さらに、ブッシュ21はプルヘッド本体16の内孔16dに嵌挿した際に、該ブッシュ21の円周方向の形成された断面矩形状の突起21aが頭部16aに接触してブッシュ21がプルヘッド本体16に係合するようなる。
参照符号22は頭部16aにネジ部材23により固定されたフタを示すもので、ブッシュ21をプルヘッド本体16の頭部16aに取着する機能を有する。
【0011】
前記プルヘッド本体16の外周は、頭部16aの外周面がストッパー13の開口部15に摺動自在に嵌挿されると共に、底部16b及び軸受部16cの外周面が移動体11に装着されたスリーブ24の穴26を形成する内周面25に摺動自在に嵌挿されている。
前記スリーブ24は一側(図1で上方)につば部24aと、薄肉円筒形状のガイド部24bと、を備えている。つば部24aは内周面25を形成する穴26を形成すると共に、ガイド部24bは外周面28にばね部材27を装着すると共に、内周面29に底部16bの外周面を摺動自在に支持するガイド部材30が円周方向に均等に複数個、例えば3個(図11では2個のみ表示する)設けられ、ネジ部材31により取り付けられている。
なお、ガイド部24bの外周面28に装着されたばね部材27は弾発力により、テーブル12が図1に示す上昇端、図2に示下降端に位置しても、スリーブ24を常時、テーブル12に当接させるようにしている。
【0012】
本発明の実施の形態に係るブローチ盤のプルヘッド10は、基本的には以上のように構成されているからものであり、次にその動作について説明する。
なお、図1においてブッシュ21の右半分はプルヘッド本体16に最小径のブローチ、すなわちブローチ20をプルヘッド本体16に嵌挿する場合を示している。
図1に示す最小のブローチ、例えばブローチ20をプルヘッド本体16に嵌挿する場合について説明する。
図2は図示しない駆動装置により移動体11を下降端に位置させた状態を示す。この図2において移動体11は下降端に位置した状態で該移動体11はテーブル12から離れているが、スリーブ24はばね部材27の弾発力により付勢されてつば部24aが常時テー0ブル12の下部に接触している。このため、プルヘッド本体16内に収納されたれレバー17a乃至17dの一端(図2で外方)はガイド部材30に接触しながら直径方向のブローチ20の軸心側に変位した位置にある。
【0013】
なお、図1においてブッシュ21の右半分はプルヘッド本体16に最小径のブローチ、すなわちブローチ20をプルヘッド本体16に嵌挿する場合を示している。
この状態でプルヘッド本体16の頭部16aの内孔16dにブッシュ21を嵌入し、該ブッシュ21の突起21aを頭部16aに当接させ、フタ22をブッシュ21に嵌め込みネジ部材23により頭部16aを取り付ける。
次いで、ブッシュ21の内孔(図示しない)にブローチ20を嵌挿すると該ブローチ20のくびれ部20aがレバー17a乃至17dによりはめ込まれ該ブローチ20が把持される。
【0014】
次に、最大径のブローチ、すなわちブローチ36をプルヘッド本体16に嵌挿する場合
を説明する。この場合、図2においてブッシュ21の左半分は最大径のブローチ、すなわちブローチ36をプルヘッド本体16に嵌挿する状態を示している。
よって、ブローチ36をプルヘッド本体16に嵌挿する場合にはネジ部材23によりフタ22を頭部16aより取り外し、ブッシュ21をプルヘッド本体16の内孔16dから引き抜き、次いでフタ22をプルヘッド本体16の頭部16aに取り付けてから、ブローチ36をプルヘッド本体16の内孔16dに嵌挿するとブローチ36のくびれ部36aがレバー17a乃至17dによりはめ込まれ該ブローチ36が把持される。
【0015】
一方、プルヘッド本体16よりブローチ20またはブローチ36を取り外す場合には、図1に示すように移動体11を上昇端に移動させると、スリーブ21が下方に移動するのでレバー17a乃至17dがピン18を中心にして直径方向の外方に移動してブローチ20またはブローチ36のくびれ部20a、36aから外れ、ブローチ20またはブローチ36をプリヘッド本体16からの取り出すことができある。
【符号の説明】
【0016】
10 ブローチ盤のプルヘッド 11 移動体
12 テーブル 13 ストッパー
15 開口部 16 プルヘッド本体
17a〜17d レバー 20、36 ブローチ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
径の異なる複数種のブローチシャンクを把持することが可能なプルヘッドであって、
ボルスタに装着されたスリーブに摺動自在に嵌挿したプルヘッド本体と、
前記ブローチシャンクの径に合せて交換可能で前記プルヘッド本体の内孔に装着されたブッシュと、
前記プルヘッド本体に円周方向に少なくとも3個均等に配置され一端が該プルヘッド本体に回動自在に支持されて垂下すると共に、他端が前記プルヘッド本体に形成された溝に沿って円弧運動をして自重により前記プルヘッド本体の軸心側に移動することができる略逆T字状のレバーと、
を備え、
前記プルヘッド本体または前記ブッシュに前記ブローチシャンクを嵌挿した際に前記レバーが該ブローチシャンクに係合してブローチを把持することを特徴とするブローチ盤のプルヘッド。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−88236(P2011−88236A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242137(P2009−242137)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)