説明

ブローチ盤のプルヘッド

【課題】単一の径のブローチシャンク専用のプルヘッドとほぼ同じ長さで複数種の径の異なるブローチシャンクを把持することができるブローチ盤を提供する。
【解決手段】プルヘッド本体16のガイド部16bには開口部34が形成されており、該開口部34にはツメ35の拡大部35aが対向して摺動自在に嵌挿されている。ツメ35の凹状溝36には角錐状になって先端に円弧状の把持面37を有する。ツメ35の縮小部35bは割カラー40に係合し、縮小部35bは該割カラー40に摺動自在に支持されている。縮小部35bにはガイド部材30に形成した傾斜面38が形成され,該傾斜面38には等ピッチで同じ段差38aを有する階段状の凹凸面38bが形成されている。凹凸面32bと凹凸面38bは接触し、傾斜面32の段差32aは傾斜面38の段差38aに噛み合うようになっている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブローチ盤において使用されるブローチを把持、案内するためのプルヘッドであって、径の異なる複数種のブローチシャンクを把持できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブローチシャンクを把持するプルヘッドは、1個のプルヘッドで1種類の径のブローチシャンクを案内、把持するものが最も一般的であった。このため、一つの機械でシャンク径の異なるブローチを使用する場合には、その都度ブローチシャンク径に合わせてプルヘッド全体を交換するやり方がとられていた。このため、プルヘッドの段取り作業を頻繁に行なわなければならず、多くの工数と時間を要するほか安全上の観点からも好ましくないものであった。
この問題に対処するため、一つのプルヘッドで径の異なる複数種のブローチシャンクを把持できるようにしたものがあり、二つ以上の径の異なるブローチシャンク把持手段を長手方向に連接したもので、プルヘッドの先端側では大径のブローチシャンクを、またプルヘッドの奥側では小径のブローチシャンクをそれぞれ把持可能なようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−39823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたプルヘッドは、2種以上の径の異なるブローチシャンクの把持手段を長手方向に設けているため、プルヘッドの全長が長くなり重量もかさみ取扱い不便となるうえ、ブローチ盤の最大ストロークが制限を受ける欠点がある。また、ブローチシャンクの細いものほどブローチのシャンク部分を長くしなければならないブローチ製作上の不利が生じる。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、単一の径のブローチシャンク専用のプルヘッドとほぼ同じ長さで複数種の径の異なるブローチシャンクを把持することができ、しかも段取り替えを容易に速く行うことのできるブローチ盤のプルヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、
径の異なる複数種のブローチシャンクを把持することが可能なプルヘッドであって、
ボルスタに装着されたスリーブに摺動自在に嵌挿したプルヘッド本体と、
前記ブローチシャンクの径に合せて交換可能で前記プルヘッド本体の内孔に装着されたブッシュと、
前記プルヘッド本体に直径方向に開口された横断面矩形状の開口部に摺動自在に嵌挿され前記プルヘッド本体の内径面から出没して前記ブローチシャンクを把持可能な複数種のツメと、
前記スリーブの内周面に取り付けられ前記ツメに対して傾斜面により係合するガイド部材と、
前記ツメ及び前記ガイド部材が係合する前記傾斜面に階段状に均等の高低差を有する段差が連続して形成された凹凸面と、
を備え、
前記プルヘッド本体または前記ブッシュに前記ブローチシャンクを嵌挿し、前記ボルスターが移動した際に前記ツメが該ブローチシャンクに係合してブローチを把持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のおいては、ボルスタに装着されたスリーブに摺動自在に嵌挿したプルヘッド本体と、前記ブローチシャンクの径に合せて交換可能で前記プルヘッド本体の内孔(保持孔)に装着されたブッシュと、前記プルヘッド本体に直径方向に開口された横断面矩形状の開口部に摺動自在に嵌挿され前記プルヘッド本体の内径面から出没して前記ブローチシャンクを把持可能な複数種のツメと、前記スリーブの内周面に取り付けられ前記ツメに対して傾斜面により係合するガイド部材と、前記ツメ及び前記ガイド部材が係合する前記傾斜面に階段状に均等の高低差を有する段差が連続して形成された凹凸面と、を備えているので、前記プルヘッド本体または前記ブッシュに前記ブローチシャンクを嵌挿した際に前記ツメが該ブローチシャンクに係合することができるので、径の異なるブローチシャンクを同一のプルヘッドにブローチを把持することができ、ブローチ盤の段取り作業に要する時間と工数を節減して作業性を大幅に改善できるほか、安全性が確保できブローチが接する面を高精度に仕上げることができるため、加工精度も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係るブローチ盤のプルヘッドの概略構造を示す縦断面図で、ラムが上昇端に位置する状態を示す。
【図2】図1の右側面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図である。
【図4】図1に示すラムが下降端に位置した際のプルヘッドの概略構造を示す縦断面図である。
【図5】図1のブローチ盤のプルヘッドの主要部品の概略構造を示す分解斜視図である。
【図6】図1のスリーブ、ガイド部材、ツメ及び割カラーの構成の概略構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係るブローチ盤につき好適の実施の形態を挙げ、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係るブローチ盤のプルヘッド10の概略構造を示す縦断面図で、プルヘッド10が上昇端、すなわちブローチをクランプした状態である。
図1において、参照符号11は移動体(ラム)を示し、参照符号12は移動体11に設けられたテーブル(ボルスタ)を示している。
【0009】
テーブル12には円筒形状で一側が厚肉のガイドスリーブ13が挿着されている。ガイドスリーブ13は一側(図1で上方)にブローチ20又はブローチ33が出し入れ可能な穴14が形成され、他側(図1で下方)に比較的大径の開口部15が形成されている。開口部15には円筒形状のプルヘッド本体16が摺動自在に嵌挿されている。プルヘッド本体16は一側(図1で上方)に円盤状の頭部16aと、他側(図1で下方)に円筒形状のガイド部16bと、を備える。なお、プルヘッド本体16は複数個のボルト部材17(図1では1個のみ表示する)により移動体11に固定されている。
【0010】
参照符号21はプルヘッド本体16に嵌挿された円筒形状のブッシュを示すもので、例えば最小径のブローチ20をプルヘッド本体16の内孔(保持孔)16dに嵌挿した際のガイド機能を有する。そのため、ブッシュ21はプルヘッド本体16の頭部16aに嵌挿した際に、該ブッシュ21の円周方向の形成された断面矩形状の突起21aが頭部16aに係合するようになっている。なお、最大径のブローチ33をプルヘッド本体16に嵌挿
する場合は、ブッシュ21を取り外してプルヘッド本体16の内孔16dに装着するようになる。
参照符号22は頭部16aにネジ部材23により取り付けられたフタを示すもので、ブッシュ21を該頭部16aに固定する機能を有する。
【0011】
前記プルヘッド本体16の外周は、頭部16aの外周面がガイドスリーブ13の開口部15に摺動自在に嵌挿されると共に、ガイド部16bの外周面が移動体11に装着されたスリーブ24の穴26を形成する内周面25に摺動自在に嵌挿されている。
前記スリーブ24は一側(図1で上方)につば部24aと、薄肉円筒形状のガイド部24bと、を備えている。つば部24aは内周面25を有する穴26を形成し、ガイド部24bは外周面28にばね部材27を装着すると共に、内周面29にガイド部材30が円周方向に均等に複数個、例えば2個が対応して設けられ、ネジ部材31により取り付けられている。なお、ガイド部24bの外周面28に装着されたばね部材27はスリーブ24を上方に移動させるように作用して、常時ガイド部材30の傾斜面32がツメ35の傾斜面38に接触して、傾斜面32の凹凸面32bが傾斜面38の凹凸面38bに密に係合するように機能する。
ガイド部材30は、一側(図5で上方)に内方から外方に上に指向する傾斜面32を形成し、該傾斜面32には等ピッチで同じ段差32aを有する階段状の凹凸面32bが形成されている。
【0012】
前記プルヘッド本体16のガイド部16bには直径方向に横断面矩形状の開口部34が形成されており、該開口部34には凸形状のツメ35の拡大部35a(図3及び図4参照)が対向して摺動自在に嵌挿されている。ツメ35は一側が凹状溝36に形成され、該凹状溝36には角錐状になって先端に円弧状の把持面37を有する。さらに、ツメ35の縮小部35bは後述する割カラー40に係合し、該縮小部35bは該割カラー40の開口部41bに摺動自在に支持されている。
縮小部35bにはガイド部材30に形成した傾斜面32、すなわち凹凸面32bに係合
する傾斜面38の凹凸面38bが形成されている。傾斜面38には等ピッチで同じ段差38aを有する階段状の凹凸面38bが形成されている。この場合、傾斜面32に形成する凹凸面32bと傾斜面38に形成する凹凸面38bは密に接触し、傾斜面32の段差32aは傾斜面38の段差38aに噛み合うようになっている。
【0013】
参照符号39はばね部材(図3参照)を示すもので、ツメ35の拡大部35aと割カラー40との間に装着され、ばね部材39の弾発力によりツメ35をプルヘッド本体16の軸心方向に付勢している。
図6に示すように、割カラー40は半円筒部材40a,40bを一組にして形成されており、該半円筒部材40a,40bの内周面42はプルヘッド本体16の外周面18に係合し、外周面43はスリーブ24の内周面29に係合した状態で、該スリーブ24内に嵌挿されている。さらに、半円筒部材40a、40bはこれらの当接部にツメ35の拡大部35a及び縮小部35bを移動自在に支持する開口部41a及び開口部41bが形成されている。
【0014】
また、半円筒部材40a,40bの開口部41bの奥部にはばね部材39の一端を遊挿する円形の凹部44a,44bが形成されている。
さらにまた、半円筒部材40a,40bには外周面43を削成して形成された平面40cが円周方向に2箇所均等に設けられており、スリーブ24の内周面29内の空気の流れを保ち、該スリーブ24内の気密を防止する機能を有する。
参照符号45はストッパーを示すもので、ブローチ20またはブローチ33をプルヘッド本体16に嵌挿した際、これらのブローチ20、33の落下するためプルヘッド本体16の底部にボルト部材(図示しない)により取り付けられている。
【0015】
本発明の実施の形態に係るブローチ盤のプルヘッド10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作について説明する。
図1に示す最小のブローチ、例えばブローチ20をプルヘッド本体16に嵌挿する場合について説明する。
なお、図1においてブッシュ21の右半分はプルヘッド本体16に最小径のブローチ、すなわちブローチ20をプルヘッド本体16に嵌挿する場合を示している。

図1は、図示しない駆動装置により移動体11を上昇端に位置させた状態を示す。この図1において移動体11は上昇端に位置した状態で該移動体11がテーブル12に接触して、スリーブ24は移動体11に押さればね部材27の弾発力に抗して図1で下方に移動する。
このため、ガイド部材30はスリーブ24と協動して下方に移動するので該ガイド部材30の傾斜面32がツメ35の傾斜面38から離脱して、ガイド部材30の凹凸面32bとツメ35の凹凸面38bとの係合が解かれる。これにより、ツメ35はばね部材39の弾発力によりプルヘッド本体16の開口部34内に沿って該プルヘッド本体16の半径方向に変位できるようにされている。
【0016】
図4は、図示しない駆動装置により移動体11を下降端に位置させた状態を示す。この図4において移動体11は下降端に位置した状態で該移動体11がテーブル12にから離脱して、スリーブ24は移動体11に押さればね部材27の弾発力により図1で上方に移動する。
このため、ガイド部材30はスリーブ24と協動して上方に移動するので該ガイド部材30bの傾斜面32がツメ35の傾斜面38に接触して、ガイド部材30の凹凸面32bとツメ35の凹凸面38bに係合するようになる。このため、ツメ35はバネ部材27の弾発力によるスリーブ24の上方の移動に協動するので、ガイド部材30の傾斜面32がツメ35の傾斜面38に接触するようになり、ガイド部材30の凹凸面32bがツメ35の凹凸面38bに係合するようになる。
【0017】
この状態でプルヘッド本体16の頭部16aの内孔16dにブッシュ21を嵌入し、該ブッシュ21の突起21aを頭部16aに当接させ、フタ22をブッシュ21に嵌め込みネジ部材23により頭部16aを取り付ける。
次いで、ブッシュ21の内孔(図示しない)にブローチ20を嵌挿すると該ブローチ20の底部がストッパー46により所定位置に保持されくびれ部20aがツメ35の把持面37に接触して、ガイド部材30を介してブローチ20が把持される
【0018】
次に、最大径のブローチ、すなわちブローチ33をプルヘッド本体16に嵌挿する場合
を説明する。この場合、図1においてブッシュ21の左半分は最大径のブローチ、すなわちブローチ33をプルヘッド本体16に嵌挿する状態を示している。
よって、ブローチ33をプルヘッド本体16に嵌挿する場合にはネジ部材23によりフタ22を頭部16aより取り外し、ブッシュ21をプルヘッド本体16の内孔16dから引き抜き、次いでフタ22をプルヘッド本体16の頭部16aに取り付けてから、ブローチ33をプルヘッド本体16の内孔16dに嵌挿するとブローチ33のくびれ部33aがツメ35の把持面37に接触してブローチ33が把持される。
【符号の説明】
【0019】
10 ブローチ盤のプルヘッド 11 移動体
12 テーブル 13ガイドスリーブ
15 開口部 16 プルヘッド本体
20、33 ブローチ 32,38 傾斜面
35 ツメ 40 割カラー




【特許請求の範囲】
【請求項1】
径の異なる複数種のブローチシャンクを把持することが可能なプルヘッドであって、
ボルスタに装着されたスリーブに摺動自在に嵌挿したプルヘッド本体と、
前記ブローチシャンクの径に合せて交換可能で前記プルヘッド本体の内孔(保持孔)に装着されたブッシュと、
前記プルヘッド本体に直径方向に開口された横断面矩形状の開口部に摺動自在に嵌挿され前記プルヘッド本体の内径面から出没して前記ブローチシャンクを把持可能な複数種のツメ、
前記スリーブの内周面に取り付けられ前記ツメに対して傾斜面により係合するガイド部材と、
前記ツメ及び前記ガイド部材が係合する前記傾斜面に階段状に均等の高低差を有する段差が連続して形成された凹凸面と、
を備え、
前記プルヘッド本体または前記ブッシュに前記ブローチシャンクを嵌挿し、前記ボルスタが移動した際に前記ツメが該ブローチシャンクに係合してブローチを把持することを特徴とするブローチ盤のプルヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−88237(P2011−88237A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−242145(P2009−242145)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(000005197)株式会社不二越 (625)