説明

ブロー成形品の製造方法

【課題】
解決すべき課題は、自動車用空調ダクトのように薄肉で複雑な形状のものの発泡ブロー成形を行う場合、特許文献1に開示されているような発泡倍率が1.5%〜10%という高倍率な発泡成形法だと、元々薄肉なパリソンが局部的に大きく膨らまされる途中で破裂してしまい、成形ができないという点である。
【解決手段】
着色剤を含む熱可塑性ポリオレフィン系の樹脂主原料に粉末状界面活性剤のみを混入させてブロー成形機に投入し、成形時の熱によって上記界面活性剤に含まれる微量な水分を気化させることにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色剤を含む熱可塑性ポリオレフィンの発泡ブロー成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
着色剤を含む熱可塑性ポリオレフィンの発泡ブロー成形品の製造に関する従来技術としては特許文献1に開示されているようなものがある。
【0003】
しかし、図1に示す自動車用空調ダクト1のように薄肉で複雑な形状のものの発泡ブロー成形を行う場合、特許文献1に開示されているような発泡倍率が1.5%〜10%という中〜高倍率な発泡成形法だと、元々薄肉なパリソンが局部的に大きく膨らまされる途中で破裂してしまい、成形ができないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−26459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、自動車用空調ダクトのように薄肉で複雑な形状のものの発泡ブロー成形を行う場合、特許文献1に開示されているような発泡倍率が1.5%〜10%という中〜高倍率な発泡成形法だと、元々薄肉なパリソンが局部的に大きく膨らまされる途中で破裂してしまい、成形ができないという点である。本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を果たすため本発明は、着色剤を含む熱可塑性ポリオレフィン系の樹脂主原料に粉末状界面活性剤のみを混入させてブロー成形機に投入し、成形時の熱によって上記界面活性剤に含まれる水分を気化させ、発泡成形体を形成することを最も主要な特徴とする。
【0007】
また、樹脂主原料への粉末状界面活性剤の混入比率が重量比率で1%以上、6%以下の範囲内であることを第2の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動車用空調ダクトのように薄肉で複雑な形状のものでも膨らむ途中で破裂させずに微発泡成形できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】自動車用空調ダクトの斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
自動車用空調ダクトのように薄肉で複雑な形状のものを、膨らむ途中で破裂させずに発泡成形するという目的を、着色剤を含む熱可塑性ポリオレフィン系の樹脂主原料に粉末状界面活性剤のみを混入させてブロー成形機に投入し、成形時の熱によって上記界面活性剤に含まれる水分を気化させ、微発泡成形体を形成することにより、粉石鹸という安価な材料を用いて、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0011】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである
先ず、着色剤を含む熱可塑性ポリエチレンの樹脂主原料に重量比率で3%の粉石鹸のみを混入、攪拌して特製原料(図示せず)を作る。
【0012】
一般に、粉石鹸等の界面活性剤は保湿剤としても使われるくらいであるから、元々微量の水分を含んでいる。
【0013】
上記特製原料を予備乾燥せずにブロー成形機(図示せず)に投入し、加熱溶融時の熱によって上記粉石鹸に含まれる微量の水分を気化させ樹脂を微発泡させる。
主原料のポリエチレン等のポリオレフィン系の樹脂は元々吸湿性がほとんどなく、予備乾燥しなくても上記特製原料に含まれる水分は上記粉石鹸に含まれる微量の湿気だけである。
【0014】
次に、上記空調ダクト1用の分割金型(図示せず)内に半溶融状態にあるポリエチレン等の着色剤を含む熱可塑性ポリオレフィン系樹脂のパリソン(図示せず)を垂下させ上記分割金型を型締めする。
【0015】
その後、上記パリソン内に圧縮空気を吹き込んでブローアップし離型して、空調ダクト1の発泡ブロー成形を完了させる。
【0016】
成形後の測定によれば、上記特製原料を用いて成形した上記空調ダクト1の発泡倍率は1.11倍であった。
【0017】
即ち、非発泡成形による上記空調ダクト1と同じ肉厚になるようにパリソン肉厚を調整して微発泡成形した上記空調ダクト1は、重量比で約10%の軽量化が得られた。
【0018】
尚、熱可塑性ポリエチレンの主原料への粉石鹸の混入比率を色々変えて実験したところ、6%を超えると粉石鹸という異物の存在および発泡による強度低下の相乗作用の増大のせいでパリソンが膨らむ途中で破裂してしまった。
【0019】
また、混入比率が1%未満だと主原料に粉石鹸を混入することによるコスト増分が、軽量化で得られるコスト減分を上回ってしまいメリットはないことが判明した。
【0020】
また、上記実施例では粉石鹸を例として説明したが、中性洗剤等、粉末状界面活性剤でありさえすれば保湿性を有しているので何でも構わない。
【0021】
また、ポリエチレンに限らずポリプロピレンや他のポリオレフィン系の樹脂ならば吸湿性がほとんどないので予備乾燥を必要とせず、何でも構わない。
【0022】
以上実施例に述べたように本発明によれば、着色剤を含む熱可塑性ポリオレフィン系の樹脂主原料に粉末状界面活性剤のみを混入させてブロー成形機に投入し、成形時の熱によって上記界面活性剤に含まれる微量な水分を気化させるため、自動車用空調ダクトのように薄肉で複雑な形状のものでも膨らませる途中で破裂させずに微発泡成形できるという効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、空調ダクトの微発泡ブロー成形に限らず、レゾネータやデッキボードの微発泡ブロー成形等、剛性を要したり構造材として使われるブロー成形体に広く利用可能である。
【0024】
上記レゾネータやデッキボードの場合には非発泡のものと比べて、重量が同じでも肉厚が厚肉となるので曲げ剛性が増す。
この場合、微発泡であるので気泡の存在による強度低下はほとんどない。
【符号の説明】
【0025】
1 空調ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤を含む熱可塑性ポリオレフィン系の樹脂主原料に粉末状界面活性剤のみを混入させてブロー成形機に投入し、成形時の熱によって上記界面活性剤に含まれる水分を気化させ、発泡成形体を形成することを特徴とするブロー成形品の製造方法
【請求項2】
請求項1における樹脂主原料への粉末状界面活性剤の混入比率が重量比率で1%以上、6%以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載のブロー成形品の製造方法

【図1】
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【公開番号】特開2013−99870(P2013−99870A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244042(P2011−244042)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】